説明

アンテナ取付装置

【課題】十分な方向調整幅を確保しながら壁面からの距離を短くでき、且つ調整後は位置ずれを生じることなく確実に固定できるアンテナ取付装置を提供する。
【解決手段】アンテナ本体40の支柱取付部46に取付用ピン52を介して取付金具53を取付ける。取付用ピン52は、中央に金具装着部70、上下に上部取付部61及び下部取付部62を備える。取付金具53は、軸固定用ボルト56及び蝶ナット57により所定の間隔で対向配置された締付け部82a、82bの一方の側部に軸受部84a、84b、他方の側部に壁面取付部86a、86bを備え、軸受部84a、84bが上記金具装着部70に方向調整軸54により回動可能に取付けられる。方向調整後、取付金具53の蝶ナット57を締め付けて締付け部82a、82bの間隔を狭めることにより、軸受部84a、84bが相反する方向に移動し、方向調整軸54を締め付けて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ本体を壁面等に設置する際にアンテナの方向を調整する機能を備えたアンテナ取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地上デジタル放送等を受信するアンテナ本体を壁面等に設置して使用する場合、アンテナ本体の背面にアンテナ取付装置を装着し、このアンテナ取付装置を壁面等に取付けている。この種のアンテナ取付装置としては、従来、水平方向に回動可能な1軸構造あるいは2軸構造の可動軸を用いてアンテナの方向を調整できるようにしたものがある(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
図14は、従来の1軸構造のアンテナ取付装置10をアンテナ本体11の背面に装着した状態を示す斜視図である。アンテナ取付装置10は、壁面側取付基体12及びアンテナ側取付基体13からなり、アンテナ側取付基体13はアンテナ本体11の背面に複数のボルト及びナット等により固着される。上記アンテナ側取付基体13は、金属板の上下両端部をアンテナ本体11とは反対側に90°折り曲げ、上部保持基板14a及び下部保持基板14bを構成している。上部保持基板14a及び下部保持基板14bは、折り曲げ先端側の幅が狭くなるように略三角形状に形成され、その先端部にボルト挿通孔(図示せず)が設けられる。
【0004】
また、壁面側取付基体12は、金属板の上下両端部を壁面取付側とは反対の方向に90°折り曲げて、上部保持基板15a及び下部保持基板15bを構成している。上部保持基板15a及び下部保持基板15bは、折り曲げ先端側の幅が狭くなるように略三角形状に形成され、その先端部にボルト挿通孔(図示せず)が設けられる。この場合、上部保持基板15a及び下部保持基板15bは、アンテナ側取付基体13の上部保持基板14a及び下部保持基板14bの外側に位置するように設定される。また、壁面側取付基体12には、両側に沿って複数の取付穴16が設けられる。
【0005】
そして、上記壁面側取付基体12の上部保持基板15a及び下部保持基板15bをアンテナ側取付基体13の上部保持基板14a及び下部保持基板14bの外側に位置させ、上下に設けたボルト挿通孔の位置を一致させた状態で、下部保持基板14b、15bのボルト挿通孔に下側からボルト17を挿入し、上部保持基板14a、15aの上端から外方に突出させ、その上端にナット18を螺着する。このときナット18は、ボルト17に対して緩めた状態とし、壁面側取付基体12とアンテナ側取付基体13との間がボルト17を調整軸として回動できるようにする。
【0006】
上記のように構成されたアンテナ取付装置10は、予めアンテナ本体11に装着しておき、壁面側取付基体12に設けた複数の取付穴16を利用し、ネジ等により壁面に取付ける。この状態で、アンテナ側取付基体13をアンテナ本体11と共にボルト17を調整軸として回動し、アンテナ本体11の方向を最適受信状態となるように調整する。アンテナ本体11の方向を調整した後、ボルト17とナット18を締付け、調整軸の位置、すなわちアンテナ本体11の位置を固定する。
【0007】
図15は、従来のアンテナ取付装置10のアンテナ調整幅を模式的に示したもので、(a)はアンテナ本体11の前面を壁面19と平行に、すなわち壁面19の正面方向に位置させたときの状態を示す平面図、(b)はアンテナ本体11を壁面19に当接する最大調整角度θaまで回動したときの状態を示す平面図である。上記1軸構造のアンテナ取付装置10は、図15(b)に示すように壁面19の正面0°方向に対する最大回動角度θaは約74°である。従って、上記アンテナ取付装置10は、アンテナ本体11の方向を壁面19の前面側において約148°の範囲で調整することが可能である。なお、上記図15は、アンテナ本体11の横幅Waを約130mm、アンテナ本体11の前面からアンテナ取付装置10の調整軸17の中心までの距離Daを約110mm、上記調整軸17の中心から壁面19までの距離Laを約80mmに設定した場合を例として示している。
【0008】
上記従来の1軸構造のアンテナ取付装置10は、アンテナ本体11と壁面19との距離を短くできるが、アンテナ本体11の方向調整幅が約148°であり、それ以上広くすることが困難である。
【0009】
図16は、従来の2軸構造のアンテナ取付装置20をアンテナ本体21の背面に装着した状態を示す斜視図である。アンテナ取付装置20は、壁面側取付基体22、アンテナ側取付基体23、上記壁面側取付基体22とアンテナ側取付基体23との間を上下位置で連結する連結部材24a、24b、この連結部材24a、24b間に設けられる補強板25、この補強板25の両側に位置し、ボルト31a、31b(回転軸)が挿入されるボルト保持筒26により構成される。連結部材24a、24bの両側には、ボルト挿入穴が設けられており、このボルト挿入穴の部分にボルト保持筒26が設けられる。上記補強板25は、上下に位置する連結部材24a、24b及び左右に位置するボルト保持筒26の側部にそれぞれ溶接等により一体に連結される。
【0010】
上記アンテナ側取付基体23は、金属板の上下両端部をアンテナ本体21とは反対側に90°折り曲げ、上部保持基板27a及び下部保持基板27bを構成している。上部保持基板27a及び下部保持基板27bは、折り曲げ先端側の幅が狭くなるように略三角形状に形成され、その先端部にボルト挿通孔(図示せず)が設けられる。上記アンテナ側取付基体23は、アンテナ本体21の背面に複数本のボルト及びナット等により固着される。
【0011】
また、壁面側取付基体22は、金属板の上下両端部を一方の側、すなわち壁面取付側とは反対の方向に90°折り曲げて、上部保持基板28a及び下部保持基板28bを構成している。上部保持基板28a及び下部保持基板28bは、折り曲げ先端側の幅が狭くなるように略三角形状に形成され、その先端部にボルト挿通孔(図示せず)が設けられる。また、壁面側取付基体22には、両側に沿って複数の取付穴29が設けられる。
【0012】
上記連結部材24a、24bは、アンテナ側取付基体23の上部保持基板27a及び下部保持基板27b間及び壁面側取付基体22の上部保持基板28a及び下部保持基板28b間に位置するように補強板25及びボルト保持筒26の高さ寸法が設定される。
【0013】
そして、上記アンテナ側取付基体23の上部保持基板27a及び下部保持基板27b間に連結部材24a、24bの一方の端部を位置させ、上部保持基板27aに設けたボルト挿通孔からボルト31aを挿入し、ボルト保持筒26内を挿通させて下部保持基板27bの下側から突出させ、その先端にナット32を螺着する。また、同様に壁面側取付基体22の上部保持基板28a及び下部保持基板28b間に、連結部材24a、24bの他方の端部を位置させ、上部保持基板28aに設けたボルト挿通孔からボルト31bを挿入し、ボルト保持筒26内を挿通させて下部保持基板28bの下側から突出させ、その先端にナット(図示せず)を螺着する。このときボルト31a、31bに螺着したナット32は緩めた状態とし、アンテナ側取付基体23及び壁面側取付基体22と連結部材24a、24bとの間がボルト31a、31bを軸として回動できるようにする。
【0014】
上記のように構成されたアンテナ取付装置20は、壁面側取付基体22に設けた複数の取付穴29を利用し、ネジ等により壁面に取付け、壁面側取付基体22を壁面に固定する。この状態で、アンテナ側取付基体23をアンテナ本体21と共にボルト31a、31bを軸として回動し、アンテナ本体21の方向を最適受信状態となるように調整する。アンテナ本体21の方向を調整した後、ボルト31a、31bに対してナット32を締付け、アンテナ本体21の位置を固定する。
【0015】
上記2軸構造のアンテナ取付装置20を使用してアンテナ本体21を壁面に取付けた場合は、アンテナ本体21を回動できる角度範囲が広くなり、アンテナ本体21を壁面の正面0°方向に対して最大で約90°まで回動することが可能となる。従って、上記アンテナ取付装置20は、アンテナ本体21の方向を壁面の前面側において約180°の範囲で調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−226150号公報
【特許文献2】特開2011−49848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記図14に示した従来の1軸構造のアンテナ取付装置10は、構造が簡単であるが、アンテナ本体11の方向調整幅が狭いという問題がある。また、方向調整後の軸固定には、回転軸となるボルト17にナット18を螺着し、両者を締め込むことにより位置を固定、すなわち、軸の鉛直方向からの挟み込みにより位置を固定するようにしているので、ボルト17及びナット18を締め込む際の回転力により位置ずれが発生し易い。
【0018】
また、上記図16に示した従来の2軸構造のアンテナ取付装置20は、方向調整幅を広くすることが可能であるが、壁面とアンテナ取付装置20との距離を広く保つ必要があるため、大型となると共に十分な強度を必要とする。また、方向調整後の軸固定には、1軸構造のアンテナ取付装置10と同様にボルト31a、31b及びナット32を締め込む際の回転力により位置ずれが発生し易いという問題がある。
【0019】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、十分な方向調整幅を確保しながら壁面からの距離を短くでき、且つ方向調整後は位置ずれを生じることなく、確実に固定することができるアンテナ取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の発明に係るアンテナ取付装置は、略円筒状に形成された取付用ピン本体と、前記取付用ピン本体の中央前面側を開口して設けられる金具装着部と、前記取付用ピン本体の上部位置に設けられてアンテナ本体に取付けられる上部取付部と、前記取付用ピン本体の下部位置に設けられて前記アンテナ本体に取付けられる下部取付部と、前記下部取付部の下側から前記金具装着部の略中心軸に沿って挿入される方向調整軸を保持する調整軸保持手段とを備えた取付用ピンと、
金属板により平板状に形成されて対向配置される1対の締付け部と、前記1対の締付け部の略中心部に装着されて該締付け部を対向状態に保持する軸固定用ボルト及びナットと、前記1対の締付け部の一方の側部にそれぞれ略中央より上部及び下部に略円筒状に形成され、前記取付用ピンに設けられた前記金具装着部において前記方向調整軸を回動可能に保持する軸受部と、前記前記1対の締付け部の他方の側部に形成される外部取付部とを備えた取付金具とを具備し、
前記取付金具は、前記1対の締付け部が所定の間隔に保持されている状態では前記軸受部により前記方向調整軸を回転可能に保持し、前記軸固定用ボルト及びナットにより前記1対の締付け部の間隔が狭くなる方向に締め付けたときに前記軸受部を前記方向調整軸に圧接させて該方向調整軸の位置を固定することを特徴とする。
【0021】
第2の発明に係るアンテナ取付装置は、略円筒状に形成された取付用ピン本体と、前記取付用ピン本体の中央前面側を開口して設けられる金具装着部と、前記取付用ピン本体の上部位置に設けられてアンテナ本体に取付けられる上部取付部と、前記取付用ピン本体の下部位置に設けられて前記アンテナ本体に取付けられる下部取付部と、前記下部取付部の下側から前記金具装着部の略中心軸に沿って挿入される第1の方向調整軸を保持する調整軸保持手段とを備えた取付用ピンと、
金属板により平板状に形成されて対向配置される1対の締付け部と、前記1対の締付け部の略中心部に装着されて該締付け部を対向状態に保持する軸固定用ボルト及びナットと、前記1対の締付け部の一方の側部にそれぞれ略中央より上部及び下部に略円筒状に形成され、前記取付用ピンに設けられた前記金具装着部において前記方向調整軸を回動可能に保持する第1の軸受部と、前記1対の締付け部の他方の側部にそれぞれ略中央より上部及び下部に略円筒状に形成され、第2の方向調整軸を回動可能に保持する第2の軸受部と、前記第2の軸受部の上下外側において前記第2の方向調整軸に固着される外部取付部とを備えた取付金具とを具備し、
前記取付金具は、前記1対の締付け部が所定の間隔に保持されている状態では前記第1の軸受部により前記第1の方向調整軸を回動可能に保持する共に前記第2の軸受部により前記第2の方向調整軸を回動可能に保持し、前記軸固定用ボルト及びナットにより前記1対の締付け部の間隔が狭くなる方向に締め付けたときに前記第1の軸受部を前記第1の方向調整軸に圧接させると共に前記第2の軸受部を前記第2の方向調整軸に圧接させて該第1の方向調整軸及び第2の方向調整軸の位置を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、対向して配置した1対の締付け部を軸固定用ボルト及びナットを締め付け、締付け部の側部に設けた軸受部により方向調整軸を直角方向から挟み込んで固定するように構成しているので、十分な方向調整幅を確保しながら位置ずれを生じ難い構造とすることができ、且つアンテナ本体と壁面との距離を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付ける際の状態を示す分解斜視図である。
【図2】同実施例1に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付けた状態を示す斜視図である。
【図3】同実施例1に係るアンテナ取付装置の取付用ピンの構成を示し、(a)は側面図、(b)は同図(a)のA−A線矢視断面図である。
【図4】同実施例1に係るアンテナ取付装置の取付金具の構成を示す分解斜視図である。
【図5】同実施例1に係るアンテナ取付装置の方向調整軸を締付け固定するときの動作を説明するための取付金具の要部断面図である。
【図6】同実施例1に係るアンテナ取付装置の方向調整幅を模式的に示したもので、(a)はアンテナ本体を壁面の正面方向に位置させたときの状態を示す平面図、(b)はアンテナ本体を最大調整角度まで回動したときの状態を示す平面図である。
【図7】本発明の実施例2に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付ける際の状態を示す分解斜視図である。
【図8】同実施例2に係るアンテナ取付装置の取付金具部分を示す斜視図である。
【図9】同実施例2に係るアンテナ取付装置の方向調整軸を締付け固定するときの動作を説明するための取付金具の要部断面図である。
【図10】本発明の実施例3に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付ける際の状態を示す分解斜視図である。
【図11】同実施例3に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付けた状態を示す斜視図である。
【図12】同実施例3に係るアンテナ取付装置の取付金具部分を示す分解斜視図である。
【図13】本発明の実施例3に係るアンテナ取付装置の方向調整角度を模式的に示したもので、(a)はアンテナ本体を壁面の正面方向に位置させたときの状態を示す平面図、(b)はアンテナ本体を最大調整角度まで回動したときの状態を示す平面図である。
【図14】従来の1軸構造のアンテナ取付装置をアンテナ本体の背面に装着した状態を示す斜視図である。
【図15】従来のアンテナ取付装置のアンテナ調整幅を模式的に示したもので、(a)はアンテナ本体の前面を壁面の正面方向に位置させたときの状態を示す平面図、(b)はアンテナ本体を最大調整角度まで回動したときの状態を示す平面図である。
【図16】従来の2軸構造のアンテナ取付装置をアンテナ本体の背面に装着した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の実施例1に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付ける際の分解斜視図、図2は同実施例1に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付けた状態を示す斜視図である。
【0026】
図1及び図2において、40はアンテナ本体、50はアンテナ本体40を壁面等に取付けるアンテナ取付装置である。
【0027】
上記アンテナ本体40は、樹脂ケース41内に図示しないが放射素子や反射素子等のアンテナ素子が設けられ、例えば地上デジタル放送等の電波を受信する。樹脂ケース41は、前面ケース42及び背面ケース43からなり、前面ケース42及び背面ケース43には、上方部位に受風荷重を軽減するため楕円形の窓44が設けられる。また、背面ケース43には、窓44の下側に給電用の接栓45が配設され、この接栓45を介してアンテナ本体40内の放射素子に給電される。
【0028】
更に、背面ケース43の下部には、略半円形の溝状に形成された所定の長さを有する支柱取付部46が設けられる。この支柱取付部46の上部位置には上部ボルト取付基部47aが設けられ、下端部には下部ボルト取付基部47bが設けられる。上記上部ボルト取付基部47aは、円筒状で上部が閉塞された状態に形成され、前面側にボルト穴48aが設けられると共に、このボルト穴48aに対向する底部にボルト固定用のナット(図示せず)が設けられる。また、上記下部ボルト取付基部47bは、円筒状に形成され、前面側にボルト穴48bが設けられると共に、このボルト穴48bに対向する底部にボルト固定用のナット(図示せず)が設けられる。
【0029】
そして、上記アンテナ本体40の支柱取付部46には、アンテナ取付装置50が取付用ボルト51a、51bにより固定される。この取付用ボルト51a、51bは、上部ボルト取付基部47a、下部ボルト取付基部47bに設けられたボルト穴48a、48bより挿入され、底部に設けられたナットに螺着してアンテナ取付装置50を支柱取付部46に固定する。
【0030】
アンテナ取付装置50は、取付用ピン52、取付金具53、方向調整軸54、軸固定用ボルト56及び蝶ナット57により構成される。上記方向調整軸54としては、例えばボルトが使用され、その先端部分にネジ部55が形成されている。
【0031】
上記取付用ピン52は、図3(a)、(b)に示すように構成される。図3は取付用ピンの構成を示し、(a)は側面図、(b)は同図(a)のA−A線矢視断面図である。
【0032】
取付用ピン52は、例えば合成樹脂により略円筒状に形成され、上端部に上部取付部61、下端部に下部取付部62が設けられている。上部取付部61には、外周面に2つの長穴63a、63bが対向するように設けられる。この長穴63a、63b内には、上記取付用ボルト51aが挿入される。また、下部取付部62には、外周面に2つの長穴64a、64bが対向するように設けられる。この長穴64a、64b内には、上記取付用ボルト51bが挿入される。
【0033】
また、取付用ピン52には、上部取付部61の下側に方向調整軸54の上端を固定する軸固定部65が設けられ、この軸固定部65にナット66が設けられる。このナット66は、例えばインサート成形あるいは上部からの圧入等により、所定の位置に設けられる。この場合、ナット66は、取付用ピン52の中心軸よりも前面側に少し偏心して、すなわち支柱取付部46の面から離れる方向に偏心して設けられる。
【0034】
また、取付用ピン52には、下部取付部62の上側に方向調整軸54の頭部を保持する軸保持部67が設けられ、この軸保持部67の略中心部にボルト挿通孔68が設けられる。ボルト挿通孔68は、軸固定部65に設けたナット66と同様に取付用ピン52の中心軸よりも前面側に少し偏心して設けられる。上記のように軸固定部65に設けられるナット66及び軸保持部67に設けられるボルト挿通孔68の位置を前面側に少し偏心させることにより、詳細を後述するように金具装着部70に方向調整軸54を介して装着される取付金具53の回動範囲が広くなるようにしている。
【0035】
上記金具装着部70は、取付用ピン52の中央部すなわち軸固定部65と軸保持部67との間に設けられる。この金具装着部70は、取付金具53を装着する前面側のピン外周壁を取り除いて開口すると共に、その開口部の上端部に円板状の支持板71、72を形成している。上部の支持板71にはナット66に連通するボルト穴69が設けられ、下部の支持板72には軸保持部67に設けられたボルト挿通孔68の上端部が開口して設けられる。上記金具装着部70には、詳細を後述するように取付金具53が方向調整軸54により回動可能に装着されるが、装着した取付金具53が方向調整軸54を中心として例えば約170°の範囲で回動できるように開口部の大きさや形状等が設定される。
【0036】
また、金具装着部70は、上部の支持板71と下部の支持板72との間に形成される半円筒状の後壁73が支持板71、72の外周面より中心方向に所定距離ずらして設けられる。上記後壁73には、外周面に沿って複数例えば2つの横リブ74a、74bが所定の間隔で設けられると共に、複数例えば2つの縦リブ75a、75bが所定の間隔で設けられる。上記横リブ74a、74b及び縦リブ75a、75bは、後壁73を補強するもので、互いに連結して設けられる。また、縦リブ75a、75bは、下部取付部62と支持板71との間においても設けられる。
【0037】
上記金具装着部70に装着される取付金具53は、図4に示すように2つの取付部材81a、81bにより構成される。上記2つの取付部材81a、81bは、略長方形に形成された金属板が横長の状態で対向配置され、略中央部が締付け部82a、82bとなっている。この締付け部82a、82bには、それぞれ中心位置に四角形のボルト挿入穴83a、83bが設けられ、このボルト挿入穴83a、83bに上記軸固定用ボルト56が挿入される。この軸固定用ボルト56としては例えば角根丸頭ボルトが使用され、頭部付け根の四角形に形成された部分が上記四角形のボルト挿入穴83a、83bに挿入されて回り止めの作用をする。
【0038】
また、取付部材81a、81bには、一方の側部、すなわち取付用ピン52への取付け側に上記方向調整軸54を保持する略円筒状の軸受部84a、84bが設けられる。一方の取付部材81aは、取付用ピン52への取付け側の側部中央から下側を所定長さ側方に延長して形成し、この延長部を例えば時計方向に円筒状に折り曲げて軸受部84aを構成する。他方の取付部材81bは、取付用ピン52への取付け側の側部中央から上側を所定長さ側方に延長して形成し、この延長部を例えば反時計方向に円筒状に折り曲げて軸受部84bを構成する。上記軸受部84a、84bの内径は、方向調整軸54の直径用少し大きく設定され、方向調整軸54を挿入して回動できるようになっている。また、取付部材81a、81bは、軸受部84a、84bに方向調整軸54を挿入し、締付け部82a、82bに軸固定用ボルト56及び蝶ナット57による締付け圧力を加えない状態で、締付け部82a、82bを最接近させたときの間隔が例えば約2〜3mmとなるように設定される。
【0039】
また、取付部材81a、81bは、締付け部82a、82bの他方の側部、すなわち、軸受部84a、84bとは反対側に位置する壁面取付側の側部をそれぞれ外方に約60°折り曲げると共に、更にその先端を所定長さ外方に約30°折り曲げて壁面取付部86a、86bを構成している。この壁面取付部86a、86bは、締付け部82a、82bに対して直角の方向に位置し、取付ける壁面に対して相対向するように設けられる。壁面取付部86a、86bには、例えば上下に円形の取付穴87が設けられると共に、中央に四角形の取付穴88が設けられる。上記円形の取付穴87は、取付金具53を壁面に取付けるときに使用され、四角形の取付穴88は取付金具53を他の取付金具を使用してポール等に取付ける場合に使用される。
【0040】
上記取付金具53は、取付部材81a、81bの締付け部82a、82bを合わせてボルト挿入穴83a、83bを一致させ、このボルト挿入穴83a、83bに軸固定用ボルト56を挿入し、その先端部に蝶ナット57を螺着する。このとき軸固定用ボルト56は、頭部付け根の四角形に形成された部分を四角形のボルト挿入穴83a、83bに位置させて回転しないように保持し、蝶ナット57を軽く締める。このとき取付部材81a、81bに設けた軸受部84a、84bは、上下方向に位置し、同一軸上に保持される。
【0041】
上記取付金具53は、アンテナ本体40の支柱取付部46において、取付用ピン52の金具装着部70に方向調整軸54を介して回動可能に取付けられる。
【0042】
次に、上記のように構成されたアンテナ取付装置50を用いてアンテナ本体40を壁面に取付ける場合の手順例について説明する。
【0043】
アンテナ取付装置50は、先ず、取付用ピン52をアンテナ本体40の支柱取付部46に設けられている下部ボルト取付基部47bに下方から挿入し、上部取付部61を上部ボルト取付基部47a内に、また下部取付部62を下部ボルト取付基部47b内に位置させる。このとき取付用ピン52は、金具装着部70の開口部を外方に向けて位置させる。
【0044】
この状態で、取付金具53の軸受部84a、84bを取付用ピン52の金具装着部70に側方の開口部から挿入する。そして、方向調整軸54を取付用ピン52の下部取付部62に設けられた軸保持部67に下側開口部から挿入し、更に金具装着部70に装着された取付金具53の軸受部84a、84b内を挿通させ、先端のネジ部55を上部の支持板71に設けたボルト穴69より軸固定部65のナット66に螺着する。その後、上部ボルト取付基部47aのボルト穴48aより取付用ボルト51aを挿入し、その先端部を取付用ピン52の上部取付部61に設けられている長穴63a、63b内に挿通させ、支柱取付部46の底部に設けられているナットに螺着する。また、下部ボルト取付基部47bのボルト穴48bより取付用ボルト51bを挿入し、その先端部を取付用ピン52の下部取付部62に設けられている長穴64a、64b内を挿通させ、支柱取付部46の底部に設けられているナットに螺着し、取付用ピン52を支柱取付部46に固定する。この状態では、取付金具53は方向調整軸54に対して回動可能に保持されている。
【0045】
次に、上記アンテナ本体40に装着した取付金具53を壁面に取付ける。すなわち、取付金具53の壁面取付部86a、86bを壁面の取付け位置に当接させ、取付穴87を利用してネジ止めする。
【0046】
そして、アンテナ本体40に設けられている接栓45を同軸ケーブルにより例えばTV受像機に接続し、最適な受信状態となるようにアンテナ本体40の方向を調整する。アンテナ本体40の方向を調整した後、取付金具53に設けられている蝶ナット57を締め付け、アンテナ本体40の方向を最適受信状態の位置に固定する。
【0047】
図5(a)、(b)は、上記方向調整軸54を軸受部84a、84bにより締付け固定するときの動作を説明するための締付け部82a、82b及び軸受部84a、84b部分の断面図である。蝶ナット57を締め付ける前は、図5(a)に示すように締付け部82a、82b間は、所定の間隔に保たれており、軸受部84a、84bが同一軸上に保持され、方向調整軸54を中心として回動可能となっている。従って、この状態ではアンテナ本体40を回動して電波受信方向を調整することができる。
【0048】
そして、蝶ナット57を締め付けると、図5(b)に示すように締付け部82a、82bは間隙が狭くなる方向に移動し、それに伴って軸受部84a、84bは相反する方向に移動して方向調整軸54に強く圧接する。これにより方向調整軸54は、取付金具53との摩擦力により固定された状態に保持され、アンテナ本体40の位置も固定される。
【0049】
上記のように蝶ナット57を締め付けるだけで、アンテナ本体40の位置を固定することができる。この場合、方向調整軸54は、軸に対して直角方向から軸固定用ボルト56、蝶ナット57等を用い、軸受部84a、84bにより挟み込むことで固定するようにしているので、位置ずれを生じ難い構造とすることができ、且つ、アンテナ本体40と壁面との距離を短くすることができる。
【0050】
図6は、本発明の実施例1に係るアンテナ取付装置50の方向調整角度を模式的に示したもので、(a)はアンテナ本体40を壁面89の正面方向に位置させたときの状態を示す平面図、(b)はアンテナ本体40を最大調整角度まで回動したときの状態を示す平面図である。実施例1に係るアンテナ取付装置50は、図6(b)に示すように壁面89の正面0°方向に対する最大回動角度θは約85°であり、アンテナ本体40の方向を壁面89の前面側において約170°の範囲で調整することができる。上記図6は、アンテナ本体40の横幅Wが約130mm、奥行きDが約80mmであり、アンテナ取付装置50の方向調整軸54の中心から壁面取付部86a、86bまでの距離Lを約80mmに設定した場合を例として示している。なお、アンテナ本体40を蝶ナット57の方向に回動する場合には、実施例1の場合と同様にアンテナ本体40の回動範囲が蝶ナット57により制限されるが、軸固定用ボルト56と蝶ナット57の装着位置を入れ換えることにより、左右何れの方向にも最大回動角度である約85°まで調整することが可能である。
【実施例2】
【0051】
次に本発明の実施例2に係るアンテナ取付装置について説明する。
【0052】
図7は本発明の実施例2に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付ける際の分解斜視図、図8は同実施例2における取付金具部分を示す斜視図である。
【0053】
この実施例2に係るアンテナ取付装置50Aは、取付金具53Aの構成が実施例1の取付金具53と異なるもので、その他の構成は実施例1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
この実施例2に係る取付金具53Aは、取付部材81a、81bに形成した締付け部82a、82bの一方の側部に円筒状に形成した1つの軸受部84を一体に設け、締付け部82a、82b間に約2〜3mm間隙が形成されるようにしている。すなわち、締付け部82a、82bの側部を軸受部84により一体に連結した構成となっている。上記軸受部84の内径は、方向調整軸54の直径より少し大きく形成される。
【0055】
そして、締付け部82a、82bの中央部から軸受部84の側部中央まで略U字状の溝90を設けている。この溝90は、締付け部82a、82bの中央に設けられたボルト挿入穴83a、83bを略半周するように設けられ、軸受部84の中央部に可動片91を突出して設けた構成となっている。この可動片91は、ボルト挿入穴83a、83bに装着した軸固定用ボルト56に蝶ナット57を螺着して締め付けたときに、軸固定用ボルト56の頭部及び蝶ナット57に圧接されて移動し、上記可動片91に対応する軸受部84の中央部の直径が小さくなるように作用する。
【0056】
上記取付金具53Aは、実施例1で説明したようにアンテナ本体40の支柱取付部46において取付用ピン52の金具装着部70に装着され、軸受部84が方向調整軸54により回動可能に保持される。
【0057】
次に上記のように構成された取付金具53Aと方向調整軸54との間の固定動作を説明する。図9は取付金具53Aの軸受部84に設けた軸固定部92を断面して示したもので、(a)は蝶ナット57を緩めたときの軸固定部92の断面図、(b)は蝶ナット57を締め付けたときの軸固定部92の断面図である。
【0058】
アンテナ本体40の方向を調整する場合、取付金具53Aは、締付け部82a、82bのボルト挿入穴83a、83bに挿入した軸固定用ボルト56に対し、蝶ナット57を緩めた状態とする。このとき軸受部84の軸固定部92には、軸固定用ボルト56及び蝶ナット57による圧力が加わらないので、図9(a)に示すように2つの可動片91間は所定の間隔に保持される。このため軸受部84における軸固定部92の直径が、その上下位置における直径と同じ値、すなわち方向調整軸54の直径より少し大きい値に保持されており、方向調整軸54を軸受部84内で回動させることができる。この状態でアンテナ本体40の方向を最適位置に調整する。
【0059】
そして、上記アンテナ本体40の方向を調整した後、取付金具53Aに取付けられている蝶ナット57を締め付け、軸受部84の軸固定部92に連接されている可動片91に両側から圧力を加える。このとき図9(b)に示すように2つの可動片91が接近する方向に移動し、それに伴って軸受部84における軸固定部92の直径が小さくなり、方向調整軸54に強く圧接する。これにより方向調整軸54は、軸固定部92との摩擦力により固定された状態に保持され、アンテナ本体40の位置も固定される。
【0060】
上記実施例2においても、実施例1と同様に蝶ナット57を締め付けるだけで、アンテナ本体40の位置を固定でき、位置ずれを生じ難い構造とすることができると共にアンテナ本体40と壁面との距離を短くすることができる。
【実施例3】
【0061】
次に本発明の実施例3に係るアンテナ取付装置について説明する。
【0062】
図10は本発明の実施例3に係るアンテナ取付装置をアンテナ本体に取付ける際の分解斜視図、図11は同アンテナ取付装置をアンテナ本体に取付けた状態を示す斜視図、図12は同アンテナ取付装置の取付金具部分を示す分解斜視図である。
【0063】
この実施例3に係るアンテナ取付装置50Bは、取付金具53Bを図12に示すように第1の金具部材101及び第2の金具部材102により構成して2軸構造としたもので、アンテナ本体40及び取付用ピン52は、実施例1と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0064】
第1の金具部材101は、締付け部82a、82bを別体に構成し、それぞれ中心位置にボルト挿入穴83a、83bを設けている。ボルト挿入穴83a、83bには、軸固定用ボルト56が挿入され、その先端に蝶ナット57が螺着される。
【0065】
一方の締付け部82aは、取付用ピン52への取付け側の側部中央から下側を所定長さ側方に延長して形成し、この延長部を例えば時計方向に円筒状に折り曲げて軸受部84a1を構成すると共に、軸受部84a1と反対側の側部中央から上側を所定長さ側方に延長して形成し、この延長部を例えば反時計方向に円筒状に折り曲げて軸受部84a2を構成する。
【0066】
また、他方の締付け部82bは、取付用ピン52への取付け側の側部中央から上側を所定長さ側方に延長して形成し、この延長部を例えば反時計方向に円筒状に折り曲げて軸受部84b1を構成すると共に、軸受部84b1と反対側の側部中央から下側を所定長さ側方に延長して形成し、この延長部を例えば時計方向に円筒状に折り曲げて軸受部84b2を構成する。
【0067】
上記第1の金具部材101は、締付け部82a、82bを相対向して位置させ、軸受部84a1、84b1を同一軸上に保持すると共に、軸受部84a2、84b2を同一軸上に保持したときに、締付け部82a、82b間に2〜3mmの間隙が生じるように、各軸受の位置が設定される。
【0068】
上記軸受部84a1、84b1は第1の方向調整軸54aを回動可能に保持する軸受であり、軸受部84a2、84b2は第2の方向調整軸54bを回転可能に保持する軸受である。上記第2の方向調整軸54bとしては、例えば角根丸頭ボルトが使用され、軸受部84a2、84b2内に下側から挿入され、軸受部84a2、84b2の上部から突出した先端にワッシャ104を介してナット105が螺着される。このとき第2の方向調整軸54bには、軸受部84a2、84b2の上下両端位置において第2の金具部材102が取付けられる。
【0069】
上記第2の金具部材102は、実施例1で示した壁面取付部86a、86bが第1の金具部材101とは別体に設けられる。この壁面取付部86a、86bには、上記したようにそれぞれ上下に取付穴87が設けられると共に、中央に四角形の取付穴88が設けられている。上記壁面取付部86a、86bの上部及び下部は、第1の金具部材101側に折曲げられて調整軸取付金具106a、106bを構成する。調整軸取付金具106a、106bは、略三角形状に形成され、軸受部84a2、84b2の上側及び下側に位置するように高さ位置が設定される。上部の調整軸取付金具106aには中央先端部に円形の軸穴107が設けられ、下部の調整軸取付金具106bには上部の調整軸取付金具106aの軸穴107に対応する位置に四角形の軸穴(図示せず)が設けられる。この四角形の軸穴には、第2の方向調整軸54bの頭部付け根の四角形に形成された部分が挿入され、下部の調整軸取付金具106bに対して第2の方向調整軸54bが回転しないように保持される。上記第2の金具部材102は、調整軸取付金具106a、106bが軸受部84a2、84b2の上下両側に位置し、第2の方向調整軸54bに取付けられる。
【0070】
上記のように構成された取付金具53Bは、図12に示すように締付け部82a、82bを合わせ、ボルト挿入穴83a、83bに軸固定用ボルト56を挿入し、その先端に蝶ナット57を螺着し、軽く締めて仮止めする。この状態では、一方の側部に設けた軸受部84a1、84b1が同軸上に位置すると共に、他方の側部に設けた軸受部84a2、84b2が同軸上に位置した状態に保持される。このとき締付け部82a、82b間は、2〜3mmの間隔に保持される。
【0071】
そして、上記軸受部84a2、84b2の軸受部84a2、84b2側に第2の金具部材102を取付ける。この場合、第2の金具部材102は、調整軸取付金具106a、106bを軸受部84a2、84b2の上側及び下側に位置させ、軸穴107を軸受部84a2、84b2に一致させる。この状態で調整軸取付金具106bの軸穴に下側から第2の方向調整軸54bを挿入し、軸受部84a2、84b2内を挿通させて上部に突出させ、その突出端部にワッシャ104を介在してナット105を螺着し、第2の方向調整軸54bと第2の金具部材102との間を固定する。この場合、第2の方向調整軸54bは、角根丸頭ボルトを使用しているので、第2の金具部材102に対して固定した状態に保持されるが、軸受部84a2、84b2に対しては回動可能な状態に保持される。
【0072】
上記取付金具53Bは、実施例1の場合と同様にアンテナ本体40の支柱取付部46において、取付用ピン52の金具装着部70に第1の調整軸54aを介して回動可能に装着される。先ず、取付用ピン52をアンテナ本体40の支柱取付部46に設けられている下部ボルト取付基部47bに下方から挿入し、上部取付部61を上部ボルト取付基部47a内に、また下部取付部62を下部ボルト取付基部47b内に位置させる。
【0073】
この状態で、取付金具53Bの軸受部84a1、84b1を取付用ピン52の金具装着部70に側方の開口部から挿入する。そして、第1の方向調整軸54aを取付用ピン52の下部取付部62に設けられた軸保持部67に下側開口部から挿入し、更に金具装着部70内に位置する取付金具53Bの軸受部84a1、84b1内を挿通させ、先端のネジ部55を上部の支持板71に設けたボルト穴69より軸固定部65のナット66に螺着する。その後、上部ボルト取付基部47aのボルト穴48aより取付用ボルト51aを挿入し、その先端部を取付用ピン52の上部取付部61に設けられている長穴63a、63b内に挿通させ、支柱取付部46の底部に設けられているナットに螺着する。また、下部ボルト取付基部47bのボルト穴48bより取付用ボルト51bを挿入し、その先端部を取付用ピン52の下部取付部62に設けられている長穴64a、64b内を挿通させ、支柱取付部46の底部に設けられているナットに螺着し、取付用ピン52を支柱取付部46に固定する。この状態では、取付金具53Bの軸受部84a1、84b1は、第1の方向調整軸54aに対して回動可能に保持されている。
【0074】
そして、上記アンテナ本体40に装着した取付金具53Bを壁面に取付ける場合は、第2の金具部材102に設けられている壁面取付部86a、86bを壁面の取付け位置に当接させ、取付穴87を利用してネジ止めする。このとき取付金具53Bの一方の軸受部84a1、84b1は第1の方向調整軸54aに対して回動可能に保持され、他方の軸受部84a2、84b2は第2の方向調整軸54bに対して回動可能に保持されているので、上記2つの軸を利用してアンテナ本体40の方向を最適位置に調整する。
【0075】
アンテナ本体40の方向を調整した後、取付金具53Bの締付け部82a、82bに仮止めされている蝶ナット57を締め付ける。蝶ナット57を締め付けると、実施例1の場合と同様に、締付け部82a、82bは間隙が狭くなる方向に移動し、それに伴って第1の方向調整軸54aに対する軸受部84a1、84b1は相反する方向に移動して第1の方向調整軸54aに強く圧接する。また、同様に第2の方向調整軸54bに対する軸受部84a2、84b2も相反する方向に移動して第2の方向調整軸54bに強く圧接する。これにより第1の方向調整軸54aは軸受部84a1、84b1に、また、第2の方向調整軸54bは軸受部84a2、84b2に固定されることになり、アンテナ本体40の位置も固定される。
【0076】
上記のように蝶ナット57を締め付けるだけで、第1の方向調整軸54a及び第2の方向調整軸54bを同時に固定してアンテナ本体40の位置を固定することができる。この場合、締付け部82a、82bを軸固定用ボルト56及び蝶ナット57により締付け、締付け部82a、82bに連接されている軸受部84a1、84b1、軸受部84a2、84b2により、第1の方向調整軸54a、第2の方向調整軸54bをそれぞれ軸の直角方向から挟み込むことで固定するようにしているので、位置ずれを生じ難い構造とすることができる。また、2軸構造の取付金具53Bを使用してアンテナ本体40を壁面に取付けることにより、アンテナ本体40の方向調整幅を広くすることができる。
【0077】
図13は、本発明の実施例3に係るアンテナ取付装置50Bの方向調整角度を模式的に示したもので、(a)はアンテナ本体40を壁面89の正面方向に位置させたときの状態を示す平面図、(b)はアンテナ本体40を最大調整角度まで回動したときの状態を示す平面図である。実施例3に係るアンテナ取付装置50Bは、図13(b)に示すように壁面89の正面0°方向に対する最大回動角度θは約96°であり、アンテナ本体40の方向を壁面89の前面側において約192°の範囲で調整することができる。上記図13は、実施例1の場合と同様にアンテナ本体40の横幅Wが約130mm、奥行きDが約80mmであり、アンテナ取付装置50Bの第1の方向調整軸54aの中心から壁面取付部86a、86bまでの距離Lを約80mmに設定した場合を例として示している。なお、アンテナ本体40を蝶ナット57の方向に回動する場合には、アンテナ本体40の回動範囲が蝶ナット57により制限されるが、軸固定用ボルト56と蝶ナット57の装着位置を入れ換えることにより、左右何れの方向にも最大回動角度である約96°まで調整することが可能である。
【0078】
なお、上記各実施例では、アンテナ本体40を壁面に取付ける場合について説明したが、その他、例えば壁面取付部86a、86bと対向するように他の支柱取付用の金具を設け、この壁面取付部86a、86bと他の支柱取付用金具との間で支柱を挟持することにより、アンテナ本体40を支柱に取付けて使用することが可能である。
【0079】
また、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0080】
40…アンテナ本体、41…樹脂ケース、42…前面ケース、43…背面ケース、44…窓、45…接栓、46…支柱取付部、47a…上部ボルト取付基部、47b…下部ボルト取付基部、48a、48b…ボルト穴、50、50A、50B…アンテナ取付装置、51a、51b…取付用ボルト、52…取付用ピン、53、53A、53B…取付金具、54…方向調整軸、54a…第1の方向調整軸、54b…第2の方向調整軸、55…ネジ部、56…軸固定用ボルト、57…蝶ナット、61…上部取付部、62…下部取付部、63a、63b、64a、64b…長穴、65…軸固定部、66…ナット、67…軸保持部、68…ボルト挿通孔、69…ボルト穴、70…金具装着部、71…上部の支持板、72…下部の支持板、73…後壁、74a、74b…横リブ、75a、75b…縦リブ、81a、81b…取付部材、82a、82b…締付け部、83a、83b…ボルト挿入穴、84、84a、84b…軸受部、84a1、84a2、84b1、84b2…軸受部、86a、86b…壁面取付部、87、88…取付穴、89…壁面、90…溝、91…可動片、92…軸固定部、101…第1の金具部材、102…第2の金具部材、104…ワッシャ、105…ナット、106a、106b…調整軸取付金具、107…軸穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状に形成された取付用ピン本体と、前記取付用ピン本体の中央前面側を開口して設けられる金具装着部と、前記取付用ピン本体の上部位置に設けられてアンテナ本体に取付けられる上部取付部と、前記取付用ピン本体の下部位置に設けられて前記アンテナ本体に取付けられる下部取付部と、前記下部取付部の下側から前記金具装着部の略中心軸に沿って挿入される方向調整軸を保持する調整軸保持手段とを備えた取付用ピンと、
金属板により平板状に形成されて対向配置される1対の締付け部と、前記1対の締付け部の略中心部に装着されて該締付け部を対向状態に保持する軸固定用ボルト及びナットと、前記1対の締付け部の一方の側部にそれぞれ略中央より上部及び下部に略円筒状に形成され、前記取付用ピンに設けられた前記金具装着部において前記方向調整軸を回動可能に保持する軸受部と、前記前記1対の締付け部の他方の側部に形成される外部取付部とを備えた取付金具とを具備し、
前記取付金具は、前記1対の締付け部が所定の間隔に保持されている状態では前記軸受部により前記方向調整軸を回転可能に保持し、前記軸固定用ボルト及びナットにより前記1対の締付け部の間隔が狭くなる方向に締め付けたときに前記軸受部を前記方向調整軸に圧接させて該方向調整軸の位置を固定することを特徴とするアンテナ取付装置。
【請求項2】
略円筒状に形成された取付用ピン本体と、前記取付用ピン本体の中央前面側を開口して設けられる金具装着部と、前記取付用ピン本体の上部位置に設けられてアンテナ本体に取付けられる上部取付部と、前記取付用ピン本体の下部位置に設けられて前記アンテナ本体に取付けられる下部取付部と、前記下部取付部の下側から前記金具装着部の略中心軸に沿って挿入される第1の方向調整軸を保持する調整軸保持手段とを備えた取付用ピンと、
金属板により平板状に形成されて対向配置される1対の締付け部と、前記1対の締付け部の略中心部に装着されて該締付け部を対向状態に保持する軸固定用ボルト及びナットと、前記1対の締付け部の一方の側部にそれぞれ略中央より上部及び下部に略円筒状に形成され、前記取付用ピンに設けられた前記金具装着部において前記方向調整軸を回動可能に保持する第1の軸受部と、前記1対の締付け部の他方の側部にそれぞれ略中央より上部及び下部に略円筒状に形成され、第2の方向調整軸を回動可能に保持する第2の軸受部と、前記第2の軸受部の上下外側において前記第2の方向調整軸に固着される外部取付部とを備えた取付金具とを具備し、
前記取付金具は、前記1対の締付け部が所定の間隔に保持されている状態では前記第1の軸受部により前記第1の方向調整軸を回動可能に保持する共に前記第2の軸受部により前記第2の方向調整軸を回動可能に保持し、前記軸固定用ボルト及びナットにより前記1対の締付け部の間隔が狭くなる方向に締め付けたときに前記第1の軸受部を前記第1の方向調整軸に圧接させると共に前記第2の軸受部を前記第2の方向調整軸に圧接させて該第1の方向調整軸及び第2の方向調整軸の位置を固定することを特徴とするアンテナ取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−21456(P2013−21456A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152177(P2011−152177)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】