説明

アンチセンス製剤

室温安定及び最小凝集液体製剤は、配列番号1を含む:又は3個以下の不連続な塩基が配列番号1と異なる変異体オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドと、単糖類及び二糖類並びに/又は糖アルコールから成る群から選択される凝集防止化合物を含む水性担体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温貯蔵安定なオリゴヌクレオチド液体製剤に関する。より特別には、本発明は、凝集体形成も最小化する、Hsp27 mRNAに結合するように設計されたホスホロチオエートオリゴヌクレオチドの安定な製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Hsp−27アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、Hsp27 mRNAに結合してヒトHsp27タンパク質の産生を阻害するように設計される。米国特許第7,101,991号は、種々のHsp27 ASOを記載する。
【0003】
標的pH7.4の等張液において、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製されたOGX−427、すなわちHsp27 ASO配列番号1の初期の動物試験用量は、良好な生物学的効果を示した。しかし、より高濃度のASOでは、OGX−427製剤は、周囲及び冷蔵の両方の条件下で数日後に非共有凝集体を形成し、結果として臨床使用には望ましくなかった。PBS製剤溶液は、類似のアンチセンス産物(クラスタリンASOに関する米国特許第6,900,187号を参照のこと)については十分に機能し、類似の製剤溶液がHSP27 ASOに使用され得ると期待されていた。しかし、上記に説明及び以下に示されるように、HSP27 ASOのPBS溶液は、臨床製剤として実用的ではなかった。
【0004】
ASO製剤の注射可能な投与のための液体製剤は、適切な長期安定性を確保するため習慣的に冷蔵されている。オリゴヌクレオチド製剤の、使用直前の再構成による粉末(フリーズドライ)への凍結乾燥は、製剤送達系に適切な安定性プロフィールを提供するのに利用することができる。しかし、オリゴヌクレオチドの液体製剤、特に周囲(室温)条件下で安定なままであるものには著しい商業利益がある。米国特許公開第2003/0119768号は、c−myc mRNAを標的にする15merアンチセンス配列、すなわちAACGTTGAGGGGCAT(配列番号2)に関する知見を公開する。4個の連続するG残基を含むこの配列は、毒性が増加した、形成された多量体にまで凝集することが観察された。したがって該公開は、使用前の多量体の破壊を開示した。開示された1つのアプローチは、凍結乾燥前にマンニトール、スクロース、グルコース、トリアロース(trialose)又はラクトースなどの単糖類の抗凍結剤を添加することである。これは、水により再構成させた際の多量体形成を減少させることが見出された。しかし、長期の溶液安定性及び凝集回避については情報が提供されなかった。
【0005】
凝集しやすいASOは、その生物学的有効性を問わず企業の薬剤パイプラインにとって好ましくない臨床候補であり、さらに開発されることはないであろう。しかし、インビボでのHsp27 ASOの生物学的特性はきわめて好ましいため、長期間、液体製剤で貯蔵された場合の凝集及び安定性の問題を克服する努力が行われた。
【0006】
さらに、ASO治療剤は依然として製造するのに費用がかかること、及びそれらの廃棄物又は貯蔵コストのいかなる低減も付加利益となり、商業化可能な薬剤と商業化可能でない薬剤との間の差をもたらす可能性があることも留意されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
許容可能な溶液安定性を提供し、配列番号1を有するASOの非共有凝集を減少させるであろう製剤を見出すためのテストでは、マンニトール(5%)が、24週間にわたって、−20℃から60℃の範囲の温度できわめて低い凝集レベルを維持できることが見出された。類似の結果は、マンニトールの代わりにデキストロースが使用された場合に観察された。全体的な安定性は、この期間、40℃まで良好であった。故に、本発明は、配列番号1を含む:又は3個以下の不連続な塩基が配列番号1と異なる変異体オリゴヌクレオチドを含むASO、並びにデキストロース及びラクトースなどの単糖類及び二糖類、並びにマンニトール及びソルビトールなどの糖アルコールから選択される凝集防止化合物を含む水性担体を含む室温安定最小凝集体製剤の液体製剤を提供する。特定の実施形態では、ASOは、配列番号1又は3個以下の不連続な塩基が配列番号1と異なる変異体から成る。担体は、リン酸バッファー又はトリスバッファーを含むこともできる。
【0008】
本発明の他の態様及び特徴は、添付図と併せて本発明の特定の実施形態の以下の記載を再検討すると当業者には明白になるであろう。本発明の実施形態を図示する図は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】経時的な凝集体の増加を図示する、40℃における貯蔵0、3及び5日目のリン酸緩衝生理食塩水(約70〜75mg/mL)中のOGX−427に関する2つのピーク(左のピークはOGX−427オリゴヌクレオチド単量体であり、右のピークは凝集体である)を示す拡大HPLCクロマトグラムである。
【図2】OGX−427オリゴヌクレオチド及びこの凝集体(右のピーク)を示すHPLCクロマトグラムである。高度に凝集された試料(>50%)が、PBS中、200mg/mL OGX−427を含有するように調製され、分析前に4日間、周囲条件で経時させた溶液から生成された。
【図3】バッファーなしの5%デキストロース水性製剤中、0、3及び5日目、40℃、25mg/mLでのOGX−427の拡大HPLCクロマトグラムを示す図である(バッファーなしの5%マンニトール製剤は事実上同一の結果をもたらした、表1を参照のこと)。
【図4】凝集体形成の増加を示す、0、3及び5日目における、40℃のカプチソル(Captisol)(商標)製剤中25mg/mLのOGX−427の拡大HPLCクロマトグラムの図である。
【図5】5つの製剤、すなわち:5%マンニトール(V1)、10mMトリスバッファー(pH7.4)中5%マンニトール(V2)、10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)中5%マンニトール(V3)、5%デキストロース(V4)、及び10mMトリスバッファー(pH7.4)中5%デキストロース(V5)に関する、貯蔵温度60℃、4週間にわたるOGX−427の主なピーク面積%純度(約25mg/mL)のプロット表示である。
【図6】温度−20、2〜8、25、40及び60℃、24週間にわたる、5%マンニトール及び10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)製剤(V3)の安定性(OGX−427濃度により示された)のグラフプロット表示である。
【図7】温度−20℃、2〜8℃、25℃、40℃及び60℃、24週間にわたる、5%マンニトール及び10mMトリスバッファー(pH7.4)製剤(V2)の安定性のグラフ表示である。
【図8】ガラスバイアル中の、12週時点での対応する安定性試料(V1〜V5)の写真である。約25mg/mLの濃度でのOGX−427の全般的分解の影響は、溶液の黒ずみとして容易に見ることができる。バイアル19=10mMリン酸バッファー中5%マンニトールすなわちV3;バイアル18=10mMトリスバッファー中5%マンニトールすなわちV2、バイアル17=5%マンニトールすなわちV1;バイアル16=10mMトリスバッファー中5%デキストロースすなわちV5;及びバイアル15=5%デキストロースすなわちV4。
【発明を実施するための形態】
【0010】
典型的なオリゴヌクレオチド化合物では、リン酸基は、隣接するヌクレオシドを互いに共有結合させて線状高分子化合物を形成する。オリゴヌクレオチド構造内では、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのインターヌクレオシド骨格を形成すると言われる。RNA及びDNAの正常な結合又は骨格は、3’から5’のホスホジエステル結合である。OGX−427は、熱ショックタンパク質27(Hsp27)の発現を阻害する標的ASO治療剤である。OGX−427の原薬又は活性医薬成分(API)は、4−12−4 MOEギャップマーオリゴヌクレオチドとして一般に分類されるホスホロチオール化(phosphorythiolated)インターヌクレオチド結合を有する合成オリゴヌクレオチドである(ギャップマーの考察については、参照により本明細書に組み込まれているIsis Pharmaceuticals社特許EP 0618925、及びOGX−427に関する具体的な情報については米国特許第7,101,991号を参照のこと)。
【0011】
OGX−427(Hsp27 ASO配列番号1)は、
【化1】


(式中、下線を付したヌクレオシド
【化2】


は、グアノシン、アデノシン、5−メチルシチジン及び5−メチルウリジンリボヌクレオシドの2’−O−メトキシエチル(2’−MOE)修飾を示し;G、MeC、及びTは、2’−デオキシグアノシン、2’−デオキシ−5−メチルシチジン、及び2’−デオキシチミジンデオキシリボヌクレオシドを表し;インターヌクレオチド結合は、ホスホロチオエートジエステル(ナトリウム塩)である)
として表すことができる。
【0012】
OGX−427のCAS登録番号(CAS#)は915443−09−3であり、CAS索引名は「DNA,d(P−チオ)([2’−O−(2−メトキシエチル)]rG−[2’−O−(2−メトキシエチル)]rG(−{2’−O−(2−メトキシエチル)]rG−[2’−O−(2−メトキシエチル)]rA−m5rC−G−m5rC−G−G−m5rC−G−m5rC−T−m5rC−G−G−2’−O−(2−メトキシエチル))m5rU−{2’−O−(2−メトキシエチル)]m5rC−[2’−O−(2−メトキシエチル)]rA−[2’−O−(2−メトキシエチル)]m5rU)、ノナデカナトリウム(nonadecasodium)塩である。
【0013】
本発明は、OGX−427製剤及びOGX−427と実質的に同じであるアンチセンス治療剤製剤に適用する。故に、これらは配列番号1から成る、すなわち本発明の製剤におけるASOは、Hsp27発現を阻害する能力を保持する、配列番号1と比べて、3個以下の不連続な塩基が変化されたこの配列のオリゴヌクレオチド変異体から成る。ASOはまた、依然としてオリゴヌクレオチド(100塩基長未満)であり、かつHsp27発現の阻害能力を保持しつつ、末端塩基の付加により配列番号1すなわち上述の変異体より長くもなり得る。このようなより長いオリゴヌクレオチドは、配列番号1と比べて3個以下の不連続な塩基が変化されたこの配列のオリゴヌクレオチド変異体を含むと言われる。
【0014】
OGX−427の特定の配列は、わずか20のオリゴヌクレオチド配列中のグアノシンリボヌクレオシド(G)の数により凝集の可能性が影響されるであろうことを示唆した。OGX−427には、配列のほぼ50%を含む数である9個のグアノシン残基がある。凝集は、強力なワトソン−クリックの相補的塩基相互作用又は高次構造の形成が原因であり得るが、任意の特定の凝集メカニズムに縛られることは出願人の意図ではない。
【0015】
前述の通り、OGX−427用製剤の第一選択は、PBS溶液、pH7.4であった。より高濃度では、HPLCクロマトグラムにおける別のピークが該溶液中で観察された。このピークは、非共有凝集体であることが後に判定された。
【0016】
逸話的歴史的情報は、凝集問題の可能性を有するアンチセンス化合物は基本的に開発されておらず、凝集及び乏しい安定性の問題をいかに解決することができるかについて当技術分野に何の教示も残していないことを示唆している。
【0017】
したがって、出願人は、幾つかの実験ニーズ、すなわちOGX−427の必要とされる可溶性及び安定性並びに静脈内(IV)投与とのOGX−427産物の適合性を達成するために可能性のある賦形剤を選択した。
【0018】
PBS中OGX−427、及びOGX−427の凝集に影響する可能性があると仮定された条件及びさまざまなタイプの賦形剤をモニタリングする対照の役割を果たした。塩化ナトリウム又は他の塩の存在下で形成された非共有凝集体の破壊は、製剤設計を可能にすることに役立ち得る。同様に、シクロデキストリンは、OGX−427凝集体の形成を防止し得る薬剤をカプセル化することができる。有機共溶媒の導入は、さもなければ凝集を可能にする水素結合現象を破壊することができる。このカテゴリー内で、DMSOは、凝集体形成の逆転に役立つことがOncoGenex社により具体的に知られていた。単糖を含有する製剤もまた、凝集を阻害するように水素結合相互作用を変えることができる。異なるタイプの賦形剤をスクリーニングすると、表1に示されたようなHsp27 ASO配列番号1の凝集を防止する能力の点で、これらの製剤の間に著しいバリエーションが観察された。
【0019】
一般に糖/糖アルコールは有望とみられたが、実験努力は、賦形剤のこれらのクラスの代表となりそうな限られた選択を中心とした。さらなる開発は、マンニトール及びデキストロースを含有するものを含む幾つかのプロトタイプ製剤をもたらし、これらは、凝集体形成及び全般的安定性について24週間まで定期的に調製及び試験された。これらの試験からの結果は、数週間40℃まででの貯蔵においても、選択製剤に関する安定性の著しいエビデンスを達成した。結果は、OGX−427のための可能性のある長期室温貯蔵液体製剤を示している。
【0020】
一般的なアンチセンスオリゴヌクレオチドへのこの知見の外挿結果をもとに、関連化合物(「ホスホルチオエート(phosphorthioate)オリゴヌクレオチド」)、特に高GC含量を有する、例えば50%を超える、より具体的には65%を超えるものは、マンニトール、デキストロース若しくは他の糖又は糖アルコール、及び場合により本発明におけるようなリン酸バッファーなどの適切なバッファーを使用して液体製剤において室温で安定にすることができる。
【0021】
このような組成物は、好ましくは、アンチセンスが糖又は糖アルコールを有する液体製剤において調製され、及び6時間を超える、場合により12時間又は18時間を超える期間、液体状態で維持され、この期間の後、液体製剤は治療組成物として使用される方法で利用される。
【0022】
材料及び方法
機器
HPLCシステムは、UV検出及びオートサンプラーを備えたShimadzu LC−10、並びにDelta Pak(商標)HPLCカラム(C18 5μm 300Å 2.1×150mm)であった。
【0023】
薬品
D−マンニトール、デキストロース、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、アセトニトリル、ソルビトール、ラクトース、スクロース、酒石酸、ポリソルベート80ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、リン酸バッファー、PEG−300、PEG−400及びジメチル−アセトアミドなどの標準バッファー、糖及び溶媒は、Sigma社(セントルイス、MO)、Aldrich社(セントルイス、MO)、Spectrum Chemicals社(ガーディナ、カリフォルニア)、VWR社(ウェストチェスター、PA、又はJT Baker社(フィリップスバーグ、NJ)から得られた。
【0024】
OGX−427は、契約メーカーにより本出願人のために製造された。
【0025】
Cremphor(商標)ELポリエトキシル化ヒマシ油、Poloxamer(商標)407アルファ−ヒドロ−オメガ−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)、aポリ(オキシプロピレン)bポリ(オキシエチレン)aブロックコポリマー、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール、及びプロピレングリコールなどのポリマーは、BASF社(フローシャムパーク(Florsham Park)、NJ)から得られた。
【0026】
シクロデキストリンであるカプチソル(商標)は、CyDex社(レネクサ、KS)の製品である。
【0027】
方法
Hsp27 ASO配列番号1は、25mL容量フラスコにおいて250μg/mL Hsp27 ASO配列番号1の蒸留水中濃度で、分析ごとに基準として調製された。これは、5段階の線形曲線を確立するための、25〜250μg/mLからの希釈の開始溶液の役割を果たした。各較正点はHPLCに1回挿入された。
【0028】
RP−HPLC方法
試験で生成された試料は、50℃のカラム温度で、並びに20mM テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩及び20mM トリス塩基の移動相「A」、pH7.8;アセトニトリルの移動相「B」;及び水の移動相「C」を用いて、逆相(RP)−HPLC方法により分析された。流速は0.35mL/分であった。試料は適切な濃度まで水で希釈され、HPLCバイアルに移され、注入前に冷却されたオートサンプラーで保持された。注入容量は10μLであり、検出は260nmでのUV吸収によった。
【0029】
Hsp27 ASO安定性及び凝集体形成は、上記のようなHPLC方法を用いて評価され、正常及び凝集ピークでの化合物のパーセンテージとして計算又は濃度mg/mLとして記録された。
【実施例】
【0030】
(例1)
賦形剤スクリーニング試験
提唱する賦形剤(proponent excipients)は、静脈内(IV)投与のための液体及び/又は凍結乾燥製剤の可能性を提供するように選択した。OGX−427のオリジナルPBS製剤は、対照(約75mg/mL)の役割を果たした。
【0031】
周囲温度及びより高濃度よりも、40℃でより速く凝集する以前の知見に基づき「加速条件」をシミュレートするため、製剤を40℃、75mg/mLの濃度で経時させた。
【0032】
150mg/mL貯蔵溶液を調製した後、試験用の標的濃度の2倍に調製したビヒクルによりアリコートを1:1に希釈した。最終溶液は、標的濃度の約75mg/mL OGX−427及び賦形剤を含有した。各試料を1.5mL管で調製し、次いで管を塞ぎ、簡単にボルテックスして試料を混合した。調製後、試験のため試料を40℃チャンバーに移した。全ビヒクル(共溶媒ベースのビヒクルを除く)は、OGX−427溶液の調製で使用する前に濾過した。全試験試料は、貯蔵溶液が完成する約60分以内に調製した。
【0033】
HPLC試料調製
OGX−427溶液を水中で1000倍に希釈して、HPLCに注入するための750μg/mL試料を得た。調製時(T=0)及び40℃の貯蔵5(T=5)日における試料について記録された情報が、表1に示されている。3日すなわちT=3についての結果は示されていないが、T=5データと同じ傾向をたどった。図3、4a及び4bは、デキストロース、PBS、及び10%カプチソル(商標)製剤についての結果を反映している。
【表1】

【0034】
5日の期間内に及び加速テスト条件下で観察された幾つかの賦形剤の成績には明白な差があった。OGX−427凝集量の減少又は防止、すなわち単量体としてのOGX−427の維持において、オリジナルPBS製剤よりも著しく良好であったものには、5%デキストロース及び5%マンニトール並びにスクロース、ラクトース及びソルビトールなどの関連賦形剤が含まれた。
【0035】
有機共溶媒は、水素結合及びこれに続く凝集体形成を妨げることが期待されていた可能性はあるものの、有機共溶媒の全体的挙動が凝集体形成の防止に役立たなかったことから、最初のスクリーニング後、有機共溶媒についてのさらなるテストは行われなかった。
【0036】
(例2)
液体プロトタイプ製剤
デキストロース又はマンニトールに焦点をあてたさらなる実験は、リン酸ナトリウム若しくはトリスバッファーのいずれかと併用して、又は緩衝せずに行った。
【0037】
OGX−427が25mg/mLに調製された5つの液体プロトタイプ製剤を、温度及び時点を通じて試験した:5%マンニトール(V1)、5%マンニトール及び10mMトリスバッファー(pH7.4)(V2)、5%マンニトール及び10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)(V3)、5%デキストロース(V4)、並びに5%デキストロース及び10mMトリスバッファー(pH7.4)(V5)。
【0038】
これらのプロトタイプ溶液は全て、4週間までの−20℃、5℃、25℃、及びさらに40℃での純度結果に対して比較的安定なままであった。同様に、溶液のpH及びオスモル濃度は安定なままであった。全ての製剤は、60℃で著しく分解することを証明した(図8に示されているように)。しかし、プロトタイプV1、V4及びV5は、2週時点までに、60℃で貯蔵した製剤において変色及び微粒子を裸眼により観察し得たことから、V2及びV3ほど十分に機能しなかった(図5)。データは、これらの3つの製剤がより厳しい条件では一次分解を示すことを示唆した。故に、(緩衝又は非緩衝)デキストロースは5日目の凝集テストでは多少の見込みを示したが、きわめて高温度(60℃)で貯蔵した場合、緩衝マンニトールに劣っていた。24週時点までの条件では、これらの緩衝マンニトールプロトタイプ製剤V2及びV3は、透明、無色、及び全ての貯蔵条件からの可視粒子がないように見えた。多少の変動性がV2(表2)及びV3(表3)の%凝集体成績において観察されたが、観察された凝集量は低レベルで維持された(及び特定条件下での可逆性によるケースでより低くなり得る)。
【表2】


【表3】

【0039】
加速経時条件下(40℃まで)でさえ、マンニトール−リン酸緩衝溶液は、冷蔵を必要とするオリゴヌクレオチドの典型的な液体製剤と比べて良好な安定性を提供した。別の興味深い知見は、トリスバッファーがリン酸ナトリウムバッファーほど機能しないことであった(各製剤に関する24週間のさまざまな温度条件を示す図6及び7、並びにより短い期間(4週)での5つの全プロトタイプを示す図5を参照のこと)。
【0040】
図6に示されているように、V3製剤(5%マンニトール及び10mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)中の25mg/mL OGX−427)の純度は、40℃まで及び40℃を含む貯蔵に関する試験経過を通じて十分に保存され、製剤が純粋オリゴヌクレオチドのようにOGX−427を維持していることを示唆した。OGX−427濃度の喪失は、2週時点までに60℃で貯蔵された製剤で観察された。しかし、この温度でさえ、分析は、60℃での純度の喪失が凝集体形成よりむしろ単量体の分解を反映するものであることを示した。
【0041】
故に、本発明の製剤の幾つかの実施形態では、ASOはマンニトールを含む水性担体において調製される。マンニトール量は、所望の貯蔵期間に安定性を提供するのに十分な量(例えば1から10重量%)であるべきである。好ましい製剤では担体は、生体適合pH、例えば7.1から7.5の間で緩衝される。具体的な適切なバッファーには、リン酸バッファー(pH7.4)又はトリスバッファー(pH7.4)が含まれる。これらの製剤は、冷蔵条件下及び室温においても長期貯蔵期間安定である。他の実施形態では、本発明の製剤では、ASOはデキストロースを含む水性担体において調製される。デキストロース量は、所望の貯蔵期間に安定性を提供するのに十分な量(例えば1から10重量%)であるべきである。好ましい製剤では担体は、生体適合pH、例えば7.1から7.5の間で緩衝される。具体的な適切なバッファーには、リン酸バッファー(pH7.4)又はトリスバッファー(pH7.4)が含まれる。これらの製剤は、冷蔵条件下及び室温においても液体溶液として長期貯蔵期間安定である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1を含む:又は3個以下の不連続な塩基が配列番号1と異なる変異体オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドと、
(b)単糖類及び二糖類並びに/又は糖アルコールから成る群から選択される凝集防止化合物を含む水性担体と
を含む、室温安定及び最小凝集液体製剤。
【請求項2】
担体がさらにリン酸バッファーを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
担体がさらにトリスバッファーを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号1、又は3個以下の不連続な塩基が配列番号1と異なる変異体オリゴヌクレオチドから成る、請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドが、次のような修飾:
【化1】


(式中、下線を付したヌクレオシド
【化2】


は、グアノシン、アデノシン、5−メチルシチジン及び5−メチルウリジンリボヌクレオシドの2’−O−メトキシエチル(2’−MOE)修飾を示し;G、MeC、及びTは、2’−デオキシグアノシン、2’−デオキシ−5−メチルシチジン、及び2’−デオキシチミジンデオキシリボヌクレオシドを表し;インターヌクレオチド結合は、ホスホロチオエートジエステル(ナトリウム塩)である)
を有するA配列番号1から成る、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
凝集防止化合物がマンニトールである、請求項1から5までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
マンニトールが5重量%の量で水性担体中に存在する、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
凝集防止化合物がデキストロースである、請求項1から5までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
デキストロースが5重量%の量で水性担体中に存在する、請求項6に記載の製剤。
【請求項10】
液体製剤中のアンチセンスを糖又は糖アルコールと併せるステップと、6時間を超える、場合により12時間又は18時間を超える期間、液体状態で製剤を維持するステップであって、前記期間の後、液体製剤がインビボ注射のための治療組成物として使用される上記ステップとを含む、インビボ注射のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの調製方法。
【請求項11】
アンチセンスが請求項1から9までのいずれか一項により調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アンチセンスが65%以上、例えば75%以上のGC含量を有する、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−528657(P2011−528657A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518817(P2011−518817)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/050382
【国際公開番号】WO2010/009038
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(510033701)オンコジェネックス・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】