説明

アンダーカット処理機構

【課題】極めて簡易な構成でもって、成形品にある円弧状に湾曲した中空部を容易に型抜きすることが可能となり、成形サイクルも短縮することができると共に作業効率を高めることができ、しかも中子を継続して再利用することができ、大幅なコストダウンを実現することができるアンダーカット処理機構を提供する。
【解決手段】金型11内において、中子30は中子ガイド部16によって、中子30の円弧中心を回転中心とする円弧軌跡上に移動可能に案内され、ラック60はラックガイド部18によって、中子30側に噛み合う状態で直線方向に移動可能に案内される。成形品Pの型抜き時に、固定型12を離型させる保持駒50の移動に連動して、ラック60は型抜き方向と交差する直線方向に移動し、このラック60の移動に連動して中子30は、その円弧中心を回転中心とする円弧軌跡上を移動して成形品Pの中空部P1から離脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定型と可動型から成る金型において、成形品にある円弧状に湾曲した中空部を型抜き可能とするアンダーカット処理機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の成形品として円弧状に湾曲した中空部を有するものを成形するには、一般に中空部を成形する中子を後から消失させる成形方法がよく知られている。すなわち、中子を硬化性鋳物砂で作って成形後に叩いて中子を壊して取り出したり、あるいは中子を低融点合金で作って後から溶解させて取り出したりしていた。
【0003】
また、特許文献1に記載された管体の製造方法も知られている。すなわち、帯片を密着させながら螺旋巻きすることでチューブ状の中子を形成すると共に、その中子を成形型内に配し、その成形型と中子との間の空間に成形材料を注入して硬化させ、その後、中子を形成する帯片の一端部を引っ張り出して成形型内から中子を取り除く方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−239750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来の技術では、成形品を毎回成形する度に中子を予め作ったり、成形後に中子を壊して抜き出す作業が必要となり、作業工程が極めて煩雑であった。このため、成形サイクルが余計に長くなり作業効率も良くなく、しかも、中子は再利用することもできないため、コストアップの要因になるという問題点があった。
【0006】
本発明は、前述したような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、極めて簡易な構成でもって、成形品にある円弧状に湾曲した中空部を容易に型抜きすることが可能となり、成形サイクルも短縮することができると共に作業効率を高めることができ、しかも中子を継続して再利用することができ、大幅なコストダウンを実現することができるアンダーカット処理機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]固定型(12)と可動型(13)から成る金型(11)において、成形品(P)にある円弧状に湾曲した中空部(P1)を型抜き可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記中空部(P1)を成形する中子(30)と、前記金型(11)内に配置されるホルダー(40)と、該ホルダー(40)内で型抜き方向に移動可能に配される保持駒(50)と、前記ホルダー(40)外に位置する状態で前記保持駒(50)と連結され、該保持駒(50)の移動に連動して前記型抜き方向と交差する直線方向に移動するラック(60)と、を有して成り、
前記中子(30)の一端側に、前記中空部(P1)の曲率半径と同一な中子(30)の曲率半径上に延びる延出部(31)を設け、該延出部(31)の外側外周に前記ラック(60)の各歯部(61)に噛み合う外歯車(32)を形成し、
前記金型(11)内に、前記ラック(60)を前記直線方向に移動可能に案内するラックガイド部(18)を設けると共に、前記ラック(60)の移動に連動して前記延出部(31)を含む前記中子(30)を、該中子(30)の円弧中心を回転中心とする円弧軌跡上に移動可能に案内する中子ガイド部(15)を設け、
前記成形品(P)の型抜き時に前記保持駒(50)の移動に連動して、前記中子(30)を前記中空部(P1)から離脱可能としたことを特徴とするアンダーカット処理機構。
【0008】
[2]前記保持駒(50)は、前記型抜き方向と交差して斜め上方へ向う傾斜面部(51)を有し、該傾斜面部(51)に沿ってスライダー(70)が移動可能に連結され、
前記ホルダー(40)の壁面に、前記スライダー(70)を前記ラック(60)が移動する直線方向に案内するガイド孔(43)を穿設し、該ガイド孔(43)より外部に露出したスライダー(70)の一部に前記ラック(60)を連結したことを特徴とする[1]に記載のアンダーカット処理機構。
【0009】
[3]前記ホルダー(40)を、前記金型(11)のうち前記可動型(13)に配置したことを特徴とする[1]または[2]に記載のアンダーカット処理機構。
【0010】
[4]前記保持駒(50)は、駆動手段によって型抜き方向へ駆動され、
前記保持駒(50)は、連結ピン(20)を介して前記固定型(12)に連結され、
前記保持駒(50)の型抜き方向への移動に連動して、前記固定型(12)は離型することを特徴とする[3]に記載のアンダーカット処理機構。
【0011】
前記本発明は次のように作用する。
前記[1]に記載のアンダーカット処理機構によれば、成形品(P)の円弧状に湾曲した中空部(P1)を成形する中子(30)と、この中子(30)の一端側より同一の曲率半径上に延びる延出部(31)の外歯車(32)に噛み合うラック(60)が、それぞれ金型(11)内に配されている。ここで中子(30)は、金型(11)内に設けられた中子ガイド部(15)によって、中子(30)の円弧中心を回転中心とする円弧軌跡上に移動可能に案内され、ラック(60)は、同じく金型(11)内に設けられたラックガイド部(18)によって、中子(30)側に噛み合う状態で直線方向に移動可能に案内される。
【0012】
金型(11)内にはホルダー(40)が配置され、ホルダー(40)内には、保持駒(50)が型抜き方向に移動可能に配される。前記ラック(60)は、ホルダー(40)外に位置する状態で保持駒(50)と連結されて、保持駒(50)の移動に連動して型抜き方向と交差する直線方向に移動する。また、ラック(60)の移動に連動して前記中子(30)は、その円弧中心を回転中心とする円弧軌跡上を移動する。すなわち、成形品(P)の型抜き時には、保持駒(50)の移動に連動させて中子(30)を成形品(P)の中空部(P1)から離脱させることができる。
【0013】
以上のようなアンダーカット処理機構によれば、離型動作とは別に中子(30)を独自に駆動するための複雑な機構等が一切不要であり、全体的な構造の簡易化が可能となり、アンダーカット処理機構を含む金型(11)全体の製造コストを大幅に低減することができる。また、中子(30)は繰り返し使用するものであり、成形毎に中子(30)を作り直す必要がなく、成形サイクルを短縮することができると共に作業効率を高めることができ、成形品(P)の成形自体に関しても大幅なコストダウンを実現することができる。
【0014】
前記[2]に記載のアンダーカット処理機構によれば、前記保持駒(50)は、前記型抜き方向と交差して斜め上方へ向う傾斜面部(51)を有し、該傾斜面部(51)に沿ってスライダー(70)を移動可能に連結する。そして、ホルダー(40)の壁面に、前記スライダー(70)を前記ラック(60)が移動する直線方向に案内するガイド孔(43)を穿設し、該ガイド孔(43)より外部に露出したスライダー(70)の一部に前記ラック(60)を連結する。
【0015】
このような簡易な構成により、保持駒(50)の移動に連動させて、ラック(60)をホルダー(40)外に沿った状態で別途駆動手段を用いることなく、容易に直線方向へ移動させることができる。このラック(60)の直線運動に連動して、該ラック(60)の各歯部(61)に噛み合う前記中子(30)側が、その円弧中心を回転中心として円弧軌跡上を移動する。これにより、成形時には中子(30)を成形品(P)の中空部(P1)に進入させる一方、成形後には中子(30)を成形品(P)の中空部(P1)から退出させることができる。
【0016】
前記[3]に記載のアンダーカット処理機構によれば、前記ホルダー(40)は、金型(11)のうち可動型(13)に配置する。このように、中子(30)やその駆動系を可動型(13)のみに集中して配設することにより、コンパクトに構成することが可能となり、省スペース化の要請に応じることができ、金型(11)への加工および組み込みも容易となる。
【0017】
前記[4]に記載のアンダーカット処理機構によれば、前記保持駒(50)は、駆動手段によって型抜き方向へ駆動され、前記保持駒(50)は、連結ピン(20)を介して前記固定型(12)に連結され、前記保持駒(50)の型抜き方向への移動に連動して前記固定型(12)は離型する。これにより、固定型(12)の離型するための駆動手段だけで、保持駒(50)等を介して中子(30)も一緒に駆動させることができ、装置全体の構成をよりいっそう簡易化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るアンダーカット処理機構によれば、極めて簡易な構成でもって、成形品にある円弧状に湾曲した中空部を容易に型抜きすることが可能となり、成形サイクルも短縮することができると共に作業効率を高めることができ、しかも中子を継続して再利用することができ、大幅なコストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時における動作を説明する斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時における動作を説明する斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時における動作を説明する要部斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する要部斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時の状態を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の型抜き時の状態を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時の状態を示す正面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の型抜き時の状態を示す正面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時の状態を示す側面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の型抜き時の状態を示す側面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時における要部の状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の型抜き時における要部の状態を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時における要部の状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の型抜き時における要部の状態を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の成形時における要部の状態を示す斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の型抜き時における要部の状態を示す斜視図である。
【図17】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する一部断面図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する一部断面図である。
【図19】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する一部断面図である。
【図20】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る成形用金型装置10は、円弧状に湾曲した中空部P1を備えた成形品Pを金型11によって成形する装置である。本実施の形態に係る成形品Pは、図1に示すように全体的には管状の部材であり、その一端側から他端側にかけて所定の曲率半径で円弧状に湾曲している。
【0021】
成形品Pの一端側には、円形で厚さの薄いフランジが設けられ、成形品Pの他端側には、略菱形で厚さの厚いフランジの他、円柱状の突起が設けられている。もちろん、成形品Pの形状は図示した管状のものに限られず、円弧状に湾曲した中空部P1を備えれば、他の様々な外形形状に適用できる。なお、成形品Pの材料としては、プラスチック等の合成樹脂に限られず、アルミニウム合金や鉄、銅等の金属も該当する。
【0022】
図17〜図20に示すように、金型11は、成形品Pの上半部側を成形する固定型12と、成形品Pの下半部側を成形する可動型13とから成る。アンダーカット処理機構は、前記中空部P1を成形する中子30と、金型11内に配置されるホルダー40と、該ホルダー40内で型抜き方向に移動可能に配される保持駒50と、ホルダー40外に位置する状態で保持駒50と連結され、該保持駒50の移動に連動して型抜き方向と交差する直線方向に移動するラック60と、を有して成る。
【0023】
図17に示すように、ホルダー40は、金型11のうち可動型13に配置されている。ここでホルダー40は、図1に示すように、可動型13の一部を成す入れ子14と一体に設けられており、入れ子14と一緒に後から可動型13に組み込まれる。ホルダー40内で型抜き方向に移動する保持駒50の両端には、それぞれ連結ピン20が貫通しており、各連結ピン20の先端側は固定型12に固結されている。各連結ピン20は、保持駒50の両端に対して型抜き方向に所定範囲で移動可能に貫通しているが、各連結ピン20の基端側には抜け止め用のストッパ21が形成されている。
【0024】
保持駒50は、図示省略した駆動手段によって型抜き方向へ駆動される。例えば、各連結ピン20の基端側を駆動手段と連結することで、各連結ピン20を介して保持駒50を型抜き方向に駆動すると良い。もちろん、保持駒50を駆動手段によって直接駆動することもできる。何れにせよ保持駒50は、各連結ピン20を介して固定型12に連結されているため、保持駒50の型抜き方向への移動に連動して固定型12は離型する。なお、駆動手段は具体的には例えば、各連結ピン20あるいは直接保持駒50に連結する可動取付板等を支持する油圧シリンダー等が該当する。
【0025】
各構成部品を詳細に説明すれば、固定型12には、成形品Pの上半部側に相当する内面形状のキャビティ型面12a(図18参照)が設けられている。一方、可動型13には、前述したようにホルダー40が組み込まれており、ホルダー40と一体の入れ子14には、成形品Pの下半部側に相当する内面形状のキャビティ型面14a(図1参照)が設けられている。
【0026】
図1〜図4に示すように、中子30は、成形品Pの湾曲した中空部P1の内面形状に相当する外面形状を有し、金型11内おける前記キャビティ型面12aと前記キャビティ型面14aとの間に配置される。また、中子30の一端側には、前記中空部P1の曲率半径と同一な中子30自体の曲率半径上に延びる延出部31が設けられている。
【0027】
延出部31の外側外周には、ラック60に噛み合う外歯車32が形成されている。ラック60は、所定長さの角棒部材の一側端面に沿って各歯部61を切ったものである。また、延出部31の底面側には、円弧形に延びる凸条33が設けられている。この凸条33は、次述する中子ガイド部15に設けられた同じく円弧形の凹溝17に摺動可能に嵌合するものである。
【0028】
固定型12および入れ子14には、前記延出部31を含む中子30を、該中子30の円弧中心を回転中心とする円弧軌跡上に移動可能に案内する中子ガイド部15が設けられている。中子ガイド部15は、中子30の円弧中心を回転中心とする円弧上に延びる空間であり、前記キャビティ型面12aと前記キャビティ型面14aとの間に連通している。
【0029】
図1に示すように、中子ガイド部15は、その途中から延出部31のみを案内するように細幅となり、この細幅となる部位の段部が、中子30の移動の終点を位置決めするストッパ16として設定されている。また、図5および図6に示すように、中子ガイド部15の底面部には、円弧形に延びる凹溝17が設けられている。この凹溝17には、前記中子30側にある凸条33が摺動可能に嵌合する。
【0030】
また、入れ子14には、前記延出部31の外歯車32に噛み合い中子30を移動させるラック60を、型抜き方向と交差する直線方向に移動可能に案内するラックガイド部18が設けられている。ここで直線方向は、本実施の形態では上下方向である型抜き方向と直交する左右方向であるが、もちろん直交する方向に限られるものではない。なお、ラックガイド部18は、入れ子14が次述するホルダー40に当接する上辺側の角が蟻溝形断面に切り欠かれるようにして設けられている。
【0031】
図17〜図20に示すように、ホルダー40は、可動型13内に配置される薄型の箱形状であり、上面側と下面側が開口した内部空間を備えている。かかるホルダー40は、2つの前後に対象な片割れ部品41,42を組み合わせて成り、内部空間には、保持駒50が上下方向である型抜き方向に移動可能に収納されている。また、ホルダー40の正面側の片割れ部品41の外壁面に、前記入れ子14が一体に固定されている。
【0032】
図13に示すように、ホルダー40の正面側の片割れ部品41の外壁面には、その上端縁と平行な左右方向に延びるガイド孔43が穿設されている。一方、図11に示すように、ホルダー40の背面側の片割れ部品42の内壁面には、その上端縁と平行な左右方向に延びる細幅状の凹溝44が形成されている。ガイド孔43および凹溝44は、後述するスライダー70をラック60が移動する直線方向(左右方向)に案内するためのものである。なお、ガイド孔43は、前記入れ子14にあるラックガイド部18と連通している。
【0033】
図11,図12に示すように、保持駒50は、前記ホルダー40の内部空間で上下方向である型抜き方向に移動可能に収納される部材である。保持駒50は、型抜き方向に交差するように傾斜した傾斜面部51を備える略直角三角形状に形成されている。かかる傾斜面部51に沿って、スライダー70が移動可能に嵌合する蟻凸条52が設けられている。また、前述したように保持駒50の両端には、それぞれ上下方向に延びる連結ピン20が貫通している。
【0034】
スライダー70は、前記中子30を支持する部材であり、図11,図12に示すような駒型に形成されている。スライダー70の下端側は、前記保持駒50の傾斜面部51に対応して傾斜している。かかるスライダー70の下端側に沿って、前記蟻凸条52が摺動可能に嵌合する蟻溝71が設けられている。
【0035】
スライダー70の前端面側には、前記ホルダー40にあるガイド孔43に移動可能に嵌合する突出部72が設けられている。ガイド孔43から外部に突出した突出部72に対して、前記ラック60が一体に連結されている。また、スライダー70の後端面側には、前記ホルダー40にある凹溝44に移動可能に嵌合する凸条73が設けられている。
【0036】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
図17および図19に示す成形時には、図示省略した油圧シリンダーの駆動により各連結ピン20を下降させて、保持駒50をホルダー40内における最下位置まで移動させる。すると、各連結ピン20の先端側に固結されている固定型12は、可動型13に対して型閉めした状態となる。このとき、保持駒50の傾斜面部51に沿って移動可能なスライダー70は、傾斜面部51の最上位置に保持されている。
【0037】
そして、スライダー70に連結されているラック60は、図1に示すように、入れ子14にあるラックガイド部18内の一端側に案内されている。また、ラック60に噛み合う延出部31を備えた中子30は、入れ子14にあるラックガイド部18内の一端側に案内され、金型11内におけるキャビティ型面12aとキャビティ型面14aとの間に配置される。また、中子ガイド部15にある凹溝17に、中子30側にある凸条33が摺動可能に嵌合して、ガタ付きが防止される。このような状態で、金型11のキャビティに溶融材料を充填させた後に冷却固化させて、中空部P1を備えた成形品Pが成形される。
【0038】
成形品Pの成形が完了した後、固定型12を離型させるために、前記油圧シリンダーの駆動により各連結ピン20を上昇させる。各連結ピン20の上昇に伴って、保持駒50はホルダー40内で押し上げられて型抜き方向に移動する。すると、スライダー70は、保持駒50の傾斜面部51上を相対的に移動しつつ、ホルダー40にあるガイド孔43内を一端側から他端側まで案内される。これにより、スライダー70に一体に連結されているラック60は、図1〜図4に順に示すように、入れ子14にあるラックガイド部18に案内されて、その一端側から他端側(図1中では右側から左側)へと移動する。
【0039】
これに伴って、ラック60の歯部61と中子30の延出部31の外歯車32との噛み合いにより、中子30全体は、その円弧中心を回転中心とする円弧軌跡上を移動する。すなわち、中子30は、図1〜図4に順に示すように、入れ子14にある中子ガイド部15に案内されて、その一端側から他端側(図1中で反時計回り)に移動する。そして、中子30の段部が中子ガイド部15内のストッパ16に当接することにより、中子30の移動は停止する。このとき、中子30は、成形品Pの中空部P1から退出した状態となる。
【0040】
以上のように、成形品Pの型抜き時には、固定型12を離型させるための保持駒50の移動に連動させて、中子30を成形品Pの中空部P1から離脱させることができる。これにより、離型動作とは別に中子30を独自に駆動するための複雑な機構等が一切不要となり、全体的な構造の簡易化が可能で、アンダーカット処理機構を含む金型11全体の製造コストを大幅に低減することができる。また、中子30は繰り返し使用するものであり、成形毎に中子30を作り直す必要がなく、成形サイクルを短縮することができると共に作業効率を高めることができ、成形品Pの成形自体に関しても大幅なコストダウンを実現することができる。
【0041】
また、中子30やラック60を、エジェクタ台板や可動型13に分散させることなく、ホルダー40や保持駒50を介して可動型13のみに集中して配設することができる。これにより、成形用金型装置10全体をコンパクトに構成することが可能となり、省スペース化の要請にも応じることができ、金型11への加工および組み込みが容易となる。特に、アンダーカット処理機構は、予め入れ子14に組み込んだ形でユニットとして構成することができる。
【0042】
さらに、中子ガイド部15による中子30の案内、ラックガイド部18によるラック60の案内、保持駒50とスライダー70との嵌合関係や、ガイド孔43によるスライダー70の案内によれば、中子30を確実かつ円滑に成形位置から離型位置まで移動させることができる。しかも、成形品Pの型抜き時における負荷も一箇所に集中することがなく分散されるので、耐久性が高められる。また、設計時における高い精度出しも緩和されるため、さらなるコストダウンが可能となる。
【0043】
図20において、成形品Pが抜き去られると、各連結ピン20が成形時の初期位置に下降するのに従い、各連結ピン20に引かれて保持駒50と共に、スライダー70、ラック60や中子30も初期位置に戻る。また、固定型12も成形位置に戻って、次の成形品Pが成形されることになる。なお、ホルダー40や保持駒50の具体的な高さ(型抜き方向の長さ)は、中空部P1を含む成形品P全体の型抜き可能なストロークに応じた長さに設計すれば良い。
【0044】
なお、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、成形品Pやホルダー40、それに中子30等の具体的な形状は、図示したものに限定されるわけではない。また、前記実施の形態では、ホルダー40等を可動型13に設けているが、可動型13ではなく固定型12に型抜き方向に駆動可能に設けるように構成しても良い。
【0045】
また、前記実施の形態では、中子30の回転方向は型抜き方向と直交する水平面上に設定されていたが、例えば、中子30の回転方向に捻りを加えて、高さ方向(Z方向)にも抜くことができるように設計しても良い。また、中子30の型抜き時の抵抗を低減するために、スライダー70と保持駒50との連結部分に窒化処理を施したり、ボールベアリングを設けることにより、摩擦係数を低減することが可能となり、さらに円滑に動作させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
アンダーカット処理機構は、金型に組み込んだ形で利用することができ、コストアップを招くことなく成形品にある円弧状に湾曲した中空部を型抜きする場合に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
P…成形品
P1…中空部
10…成形用金型装置
11…金型
12…固定型
13…可動型
14…入れ子
15…中子ガイド部
16…ストッパ
17…凹溝
18…ラックガイド部
20…連結ピン
21…ストッパ
30…中子
31…延出部
32…外歯車
33…凸条
40…ホルダー
41…片割れ部品
42…片割れ部品
43…ガイド孔
44…凹溝
50…保持駒
51…傾斜面部
52…蟻凸条
60…ラック
61…歯部
70…スライダー
71…蟻溝
72…突出部
73…凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型から成る金型において、成形品にある円弧状に湾曲した中空部を型抜き可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記中空部を成形する中子と、前記金型内に配置されるホルダーと、該ホルダー内で型抜き方向に移動可能に配される保持駒と、前記ホルダー外に位置する状態で前記保持駒と連結され、該保持駒の移動に連動して前記型抜き方向と交差する直線方向に移動するラックと、を有して成り、
前記中子の一端側に、前記中空部の曲率半径と同一な中子の曲率半径上に延びる延出部を設け、該延出部の外側外周に前記ラックの各歯部に噛み合う外歯車を形成し、
前記金型内に、前記ラックを前記直線方向に移動可能に案内するラックガイド部を設けると共に、前記ラックの移動に連動して前記延出部を含む前記中子を、該中子の円弧中心を回転中心とする円弧軌跡上に移動可能に案内する中子ガイド部を設け、
前記成形品の型抜き時に前記保持駒の移動に連動して、前記中子を前記中空部から離脱可能としたことを特徴とするアンダーカット処理機構。
【請求項2】
前記保持駒は、前記型抜き方向と交差して斜め上方へ向う傾斜面部を有し、該傾斜面部に沿ってスライダーが移動可能に連結され、
前記ホルダーの壁面に、前記スライダーを前記ラックが移動する直線方向に案内するガイド孔を穿設し、該ガイド孔より外部に露出したスライダーの一部に前記ラックを連結したことを特徴とする請求項1に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項3】
前記ホルダーを、前記金型のうち前記可動型に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項4】
前記保持駒は、駆動手段によって型抜き方向へ駆動され、
前記保持駒は、連結ピンを介して前記固定型に連結され、
前記保持駒の型抜き方向への移動に連動して、前記固定型は離型することを特徴とする請求項3に記載のアンダーカット処理機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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