説明

アンテナ装置

【課題】漏洩同軸ケーブルを空中線として利用しながら、通信可能範囲の大きさを物理的に調整可能とする。
【解決手段】漏洩同軸ケーブル11のアンテナ装置1は、漏洩同軸ケーブル11、第1の筐体12、第2の筐体13および連結機構14を含む。第1の筐体12は、漏洩同軸ケーブル11の一端側の一部を保持する。第2の筐体13は、漏洩同軸ケーブル11の他端側の一部を保持する。連結機構14は、第1の筐体12に対する第2の向きを変更可能に第1の筐体12と第2の筐体13とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
漏洩同軸ケーブル(LCX)を空中線として利用するアンテナ装置では、漏洩同軸ケーブルの長さの調整によって通信可能範囲の大きさを調整することは許容されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−236745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信可能範囲の大きさを物理的に調整することが困難であった。
【0005】
このような事情から、漏洩同軸ケーブルを空中線として利用しながら、通信可能範囲の大きさを物理的に調整可能とすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のアンテナ装置は、漏洩同軸ケーブル、第1の筐体、第2の筐体および連結機構を含む。第1の筐体は、漏洩同軸ケーブルの一端側の一部を保持する。第2の筐体は、漏洩同軸ケーブルの他端側の一部を保持する。連結機構は、第1の筐体に対する第2の向きを変更可能に第1の筐体と第2の筐体とを連結する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の状態におけるアンテナ装置の斜視図。
【図2】第2の状態におけるアンテナ装置の斜視図。
【図3】第1の状態における通信可能エリアの大きさを説明する図。
【図4】第2の状態における通信可能エリアの大きさを説明する図。
【図5】遮蔽部材を取り付けた状態におけるアンテナ装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下実施の形態の一例を図面を用いて説明する。
【0009】
図1は本実施形態に係るアンテナ装置1の斜視図である。
【0010】
アンテナ装置1は、漏洩同軸ケーブル(LCX)11、第1の筐体12、第2の筐体13、連結機構14および支持台15を含む。
【0011】
LCX11は、一端から供給された高周波信号を他端に向けて伝送するとともに、この高周波信号のエネルギの一部を中間部に設けられたスロットから電波として放射する。LCX11は、周囲の電磁波に応じた高周波信号を生じる。
【0012】
第1の筐体12は、中空の円筒状をなし、その内部の空間にLCX11の一端側の一部の第1の部位11aを収容する。第1の筐体12は、第1の部位11aを図1に示すようにほぼ直線状に保持する。
【0013】
第2の筐体13は、中空の円筒状をなし、その内部の空間にLCX11の他端側の一部の第2の部位11bを収容する。第2の筐体13は、第2の部位11bを図1に示すようにほぼ直線状に保持する。
【0014】
連結機構14は、第1の筐体12の端部と第2の筐体13の端部とを連結する。連結機構14は、第1の筐体12に対して第2の筐体13を軸支する構造を有し、第1の筐体12と第2の筐体13とが図1に示すように直列する第1の状態と、第1の筐体12に対して第2の筐体が図2に示すように傾斜する第2の状態とを少なくとも含む複数の状態を選択的に形成可能である。上記のような機能を持つ機構は種々知られており、このような周知の機構を連結機構14として採用可能である。
【0015】
支持台15は、基部15aと保持部15bとを含む。基部15aは、底面が平坦であり、この底面がアンテナ装置1の設置場所における床面に接する。保持部15bは、基部15aの上に位置し、第1の筐体12の長手方向が基部15aの底面にほぼ直交する方向に向くように第1の筐体12の端部を保持する。保持部15bは、基部15aの底面にほぼ直交する方向に沿った軸の周りを、図1,2に示す矢印のように回動可能に基部15aに対して軸支されている。
【0016】
次に以上のように構成されたアンテナ装置1の動作について説明する。
【0017】
LCX11にはさまざまな特性のもの製品が存在するが、それらの製品を任意に適用できる。また、LCX11に要求される特性を持つものとして新たに製作されても良い。また、LCX11の長さは任意であって良い。
【0018】
ここでは一例として、LCX11が、その長手方向に対して20°程度の傾きで給電側に電波を放射するバックファイアタイプであるとする。そして、LCX11へは、支持台15の側の端部から給電されることとする。さらに、LCX11の長さを70cmとする。
【0019】
このような条件の下で、アンテナ装置1が第1の状態にあるときには、LCX11の上端から放射された電波の到達位置は、図3に示すようにLCX11の下端から水平方向に192cm離れた位置となる。これにより、アンテナ装置1の設置位置を中心とした半径2m程度の範囲が通信可能エリアとなる。
【0020】
一方、アンテナ装置1が第2の状態にあるときには、LCX11の第1の部位11aおよび第2の部位11bの長さがそれぞれ50,20cmであり、かつ第1の部位11aに対する第2の部位11bの傾きが45°であるとするならば、LCX11の上端から放射された電波の到達位置は、図4に示すようにLCX11の下端から水平方向に44cm離れた位置となる。これに対して、第2の部位11bの上端から放射された電波の到達位置は、図4に示すようにLCX11の下端から水平方向に137cm離れた位置となる。これにより、アンテナ装置1の設置位置を中心とした半径1.4m程度の範囲が通信可能エリアとなる。
【0021】
このようにアンテナ装置1によれば、第1の筐体12に対する第2の筐体13の向きを変更することができ、この向きを変更することによって通信可能エリアの大きさを容易に変更できる。
【0022】
ただし、第2の状態にあっては、通信可能エリア内の一部のエリアが、第1の部位11aおよび第2の部位11bのそれぞれから放射された電波が重複して到達することから、通信が不安定になってしまうヌルエリアとなってしまうおそれがある。
【0023】
しかしながらアンテナ装置1は、保持部15bを回動させることによって、ヌルエリアが形成される位置を変更することができる。これにより、通信が行われる頻度が比較的低い位置にヌルエリアが形成されるように調整することができ、ヌルエリアが形成されてしまうことによる利便性の低下を小さく抑えることができる。
【0024】
さらに第2の状態にあっては、第2の部位11bから上方に向けての電波の放射が生じるため、天井での反射波が生じ、通信の不安定化の要因になるおそれがある。
【0025】
そこで、第2の筐体13の外表面のうちの上方を向く部分に、例えば図5に示すように遮蔽部材16を装着可能としておいても良い。遮蔽部材16は、電波を吸収または反射する部材により構成し、第2の部位11bから放射された電波を遮蔽する。遮蔽部材16は、第2の部位11bから放射された電波を完全に遮蔽しなくても良く、低減できれば良い。
【0026】
かくして、第2の状態においてのみ遮蔽部材16を第2の筐体13に装着すれば、上記のような天井での反射波により通信が不安定となってしまうことを防止できる。
【0027】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0028】
第1の筐体12に対する第2の筐体13の向きがそれぞれ異なる2つ以上の状態を形成可能としても良い。このようにすれば、通信可能エリアの大きさをより多段階に変更することが可能となり、ニーズに応じた細かな調整が可能である。
【0029】
LCX11は、完全な直線状になっていなくても良く、一部または全体において波状になっていても良い。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1…アンテナ装置、11…漏洩同軸ケーブル(LCX)、11a…第1の部位、11b…第2の部位、12…第1の筐体、13…第2の筐体、14…連結機構、15…支持台、15a…基部、15b…保持部、16…遮蔽部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルの一端側の一部を保持する第1の筐体と、
前記漏洩同軸ケーブルの他端側の一部を保持する第2の筐体と、
前記第1の筐体に対する前記第2の向きを変更可能に前記第1の筐体と前記第2の筐体とを連結する連結機構とを具備するアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の筐体の前記第2の筐体が連結されていない端部を回動可能に支持する支持台をさらに備える請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記支持台は、前記漏洩同軸ケーブルのうちの前記第1の筐体が保持する部位が鉛直方向に沿う姿勢で前記第1の筐体を指示する請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2の筐体の一部に着脱可能であり、前記漏洩同軸ケーブルのうちの前記第2の筐体が保持する部位から放射される電磁波を遮蔽する遮蔽部材をさらに備える請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の筐体は、前記漏洩同軸ケーブルの一部を直線状に保持する請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2の筐体は、前記漏洩同軸ケーブルの一部を直線状に保持する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−31072(P2013−31072A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166744(P2011−166744)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】