説明

アンチモン含有化合物で触媒された高IV溶融相ポリエステルポリマー組成物及びペレット

【課題】より優れた、より低いb*を有する高It.V.のポリマーを溶融相中で製造する。
【解決手段】溶融相にアンチモン含有触媒を添加し、メルトのIt.V.が少なくとも0.75dL/gに達するまで前記触媒を含むメルトを溶融相中で重縮合させることによる、ポリエステルポリマー溶融相生成物を製造するための溶融相法が提供され、アンチモン残基を含み且つ固相重合によって溶融相生成物の分子量を増加せずに得られた少なくとも0.70dL/gのIt.V.を有するポリエステルポリマーペレットを押出機に供給し、溶融させて溶融ポリエステルポリマーを生成せしめ、ダイを通して押出して造形品を形成せしめ、この溶融相生成物及びそれによって製造される製品は、低b*カラー及び/又は高L*明度を有し、溶融相生成物を製造する反応時間が短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルポリマー組成物及びペレット、更に詳しくは、優れた色を有する、溶融相においてアンチモン化合物で触媒された高It.Vポリエチレンテレフタレートポリマー組成物及びペレットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、溶融相中で高IVのPETを製造する方法が記載されている。この特許には、チタンを基材とする化合物で触媒された高IVのPETは、分子量の最適な増加が得られ且つ熱分解の可能性を減少させるように低用量のチタン金属及び低反応温度を選択する場合に、反応性と選択性の両方をうまく満足させると記載されている。より熱安定性のポリマーを提供することによって、ポリマー中に発生するアセトアルデヒド(「AA」)のレベルが低下される。前記方法によって発生する基材ポリマー中のAA量は記載されていないが、過剰量のAA結合剤の添加後には、ポリマー溶融体中の考えられるAA量は重縮合の直後において1〜10ppmの範囲であると記載されている。AA結合剤がポリエステルポリマーのより強い又はより弱い黄変を引き起こす可能性があることを認めて、この特許は、溶融体へのブルーイング(bluing)トナーの添加により、AA低下剤によって付与される色を制御することを推奨する。
【0003】
本発明者らは、チタン触媒重縮合反応が、溶融相において生成される高It.V基材ポリエステルポリマーに許容され得ないほど濃い黄色(それらの高b*によって示される)を付与し、それが特許文献2によっては対処されていない問題であることに気付いた。チタン触媒反応によって溶融体に付与された黄色を克服するために充分な量の青味トナーを添加すると、より多量の青味トナーを使用しなければならないという更なる問題が生じる。この問題は、ポリマーの明度を低下させるおそれがあると共に、ポリマー組成物の製造コストを増加させる。
【0004】
溶融相ポリマー中のAAのレベルを低下させるために、特許文献2に記載された方法は、低温において、低チタン触媒濃度で、即ち、約270℃の低反応温度及び触媒濃度としてTi金属10ppm未満を用いて溶融相を操作する。しかし、反応温度及び触媒濃度を低下させることによって、同じ目標分子量を達成するのに必要な反応時間も増加する。
【0005】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開明細書第1188783 A2号
【特許文献2】米国特許第6559271号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より優れた、より低いb*(ポリマー中の黄色の色相の尺度)を有する高It.V.のポリマーを溶融相中で製造するための解決を実現することは望ましいことである。更に、許容され得るb*カラーと共に、チタン触媒反応中において同じ目標It.V.を得るのに必要な反応時間に比較して、溶融体中の目標高It.V.までの、同じかより適切な、より短い反応時間を保持するのが望ましい。
【0007】
本発明者らは、溶融相からの基材ポリマーが許容され得るb*カラーを有する高It.V.ポリエステルポリマー溶融相生成物を製造する方法を見出した。この方法において、溶融相中で製造された、高It.V.を有するポリエステルポリマーは、チタン触媒反応生成物に比較して等しい反応時間においてより優れた、より低いb*カラーを有する。意外なことに、本発明者らはまた、触媒濃度及び重縮合反応温度の広い許容範囲を可能にすると同時に、チタン触媒溶融相反応に比較して、低いb*を有する基材ポリエステルポリマーを得る方法を見出した。チタン基材触媒が高活性であることはわかっているが、本発明者らはまた、本発明の方法において、目標高It.V.を達成する反応時間が低チタン触媒用量におけるチタン触媒法の場合によりも短いことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従えば、溶融相中で少なくとも0.70dL/gのIt.V.に製造された溶融相生成物、青味トナー若しくはその残基及び/又はレッドトナー若しくはその残基並びに再加熱添加剤を含んでなり、−5〜+5のb*カラー及び70又はそれ以上のL*明度値を有するポリエステルポリマー組成物が提供される。
【0009】
本発明に従えば、またa)ジオールとジカルボン酸、ジカルボン酸の誘導体及びそれらの混合物を含むジカルボン酸成分とをエステル化又はエステル交換して、オリゴマー混合物を生成せしめ;
b)重縮合ゾーン中でオリゴマー混合物を重縮合して、It.V.が少なくとも0.75dL/gのポリエステルポリマー溶融体を生成せしめ、
c)前記ポリエステルポリマー溶融体のIt.V.が0.45dL/gに達する前に、アンチモン含有触媒を前記オリゴマー混合物若しくは前記ポリマー溶融体又は両者に添加し、そして
d)場合によっては、前記溶融体にアンチモン触媒安定剤を添加する
ことを含んでなるb*カラーが−5〜+5であるポリエステルポリマー溶融相生成物の製造方法が提供される。
【0010】
本発明に従えば、更に固相重合の間を通してポリマーの分子量を増加させることなく、得られた少なくとも0.75dL/gのIt.V.、−5〜+5のb*カラー及び少なくとも70のCIELAB単位のL*を有するポリエステルポリマーを含んでなる、アンチモン残基を含むがチタン残基を実質的に含まないポリエステルポリマー組成物が提供される。
【0011】
本発明に従えば、更にまた、固相重合をせずに得られた少なくとも0.75dL/gのIt.V.を有し且つアンチモン残基を含むポリエステルポリマー溶融相ペレットが提供される。
【0012】
以下に本発明の関連態様を示す。
本発明に従えば、アンチモン含有触媒を溶融相に添加し、溶融体のIt.V.が少なくとも0.75dL/gに達するまで前記触媒を含む溶融体を溶融相中において重縮合することを含んでなるポリエステルポリマー溶融相生成物を製造する溶融相法がここに提供される。
【0013】
本発明に従えば、また、アンチモン残基を含み且つ固相重合を用いずに得られた少なくとも0.70dL/gのIt.V.を有するポリエステルポリマー溶融相ペレットが提供される。
【0014】
本発明に従えば、更に、アンチモン残基を含み且つ固相重合によって溶融相の分子量を増加させることなく得られた少なくとも0.70dL/gのIt.V.を有する溶融相生成物を含むポリエステルポリマー組成物を押出機に供給し、ポリエステルポリマー組成物を溶融させて溶融ポリエステルポリマーを生成し、前記溶融ポリエステルポリマー組成物をダイを通して押出して造形品を形成せしめることを含んでなる方法が提供される。
【0015】
本発明に従えば、また、生成物の重量に基づき、少なくとも100ppmのアンチモンを含むポリエステルポリマー溶融相生成物を製造する溶融相法であって、溶融相にアンチモン含有触媒を添加し;前記触媒を含む溶融体を溶融相中で重縮合し;そして前記溶融体のIt.V.が0.45dL/gに達する前に、265〜305℃の範囲の温度若しくは減圧下又はその組合せにおいて、いずれの場合にも前記溶融体のIt.V.が少なくとも0.75dL/gに達するまで前記溶融体を連続的に重縮合させて、−5〜+5(CIELAB単位)のb*カラーを有する前記ポリエステルポリマー溶融相生成物を生成せしめることを含んでなる方法が提供される。本明細書において、カラー単位は、特に断らない限り、常にCIELAB単位である。
【0016】
本発明に従えば、更に、アンチモン含有触媒の存在下で溶融体を少なくとも0.75dL/gのIt.V.まで重縮合することを含んでなるポリエステルポリマー溶融相生成物を製造するための溶融相法であって、前記生成物が−5〜+5のb*カラー及び少なくとも70のL*を有する方法が提供される。溶融相生成物は場合によっては、青味トナー及び/又はその場(in situ)で製造された、溶融体に添加された若しくは溶融体の凝固後に添加された又はそれらの任意の組合せである再加熱促進助剤を含む。青味トナーは好ましくは有機トナーである。
【0017】
本発明の更に別の実施態様において、以下の工程:
a)ジオールとジカルボン酸、ジカルボン酸の誘導体及びそれらの混合物を含むジカルボン酸成分とをエステル化又はエステル交換して、オリゴマー混合物を生成せしめ;
b)前記オリゴマー混合物を重縮合して、It.V.が少なくとも0.75dL/gのポリエステルポリマー溶融体を生成し;
c)前記ポリエステルポリマー溶融体のIt.V.が0.45dL/gに達する前に、アンチモン化合物を前記溶融相に添加し;そして
d)場合によっては、前記溶融相に安定剤を添加する
ことを含んでなる、ポリエステルポリマー溶融相生成物を製造する溶融相法が提供される。この方法において、ポリエステルポリマー溶融相生成物は−5〜+5のb*カラーを有する。
【0018】
好ましくは、重縮合ゾーンに添加する重縮合触媒は、チタン含有化合物を含まず、直接エステル化法においては、溶融相反応全体がチタン含有化合物の不存在下において進行し、最も好ましくは、エステル交換ルートにおいては、溶融相反応全体はまた、チタン含有化合物の不存在下において進行する。更に別の実施態様においては、直接エステル化法において溶融相に添加する唯一の重縮合触媒はアンチモン含有化合物である。
【0019】
また、アンチモン含有触媒の存在下において溶融体を溶融相重合させて、溶融相生成物を生成することによる、ポリエステルポリマーの製造方法が提供される。この方法において、0.45のIt.V.から0.70〜0.90dL/gの範囲のIt.V.までの溶融体の反応時間は100分又はそれ以下である。好ましくはこの範囲内で適用する圧力は、約2mmHg又はそれ以下である。更に、この方法によって生成される溶融相生成物は、−5〜+5の範囲内のb*を有する。
【0020】
本発明によれば、ポリマーを固相重合することなく、少なくとも25%の結晶化度及び少なくとも0.70dL/gのIt.V.を有するポリエステルポリマーも提供され、前記ポリマーは、アンチモン残基を含んでなり、且つ−5〜+5のb*カラー及び少なくとも70のL*を有する。ポリマーは望ましくは、チタン残基を実質的に含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、本発明に関する以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解できる。
【0022】
また、本明細書及び添付した「特許請求の範囲」中において使用する単数形の表現は、前後関係からそうでないことが明白でない限り、複数の対照を含むことに留意しなければならない。例えば、「ポリマー」、「プレフォーム」、「製品」、「容器」又は「ボトル」の加工又は製造への言及は、複数のポリマー、プレフォーム、製品、容器又はボトルの加工又は製造を含むものとする。「1つの」成分又は「1種の」ポリマーを含む組成物への言及はそれぞれ、名前を挙げたものに加えて、他の成分又は他のポリマーを含むものとする。
【0023】
「含んでなる」又は「含む」とは、少なくとも名前を挙げた化合物、要素、粒子、方法工程などが少なくとも、組成物又は製品又は方法中に存在しなければならないが、他の化合物、触媒、材料、粒子、方法工程などが名前を挙げたものと同一の機能を有するならば、特に特許請求の範囲内で排除されるのでなければ、他のこのような化合物、触媒、材料、粒子、方法工程などの存在を排除しないことを意味する。
【0024】
1つ又はそれ以上の方法工程の言及は、列挙した全工程の前若しくは後の追加の方法工程の存在又は明示された工程の間に介在する方法工程の存在を除外しないことを理解されたい。更に、方法工程に文字を記すのは、別個の作用又は工程を特定するための都合の良い手段であり、特に断らない限り、列挙した方法工程は任意の順序で配列できる。範囲の表現は、その範囲内の全ての整数及びその分数を含む。方法における、又は反応混合物の、又は溶融体の若しくは溶融体に適用される、又はポリマーの若しくはポリマーに適用される温度又は温度範囲の表現は、全ての場合において、反応条件がその範囲内の所定の温度又は任意の温度に連続的又は断続的に設定されること;並びに反応混合物、溶融体又はポリマーが所定の温度に供されることを意味する。
【0025】
この説明全体にわたって記載した極限粘度数は、25℃において60/40wt/wtフェノール/テトラクロロエタン中で測定されたインヘレント粘度から以下の実施例1の直前の計算に従って計算されたものとして、dL/g単位で示してある。
【0026】
「溶融相」に添加される任意の化合物又は要素は、添加点において溶融体が実際に存在するか否かにかかわらず、方法の任意の点で及び溶融体が凝固する段階まで化合物又は要素を供給材料として添加することを含む。溶融相への添加点の例としては以下のものが挙げられる:エステル化反応器、一連のエチレンのエステル化反応器内、オリゴマー反応混合物、重縮合前で且つエステル化後、予備重合中、又は仕上げ機。
【0027】
「基材ポリエステルポリマー」は、溶融相反応から得られたポリエステルポリマーであり、青味トナー(bluing toner)を添加せず、AA低下剤なしで且つ安定剤を用いずに得られる。しかし、基材ポリエステルポリマーは、金属触媒化合物を元素金属に還元する添加剤を用いて製造する場合がある。
【0028】
「溶融相生成物」は、青味トナー及び他のトナー、AA低下剤又は再加熱速度促進剤を添加して又は添加せずに行われた溶融相反応から得られたポリエステルポリマーである。ポリエステルポリマー溶融相生成物はまた、安定剤を含むことができる。添加剤及びトナーは溶融相には、そのまま、キャリヤーに添加した形で、濃縮物の形で添加できる。溶融相生成物は、ペレット又はチップの形態で単離することもできるし、あるいは溶融相仕上げ機から押出機に直接、溶融体として供給し、ボトルプレフォームのような造形品を製造するための金型に導くこともできる(例えば、「溶融成形」又は「溶融予備成形」)。特に断らない限り、溶融相生成物は、非晶質ペレット、結晶化ペレット、固体化ペレット(solid stated pellets)、プレフォーム、シート、ボトルなどを含む任意の形状又は形態を取ることができる。溶融相生成物の分子量は場合によっては、溶融押出及び製品への造形前の固体状態において増加させることができる。
【0029】
「ポリエステルポリマー組成物」は、少なくとも1種の溶融相生成物を含み、場合によっては、溶融相生成物中にはまだ含まれていないが添加が望ましい他の成分を含むことができ、造形品の製造に使用される完全配合物であると見なされる。例えば、青味トナー、AA低下剤及び再加熱添加剤は、溶融相生成物を製造するための溶融相にまだ添加されていないならば、固体/固体ブレンド又は溶融ブレンドとして溶融相生成物に添加でき、あるいは添加剤は、ポリエステルポリマー組成物が押出機において又は押出機中で形成されるように、造形品を製造するための押出機に溶融相生成物と共に供給することができる。添加剤及びトナーは、そのままで、液体キャリヤー中に又は固体ポリエステル濃縮物中に添加できる。
【0030】
本発明のポリエステルポリマーは、任意の状態の(例えば、固体又は溶融状態の)及び任意の形態の任意の熱可塑性ポリエステルポリマーであり(前後関係が示す通りに)、溶融相から得られる若しくは固相化ポリマーとしての物質組成、又は溶融押出ゾーン中の、ボトルプレフォーム中の又は延伸ブロー成形ボトル中の物質組成を含む。ポリエステルポリマーは場合によっては、ポリエステルポリマー溶融相生成物に又は固相化ペレットに添加された添加剤を含むことができる。
【0031】
溶融相反応との関連での用語「溶融体(melt)」は、ポリエステルポリマーを製造するための溶融相中の任意に点において反応を受ける流れを意味する広い包括的な用語であり、エステル化相中の流れを、この段階での流れの粘度が一般には測定もできず又は意味がなくでも含み、また、プレポリマー相及び仕上げ相、各相の間及び溶融体が凝固される点までを含む重縮合相中の流れを含み、固体状態で分子量の増加を受けるポリエステルポリマーを除外する。
【0032】
*、a*及びb*カラーの範囲は、本明細書中及び添付した「特許請求の範囲」中に記載される。L*、a*及びb*カラーは、粉末に粉砕された又は以下に説明するようなディスクから製造された試料から測定される。これらの試験法のいずれかによって測定された試料から得られたL*又はb*報告値が添付した「特許請求の範囲」で示された範囲内である場合には、試料は、添付した「特許請求の範囲」内の所定のL*又はb*カラー範囲内であると見なす。例えば、1つの試験法によって測定された所定のb*範囲の外側であるが別の試験方法によって測定された所定のb*範囲の内側であるb*カラー値は、試験方法のうちの1つによる所定のb*カラー範囲を満足させるので、所定の範囲内のポリマーであると見なされる。
【0033】
ポリエステルポリマー組成物は、それほど限定されない。例えば、この組成物は青味トナー、再加熱添加剤、他の触媒及び又は他の添加剤を用いても用いなくても製造できる。カラー値を特定する場合には、そのカラー値を有するポリエステルポリマー組成物は、溶融相からそのボトルへの製造までのその製造寿命全体を通してその形状又は形態全てにおいてその値を示す必要はない。特に断らない限り、所定のカラー値を有する溶融相生成物又はポリエステルポリマー組成物は、溶融体、ポリエステルポリマー溶融相生成物、ボトルプレフォーム及びブローボトルの形態のポリエステルポリマー組成物に適用でき、それらはいずれも、本明細書中に明記した試験方法の任意の1つに供することができる。溶融相生成物のL*カラーに対する触媒の影響は、CIELabカラー標準L*値を用いて判定できる。L*値は明度の尺度である。この値は、不透明又は半透明粉末に関してはASTM D6290(反射モード)に従って、及びディスクに関してはASTM D1746(透過モード)に従って測定する。測色の理論及び実施は、”Principles of Color Technology”,pp.25−66,John Wiley & Sons,New York(1981)中にFred W. Billmeyer,Jr.によってより詳細に解説されている。明度はCIE 1976反対色スケール(opponent−color scale)でL*として測定され、100%は、全ての波長において100%反射する完全白色物体に相当し、又は無色のサンプルは全ての波長で100%透過する。透過モードでの無色サンプルのL*100は、完全透明であり、無色サンプルのL*0は不透明であろう。
【0034】
*、a*及びb*カラー値の測定は、以下の方法のいずれか1つに従って調製した試料について行う。カラーは、ディスク(直径3cm、厚さ66〜68milの範囲)に成形されたポリマーから測定する。あるいは、カラー値は、3mmのスクリーンを通過する粉末に粉砕されたポリエステルポリマーについて測定する。ディスクの場合には、HunterLabUltraScan分光光度計を用いて、一緒に積み重ねられた(3枚のディスク厚さ(約198〜204milの範囲)についてL*、a*及びb*を測定する。1組3枚の、直径3cm、厚さ約65〜68milの透明なディスクを、分析すべきポリエステルサンプルから調製する。ディスクの調製は、各ポリエステルサンプルを278℃の温度及び120rpmのスクリュー速度で283〜285℃のミクロインジェクターバレル中に押出することによって行う。バレルは、ディスクの成形を試みる前に、材料でパージしなればならない。最終ディスクは、射出ピストンに対して100psigの射出圧力を用いて調製する。冷水の循環によって、ディスク金型を10〜20℃の温度範囲に保持する。サンプルがこれらの温度で溶融され且つ明記した速度で押出されるならば、別の押出装置も使用できる。HunterLabUltraScan分光光度計は、D65照明光源を10°の観測角で用い且つ球の形状寸法を積分して(integrating sphere geometry)操作する。測色は、全透過(TTRAN)モードで行い、サンプルを直接透過する光と拡散的に散乱される光を共に測定する。3枚のディスクは、光源の前でホルダーを用いて一緒に積み重ね、最大面積を有する領域を光源に垂直に置く。
【0035】
粉砕された粉末に関しては、HunterLab UltraScan XE分光光度計を、D65照明光源を10°の観測角で用い且つ球の形状寸法を積分して操作する。HunterLab UltaraScan XE分光光度計をゼロに合わせ、標準化し、UV校正を行い、調整が正しいことを確認する。測色は反射(RSIN)モードで行う。粉末に粉砕したポリエステルポリマー試料は、15%の最小結晶化度を有する。粉末は、非晶質ポリマーからは調製すべきでない。従って、ボトルが比較的低い結晶化度の領域を有するためにこの方法からボトルを分析する場合には、注意しなければならないことが予想される。非晶質ポリマーから結晶性ポリマーを分離するのが不可能な場合には、カラー値の評価にはディスク法がより適していると予想される。
【0036】
ポリマーの結晶化度は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定する。この測定のためのサンプル重量は10±1mgである。分析に供する試料は好ましくは、極低温で粉砕する。第1加熱走査を実施する。サンプルを約25℃から290℃まで20℃/分の速度で加熱し、[融解吸熱量(1つ又はそれ以上)の面積−全ての結晶化発熱量の面積]の絶対値を求める。この面積は正味の融解熱に相当し、ジュールで表す。100%結晶性PETの融解熱は119ジュール/gであると推定されるので、ペレットの結晶化度重量パーセントは、正味の融解熱÷119×100と計算される。特に断らない限り、いずれの場合の初期融点も、同じDSC走査を用いて測定する。
【0037】
結晶化度パーセントは以下の両方から計算する。
低ピーク融点:Tm1a
高ピーク融点:Tm1b
【0038】
一部の例では、特に低結晶化度においては、DSC計測器中で結晶転移が非常に急速に起こる可能性があるので、真の低い方の融点は検知されないことに留意されたい。次いで、DSC計測器の温度傾斜速度を増加させ且つより小さいサンプルを用いることによって、低い方の融点を見ることができる。高速熱量測定にはPerkin−ElmerPyris−1熱量計を用いる。試料の質量を、走査速度に反比例するように調整する。500℃/分では約1mgのサンプルを、100℃/分では約5mgを用いる。代表的なDSCサンプル皿を用いた。ベースラインの湾曲を最小にするために、ベースライン除去を行う。
【0039】
あるいは、結晶化度パーセントはまた、2〜3個のペレットの平均勾配管密度から計算する。勾配管密度試験は、ASTM D 1505に従って水中で臭化リチウムを用いて実施する。
【0040】
以下の説明は、溶融相生成物を製造するためのいくつかの実施態様及びポリマー溶融相生成物を製造するための方法の任意の1つに関する。ポリエステルポリマー溶融相生成物を製造するための方法において、アンチモン含有触媒を溶融相に添加し、溶融体のIt.V.が少なくとも0.75dL/gに達するまで、アンチモン触媒を含む溶融体を重縮合させる。ペレットの形態のポリエステルポリマー溶融相生成物は、少なくとも0.75dL/gのIt.V.を有し、アンチモン触媒の残基を含む。このIt.V.は、固相重合を必要とせずに得られる。また、固相重合によって溶融相製品の分子量を増加させることなく得られた少なくとも0.70dL/gのIt.V.を有し且つアンチモン残基を含む溶融相製品を含むポリエステルポリマー組成物を押出機に供給し;前記ポリエステルポリマー組成物を溶融させて、溶融ポリエステルポリマーを生成し;次いで、前記溶融ポリエステルポリマー組成物をダイを通して押出して、造形品を形成することによる、溶融相製品からの造形品の製造方法が提供される。
【0041】
いくつかの更なる実施態様において、生成物の重量に基づいて、少なくとも100ppmで且つ好ましくは約500ppm以下、又は450ppmのアンチモンを含むポリエステルポリマー溶融相製品を製造するための溶融相法であって、アンチモン含有触媒を溶融相に添加し;前記触媒を含む溶融体を溶融相において重縮合させ;前記溶融体のIt.V.が0.45dL/gに達する前に、265〜305℃の範囲内の温度若しくは減圧又はその組合せにおいて、いずれの場合も前記溶融体のIt.V.が少なくとも0.75dL/gに達するまで、前記溶融体を連続的に重縮合させて、−5〜+5の範囲のb*カラーを有する前記ポリエステルポリマー溶融相製品を生成させることを含む方法が提供される。
【0042】
また、前述のように、本発明によれば、
a)ジオールとジカルボン酸、ジカルボン酸誘導体及びそれらの混合物を含むジカルボン酸成分とをエステル化又はエステル交換して、オリゴマー混合物を生成せしめ;
b)前記オリゴマー混合物を重縮合して、It.V.が少なくとも0.75dL/gのポリエステルポリマー溶融体を生成せしめ;
c)前記ポリエステルポリマー溶融体のIt.V.が0.45dL/gに達する前に、アンチモン化合物を前記溶融相に添加し;そして
d)場合によっては、前記溶融相に安定剤を添加する
ことを含んでなる、−5〜+5のb*カラーを有するポリエステルポリマー溶融相生成物を製造する溶融相法が提供される。
【0043】
これらの実施態様はいずれも、これからより詳細に記載する。
【0044】
本発明の方法によって製造される適用なポリエステルポリマーの例としては、ポリアルキレンテレフタレートホモポリマー及び40モル%又はそれ以下、好ましくは15モル%未満、最も好ましくは10モル%未満の量の1種又はそれ以上の改質剤で改質されたポリアルキレンテレフタレートコポリマー(略して「PAT」と総称する)、並びにポリアルキレンナフタレートホモポリマー及び40モル%未満、好ましくは15モル%未満、最も好ましくは10モル%未満の1種又はそれ以上の改質剤で改質されたポリアルキレンナフタレートコポリマー(本明細書中では「PAN」と総称する)、更にPATとPANとのブレンドが挙げられる。特に断らない限り、ポリマーはそのホモポリマー及びコポリマー変形体を共に含む。好ましいポリエステルポリマーは、ポリアルキレンテレフタレートポリマーであり、最も好ましいのはポリエチレンテレフタレートポリマーである。
【0045】
典型的には、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルは、エチレングリコールのようなジオールを遊離酸又はそのジメチルエステルのようなジカルボン酸と反応させて、エステルモノマー及び/又はオリゴマーを生成せしめ、次いでそれを重縮合させてポリエステルを生成させることによって製造する。カルボン酸基又はその誘導体を含む1つより多くの化合物を、プロセスの間に反応させることができる。生成物中のカルボン酸基又はその誘導体を含む化合物は全て、「カルボン酸成分」を構成する。生成物中のカルボン酸基又はその誘導体を含む全化合物のモル%は合計100になる。生成物中のカルボン酸基又はその誘導体を含む化合物の「残基」は、ヒドロキシル基を含む化合物との縮合反応後にオリゴマー及び/又はポリマー鎖中に残っている前記化合物の部分を意味する。カルボン酸成分の残基は、前記成分がヒドロキシル基を含む化合物と縮合した後にオリゴマー及び/又はポリマー鎖中に残っている前記成分の部分を意味する。
【0046】
ヒドロキシル基又はその誘導体を含む1つより多くの化合物は、ポリエステルポリマー生成物の一部となることができる。前記生成物の一部となるヒドロキシル基又はその誘導体を含む化合物は全て、ヒドロキシル成分を構成する。前記生成物の一部となるヒドロキシル基又はその誘導体を含む全化合物のモル%は合計100になる。前記生成物の一部となるヒドロキシル基又はその誘導体を含む化合物の残基は、前記化合物が、カルボン酸基又はその誘導体を含む化合物と縮合され、更に種々のポリエステルポリマー鎖長で重縮合させた後に前記生成物中に残っている前記化合物の部分を意味する。ヒドロキシル成分の残基は、前記生成物中に残っている前記成分の一部を意味する。
【0047】
生成物中のヒドロキシル残基及びカルボン酸残基のモル%は、プロトンNMRによって求めることができる。
【0048】
本発明の一実施態様において、ポリエステルポリマーは、ポリエステルポリマー中のカルボン酸成分残基100モル%及びヒドロキシル成分残基100モル%に基づいて、
(a)少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%、又は少なくとも92モル%、又は少なくとも96モル%の、テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸の誘導体又はそれらの混合物の残基を含むカルボン酸成分、及び
(b)少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%、又は少なくとも92モル%、又は少なくとも96モル%のエチレングリコールの残基を含むヒドロキシル成分
を含んでなる。好ましいのは、テレフタル酸及びそれらの誘導体の残基である。
【0049】
ポリエステルポリマーの調製中における、カルボン酸成分とヒドロキシル成分との反応は、前記モル%に限定されない。これは、所望ならば、大過剰のヒドロキシル成分を、例えば、使用するカルボン酸成分100モル%を基準としておよそ200モル%以下で使用できるためである。しかし、反応によって製造されたポリエステルポリマーは、前記量の芳香族ジカルボン酸残基及びエチレングリコール残基を含む。
【0050】
テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸の誘導体としては、C1〜C4ジアルキルテレフタレート及びC1〜C4ジアルキルナフタレート、例えばジメチルテレフタレート及びジメチルナフタレートが挙げられる。
【0051】
テレフタル酸、テレフタル酸の誘導体、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸の誘導体又はそれらの混合物の二酸成分の他に、本ポリエステルのカルボン酸成分は1種又はそれ以上の追加の改質用カルボン酸化合物を含むことができる。このような追加の改質用カルボン酸化合物としては、モノカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びそれ以上のカルボン酸基を有する化合物が挙げられる。例としては、炭素数が好ましくは8〜14の芳香族ジカルボン酸、炭素数が好ましくは4〜12の脂肪族ジカルボン酸、又は炭素数が好ましくは8〜12の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。酸成分として有用な改質用ジカルボン酸のより具体的な例は、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などであり、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸及びシクロヘキサンジカルボン酸が最も好ましい。これらの酸の対応する酸無水物、エステル及び酸塩化物の使用も用語「カルボン酸」に含まれることを理解されたい。また、トリカルボキシル化合物及びそれ以上のカルボン酸基を含む化合物もポリエステルを改質できる。
【0052】
エチレングリコールからなるヒドロキシル成分の他に、本ポリエステルのヒドロキシル成分は追加の改質用モノオール、ジオール又はそれ以上のヒドロキシル基を有する化合物を含むことができる。改質用ヒドロキシル化合物の例としては、炭素数が好ましくは6〜20の脂環式ジオール及び/又は炭素数が好ましくは3〜20の脂肪族ジオールが挙げられる。このようなジオールのより具体的な例としては以下のものが挙げられる。ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;プロパン−1,3−ジオール;ブタン−1,4−ジオール;ペンタン−1,5−ジオール;ヘキサン−1,6−ジオール;3−メチルペンタンジオール−(2,4);2−メチルペンタンジオール−(1,4);2,2,4−トリメチルペンタン−ジオール−(1,3);2,5−ジエチルヘキサンジオール−(1,3);2,2−ジエチルプロパン−ジオール−(1,3);ヘキサンジオール−(1,3);1,4−ジ−(ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン;2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン;2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン;2,2−ビス−(3−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパン;及び2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパン。
【0053】
溶融体からポリエステルポリマー溶融相生成物を製造するための個々の方法は限定されない。ポリエステル溶融相製造方法は、典型的には、a)エステル化ゾーンにおける、場合によってはエステル化触媒の存在下における、ジカルボン酸とジオールとの直接縮合と、それに続くb)重縮合触媒の存在下におけるプレポリマー及び仕上げ相における重縮合;又はa)エステル交換相における、通常はエステル交換触媒の存在下での、エステル交換とそれに続くb)重縮合触媒の存在下におけるプレポリマー及び仕上げ相中での重縮合を含む。
【0054】
更に説明すると、工程a)においては、1種又はそれ以上のジカルボン酸、好ましくは芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体と、1種又はそれ以上のジオールとの混合物を、約200〜300℃の温度及び約1〜約70psigの減圧下で操作されるエステル化反応器に連続供給する。反応体の滞留時間は典型的には、約1〜5時間の範囲である。通常、ジカルボン酸は、高圧及び約240〜約285℃の温度においてジオールと直接エステル化する。
【0055】
エステル化反応は、少なくとも70%のエステル化度が達成されるまで、しかしより典型的には少なくとも85%のエステル化度が達成されて目的オリゴマー混合物(又は別名「モノマー」)が形成されるまで続ける。オリゴマー混合物形成するための反応は、典型的には、直接エステル化プロセス中では触媒されず、エステル交換プロセスでは触媒される。アンチモン含有触媒を場合によっては、原料と共にエステル化ゾーン中に添加することができる。ジアルキルテレフタレートとジオールとの間のエステル交換反応において使用できる典型的なエステル交換触媒としては、チタンアルコキシド、ジブチル錫ジラウレート、亜鉛化合物、マンガン化合物が挙げられ、いずれも単独で又は互いに組合せで使用される。当業者によく知られた任意の他の触媒材料も適当である。しかし、最も好ましい実施態様においては、エステル交換反応はチタン化合物の不存在下で進行する。重縮合反応中に存在するチタン基材触媒は、溶融体をより黄色にすることによって、b*にマイナスの影響を与える。エステル交換反応の完了後であって重縮合の開始前にチタン基材触媒を安定剤で失活させることは可能であるが、最も好ましい実施態様においては、チタン含有化合物の不存在下において直接エステル化又はエステル交換反応を実施することによって、溶融体のb*カラーに対するチタン基材触媒の悪影響の可能性を排除するのが望ましい。適当な他のエステル交換触媒としては、亜鉛化合物、マンガン化合物又はそれらの混合物が挙げられる。
【0056】
エステル化ゾーン(直接エステル化及びエステル交換プロセスを含む)中で形成される得られるオリゴマー混合物としては、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)モノマー、低分子量オリゴマー、DEG及びエステル化ゾーン中で除去されない縮合副生成物としての微量の水、原料からの及び/又は触媒副反応によって形成される可能性のある他の微量不純物並びにトナー及び安定剤のよう場合によっては添加される化合物が挙げられる。BHET及びオリゴマー種の相対量は、そのプロセスが、オリゴマー種の量が重要であり且つ主要な種としてすら存在する直接エステル化プロセスであるか、又はBHETの相対量がオリゴマー種よりもまさっているエステル交換プロセスであるかどうかによって異なる。エステル化反応が進行して、平衡が目的生成物の方向に動かされるにつれて、水が除去される。エステル化ゾーンは、典型的には、モノマー及びオリゴマー種(あるとすれば)を1連の1つ又はそれ以上の反応器中で連続的に生成する。あるいは、オリゴマー混合物中のモノマー及びオリゴマー種は1つ又はそれ以上の回分反応器中で生成できる。しかし、PENの製造方法においては、反応混合物はモノマー種、ビス2,6−(2−ヒドロキシエチル)ナフタレート及びその対応するオリゴマーを含むと理解される。この段階で、It.V.は通常は、測定され得ないか、0.1未満である。溶融オリゴマー混合物の平均重合度は典型的には15未満、多くの場合は7.0未満である。
【0057】
オリゴマー混合物は、所望のエステル化度にされた後、エステル化ゾーン又は反応器から工程b)の重縮合ゾーンに輸送する。重縮合ゾーンは典型的には、プレポリマーゾーン及び仕上げゾーンから成るが、重縮合ゾーン内に分割ゾーンを設けることは必要ではない。重縮合反応は、予備重合ゾーンにおいて溶融相中で開始及び継続し、仕上げゾーンにおいて溶融相中で終了させ、その後、溶融体を凝固させて、ポリエステルポリマー溶融相生成物を一般にはチップ、ペレット又は任意の他の形状の形態で形成する。
【0058】
各ゾーンは、種々の条件で操作される一連の1つ又はそれ以上の異なる反応器を含むこともできるし、あるいはゾーンは、単一の反応器中で異なる条件において操作される1つ又はそれ以上のサブステージを用いて1つの反応器中に合することができる。即ち、プレポリマー段階は、連続的に操作される1つ若しくはそれ以上の反応器、1つ若しくはそれ以上の回分反応器、又は単一の反応器中で実施される1つ若しくはそれ以上の反応工程又はサブステージの使用を含むことができる。予備重合ゾーン中における溶融体の滞留時間に比較した、仕上げゾーン中における溶融体の滞留時間は限定されない。例えば、いくつかの反応器のデザインにおいて、予備重合ゾーンは、反応時間に関して重縮合の最初の半分に相当し、仕上げゾーンは重縮合の次の半分に相当する。他の反応器のデザインは、仕上げゾーンから予備重合ゾーンまでの間の滞留時間を約1.5:1又はそれ以上の比に調整することができる。多くの設計における予備重合ゾーンと仕上げゾーンとの間の共通の違いは、仕上げゾーンが予備重合ゾーン中の操作条件よりも高い温度及び/又は低い圧力で操作されることが多いことである。一般に、予備重合及び仕上げゾーンはそれぞれ、1つ又は一連の1つより多い反応器を含んでなり、予備重合及び仕上げ反応器は、ポリエステルポリマーを製造するための連続法の一部として直列に配列される。
【0059】
当業界で低重合器としても知られている予備重合ゾーン中において、オリゴマー混合物中の低分子量モノマー及びオリゴマーは、重縮合の開始直前、重縮合中のようなエステル化又は重縮合ゾーン中で工程c)において記載された溶融相に添加された、あるいはエステル化若しくはエステル交換開始前又はエステル化若しくはエステル交換反応中若しくは又はその完了時にエステル化ゾーンに添加されたアンチモン含有触媒の存在下で重縮合によって重合されて、ポリエチレンテレフタレートポリエステル(又はPENポリエステル)を形成する。アンチモン触媒は、オリゴマー混合物の製造のためのモノマーエステル化段階に添加しない場合には、この段階で添加して、モノマー間の、低分子量オリゴマー間の及びモノマーと低分子量オリゴマーとの間の反応を触媒して、分子量を増成し且つジオールを副生成物として分離する。アンチモン含有触媒は、エステル化ゾーンに添加する場合には、典型的にはジオールとブレンドし、エステル化反応器に供給する。
【0060】
所望ならば、アンチモン含有触媒は、溶融体のIt.V.が0.30dL/gを超える前に溶融相に添加する。溶融体のIt.V.が0.30dL/gを超える前にアンチモン含有触媒を添加することによって、異常に長い反応時間は回避される。アンチモン含有触媒は、エステル化ゾーン若しくは重縮合ゾーン又はその両方に、添加できる。好ましくは、アンチモン含有触媒は、溶融体のIt.V.が0.2dL/gを超える前に添加し、又は実際のIt.V.に関わらず、より好ましくは、重縮合ゾーンに入る前に添加する。重縮合反応の開始は一般に、エステル化ゾーン中の操作温度よりも高い実際操作温度、又はエステル化ゾーンに比較した圧力の著しい低下、又は両方を特徴とする。場合によっては、重縮合ゾーンは、エステル化ゾーン中の実際操作温度及び圧力よりも高い実際操作温度及び低い圧力(通常は減圧)を特徴とする。
【0061】
溶融相に添加する適当なアンチモン含有触媒は、重縮合反応を触媒するのに有効な任意のアンチモン含有触媒である。この例としては、当業界で認められたアンチモン(III)及びアンチモン(V)化合物、詳細にはジオール溶解性アンチモン(III)及びアンチモン(V)化合物が挙げられるがこれらに限定されず、アンチモン(III)が最もよく使用される。他の適当な化合物の例としては、ジオールと反応するが反応前にはジオール中に必ずしも溶解しないそれらのアンチモン化合物が挙げられ、このような化合物の例には酸化アンチモン(III)がある。適当なアンチモン触媒の具体例としては、酸化アンチモン(III)及び酢酸アンチモン(III)、グリコール酸アンチモン(III)、アンチモン(III)エチレングリコシド及びそれらの混合物が挙げられ、酸化アンチモン(III)が好ましい。添加するアンチモン触媒の好ましい量は、少なくとも約100ppm、又は少なくとも180ppm、又は少なくとも200ppmの間のレベルを提供するのに有効な量である。記載したアンチモン量は、その酸化状態にかかわらず金属含量に基づく。実際には、得られるポリエステルの約500重量ppm以下のアンチモンが必要である。
【0062】
プレポリマー重縮合段階は一般に、一連の1つ又はそれ以上の容器を使用し、約230〜305℃の温度において約5分〜4時間の間、操作する。この段階の間に、モノマー及びオリゴマーのIt.V.は、約0.45dL/g以下まで増加される。一般には4〜200トルの範囲の減圧を適用してプレポリマー溶融体からジオール副生成物を除去して、溶融体の重縮合を促進する。その際、ポリマー溶融体は時々撹拌して、ポリマー溶融体からのジオールの逃散を促進する。ポリマー溶融体を連続する容器に供給すると、ポリマー溶融体の分子量、従って、極限粘度数は増加する。各容器の圧力は一般に、連続する各容器内又は容器内の連続する各ゾーン中における重合度をより大きくできるように低下させる。グリコール、水、アルコール、アルデヒド及び他の反応生成物の除去を促進するために、反応器は典型的には、真空下で動かすか、又は不活性ガスでパージする。不活性ガスは、反応条件において不所望な反応又は生成物特性を生じない任意のガスである。適当なガスとしては、アルゴン、ヘリウム及び窒素が挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
予備重合ゾーン中における所望のIt.V.、一般には0.45以下のIt.V.が得られたら、プレポリマーゾーンから仕上げゾーンにプレポリマーを供給し、仕上げゾーン中において、溶融体のIt.V.が予備重合ゾーン中の溶融体のIt.V.(典型的には0.30であるが通常は0.45以下)から少なくとも約0.70、又は少なくとも0.75dL/gから約1.2dL/gの範囲のIt.V.に増加するまで、予備重合ゾーン中に存在するよりも高温まで、250〜310℃の範囲の値まで、より好ましくは270〜300℃まで一般に昇温された(必ずしも昇温されない)1つ又はそれ以上の仕上げ容器中で重縮合の第2段階を続ける。当業界において一般に「高重合器」、「仕上げ機」又は「重縮合機」として知られる最終容器も通常は、予備重合ゾーンよりも低圧で操作して、ジオールを更に追い出し且つポリマー溶融体の分子量を増加させる。仕上げゾーン中の圧力は、約0.2〜20トル、又は0.2〜10トル、又は0.2〜2トルの範囲内であることができる。仕上げゾーンは典型的には、プレポリマーゾーンと同じ基本的化学反応を伴うが、分子の大きさ、従って粘度が異なるという事実は、反応条件も異なることを意味する。しかし、プレポリマー反応器と同様に、仕上げ容器はそれぞれ真空又は不活性ガス下で操作し、いずれも典型的には撹拌することによって、ジオール及び水の除去を促進する。
【0064】
本発明の方法に関しては、基材ポリエステルポリマーの許容され得るb*カラーを+5未満に保持しながら、溶融相重縮合反応が広範囲の操作温度及び触媒濃度内で進行可能である。従って、本発明の方法は、許容され得るb*カラーを維持するために低い触媒濃度及び低い重縮合温度に限定されることはない。
【0065】
前記方法が溶融相法を説明するものであること、及び本発明がこの説明的方法に限定されないことを理解されたい。例えば、いくつかの別個のIt.V.値において種々の操作条件に言及するが、異なる作業条件を前記It.V.値の内側又は外側のいずれで実施することもできるし、あるいは前記操作条件は、前述した以外の溶融体中のIt.V.点において適用できる。更に、溶融体のIt.V.を測定する代わりに、反応時間に基づいて作業条件を調節できる。更に、方法は、直列若しくは並列でのタンク型反応器の使用又は各ゾーンへの異なる容器の使用に限定されない。更に、重縮合反応は1つの重縮合反応器中で又は直列の多数の反応器中において、回分、半回分又は連続法で経時的に操作条件のわずかな変化の連続で起こり得るので、プレポリマーゾーン及び仕上げゾーン中に重縮合反応を分割する必要はない。
【0066】
最小It.V.0.70dL/g又は他の実施態様では最小It.V.0.75dL/gの望ましいIt.V.が得られたら、溶融相反応器中のポリエステルポリマー溶融体を溶融相生成物として排出する。溶融相生成物を更に、非晶質ペレット又は溶融体成形法による造形品のような所望の形態に加工する。溶融相生成物のIt.V.は少なくとも0.70dL/g、又は0.75dL/g、又は0.78dL/g、又は0.80dL/gで且つ約1.2dL/g又は1.15dL/g以下である。
【0067】
アンチモン含有触媒の存在下で溶融体を重合させることによる溶融相生成物の製造方法も提供される。この方法では、It.V.0.45dL/gから0.70dL/g〜0.90dL/gの範囲のIt.V.までの、又は重縮合反応完了までの溶融体の反応時間は100分若しくはそれ以下、又は80分若しくはそれ以下、又は70分若しくはそれ以下である。別の実施態様において、It.V.0.3dL/gから0.70〜0.90dL/gの範囲のIt.V.までの溶融体の反応時間は、100分若しくはそれ以下、又は80分若しくはそれ以下、又は70分若しくはそれ以下である。あるいは、重縮合を完了させる仕上げゾーン中の反応時間は、仕上げゾーンに供給される溶融体のIt.V.に関係なく、100分若しくはそれ以下、又は80分若しくはそれ以下である。好ましくは、この範囲内の適用圧力は、約2mmHg又はそれ以下で且つ約0.05mmHg又はそれ以上である。更に、この方法によって製造される溶融相生成物のb*カラーは−5〜+5の範囲内である。本発明の方法によれば、許容され得るb*カラーを有する基材ポリエステルポリマーを迅速に製造することができる。
【0068】
また、固体状態において溶融相生成物の分子量を増加させることなく得られた少なくとも0.70dL/gのIt.V.を有し且つ、アンチモン残基を含む溶融相生成物を含んでなるポリエステルポリマー組成物を、射出成形機のような押出機に供給し;前記ポリエステルポリマー組成物を溶融させて、溶融ポリエステルポリマーを生成し;前記溶融ポリエステルポリマー組成物をダイを通して押出して、−5〜+5の範囲のb*カラーを有する造形品を形成することを含んでなる実施態様が提供される。溶融相中で高It.V.生成物を製造することによって、固体化工程を完全に回避できる。固体化は、固体状態でペレットの分子量(及びIt.V.)を通常は少なくとも0.05It.V.単位、より典型的には0.1〜0.5It.V.単位増加させるのによく使用される。
【0069】
少なくとも0.75dL/gの高It.V.を有するポリエステルポリマー溶融相生成物の製造は固体化の必要性を回避するが、任意の実施態様において、溶融相生成物は、それらの分子量を更に増大させるために、所望ならば固体化できる。
【0070】
本発明の更に別の実施態様において、少なくとも25%の結晶化度、固相重合せずに得られた少なくとも0.70dL/gのIt.V.及びアンチモン含有残基を有する溶融相生成物を含んでなるポリエステルポリマー組成物が提供され、このポリエステルポリマー組成物は−5〜+5のb*カラー及び少なくとも70のL*を有する。結晶化度は前記方法によって測定する。結晶化度は場合によって、少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%である。溶融相生成物は好ましくは、チタン残基を実質的に含まず、直接エステル化法においては溶融相生成物は、好ましくは、アンチモン含有化合物のみからなる重縮合触媒を溶融相に添加することによって調製する。従って、許容され得るカラーを有する、溶融相において迅速に製造されるポリエステルポリマーは、固体状態で分子量を増加させる必要なしに、明度の高い結晶化ペレットとして単離し且つ加工業者に供給することができる。
【0071】
更に別の実施態様において、また、−5〜+5CIELAB単位のb*カラー、少なくとも70CIELAB単位のL*及び固体化によってポリマーの分子量を増加させることなく得られた少なくとも0.75dL/gのIt.V.を有し且つアンチモン残基を含むポリエステルポリマーを含む、チタン残基を実質的に含まないポリエステルポリマー組成物が提供される。これらの組成物は、少なくとも4ppmの再加熱添加剤、安定剤、青味トナー及び/又はアセトアルデヒド掃去用添加剤を含むことができる。
【0072】
所望ならば、工程d)として記載された溶融体への適当な安定剤の添加によって、ポリエステルポリマーの熱安定性を増加させることができ且つ成形品が曇りを生じる傾向を減少させることができる。全ての配合物が安定剤の添加を必要とするとは限らず、全ての最終用途が格別に高い明度を必要とするとは限らない。適当な安定剤化合物は、使用する場合には、1つ又はそれ以上の燐原子を含む。
【0073】
燐含有安定剤化合物は、溶融相法の任意の点で添加できる。例えば触媒安定剤は、溶融相法の任意の点で、例えば、エステル化ゾーンへの供給材料として、エステル化中に、オリゴマー混合物に、重縮合の始めに及び重縮合中又は重縮合後に添加できる。安定剤は望ましくは、アンチモン含有触媒の添加後であってペレット化前に、例えばプレポリマーゾーンの前に、プレポリマーゾーンに、仕上げゾーンに、又は仕上げゾーンとペレタイザーとの間に添加する。
【0074】
エステル交換反応において、触媒安定剤又はエステル交換触媒を失活させるのに有効な他の化合物を更に、エステル交換反応の終わりであって且つ重縮合の前に、エステル交換触媒の失活後に添加されるアンチモン含有触媒の触媒活性をほとんど損なわずにエステル交換触媒を失活させるのに充分なモル量で添加できる。しかし、エステル交換触媒が、得られるポリエステルポリマー溶融相生成物の色をそれほど損なわないならば、エステル交換触媒はアンチモン含有触媒の添加前に失活させる必要はない。しかし、チタン含有触媒はb*カラーを過度に損なうことがわかっているので、チタン含有触媒は、重縮合の始まる前に失活させなければならず、好ましくは、エステル交換ゾーン、エステル化ゾーン又は重縮合ゾーンに全く添加しない。直接エステル化の場合、チタン含有化合物の不存在下において、安定剤を添加する場合には、それは所望のIt.V.が得られた後に添加することができる。
【0075】
安定剤の具体例としては、酸性燐化合物、例えば燐酸、亜燐酸、ポリ燐酸、カルボキシホスホン酸、ホスホン酸誘導体、それらの各酸塩及び酸エステル並びに誘導体、例えば酸性燐酸エステル、例えば燐酸モノエステル及びジエステル並びに非酸性燐酸エステル(例えば、燐酸トリエステル)、例えば燐酸トリメチル、燐酸トリエチル、燐酸トリブチル、燐酸トリブトキシエチル、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、オリゴマー燐酸トリエステル、燐酸トリオクチル、燐酸トリフェニル、燐酸トリトリル、(トリス)エチレングリコールホスフェート、トリエチルホスホノアセテート、ジメチルメチルホスホネート、テトライソプロピルメチレンジホスホネート、燐酸のモノ、ジ及びトリエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール及び2−エチルヘキサノールとの混合物又はそれぞれの混合物が挙げられる。他の例としては、ジステアリルペンタエリトリトールジホスフィット、燐酸一水素、二水素及び三水素化合物、ホスファイト化合物、いくつかの無機隣化合物、例えば燐酸モノナトリウム、燐酸亜鉛又はカルシウム、ポリ(エチレン)水素ホスフェート、燐酸シリル;ヒドロキシ若しくはアミノ置換カルボン酸、例えばサリチル酸メチル、マレイン酸、グリシン若しくは酒石酸ジブチルと組合せて使用させる燐化合物が挙げられ、いずれも金属触媒残基の不活性化に有用である。
【0076】
本発明において使用するアンチモン金属に対する燐の量は限定されないが、溶融体中に存在するアンチモン原子及び他の金属の量は考慮する。燐対アンチモンのモル比は望ましくは少なくとも0.025:1、又は0.025:1〜5.0:1、好ましくは約0.1:1〜3.0:0.1の範囲である。
【0077】
溶融体又は溶融相生成物には、アセトアルデヒド結合又は掃去化合物を添加することができる。個々の添加点は、使用するAA低下化合物の型に若干左右されるであろう。AA掃去用化合物は、プレフォーム又は他の造形品へのペレットの溶融加工の一環として使用される押出機に供給されることもできるし、あるいはAA掃去用化合物は溶融相法において溶融体に添加することもできる。一部のスカベンジャーは、反応部位が有限である。AAスカベンジャーを溶融相に添加する場合には、ポリエステルポリマーペレットが溶融されてプレフォームを生成するまでには反応部位が全て使用されてしまうことが多い。他のAAスカベンジャーは、重縮合に関与する温度及び時間において安定ではない。AA掃去剤が充分な反応部位を含み且つ材料及びその生成物が熱安定性である場合には、それらは、ポリエステルポリマーを製造するための溶融相法において、例えばIt.V.が0.45dL/gを超える仕上げ部において、より好ましくは仕上げ部の後であって且つIt.V.が0.70dL/gを超えるペレット化前に添加できる。
【0078】
AA掃去用添加剤の添加は任意であり、全ての用途がこの添加剤の存在を必要とするわけではない。しかし、使用する場合は、AA掃去用添加剤は一般に、ポリエステルポリマー溶融相生成物の重量に基づいて、約0.05〜5重量%、より好ましくは約0.1〜3重量%の量で添加する。添加剤は、個々に、又は液体キャリヤー中に、又は相溶性ポリマー基材樹脂中の固体濃縮物として添加できることを理解されたい。AA掃去用添加剤は0.5〜40重量%の範囲の量で濃縮物中に存在でき、射出成形機において塊状ポリエステルポリマー溶融体中に落とすか、ポリエステルポリマーを製造するための溶融相法中、例えば、It.V.が0.45dL/gを超える仕上げ部において、より好ましくは、It.V.が0.70dL/gを超える仕上げ部の後において溶融体に落とすことができる。
【0079】
AA掃去用添加剤は、AAと反応することが知られた任意の添加剤であることができる。適当な添加剤としては、米国特許第5,266,413号、第5,258,233号及び第4,8837,115号に開示されたようなポリアミド;1996年2月5日に出願された米国出願Ser.No.595,460に開示されたようなポリエステルアミド;ナイロン−6及び特願昭62−182065に開示されたような他の脂肪族ポリアミド;エチレンジアミン四酢酸(米国特許第4,357,461号)、アルコキシル化ポリオール(米国特許第5,250,333号)、ビス(4−[bgr]―ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン(米国特許第4,330,661号)、ゼオライト化合物(米国特許第5,104,965号)、5−ヒドロキシイソフタル酸(米国特許第4,093,593号)、超臨界二酸化炭素(米国特許第5,049,647号及び米国特許第4,764,323号)及びプロトン酸触媒(米国特許第4,447,595号及び4,424,337号)が挙げられる。好ましくは、AA低下用添加剤は、ポリアミド及びポリエステルアミドから選ばれる。適当なポリアミドとしては、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレン−アジパミド)、ポリ(m−キシリレン−アジパミド)などのようなホモ及びコポリアミドが挙げられる。分岐鎖又は超分岐鎖ポリアミドも使用できる。
【0080】
適当なポリエステルアミドとしては、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸及びヘキサメチレンジアミン(好ましくは、二酸対ジアミンの比約50:50及びグリコール対ジアミンの比50:50で)から調製されたポリエステルアミド;テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンから調製されたポリエステルアミド;テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びビス(p−アミノ−シクロヘキシル)メタンから調製されたポリエステルアミドが挙げられる。ポリエチレンイミンのような他の公知スカベンジャーも使用できる。
【0081】
好ましいAA低下剤は、数平均分子量が15,000未満の低分子量部分芳香族ポリアミド、数平均分子量が7,000未満の低分子量脂肪族ポリアミド及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミドポリマーである。これらの好ましい分子量範囲内の具体的なポリマーとしては、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−コ−イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド−コ−テレフタルアミド)及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド−コ−テレフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びポリ(カプロラクタム)が挙げられる。
【0082】
他のAA低下剤としては、米国特許第6,274,212号に記載された2−アミノベンズアミドなどのようなアントラニルアミドが挙げられる。この特許を引用することによって本明細書中に取り入れる。任意の常用のAA低下剤を使用できる。
【0083】
更に、ポリマーをカラー化するいくつかの物質を溶融体に添加できる。一実施態様においては、得られるポリエステルポリマー溶融相生成物のb*を低下させるために、青味トナーを溶融体に添加する。このような青味剤としてはブルー無機及び有機トナーが挙げられる。更に、a*カラーを調整するために、レッドトナーを使用できる。有機トナー、例えば米国特許第5,372,864号及び第5,384,377号(これらの特許を引用することによってその全体を本明細書中に取り入れる)に記載されたトナーのような有機ブルー及びレッドトナーを使用できる。有機トナーはプレミックス組成物として供給できる。プレミックス組成物は、レッド及びブルー化合物の純粋なブレンドであることもできるし、あるいは組成物はポリエステルモノマー種の1つ(例えば、エチレングリコール)に予め溶解させるか又はそれの中でスラリー化することもできる。
【0084】
あるいは、又は更に、黄色の色合いを減少させるために無機青味剤(bluing agent)を溶融体に添加できる。コバルト(II)化合物、例えばカルボン酸コバルト(II)はポリマーの黄色をマスキングするために当業界で最も広く使用されるトナーの1つである。直接エステル化を使用していない場合には、カルボン酸コバルトはエステル交換反応器に添加して、エステル交換触媒としても働くことができる。
【0085】
トナー成分の添加総量は、言うまでもなく、基材ポリエステルに固有の黄色の量及びトナーの有効性によって決まる。一般に、約15ppm以下の合計有機トナー化合物の濃度及び約0.5ppmの最小濃度を使用する。青味剤の総量は典型的には、0.5〜10ppmの範囲である。
【0086】
トナーはエステル化ゾーン又は重縮合ゾーンに添加できる。好ましくは、トナーは、エステル化ゾーンに又は重縮合ゾーンの初期段階に、例えば予備重合反応器に添加する。
【0087】
本発明の方法は、高It.V.及び低b*等級を有する基材ポリエステルポリマー溶融相生成物を製造する利点を有する。ポリエステルポリマー溶融相生成物のb*カラーは、−5〜+5CIELAB単位、好ましくは−5〜4CIELAB単位、又は−5〜3CIELAB単位である。これらの値は、本発明の方法によって、溶融相中に添加された又は生成物に添加された青味トナーの存在の有無にかかわらず、得ることができる。基材ポリエステルポリマーが低いb*等級を有する場合には、青味トナーは必要でないか、又はポリエステルポリマー溶融相生成物の色を0の中性b*に近づけるために低濃度の青味トナーが必要である。ポリエステルポリマー組成物中の青味トナー及び他の成分の性質に応じて、比較的少ない青味トナーの添加は、ポリエステルポリマーのL*明度への影響を最小限に抑える更なる利点を有する。トナーは任意成分であって、所望ならば溶融体に添加することができるが、重縮合反応を触媒するためにアンチモン含有触媒を用いることによって、基材ポリエステルポリマーは、トナーを添加する必要なく、b*等級を−5〜+5の内にとどめる能力を有する。
【0088】
従って、別の実施態様において、本発明の高It.V.ポリエステルポリマー溶融相生成物及びポリエステルポリマー組成物は、青味トナーを添加せずに、−5〜+5CIELAB単位のb*カラーを有する。別の実施態様において、本発明の高It.V.ポリエステルポリマー溶融相生成物及びポリエステルポリマー組成物は−5〜+5CIELAB単位のb*カラーを有するだけでなく、青味トナー若しくはその残基又は再加熱添加剤の有無にかかわらず、70CIELAB単位若しくはそれ以上、又は74CIELAB単位若しくはそれ以上、又は76CIELAB単位若しくはそれ以上のL*明度値を有する。炭酸ソフトドリンクボトルへの適用においては、溶融相製品は青味トナー及びin situでアンチモン化合物を還元してSb金属を形成することによって再加熱速度を促進する添加剤を含むことができる。
【0089】
所望ならば着色剤を添加できるので、ポリエステルポリマー溶融相生成物が少なくとも0.75dL/gのIt.V.、−5〜+5CIELAB単位のb*カラー及び70CIELAB単位又はそれ以上のL*明度値を有し且つ青味トナー又はその残基を含む実施態様も提供される。別の実施態様において、溶融相において少なくとも0.70dL/gのIt.V.に製造された溶融相生成物、青味トナー若しくはその残基及び/又はレッドトナー若しくはその残基及び再加熱添加剤を含んでなるポリエステルポリマー組成物であって、−5〜+5CIELAB単位のb*カラー及び70CIELAB単位又はそれ以上、より好ましくは74CIELAB単位又はそれ以上のL*明度値を有する組成物が提供される。これらの両実施態様より好ましい側面において、青味トナーは有機トナーであり、ポリエステルポリマー組成物は、エステル化反応器に添加されるコバルト化合物がない。いくつかのコバルト化合物は微量で二酸及び/又はジオール出発原料と共に存在できる。コバルト化合物は一部のポリエステルポリマーの黄色をマスキングするが、高レベルではポリマーを灰色にし且つ/又は存在する燐化合物の量がコバルトに結合するのに不十分である場合にはPETポリマーにおいては得られるポリマーの熱安定性を低下させる可能性もある。
【0090】
全てが溶融相中で実施される方法に関しては、アンチモン化合物によって触媒される高It.V.ポリエステルポリマー溶融相生成物は、再加熱添加剤、トナー又はAA低下添加剤を添加することなく、高It.V.のチタン化合物触媒ポリエステルポリマーよりも黒ずむ傾向がある。しかし、Sb+3酸化状態のアンチモンの一部は、還元化合物を添加しなくても、反応温度及び時間だけでSb0酸化状態に還元できる。ポリマー中に存在するS0金属は、ブロー成形前のボトルプレフォームの再加熱速度を上昇させるための再加熱助剤の役割も果たすという利点を有する。還元化合物を重縮合反応に添加することにより、in situで更に多くのSb0を生成できる。還元化合物の例としては、亜燐酸、アルキル若しくはアリールホスホン酸、及びアルキル若しくはアリールホスフィットが挙げられる。還元されたアンチモンはたいてい、等価の再加熱増加をもたらし、黒色酸化鉄及びカーボンブラックのような他の添加された再加熱添加剤の場合よりもポリマーの明度の低下が少ない。
【0091】
in situで形成される還元アンチモンと併用されるか又はin situで形成される還元アンチモンの代わりに使用される他の再加熱添加剤(再加熱添加剤は、in situで再加熱助剤を形成するのとは異なり、溶融体に添加される化合物と考えられる)の例としては、活性炭、カーボンブラック、アンチモン金属、錫、銅、銀、金、パラジウム、白金、黒色酸化鉄など並びに米国特許第6,197,851号(この特許を引用することによって本明細書中に取り入れる)に開示されたものを含むがこれに限定されない近赤外線吸収色素が挙げられる。
【0092】
酸化鉄(好ましくは黒色)は、非常に微細な形態で、例えば、約0.01〜約200μm、好ましくは約0.1〜約10.0μm、最も好ましくは約0.2〜約5.0μmの形態で使用する。黒色酸化鉄の適当な形態には、マグネタイト及びマグへマイトがあるがこれらに限定されない。赤色酸化鉄も使用できる。このような酸化物は、例えば、Pigment Handbook,Vol.1,著作権1973年,John Wiley &
Sons,Inc.の323〜349ページに記載されている。
【0093】
本発明の組成物には、ポリエステルポリマーの性能特性を向上させるために他の成分を添加できる。例えば結晶化助剤、耐衝撃性改良剤、離型剤、嵌め外し剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属安定剤、着色剤、成核剤、アセトアルデヒド結合化合物、他の再加熱速度促進助剤、例えばタルクなどの粘着性ボトル用添加剤、及び充填剤などを挙げることができる。
【0094】
本発明の組成物は場合によっては更に、1種又はそれ以上のUV吸収性化合物を含むことができる。一例として、コモノマー、側基又は末端基としてポリエステル分子に共有結合されるUV吸収性化合物が挙げられる。適当なUV吸収化合物はポリエステル加工温度において熱安定性であり、約320〜約380nmの範囲において吸収を示し、前記ポリマーから抽出が困難であるか又は非抽出性である。UV吸収化合物は、好ましくは厚さ12mil(305ミクロン)のボトル壁を通った370nmの波長を有するUV光の透過率を好ましくは約20%未満、より好ましくは約10%未満にする。適当な化学的に反応性のUV吸収化合物としては、下記式の置換メチン化合物が挙げられる。
【0095】
【化1】

【0096】
式中、Rは水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル若しくはアルケニル又はポリオキシアルキレン鎖、例えばポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレンポリマーであり、いずれも場合によっては、ポリマー鎖中にブロック又はランダムポリマーとして若干のオキシプロピレン又はオキシエチレン単位を有し、前記ポリオキシアルキレン鎖は500〜10,000の範囲の数平均分子量を有し;
1は水素又はアルキル、アリール若しくはシクロアルキルのような基であり、これらの基は全て置換されることができ;
2はポリエステルとの縮合を阻害しない任意の基、例えば水素、アルキル、置換アルキル、アリル、シクロアルキル又はアリールであり;
3は水素又はアルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ及びハロゲンから選ばれた1〜3個の置換基であり、
Pはシアノ又はカルバミル、アリール、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、複素環式基、アルカノイル若しくはアロイルのような基であり、これらの基はいずれも置換されることができる。
【0097】
好ましいメチン化合物は、前記式において、
2が水素、アルキル、アルアルキル、シクロアルキル、シアノアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル又はアリールであり;
Rが水素、シクロアルキル、アルキル、アルコキシ若しくはハロゲンのうち1つ若しくは2つで置換されたシクロアルキル;フェニル;アルキル、アルコキシ、ハロゲン、アルカノイルアミノ若しくはシアノから選ばれた1〜3個の置換基で置換されたフェニル;直鎖若しくは分岐鎖低級アルケニル;直鎖若しくは分岐鎖アルキル、及び以下の置換基:ハロゲン;シアノ;スクシンイミド;グルタルイミド;フタルイミド;フタルイミジノ;2−ピロリドノ;シクロヘキシル;フェニル;アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ若しくはアルキルスルファモイルで置換されたフェニル;ビニル−スルホニル;アクリルアミド;スルファミル;ベンゾイルスルホンイミド;アルキルスルホンアミド;フェニルスルホンアミド;アルケニルカルボニルアミノ;式:
【0098】
【化2】

【0099】
{式中、Yは−NH−、−N−アルキル、−O−、−S−又は−CH2O−;−S−R14−SO2CH2CH2SR14[式中、R14はアルキル;フェニル;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルカノイルアミノ若しくはシアノで置換されたフェニル;ピリジル;ピリミジル;ベンゾキサゾリル;ベンゾイミダゾリル;ベンゾチアゾリル;又は式
【0100】
【化3】


【0101】
−NHXR16、−CONR1515及び−SO2NR1515(前記R15は、H;アリール;アルキル;ハロゲン、フェノキシ、アリール、−CN、シクロアルキル、アルキルスルホニル、アルキルチオ若しくはアルコキシで置換されたアルキルから選ばれ;Xは−CO−、−COO−又は−SO2−であり、R16はアルキル;並びにハロゲン、フェノキシ、アリール、シアノ、シクロアルキル、アルキルスルホニル、アルキルチオ及びアルコキシで置換されたアルキルから選ばれ;且つXが−CO−である場合にはR16は水素、アミノ、アルケニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリール若しくはフリル;アルコキシ;シアノ若しくはアルコキシで置換されたアルコキシ;フェノキシ;又はアルキル、アルコキシ若しくはハロゲン置換基から選ばれた1〜3個の置換基で置換されたフェノキシであることができる)の基である]である}
の基から選ばれた1〜3個の置換基で置換されたこのようなアルキルから選ばれ;且つ
Pがシアノ、カルバミル、N−アルキルカルバミル、N−アルキル−N−アリールカルバミル、N,N−ジアルキルカルバミル、N,N−アルキルアリールカルバミル、N−アリールカルバミル、N−シクロヘキシルカルバミル、アリール、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、1,3,4−チアジアゾル−2−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル又はアシルである
化合物である。
【0102】
前記定義の全てにおいて、種々の基のアルキル又は二価脂肪族成分又は部分は、炭素数が1〜10、好ましくは1〜6の直鎖又は分岐鎖を含む。好ましいUV吸収性化合物としては、R及びR1が水素であり、R3が水素又はアルコキシであり、R2がアルキル又は置換アルキルであり且つPがシアノであるものが挙げられる。この実施態様において、好ましい種類の置換アルキルはヒドロキシ置換アルキルである。最も好ましいポリエステル組成物は、化合物:
【0103】
【化4】

【0104】
の反応残基を約10〜約700ppm含んでなる。
【0105】
これらの化合物、それらの製造方法及びポリエステル中へのそれらの混入方法については、米国特許第4,617,374号に更に開示されており、この特許を引用することによって本明細書中に取り入れる。UV吸収性化合物は、約1〜約5,000重量ppm、好ましくは約2〜約1,500重量ppm、より好ましくは約10〜約500重量ppmの量で存在できる。UV吸収性化合物の二量体も使用できる。2種又はそれ以上のUV吸収性化合物の混合物も使用できる。更に、UV吸収性化合物はポリマー主鎖と反応されるか又はポリマー主鎖中に共重合されるので、得られるポリマーは、改良された加工性、例えば、プレートアウト及び/又は揮発などによるUV吸収性化合物の損失の低下を示す。
【0106】
本発明のポリエステル組成物は、チップ若しくはペレットに又は種々の造形品にするのに適当である。このような製品の形成に適当な方法は知られており、その例としては、押出、押出ブロー成形、溶融キャスト、射出成形、溶融成形法、固体化を行わない溶融ペレット化、延伸ブロー成形(SBM)、熱成形などが挙げられる。ポリエステルポリマー組成物はまた、ペレット、ボトルプレフォーム、延伸ブロー成形ボトル、フレーク又はチップの形態で提供され、その個々の形態又は形状のポリエステルポリマー組成物は、−5〜+5CIELAB単位のb*カラー及び少なくとも70CIELAB単位のL*明度を有し、前記組成物のポリエステルポリマー溶融相生成物を製造するための溶融体は本発明の方法に従って反応させ、配合する。
【0107】
製品は、当業者に知られた任意の常法によって溶融相生成物から形成することができる。例えば、少なくとも25%の結晶化度まで結晶化された溶融相生成物(場合によっては固相重合された)は、飲料若しくは食品容器に延伸ブロー成形するのに適当なプレフォームのような形状に溶融体を溶融押出及び射出成形するための、又は射出成形ではなく、シートのような他の形態に単に押出するための機械に輸送する。これらの製品の製造方法は以下の工程を含んでなる。
e)少なくとも25%の結晶化度及び少なくとも0.7dL/gのIt.V.を有し且つアンチモン含有残基を含むが、場合によっては好ましくはチタン含有残基を実質的に含まない溶融相生成物を含んでなるペレットを、少なくとも140℃のゾーン温度の乾燥ゾーンにおいて乾燥させ;
f)前記ペレットを押出ゾーンに投入し、溶融ポリエステルポリマー組成物を形成せしめ;そして
g)−5〜+5の範囲のb*及び少なくとも70のL*を有する押出溶融ポリエステルポリマーから直接又は間接的にシート、ストランド、繊維又は成形品を形成させる。
【0108】
これらのペレットは、それらの分子量を増加させるための固相重合工程に供していないのが好ましい。この好ましい実施態様において、押出機に投入するために調製されるペレットは、固体化されないが、充分に高いIt.V.を有するので、物理的性質はボトルプレフォーム及びトレイの製造に適当である。
【0109】
ペレットの含水量を低下させるために、溶融押出機に注ぎ込む乾燥機が必要である。溶融押出室に供給されるペレット中又はペレット上の水分は、溶融温度においてエステル結合を加水分解することによって溶融体のIt.V.を低下させ、その結果ポリマーの溶融流れ特性及びボトルへの吹込成形時のプレフォームの延伸比に変化を生じる。乾燥機中のペレットの滞留時間を減少させ且つ処理量を増加させるために、高温でペレットを乾燥させるのが望ましい。乾燥は140℃又はそれ以上において実施でき、これは熱媒体(例えば、窒素ガス又は空気の流れ)の温度が140℃又はそれ以上であることを意味する。180℃を超える温度で乾燥を行う場合には、酸化的熱崩壊を避けるために窒素ガスの使用が好ましい。一般に、140℃又はそれ以上における乾燥機中のペレットの滞留時間は平均して0.5〜16時間であろう。任意の従来式の乾燥機を使用できる。ペレットは、加熱された空気又は不活性ガス(例えば窒素)の向流と接触させて、ペレットの温度を上昇させると共にペレットの内側から揮発分を除去することができ、また、回転混合ブレード又はパドルによって撹拌することができる。加熱ガスを使用する場合には、その流量はエネルギー消費、ペレットの滞留時間及び好ましくはペレットの流動化の回避とのバランスである。適当なガス流量は、乾燥機から排出されるペレットのポンド当たり0.05〜100cfm、好ましくは0.2〜5cfm/lb.(ペレット)である。
【0110】
ペレットは、乾燥後、押出ゾーンに投入して、溶融ポリエステルポリマー組成物を形成し、次いで、溶融ポリマーをシート若しくはフィルムに押出するか、又は溶融体を金型に射出することによってボトルプレフォームのような成形品を形成する。押出ゾーンへの乾燥ペレットの投入、溶融押出、射出成形及びシート押出の方法は従来通りであり、このような容器の製造技術を有する者には知られている。
【0111】
溶融押出機において、ペレットの性能特性を向上させるために他の成分を押出機に添加することができる。これらの成分はそのまま大量のポリステルペレットに若しくは液体キャリヤー中に添加することもできるし、又は大量のポリエステル中に落とされた成分をポリエステルポリマー中に約0.5重量%含む固体ポリエステル濃縮物として大量のポリエステルポリマーペレットに添加することもできる。適当な成分の型としては、結晶化助剤、耐衝撃性改良剤、離型剤、安定剤、嵌め外し剤、コンパウンド、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属活性低下剤、着色剤、成核剤、アセトアルデヒド低下化合物、再加熱速度促進剤、タルクのような粘着性ボトル用添加剤及び充填剤などが挙げられる。これらの添加剤及び他の多くの添加剤並びにそれらの利用法は全て公知であり、これ以上の解説は必要ない。
【0112】
固体化されていないペレットの乾燥に関して実施例を記載したが、場合によっては固体化されているペレットもまた、140℃又はそれ以上の温度において乾燥することが考えられる。本発明の溶融相生成物及びポリエステルポリマー組成物から形成できる造形品の種類の例としては、シート;フィルム;包装材料及び容器、例えば、プレフォーム、ボトル、ジャー及びトレイ;ロッド;チューブ;リッド;並びにフィラメント及び繊維が挙げられる。水又は炭酸飲料を収容するのに適当なポリエチレンテレフタレートから製造された飲料ボトル、並びにボトル中に熱間充填される飲料を収容するのに適当なヒートセット飲料ボトルは、本発明の結晶化ペレットから製造されるボトルの型の例である。トレイの例は、デュアルオーブナブルであるもの及び他のCPETトレイである。
【0113】
本発明は更に、それらの実施態様に関する追加の実施例によって説明するが、これらの実施例は、説明のためにのみ記載するのであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0114】
以下は、全ての実施例及び比較例に当てはまる。特に断らない限り、全ての実施例全体を通して重縮合に使用される出発オリゴマー混合物は、テレフタル酸、エチレングリコール、概ねシス35%/トランス65%の1,4−シクロヘキサンジメタノール約1.5モル%及びエステル化の間に発生したジエチレングリコール約1.2〜1.3重量%から調製した。酸基の転化は、NMR/滴定によってカルボキシル末端基の約95%であった。オリゴマー混合物のMnは約766g/モルであり、Mwは約1478g/モルであった。実施例中の高IVポリエステルは全て、もっぱら溶融相において製造した。即ち、Ih.V.によって示されるポリエステルポリマー溶融相生成物の分子量は固体状態において増加しなかった。
【0115】
チタン触媒サンプルにおいては、以下の試験法を用いた。重縮合に関しては、粉砕オリゴマー(103g)を0.5リットルの単頸丸底フラスコ中に量り入れる。フラスコに添加された触媒溶液はn−ブタノール中チタンテトラブトキシドである。316Lステンレス鋼パドル撹拌機及びガラスポリマーヘッドをフラスコに取り付けた。ポリマーヘッドをサイドアーム及びパージホースに取り付けた後、2回の窒素パージを完了する。重合反応器は、以下の配列を実行するようにプログラムされたCAMILE(商標)オートメーションシステムの制御下で操作する。
【0116】
【表1】

【0117】
*=傾斜;#=トルク終了
温度=300℃の場合には、全て270〜300℃に変化(285℃の場合には、全て270〜285℃に変化)。
【0118】
ベルモント(Belmont)金属の溶融浴を、フラスコを取り囲むように上昇させ、CAMILE(商標)配列を実行する。この配列で、「傾斜」とは、所定の工程時間の間における真空、温度又は撹拌速度の直線的変化と定義する。撹拌系は、工程4と5の間で自動的に校正される。段階6の終了後、真空レベルを140トルまで増加させ、次いで2分間の添加剤添加段階(段階8)が始まる。仕上げ段階(13)は、撹拌機のトルクによって終了される。ポリマーは周囲温度に冷却される。ポリマーは細断され、3mmのスクリーンを通過するように粉砕される。
【0119】
前記と同様な操作を用いて、アンチモン触媒溶融相製品を製造する。実験は、アンチモンレベル(Sb)、真空レベル及び温度を変える。フラスコに添加する触媒溶液がエチレングリコール中三酢酸アンチモンである以外は、前記例に記載したようにしてポリマーを製造する。
【0120】
表Iに示した重縮合温度を、全シーケンスを通して使用する。即ち、プレポリマー段階の温度と仕上げ段階の温度は同じである。目標Ih.V.は0.80dL/g+/−0.05(約0.84dL/gの計算It.V.に相当する)である。撹拌機のトルク目標を、各仕上げ温度及び各重合リグについて特定する。溶融体の分子量及び相当するIh.V.が増加するにつれて、その溶融粘度も増加し、それは、撹拌機が回転を変えるのに必要なトルクに相関する。各ランは、撹拌機のトルク目標が3回達成されたときに終了させる。
【0121】
比較のチタン触媒例はサンプル番号の後にCの文字で示してある。表Iに示した結果はアンチモン基材触媒及びチタン基材触媒それぞれのb*カラー及びL*カラーに対する影響を示す。
【0122】
報告した極限粘度数値はポリマーの比粘度の無限希釈における極限値である。極限粘度数は下記式で定義される:
【0123】
【数1】

【0124】
前記式において、
ηint=極限粘度数
ηr=相対粘度=ts/t0
ηsp=比粘度=ηr−1。
【0125】
機器の校正は標準対照材料の反復試験、次の、適当な数式の適用による「許容された」I.V.値の算出を含む。
【0126】
校正係数=対照材料の許容IV/反復測定値の平均
補正IhV=計算IhV×校正係数
極限粘度数(ItV又はηint)は、以下のBillmeyer式を用いて概算できる:
ηint=0.5[e0.5×補正IhV−1]+(0.75×補正IhV)。
【0127】
この例に示した色の結果は全て基材ポリエステルポリマーの色である。即ち、ブルートナー若しくはレッドトナー又はその他のトナーは全く添加せず、安定剤、再加熱添加剤、アセトアルデヒド結合剤又はアンチモン化合物をアンチモン金属に還元する物質も溶融相に添加しなかった。しかし、アンチモン触媒を用いるこれらの例のいずれに関しても、プロセス温度及び時間によるだけで、若干のSb0金属がin situで発生した。
【0128】
例1
*、a*及びb*カラー測定値は、前記試験法及びプロセスに従って、更に前述した方法に従ってポリマーを粉末に粉砕することによって得た。凝固中に溶融相からポリマーを冷却する際に、各ポリマーに結晶性が付与された。ポリマーは、それぞれ、約25%又はそれ以上の結晶化度を有すると考えられる。結晶化度を求めるために使用した分析方法は、更に前述したDSC法である。結果を表Iに報告する。
【0129】
【表2】

【0130】
270℃の低反応温度において低濃度のチタン(即ち5ppm)で触媒されたサンプルのb*カラーは、8.5より高い値で示されるように決して満足できるものではなかった。例1C及び2Cを参照されたい。約0.78又は0.79のIt.V.を得るための滞留時間は、圧力を2トルから0.2トルに低下させる(真空を増加させる)ことによって223分から123分へと半分に短縮された。アンチモン触媒サンプルにおける滞留時間は、適当な量のアンチモン触媒、より高い反応温度又は適当なアンチモン触媒と反応温度との組合せを用いることによって、同じ真空レベル及び同様なIt.V.においてサンプル1C及び2Cの場合よりも短かった。アンチモン触媒サンプルにおいては反応が目的It.V.までより速く進行するだけでなく、各アンチモン触媒サンプルにおいては基材ポリマーのb*カラーが同じ真空レベル及び同様なIt.V.においてサンプル1C及び2Cに比較して優れていた。また、アンチモン触媒サンプルにおいては、約6又はそれ以下のb*を広い処理ウィンドウ内で且つまた、真空、触媒濃度及び反応温度の種々の異なる組合せ内で保持できることがわかる。
【0131】
反応温度、触媒濃度を増加させ、若しくは圧力を低下させ又はこれらのパラメーターの組合せによってチタン触媒サンプルの滞留時間を短縮しようとする試みは、比較例11C〜12C及び15C〜20Cに見られるように成功した。しかし、触媒濃度及び/又は反応温度の増加は、多くの場合にb*値の増加に見られるように基材ポリエステルポリマーを更に黄変させ、又はよくても、6未満の値へのb*カラーの改良は得られなかった。結果は、反応時間を短縮するように設計されたより高温における5ppmへのチタンレベルの減少は、許容され得ないほど高いb*を有するポリエステルポリマーを生じることを示している(11C〜12C参照)。
【0132】
表Iの結果は、等しいインヘレント粘度において、基材ポリエステルポリマーに関するb*カラーがチタン触媒サンプルに比べて低いアンチモン触媒ポリエステルポリマーを製造できることを示している。更に、チタン触媒サンプルにおいて低チタン及び低温条件の使用に固執する場合、アンチモン触媒サンプルを製造するための滞留時間は著しくチタン触媒サンプルの場合よりも短かった。これは、アンチモン触媒反応においてはb*カラーを6より大きくはほとんど増加させずに使用できる広範囲のアンチモン触媒濃度及びより高い反応温度が存在するためである。
【0133】
例2
この一連の例においては、溶融相合成の間に燐安定剤を添加した。全ての例において添加される安定剤の型は、オリゴマー燐酸トリエステルであった。量は、表IIに示したように変化させた。最も低い燐:金属のモル比(P:MZ)はゼロである。
【0134】
これらのサンプルにおいては、溶融体には再加熱添加剤、還元剤及びトナーを添加しなかった。各サンプルは、高It.V.ポリエステルポリマー溶融相生成物のb*及びL*に対するP:MZ、触媒レベル、及び温度の影響を示している。
【0135】
計画実験は、アンチモンレベル(Sb)、反応温度及び/又は燐/Sbモル比を変える。オリゴマー装入、装置及びアンチモン触媒溶液は例1に記載したのと同様である。仕上げ反応ゾーン中の真空レベルは、触媒としてSb化合物を用いる全ての実験において0.8トルに固定する。燐溶液は、段階5、段階7の重縮合の開始前及びエステル化反応の完了後に添加する。以下の配列に記載したようにして、一連の段階において真空を適用する。
【0136】
【表3】

【0137】
*=傾斜
#=トルク終了
温度=300℃の場合には、全て270〜300℃に変化(285℃の場合には、全て270〜285℃に変化)。
【0138】
Sb触媒サンプルと同様な方法を用い、チタンレベル、反応温度及び燐対チタンレベルのモル比を変えて、チタン触媒サンプルを調製する。オリゴマー装入、装置及びアンチモン触媒溶液は例1に記載したのと同様である。仕上げ反応ゾーン中の真空は0.2トルに固定する。実現可能な最も低い真空を使用すると、IVまでの時間が最も速くなり、それにより、他の場合よりも高いP:Tiモル比の効果で外観が改善できる。この例におけるチタン触媒サンプル中の燐溶液は、重縮合の間の第1予備重合ゾーンと第2予備重合ゾーンとの間の段階8において添加する。以下の配列に記載したようにして、一連の段階において真空を適用する。
【0139】
【表4】

【0140】
*=傾斜
#=トルク終了
温度=300℃の場合には、全て270〜300℃に変化(285℃の場合には、全て270〜285℃に変化)。
【0141】
ポリエステルポリマー溶融相生成物サンプルを、種々の反応温度、触媒レベル及び/又は真空レベルにおいてL*及びb*に関して試験する。各実験に関するIh.V.目標は0.8dL/gである。Tiの場合には、測定IhVは、285℃の1つ及び300℃の2つ(X28951−168、169、187)を除いて目標の±0.05dL/g以内である。Sbの場合には、測定IhVは、270℃の1つを除いて目標の±0.05dL/g以内である。表IIは、反応温度、触媒レベル、真空レベル、燐レベル並びにL*及びb*カラーを記載する。
【0142】
【表5】

【0143】
例3
この例は、同様なb*カラーレベルを得るために、チタン及びアンチモンで触媒された、完全に配合されたポリエステルポリマー組成物に添加する必要のある着色剤のレベル;着色剤トナーの添加のL*カラーへの影響及び同様なIt.V.レベルに到達するための反応時間を評価する。
【0144】
この例において、燐熱安定剤は、比較的低い温度(270℃)で低レベルのチタン(5ppm)で触媒されたポリエステルポリマーに添加する。IhV約0.80に相当するトルクにおいてポリマーランを終了させると、反応時間は約155分であった。P/Tiモル比は少なくとも1であった。155分間の重合時間後、真空を中止し、燐化合物を添加し、真空を再開して、混合を促進した。
【0145】
この例において、燐化合物は、燐酸又はオリゴマー燐酸トリエステルである。It.V.の起こり得る低下を回避するために、濃縮型の燐化合物を使用した。濃縮型の燐化合物を用いることによって、ポリマーを加水分解するか又はグリコール分解する(glycolyze)こともあり得る溶媒の存在量を減少させる。燐酸は85重量%水溶液として添加した。シリンジによって再現可能なようにポリマーに添加できる燐酸の最小容量は、0.02mlである。これはポリマー中約80ppmのPの目標に相当する。オリゴマー燐酸トリエステルは、9wt./wt.%燐溶液として直接添加した。シリンジによって再現可能なようにポリマーに添加できるオリゴマー燐酸トリエステルの最小容量は0.02mlであった。これはポリマー中約20ppmのPの目標に相当する。
【0146】
以下の配列は、約5ppmのTiを用い、且つオリゴマー混合物が約1.5 DEGを含み且つバッチ間において若干の分散を含む転化率が約90〜95%である以外は実施例1に記載したのと同様なオリゴマー混合物出発原料及び量を用いてチタン触媒ポリマーを製造するための加工条件を示す。燐化合物は段階12で添加した。以下の配列に従って2つのポリマーラン、1つは燐酸の添加に関して、もう1つはオリゴマー燐酸トリエステルの添加に関して行った。
【0147】
【表6】

【0148】
*=傾斜
#=トルク終了
温度=300℃の場合には、全て270〜300℃に変化(285℃の場合には、全て270〜285℃に変化)。
【0149】
アンチモン化合物によって触媒される重合の典型的な条件は、約285℃及びポリマー中Sb約250ppmである。約0.80IhVに相当するトルクにおいてポリマーランを終了させると、反応時間は約58分であった。オリゴマー混合物が約1.5 DEGを含み且つバッチ間において若干の分散を含む転化率が約90〜95%である以外は実施例1に記載したのと同様なオリゴマー混合物を用いてSb約250ppmで触媒されたランに関して、以下の配列を用いた。燐化合物は段階12で添加した。以下の配列に従って2つのポリマーラン、1つは燐酸の添加に関して、もう1つはオリゴマー燐酸トリエステルの添加に関して行った。
【0150】
【表7】

【0151】
*=傾斜
#=トルク終了
温度=300℃の場合には、全て270〜300℃に変化(285℃の場合には、全て270〜285℃に変化)。
【0152】
表IIIは、燐酸で安定化されたチタン触媒ポリマー及びアンチモン触媒ポリマーを比較する分析結果を記載する。ブルー及びレッド有機トナーを、約2CIELAB単位のディスクb*カラー目標を目標にして添加した。Ferroからの少量(0.0005g)の黒色酸化鉄を添加して、Sb触媒ポリマーの再加熱速度に一致するようにTi触媒ポリマーの再加熱速度を増加させた。
【0153】
【表8】

【0154】
表IVは、オリゴマー燐酸トリエステルで安定化されたチタン触媒ポリマー及びアンチモン触媒ポリマーを比較する分析結果を示す。ブルー及びレッド有機トナーを、約2CIELAB単位のディスクb*カラー目標を目標にして添加した。Ti触媒ポリマーの再加熱速度は、試験誤差内でSb触媒ポリマーの再加熱速度と一致した。従って、黒色酸化鉄は添加しなかった。
【0155】
【表9】

【0156】
ディスクb*カラー(+/−2)及び再加熱速度がトナー及び再加熱添加剤を用いて(必要な場合)同様になった場合、同様なb*カラーを提供するためにSb触媒ポリマーに添加するトナーはより少なくなる。しかし、少なくとも匹敵する明度及び黄色度を維持しながら、同じIt.V.を達成するためには、285℃において250ppmのSbで触媒されたポリマーは、270℃において5ppmのTiを使用するシナリオによって触媒されたポリマーよりも反応時間はるかに短いという明確な利点を有する。
【0157】
例4
例3において、低Ti/低温の選択肢の仕上げ機滞留時間は、285℃においてSb 250ppmを用いる選択肢より約2.7倍長かった。仕上げ機滞留時間がもっと近い場合に2つの触媒系間の色を比較するために、この例中のチタンレベルは10ppmに増加させ、温度は270℃に保つ。これらのランのために以下の配列を用いる。
【0158】
【表10】

【0159】
*=傾斜
#=トルク終了
温度=300℃の場合には、全て270〜300℃に変化(285℃の場合には、全て270〜285℃に変化)。
【0160】
これらの条件下において、Ti触媒ランの仕上げ機滞留時間は約66分であった。シリンジよって再現可能なようにポリマーに添加されたオリゴマー燐酸トリエステルの最小容量は0.02mLであった。これは、ポリマー中P約20ppmの目標に相当する。
【0161】
以下の表Vにおいて、Sbランは、燐源としてオリゴマー燐酸トリエステルを用い、例3において前述したのと同じである(表IV)。Ti触媒ポリマーの再加熱速度は、試験誤差内でSb触媒ポリマーの再加熱速度と一致し;従って、黒色酸化鉄は添加しなかった。レッドトナー及びブルートナーは、同様なb*カラーを目標とするのに充分なレベルで添加した。表Vは、a*、b*及びL*カラーに関する分析結果を示す。
【0162】
【表11】

【0163】
結果は、チタン触媒ポリマーを同様な反応時間で製造する場合にチタン触媒ポリマーと同様なb*カラーを提供するのにSb触媒ポリマーに添加しなければならないトナーはより少ないことを示している。Sb触媒ポリマーのL*明度は、チタン触媒ポリマーのL*明度よりも高かった。
【0164】
例5
仕上げ機滞留時間がより近い場合に2つの触媒系の間で色を更に比較するために、この場合は、チタンレベルを5ppmに保つと共に、反応温度を289℃に上昇させた。以下の配列を用いた。
【0165】
【表12】

【0166】
*=傾斜
#=トルク終了
温度=300℃の場合には、全て270〜300℃に変化(285℃の場合には、全て270〜285℃に変化)。
【0167】
これらの条件下において、Ti触媒ランに関する仕上げ機滞留時間は約48分であった。シリンジよって再現可能なようにポリマーに添加されたオリゴマー燐酸トリエステルの最小容量は0.02mLである。これは、ポリマー中P約20ppmの目標に相当する。
【0168】
以下の表において、Sbランは、例3、表IVにおいて前述したのと同じである。Ti触媒ポリマーの再加熱速度は、試験誤差内でSb触媒ポリマーの再加熱速度と一致し;従って、黒色酸化鉄は添加しなかった。レッドトナー及びブルートナーは、同様なb*カラーを目標とするのに充分なレベルで添加した。同様なb*を目標としようとする際に生じた問題、試験の変動、又は多量の燐を添加した1つのランのため、各チタンランの結果を報告する。表VIは、a*、b*及びL*カラーに関する分析結果を示す。
【0169】
【表13】

【0170】
結果は、匹敵する速い反応時間で、反応されたチタン触媒ポリマーと同様なb*カラーを提供するためには、アンチモン触媒ポリマーにはより少ないトナーを添加することを示している。Sb触媒ポリマーのL*はまた、全てのTi触媒ポリマーのL*よりも明度が高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融相中で少なくとも0.70dL/gのIt.V.に製造された溶融相生成物、青味トナー若しくはその残基及び/又はレッドトナー若しくはその残基並びに再加熱添加剤を含んでなり、−5〜+5のb*カラー及び70又はそれ以上のL*明度値を有するポリエステルポリマー組成物。
【請求項2】
前記L*が少なくとも74である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記b*が+4又はそれ以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記再加熱添加剤が黒色粒子である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
a)ジオールとジカルボン酸、ジカルボン酸の誘導体及びそれらの混合物を含むジカルボン酸成分とをエステル化又はエステル交換して、オリゴマー混合物を生成せしめ;
b)重縮合ゾーン中でオリゴマー混合物を重縮合して、It.V.が少なくとも0.75dL/gのポリエステルポリマー溶融体を生成せしめ、
c)前記ポリエステルポリマー溶融体のIt.V.が0.45dL/gに達する前に、アンチモン含有触媒を前記オリゴマー混合物若しくは前記ポリマー溶融体又は両者に添加し、そして
d)場合によっては、前記溶融体にアンチモン触媒安定剤を添加する
ことを含んでなるb*カラーが−5〜+5であるポリエステルポリマー溶融相生成物の製造方法。
【請求項6】
前記ポリエステルポリマー溶融相生成物が少なくとも70のL*を有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記重縮合反応の間、重縮合ゾーン中における前記重縮合反応を、270〜300℃の範囲の温度において、溶融体のIt.V.が0.45dL/gに達するまでに始め、そして溶融体のIt.V.が0.75dL/gに達するまで少なくとも続けることを含む請求項5に記載の方法。
【請求項8】
0.3dL/gの溶融体中It.V.から始まって0.70dL/gのIt.V.に達するまでの反応時間が100分又はそれ以下である請求項5に記載の方法。
【請求項9】
アンチモン触媒安定剤を溶融体に添加することを含む請求項5に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも0.025:1のP:Sbモル比で燐含有化合物を触媒安定剤として添加することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アンチモンを酸化状態ゼロに還元する化合物を前記溶融体に更に添加する請求項5に記載の方法。
【請求項12】
青味トナーを添加することを含む請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエステルポリマー溶融相生成物が、ポリエステルポリマー溶融相生成物中のカルボン酸成分残基100モル%及びヒドロキシル成分残基100モル%に基づいて、
(a)テレフタル酸又はテレフタル酸の誘導体の残基少なくとも92モル%を含むカルボン酸成分及び
(b)エチレングリコールの残基少なくとも92モル%を含むヒドロキシル成分
を含む請求項5に記載の方法。
【請求項14】
アンチモン含有触媒を含む少なくとも1種の触媒化合物を溶融体に添加し、そして前記溶融体を、前記アンチモン含有触媒の存在下で重合して、少なくとも0.75dL/gのIt.V.、−5〜+5のb*カラー及び少なくとも70のL*明度を有する溶融相ポリエステルポリマーを生成せしめることを含んでなる、有機青味トナーを含むポリエステルポリマー溶融相生成物の製造方法。
【請求項15】
前記生成物が再加熱添加剤を更に含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記再加熱添加剤を、溶融体中でその場(in situ)において、酸化状態ゼロに還元されたアンチモンと組合せる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生成物が4ppmより多い再加熱添加剤を含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
青味剤(bluing agent)の添加量が4ppm又はそれ以上である請求項14に記載の方法。
【請求項19】
It.V.0.45から0.7までの反応時間が100分又はそれ以下である請求項14に記載の方法。
【請求項20】
仕上げゾーン中における重縮合反応時間が100分又はそれ以下である請求項14に記載の方法。
【請求項21】
固相重合の間を通してポリマーの分子量を増加させることなく、得られた少なくとも0.75dL/gのIt.V.、−5〜+5のb*カラー及び少なくとも70のCIELAB単位のL*を有するポリエステルポリマーを含んでなる、アンチモン残基を含むがチタン残基を実質的に含まないポリエステルポリマー組成物。
【請求項22】
前記組成物が少なくとも4ppmの再加熱添加剤を更に含む請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
青味トナーを更に含む請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
固相重合をせずに得られた少なくとも0.75dL/gのIt.V.を有し且つアンチモン残基を含むポリエステルポリマー溶融相ペレット。
【請求項25】
*が少なくとも74である請求項24に記載のペレット。
【請求項26】
前記ペレットのb*が−5〜+5の範囲である請求項24に記載のペレット。
【請求項27】
ペレットが黒色粒子再加熱添加剤を含む請求項24に記載のペレット。
【請求項28】
前記ポリエステルポリマー溶融相生成物が(a)前記生成物中のカルボン酸成分残基100モル%に基づき少なくとも60モル%のテレフタル酸若しくはテレフタル酸の誘導体の残基を含むカルボン酸成分を含む請求項24に記載のペレット。
【請求項29】
前記ポリエステルポリマー溶融相生成物が、ポリエステルポリマー溶融相生成物中のカルボン酸成分残基100モル%及びヒドロキシル成分残基100モル%に基づいて、
(a)テレフタル酸又はテレフタル酸誘導体の残基を少なくとも92モル%含んでなるカルボン酸成分及び
(b)エチレングリコールの残基を少なくとも92モル%含んでなるヒドロキシル成分を含んでなる請求項24に記載のペレット。

【公開番号】特開2008−150622(P2008−150622A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57840(P2008−57840)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【分割の表示】特願2005−65188(P2005−65188)の分割
【原出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】