説明

アンダーカット部を有する成形品の射出成形金型及びその金型で成形された物品

【課題】内面にアンダーカット部を有する成形品の射出成形金型であって、雄型のセンターコアの周囲に配置する小スライドコアを径方向内方に移動させた状態で型開き方向に変位させてから、大スライドコアを径方向内方に移動させて型抜きするものにおいて、型構造の簡素化を図る。
【解決手段】センターコア3を固定する基板6に、小スライドコア4用のカム部材11を取付けると共に、基板6と雌型1との間に、雌型側から順に、大スライドコア5用のガイド部7aを有するプレート7と、大スライドコア5用のカム部材10を有するプレート8と、小スライドコア4のガイド部9aを有するプレート9とを設ける。型開き時、基板6がプレート9から距離L1離れたところでプレート9の型開き方向への牽引が開始され、プレート9がプレート8から距離L2離れたところでプレート8の型開き方向への牽引が開始されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面にアンダーカット部を有する成形品、例えば、球面状に湾曲したレンズ本体の内面に同心円状に多数の環状突条を形成して成る特殊フレネルレンズといった成形品を成形する射出成形金型及びその金型で成形された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の射出成形金型として、成形品の外面を成形する雌型と、成形品の内面を成形する雄型とを備え、雄型は、雌型に向けて進退駆動される基板に固定した錐形の外面を持つセンターコアと、センターコアの周囲に周方向の間隔を空けて配置した径方向に移動自在な複数の第1スライドコアと、センターコアの周囲に各第1スライドコア間に位置させて配置した径方向に移動自在な複数の第2スライドコアとを備え、第1スライドコアの内周の周方向幅を第1スライドコアの外周の周方向幅以上とし、基板を雌型から離隔する型開き方向に移動させたとき、第1スライドコアと第2スライドコアとが順に径方向内方に移動され、成形品内面のアンダーカット部から第1と第2の各スライドコアの成形面上の突部が径方向内方に抜け出るようにしたものは知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、第2スライドコアの径方向内方への移動量は、第1スライドコアの径方向内方への移動で第1と第2の両スライドコア間に形成される隙間によって制限される。この隙間は第1スライドコアの内周の周方向幅と外周の周方向幅との差を大きくする程大きくなるが、成形品によっては第1スライドコアの内周の周方向幅と外周の周方向幅との差を大きく取れないことがある。
【0004】
例えば、成形品が上記特殊フレネルレンズである場合、第1スライドコアの内周の周方向幅と外周の周方向幅との差を大きくすると、第1と第2の両スライドコア間のパーティングラインと成形品内面の環状突条との交差角が鋭角になる。その結果、各スライドコアの成形面上の突部の端面(パーティングラインで切られた突部の面)が先鋭になって、突部端面の欠けを生じ易くなる。また、成形品が小径である場合、第1スライドコアの内周の周方向幅と外周の周方向幅との差を大きくすると、第1スライドコアの径方向内方への移動量が第1スライドコアの内周の周方向端縁同士の干渉で十分に確保できなくなる。
【0005】
そのため、第1スライドコアの内周の周方向幅と外周の周方向幅との差はできるだけ小さくすることが望まれる。然し、この場合には、第1スライドコアを径方向内方に移動させただけでは、第2スライドコアを径方向内方に十分に移動させることが困難になる。
【0006】
そこで、従来、第1スライドコアが第2スライドコアに対し型開き方向に変位した状態では、第2スライドコアが第1スライドコアに対しオーバーハングした状態で径方向内方に移動可能となるように第2スライドコアを形成し、雄型の基板を型開き方向に移動させて第1スライドコアを径方向内方に移動させた後、第1スライドコアが第2スライドコアに対し型開き方向に相対移動するように、第2スライドコアを型開き方向と逆方向に押動させつつ径方向内方に移動させるようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−26040号公報(第5,6頁、図1,6,7)
【特許文献2】特開昭57−203512号公報(第3,4頁、第1〜第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記後者の従来例では、第1スライドコアの内周の周方向幅と外周の周方向幅との差が小さくても、第2スライドコアの径方向内方への移動量を十分確保できる。然し、このものでは、雄型の基板を型開き方向に移動させた後に、第2スライドコアを型開き方向と逆方向に押動させるために、基板用の駆動機構とは別に第2スライドコア用の駆動機構が必要になり、金型の構造が複雑化する。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、第1スライドコアの内周の周方向幅と外周の周方向幅との差が小さくても、第2スライドコアの径方向内方への移動量を十分確保できるようにした簡素な構造の射出成形金型及びその金型によって成形された物品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、内面にアンダーカット部を有する成形品を成形する射出成形金型であって、成形品の外面を成形する雌型と、成形品の内面を成形する雄型とを備え、雄型は、雌型に向けて進退駆動される基板に固定した錐形の外面を持つセンターコアと、センターコアの周囲に周方向の間隔を空けて配置した径方向に移動自在な複数の第1スライドコアと、センターコアの周囲に各第1スライドコア間に位置させて配置した径方向に移動自在な複数の第2スライドコアとを備え、第1スライドコアの内周の周方向幅を第1スライドコアの外周の周方向幅以上とし、基板を雌型から離隔する型開き方向に移動させたとき、第1スライドコアと第2スライドコアとが順に径方向内方に移動されるようにしたものにおいて、基板と雌型との間に、雌型側から順に、第2スライドコアを径方向に移動自在に支持する第2スライドコア用のガイド部を有する第1プレートと、第1プレートに対し型開き方向に移動自在な第2プレートと、第2プレートに対し型開き方向に移動自在で、第1スライドコアを径方向に移動自在に支持する第1スライドコア用のガイド部を有する第3プレートとを配置し、第2プレートに、第1プレートに対する第2プレートの型開き方向への移動で第2スライドコアを径方向内方に移動させる第2スライドコア用のカム部材を設けると共に、基板に、第3プレートに対する基板の型開き方向への移動で第1スライドコアを径方向内方に移動させる第1スライドコア用のカム部材を設け、更に、第1スライドコアが第2スライドコアに対し型開き方向に所定の変位量以上変位した状態では、第2スライドコアが第1スライドコアに対しオーバーハングした状態で径方向内方に移動可能となるように第2スライドコアを形成すると共に、基板を型開き方向に駆動したときに、第3プレートに対し基板が型開き方向に第1の所定距離だけ離れたところで第3プレートに基板から型開き方向への牽引力を伝達する第1牽引部材と、第2プレートに対し第3プレートが型開き方向に前記変位量以上に設定される第2の所定距離だけ離れたところで第2プレートに第3プレートから型開き方向への牽引力を伝達する第2牽引部材とを設けることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、雄型の基板を型開き方向に移動させたとき、当初は第2プレートと第3プレートとが夫々第1プレートと第2プレートとに当接する型締め位置に保持される。その結果、基板が第3プレートに対し型開き方向に相対移動することになり、第1スライドコアが基板に設けたカム部材の働きで第3プレートに設けたガイド部に案内されて径方向内方に移動する。
【0011】
第3プレートに対し基板が型開き方向に第1の所定距離だけ離れ、第1スライドコアが成形品から型抜きされた状態(第1スライドコアの成形面上の突部が成形品内面のアンダーカット部から抜け出た状態)になると、基板から第3プレートに第1牽引部材を介して型開き方向への牽引力が伝達されて、第3プレートが型開き方向に移動し始める。これにより、第1スライドコアが径方向内方に移動した状態で型開き方向に移動する。そして、第2プレートに対し第3プレートが型開き方向に第2の所定距離だけ離れると、第3プレートから第2プレートに第2牽引部材を介して型開き方向への牽引力が伝達されて、第2プレートが型開き方向に移動し、第2スライドコアが第2プレートに設けたカム部材の働きで第1プレートに設けたガイド部に案内されて径方向内方に移動する。この際、第1スライドコアは、第2スライドコアに対し型開き方向に所定の変位量以上変位した状態になっており、そのため、第2スライドコアは第1スライドコアに対しオーバーハングした状態で径方向内方に移動可能となる。そのため、第1スライドコアの内周の周方向幅と外周の周方向幅との差が小さくても、第2スライドコアの径方向内方への移動量を十分確保できる。
【0012】
以上の型開き動作は、基板を型開き方向に駆動するだけで行われる。そのため、基板用の駆動源を設けるだけで済み、金型の構造を簡素化してコストダウンを図ることができる。
【0013】
尚、第3プレートに対し基板を型開き方向に移動させる際には、基板に設けたカム部材を介して第1スライドコアに型開き方向への分力が作用し、この分力で第3プレートが型開き方向に移動してしまうと、第1スライドコアを径方向内方に移動できなくなる。この場合、上記分力で第3プレートが型開き方向に移動することを第3プレートに働く摩擦力で阻止することも可能である。然し、第3プレートの移動を確実に阻止するには、第3プレートに対し基板が型開き方向に第1の所定距離だけ離れるまで第3プレートを第2プレートに当接した状態に拘束するロック機構を設けるか、基板に対し第3プレートを型開き方向と逆の型締め方向に付勢する戻しばねを設け、第3プレートに対し基板が型開き方向に第1の所定距離だけ離れるまでは、戻しばねの付勢力により、第3プレートが第2プレートに当接した状態に付勢保持されるようにすることが望ましい。
【0014】
また、第2プレートに対し第3プレートが型開き方向に前記第2の所定距離だけ離れるまで第2プレートを第1プレートに当接した状態に拘束するロック機構を設けておけば、第2プレートに対し第3プレートが型開き方向に第2の所定距離だけ離れる前に、第2プレートが型開き方向に移動することを確実に防止でき、有利である。
【0015】
ところで、雄型を型開き状態から型締めする際は、基板を雌型に接近する型締め方向に移動させるが、この場合、先ず、第2スライドコアが径方向外方に移動され、次に、第2スライドコアに対し第1スライドコアが型締め方向に相対移動され、最後に第1スライドコアが径方向外方に移動されるようにすることが望まれる。
【0016】
ここで、基板からの押力で第2プレートを型締め方向に押動させる第1早戻し機構と、第3プレートを型締め方向に押動させる第2早戻し機構とを設け、第1早戻し機構を、第2プレートに開閉自在に枢着した鋏状の一対のアームと、基板に固定され、閉じ状態の両アームの基板側の端部に当接して基板からの押力を両アームを介して第2プレートに伝達する押し棒と、第1プレートに固定され、第1プレート側にのびる両アームの延長部と協働して、第2プレートが第1プレートに当接する状態になったときに両アーム間に押し棒が挿入可能となるように両アームを開くアームガイドとで構成し、第2早戻し機構を、第3プレートに開閉自在に枢着した鋏状の一対のアームと、基板に固定され、閉じ状態の両アームの基板側の端部に当接して基板からの押力を両アームを介して第3プレートに伝達する押し棒と、第2プレートに固定され、第2プレート側にのびる両アームの延長部と協働して、第3プレートが第2プレートに当接する状態になったときに両アーム間に押し棒が挿入可能となるように両アームを開くアームガイドとで構成すれば、第1と第2の各スライドコアを上記の如く移動させることができる。
【0017】
即ち、雄型の型開き状態から基板を型締め方向に移動させると、当初は、第2プレートと第3プレートとの間及び第3プレートと基板との間に夫々型開き状態と同一の隙間が空けられたまま、第1と第2の各早戻し機構を介しての押力の伝達で第2プレートと第3プレートとが共に型締め方向に移動され、第2プレートが第1プレートに接近して、第2プレートに設けたカム部材の働きにより第2スライドコアが径方向外方に移動される。そして、第1プレートに第2プレートが当接すると、第2プレートはそれ以上型締め方向に移動不能になるが、この状態では第1早戻し機構の両アームが開かれて、両アーム間に第1早戻し機構の押し棒が挿入され、基板は第2プレートで拘束されることなく引き続き型締め方向に移動する。そのため、第2早戻し機構を介して第3プレートが引き続き型締め方向に押動されて第2プレートに接近し、第2スライドコアに対し第1スライドコアが型締め方向に相対移動することになる。そして、第2プレートに第3プレートが当接したところで、第2早戻し機構の両アームが開かれて、両アーム間に第2早戻し機構の押し棒が挿入され、基板は第3プレートで拘束されることなく引き続き型締め方向に移動する。そのため、第3プレートに基板が接近して、基板に設けたカム部材の働きで第1スライドコアが径方向外方に移動され、雄型が型締め状態に復帰する。
【0018】
また、本発明の物品は、上記本発明の射出成形金型により成形されたアンダーカット部を有する成形品、例えば、球面状に湾曲したレンズ本体の凹面となる内面にアンダーカット部たる断面鋸歯状の環状突条を同心円状に多数形成して成る特殊フレネルレンズであることを特徴とする。本発明の射出成形金型で成形された物品は、アンダーカット部が高精度で形成されると共に、金型の構造が簡素で型費が安くなることから、高品質で低コストになり、有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図14に示す特殊フレネルレンズから成る成形品Aを成形する射出成形金型に本発明を適用した実施形態について説明する。尚、この成形品Aは、球面状に湾曲した平面視方形のレンズ本体A1の内面(凹面)に、図14(b)に示す如く、アンダーカット部たる断面鋸歯状の環状突条A2を同心円状に多数形成して成るものである。突条A2は、軸線方向に対して図中aで示すアンダーカット量を持つと共に、径方向に対しても図中bで示すアンダーカット量を持つ。
【0020】
射出成形金型は、図1に示すように、成形品Aの外面(凸面)を成形する雌型1と、成形品Aの内面を成形する雄型2とを備え、雄型2を可動型としてこれを雌型1に対し水平方向に接離自在とした横型式のものに構成されている。
【0021】
雄型2は、図2に示す如く、錐形の外面を持つセンターコア3と、センターコア3の周囲に周方向の間隔を空けて配置した径方向に移動自在な複数(4個)の第1スライドコア4と、センターコア3の周囲に各第1スライドコア4間に位置させて配置した径方向に移動自在な複数(4個)の第2スライドコア5とを備える。これらセンターコア3、第1スライドコア4及び第2スライドコア5の雌型1側の端面は、成形品Aの内面形状に対応する凸面状の成形面になっており、第1と第2の両スライドコア4,5の成形面には、成形品Aの内面の環状突条A2に対応する環状の成形突部が同心円状に多数形成されている。雌型1に対し雄型2を型締めした状態において、これらセンターコア3、第1スライドコア4及び第2スライドコア5の成形面と雌型1の凹面状の成形面との間に成形品Aに合致する形状のキャビティが形成され、このキャビティに雌型1に設けたスプルー1aから溶融樹脂を注入して、成形品Aを射出成形する。
【0022】
また、第1スライドコア4は、第2スライドコア5に比し小さく、且つ、第2スライドコア5間において第1スライドコア4が径方向内方に移動可能となるように、第1スライドコア4の内周の周方向幅が外周の周方向幅以上になるように形成されている。但し、第1スライドコア4の内周の周方向幅と外周の周方向幅との差を大きくすると、第1と第2の両スライドコア4,5間のパーティングラインと成形品Aの内面の環状突条A2との交差角が鋭角になり、その結果、各スライドコア4,5の成形面上の環状突部の端面(パーティングラインで切られた成形突部の面)が先鋭になって、突部端面の欠けを生じ易くなる。そこで、第1スライドコア4の内周の周方向幅は外周の周方向幅より若干大きくなる程度にしている。
【0023】
雄型2には、更に、雌型1に向けて成形品Aの軸線方向に進退駆動される基板6が設けられており、この基板6にセンターコア3が後記する固定ブロック6aとカム部材11とを介して固定されている。また、基板6と雌型1との間に、雌型1側から順に、第2スライドコア5を径方向に移動自在に支持する第2スライドコア5用のガイド部7aを有する第1プレート7と、第1プレート7に対し型開き方向に移動自在な第2プレート8と、第2プレート8に対し型開き方向に移動自在で、第1スライドコア4を径方向に移動自在に支持する第1スライドコア4用のガイド部9aを有する第3プレート9とが配置されている。尚、第2スライドコア5用と第1スライドコア4用の各ガイド部7a,9aは、成形品Aの内面の環状突条A2が軸線方向 (型開き方向)だけでなく径方向に対してもアンダーカット量を持つため、第1と第2の各スライドコア4,5が径方向内方に向かって型開き方向に若干傾斜した方向に沿って移動するように形成されている。
【0024】
第2プレート8には、第1プレート7に対する第2プレート8の型開き方向への移動で第2スライドコア5を径方向内方に移動させる第2スライドコア5用のカム部材10が設けられている。ここで、第2スライドコア5は、突部付きの成形面を形成した先端側の成形ブロック51と、ガイド部7aに支持される基端側の動作ブロック52との2部材を結合して構成されている。そして、第2プレート8上のカム部材10を、動作部52に形成した係合孔53に係合するアンギュラピンで構成している。
【0025】
また、基板6には、第3プレート9に対する基板6の型開き方向への移動で第1スライドコア4を径方向内方に移動させる第1スライドコア4用のカム部材11が設けられている。ここで、第1スライドコア4は、突部付きの成形面を形成した先端側の成形ブロック41と、ガイド部9aに支持される基端側の動作ブロック42との2部材を結合して構成されている。カム部材11は、基板6上の固定ブロック6aの先端に取付けた略八角柱状であって、各第1スライドコア4に対応する外面111に、錐形の傾斜を付けると共に、図3に示す如く、蟻形の突部112を形成して成るものに構成されている。そして、第1スライドコア4の動作ブロック42に突部112に係合する蟻溝43を形成し、第1スライドコア4に対するカム部材11の型開き方向への相対移動により、カム部材11の錐形外面111の傾斜に従って第1スライドコア4が径方向内方に移動されるようにしている。また、カム部材11の各第2スライドコア5に対応する外面113は、先端側の部分のみが錐形に傾斜されており、型締め状態においてこの傾斜部とセンターコア3の錐形外面とを介して作用する径方向分力により第2スライドコア5が径方向外方の成形位置に確実に押圧保持されるようにしている。尚、センターコア3はカム部材11の先端に取付けられている。
【0026】
また、第2スライドコア5の成形ブロック51の周方向両側の側面には、第1スライドコア4に対する逃げのための窪み部54が形成されている。そして、第1スライドコア4が第2スライドコア5に対し型開き方向に所定の変位量以上変位した状態では、第1スライドコア4の成形ブロック41の周方向の側部が窪み部54に入り込み、図2(b)に示す如く、第2スライドコア5が第1スライドコア4に対しオーバーハングした状態で径方向内方に移動可能となるようにしている。
【0027】
また、基板6を型開き方向に駆動したときに、第3プレート9に対し基板6が型開き方向に第1の所定距離L1(図5参照)だけ離れたところで第3プレート9に基板6から型開き方向への牽引力を伝達するボルトから成る第1牽引部材12と、第2プレート8に対し第3プレート9が型開き方向に前記変位量以上に設定される第2の所定距離L2(図6参照)だけ離れたところで第2プレート8に第3プレート9から型開き方向への牽引力を伝達するボルトから成る第2牽引部材13と、第1プレート7に対し第2プレート8が型開き方向に第3の所定距離L3(図7参照)以上離れることを阻止するボルトから成る第1ストッパ部材14と、雌型1に対し第1プレート7が型開き方向に第4の所定距離L4(図4参照)以上離れることを阻止する第2ストッパ部材15とが設けられている。尚、第2ストッパ部材15は、雌型1に対する連結ボルト151と第1プレート7に対する連結ボルト152とを挿通するストローク規制用の一対の長孔153,154を有する、所謂カンザシで構成されている。
【0028】
更に、第3プレート9に対し基板6が型開き方向に前記第1の所定距離L1だけ離れるまで第3プレート9を第2プレート8に当接した状態に拘束する第1ロック機構16と、第2プレート8に対し第3プレート9が型開き方向に前記第2の所定距離L2だけ離れるまで第2プレート8を第1プレート7に当接した状態に拘束する第2ロック機構17とが設けられている。第1ロック機構16は、第3プレート9に軸着した、ばね161aで内方に揺動付勢されるフック161と、第2プレート8に設けたフック161用の係合部162と、基板6にバー163を介して連結されるフック161用の操作カム164とで構成される。そして、第3プレート9に対し基板6が型開き方向に第1の所定距離L1だけ離れたとき、操作カム164によりフック161がばね161aの付勢力に抗して係合部162から離脱するように動作される。
【0029】
第2ロック機構17は、第2プレート8に軸着した、ばね171aで揺動付勢されるフック171と、第1プレート7に設けたフック171用の係合部172と、第3プレート9にバー173を介して連結されるフック171用の操作カム174とで構成される。そして、第2プレート8に対し第3プレート9が型開き方向に第2の所定距離L2だけ離れたとき、操作カム174によりフック171がばね171aの付勢力に抗して係合部172から離脱するように動作される。
【0030】
成形品Aの射出成形後の型開きに際しては、基板6を雌型1から離れる型開き方向に移動させる。これによれば、先ず、第1プレート7、第2プレート8及び第3プレート9が基板6と一体に型開き方向に移動する。そして、第1プレート7が雌型1から第4の所定距離L4だけ離れたところで、図4に示す如く、第2ストッパ部材15により第1プレート7のそれ以上の型開き方向への移動が阻止される。
【0031】
この状態では、第2ロック機構17により第2プレート8が第1プレート7に当接した状態に拘束されると共に、第1ロック機構16により第3プレート9が第2プレート8に当接した状態に拘束されている。従って、第1プレート7に加えて第2プレート8及び第3プレート9もそれ以上の型開き方向への移動が阻止される。そのため、引き続く基板6の移動で基板6が第3プレート9から型開き方向に離れ、基板6に設けたカム部材11の働きにより第1スライドコア4が第3プレート9上のガイド部9aに沿って径方向内方に移動する。
【0032】
そして、基板6が第3プレート9から第1の所定距離L1だけ型開き方向に離れ、第1スライドコア4の径方向内方への移動量が成形品Aの内面の突条A2の軸線方向に対するアンダーカット量a以上になって、第1スライドコア4の成形突部が成形品Aの内面の突条A2間から完全に抜け出ると、図5に示す如く、第1ロック機構16による第3プレート9の拘束が解除されると共に、第1牽引部材12により基板6から第3プレート9に型開き方向への牽引力が伝達される。そのため、これ以降は、第3プレート9が第2プレート8から型開き方向に離れ、第1スライドコア4が第2スライドコア5に対し型開き方向に変位する。
【0033】
そして、第3プレート9が第2プレート8から第2の所定距離L2だけ型開き方向に離れ、第1スライドコア4の型開き方向への変位量が第2スライドコア5の径方向内方への移動を許容する値以上になると、図6に示す如く、第2ロック機構17による第2プレート8の拘束が解除されると共に、第2牽引部材13を介して第3プレート9から第2プレート8に型開き方向への牽引力が伝達される。そのため、これ以降は、第2プレート8が第1プレート7から離れ、第2プレート8に設けたカム部材10の働きにより第2スライドコア5が第1プレート7上のガイド部7aに沿って径方向内方に移動する。
【0034】
そして、第2プレート8が第1プレート7から第3の所定距離L3だけ型開き方向に離れ、第2スライドコア5の径方向内方への移動量が成形品Aの内面の突条A2の軸線方向に対するアンダーカット量a以上になって、第2スライドコア5の成形突部が成形品Aの内面の突条A2間から完全に抜け出ると、図7に示す如く、第1ストッパ部材15により第2プレート8のそれ以上の型開き方向への移動が阻止され、雄型2の型開き動作が完了する。尚、本実施形態では、第3の所定距離L3を、カム部材10たるアンギュラピンが第2スライドコア5の動作ブロック52に形成した係合孔53から抜け出るような距離に設定しているが、係合孔53からアンギュラピン10が抜け出ないような距離に設定することも可能である。
【0035】
上記の如く雄型2の型開きを完了すると、成形品Aを吸着する吸盤を有する取出し装置(図示せず)により成形品Aを取り出し、その後、次の成形品Aの成形に備えて雄型2を型締めする。この場合、型開き時とは逆の順序で、先ず、第1プレート7に対し第2プレート8を型締め方向に移動させ、次に第2プレート8に対し第3プレート9を型締め方向に移動させ、最後に第3プレート9に対し基板6を型締め方向に移動させることが望まれる。そのため、本実施形態では、図8に示す如く、雄型2の型開き状態から基板6を雌型1に接近する型締め方向に移動させたときに、基板1からの押力で第2プレート8を型締め方向に押動させる第1早戻し機構18と、第3プレート9を型締め方向に押動させる第2早戻し機構19とを設けている。
【0036】
第1早戻し機構18は、第2プレート8に開閉自在に枢着した鋏状の一対のアーム181,181と、基板6に固定され、閉じ状態の両アーム181,181の基板6側の端部に当接して基板6からの押力を両アーム181,181を介して第2プレート8に伝達する押し棒182と、第1プレート7に固定され、第1プレート7側にのびる両アーム181,181の延長部181a,181aと協働して、第2プレート8が第1プレート7に当接する状態になったときに両アーム181,181間に押し棒182が挿入可能となるように両アーム181,181を開くアームガイド183とで構成されている。アームガイド183は、両アーム181,181の延長部181a、181a間に入り込んで両アーム181,181を閉じ状態に保持するガイドピン183aと、第2プレート8が第1プレート7に当接する状態になったときに延長部181aの先端部が当接する、型締め方向に向かって内方に傾斜するカム面183bとを備えている。そして、延長部181aの基端部内面に凹欠部181bを形成し、第2プレート8が第1プレート7に当接する状態になったとき、凹欠部181bがガイドピン183aに合致して、両アーム181,181の開き動作が許容され、カム面183bの働きで両アーム181,181が開かれるようにしている。
【0037】
第2早戻し機構19は、第3プレート9に開閉自在に枢着した鋏状の一対のアーム191,191と、基板6に固定され、閉じ状態の両アーム191,191の基板6側の端部に当接して基板6からの押力を両アーム191,191を介して第3プレート9に伝達する押し棒192と、第2プレート8に固定され、第2プレート8側にのびる両アーム191,191の延長部191a,191aと協働して、第3プレート9が第2プレート8に当接する状態になったときに両アーム191,191間に押し棒192が挿入可能となるように両アーム191,191を開くアームガイド193とで構成されている。アームガイド193は、両アーム191,191の延長部191a、191a間に入り込んで両アーム191,191を閉じ状態に保持するガイドピン193aと、第3プレート9が第2プレート8に当接する状態になったときに延長部191aの先端部が当接する、型締め方向に向かって内方に傾斜するカム面193bとを備えている。そして、延長部191aの基端部内面に凹欠部191bを形成し、第3プレート9が第2プレート8に当接する状態になったとき、凹欠部191bがガイドピン193aに合致して、両アーム191,191の開き動作が許容され、カム面193bの働きで両アーム191,191が開かれるようにしている。
【0038】
雄型2の型開き状態では、図8(a)に示す如く、第1早戻し機構18のアーム181,181と第2早戻し機構19のアーム191,191とが共に閉じ状態に保持されており、基板6を型締め方向に移動させると、第1早戻し機構18の押し棒182とアーム181,181とを介して第2プレート8が型締め方向に押されると共に、第2早戻し機構19の押し棒192とアーム191,191とを介して第3プレート9が型締め方向に押される。そのため、第2プレート8と第3プレート9とが、夫々第2プレート8と第3プレート9との間の距離L2の間隔と第3プレート9と基板6との間の距離L1の間隔を保ったまま型締め方向に移動する。この際、第1プレート7に第2プレート8が接近して、カム部材10たるアンギュラピンが第2スライドコア5の動作ブロック52に形成した係合孔53に係合すると、第2プレート7からアンギュラピン10を介して作用する型締め方向への分力により第1プレート7も型締め方向に移動する。そして、第1プレート7が雌型1に当接してそれ以上型締め方向に移動しなくなったところで、第1プレート7に対し第2プレート8が接近し、カム部材10の働きにより第2スライドコア5が径方向外方に移動される。
【0039】
そして、第2プレート8が第1プレート7に当接すると、図8(b)に示す如く、第1早戻し機構18のアーム181,181が開かれて、以後、アーム181,181間に押し棒182が挿入されるようになり、押し棒182を介しての第2プレート8への押力の伝達が解除される。一方、第2早戻し機構19のアーム191,191は閉じ状態に保持されており、押し棒192を介しての第3プレート9への押力の伝達で第2プレート8に対し第3プレート9が接近し、第1スライドコア4が第2スライドコア5に対し型締め方向に相対移動する。
【0040】
そして、第3プレート9が第2プレート8に当接すると、図8(c)に示す如く、第2早戻し機構19のアーム191,191が開かれて、以後、アーム191,191間に押し棒192が挿入されるようになり、押し棒192を介しての第3プレート9への押力の伝達が解除される。この状態では、基板6のみが型締め方向に移動して第3プレート9に接近し、カム部材11の働きで第1スライドコア4が径方向外方に移動され、図8(d)に示す型締め状態に戻される。
【0041】
尚、第3プレート9を第2プレート8に接近させて第1スライドコア4を型締め方向に移動させる前に、基板6を第3プレート9に接近させて第1スライドコア4を径方向外方に移動させることも考えられる。しかし、この場合には、第2プレート8に第3プレート9を接近させる際、第1スライドコア4が、径方向外方の成形位置に存する状態で、第2スライドコア5間にせり込まされることになり、うまく型締めできなくなったり、第1と第2の両スライドコア4,5の割り面の摩耗を生じやすくなる。従って、本実施形態のように、第3プレート9を第2プレート8に接近させてから第3プレート9に基板6を接近させることが望ましい。
【0042】
また、第1早戻し機構18と第2早戻し機構19は、構造上、第2プレート8や第3プレート9が夫々第1プレート7や第2プレート8に当接する時点より前にアーム181,191が開き始めるように構成せざるを得ず、これら早戻し機構18,19だけで第2プレート8や第3プレート9を夫々第1プレート7や第2プレート8に当接するまで押し切ることは困難である。そこで、本実施形態では、第2プレート8と第3プレート9との間に第2プレート8を型締め方向に付勢する圧縮コイルスプリングから成る第1の戻しばね20を介設すると共に、基板6と第3プレート9との間に、第3プレート9を型締め方向に付勢する圧縮コイルスプリングから成る第2の戻しばね21を介設している。
【0043】
これによれば、第2プレート8が第1プレート7に当接する前に、第1早戻し機構18のアーム181,181が開き、押し棒182による第2プレート8の押圧が解除されても、第1戻しばね20の付勢力で第2プレート8が第1プレート7に当接される。同様に、第3プレート9が第2プレート8に当接する前に、第2早戻し機構19のアーム191,191が開き、押し棒192による第3プレート9の押圧が解除されても、第2戻しばね21の付勢力で第3プレート9が第2プレート8に当接される。
【0044】
図9は第2の実施形態を示している。第2実施形態の基本的な構成は上記第1実施形態と同一であり、第1実施形態と同様の部材に上記と同一の符号を付している。また、図示しないが、第2実施形態のものも、上記した第1と第2の早戻し機構18,19を備える。第1実施形態と相違するのは、第1ロック機構16を省略し、第2戻しばね21の付勢力を第1戻しばね20の付勢力より大きくして、第3プレート9に対し基板6が型開き方向に第1の所定距離L1だけ離れるまでは、第2戻しばね21の付勢力により、第3プレート9が第2プレート8に当接した状態に付勢保持されるようにしたことである。
【0045】
第2実施形態のものでは、基板6を型開き方向に移動すると、先ず、図10に示す如く、第3プレート9から基板6が型開き方向に離れ、基板6に設けたカム部材11の働きで第1スライドコア4が径方向内方に移動する。このように先ず第3プレート9に対し基板9が型開き方向に相対移動するのは、第2戻しばね21の型締め方向への付勢力が、基板6に設けたカム部材11から第1スライドコア4を介して第3プレート9に作用する型開き方向への分力と第1戻しばね20の付勢力との合力を上回るためである。
【0046】
そして、基板6が第3プレート9から第1の所定距離L1だけ型開き方向に離れると、第1牽引部材12により基板6から第3プレート9に型開き方向への牽引力が伝達される。そのため、第3プレート9が第2プレート8から型開き方向に離れ、第1スライドコア4が型開き方向に変位する。次に、第3プレート9が第2プレート8から第2の所定距離L2だけ型開き方向に離れると、図11に示す如く、第2ロック機構17による第2プレート8の拘束が解除されると共に、第2牽引部材13を介して第3プレート9から第2プレート8に型開き方向への牽引力が伝達される。この場合、第1プレート7には、第2プレート8に設けたカム部材10から第2スライドコア5を介して型開き方向への分力が作用する。そのため、第2プレート8に追従して第1プレート7も型開き方向に移動する。
【0047】
そして、図12に示す如く、第1プレート7が雌型1から第4の所定距離L4だけ離れて、それ以上の型開き方向への移動が第2ストッパ部材15により阻止されると、第2プレート8が第1プレート7に対し型開き方向に相対移動し、第2プレート8に設けたカム部材10の働きにより第2スライドコア5が径方向内方に移動する。その後、図13に示す如く、第2プレート8が第1プレート7から第3の所定距離L3だけ型開き方向に離れ、第1ストッパ部材14により第2プレート8のそれ以上の型開き方向への移動が阻止されたところで、雄型2の型開き動作が完了する。
【0048】
この状態で成形品Aを取り出した後、基板6を型締め方向に移動して雄型2の型締めを行うが、この型締めに際しての動作は上記第1実施形態と同様である。即ち、先ず、第1プレート7が雌型1に当接し、次に、第2プレート8が第1プレート7に接近して、第2スライドコア5が径方向外方に移動し、次に、第2プレート8に第3プレート9が接近して、第1スライドコア4が型締め方向に変位し、最後に、第3プレート9に基板6が接近して、第1スライドコア4が径方向外方に移動する。
【0049】
以上、特殊フレネルレンズから成る成形品Aの射出成形金型に本発明を適用した実施形態について説明したが、内面に螺子溝等のアンダーカット部を有する筒状の成形品を成形する射出成形金型にも同様に本発明を適用できる。また、上記実施形態では、第2プレート8に設ける第2スライドコア5用のカム部材10をアンギュラピン方式、基板6に設ける第1スライドコア4用のカム部材11を蟻溝方式のものに構成したが、これに限るものではなく、例えば、第1スライドコア4用のカム部材11を第2スライドコア5用のカム部材10と同様のアンギュラピン方式に構成しても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、雌型1を固定型としたが、雌型1を第1プレート7に対し接離するように駆動することも可能である。この場合、第1プレート7は定位置に固定配置でき、第2ストッパ部材15は不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明金型の第1実施形態の断面図。
【図2】(a)第1実施形態の雄型の軸線方向から見た正面図、(b)型開き状態における雄型の正面図。
【図3】図1のIII―III線で切断した雄型の切断正面図。
【図4】第1実施形態の型開きの第1段階の動作状態を示す断面図。
【図5】第1実施形態の型開きの第2段階の動作状態を示す断面図。
【図6】第1実施形態の型開きの第3段階の動作状態を示す断面図。
【図7】第1実施形態の型開きの第4段階の動作状態を示す断面図。
【図8】第1実施形態の第1と第2の早戻し機構の動作説明図。
【図9】本発明金型の第2実施形態の断面図。
【図10】第2実施形態の型開きの第1段階の動作状態を示す断面図。
【図11】第2実施形態の型開きの第2段階の動作状態を示す断面図。
【図12】第2実施形態の型開きの第3段階の動作状態を示す断面図。
【図13】第2実施形態の型開きの第4段階の動作状態を示す断面図。
【図14】(a)成形品たる特殊フレネルレンズを示す斜視図、(b)その拡大断面図。
【符号の説明】
【0052】
1…雌型、2…雄型、3…センターコア、4…第1スライドコア、5…第2スライドコア、6…基板、7…第1プレート、7a…第2スライドコア用のガイド部、8…第2プレート、9…第3プレート、9a…第1スライドコア用のガイド部、10…第2スライドコア用のカム部材、11…第1スライドコア用のカム部材、12…第1牽引部材、13…第2牽引部材、16…第1ロック機構(第3プレートを拘束するロック機構)、17…第2ロック機構(第2プレートを拘束するコック機構)、18…第1早戻し機構、19…第2早戻し機構、181,191…アーム、182,192…押し棒、183,193…アームガイド、21…第2戻しばね(第3プレートを型締め方向に付勢する戻しばね)、L1…第1の所定距離、L2…第2の所定距離、A…特殊フレネルレンズ、A1…レンズ本体、A2…環状突条。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面にアンダーカット部を有する成形品を成形する射出成形金型であって、成形品の外面を成形する雌型と、成形品の内面を成形する雄型とを備え、雄型は、雌型に向けて進退駆動される基板に固定した錐形の外面を持つセンターコアと、センターコアの周囲に周方向の間隔を空けて配置した径方向に移動自在な複数の第1スライドコアと、センターコアの周囲に各第1スライドコア間に位置させて配置した径方向に移動自在な複数の第2スライドコアとを備え、第1スライドコアの内周の周方向幅を第1スライドコアの外周の周方向幅以上とし、基板を雌型から離隔する型開き方向に移動させたとき、第1スライドコアと第2スライドコアとが順に径方向内方に移動されるようにしたものにおいて、
基板と雌型との間に、雌型側から順に、第2スライドコアを径方向に移動自在に支持する第2スライドコア用のガイド部を有する第1プレートと、第1プレートに対し型開き方向に移動自在な第2プレートと、第2プレートに対し型開き方向に移動自在で、第1スライドコアを径方向に移動自在に支持する第1スライドコア用のガイド部を有する第3プレートとを配置し、
第2プレートに、第1プレートに対する第2プレートの型開き方向への移動で第2スライドコアを径方向内方に移動させる第2スライドコア用のカム部材を設けると共に、基板に、第3プレートに対する基板の型開き方向への移動で第1スライドコアを径方向内方に移動させる第1スライドコア用のカム部材を設け、
更に、第1スライドコアが第2スライドコアに対し型開き方向に所定の変位量以上変位した状態では、第2スライドコアが第1スライドコアに対しオーバーハングした状態で径方向内方に移動可能となるように第2スライドコアを形成すると共に、
基板を型開き方向に駆動したときに、第3プレートに対し基板が型開き方向に第1の所定距離だけ離れたところで第3プレートに基板から型開き方向への牽引力を伝達する第1牽引部材と、第2プレートに対し第3プレートが型開き方向に前記変位量以上に設定される第2の所定距離だけ離れたところで第2プレートに第3プレートから型開き方向への牽引力を伝達する第2牽引部材とを設けることを特徴とするアンダーカット部を有する成形品の射出成形金型。
【請求項2】
第3プレートに対し基板が型開き方向に前記第1の所定距離だけ離れるまで第3プレートを第2プレートに当接した状態に拘束するロック機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカット部を有する成形品の射出成形金型。
【請求項3】
基板に対し第3プレートを型開き方向と逆の型締め方向に付勢する戻しばねを設け、第3プレートに対し基板が型開き方向に前記第1の所定距離だけ離れるまでは、戻しばねの付勢力により、第3プレートが第2プレートに当接した状態に付勢保持されるようにすることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカット部を有する成形品の射出成形金型。
【請求項4】
第2プレートに対し第3プレートが型開き方向に前記第2の所定距離だけ離れるまで第2プレートを第1プレートに当接した状態に拘束するロック機構を設けることを特徴とする請求項2または3に記載のアンダーカット部を有する成形品の射出成形金型。
【請求項5】
雄型の型開き状態から基板を雌型に接近する型締め方向に移動させたときに、基板からの押力で第2プレートを型締め方向に押動させる第1早戻し機構と、第3プレートを型締め方向に押動させる第2早戻し機構とを備え、
第1早戻し機構は、第2プレートに開閉自在に枢着した鋏状の一対のアームと、基板に固定され、閉じ状態の両アームの基板側の端部に当接して基板からの押力を両アームを介して第2プレートに伝達する押し棒と、第1プレートに固定され、第1プレート側にのびる両アームの延長部と協働して、第2プレートが第1プレートに当接する状態になったときに両アーム間に押し棒が挿入可能となるように両アームを開くアームガイドとで構成され、
第2早戻し機構は、第3プレートに開閉自在に枢着した鋏状の一対のアームと、基板に固定され、閉じ状態の両アームの基板側の端部に当接して基板からの押力を両アームを介して第3プレートに伝達する押し棒と、第2プレートに固定され、第2プレート側にのびる両アームの延長部と協働して、第3プレートが第2プレートに当接する状態になったときに両アーム間に押し棒が挿入可能となるように両アームを開くアームガイドとで構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のアンダーカット部を有する成形品の射出成形金型。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の射出成形金型により成形されたアンダーカット部を有する成形品であることを特徴とする物品。
【請求項7】
前記成形品は、球面状に湾曲したレンズ本体の凹面となる内面にアンダーカット部たる断面鋸歯状の環状突条を同心円状に多数形成して成る特殊フレネルレンズであることを特徴とする請求項6記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−35817(P2006−35817A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223284(P2004−223284)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】