説明

アンテナ

【課題】送受信のアイソレーションを確保し、かつ、物体面のフォーカスを複数持つことができるマルチフォーカスアンテナの構成方法を提供する。
【解決手段】レンズの光軸上に送信及び受信用の一次放射器を配置した。レンズ近傍に目標がある場合、焦点深度に広がりがあり、そのフォーカルエリアの中に送信アンテナおよび送受アンテナを配置した。逆にこの位置に送信アンテナと受信アンテナがあるとき、物体面のフォーカルエリアは、光軸上を前後するが被写体深度に奥行きがあるので、目標は、デフォーカスすることなく鮮明にイメージングできる。また、送信アンテナおよび受信アンテナ間のスパンロスおよびバックローブ特性により高アイソレーションが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ等に使用する電磁波を収束する機能を有するアンテナの給電方式に関し、送受信のアイソレーションを確保し、かつ、物体面のフォーカスを複数持つことができるマルチフォーカスアンテナの構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダシステムに使われているアンテナは送受信を共用しているか、または、送受信別々のアンテを用いている。
一般的なパルスレーダは、送受信の時間分離が可能であり、アンテナはサーキュレータを介し送信機及び受信機に接続され共用している。一方、FMCWレーダのように、送信中に受信をおこなうレーダは、送受信間のアイソレーションを高く取らないと送信波が受信器に回り込むため受信感度が低下することになり送受アンテナを分離することにより実現している。
送信アンテナと受信アンテナを共用するためには、サーキュレータを使用するが、高アイソレーションを確保することが困難である。なぜならば、アイソレータが高アイソレーションを確保しても、送信波はアンテナで反射され受信系に回り込むため、アンテナのリターンロスで制限されることになり、通常アイソレーションは、20dB〜30dBとなり不十分である。
この問題点を解決する一般的な方法に送受信アンテナ分離方式がある。しかし、2個のアンテナを使用するので形状が大きくなる。また、コストアップになり好ましくない。イメージングレーダは、近傍の目標を探知するので時間分離が難しく、送受信アンテナを分離しているケースが多い。この場合、送受アンテナ間隔により送受信のビームを同一の光軸上で収束させることが不可能となり、解像度を低下させていた。また、近傍のイメージングレーダは、レンズ等でビームを絞っているため物体面の被写体深度が浅く、奥行きのある物体は、デフォーカスとなって鮮明な画像が得られなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、従来のイメージングレーダは、図7に示すように送信アンテナ71と受信アンテナ72は分離しているため以下の問題があった。
1)送信光軸75と受信光軸74は、一か所で交差するので送受信の光軸のずれをなくすことは不可能であった。また、フォーカルポイント76を合わせるのが困難であり分解能が低下していた。
2)送受信のアイソレーションを広帯域に確保できなかった。
3)近接目標を見るため物体面における被写体深度が浅く、奥行きのある物体を見たとき、フォーカスが全体に合わないため鮮明な画像が得られなかった。現状は、メカニカルにフォーカルポイントを移動させる必要があり形状が大きく瞬時性がなかった。
4)送受信アンテナを共用とし小型・低価格化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ミリ波イメージング装置において、高分解能化および被写体深度を深くとる手段である。
1)電磁波を収束する機能を有するアンテナにおいて、一次放射器を光軸上に配置することにより軸ずれをなくした。図8の動作原理図に示すように、送信用一次放射器82から放射された波は物体面側で集束する。そこに物体86があると波は反射され誘電体レンズ81をとおして像面側の焦点に戻るので、その位置に受信用一次放射器83があると滲みなく鮮明な画像が得られることになる。本発明は、送信用一次放射器からの波は、誘電体レンズをとおして物体面側で収束されるので被写体深度84は奥行きを持つことになる。また、物体側から放射され誘電体レンズを通した像面側の焦点深度85は、レンズのF値が大きい程、物体が近傍である程奥行きをもっているのでその範囲に受信用一次放射器を配置すれば、焦点が合うことになり、鮮明な画像が得られることを利用したものである。
つまり、物体面側の被写体深度および像面側の焦点深度に幅がありその中に送信用及び受信用一次放射器を配置すればよいことになる。送信用一次放射器と受信用一次放射器の間隔が狭ければ、物体面側のフォーカルポイントが一致し好ましい。
しかし、送受信の一次放射器の間隔が狭いと送受のアイソレーションが低下するので、物体面のフォーカルポイント範囲と送受アイソレーションをトレードオフし決定する必要がある。逆に、送信用一次放射器と受信用一次放射器の間隔を広げると、物体面側のフォーカルポイントの幅が狭くなり前後が極端にボケることになり被写体深度が狭い画像を得ることができる。この特質を利用すると奥行きに対して選択性のある画像が得られることになる。
2)前述構成にすると、一次放射器のバックローブ特性と空間スペースにより送受アイソレーションにより確保できる。空間ロスによるアイソレーションは周波数に無関係で広帯域に取れる。
3)前述構成において、一次放射器を光軸上に並べると、各一次放射器の物体面におけるフォーカルポイントが異なる。物体面の合わせたいフォーカルポイントとなる一次放射器2個で送受を行うことによりフォーカスを合わせることができる。並べた一次放射器を組み合わせることにより、物体面のフォーカルポイントと被写体深度を選択できる。送受信信号をスイッチにより切り替えることにより、高速でフォーカルポイントを切り替えることができる。
4)送受信のレンズおよび反射鏡の共通化を図った。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法を用いると、以下に示す効果がある。
1)光軸上に送受信の一次放射器を配置することができ焦点が光軸上に結び解像度が向上する。
2)前後のアンテナ位置がずれているので、深度方向で広範囲にビームの幅が一定とすることが可能、また、受信用給電器を複数並べることにより光軸上に焦点が複数でき、同時に受信することによりレンジ方向の焦点範囲を広くすることが可能となる。
3)送受信アンテナを空間的に分離可能であり広帯域に送受アイソレーションが得られる。このことにより、受信器への送信ノイズの回り込みを抑えることが可能であり受信感度が向上する。
4)電磁波を収束する機能を有するものに、レンズおよび反射鏡がある。これらは、波長の数十倍の大きさが必要で形状が大きい。このレンズおよび反射鏡を共通化することにより小型・低価格をはかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明に係るレンズアンテナについて、〔実施形態1〕、〔実施形態2〕〔実施形態3〕〔実施形態4〕〔実施形態5〕〔実施形態6〕の順で図面を参集しつり詳細に説明する。
【0007】
〔実施形態1〕図1は、誘電体レンズ11を用いた平面図である。図中に示す送信用一次放射器12と受信用一次放射器13を、誘電体レンズの光軸上14に配置したレーダ装置アンテナの例である。フォーカルポイント16は、送信用と受信用の送受積の点である。一次放射器は、ホーンアンテナ、ダイポールアンテナおよびプリント板アンテナ等であればよく、形式は限定されない。図9に、プリント基板アンテナの一例としてPTFEのグラスファイバー基板上91に送信用一次放射器(テーパードスロットアンテナ)93と受信用一次放射器92を2個構成しコネクタ94を実装した例を示す。送信用一次放放射器と受信用一次放射器の位置は、逆でもかまわない。
【0008】
〔実施形態2〕図2は、送信用一次放射器22a〜22bと受信用一次放射器23a〜23bを光軸上24に配置し、送信用一次放射器22aと受信用一次放射器23aの送受積は、物体面側フォーカルポイントA26aに、また、送信用一次放射器22bと受信用一次放射器23bからの波は物体面側のフォーカルポイントB26bで収束する。この受信用一次放射器23a〜23bの出力を合成またはスイッチにより切り替えることにより被写体深度が深くすることができる。通常機械的に、一次放射器の位置を調整しているが、本発明においては、送受信信号を合成または切り替えるだけでフォーカルポイント26a,26bを切り替えることが可能となる。また、全て受信用一次放射器とし受信アレイを構成することもできる。図10に、4個の一次放射器102a〜102b,103a〜103bを配列した例を示す。この場合、レンズからの距離に応じて最適な放射ビーム幅となるようレンズの近傍の一次放射器102aのビーム幅105aが広く,もっとも離れた一次放射器103bのビーム幅105dが狭くなるようにアンテナ開口106dを大きく、アンテナ開口106aを小さくしている。このことによりレンズ面に近い側の開口が小さいので、ブロッキングが小さくなり利得低下も少なくなる効果がある。送信用も同様可能である。なお、ここに示した一次放射器は、ファルミアンテナであり、これは例えば日本国特許 特許第3462959号『平面アンテナ』に示されている。このアンテナは、平面対であり、アンテナを光軸上に配置してもアンテナ同士の干渉が少ない。
【0009】
〔実施形態3〕図3は、実施形態1の送信用一次放射器32a〜32dと受信用一次放射器33a〜33dを光軸34と垂直に4素子アレイ用とし、素子数分同時に検出できるようにした構成である。使用目的に応じて、素子数を決定する。また、前後の位置は一致に限定したものではなく任意の位置に置くことが可能である。
【0010】
〔実施形態4〕図4は、実施形態1の送信用一次放射器42と受信用一次放射器43と誘電体レンズ間41に誘電体の凹誘電体レンズ45を配置することにより、像面側の焦点深度を深くすることにより物体面から離れたフォーカルポイント46に合わせることを可能とした構成である。物体が離れている場合、物体面側の焦点が誘電体レンズの焦点47に近くなり、像面側の焦点深度が極端に狭くなるので、凹誘電体レンズを用いて焦点を後方に伸ばし焦点深度を広げた構成である。
【0011】
〔実施形態5〕図5は、実施形態1から4において、一次放射器間のアイソレーションを確保するために、一次放射器間に遮蔽板、誘電体又は吸収体58を挿入した構成である。
【0012】
〔実施形態6〕図6は、実施形態1から5において、送信用一次放射器62と受信用一次放射器63の電界方向は90度異ならせることにより、送受アイソレーションを確保した構成である。
【実施例】
【0013】
図11は、実施形態2を使用した、ミリ波イメージング装置の構成である。これまでの実施形態は電磁波を収束する機能を有するものとして、誘電体レンズを用いてきたが、本実施例では、90°非軸方物面ミラー120を使用し電磁波を収束させている。90°非軸方物面ミラーの光軸上114に一次放射器を4個実装し、ミラーより送信用一次放射器(1)112a、受信用一次放射器(1)113a、送信用一次放射器(2)112b、受信用一次放射器(2)113bの順に可動部121に固定している。可動部に乗った90°非軸方物面ミラーは回転機構126により高速回転させ一次放射器からの波を反射し集束させることにより水平面を走査する。この可動部を、電動スライダ117により上下移動させ垂直面を走査させ、先の水平走査と組み合わせ2次元走査することにより、人全体をイメージングしている。実施形態2のように一次放射器を切り替えることにより物体面のフォーカルポイントの近い側A115bと遠方B115aに変え奥行きのある物体の画像を鮮明に得ることができる。この送信及び受信信号は、送信器、受信器に接続さている。受信信号は、信号処理器でアンテナの方位と上下位置によりマッッピングされ、ディスプレイに平面画像として表示される。また、波の反射信号の到達時間から立体的な表示も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明の実施形態1の構成図
【図2】 本発明の実施形態2の構成図
【図3】 本発明の実施形態3の構成図
【図4】 本発明の実施形態4の構成図
【図5】 本発明の実施形態5の構成図
【図6】 本発明の実施形態6の構成図
【図7】 本発明の動作原理
【図8】 従来の構成の説明図
【図9】 本発明に使用する一次放射器2個のプリント基板アンテナ例
【図10】 本発明に使用する一次放射器4個のプリント基板アンテナ例
【図11】 本発明の実施例
【符号の説明】
【0015】
11、41、81 誘電体レンズ
12、22a、22b、32a〜32d、42、82、92、102b〜102b、 112a、112b 送信用一次放射器
13、23a、23b、33a〜33d、43、83、93、103a〜103b、 113a、113b 受信用一次放射器
14,24,34,44,114 光軸
16、46、76 フォーカルポイント
26a、155a フォーカルポイントA
26b、115b フォーカルポイントB
45 凹誘電体レンズ
47 レンズ焦点
58 遮蔽板、誘電体または吸収体
71 送信アンテナ
72 受信アンテナ
74 受信光軸
75 送信光軸
84 物体面側の被写体深度
85 像面側の焦点深度
86 物体
91、1101 PTFEグラスファイバー
94 コネクタ
105a〜105d ビーム幅
106a〜105d アンテナ開口
120 非軸90°方物面ミラー
121 可動部
126 回転機構
117 電動スライダ
119 イメージングレーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を収束する機能を有するアンテナにおいて、光軸上に送信用及び受信用の一次放射器を配置したことを特徴としたアンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁波を収束する機能を有するアンテナにおいて、受信用又は、送信用の一次放射器を光軸上に複数個並べ、一次放射器を切り替えることにより物体面のフォーカスの位置を変えることができることを特徴としたアンテナ。
【請求項3】
前記請求項目1.から2.において送信用及び受信用の一次放射器を光軸に対して直角方向に複数配置することを特徴としたアンテナ。
【請求項4】
前記請求項目1.から3.において送信用及び受信用の一次放射器の前に凹面レンズをおき像面の被写体深度を広くすることを特徴としたアンテナ。
【請求項5】
前記請求項目1.及び4.において光軸上に配置した一次放射器間のアイソレーションを高くするため、一次放射器間に遮蔽板、誘電体又は吸収体を挿入することを特徴としたアンテナ。
【請求項6】
前記請求項目1.から5.において送信用及び受信用の一次放射器の偏波面が90°異なったアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−198474(P2009−198474A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74567(P2008−74567)
【出願日】平成20年2月23日(2008.2.23)
【出願人】(502383889)キーコム株式会社 (28)
【Fターム(参考)】