アンテナ装置、RFIDシステム
【課題】漏れ電界を生じさせ、これにより上方に離間して配置される無線タグと通信するときに、無線タグの配置方向に関わらず無線タグが電波を受信できるようにすること。
【解決手段】アンテナ装置は、第1導体層と、第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層と、第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられる所定領域の第1導体部と、を備える。第2導体層には非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせる。ここで、第2軸が第1導体部の所定領域とオーバーラップする第1長さは、第1導体部から所定高さの位置において第1軸、第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に所定の無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に第1基準値以上となる長さに設定される。
【解決手段】アンテナ装置は、第1導体層と、第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層と、第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられる所定領域の第1導体部と、を備える。第2導体層には非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせる。ここで、第2軸が第1導体部の所定領域とオーバーラップする第1長さは、第1導体部から所定高さの位置において第1軸、第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に所定の無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に第1基準値以上となる長さに設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を用いてアンテナ装置間の通信を行う技術に関し、特定の用途例としては、非接触によりリーダライタと無線タグとの間の通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF帯(860〜960MHz)の無線回線を用いてリーダライタから約1Wの信号を送信し、無線タグ側でその信号を受信し、再びリーダライタ側へ応答信号を送り返すことにより、無線タグ内の情報をリーダライタで読み取ることができるRFIDシステムが既に知られている。国内では、952〜954MHzの無線周波数が用いられる。通信距離は、無線タグのアンテナゲイン、無線ICチップの動作電圧、リーダライタのアンテナゲイン、周囲環境にもよるが、およそ3〜10m程度である。この無線タグは、アンテナと、アンテナの給電点に接続されるICチップ(約0.5mm角程度)とで構成される。無線タグでは、アンテナパターンが透明フィルムシート上に印刷、エッチング等によって形成される。アンテナの給電点には、特別な整合回路を実装することなくICチップが接続される。
【0003】
無線タグのICチップは、内部抵抗Rc(例えば1700Ω)とキャパシタンスCc(例えば1.0pF)との並列回路で等価的に表わすことができる。また、無線タグのアンテナは、放射抵抗Ra(例えば2000Ω)と、インダクタンスLa(例えば30nH)の並列回路で等価的に表わすことができる。ICチップとアンテナを並列接続することにより、キャパシタンスCcとインダクタンスLaとが共振し、所望の共振周波数fo(例えば953MHz)でインピーダンス整合する。これにより、無線タグでは最大の受信電力が得られる。上記共振周波数foは、1/(2π*(La*Cc)1/2)で表される。
【0004】
従来、メッシュ状の電極を有し、伝達する電磁波の進行方向に垂直方向の幅の長さが、垂直方向で共振状態となるように、伝達する電磁波の波長の半分の自然数倍に略等しい電磁波伝達シートが知られている。この電磁波伝達シートは、誘電体層をメッシュ状の導電体層と平板状の導電体層とで挟む構造を備えており、メッシュ状の導電体層から一定の高さまで電磁波が染み出すようになる、とされている。また、この電磁波伝達シートを利用した、棚の中の物品等を管理するRFIDシステムが開示されている。このシステムによれば、棚の内部にアンテナ装置としての電磁波伝達シートを設置し、管理対象となる物品に無線タグを貼り付け、電磁波伝達シートとリーダライタを同軸ケーブルで接続するようにして、無線タグの存在を検出する。このシステムによれば、リーダライタからの電磁波が想定していない場所まで飛んでしまい、読み取りすることを意図していない無線タグを検出してしまうという問題が生ずる可能性が低減される、とされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−114696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のアンテナ装置としての電磁波伝達シートでは、その上方に無線タグを配置したときに、無線タグが配置される向きによっては無線タグが電磁波伝達シートからの電波を受信できない場合がある、という問題がある。
上記問題について図1を参照して説明する。図1では、リーダライタ(R/W)と同軸ケーブル等によって接続され電力を供給される電磁波伝達シート100と、電磁波伝達シート100の上方に配置されている無線タグとを示している。図1に示すように、この電磁波伝達シート100は、メッシュ状の導電体層を備えている。図1において、tagX, tagY, tagZはそれぞれ、無線タグが図に示す座標系のX軸、Y軸、Z軸に平行に配置された状態を示している。このとき、無線タグがtagXまたはtagZの状態のときには無線タグは電波を受信できるが、無線タグがtagYの状態のときには無線タグは電波を受信できない場合がある。
【0007】
この問題についてさらに、図2および図3を参照して説明する。
図2は、時間の経過に応じて電磁波伝達シート100上に漏れ出す(又は、染み出す)電界(以下、「漏れ電界」という。)の状態を示す図であり、(a)はt=t1の状態、(b)はt=t2(>t1)の状態、(c)はt=t3(>t2)の状態を示している。なお、図2では、説明の便宜のためにすべての電界を表示せず、時間の経過とともに変化する電界の様子が分かる範囲で電界を表示している。図3は、無線タグの各々の配置状態(tagX, tagY, tagZ)において無線タグが電磁波伝達シート100から受ける電界の様子を表している。なお、図3において、無線タグには、中央のICチップ(給電点)から両端に向けて延びるダイポールアンテナが示されている。また、図3の(b)は、無線タグの配置状態がtagYであって、かつ無線タグが図2に示す座標系のY=0(電磁波伝達シート100の短辺の中央)に配置された場合を示している。
【0008】
図2を参照すると、電磁波伝達シート100では、リーダライタから給電を受ける一端から他端に向かって、すなわちX軸を+X方向に向かって電磁波が進行する。その結果、図2に示すように、電磁波伝達シート100の表面から生ずる漏れ電界のうち+Xおよび−X方向に生ずる漏れ電界が+X方向に進行する。一方、電磁波伝達シート100の最下層には平板状の導電体層が設けられているため、この電磁波伝達シート100では、メッシュ状の導電体層上で電磁波が進行する軸(X軸)と直交するY軸において相反する2方向、つまり+Y方向と−Y方向に漏れ電界が生ずる。そして、図2に示すように、+Y方向と−Y方向に生ずる漏れ電界が全体として+X方向(電磁波の進行方向)に進行する。
【0009】
図3の(a)および(c)に示すように、無線タグがtagXおよびtagZの配置状態のときには、上述した漏れ電界により無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向(つまり、電界の直線偏波の方向)が、2本のエレメント全体に亘って同一方向となる。これにより、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生ずる(ΔV>0)。つまり、無線タグは、漏れ電界により励起され、電磁波伝達シートからの電波を受信することができる。
【0010】
一方、図3の(b)に示すように、無線タグがY=0の位置にtagYの配置状態で置かれるときには、上述した漏れ電界により無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向が2本のエレメントにおいて相反する方向となり、その電界の大きさが対称となる。そのため、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生じない(ΔV=0)。つまり、無線タグは、漏れ電界により励起されず、電磁波伝達シートからの電波を受信することができない。なお、無線タグがtagYの配置状態であって、かつY=0でないときには、2本のエレメントで受ける電界の大きさが非対称となるため、電磁波伝達シートからの電波を受信することができる。
【0011】
よって、発明の1つの側面では、漏れ電界を生じさせ、これにより上方に離間して配置される無線タグと通信するときに、無線タグの配置方向に関わらず無線タグが電波を受信できるようにしたアンテナ装置、RFIDシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の観点では、アンテナ装置が提供される。
このアンテナ装置は、
(A)第1導体層;
(B)第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で上記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層;
(C)第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられる所定領域の第1導体部;
を備える。
ここで、第2軸が第1導体部の所定領域とオーバーラップする第1長さは、第1導体部から所定高さの位置において上記第1軸、上記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力が共に第1基準値以上となる長さに設定されている。
【0013】
第2の観点では、リーダライタから供給される電力によって電磁波を放射するアンテナ装置と、アンテナ装置上に配置される物品に付着された無線タグとの間で通信を行うRFIDシステムが提供される。
このRFIDシステムにおいて、アンテナ装置は、
(D)第1導体層;
(E)第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で上記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層;
(F)第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられ、上記第1軸に平行な短辺と、上記第2軸に平行な長辺とからなる所定領域の第1導体部;
を備える。
ここで、第1導体部の短辺の長さは、第1導体部から所定高さの位置において上記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に第2基準値以上となる長さに設定されている。
【発明の効果】
【0014】
開示のアンテナ装置、RFIDシステムによれば、上方に離間して配置される無線タグと通信するときに、漏れ電界によって無線タグの配置方向に関わらず無線タグが電波を受信できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】リーダライタによって電力を供給される電磁波伝達シートと、電磁波伝達シートの上方に配置されている無線タグとを示す図。
【図2】時間の経過に応じて電磁波伝達シート上に生ずる漏れ電界の状態を示す図。
【図3】無線タグの各々の配置状態において無線タグが電磁波伝達シートから受ける電界の様子を表す図。
【図4】第1の実施形態のRFIDシステムの概要を示す図。
【図5】第1の実施形態のアンテナ装置のシート状アンテナの構成について示す図。
【図6】第1の実施形態のアンテナ装置上に生ずる漏れ電界の状態を示す図。
【図7】第1の実施形態のRFIDシステムにおいて、放射板上の無線タグが各々の配置状態でアンテナ装置から受ける電界の様子を表す図。
【図8】第1の実施形態において放射板の幅が広すぎる場合に、放射板上の無線タグが各々の配置状態でアンテナ装置から受ける電界の様子を表す図。
【図9】第1の実施形態において放射板の幅と標準ダイポールアンテナの受信電力との関係を示すグラフを表す図。
【図10】第1の実施形態のアンテナ装置の変形例を示す図。
【図11】第1の実施形態のアンテナ装置の変形例を示す図。
【図12】第2の実施形態のRFIDシステムの概要を示す図。
【図13】第2の実施形態のアンテナ装置の変形例を示す図。
【図14】第3の実施形態のRFIDシステムの概要を示す図。
【図15】第3の実施形態においてブースターの形態の変形例を示す図。
【図16】第3の実施形態において無線タグが貼り付けられたCDの例を示す図。
【図17】第3の実施形態のRFIDシステムの動作を説明するための図。
【図18】第3の実施形態のRFIDシステムにおいて放射板の幅と無線タグの受信電力との関係を示すグラフを表す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態のアンテナ装置、およびこのアンテナ装置を含むRFIDシステムについて説明する。以下の説明、および以下の説明で参照する図では、図1および図2で示した座標系と同一のものを使用し、無線タグまたは後述する標準ダイポールアンテナがX軸(第1軸)、Y軸(第2軸)、Z軸(第3軸)に平行に配置された状態をそれぞれtagX, tagY, tagZと表記する。
【0017】
(1−1)アンテナ装置の構成とRFIDシステム
先ず図4および図5を参照して本実施形態のアンテナ装置の構成と、RFIDシステムとについて説明する。図4は、本実施形態のRFIDシステムの概要を示す図である。図4には、図1および図2に示した座標軸と同一のものが示されている。図5は本実施形態のアンテナ装置のシート状アンテナの構成について示す図であり、(a)はシート状アンテナの平面図、(b)は当該平面図のX−X’ラインの断面図を示す。
【0018】
図4に示すように、このRFIDシステムは、アンテナ装置1と、アンテナ装置1と同軸ケーブル110を介して接続されるリーダライタ30とを含む。アンテナ装置1は、シート状アンテナ10と、第1導体部としての放射板20と、通信インタフェース120と、終端部材130とを備える。
図示していないが、このRFIDシステムでは、リーダライタ30と通信を行う無線タグがアンテナ装置1の上方に配置される。このRFIDシステムでは、アンテナ装置1上に配置された物品に付着される無線タグとリーダライタ30がアンテナを介して非接触の通信を行うことで、リーダライタ30が無線タグのデータを読み取る。かかるRFIDシステムの用途としては例えば、棚の底面にアンテナ装置1を載置して棚に配列された物品(書籍、CD(Compact Disk)等)の在庫管理を行う場合等が挙げられる。
【0019】
図5(b)に示すように、アンテナ装置1のシート状アンテナ10は、平板状の導体層101(第1導体層)、導体層101上に設けられる誘電体102、および誘電体102上に設けられるメッシュ状の導体層103(第2導体層)を含む積層構造となっている。このシート状アンテナ10では、導体層101と、導体層101の上方において実質的に平行に誘電体102を介して離間して配置された導体層103とが伝送線路を構成している。導体層103はメッシュ状となっているため、部分的に設けられた非導体部から上方空間に漏れ電界が生ずるようになっている。シート状アンテナ10上に生ずる漏れ電界の領域の高さは、導体層103のメッシュパターン形状、誘電体102の厚さ、誘電体102の誘電率等のパラメータによって変動しうる。各パラメータは、実際の用途における無線タグの位置や受信性能に応じて適宜設定してよい。なお、図5(b)には図示していないが、導体層103上に保護層を設けてもよい。
【0020】
通信インタフェース120は例えば、シート状アンテナ10の一端に接続されるSMAコネクタを含み、リーダライタ30からの高周波信号をシート状アンテナ10へ伝達するとともに、シート状アンテナ10で受信した高周波信号をリーダライタ30へ伝達する。
終端部材130は、シート状アンテナ10の他端(通信インタフェース120と反対側の端)に設けられ、シート状アンテナ10の一端から進行する電磁波を吸収する役割を備える。終端部材130は、例えば導体板と抵抗とを組み合わせた構成とすることができ、例えば導体板をメッシュ状の導体層103の上に載置するのみでもよい。
【0021】
放射板20は、図4および図5に示す例では、シート状アンテナ10上で所望の電界分布を形成するために設けられる導電性の矩形の板状部材である。放射板20はシート状アンテナ10に対して例えば接着剤によって貼り付けられる。放射板20は、シート状アンテナ10の導体層103と接触していなくてもよい。例えば導体層103上に保護層が設けられる場合には、放射板20はその保護層上に貼り付けられる。
【0022】
放射板20は、放射板20の上方に無線タグが図4に示す座標軸において実質的にY=0の位置にY軸と平行に配置される状態(tagYの配置状態)で設置される可能性がある場合に設けられる。仮に放射板20が無いとした場合には、前述したように、無線タグがY=0の位置にtagYの配置状態で置かれるときに、漏れ電界により無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向が2本のエレメントにおいて相反する方向となり、その電界の大きさが対称となる。そのため、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生じず無線タグが励起されない。そこで、本実施形態のアンテナ装置1では、無線タグがY=0の位置にtagYの配置状態で置かれうる状況下では、その無線タグの直下に放射板20が設置される。これによって、後述するように、シート状アンテナ10上において、放射板20が仮に無い場合とは異なる電界分布が形成されるため、無線タグをその配置状態に関わらず励起させることができる。
【0023】
図4および図5(a)に示すように、放射板20は好ましくは、矩形の長辺がY軸に平行となるように配置され、長辺の長さLが無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さとなっている。例えば、国内のRFIDシステムの使用周波数のうち953MHzでは、仮に導体層101と導体層103とが空気中で離間していた場合には約165mmとなる。本実施形態のように、誘電体102を含む場合には、誘電体102の誘電率にもよるが、約140〜170mmに設定するのが好ましい。
【0024】
(1−2)アンテナ装置1が生成する電界分布と放射板20上の無線タグの励起
次に、本実施形態のアンテナ装置1が生成する電界分布と、それによって生ずる放射板20上の無線タグの励起とについて、図6〜8を参照して説明する。図6は、本実施形態のアンテナ装置1上に生ずる漏れ電界の状態を示す図である。図7は、本実施形態のRFIDシステムにおいて、放射板20上の無線タグが各々の配置状態(tagX, tagY, tagZ)でアンテナ装置1から受ける電界の様子を表す図である。なお、図7において、無線タグでは、中央のICチップ(給電点)から両端に向けて延びるダイポールアンテナが示されている。図8は、放射板20の幅が広すぎる場合に、放射板20上の無線タグが各々の配置状態でアンテナ装置1から受ける電界の様子を表す図である。
【0025】
先ず図6を参照すると、本実施形態のアンテナ装置1では、シート状アンテナ10の導体層101と導体層103とが伝送線路を形成する。そのため、リーダライタ30から給電を受ける一端(通信インタフェース120が位置する端)から他端(終端部材130の位置する端)に向かって電磁波が進行する。すなわちX軸を+X方向に向かって電磁波が進行する。このとき、シート状アンテナ10の上層の導体層103には部分的に非導体部が設けられているため、シート状アンテナ10の上方に漏れ電界が生ずる。ここでシート状アンテナ10の最下層には平板状の導体層101が設けられているため、このアンテナ装置1では、メッシュ状の導電体層上で電磁波が進行する軸(X軸)と直交するY軸において相反する2方向、つまり+Y方向と−Y方向に漏れ電界が生ずる。そして、+Y方向と−Y方向に生ずる漏れ電界が全体として+X方向(電磁波の進行方向)に進行する。
【0026】
一方、本実施形態のアンテナ装置1において、放射板20上では、シート状アンテナ10からの漏れ電界のうち+Y方向と−Y方向の成分は遮断され、図6に示すように、+Y方向の電界が生ずる。なお、図6では、+Y方向に向かう放射状の複数の電気力線を代表して1本の太線で示してある。前述したように、放射板20は好ましくは、矩形の長辺がY軸に平行となるように配置され、長辺の長さが無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さとなっている。このときに、放射板20上によって生ずる電界強度が最大となるため、無線タグがアンテナ装置1からの電波を最も良好に受信することができる。
なお、放射板20の幅(X軸方向の長さ)が広すぎない場合には、放射板20は、シート状アンテナ10からの漏れ電界のうち+X方向または−X方向に向かう電界を遮断しない。すなわち、図6に示すように、+X方向または−X方向に向かう漏れ電界は、放射板20を跨ぐようにして生ずる。
【0027】
図6に示したように漏れ電界が生ずる状況下において、図7の(a)および(c)に示すように、放射板20上の無線タグがtagXおよびtagZの配置状態のときには、上述した漏れ電界は、放射板20を跨ぐようにして形成される。つまり、仮に放射板20が無い場合と同様の+X方向または−X方向に向かう漏れ電界が生ずる。そのため、無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向(つまり、電界の直線偏波の方向)が、2本のエレメント全体に亘って同一方向となる。これにより、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生ずる(ΔV>0)。つまり、放射板20上の無線タグは、漏れ電界により励起され、アンテナ装置1からの電波を受信することができる。
【0028】
一方、放射板20自体によって+Y方向に向かう電界が形成される。このとき、図7の(b)に示すように、放射板20上の無線タグがtagYの配置状態のときには、無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向が、2本のエレメント全体に亘って同一方向となる。これにより、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生ずる(ΔV>0)。つまり、放射板20上の無線タグは、放射板20によって生ずる電界により励起され、アンテナ装置1からの電波を受信することができる。
【0029】
上述したように、本実施形態のアンテナ装置1では、放射板20を設けたことで、放射板20上に配置される無線タグをその配置方向に関わらず励起させうる。しかしながら、放射板20の幅(X軸方向の長さ)が広すぎる場合には、+X方向または−X方向に向かう漏れ電界が放射板20によって遮断されてしまい、無線タグの配置方向によっては無線タグを励起させることができない。この点について以下説明する。
【0030】
先ず図8(b)を参照すると、放射板20上の無線タグがtagYの配置状態のときには、放射板20自体によって+Y方向に向かう電界が形成される。そのため、図7(b)と同様に、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生ずる(ΔV>0)。つまり、放射板20上の無線タグは、放射板20によって生ずる電界により励起され、アンテナ装置1からの電波を受信することができる。
一方、図8の(a)および(c)に示すように、放射板20上の無線タグがtagXおよびtagZの配置状態のときには、放射板20によって生ずる電界により無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向が2本のエレメントにおいて同一方向となり、その電界の大きさが対称となる。なお、図8の(a)では、紙面上手前から奥に向かう矢印付きの線が示される。このとき、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生じない(ΔV=0)。つまり、無線タグは、放射板20によって生ずる電界により励起されず、アンテナ装置1からの電波を受信することができない。
【0031】
(1−3)放射板20の幅寸法の決定方法
上述した議論から明らかなことは、放射板20上に配置される無線タグをその配置方向に関わらず、より確実に励起させるためには、放射板20の幅(X軸方向の長さ)を適切な範囲に設定することが好ましい、ということである。放射板20の幅を適切な範囲は、アンテナ装置1の漏れ電界のレベル、無線タグが配置される高さ、無線タグの最小動作電力等の複数のパラメータによって変動すると考えられ、画一的に設定することは困難である。そこで、変動しうる前提条件に応じた放射板20の幅寸法の好ましい決定方法について明確にするため、発明者は、幅が大きさが異なる複数の大きさの放射板20を用いた測定を行った。すなわち、各放射板20上に無線タグを模擬した標準ダイポールアンテナが配置され、標準ダイポールアンテナの受信電力(標準ダイポールアンテナで発生する電力)の測定が行われた。測定条件を以下に示す。
【0032】
[測定条件]
・シート状アンテナ:800mm(Y軸方向の長さ)×110mm(X軸方向の長さ)
・使用周波数:952〜954MHz
・標準ダイポールアンテナ:176mm(長さ)、φ2.5mm
・標準ダイポールアンテナの位置:放射板20から100mmの高さ
・放射板20:150mm(Y軸方向の長さ)、0〜60mm(X軸方向の長さ(幅:W))
【0033】
測定結果として、放射板20の幅(W)と標準ダイポールアンテナの受信電力との関係を示すグラフを図9に示す。なお、図9においてW=0は放射板20を設けなかった場合である。
図9に示すように、放射板20を設けない場合、または放射板20の幅(W)が狭い場合には、上述したとおり、標準ダイポールアンテナがtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力は大きいが、標準ダイポールアンテナがtagYの配置状態のときの受信電力小さい。そして、放射板20の幅(W)を広くしていった場合に、標準ダイポールアンテナがtagYの配置状態のときの受信電力は、放射板20によって生ずる電界を受けて受信電力は次第に増大していく。その一方で、標準ダイポールアンテナがtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力は、漏れ電界が放射板20上に生じなくなっていくにつれて低下していく。
すなわち、図9から、標準ダイポールアンテナがtagYの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅(W)に対して増加関数となり、標準ダイポールアンテナがtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅(W)に対して減少関数となることが分かる。
【0034】
標準ダイポールアンテナの配置状態に関わらず標準ダイポールアンテナの受信電力を所定の第1基準値以上とするための放射板20の幅は、図9の測定結果から自ずと定まる。例えば、その第1基準値を−25dBmに設定したとすれば、放射板20の幅(W)が7〜27mmの範囲にあるときに標準ダイポールアンテナの配置状態に関わらず標準ダイポールアンテナの受信電力が上記第1基準値以上となる。なお、上記測定条件では、標準ダイポールアンテナの位置を放射板20から100mmの高さとしたが、100mmよりも低い高さである場合には、標準ダイポールアンテナの配置状態に関わらず標準ダイポールアンテナの受信電力が上記第1基準値以上となるような放射板20の幅の範囲を広げることができる。
以上から、標準ダイポールアンテナを使用したときの放射板20の幅は、標準ダイポールアンテナがtagX, tagY, tagZの配置状態のときの受信電力が共に所定の第1基準値以上となるような長さに設定されていることが好ましいことが分かる。
【0035】
なお、図9において、標準ダイポールアンテナの配置状態に関わらず受信電力が同一であることが、さらに好ましい。この観点から、放射板20の幅は、標準ダイポールアンテナがtagYの配置状態のときの受信電力がtagXおよび/またはtagZの配置状態のときの受信電力と実質的に等しくなる長さ(図9では、7〜9mm程度)に設定することが、さらに好ましい。
【0036】
図9は、無線タグを模擬した標準ダイポールアンテナを用いた測定結果を示した一例ではあるが、以下の2点は、アンテナ装置1の漏れ電界のレベル、無線タグが配置される高さ、無線タグの最小動作電力等の複数のパラメータに関わらず、普遍的な傾向といえる。これは、無線タグと標準ダイポールアンテナがアンテナとしての動作原理が同一であることによる。
すなわち、
(A1)放射板20上に配置された無線タグがtagYの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅に対して増加関数となる。
(A2)無線タグがtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅に対して減少関数となる。
従って、上記(A1)および(A2)の知見に基づき、当業者であれば、使用される無線タグ、および適用されるRFIDシステムの適用に応じて、図9に例示したデータを取得することにより好ましい放射板20の幅を適宜設定することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置1では、シート状アンテナ10上で所望の電界分布を形成する導電性の矩形の板状部材として放射板20が設けられる。そして、この放射板20の幅は、少なくとも放射板20上の所定の高さの位置にある無線タグのすべての配置状態における受信電力が所定の第1基準値以上となる長さに設定される。そのため、本実施形態のアンテナ装置1は、放射板20上に配置される無線タグをその配置状態に関わらず励起させることができる。また、さらに好ましくは、放射板20の幅は、無線タグがtagYの配置状態のときの受信電力がtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力と実質的に等しくなる長さに設定される。
【0038】
(1−4)変形例
なお、本実施形態では一例として、シート状アンテナ10の導体層103をメッシュ状のものとしたが、導体層103の形態はメッシュ状に限られない。導体層103の形態は、例えばストライプ状でもよい。導体層103に形成される非導体部の形態(層全体がメッシュ状の形態の場合には、矩形)は、菱形でもよいし、円形でもよい。いずれの形態にせよ、導体層103は、電磁波の進行方向(図6ではX軸の+X方向)と直交する軸(図6ではY軸)において相反する2方向に漏れ電界を生じさせるものであればよい。このような漏れ電界を生じさせる場合に、本実施形態のアンテナ装置1が特に有効となる。
【0039】
本実施形態のアンテナ装置1において、矩形の放射板20は、矩形の長辺がY軸に平行となるように配置された場合を示したが、これに限られない。図10に例示するように、放射板20は、矩形の長辺がY軸に対して平行でなくてもよい。図10に示す放射板20の配置の下では、放射板20が配置された向きに沿って電界(図示せず)が形成される。このときに生ずる電界のY軸方向の成分に対しては、図7(b)と同様の状況が当てはまる。
【0040】
また、放射板20の形態を矩形とした例について示したが、放射板20の形態は他の形態としてもよい。例えば、放射板20は、台形、扁平した六角形、扁平した楕円形など様々な形態を採りうる。つまり、より一般的に言えば、放射板20は所定領域を備え、その所定領域は、Y軸(電磁波の進行方向と直交する軸)の一方向に向かう電界を生じさせ、かつX軸((電磁波の進行方向の軸)に沿った方向の電界を遮断しない程度の領域が確保されていればよい。従って、Y軸が放射板20の所定領域とオーバーラップする第1長さ(図4の場合には、矩形の短辺の長さ)が、少なくとも放射板20上の所定の高さの位置にある無線タグのすべての配置状態における受信電力が所定の第1基準値以上となる長さに設定されていればよい。
【0041】
本実施形態のアンテナ装置1において、放射板20はシート状アンテナ10とは別個に設けられる部材である場合について説明したが、放射板20とシート状アンテナ10は一体であってもよい。より具体的には、図11に示すように、導体層103において図4に示した放射板20と等価な導体領域103a(第1導体部)を部分的に設けるようにしてもよい。但し、図11に例示する導体領域103aは、シート状アンテナ10の幅(Y軸方向の長さ)と一致した大きさとしているため、Y軸方向で使用周波数の半波長の長さが確保できず十分な電界強度を発生することができない場合が考えられる。その場合には、導体領域103aのY軸方向の長さを使用周波数の半波長の長さまで引き延ばしてもよい。
【0042】
(2)第2の実施形態
以下、第2の実施形態のアンテナ装置、およびこのアンテナ装置を含むRFIDシステムについて説明する。
前述したように、RFIDシステムの用途としては、棚の底面にアンテナ装置を載置して棚に配列された物品(書籍、CD等)の在庫管理を行う場合等では、複数の物品の各々に付着させた無線タグと通信を行うことができるようにすることが好ましい。かかる観点から、本実施形態のアンテナ装置は、複数の無線タグの各々を、各無線タグの配置状態に関わらず励起させることができるようにしたものである。
図12に、本実施形態のRFIDシステムの概要を示す。図12において、本実施形態のアンテナ装置2には、第1の実施形態の放射板20と等価な複数の放射板(放射板20−1〜20−3)が設けられる。複数の放射板20−1〜20−3の各々の上方に無線タグ(および無線タグが付着された物品)が配置される。これにより、本実施形態のRFIDシステムでは、図12に示すアンテナ装置2が複数の無線タグの各々を、各無線タグの配置状態に関わらず励起させることができるようになっている。
【0043】
本実施形態の複数の放射板(放射板20−1〜20−3)の各々については、第1の実施形態の放射板20の形態およびその電界の形成について同様の内容が当てはまるため、重複説明を行わない。
【0044】
ここで、本実施形態のアンテナ装置2において、隣接する放射板間の距離(図12に示すd;第1距離)を短く設定し過ぎると、シート状アンテナ10からの漏れ電界を複数の放射板が遮断してしまい通信性能に悪影響を与える。そこで、本実施形態のアンテナ装置2では、隣接する放射板間の距離dを適切な範囲に設定することが好ましい。
具体的には、放射板間の距離dは、放射板上の無線タグがtagX, tagY, tagZの配置状態のときの受信電力が共に所定の第1基準値(例えば、無線タグの最小動作電力)以上となる距離に設定されていることが好ましい。このような距離dは、適用されるRFIDシステムにおいて、アンテナ装置2の漏れ電界のレベル、無線タグが配置される高さ、無線タグの最小動作電力等の複数のパラメータによって変動し得るため、画一的に設定することは困難である。しかしながら、上記パラメータが固定されれば、概ね上記距離dの適切な範囲を、無線タグの受信電力を測定することにより決定することができる。例えば、第1の実施形態で示した測定条件の下では、d=10〜150mmであることが好ましい。
【0045】
なお、第1の実施形態で述べた変形例は、第2の実施形態にも当てはまる。例えば、図13に示すように、メッシュ状の導体層において図11に示した複数の放射板(放射板20−1〜20−3)と等価な導体領域103a−1〜103a−3を設けるようにしてもよい。
【0046】
(3)第3の実施形態
以下、第3の実施形態のアンテナ装置、およびこのアンテナ装置を含むRFIDシステムについて説明する。
上述した各実施形態のRFIDシステムにおいて、シート状アンテナ10上に放射板20を設けることで、無線タグの配置状態に関わらず無線タグを励起させることができることを説明してきた。しかしながら、物品に付着するときのレイアウト条件によって無線タグが小型化され、そのような無線タグでは十分なアンテナゲインが得られない場合がある。すなわち、シート状アンテナ10の漏れ電界および放射板20によって生ずる電界のみでは無線タグを励起させるのに十分なエネルギーを得ることができない場合が有りえる。そのような場合には、無線タグが付着されている物品に、シート状アンテナ10の漏れ電界および放射板20が生ずる電界を増幅するためのブースターを設けることが好ましい。なお、ブースターについては、特開2009−280273号において、無線タグのアンテナと電磁結合する導体として記述されているので参照されたい。
【0047】
図14を参照して、ブースターを利用した本実施形態のRFIDシステムの概要を説明する。図14では一例として、無線タグが物品としてのCD(Compact Disk)に付着されている場合を示し、リーダライタ等は図示を省略している。図14において、シート状アンテナ10は、例えば物品としてのCDが配列される棚の底部に装着されることが想定されている。図14では、単一のCDケース50のみを示しているが、隣接するCDケース50の間の距離を適切な範囲に設定する限り、CDケース50は複数存在してもよい。複数のCDケース50が放射板20上に安定的に置かれるように、棚は各CDケース50を収容するための仕切り板(図示しない)で区画されていることが想定される。
【0048】
矩形の放射板20は、矩形の長辺がY軸に平行となるように配置される。ブースター51(第2導体部)は、例えば銅などの金属で成形された導体板であり、放射板20と実質的に平行となるように、つまりY軸と実質的に平行となるように配置される。このような配置によって、放射板20とブースター51との電磁結合によって放射板20によって生ずる電界を増幅させることができる。さらに、シート状アンテナ10の漏れ電界もブースター51によって増幅される。
なお、ここで「Y軸と実質的に平行」とは、ブースター51の形態が全体として概ねY軸と平行であればよく、ブースター51の形態の一部がY軸と平行でなくてもよい。例えば、図15に、ブースター51の形態の変形例を示す。図15に示すように、ブースター51は、(a)クランク状形態、(b)メアンダ状形態、(c)ジグザグ状形態、に形成してもよい。なお、図15の(a)は、図14に示すブースター51と同一形態である。
ブースター51の長さは使用周波数の半波長が好ましく、付着対象となる物品が十分に大きければ完全な矩形であるのがよい。しかしながら、付着対象となる物品の寸法が使用周波数の半波長よりも小さい場合には、図15に示すような形態を採ることで、使用周波数の半波長の長さが確保される。ブースター51が例えばクランク状形態を採る場合、好ましい寸法の一例は、d1=d2=10mm、d3=120mm、d4=2mmである。
【0049】
図16に、無線タグが貼り付けられたCD60を示す。
図16において、CD60に貼り付けられる無線タグ70は、CD60の読み取り面とは逆側の面(いわゆるレーベル面)において、内周側の中心穴部の周囲に、例えば接着剤等で貼り付けられる。無線タグ70では、円環状(ドーナツ状)の導体板71にスロット(溝)72を設けることでスロットアンテナが構成されている。スロット72は、ICチップ(給電部)から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状をなしている。ICチップは、導体板10内に埋め込まれている。
この例では、スロット72のメアンダ形状は、複数のV字形状部が円弧状に連結されて形成されている。メアンダ形状を構成するのにV字形を適用するのは、隣接するV字形状部のスロットの外側の導体を流れる電流の向きは逆であるものの、互いに逆向きの電流ベクトル方向が斜めとなり、逆向きの電流によって生ずる電磁波のキャンセル量を低減できるためである。
無線タグ70の導体板71は、CD60の内部の記録面金属部と平面視でオーバーラップするように2箇所の延長部71aが設けられた形態となっている。これにより、高周波帯において、無線タグ70の導体板71はCD60の記録面金属部と電磁結合するため、スロット72から十分に電波を放射させることができる。
なお、CDケース50内のCD60は、CDケース50の表面に沿って自由に回転可能になっているので、CD60に貼り付けられた無線タグ70は、tagY またはtagZのいずれの配置状態も採りうるが、tagXの配置状態は採り得ない。
【0050】
本実施形態のRFIDシステムの動作について、図17を参照して説明する。図17は、図14に対して、放射板20によって生ずる電界、ブースター51に励起される電界、無線タグ70の偏波方向(この場合は、Y軸に平行)を、矢印を含む線によって示した図である。
図17に示すように、放射板20上では、シート状アンテナ10からの漏れ電界のうち+Y方向と−Y方向の成分は遮断され、+Y方向の電界が生ずる。なお、図17では、+Y方向に向かう放射状の複数の電気力線を代表して1本の太線で示してある。一方、ブースター51は、放射板20と実質的に平行となるように配置されているため、放射板20とブースター51との電磁結合によって放射板20によって生ずる電界を増幅する。すなわち、図17に示すように、ブースター51に励起される電界が生ずるため、無線タグを励起させることができるようになる。
また、図17には図示していないが、放射板20上には放射板20を跨ぐようにして概ね+X方向または−X方向に向かう放射状の漏れ電界が生じており、この漏れ電界もブースター51によって増幅される。
よって、ブースター51をCDケース50に設けることで、アンテナゲインが小さい小型の無線タグ70がtagY またはtagZのいずれの配置状態になった場合でも、無線タグ70を励起させることができるようになる。
【0051】
発明者は、本実施形態のRFIDシステムに関し、様々な条件でリーダライタが無線タグと通信できるか否か(つまり、無線タグを読み取り可または不可)について電磁界シミュレータを用いた実験を行った。その結果を表1に示す。なお、表1では、ブースターのタイプとして、図15の(a)、(c)の形態のものをそれぞれタイプ(a)、タイプ(c)と記載してある。また、無線タグの受信電力Ptagに対し、無線タグが読み取り可または不可となる基準の電力を−17dBm(第2基準値)に設定した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1において、条件1〜3(無線タグの偏波方向がY軸)を参照すると、放射板の設定によって無線タグの受信電力Ptagが放射板20が無い場合と比較して10dB増加し、ブースターを設定することでさらに14dB増加し、読み取り可となったことが確認された。条件4〜6(無線タグの偏波方向がZ軸)を参照すると、放射板20の設定によって漏れ電界が減少し、条件4に対して条件5では、無線タグの受信電力Ptagの低下が確認されたが、ブースターの追加(条件6)によってPtagは大幅に改善された。なお、無線タグのいずれの偏波方向の場合でも、タイプ(a)とタイプ(c)のブースターの間に大きな優劣は確認されなかった。
【0054】
図18には、別の電磁界シミュレータの測定結果が示される。これは、タイプ(a)のブースターを用いたときの放射板20の幅(Y軸方向の長さ;W[mm])と無線タグ70の受信電力[dBm]との関係を示すグラフである。
この測定結果によれば概ね、図9を参照して説明した作用と同様の理由により、図9に示した標準ダイポールアンテナによる結果と同様の傾向が確認された。すなわち、無線タグ70がtagYの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅(W)に対して増加関数となり、無線タグ70がtagZの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅(W)に対して減少関数となることが分かる。
【0055】
図18において、無線タグ70が読み取り可または不可となる基準の電力を−17dBmに設定した場合には、放射板20の幅(W)をW=10〜50mmに設定することで、無線タグ70の配置状態に関わらず無線タグ70を励起させることができるようになる。なお、前述したように、無線タグ70の配置状態(すなわち、CDケース50内のCD60の回転方向の位置)に関わらず受信電力が同一であるのがよい。この観点から、放射板20の幅は、無線タグ70がtagYの配置状態のときの受信電力がtagZの配置状態のときの受信電力と実質的に等しくなる長さ(図18では、13〜20mm程度)に設定することが、さらに好ましい。
【0056】
放射板20の幅の適切な範囲は、アンテナ装置1の漏れ電界のレベル、物品に応じて定まる無線タグが配置される高さ、無線タグの最小動作電力等の複数のパラメータによって変動しうることは前述したとおりである。例えば、DVD(Digital Video Disk)、BD(Blu-ray Disc)等の物品に対して設定される放射板20の幅の好ましい範囲は、CDに対して設定されるそれとは異なりうる。
【0057】
本発明の複数の実施例について詳細に説明したが、本発明のアンテナ装置、RFIDシステムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0058】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0059】
(付記1)
第1導体層と、
第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で前記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層と、
第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられる所定領域の第1導体部と、
を備え、
前記第2軸が第1導体部の所定領域とオーバーラップする第1長さは、第1導体部から所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力が共に第1基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
アンテナ装置。(1)
【0060】
(付記2)
前記第1導体部から前記所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および前記第3軸に平行に前記所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力をそれぞれ、第1電力、第2電力、および第3電力としたとき、
前記第1長さは、第2電力が第1電力および/または第3電力と実質的に等しくなる長さに設定されていることを特徴とする、
付記1に記載されたアンテナ装置。(2)
【0061】
(付記3)
前記第1導体部の所定領域には、前記所定の無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さが確保されていることを特徴とする、
付記1又は2に記載されたアンテナ装置。(3)
【0062】
(付記4)
前記第1導体部の所定領域は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなることを特徴とする、
付記1〜3のいずれかに記載されたアンテナ装置。(4)
【0063】
(付記5)
前記第1導体部が複数設けられ、各第1導体部は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなり、
隣接する第1導体部の間の第1距離は、第1導体部の各々から前記所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に前記所定の無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に前記第1基準値以上となる距離に設定されていることを特徴とする、
付記1に記載されたアンテナ装置。(5)
【0064】
(付記6)
リーダライタから供給される電力によって電磁波を放射するアンテナ装置と、アンテナ装置上に配置される物品に付着された無線タグとの間で通信を行うRFIDシステムであって、
前記アンテナ装置は、
第1導体層と、
第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で前記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層と、
第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられ、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなる所定領域の第1導体部と、を備え、
第1導体部の前記短辺の長さは、前記第1導体部から所定高さの位置において前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に第2基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
RFIDシステム。(6)
【0065】
(付記7)
前記第1導体部から前記所定高さの位置における前記第2軸、および前記第3軸に平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力をそれぞれ、第2電力および第3電力としたとき、
前記第1長さは、第2電力が第3電力と実質的に等しくなるような長さに設定されていることを特徴とする、
付記6に記載されたRFIDシステム。
【0066】
(付記8)
前記第1導体部の所定領域には、前記無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さが確保されていることを特徴とする、
付記6又は7に記載されたRFIDシステム。
【0067】
(付記9)
前記第1導体部が複数設けられ、各第1導体部は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなり、
隣接する第1導体部の間の第1距離は、第1導体部から所定高さの位置において前記第2軸、および前記第3軸のそれぞれに平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に前記第2基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
付記6に記載されたRFIDシステム。
【0068】
(付記10)
前記物品には、前記第2軸と実質的に平行に延びる第2導体部が設けられていることを特徴とする、
付記6〜9のいずれかに記載されたRFIDシステム。(7)
【0069】
(付記11)
前記第2導体部は、前記アンテナ装置と前記無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さの導体板であることを特徴とする、
付記10に記載されたRFIDシステム。
【符号の説明】
【0070】
1,2…アンテナ装置
10…シート状アンテナ
101…導体層
102…誘電体
103…導体層
20…放射板
30…リーダライタ
50…CDケース
51…ブースター
60…CD
70…無線タグ
110…同軸ケーブル
120…通信インタフェース
130…終端部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を用いてアンテナ装置間の通信を行う技術に関し、特定の用途例としては、非接触によりリーダライタと無線タグとの間の通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF帯(860〜960MHz)の無線回線を用いてリーダライタから約1Wの信号を送信し、無線タグ側でその信号を受信し、再びリーダライタ側へ応答信号を送り返すことにより、無線タグ内の情報をリーダライタで読み取ることができるRFIDシステムが既に知られている。国内では、952〜954MHzの無線周波数が用いられる。通信距離は、無線タグのアンテナゲイン、無線ICチップの動作電圧、リーダライタのアンテナゲイン、周囲環境にもよるが、およそ3〜10m程度である。この無線タグは、アンテナと、アンテナの給電点に接続されるICチップ(約0.5mm角程度)とで構成される。無線タグでは、アンテナパターンが透明フィルムシート上に印刷、エッチング等によって形成される。アンテナの給電点には、特別な整合回路を実装することなくICチップが接続される。
【0003】
無線タグのICチップは、内部抵抗Rc(例えば1700Ω)とキャパシタンスCc(例えば1.0pF)との並列回路で等価的に表わすことができる。また、無線タグのアンテナは、放射抵抗Ra(例えば2000Ω)と、インダクタンスLa(例えば30nH)の並列回路で等価的に表わすことができる。ICチップとアンテナを並列接続することにより、キャパシタンスCcとインダクタンスLaとが共振し、所望の共振周波数fo(例えば953MHz)でインピーダンス整合する。これにより、無線タグでは最大の受信電力が得られる。上記共振周波数foは、1/(2π*(La*Cc)1/2)で表される。
【0004】
従来、メッシュ状の電極を有し、伝達する電磁波の進行方向に垂直方向の幅の長さが、垂直方向で共振状態となるように、伝達する電磁波の波長の半分の自然数倍に略等しい電磁波伝達シートが知られている。この電磁波伝達シートは、誘電体層をメッシュ状の導電体層と平板状の導電体層とで挟む構造を備えており、メッシュ状の導電体層から一定の高さまで電磁波が染み出すようになる、とされている。また、この電磁波伝達シートを利用した、棚の中の物品等を管理するRFIDシステムが開示されている。このシステムによれば、棚の内部にアンテナ装置としての電磁波伝達シートを設置し、管理対象となる物品に無線タグを貼り付け、電磁波伝達シートとリーダライタを同軸ケーブルで接続するようにして、無線タグの存在を検出する。このシステムによれば、リーダライタからの電磁波が想定していない場所まで飛んでしまい、読み取りすることを意図していない無線タグを検出してしまうという問題が生ずる可能性が低減される、とされている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−114696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のアンテナ装置としての電磁波伝達シートでは、その上方に無線タグを配置したときに、無線タグが配置される向きによっては無線タグが電磁波伝達シートからの電波を受信できない場合がある、という問題がある。
上記問題について図1を参照して説明する。図1では、リーダライタ(R/W)と同軸ケーブル等によって接続され電力を供給される電磁波伝達シート100と、電磁波伝達シート100の上方に配置されている無線タグとを示している。図1に示すように、この電磁波伝達シート100は、メッシュ状の導電体層を備えている。図1において、tagX, tagY, tagZはそれぞれ、無線タグが図に示す座標系のX軸、Y軸、Z軸に平行に配置された状態を示している。このとき、無線タグがtagXまたはtagZの状態のときには無線タグは電波を受信できるが、無線タグがtagYの状態のときには無線タグは電波を受信できない場合がある。
【0007】
この問題についてさらに、図2および図3を参照して説明する。
図2は、時間の経過に応じて電磁波伝達シート100上に漏れ出す(又は、染み出す)電界(以下、「漏れ電界」という。)の状態を示す図であり、(a)はt=t1の状態、(b)はt=t2(>t1)の状態、(c)はt=t3(>t2)の状態を示している。なお、図2では、説明の便宜のためにすべての電界を表示せず、時間の経過とともに変化する電界の様子が分かる範囲で電界を表示している。図3は、無線タグの各々の配置状態(tagX, tagY, tagZ)において無線タグが電磁波伝達シート100から受ける電界の様子を表している。なお、図3において、無線タグには、中央のICチップ(給電点)から両端に向けて延びるダイポールアンテナが示されている。また、図3の(b)は、無線タグの配置状態がtagYであって、かつ無線タグが図2に示す座標系のY=0(電磁波伝達シート100の短辺の中央)に配置された場合を示している。
【0008】
図2を参照すると、電磁波伝達シート100では、リーダライタから給電を受ける一端から他端に向かって、すなわちX軸を+X方向に向かって電磁波が進行する。その結果、図2に示すように、電磁波伝達シート100の表面から生ずる漏れ電界のうち+Xおよび−X方向に生ずる漏れ電界が+X方向に進行する。一方、電磁波伝達シート100の最下層には平板状の導電体層が設けられているため、この電磁波伝達シート100では、メッシュ状の導電体層上で電磁波が進行する軸(X軸)と直交するY軸において相反する2方向、つまり+Y方向と−Y方向に漏れ電界が生ずる。そして、図2に示すように、+Y方向と−Y方向に生ずる漏れ電界が全体として+X方向(電磁波の進行方向)に進行する。
【0009】
図3の(a)および(c)に示すように、無線タグがtagXおよびtagZの配置状態のときには、上述した漏れ電界により無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向(つまり、電界の直線偏波の方向)が、2本のエレメント全体に亘って同一方向となる。これにより、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生ずる(ΔV>0)。つまり、無線タグは、漏れ電界により励起され、電磁波伝達シートからの電波を受信することができる。
【0010】
一方、図3の(b)に示すように、無線タグがY=0の位置にtagYの配置状態で置かれるときには、上述した漏れ電界により無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向が2本のエレメントにおいて相反する方向となり、その電界の大きさが対称となる。そのため、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生じない(ΔV=0)。つまり、無線タグは、漏れ電界により励起されず、電磁波伝達シートからの電波を受信することができない。なお、無線タグがtagYの配置状態であって、かつY=0でないときには、2本のエレメントで受ける電界の大きさが非対称となるため、電磁波伝達シートからの電波を受信することができる。
【0011】
よって、発明の1つの側面では、漏れ電界を生じさせ、これにより上方に離間して配置される無線タグと通信するときに、無線タグの配置方向に関わらず無線タグが電波を受信できるようにしたアンテナ装置、RFIDシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の観点では、アンテナ装置が提供される。
このアンテナ装置は、
(A)第1導体層;
(B)第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で上記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層;
(C)第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられる所定領域の第1導体部;
を備える。
ここで、第2軸が第1導体部の所定領域とオーバーラップする第1長さは、第1導体部から所定高さの位置において上記第1軸、上記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力が共に第1基準値以上となる長さに設定されている。
【0013】
第2の観点では、リーダライタから供給される電力によって電磁波を放射するアンテナ装置と、アンテナ装置上に配置される物品に付着された無線タグとの間で通信を行うRFIDシステムが提供される。
このRFIDシステムにおいて、アンテナ装置は、
(D)第1導体層;
(E)第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で上記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層;
(F)第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられ、上記第1軸に平行な短辺と、上記第2軸に平行な長辺とからなる所定領域の第1導体部;
を備える。
ここで、第1導体部の短辺の長さは、第1導体部から所定高さの位置において上記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に第2基準値以上となる長さに設定されている。
【発明の効果】
【0014】
開示のアンテナ装置、RFIDシステムによれば、上方に離間して配置される無線タグと通信するときに、漏れ電界によって無線タグの配置方向に関わらず無線タグが電波を受信できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】リーダライタによって電力を供給される電磁波伝達シートと、電磁波伝達シートの上方に配置されている無線タグとを示す図。
【図2】時間の経過に応じて電磁波伝達シート上に生ずる漏れ電界の状態を示す図。
【図3】無線タグの各々の配置状態において無線タグが電磁波伝達シートから受ける電界の様子を表す図。
【図4】第1の実施形態のRFIDシステムの概要を示す図。
【図5】第1の実施形態のアンテナ装置のシート状アンテナの構成について示す図。
【図6】第1の実施形態のアンテナ装置上に生ずる漏れ電界の状態を示す図。
【図7】第1の実施形態のRFIDシステムにおいて、放射板上の無線タグが各々の配置状態でアンテナ装置から受ける電界の様子を表す図。
【図8】第1の実施形態において放射板の幅が広すぎる場合に、放射板上の無線タグが各々の配置状態でアンテナ装置から受ける電界の様子を表す図。
【図9】第1の実施形態において放射板の幅と標準ダイポールアンテナの受信電力との関係を示すグラフを表す図。
【図10】第1の実施形態のアンテナ装置の変形例を示す図。
【図11】第1の実施形態のアンテナ装置の変形例を示す図。
【図12】第2の実施形態のRFIDシステムの概要を示す図。
【図13】第2の実施形態のアンテナ装置の変形例を示す図。
【図14】第3の実施形態のRFIDシステムの概要を示す図。
【図15】第3の実施形態においてブースターの形態の変形例を示す図。
【図16】第3の実施形態において無線タグが貼り付けられたCDの例を示す図。
【図17】第3の実施形態のRFIDシステムの動作を説明するための図。
【図18】第3の実施形態のRFIDシステムにおいて放射板の幅と無線タグの受信電力との関係を示すグラフを表す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態のアンテナ装置、およびこのアンテナ装置を含むRFIDシステムについて説明する。以下の説明、および以下の説明で参照する図では、図1および図2で示した座標系と同一のものを使用し、無線タグまたは後述する標準ダイポールアンテナがX軸(第1軸)、Y軸(第2軸)、Z軸(第3軸)に平行に配置された状態をそれぞれtagX, tagY, tagZと表記する。
【0017】
(1−1)アンテナ装置の構成とRFIDシステム
先ず図4および図5を参照して本実施形態のアンテナ装置の構成と、RFIDシステムとについて説明する。図4は、本実施形態のRFIDシステムの概要を示す図である。図4には、図1および図2に示した座標軸と同一のものが示されている。図5は本実施形態のアンテナ装置のシート状アンテナの構成について示す図であり、(a)はシート状アンテナの平面図、(b)は当該平面図のX−X’ラインの断面図を示す。
【0018】
図4に示すように、このRFIDシステムは、アンテナ装置1と、アンテナ装置1と同軸ケーブル110を介して接続されるリーダライタ30とを含む。アンテナ装置1は、シート状アンテナ10と、第1導体部としての放射板20と、通信インタフェース120と、終端部材130とを備える。
図示していないが、このRFIDシステムでは、リーダライタ30と通信を行う無線タグがアンテナ装置1の上方に配置される。このRFIDシステムでは、アンテナ装置1上に配置された物品に付着される無線タグとリーダライタ30がアンテナを介して非接触の通信を行うことで、リーダライタ30が無線タグのデータを読み取る。かかるRFIDシステムの用途としては例えば、棚の底面にアンテナ装置1を載置して棚に配列された物品(書籍、CD(Compact Disk)等)の在庫管理を行う場合等が挙げられる。
【0019】
図5(b)に示すように、アンテナ装置1のシート状アンテナ10は、平板状の導体層101(第1導体層)、導体層101上に設けられる誘電体102、および誘電体102上に設けられるメッシュ状の導体層103(第2導体層)を含む積層構造となっている。このシート状アンテナ10では、導体層101と、導体層101の上方において実質的に平行に誘電体102を介して離間して配置された導体層103とが伝送線路を構成している。導体層103はメッシュ状となっているため、部分的に設けられた非導体部から上方空間に漏れ電界が生ずるようになっている。シート状アンテナ10上に生ずる漏れ電界の領域の高さは、導体層103のメッシュパターン形状、誘電体102の厚さ、誘電体102の誘電率等のパラメータによって変動しうる。各パラメータは、実際の用途における無線タグの位置や受信性能に応じて適宜設定してよい。なお、図5(b)には図示していないが、導体層103上に保護層を設けてもよい。
【0020】
通信インタフェース120は例えば、シート状アンテナ10の一端に接続されるSMAコネクタを含み、リーダライタ30からの高周波信号をシート状アンテナ10へ伝達するとともに、シート状アンテナ10で受信した高周波信号をリーダライタ30へ伝達する。
終端部材130は、シート状アンテナ10の他端(通信インタフェース120と反対側の端)に設けられ、シート状アンテナ10の一端から進行する電磁波を吸収する役割を備える。終端部材130は、例えば導体板と抵抗とを組み合わせた構成とすることができ、例えば導体板をメッシュ状の導体層103の上に載置するのみでもよい。
【0021】
放射板20は、図4および図5に示す例では、シート状アンテナ10上で所望の電界分布を形成するために設けられる導電性の矩形の板状部材である。放射板20はシート状アンテナ10に対して例えば接着剤によって貼り付けられる。放射板20は、シート状アンテナ10の導体層103と接触していなくてもよい。例えば導体層103上に保護層が設けられる場合には、放射板20はその保護層上に貼り付けられる。
【0022】
放射板20は、放射板20の上方に無線タグが図4に示す座標軸において実質的にY=0の位置にY軸と平行に配置される状態(tagYの配置状態)で設置される可能性がある場合に設けられる。仮に放射板20が無いとした場合には、前述したように、無線タグがY=0の位置にtagYの配置状態で置かれるときに、漏れ電界により無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向が2本のエレメントにおいて相反する方向となり、その電界の大きさが対称となる。そのため、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生じず無線タグが励起されない。そこで、本実施形態のアンテナ装置1では、無線タグがY=0の位置にtagYの配置状態で置かれうる状況下では、その無線タグの直下に放射板20が設置される。これによって、後述するように、シート状アンテナ10上において、放射板20が仮に無い場合とは異なる電界分布が形成されるため、無線タグをその配置状態に関わらず励起させることができる。
【0023】
図4および図5(a)に示すように、放射板20は好ましくは、矩形の長辺がY軸に平行となるように配置され、長辺の長さLが無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さとなっている。例えば、国内のRFIDシステムの使用周波数のうち953MHzでは、仮に導体層101と導体層103とが空気中で離間していた場合には約165mmとなる。本実施形態のように、誘電体102を含む場合には、誘電体102の誘電率にもよるが、約140〜170mmに設定するのが好ましい。
【0024】
(1−2)アンテナ装置1が生成する電界分布と放射板20上の無線タグの励起
次に、本実施形態のアンテナ装置1が生成する電界分布と、それによって生ずる放射板20上の無線タグの励起とについて、図6〜8を参照して説明する。図6は、本実施形態のアンテナ装置1上に生ずる漏れ電界の状態を示す図である。図7は、本実施形態のRFIDシステムにおいて、放射板20上の無線タグが各々の配置状態(tagX, tagY, tagZ)でアンテナ装置1から受ける電界の様子を表す図である。なお、図7において、無線タグでは、中央のICチップ(給電点)から両端に向けて延びるダイポールアンテナが示されている。図8は、放射板20の幅が広すぎる場合に、放射板20上の無線タグが各々の配置状態でアンテナ装置1から受ける電界の様子を表す図である。
【0025】
先ず図6を参照すると、本実施形態のアンテナ装置1では、シート状アンテナ10の導体層101と導体層103とが伝送線路を形成する。そのため、リーダライタ30から給電を受ける一端(通信インタフェース120が位置する端)から他端(終端部材130の位置する端)に向かって電磁波が進行する。すなわちX軸を+X方向に向かって電磁波が進行する。このとき、シート状アンテナ10の上層の導体層103には部分的に非導体部が設けられているため、シート状アンテナ10の上方に漏れ電界が生ずる。ここでシート状アンテナ10の最下層には平板状の導体層101が設けられているため、このアンテナ装置1では、メッシュ状の導電体層上で電磁波が進行する軸(X軸)と直交するY軸において相反する2方向、つまり+Y方向と−Y方向に漏れ電界が生ずる。そして、+Y方向と−Y方向に生ずる漏れ電界が全体として+X方向(電磁波の進行方向)に進行する。
【0026】
一方、本実施形態のアンテナ装置1において、放射板20上では、シート状アンテナ10からの漏れ電界のうち+Y方向と−Y方向の成分は遮断され、図6に示すように、+Y方向の電界が生ずる。なお、図6では、+Y方向に向かう放射状の複数の電気力線を代表して1本の太線で示してある。前述したように、放射板20は好ましくは、矩形の長辺がY軸に平行となるように配置され、長辺の長さが無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さとなっている。このときに、放射板20上によって生ずる電界強度が最大となるため、無線タグがアンテナ装置1からの電波を最も良好に受信することができる。
なお、放射板20の幅(X軸方向の長さ)が広すぎない場合には、放射板20は、シート状アンテナ10からの漏れ電界のうち+X方向または−X方向に向かう電界を遮断しない。すなわち、図6に示すように、+X方向または−X方向に向かう漏れ電界は、放射板20を跨ぐようにして生ずる。
【0027】
図6に示したように漏れ電界が生ずる状況下において、図7の(a)および(c)に示すように、放射板20上の無線タグがtagXおよびtagZの配置状態のときには、上述した漏れ電界は、放射板20を跨ぐようにして形成される。つまり、仮に放射板20が無い場合と同様の+X方向または−X方向に向かう漏れ電界が生ずる。そのため、無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向(つまり、電界の直線偏波の方向)が、2本のエレメント全体に亘って同一方向となる。これにより、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生ずる(ΔV>0)。つまり、放射板20上の無線タグは、漏れ電界により励起され、アンテナ装置1からの電波を受信することができる。
【0028】
一方、放射板20自体によって+Y方向に向かう電界が形成される。このとき、図7の(b)に示すように、放射板20上の無線タグがtagYの配置状態のときには、無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向が、2本のエレメント全体に亘って同一方向となる。これにより、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生ずる(ΔV>0)。つまり、放射板20上の無線タグは、放射板20によって生ずる電界により励起され、アンテナ装置1からの電波を受信することができる。
【0029】
上述したように、本実施形態のアンテナ装置1では、放射板20を設けたことで、放射板20上に配置される無線タグをその配置方向に関わらず励起させうる。しかしながら、放射板20の幅(X軸方向の長さ)が広すぎる場合には、+X方向または−X方向に向かう漏れ電界が放射板20によって遮断されてしまい、無線タグの配置方向によっては無線タグを励起させることができない。この点について以下説明する。
【0030】
先ず図8(b)を参照すると、放射板20上の無線タグがtagYの配置状態のときには、放射板20自体によって+Y方向に向かう電界が形成される。そのため、図7(b)と同様に、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生ずる(ΔV>0)。つまり、放射板20上の無線タグは、放射板20によって生ずる電界により励起され、アンテナ装置1からの電波を受信することができる。
一方、図8の(a)および(c)に示すように、放射板20上の無線タグがtagXおよびtagZの配置状態のときには、放射板20によって生ずる電界により無線タグのダイポールアンテナが受ける電界の振動方向が2本のエレメントにおいて同一方向となり、その電界の大きさが対称となる。なお、図8の(a)では、紙面上手前から奥に向かう矢印付きの線が示される。このとき、無線タグのダイポールアンテナの2本のエレメント間に電圧差が生じない(ΔV=0)。つまり、無線タグは、放射板20によって生ずる電界により励起されず、アンテナ装置1からの電波を受信することができない。
【0031】
(1−3)放射板20の幅寸法の決定方法
上述した議論から明らかなことは、放射板20上に配置される無線タグをその配置方向に関わらず、より確実に励起させるためには、放射板20の幅(X軸方向の長さ)を適切な範囲に設定することが好ましい、ということである。放射板20の幅を適切な範囲は、アンテナ装置1の漏れ電界のレベル、無線タグが配置される高さ、無線タグの最小動作電力等の複数のパラメータによって変動すると考えられ、画一的に設定することは困難である。そこで、変動しうる前提条件に応じた放射板20の幅寸法の好ましい決定方法について明確にするため、発明者は、幅が大きさが異なる複数の大きさの放射板20を用いた測定を行った。すなわち、各放射板20上に無線タグを模擬した標準ダイポールアンテナが配置され、標準ダイポールアンテナの受信電力(標準ダイポールアンテナで発生する電力)の測定が行われた。測定条件を以下に示す。
【0032】
[測定条件]
・シート状アンテナ:800mm(Y軸方向の長さ)×110mm(X軸方向の長さ)
・使用周波数:952〜954MHz
・標準ダイポールアンテナ:176mm(長さ)、φ2.5mm
・標準ダイポールアンテナの位置:放射板20から100mmの高さ
・放射板20:150mm(Y軸方向の長さ)、0〜60mm(X軸方向の長さ(幅:W))
【0033】
測定結果として、放射板20の幅(W)と標準ダイポールアンテナの受信電力との関係を示すグラフを図9に示す。なお、図9においてW=0は放射板20を設けなかった場合である。
図9に示すように、放射板20を設けない場合、または放射板20の幅(W)が狭い場合には、上述したとおり、標準ダイポールアンテナがtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力は大きいが、標準ダイポールアンテナがtagYの配置状態のときの受信電力小さい。そして、放射板20の幅(W)を広くしていった場合に、標準ダイポールアンテナがtagYの配置状態のときの受信電力は、放射板20によって生ずる電界を受けて受信電力は次第に増大していく。その一方で、標準ダイポールアンテナがtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力は、漏れ電界が放射板20上に生じなくなっていくにつれて低下していく。
すなわち、図9から、標準ダイポールアンテナがtagYの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅(W)に対して増加関数となり、標準ダイポールアンテナがtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅(W)に対して減少関数となることが分かる。
【0034】
標準ダイポールアンテナの配置状態に関わらず標準ダイポールアンテナの受信電力を所定の第1基準値以上とするための放射板20の幅は、図9の測定結果から自ずと定まる。例えば、その第1基準値を−25dBmに設定したとすれば、放射板20の幅(W)が7〜27mmの範囲にあるときに標準ダイポールアンテナの配置状態に関わらず標準ダイポールアンテナの受信電力が上記第1基準値以上となる。なお、上記測定条件では、標準ダイポールアンテナの位置を放射板20から100mmの高さとしたが、100mmよりも低い高さである場合には、標準ダイポールアンテナの配置状態に関わらず標準ダイポールアンテナの受信電力が上記第1基準値以上となるような放射板20の幅の範囲を広げることができる。
以上から、標準ダイポールアンテナを使用したときの放射板20の幅は、標準ダイポールアンテナがtagX, tagY, tagZの配置状態のときの受信電力が共に所定の第1基準値以上となるような長さに設定されていることが好ましいことが分かる。
【0035】
なお、図9において、標準ダイポールアンテナの配置状態に関わらず受信電力が同一であることが、さらに好ましい。この観点から、放射板20の幅は、標準ダイポールアンテナがtagYの配置状態のときの受信電力がtagXおよび/またはtagZの配置状態のときの受信電力と実質的に等しくなる長さ(図9では、7〜9mm程度)に設定することが、さらに好ましい。
【0036】
図9は、無線タグを模擬した標準ダイポールアンテナを用いた測定結果を示した一例ではあるが、以下の2点は、アンテナ装置1の漏れ電界のレベル、無線タグが配置される高さ、無線タグの最小動作電力等の複数のパラメータに関わらず、普遍的な傾向といえる。これは、無線タグと標準ダイポールアンテナがアンテナとしての動作原理が同一であることによる。
すなわち、
(A1)放射板20上に配置された無線タグがtagYの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅に対して増加関数となる。
(A2)無線タグがtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅に対して減少関数となる。
従って、上記(A1)および(A2)の知見に基づき、当業者であれば、使用される無線タグ、および適用されるRFIDシステムの適用に応じて、図9に例示したデータを取得することにより好ましい放射板20の幅を適宜設定することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のアンテナ装置1では、シート状アンテナ10上で所望の電界分布を形成する導電性の矩形の板状部材として放射板20が設けられる。そして、この放射板20の幅は、少なくとも放射板20上の所定の高さの位置にある無線タグのすべての配置状態における受信電力が所定の第1基準値以上となる長さに設定される。そのため、本実施形態のアンテナ装置1は、放射板20上に配置される無線タグをその配置状態に関わらず励起させることができる。また、さらに好ましくは、放射板20の幅は、無線タグがtagYの配置状態のときの受信電力がtagXまたはtagZの配置状態のときの受信電力と実質的に等しくなる長さに設定される。
【0038】
(1−4)変形例
なお、本実施形態では一例として、シート状アンテナ10の導体層103をメッシュ状のものとしたが、導体層103の形態はメッシュ状に限られない。導体層103の形態は、例えばストライプ状でもよい。導体層103に形成される非導体部の形態(層全体がメッシュ状の形態の場合には、矩形)は、菱形でもよいし、円形でもよい。いずれの形態にせよ、導体層103は、電磁波の進行方向(図6ではX軸の+X方向)と直交する軸(図6ではY軸)において相反する2方向に漏れ電界を生じさせるものであればよい。このような漏れ電界を生じさせる場合に、本実施形態のアンテナ装置1が特に有効となる。
【0039】
本実施形態のアンテナ装置1において、矩形の放射板20は、矩形の長辺がY軸に平行となるように配置された場合を示したが、これに限られない。図10に例示するように、放射板20は、矩形の長辺がY軸に対して平行でなくてもよい。図10に示す放射板20の配置の下では、放射板20が配置された向きに沿って電界(図示せず)が形成される。このときに生ずる電界のY軸方向の成分に対しては、図7(b)と同様の状況が当てはまる。
【0040】
また、放射板20の形態を矩形とした例について示したが、放射板20の形態は他の形態としてもよい。例えば、放射板20は、台形、扁平した六角形、扁平した楕円形など様々な形態を採りうる。つまり、より一般的に言えば、放射板20は所定領域を備え、その所定領域は、Y軸(電磁波の進行方向と直交する軸)の一方向に向かう電界を生じさせ、かつX軸((電磁波の進行方向の軸)に沿った方向の電界を遮断しない程度の領域が確保されていればよい。従って、Y軸が放射板20の所定領域とオーバーラップする第1長さ(図4の場合には、矩形の短辺の長さ)が、少なくとも放射板20上の所定の高さの位置にある無線タグのすべての配置状態における受信電力が所定の第1基準値以上となる長さに設定されていればよい。
【0041】
本実施形態のアンテナ装置1において、放射板20はシート状アンテナ10とは別個に設けられる部材である場合について説明したが、放射板20とシート状アンテナ10は一体であってもよい。より具体的には、図11に示すように、導体層103において図4に示した放射板20と等価な導体領域103a(第1導体部)を部分的に設けるようにしてもよい。但し、図11に例示する導体領域103aは、シート状アンテナ10の幅(Y軸方向の長さ)と一致した大きさとしているため、Y軸方向で使用周波数の半波長の長さが確保できず十分な電界強度を発生することができない場合が考えられる。その場合には、導体領域103aのY軸方向の長さを使用周波数の半波長の長さまで引き延ばしてもよい。
【0042】
(2)第2の実施形態
以下、第2の実施形態のアンテナ装置、およびこのアンテナ装置を含むRFIDシステムについて説明する。
前述したように、RFIDシステムの用途としては、棚の底面にアンテナ装置を載置して棚に配列された物品(書籍、CD等)の在庫管理を行う場合等では、複数の物品の各々に付着させた無線タグと通信を行うことができるようにすることが好ましい。かかる観点から、本実施形態のアンテナ装置は、複数の無線タグの各々を、各無線タグの配置状態に関わらず励起させることができるようにしたものである。
図12に、本実施形態のRFIDシステムの概要を示す。図12において、本実施形態のアンテナ装置2には、第1の実施形態の放射板20と等価な複数の放射板(放射板20−1〜20−3)が設けられる。複数の放射板20−1〜20−3の各々の上方に無線タグ(および無線タグが付着された物品)が配置される。これにより、本実施形態のRFIDシステムでは、図12に示すアンテナ装置2が複数の無線タグの各々を、各無線タグの配置状態に関わらず励起させることができるようになっている。
【0043】
本実施形態の複数の放射板(放射板20−1〜20−3)の各々については、第1の実施形態の放射板20の形態およびその電界の形成について同様の内容が当てはまるため、重複説明を行わない。
【0044】
ここで、本実施形態のアンテナ装置2において、隣接する放射板間の距離(図12に示すd;第1距離)を短く設定し過ぎると、シート状アンテナ10からの漏れ電界を複数の放射板が遮断してしまい通信性能に悪影響を与える。そこで、本実施形態のアンテナ装置2では、隣接する放射板間の距離dを適切な範囲に設定することが好ましい。
具体的には、放射板間の距離dは、放射板上の無線タグがtagX, tagY, tagZの配置状態のときの受信電力が共に所定の第1基準値(例えば、無線タグの最小動作電力)以上となる距離に設定されていることが好ましい。このような距離dは、適用されるRFIDシステムにおいて、アンテナ装置2の漏れ電界のレベル、無線タグが配置される高さ、無線タグの最小動作電力等の複数のパラメータによって変動し得るため、画一的に設定することは困難である。しかしながら、上記パラメータが固定されれば、概ね上記距離dの適切な範囲を、無線タグの受信電力を測定することにより決定することができる。例えば、第1の実施形態で示した測定条件の下では、d=10〜150mmであることが好ましい。
【0045】
なお、第1の実施形態で述べた変形例は、第2の実施形態にも当てはまる。例えば、図13に示すように、メッシュ状の導体層において図11に示した複数の放射板(放射板20−1〜20−3)と等価な導体領域103a−1〜103a−3を設けるようにしてもよい。
【0046】
(3)第3の実施形態
以下、第3の実施形態のアンテナ装置、およびこのアンテナ装置を含むRFIDシステムについて説明する。
上述した各実施形態のRFIDシステムにおいて、シート状アンテナ10上に放射板20を設けることで、無線タグの配置状態に関わらず無線タグを励起させることができることを説明してきた。しかしながら、物品に付着するときのレイアウト条件によって無線タグが小型化され、そのような無線タグでは十分なアンテナゲインが得られない場合がある。すなわち、シート状アンテナ10の漏れ電界および放射板20によって生ずる電界のみでは無線タグを励起させるのに十分なエネルギーを得ることができない場合が有りえる。そのような場合には、無線タグが付着されている物品に、シート状アンテナ10の漏れ電界および放射板20が生ずる電界を増幅するためのブースターを設けることが好ましい。なお、ブースターについては、特開2009−280273号において、無線タグのアンテナと電磁結合する導体として記述されているので参照されたい。
【0047】
図14を参照して、ブースターを利用した本実施形態のRFIDシステムの概要を説明する。図14では一例として、無線タグが物品としてのCD(Compact Disk)に付着されている場合を示し、リーダライタ等は図示を省略している。図14において、シート状アンテナ10は、例えば物品としてのCDが配列される棚の底部に装着されることが想定されている。図14では、単一のCDケース50のみを示しているが、隣接するCDケース50の間の距離を適切な範囲に設定する限り、CDケース50は複数存在してもよい。複数のCDケース50が放射板20上に安定的に置かれるように、棚は各CDケース50を収容するための仕切り板(図示しない)で区画されていることが想定される。
【0048】
矩形の放射板20は、矩形の長辺がY軸に平行となるように配置される。ブースター51(第2導体部)は、例えば銅などの金属で成形された導体板であり、放射板20と実質的に平行となるように、つまりY軸と実質的に平行となるように配置される。このような配置によって、放射板20とブースター51との電磁結合によって放射板20によって生ずる電界を増幅させることができる。さらに、シート状アンテナ10の漏れ電界もブースター51によって増幅される。
なお、ここで「Y軸と実質的に平行」とは、ブースター51の形態が全体として概ねY軸と平行であればよく、ブースター51の形態の一部がY軸と平行でなくてもよい。例えば、図15に、ブースター51の形態の変形例を示す。図15に示すように、ブースター51は、(a)クランク状形態、(b)メアンダ状形態、(c)ジグザグ状形態、に形成してもよい。なお、図15の(a)は、図14に示すブースター51と同一形態である。
ブースター51の長さは使用周波数の半波長が好ましく、付着対象となる物品が十分に大きければ完全な矩形であるのがよい。しかしながら、付着対象となる物品の寸法が使用周波数の半波長よりも小さい場合には、図15に示すような形態を採ることで、使用周波数の半波長の長さが確保される。ブースター51が例えばクランク状形態を採る場合、好ましい寸法の一例は、d1=d2=10mm、d3=120mm、d4=2mmである。
【0049】
図16に、無線タグが貼り付けられたCD60を示す。
図16において、CD60に貼り付けられる無線タグ70は、CD60の読み取り面とは逆側の面(いわゆるレーベル面)において、内周側の中心穴部の周囲に、例えば接着剤等で貼り付けられる。無線タグ70では、円環状(ドーナツ状)の導体板71にスロット(溝)72を設けることでスロットアンテナが構成されている。スロット72は、ICチップ(給電部)から両側に延びており、全体として円弧状のメアンダ形状をなしている。ICチップは、導体板10内に埋め込まれている。
この例では、スロット72のメアンダ形状は、複数のV字形状部が円弧状に連結されて形成されている。メアンダ形状を構成するのにV字形を適用するのは、隣接するV字形状部のスロットの外側の導体を流れる電流の向きは逆であるものの、互いに逆向きの電流ベクトル方向が斜めとなり、逆向きの電流によって生ずる電磁波のキャンセル量を低減できるためである。
無線タグ70の導体板71は、CD60の内部の記録面金属部と平面視でオーバーラップするように2箇所の延長部71aが設けられた形態となっている。これにより、高周波帯において、無線タグ70の導体板71はCD60の記録面金属部と電磁結合するため、スロット72から十分に電波を放射させることができる。
なお、CDケース50内のCD60は、CDケース50の表面に沿って自由に回転可能になっているので、CD60に貼り付けられた無線タグ70は、tagY またはtagZのいずれの配置状態も採りうるが、tagXの配置状態は採り得ない。
【0050】
本実施形態のRFIDシステムの動作について、図17を参照して説明する。図17は、図14に対して、放射板20によって生ずる電界、ブースター51に励起される電界、無線タグ70の偏波方向(この場合は、Y軸に平行)を、矢印を含む線によって示した図である。
図17に示すように、放射板20上では、シート状アンテナ10からの漏れ電界のうち+Y方向と−Y方向の成分は遮断され、+Y方向の電界が生ずる。なお、図17では、+Y方向に向かう放射状の複数の電気力線を代表して1本の太線で示してある。一方、ブースター51は、放射板20と実質的に平行となるように配置されているため、放射板20とブースター51との電磁結合によって放射板20によって生ずる電界を増幅する。すなわち、図17に示すように、ブースター51に励起される電界が生ずるため、無線タグを励起させることができるようになる。
また、図17には図示していないが、放射板20上には放射板20を跨ぐようにして概ね+X方向または−X方向に向かう放射状の漏れ電界が生じており、この漏れ電界もブースター51によって増幅される。
よって、ブースター51をCDケース50に設けることで、アンテナゲインが小さい小型の無線タグ70がtagY またはtagZのいずれの配置状態になった場合でも、無線タグ70を励起させることができるようになる。
【0051】
発明者は、本実施形態のRFIDシステムに関し、様々な条件でリーダライタが無線タグと通信できるか否か(つまり、無線タグを読み取り可または不可)について電磁界シミュレータを用いた実験を行った。その結果を表1に示す。なお、表1では、ブースターのタイプとして、図15の(a)、(c)の形態のものをそれぞれタイプ(a)、タイプ(c)と記載してある。また、無線タグの受信電力Ptagに対し、無線タグが読み取り可または不可となる基準の電力を−17dBm(第2基準値)に設定した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1において、条件1〜3(無線タグの偏波方向がY軸)を参照すると、放射板の設定によって無線タグの受信電力Ptagが放射板20が無い場合と比較して10dB増加し、ブースターを設定することでさらに14dB増加し、読み取り可となったことが確認された。条件4〜6(無線タグの偏波方向がZ軸)を参照すると、放射板20の設定によって漏れ電界が減少し、条件4に対して条件5では、無線タグの受信電力Ptagの低下が確認されたが、ブースターの追加(条件6)によってPtagは大幅に改善された。なお、無線タグのいずれの偏波方向の場合でも、タイプ(a)とタイプ(c)のブースターの間に大きな優劣は確認されなかった。
【0054】
図18には、別の電磁界シミュレータの測定結果が示される。これは、タイプ(a)のブースターを用いたときの放射板20の幅(Y軸方向の長さ;W[mm])と無線タグ70の受信電力[dBm]との関係を示すグラフである。
この測定結果によれば概ね、図9を参照して説明した作用と同様の理由により、図9に示した標準ダイポールアンテナによる結果と同様の傾向が確認された。すなわち、無線タグ70がtagYの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅(W)に対して増加関数となり、無線タグ70がtagZの配置状態のときの受信電力は概ね、放射板20の幅(W)に対して減少関数となることが分かる。
【0055】
図18において、無線タグ70が読み取り可または不可となる基準の電力を−17dBmに設定した場合には、放射板20の幅(W)をW=10〜50mmに設定することで、無線タグ70の配置状態に関わらず無線タグ70を励起させることができるようになる。なお、前述したように、無線タグ70の配置状態(すなわち、CDケース50内のCD60の回転方向の位置)に関わらず受信電力が同一であるのがよい。この観点から、放射板20の幅は、無線タグ70がtagYの配置状態のときの受信電力がtagZの配置状態のときの受信電力と実質的に等しくなる長さ(図18では、13〜20mm程度)に設定することが、さらに好ましい。
【0056】
放射板20の幅の適切な範囲は、アンテナ装置1の漏れ電界のレベル、物品に応じて定まる無線タグが配置される高さ、無線タグの最小動作電力等の複数のパラメータによって変動しうることは前述したとおりである。例えば、DVD(Digital Video Disk)、BD(Blu-ray Disc)等の物品に対して設定される放射板20の幅の好ましい範囲は、CDに対して設定されるそれとは異なりうる。
【0057】
本発明の複数の実施例について詳細に説明したが、本発明のアンテナ装置、RFIDシステムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0058】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0059】
(付記1)
第1導体層と、
第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で前記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層と、
第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられる所定領域の第1導体部と、
を備え、
前記第2軸が第1導体部の所定領域とオーバーラップする第1長さは、第1導体部から所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力が共に第1基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
アンテナ装置。(1)
【0060】
(付記2)
前記第1導体部から前記所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および前記第3軸に平行に前記所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力をそれぞれ、第1電力、第2電力、および第3電力としたとき、
前記第1長さは、第2電力が第1電力および/または第3電力と実質的に等しくなる長さに設定されていることを特徴とする、
付記1に記載されたアンテナ装置。(2)
【0061】
(付記3)
前記第1導体部の所定領域には、前記所定の無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さが確保されていることを特徴とする、
付記1又は2に記載されたアンテナ装置。(3)
【0062】
(付記4)
前記第1導体部の所定領域は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなることを特徴とする、
付記1〜3のいずれかに記載されたアンテナ装置。(4)
【0063】
(付記5)
前記第1導体部が複数設けられ、各第1導体部は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなり、
隣接する第1導体部の間の第1距離は、第1導体部の各々から前記所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に前記所定の無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に前記第1基準値以上となる距離に設定されていることを特徴とする、
付記1に記載されたアンテナ装置。(5)
【0064】
(付記6)
リーダライタから供給される電力によって電磁波を放射するアンテナ装置と、アンテナ装置上に配置される物品に付着された無線タグとの間で通信を行うRFIDシステムであって、
前記アンテナ装置は、
第1導体層と、
第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で前記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層と、
第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられ、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなる所定領域の第1導体部と、を備え、
第1導体部の前記短辺の長さは、前記第1導体部から所定高さの位置において前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に第2基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
RFIDシステム。(6)
【0065】
(付記7)
前記第1導体部から前記所定高さの位置における前記第2軸、および前記第3軸に平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力をそれぞれ、第2電力および第3電力としたとき、
前記第1長さは、第2電力が第3電力と実質的に等しくなるような長さに設定されていることを特徴とする、
付記6に記載されたRFIDシステム。
【0066】
(付記8)
前記第1導体部の所定領域には、前記無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さが確保されていることを特徴とする、
付記6又は7に記載されたRFIDシステム。
【0067】
(付記9)
前記第1導体部が複数設けられ、各第1導体部は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなり、
隣接する第1導体部の間の第1距離は、第1導体部から所定高さの位置において前記第2軸、および前記第3軸のそれぞれに平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に前記第2基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
付記6に記載されたRFIDシステム。
【0068】
(付記10)
前記物品には、前記第2軸と実質的に平行に延びる第2導体部が設けられていることを特徴とする、
付記6〜9のいずれかに記載されたRFIDシステム。(7)
【0069】
(付記11)
前記第2導体部は、前記アンテナ装置と前記無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さの導体板であることを特徴とする、
付記10に記載されたRFIDシステム。
【符号の説明】
【0070】
1,2…アンテナ装置
10…シート状アンテナ
101…導体層
102…誘電体
103…導体層
20…放射板
30…リーダライタ
50…CDケース
51…ブースター
60…CD
70…無線タグ
110…同軸ケーブル
120…通信インタフェース
130…終端部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体層と、
第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で前記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層と、
第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられる所定領域の第1導体部と、
を備え、
前記第2軸が第1導体部の所定領域とオーバーラップする第1長さは、第1導体部から所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力が共に第1基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1導体部から前記所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および前記第3軸に平行に前記所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力をそれぞれ、第1電力、第2電力、および第3電力としたとき、
前記第1長さは、第2電力が第1電力および/または第3電力と実質的に等しくなる長さに設定されていることを特徴とする、
請求項1に記載されたアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1導体部の所定領域には、前記所定の無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さが確保されていることを特徴とする、
請求項1又は2に記載されたアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1導体部の所定領域は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載されたアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1導体部が複数設けられ、各第1導体部は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなり、
隣接する第1導体部の間の第1距離は、第1導体部の各々から前記所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および前記第3軸のそれぞれに平行に前記所定の無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に前記第1基準値以上となる距離に設定されていることを特徴とする、
請求項1に記載されたアンテナ装置。
【請求項6】
リーダライタから供給される電力によって電磁波を放射するアンテナ装置と、アンテナ装置上に配置される物品に付着された無線タグとの間で通信を行うRFIDシステムであって、
前記アンテナ装置は、
第1導体層と、
第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で前記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層と、
第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられ、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなる所定領域の第1導体部と、を備え、
第1導体部の前記短辺の長さは、前記第1導体部から所定高さの位置において前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に第2基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
RFIDシステム。
【請求項7】
前記物品には、前記第2軸と実質的に平行に延びる第2導体部が設けられていることを特徴とする、
請求項6に記載されたRFIDシステム。
【請求項1】
第1導体層と、
第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で前記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層と、
第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられる所定領域の第1導体部と、
を備え、
前記第2軸が第1導体部の所定領域とオーバーラップする第1長さは、第1導体部から所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力が共に第1基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1導体部から前記所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および前記第3軸に平行に前記所定の無線タグを配置したときの当該無線タグの受信電力をそれぞれ、第1電力、第2電力、および第3電力としたとき、
前記第1長さは、第2電力が第1電力および/または第3電力と実質的に等しくなる長さに設定されていることを特徴とする、
請求項1に記載されたアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1導体部の所定領域には、前記所定の無線タグとの間で使用する周波数の半波長に相当する長さが確保されていることを特徴とする、
請求項1又は2に記載されたアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1導体部の所定領域は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載されたアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1導体部が複数設けられ、各第1導体部は、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなり、
隣接する第1導体部の間の第1距離は、第1導体部の各々から前記所定高さの位置において前記第1軸、前記第2軸、および前記第3軸のそれぞれに平行に前記所定の無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に前記第1基準値以上となる距離に設定されていることを特徴とする、
請求項1に記載されたアンテナ装置。
【請求項6】
リーダライタから供給される電力によって電磁波を放射するアンテナ装置と、アンテナ装置上に配置される物品に付着された無線タグとの間で通信を行うRFIDシステムであって、
前記アンテナ装置は、
第1導体層と、
第1導体層の上方において第1導体層と実質的に平行に離間して配置され、第1軸に平行に進行する電磁波を生じさせる第2導体層であって、非導体部が部分的に設けられており、それによって上方空間に漏れ電界を生じさせ、当該漏れ電界が少なくとも部分的に、第2導体層の平面上で前記第1軸と直交する第2軸において相反する2方向に生じる第2導体層と、
第2導体層に、又は第2導体層上に別個に設けられ、前記第1軸に平行な短辺と、前記第2軸に平行な長辺とからなる所定領域の第1導体部と、を備え、
第1導体部の前記短辺の長さは、前記第1導体部から所定高さの位置において前記第2軸、および第2導体層の平面に垂直な第3軸のそれぞれに平行に前記無線タグを配置したときの無線タグの受信電力が共に第2基準値以上となる長さに設定されていることを特徴とする、
RFIDシステム。
【請求項7】
前記物品には、前記第2軸と実質的に平行に延びる第2導体部が設けられていることを特徴とする、
請求項6に記載されたRFIDシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−23515(P2012−23515A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159324(P2010−159324)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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