説明

アンテナ共振整合調整回路及び携帯端末

【課題】FETスイッチでの歪みによる通信特性の劣化を低減する。
【解決手段】FETから構成される切替スイッチ13によってアンテナ11の共振周波数を調整するためのアンテナ整合調整回路14であって、アンテナ11と切替スイッチ13との間に調整用容量12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカード等に用いられるアンテナ装置に関し、特に、アンテナの共振整合調整回路に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯端末等では、非接触ICカード技術システムが内蔵されているが、端末構造上、金属構造部材がアンテナ装置の近傍に配置されることが多く、アンテナ特性への影響を与えている。この影響を防ぐために、アンテナ装置と金属構造部材との間に磁性部材を設けることが多いが、この磁性部材の透磁率のばらつきがアンテナ特性に影響し、アンテナ装置のみでの測定で、携帯端末に組み込んだ状態での影響度を考慮することは困難となっていた。
【0003】
そのため、アンテナ整合調整回路が必要となっているが、携帯端末に組み込み後に共振周波数を調整するためには電気的可変が重要なため、半導体FETを採用することが多い。
【0004】
図2は、非接触ICカード等に用いられる一般的なアンテナ装置の例を示す図である。
【0005】
本例は図2に示すように、アンテナ21と、アンテナ21に接続された整合調整回路24と、アンテナ21と整合調整回路24との間に接続されたDCブロック25とから構成されている。整合調整回路24は、FETからなる切替スイッチ23と、調整用容量22とから構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FETスイッチ回路は、ゲート・ソース間電圧Vgs>しきい値Vthの領域でオンし、低抵抗と等価に見なせる。逆に、Vgs<Vthでは、オフして、抵抗及びコンデンサによって等価的に表現される高インピーダンスの状態になるということは一般に知られていることである。一般的にFETスイッチでは、ドレイン・ソース間を流れる交流信号が大きくなると、ゲート・ソース間電圧(ゲート・ドレイン間電圧)が大きく変動し、FETが所望のオン/オフ状態を保てなくなる。
【0007】
このため、アンテナから入力される高い電圧振幅に対応できるようにアンテナ装置に用いられるFETには高耐圧特性が求められている。
【0008】
しかし、図2に示した回路構成においては、アンテナ21から入力される高い電圧振幅に対し、FET3に信号を伝送させるためには、スイッチ回路のFET制御電圧VCによりFET1,FET2をオフさせなければならない。ところが、伝送される信号の電力が大きいと、FET1,FET2のソース電位Vs(またはドレイン電位)の変動が大きくなり、VC−Vs >Vthにいたると、Vgs>Vthとなり、FET1,FET2がオンしてしまう。このため、伝送しようとする信号は、尖頭部がつぶれ、波形が歪んでしまう。
【0009】
さらに、アンテナ21と切替スイッチ23との間にDCブロック25が配置されることにより、電圧振幅は減衰することなく、かつ、切替スイッチ23とGND間に低容量の調整用容量22を配置することによりFET端はハイインピーダンスとなり、最大で2倍の電圧振幅となりアンテナ切替スイッチ内のFETにかかることにより更なる波形ひずみが発生し、非接触ICカードの通信特性が劣化する原因となる。
【0010】
本発明は、上述したような技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、FETスイッチでの歪みによる通信特性の劣化を低減することができるアンテナ共振整合調整回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、
FETから構成される切替スイッチによってアンテナの共振周波数を調整するためのアンテナ整合調整回路であって、
前記アンテナと前記切替スイッチとの間に調整用容量を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上説明したように構成されているので、整合調整回路に用いられるFETスイッチでの歪みによる通信特性の劣化を低減することができる。その結果、FETスイッチに求められる高耐圧特性の低減が可能となり、安価で小サイズのFET構成が可能となり、また、これを用いた小型化、安価である携帯端末等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のアンテナ共振整合調整回路を用いたアンテナ装置の実施の一形態を示す図である。
【図2】非接触ICカード等に用いられる一般的なアンテナ装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明のアンテナ共振整合調整回路を用いたアンテナ装置の実施の一形態を示す図である。
【0016】
本形態におけるアンテナ装置は図1に示すように、アンテナ11と、アンテナ11に接続された整合調整回路14と、DCブロック15とから構成されている。整合調整回路14は、FETからなる切替スイッチ13と、この切替スイッチ13とアンテナ11との間に接続された調整用容量12とから構成されており、調整用容量12は、容量値としては数個の異なった数pFが並列に配置されて半導体装置に内蔵されている。DCブロック15は、切替スイッチ13とGNDとの間に配置されており、切替スイッチ13の電位を安定させ、かつ調整用容量値12を低減させないような大容量値となっている。なお、半導体装置内の切替スイッチ13の回路構成によっては、GND電位での動作可能であればDCブロック15は省略できる。
【0017】
上記のように構成されたアンテナ装置においては、低容量である調整用容量12が、アンテナ11と切替スイッチ13との間に接続されていることにより、調整用容量12を通過する電圧振幅は減衰され、さらに、切替スイッチ13を高周波的にGND接続することにより、FET端をLOインピーダンスにすることにより切替スイッチ23内のFETにかかる電圧振幅が低減される。
【0018】
これにより、アンテナ11から入力される高い電圧振幅に対し、回路的に高耐圧特性を確保することができ、FETでの歪みを低減し、このアンテナ装置を非接触ICカードに適用した場合、非接触ICカードの通信特性が劣化する原因を排除することができる。
【0019】
この結果、小型化、安価である非接触ICカード技術システムにおけるアンテナ整合調整回路を提供することができる。
【0020】
このようなアンテナ装置は、携帯電話機やPHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data Assistance,Personal Digital Assistants:個人向け携帯型情報通信機器)等の携帯端末において、アンテナにシャント接続されて非接触ICカード技術システムとして内蔵される。また、携帯端末は金属構造部材を有するものが考えられる。
【0021】
また、上述したように携帯端末等に内蔵されたアンテナ装置に限らず、類似したアンテナと半導体装置で構成される整合回路の構成を持つその他の装置に対しても同じ効果となる。
【符号の説明】
【0022】
11 アンテナ
12 調整用容量
13 切替スイッチ
14 整合調整回路
15 DCブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FETから構成される切替スイッチによってアンテナの共振周波数を調整するためのアンテナ整合調整回路であって、
前記アンテナと前記切替スイッチとの間に調整用容量を有するアンテナ整合調整回路。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ整合調整回路において、
前記切替スイッチとGNDとの間にDCブロックが接続されているアンテナ整合調整回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアンテナ整合調整回路が内蔵された携帯端末。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯端末において、
金属構造部材を有する携帯端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−70248(P2013−70248A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207481(P2011−207481)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】