説明

アンテナ装置

【課題】アンテナ展開の駆動速度、耐風性能、放熱性能の低下を抑制しながら、信号通過損失を低減することが可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】反射器を用いたアンテナ装置において、輻射器と、支持部材と、増幅器と、電力供給部と、基台部とを具備して構成するようにした。輻射器は、反射器に向けて送信信号を輻射する。支持部材は、輻射器を支持する。増幅器は、支持部材に取り付けられ、送信信号を増幅する。電力供給部は、増幅器に駆動電力を供給する。基台部は、支持部材と電力供給部とが取り付けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、例えばパラボラなどの反射器を用いたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、マイクロ波帯を利用した衛星通信が、SNG(Satellite News Gathering;衛星中継設備)の車載局によって行われている。マイクロ波帯などの高い周波数帯を利用した通信では、信号増幅に大電力が必要とされ、これに伴い電力増幅部と電源部の冷却を行う必要がある。
また、車載局に限らず、一般に、高い周波数帯を利用するアンテナ装置においては、信号通過損失の低減、アンテナ展開の駆動速度、耐風性能、放熱性能の向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2518889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高い周波数を利用した通信では、電力増幅部と電源部においては、放熱性能の向上が求められる。また、高い周波数帯を利用するアンテナ装置においては、信号通過損失の低減、アンテナ展開の駆動速度、耐風性能の向上が求められる。
課題は、上記の要望に応えることであり、アンテナ展開の駆動速度、耐風性能、放熱性能の低下を抑制しながら、信号通過損失を低減することが可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、反射器を用いたアンテナ装置において、輻射器と、支持部材と、増幅器と、電力供給部と、基台部とを具備して構成するようにした。輻射器は、反射器に向けて送信信号を輻射する。支持部材は、輻射器を支持する。増幅器は、支持部材に取り付けられ、送信信号を増幅する。電力供給部は、増幅器に駆動電力を供給する。基台部は、支持部材と電力供給部とが取り付けられることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態に係わるアンテナ装置の構成を示す図。
【図2】図1に示したアンテナ装置の変形例の構成を示す図。
【図3】図1に示したアンテナ装置の変形例の構成を示す図。
【図4】図1に示したアンテナ装置の変形例の構成を示す図。
【図5】図1に示したアンテナ装置の変形例の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係わるアンテナ装置の構成を示すものである。なお、図1(a)は、アンテナ収納状態の上面図である。また図1(b)は、アンテナ収納状態の側面図である。そして図1(c)は、アンテナ展開状態の側面図である。
【0008】
このアンテナ装置は、主な構成要素として、反射器10と、支持部20と、ブーム21と、コンバータ30と、ホーン31と、電力増幅部40と、電力供給部50と、アジマス方向アンテナ駆動部60と、アンテナ台座70とを備えている。
【0009】
反射器10は、例えばパラボラ形状の反射面、すなわち放物面を有し、その放物面の焦点に配置した一次輻射器(ホーン31)から輻射された電磁波(送信信号)を反射して、放物面の対称軸に平行する指向方向に電磁波を放射する。反対に、中継衛星から上記指向方向より入射した送信波を放物面で反射し、焦点に集める。なお、反射面の形状は、放物面を切り出した楕円形のパラボラ、球面もしくは多角形であってもよい。
【0010】
支持部20は、反射器10をアジマス方向アンテナ駆動部60に連結する支持部材であって、一端は、溶接やリベット、ネジなどによって反射器10の背面(放物面の焦点の反対側)に取り付けられ、他端は、反射器10を収納状態と運用状態(アンテナ展開状態)に可変可能とするために、アジマス方向アンテナ駆動部60にエレベーション軸周りに回動自在に取り付けられたものである。
【0011】
ブーム21は、コンバータ30、ホーン31および電力増幅部40が装着され、アジマス方向アンテナ駆動部60に連結する支持部材であって、一端は、コンバータ30およびホーン31が取り付けられ、他端は、支持部20と同様に、収納状態と運用状態(アンテナ展開状態)に可変可能とするために、アジマス方向アンテナ駆動部60にエレベーション軸周りに回動自在に取り付けられたものである。
【0012】
このように、支持部20およびブーム21は、エレベーション軸周りの回動機構を有することで、収納状態においては、図1(a)および(b)に示すように、反射器10、コンバータ30、ホーン31および電力増幅部40を収納可能とし、これらの構成による専有空間を最小にすることができ、例えば車載する場合においては、車両走行時の空気抵抗を軽減し、コンバータ30、ホーン31および電力増幅部40を保護できる。
【0013】
またエレベーション軸周りの回動機構を有することで、運用時(アンテナ展開時)においては、図1(c)に示すように、反射器10の指向方向のうち、エレベーション方向を可変して放射仰角を中継衛星方向に向けた位置で固定できるとともに、またホーン31を反射器10の放物面の焦点に固定できる。
【0014】
これらの回動機構を実現するために、アジマス方向アンテナ駆動部60は、電動機(図示しない)を備えており、これがコンソール(図示しない)を通じたオペレータによる操作によって駆動制御され、中継衛星が捕捉される。
【0015】
コンバータ30は、LNB(Low Noise amplifier and Block down converter)であって、ホーン31によって受信された中継衛星からのマイクロ波信号を増幅し、IF信号にダウンコンバートするものである。
【0016】
電力増幅部40は、送信信号(マイクロ波)を増幅するものであって、例えば窒化ガリウム(GaN)を採用したFET(Field Effect Transistor)を用いた固体化電力増幅器(SSPA; Solid State Power Amplifier)である。また電力増幅部40は、増幅された送信信号が最短の導線を通じてホーン31に到達するように、ブーム21に装着されている。
【0017】
電力供給部50は、外部から供給される電力を電源として、電力増幅部40に駆動電力を供給するものである。また電力供給部50は、アジマス方向アンテナ駆動部60上の回転軸中心線71上に載置・固定される。
なお、電力増幅部40および電力供給部50は、それぞれに放熱フィンなどのヒートシンクを有する。
【0018】
アジマス方向アンテナ駆動部60は、反射器10が装着された支持部20、およびコンバータ30、ホーン31および電力増幅部40が装着されたブーム21をアジマス軸周りに回動自在に連結する。なお、図示しないが、前述したように、アジマス方向アンテナ駆動部60は、電動機を備えており、これがコンソール(図示しない)を通じたオペレータによる操作によって駆動制御され、反射器10の指向方向のうち、仰角が制御される。
【0019】
アンテナ台座70は、例えば中継車両の屋根に固定され、アジマス方向アンテナ駆動部60を回動自在に軸支する。またアンテナ台座70は、電動機を備えており、これがコンソール(図示しない)を通じたオペレータによる操作によって駆動制御され、反射器10の指向方向のうち、方位角が制御される。
【0020】
このように、アジマス方向アンテナ駆動部60と電力供給部50が一体化しているので、アンテナ台座70による方位角の変更が生じても、アジマス方向アンテナ駆動部60上に固定されている電力増幅部40と電力供給部50との間の距離に変化は生じない。
【0021】
以上のように、上記構成のアンテナ装置では、これまで一般に一体化していた電力増幅部40と電力供給部50を物理的に分離して配置し、電力増幅部40については、増幅された送信信号が最短の導線を通じてホーン31に到達するように、ブーム21に装着し、一方、電力供給部50については、アジマス方向アンテナ駆動部60上の回転軸中心線71上に載置・固定するようにしている。
【0022】
したがって、上記構成のアンテナ装置によれば、電力増幅部40をブーム21上に設けているので、電力増幅部40によって増幅された送信信号の通過損失を低減することができ、また電力増幅部40の駆動電力を供給する電力供給部50と電力増幅部40を別体としているので、ブーム21に架かる重量負荷や体積を抑制でき、アンテナ展開の駆動速度や耐風性能の低下を抑制できる。
【0023】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0024】
その一例として例えば、上記実施の形態では、電力供給部50をアジマス方向アンテナ駆動部60上の回転軸中心線71上に載置・固定するものとして説明したが、これに限定されるものではない。
【0025】
例えば図2に示すような構成も可能である。図2(a)は、アンテナ収納状態の上面図である。また図2(b)は、アンテナ収納状態の側面図である。そして図2(c)は、アンテナ展開状態の側面図である。
【0026】
図2に示す構成例では、電力供給部50をアジマス方向アンテナ駆動部60の後部側面に載置・固定している。すなわち、回転軸中心線71に対して、ブーム21と対称の位置に電力供給部50を配置する。
【0027】
また例えば図3に示すような構成も可能である。図3(a)は、アンテナ収納状態の上面図である。また図3(b)は、アンテナ収納状態の側面図である。そして図3(c)は、アンテナ展開状態の側面図である。
【0028】
図3に示す構成例では、電力供給部50をアジマス方向アンテナ駆動部60の前部側面に載置・固定している。すなわち、回転軸中心線71に対して、ブーム21と同じ側に電力供給部50を配置する。
【0029】
そしてまた例えば図4、図5に示すような構成も可能である。図4(a)、図5(a)は、アンテナ収納状態の上面図である。また図4(b)、図5(b)は、アンテナ収納状態の側面図である。そして図4(c)、図5(c)は、アンテナ展開状態の側面図である。
【0030】
図4、図5に示す構成例では、電力供給部50をアジマス方向アンテナ駆動部60の左右側面に載置・固定している。すなわち、回転軸中心線71に対して、ブーム21と垂直を為す位置に電力供給部50を配置する。
【0031】
以上のような図2乃至図5のいずれの構成であっても、これまで一般に一体化していた電力増幅部40と電力供給部50を物理的に分離して配置し、電力増幅部40をブーム21に装着するようにしているので、電力増幅部40によって増幅された送信信号の通過損失を低減することができ、電力供給部50は電力増幅部40と別体としているので、ブーム21に架かる重量負荷や体積を抑制でき、アンテナ展開の駆動速度や耐風性能の低下を抑制できる。
【0032】
また図1に示した構成例と同様に、アジマス方向アンテナ駆動部60と電力供給部50が一体化しているので、運用状態において方位角の変更が生じても、アジマス方向アンテナ駆動部60上に固定されている電力増幅部40と電力供給部50との間の距離に変化は生じない。
【0033】
また上記実施の形態では、電力増幅部40を1つ設ける例を示したが、その小型化に伴って、予備として冗長系を設けるようにしてよい。すなわち、電力増幅部40を現用系として備えるとともに、電力増幅部40と同様の構成からなる予備電力増幅部(予備系)を備え、電力増幅部40とともに、ブーム21に装着するようにしてもよい。
【0034】
そしてまた、電力増幅部40は、アップコンバータを備えるようにしてもよい。例えば、1GHzの入力信号を14GHzにアップコンバートした後、電力増幅を行うようにしてもよい。これによれば、電力増幅部40までは1GHzの信号で入力できるので、導線における損失を抑制することができる。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0035】
10…反射器、20…支持部、21…ブーム、30…コンバータ、31…ホーン、40…電力増幅部、50…電力供給部、60…アジマス方向アンテナ駆動部、70…アンテナ台座、71…回転軸中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射器を用いたアンテナ装置において、
前記反射器に向けて送信信号を輻射する輻射器と、
この輻射器を支持する支持部材と、
この支持部材に取り付けられ、前記送信信号を増幅する増幅器と、
この増幅器に駆動電力を供給する電力供給部と、
前記支持部材と前記電力供給部とが取り付けられた基台部とを具備することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記基台部は、第1基台部と第2基台部を備え、
前記第1基台部は、前記支持部材と前記電力供給部とが取り付けられ、
前記第2基台部は、前記第1基台部を回動自在に軸支することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2基台部は、前記反射器の指向方向のうち、アジマス軸について前記第1基台部を回動自在に軸支し、
前記第1基台部は、前記電力供給部が前記アジマス軸上に取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記増幅器は、現用系増幅器と、予備系増幅器を備えた冗長構成とすることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記増幅器は、入力信号をアップコンバートして前記送信信号を生成し、この送信信号を増幅することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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