説明

アンテナ装置の取付構造

【課題】小型の取付具を用いてアンテナ装置を取付ける場合にも、所定の方向にアンテナ装置の取付角度を微調節することが可能でかつ強固な取付強度が確保できるアンテナ装置の取付構造を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、アーム11とアーム支持部材18Lとを含み、取付具は、アーム取付部27を含む。アーム取付部27は、基準となる第1基準穴P01と、取付角度に応じて設けられた複数の第1貫通穴P10〜P18とを有する。アーム支持部材18Lは、基準となる第2基準穴Q01と、取付け角度に応じて設けられた複数の第2貫通穴Q10〜Q14とを有する。第1貫通穴P10〜P18は、同一直線上に重ならずずらして設けられる。第1基準穴P01および第2基準穴Q01には、ボルト41aが挿通され、複数の第1貫通穴P10〜P18および複数の第2貫通穴Q10〜Q14から取付角度に応じて選択された各1つの貫通穴にボルト43aが挿通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に取付角度が調節可能となるようにアンテナ装置を取付具を用いて被取付対象物に取付けるアンテナ装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、アンテナ装置は、被取付対象物としてのマスト等に取付けられる。指向性を有するアンテナ装置にあっては、効率的に電波の送信または受信が可能となるように、所定の方向にアンテナ装置の向きが調節されて設置されることが好ましい。特に、仰角の調節は、アンテナ装置を被取付対象物に取付けるための取付具を用いて行なわれることが一般的である。
【0003】
取付具を用いてアンテナ装置の仰角の調節が可能に構成されたアンテナ装置の取付構造が開示された文献としては、たとえば特開平11−68429号公報(特許文献1)や特開2006−311410号公報(特許文献2)、特開2003−46310号公報(特許文献3)等がある。
【0004】
これら特許文献1ないし3に開示のアンテナ装置の取付構造にあっては、マスト等に固定される取付具にアンテナ装置の取付部が取付けられる被取付部が設けられ、アンテナ装置の取付部および取付具の被取付部のそれぞれに取付角度の調節のための基準となる基準穴が設けられ、またアンテナ装置の取付部および取付具の被取付部のいずれか一方に貫通穴が設けられるとともに他方に上記基準穴を中心とする円弧状の貫通穴が設けられる。そして、上記一対の基準穴にボルトおよびナット等からなる第1締結手段が挿通されて被取付部に対して取付部が回転可能となるように組付けられ、上記一対の貫通穴にボルトおよびナット等からなる第2締結手段が挿通されて上述した円弧状の貫通穴に沿って第2締結手段が移動可能となるように組付けられる。その上で、被取付部に対する取付部の取付角度が調節され、当該取付角度の調節後に第1締結手段および第2締結手段を締結することで、アンテナ装置の仰角の調節が行なわれるように構成されている。
【0005】
また、別のアンテナ装置の取付構造にあっては、上記特許文献1ないし3に開示の如くのアンテナ装置の取付構造において、取付部および被取付部の他方に設けられた円弧状の貫通穴に代えて、上述した基準穴を中心とする仮想円の円周上に位置するように複数の貫通穴(ドット穴)が設けられる。そして、上記一対の基準穴に第1締結手段が挿通されて被取付部に対して取付部が回転可能となるように組付けられ、その上で取付部および被取付部の他方に設けられた複数の貫通穴(ドット穴)のうちからアンテナ装置の取付角度に応じて選択された貫通穴と取付部および被取付部の一方に設けられた貫通穴とが合致させられ、この状態でこれら貫通穴に第2締結手段が挿通されて締結され、さらに第1締結手段が締結されることで、アンテナ装置の仰角の調節が行なわれるように構成されている。
【0006】
ところで、近年においては、指向性を有するアンテナ装置を複数組み合わせて構成された合成アンテナ装置が普及しつつある。当該合成アンテナ装置は、指向性を有するアンテナ装置を平面的または立体的に組み合わせることで送信エリアまたは受信可能方向を拡張させたものであり、たとえば地上デジタルテレビジョン放送用のUHF(Ultra High Frequency)テレビジョン電波の送信または受信に好適に利用される。なお、当該合成アンテナ装置が開示された文献としては、たとえば特開2000−269736号公報(特許文献4)や特開2007−174505号公報(特許文献5)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−68429号公報
【特許文献2】特開2006−311410号公報
【特許文献3】特開2003−46310号公報
【特許文献4】特開2000−269736号公報
【特許文献5】特開2007−174505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献5には、いわゆる鉛直スタック型合成アンテナ装置が開示されている。当該鉛直スタック型合成アンテナ装置は、一対のアンテナ装置の放射器を鉛直方向にスタックさせつつ、それぞれのアンテナ装置の送信方向または受信方向が水平面内において相互に異なる方向に配置されるように構成してなるものである。この鉛直スタック型合成アンテナ装置は、他の配置レイアウトが採用された合成アンテナ装置に比べ、送信用のアンテナ装置として利用された場合には、特に送信地域(サービスエリア)における電界強度分布に偏差が生じ難い点で有利となり、受信用のアンテナ装置として利用された場合には、特に受信する電波に位相差が生じない点で有利となる。
【0009】
上述した鉛直スタック型合成アンテナ装置においては、水平方向における指向性(以下、水平面指向性と称する)が単体アンテナ装置に比べて改善される効果が得られるものの、鉛直方向における指向性(以下、垂直面指向性と称する)が単体アンテナ装置に比べて強くなる傾向にある。垂直面指向性が強くなることに伴い、鉛直スタック型合成アンテナ装置においては、一対のアンテナ装置の仰角の調節をそれぞれより厳格に精緻に行なう必要が生じる。ここで、鉛直スタック型合成アンテナ装置において、当該合成アンテナ装置に具備される一対のアンテナ装置の仰角の調節が必要となる最小の角度は、概ね1°〜3°程度である。
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1ないし3に開示の如くのアンテナ装置の取付構造を鉛直スタック型合成アンテナ装置に具備される一対のアンテナ装置の取付構造のそれぞれに適用した場合には、理論上は仰角の微調節が可能にはなるものの、実際には上述した1°〜3°といった精緻な角度調節を行なうことが極めて困難になる。これは、アンテナ装置が比較的重量物であることに起因し、所望の角度に調節した後に当該角度を維持しつつアンテナ装置を取付具に固定することが容易ではないためである。そのため、実際の作業においては、取付角度に数°程度の狂いが生じてしまうことがあり、仰角の精緻な調節が非常に困難になる。また、当該アンテナ装置の取付構造を採用した場合には、上述した第2締結手段に僅かでも緩みが生じた場合にアンテナ装置の自重によって第2締結手段が円弧状の貫通穴内を移動してしまうおそれがあり、アンテナ装置の仰角に変動が生じてしまう懸念もある。したがって、鉛直スタック型合成アンテナ装置に具備される一対のアンテナ装置の取付構造としては、上述した円弧状の穴に代えて複数の貫通穴(ドット穴)が採用された後者のアンテナ装置の取付構造が採用されることが好ましいと言える。
【0011】
ところが、上述した後者のアンテナ装置の取付構造を鉛直スタック型合成アンテナ装置に具備される一対のアンテナ装置のそれぞれに適用した場合には、複数の貫通穴(ドット穴)から選択された1つの貫通穴に第2締結手段が挿通されることにより、より強固に取付強度が確保される反面、その仰角の調節が可能となる最小の角度が概ね5°〜10°程度となってしまい、仰角の微調節が行なえない問題が生じてしまう。これは、上述した仮想円の円周上に配置される複数の貫通穴(ドット穴)を1°〜3°といった微小な角度毎に穿設することとした場合には、これら複数の貫通穴(ドット穴)同士が繋がってしまうためである。したがって、これら複数の貫通穴(ドット穴)同士が繋がらないようにするためには、複数の貫通穴(ドット穴)が設けられる仮想円の半径を大幅に大きくする必要があり、取付具自体が大型化してしまう問題が生じる。したがって、後者のアンテナ装置の取付構造を採用する場合にも、そのままでは仰角の微調節は行なえない。
【0012】
なお、上述したアンテナ装置の仰角の微調節の要求は、上記において例示した鉛直スタック型合成アンテナ装置に限られるものではなく、他の配置レイアウトの合成アンテナ装置や単体アンテナ装置等においても要求される場合がある。
【0013】
したがって、本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、小型の取付具を用いてアンテナ装置を被取付対象物へ取付ける場合にも、所定の方向にアンテナ装置の取付角度を微調節することが可能であり、かつ強固な取付強度が確保できるアンテナ装置の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づくアンテナ装置の取付構造は、所定の方向に取付角度が調節可能となるようにアンテナ装置を取付具を用いて被取付対象物に取付けるものである。上記アンテナ装置は、当該アンテナ装置を上記取付具に取付けるための取付部と、電波を送信または受信するためのアンテナ素子とを含んでいる。上記取付具は、当該取付具を上記被取付対象物に固定するための固定部と、上記取付部が取付けられる被取付部と、当該被取付部に上記取付部を取付けるための第1締結手段および第2締結手段とを含んでいる。上記被取付部は、上記取付部の取付角度の調節の基準となる第1基準穴と、上記取付部の取付角度に応じて設けられた複数の第1貫通穴とを有している。上記取付部は、当該取付部の取付角度の調節のための基準となる第2基準穴と、上記複数の第1貫通穴のそれぞれに対応付けて設けられた複数の第2貫通穴とを有している。ここで、上記複数の第1貫通穴は、当該複数の第1貫通穴のそれぞれと上記第1基準穴とを結ぶ線分が同一直線上に重ならずかつ当該複数の第1貫通穴のそれぞれと上記第1基準穴との間の距離が異なるものを含むように上記被取付部に穿設されている。一方、上記複数の第2貫通穴は、当該複数の第2貫通穴のそれぞれと上記第2基準穴とを結ぶ線分が同一直線上に重なるように上記取付部に穿設されている。そして、本アンテナ装置の取付構造においては、上記第1基準穴および上記第2基準穴を合致させ、これら合致させた基準穴に上記第1締結手段を挿通させるとともに、上記複数の第1貫通穴および上記複数の第2貫通穴のそれぞれから上記取付部の取付角度に応じて選択された各1つの貫通穴を合致させ、これら合致させた貫通穴に上記第2締結手段を挿通させ、上記第1締結手段および上記第2締結手段をそれぞれ締結することにより、上記取付部の取付角度が調節されて当該取付部が上記被取付部に取付けられ、これにより所定の方向にアンテナ装置の取付角度が調節可能とされている。
【0015】
上記本発明に基づくアンテナ装置の取付構造にあっては、上記複数の第1貫通穴のそれぞれと上記複数の第2貫通穴のそれぞれとが、一対一で対応していてもよく、その場合には、上記複数の第1貫通穴が、当該複数の第1貫通穴のそれぞれと上記第1基準穴との間の距離が相互に異なるように上記被取付部に穿設されることになる。
【0016】
上記本発明に基づくアンテナ装置の取付構造にあっては、上記複数の第1貫通穴のそれぞれと上記複数の第2貫通穴のそれぞれとが、複数対一で対応していてもよく、その場合には、上記複数の第1貫通穴が、当該複数の第1貫通穴のそれぞれと上記第1基準穴との間の距離が等しいものが含まれるように上記被取付部に穿設されることになる。
【0017】
上記本発明に基づくアンテナ装置の取付構造にあっては、上記アンテナ装置が、上記アンテナ素子を支持する棒状のアームを含んでいることが好ましく、その場合には、上記取付部が、上記アームの一端部にて構成されていてもよい。この場合、上記第2基準穴および上記複数の第2貫通穴は、上記アームの延びる方向に沿って一列に配置されることになる。
【0018】
上記本発明に基づくアンテナ装置の取付構造にあっては、上記アンテナ装置が、上記アンテナ素子を支持する棒状のアームと、上記アームの一端部に組付けられ、上記アームの延びる方向に沿って延在するアーム支持部材とを含んでいることが好ましく、その場合には、上記取付部が、上記アーム支持部材にて構成されていてもよい。この場合、上記第2基準穴および上記複数の第2貫通穴が、上記アーム支持部材に設けられ、上記アームの延びる方向に沿って一列に配置されることになる。また、その場合には、上記アーム支持部材を上記アームの上記一端部に取付けるために設けられた上記アームの取付穴が、上記アームの軸周りに90°ずれた位置に設けられていることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づくアンテナ装置の取付構造にあっては、調節される上記アンテナ装置の取付角度が、仰角であってもよい。
【0020】
上記本発明に基づくアンテナ装置の取付構造にあっては、上記アンテナ装置を一対備えていてもよい。その場合には、上記取付具が、上記被取付部を一対有していることが好ましく、上記一対のアンテナ装置のそれぞれが、互いに異なる方向に沿って送信方向または受信方向を有するように上記一対の被取付部のそれぞれに取付けられていることが好ましい。このように構成することにより、上記一対のアンテナ装置によって合成アンテナ装置が構成可能となる。
【0021】
上記本発明に基づくアンテナ装置の取付構造にあっては、調節される上記一対のアンテナ装置の取付角度が、いずれも仰角であってもよい。ここで、上記一対のアンテナ装置のそれぞれは、上記アンテナ素子としての放射器を含んでおり、これら一対の放射器が、鉛直方向にスタックされることにより、上記一対のアンテナ装置によって鉛直スタック型合成アンテナ装置が構成可能になる。
【0022】
上記本発明に基づくアンテナ装置の取付構造にあっては、上記アンテナ装置が、UHF帯の電波を送信または受信するリングアンテナ装置であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小型の取付具を用いてアンテナ装置を被取付対象物へ取付ける場合にも、所定の方向にアンテナ装置の取付角度を微調節することが可能であり、かつ強固な取付強度が確保できるアンテナ装置の取付構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用して水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置を構成した場合の斜視図である。
【図2】図1に示す合成アンテナ装置の上面図である。
【図3】図1に示す合成アンテナ装置の正面図である。
【図4】図1に示す合成アンテナ装置の側面図である。
【図5】図1ないし図4に示す合成アンテナ装置に具備される下部側アンテナ装置および上部側アンテナ装置の斜視図である。
【図6】図1に示す合成アンテナ装置の水平面指向性パターンを示すグラフである。
【図7】図1に示す合成アンテナ装置の垂直面指向性パターンを示すグラフである。
【図8】図1に示す合成アンテナ装置の分解斜視図である。
【図9】図1に示す合成アンテナ装置の下部側支持部のアーム取付部の正面図である。
【図10】図1に示す合成アンテナ装置の下部側アンテナ装置の下部側アーム支持部材の正面図である。
【図11】図1に示す合成アンテナ装置の要部拡大分解斜視図である。
【図12】図1に示す合成アンテナ装置において、下部側アンテナ装置の仰角が±0°となるように取付けられた場合のアーム取付部近傍の正面図である。
【図13】図1に示す合成アンテナ装置において、下部側アンテナ装置の仰角が+2°、+4°、+6°、+8°となるように取付けられた場合のアーム取付部近傍の正面図である。
【図14】図1に示す合成アンテナ装置において、下部側アンテナ装置の仰角が−2°、−4°、−6°、−8°となるように取付けられた場合のアーム取付部近傍の正面図である。
【図15】図1に示す合成アンテナ装置において、下部側アンテナ装置の仰角を変更する場合の操作手順を示す模式図である。
【図16】本発明の実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用して垂直偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置を構成した場合の斜視図である。
【図17】図16に示す合成アンテナ装置の上面図である。
【図18】図16に示す合成アンテナ装置の正面図である。
【図19】図16に示す合成アンテナ装置の側面図である。
【図20】図16に示す合成アンテナ装置の水平面指向性パターンを示すグラフである。
【図21】図16に示す合成アンテナ装置の垂直面指向性パターンを示すグラフである。
【図22】図16に示す合成アンテナ装置の分解斜視図である。
【図23】図16に示す合成アンテナ装置の要部拡大分解斜視図である。
【図24】本発明の実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造の他の例を採用した場合の要部拡大分解斜視図である。
【図25】本発明の実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造のさらに他の例を採用した場合の要部拡大分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す一実施の形態は、地上デジタルテレビジョン放送用のUHFテレビジョン電波を送信する鉛直スタック型合成アンテナ装置に本発明を適用した場合を例示するものである。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用して水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Aを構成した場合の斜視図である。図2は、図1に示す合成アンテナ装置1Aの上面図であり、図3は、図2中に示す矢印III方向から見た正面図、図4は、図2中に示す矢印IV方向から見た側面図である。図5は、図1ないし図4に示す合成アンテナ装置1Aに具備される下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uの斜視図である。
【0027】
図1ないし図4に示すように、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用して水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Aを構成した場合には、当該合成アンテナ装置1Aは、下部側アンテナ装置10Lと、上部側アンテナ装置10Uと、取付具20Aとを主として備えることになる。
【0028】
図5に示すように、下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uは、いずれもリングアンテナ装置によって構成されており、棒状の部材からなるアーム11と、アンテナ素子としての放射器12、反射器13および2つの導波器14とを有している。
【0029】
アーム11は、上述した放射器12、反射器13および2つの導波器14等を支持するための部材である。当該取付部の一部を構成するアーム11の一端部には、アーム11を径方向に貫通するように取付穴11a,11bが設けられている。これら取付穴11a,11bは、アーム11の軸周りに90°ずれた位置に一対ずつ設けられている。
【0030】
放射器12は、電波を送信するための部位であり、一対のリング状の放射素子12a,12bを含んでいる。放射素子12a,12bは、送信する電波の中心波長λの約4分の1の距離(すなわちλ/4)を隔ててアーム11の延在方向の略中央部に組付けられている。放射素子12a,12bのそれぞれの周囲長は、たとえば送信する電波の中心波長λとほぼ同じ長さとされる。ここで、周囲長が送信する電波の中心波長と同じ長さのリング状の放射素子は、半波長ダイポールアンテナを2個並べた構造に近似できるため、1つの半波長ダイポールアンテナよりも利得等の特性にて優れたものとなる。
【0031】
放射器12は、上述した放射素子12a,12bに加え、絶縁部15a,15bと、平行線路16a,16bと、T整合器17とを含んでいる。絶縁部15a,15bは、アーム11と放射素子12a,12bとを絶縁して接続するための部位であり、絶縁部15bの内部には、バラン(たとえばUバラン)が設けられている。当該バランは、インピーダンスの異なる放射器12と図示しない同軸ケーブルとを接続する際の損失を防ぐためのものである。平行線路16a,16bは、それぞれ導電線にて構成され、放射素子12a,12bに同相給電するためのものである。また、T整合器17は、平行線路16a,16bのインピーダンスに対する放射素子12bの整合を行なうためのものである。
【0032】
反射器13は、送信する電波を反射する機能を有しており、たとえば放射素子12a,12bよりも僅かに大きい周囲長を有する1つのリング状の素子にて構成されている。反射器13は、放射素子12bが配置された位置よりも、上記取付部の一部を構成するアーム11の上記一端部側に配置されている。反射器13は、放射素子12bからたとえばλ/4の距離を隔ててアーム11に組付けられている。
【0033】
2つの導波器14のそれぞれは、送信する電波を送信方向に導く機能を有しており、たとえば放射素子12a,12bよりも僅かに小さい周囲長を有する1つのリング状の素子にて構成されている。個々の導波器14は、放射素子12bが配置された位置よりも、上記取付部の一部を構成するアーム11の上記一端部側とは反対側の位置に配置されている。2つの導波器14は、放射素子12aからたとえばλ/4の距離を隔ててその1つ目がの導波器14が、また当該1つ目の導波器14からさらにたとえばλ/4の距離を隔てて2つ目の導波器14が、それぞれアーム11に組付けられている。
【0034】
また、下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uは、上述した構成に加え、それぞれ下部側アーム支持部材18Lおよび上部側アーム支持部材18U(図5においては不図示、図8等参照)を有している。下部側アーム支持部材18Lおよび上部側アーム支持部材18Uのそれぞれは、アーム11の延びる方向に沿って延在するたとえば断面略コの字状の金具からなり、取付具20Aに取付けられる取付部に相当する。下部側アーム支持部材18Lおよび上部側アーム支持部材18Uは、それぞれ下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uのアーム11の上記一端部に組付けられている。
【0035】
以上において説明した下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uにおいては、放射素子12a,12bの閉ループが構成された平面と直交する方向に電波の送信方向が規定され、放射器12から放射された電波が、反射器13および導波器14によって誘導されることで導波器14が位置する側の端部から前方側に向かって指向性をもって送信されることになる。
【0036】
図1ないし図4に示すように、上部側アンテナ装置10Uおよび下部側アンテナ装置10Lは、いずれも取付具20Aを介して被取付対象物としてのマスト100に取付けられている。
【0037】
取付具20Aは、ベース部21と、マスト取付部22と、一対の自在バンド23と、下部側アンテナ装置10Lを支持するための下部側支持部24Lと、上部側アンテナ装置10Uを支持するための上部側支持部24Uとを主として備えている。このうち、ベース部21、マスト取付部22および一対の自在バンド23が、マスト100に固定するための固定部に相当する。なお、取付具20Aは、たとえば鉄鋼やステンレス鋼等の金属製の部材からなる金具にて構成されている。
【0038】
ベース部21は、マスト100の表面に沿って配置されており、鉛直方向に沿って延びる平板状の部材からなる。マスト取付部22は、ベース部21の背面の上部および下部に一対設けられており、ベース部21の背面から後方に向けて突設されている。マスト取付部22は、断面略M字状の形状を有しており、その背部にマスト100を受け入れるための凹部が設けられ、その両側部に自在バンド23を挿通させるための開口部が設けられている。マスト取付部22は、その凹部がマスト100の表面に宛がわれており、その開口部に自在バンド23が挿通されている。自在バンド23は、ベース部21をマスト100に固定するための長尺帯状の締付け部材であり、上述したマスト取付部22に設けられた開口部に挿通された状態でマスト100に締付けられている。以上により、ベース部21は、マスト取付部22および自在バンド23によってマスト100に強固に固定されることになる。
【0039】
ベース部21の正面の下部には、上述した下部側支持部24Lが組付けられている。一方、ベース部21の正面の上部には、上述した上部側支持部24Uが組付けられている。下部側支持部24Lおよび上部側支持部24Uのそれぞれは、支持部材取付部25と、支持部材26と、アーム取付部27とを有している。
【0040】
支持部材取付部25は、支持部材26の一端部に設けられており、支持部材26をベース部21に固定するための部位である。支持部材26は、水平方向に沿ってベース部21から前方側に向かって直線状に延びることでアーム取付部27をベース部21から離間した位置に配置させるための支持部材である。アーム取付部27は、支持部材26の他端部に設けられており、上述した下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uのそれぞれに設けられた取付部を支持する部位であり、当該取付部が取付けられる被取付部に相当する。なお、支持部材取付部25、支持部材26およびアーム取付部27は、溶接等によって一体化されている。
【0041】
ここで、下部側支持部24Lに含まれる支持部材26と上部側支持部24Uに含まれる支持部材26とは、鉛直方向にずれた位置に配置されるとともに、水平面内においてそれぞれ異なる方向に向かって延びている。これにより、下部側支持部24Lに含まれるアーム取付部27と上部側支持部24Uに含まれるアーム取付部27とは、鉛直方向と水平方向の両方にずれた位置に配置されることになる。なお、図2に示すように、本実施の形態においては、下部側支持部24Lに含まれる支持部材26と上部側支持部24Uに含まれる支持部材26とが水平面内において90°の角度をもって配置されている。
【0042】
下部側支持部24Lのアーム取付部27には、下部側アンテナ装置10Lの取付部が取付けられており、下部側アンテナ装置10Lは、水平方向に沿ってマスト100の前方側に向かって延びるように配置されている。ここで、下部側アンテナ装置10Lは、そのアーム11が下部側支持部24Lの支持部材26と水平面内において90°の角度をもって交差するように配置されている。
【0043】
一方、上部側支持部24Uのアーム取付部27には、上部側アンテナ装置10Uの取付部が取付けられており、上部側アンテナ装置10Uは、水平方向に沿ってマスト100の前方側に向かって延びるように配置されている。ここで、上部側アンテナ装置10Uは、そのアーム11が上部側支持部24Uの支持部材26と水平面内において90°の角度をもって交差するように配置されている。
【0044】
したがって、下部側アンテナ装置10Lと上部側アンテナ装置10Uとは、立体的に交差するように配置されることになり、これら下部側アンテナ装置10Lの放射器12と上部側アンテナ装置10Uの放射器12とが、当該交差部分において鉛直方向(すなわち、図2ないし図4に示すZ軸方向)にスタックされて配置されることになる。なお、下部側アンテナ装置10Lと上部側アンテナ装置10Uとは、たとえば送信する電波の中心波長よりも大きい距離をもって配置される。以上により、水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Aが構成される。
【0045】
なお、図2に示すように、当該合成アンテナ装置1Aにおいては、下部側アンテナ装置10Lの電波の送信方向が図中矢印200Lで示す方向となり、上部側アンテナ装置10Uの電波の送信方向が図中矢印200Uで示す方向となる。そして、これら下部側アンテナ装置10Lから送信された電波と上部側アンテナ装置10Uから送信された電波とが合成されることで、当該合成アンテナ装置1Aの合成電波の送信方向は、図中矢印200で示す方向になる。
【0046】
図6は、上述した図1に示す合成アンテナ装置1Aの水平面指向性パターンを示すグラフであり、図7は、垂直面指向性パターンを示すグラフである。図6および図7においては、上述した下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uのいずれかの単体アンテナ装置を送信装置として使用した場合の指向性パターンについても参考として破線で示している。なお、当該図6および図7に示す指向性パターンは、いずれも送信電波の周波数を530MHzとした場合のものである。
【0047】
図6に示すように、上述した合成アンテナ装置1Aとした場合には、単体アンテナ装置にて送信装置を構成した場合に比べ、その水平面指向性パターンが実線にて示すように改善されて高い放射強度が得られる範囲が増加していることが分かる。すなわち、単体アンテナ装置にて送信装置を構成した場合には、半値幅が80°程度であるのに対し、上述した合成アンテナ装置1Aとした場合には、半値幅が120°〜150°程度に増加する。したがって、上述した合成アンテナ装置1Aとすることにより、より広い送信地域(サービスエリア)をカバーすることが可能になる。
【0048】
一方で、図7に示すように、上述した合成アンテナ装置1Aとした場合には、単体アンテナ装置にて送信装置を構成した場合に比べ、その垂直面指向性パターンが実線にて示すように変化して高い放射強度が得られる範囲が減少していることが分かる。したがって、上述した合成アンテナ装置1Aとした場合には、下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uの仰角をそれぞれ微調節できるようすることが必要である。そこで、上述した合成アンテナ装置1Aにおいては、以下に詳説する本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用することで、これを実現可能にしている。
【0049】
なお、上述した水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Aのより詳細な構成や特性については、本願出願人によって別途出願された特願2005−372252に開示されている。
【0050】
図8は、図1に示す合成アンテナ装置1Aの分解斜視図である。まず、この図8を参照して、上述した合成アンテナ装置1Aの取付構造の概略について説明する。
【0051】
図8に示すように、合成アンテナ装置1Aをマスト100に組付けるに際しては、まずマスト100にベース部21を自在バンド23を用いて強固に固定する。次いで、下部側支持部24Lおよび上部側支持部24Uをそれぞれ下部側ボルト・ワッシャ群30Lおよび上部側ボルト・ワッシャ群30Uを用いてベース部21に強固に組付ける。
【0052】
次に、下部側アンテナ装置10Lを下部側ボルト群40L1および下部側ワッシャ・ナット群40L2を用いて取付具20Aの下部側支持部24Lのアーム取付部27に組付けるとともに、上部側アンテナ装置10Uを上部側ボルト群40U1および上部側ワッシャ・ナット群40U2を用いて取付具20Aの上部側支持部24Uのアーム取付部27に組付ける。その際、下部側アンテナ装置10Lのアーム11の上記一端部と、取付具20Aの下部側支持部24Lのアーム取付部27との間に、上述した下部側アーム支持部材18Lが介在されるようにし、上部側アンテナ装置10Uのアーム11の上記一端部と、取付具20Aの上部側支持部24Uのアーム取付部27との間に、上述した上部側アーム支持部材18Uが介在されるようにする。
【0053】
図9は、図1に示す合成アンテナ装置1Aの下部側支持部24Lのアーム取付部27の正面図であり、図10は、図1に示す合成アンテナ装置1Aの下部側アンテナ装置10Lの下部側アーム支持部材18Lの正面図である。次に、これら図9および図10を参照して、取付具20Aの下部側支持部24Lのアーム取付部27の構造および下部側アンテナ装置10Lの下部側アーム支持部材18Lの構造について説明する。
【0054】
図9に示すように、取付具20Aの下部側支持部24Lのアーム取付部27は、平板部27aと、この平板部27aの上下方向に位置する両側端に設けられた立壁部27bとを有している。このうちの平板部27aの所定位置には、当該平板部27aを貫通するように複数の穴が設けられている。これら複数の穴は、下部側アンテナ装置10Lを支持するために、または/および下部側アンテナ装置10Lの仰角を調節するために設けられたものであり、基準穴P01と、仮固定穴P02と、補助固定穴P03と、複数の貫通穴P10〜P18とを含んでいる。
【0055】
基準穴P01は、下部側アンテナ装置10Lの取付部の取付角度を調節するための第1基準穴に相当するものであり、平板部27aの中心線C1上の所定位置に設けられている。仮固定穴P02は、下部側アンテナ装置10Lの取付部を案内するために使用される長穴であり、平板部27aの中心線C1と交差するように上記基準穴P01と所定の距離を隔てて設けられている。補助固定穴P03は、下部側アンテナ装置10Lを水平に取付ける場合にのみ使用されるフェールセーフとしてのボルトが挿通される穴であり、平板部27aの中心線C1上に位置するように上記基準穴P01と所定の距離を隔てて設けられている。複数の貫通穴P10〜P18は、下部側アンテナ装置10Lの取付部の取付角度に応じて設けられた複数の第1貫通穴に相当し、平板部27aの中心線C1上またはその周辺に所定のルールに従って設けられている。
【0056】
より詳細には、複数の貫通穴P10〜P18のうち、貫通穴P10は、下部側アンテナ装置10Lを水平に(すなわち仰角が±0°になるように)取付ける場合に使用される穴であり、平板部27aの中心線C1上に穿設されている。また、複数の貫通穴P10〜P18のうち、貫通穴P11〜P14は、下部側アンテナ装置10Lの仰角がそれぞれ+2°、+4°、+6°、+8°となるように取付ける場合に使用される穴であり、平板部27aの中心線C1よりも下方の領域に穿設されている。また、複数の貫通穴P10〜P18のうち、貫通穴P15〜P18は、下部側アンテナ装置10Lの仰角がそれぞれ−8°、−6°、−4°、−2°となるように取付ける場合に使用される穴であり、平板部27aの中心線C1よりも上方の領域に穿設されている。
【0057】
ここで、複数の貫通穴P10〜P18は、当該複数の貫通穴P10〜P18のそれぞれと上述した第1基準穴P01とを結ぶ線分が同一直線上に重なることのないように、それぞれ基準穴P01の中心点O1を回転中心としてその回転方向に隣り合う貫通穴と2°ずつずれた位置に設けられている。また、複数の貫通穴P10〜P14は、当該複数の貫通穴P10〜P14のそれぞれと上述した第1基準穴P01との間の距離r0〜r4が相互に異なることとなるように、平板部27aの中心線C1方向にずれた位置に設けられている。また、複数の貫通穴P15〜P18は、当該複数の貫通穴P15〜P18のそれぞれと上述した第1基準穴P01との間の距離r1〜r4が相互に異なることとなるように、平板部27aの中心線C1方向にずれた位置に設けられている。なお、貫通穴P11と貫通穴P15、貫通穴P12と貫通穴P16、貫通穴P13と貫通穴P17、および貫通穴P14と貫通穴P18は、それぞれ上記中心点O1を中心とする同一径の仮想円R1〜R4の円周上に設けられており、そのため、上述した距離r1〜r4が等しい長さとなっている。
【0058】
一方、図10に示すように、下部側アンテナ装置10Lの下部側アーム支持部材18Lは、平板部18aと、この平板部18aの上下方向に位置する両側端に設けられた立壁部18bとを有している。このうちの平板部18aの所定位置には、当該平板部18aを貫通するように複数の穴が設けられている。これら複数の穴は、下部側アンテナ装置10Lのアーム11を支持するとともに下部側アンテナ装置10Lの仰角を調節するために設けられたものであり、基準穴Q01と、仮固定穴Q02と、補助固定穴Q03と、複数の貫通穴Q10〜Q14とを含んでいる。
【0059】
基準穴Q01は、下部側アンテナ装置10Lの取付部の取付角度を調節するための第2基準穴に相当するものであり、平板部18aの中心線C2上の所定位置に設けられている。仮固定穴Q02は、下部側アンテナ装置10Lの取付部を案内するために使用される穴であり、平板部18aの中心線C2上に位置するように上記基準穴Q01と所定の距離を隔てて設けられている。補助固定穴Q03は、下部側アンテナ装置10Lを水平に取付ける場合にのみ使用されるフェールセーフとしてのボルトが挿通される穴であり、平板部18aの中心線C2上に位置するように上記基準穴Q01と所定の距離を隔てて設けられている。複数の貫通穴Q10〜Q14は、上述した下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた複数の貫通穴P10〜P18のそれぞれに対応付けて設けられた複数の第2貫通穴に相当し、平板部18aの中心線C2上に所定のルールに従って設けられている。
【0060】
より詳細には、複数の貫通穴Q10〜Q14のうち、貫通穴Q10は、下部側アンテナ装置10Lを水平に(すなわち仰角が±0°になるように)取付ける場合に使用される穴である。また、複数の貫通穴Q10〜Q14のうち、貫通穴Q11〜14は、下部側アンテナ装置10Lの仰角がそれぞれ+2°または−8°、+4°または−6°、+6°または−4°、+8°または−2°となるように取付ける場合に使用される穴である。
【0061】
ここで、複数の貫通穴Q10〜Q14は、当該複数の貫通穴Q10〜Q14のそれぞれと上述した第2基準穴Q01とを結ぶ線分が同一直線上に重なるように設けられており、これにより、上述したように複数の貫通穴Q10〜Q14が平板部18aの中心線C2上に設けられることになる。また、複数の貫通穴Q10〜Q14は、当該複数の貫通穴Q10〜Q14のそれぞれと上述した第2基準穴Q01との間の距離r0〜r4が相互に異なることとなるように、平板部18aの中心線C2方向にずれた位置に設けられている。なお、これら距離r0〜r4は、上述した取付具20Aの下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた複数の貫通穴P10〜P18のそれぞれと第1基準穴P01との間の距離r0〜r4に、複数対一で対応して合致している。
【0062】
図11は、図1に示す合成アンテナ装置1Aの要部拡大分解斜視図であり、図12は、図1に示す合成アンテナ装置1Aにおいて、下部側アンテナ装置10Lの仰角が±0°となるように取付けられた場合のアーム取付部27近傍の正面図である。また、図13は、図1に示す合成アンテナ装置1Aにおいて、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+2°、+4°、+6°、+8°となるように取付けられた場合のアーム取付部27近傍の正面図であり、図14は、図1に示す合成アンテナ装置1Aにおいて、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−2°、−4°、−6°、−8°となるように取付けられた場合のアーム取付部27近傍の正面図である。次に、これら図11ないし図14を参照して、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造について説明する。
【0063】
図11に示すように、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造においては、上述したように、下部側アーム支持部材18Lを介在させた状態で下部側支持部24Lのアーム取付部27に下部側アンテナ装置10Lのアーム11を宛がい、この状態で下部側ボルト群40L1および下部側ワッシャ・ナット群40L2を用いてこれらを強固に締結することで、下部側アンテナ装置10Lの取付具20Aに対する取付けが行なわれる。
【0064】
より詳細には、下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた第1基準穴P01と、下部側アーム支持部材18Lに設けられた第2基準穴Q01と、下部側アンテナ装置10Lのアーム11に設けられた一対の取付穴11aのうちの一方とを合致させ、これら合致させた第1基準穴P01、第2基準穴Q01および取付穴11aにボルト41aを挿通し、当該ボルト41aに押さえ具41cを介在させてナット41bを取付ける。このうちのボルト41aおよびナット41bが第1締結手段に相当する。これにより、第1基準穴P01および第2基準穴Q01を回転中心として、アーム11と下部側アーム支持部材18Lとが回転可能にアーム取付部27に取付けられることになる。
【0065】
また、下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた仮固定穴P02と、下部側アーム支持部材18Lに設けられた仮固定穴Q02と、下部側アンテナ装置10Lのアーム11に設けられた一対の取付穴11aのうちの他方とを合致させ、これら合致させた仮固定穴P02、仮固定穴Q02および取付穴11aにボルト42aを挿通し、当該ボルト42aに押さえ具42cを介在させてナット42bを取付ける。これにより、アーム11と下部側アーム支持部材18Lとが移動不能に固定される。ただし、仮固定穴P02は、長穴状に形成されているため、上述したアーム11と下部側アーム支持部材18Lとのアーム取付部27に対する回転が阻害されることはない。
【0066】
さらに、下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから下部側アンテナ装置10Lの仰角に応じて選択された1つの貫通穴と、下部側アーム支持部材18Lに設けられた複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから下部側アンテナ装置10Lの仰角に応じて選択された1つの貫通穴とを合致させ、これら合致させた第1貫通穴および第2貫通穴にボルト43aを挿通し、当該ボルト43aにワッシャ43cを介在させてナット43bを取付ける。このうちのボルト43aおよびナット43bが第2締結手段に相当する。これにより、アーム11と下部側アーム支持部材18Lとのアーム取付部27に対する取付角度が固定され、下部側アンテナ装置10Lの仰角が所定の角度に固定される。なお、図11においては、下部側アンテナ装置10Lの仰角が±0°となるように、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P10を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q10をそれぞれ選択した場合を例示的に示している。
【0067】
下部側アンテナ装置10Lの仰角が±0°となるように取付ける場合には、上記に加え、下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた補助固定穴P03と、下部側アーム支持部材18Lに設けられた補助固定穴Q03とを合致させ、これら合致させた補助固定穴P03および補助固定穴Q03にボルト44aを挿通し、当該ボルト44aにナット44bを取付ける。
【0068】
そして、第1締結手段および第2締結手段を含むこれら下部側ボルト群40L1および下部側ワッシャ・ナット群40L2をそれぞれ強固に締付けることにより、下部側アンテナ装置10Lの取付具20Aに対する取付けが行なわれ、同時に下部側アンテナ装置10Lの仰角が調節されることになる。
【0069】
図12に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が±0°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P10を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q10をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P10および貫通穴Q10を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが平行に配置されることになり、その結果、アーム11は水平に配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が±0°に維持されることになる。
【0070】
図13(A)に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+2°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P11を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q11をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P11および貫通穴Q11を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが+2°の角度をもって配置されることになり、その結果、アーム11は水平面に対して+2°の角度をもって配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+2°に維持されることになる。
【0071】
図13(B)に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+4°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P12を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q12をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P12および貫通穴Q12を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが+4°の角度をもって配置されることになり、その結果、アーム11は水平面に対して+4°の角度をもって配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+4°に維持されることになる。
【0072】
図13(C)に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+6°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P13を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q13をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P13および貫通穴Q13を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが+6°の角度をもって配置されることになり、その結果、アーム11は水平面に対して+6°の角度をもって配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+6°に維持されることになる。
【0073】
図13(D)に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+8°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P14を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q14をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P14および貫通穴Q14を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが+8°の角度をもって配置されることになり、その結果、アーム11は水平面に対して+8°の角度をもって配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が+8°に維持されることになる。
【0074】
図14(A)に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−2°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P18を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q14をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P18および貫通穴Q14を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが−2°の角度をもって配置されることになり、その結果、アーム11は水平面に対して−2°の角度をもって配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−2°に維持されることになる。
【0075】
図14(B)に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−4°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P17を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q13をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P17および貫通穴Q13を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが−4°の角度をもって配置されることになり、その結果、アーム11は水平面に対して−4°の角度をもって配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−4°に維持されることになる。
【0076】
図14(C)に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−6°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P16を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q12をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P16および貫通穴Q12を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが−6°の角度をもって配置されることになり、その結果、アーム11は水平面に対して−6°の角度をもって配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−6°に維持されることになる。
【0077】
図14(D)に示すように、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−8°となるように取付ける場合には、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P15を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q11をそれぞれ選択し、これら選択した貫通穴P15および貫通穴Q11を合致させてこれらにボルト43aを挿通させ、挿通させたボルト43aにナット43bを取付ける。これにより、アーム取付部27の中心線C1と下部側アーム支持部材18Lの中心線C2とが−8°の角度をもって配置されることになり、その結果、アーム11は水平面に対して−8°の角度をもって配置されることとなり、下部側アンテナ装置10Lの仰角が−8°に維持されることになる。
【0078】
なお、上記においては、下部側アンテナ装置10Lの取付具20Aの下部側支持部24Lに対する取付けについて詳細に説明したが、上部側アンテナ装置10Uの取付具20Aの上部側支持部24Uに対する取付けについても、その説明は省略するが同様の取付構造が採用されている。
【0079】
以上において説明したように、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用することにより、アンテナ装置の仰角の微調節が容易に行なえるようになる。これは、取付具の被取付部にアンテナ装置の仰角に応じて上述した如くのレイアウトにて複数の貫通穴を設けるとともに、アンテナ装置の取付部に上記被取付部に設けられた複数の貫通穴に応じて複数の貫通穴を設けたためであり、これにより上述した如くの2°刻み程度の微小な仰角の調節が行なえるようになる。したがって、上述した如くの鉛直スタック型合成アンテナ装置の如くの精緻な仰角の調節が必要になるアンテナ装置においても、容易に仰角の微調節が行なえることになる。
【0080】
また、上述した如くのレイアウトにて被取付部に複数の貫通穴を設けることにより、取付具が大型化することもない。加えて、被取付部に設けられる複数の貫通穴がいずれもドット穴にて構成されるため、アンテナ装置を確実に強固に取付具に取付けることができるとともに、仮に第2締結手段が僅かに緩んだ場合であってもアンテナ装置の仰角が即座に変動してしまうこともない。
【0081】
したがって、上述の如くのアンテナ装置の取付構造を採用することにより、小型の取付具を用いてアンテナ装置をマストへ取付ける場合にも、アンテナ装置の仰角を容易に微調節することが可能であり、かつ強固な取付強度が確保できるようになる。
【0082】
図15は、図1に示す合成アンテナ装置1Aにおいて、下部側アンテナ装置10Lの仰角を変更する場合の操作手順を示す模式図である。次に、図15を参照して、下部側アンテナ装置10Lの仰角を変更する場合の操作手順について説明する。なお、上部側アンテナ装置10Uの仰角を変更する場合も同様の操作手順で行なわれるため、その説明はここでは省略する。
【0083】
本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用した場合には、下部側アンテナ装置10Lの仰角を調節して取付けた後にこれを変更する場合にも、その操作が非常に容易である。具体的には、図15に示すように、まず下部側アンテナ装置10Lの仰角を決定していた第2締結手段としてのボルト43aおよびナット43bの締結を緩め、ワッシャ43cを含めてこれらを完全に取り外す。次に、第1締結手段としてのボルト41aおよびナット41bの締結を緩めるとともに、仮固定用のボルト42aおよびナット42bの締結も緩める。
【0084】
当該状態においては、第1締結手段としてのボルト41aおよびナット41bが完全には取り外されてはいないため、下部側アンテナ装置10Lがボルト41aが挿通された第1基準穴P01および第2基準穴Q01を回転中心に回転可能となり、下部側アンテナ装置10Lの仰角を任意に調節できる。その際、仮固定用のボルト42aおよびナット42bも完全には取り外されていないため、上述した長穴状の仮固定穴P02内をボルト42aが移動することで下部側アンテナ装置10Lの回転が案内されることになる。
【0085】
その後、所望の仰角に下部側アンテナ装置10Lを調節し、それにより合致することとなった貫通穴に再び第2締結手段としてのボルト43aを挿通し、当該ボルト43aにワッシャ43cを介在させてナット43bを取付ける。そして、第1締結手段としてのボルト41aおよびナット41b、仮固定用のボルト42aおよびナット42b、第2締結手段としてのボルト43aおよびナット43bをそれぞれ強固に締結し直す。以上により、容易に下部側アンテナ装置10Lの仰角の変更が行なえることになる。
【0086】
以上においては、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用して水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Aを構成した場合を例示して説明を行なったが、取付具20Aの下部側支持部24Lおよび上部側支持部24Uを交換することで、その他の構成は維持したままで垂直偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置を構成することもできる。以下においては、このように合成アンテナ装置を構成した場合について、図16ないし図23を参照して説明する。なお、水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Aを構成した場合と同様の部分については図中同一の符号を付し、その説明はここでは繰り返さない。
【0087】
図16は、本発明の実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用して垂直偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Bを構成した場合の斜視図である。図17は、図16に示す合成アンテナ装置1Bの上面図であり、図18は、図17中に示す矢印XVIII方向から見た正面図、図19は、図17中に示す矢印XIX方向から見た側面図である。
【0088】
図16ないし図19に示すように、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用して水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Bを構成した場合には、当該合成アンテナ装置1Bは、下部側アンテナ装置10Lと、上部側アンテナ装置10Uと、取付具20Bとを主として備えることになる。上述したように、取付具20Bは、上述した取付具20Aと下部側支持部24Lおよび上部側支持部24Uの構成においてのみ相違している。具体的には、取付具20Bの下部側支持部24Lの支持部材26が、取付具20Aのそれに比べて長く構成されており、取付具20Bの上部側支持部24Uの支持部材26が取付具20Aのそれに比べて短く構成されている。
【0089】
さらに、下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uが、アーム11の軸周りに90°回転させた状態で下部側支持部24Lおよび上部側支持部24Uのそれぞれに取付けられている。これにより、下部側アンテナ装置10Lと上部側アンテナ装置10Uとは、立体的に交差するように配置されることになり、これら下部側アンテナ装置10Lの放射器12と上部側アンテナ装置10Uの放射器12とが、当該交差部分において鉛直方向(すなわち、図17ないし図19に示すZ軸方向)にスタックされて配置されることになる。以上により、垂直偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Bが構成される。
【0090】
なお、図17に示すように、当該合成アンテナ装置1Bにおいては、下部側アンテナ装置10Lの電波の送信方向が図中矢印200Lで示す方向となり、上部側アンテナ装置10Uの電波の送信方向が図中矢印200Uで示す方向となる。そして、これら下部側アンテナ装置10Lから送信された電波と上部側アンテナ装置10Uから送信された電波とが合成されることで、当該合成アンテナ装置1Bの合成電波の送信方向は、図中矢印200で示す方向になる。
【0091】
図20は、上述した図16に示す合成アンテナ装置1Bの水平面指向性パターンを示すグラフであり、図21は、垂直面指向性パターンを示すグラフである。なお、当該図20および図21に示す指向性パターンは、いずれも送信電波の周波数を530MHzとした場合のものである。
【0092】
図20に示すように、上述した合成アンテナ装置1Bとした場合にも、単体アンテナ装置にて送信装置を構成した場合に比べ、その水平面指向性パターンが改善されて高い放射強度が得られる範囲が増加していることが分かる。したがって、上述した合成アンテナ装置1Bとすることにより、より広い送信地域(サービスエリア)をカバーすることが可能になる。
【0093】
一方で、図21に示すように、上述した合成アンテナ装置1Bとした場合には、単体アンテナ装置にて送信装置を構成した場合に比べ、その垂直面指向性パターンが変化して高い放射強度が得られる範囲が減少していることが分かる。したがって、上述した合成アンテナ装置1Bとした場合には、下部側アンテナ装置10Lおよび上部側アンテナ装置10Uの仰角をそれぞれ微調節できるようすることが必要である。
【0094】
図22は、図16に示す合成アンテナ装置1Bの分解斜視図であり、図23は、要部拡大分解斜視図である。
【0095】
図22に示すように、合成アンテナ装置1Bをマスト100に組付けるに際しては、まずマスト100にベース部21を自在バンド23を用いて強固に固定する。次いで、下部側支持部24Lおよび上部側支持部24Uをそれぞれ下部側ボルト・ワッシャ群30Lおよび上部側ボルト・ワッシャ群30Uを用いてベース部21に強固に組付ける。
【0096】
次に、下部側アンテナ装置10Lを下部側ボルト群40L1および下部側ワッシャ・ナット群40L2を用いて取付具20Bの下部側支持部24Lのアーム取付部27に組付けるとともに、上部側アンテナ装置10Uを上部側ボルト群40U1および上部側ワッシャ・ナット群40U2を用いて取付具20Bの上部側支持部24Uのアーム取付部27に組付ける。その際、下部側アンテナ装置10Lのアーム11の上記一端部と、取付具20Bの下部側支持部24Lのアーム取付部27との間に、上述した下部側アーム支持部材18Lが介在されるようにし、上部側アンテナ装置10Uのアーム11の上記一端部と、取付具20Bの上部側支持部24Uのアーム取付部27との間に、上述した上部側アーム支持部材18Uが介在されるようにする。
【0097】
ここで、図23に示すように、下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた第1基準穴P01と、下部側アーム支持部材18Lに設けられた第2基準穴Q01と、下部側アンテナ装置10Lのアーム11に設けられた一対の取付穴11bのうちの一方とを合致させ、これら合致させた第1基準穴P01、第2基準穴Q01および取付穴11bにボルト41aを挿通し、当該ボルト41aに押さえ具41cを介在させてナット41bを取付ける。
【0098】
また、下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた仮固定穴P02と、下部側アーム支持部材18Lに設けられた仮固定穴Q02と、下部側アンテナ装置10Lのアーム11に設けられた一対の取付穴11bのうちの他方とを合致させ、これら合致させた仮固定穴P02、仮固定穴Q02および取付穴11bにボルト42aを挿通し、当該ボルト42aに押さえ具42cを介在させてナット42bを取付ける。
【0099】
さらに、下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから下部側アンテナ装置10Lの仰角に応じて選択された1つの貫通穴と、下部側アーム支持部材18Lに設けられた複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから下部側アンテナ装置10Lの仰角に応じて選択された1つの貫通穴とを合致させ、これら合致させた第1貫通穴および第2貫通穴にボルト43aを挿通し、当該ボルト43aにワッシャ43cを介在させてナット43bを取付ける。なお、図23においては、下部側アンテナ装置10Lの仰角が±0°となるように、複数の第1貫通穴P10〜P18のうちから貫通穴P10を、複数の第2貫通穴Q10〜Q14のうちから貫通穴Q10をそれぞれ選択した場合を例示的に示している。
【0100】
下部側アンテナ装置10Lの仰角が±0°となるように取付ける場合には、上記に加え、下部側支持部24Lのアーム取付部27に設けられた補助固定穴P03と、下部側アーム支持部材18Lに設けられた補助固定穴Q03とを合致させ、これら合致させた補助固定穴P03および補助固定穴Q03にボルト44aを挿通し、当該ボルト44aにナット44bを取付ける。
【0101】
そして、これら下部側ボルト群40L1および下部側ワッシャ・ナット群40L2を強固に締付けることにより、下部側アンテナ装置10Lの取付具20Bに対する取付けが行なわれ、同時に下部側アンテナ装置10Lの仰角が調節されることになる。なお、ここではその説明を省略するが、上部側アンテナ装置10Uの取付具20Bに対する取付けも同様に行なわれる。
【0102】
このように、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造を採用して垂直偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Bを構成した場合にも、上述した水平偏波送信用の鉛直スタック型合成アンテナ装置1Aとした場合と同様の効果が得られることになる。すなわち、小型の取付具を用いてアンテナ装置の仰角を容易に微調節することが可能でかつ強固な取付強度が確保できるようになる。
【0103】
上述した本実施の形態においては、取付具のアーム取付部に上下方向に2列にわたって仰角決定用の複数の第1貫通穴を設けた場合を例示したが、必ずしもこのように構成する必要はない。図24は、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造の他の例を採用した場合の要部拡大分解斜視図である。図24に示すように、アーム取付部27に1列にわたって所定のルールに従って仰角決定用の複数の第1貫通穴P10〜P14を設け、この複数の第1貫通穴P10〜P14に一対一で対応するように下部側アーム支持部材18Lに複数の第2貫通穴Q10〜Q14を設けるように構成してもよい。このように構成した場合にも、上述した効果と同様の効果が得られる。
【0104】
また、上述した本実施の形態においては、アンテナ装置のアームの一端部に組付けられるアーム支持部材によって取付部を構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成する必要はなく、たとえばアンテナ装置のアームの一端部にて取付部を構成してもよい。図25は、本実施の形態におけるアンテナ装置の取付構造のさらに他の例を採用した場合の要部拡大分解斜視図である。図25に示すように、アンテナ装置のアーム11の上記一端部に取付穴11aに加えて複数の第2貫通穴Q10〜Q14および補助固定穴Q03を設けるように構成してもよい。なお、その場合には、上記一対の取付穴11aのそれぞれが、第2基準穴Q01および仮固定穴Q02に相当することになる。また、この場合には、第2締結手段としてのボルト43aおよびナット43bに組付けられるワッシャ43cに代えて押さえ具43c′を利用することが好ましい。このように構成した場合にも、上述した効果と同様の効果が得られる。
【0105】
また、上述した本実施の形態においては、仰角の調節が行なえる最小の角度を2°に設定した場合を例示して説明を行なったが、当然にその角度は適宜変更が可能である。また、上述した本実施の形態においては、調節されるアンテナ装置の取付角度を仰角とした場合を例示して説明を行なったが、左右方向の取付角度の調節や斜め方向の取付角度の調節にも本発明に基づくアンテナ装置の取付構造を適用することが可能である。
【0106】
さらには、上述した本実施の形態においては、鉛直スタック型合成アンテナ装置に本発明に基づくアンテナ装置の取付構造を適用した場合を例示して説明を行なったが、他の合成アンテナ装置や単体アンテナ装置に本発明に基づくアンテナ装置の取付構造を適用することも当然に可能である。
【0107】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0108】
1A,1B 合成アンテナ装置、10L 下部側アンテナ装置、10U 上部側アンテナ装置、11 アーム、11a,11b 取付穴、12 放射器、12a,12b 放射素子、13 反射器、14 導波器、15a,15b 絶縁部、16a,16b 平行線路、17 T整合器、18L 下部側アーム支持部材、18U 上部側アーム支持部材、18a 平板部、18b 立壁部、20A,20B 取付具、21 ベース部、22 マスト取付部、23 自在バンド、24L 下部側支持部、24U 上部側支持部、25 支持部材取付部、26 支持部材、27 アーム取付部、27a 平板部、27b 立壁部、30L 下部側ボルト・ワッシャ群、30U 上部側ボルト・ワッシャ群、40L1 下部側ボルト群、40L2 下部側ワッシャ・ナット群、40U1 上部側ボルト群、40U2 上部側ワッシャ・ナット群、41a〜44a ボルト、41b〜44b ナット、41c,42c,43c′ 押さえ具、43c ワッシャ、100 マスト、C1,C2 中心線、O1 中心点、P01 第1基準穴、P02 仮固定穴、P03 補助固定穴、P10〜P18 第1貫通穴、Q01 第2基準穴、Q02 仮固定穴、Q03 補助固定穴、Q10〜Q14 第2貫通穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に取付角度が調節可能となるようにアンテナ装置を取付具を用いて被取付対象物に取付けるアンテナ装置の取付構造であって、
前記アンテナ装置は、当該アンテナ装置を前記取付具に取付けるための取付部と、電波を送信または受信するためのアンテナ素子とを含み、
前記取付具は、当該取付具を前記被取付対象物に固定するための固定部と、前記取付部が取付けられる被取付部と、当該被取付部に前記取付部を取付けるための第1締結手段および第2締結手段とを含み、
前記被取付部は、前記取付部の取付角度の調節の基準となる第1基準穴と、前記取付部の取付角度に応じて設けられた複数の第1貫通穴とを有し、
前記取付部は、当該取付部の取付角度の調節のための基準となる第2基準穴と、前記複数の第1貫通穴のそれぞれに対応付けて設けられた複数の第2貫通穴とを有し、
前記複数の第1貫通穴は、当該複数の第1貫通穴のそれぞれと前記第1基準穴とを結ぶ線分が同一直線上に重ならずかつ当該複数の第1貫通穴のそれぞれと前記第1基準穴との間の距離が異なるものを含むように前記被取付部に穿設され、
前記複数の第2貫通穴は、当該複数の第2貫通穴のそれぞれと前記第2基準穴とを結ぶ線分が同一直線上に重なるように前記取付部に穿設され、
前記第1基準穴および前記第2基準穴を合致させ、これら合致させた基準穴に前記第1締結手段を挿通させるとともに、前記複数の第1貫通穴および前記複数の第2貫通穴のそれぞれから前記取付部の取付角度に応じて選択された各1つの貫通穴を合致させ、これら合致させた貫通穴に前記第2締結手段を挿通させ、前記第1締結手段および前記第2締結手段をそれぞれ締結することにより、前記取付部の取付角度が調節されて当該取付部が前記被取付部に取付けられ、これにより所定の方向にアンテナ装置の取付角度が調節可能とされた、アンテナ装置の取付構造。
【請求項2】
前記複数の第1貫通穴のそれぞれと前記複数の第2貫通穴のそれぞれとが、一対一で対応しており、
前記複数の第1貫通穴が、当該複数の第1貫通穴のそれぞれと前記第1基準穴との間の距離が相互に異なるように前記被取付部に穿設されている、請求項1に記載のアンテナ装置の取付構造。
【請求項3】
前記複数の第1貫通穴のそれぞれと前記複数の第2貫通穴のそれぞれとが、複数対一で対応しており、
前記複数の第1貫通穴が、当該複数の第1貫通穴のそれぞれと前記第1基準穴との間の距離が等しいものが含まれるように前記被取付部に穿設されている、請求項1に記載のアンテナ装置の取付構造。
【請求項4】
前記アンテナ装置は、前記アンテナ素子を支持する棒状のアームを含み、
前記取付部は、前記アームの一端部にて構成され、
前記第2基準穴および前記複数の第2貫通穴が、前記アームの延びる方向に沿って一列に配置されている、請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置の取付構造。
【請求項5】
前記アンテナ装置は、前記アンテナ素子を支持する棒状のアームと、前記アームの一端部に組付けられ、前記アームの延びる方向に沿って延在するアーム支持部材とを含み、
前記取付部は、前記アーム支持部材にて構成され、
前記第2基準穴および前記複数の第2貫通穴が、前記アーム支持部材に設けられ、前記アームの延びる方向に沿って一列に配置されている、請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置の取付構造。
【請求項6】
前記アーム支持部材を前記アームの前記一端部に取付けるために設けられた前記アームの取付穴が、前記アームの軸周りに90°ずれた位置に設けられている、請求項5に記載のアンテナ装置の取付構造。
【請求項7】
調節される前記アンテナ装置の取付角度が、仰角である、請求項1から6のいずれかに記載のアンテナ装置の取付構造。
【請求項8】
前記アンテナ装置を一対備え、
前記取付具が、前記被取付部を一対有し、
前記一対のアンテナ装置のそれぞれが、互いに異なる方向に沿って送信方向または受信方向を有するように前記一対の被取付部のそれぞれに取付けられ、
これにより前記一対のアンテナ装置によって合成アンテナ装置が構成されている、請求項1から6のいずれかに記載のアンテナ装置の取付構造。
【請求項9】
調節される前記一対のアンテナ装置の取付角度が、いずれも仰角であり、
前記一対のアンテナ装置のそれぞれが、前記アンテナ素子としての放射器を含み、
これら一対の放射器が、鉛直方向にスタックされ、
これにより前記一対のアンテナ装置によって鉛直スタック型合成アンテナ装置が構成されている、請求項8に記載のアンテナ装置の取付構造。
【請求項10】
前記アンテナ装置は、UHF帯の電波を送信または受信するリングアンテナ装置である、請求項1から9のいずれかに記載のアンテナ装置の取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2010−288118(P2010−288118A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140955(P2009−140955)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】