説明

アレルギー性疾患を処置する為のFK506誘導体を含む医薬組成物及びその使用

【課題】眼アレルギーの症状を処置する、眼科用組成物及び方法の提供。
【解決手段】眼アレルギーを罹患しているヒト患者の処置方法であって、該患者に約0.01%〜約0.1%のマクロライド化合物を含有する眼科用組成物を投与することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、眼アレルギーの処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
過去40年間にわたりアレルギー性結膜炎の発生率及び罹患率は劇的に増加し、今日では米国人口の20%にまで及んでいる。その症状は、木、草あるいは雑草からの花粉によるものであれば季節的なものであり、動物の鱗屑、埃あるいはカビ等の抗原が1年を通じて過剰である場合にはその症状は通年性のものである;両者の中でも季節性アレルギー性結膜炎がより一般的である。眼科医は、全アレルギー性結膜炎の80〜90%が季節的なものであり、一方、残る10〜20%が事実上通年性のものであると考えている。
【0003】
アレルギー性結膜炎のような眼アレルギーには現在、以下のカテゴリー:抗ヒスタミン薬、肥満細胞安定化剤、非ステロイド性抗炎症薬(「NSAIDS」)及び副腎皮質ホルモン、に含められる製品が使える。多くの製品が利用できるにもかかわらず、完全に満足いくというものはなく、有効で且つ異なる作用機構で作用する製品の必要性が依然存在している。
【0004】
歴史的に、アレルギー性結膜炎の処置におけるマクロライド免疫抑制性化合物の開発にかなりの関心が持たれてきたが、いまだ市場されている製品はない。これらのマクロライド化合物の中でも日本の藤沢薬品工業株式会社によって生み出されたタクロリムス(別名FK506)が優れている。米国特許第5,514,686号公報(特許文献1)参照。しかしながら、今まで、ヒト患者を処置する為の最適な投薬計画については明確に定められてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,514,686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の開示
従って、本発明の目的は、マクロライド免疫抑制化合物を用いる、眼アレルギー症状を処置する為の有用な改善された組成物及び方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、本発明の組成物及び該組成物を眼アレルギー、特にアレルギー性結膜炎に使用し得るか使用すべきであることを記載した記載物をそれとともに含む商業的パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のこの、及び他の目的によれば、眼アレルギー症状を患ったヒト患者を処置する方法が提供される。一実施態様では、この方法は約0.01%〜約0.1%のマクロライド化合物を含有する眼科用組成物を患者に投与することを必要とする。別の実施態様では、本方法は約0.03%〜約0.06%、好ましくは約0.03%のマクロライド化合物を含有する眼科用組成物を患者に投与することを含む。
【0009】
好ましい組成物は、任意にポリビニルアルコールを含む点眼剤、あるいは軟膏として製剤化される。一般的に、これらの組成物は1日に約1回〜約4回、眼投与されるであろう。
【0010】
好ましいマクロライド化合物は下記式(I)を有するトリシクロ化合物又はその医薬上許容され得る塩である。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R及びR、R及びR、ならびにR及びRの隣接する対は、各々独立して、
a)2つの隣接する水素原子からなる(Rは任意にアルキルである)、又は
b)該対のそれぞれに結合している炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;Rは水素原子、ヒドロキシ、アルキルオキシ、あるいは保護されたヒドロキシであるか、又はRと共になってオキソを形成してもよく;R及びRは各々独立して、水素原子又はヒドロキシを表わし;R10は水素原子、アルキル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルケニル、アルケニル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルキル、又はオキソによって置換されたアルキルであり;Xはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、又は式−CHO−で表わされる基であり;Yはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、又は式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基であり;R11及びR12は各々独立して水素原子、アルキル、アリール又はトシルを表わし;R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22及びR23は各々独立して水素原子又はアルキルを表わし;R24は、任意に置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環であり;及びnは1又は2を表わす。タクロリムスが最も好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、眼アレルギーの症状を処置する、眼科用組成物及び方法を提供する。これらの組成物及び方法における主要な有効成分はタクロリムス、アスコマイシン及びラパマイシン、並びにそれらの誘導体のようなマクロライド化合物である。至適濃度及び投薬計画が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、共通のアレルゲンでのチャレンジに対する応答におけるヒトでの眼の痒みを抑制する、マクロライド化合物含有点眼剤の能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明者は、驚くべきことに、アレルギーの眼症状を処置する為にあるマクロライド化合物を特定の濃度範囲で使用し得ることを見出した。特に、FK506(タクロリムス)、アスコマイシン、ラパマイシン及びそれらの誘導体のようなマクロライド化合物を眼アレルギー症状、及び、特にアレルギー性結膜炎の治療に、眼科用組成物中約0.01%〜約0.1%の濃度範囲で使用することができる。
【0016】
本発明のマクロライド化合物
本発明で使用され得る具体的なマクロライド化合物の例示としては、例えば下記一般式(I)によって示されるトリシクロ化合物、又は医薬上許容され得るその塩が挙げられる。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R及びR、R及びR、ならびにR及びRの隣接する対は、各々独立して、
a)2つの隣接する水素原子からなる(Rは任意にアルキルである)、又は
b)該対のそれぞれに結合している炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
は水素原子、ヒドロキシ、アルキルオキシ、あるいは保護されたヒドロキシであるか、又はRと共になってオキソを形成してもよく;
及びRは各々独立して、水素原子又はヒドロキシを表わし;
10は水素原子、アルキル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルキル、アルケニル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルケニル、又はオキソによって置換されたアルキルであり;
Xはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、又は式−CHO−で表わされる基であり;
Yはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、又は式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基であり;
11及びR12は各々独立して水素原子、アルキル、アリール又はトシルを表わし;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22及びR23は各々独立して水素原子又はアルキルを表わし;
24は、任意に置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環であり;及び
nは1又は2を表わす。
上記の意味に加え、Y、R10及びR23はそれらが結合している炭素原子と一緒になって飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子及び/又は酸素原子を含有する複素環基を表わしていてもよく、その複素環基は、アルキル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、ベンジル、式−CHSe(C)で表わされる基、及び1以上のヒドロキシによって置換されたアルキルから選ばれる1以上の基、又はその医薬上許容され得る塩によって置換されていてもよい。
【0019】
一般式(I)において、好ましいR24は、例えば以下のような適当な置換基を任意に有するシクロ(C5−7)アルキルである。
(a)3,4−ジオキソシクロヘキシル;
(b)3−R20−4−R21−シクロヘキシル(その中で、R20はヒドロキシ、アルキルオキシ、又は−OCHOCHCHOCH、及びR21はヒドロキシ、−OCN、アルキルオキシ、適当な置換基を任意に有するヘテロアリールオキシ、−OCHOCHCHOCH、保護されたヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド、p−トリルオキシチオカルボニルオキシ、又はR2526CHCOO−(式中、R25は所望により任意に保護されるヒドロキシ、又は保護されたアミノ、及びR26は水素原子又はメチル、又はR20とR21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子を形成する);及び
(c)シクロペンチルであって、そのシクロペンチルは、メトキシメチル、所望により任意に保護されるヒドロキシメチル、アシルオキシメチル(その中において、アシル部分は、任意に4級化されるジメチルアミノ又は任意にエステル化されるカルボキシ)、1個又はそれ以上の任意に保護されるアミノ及び/又はヒドロキシ、又はアミノオキザリルオキシメチルで置換されている。好ましい例としては、2−ホルミル−シクロペンチルが挙げられる。
【0020】
式(I)において使用されている各記号の定義、その具体例、及びその好ましい実施態様を以下に詳細に説明する。
【0021】
「低級」とは特に指示がなければ、炭素原子約1〜約6個を有する基を意味する。
「アルキル」及び「アルキルオキシ」のアルキル部分の好ましい例としては、直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等の低級アルキルが挙げられる。
「アルケニル」の好ましい例としては、1個の二重結合を含有する直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素残基が挙げられ、例えばビニル、プロペニル(例えばアリル等)、ブテニル、メチルプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル等の低級アルケニルが挙げられる。
「アリール」の好ましい例としては、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシチル、ナフチル等が挙げられる。
【0022】
「保護されたヒドロキシ」及び「保護されたアミノ」における保護基の好ましい例としては、例えばメチルチオメチル、エチルチオメチル、プロピルチオメチル、イソプロピルチオメチル、ブチルチオメチル、イソブチルチオメチル、ヘキシルチオメチル等の低級アルキルチオメチルのような1−(低級アルキルチオ)(低級)アルキル、さらに好ましいものとしてC〜Cアルキルチオメチル、最も好ましいものとしてメチルチオメチル;
例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、第三級ブチルジメチルシリル、トリ第三級ブチルシリル等のトリ(低級)アルキルシリル、例えばメチルジフェニルシリル、エチルジフェニルシリル、プロピルジフェニルシリル、第三級ブチルジフェニルシリル等の低級アルキルジアリールシリル等のようなトリ置換シリル、さらに好ましいものとしてトリ(C〜C)アルキルシリル及びC〜Cアルキルジフェニルシリル、最も好ましいものとして第三級ブチル−ジメチルシリル及び第三級ブチルジフェニルシリル;
カルボン酸、スルホン酸及びカルバミン酸から誘導される、脂肪族アシル、芳香族アシル及び芳香族基で置換された脂肪族アシルのようなアシル;等が挙げられる。
【0023】
脂肪族アシルとしては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、カルボキシアセチル、カルボキシプロピオニル、カルボキシブチリル、カルボキシヘキサノイル等の、カルボキシのような適当な置換基を任意に1個以上有する低級アルカノイル;
例えばシクロプロピルオキシアセチル、シクロブチルオキシプロピオニル、シクロヘプチルオキシブチリル、メンチルオキシアセチル、メンチルオキシプロピオニル、メンチルオキシブチリル、メンチルオキシペンタノイル、メンチルオキシヘキサノイル等の、低級アルキルのような適当な置換基を任意に1個以上有するシクロ(低級)アルキルオキシ(低級)アルカノイル;
カンファースルホニル;
例えばカルボキシメチルカルバモイル、カルボキシエチルカルバモイル、カルボキシプロピルカルバモイル、カルボキシブチルカルバモイル、カルボキシペンチルカルバモイル、カルボキシヘキシルカルバモイル等のカルボキシ(低級)アルキルカルバモイル、及び例えばトリメチルシリルメトキシカルボニルエチルカルバモイル、トリメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリエチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、第三級ブチルジメチルシリルエトキシカルボニルプロピルカルバモイル、トリメチルシリルプロポキシカルボニルブチルカルバモイル等のトリ(低級)アルキルシリル(低級)アルキルオキシカルボニル(低級)アルキルカルバモイル等の、カルボキシもしくは保護されたカルボキシ等のような適当な置換基を1個以上有する低級アルキルカルバモイルが挙げられる。
【0024】
芳香族アシルとしては、例えばベンゾイル、トルオイル、キシロイル、ナフトイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ニトロナフトイル等の、ニトロのような適当な置換基を任意に1個以上有するアロイル;
例えばベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル、キシレンスルホニル、ナフタレンスルホニル、フルオロベンゼンスルホニル、クロロベンゼンスルホニル、ブロモベンゼンスルホニル、ヨードベンゼンスルホニル等の、ハロゲンのような適当な置換基を任意に1個以上有するアレーンスルホニル等が挙げられる。
【0025】
芳香族基で置換された脂肪族アシルとしては、例えば低級アルキルオキシ又はトリハロ(低級)アルキル等の適当な置換基を任意に1個以上有するアル(低級)アルカノイル等であってもよく、ここで具体例としては、フェニルアセチル、フェニルプロピオニル、フェニルブチリル、2−トリフルオロメチル−2−メトキシ−2−フェニルアセチル、2−エチル−2−トリフルオロメチル−2−フェニルアセチル、2−トリフルオロメチル−2−プロポキシ−2−フェニルアセチル等が挙げられる。
上記アシル中、さらに好ましいアシルとしては、カルボキシを任意に有するC〜Cアルカノイル、シクロアルキル部分に(C〜C)アルキルを2個有するシクロ(C〜C)アルキルオキシ(C〜C)アルカノイル、カンファースルホニル、カルボキシ(C〜C)アルキルカルバモイル、トリ(C〜C)アルキルシリル(C〜C)アルキルオキシカルボニル(C〜C)アルキルカルバモイル、ニトロ基を1個又は2個任意に有するベンゾイル、ハロゲンを有するベンゼンスルホニル、C〜Cアルキルオキシとトリハロ(C〜C)アルキルを有するフェニル(C〜C)アルカノイルが挙げられ、それらのうち、最も好ましいものとしては、アセチル、カルボキシプロピオニル、メンチルオキシアセチル、カンファースルホニル、ベンゾイル、ニトロベンゾイル、ジニトロベンゾイル、ヨードベンゼンスルホニル及び2−トリフルオロメチル−2−メトキシ−2−フェニルアセチル等が挙げられる。
【0026】
「飽和もしくは不飽和の5員もしくは6員環からなる窒素原子、硫黄原子及び/又は酸素原子を有する複素環基」の好ましい例としては、ピロリル、テトラヒドロフリル等が挙げられる。
「適当な置換基を任意に有するヘテロアリールオキシ」の中の「適当な置換基を任意に有するヘテロアリール部分」とは、EP−A−532088中の式Iの化合物のRとして例示のものが挙げられるが、1−ヒドロキシエチルインドール−5−イルが好ましい。本開示は引用により本明細書に組み込まれる。
【0027】
本発明において使用されるトリシクロ化合物(I)は、公報EP−A−184162、EP−A−323042、EP−A−423714、EP−A−427680、EP−A−465426、EP−A−480623、EP−A−532088、EP−A−532089、EP−A−569337、EP−A−626385、WO89/05303、WO93/05058、WO96/31514、WO91/13889、WO91/19495、WO93/5059等に記載されている。これらの公報の開示は引用により本明細書に組み込まれる。
【0028】
特に、FR900506(=FK506)、FR900520(アスコマイシン)、FR900523及びFR900525と呼称される化合物は、ストレプトミセス(Streptomyces)属、例えばストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)No.9993(寄託機関:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(旧名称:通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所)、寄託日:1984年10月5日、受託番号:微工研条寄第927号(FERM BP−927)もしくは、ストレプトミセス・ハイグロスコピカス・サブスピシース・ヤクシマエンシス(Streptomyces hygroscopicus subsp.yakushimaensis)No.7238(寄託機関:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(旧名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所)、寄託日:1985年1月12日、受託番号:微工研条寄第928号(FERM BP−928)(EP−A−0184162)により産生される物質であり、下記式で示される化合物、FK506(一般名:タクロリムス)は、代表的な化合物である。
【0029】
【化3】

【0030】
化学名:17−アリル−1,14−ジヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.04,9]オクタコス−18−エン−2,3,10,16−テトラオン
【0031】
トリシクロ化合物(I)のうち、より好ましいものは、R及びR、R及びRの隣接するそれぞれの対が、当該対のそれぞれが結合している炭素原子どうしの間に独立してもう一つの結合を形成し、
とR23がそれぞれ独立して水素原子を示し、
がヒドロキシであり、
10がメチル、エチル、プロピル又はアリルであり、
Xが(水素原子、水素原子)又はオキソであり、
Yがオキソであり、
14、R15、R16、R17、R18、R19とR22はそれぞれ独立してメチルを示し、
24が、3−R20−4−R21−シクロヘキシルであり(その中で、R20はヒドロキシ、アルキルオキシ、又は−OCHOCHCHOCH、及びR21はヒドロキシ、−OCN、アルキルオキシ、適当な置換基を有するヘテロアリールオキシ、−OCHOCHCHOCH、保護されたヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ヨード、アミノオキザリルオキシ、アジド、p−トリルオキシチオカルボニルオキシ、又はR2526CHCOO−(式中、R25は所望により任意に保護されるヒドロキシ、又は保護されたアミノ、及びR26は水素原子又はメチル)であり、又はR20とR21は一緒になって、エポキシド環の酸素原子を形成する)、そして
nは1又は2で示される化合物である。
【0032】
特に好ましいトリシクロ化合物(I)としては、FK506の他に、EP−A−427,680の実施例66aに記載の33−エピ−クロロ−33−デスオキシ アスコマイシンのハロゲン化誘導体等のアスコマイシン誘導体が挙げられる。
【0033】
他の好ましいマクロライド化合物としては、メルクインデックス(MERCK INDEX)(12版)No.8288に記載されるラパマイシン及びその誘導体が挙げられる。その好ましい例としては、WO95/16691の第1頁に記載される、40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピルラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチルラパマイシン及び40−O−(2−アセトアミノエチル)ラパマイシン等のO−置換された誘導体、式A〔ここで40位のヒドロキシは−OR(式中、Rはヒドロキシアルキル、ヒドロアルキルオキシアルキル、アシルアミノアルキル及びアミノアルキル)である〕。これらのO−置換された誘導体は適当な条件下で、ラパマイシン(又はジヒドロ又はデオキソラパマイシン)と脱離基を結合している有機ラジカル(例えばRX(式中、Rは、アルキル、アリル及びベンジル部分などのO−置換基として望まれる有機ラジカルであり、XはCClC(NH)O及びCFSO等の脱離基である)とを反応させることによって製造することができる。条件は以下の通り:XがCClC(NH)Oの場合、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、p−トルエンスルホン酸又はそれらに対応するピリジニウム又は置換ピリジニウム塩の存在下などのような酸性又は中性条件、XがCFSOの場合、ピリジン、置換ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン及びペンタメチルピペリジン等の塩基の存在下。最も好ましいラパマイシン誘導体は、WO94/09010に開示されている40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンであり、引用により本明細書に組み込まれる。
【0034】
トリシクロ化合物(I)、ラパマイシン及びそれらの誘導体の医薬上許容され得る塩は、無毒の、医薬上許容され得る慣用の塩であり、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、例えばトリエチルアミン塩、N−ベンジル−N−メチルアミン塩等のアミン塩のような無機又は有機塩基との塩が挙げられる。
【0035】
本発明のマクロライド化合物には、コンホーマーや不斉炭素原子及び二重結合に起因する光学異性体及び幾何異性体のような1対以上の立体異性体が存在することがあり、そのようなコンホーマーあるいは異性体もまたこの発明に包含される。また、マクロライド化合物は溶媒和物を形成することも出来るが、その場合もまた本発明に包含される。好ましい溶媒和物としては、水和物及びエタノレートが挙げられる。
【0036】
本発明のマクロライド化合物及びその医薬上許容され得る塩は非毒性である。医薬上許容され得る慣用の塩は、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩(例えばトリエチルアミン塩、N−ベンジル−N−メチルアミン塩等)等の無機又は有機塩基を有していてもよい。
【0037】
ここで、特に記載がない限り、「マクロライド」なる用語、あるいは特定のマクロライドへの言及はその全ての医薬上許容され得る塩を含むもことが意味される。
【0038】
眼科用組成物
本発明のマクロライド化合物は任意の多くの方法で投与されてもよいが、最も便利な形態は点眼剤及び軟膏と考えられる。これらは慣用の方法によって製造されてもよい。マクロライド化合物の至適濃度は約0.01%〜約0.1%(より厳密には0.01%〜0.1%)、より好ましくは約0.03%〜約0.06%(より厳密には0.03%〜0.06%)であり、0.03%が最も好ましい。
【0039】
例えば、点眼剤は、生理食塩水、緩衝溶液等の無菌の水溶液に有効成分を溶解することによって、あるいは粉末組成物を使用前に加えて溶解することによって調製することができる。EP−A−0406791(引用によりその全体が組み入れられる)に記載されているような点眼剤が好ましい。慣用の点眼剤添加物を用いることができる。そのような添加物としては、等張化剤(例えば塩化ナトリウム等)、緩衝剤(例えばホウ酸、リン酸1水素ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム等)、保存剤(例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール等)、増粘剤(例えばラクトース、マンニトール、マルトース等の多糖;例えばヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム等のヒアルロン酸又はその塩;コンドロイチン硫酸等のムコ多糖;例えばポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、架橋ポリアクリレート等;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、グリセリン等)が挙げられる。
【0040】
特に、本発明の点眼剤において添加剤としてのポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0041】
眼科用軟膏は慣用の方法によって有効成分と基剤とを混合することによって調製することができる。軟膏基剤の例としては、ワセリン、セレン50、プラスチベース及びマクロゴールが挙げられるがそれらに限定されない。親水性を高める為にデタージェントあるいはその他の乳化剤のような界面活性剤を加えることができる。保存剤等の点眼剤で用いたものと同様な添加剤を軟膏においても用いることができる。
【0042】
本製剤はさらに本発明の目的に矛盾しない限りは他の薬理学的に活性のある成分を含めることができる。例えば、そのような製剤は1種あるいは複数種のマクロライド化合物を含めることができ、細菌感染を処置あるいは予防する目的で1又はそれ以上の抗菌剤を有効成分として含めることができる。複数の有効成分を併用する場合には、各含有量はそれらの効果や安全性を考慮して適当に増減してもよい。
【0043】
本剤は保存剤を含まない無菌の1回服用型として製剤化することができる。
【0044】
処置方法
本明細書で用いる「処置」という用語は、予防、治療、症状の軽減、症状の減退、進行停止等、あらゆる管理手段が含まれる。
【0045】
処置される患者は一般的に眼アレルギー症状を有しているであろう。その中でも最も際立つ症状は発赤と痒みである。患者はアレルギー性結膜炎を患っていることもある。
【0046】
上述の、本発明のマクロライド含有組成物は、通常、眼及び/又は瞼等のまわりの皮膚に局所的に投与される。投与量及び投与回数はヒトの性別、年齢及び体重、処置すべき症状、望まれる治療効果、投与経路及び処置期間に応じて変更することができる。しかしながら本発明者は、眼アレルギー処置用の眼科用組成物(点眼剤、眼軟膏)におけるマクロライド化合物の至適濃度が約0.01%〜約0.06%の範囲であることを見出した。約0.1%迄の濃度で使用されてもよいが、それらは最適には通常軟膏として製剤化される。全ての要因を考慮すると、0.03%の濃度が処置には最も適していると思われる。好ましくはマクロライド化合物は点眼剤として製剤化され、1日あたり1眼につき数回、好ましくは1〜6回、より好ましくは1〜4回、1回あたり数滴、好ましくは1〜4適投与することができる。
【0047】
本発明は以下の実施例を参照してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例
アレルギー歴のあるヒト患者を5群にわけ一方の眼を点眼剤(プラセボ、0.01%FK506、0.03%FK506、0.06%FK506あるいは0.1%FK506)で処置し、もう一方の目をプラセボで処置した。各点眼剤を1日あたり4回7日間投与した。最終点眼から16時間後、患者に反応を引き起こすように該患者にアレルゲンを含有する点眼剤をあらかじめ決められた濃度で投与した。0〜4(4が最も重篤)のスコアのうち痒みスコアのべースラインが少なくとも3である患者100人について評価した。痒みスコアのベースラインからの減少についてのデータを図1に示す。
【0049】
図1からわかるように、際立った薬剤応答性があった。特に、全ての濃度でプラセボに対してチャレンジ後3分が統計学的に顕著であった。
【0050】
本出願は、米国で出願された出願番号第60/402,051号を基礎としておりそれらの内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、眼アレルギーの症状を処置する、眼科用組成物及び方法を提供する。これらの組成物及び方法における主要な有効成分はタクロリムス、アスコマイシン及びラパマイシン、並びにそれらの誘導体のようなマクロライド化合物である。至適濃度及び投薬計画が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼アレルギーを罹患しているヒト患者の処置方法であって、該患者に約0.01%〜約0.1%のマクロライド化合物を含有する眼科用組成物を投与することを含む方法。
【請求項2】
該眼アレルギーがアレルギー性結膜炎である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該組成物が該マクロライド化合物を約0.03%〜約0.06%含有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
該マクロライド化合物組成物が、約0.03%の該マクロライド化合物を含有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
該マクロライド化合物がFK506である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該眼科用組成物が点眼剤である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該点眼剤がさらにポリビニルアルコールを含有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該点眼剤が約0.03%の該マクロライド化合物を含有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該点眼剤が1日約1回〜約4回投与される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
該マクロライド化合物が、下記式(I)を有する化合物またはその医薬上許容され得る塩である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法:
【化1】


(式中、RおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRの隣接する対は、各々独立して、
a)2つの隣接する水素原子からなる(Rは任意にアルキルである)、または
b)該対のそれぞれに結合している炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
は水素原子、ヒドロキシ、アルキルオキシ、あるいは保護されたヒドロキシであるか、またはRと共になってオキソを形成してもよく;
およびRは各々独立して、水素原子またはヒドロキシを表わし;
10は水素原子、アルキル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルキル、アルケニル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルケニル、またはオキソによって置換されたアルキルであり;
Xはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、または式−CHO−で表わされる基であり;
Yはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、または式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基であり;
11およびR12は各々独立して水素原子、アルキル、アリールまたはトシルを表わし;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22およびR23は各々独立して水素原子またはアルキルを表わし;
24は、任意に置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環であり;および
nは1または2を表わす。
【請求項11】
該マクロライド化合物が下記構造を有する、請求項10記載の方法:
【化2】

【請求項12】
約0.01%〜約0.1%のマクロライド化合物を含有する眼アレルギー処置の為の眼科用組成物。
【請求項13】
該眼アレルギーがアレルギー性結膜炎である、請求項12記載の眼科用組成物。
【請求項14】
該マクロライド化合物を約0.03%〜約0.06%含有する、請求項12又は13記載の眼科用組成物。
【請求項15】
該マクロライド化合物を約0.03%含有する、請求項14記載の眼科用組成物。
【請求項16】
該マクロライド化合物がFK506である、請求項12記載の眼科用組成物。
【請求項17】
点眼剤である、請求項12記載の眼科用組成物。
【請求項18】
該点眼剤がさらにポリビニルアルコールを含有する、請求項17記載の眼科用組成物。
【請求項19】
該点眼剤が約0.03%の該マクロライド化合物を含有する、請求項18記載の眼科用組成物。
【請求項20】
該点眼剤が1日あたり約1回〜約4回投与される、請求項19記載の眼科用組成物。
【請求項21】
該マクロライド化合物が、下記式(I)を有する化合物またはその医薬上許容され得る塩である、請求項12〜20のいずれか1項に記載の眼科用組成物:
【化3】


(式中、RおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRの隣接する対は、各々独立して、
a)2つの隣接する水素原子からなる(Rは任意にアルキルである)、または
b)該対のそれぞれに結合している炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
は水素原子、ヒドロキシ、アルキルオキシ、あるいは保護されたヒドロキシであるか、またはRと共になってオキソを形成してもよく;
およびRは各々独立して、水素原子またはヒドロキシを表わし;
10は水素原子、アルキル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルキル、アルケニル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルケニル、またはオキソによって置換されたアルキルであり;
Xはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、または式−CHO−で表わされる基であり;
Yはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、または式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基であり;
11およびR12は各々独立して水素原子、アルキル、アリールまたはトシルを表わし;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22およびR23は各々独立して水素原子またはアルキルを表わし;
24は、任意に置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環であり;および
nは1または2を表わす。
【請求項22】
該マクロライド化合物が下記構造を有する、請求項21記載の眼科用組成物:
【化4】

【請求項23】
眼アレルギーの処置の為の眼科用組成物を製造する為のマクロライド化合物の使用であって、該組成物が約0.01%〜約0.1%の該マクロライド化合物を含有する、使用。
【請求項24】
該眼アレルギーがアレルギー性結膜炎である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
該組成物が該マクロライド化合物を約0.03%〜約0.06%含有する、請求項23又は24記載の使用。
【請求項26】
該組成物が、約0.03%の該マクロライド化合物を含有する、請求項25記載の使用。
【請求項27】
該マクロライド化合物がFK506である、請求項23記載の使用。
【請求項28】
該眼科用組成物が点眼剤である、請求項23記載の使用。
【請求項29】
該点眼剤がさらにポリビニルアルコールを含有する、請求項28記載の使用。
【請求項30】
該点眼剤が約0.03%の該マクロライド化合物を含有する、請求項29記載の使用。
【請求項31】
該点眼剤が1日あたり約1回〜約4回投与される、請求項30記載の使用。
【請求項32】
該マクロライド化合物が、下記式(I)を有する化合物またはその医薬上許容され得る塩である、請求項23〜31のいずれか1項に記載の使用:
【化5】


(式中、RおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRの隣接する対は、各々独立して、
a)2つの隣接する水素原子からなる(Rは任意にアルキルである)、または
b)該対のそれぞれに結合している炭素原子どうしの間でもうひとつの結合を形成してもよく;
は水素原子、ヒドロキシ、アルキルオキシ、あるいは保護されたヒドロキシであるか、またはRと共になってオキソを形成してもよく;
およびRは各々独立して、水素原子またはヒドロキシを表わし;
10は水素原子、アルキル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルキル、アルケニル、1以上のヒドロキシによって置換されたアルケニル、またはオキソによって置換されたアルキルであり;
Xはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、または式−CHO−で表わされる基であり;
Yはオキソ、(水素原子、ヒドロキシ)、(水素原子、水素原子)、または式N−NR1112もしくはN−OR13で表わされる基であり;
11およびR12は各々独立して水素原子、アルキル、アリールまたはトシルを表わし;
13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22およびR23は各々独立して水素原子またはアルキルを表わし;
24は、任意に置換されていてもよい、1以上の複素原子を含み得る環であり;および
nは1または2を表わす。
【請求項33】
該マクロライド化合物が下記構造を有する化合物である、請求項32記載の使用:
【化6】

【請求項34】
請求項12〜22のいずれか1項に記載の眼科用組成物及びそれとともに記載物(該記載物は該組成物をアレルギー性結膜炎に使用し得るか使用すべきであることを記載している)を含む商業的パッケージ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−12071(P2011−12071A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203075(P2010−203075)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2004−527368(P2004−527368)の分割
【原出願日】平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願人】(505046949)スキャンポ ファーマシューティカルズ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】