説明

アントラセン誘導体及びこれを発光物質として用いた有機発光素子

本発明は、下記化学式1の化合物及びこれを用いた有機発光素子を提供する:


式中、R1、R2及びR3は、それぞれ、明細書で定義したとおりである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の化合物及びこれを用いた有機発光素子に関する。具体的には、本発明は、電界発光特性を有する新規のアントラセン誘導体及びこれを発光物質として用いた有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、一般に、2つの反対電極の間に薄膜の有機物層が積層された構造を有し、素子の効率及び安定性を高めるために、前記有機物層をそれぞれ異なる物質からなる多層の構造で構成することができる。例えば、有機発光素子は、図1に示すように、基板101、陽極102、正孔注入層103、正孔輸送層104、発光層105、電子輸送層106及び陰極107が順次積層された構造を持つことができる。
【0003】
一方、アントラセン基を含む化合物を有機発光素子に利用しようとする試みは、1960年代の初めから始まった。1965年、HelfrichとPopeは、アントラセンの単結晶を用いた青色有機電気発光現象を最初発表した。ところが、アントラセン単結晶を用いた発光には高い電圧が必要とされるうえ、素子の寿命が短くて実用化するには多くの問題点を持っていた(W. Helfrich, W. G. Schneider, Phys. Rev. Lett. 14, 229, 1965. M. Pope, H. Kallmann, J. Giachino, J. Chem. Phys., 42, 2540, 1965)。
【0004】
最近、アントラセン分子にいろいろの置換体を導入して有機発光素子に適用しようとする試みが盛んに行われている。例えば、青色発光物質としてのアントラセン誘導体が米国特許第5,935,721号(下記化学式A)、米国特許第5,972,247号(下記化学式B)、米国特許第6,251,531号(下記化学式C)、米国特許第5,635,308号(下記化学式D)、ヨーロッパ特許第0681019号(下記化学式E)、及び韓国特許登録10−0422914号(下記化学式F)等に開示されている。また、正孔移送物質としてのアントラセン誘導体がヨーロッパ特許公開第1009044号(下記化学式G)等に開示されている。また、電子輸送物質及び青色発光物質としてのアントラセン誘導体が日本特開平11−345686号(下記化学式H)などに開示されている。
【化1】

【化2】

【0005】
その他にも、電子輸送物質としてのアントラセン誘導体が韓国特開第10−2002−0003025号に開示されており、発光物質として、アントラセンの2番位置に高融点のアリール基が導入された化合物が韓国特許登録第10−0422914号に開示されている。
【発明の開示】
【技術的課題】
【0006】
本発明者らは、新規な構造のアントラセン誘導体を合成するに至り、この化合物を有機発光素子の発光物質として使用する場合、素子の寿命を向上させ且つ低電圧駆動が可能であるという事実を見出した。
【0007】
そこで、本発明は、新規構造のアントラセン誘導体及びこれを用いた有機発光素子を提供することを目的とする。
【技術的解決方法】
【0008】
本発明は、下記化学式1の化合物を提供する。
【化3】

式中、R1、R2及びR3は、それぞれ、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、及びピレンよりなる群から選ばれる。
【0009】
また、本発明は、第1電極、1層以上からなる有機物層、及び第2電極を順次 積層された形で含む有機発光素子において、前記有機物層の中の少なくとも1層が前記化学式1の化合物を含むことを特徴とする、有機発光素子を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
前述したように、アントラセンは、発光効率が高いものであって、1960年代から、有機発光素子の有機物層を構成することのできる重要な化学構造と知られてきた。また、多数の特許文献には、アントラセンの9番と10番位置に置換体、特にアリール基を導入することにより、有機発光素子の性能を高めることができると記載されている。
【0012】
本発明者らは、下記化学式1の化合物のように、アントラセンの9番及び10番位置にフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、及びピレンよりなる群から選ばれる基を対称的または非対称的に導入すると同時に、アントラセンの2番位置にもフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、及びピレンよりなる群から選ばれる基を導入する場合、この化合物は、有機発光素子において発光物質として使用できるという事実を明らかにした。
【化4】

式中、R1、R2及びR3は、それぞれ、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、及びピレンよりなる群から選ばれる。
【0013】
また、本発明者らは、前記化学式1の化合物を用いた有機発光素子は、既存から知られているいずれの芳香族炭化水素で置換されたアントラセン誘導体を用いた有機発光素子より優れた寿命を持ち、低電圧駆動が可能であるという事実を究明した。また、前記化学式1の化合物を含む発光層に所定の蛍光性物質をドーピングする場合には、素子の駆動寿命を大幅増加させることができるという事実を確認した。
【0014】
前記化学式1の具体的な例としては、下記化学式2〜14の化合物がある。
【化5】

【化6】

【化7】

【0015】
前記本発明の化合物は、下記化学式a〜cの出発物質を用いて製造することができる。
【化8】

【0016】
例えば、2−ブロモアントラキノンをトルエンに完全に溶解させ、ここにフェニルボロン酸、1−ナフタレンボロン酸、及び2−ナフタレンボロン酸よりなる群から選ばれるボロン酸、炭酸カリウム溶液(potassium carbonate)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、及びエタノールを入れて還流させて前記化学式a〜cの出発物質を製造することができる。
【0017】
次いで、THF中のハロゲン化アリール溶液に−78℃の下でt−ブチルリチウム(5eq、ヘキサン中の1.7M溶液)及び前記出発物質a〜cを入れて反応させることにより、ジアルコール(dialcohol)を製造することができる。このジアルコール、ヨウ化カリウム及び次亜リン酸ナトリウムを酢酸で還流させて前記化学式1の化合物を製造することができる。
【0018】
さらに具体的な製造方法は、後述する製造例に記載している。当業者は、製造例に記載の方法を変更して実施することもできる。
【0019】
本発明は、第1電極、1層以上からなる有機物層、及び第2電極を順次積層された形で含む有機発光素子において、前記有機物層の中の少なくとも1層が前記化学式1の化合物を含むことを特徴とする、有機発光素子を提供する。
【0020】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造で構成してもよく、2層以上の有機物層が積層された多層構造で構成してもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を持つことができる。ところが、有機発光素子の構造は、これらに限定されず、さらに少ない数の有機物層を含むことができる。本発明に係る有機発光素子の構造は、図1〜図5に例示したが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前記多層構造の有機発光素子において、前記化学式1の化合物は、発光層に含ませることができる。また、前記化学式1の化合物を含む層は、発光ゲスト物質をさらに含むことができる。
【0022】
本発明において、前記化学式1の化合物を含む発光層にドーピングすることが可能な発光ゲスト物質としては、下記化学式の化合物などがあるが、これらに限定されるものではない。
【化9】

【化10】

【0023】

本発明では、前記のような発光ゲスト物質であるドーパントをまず選択した後、選択されたドーパントとマッチングされるバンドギャップを持つ化合物を化学式1の化合物の中から選択して発光ホストとして使用することもできる。
【0024】
本発明の有機発光素子において、前記化学式1の化合物を含む発光層に所定のドーパント、例えば下記化学式15のドーパントを使用する場合には、素子の寿命特性を大幅増加させることもできる。
【化11】

【0025】
前記本発明の有機発光素子において、前記化学式1の化合物を含む層は、真空蒸着法または溶液塗布法によって陽極と陰極との間に形成することにより製造することができる。前記溶液塗布法の例としては、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、インクジェットプリンティングまたは熱転写法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の有機発光素子は、有機物層の中の少なくとも1層が前記化学式1の化合物を含む以外は、当該技術分野に知られている材料と方法で製造できる。
【0027】
例えば、本発明の有機発光素子は、基板上に第1電極、有機物層、及び第2電極を順次積層させることにより製造することができる。この際、スパッタリング(sputtering)法、電子ビーム蒸発法(E-beam evaporation)などのPVD(Physical vapor deposition)法などを用いることができるが、これらに限定されない。
【実施の態様】
【0028】
以下、製造例及び実施例によって本発明をより詳しく説明する。ところが、下記製造例及び実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
出発物質の製造
化学式aの出発物質の製造
【化12】

【0030】
2−ブロモアントラキノン(24.2mmoL、6.96g)をトルエン120mLに完全に溶解させ、ここにフェニルボロン酸(29.0mmoL、3.54g)、炭酸カリウム(potassium carbonate)2M溶液50mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)](0.73mmoL、0.84g)及びエタノール10mLを入れて3時間還流させた。反応が終了した後、常温に冷却させ、濾過した後、水とエタノールで多数回洗浄した。濾過した固体生成物をカラムクロマトグラフィで分離した後、エタノールで結晶化して化学式aの化合物を5.10g(17.9mmoL、74%)得た。
【0031】
化学式bの出発物質の製造
【化13】

【0032】
フェニルボロン酸(29.0mmoL、3.54g)の代わりに1−ナフタレンボロン酸(29.1mmoL、5.00g)を使用した以外は、前記化学式aの出発物質の製造方法と同様にして化学式bの化合物を6.5g(19.4mmoL、80%)得た。
【0033】
化学式cの出発物質の製造
【化14】

【0034】
フェニルボロン酸(29.0mmoL、3.54g)の代わりに2−ナフタレンボロン酸(29.1mmoL、5.00g)を使用した以外は、前記化学式aの出発物質の製造方法と同様にして化学式cの化合物を6.5g(19.4mmoL、80%)得た。
【0035】
製造例1
下記化学式2の化合物の製造
【化15】

【0036】
ブロモベンゼン(8.7mmoL、1.36g)を乾燥THF100mLに入れて完全に溶解させ、ここに−78℃の下でt−ブチルリチウム(8.5mL、ヘキサン中の1.7M溶液)を非常にゆっくり入れた。1時間の後、前記反応物に前記化学式aの出発物質(2.90mmoL、0.82g)を入れた。30分の後、冷却容器を除去し、常温で3時間反応させた。反応済みの後、NHCl水溶液を入れた後、エチルエーテルで抽出した。抽出した反応物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮させた。少量のエチルエーテルを入れて攪拌した後、石油エーテル (petroleum ether) を入れて攪拌した。次いで、濾過し、乾燥させた後、ジアルコール1.00g(2.27mmoL、78%)を得た。
【0037】
前記ジアルコール(1.0g、2.27mmoL)、ヨウ化カリウム(3.77g、22.7mmoL)及び次亜リン酸ナトリウム(sodium hypophosphite)(4.81g、45.4mmoL)を200mLの酢酸で3時間還流させた。
【0038】
前記反応物を常温に冷却させた後、濾過し、水とメタノールで多数回洗浄した後、乾燥させて前記化学式2の化合物(0.85g、2.09mmoL、92%)を得た。MS[M+H]407。
【0039】
製造例2
下記化学式3の化合物の製造
【化16】

【0040】
ブロモベンゼン(8.70mmoL、1.36g)を乾燥THF100mLに入れて完全に溶解させ、ここに−78℃の下でt−ブチルリチウム(8.5mL、ヘキサン中の1.7M溶液)を非常にゆっくり入れた。1時間の後、前記反応物に前記化学式bの出発物質(2.90mmoL、0.97g)を入れた。30分の後、冷却容器を除去し、常温で3時間反応させた。反応済みの後、NHCl水溶液を入れた後、エチルエーテルで抽出した。抽出した反応物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮させた。少量のエチルエーテルを入れて、石油エーテルを入れて15時間攪拌した。生成された固体を濾過し、乾燥させた後、ジアルコール1.30g(2.65mmoL、91%)を得た。
【0041】
前記ジアルコール(1.30g、2.65mmoL)、ヨウ化カリウム(4.40g、26.5mmoL)及び次亜リン酸ナトリウム(5.60g、53.0mmoL)を200mLの酢酸で3時間還流させた。次いで、反応物を常温に冷却させた後、濾過し、水とメタノールで多数回洗浄した後、乾燥させて前記化学式3の化合物(1.10g、2.41mmoL、90%)を得た。MS[M+H]457。
【0042】
製造例3
下記化学式4の化合物の製造
【化17】

【0043】
化学式bの出発物質の代わりに化学式cの出発物質を使用した以外は、前記製造例2と同様にして前記化学式4の化合物(1.10g、2.41mmoL、90%)を得た。MS[M+H]457。
【0044】
製造例4
下記化学式6の化合物の製造
【化18】

【0045】
1−ブロモナフタレン(8.70mmoL、1.80g)を乾燥THF100mLに入れて完全に溶解させ、ここに−78℃の下でt−ブチルリチウム(8.5mL、ヘキサン中の1.7M溶液)を非常にゆっくり入れた。1時間の後、前記反応物に前記化学式bの出発物質(2.90mmoL、0.97g)を入れた。30分の後、冷却容器を除去し、常温で3時間反応させた。反応済みの後、NHCl水溶液を入れた後、エチルエーテルで抽出した。抽出した反応物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮させた。ここに少量のエチルエーテルを入れた後、石油エーテルを入れて15時間攪拌した。生成された固体を濾過し、乾燥させた後、ジアルコール1.50g(2.54mmoL、88%)を得た。
【0046】
前記ジアルコール(1.50g、2.54mmoL)、ヨウ化カリウム(4.21g、25.4mmoL)及び次亜リン酸ナトリウム(5.38g、50.8mmoL)を200mLの酢酸で3時間還流させた。この反応物を常温に冷却させた後、濾過し、水とメタノールで多数回洗浄した後、乾燥させて前記化学式6の化合物(1.30g、2.34mmoL、92%)を得た。MS[M+H]557。
【0047】
製造例5
下記化学式8の化合物の製造
【化19】

【0048】
2−ブロモナフタレン(8.70mmoL、1.80g)を乾燥THF100mLに入れて完全に溶解させ、ここに−78℃の下でt−ブチルリチウム(8.5mL、ヘキサン中の1.7M溶液)を非常にゆっくり入れた。1時間の後、前記反応物に前記化学式aの出発物質(2.90mmoL、0.82g)を入れた。30分の後、冷却容器を除去し、常温で3時間反応させた。反応済みの後、NHCl水溶液を入れてエチルエーテルで抽出した。抽出した反応物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮させた。ここに少量のエチルエーテルを入れた後、石油エーテルを入れて15時間攪拌した。生成された固体を濾過し、乾燥させた後、ジアルコール1.40g(2.58mmoL、89%)を得た。
【0049】
前記ジアルコール(1.40g、2.58mmoL)、ヨウ化カリウム(4.28g、25.8mmoL)及び次亜リン酸ナトリウム(5.46g、51.6mmoL)を200mLの酢酸で3時間還流させた。この反応物を常温に冷却させた後、濾過し、水とメタノールで多数回洗浄した後、乾燥させて前記化学式8の化合物(1.20g、2.37mmoL、92%)を得た。MS[M+H]507。
【0050】
製造例6
下記化学式9の化合物の製造
【化20】

【0051】
1−ブロモナフタレンの代わりに2−ブロモナフタレンを使用した以外は、製造例4と同様にして前記化学式9の化合物(1.30g、2.34mmoL、92%)を得た。MS[M+H]557。
【0052】
製造例7
下記化学式10の化合物の製造
【化21】

【0053】
化学式bの出発物質の代わりに化学式cの出発物質を使用した以外は、製造例6と同様にして前記化学式10の化合物(1.30g、2.34mmoL、92%)を得た。MS[M+H]557。
【0054】
製造例8
下記化学式12の化合物の製造
【化22】

【0055】
ブロモベンゼン(9.87mmoL、1.55g)を乾燥THF100mLに入れて完全に溶解させ、ここに−78℃の下でt−ブチルリチウム(6.9mL、ヘキサン中の1.7M溶液)を非常にゆっくり入れた。1時間の後、前記反応物に前記化学式cの出発物質(8.97mmoL、3.00g)を入れた。30分の後、冷却容器を除去し、常温で3時間反応させた。反応済みの後、反応物にNHCl水溶液を入れてエチルエーテルで抽出した。抽出した反応物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮させた後、カラムクロマトグラフィで分離し乾燥させてアルコール1.40g(3.39mmoL、38%)を得た。
【0056】
2−ブロモナフタレン(5.90mmoL、1.22g)を乾燥THF50mLに入れて完全に溶解させ、−78℃の下でt−ブチルリチウム(5mL、ヘキサン中の1.7M溶液)を非常にゆっくり入れた。1時間の後、この反応物に、前記で合成したアルコール(1.69mmoL、0.70g)を入れた。30分の後、冷却容器を除去し、常温で3時間反応させた。反応済みの後、NHCl水溶液を入れてエチルエーテルで抽出した。少量のエチルエーテルを入れた後、石油エーテルを入れて15時間攪拌した。生成された固体を濾過し、乾燥させた後、ジアルコール0.64g(1.18mmoL、70%)を得た。
【0057】
前記ジアルコール(0.64g、1.18mmoL)、ヨウ化カリウム(1.97g、11.84mmoL)及び次亜リン酸ナトリウム(2.50g、23.68mmoL)を100mLの酢酸で3時間還流させた。この反応物を常温に冷却させた後、濾過し、水とメタノールで多数回洗浄した後、乾燥させて前記化学式12の化合物(0.50g、0.99mmoL、84%)を得た。MS[M+H]507。
【0058】
製造例9
下記化学式14の化合物の製造
【化23】

【0059】
1−ブロモピレン(8.70mmoL、2.5g)を乾燥THF100mLに入れて完全に溶解させ、ここに−78℃の下でt−ブチルリチウム(8.5mL、ヘキサン中の1.7M溶液)を非常にゆっくり入れた。1時間の後、前記反応物に前記化学式cの出発物質(2.90mmoL、1.0g)を入れた。30分の後、冷却容器を除去し、常温で3時間反応させた。反応済みの後、NHCl水溶液を入れてエチルエーテルで抽出した。抽出した反応物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮させた。ここに少量のエチルエーテルを入れた後、石油エーテルを入れて15時間攪拌した。生成された固体を濾過し、乾燥させた後、ジアルコール1.93g(2.61mmoL、90%)を得た。
【0060】
前記ジアルコール(1.93g、2.61mmoL)、ヨウ化カリウム(4.33g、26.1mmoL)及び次亜リン酸ナトリウム(5.53g、52.2mmoL)を200mLの酢酸で3時間還流させた。この反応物を常温に冷却させた後、濾過し、水とメタノールで多数回洗浄した後、乾燥させて前記化学式14の化合物(1.69g、2.4mmoL、92%)を得た。MS[M+H]704。
【0061】
有機発光素子の製造
実施例1
ITO (indium tin oxide) が1500Åの厚さに薄膜コートされたガラス基板を、洗剤を溶解させた蒸留水に入れて超音波で洗浄した。洗剤としては、Fischer Co.社の製品を使用し、蒸留水としては、Millipore Co.社製のフィルターで2回濾過された蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間行った。蒸留水洗浄が終了し、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールの溶剤で超音波洗浄を行い、乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送させた。酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着器へ基板を移送させた。
【0062】
このように準備されたITO透明電極上に下記化学式のヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(hexanitrile hexaazatriphenylene)を500Åの厚さに熱真空蒸着して正孔注入層を形成した。
【化24】

【0063】
次いで、正孔注入層上に正孔を移送する物質であるNPB(400Å)を真空蒸着した後、製造例3で製造した化学式4の化合物を300Åの厚さに真空蒸着して発光層を形成した。発光層上に、電子の注入及び移送の役割をする下記化学式の構造を持った化合物を200Åの厚さに真空蒸着した。
【化25】

【0064】
前記電子注入及び輸送層上に順次厚さ5Åのフッ化リチウム(LiF)と厚さ2500Åのアルミニウムを蒸着して陰極を形成することにより、有機発光素子を製作した。
【0065】
前記の過程において、有機物は1Å/secの蒸着速度を維持し、フッ化リチウムは0.2Å/sec、アルミニウムは3〜7Å/secの蒸着速度をそれぞれ維持した。
【0066】
製作された有機発光素子に6.2Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.18、y=0.23に該当する明るさ1400nitの青色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、600時間であった。
【0067】
実施例2
発光層を、化学式4の化合物の代わりに、製造例6で製造した化学式9の化合物で形成した以外は、実施例1と同様にして有機発光素子を製造した。
【0068】
製作された有機発光素子に6.7Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.17、y=0.22に該当する明るさ1380nitの青色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、500時間であった。
【0069】
実施例3
発光層を、化学式4の化合物の代わりに、製造例7で製造した化学式10の化合物で形成した以外は、実施例1と同様にして有機発光素子を製造した。
【0070】
製作された有機発光素子に6.5Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.17、y=0.22に該当する明るさ1410nitの青色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、450時間であった。
【0071】
実施例4
発光層を、化学式4の化合物の代わりに、製造例8で製造した化学式12の化合物で形成した以外は、実施例1と同様にして有機発光素子を製造した。
【0072】
製作された有機発光素子に6.3Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.17、y=0.21に該当する明るさ1500nitの青色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、260時間であった。
【0073】
実施例5
発光層を、化学式4の化合物のみで形成する代わりに、製造例3で製造した化学式4の化合物に下記化学式15の化合物を100:2の割合でドーピングして300Åの厚さに製造した以外は、実施例1と同様にして有機発光素子を製造した。
【化26】

【0074】
製作された有機発光素子に6.0Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.232、y=0.618に該当する明るさ7200nitの緑色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、1250時間であった。
【0075】
実施例6
発光層を形成する際、化学式4の化合物の代わりに、製造例6で製造した化学式9の化合物を使用した以外は、実施例5と同様にして有機発光素子を製造した。
【0076】
製作された有機発光素子に6.1Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.231、y=0.617に該当する明るさ7100nitの緑色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、1200時間であった。
【0077】
実施例7
発光層を形成する際、化学式4の化合物の代わりに、製造例7で製造した化学式10の化合物を使用した以外は、実施例5と同様にして有機発光素子を製造した。
【0078】
製作された有機発光素子に6.2Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.231、y=0.618に該当する明るさ7000nitの緑色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、1200時間であった。
【0079】
実施例8
発光層を形成する際、化学式4の化合物の代わりに、製造例8で製造した化学式12の化合物を使用した以外は、実施例5と同様にして有機発光素子を製造した。
【0080】
製作された有機発光素子に6.0Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.249、y=0.617に該当する明るさ7900nitの緑色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、800時間であった。
【0081】
実施例9
発光層を、化学式4の化合物の代わりに、製造例9で製造した化学式14の化合物で形成した以外は、実施例1と同様にして有機発光素子を製造した。
【0082】
製作された有機発光素子に7.25Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.44、y=0.36に該当する明るさ2640nitの緑色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、300時間であった。
【0083】
比較例1
発光層を形成する際、化学式4の化合物の代わりに、米国特許第5,935,721号に記載の下記化学式の化合物を使用した以外は、実施例5と同様にして有機発光素子を製造した。
【化27】

【0084】
製作された有機発光素子に6.6Vの順方向電界を加えた結果、100mA/cmの電流密度で1931 CIE color coordinateを基準としてx=0.272、y=0.61に該当する明るさ7000nitの緑色スペクトルが観察された。また、前記素子に50mA/cmの電流密度で一定の直流電流を加えたときに輝度が初期輝度の50%まで落ちるのにかかる時間は、300時間であった。
【0085】
前記実施例及び比較例で使用した発光層物質及び実験結果を表1に示す。
【表1】

【0086】
表1に示すように、有機発光素子において本発明の化合物を単独の発光物質または発光ホストとして使用した場合、既存から知られている芳香族炭化水素で置換されたアントラセン誘導体に比べて素子の寿命が大幅向上し、低電圧における素子駆動が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の化合物は、有機発光素子において単独の発光物質または発光ホストとして使用でき、本発明の化合物を用いた有機発光素子は、寿命特性に優れ且つ低電圧駆動が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の新規化合物を適用することが可能な有機発光素子の例を示す。
【図2】本発明の新規化合物を適用することが可能な有機発光素子の例を示す。
【図3】本発明の新規化合物を適用することが可能な有機発光素子の例を示す。
【図4】本発明の新規化合物を適用することが可能な有機発光素子の例を示す。
【図5】本発明の新規化合物を適用することが可能な有機発光素子の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、及びピレンよりなる群から選ばれる。)
【請求項2】
前記化学式1の化合物は、下記化学式2〜14の化合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項3】
1電極、1層以上からなる有機物層、及び第2電極を順次積層された形で含む有機発光素子において、前記有機物層の中の少なくとも1層が請求項1または2に記載の化合物を含むことを特徴とする、有機発光素子。
【請求項4】
記有機物層は、発光層を含み、この発光層が請求項1または2に記載の化合物を含むことを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
求項1または2に記載の化合物を含む有機物層が、発光ゲスト物質をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項6】
記発光ゲスト物質は、下記化学式15の化合物であることを特徴とする、請求項5に記載の有機発光素子。
【化5】


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−513886(P2007−513886A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541055(P2006−541055)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002896
【国際公開番号】WO2006/025700
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】