説明

アンダーカバーのオイル受け構造

【課題】開口部を大きく設定しなくても、メンテナンス作業を行う際に、アンダーカバー部材の上面にエンジンオイルが垂れる虞を減少させることが出来るアンダーカバーのオイル受け構造を提供する。
【解決手段】オイルパンのドレインプラグ及びエンジンオイルフィルタの下方には、略平板状のアンダーカバー部材6が装着されていて、傾斜面部6aの一部で、エンジンオイルフィルタの前方方向には、エンジンオイルフィルタ交換用のインスペクションホール8が、略方形形状に開口形成されている。このインスペクションホール8には、車両下方から覆うことにより、開閉塞可能とするホールカバー部材9が設けられている。このホールカバー部材9の形状は、エンジンオイル抜き取り時に、エンジンオイルを受け止めることが出来るように垂直断面略凹状を呈するトレイ形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスペクションホールカバー部材を有効に活用できるアンダーカバーのオイル受け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンルームのアンダーカバー部材としては、エンジン下部に設けられたオイルパンのドレインプラグ及びエンジンオイルフィルタの下方に、開口部が形成されたものが知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
このような従来のアンダーカバー部材では、前記開口部を開閉塞する閉塞部材が設けられていて、この開口部周縁に装脱着可能となるように設けられている。
【0004】
次に、この従来のアンダーカバーのオイル受け構造の作用効果について説明する。
【0005】
このように構成された従来のアンダーカバーのオイル受け構造では、エンジンオイル交換時、前記閉塞部材が、前記開口部周縁から取り外されて、ドレインプラグ及びエンジンオイルフィルタにメンテナンス作業のアクセスが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開2006−168635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のアンダーカバーのオイル受け構造では、エンジンオイルのドレインプラグと、エンジンオイルフィルタとが装着されている位置が離間して設定されている車種では、開口部の開口面積を大きく設定して対応可能とすることも考えられるが、このような場合、前記アンダーカバーの剛性が低下してしまうといった問題があった。
【0008】
また、開口部の開口面積が小さいと、エンジンオイルを抜き取る際に、アンダーカバーの上面にエンジンオイルが垂れて、清掃に工数が必要となる。
【0009】
そこで、この発明は、開口部を大きく設定しなくても、メンテナンス作業を行う際に、アンダーカバー部材の上面にエンジンオイルが垂れる虞を減少させることが出来るアンダーカバーのオイル受け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のアンダーカバーのオイル受け構造では、車両のエンジンルーム下面側に装着される。
【0011】
該アンダーカバー部材には、エンジンオイルフィルタ交換用のインスペクションホールが開口形成されて、ホールカバー部材が装脱着可能に設けられ、ホールカバー部材の形状を該エンジンオイルを受け止めることが可能なトレイ形状としたアンダーカバーのオイル受け構造であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアンダーカバーのオイル受け構造では、エンジンオイルフィルタ交換時に、前記アンダーカバー部材のインスペクションホールから、前記ホールカバー部材を取り外して、該エンジンオイルフィルタの下方に設置する。
【0013】
該ホールカバー部材は、トレイ形状を呈しているので、エンジンオイルフィルタを取り外した際に垂れるエンジンオイルを、受け止めることが出来、開口部を大きく設定しなくても、メンテナンス作業を行う際に、アンダーカバー部材の上面にエンジンオイルが垂れる虞を減少させることが出来る
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態のアンダーカバーのオイル受け構造で、車両全体の構成のうち、アンダーカバー部材を拡大して、車両斜め下方から見た分解斜視図である。
【図2】実施の形態のアンダーカバーのオイル受け構造で、アンダーカバー部材から、ホールカバー部材を取り外した様子を説明する車両前方から見た正面図である。
【図3】実施の形態のアンダーカバーのオイル受け構造で、アンダーカバー部材から、ホールカバー部材を取り外した様子を説明する車両下方から見た下面図である。
【図4】実施の形態の実施例1のアンダーカバーのオイル受け構造で、アンダーカバー部材から取り外されたホールカバー部材を、車体下部に保持させる様子を説明する模式的な側面図である。
【図5】実施の形態との比較の為に、図示するアンダーカバー構造で、アンダーカバー部材から取り外されたホールカバー部材とは、別体でオイル受け部材を用いている様子を説明する模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態のアンダーカバーのオイル受け構造を、図面に基づいて説明する。
【0016】
まず、図1乃至図5を用いて、全体の構成から説明すると、この実施の形態のアンダーカバーのオイル受け構造が適用される車両1では、車体前部に、駆動力源としてのエンジン3が収納されるエンジンルーム2が設けられている。
【0017】
このエンジンルーム2内に収納された前記エンジン3は、図4に示すように、エンジンマウント部3a…に支持されていて、このエンジン3の下部には、オイルパン3bが設けられている。
【0018】
このエンジン3の潤滑に用いられるエンジンオイルは、図4に示すように、このオイルパン3bの近傍に設けられたエンジンオイルフィルタ装着部3cに装着されたエンジンオイルフィルタ5によって、濾過される。
【0019】
また、このオイルパン3bには、メンテナンス時に用いるドレイン孔を開閉塞可能なドレインプラグ4が装着されている。
【0020】
更に、これらのオイルパン3bのドレインプラグ4及びエンジンオイルフィルタ5の下方には、略平板状のアンダーカバー部材6が、このエンジンルーム2の下面側を覆うように装着されている。
【0021】
このアンダーカバー部材6は、樹脂製材料で構成されていて、図1に示す様に、車両前,後側辺の略四隅近傍が、複数の固定ボルト部材7…を用いて、前記車両1の下面側に固定されるように構成されている。
【0022】
また、このアンダーカバー部材6には、車両後方に向けて、斜めに下る方向へ傾斜する傾斜面部6aが、車両前後方向で略中央部分に形成されていて、この傾斜面部6aの車両前側に一体に設けられる前縁部の地上高が、車両後側に一体に設けられる後縁部の地上高よりも高くなるように設定されている。
【0023】
この実施の形態の前縁部には、図4に示す様に、車幅方向に長手方向を沿わせて垂下状態で固着されるガイド板部材18が、配設されている。
【0024】
そして、この傾斜面部6aの一部で、前記エンジンオイルフィルタ5の前方方向には、エンジンオイルフィルタ交換用のインスペクションホール8が、略方形形状に開口形成されている。
【0025】
このインスペクションホール8は、前記ドレインプラグ4が装着されている部分の真下に位置すると共に、このインスペクションホール8の開口の周縁部には、被取付部としてのボルト孔8a…が、間隔を置いて複数個開口形成されている。
【0026】
また、このインスペクションホール8には、この周縁部に装着されて、車両下方から覆うことにより、開閉塞可能とするホールカバー部材9が、設けられている。
【0027】
このホールカバー部材9には、所定の幅方向寸法を有する周縁フランジ部9aが一体に形成されている。
【0028】
この周縁フランジ部9aには、前記ボルト孔8a…に各々螺合される取付ボルト部材10…が挿通される挿通孔9b…が、前記ボルト孔8a…に各々対応する位置に設けられていて、装脱着可能としている。
【0029】
そして、このホールカバー部材9の形状が、エンジンオイル抜き取り時に、エンジンオイルを受け止めることが出来るように垂直断面略凹状を呈するトレイ形状に構成されている。
【0030】
このホールカバー部材9のトレイ形状では、底面部9cが、略平坦に形成されて、地表に載置された状態では、安定させて載置可能である。
【0031】
また、図4に示すように、車両1のエンジンルーム2の下面側で、前記アンダーカバー部材6の後縁部6b及びクロスメンバ部材11の上面部11aによって形成される凹部に係合して、保持されるように、前記底面部9cの前縁部近傍の形状が、一部突起されている。
【0032】
そして、前記エンジンオイルフィルタ5交換時に、エンジンオイルEOが垂れる位置に、このホールカバー部材9が、トレイ状の上面側を上向きとして、安定して配設可能となるように形成されている。
【0033】
次に、この実施の形態のアンダーカバーのオイル受け構造の作用効果について説明する。
【0034】
この実施の形態では、エンジンオイルフィルタ5を交換する際に、図1に示す様に、前記アンダーカバー部材6のインスペクションホール8の周縁に設けられたボルト孔8a…から、前記各取付ボルト部材10…を抜くことにより、前記ホールカバー部材9が取り外される。
【0035】
そして、図4中実線位置で示すように、前記エンジンオイルフィルタ5の下方に位置するように、前記車両1のエンジンルーム2の下面内側で、前記アンダーカバー部材6の後縁部6b及びクロスメンバ部材11の上面部11aの間に形成される凹部に、前記底面部9cの前縁部近傍の突起部分が、上方から係合されて、安定した状態で設置される。
【0036】
このホールカバー部材9の上面側は、トレイ形状を呈しているので、前記エンジンオイルフィルタ5を取り外した際に垂れるエンジンオイルEOを、確実に受け止めて、一定量、溜めることが出来る。
【0037】
しかも、この実施の形態のホールカバー部材9は、図3に示す様に、外周縁に設けられた所定の幅方向寸法を有する周縁フランジ部9aによって、エンジンオイルEOを受け止める面積が増大されているので、周囲に一部飛散したエンジンオイルEOも、捉えることが出来る。
【0038】
このため、更に、確実に、前記アンダーカバー部材6の上面及び前記クロスメンバ部材11の上面部11aに、エンジンオイルEOが垂れる虞を減少させることが出来る。
【0039】
更に、この実施の形態では、前記開放された前記インスペクションホール8が、前記オイルパン3bのドレインプラグ4が装着されている部分の略真下に位置するので、エンジンオイルEOの抜き取り作業が容易に行える。
【0040】
しかも、この実施の形態では、前記インスペクションホール8が、車両後方へ向けて傾斜する前記傾斜面部6aに開口形成されているので、前記エンジンオイルフィルタ5が、このインスペクションホール8よりも、車両後方位置に存在しても、取り換えメンテナンス作業時に、図4中矢印で示す様に、斜めに装脱着しやすい。
【0041】
従って、一つのインスペクションホール8の開口面積を、さほど大きく設定しなくても、前記オイルパン3bのドレインプラグ4部分からのエンジンオイルEO抜き取り作業及びエンジンオイルフィルタ5の交換作業を行うことができる。
【0042】
よって、メンテナンス性が良好であると共に、前記アンダーカバー部材6に開口形成されるインスペクションホール8の拡大による剛性の低下を抑制出来、アンダーカバー部材6全体の軽量化を図ることが出来る。
【0043】
更に、このホールカバー部材9のトレイ形状を呈する部分によって、受け止められたエンジンオイルEOは、廃却された後、再度、前記取付ボルト部材10…が用いられて、このホールカバー部材9の周縁フランジ部9aが、前記インスペクションホール8の開口の周縁部に装着される。
【0044】
この実施の形態では、前記インスペクションホール8の開口が、前記アンダーカバー部材6のうち、前縁部から、車両後方に向けて、斜めに下る方向へ傾斜する傾斜面部6aに位置するように、車両前後方向で略中央部分に形成されている。
【0045】
この傾斜面部6aの車両前側に一体に設けられる前縁部の地上高は、車両後側に一体に設けられる後縁部の地上高よりも高くなるように設定されている。
【0046】
このため、図4中二点鎖線で示す様に、このアンダーカバー部材6が、エンジンオイルを溜めることが出来る断面略凹状のトレイ形状を呈して、車両上下方向で所定の厚み寸法を有していても、アンダーカバー部材6の比較的低い地上高を有する後縁部から下方に向けて、凸設される突出量を減少させることが出来、装着された状態では、前記アンダーカバー部材6の一部として再利用できる。
【0047】
図5に示す比較例では、前記アンダーカバー部材6に開口形成されたインスペクションホール8には、車両下方から覆うことにより、開閉塞可能とする略平板形状のホールカバー部材19が、設けられている。
【0048】
また、前記エンジンオイルEOを受け止める上面略凹状を呈する受け皿形状のオイル受けトレイ部材20が、このホールカバー部材19とは、別部材で設けられている。
【0049】
この比較例では、前記ホールカバー部材19とは、別体で、オイル受けトレイ部材20を準備して、車両1の下方で、地表等に載置することにより、前記エンジンオイルEOを受け止めるように構成されている。
【0050】
このため、エンジンオイルフィルタ5の交換時、クロスメンバ部材11の上面部11a等の車体構成部品の上面側に垂れたエンジンオイルEOが、前記アンダーカバー部材6の後縁部6b及びクロスメンバ部材11の上面部11aの間に形成される間隙21から、流下して、このオイル受けトレイ部材20によって回収される。
【0051】
よって、この比較例では、前記クロスメンバ部材11の上面部11a等の車体構成部品等、周辺にエンジンオイルEOが掛かり、飛散したエンジンオイルEOの拭き取り清掃作業等に工数が必要となる。
【0052】
これに対して、前記実施の形態では、車両1に設けられてなるアンダーカバー部材6に開口形成されて、エンジンオイルEOの抜き取り作業等のメンテナンスを行うドレインプラグ4の脱着作業用のインスペクションホール8を、閉塞しているホールカバー部材9を取り外して用いることができる。
【0053】
このため、前記比較例のように、別途、前記オイル受けトレイ部材20を準備する必要が無い。
【0054】
また、エンジンルーム2の下面内側で、前記アンダーカバー部材6の後縁部6b及びクロスメンバ部材11の上面部11aの間に形成される凹部に、安定させて前記底面部9cの前縁部近傍の突起部分を、上方から係合させることができる。
【0055】
このため、エンジンオイルフィルタ5が装着されていた部分の真下に確実に位置させて、周辺の車体構成部品等にエンジンオイルEOが掛かったり、或いは飛散する虞が無く、エンジンオイルEOの拭き取り清掃作業の手間を省くことが出来る。
【0056】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態のアンダーカバーのオイル受け構造に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0057】
即ち、前記実施の形態のアンダーカバーのオイル受け構造では、エンジンルーム2の下面内側で、前記アンダーカバー部材6の後縁部6b及びクロスメンバ部材11の上面部11aの間に形成される凹部に、安定させて上方から係合させることができるように、前記ホールカバー部材9の前記底面部9cの前縁部近傍に突起部分を形成しているが、特にこれに限らず、前記エンジンオイルフィルタ5が装着されていた部分の真下に確実に位置させることができるものであれば、ボール形形状等、前記ホールカバー部材9のトレイ形状がどのような形状、数量及び材質であってもよい。
【0058】
また、前記インスペクションホール8も、前記ホールカバー部材9の形状に合わせて、メンテナンス作業が行える大きさであれば良く、円形、楕円形、長円形、三角形、若しくは、台形等の多角形形状であっても、形状、数量及びアンダーカバー部材6や、取付部材の材質等が特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
前記実施の形態では、この発明のアンダーカバーのオイル受け構造が適用される構成の一例として、エンジン3を収容するエンジンルームを車体前部に有する車両1の構成を中心に説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、ハイブリッドカー等、メンテナンス交換が必要とされる潤滑油を用いるものであれば、車体の前,後部或いは、中央部等、どのような自動車の部分に配置されるアンダーカバーのオイル受け構造に用いてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 エンジンルーム
3c エンジンオイルフィルタ装着部
5 エンジンオイルフィルタ
6 アンダーカバー部材
8 インスペクションホール
9 ホールカバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム下面側に装着されるアンダーカバー部材に、エンジンオイルフィルタ交換用のインスペクションホールが開口形成され、該インスペクションホールに、ホールカバー部材を装脱着可能に設けると共に、該ホールカバー部材の形状を該エンジンオイルを受け止めることが可能なトレイ形状としたことを特徴とするアンダーカバーのオイル受け構造。
【請求項2】
前記ホールカバー部材は、エンジンに装着されたエンジンオイルフィルタの下方で、エンジンオイルフィルタ交換作業の際に、エンジンオイルフィルタ装着部またはエンジンオイルフィルタから、前記エンジンオイルが垂れる位置に保持されることを特徴とする請求項1記載のアンダーカバーのオイル受け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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