説明

アンテナ付き樋の製造方法及びアンテナ付き樋

【課題】正確な形状のアンテナパターンを備えたアンテナ付き樋を形成できるアンテナ付き樋の製造方法及びアンテナ付き樋を提供する。
【解決手段】雨水を流すための合成樹脂製の樋体1の外面に金属箔2を巻付け、その後、前記金属箔2にアンテナパターン3を形成する加工を施してアンテナ付き樋6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ付き樋の製造方法及びアンテナ付き樋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合成樹脂製の軒樋の外面にアンテナパターン形状をした金属箔を接着して合成樹脂製の軒樋の外面にアンテナパターンを形成することが開示してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−84156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された従来例は以下の問題点がある。
【0005】
アンテナパターン形状をした金属箔を軒樋外面に接着するので、アンテナパターン形状をした金属箔は、曲面となった軒樋外面に接着し難く、また、接着する際、皺が生じたりして正確に貼り付け難く、軒樋外面に正確なアンテナパターンが形成し難い。
【0006】
このように軒樋外面に正確なアンテナパターンを形成でき難いので、アンテナ性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、正確な形状のアンテナパターンを備えたアンテナ付き樋を形成できるアンテナ付き樋の製造方法及びアンテナ付き樋を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアンテナ付き樋の製造方法は、雨水を流すための合成樹脂製の樋体の外面に金属箔を巻付け、その後、前記金属箔にアンテナパターンを形成する加工を施すことを特徴とする。
【0009】
前記金属箔の裏面を前記樋体に貼付け、前記金属箔をエッチング加工して前記アンテナパターンを形成することが好ましい。
【0010】
前記エッチング加工に先立って前記金属箔の表面にマスキング層を形成し、前記金属箔のマスキング層で覆われていない部分をエッチング加工で除去して前記アンテナパターンを形成し、前記エッチング加工後にマスキング層を除去することなく残して該マスキング層をアンテナパターンを形成した金属箔の表面保護層とすることを特徴とすることが好ましい。
【0011】
また、前記請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により製造したアンテナ付き樋も好ましい。
【0012】
また、前記アンテナパターンを形成した前記金属箔を外面に巻き付けた筒状の前記樋体が、外筒部で覆われていることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、樋体外面に金属箔を巻付ける際に金属箔に皺が生じ難く、樋体外面に綺麗に金属箔を巻付けることができ、この樋体の外面に金属箔を巻付けた後にアンテナパターンを形成するので、正確な形状のアンテナパターンを備えたアンテナ付き樋を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)(b)(c)(d)は本発明のアンテナ付き樋の製造方法の製造順序を示す斜視図である。
【図2】(a)(b)(c)(d)は同上の製造順序を示す要部拡大断面図である。
【図3】アンテナ付き樋の断面図である。
【図4】(a)(b)(c)は本発明のアンテナ付き樋の製造方法の他の製造順序を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)(c)は同上の製造順序を示す要部拡大断面図である。
【図6】同上の製造方法で形成したアンテナ付き樋の一部省略全体斜視図である。
【図7】同上の一部破断した斜視図である。
【図8】同上に用いる保持部材の斜視図である。
【図9】同上に用いる同軸ケーブルの斜視図である。
【図10】同上の施工状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面に基づいて一実施形態を説明する。
【0016】
アンテナ付き樋6は、図3に示されるように、雨水を流すための合成樹脂製の樋体1の外面にアンテナパターン3を備えた導電性の金属箔2を巻付けて構成してあり、雨水を流す機能と、テレビのアンテナとしての機能を備えている。
【0017】
このアンテナ付き樋6を形成するには以下のようにして形成する。
【0018】
以下の実施形態では、竪樋のような円筒状又は角筒状の樋体1の例で説明するが、樋体1としては竪樋のみに限定されず、這樋、呼び樋、軒樋などであってもよい。
【0019】
図1、図2に示す本実施形態においては、まず、図1(a)→(b)、図2(a)→(b)のように、筒状をした合成樹脂製の樋体1の外面にアンテナパターン3を形成する前の状態の金属箔2が巻付けられる。
【0020】
この場合、金属箔2は、裏面全面が樋体1の外面に接着剤による接着、超音波溶着(高周波誘導加熱による溶着)による接着、超音波溶着による接着、熱風溶着による接着、熱カシメによる接着により貼付けられる。
【0021】
その後、図1(c)、図2(c)のように樋体1の外面に貼付けられた金属箔2の表面にマスキングが施され、後工程でアンテナパターン3の加工のためにエッチングで除去される部分7を除いてマスキング層4で覆われる。
【0022】
つまり、後工程でアンテナパターン3の加工がされない部分はマスキング層4で覆われ、後工程でアンテナパターン3の加工のためにエッチングで除去される部分7はマスキングされることなく露出する。
【0023】
マスキングが施された後、エッチング加工が行われ、エッチング液により図1(d)、図2(d)のように、金属箔2のマスキング層4で覆われていない部分が除去され、金属箔2にアンテナパターン3が形成される。
【0024】
図1、図2に示す実施形態では、樋体1の外面に金属箔2を巻付けた後にマスキング層4が形成された例を説明したが、図4、図5の実施形態のように、予め表面にマスキング層4を形成した金属箔2が樋体1の外面に巻付けられてもよい。
【0025】
すなわち、図4、図5に示す実施形態では、予め表面にマスキング層4を形成した金属箔2を図4(a)→(b)、図5(a)→(b)のように、筒状をした合成樹脂製の樋体1の外面に巻付けられる。
【0026】
つまり、金属箔2の表面に予めマスキング層4を形成することで、金属箔2の表面の後工程でアンテナパターン3の加工がされない部分がマスキング層4で覆われ、後工程でアンテナパターン3の加工のためにエッチングで除去される部分7が露出する。
【0027】
このように予め表面にマスキング層4を形成した金属箔2が樋体1の外面に巻付けられた後、エッチング加工が行われ、図4(c)、図5(c)のように、金属箔2のマスキング層4で覆われていない部分が除去され、金属箔2にアンテナパターン3が形成される。
【0028】
この樋体1の外面に巻付けられた金属箔2にアンテナパターン3を形成することで、アンテナパターン3を形成した金属箔2がテレビのアンテナを構成することになる。
【0029】
上記図1、図2の実施形態、図4、図5の実施形態のいずれの製造方法においても、金属箔2を樋体1に巻付けた後に、金属箔2にアンテナパターン3を形成する加工をするので、以下の特徴を有している。
【0030】
すなわち、アンテナパターン3を形成する前の金属箔2を樋体1外面に巻付けるので、樋体1外面への金属箔2の巻付けが容易に行え、また巻付ける際に金属箔2に皺が生じ難く、樋体1外面に綺麗に金属箔2を巻付けることができる。
【0031】
そして、この樋体1の外面に綺麗に巻付けた金属箔2にアンテナパターン3を形成するので、正確な形状のアンテナパターン3を備えたアンテナ付き樋6を形成できる。
【0032】
なお、アンテナパターン3形成後にマスキング層4を除去してもよいが、図3に示すように、除去することなくそのまま残して該マスキング層4をアンテナパターン3を形成した金属箔2の表面保護層10としてもよい。
【0033】
表面保護層10は、アンテナパターン3を備えた金属箔2の表面を保護し、錆び等が発生しないようする。マスキング層4を表面保護層10として残す場合、マスキング層4は非導電性の材料で形成し、アンテナパターン3のアンテナ性能に影響を及ぼさないようにする。
【0034】
図1(d)、図2(d)、図4(c)、図5(c)、図6にはアンテナパターン3としてスロットアンテナパターンの例が示してある。このスロットアンテナパターンは、導電性の縦長矩形状の金属箔2に細長いスロット28を形成することでアンテナパターン3を形成する。
【0035】
また、上記の実施形態では、金属箔2にスロット28が上下方向に複数並べて設けられており、隣接するスロット28同士は細溝25で接続されている。各スロット28は三角形の頂点を互いに突き合わせたようなボウタイ形状に形成されている。
【0036】
アンテナパターン3は、第一の周波数帯(例えば473〜600MHz)の電波を受信する第一の受信部29と、第二の周波数帯(例えば600〜720MHz)の電波を受信する第二の受信部30を有している。
【0037】
第一の受信部29は、スロット28及び当該スロット28の周縁部により構成される。第二の受信部30は、このスロット28に対し上下方向に隣接する金属箔2部分により構成される。
【0038】
第一の受信部29を構成するスロット28の上下方向の長さは、前記第一の周波数帯内の電波の電気的な半波長の長さに対応して決定される。また、第二の受信部30の周方向の長さは、前記第二の周波数帯内の電波の電気的な半波長の長さに対応して決定される。
【0039】
金属箔2のスロット28の両側の三角形の頂点部分がそれぞれ給電部9となっている。
【0040】
給電部9には給電ケーブル11が接続される。
【0041】
給電部9に接続する給電ケーブル11は同軸ケーブルである。この同軸ケーブルは、内側の芯線32の外側を芯線外皮部33で覆い、芯線外皮部33の外周に編線34で覆い、更に編線34を外側外皮部35で覆っている。
【0042】
給電ケーブル11の端部は、図9のように、外側外皮部35を除去して編線34の端部が露出した部分が形成され、編線34の端部より突出して芯線外皮部33が露出する部分が形成され、更に、芯線外皮部33の端部より芯線32が突出するする部分が形成される。
【0043】
給電ケーブル11における芯線32の端部が一方の給電部9に接続され、編線34の端部が他方の給電部9に接続される。
【0044】
添付図面に示す実施形態は、図8に示すような保持部材8を用いて図6、図7に示すように取付けた例を示している。
【0045】
前述のように給電部9に機械的、電気的に接続された給電ケーブル11は樋体1の外面に巻付けられたアンテナパターン3付きの金属箔2の外面に樋体1の軸方向に沿って配置される。
【0046】
軸方向に沿って配置するに当っては、スロット28を避けて配置される。
【0047】
ここで、外周にアンテナパターン3を備えた金属箔2を巻付けた樋体1の外周面にケーブル保持部42を備えた保持部材8が取付けられ、ケーブル保持部42に給電ケーブル11が保持される。
【0048】
保持部材8は、非導電性の合成樹脂のような非導電性材料により形成されている。また、図8のように、保持部材8は、一対の半体38の一端部同士を軸受部39で回動自在に連結して構成され、一対の半体38の他端部の係止部40と被係止部41が係止自在となっている。
【0049】
保持部材8は、給電ケーブル11のアンテナパターン3に対する位置を保持するケーブル保持部42を備え、このケーブル保持部42に給電ケーブル11が保持される。
【0050】
また、各保持部材8は、径外方向に突出する複数の突出部を有する。本実施形態の保持部材8は、軸受部39と、係止部40及び被係止部41と、ケーブル保持部42との計4箇所の突出部を有する。突出部は周方向に等間隔で配置されており、すなわち90°ごとに径外方向に突出する。
【0051】
外周にアンテナパターン3を備えた金属箔2を巻付けた樋体1に外筒部5を被せることで、二重筒構造のアンテナ付き樋6が構成される。
【0052】
外周にアンテナパターン3を備えた金属箔2を巻付けた樋体1に外筒部5を被せると、保持部材8に突出部を設けているので、外筒部5の略中心に樋体1の中心が配置されると共に、外筒部5の内周面に当接又は近接対向するようになる。
【0053】
このように、外筒部5により外周にアンテナパターン3を備えた金属箔2を巻付けた樋体1が覆われることで、アンテナパターン3を備えた金属箔2が雨水、外気、太陽光に晒されず、劣化が抑制される。
【0054】
二重筒構造のアンテナ付き樋6は、長手方向の端部に、接続体24が備えられ、上下の接続体24に樋体1と、外筒部5の上下方向の両端部が接続され、上下の接続体24は樋体1に連通する。
【0055】
樋体1の軸方向に沿った給電ケーブル11は、接続体24に設けた引出部43に至り、給電ケーブル11の端部に設けた接続具44が引出部43を構成する孔に嵌め込んで取付けられる。
【0056】
接続具44には、テレビ側ケーブル45の端部に設けた接続具が電気的に接続される。このテレビ側ケーブル45は、建物46の外壁47や軒天井48から建物内に導入され、既存の建物46内のテレビ側に接続される。
【0057】
図10は、アンテナ付き樋6が竪樋の一部として用いられた例を示している。図10において、符号49は軒樋、50は集水器、51はエルボ、52は呼び樋、53は一般の竪樋を示している。
【0058】
アンテナ付き樋6を竪樋の一部として用いる場合、アンテナ付き樋6の接続体24を一般の竪樋53やエルボ51に接続し、筒状をした樋体1内に雨水を流す。
【0059】
接続の際、アンテナ付き樋6を軸芯を中心に回転して、アンテナパターン3を最も強い受信方向に向ける。
【0060】
前述の実施形態においては、外筒部5を設けた例で説明したが、外筒部5を設けないものであってもよい。
【0061】
外筒部5を設けない場合、好ましくはアンテナパターン3形成後にマスキング層4をそのまま表面保護層10として残しておく。これにより、金属箔2はマスキング層4で覆われて直接雨水、外気、太陽光にさらされず、アンテナパターン3の劣化を抑制できる。
【0062】
なお上記実施形態では、樋体1の外面に巻付けた金属箔2をエッチング加工することでアンテナパターン3を形成する例を示したが、エッチング加工に代えてレーザー切断、ウォータージェット加工などによりアンテナパターン3を形成してもよい。
【0063】
また、上記アンテナ付き樋の製造方法の技術は、樋体1以外の基材外面に金属箔2を貼付け、その後、アンテナパターン3を形成して、アンテナ付き基材を形成することに適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 樋体
2 金属箔
3 アンテナパターン
4 マスキング層
5 外筒部
6 アンテナ付き樋
10 表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を流すための合成樹脂製の樋体の外面に金属箔を巻付け、その後、前記金属箔にアンテナパターンを形成する加工を施すことを特徴とするアンテナ付き樋の製造方法。
【請求項2】
前記金属箔の裏面を前記樋体に貼付け、前記金属箔をエッチング加工して前記アンテナパターンを形成することを特徴とする請求項1記載のアンテナ付き樋の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング加工に先立って前記金属箔の表面にマスキング層を形成し、前記金属箔のマスキング層で覆われていない部分をエッチング加工で除去して前記アンテナパターンを形成し、前記エッチング加工後にマスキング層を除去することなく残して該マスキング層をアンテナパターンを形成した金属箔の表面保護層とすることを特徴とする請求項2記載のアンテナ付き樋の製造方法。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により製造したアンテナ付き樋。
【請求項5】
前記アンテナパターンを形成した前記金属箔を外面に巻き付けた筒状の前記樋体が、外筒部で覆われていることを特徴とする請求項4記載のアンテナ付き樋。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−244561(P2012−244561A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115401(P2011−115401)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】