説明

アンチブロッキング剤マスターバッチおよびポリプロピレンフィルム用組成物およびその製造方法

【課題】 端面色、外観(フィルムの白斑点)、透明性、耐ブロッキング性、ホットスリップ性および耐スクラッチ性に優れたフィルムを得ることができるアンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物および、アンチブロッキング剤マスターバッチ製造方法を提供する。
【解決手段】 上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機を用いて、メインホッパーから供給されるオレフィン重合体100重量部に対して、サイドフィード供給口から無機微粒子アンチブロッキング剤1〜19重量部を供給し、溶融混練して得られるアンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物および、アンチブロッキング剤マスターバッチ製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物および、アンチブロッキング剤マスターバッチの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、端面色、外観(フィルムの白斑点)、透明性、耐ブロッキング性、ホットスリップ性および耐スクラッチ性に優れたフィルムを得ることができるアンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物および、アンチブロッキング剤マスターバッチ製造方法に関するものである。
特に、端面色と透明性に加えて、外観(フィルムの白斑点)、耐ブロッキング性、ホットスリップ性および耐スクラッチ性に優れたフィルムを得ることができるアンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物および、アンチブロッキング剤マスターバッチ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは透明性や機械的特性に優れることから、各種の包装材料として広く用いられている。
例えば、特開平8−81591号公報には、フィルムの外観、透明性、耐ブロッキング性、耐傷付き性の良好なポリオレフィン組成物として、平均粒子径が500〜1300μmで300μm以下の微粒子の割合が10重量%以下のオレフィン重合体粒子100重量部に、平均粒子径が1.0〜4.0μm、見掛比重が0.20〜0.60g/cm3の無機系微粉末0.05〜0.60重量部を配合し、溶融混練したことを特徴とするポリオレフィン組成物が記載されている。
そして、前記ポリオレフィン組成物の製造方法については、オレフィン重合体粒子に無機系微粉末を配合した後、溶融混練することが記載されており、溶融混練の方法としては、オレフィン重合体粒子の融点以上の温度で溶融混練する方法が記載されている。
【0003】
また、特開平8−92424号公報には、フィルムの外観、透明性、耐ブロッキング性、耐傷付き性の良好なポリオレフィン用マスターバッチ及びそれを使用したポリオレフィンフィルム組成物として、平均粒子径が50〜500μで100μ以下の微粒子の割合が10重量%以上のオレフィン重合体粒子に無機系微粉末を配合し、混練機を用いて溶融混練したポリオレフィンフィルム用マスターバッチ、および、ポリオレフィン100重量部に対し、前記のポリオレフィンフィルム用マスターバッチを0.1〜10重量部配合してなるポリオレフィンフィルム用組成物が記載されている。
そして、上記のマスターバッチの製造方法としては、オレフィン系重合体粒子に無機系微粉末を配合した後、溶融混練することが記載されており、溶融混練の方法は、オレフィン重合体粒子の融点以上の温度で混練機で溶融混練する方法が記載されている。
【0004】
さらに、特開平10−180841号公報には、粉体状強化剤をサイドフィードするとき、粉体状強化剤を樹脂に均一分散させ、かつ押し出しを経て行われるペレット状樹脂等の生産性を向上させることができる方法として、粉体のサイドフィード用押出機のサイドフィード供給口から、平均粒径0.01〜500μmの粉体状強化剤を、メインホッパーから供給する樹脂100重量部に対して20〜100重量部供給して押し出すことを特徴とする押出方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−81591号公報
【特許文献2】特開平8−92424号公報
【特許文献3】特開平10−180841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記公報等に記載されているポリプロピレン組成物やマスターバッチにおいても、端面色、外観(フィルムの白斑点)、透明性、耐ブロッキング性、ホットスリップ性および耐スクラッチ性に優れたフィルムを得るということ、特に、端面色と透明性に加えて、外観(フィルムの白斑点)、耐ブロッキング性、ホットスリップ性および耐スクラッチ性に優れたフィルムを得るということについては、さらなる改良が望まれていた。
【0007】
かかる状況において、本発明の目的は、端面色、外観(フィルムの白斑点)、透明性、耐ブロッキング性、ホットスリップ性および耐スクラッチ性に優れたフィルムを得ることができるアンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物および、アンチブロッキング剤マスターバッチ製造方法を提供すること、特に、端面色と透明性に加えて、外観(フィルムの白斑点)、耐ブロッキング性、ホットスリップ性および耐スクラッチ性に優れたフィルムを得ることができるアンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物および、アンチブロッキング剤マスターバッチ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機を用いて、メインホッパーから供給されるオレフィン重合体(B)100重量部に対して、サイドフィード供給口から無機微粒子アンチブロッキング剤(A)1〜19重量部を供給し、溶融混練して得られるアンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物および、アンチブロッキング剤マスターバッチ製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特に、端面色と透明性に加えて、外観(フィルムの白斑点)、耐ブロッキング性、ホットスリップ性および耐スクラッチ性に優れたフィルムを得ることができるアンチブロッキング剤マスターバッチおよび、ポリプロピレンフィルム用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機とは、図1に縦断面の概略図が示されているような押出機である。図1中、(1)はシリンダ、(2)はヒーター、(3)はスクリュー、(4)はスクリュー駆動装置、(5)はメインホッパー、(6)はサイドフィード供給口、(7)および(8)はフィーダー、(9)は吐出口である。そして、メインホッパー(5)が上流に備えられており、サイドフィード供給口(6)が下流に備えられている。
【0011】
本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチは、上流に備えられたメインホッパー(2)からオレフィン重合体(B)を供給し、下流に備えられたサイドフィード供給口(6)から無機微粒子アンチブロッキング剤(A)を供給し、オレフィン重合体(B)と無機微粒子アンチブロッキング剤(A)をスクリューにより溶融混練することによって得られるマスターバッチである。
【0012】
本発明で用いられる押出機のスクリュー(3)は単軸でも多軸でも良く、無機微粒子アンチブロッキング剤の分散性と押出能力を両立させるという観点から、好ましくは少なくとも2軸である。より好ましくは2軸である。
スクリューが少なくとも2軸である場合、個々のスクリューの回転方向は同方向でも良く、異方向でも良い。無機微粒子アンチブロッキング剤の分散性と押出能力を両立させるという観点から、好ましくは同方向である。
【0013】
シリンダ温度は、オレフィン重合体(B)の融点以上の温度が好ましい。より好ましくはオレフィン重合体(B)の融点より40℃〜160℃高い温度である。
【0014】
押出機内のシリンダ温度には、差があっても良く、なくても良い。押出機内のシリンダ温度としては、シリンダ温度に差があることが好ましく、サイドフィード供給口の上流側のシリンダ温度が、サイドフィード供給口より下流側のシリンダ温度より高い方が好ましい。
【0015】
本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチの製造において、必要に応じて、メインホッパー(2)から供給されるオレフィン重合体(B)に加えて、無機微粒子アンチブロッキング剤(A)を供給しても良い。
【0016】
また、本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチの製造において、必要に応じて、サイドフィード供給口(6)から供給される無機微粒子アンチブロッキング剤(A)に加えて、オレフィン重合体(B)を供給しても良い。
【0017】
本発明で用いられる無機微粒子アンチブロッキング剤(A)としては、二酸化ケイ素、アルミノシリケート、タルク等のケイ酸マグネシウム、カオリン等のケイ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。好ましくは二酸化ケイ素、アルミノシリケート、炭酸カルシウムであり、更に好ましくは二酸化ケイ素である。
【0018】
本発明で用いられる無機微粒子アンチブロッキング剤(A)のコールターカウンター法で測定される重量平均粒子径は、耐ブロッキング性の改良効果を高めるという観点や、透明性の観点から、好ましくは1〜10μmであり、より好ましくは2〜5μmであり、さらに好ましくは2〜4μmである。
【0019】
本発明で用いられる無機微粒子アンチブロッキング剤(A)のかさ密度は、耐ブロッキング性の改良効果を高めるという観点や、耐スクラッチ性の観点から、好ましくは0.1〜1g/mlであり、より好ましくは0.1〜0.5g/mlであり、さらに好ましくは0.1〜0.2g/mlである。
【0020】
本発明で用いられる無機微粒子アンチブロッキング剤(A)のBET比表面積は、耐ブロッキング性の改良効果を高めるという観点や、透明性の観点から、好ましくは30〜700m2/gであり、より好ましくは100〜400m2/gであり、さらに好ましくは150〜350m2/gである。
とがある。
【0021】
本発明で用いられる無機微粒子アンチブロッキング剤(A)の細孔容積は、得られるポリプロピレン系フィルムに特に良好な耐ブロッキング性と耐スクラッチ性を同時に発現させるという観点から、好ましくは0.04〜3ml/gであり、より好ましくは0.9〜2ml/gである。
【0022】
本発明で用いられる無機微粒子アンチブロッキング剤(A)の白色度は、得られるポリプロピレン系フィルムに特に良好な端面色を発現させるという観点から、好ましくは80以上であり、より好ましくは95以上である。
【0023】
本発明に用いられる無機微粒子アンチブロッキング剤(A)の重量平均粒子径、BET比表面積、細孔容積および白色度は下記の方法によって測定されるものである。
(1)重量平均粒子径:レーザーカウンター法によって求められる。
(2)BET比表面積:自動ガス吸脱着分析装置(BECKMAN COULTER社 オムニソーブ360)を用い、連続容量方式によって測定して求められる。
(3)細孔容積:自動ガス吸脱着分析装置(BECKMAN COULTER社 オムニソーブ360)を用い、連続容量方式によって測定して求められる。
(4)白色度:JIS P 8123に従って求められる。
【0024】
本発明で用いられるオレフィン重合体(B)は、オレフィン系単量体の単独重合体または共重合体もしくはこれらの混合物であり、オレフィン系単量体とはエチレン及びα−オレフィンであり、α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等が挙げられる。
【0025】
オレフィン重合体(B)としては、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単量体の単独重合体または共重合体もしくはこれらの混合物であり、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体もしくはこれらの混合物が挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体としては、例えばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等が挙げられる。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂としては、結晶性プロピレン単独重合体及び/又は結晶性プロピレン共重合体を含むポリプロピレン系樹脂が好ましい。結晶性とは、結晶性プロピレン単独重合体または結晶性プロピレン共重合体に含まれる冷キシレン(20℃キシレン)可溶部(CXS)の量により決めることができる。冷キシレン可溶部(CXS)が多いとアモルファス部分が多く、結晶性が低いことを示し、冷キシレン可溶部(CXS)が少ないとアモルファス部分が少なく、結晶性が高いことを示す。冷キシレン可溶部(CXS)は30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0027】
より好ましいポリプロピレン系樹脂としては、結晶性プロピレン単独重合体、及び、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1の中から選ばれた少なくとも1種類以上の単量体の含有量が5重量%以下である結晶性プロピレン共重合体である。
【0028】
本発明で用いられるオレフィン重合体(B)のメルトフローメート(MFR)は、加工性及びフィルム物性の点で、好ましくは、0.1〜20g/10分であり、より好ましくは0.5〜10g/10分である。
【0029】
また、本発明で用いられるオレフィン重合体(B)には、必要に応じて、ポリエチレン、ポリブテン−1、スチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム等のポリオレフィン系重合体を添加しても良い。
【0030】
本発明で用いられるオレフィン重合体(B)として、好ましいポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知の重合触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、三塩化チタン触媒、チタン、マグネシウム、ハロゲン、および電子供与体を必須成分とするTi−Mg系触媒等の固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物や必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分を組み合わせた触媒系、メタロセン系触媒等が挙げられる。好ましくは、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分とする固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び電子供与性化合物を組み合わせた触媒系であり、その具体例としては、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載された触媒系が挙げられる。公知の重合方法としては、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられ、これらの重合方法は回分式であっても良く、連続式であっても良い。
【0031】
本発明で用いられる無機微粒子アンチブロッキング剤(A)の押出機への供給量は、メインホッパー(5)から供給されるオレフィン重合体(B)100重量部に対し、1〜19重量部であり、好ましくは1〜12重量部であり、より好ましくは2〜4重量部である。
【0032】
無機微粒子アンチブロッキング剤(A)の押出機への供給量が、該下限を下回る場合、フィルムなどの製品に用いる場合に大量に添加しなければ耐ブロッキング性が改良されず、製品としての価値が低いものとなることがある。無機微粒子アンチブロッキング剤(A)の押出機への供給量が該上限を上回る場合、無機微粒子アンチブロッキング剤(A)の分散が不十分なことがある。また得られるフィルムの外観や、透明性が不十分な場合がある。
【0033】
本発明で用いられるオレフィン重合体(B)の形状は、パウダーであっても良く、ペレットであっても良い。メインホッパー(5)へオレフィン重合体(B)を安定して供給するという観点から、好ましくはペレットである。
【0034】
オレフィン重合体(B)のペレットを製造する方法としては、オレフィン重合体(B)を溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練の方法としては、例えば溶融押出機やバンバリーミキサー等を用いて溶融混練する方法が挙げられる。オレフィン重合体(B)のペレットを製造する時に、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤等を、必要に応じて、配合しても良い。
【0035】
本発明のポリプロピレンフィルム用組成物に用いられるプロピレン系重合体(C)は、プロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体である。本発明で用いられるプロピレン系重合体(C)がプロピレン系ランダム共重合体の場合、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン系ランダム共重合体、プロピレンと炭素数4〜20個を有する少なくとも1種のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン系ランダム共重合体、または、プロピレンとエチレンと炭素数4〜20個を有する少なくとも1種のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン系ランダム共重合体が挙げられる。
【0036】
炭素数4〜20個を有するα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテン、1−ヘキセンである。
【0037】
本発明でプロピレン系重合体(C)として用いられるプロピレン系ランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられ、好ましくはプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体である。
【0038】
本発明でプロピレン系重合体(C)として用いられるプロピレン系ランダム共重合体がプロピレン−エチレンランダム共重合体である場合、エチレン含有量は、得られるフィルムの透明性、または、剛性の観点から、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜7重量%であり、さらに好ましくは3〜6重量%である。
【0039】
本発明でプロピレン系重合体(C)として用いられるプロピレン系ランダム共重合体がプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である場合、α−オレフィン含有量は、得られるフィルムの透明性、または、剛性の観点から、好ましくは0.01〜30重量%であり、より好ましくは0.1〜28重量%であり、さらに好ましくは10〜27重量%である。
【0040】
本発明でプロピレン系重合体(C)として用いられるプロピレン系ランダム共重合体がプロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体である場合、エチレンとα−オレフィンの含有量の合計は、得られるフィルムの透明性、または、剛性の観点から、好ましくは0.01〜30重量%であり、より好ましくは0.1〜29重量%であり、さらに好ましくは4〜28重量%である。
【0041】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(C)のメルトフローレイト(MFR)としては、流動性、または、フィルムの製膜を行いやすいという観点から、好ましくは0.1〜50g/10分であり、更に好ましくは1〜15g/10分である。
【0042】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(C)の示差走査型熱量計(DSC)によって測定される融解曲線のピーク温度から定義される融点(Tm、単位:℃)は、得られるフィルムの耐ブロッキング性、または、透明性の観点から、好ましくは120〜168℃であり、より好ましくは125〜167℃であり、さらに好ましくは130〜145℃である。
【0043】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(C)の冷キシレン可溶部量(CXS、単位:重量%)は、得られるフィルムの滑り性、または、ホットスリップ性の観点から、好ましくは0.1〜20重量%であり、より好ましくは1〜15重量%以下であり、さらに好ましくは2〜14重量%である。
【0044】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(C)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
公知の重合触媒としては、例えば、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて用いられる電子供与性化合物等の第3成分とからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、またはシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系等が挙げられる。好ましくはマグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物からなる触媒系であり、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報等に記載されている触媒系である。
【0045】
公知の重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法である。さらに、前記の重合法を組み合わせ、それらを連続的に行なう方法、例えば、液相−気相重合法等が挙げられる。
【0046】
本発明のポリプロピレンフィルム用組成物はプロピレン系重合体(C)100重量部に対し、本発明のアンチブロッキング剤マスターバッチ0.1〜20重量部を配合して得られる組成物である。アンチブロッキング剤マスターバッチの配合量として、好ましくは1〜15重量部であり、より好ましくは2〜12重量部である。
アンチブロッキング剤マスターバッチの含有量が該下限を下回る場合、延伸フィルムの耐ブロッキング性の改良効果が充分でない場合があり、アンチブロッキング剤マスターバッチの含有量が該上限を上回る場合、延伸フィルムの透明性が不十分な場合がある
【0047】
本発明のポリプロピレンフィルム用組成物の製造方法としては、公知の加熱溶融混合方法が挙げられる。例えば、ポリプロピレン重合体(C)とアンチブロッキング剤マスターバッチとをヘンシェルミキサー等の混合装置に直接配合し、加熱溶融混合する方法(必要に応じて、酸化防止剤、その他の添加剤やその他の樹脂をヘンシェルミキサー等の混合装置に直接配合しても良い。)等が挙げられる。
【0048】
前記の加熱溶融混合に用いられる装置としては、例えば、押出機、バンバリーミキサー、バッチ式混練機等が挙げられる。加熱溶融混合方法として、好ましくは、不活性ガス(窒素、アルゴン等)の存在下で行なう方法が挙げられ、加熱溶融混合の温度としては、通常、300℃未満であり、好ましくは180〜250℃である。
【0049】
本発明のポリプロピレンフィルム用組成物(C)には、必要に応じて、エチレン−αオレフィン共重合体、ブテン−1単独重合体やブテン−1共重合体等を添加しても良く、安定剤、滑剤、帯電防止剤、抗ブロッキング剤、無機または有機の各種フィラー等の添加剤を添加しても良い。
【実施例】
【0050】
次に実施例および比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で用いた試料の調整方法、物性の測定方法を下記に示した。
【0051】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210の条件14(Condition Number 14)の方法に従って温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
【0052】
(2)融点(Tm、単位:℃)
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7)を用い、あらかじめプロピレン系重合体またはポリプロピレン系樹脂組成物を熱プレス成形(230℃で5分間予熱後、3分間かけて50kgf/cm2の圧力まで昇圧し、2分間保圧した。その後、30℃で30kgf/cm2の圧力で5分間冷却して、そのシートから採取した試料10mgを窒素雰囲気下、220℃で5分間ポリマーを熱処理後、降温速度300℃/分で150℃まで冷却して150℃において1分間保温し、さらに降温速度5℃/分で50℃まで冷却して50℃において1分間保温し、さらに50℃から180℃まで昇温速度5℃/分で加熱した際の融解ピーク曲線において最高強度を示すピークの温度を融点(Tm(℃))として求めた。
【0053】
(3)冷キシレン可溶部量(CXS、単位:重量%)
10gのプロピレン系重合体を1000mlの沸騰キシレンに溶解した後、50℃まで徐冷し、次いで氷水に浸し攪拌しながら20℃まで冷却し、20℃で一晩放置した後、析出したポリマーを濾別し、濾液からキシレンを蒸発させ、60℃で減圧乾燥して20℃のキシレンに可溶なポリマーを回収することにより算出した。
【0054】
(4)コモノマー含量(単位:重量%)
(4−1)エチレン含有量
高分子分析ハンドブック(1985年、朝倉書店発行)の第256頁“(i)ランダム共重合体”の項に記載の方法によってIRスペクトル法で決定した。
(4−2)1−ブテン含有量
IRスペクトル法により次式から決定した。
1−ブテン含有量(重量%)=1.208K’
K’:767cm-1の吸光度
【0055】
(5)白班点数(外観、単位:個/600cm2
フィルムから、20cm×30cmのフィルム試験片を採取し、フィルム中の白班点数を目視で判定した。数値が小さいほどフィルム外観に優れることを示す。
【0056】
(6)ヘイズ(透明性、単位:%)
フィルムを用いてASTM D1103に従って測定した。数値が小さいほど透明性に優れることを示す。
【0057】
(7)ブロッキング強度(耐ブロッキング性、kg/12cm2
フィルムから、30mm×150mmのフィルム試験片を採取し、長手方向に40mm重なるようにフィルムをあわせたものをトレーシングペーパーにはさみ、0.5kgの荷重下で60℃,3時間状態調整を行った。その後、23℃、湿度50%雰囲気下に30分以上放置し、200mm/分の速度で剪断引っ張り試験を行った。同一フィルムの4切片について計4回測定し、データの平均を算出して、試料の剥離に要する強度とした。数値の小さいほうが耐ブロッキング性に優れることを示す。
【0058】
(8)40℃動摩擦係数(ホットスリップ性)
フィルムを用いて相対湿度65%RHの恒温室において、フィルム温度40℃でASTM−D1894−63に従い測定した動摩擦係数で示す。数値の小さいほうがホットスリップ性に優れることを示す。
【0059】
(9)Δヘイズ(耐スクラッチ性、単位:%)
平板にシリコンシートを積層した測定台のシリコンシート上にフィルムを固定した後、該測定用フィルム上に2kgの荷重をかけたもう一枚のフィルムを載置し、このフィルムを一方向に10回滑らせる。シリコンシート上に固定した側の測定用フィルムのヘイズ(ヘイズ2)を測定し、スクラッチ性試験前のフィルムのヘイズ(ヘイズ1)を測定し、下記式1より耐スクラッチ性を求めた。
Δヘイズ=(ヘイズ2)−(ヘイズ1) 式1
数値が小さいほうが耐スクラッチ性に優れることを示す。
【0060】
(10)端面色
フィルムを厚み2cmになるように束ね、端面の色を目視で判定した。判定は、白色を○(良)、微黄色を△(やや劣る)、淡黄色を×(劣る)とした。
【0061】
実施例1
プロピレン重合体パウダー(B−1)(プロピレン−エチレン共重合体、エチレン含有量4.0重量%、メルトフローレイト(MFR)5.0g/10分、融点142℃、冷キシレン可溶部量2.9重量%)100重量部に対しチバスペシャリティーケミカルズ製イルガノックス1010 0.15重量部、チバスペシャリティーケミカルズ製イルガホス168 0.15重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、65mmφ単軸混練機により樹脂温度220℃で造粒、ペレット化することによりプロピレン重合体(B−1)のペレットを得た。
【0062】
次いで、上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機(30mmφ2軸混練機)を用い、上流に備えられているメインホッパーからオレフィン重合体(B−1)のペレットを100重量部供給し、下流に備えられているサイドフィード供給口から、コールターカウンターで測定した重量平均粒子径が1.9μmで、かつ、かさ密度が0.15g/mlで、かつ、BET比表面積が287m2/gで、かつ、N2吸着二酸化ケイ素(A−1)2量部を供給してサイドフィード供給口の上流側のシリンダ温度を230℃、サイドフィード供給口より下流側のシリンダ温度を170℃にして、溶融混練し、ポリプロピレンフィルム用二酸化ケイ素のマスターバッチを得た。該マスターバッチのメルトフローレイトは6.0g/10分であった。
【0063】
次いで、プロピレン重合体(C−1)(プロピレン−エチレン−ブテン共重合体、エチレン含有量4.1重量%、ブテン含有量4.3重量%、メルトフローレイト(MFR)5.5g/10分、融点127℃、冷キシレン可溶部量5.4重量%)100重量部に対し、上記二酸化ケイ素のマスターバッチを11重量部、チバスペシャリティーケミカルズ製イルガノックス1010 0.15重量部、チバスペシャリティーケミカルズ製イルガホス168 0.15重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、65mmφ単軸混練機により樹脂温度220℃で造粒、ペレット化することによりポリプロピレンフィルム用組成物のペレットを得た。該ペレットのメルトフローレイト(MFR)は5.5g/10分であった。
【0064】
(延伸フィルムの作成)
表層用に上記で得られたペレットを用い、基材層用に住友化学工業(株)製FS2011DG3(融点159℃、MFR=2.5g/10分のポリプロピレン)を用い、それぞれ樹脂温度230℃、260℃にて各々別の押出機で溶融混練し、一基の共押出しTダイに供給した。このTダイから、表層/基材層/表層の2種3種構成として押出された樹脂を30℃の冷却ロールにて急冷、固化することにより、厚さ1mmのキャストシートを得た。
【0065】
上記のようにして得られたキャストシートを、予熱後、延伸温度120℃にて縦延伸機のロール周速差により縦方向に5倍延伸し、引き続いて加熱炉にて延伸温度157℃にて横方向に8倍延伸したのち、165℃で熱処理を行い、厚さ1μm/20μm/1μmの多層二軸延伸フィルムを得、巻取り機で巻き取った。得られたフィルムの物性の評価結果を表1に示した。
【0066】
比較例1
実施例1で用いたプロピレン重合体パウダー(B−1)100重量部に対しチバスペシャリティーケミカルズ製イルガノックス1010 0.15重量部、チバスペシャリティーケミカルズ製イルガホス168 0.15重量部、実施例1で用いた二酸化ケイ素(A−1)2重量部をヘンシェルミキサーで混合した後30mmφ2軸混練機を用いシリンダ温度が230℃で溶融混練し、ポリプロピレンフィルム用二酸化ケイ素のマスターバッチを得た。該マスターバッチのメルトフローレイトは5.5g/10分であった。次いで、実施例1で用いたプロピレン重合体パウダー(C−1)100重量部に対し、上記二酸化ケイ素のマスターバッチを11重量部、チバスペシャリティーケミカルズ製イルガノックス1010 0.15重量部、チバスペシャリティーケミカルズ製イルガホス168 0.15重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、65mmφ単軸混練機により樹脂温度220℃で造粒、ペレット化することによりポリプロピレンフィルム用組成物のペレットを得た。得られたポリプロピレンフィルム用組成物のペレットのMFRは5.4g/10分であった。得られたペレットを用い、実施例1と同様な方法でフィルムを作成し、評価した。結果を表1に示した。
【0067】
比較例2
実施例1で用いたプロピレン重合体パウダー(C−1)100重量部に対し、実施例1で用いた2酸化ケイ素(A−1)0.2重量部、チバスペシャリティーケミカルズ製イルガノックス1010 0.15重量部、チバスペシャリティーケミカルズ製イルガホス168 0.15重量部をヘンシェルミキサーで混合した後、30mmφ2軸混練機を用いシリンダ温度が230℃で溶融混練し、ペレット化することによりポリプロピレンフィルム用組成物のペレットを得た。得られたポリプロピレンフィルム用組成物のペレットのMFRは5.5g/10分であった。得られたペレットを用い、実施例1と同様な方法でフィルムを作成し、評価した。結果を表1に示した。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例1で得られた延伸フィルムは、端面色、外観、透明性、耐ブロッキング性、ホットスリップ性、耐スクラッチ性に優れるものであることが分かる。
これに対して、比較例1は、本発明の要件である上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機を用いずにアンチブロッキング剤のマスターバッチを製造して得られた延伸フィルムであるため、延伸フィルムの外観、耐ブロッキング性、ホットスリップ性が不十分であることが分かる。
また、比較例2は本発明の要件である上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機を用いてアンチブロッキング剤のマスターバッチを製造して使用することなく、ポリプロピレンフィルム用組成物を製造して得られた延伸フィルムであるため、延伸フィルムの外観、耐ブロッキング性、ホットスリップ性、耐スクラッチ性が不十分であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機の縦断面の概略図
【符号の説明】
【0071】
(1)シリンダ
(2)ヒーター
(3)スクリュー
(4)スクリュー駆動装置
(5)メインホッパー
(6)サイドフィード供給口
(7)フィーダー
(8)フィーダー
(9)吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機を用いて、メインホッパーから供給されるオレフィン重合体(B)100重量部に対して、サイドフィード供給口から無機微粒子アンチブロッキング剤(A)1〜19重量部を供給し、溶融混練して得られるアンチブロッキング剤マスターバッチ。
【請求項2】
無機微粒子アンチブロッキング剤(A)が、コールターカウンター法で測定した重量平均粒子径が1〜10μmであり、かさ密度が0.1〜1g/mlであり、BET比表面積が30〜700m2/gである無機微粉末である請求項1記載のアンチブロッキング剤マスターバッチ。
【請求項3】
メインホッパーから供給されるオレフィン重合体(B)がペレットである請求項1または2に記載のアンチブロッキング剤マスターバッチ。
【請求項4】
プロピレン系重合体(C)100重量部に対し、請求項1〜3のいずれかに記載のアンチブロッキング剤マスターバッチ0.1〜20重量部を配合して得られるポリプロピレンフィルム用組成物。
【請求項5】
上流にメインホッパーを備え、下流にサイドフィード供給口を備えた押出機を用いて、メインホッパーからペレットであるオレフィン重合体(B)を供給し、該オレフィン重合体(B)100重量部に対して、サイドフィード供給口から無機微粒子アンチブロッキング剤(A)1〜19重量部を供給し、溶融混練するアンチブロッキング剤マスターバッチの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−96939(P2006−96939A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286818(P2004−286818)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】