アンカータイル、タイルユニット、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法
【課題】タイルの意匠性を損なうことがなく、タイル張りの施工が容易であって、且つ経時的にタイルが剥がれるのを確実に防止することができるアンカータイル、タイルユニット、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法を提供する。
【解決手段】貫通孔4を有するタイル2と、タイル2の貫通孔4に装着され、タイル2をアンカリングのためのアンカー3と、を備え、アンカー3はアンカー本体8と頭部7とから成り、頭部7はタイル2を押えると共にタイル2を装飾する形態を有している。
【解決手段】貫通孔4を有するタイル2と、タイル2の貫通孔4に装着され、タイル2をアンカリングのためのアンカー3と、を備え、アンカー3はアンカー本体8と頭部7とから成り、頭部7はタイル2を押えると共にタイル2を装飾する形態を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建物の外壁、内壁、床等の仕上げに用いられると共にタイルとアンカーから成るアンカータイル、タイルユニット、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイルおよびタイルの施工方法として、上下2箇所に斜め下向きの溝状を有するタイルを用い、躯体に塗り付けたモルタルに、斜め上向きの掛止め片を有する上下2つの受け金具を固定し、この2つの掛止め片に、タイルを掛け止めするようにして固定するものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−253848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなタイルおよびその施工方法では、モルタルに対し各タイル宛て2つの受け金具を取り付ける必要があり、タイル自体の施工は簡単であるが、タイル下地の施工に手間がかかり、全体として施工に手間がかかる問題があった。この解決方法として、タイルに貫通孔を成形し、タイルにアンカーを貫通させ、そのアンカリングの効果によりタイルの落下を防止する方法が考えられる。しかしながら、この場合、アンカーの頭部がタイル表面に露出するため、タイルの意匠性が損なわれることが想定される。
【0004】
本発明は、タイルの意匠性を損なうことがなく、タイル張りの施工が容易であって、且つ経時的にタイルが剥がれるのを確実に防止することができるアンカータイル、タイルユニット、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、貫通孔を有するタイルと、タイルの貫通孔に装着され、タイルをアンカリングのためのアンカーと、を備え、アンカーはアンカー本体と頭部とから成り、頭部はタイルを押えると共にタイルを装飾する形態を有していることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、タイルの貫通孔に装着されるアンカーにより、タイルをモルタルや躯体にアンカリングすれば、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。また、頭部がタイルを装飾する形態を有しているため、タイルと頭部とが意匠的に一体化しタイルの意匠性を損なうことが無い。なお、頭部は、タイルの意匠性を考慮して任意にデザインおよび設計をすることが可能である。また、貫通孔は、中央部に一つあるいは長手方向左右対称に2つ形成するようにしてもよい。かかる場合、これに合わせてアンカー本体を1つあるいは2つとする。
【0007】
この場合、頭部は、アンカー本体に対し着脱自在に装着されていることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、アンカーの頭部を付け替えることで、例えばタイル張りの壁面のデザインを自由にアレンジすることができる。すなわち、壁面の模様替えを簡単に行うことができる。
【0009】
この場合、貫通孔はストレート孔で構成され、頭部はタイルの表面から突出していることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、貫通孔を有するタイルを容易に製造することができ、且つタイルおよび頭部を含めた面が立体的に構成されるため、タイルに重厚感をもたせることができる。
【0011】
この場合、タイルは、貫通孔廻りに頭部が着座する座ぐり穴状の浅溝を有していることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、浅溝によりアンカーの頭部をタイルに沈み込ませるようにして設けることができる。これにより、アンカリング機能を損なうことなくタイルの意匠性を向上することができる。なお、浅溝作成時に浅溝の深さを調整することで、後述するタイル工事施工後に頭部がタイル表面から突出、没入あるいはタイルと頭部との表面を面一にすることができる。
【0013】
この場合、浅溝は、頭部の表面が前記タイルの表面と面一になる深さを有すると共に、頭部の平面形状と相補的形状を有していることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、アンカーの頭部を含め面一なタイル表面となるため、仕上げ状態を良好なものとすることができる。
【0015】
この場合、浅溝は、アンカーの頭部の一部が、タイルの表面から突出する深さを有していることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、壁の表面を立体的に形成することができ、且つタイルに重厚感をもたせることができる。
【0017】
この場合、アンカーの頭部の平面形状は、浅溝の平面形状と相補的形状を有しており、上記座ぐり穴の平面形状より小さく形成されていること、が好ましい。
【0018】
この構成によれば、浅溝製造時の形成誤差を吸収でき、且つタイルに重厚感をもたせることができる。
【0019】
この場合、アンカー本体は、外周面に凹凸を有するピン状部材で構成されていることが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、アンカー本体と躯体が互いに絡み合った状態となるため、経時的にタイルが剥がれるのを確実に防止することができる。
【0021】
この場合、アンカー本体を複数有し、これに対応して貫通孔を複数有していることが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、アンカー本体と躯体が強固に連結状態となるため、経時的にタイルが剥がれるのを確実に防止することができる。
【0023】
本発明のタイルユニットは、アンカータイルの複数個を、連結部材により並べて連結したことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、複数のタイルを効率良く施工することができる。
【0025】
本発明のタイルの手張り工法は、上記したアンカータイル用いて行うタイルの手張り工法であって、躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、タイルをモルタル上に手張りするタイル張り工程と、タイル張り工程の後、タイルを貫通させてアンカーをモルタルにアンカリングするアンカー装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、タイルをモルタル上に手張りし、このタイルを貫通させてアンカーをモルタルに押し入れるだけで、タイルの浮きや脱落を確実に防止できるタイル施工を、簡単且つ迅速に行うことができる。
【0027】
本発明の他のタイルの手張り工法は、上記したタイルユニット用いて行うタイルの手張り工法であって、躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、タイルユニットをモルタル上に手張りするタイル張り工程と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、タイルユニットをモルタル上に手張りするだけで、タイルの浮きや脱落を確実に防止できるタイル施工を、簡単且つ迅速に行うことができる。
【0029】
本発明のタイルの型枠先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット部材を、施工後のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからコンクリート用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明の他のタイルの型枠先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット部材を、施工前のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠を組み上げる型枠施工工程と、型枠施工工程の後、コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからコンクリート用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0031】
これらの構成によれば、タイルをコンクリート躯体に直付け(直張り)で簡単に施工することができると共に、打設したコンクリート躯体に、タイルをアンカリングするためのアンカーを埋め込むことができる。したがって、コンクリート躯体に直付けではあっても、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット工程とセット部材取付け工程とは、工程順を問うものではない。すなわち、相前後して行なわれればよく、また同時並行で行われてもよい。
【0032】
これらの場合、アンカータイルに代えて、上記のタイルユニットを用いることが、好ましい。
【0033】
この構成によれば、タイルセット工程を効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0034】
これらの場合、タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることが好ましい。
【0035】
この構成によれば、タイルのセットを効率良く行うことができる。なお、施工性を考慮し、発泡スチロール製の目地ますを用いることが好ましい。
【0036】
本発明のタイルのPC板先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルのPC板先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイルと共にタイルセット部材を、PC用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、PC用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからPC用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、タイルをPC(プレキャストコンクリート)板に直付け(直張り)で簡単に取り付けることができると共に、打設したコンクリート(PC)に、タイルをアンカリングするためのアンカーを埋め込むことができる。したがって、PC板に直付けではあっても、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット工程とセット部材取付け工程とは、工程順を問うものではない。すなわち、相前後して行なわれればよく、また同時並行で行われてもよい。
【0038】
これらの場合、アンカータイルに代えて、上記のタイルユニットを用いることが、好ましい。
【0039】
この構成によれば、タイルセット工程を効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0040】
この場合、タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることが好ましい。
【0041】
この構成によれば、タイルのセットを効率良く行うことができる。なお、作業性を考慮し、発泡スチロール製の目地ますを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
以上のように本発明のアンカータイル、タイルユニット、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法によれば、施工が容易であって、且つタイルの装飾を自由に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るアンカータイル1について説明する。図1に示すように、アンカータイル1は、貫通孔4を有するタイル2と、貫通孔4に装着されるアンカー3とから構成されている。また、タイル2の表面には、貫通孔4廻りに広く座ぐり穴状の浅溝5が形成されている。タイル2は、例えば、「二丁掛」や「三丁掛」等の大きさを有し、裏面側には裏あし6(JIS A 5209)が形成されている。貫通孔4は、タイルの正面視中央部に形成されており、これにタイル2をコンクリート躯体23やモルタル24にアンカリングのためのアンカー3が貫通装着されている。また、この貫通孔4の廻りには、アンカー3の頭部7が着座する浅溝5が凹形成されている。その浅溝5の外形は、頭部7と相補的形状に形成されており、またその浅溝5の深さは、頭部7の厚みと一致している。
【0044】
アンカー3は、タイル2とコンクリート躯体23やモルタル24にアンカリングするためのアンカー本体8と、タイル2表面を装飾する頭部7とから構成されており、頭部7とアンカー本体8とはステンレス等で一体に構成されている。アンカー本体8は、その外周面が全ねじ(いわゆる雄ネジ)状に形成され、且つ20〜30mmの長さに形成されている。頭部7は、板状に形成されると共にタイル2と融合するデザインを有し、タイル2を積極的に装飾する形態を有している。実施形態の頭部7は、横長の銘板(エンブレム)の形態を有している。また頭部7は、浅溝5の平面形状と相補的な平面形状を有しており、且つ浅溝5の深さと頭部7の厚みが合致する形状を有している。すなわち、タイル2にアンカー3を装着すると、タイル2表面と頭部7とが面一となるように浅溝5にアンカー3の頭部7が収まるようになっている(図2(a)参照)。
【0045】
なお、本実施形態では、アンカー本体8をいわゆる雄ネジで構成しているものを示しているが、コンクリート躯体23やモルタル24にタイル2をアンカリングできれば、この形状に限定されるものではなく、アンカー本体8の先端が拡開形状や二股形状などに形成されていてもよい(共に図示省略)。
【0046】
図1および図2(a)に示すように、アンカータイル1は、貫通孔4にタイル2表面からアンカー3を挿入し、頭部7を座ぐり穴状の浅溝5に着座させることで、タイル2に装着され、アンカータイル1を構成する。これらにより、後述するタイル工事施工後のタイル2および頭部7を含め面一なタイル2表面となるため、仕上げ状態を良好なものとすることができる。なお、タイル2に装着したアンカー3を接着剤等で固着しておくようにしてもよい。
【0047】
次に、図2(b)および(c)を参照して、第1実施形態の第1変形例に係るアンカータイル1について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ記載する。このアンカータイル1は、浅溝5の深さと、頭部7の厚さが異なるものであり、浅溝5は、タイル2にアンカー3を装着したとき、頭部7の略半分がタイル2表面から突出する深さを有している(図2(b)参照)。これにより、タイル2表面から頭部7がわずかに突出したデザインとなり、タイル2に重厚感をもたせることができる。なお、浅溝5を深く形成して頭部7が、浅溝5内に没入する構成としていても良い(図2(c)参照)。
【0048】
次に、図3を参照して、本実施形態の第2変形例に係るアンカータイル1について説明する。このアンカータイル1は、アンカー3の頭部7の外形形状が、浅溝5の外形形状より小さく形成されている。すなわち、アンカー3の頭部7の平面形状と浅溝5の平面形状とは、相似形状であって、アンカー3の頭部7がわずかに小さく形成されており、アンカー3をタイル2に装着したとき、浅溝5と頭部7に均一幅の間隙(クリアランス)Sが生ずるように設計されている。これにより、頭部7が浅溝5に縁どられたデザインとなりタイル2に重厚感をもたせることができる(図3(a)参照)。
【0049】
なお、この場合も第1変形例と同様に、タイル2にアンカー3を装着したとき、頭部7の半分がタイル2表面から突出する深さを有していても良い(図3(b)参照)。これにより、タイル2表面から頭部7がわずかに突出したデザインとなり、タイル2に重厚感をもたせることができる。また、浅溝5を深く形成し頭部7が、浅溝5内に没入する構成としていても良い(図3(c)参照)。
【0050】
次に図4を参照して、本発明の第3変形例に係るアンカータイル1を説明する。このアンカータイル1に装着されるアンカー3は、アンカー本体8に対し頭部7が脱着自在に構成されている。アンカー本体8の頭部7側には、頭部7に連結するための係止溝部(凹部)11が形成されており、頭部7のアンカー本体8側には、アンカー本体と連結するための係止突起(凸部)12が形成されている。係止突起12は、頭部7の表面中央に突設され、ネック部13と楕円球状の膨出部14とで一体に形成されている。一方、係止溝部11は、外周面に設けた4つの割りスリット15と、軸心に割りスリット15に連通するように設けた係止受け部16とで形成されている。係止突起12を係止溝部11に位置合わせして、頭部7をアンカー本体8に押し込むと、係止突起12の膨出部14が係止溝部11に係止され、頭部7がアンカー本体8に装着される。また、逆の手順でアンカー本体8に対し頭部7が係止解除される。これにより、アンカー本体8と頭部7とは着脱自在となるため、後述するタイルの手張り工法などによりタイル2工事が施工された後でも、ユーザが、使用用途に応じて、頭部7を付け替えることで、外壁の模様替えが可能となる。なお、この変形例のアンカー本体8は、絞り加工によりその外周面に凹凸を形成している。
【0051】
続いて、図5および図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るアンカータイル1ついて説明する。上記と同様、重複した記載を避けるべく、第一実施形態と異なる部分についてのみ記載する。このアンカータイル1は、浅溝5が無く、タイル2に装着されたアンカー3の頭部7はタイル2の表面に添設されるようになっている。アンカータイル1は、ストレートの2つのストレート貫通孔17を有するタイル2と、両ストレート貫通孔17に貫通装着されるアンカー3と、から構成されており、2つのストレート貫通孔17は、タイル2の長手方向左右対称に貫通形成されている。
【0052】
図5に示すように、アンカー3は、一対のアンカー本体8と、両アンカー本体8の基端に固着した頭部7と、で一体に形成されている。各アンカー本体8は、第1実施形態のアンカー本体8と同様に雄ネジ状に形成されている。頭部7も、第1実施形態と同様に、板状に形成されタイル2を装飾する形状を有している。なお、頭部7の平面形状は任意であり、少なくともタイル2の一部を覆っていればよい(図6(b)および(c)参照)。本実施形態の場合には、アンカー3をタイル2に装着すると、頭部7がタイル2の表面から突出する(図6(a)参照)。よって、タイル2に立体感を奏するように装飾でき、タイル2に重厚感をもたせることができる。なお、同図(c)に示す頭部7は、ロゴ等が記載されておらず、角部と面取りした板材で構成され、タイル2とは異なる色彩となるよう着色されている。
【0053】
なお、本実施形態では、ストレート貫通孔17が2つの場合を示したが、頭部7の平面形状が小さければ1つでもよい。また逆にストレート貫通孔17が3以上形成されていてもよい(共に図示省略)。
【0054】
また、上記した浅溝5を有する貫通孔4およびストレート貫通孔17は、共にタイル2の焼成前に形成してもよいし、焼成後にダイヤモンドビット等により穿孔してもよい。
【0055】
次に、図7を参照して、上記のアンカータイル1の複数個により構成されるタイルユニット21について説明する。このタイルユニット21は、図2に示すアンカータイル1(図3および図6のものは省略)を複数個並べて構成されている。すなわち、タイルユニット21は、台紙(連結部材)22上に、所定の割付けに従って複数のアンカータイル1を貼着したものである。この場合、台紙22には耐水性のシートが用いられ、最終的に台紙22を引き剥がすようになっている。なお、実施形態のタイルユニット21は、いわゆる表張りタイルユニット21であるが、裏張りタイルユニットとしてもよい(図示省略)。
【0056】
次に、図8を参照して、上記のタイル2を用いたタイル2の手張り工法について説明する。この手張り工法は、コンクリート躯体23の表面にモルタル24を塗付けるモルタル塗付け工程(同図(b)参照)と、タイル2をモルタル24上に手張りするタイル張り工程(同図(c)参照)と、タイル張り工程の後、タイル2を貫通させてアンカー3をモルタル24にアンカリングするアンカー装着工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0057】
モルタル塗付け工程では、アンカー本体8の長さを考慮して、コンクリート躯体23の表面(あるいはモルタル下地の表面)に20mm以上のモルタル24を塗付けるようにする。タイル張り工程では、塗付けたモルタル24を張付けモルタルとして、通し目地や馬踏み目地等の割付けにより多数のタイル2を手張りする。アンカー装着工程では、モルタル24が硬化する前に、各タイル2を貫通させてアンカー3を押入れモルタル24に埋め込むようにする。
【0058】
このようにして、タイル2の手張り工法による外壁の施工が完了し、モルタル24が硬化すると、タイル2は、モルタル24に接着されると共に、アンカー本体8によりモルタル24にアンカリングされる。これにより、経時的にタイル2が剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、アンカーを用いて、モルタル24をコンクリート躯体23にアンカリングしておくことが、より好ましい。
【0059】
特に図示しないが、上記のタイル2の手張り工法において、タイル2に代えて、上記のアンカータイル1を用いるようにしてもよい。かかる場合には、モルタル塗付け工程の後、アンカータイル1をモルタル24上に手張りするタイル張り工程を行って、作業を完了する。かかる場合にもアンカータイル1をモルタル24に埋め込むようにする。
【0060】
特に図示しないが、上記のタイル2の手張り工法において、アンカータイル1に代えて、上記のタイルユニット21を用いるようにしてもよい。かかる場合には、モルタル塗付け工程の後、タイルユニット21をモルタル24上に手張りするタイル張り工程を行って、作業を完了する。もっとも、タイルユニット21が表張りタイルユニット21の場合には、モルタル24が硬化した後、台紙22を引き剥がすようにする。このように、タイルユニット21を用いることにより、アンカー3の扱いが容易になると共に、作業の効率化を図ることができる。なお、タイルユニット21の運搬において、アンカー3の先端にプロテクタ(発泡スチロール)をもうけておくことが好ましい。
【0061】
次に、図9を参照して、上記のアンカータイル1を用いたタイル2の型枠先付け工法について説明する。この型枠先付け工法は、多数のアンカータイル1を所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材31に、多数のアンカータイル1をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル1と共にタイルセット部材31を、施工後のコンクリート用型枠32の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠32内にコンクリート33を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート33からコンクリート用型枠32と共にタイルセット部材31を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0062】
この場合、タイルセット部材31としては、目地ますおよびタイルユニット21のいずれかを用いることがこのましいが、実施形態のものでは、発泡スチロール製の目地ますを用いるようにしている。具体的には、タイルセット部材31のセット側の面には、アンカータイル1を通し目地等の所定の割付けに従ってセットするための多数のセット溝34が形成されており、各セット溝34は、タイル2が隙間なく収まるようにタイル2と略相補的形状に形成されている。
【0063】
タイルセット工程では、タイルセット部材31の各セット溝34に、アンカータイル1を、嵌め込むようにしてセットする。この状態では、タイルセット部材31のセット側面(目地となる部分)からタイル2の裏面側が突出した状態となる。セット部材取付け工程では、躯体(外壁)打設用のコンクリート用型枠32の内側に、接着剤や両面粘着テープにより、アンカータイル1付きのタイルセット部材31を固定する。コンクリート打設工程では、流し込んだコンクリート33を十分に締め固め、養生に移行する。セット部材除去工程では、先ずコンクリート用型枠32を外し、続いてタイルセット部材31を取り外す。
【0064】
このようにして、タイルセット部材31を外すと、打設したコンクリート躯体23の屋外側表面にタイル2が直付けされた状態となり、且つアンカー3により各アンカータイル1がコンクリート躯体23にアンカリングされた状態となる。これにより、コンクリート躯体23に直付けではあっても、タイル2が経時的に剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット部材31を、コンクリート用型枠32に固定してからこれにアンカータイル1をセットしてもよい。また、セット部材取付け工程の直後に鉄筋35の配筋を行うようにする。
【0065】
次に、図10を参照して、上記の型枠先付け工法の変形例について説明する。この変形例の型枠先付け工法では、タイルセット部材31に、多数のアンカータイル1をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル1と共にタイルセット部材31を、施工前のコンクリート用型枠32の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠32を組み上げる型枠施工工程(同図(c)参照)と、型枠施工工程の後、コンクリート用型枠32内にコンクリート33を打設するコンクリート打設工程(同図(d)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート33からコンクリート用型枠32と共にタイルセット部材31を取り外すセット部材除去工程(同図(e)参照)と、を備えている。
【0066】
すなわち、この変形例では、コンクリート用型枠32を組み上げる(施工)前に、コンクリート用型枠32にアンカータイル1付きのタイルセット部材31を固定するようにしている。その後、タイルセット部材31を固定したコンクリート用型枠32を組み上げてコンクリート33を打設する。この構成でも、タイルセット部材31を外すと、打設したコンクリート躯体23の屋外側表面にタイル2が直付けされた状態となり、且つアンカー3により各アンカータイル1がコンクリート躯体23にアンカリングされた状態となる。なお、この場合も、タイルセット部材31を、コンクリート用型枠32に固定してからこれにアンカータイル1をセットしてもよい。
【0067】
また、これらの型枠先付け工法において、アンカータイル1に代えて、上記のタイルユニット21を用いるようにしてもよい。このようにすれば、タイルセット工程を極めて効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0068】
次に、図11を参照して、上記のアンカータイル1を用いたタイル2のPC板先付け工法について説明する。このPC板先付け工法は、上記したタイルセット部材31を用い、タイルセット部材31に、多数のアンカータイル1をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル1と共にタイルセット部材31を、PC用型枠36の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、PC用型枠36内にコンクリート33を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート33からPC用型枠36と共にタイルセット部材31を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0069】
この場合も、上記の型枠先付け工法と同様に、タイルセット部材31として発泡スチロール製の目地ますが用いられ、タイルセット部材31のセット側の面には、アンカータイル1を通し目地等の所定の割付けに従ってセットするための多数のセット溝34が形成されている。
【0070】
タイルセット工程では、タイルセット部材31の各セット溝34に、アンカー3を装着したアンカータイル1を、嵌め込むようにしてセットする。この状態では、タイルセット部材31のセット側面(目地となる部分)からタイル2の裏面側が突出した状態となる。セット部材取付け工程では、PC板(外壁)打設用のPC用型枠36の内側に、接着等により、アンカータイル1付きのタイルセット部材31を固定する。コンクリート打設工程では、流し込んだコンクリート33を十分に締め固め、養生に移行する。セット部材除去工程では、PC用型枠36を表裏反転した後、PC用型枠36を外し、続いてタイルセット部材31を取り外す。
【0071】
このようにして、タイルセット部材31を外すと、打設したPC板37の屋外側となる表面にタイル2が直付けされた状態となり、且つアンカー3により各アンカータイル1がPC板37にアンカリングされた状態となる。これにより、PC板37に直付けではあっても、タイル2が経時的に剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、この工法は、ALC板にも適用できることは、言うまでもない。
【0072】
次に、図12を参照して、上記のPC板先付け工法の変形例について説明する。この変形例のPC板先付け工法では、タイルセット部材31を、PC用型枠36の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(a)参照)と、セット部材取付け工程の後、タイルセット部材31に多数のアンカータイル1をセットするタイルセット工程(同図(b)参照)と、タイルセット工程の後、PC用型枠36内にコンクリート33を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート33からPC用型枠36と共にタイルセット部材31を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0073】
すなわち、この変形例では、タイルセット部材31をPC用型枠36に固定し、このタイルセット部材31にアンカータイル1をセットするようにしている。この構成でも、タイルセット部材31を外すと、打設したPC板37の屋外側となる表面にタイル2が直付けされた状態となり、且つアンカー3により各アンカータイル1がPC板37にアンカリングされた状態となる。
【0074】
そして、これらのPC板先付け工法においても、アンカータイル1に代えて、上記のタイルユニット21を用いることが好ましい。このようにすれば、タイルセット工程を極めて効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態にかかるタイルおよびアンカーの斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかるアンカータイルの正面図および断面図である。
【図3】第1実施形態にかかるアンカータイルの正面図および断面図である。
【図4】(a)アンカーの頭部およびアンカー本体の分離した断面図であり、(b)アンカー本体の断面図である。
【図5】第2実施形態にかかるタイルおよびアンカーの斜視図である。
【図6】第2実施形態にかかるアンカータイルの正面図および断面図である。
【図7】実施形態に係るユニットタイルの断面図である。
【図8】アンカータイルを用いたタイルの手張り工法の説明図である。
【図9】アンカータイルを用いたタイルの型枠先付け工法の説明図である。
【図10】変形例に係るタイルの型枠先付け工法の説明図である。
【図11】アンカータイルを用いたタイルのPC板先付け工法の説明図である。
【図12】変形例に係るタイルのPC板先付け工法の説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1…アンカータイル 2…タイル 4…貫通孔 3…アンカー 5…浅溝 8…アンカー本体 7…頭部 21…タイルユニット 23…コンクリート躯体 24…モルタル 31…タイルセット部材 32…コンクリート用型枠 34…セット溝 33…コンクリート 37…PC板 36…PC用型枠
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建物の外壁、内壁、床等の仕上げに用いられると共にタイルとアンカーから成るアンカータイル、タイルユニット、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイルおよびタイルの施工方法として、上下2箇所に斜め下向きの溝状を有するタイルを用い、躯体に塗り付けたモルタルに、斜め上向きの掛止め片を有する上下2つの受け金具を固定し、この2つの掛止め片に、タイルを掛け止めするようにして固定するものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−253848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなタイルおよびその施工方法では、モルタルに対し各タイル宛て2つの受け金具を取り付ける必要があり、タイル自体の施工は簡単であるが、タイル下地の施工に手間がかかり、全体として施工に手間がかかる問題があった。この解決方法として、タイルに貫通孔を成形し、タイルにアンカーを貫通させ、そのアンカリングの効果によりタイルの落下を防止する方法が考えられる。しかしながら、この場合、アンカーの頭部がタイル表面に露出するため、タイルの意匠性が損なわれることが想定される。
【0004】
本発明は、タイルの意匠性を損なうことがなく、タイル張りの施工が容易であって、且つ経時的にタイルが剥がれるのを確実に防止することができるアンカータイル、タイルユニット、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、貫通孔を有するタイルと、タイルの貫通孔に装着され、タイルをアンカリングのためのアンカーと、を備え、アンカーはアンカー本体と頭部とから成り、頭部はタイルを押えると共にタイルを装飾する形態を有していることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、タイルの貫通孔に装着されるアンカーにより、タイルをモルタルや躯体にアンカリングすれば、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。また、頭部がタイルを装飾する形態を有しているため、タイルと頭部とが意匠的に一体化しタイルの意匠性を損なうことが無い。なお、頭部は、タイルの意匠性を考慮して任意にデザインおよび設計をすることが可能である。また、貫通孔は、中央部に一つあるいは長手方向左右対称に2つ形成するようにしてもよい。かかる場合、これに合わせてアンカー本体を1つあるいは2つとする。
【0007】
この場合、頭部は、アンカー本体に対し着脱自在に装着されていることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、アンカーの頭部を付け替えることで、例えばタイル張りの壁面のデザインを自由にアレンジすることができる。すなわち、壁面の模様替えを簡単に行うことができる。
【0009】
この場合、貫通孔はストレート孔で構成され、頭部はタイルの表面から突出していることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、貫通孔を有するタイルを容易に製造することができ、且つタイルおよび頭部を含めた面が立体的に構成されるため、タイルに重厚感をもたせることができる。
【0011】
この場合、タイルは、貫通孔廻りに頭部が着座する座ぐり穴状の浅溝を有していることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、浅溝によりアンカーの頭部をタイルに沈み込ませるようにして設けることができる。これにより、アンカリング機能を損なうことなくタイルの意匠性を向上することができる。なお、浅溝作成時に浅溝の深さを調整することで、後述するタイル工事施工後に頭部がタイル表面から突出、没入あるいはタイルと頭部との表面を面一にすることができる。
【0013】
この場合、浅溝は、頭部の表面が前記タイルの表面と面一になる深さを有すると共に、頭部の平面形状と相補的形状を有していることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、アンカーの頭部を含め面一なタイル表面となるため、仕上げ状態を良好なものとすることができる。
【0015】
この場合、浅溝は、アンカーの頭部の一部が、タイルの表面から突出する深さを有していることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、壁の表面を立体的に形成することができ、且つタイルに重厚感をもたせることができる。
【0017】
この場合、アンカーの頭部の平面形状は、浅溝の平面形状と相補的形状を有しており、上記座ぐり穴の平面形状より小さく形成されていること、が好ましい。
【0018】
この構成によれば、浅溝製造時の形成誤差を吸収でき、且つタイルに重厚感をもたせることができる。
【0019】
この場合、アンカー本体は、外周面に凹凸を有するピン状部材で構成されていることが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、アンカー本体と躯体が互いに絡み合った状態となるため、経時的にタイルが剥がれるのを確実に防止することができる。
【0021】
この場合、アンカー本体を複数有し、これに対応して貫通孔を複数有していることが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、アンカー本体と躯体が強固に連結状態となるため、経時的にタイルが剥がれるのを確実に防止することができる。
【0023】
本発明のタイルユニットは、アンカータイルの複数個を、連結部材により並べて連結したことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、複数のタイルを効率良く施工することができる。
【0025】
本発明のタイルの手張り工法は、上記したアンカータイル用いて行うタイルの手張り工法であって、躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、タイルをモルタル上に手張りするタイル張り工程と、タイル張り工程の後、タイルを貫通させてアンカーをモルタルにアンカリングするアンカー装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、タイルをモルタル上に手張りし、このタイルを貫通させてアンカーをモルタルに押し入れるだけで、タイルの浮きや脱落を確実に防止できるタイル施工を、簡単且つ迅速に行うことができる。
【0027】
本発明の他のタイルの手張り工法は、上記したタイルユニット用いて行うタイルの手張り工法であって、躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、タイルユニットをモルタル上に手張りするタイル張り工程と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、タイルユニットをモルタル上に手張りするだけで、タイルの浮きや脱落を確実に防止できるタイル施工を、簡単且つ迅速に行うことができる。
【0029】
本発明のタイルの型枠先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット部材を、施工後のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからコンクリート用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明の他のタイルの型枠先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット部材を、施工前のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠を組み上げる型枠施工工程と、型枠施工工程の後、コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからコンクリート用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0031】
これらの構成によれば、タイルをコンクリート躯体に直付け(直張り)で簡単に施工することができると共に、打設したコンクリート躯体に、タイルをアンカリングするためのアンカーを埋め込むことができる。したがって、コンクリート躯体に直付けではあっても、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット工程とセット部材取付け工程とは、工程順を問うものではない。すなわち、相前後して行なわれればよく、また同時並行で行われてもよい。
【0032】
これらの場合、アンカータイルに代えて、上記のタイルユニットを用いることが、好ましい。
【0033】
この構成によれば、タイルセット工程を効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0034】
これらの場合、タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることが好ましい。
【0035】
この構成によれば、タイルのセットを効率良く行うことができる。なお、施工性を考慮し、発泡スチロール製の目地ますを用いることが好ましい。
【0036】
本発明のタイルのPC板先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルのPC板先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイルと共にタイルセット部材を、PC用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、PC用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからPC用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、タイルをPC(プレキャストコンクリート)板に直付け(直張り)で簡単に取り付けることができると共に、打設したコンクリート(PC)に、タイルをアンカリングするためのアンカーを埋め込むことができる。したがって、PC板に直付けではあっても、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット工程とセット部材取付け工程とは、工程順を問うものではない。すなわち、相前後して行なわれればよく、また同時並行で行われてもよい。
【0038】
これらの場合、アンカータイルに代えて、上記のタイルユニットを用いることが、好ましい。
【0039】
この構成によれば、タイルセット工程を効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0040】
この場合、タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることが好ましい。
【0041】
この構成によれば、タイルのセットを効率良く行うことができる。なお、作業性を考慮し、発泡スチロール製の目地ますを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
以上のように本発明のアンカータイル、タイルユニット、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法によれば、施工が容易であって、且つタイルの装飾を自由に変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るアンカータイル1について説明する。図1に示すように、アンカータイル1は、貫通孔4を有するタイル2と、貫通孔4に装着されるアンカー3とから構成されている。また、タイル2の表面には、貫通孔4廻りに広く座ぐり穴状の浅溝5が形成されている。タイル2は、例えば、「二丁掛」や「三丁掛」等の大きさを有し、裏面側には裏あし6(JIS A 5209)が形成されている。貫通孔4は、タイルの正面視中央部に形成されており、これにタイル2をコンクリート躯体23やモルタル24にアンカリングのためのアンカー3が貫通装着されている。また、この貫通孔4の廻りには、アンカー3の頭部7が着座する浅溝5が凹形成されている。その浅溝5の外形は、頭部7と相補的形状に形成されており、またその浅溝5の深さは、頭部7の厚みと一致している。
【0044】
アンカー3は、タイル2とコンクリート躯体23やモルタル24にアンカリングするためのアンカー本体8と、タイル2表面を装飾する頭部7とから構成されており、頭部7とアンカー本体8とはステンレス等で一体に構成されている。アンカー本体8は、その外周面が全ねじ(いわゆる雄ネジ)状に形成され、且つ20〜30mmの長さに形成されている。頭部7は、板状に形成されると共にタイル2と融合するデザインを有し、タイル2を積極的に装飾する形態を有している。実施形態の頭部7は、横長の銘板(エンブレム)の形態を有している。また頭部7は、浅溝5の平面形状と相補的な平面形状を有しており、且つ浅溝5の深さと頭部7の厚みが合致する形状を有している。すなわち、タイル2にアンカー3を装着すると、タイル2表面と頭部7とが面一となるように浅溝5にアンカー3の頭部7が収まるようになっている(図2(a)参照)。
【0045】
なお、本実施形態では、アンカー本体8をいわゆる雄ネジで構成しているものを示しているが、コンクリート躯体23やモルタル24にタイル2をアンカリングできれば、この形状に限定されるものではなく、アンカー本体8の先端が拡開形状や二股形状などに形成されていてもよい(共に図示省略)。
【0046】
図1および図2(a)に示すように、アンカータイル1は、貫通孔4にタイル2表面からアンカー3を挿入し、頭部7を座ぐり穴状の浅溝5に着座させることで、タイル2に装着され、アンカータイル1を構成する。これらにより、後述するタイル工事施工後のタイル2および頭部7を含め面一なタイル2表面となるため、仕上げ状態を良好なものとすることができる。なお、タイル2に装着したアンカー3を接着剤等で固着しておくようにしてもよい。
【0047】
次に、図2(b)および(c)を参照して、第1実施形態の第1変形例に係るアンカータイル1について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ記載する。このアンカータイル1は、浅溝5の深さと、頭部7の厚さが異なるものであり、浅溝5は、タイル2にアンカー3を装着したとき、頭部7の略半分がタイル2表面から突出する深さを有している(図2(b)参照)。これにより、タイル2表面から頭部7がわずかに突出したデザインとなり、タイル2に重厚感をもたせることができる。なお、浅溝5を深く形成して頭部7が、浅溝5内に没入する構成としていても良い(図2(c)参照)。
【0048】
次に、図3を参照して、本実施形態の第2変形例に係るアンカータイル1について説明する。このアンカータイル1は、アンカー3の頭部7の外形形状が、浅溝5の外形形状より小さく形成されている。すなわち、アンカー3の頭部7の平面形状と浅溝5の平面形状とは、相似形状であって、アンカー3の頭部7がわずかに小さく形成されており、アンカー3をタイル2に装着したとき、浅溝5と頭部7に均一幅の間隙(クリアランス)Sが生ずるように設計されている。これにより、頭部7が浅溝5に縁どられたデザインとなりタイル2に重厚感をもたせることができる(図3(a)参照)。
【0049】
なお、この場合も第1変形例と同様に、タイル2にアンカー3を装着したとき、頭部7の半分がタイル2表面から突出する深さを有していても良い(図3(b)参照)。これにより、タイル2表面から頭部7がわずかに突出したデザインとなり、タイル2に重厚感をもたせることができる。また、浅溝5を深く形成し頭部7が、浅溝5内に没入する構成としていても良い(図3(c)参照)。
【0050】
次に図4を参照して、本発明の第3変形例に係るアンカータイル1を説明する。このアンカータイル1に装着されるアンカー3は、アンカー本体8に対し頭部7が脱着自在に構成されている。アンカー本体8の頭部7側には、頭部7に連結するための係止溝部(凹部)11が形成されており、頭部7のアンカー本体8側には、アンカー本体と連結するための係止突起(凸部)12が形成されている。係止突起12は、頭部7の表面中央に突設され、ネック部13と楕円球状の膨出部14とで一体に形成されている。一方、係止溝部11は、外周面に設けた4つの割りスリット15と、軸心に割りスリット15に連通するように設けた係止受け部16とで形成されている。係止突起12を係止溝部11に位置合わせして、頭部7をアンカー本体8に押し込むと、係止突起12の膨出部14が係止溝部11に係止され、頭部7がアンカー本体8に装着される。また、逆の手順でアンカー本体8に対し頭部7が係止解除される。これにより、アンカー本体8と頭部7とは着脱自在となるため、後述するタイルの手張り工法などによりタイル2工事が施工された後でも、ユーザが、使用用途に応じて、頭部7を付け替えることで、外壁の模様替えが可能となる。なお、この変形例のアンカー本体8は、絞り加工によりその外周面に凹凸を形成している。
【0051】
続いて、図5および図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るアンカータイル1ついて説明する。上記と同様、重複した記載を避けるべく、第一実施形態と異なる部分についてのみ記載する。このアンカータイル1は、浅溝5が無く、タイル2に装着されたアンカー3の頭部7はタイル2の表面に添設されるようになっている。アンカータイル1は、ストレートの2つのストレート貫通孔17を有するタイル2と、両ストレート貫通孔17に貫通装着されるアンカー3と、から構成されており、2つのストレート貫通孔17は、タイル2の長手方向左右対称に貫通形成されている。
【0052】
図5に示すように、アンカー3は、一対のアンカー本体8と、両アンカー本体8の基端に固着した頭部7と、で一体に形成されている。各アンカー本体8は、第1実施形態のアンカー本体8と同様に雄ネジ状に形成されている。頭部7も、第1実施形態と同様に、板状に形成されタイル2を装飾する形状を有している。なお、頭部7の平面形状は任意であり、少なくともタイル2の一部を覆っていればよい(図6(b)および(c)参照)。本実施形態の場合には、アンカー3をタイル2に装着すると、頭部7がタイル2の表面から突出する(図6(a)参照)。よって、タイル2に立体感を奏するように装飾でき、タイル2に重厚感をもたせることができる。なお、同図(c)に示す頭部7は、ロゴ等が記載されておらず、角部と面取りした板材で構成され、タイル2とは異なる色彩となるよう着色されている。
【0053】
なお、本実施形態では、ストレート貫通孔17が2つの場合を示したが、頭部7の平面形状が小さければ1つでもよい。また逆にストレート貫通孔17が3以上形成されていてもよい(共に図示省略)。
【0054】
また、上記した浅溝5を有する貫通孔4およびストレート貫通孔17は、共にタイル2の焼成前に形成してもよいし、焼成後にダイヤモンドビット等により穿孔してもよい。
【0055】
次に、図7を参照して、上記のアンカータイル1の複数個により構成されるタイルユニット21について説明する。このタイルユニット21は、図2に示すアンカータイル1(図3および図6のものは省略)を複数個並べて構成されている。すなわち、タイルユニット21は、台紙(連結部材)22上に、所定の割付けに従って複数のアンカータイル1を貼着したものである。この場合、台紙22には耐水性のシートが用いられ、最終的に台紙22を引き剥がすようになっている。なお、実施形態のタイルユニット21は、いわゆる表張りタイルユニット21であるが、裏張りタイルユニットとしてもよい(図示省略)。
【0056】
次に、図8を参照して、上記のタイル2を用いたタイル2の手張り工法について説明する。この手張り工法は、コンクリート躯体23の表面にモルタル24を塗付けるモルタル塗付け工程(同図(b)参照)と、タイル2をモルタル24上に手張りするタイル張り工程(同図(c)参照)と、タイル張り工程の後、タイル2を貫通させてアンカー3をモルタル24にアンカリングするアンカー装着工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0057】
モルタル塗付け工程では、アンカー本体8の長さを考慮して、コンクリート躯体23の表面(あるいはモルタル下地の表面)に20mm以上のモルタル24を塗付けるようにする。タイル張り工程では、塗付けたモルタル24を張付けモルタルとして、通し目地や馬踏み目地等の割付けにより多数のタイル2を手張りする。アンカー装着工程では、モルタル24が硬化する前に、各タイル2を貫通させてアンカー3を押入れモルタル24に埋め込むようにする。
【0058】
このようにして、タイル2の手張り工法による外壁の施工が完了し、モルタル24が硬化すると、タイル2は、モルタル24に接着されると共に、アンカー本体8によりモルタル24にアンカリングされる。これにより、経時的にタイル2が剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、アンカーを用いて、モルタル24をコンクリート躯体23にアンカリングしておくことが、より好ましい。
【0059】
特に図示しないが、上記のタイル2の手張り工法において、タイル2に代えて、上記のアンカータイル1を用いるようにしてもよい。かかる場合には、モルタル塗付け工程の後、アンカータイル1をモルタル24上に手張りするタイル張り工程を行って、作業を完了する。かかる場合にもアンカータイル1をモルタル24に埋め込むようにする。
【0060】
特に図示しないが、上記のタイル2の手張り工法において、アンカータイル1に代えて、上記のタイルユニット21を用いるようにしてもよい。かかる場合には、モルタル塗付け工程の後、タイルユニット21をモルタル24上に手張りするタイル張り工程を行って、作業を完了する。もっとも、タイルユニット21が表張りタイルユニット21の場合には、モルタル24が硬化した後、台紙22を引き剥がすようにする。このように、タイルユニット21を用いることにより、アンカー3の扱いが容易になると共に、作業の効率化を図ることができる。なお、タイルユニット21の運搬において、アンカー3の先端にプロテクタ(発泡スチロール)をもうけておくことが好ましい。
【0061】
次に、図9を参照して、上記のアンカータイル1を用いたタイル2の型枠先付け工法について説明する。この型枠先付け工法は、多数のアンカータイル1を所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材31に、多数のアンカータイル1をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル1と共にタイルセット部材31を、施工後のコンクリート用型枠32の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠32内にコンクリート33を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート33からコンクリート用型枠32と共にタイルセット部材31を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0062】
この場合、タイルセット部材31としては、目地ますおよびタイルユニット21のいずれかを用いることがこのましいが、実施形態のものでは、発泡スチロール製の目地ますを用いるようにしている。具体的には、タイルセット部材31のセット側の面には、アンカータイル1を通し目地等の所定の割付けに従ってセットするための多数のセット溝34が形成されており、各セット溝34は、タイル2が隙間なく収まるようにタイル2と略相補的形状に形成されている。
【0063】
タイルセット工程では、タイルセット部材31の各セット溝34に、アンカータイル1を、嵌め込むようにしてセットする。この状態では、タイルセット部材31のセット側面(目地となる部分)からタイル2の裏面側が突出した状態となる。セット部材取付け工程では、躯体(外壁)打設用のコンクリート用型枠32の内側に、接着剤や両面粘着テープにより、アンカータイル1付きのタイルセット部材31を固定する。コンクリート打設工程では、流し込んだコンクリート33を十分に締め固め、養生に移行する。セット部材除去工程では、先ずコンクリート用型枠32を外し、続いてタイルセット部材31を取り外す。
【0064】
このようにして、タイルセット部材31を外すと、打設したコンクリート躯体23の屋外側表面にタイル2が直付けされた状態となり、且つアンカー3により各アンカータイル1がコンクリート躯体23にアンカリングされた状態となる。これにより、コンクリート躯体23に直付けではあっても、タイル2が経時的に剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット部材31を、コンクリート用型枠32に固定してからこれにアンカータイル1をセットしてもよい。また、セット部材取付け工程の直後に鉄筋35の配筋を行うようにする。
【0065】
次に、図10を参照して、上記の型枠先付け工法の変形例について説明する。この変形例の型枠先付け工法では、タイルセット部材31に、多数のアンカータイル1をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル1と共にタイルセット部材31を、施工前のコンクリート用型枠32の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠32を組み上げる型枠施工工程(同図(c)参照)と、型枠施工工程の後、コンクリート用型枠32内にコンクリート33を打設するコンクリート打設工程(同図(d)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート33からコンクリート用型枠32と共にタイルセット部材31を取り外すセット部材除去工程(同図(e)参照)と、を備えている。
【0066】
すなわち、この変形例では、コンクリート用型枠32を組み上げる(施工)前に、コンクリート用型枠32にアンカータイル1付きのタイルセット部材31を固定するようにしている。その後、タイルセット部材31を固定したコンクリート用型枠32を組み上げてコンクリート33を打設する。この構成でも、タイルセット部材31を外すと、打設したコンクリート躯体23の屋外側表面にタイル2が直付けされた状態となり、且つアンカー3により各アンカータイル1がコンクリート躯体23にアンカリングされた状態となる。なお、この場合も、タイルセット部材31を、コンクリート用型枠32に固定してからこれにアンカータイル1をセットしてもよい。
【0067】
また、これらの型枠先付け工法において、アンカータイル1に代えて、上記のタイルユニット21を用いるようにしてもよい。このようにすれば、タイルセット工程を極めて効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0068】
次に、図11を参照して、上記のアンカータイル1を用いたタイル2のPC板先付け工法について説明する。このPC板先付け工法は、上記したタイルセット部材31を用い、タイルセット部材31に、多数のアンカータイル1をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル1と共にタイルセット部材31を、PC用型枠36の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、PC用型枠36内にコンクリート33を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート33からPC用型枠36と共にタイルセット部材31を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0069】
この場合も、上記の型枠先付け工法と同様に、タイルセット部材31として発泡スチロール製の目地ますが用いられ、タイルセット部材31のセット側の面には、アンカータイル1を通し目地等の所定の割付けに従ってセットするための多数のセット溝34が形成されている。
【0070】
タイルセット工程では、タイルセット部材31の各セット溝34に、アンカー3を装着したアンカータイル1を、嵌め込むようにしてセットする。この状態では、タイルセット部材31のセット側面(目地となる部分)からタイル2の裏面側が突出した状態となる。セット部材取付け工程では、PC板(外壁)打設用のPC用型枠36の内側に、接着等により、アンカータイル1付きのタイルセット部材31を固定する。コンクリート打設工程では、流し込んだコンクリート33を十分に締め固め、養生に移行する。セット部材除去工程では、PC用型枠36を表裏反転した後、PC用型枠36を外し、続いてタイルセット部材31を取り外す。
【0071】
このようにして、タイルセット部材31を外すと、打設したPC板37の屋外側となる表面にタイル2が直付けされた状態となり、且つアンカー3により各アンカータイル1がPC板37にアンカリングされた状態となる。これにより、PC板37に直付けではあっても、タイル2が経時的に剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、この工法は、ALC板にも適用できることは、言うまでもない。
【0072】
次に、図12を参照して、上記のPC板先付け工法の変形例について説明する。この変形例のPC板先付け工法では、タイルセット部材31を、PC用型枠36の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(a)参照)と、セット部材取付け工程の後、タイルセット部材31に多数のアンカータイル1をセットするタイルセット工程(同図(b)参照)と、タイルセット工程の後、PC用型枠36内にコンクリート33を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート33からPC用型枠36と共にタイルセット部材31を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0073】
すなわち、この変形例では、タイルセット部材31をPC用型枠36に固定し、このタイルセット部材31にアンカータイル1をセットするようにしている。この構成でも、タイルセット部材31を外すと、打設したPC板37の屋外側となる表面にタイル2が直付けされた状態となり、且つアンカー3により各アンカータイル1がPC板37にアンカリングされた状態となる。
【0074】
そして、これらのPC板先付け工法においても、アンカータイル1に代えて、上記のタイルユニット21を用いることが好ましい。このようにすれば、タイルセット工程を極めて効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態にかかるタイルおよびアンカーの斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかるアンカータイルの正面図および断面図である。
【図3】第1実施形態にかかるアンカータイルの正面図および断面図である。
【図4】(a)アンカーの頭部およびアンカー本体の分離した断面図であり、(b)アンカー本体の断面図である。
【図5】第2実施形態にかかるタイルおよびアンカーの斜視図である。
【図6】第2実施形態にかかるアンカータイルの正面図および断面図である。
【図7】実施形態に係るユニットタイルの断面図である。
【図8】アンカータイルを用いたタイルの手張り工法の説明図である。
【図9】アンカータイルを用いたタイルの型枠先付け工法の説明図である。
【図10】変形例に係るタイルの型枠先付け工法の説明図である。
【図11】アンカータイルを用いたタイルのPC板先付け工法の説明図である。
【図12】変形例に係るタイルのPC板先付け工法の説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1…アンカータイル 2…タイル 4…貫通孔 3…アンカー 5…浅溝 8…アンカー本体 7…頭部 21…タイルユニット 23…コンクリート躯体 24…モルタル 31…タイルセット部材 32…コンクリート用型枠 34…セット溝 33…コンクリート 37…PC板 36…PC用型枠
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するタイルと、
前記タイルの前記貫通孔に装着され、前記タイルをアンカリングのためのアンカーと、を備え、
前記アンカーはアンカー本体と頭部とから成り、前記頭部は前記タイルを押えると共に前記タイルを装飾する形態を有していることを特徴とするアンカータイル。
【請求項2】
前記頭部は、前記アンカー本体に対し着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のアンカータイル。
【請求項3】
前記貫通孔はストレート孔で構成され、前記頭部は前記タイルの表面から突出していることを特徴とする請求項1または2に記載のアンカータイル。
【請求項4】
前記タイルは、前記貫通孔廻りに前記頭部が着座する座ぐり穴状の浅溝を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のアンカータイル。
【請求項5】
前記浅溝は、前記頭部の表面が前記タイルの表面と面一になる深さを有すると共に、前記頭部の平面形状と相補的形状を有していることを特徴としている請求項4に記載のアンカータイル。
【請求項6】
前記浅溝は、前記頭部の一部が前記タイルの表面から突出する深さを有すると共に、前記頭部の平面形状と相補的形状を有していることを特徴としている請求項4に記載のアンカータイル。
【請求項7】
前記頭部の平面形状は、前記浅溝の平面形状と相補的形状であって、前記浅溝の平面形状より小さく形成されていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のアンカータイル。
【請求項8】
前記アンカー本体は、外周面に凹凸を有するピン状部材で構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のアンカータイル。
【請求項9】
前記アンカー本体を複数有し、これに対応して前記貫通孔を複数有していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のアンカータイル。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の前記アンカータイルの複数個を、連結部材により並べて連結したことを特徴とするタイルユニット。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイル用いて行うタイルの手張り工法であって、
躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、
前記タイルを前記モルタル上に手張りするタイル張り工程と、
前記タイル張り工程の後、前記タイルを貫通させて前記アンカーを前記モルタルにアンカリングするアンカー装着工程と、を備えたことを特徴とするタイルの手張り工法。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイル用いて行うタイルの手張り工法であって、
躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、
前記アンカーを前記モルタルにアンカリングするようにして、前記アンカータイルを前記モルタル上に手張りするアンカータイル張り工程と、備えたことを特徴とするタイルの手張り工法。
【請求項13】
請求項10に記載のタイルユニット用いて行うタイルの手張り工法であって、
躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、
前記タイルユニットを前記モルタル上に手張りするタイル張り工程と、を備えたことを特徴とするタイルの手張り工法。
【請求項14】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、施工後のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記コンクリート用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルの型枠先付け工法。
【請求項15】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、施工前のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記コンクリート用型枠を組み上げる型枠施工工程と、
前記型枠施工工程の後、前記コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記コンクリート用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルの型枠先付け工法。
【請求項16】
前記アンカータイルに代えて、請求項10に記載のタイルユニットを用いることを特徴とする請求項14または15に記載のタイルの型枠先付け工法。
【請求項17】
前記タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることを特徴とする請求項14ないし16のいずれかに記載のタイルの型枠先付け工法。
【請求項18】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルのPC板先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、PC用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記PC用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記PC用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルのPC板先付け工法。
【請求項19】
前記アンカータイルに代えて、請求項10に記載のタイルユニットを用いることを特徴とする請求項18に記載のタイルのPC板先付け工法。
【請求項20】
前記タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることを特徴とする請求項18または19に記載のタイルのPC板先付け工法。
【請求項1】
貫通孔を有するタイルと、
前記タイルの前記貫通孔に装着され、前記タイルをアンカリングのためのアンカーと、を備え、
前記アンカーはアンカー本体と頭部とから成り、前記頭部は前記タイルを押えると共に前記タイルを装飾する形態を有していることを特徴とするアンカータイル。
【請求項2】
前記頭部は、前記アンカー本体に対し着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のアンカータイル。
【請求項3】
前記貫通孔はストレート孔で構成され、前記頭部は前記タイルの表面から突出していることを特徴とする請求項1または2に記載のアンカータイル。
【請求項4】
前記タイルは、前記貫通孔廻りに前記頭部が着座する座ぐり穴状の浅溝を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のアンカータイル。
【請求項5】
前記浅溝は、前記頭部の表面が前記タイルの表面と面一になる深さを有すると共に、前記頭部の平面形状と相補的形状を有していることを特徴としている請求項4に記載のアンカータイル。
【請求項6】
前記浅溝は、前記頭部の一部が前記タイルの表面から突出する深さを有すると共に、前記頭部の平面形状と相補的形状を有していることを特徴としている請求項4に記載のアンカータイル。
【請求項7】
前記頭部の平面形状は、前記浅溝の平面形状と相補的形状であって、前記浅溝の平面形状より小さく形成されていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のアンカータイル。
【請求項8】
前記アンカー本体は、外周面に凹凸を有するピン状部材で構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のアンカータイル。
【請求項9】
前記アンカー本体を複数有し、これに対応して前記貫通孔を複数有していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のアンカータイル。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の前記アンカータイルの複数個を、連結部材により並べて連結したことを特徴とするタイルユニット。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイル用いて行うタイルの手張り工法であって、
躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、
前記タイルを前記モルタル上に手張りするタイル張り工程と、
前記タイル張り工程の後、前記タイルを貫通させて前記アンカーを前記モルタルにアンカリングするアンカー装着工程と、を備えたことを特徴とするタイルの手張り工法。
【請求項12】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイル用いて行うタイルの手張り工法であって、
躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、
前記アンカーを前記モルタルにアンカリングするようにして、前記アンカータイルを前記モルタル上に手張りするアンカータイル張り工程と、備えたことを特徴とするタイルの手張り工法。
【請求項13】
請求項10に記載のタイルユニット用いて行うタイルの手張り工法であって、
躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、
前記タイルユニットを前記モルタル上に手張りするタイル張り工程と、を備えたことを特徴とするタイルの手張り工法。
【請求項14】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、施工後のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記コンクリート用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルの型枠先付け工法。
【請求項15】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、施工前のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記コンクリート用型枠を組み上げる型枠施工工程と、
前記型枠施工工程の後、前記コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記コンクリート用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルの型枠先付け工法。
【請求項16】
前記アンカータイルに代えて、請求項10に記載のタイルユニットを用いることを特徴とする請求項14または15に記載のタイルの型枠先付け工法。
【請求項17】
前記タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることを特徴とする請求項14ないし16のいずれかに記載のタイルの型枠先付け工法。
【請求項18】
請求項1ないし9のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルのPC板先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、PC用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記PC用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記PC用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルのPC板先付け工法。
【請求項19】
前記アンカータイルに代えて、請求項10に記載のタイルユニットを用いることを特徴とする請求項18に記載のタイルのPC板先付け工法。
【請求項20】
前記タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることを特徴とする請求項18または19に記載のタイルのPC板先付け工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−108532(P2009−108532A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280151(P2007−280151)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(506162828)FSテクニカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(506162828)FSテクニカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
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