説明

アンテナ位置調整システム

【課題】アンテナの位置調整を高精度に行う。
【解決手段】アンテナ支持部は、アンテナを支持する。アンテナ位置検出部は、アンテナの位置検出を行う。アンテナ位置検出部は、アンテナの第1の定点と第2の定点とに対し、第1の定点の位置検出を行って、規定位置に対するアンテナの位置を検出する。また、第1の定点と第2の定点との位置検出を行って、規定軸に対するアンテナの平行度を検出する。この場合、アンテナ位置検出部は、第1の光検出部および第2の光検出部を含み、アンテナに向けて発出された光ビームの反射光の受光レベルにもとづき、アンテナの位置検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナの位置調整を行うアンテナ位置調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子・電気機器から放射される電磁波ノイズをEMI(Electro Magnetic Interference)として測定・評価することが行われている。
機器のEMIを測定して議論する場合には、周囲からの反射が十分に少ない場所で測定した値が基本となる。反射があると測定値に誤差が含まれるためであり、通常は反射が少ないほど好ましい測定環境といえる。このため、理想的な測定環境は、反射物体が存在しない宇宙空間(自由空間:free space)となる。
【0003】
擬似的な自由空間(準自由空間)として作り出される測定環境として、屋内では、電波暗室がある。電波暗室は、室内の天井、壁、および床の全面に、電波吸収体を取り付けて、室内での電波の反射を抑えた部屋のことである。
【0004】
また、屋外で準自由空間を作り出すには、例えば、近くに障害物の存在しない見通しのよい場所に、地面に電波吸収体を敷いて、屋外測定サイトとすることも行われている。
ただし、電波吸収体を用いても、すべての電波を完全に吸収することは難しく、僅かに反射が生じる。また電波吸収体で覆い隠せない構造物や隙間などからも反射が生じてしまう。
【0005】
したがって、構築される電波暗室や屋外測定サイトが、どれだけ反射が少ないか、すなわち、アンテナ特性の測定環境として、理想的な自由空間にどれだけ近いものであるかといった電波測定場の適合性の評価が行われる。
【0006】
適合性評価の結果、EMI測定環境の電波伝搬特性である無響特性(反射の程度)が規定値以下となれば、反射の少ない良好な測定環境が構築されているといえる。
準自由空間の適合性の測定を行う場合には、構築した電波暗室や屋外測定サイトにおいて、送信アンテナと受信アンテナとを対向させた測定システムが形成され、送信アンテナを移動させながら周波数毎の電波を受信アンテナへ向けて放射する。そして、受信アンテナで受信された電波の受信レベルを測定し、このときの測定レベルと、規定レベルとの比較にもとづいて、適合性の良否が評価される。
【0007】
従来技術として、無響特性の測定時間を短縮させた技術が提案されている(特許文献1)。また、光センサを用いた位置合わせ機構が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−054302号公報
【特許文献2】特開平6−148361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
EMI測定環境の適合性の測定を行う際は、送信アンテナと受信アンテナとを対向させて、電波受信レベルの測定を行うが、この場合、測定で用いる送受信アンテナは、測定軸上に正確に対向させて配置することが重要となる。
【0010】
しかし、従来では測定システムを構築する場合、送受信アンテナを支持台に取り付けて、偏波面、高さ、方向をそれぞれ目視で調整して配置するといったことが行われていた。
このように、従来では人の手による調整作業によって、送信アンテナと受信アンテナとを測定軸上に対向させるアンテナ位置調整が行われていたため、正確さに欠き、誤差が出やすく、また時間および労力を要するといった問題があった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、アンテナの位置調整を高精度に行うアンテナ位置調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、アンテナ位置調整システムが提供される。このアンテナ位置調整システムは、アンテナを支持するアンテナ支持部と、前記アンテナの位置検出を行うアンテナ位置検出部と、を備え、前記アンテナ位置検出部は、前記アンテナの第1の定点と第2の定点とに対し、前記第1の定点の位置検出を行って、規定位置に対する前記アンテナの位置を検出し、前記第1の定点と前記第2の定点との位置検出を行って、規定軸に対する前記アンテナの平行度を検出する。
【発明の効果】
【0013】
アンテナの位置調整を高精度に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アンテナ位置調整システムの構成例を示す図である。
【図2】測定システムの構成を示す図である。
【図3】アンテナ位置調整システムの構成例を示す図である。
【図4】図3をA方向から見たときのアンテナステイ周辺の図である。
【図5】図3をB方向から見たときのアンテナステイ周辺の図である。
【図6】アンテナ偏波面の切替調整を示す図である。
【図7】図3をC方向から見たときのアンテナ固定部周辺の図である。
【図8】電波伝搬特性測定システムの構成例を示す図である。
【図9】受信レベルの測定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1はアンテナ位置調整システムの構成例を示す図である。アンテナ位置調整システム1は、アンテナ支持部10とアンテナ位置検出部20を備える。
【0016】
アンテナ支持部10は、アンテナ2を支持する。アンテナ位置検出部20は、アンテナ2の位置検出を行う。アンテナ位置検出部20は、アンテナ2上に定めた第1の定点(定点p1)と第2の定点(定点p2)とに対し、定点p1の位置検出を行って、規定位置に対するアンテナ2の位置を検出する。また、定点p1と定点p2との位置検出を行って、規定軸に対するアンテナ2の平行度を検出する(詳細は後述する)。
【0017】
次にアンテナ位置調整システム1を説明する前に、電波暗室や屋外測定サイトなどの電波測定場の適合性評価を行う一般的なシステム構成について説明する。
図2は測定システムの構成を示す図である。測定システム100は、アンテナ特性を測定する環境が準自由空間として適合しているか否かを測定・評価するシステムであり、送信アンテナ101、受信アンテナ102およびアンテナ支持部110を備える。
【0018】
送信アンテナ101は、アンテナエレメント(電波を放射する部分)101aおよび金属チューブ101bから形成され、アンテナ支持部110に設置される。受信アンテナ102は、図示しない支持台に設置される。
【0019】
アンテナ支持部110は、移動ステージ111、アンテナマスト112、アンテナステイ113およびアンテナ固定部114を備える。移動ステージ111の底面には、図示しない車輪が設けられており、台車として任意の方向に移動でき、また車輪の動きは固定することができる。
【0020】
また、移動ステージ111の上面には、円形のアンテナマスト112が固定されている。アンテナステイ113は、アンテナマスト112に取り付けられて、アンテナマスト112の上下方向に移動可能であり、固定ネジ等でアンテナマスト112の任意の高さ位置で固定される。
【0021】
アンテナ固定部114は、アンテナステイ113に設置される。アンテナ固定部114には、送信アンテナ101を保持するための穴114aが設けられており、穴114aに送信アンテナ101の金属チューブ101bが挿入されて送信アンテナ101が固定される。
【0022】
ここで、測定システム100では、固定支持されている受信アンテナ102に対して、送信アンテナ101を正確に対向させる位置合わせが行われる。位置合わせの要件としては、例えば、以下の4点が挙げられる。
【0023】
(1)送信アンテナ101の中心軸と、受信アンテナ102の中心軸とを一致させること(送信アンテナ101の高さと受信アンテナ102の高さとを一致させること)。
(2)電波暗室または屋外測定サイトの床面に設けた測定軸に対し、送信アンテナ101の中心点Pを、受信アンテナ102から所定距離dにある、測定軸上の測定点Mに合わせること。
【0024】
(3)送信アンテナ101の中心軸が、測定軸上に平行に位置するように合わせること。
(4)送信アンテナ101のアンテナエレメント101aを床面に対して、水平または垂直になるように偏波面合わせを行うこと。
【0025】
測定システム100では、上記の要件に対して、移動ステージ111を動かしたり、アンテナ支持部110の各構成部材を手作業で調整したりして、アンテナ位置合わせを行っていた。
【0026】
しかし、送信アンテナ101には、アンテナ中心軸を表す基準線がないため、目視により移動ステージ111を動かして、送信アンテナ101の向きを決定するような位置合わせが行われており、誤差が数cm(およそ2〜3cm)生じていた。
【0027】
また、中心点Pを測定点Mに一致させる位置合せでは、例えば、送信アンテナ101の中心点Pに、下げ振り(垂直を計る道具)を設け、床面の測定点Mに下げ振りが位置するように、移動ステージ111を移動させたりしていたため、誤差が数cm(およそ1〜3cm)生じていた。
【0028】
さらに、偏波面合せも目視により行われていたが、アンテナエレメント101aは非常に小さい素子であるため(例えば、円錐形アンテナエレメントは10mmほどの素子)、最大で10°程度の角度誤差が生じていた。
【0029】
1GHz以上の評価において、送信アンテナ101を受信アンテナ102に対して移動させる場合、移動量はおよそ2cm〜40cmと小さい。このため、位置合わせの時の設定誤差が3cm〜5cmあると、2〜3dBの無視できない測定誤差が生じてしまい、正確な測定を行うことができない。
【0030】
このように、従来の測定システム100におけるアンテナの位置合わせでは、目視・手作業によって行われていたため、誤差が出やすく、さらに時間および労力を要するといった課題があった。アンテナ位置調整システム1は、このような課題に鑑みてなされたものであり、アンテナの位置調整を高精度に短時間に行うものである。
【0031】
次にアンテナ位置調整システム1の具体的な構成および動作について説明する。図3はアンテナ位置調整システム1の構成例を示す図である。アンテナ位置調整システム1は、アンテナエレメント2aおよび金属チューブ2bから形成されるアンテナ2を支持するアンテナ支持部10と、アンテナ2の位置検出を行うアンテナ位置検出部20とを備える。
【0032】
アンテナ支持部10は、移動ステージ11、アンテナマスト12、アンテナステイ13およびアンテナ固定部14を備える。移動ステージ11の底面には、例えば、図示しない車輪が設けられており、台車として任意の方向に移動でき、また車輪の動きは固定することができる。
【0033】
移動ステージ11の上面には、角型のアンテナマスト12が固定され、アンテナマスト12にはギヤベルト12aが設けられている。アンテナステイ13は、床面と平行にアンテナ2を取り付ける支持台であり、アンテナマスト12に取り付けられる。また、アンテナステイ13は、ギヤベルト12aを通じてアンテナマスト12の上下方向に移動可能であり、アンテナマスト12の任意の高さ位置で固定される。
【0034】
アンテナ固定部14は、アンテナステイ13に設置される。アンテナ固定部14には、アンテナ2を保持するための穴14aが設けられており、穴14aにアンテナ2の金属チューブ2bが挿入されてアンテナ2が固定される。
【0035】
なお、対向アンテナ3は、図示しない支持台で支持されており、アンテナ2は、対向アンテナ3に対して対向する位置にくるように配置される。
一方、床面には、アンテナ位置検出部20が配置される。アンテナ位置検出部20は、光検出部21、22および制御部23を備えている。
【0036】
光検出部21は、光ビームb1を発出し、光ビームb1の反射光を検出する。光検出部22は、光ビームb2を発出し、光ビームb2の反射光を検出する。制御部23は、光検出部21、22の動作制御や、検出結果にもとづくアンテナ位置の状態表示などを行う(アンテナ位置検出部20の詳細動作は後述する)。
【0037】
図4は図3をA方向から見たときのアンテナステイ13周辺の図であり、図5は図3をB方向から見たときのアンテナステイ13周辺の図である。アンテナステイ13は、角型形状のアンテナマスト12に取り付けられることで、回転して、アンテナ方向がズレないようにしている。
【0038】
また、アンテナステイ13の高さを設定するために、アンテナマスト12の面12−1と面12−2のそれぞれにギヤベルト12aを設け、アンテナステイ13に取り付けた歯車(図示せず)により上下する構造とする。
【0039】
これにより、アンテナステイ13の高さを正確かつ容易に固定することができるので、アンテナ2の中心軸と、対向アンテナ3の中心軸とを正確かつ容易に一致させることが可能になる。
【0040】
一方、アンテナステイ13には、アンテナ固定部14をはめ込むための固定部穴13aが設けられている。固定部穴13aは、アンテナ固定部14の正方形の一辺が床面に平行となるように、アンテナ固定部14をアンテナステイ13に取り付けるための穴である。なお、固定部穴13aにアンテナ固定部14を挿入してはめ込んだ後には、固定ネジ13bで固定する。
【0041】
図6はアンテナ偏波面の切替調整を示す図である。アンテナ固定部14は、直方体形状をしており、アンテナ2の金属チューブ2bを挿入して保持するための穴14aが開けられて、アンテナ2の金属チューブ2bを挿入してアンテナ2を固定する。
【0042】
また、金属チューブ2bをアンテナ固定部14に挿入して固定する際は、アンテナエレメント2aの中心軸と、アンテナ固定部14の正方形の一片が平行になるように固定する。
【0043】
この状態でアンテナステイ13の固定部穴13aにアンテナ固定部14をはめ込んで固定ネジ13bで固定することで、アンテナエレメント2aを床面に対して水平または垂直に位置合わせすることができる(水平偏波/垂直偏波の位置合わせ)。
【0044】
水平偏波と垂直偏波とを切り替える際には、アンテナ固定部14をアンテナステイ13から一旦外し、アンテナ固定部14を90度回転させて、その状態でアンテナステイ13の固定部穴13aにはめ込んで固定ネジ13bで固定すればよい。
【0045】
このように、アンテナ2を取り付けるアンテナ固定部14を直方体形状とし、アンテナ固定部14の正方形の一辺を床面に水平となるように、アンテナ2を取り付ける。そして、アンテナ2が装着されたアンテナ固定部14をアンテナステイ13にはめこんで取り付けることで、床面に対してアンテナ2の偏波面を水平偏波面、垂直偏波面と容易にかつ正確に切り替えることが可能になる。
【0046】
次にアンテナ位置検出部20を用いたアンテナ位置検出について図3、図7を用いて説明する。図7は図3をC方向から見たときのアンテナ固定部14周辺の図である。
アンテナ固定部14には、受光穴h1、h2が設けられ、受光穴h1、h2の垂直下方に光検出部21、22がそれぞれ設置される。受光穴h1は、光ビームb1の光軸のスポット系に合わせた大きさの穴であり、受光穴h2は、光ビームb2の光軸のスポット系に合わせた大きさの穴である。
【0047】
また、受光穴h1は、光検出部21から発出された光ビームb1を、アンテナ2の金属チューブ2bの定点p1に光ビームb1を照射するための穴である。受光穴h2は、光検出部22から発出された光ビームb2を、アンテナ2の金属チューブ2bの定点p2に光ビームb2を照射するための穴である。
【0048】
なお、アンテナ固定部14の光ビームb1、b2が照射される受光穴h1、h2周辺の面には、つや消しの黒色塗装が施されている。これは、金属チューブ2bで光ビームb1、b2を反射させるためである。
【0049】
ここで、測定軸(規定軸)に対し、アンテナ2の中心点Pを、対向アンテナ3から所定距離dにある、測定軸上の測定点(規定点)Mに合わせる際の位置合わせについて説明する。
【0050】
まず、アンテナ2の中心軸にあって金属チューブ2b上に決定した定点p1と、中心点Pとの間の距離(オフセット距離dc)を測定しておく。また、定点p1が受光穴h1と一致するようにアンテナ2をアンテナ固定部14に取り付ける。
【0051】
そして、中心点Pが測定点Mの近傍にくるようにおよその配置調整をしておき、対向アンテナ3からの距離が、距離d+オフセット距離dcとなる測定軸上の位置に光検出部21を配置する。
【0052】
このような状態で、光検出部21から光ビームb1を発出させる。光検出部21から発出された光ビームb1が、受光穴h1を通じて定点p1で反射され、その反射光を光検出部21で検出するか否かを判断する。
【0053】
制御部23は、所定レベル以上の光ビームb1の反射光を受信していることを検出した場合には、測定軸上において、対向アンテナ3から定点p1までの距離が距離d+オフセット距離dcであると認識する。すなわち、アンテナ2の中心点Pが測定点Mに一致していることを認識する。
【0054】
また、所定レベル以上の光ビームb1の反射光を受信できない場合には、測定軸上において、対向アンテナ3から定点p1までの距離が、距離d+オフセット距離dcでなく、アンテナ2の中心点Pが測定点Mと不一致であると認識する。
【0055】
制御部23では、認識結果にもとづく表示を行う。例えば、ランプ点灯または音声アラームなどで、アンテナ2の中心点Pと測定点Mとの一致・不一致を保守者に通知する。保守者は、制御部23からの状態通知にもとづいて、アンテナ2の位置の微調整を行う。
【0056】
このように、光検出部21を用いて、アンテナ2の中心点Pと測定点Mとの位置を検出する構成とした。これにより、アンテナ2の中心点Pと測定点Mとの位置を容易に認識することができ、短時間のうちに正確に、中心点Pと測定点Mとの位置合わせを行うことが可能になる。
【0057】
次にアンテナ2の中心軸を測定軸上に平行に配置する際の位置合わせについて説明する。まず、受光穴h2と一致するアンテナ2の中心軸上の点を定点p2とし、定点p1が受光穴h1と一致するように、かつ定点p2が受光穴h2と一致するように、アンテナ2をアンテナ固定部14に取り付ける。
【0058】
このような状態で、光検出部21から光ビームb1を発出させ、かつ光検出部22から光ビームb2を発出させる。そして、光検出部21から発出された光ビームb1が、受光穴h1を通じて定点p1で反射され、その反射光を光検出部21で検出するか否かを判断する。さらに、光検出部22から発出された光ビームb2が、受光穴h2を通じて定点p2で反射され、その反射光を光検出部22で検出するか否かを判断する。
【0059】
制御部23は、所定レベル以上の光ビームb1の反射光が光検出部21で検出され、かつ所定レベル以上の光ビームb2の反射光が光検出部22で検出された場合には、定点p1、p2の交線が測定軸に対して平行であると認識する。すなわち、アンテナ2の中心軸が測定軸上にあって平行であると認識する。
【0060】
また、所定レベル以上の光ビームb1の反射光が光検出部21で検出できなかった場合、または所定レベル以上の光ビームb2の反射光が光検出部22で検出できなかった場合には(どちらか一方でも所定レベル以上の反射光を検出できなかった場合には)、定点p1、p2の交線が測定軸に対して平行でないと認識する。すなわち、アンテナ2の中心軸が測定軸上になく平行でないと認識する。
【0061】
制御部23では、認識結果にもとづく表示を行う。例えば、ランプ点灯または音声アラームなどで、アンテナ2の中心軸と測定軸とが平行であるか否かを保守者に通知する。保守者は、制御部23からの状態通知にもとづいて、アンテナ2の位置の微調整を行う。
【0062】
このように、光検出部21、22を用いて、アンテナ2の中心軸と測定軸との平行度を検出する構成とした。これにより、アンテナ2の中心軸と測定軸との平行度の度合いを容易に認識することができ、短時間のうちに正確に、アンテナ2の中心軸を測定軸に対して平行に位置合わせすることが可能になる。
【0063】
次にアンテナ位置調整システム1によってアンテナ2の位置調整を行った後に実施する、電波測定場における電波伝搬特性(無響特性)の測定動作について説明する。
図8は電波伝搬特性測定システムの構成例を示す図である。電波伝搬特性測定システム5は、送信アンテナ支持部51、受信アンテナ支持部52、電波吸収体53、ネットワークアナライザ54、コントローラ55および端末装置56を備える。
【0064】
受信アンテナ支持部52には、受信アンテナ7が取り付けられる。送信アンテナ支持部51には、受信アンテナ7と対向する位置に送信アンテナ6が取り付けられる。なお、送信アンテナ支持部51は、アンテナ位置調整システム1の各構成要素を有して、送信アンテナ6の位置調整が行われるが、ここでは電波伝搬特性の測定動作を説明するために必要な構成要素のみ記して、アンテナ位置調整についての説明は省略する。
【0065】
送信アンテナ支持部51と、受信アンテナ支持部52との間の床面には電波吸収体53が敷かれる。ネットワークアナライザ54は、信号送信端および信号受信端を有し、信号送信端が同軸ケーブルを介して送信アンテナ6に接続し、信号受信端が同軸ケーブルを介して受信アンテナ7に接続する。
【0066】
ネットワークアナライザ54は、信号送信端から、試験信号を送信アンテナ6へ送信し、信号受信端で、受信アンテナ7の受信信号を受信して受信レベルを測定する。測定結果は端末装置56へ送信する。
【0067】
コントローラ55は、送信アンテナ支持部51に接続して、端末装置56の指示にもとづき、送信アンテナ支持部51を所定位置に移動させる。端末装置56は、ネットワークアナライザ54およびコントローラ55に接続する。
【0068】
端末装置56は、コントローラ55に対して、送信アンテナ支持部51の駆動指示を送信する。また、ネットワークアナライザ54に対して、信号処理の設定制御を行い、解析結果を表示したりする。
【0069】
電波伝搬特性測定システム5では、電波測定場での準自由空間特性を評価するため、送信アンテナ6と受信アンテナ7とを対向させ、電波の送受信を行う。このとき、送信アンテナ6を位置P1、P2、・・・P6などと移動させながら、各位置において複数の周波数の電波を受信アンテナ7へ向けて放射する。
【0070】
そして、各位置で測定した受信レベルの偏差が規定レベル以下であるか否かを判別し、規定レベル以下であるならば、該電波測定場が準自由空間として構築されていると判断する。
【0071】
なお、測定距離を大きくしていくと、電波の受信レベルは低下するので距離補正を行う。したがって、反射などの影響が小さければ、各位置で測定した受信レベルの偏差は小さくなる。図9は受信レベルの測定例を示す図である。縦軸は受信レベル(dB)、横軸は周波数(GHz)であり、距離補正を行った後の正規化された位置P1〜P6の受信レベルを示している。
【0072】
測定条件の項目としては例えば、送信アンテナ6と受信アンテナ7の高さ、送信アンテナ6の偏波面、測定距離、送信アンテナ6の水平方向移動位置が挙げられる。例えば、送受信アンテナの高さをともに1mとし、アンテナ偏波面を水平偏波、垂直偏波のいずれかを設定して測定する。
【0073】
また、送信アンテナ6と受信アンテナ7との間の測定距離を3mとする。さらに、送信アンテナ6の水平方向移動位置をP6−P1間を40cm、P6−P2間を30cm、P6−P3間を18cm、P6−P4間を10cm、P6−P5間を2cmとする。
【0074】
測定動作の手順を以下に示す。
(1)送信アンテナ6のアンテナエレメント6aを水平偏波(または垂直偏波)にする。
【0075】
(2)位置P1に送信アンテナ6のアンテナエレメント6a(送信アンテナ6の中心点)がくるように、送信アンテナ支持部51を移動させる。
(3)位置P1において、規定の複数の周波数の電波を送信アンテナ6から放射して、受信アンテナ7で受信させ、各周波数の電波の受信レベルを測定する。
【0076】
(4)位置P2に送信アンテナ6のアンテナエレメント6aがくるように、送信アンテナ支持部51を移動させる。
(5)位置P2において、規定の複数の周波数の電波を送信アンテナ6から放射して、受信アンテナ7で受信させ、各周波数の電波の受信レベルを測定する。
【0077】
(6)位置P3〜P6についても同様の測定を行う。
(7)各位置で測定された受信レベルに対して距離補正を行い、位置P1〜P6での受信レベルの正規化を行う。
【0078】
(8)正規化後の受信レベルの最大偏差を求め、規定値(例えば、6dB)と比較する。最大偏差が規定値を下回れば、該電波測定場は反射の少ない準自由空間の環境であり、アンテナ特性の測定・評価を行う場所としては適した環境であると判断される。また、最大偏差が規定値を超えれば、該電波測定場は反射の多い環境であって、アンテナ特性の測定・評価を行う場所としては適した環境でないと判断される。
【0079】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 アンテナ位置調整システム
2 アンテナ
10 アンテナ支持部
20 アンテナ位置検出部
p1、p2 定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを支持するアンテナ支持部と、
前記アンテナの位置検出を行うアンテナ位置検出部と、
を備え、
前記アンテナ位置検出部は、前記アンテナの第1の定点と第2の定点とに対し、前記第1の定点の位置検出を行って、規定位置に対する前記アンテナの位置を検出し、前記第1の定点と前記第2の定点との位置検出を行って、規定軸に対する前記アンテナの平行度を検出する、
ことを特徴とするアンテナ位置調整システム。
【請求項2】
前記アンテナ位置検出部は、
第1の光検出部および第2の光検出部を含み、
前記第1の光検出部から発出された第1の光ビームが、前記第1の定点で反射され、所定レベル以上の反射光を前記第1の光検出部で検出した場合には、前記アンテナの位置が前記規定位置にあると認識し、
前記第1の光検出部から発出された第1の光ビームが、前記第1の定点で反射され、所定レベル以上の反射光を前記第1の光検出部で検出し、かつ前記第2の光検出部から発出された第2の光ビームが、前記第2の定点で反射され、所定レベル以上の反射光を前記第2の光検出部で検出した場合には、前記規定軸に対して前記アンテナが平行であると認識する、
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ位置調整システム。
【請求項3】
前記アンテナ支持部は、床面と平行に前記アンテナが取り付けられるアンテナステイと、前記アンテナステイに取り外し可能で、前記アンテナを固定するアンテナ固定部とを備え、
前記アンテナ固定部は、直方体形状であって、90度回転させて前記アンテナステイに取り付けることで、前記アンテナの偏波面を、床面に対して水平または垂直の位置に切り替えることを特徴とする請求項1記載のアンテナ位置調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−65024(P2012−65024A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205659(P2010−205659)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】