アンドロゲン受容体モジュレーター(N−3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの多形
構造式Iの化合物は、アンドロゲン受容体(AR)の組織選択的モジュレーターである。これらの化合物は、低下した筋緊張の強化に、また、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、骨折、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、脆化、加齢肌、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、再生不能性貧血およびその他の造血障害、炎症性関節炎および関節修復、HIV衰弱、前立腺癌、良性前立腺過形成(BPH)、腹部脂肪過多症、代謝症候群、II型糖尿病、癌カテキシー、アルツハイマー病、筋ジストロフィー、認知低下、性機能障害、睡眠時無呼吸、鬱病、早発卵巣不全症および自己免疫疾患のようなアンドロゲン欠乏に起因するかまたはアンドロゲン投与によって軽減できる状態の治療に、単独でまたは他の活性剤と組合せて有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)であるN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質形、非晶質形および溶媒和物に関する。このようなSARMは、骨粗鬆症、歯周病、骨折、脆化および筋減少症のようなアンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン投与によって軽減できる状態の治療に有用である。さらに、本発明のSARMは、抑鬱、性的機能不全および認識減退のような低テストステロンに付随する精神障害を治療するために使用できる。SARMはまた特定組織中でアンタゴニストになるので、高アンドロゲン状態または高アンドロゲン活性が症状を引き起こす良性前立腺過形成および睡眠時無呼吸のような状態に有用である。
【背景技術】
【0002】
アンドロゲン受容体(AR)は、ステロイド/上皮小体ホルモン核受容体のスーパーファミリーに所属し、該ファミリーのその他の構成員はエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、グルココルチコイド受容体およびミネラロコルチコイド受容体を含む。ARは体内の多くの組織で発現され、テストステロン(T)およびジヒドロテストステロン(DHT)のようなアンドロゲンの生理的および病理生理的作用を媒介する受容体である。構造的にはARは、3つの機能ドメイン、すなわち、リガンド結合性ドメイン(LBD)、DNA結合性ドメインおよびアミノ末端ドメインから構成されている。ARに結合し、内因性ARリガンドの作用を模倣する化合物をARアゴニストと呼び、内因性ARリガンドの作用を阻害する化合物をARアンタゴニストと呼ぶ。
【0003】
ARにアンドロゲンリガンドが結合すると、リガンド/受容体複合体が誘導され、該複合体は細胞の核に転移した後、核に存在するターゲット遺伝子のプロモーター領域またはエンハンサー領域内部の調節DNA配列(アンドロゲン応答要素と呼ぶ)に結合する。次に補因子と呼ばれる他のタンパク質が召集され、これらのタンパク質は受容体に結合して遺伝子転写に導く。
【0004】
アンドロゲン療法は、生殖障害、および、男性の一次性または二次性の性腺機能低下症のような様々な障害を治療してきた。さらに、天然または合成のいくつかのARアゴニストが、骨疾患のような筋骨格障害、造血障害、神経筋疾患、リウマチ病的疾患、衰弱性疾患を治療するため、および、女性のアンドロゲン不足のようなホルモン置換療法(HRT)のために開発されてきた。さらに、フルタミドおよびビカルタミドのようなARアンタゴニストは前立腺癌の治療に使用されている。従って、ARの機能を組織選択的に活性化(“作動”)し、男性化および高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)抑制のような好ましくない男性性徴的特性を伴うことなくアンドロゲンの望ましい骨−および筋同化作用を生じるような化合物を得ることは有用であろう。
【0005】
閉経後骨粗鬆症の骨に対してアンドロゲンが有益な効果を有することはテストステロンおよびエストロゲンを併用投与した最近の試験で報告された[Hofbauerら,Eur.J.Edocrinol.140:271−286(1999)]。2年をかけた大規模なダブルブラインド比較試験では、複合エストロゲンによる単独療法が骨減量を防止するのに比べて複合エストロゲン(CEE)とメチルテストステロンとの併用経口投与は脊椎および腰椎の骨質量の増加促進に効果があることが証明された[J.Reprod.Med.,44:1012−1020(1999)]。
【0006】
さらに、CEEとメチルテストステロンとによって治療した女性ではホットフラッシュが減少することも証明されている。しかしながら、治療した女性の30%がかなりのニキビ増加および顔面の増毛に悩んでおり、これらは現用のすべてのアンドロゲン薬理療法に生じる合併症である[Wattsら,Obstet.Gynecol.,85:529−537(1995)]。また別の試験で観察されたように、CEEにメチルテストステロンを加えるとHDLレベルが低下することも知見された。このような現用のアンドロゲン療法に伴う男性化の可能性および脂質プロフィルに対する影響が組織選択的アンドロゲン受容体アゴニストの開発を促す理論的根拠を与える。
【0007】
アンドロゲンはヒトの骨代謝に重要な役割を果たす[Andersonら,“Androgen supplementation in eugonadal men with osteoporosis−effects of six months of treatment on bone mineral density and cardiovascular risk factors,”Bone,18:171−177(1996)]。性機能正常(eugonadal)であっても骨粗鬆症のある男性のテストステロン治療に対する治療応答は、アンドロゲンが多大な骨代謝効果を発揮することを示す。250mgのテストステロンエステルの筋肉内投与に応答して腰椎の平均BMDは5または6カ月で0.799gm/cm2から0.839g/cm2に増加した。従ってSARMは男性の骨粗鬆症の治療に使用できる。
【0008】
アンドロゲン不足は、アンドロゲン遮断療法(ADT)を受けているステージDの前立腺癌(転移性)の男性に生じる。内分泌性の精巣摘出術は長期作用性GnRHアゴニストによって行われ、アンドロゲン受容体遮断はARアンタゴニストによって行われる。ホルモン遮断に応答してこれらの男性はホットフラッシュ、有意な骨減量、衰弱および疲労に悩まされる。ステージDの前立腺癌男性のパイロット試験では、1年以上ADTを受けた男性患者はADTを受けなかった患者を上回る骨減少症(50%対38%)および骨粗鬆症(38%対25%)を示した[Weiら,Urology,54:607−611(1999)]。ADTを受けた男性では腰椎BMDが有意に減少していた。従って、骨および筋肉中でアンタゴニスト作用を生じない前立腺組織選択的ARアンタゴニストは、単独でまたは伝統的ADTの補助薬として、有用な前立腺癌治療薬になり得る[参照:A.Stochら,J.Clin.Endocrin.Metab.,86:2787−2791(2001)]。
【0009】
組織選択的ARアンタゴニストはまた、閉経女性の多房性卵巣症候群も治療できる。参照:C.A.Eaglesonら,“Polycystic ovarian syndrome:evidence that flutamide restores sensitivity of the gonadotropin−releasing hormone pulse generator to inhibition by estradiol and progesterone,”J.Clin.Endocrinol.Metab.,85:4047−4052(2000)。
【0010】
また、アンドロゲンが腎肥大およびエリスロポエチン(EPO)産生を刺激するので、SARMはある種の造血障害も治療できる。組換えヒトEPOが導入される以前には、慢性腎不全に起因する貧血を治療するためにアンドロゲンが使用されていた。さらに、アンドロゲンは、重篤でない再生不能性貧血および骨髄形成異常症候群のような貧血患者の血清EPOレベルを上昇させる。貧血治療にはSARMが与えるような選択的作用が必要であろう。
【0011】
SARMはまた、肥満症治療の補助薬として臨床的価値を有し得る。この体脂肪減少方法は、アンドロゲン投与が肥満患者の皮下脂肪および内臓脂肪を減少させたという所見の報告によって支持されている[J.C.Lovejoyら,“Oral anabolic steroid treatment,but not parenteral androgen treatment,decreases abdominal fat in obese,older men,”Int.J.Obesity,19:614−624(1995)],[J.C.Lovejoyら,“Exogenous Androgens Influence Body Composition and Regional Body Fat Distribution in Obese Postmenopausal Women−A Clinical Research Center Study,”J.Clin.Endocrinol.Metab.,81:2198−2203(1996)]。従って、不要なアンドロゲン作用のないSARMは肥満症の治療に有益であり得る。
【0012】
アンドロゲン受容体アゴニストはまた、特に男性の代謝症候群(インスリン抵抗性症候群、X症候群)に対して治療有効性を有し得る。男性の2型糖尿病、内臓肥満症、インスリン抵抗性(高インスリン血症、異常脂血症)および代謝症候群には総テストステロンおよび遊離テストステロンならびに性ホルモン結合性グロブリン(SHBG)のレベル低下が付随していた。参照:D.Laaksonenら,Diabetes Care,27(5):1036−1041(2004);D.Laaksonenら,Euro.J Endocrin,149:601−608(2003);P.Marinら,Int.J.Obesity.16:991−997(1992)およびP.Marinら,Obesity Res.,1(4):245−251(1993)。
【0013】
アンドロゲン受容体アゴニストはまた、アルツハイマー病(AD)のような神経変性疾患に治療有効性を有し得る。アンドロゲン受容体を介して神経保護を誘導するアンドロゲンの能力は、J.Hammondら,“Testosterone−mediated neuroprotection through the androgen receptor in human primary neurons,”J.Neurochem.,77:1319−1326(2001)によって報告された。Gourasらは、テストステロンがアルツハイマー病のβ−アミロイドペプチドの分泌を減少させること、従ってADの治療に使用できることを報告した。[(Proc.Nat.Acad.Sci.,97:1202−1205(2000)]。ADの進行に関与するタンパク質の超リン酸化の阻害メカニズムも記載されている[S.Papasozomenos,“Testosterone prevents the heat shock−induced over activation of glycogen synthase kinase−3β but not of cyclin−dependent kinase 5 and c−Jun NH2−terminal kinase and concomitantly abolishes hyperphosphorylation of τ:Implications for Alzheimer’s disease,”Proc.Nat.Acad.Sci.,99:140−1145(2002)]。
【0014】
アンドロゲン受容体アゴニストはまた、筋の緊張および強度に有益な効果を有し得る。最近の研究は、“健康な性機能低下男性の生理的アンドロゲン置換が無脂肪体重、筋肉の大きさおよび最高随意強度の有意な向上に関連している”ことを証明した[S.Bhasinら,J.Endocrin.,170:27−38(2001)]。
【0015】
アンドロゲン受容体モジュレーターは、男性および女性のリビドー低下を治療するために有用である。男性のアンドロゲン不足はリビドーの低下につながる。S.Howellら,Br.J.Cancer,82:158−161。生殖可能年齢後期の多くの女性の低いアンドロゲンレベルは性的関心の減退の一因である。S.Davis,J.Clin.Endocrinol.Metab.,84:1886−1891(1999)。1つの研究によれば、循環する遊離テストステロンが性的欲望にプラスの相関関係を有していた。同上。別の研究では、一次性または二次性のアドレナリン不足の女性に生理的DHEA置換(50mg/日)を行った。DHEAを投与した女性ではプラセーボを接種した女性に比べて、性的な期待、関心および満足の頻度が増加していた。W.Arltら,N Engl.J.Med.341:1013−1020(1999)。他の参考文献:K.Miller,J.Clin.Endocrinol.Metab.,86:2395−2401(2001)。
【0016】
さらに、アンドロゲン受容体モジュレーターはまた、認識損傷の治療に有用であろう。最近の研究では、高用量の経口エストロゲンを単独でまたは高用量の経口メチルテストステロンと併用で閉経女性に4カ月間投与した。4ヶ月間のホルモン治療の前後に認識試験を行った。この調査では、エストロゲン(1.25mg)とメチルテストステロン(2.50mg)とを併用で服用した女性は記憶蓄積作業で一定レベルの成果を維持したが、エストロゲン(1.25mg)だけを服用した女性は低い成果を示したことが知見された。A.Wisniewski,Horm.Res.58:150−155(2002)。
【発明の開示】
【0017】
N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドは以下の構造式を有している:
【0018】
【化1】
【0019】
この化合物は、2003年9月25日公開の国際出願WO03/077919にすでに開示されている。
【0020】
(発明の概要)
本発明は、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質多形、擬似多形および非晶質固体形、それらの使用および医薬組成物に関する。本発明はさらに、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの非晶質および結晶質固体形の製造方法を提供する。
【0021】
有効材料の様々な物理化学的特性を知ることは、例えばその製造および医薬加工、および/または、その保存、運送および治療用途を含む化合物のライフサイクルのすべての面で最適に該材料を使用するために重要である。薬理学的に有効な化合物が、例えば不十分な粉砕特性または不十分な溶解特性のような好ましくない物理的特性を有するが故に適切な医薬組成物に作製できないこともある。
【0022】
本発明の1つの目的は、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質多形性および擬似多形性および非晶質の固体形を提供することである。本発明の非晶質および結晶質の固体形は、優れた物理化学的特性、すなわち、望ましい安定性、望ましい医薬特性および優れた加工特性を有している。本発明の結晶質および非晶質の固体形は特に医薬用途に適応するように様々な配合ビヒクルに組込むことができる。
【0023】
固体形の式Iの化合物はアンドロゲン受容体アゴニストとして有効であり、特にSARMとして有効である。従って、本発明の多形性、擬似多形性および非晶質の固体形は、アンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン投与によって軽減できる状態の治療に有用である。
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、構造式:
【0025】
【化2】
を有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質溶媒和物、水和物および無水物を含む多形および擬似多形ならびに非晶質固体形を提供する。本発明はまた固体形の本発明の化合物と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0026】
多形は、結晶格子中に異なる配列および/または立体配座の分子を有している同じ化合物の2つ以上の結晶相である。1つの有効医薬化合物の異なる多形は異なる物理的および化学的特性を示し得る。所与の有効医薬化合物の異なる物理的および化学的特性はまた水分/溶媒含量に左右される。擬似多形は、1つの化合物の水和物および溶媒和物を含む。擬似多形は1種類以上の溶媒または水を化合物の結晶格子に取込んでいる。
【0027】
1つの化合物の固態物性は、固体形の化合物を得るときの条件をコントロールすることによって操作できる。1つの化合物の異なる結晶構造は、色、安定性、加工性、溶解性および生体内利用率のような物理的および化学的特性の違いを示す。例えば、粒子が互いにどのように行き交うかを左右する流動性はこのような固態物性の1つであり、これは化合物がどのように粉砕されるかを左右する。不十分な流動性を補償して粉砕し易い医薬錠剤を得るために、医薬の配合業者はしばしば潤滑剤または滑沢剤として作用するタルクまたはデンプンのような他の補助成分を医薬組成物に添加しなければならない。好適な流動性および粉砕性を示す固体形の有効成分を選択することによってこのような補助成分の使用量を最小にするのが有利であろう。
【0028】
化合物の別の固態物性は流体中例えば水中の溶解速度である。有効成分の溶解性は医薬製品の貯蔵安定性を左右する。さらに、有効成分の溶解速度は、経口投与された有効成分が患者の血流に到達できる速度を左右する。適当な固体形の選択によって有効成分の貯蔵安定性および/または溶解速度を最大にできる。
【0029】
さらに、製薬産業では特定の固体形態の同定、製造および管理が臨床試験においてもまたは他の研究試験においても重要である。1つの薬物の所与の多形が臨床試験中に定常的に維持されないとき、コントロールできないエラー源が試験に導入されるので、試験中の正確な剤形を各ロット間で比較できない。
【0030】
一般に、所与の化合物が様々な結晶質固体形を形成するか否かを予測することは困難である。これらの異なる結晶質固体形の構造的立体配置および物理的特性を予測することはいっそう困難である。
【0031】
医薬的に有効な化合物の様々な多形、擬似多形および非晶質形を同定し利用して異なる物理的特性をもつ固体形の一覧表を作成するのが有利であろう。そうすることによって、例えば特定の溶解速度、粉砕特性、熱安定性または保存寿命のような特定の望ましい特性をもつ医薬剤形を設計できる。
【0032】
本発明の1つの実施態様は、5.6+/−0.1、7.6+/−0.1および9.6+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつX線粉末回折(XRPD)パターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質固体形Aの遊離塩基である。無水結晶質形Aはさらに、11.2+/−0.1、13.4+/−0.1および15.2+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。無水結晶質形Aはさらにまた、16.3+/−0.1および17.3+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする
【0033】
式Iの化合物の無水結晶質固体形Aの遊離塩基は、39.7、118.3、169.2および12.6+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを有している固体炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトル(炭素−13 CPMAS NMR)を示す。結晶質固体形Aはさらに、44.0、121.4、158.2および13.7+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを特徴とする。化合物Iの無水結晶質形Aはさらにまた、49.5、145.4、126.5および25.0+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを特徴とする。図2は式Iの化合物の無水結晶質形Aの固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0034】
また別の実施態様では、化合物Iの無水結晶質形Aの固体フッ素−19交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルを図3に示す。無水結晶質固体形は−128.9+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを示す。
【0035】
本発明の1つの実施態様では、化合物Iの無水結晶質形Aが図4に示すDSC曲線を有している。融解吸熱線は約281.2℃にピークを示す。
【0036】
本発明の1つの実施態様は、a)少なくとも1種類の溶媒に化合物を溶解して混合物を形成する段階と、b)結晶化が完了して固体が形成されるまで混合物を還流させる段階と、c)固体を単離する段階と、d)固体を乾燥する段階とを含む式Iの化合物の無水結晶質形Aの製造方法に関する。
【0037】
本発明の1つの実施態様では、少なくとも1種類の溶媒が、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテートおよびアセトンから選択される。
【0038】
本発明の1つの実施態様では、固体を単離する段階がさらに、固体を真空フィルターで濾過し、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテートおよびアセトンから選択された少なくとも1種類の洗浄用溶媒で固体を洗浄する段階を含む。
【0039】
本発明の別の実施態様では、溶媒が1,2−ジメトキシエタンである。
【0040】
本発明の1つの実施態様は、7.8+/−0.1、8.5+/−0.1および10.2+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの吸湿性結晶質形Bである。吸湿性結晶質形Bはさらに、12.2+/−0.1、12.6+/−0.1および13.5+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。吸湿性結晶質形Bはさらにまた、13.9+/−0.1および16.8+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。吸湿性結晶質形BのXRPDを図5に示す。
【0041】
本発明の1つの実施態様では、化合物Iの吸湿性結晶質形Bが図6に示すDSC曲線を有している。DSC温度記録図は、TGAの初期重量減に対応する約66.0℃中心の広範囲の吸熱線と、これに続く約164.0℃の融解吸熱点を有している。
【0042】
本発明の別の実施態様は、非晶質N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドを溶媒に溶解し、非晶質形を確実に溶解するために混合物を加温し、混合物を冷却し、混合物に針(結晶)を形成させ、形成された固体を洗浄用溶媒で洗浄し、固体を乾燥することによって行う化合物Iの吸湿性結晶質形Bの形成を含む。1つの実施態様で、溶媒はエタノールであり、洗浄用溶媒はエタノールである。本発明の別の実施態様で、非晶質形対溶媒の比は質量基準で3:4、例えば3グラムの非晶質形化合物に対して4(約5ml)のエタノールである。また別の実施態様では溶液を約60℃に加熱する。
【0043】
動的吸湿性試験では、吸湿性結晶質形Bが25℃、相対湿度約25%から約95%までの範囲で約7%の水分を次第に吸収する。重量増加は25%RHの初期サンプル全重量を基準とする。さらに、吸湿性結晶質形Bは25℃で相対湿度が95%から5%RHに減少したときにその全重量の約8%を失う。結晶質形Bの結晶化度は水分の吸収−脱着後にゆっくりと低下する。
【0044】
本発明の別の実施態様は、10.1+/−0.1、11.0+/−0.1および12.4+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつXRPDパターンを有している式Iの化合物の結晶質水和物固体形Cである。結晶質水和物形Cはさらに、13.2+/−0.1、14.1+/−0.1および18.9+/−0.1に2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。結晶質水和物形Cはさらにまた、20.3+/−0.1および22.7+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。結晶質水和物形CのXRPDを図7に示す。
【0045】
本発明の別の実施態様は、図8に示す化合物Iの結晶質水和物形CのDSC曲線である。約127.7℃中心の広範囲の脱水吸熱線、約200.9℃の結晶化発熱活性、約268.0℃の融解/分解吸熱点が順次に存在する。約25℃から約150℃までの約4.5%の形Cの初期重量減の原因は脱水(一水和物の理論値3.6%)であり、次いで250℃以上で熱分解する。
【0046】
結晶質水和物形Cは、撹拌容器で結晶質エタノラート形Gを水に懸濁させ、混合物を暫時熟成することによって製造できる。本発明の1つの実施態様で、結晶質エタノラート形G対水の比は質量基準で約1:100である。
【0047】
本発明の1つの実施態様は、8.8+/−0.1、9.9+/−0.1および12.5+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつXRPDパターンを有している式Iの化合物の無水結晶質形Dである。無水結晶質形Dはさらに、14.8+/−0.1、16.3+/−0.1および17.9+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。無水結晶質形Dはさらにまた、14.3+/−0.1、15.2+/−0.1および16.8+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。無水結晶質形DのXRPDを図9に示す。
【0048】
式Iの化合物の無水結晶質固体形Dの遊離塩基は、23.8、37.9および174.1+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを有している固体炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトル(炭素−13 CPMAS NMR)を有している。結晶質固体形Dはさらに、13.8、48.8および156.9+/−0.1の化学シフト値をもつシグナルを特徴とする。化合物Iの無水結晶質形Dはさらにまた、20.9、33.6および121.2+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを示すことを特徴とする。図10は式Iの化合物の無水結晶質形Dの固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0049】
また別の実施態様では、化合物Iの無水結晶質形Dの固体フッ素−19 CPMAS NMRスペクトルを図11に示す。無水結晶質固体形は−127.7および−128.9+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを示す。
【0050】
本発明の別の実施態様は、図12に示す化合物Iの形DのDSC曲線である。このDSC曲線は約273℃にピークをもつ融解吸熱線を示す。
【0051】
無水結晶質形Dは、四水和物形Eを少なくとも1種類の溶媒に溶解して溶液を形成し、少なくとも1種類のアンチ溶媒を溶液が過飽和になるまで溶液に充填し、バッチを熟成し、場合によっては固体が形成されるまで追加量のアンチ溶媒を添加するかまたはバッチを冷却することによって製造される。溶液に形Dのシードを播種することによって過飽和溶液からの固体形成を促進し得る。
【0052】
少なくとも1種類の溶媒の非限定例は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびN――メチル−2−ピロリドン(NMP)から選択される。少なくとも1種類のアンチ溶媒の非限定例は、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン、水、アセトニトリル、イソプロピルアセテート、イソブチルアセテートおよびメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)から選択される。溶媒/アンチ溶媒系の非限定例は、メタノール/水、DMSO/水、および、NMP/水を含む。
【0053】
図13は、本発明の別の実施態様、結晶質四水和物形EのX線回折パターンを示す。四水和物形Eは6.1+/−0.1、12.8+/−0.1および13.1+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークを有している。四水和物形Eはさらに、13.9+/−0.1、17.6+/−0.1および19.0+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。四水和物形Eはさらにまた、19.8+/−0.1および22.6+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。
【0054】
式Iの化合物の四水和物形Eの遊離塩基は、13.1、28.9、39.3.および154.2+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを有している固体炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトル(炭素−13 CPMAS NMR)を示す。四水和物形Eはさらに、14.6、49.9、173.2および120.6+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを特徴とする。化合物Iの四水和物形Fはさらにまた、23.4、35.1、63.6および161.1+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを示すことを特徴とする。図14は、式Iの化合物の四水和物形Fの固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0055】
また別の実施態様では、化合物Iの四水和物形Eの固体フッ素−19 CPMAS NMRスペクトルを図15に示す。四水和物形Eは−126.5、−128.0および−129.3+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを示す。
【0056】
図16は、化合物Iの結晶質四水和物形EのDSC曲線である。約90℃を中心とする広い吸熱線はサンプルから水が失われ、次いで新しい形に再結晶化し、その後約177℃にこの形の融解吸熱線が存在することを示す。
【0057】
四水和物形Eは、無水結晶質遊離塩基形AをpH約2以下の溶液に入れ、室温および周囲条件下に維持することによって製造できる。
【0058】
本発明の別の実施態様は、6.3+/−0.1、7.6+/−0.1および12.5+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつXRPDパターンを有している化合物Iのセスキ水和物形Fである。セスキ水和物形Fはさらに、13.5+/−0.1、15.5+/−0.1および18.3+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。セスキ水和物形Fはさらにまた、19.7+/−0.1および21.0+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。セスキ水和物形FのXRPDを図17に示す。
【0059】
図18は、化合物Iのセスキ水和物形FのDSC曲線である。DSCトレースは、脱水によって吸熱線のかなりの低下が観察された四水和物形EのDSCトレースと同様の性質を示す。DSCトレースは閉鎖蒸発皿で25℃から350℃まで10℃/分の加熱速度を用いて作成した。サンプルの初期重量を基準として約5.1%の全重量減が観察された。セスキ水和物の理論的重量減は5.3%と算出された。
【0060】
セスキ水和物形Fは、四水和物形Eを40℃で少なくとも10時間真空乾燥することによって製造できる。
【0061】
本発明の1つの実施態様は、8.2+/−0.1、10.0+0.1および13.4+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつX線粉末回折(XRPD)パターンを有している化合物Iの結晶質エタノラート形Gである。結晶質エタノラート形Gはさらに、14.6+/−0.1、15.3+/−0.1および16.4+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。無水結晶質エタノラート形Gはさらにまた、18.1+/−0.1および19.8+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。図19は結晶質エタノラート形GのX線回折パターンを示す。
【0062】
図20は、化合物Iの結晶質エタノラート形Gの代表的DSC曲線を示す。結晶質エタノラート形GのDSCトレースは、約97.1℃および121.6℃を中心とする2つの広い脱溶媒和吸熱線および約165.9℃の融解吸熱点を順次に示す。
【0063】
25℃から100℃の間の約5.0%の全重量減は結晶質エタノラート形Gに典型的である。熱分解は約250℃以上で生じる。初期重量減から発生するガスは、TGA炉排気に接続した質量分析計を使用してエタノールであることが確認された。
【0064】
結晶質エタノラート形Gは、非晶質N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドをエタノールに溶解し、溶液を約60℃に加熱し、次いで固体が得られるまで混合物を室温に冷却することによって形成できる。
【0065】
1つの実施態様すなわち本発明の1つの多形/擬似多形は、“実質的に純粋”であり、少なくとも約85%の多形性/擬似多形性純度を有している。すなわち、特定の結晶質形に関して考察すると、該結晶質形は、他の多形性、非晶質性および/または擬似多形性の形を含む不純物を約15重量%未満含有する。この実施態様の1つの変形では、多形性/擬似多形性純度が少なくとも95%である。
【0066】
別の実施態様で、式Iの化合物の非晶質形は“実質的に純粋”であり、少なくとも約85%の純度を有している。すなわち、式Iの化合物の固体形に関して考察すると、該非晶質形は、他の多形性および/または擬似多形性の形を含む不純物を約15重量%未満含有する。この実施態様の1つの変形では、非晶質純度が少なくとも95%である。典型的な非晶質材料のXRPDパターンを図21に示す。
【0067】
X線粉末回折試験は、分子構造、結晶化度および多形性を特性決定するために広く使用されている。式Iの化合物の結晶質形のX線粉末回折(XRPD)パターンは、PW3040/60コンソールを備えたPhilips Analytical X’Pert PROX線回折システムで作成した。PW3373/00セラミックCu LEF X線管のKα線をソースとして使用した。
【0068】
上述のX線粉末回折パターンに加えて、化合物Iの結晶質形をさらに、固体炭素−13およびフッ素−19核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって特性決定した。固体炭素−13NMRスペクトルは、Bruker DSX 400WB NMRシステムにBruker 4mm二重共鳴CPMASプローブを使用して得られた。炭素−13 NMRスペクトルは、プロトン/炭素−13交差分極マジックアングルスピニングを可変振幅交差分極および全サイドバンド削除で使用した。サンプルを10.0kHzでスピンさせ、合計1024のスキャンをリサイクル遅延10秒で集めた。FTを行う前にスペクトルに10Hzのラインブロードニングを加えた。化学シフトは、グリシンのカルボニル炭素(176.03p.p.m.)を第二基準として使用しTMSスケールで報告する。
【0069】
固体フッ素−19NMRスペクトルは、Bruker DSX 500WB NMRシステムにBruker 4mm H/F/Xプローブを使用して得られた。該NMRスペクトルは、プロトン/フッ素−19交差分極マジックアングルスピニングを可変振幅交差分極および62.5HzのTPPMデカップリングで使用した。サンプルを15.0kHzでスピンさせ、合計150のスキャンをリサイクル遅延5秒で集めた。FTを行う前にスペクトルに10Hzのラインブロードニングを加えた。化学シフトは、外部第二基準として化学シフト−122ppmのポリ(テトラフルオロエチレン)(テフロン(登録商標))を使用して報告する。
【0070】
示差走査熱量計(DSC)データは、TA Instruments DSC 2910または同等の計器を使用して取得した。1から6mgのサンプルを蓋のない蒸発皿で計量する。次にこの蒸発皿を縁曲げし、熱量計セルのサンプル位置に配置する。空の蒸発皿を参照位置に配置する。熱量計セルを閉じ、窒素流をセルに通す。加熱プログラムはサンプルを10℃/分の加熱速度で約300℃の温度まで加熱するように設定する。加熱プログラムを開始させる。ランが完了すると、システムソフトウェアに内蔵されたDSC解析プログラムを使用してデータを解析する。吸熱線が観察される温度範囲より上または下にあるベースライン温度点間の融解吸熱線を積分する。報告したデータは開始温度、ピーク温度およびエンタルピーである。
【0071】
本発明の1つの実施態様はN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの非晶質固体形である。図21は化合物Iの非晶質形の典型的なXRPDパターンを示す。
【0072】
本発明の固体形は、2つ以上の形の混合物を含み得る。本発明の固体形の混合物は、混合物中に存在する種々の多形のおのおのの特性X線回折ピークを有するであろう。
【0073】
SARMとして同定された本発明化合物の固体形は、アンドロゲン不足によって発症しアンドロゲン投与によって軽減できる疾患または状態を治療するために有用である。このような非晶質形、溶媒和物形および結晶質形は、単独療法で、または、ビスホスホネート、エストロゲン、SERM類、カテプシンKインヒビター、αvβ3インテグリン受容体アンタゴニスト、カルシトニンおよびプロトンポンプインヒビターのような骨吸収インヒビターと併用して女性および男性の骨粗鬆症の治療に理想的である。それらはまた、上皮小体ホルモンまたはその類似体のような骨形成を刺激する薬剤と共に使用できる。本発明のSARM化合物の様々な固体形はまた、前立腺癌および良性前立腺過形成(BPH)のような前立腺疾患治療のために単独でまたは他の薬剤と組合せて使用できる。さらに、固体形の本発明の化合物は、皮膚に対する作用(ニキビおよび顔面の体毛増殖)が極めて少なく、多毛症の治療にも有用である。さらに、構造式Iの化合物は筋成長を刺激でき、筋減少症および脆化の治療に有用である。それらは肥満症の治療で内臓脂肪を減少させるために使用できる。さらに本発明の化合物は、中枢神経系でアンドロゲンアゴニズムを示し、血管運動症状(ホットフラッシュ)を治療するため、ならびに、エネルギーおよびリビドーを増加するために有用である。それらは、アルツハイマー病の治療に使用できる。
【0074】
固体形の式Iの化合物はまた、骨修復能力を有するので前立腺癌の治療に単独でまたはGnRHアゴニスト/アンタゴニスト療法の補助薬として使用でき、または、前立腺のアンドロゲンに拮抗し骨減量を極めて少なくする能力を有するので抗アンドロゲン療法に代替使用できる。さらに、本発明の化合物は、骨修復能力を有するので膵臓癌の治療に抗アンドロゲン治療の補助薬として使用でき、または抗アンドロゲン特性を利用して単独療法に使用でき、伝統的な抗アンドロゲンに比べて骨節約性であるという利点を提供する。さらに本発明の化合物は、赤血球および血小板のような血液細胞の数を増加させ、再生不能性貧血のような造血障害の治療に有用である。上述したような組織選択的アンドロゲン受容体アゴニズムを考察すると、結晶質および非晶質形の式Iの化合物は性機能低下(アンドロゲン不足)男性のホルモン置換療法に理想的である。
【0075】
本発明はまた、腹部脂肪過多、代謝症候群(“インスリン抵抗性症候群”および“X症候群”としても知られる)およびII型糖尿病の男性患者を安全にかつ特異的に治療する方法に関する。
【0076】
式Iの化合物はアンドロゲン受容体の組織選択的モジュレーター(SARM)であることが知見された。1つの特徴によれば、固体形の本発明の化合物は、哺乳動物のアンドロゲン受容体の機能を活性化するため、特に骨および/または筋組織のアンドロゲン受容体の機能を活性化し男性個体の前立腺または女性個体の子宮のアンドロゲン受容体の機能を阻止または阻害(“拮抗”)するために有用である。
【0077】
本発明の別の目的は、皮膚の増毛や声帯に影響を与えることなく男性個体の前立腺または女性個体の子宮でARアゴニストによって誘導されるアンドロゲン受容体の機能を弱化または遮断するため、ならびに、血液脂質レベルをコントロールする器官(例えば肝)の機能を活性化しないが骨および/または筋組織のアンドロゲン受容体の機能を活性化するための非晶質形または結晶質形の式Iの化合物の使用である。
【0078】
構造式Iの化合物は典型的にはサブマイクロモルでアンドロゲン受容体に結合親和性を示す。従って本発明の化合物は、アンドロゲン受容体機能に関連した障害に悩む哺乳動物の治療に有用である。(1つ以上の)多形、(1つ以上の)擬似多形および非晶質形ならびにそれらの混合物を含む化合物を治療有効量で哺乳動物に投与して、アンドロゲン不足のようなアンドロゲン受容体機能に関連する障害、アンドロゲン置換によって軽減できるかまたはアンドロゲン置換によって改善できる障害を治療する。これらの例は、低下した筋緊張の強化、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、骨折(例えば脊椎骨および非脊椎骨の骨折)、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、脆化、加齢肌、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、再生不能性貧血、他の造血障害、膵臓癌、炎症性関節炎および関節修復、HIV衰弱、前立腺癌、良性前立腺過形成(BPH)、癌カテキシー、アルツハイマー病、筋ジストロフィー、認識減退、性的機能不全、睡眠時無呼吸、抑鬱、未熟卵巣不全および自己免疫疾患を含む。治療は、このような治療を要する哺乳動物に治療有効量の構造式Iの化合物を投与することによって行う。さらに、固体形の式Iの化合物は単独でまたは他の有効薬剤と組合せて医薬組成物の成分として有用である。
【0079】
1つの実施態様では、非晶質および結晶質固体形の本発明の化合物が骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、HIV衰弱、前立腺癌、癌カテキシー、肥満症、関節炎状態、再生不能性貧血のような貧血、筋ジストロフィー、アルツハイマー病、認識減退、性的機能不全、睡眠時無呼吸、抑鬱、良性前立腺過形成(BPH)、腹部脂肪過多、代謝症候群、II型糖尿病およびアテローム性動脈硬化症を非限定例とするアンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン置換によって軽減できる男性個体の状態を治療するために単独でまたは他の有効薬剤と組合せて使用できる。治療は、このような治療を要する男性個体に治療有効量の構造式Iの化合物を投与することによって行う。
【0080】
“関節炎状態”または“関節炎状態群”という用語は、炎症性病巣が関節に限定されている疾患または関節の何らかの炎症状態を表し、もっとも顕著な例は骨関節炎およびリウマトイド関節炎である(Academic Press Dictionary of Science Technology;Academic Press;1st edition,January 15,1992)。本発明の式Iの化合物はまた単独でまたは組合せて、ベーチェット病;滑液嚢炎および腱炎;CPPD沈着疾患;手根管症候群;エーラース・ダンロス症候群;線維筋痛症;痛風;感染性関節炎;炎症性腸疾患;若年性関節炎;ループス・エリテマトーデス;ライム病;マルファン症候群;筋炎;骨関節炎;骨形成不全症;骨壊死;多発性関節炎;多発性リウマチ性筋痛症;乾癬性関節炎;レイノー現象;反射性交感神経異栄養症候群;ライター症候群;リウマトイド関節炎;強皮症;シェーグレン症候群のような関節炎状態の治療または予防に使用できる。本発明の1つの実施態様は、非晶質および結晶質形の式Iの化合物を単独でまたは混合物として治療有効量で投与する段階を含む関節炎状態の治療または予防を包含する。より下位概念的な実施態様は、治療有効量の式Iの化合物を投与する段階を含む骨関節炎の治療または予防である。参照:Cutolo M,Seriolo B,Villaggio B,Pizzorni C,Craviotto C,Sulli A,Ann.N.Y.Acad.Sci.2002 Jun;966:131−42;Cutolo,M.Rheum Pis Clin North Am 2000 Nov;26(4):881−95;Bijlsma JW、Van den Brink HR.Am J Reprod Immunol 1992 Oct−Dec;28(3−4):231−4;Jansson L.Holmdahl R.;Arthritis Rheum 2001 Sep;44(9):2168−75;Purdie DW.Br Med Bull 2000;56(3):809−23。同じく参照:Merck Manual,17th edition,pp.449−451。
【0081】
関節炎状態を治療するために組合せ使用されるとき、式Iの化合物は、併用療法に有用な本文中に記載の薬物のいずれかと共に使用できるか、または、コルチコステロイド、細胞障害薬(または他の疾患調節薬または寛解誘導薬)、金治療、メトトレキセート、NSAIDおよびCOX−2インヒビターのような関節炎状態を治療または予防する公知の薬物と共に使用できる。
【0082】
別の実施態様では本発明の化合物は、骨粗鬆症、骨減少症、加齢肌、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、閉経後症状、歯周病、HIV衰弱、癌カテキシー、肥満症、再生不能性貧血のような貧血、筋ジストロフィー、アルツハイマー病、未熟卵巣不全、認識減退、性的機能不全、抑鬱、炎症性関節炎および関節修復、アテローム性動脈硬化症および自己免疫疾患を非限定例とする、アンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン置換によって軽減できる女性個体の状態を治療するために単独でまたは他の有効薬剤と組合せて使用できる。治療は、このような治療を要する女性個体に治療有効量の構造式Iの化合物を投与することによって行う。
【0083】
式Iの化合物はまた、例えばヒトのような哺乳動物の筋緊張の強化に有用である。非晶質および結晶質形の構造式Iの化合物はまた、前立腺癌の治療において伝統的アンドロゲン遮断療法の補助薬として、骨を修復し、骨減量を最小にし、骨ミネラル密度を維持するために使用できる。すなわち、これらは、P.Limontaら,Exp.Opin.Invest.Drugs,10:709−720(2001);HJ.Strieker,Urology,58(Suppl.2A):24−27(2001);R.P.Millarら,British Medical Bulletin.56:761−772(2000);A.V.Schallyら,Advanced Drug Delivery Reviews,28:157−169(1997)に開示されているようなGnRHアゴニスト/アンタゴニストを含む伝統的なアンドロゲン遮断療法と共に使用できる。固体形の式Iの化合物は、フルタミド、2−ヒドロキシフルタミド(フルタミドの活性代謝産物)、ニルタミドおよびビカルタミド(CasodexTM)のような抗アンドロゲン剤と組合せて前立腺癌の治療に使用できる。
【0084】
さらに、本発明はまた、それらのアンドロゲンアンタゴニスト特性を利用してまたはフルタミド、2−ヒドロキシフルタミド(フルタミドの活性代謝産物)、ニルタミドおよびビカルタミド(CasodexTM)のような抗アンドロゲン剤の補助薬として膵臓癌の治療に使用できる。
【0085】
“癌を治療する”または“癌の治療”という用語は、癌状態に罹った哺乳動物への投与を表し、また、癌細胞を殺すことによって癌状態を軽減する効果ならびに癌の増殖および/または転移を阻害する効果を表す。
【0086】
構造式Iの化合物は、脂質代謝に対する副作用を最小にできる。従って、それらの組織選択的アンドロゲンアゴニスト特性を考察すると、本発明の化合物は、性機能低下(アンドロゲン不足)の男性個体のホルモン置換療法として既存の方法を凌駕する利点を示す。
【0087】
さらに、構造式Iの化合物は、赤血球および血小板のような血液細胞の数を増加し、再生不能性貧血のような造血障害の治療に使用できる。
【0088】
本発明の1つの実施態様では、低下した筋緊張の強化、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、骨折、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、脆化、加齢肌、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、再生不能性貧血およびその他の造血障害、膵臓癌、炎症性関節炎および関節修復、HIV衰弱、前立腺癌、良性前立腺過形成(BPH)、癌カテキシー、アルツハイマー病、筋ジストロフィー、認識減退、性的機能不全、睡眠時無呼吸、抑鬱、未熟卵巣不全および自己免疫疾患から選択された障害を治療または改善するために治療有効量の非晶質、多形性および擬似多形性の形の式Iの化合物を哺乳動物に投与する。
【0089】
別の実施態様では、低下した筋緊張、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、骨折、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、アルツハイマー病および脆化から選択された障害を治療または改善するために治療有効量の非晶質または結晶質形の式Iの化合物を単独でまたは組合せて使用できる。
【0090】
別の実施態様では、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、再生不能性貧血およびその他の造血障害、膵臓癌、炎症性関節炎および関節修復、HIV衰弱、前立腺癌、良性前立腺過形成(BPH)、癌カテキシー、筋ジストロフィー、認識減退、性的機能不全、睡眠時無呼吸、抑鬱、未熟卵巣不全および自己免疫疾患のような障害を治療または改善するために非晶質および結晶質形の本発明の化合物を使用できる。
【0091】
本発明の化合物の固体形は、鏡像異性体的に純粋な形態で投与できる。ラセミ混合物は多数の慣用方法のいずれかによって個別の鏡像異性体に分割できる。これらの方法としては、キラルクロマトグラフィー、キラル副剤で誘導体化し次いでクロマトグラフィーもしくは結晶化によって分離する方法、ジアステレオマー塩の分別結晶化、などがある。
【0092】
本発明でアンドロゲン受容体の“アゴニスト”として機能するために使用された本発明の式Iの化合物は、アンドロゲン受容体に結合し該受容体に特有の生理的または薬理的応答を開始させる。“組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーター”という用語は、いくつかの組織では天然リガンドの作用を模倣するが他の組織ではそうでないアンドロゲン受容体リガンドを表す。“部分アゴニスト”は、化合物の使用量にかかわりなく受容体集団の最大活性化を誘導できないアゴニストである。“完全アゴニスト”は、所与の濃度でアンドロゲン受容体集団の完全活性化を誘導する。アンドロゲン受容体の“アンタゴニスト”として機能する式Iの化合物は、アンドロゲン受容体に結合し、天然のアンドロゲン受容体リガンドによって正常に誘導されるアンドロゲン関連応答を遮断または阻害できる。
【0093】
“治療有効量”という用語は、組織、系、動物またはヒトの体内で研究者、獣医、内科医または他の臨床医が求めるような生物学的または医学的応答を誘発する構造式Iの化合物の量を意味する。
【0094】
本文中に使用した“組成物”という用語は、特定した成分を特定した量で含む生成物、および、特定した量の特定した成分の組合せから直接または間接に得られた生成物を含意する。
【0095】
“医薬的に許容される”という用語は、担体、希釈剤または賦形剤が配合物の他の成分と適合性でなければならないこと、および、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0096】
“化合物の投与”および“化合物を投与する”という用語は、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを要治療個体に与えることを意味すると理解されたい。
【0097】
“アンドロゲン受容体によって媒介される機能を組織選択的に変調する”という用語は、アンドロゲン受容体によって媒介される機能が、同化(骨および/または筋肉)組織で選択的に(または差別的に)変調され、前立腺、精巣、精嚢、卵巣、子宮のような男性性徴(生殖)組織およびその他の性別副存組織ではこのような変調が存在しないことを意味する。1つの実施態様では、同化組織中でアンドロゲン受容体の機能が活性化され、男性性徴組織中でアンドロゲン受容体の機能が遮断または抑制される。別の実施態様では、同化組織のアンドロゲン受容体の機能が遮断または抑制され、アンドロゲン性組織のアンドロゲン受容体の機能が活性化される。
【0098】
本発明の治療方法を実施するための非晶質または結晶質形の構造式Iの化合物の投与は、有効量の構造式Iの化合物をこのような治療または予防を必要とする患者に投与することによって行う。本発明方法による予防的投与の必要性は公知の危険要因に基づいて判断する。該当症例の担当医が最終分析で個々の化合物の有効量を決定するが、有効量は、治療すべき正確な疾患、疾患の重篤度、患者が罹患している他の疾患または状態、選択された投与経路、患者に同時に必要な他の薬物および治療とその他の医師の判断要因に従属する。
【0099】
固定用量薬として配合されるとき、このような合一型製品には、下記の薬用量範囲内の非晶質および結晶質形の式Iの化合物と、それぞれの認可薬用量範囲内の(1種以上の)他の医薬有効物質とが使用される。あるいは、合一型配合物が適当でないときは、非晶質および結晶質形の化合物を医薬的に許容される(1種以上の)既知の薬剤と順次に使用できる。
【0100】
一般に、非晶質または結晶質形の構造式Iの化合物の1日投薬量は、1日に成人で約0.01から約1000mgの広い範囲で変更できる。例えば、投薬量の範囲は約0.1から約200mg/日である。経口投与するための組成物は、治療される哺乳動物への投薬量を症状に応じて調節できるように、約0.01から約1000mg、例えば、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、3.0、5.0、6.0、10.0、15.0、25.0、50.0、75、100、125、150、175、180、200、225および500ミリグラムの有効成分を含有する錠剤の形態で提供される。
【0101】
投与は1日に一回の投与でもよく、または、1日の合計投薬量を2、3または4回に分割した用量で投与してもよい。さらに、投与に選択された個々の化合物の特性に基づいて、投与頻度をもっと少なく、例えば、週一回、週2回、月一回、などにしてもよい。もちろん、投与頻度が少なくなれば、これに対応して一回の投薬量は増加するであろう。
【0102】
鼻腔内経路、経皮経路、直腸もしくは膣内座薬または静注溶液として投与されるときはもちろん、投薬計画全体を通じて投薬が間欠的でなく連続的であろう。
【0103】
本発明の範例は、単独または組合せた非晶質および結晶質形の上述の化合物のいずれかと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物である。本発明の用例は1種以上の非晶質または結晶質形の式Iの化合物と医薬的に許容される担体とを組合せる段階を含む医薬組成物の製造方法である。
【0104】
医薬用途で本発明方法に使用される組織選択的アンドロゲン受容体の配合物は、非晶質または結晶質形の式Iの化合物を医薬的に許容されるその担体および場合により他の治療有効成分と共に含む。担体は医薬的に許容される担体でなければならないが、これは、配合物の他の成分と適合性であり配合物のレシピエント対象に有害でないという意味である。
【0105】
従って本発明はさらに、非晶質または結晶質形の構造式Iの化合物を医薬的に許容されるその担体と共に含む医薬配合物を提供する。配合物は、経口、直腸、膣内、鼻腔内、外用および非経口(皮下、筋肉内、静脈内投与を含む)に適した配合物を含む。1つの実施態様で配合物は経口投与に適した配合物である。
【0106】
式Iの化合物の適当な外用配合物は、経皮デバイス、エアロゾル、クリーム、溶液、軟膏、ジェル、ローション、散布粉末などを含む。本発明の化合物を含有する外用医薬組成物は通常は、約0.005重量%から約5重量%の有効化合物を医薬的に許容されるビヒクルと混合して含む。本発明の化合物の投与に有用な経皮的皮膚貼付薬は平均的な技量の当業者に公知のものを含む。
【0107】
配合物は、単位剤形で提供され、製薬業界で公知の方法のいずれかによって調製できる。すべての方法が、有効化合物と1種以上の成分を構成する担体とを会合させる段階を含む。一般には、有効化合物を液体担体、ワックス状固体担体または微細分割固体担体と共に均一および均質に会合させ、次いで必要ならば生成物を所望の剤形に造形する段階を含む。
【0108】
経口投与に適した本発明の配合物は、カプセル、カシェ剤、錠剤もしくは甘味入り錠剤のようなおのおのが所定量の有効化合物を含有する個別単位、粉末もしくは顆粒、または、水性液体もしく非水性液体中の懸濁液もしくは溶液、例えば、シロップ、エリキシル剤、または、エマルションとして提供できる。
【0109】
錠剤は、場合により1種以上の副成分と共に圧縮または成形することによって製造できる。圧縮錠剤は、自由流動形態例えば粉末または顆粒形態の有効化合物を場合により副成分、例えば、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、崩壊剤または着色剤と混合して適当な機械で圧縮することによって製造できる。成形錠剤は、好ましくは粉末形態の有効化合物と適当な担体との混合物を適当な機械で成形することによって製造できる。適当な結合剤の非限定例は、デンプン、ゼラチン、ブドウ糖またはベータ−ラクトースのような天然の糖、トウモロコシ甘味料、アラビアガム、トラガカントガムまたはアルギン酸ナトリウムのような天然または合成のガム、カルボキシメチル−セルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを含む。これらの剤形に使用される滑沢剤の非限定代表例は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は非限定的に、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。
【0110】
合成および天然のガム、例えば、トラガカントガム、アラビアガム、メチルセルロースなどのような適宜着香した懸濁化剤または分散剤中のシロップまたは懸濁液のような経口液体形態は、溶液または懸濁液に有効化合物を添加することによって製造できる。使用できるその他の分散剤はグリセリンなどを含む。
【0111】
膣内または直腸内投与する配合物は、慣用の担体、すなわち、構造式Iの化合物に適合性であり、貯蔵安定性であり、非晶質または結晶質形の式Iの化合物に結合したりその放出を妨害したりしない粘膜非刺激性の無毒性基剤を用いて坐剤として提供できる。適当な基剤は、カカオ脂(テオブロマ油)、ポリエチレングリコール(例えば、カーボワックスおよびポリグリコール)、グリコール−界面活性剤の組合せ、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween、MyrjおよびArlacel)、グリセリン化ゼラチン、水添植物油を含む。グリセリン化ゼラチン坐剤を使用するときは、メチルパラベンまたはプロピルパラベンのような保存剤を使用できる。
【0112】
有効薬物成分を含有している外用製剤は、例えばアルコール、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびE油、鉱油、PPG2ミリスチルプロピオネートなどのような当業界で公知の様々な担体材料と混合して、例えば、アルコール溶液、外用クレンザー、クレンジングクリーム、スキンジェル、スキンローションおよびクリームもしくはゲル配合物の形態のシャンプーを形成できる。
【0113】
非晶質および結晶質形の本発明のN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドはまた、小さい単層小胞、大きい単層小胞および多層小胞のようなリポソームデリバーリシステムの形態で投与できる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンのような様々なリン脂質から形成できる。
【0114】
本発明のSARMはまた、化合物分子を結合させる独立担体としてモノクローナル抗体を使用することによって送達できる。本発明の化合物はまた、標的指向性薬物担体のような可溶性ポリマーに結合できる。このようなポリマーは、ポリビニル−ピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルタミドフェノール、または、パルミトイル残基で置換されたポリエチレン−オキシドポリリシンなどである。さらに、本発明の化合物は、薬物の調節放出を行うために有用な生分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよび架橋したもしくは両親媒性のヒドロゲルブロックコポリマーに結合できる。
【0115】
非経口投与に適した配合物は、レシピエントの血液と等張性の有効化合物の無菌水性製剤を含む。このような配合物は好適には、レシピエント対象の血液と等張性の化合物の溶液または懸濁液を含む。このような配合物は、蒸留水と、蒸留水または生理食塩水中の5%デキストロースと有効化合物とを含有できる。使用溶媒に適した溶解度を有している医薬的および薬理学的に許容される有効化合物の酸付加塩がしばしば有用である。有用な配合物はまた、適当な溶媒で希釈したときに非経口投与に適した溶液を与える固体形の式Iの化合物の濃縮溶液または固体を含む。
【0116】
本発明の医薬組成物および方法はさらに、上述の骨粗鬆症、歯周病、骨折、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、脆化、加齢肌、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、再生不能性貧血のような造血障害、膵臓癌、アルツハイマー病、炎症性関節炎および関節修復のような状態の治療に常用の他の治療有効化合物を含み得る。
【0117】
骨粗鬆症の治療および予防には、固体形の本発明のN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドを、抗吸収剤、骨同化促進剤、ならびに、カルシウムサプリメント、フラボノイド、ビタミンD類似体のような明確には解明されていないメカニズムによって骨格に有益に作用する他の薬剤などから選択された少なくとも1種類の骨強化剤と組合せて投与できる。これらの併用治療は歯周病、骨折および骨再建術後の骨損傷状態にも有効である。例えば、非晶質および結晶質形の本発明の化合物は、エストロゲン、ビスホスホネート、SERM類、カテプシンKインヒビター、αvβ3インテグリン受容体アンタゴニスト、空胞性ATPアーゼインヒビター、ポリペプチドオステオプロテゲリン、VEGFアンタゴニスト、チアゾリジンジオン、カルシトニン、プロテインキナーゼインヒビター、上皮小体ホルモン(PTH)および類似体、カルシウム受容体アンタゴニスト、成長ホルモン分泌促進物質、成長ホルモン放出ホルモン、インスリン様増殖因子、骨形態形成タンパク質(BMP)、BMPアンタゴニズムインヒビター、プロスタグランジン誘導体、線維芽細胞増殖因子、ビタミンDおよびその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体、大豆イソフラボン、カルシウム塩およびフッ化物塩のような有効量の他の薬剤と効果的に併用投与できる。これらの併用治療は歯周病、骨折および骨再建術後の骨損傷状態にも有効である。
【0118】
本発明の1つの実施態様では、非晶質および結晶質形の本発明の化合物が、単独のまたはプロゲスチンもしくはプロゲスチン誘導体と組合せたエストロゲンおよびエストロゲン誘導体;ビスホスホネート;抗エストロゲンまたは選択的エストロゲン受容体モジュレーター;αvβ3インテグリン受容体アンタゴニスト;カテプシンKインヒビター;破骨細胞空胞性ATPアーゼインヒビター;カルシトニン;オステオプロテゲリンから選択された少なくとも1種類の治療有効量の骨強化剤と効果的に併用投与できる。
【0119】
骨粗鬆症の治療における本発明の化合物の様々な固体形の活性は、抗吸収剤;エストロゲン、ビスホスホネート、SERM類、カルシトニン、カテプシンKインヒビター、空胞性ATPアーゼインヒビター、RNAK/RANKL/オステオプロテゲリン経路の妨害剤、p38インヒビターまたはその他の破骨細胞生成もしくは破骨細胞活性化のインヒビターの活性とは明らかに違っている。本発明のSARMは、骨吸収を阻害するのではなく、例えば骨強度のかなりの部分を担う骨皮質に作用して骨形成の刺激を支援する。骨皮質の増粘は骨折の危険性、特に腰椎骨折の危険性の低下に実質的に貢献する。構造式Iの組織−SARMと、例えば、エストロゲンまたはエストロゲン誘導体、ビスホスホネート、抗エストロゲン、SERM類、カルシトニン、αvβ3インテグリン受容体アンタゴニスト、HMG−CoAレダクターゼインヒビター、空胞性ATPアーゼインヒビターおよびカテプシンKインヒビターのような抗吸収剤との組合せは、骨同化作用および抗吸収作用の相補効果があるので特に有効である。
【0120】
エストロゲンおよびエストロゲン誘導体の非限定的代表例は、例えば、17β−エストラジオール、エストロン、複合エストロゲン(PREMARIN(R))、ウマエストロゲン、17β−エチニルエストラジオールなどのようなエストロゲン活性を有するステロイド系化合物を含む。エストロゲンまたはエストロゲン誘導体は単独使用でもよくまたはプロゲスチンもしくはプロゲスチン誘導体との併用でもよい。プロゲスチン誘導体の非限定例はノルエチンドロンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンである。
【0121】
同じく本発明の化合物と併用できるビスホスホネート化合物の非限定例を以下に挙げる:
(a)アレンドロネート(アレンドロン酸としても知られる)、4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ビスホスホン酸、アレンドロネートナトリウム、アレンドロネートモノナトリウム三水和物、または、4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ビスホスホン酸モノナトリウム三水和物。アレンドロネートは、米国特許:1990年5月1日付けの4,922,007、Kieczykowskiら;1991年5月28日付けの5,019,651、Kieczykowski;1996年4月23日付けの5,510,517、Dauerら;1997年7月15日付けの5,648,491、Dauerら、に記載されている;
(b)[(シクロヘプチルアミノ)−メチレン]−ビス−ホスホネート(インカドロネート)。これは、1990年11月13日付けの米国特許4,970,335、Isomuraら、に記載されている;
(c)(ジクロロメチレン)−ビス−ホスホン酸(クロドロン酸)および二ナトリウム塩(クロドロネート)。これらはベルギー特許672,205(1966)およびJ.Org.Chem 32、4111(1967)に記載されている;
(d)[1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)−プロピリデン]−ビス−ホスホネート(EB−1053);
(e)(1−ヒドロキシエチリデン)−ビス−ホスホネート(エチドロネート);
(f)[1−ヒドロキシ−3−(メチルペンチルアミノ)プロピリデン]−ビス−ホスホネート(イバンドロネート)。これは1990年5月22日付けの米国特許No.4,927,814、に記載されている;
(g)(6−アミノ−1−ヒドロキシヘキシリデン)−ビス−ホスホネート(ネリドロネート);
(h)[3−(ジメチルアミノ)−1−ヒドロキシプロピリデン]−ビス−ホスホネート(オルパドロネート);
(i)(3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデン)−ビス−ホスホネート(パミドロネート);
(j)[2−(2−ピリジニル)エチリデン]−ビス−ホスホネート(ピリドロネート)。これは米国特許No.4,761,406に記載されている;
(k)[1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジニル)−エチリデン]−ビス−ホスホネート(リセドロネート);
(l){[(4−クロロフェニル)チオ]メチレン}−ビス−ホスホネート(チルドロネート)。これは1989年10月24日付けの米国特許4,876,248、Breliereら、に記載されている;
(m)[1−ヒドロキシ−2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチリデン]−ビス−ホスホネート(ゾレドロネート);および、
(n)[1−ヒドロキシ−2−イミダゾピリジン−(1,2−a)−3−イルエチリデン]−ビス−ホスホネート(ミノドロネート)。
【0122】
本発明の方法および組成物の1つの実施態様では、ビスホスホネートが、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、ピリドロネート、リセドロネート、チルドロネート、ゾレドロネート、これらのビスホスホネート類の医薬的に許容される塩およびそれらの混合物から選択される。1つの変形例では、ビスホスホネートが、アレンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、イバンドロネート、チルドロネートおよびクロドロネートから選択される。このクラスの1つのサブクラスでは、ビスホスホネートが、アレンドロネート、医薬的に許容されるその塩およびその水和物、それらの混合物である。医薬的に許容されるアレンドロネートの塩の具体例は、アレンドロネートモノナトリウムである。アレンドロネートモノナトリウムの医薬的に許容される水和物は、一水和物および三水和物を含む。医薬的に許容されるリセドロネート塩の具体例は、リセドロネートモノナトリウムである。リセドロネートモノナトリウムの医薬的に許容される水和物はヘミ−五水和物を含む。
【0123】
さらにまた、ラロキシフェン(参照:例えば米国特許No.5,393,763)、クロミフェン、ズクロミフェン、エンクロミフェン、ナフォキシデン、CI−680、CI−628、CN−55,945−27、Mer−25、U−11,555A、U−100Aおよびそれらの塩など(参照:例えば米国特許Nos.4,729,999および4,894,373)のような抗エストロゲン化合物を本発明の方法および組成物において構造式Iの化合物と併用できる。これらの薬剤はまた、SERMまたは選択的エストロゲン受容体モジュレーターとして知られており、エストロゲン経路と同様であると考えられている経路による骨吸収の阻害によって骨減量を予防する当業界で公知の薬剤である。
【0124】
SERMの非限定的代表例は例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、トレミフェン、アゾルキシフェン、EM−800、EM−652、TSE424、クロミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェンおよびレボルメロキシフェンを含む[Goldsteinら,“A pharmacological review of selective estrogen receptor modulators,”Human Reproduction Update,6:212−224(2000);Lufkinら,Rheumatic Disease Clinics of North America,27:163−185(2001)、および、“Targeting the Estrogen Receptor with SERMs,”Ann.Rep.Med.Chem.36:149−158(2001)]。
【0125】
αvβ3インテグリン受容体アンタゴニストは骨吸収を抑制し、骨粗鬆症のような骨疾患を治療するために構造式IのSARMと併用できる。例えば、W.J.Hoekstra and B.L.Poulter,Curr.Med.Chem.5:195−204(1998)およびそこに引用された参考文献を参照するとよい。別のαvβ3アンタゴニストは、R.M.Keenanら,J.Med.Chem.40:2289−2292(1997);R.M.Keenanら,Bioorg.Med.Chem.Lett.8:3165−3170(1998);R.M.Keenanら,Bioorg.Med.Chem.Lett.8:3171−3176(1998)に記載されている。
【0126】
以前はカテプシンO2として知られていたカテプシンKはシステインプロテアーゼであり、PCT国際出願公開No.WO 96/13523;米国特許Nos.5,501,969および5,736,357に記載されている。システインプロテアーゼ、具体的にはカテプシン類は、腫瘍転移、炎症、関節炎および骨再建のような多くの疾患状態に関係がある。酸性pHでカテプシンはI型コラーゲンを分解できる。カテプシンプロテアーゼインヒビターは、コラーゲン線維の分解を阻害することによって骨破壊性骨吸収を阻害でき、従って、骨粗鬆症のような骨吸収疾患の治療に有用である。カテプシンKインヒビターの非限定例は、PCT国際公開WO 01/49288およびWO 01/77073に見出される。
【0127】
“スタチン”として知られたHMG−CoAレダクターゼインヒビターのクラスの構成員は、新しい骨の成長を開始させ、骨粗鬆症によって失われた骨を回復させることが知見された(参照:The Wall Street Journal,Friday,December 3,1999,page Bl)。従って、スタチンは骨吸収の治療に有望である。HMG−CoAレダクターゼインヒビターの例は、ラクトン化形態またはジヒドロキシ開酸形態のスタチンならびに医薬的に許容されるそれらの塩およびエステルを含む。非限定例は、ロバスタチン(参照:米国特許No.4,342,767);シンバスタチン(参照:米国特許No.4,444,784);ジヒドロキシ開酸シンバスタチン、特にそのアンモニウムまたはカルシウム塩;プラバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.4,346,227);フルバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.5,354,772);アトロバスタチン、特にそのカルシウム塩(参照:米国特許No.5,273,995);セリバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.5,177,080)、ZD−4522としても知られたロスバスタチン(参照:米国特許No.5,260,440)、および、NK−104、イタバスタチンまたはニスバスタチンとしても知られたピタバスタチン(参照:PCT国際出願公開WO 97/23200)である。
【0128】
プロトンポンプインヒビターとも呼ばれる破骨細胞空胞性ATPアーゼインヒビターは固体形の本発明の構造式IのSARMと共に使用できる。破骨細胞の先端膜に見出されるプロトンATPアーゼは、骨吸収プロセスで重要な役割を果たすと報告されている。従って、このプロトンポンプは、骨粗鬆症および類縁の代謝疾患の治療および予防に有効であり得る骨吸収インヒビターを設計する際に絶好の標的となる[参照:C.Farinaら,DDT,4:163−172(1999)]。
【0129】
血管形成誘導因子VEGFは、その受容体が破骨細胞に結合することによって骨吸収活性を刺激することが成熟ウサギの単離破骨細胞で証明された[参照:M.Nakagawaら,FEBS Letters,473:161−164(2000)]。従って、KDR/Flk−1およびFlt−1のような破骨細胞受容体に結合するVEGFのアンタゴニストの開発は骨吸収の治療または予防につながるまた別の方法を提供できる。
【0130】
チアゾリジンジオン(TZD)のようなペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−γ(PPARγ)のアクチベーターは、破骨細胞様細胞形成および骨吸収をインビトロで阻害する。R.OkazakiらによってEndocrinology,140:5060−5065(1999)に報告された結果は、骨髄細胞に対する局部的メカニズムおよびグルコース代謝に対する全身的メカニズムを示している。PPARγアクチベーターの非限定例は、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンのようなグリタゾンおよびBRL 49653を含む。
【0131】
カルシトニンもまた、構造式IのSARMと共に使用できる。カルシトニンは好ましくはサーモン鼻腔スプレー(salmon nasal spray)として使用される(Azraら,Calcitonin.1996.In:J.P.Bilezikianら,Ed.,Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press;およびSilverman,“Calcitonin.”Rheumatic Disease Clinics of North America,27:187−196、2001)。
【0132】
プロテインキナーゼインヒビターもまた構造式IのSARMと共に使用できる。キナーゼインヒビターは、WO 01/17562に開示されたものを含み、また、1つの実施態様では、p38のインヒビターから選択される。本発明に有用なp38インヒビターの非限定例は、SB 203580を含む[Badgerら,J.Pharmacol.Exp.Ther.,279:1453−1461(1996)]。
【0133】
骨同化剤は、骨タンパク質マトリックスの産生量を増加することによって骨を造成することが判っている薬剤である。このような骨同化剤は例えば、上皮小体ホルモン(PTH)およびそのフラグメント、例えば、天然産生PTH(1−84)、PTH(1−34)、それらの天然型および置換型類似体、特に上皮小体ホルモン皮下注射剤である。PTHは、骨を形成する細胞である骨芽細胞の活性を増加しこれによって新しい骨の合成を促進することが知見されている(Modern Drug Discovery,Vol.3,No.8,2000)。ヒトPTHの注射可能な組換え体Forteo(テリパラチド)は米国で骨粗鬆症治療薬として正規に認可されている。
【0134】
また、Gowenら,J.Clin.Invest.105:1595−604(2000)に記載されているように、PTHの分泌を誘導するカルシウム受容体アンタゴニストも本発明のSARMと組合せて使用できる。
【0135】
骨粗鬆症の治療に構造式Iの化合物と併用できるその他の骨同化剤には、成長ホルモン分泌促進物質、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモンなどがある。代表的な成長ホルモン分泌促進物質の非限定例は、米国特許Nos.3,239,345、4,036,979、4,411,890、5,206,235、5,283,241、5,284,841、5,310,737、5,317,017、5,374,721、5,430,144、5,434,261、5,438,136、5,494,919、5,494,920、5,492,916および5,536,716;欧州特許公開Nos.0,144,230および0,513,974;論文;Science,260,1640−1643(June 11、1993);Am.Rep.Med.Chem.,28:177−186(1993);Bioorg.Med.Chem.Lett.,4:2709−2714(1994);およびProc.Natl.Acad.Sci.USA,92:7001−7005(1995)に開示されている。
【0136】
インスリン様成長因子(IGF)も構造式IのSARMと共に使用できる。インスリン様成長因子は、単独のまたはIGF結合性タンパク質3と組合せたインスリン様成長因子IおよびIGF IIから選択される[参照:Johannson and Rosen,“The IGFs as potential therapy for metabolic bone diseases,”1996,In:Bilezikianら,Ed.,Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press;およびGhironら,J.Bone Miner.Res.10:1844−1852(1995)]。
【0137】
骨形態形成タンパク質(BMP)も構造式IのSARMと共に使用できる。骨形態形成タンパク質は、BMP2、3、5、6、7、ならびに、近縁分子TGFベータおよびGDF5を含む[Rosenら,“Bone morphogenetic proteins,”1996.In:J.P.Bilezikianら,Ed.,Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press;およびWang EA,Trends Biotechnol.,11:379−383(1993)]。
【0138】
BMPアンタゴニズムのインヒビターも構造式IのSARMと共に使用できる。1つの実施態様で、BMPアンタゴニストインヒビターは、BMPアンタゴニストSOST、ノギン、コルジン、グレムリンおよびダンのインヒビターから選択される[参照:Massague and Chen,“Controlling TGF−beta signaling,”Genes Dev.,14:627−644、2000;Aspenbergら,J.Bone Miner.Res.16:497−500、2001;およびBrunkowら,Am.J.Hum.Genet.68:577−89(2001)]。
【0139】
本発明の組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーターはまた、骨粗鬆症のような骨減量に付随する状態を治療するためにポリペプチドオステオプロテゲリンと併用できる。オステオプロテゲリンは哺乳動物オステオプロテゲリンおよびヒトオステオプロテゲリンから選択できる。ポリペプチドオステオプロテゲリンは腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの構成員であり、骨粗鬆症のような骨減量の亢進を特徴とする骨疾患の治療に有用である。米国特許No.6,288,032を参照するとよい。
【0140】
プロスタグランジン誘導体もまた構造式IのSARMと共に使用できる。プロスタグランジン誘導体の非限定代表例は、プロスタグランジン受容体EP1、EP2、EP4、FP、IPおよびそれらの誘導体のアゴニストから選択される[Pilbeamら,“Prostaglandins and bone metabolism,”1996,In:Bilezikianら,Ed.Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press;Weinrebら,Bone,28:275−281(2001)]。
【0141】
線維芽細胞増殖因子もまた構造式IのSARMと共に使用できる。線維芽細胞増殖因子は、aFGF、bFGFおよびFGF活性を有している近縁ペプチドを含む[Hurley Florkiewicz,“Fibroblast growth factor and vascular endothelial growth factor families,”1996,In:J.P.Bilezikianら,Ed.Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press]。
【0142】
骨吸収インヒビターおよび骨同化剤以外にも、明確には解明されていないメカニズムによって骨格に有益に作用することが判っている他の薬剤が存在する。これらの薬剤も構造式IのSARMと共に有利に使用できる。
【0143】
ビタミンD、ビタミンDの誘導体および類似体も構造式IのSARMと共に使用できる。ビタミンDおよびビタミンD誘導体は、例えば、D3(コレカルシフェロール)、D2(エルゴカルシフェロール)、25−OH−ビタミンD3、1α,25(OH)2ビタミンD3、1α−OH−ビタミンD3、1α−OH−ビタミンD2、ジヒドロタキステロール、26,27−F6−1α,25(OH)2ビタミンD3、19−ノル−1α,25(OH)2ビタミンD3、22−オキサカルシトリオール、カルシポトリオール、1α,25(OH)2−16−エン−23−イン−ビタミンD3(Ro 23−7553)、EB1089、20−エピ−1α,25(OH)2ビタミンD3、KH1060、ED71、1α,24(S)−(OH)2ビタミンD3、1α,24(R)−(OH)2ビタミンD3を含む[参照:Jones G.,“Pharmacological mechanisms of therapeutics:vitamin D and analogs,”1996,In:J.P.Bilezikianら,Ed.Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press]。
【0144】
ビタミンKおよびビタミンK誘導体も本発明のSARMの様々な固体形と共に使用できる。ビタミンKおよびビタミンK誘導体は、メナテトレノン(ビタミンK2)を含む[参照:Shirakiら,J.Bone Miner.Res.,15:515−521(2000)]。
【0145】
イプリフラボンのような大豆イソフラボンは本発明のSARMと共に使用できる。
【0146】
フッ化ナトリウム(NaF)およびフルオロリン酸モノナトリウム(MFP)のようなフッ化物塩は構造式IのSARMと共に使用できる。経口カルシウムサプリメントも構造式IのSARMと共に使用できる。経口カルシウムサプリメントは、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウムおよび天然カルシウム塩を含む(Heaney.Calcium.1996.In:J.P.Bilezikianら,Ed.,Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press)。
【0147】
骨吸収インヒビター、骨同化剤、および、構造式Iの化合物と併用されたときに骨格に有益に作用する別の薬剤の1日の用量範囲は当業界で公知の範囲である。このような組合せの場合、一般に、構造式IのSARMの1日の用量範囲は、成人では1日に約0.01から約1000mg、例えば約0.1から約200mg/日の範囲である。しかしながら、併用薬剤の場合には薬効が向上するので個々の薬剤の用量を減らすという調節が可能である。
【0148】
特にビスホスホネートを使用する場合、投薬量は、治療用には約2.5から約100mg/日(遊離ビスホスホン酸として測定)、例えば5から20mg/日または約10mg/日の範囲が適当であろう。予防用には、約2.5から約10mg/日、特に約5mg/日を使用すべきである。副作用を少なくするために、構造式Iの化合物とビスホスホネートとの組合せは週一回の投与が望ましい。週一回の投与の場合、毎週約15mgから約700mgのビスホスホネートおよび約0.07から約7000mgの構造式Iの化合物という投薬量を個別にまたは合一剤形で使用できる。特に週一回の投与の場合、構造式Iの化合物は調節放出デリバリーデバイスで有利に投与できる。
【0149】
アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症および高脂血症の治療には構造式Iの化合物と1種以上の追加の有効薬剤との併用投与が効果的である。1種以上の追加の有効薬剤は、HMG−CoAレダクターゼインヒビターのような脂質変性化合物、他の医薬活性を有している薬剤、および、脂質変性効果と他の医薬活性との双方を有している薬剤から選択される。HMG−CoAレダクターゼインヒビターの非限定例は、ラクトン化形態またはジヒドロキシ開酸形態のスタチン類および医薬的に許容されるそれらの塩およびエステルを含む。非限定例は、ロバスタチン(参照:米国特許No.4,342,767);シンバスタチン(参照:米国特許No.4,444,784);ジヒドロキシ開酸シンバスタチン、特にそのアンモニウムまたはカルシウム塩;プラバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.4,346,227);フルバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.5,354,772);アトルバスタチン、特にそのカルシウム塩(参照:米国特許No.5,273,995);セリバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.5,177,080)、および、NK−104とも呼ばれるニスバスタチン(参照:PCT国際出願公開WO 97/23200)などである。
【0150】
構造式Iの化合物と併用できる追加の有効薬剤の非限定例は、HMG−CoAシンターゼインヒビター;スクアレンエポキシダーゼインヒビター;スクアレンシンテターゼインヒビター(スクアレンシンターゼインヒビターとしても知られる)、アシル−コエンザイムA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター、これはACAT−1またはACAT−2の選択インヒビターとACAT−1および−2のデュアルインヒビターを含む;ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)インヒビター;プロブコール;ナイアシン;コレステロール吸収インヒビター、例えばエゼチミベとしても知られたSCH−58235、および、米国特許Nos.5,767,115および5,846,966に記載の1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(S)−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)]−4(S)−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノン;胆汁酸封鎖剤;LDL(低密度リポタンパク質)受容体誘導物質;血小板凝集インヒビター、例えば、糖タンパク質IIb/IIIaフィブリノーゲン受容体アンタゴニストおよびアスピリン;ヒトペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニスト、例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンのようなグリタゾンという通称の化合物およびチアゾリジンジオンとして知られた構造クラスに含まれる化合物、ならびに、チアゾリジンジオン構造クラス以外のPPARγアゴニスト;クロフィブラート、微粒子化フェノフィブラートを含むフェノフィブラートおよびジェンフィブロジルのようなPPARαアゴニスト;PPARα/γデュアルアゴニスト;ビタミンB6(ピリドキシンとしても知られる)および塩酸塩のような医薬的に許容されるそれらの塩;ビタミンB12(シアノコバラミンとしても知られる);葉酸または医薬的に許容されるその塩もしくはエステル、例えば、ナトリウム塩およびメチルグルカミン塩;抗酸化性ビタミン、例えばビタミンCおよびEならびにベータカロテン;ベータ−ブロッカー;アンギオテンシンIIアンタゴニスト例えばロサルタン;アンギオテンシン変換酵素インヒビター例えばエナラプリルおよびカプトプリル;カルシウムチャンネルブロッカー例えばニフェジピンおよびジルチアゼム;エンドテリンアンタゴニスト;LXRリガンドのようなABC1遺伝子発現を増進する薬剤;アレンドロネートナトリウムのようなビスホスホネート化合物;シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター例えばロフェコキシブおよびセレコキシブ、ならびに、これらの状態の治療に有用な既知の他の薬剤。
【0151】
構造式Iの化合物に併用するときのHMG−CoAレダクターゼインヒビターの1日の投薬量範囲は当業者に公知の量に一致する。同様に、HMG−CoAインターゼインヒビター;スクアレンエポキシダーゼインヒビター;スクアレンシンテターゼインヒビター(スクアレンシンターゼインヒビターとしても知られる)、アシルコエンザイムA:ACAT−1またはACAT−2選択インヒビターならびにACAT−1および−2のデュアルインヒビターを含むコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター;ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)インヒビター;プロブコール;ナイアシン;エゼチミベのようなコレステロール吸収インヒビター;胆汁酸封鎖剤;LDL(低密度リポタンパク質)受容体誘導物質;血小板凝集インヒビター、例えば、糖タンパク質IIb/II1aフィブリノーゲン受容体アンタゴニストおよびアスピリン;ヒトペルオキシソーム増殖物質活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニスト;PPARαアゴニスト;PPARα/γデュアルアゴニスト;ビタミンB6;ビタミンB12;葉酸;抗酸化性ビタミン;ベータ−ブロッカー;アンギオテンシンIIアンタゴニスト;アンギオテンシン変換酵素インヒビター;カルシウムチャンネルブロッカー;エンドテリンアンタゴニスト;ABC1遺伝子発現を増進するLXRリガンドのような薬剤;ビスホスホネート化合物;および、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビターの1日の投薬量範囲も当業界で公知の量に一致するが、併用投与の場合には構造式Iの化合物との協力作用があるので投薬量をある程度減らすことができる。
【0152】
本発明の1つの実施態様は、治療有効量の式Iの化合物を投与する段階を含む骨交替マーカー操作方法である。骨交替マーカーの非限定例は、尿中のI型コラーゲンのC−テロペプチド分解産物(CTX)、尿中のI型コラーゲンのN−テロペプチド架橋(NTX)、オステオカルシン(骨G1aタンパク質)、デュアルエネルギーx線吸収測定法(DXA)、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、定量的超音波(QUS)、および、デオキシピリジノリン(DPD)架橋を含む。
【0153】
本発明の方法によれば、併用する個々の成分を治療クール中の異なる時点で個別に投与してもよく、または、個別形態もしくは合一形態で同時に投与してもよい。従って本発明がこのような同時または交互の治療計画をすべて包含すると理解されるべきであり、“投与する”という用語はこれに応じて解釈されるべきである。本発明の化合物と他の薬剤との組合せの範囲は、アンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン補給によって改善できる疾患の治療に有効な範囲であることが理解されよう。
【0154】
本発明の化合物の製造に関する記載に使用した略号:
AcOH 酢酸
CBZ−グリシン 保護形グリシン(C10H11NO4)
DHT ジヒドロテストステロン
DMEM ダルベッコ改質イーグル培地
DMSO ジメチルスルホキシド
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EDC 1−(3−ジメチルアミノプロピル)3−エチルカルボジイミドHCl
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FBS ウシ胎仔血清
FCS 若ウシ胎仔血清
HAP ヒドロキシアパタイト
HEPES (2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HOAt 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー/質量スペクトロスコピー
LDA リチエムジイソプロピルアミド
MeOH メタノール
NMM N−メチルモルホリン
n−Bu4NI テトラ−n−ブチルアンモニウムヨージド
Pd/C パラジウム/炭素
Rtまたはrt 室温
TEGM 結合用バッファ
THF テトラヒドロフラン。
【0155】
本発明の化合物は、文献に公知であるかまたは実験手順に例示した他の標準操作に加えて以下のスキームに示すような反応を使用することによって製造できる。
【実施例1】
【0156】
【化3】
【0157】
I.2−(アンモニオメチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−4−イウム二塩酸塩(2−5)の形成
【0158】
【化4】
【0159】
段階I.A:N−(2−アミノピリジン−3−イル)−N’−カルボキシベンジルグリシンアミド(2−3)
DMF(300mL)中の2,3−ジアミノピリジン(2−1,20.866g,191.2mmol)、Cbz−グリシン(2−2,40g,191.2mmol)、EDC(43.93g,229.44mmol)、HOAT(26.02g,191.2mmol)およびNMM(82.12mL,764.81mmol)の混合物を20時間撹拌した。混合物をH2O(500mL)で希釈し、EtOAcで抽出した(3×500mL)。集めた有機部分を、飽和NaHCO3、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、次いで濃縮すると、生成物2−3が褐色固体として得られた。1H NMR(500MHz,CD3OD)7.82(d,1H,J=5Hz),7.49(d,1H,J=8Hz),7.31(m,5H),6.65(m,1H),5.12(s,2H)。HRMS(ES,M+1)計算値301.1295、測定値301.1296。
【0160】
段階I.B:ベンジル3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチルカーバメート(2−4)
アミノピリジン2−3(46g,153mmol)を300mLのAcOHに溶解し、120℃で20時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、濃縮すると、所望生成物2−4が酢酸塩として得られた。1H NMR(500MHz,CD3OD)8.32(m,1H),7.95(m,1H),7.34(m,6H),7.08(m,1H),5.14(s,2H),4.87(s,2H)。HRMS(ES,M+1)計算値283.1190、測定値283.1192。
【0161】
段階I.C:2−(アンモニオメチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−4−イウム二塩酸塩(2−5)
1000mLの1:1 AcOH/MeOH中の2−4(52g,151.88mmol)の混合物に20gの10%Pd/Cを添加した。反応混合物を1気圧のH2下で20時間撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過し、濃縮し、次いでジオキサンと共沸させると、淡褐色の油が得られた。半固体または粘性の油を200mLのジオキサンに懸濁させ、200mLの4.0MのHCl/ジオキサンを添加して淡褐色の懸濁液を調製した。固体を収集し、ジオキサン(200mL)で洗浄し、真空下で乾燥すると、2−5が淡褐色固体として得られた。1H NMR(500MHz,CD3OD)8.75(d,1H,J=8Hz),8367(d,1H,J=6Hz),7.85(m,1H),4.88(s,2H)。HRMS(ES,M+1)計算値149.0822、測定値149.0812。
【0162】
II.N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミド(1−7)の非晶質形
【0163】
段階II.A:4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボン酸メチルエステル(1−2)
1−1(J.Med.Chem.29 2298−2315(1986))(120g,362.04mmol)、60%NaH(18.7g,mmol)、ジメチルスルフェート(68.50g,543.05mmol)およびTHF(1200mL)の混合物を周囲温度で14時間撹拌した。60℃で2時間加温し、次いで、ヘッドスペースを窒素で掃気しながら40mLの濃HClをゆっくりと添加して反応停止させた。1/5容量まで蒸発させ、次いで1500mLの水で希釈した。固体を収集し、水およびヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥すると、1−2が淡黄色固体として得られた。
【0164】
段階II.B:4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスタン−17β−カルボン酸メチルエステル(1−3)
1−2(20g,57.9mmol)のEtOH(100mL)溶液に10%Pd/C(5.0g)を添加し、混合物を1気圧のH2下で14時間撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過し、濃縮し、次いで真空下で乾燥すると、1−3が白色固体として得られた。
【0165】
段階II.C:2α−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスタン−17β−カルボン酸メチルエステル(1−4)
THF(100mL)中の1−3(12g,34.53mmol)の−78℃溶液に、1.5MのLDAを含有するTHF溶液(27.6mL,41.44mmol)を20分間で滴下し、次いで1時間撹拌した。次にTHF(40mL)中のFN(SO2Ph)2(13.07g,41.44mmol)の溶液を20分間で添加した。30分後、冷却浴を除去し、反応混合物を14時間撹拌した。Et2Oを添加し、混合物を水、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、次いで濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤としてヘキサン対EtOAc)にかけると、1−4が無色固体として得られた。MS M+H計算値:366,測定値366.1。
【0166】
段階II.D:2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボン酸メチルエステル(1−5)
THF(400mL)中の1−4(30g,82.1mmol)の−78℃溶液に、1.5MのLDAを含有するTHF溶液(71.1mL,107mmol)を30分間で滴下し、次いで1時間撹拌した。つぎにメチルベンゼンスルフィネート(19.23g,123mmol)を15分間で添加した。30分後、冷却浴を除去し、反応混合物を1時間撹拌した。Et2Oを添加し、混合物を水、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、次いで濃縮した。残渣をトルエン(200mL)に溶解し、還流温度で2時間加熱した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤としてヘキサン対50%EtOAc/ヘキサン)にかけると、1−5が淡黄色固体として得られた。MS M+H計算値:364,測定値364.1。
【0167】
段階II.E:2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボン酸(1−6)
1,4−ジオキサン(50mL)中の1−5(6.2g,17.1mmol)の溶液に水酸化リチウム(1.07g,25.6mmol)の水(30mL)溶液を添加し、混合物を100℃で3時間加熱した。冷却後、混合物を酢酸エチルで希釈し、分離し、有機相を1NのHCl、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、次いで濃縮すると、1−6が淡黄色固体として得られた。MS M+H計算値:350,測定値350。
【0168】
段階II.F:N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド(1−7)
DMF(200mL)中の1−6(15g,42.9mmol)、EDC(9.88g,51.5mmol)、HOBt(6.96g,51.510mmol)、NMM(18.9mL,171.70mmol)および2−5(10.43g,47.217mmol)の混合物を40℃で4.0時間加熱し、次いで周囲温度で14時間撹拌した。混合物を水で希釈し、濾過し、固体を水洗し、次いで真空下で乾燥した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤としてヘキサン対70:25:5のCHCl3/EtOAc/MeOH)にかけると、1−7が無色非晶質固体として得られた。1H NMR(500MHz,CD3OD)8.45(m,1H),7.95(m,1H),7.23(m,1H),6.14(d,1H,J=8Hz),4.72(m,2H),3.40(dd,1H,J=4Hz,13Hz),2.94(s,3H),2.23(m,2H),1.96(m,2H),1.53−1.86(m,7H),1.25−1.39(m,3H),1.12(m,1H),1.04(m,2H),0.95(s,3H),0.68(s,3H)。MS M+H計算値:480.2770 測定値480.2740。
【実施例2】
【0169】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの無水結晶質形A
非晶質のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド(1−7)を1,2−ジメトキシエタンに溶解した。溶液を還流温度に加熱した。約2分後、結晶化が生じた。スラリーを2時間還流させ、室温に冷却し、濾過した。固体を1,2−ジメトキシエタンで洗浄し、乾燥すると、N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの無水結晶質形Aが得られた。
【実施例3】
【0170】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの吸湿性結晶質形B
非晶質のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド(3.0gms)(1−7)を加温しながら5mLのエタノールに溶解した。混合物を室温に放冷した。6時間後、針が形成され始めた。混合物を一夜静置した。沈殿した固体を収集し、エタノールで洗浄した。洗浄した固体を24時間乾燥させた。
【実施例4】
【0171】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの結晶質水和物形C
結晶質エタノラート形G(約10mg)を撹拌容器中で1mLの水に懸濁させた。懸濁液を3時間撹拌した。固体を沈降させた。乾燥した固体のXRPD分析は、結晶質水和物形Cを示した。
【実施例5】
【0172】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの結晶質無水形D
結晶質四水和物形E(1.5gm)およびメタノール(15gm,19mL)を舟形撹拌羽根を備えた125mL容のジャケット付きフラスコに充填した。ジャケット温度は20℃に設定した。混合物に形A(30mg)を播種し、1時間熟成した。ジャケット付きフラスコに脱イオン水(DIW)(19mL)を8時間以上の期間で充填した。約1mLのDIWの充填後、形Aシードが溶解した。約9mLのDIWの充填後、バッチに約5mgの形Aシードを再度播種した。最初の水充填後、バッチを一夜熟成した。ジャケット付きフラスコ内の混合物の約1/3量(13mL)を取り出して、カバー付きメスシリンダーに導入した。固体が沈降した。メスシリンダー内のサンプルの液体部分をピペットで取り出し、WhatmanTMフィルターで濾過した。メスシリンダー内の残留サンプル部分は真空を備えたフィルターポットで濾過した。次にサンプルをDIWで3回洗浄した。濾過した湿性ケーキを35℃の真空オーブンで乾燥した。乾燥した固体のXRPD分析は結晶質形Aを示した。
【0173】
4.81mLのDIWをジャケット付きフラスコ内の残留混合物に4時間を要して添加した。次いで、バッチを一夜熟成させた。その後、ジャケット付きフラスコ内の残留混合物のほぼ半量(15.4mL)をカバー付きメスシリンダーに導入した。固体を沈降させた。メスシリンダー内のサンプルの液体部分をピペットで取り出し、WhatmanTMフィルターで濾過した。サンプルの湿性固体部分を、真空を備えたフィルターポットで濾過した。次にサンプルをDIWで3回洗浄した。濾過した湿性ケーキを35℃の真空オーブンで乾燥した。乾燥した固体のXRPD分析は結晶質形Aを示した。
【0174】
その後、3.95mLのDIWをジャケット付きフラスコ内の残留混合物に4時間を要して添加した。バッチを4時間熟成した。撹拌を中止して固体を沈降させた。メスシリンダー内のサンプルの液体部分をピペットで取り出し、WhatmanTMフィルターで濾過した。湿性固体を、真空を備えたフィルターポットで濾過した。次にサンプルをDIWで3回洗浄した。濾過した湿性ケーキを35℃の真空オーブンで乾燥した。乾燥した固体のXRPD分析は結晶質無水形Dを示した。
【実施例6】
【0175】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの結晶質四水和物形E
無水結晶質形AのN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド 52.46mg)を計量し、50mLの0.1Nの塩酸に撹拌しながら添加して透明溶液を形成した。24時間後、沈殿を促進するために数滴の50%NaOHでサンプルをpH1.5に調整した。溶液はまだ沈殿しなかった。そこで追加量の100.25mgの無水結晶質形Aを溶液に添加して沈殿を促進した。溶液はほぼ透明になり、次いで固体が沈殿し始めた。サンプルをさらに4日間平衡させた後、固体を遠心し、濾過し、冷水ですすいだ。乾燥したサンプルのXRPD分析は結晶質四水和物形Eを示した。
【実施例7】
【0176】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの結晶質セスキ水和物形F
実施例2に記載した無水結晶質形AのN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの一部分を40℃のオーブンで2時間真空乾燥し、分析用に1つのアリコートを取り出し、サンプルの残りは乾燥を一夜継続した。次にサンプルを取り出して同様に分析した。2時間サンプルおよび一夜真空乾燥サンプルの双方をXRPDによって特性決定し、同じ結晶質セスキ水和物形Fであることを確認した。
【実施例8】
【0177】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドのエタノラート形G
非晶質のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド(9.5gms)(1−7)を75mLのエタノールに60℃で溶解した。混合物を室温に放冷した。2時間後、固体を収集し、25mLのエタノールで洗浄した。洗浄した固体を24時間風乾すると無色固体が得られた。乾燥した固体をXRPDによって分析し、非晶質形であることを確認した。
【実施例9】
【0178】
医薬組成物
本発明の特定実施態様として、100mgの無水結晶質形DのN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドを、微細分割した十分な量のラクトースと配合し、全量をサイズ0の硬質ゼラチンカプセルに充填するための580から590mgとする。
【0179】
上記明細書は本発明の原理を教示しており、実施例は例示目的で与えられており、本発明の実施が慣用的な変更、応用または修正のすべてを特許請求の範囲およびそれらの等価の概念の範囲内に包含することは理解されよう。
【0180】
アッセイ
化合物のSARM活性を同定するためのインビトロおよびインビボアッセイ
本出願に例示した化合物は以下のアッセイの1つ以上で活性を示した。
【0181】
内在的に発現されたARに対する化合物親和性を検定するヒドロキシアパタイト基剤のラジオリガンド置換アッセイ
材料:
結合用バッファ:TEGM(10mMのトリス−HCl、1mMのEDTA、10%グリセロール、1mMのベータ−メルカプトエタノール、10mMのモリブデン酸ナトリウム,pH7.2)
50%HAPスラリー:Calbiochem Hydroxyapatite,Fast Flow、10mMのトリス,pH8.0および1mMのEDTA
洗浄用バッファ:40mMのトリス,pH7.5、100mMのKCl、1mMのEDTAおよび1mMのEGTA
95%EtOH
メチルトリエノロン,[17α−メチル−3H],(R1881*);NEN NET590
メチルトリエノロン(R1881),NEN NLP005(95%EtOHに溶解)
ジヒドロテストステロン(DHT)[1,2,4,5,6,7−3H(N)] NEN NET453
Hydroxyapatite Fast Flow;Calbiochem Cat#391947
モリブデート=モリブデン酸(Sigma、M1651)
MPA−MB−453細胞培養培地:
RPMI 1640(Gibco 11835−055)w/23.8mMのNaHCH3、2mMのL−グルタミン
500mLの完全培地中 最終濃度
10mL(1M Hepes) 20mM
5mL(200mMのL−gIu) 4mM
0.5mL(10mg/mLのヒトインスリン) 10μg/mL
0.01NのHCl中
Calbiochem#407694−S)
50mLのFBS(Sigma F2442) 10%
1mL(10mg/mLのゲンタマイシン 20μg/mL
Gibco#15710−072)
細胞継代
細胞(Hall R.E.ら,European Journal of Cancer,30A:484−490(1994))をPBSで2回すすぎ、フェノールレッド非含有トリプシン−EDTAを同じPBSで1:10に希釈する。細胞層を1×トリプシンですすぎ、余剰のトリプシンを除去し、細胞層を37℃で〜2分間インキュベートする。フラスコを叩いて、細胞剥離の徴候を点検する。細胞がフラスコから剥れて滑り始めると、完全培地を添加してトリプシンの作用を止める。この時点で細胞をカウントし、次いで適正濃度に希釈し、フラスコまたは培養皿に分け入れてさらに培養する(通常は1:3から1:6に希釈)。
【0182】
MDA−MB−453細胞溶解液の調製
MDA細胞が70から85%の単層集密状態になると、これらの細胞を上述のように剥離し、4℃、1000gで10分間遠心することによって収集する。次に細胞ペレットをTEGM(10mMのトリス−HCl、1mMのEDTA、10%グリセロール、1mMのベータ−メルカプトエタノール、10mMのモリブデン酸ナトリウム,pH7.2)で2回洗浄する。最終洗浄の後、細胞を107細胞/mLの濃度でTEGMに再浮遊させる。細胞浮遊液を液体窒素またはエタノール/ドライアイス浴で瞬間冷凍し、ドライアイスに載せた−80℃のフリーザーに移す。結合アッセイを開始する前に、凍結サンプルを氷水にのせて適宜解凍する(〜1時間)。次にサンプルを4℃、12,500gから20,000gで30分間遠心する。上清を使用して直ちにアッセイを開始する。50μLの上清を使用する場合、被験化合物は50μLのTEGMバッファ中で調製できる。
【0183】
多化合物スクリーニング手順
1×TEGMバッファを調製し、同位体含有アッセイ混合物を以下の処方で調製する:EtOH(反応中の最終濃度2%)、3H−R1881または3H−DHT(反応中の最終濃度0.5nM)および1×TEGM。[例えば、100サンプルの場合、200μL(100×2)のEtOH+4.25μLの1:10の3H−R1881予製液+2300μL(100×23)の1×TEGM]。化合物を系列希釈する、例えば、出発最終濃度が1μM、化合物が25μL溶液で、重複サンプル用に75μLの4×1μM溶液を調製する場合、3μLの100μM溶液を72μLのバッファに添加し、1:5に系列希釈する。
【0184】
25μLの3H−R1881トレースおよび25μLの化合物溶液を最初に混ぜ合わせる。次いで、50μLの受容体溶液を添加する。反応混合物をゆるやかに混ぜ合わせ、約200rpmで短時間回転させ、4℃で一夜インキュベートする。100μLの50%HAPスラリーを調製し、インキュベートした反応混合物に加えて渦流させ、氷上で5から10分間インキュベートする。反応混合物のインキュベート中に反応混合物をさらに2回渦流させ、HAPを再懸濁させる。次にFilterMateTM Universal Harvesterプレート洗浄機(Packard)を使用し、96−ウェルフォーマットのサンプルを洗浄用バッファで洗浄する。洗浄プロセスで、発現したリガント結合受容体を含有しているHAPはUnifilter−96 GF/Bフィルタープレート(Packard)に移る。フィルタープレート上のHAPペレットを50μLのMICROSCINT(Packard)シンチラントと共に30分間インキュベートした後、TopCountマイクロシンチレーションカウンター(Packard)でカウントする。R1881を標準としてIC50を計算する。
【0185】
式Iの化合物を上記アッセイで試験すると、1マイクロモル以下のIC50値を有することが知見された。
【0186】
アンドロゲン受容体のN末端ドメインおよびC末端ドメインのリガンド誘導相互作用を検定する哺乳類ツーハイブリッドアッセイ(アゴニストモード:VIRCON)
このアッセイは、rhARのN末端ドメイン(NTD)とC末端ドメイン(CTD)との間の相互作用を誘導するARアゴニストの能力を評価する。この相互作用は活性化アンドロゲン受容体によって媒介されるインビボの男性化傾向に影響を及ぼす。rhARのNTDとCTDとの相互作用は、哺乳類ツーハイブリッドアッセイでCV−1サル腎細胞中のGal4DBD−rhARCTD融合タンパク質とVP16−rhARNTD融合タンパク質との間のリガンド誘導会合として定量される。
【0187】
トランスフェクション前日、CV−1細胞をトリプシン処理してカウントし、次いでDMEM+10%FCS中で96ウェルまたはもっと大きいプレートに20,000細胞/ウェル(プレートの大きさに応じて増量)で平板培養する。翌朝、LIPOFECTAMINE PLUS試薬(GIBCO−BRL)を販売者の推奨する手順に従って使用し、CV−1細胞にpCBB1(SV40初期プロモーター下で発現したGal4DBD−rhARLBD融合構築物)、pCBB2(SV40初期プロモーター下で発現したVP16−rhAR NTD融合構築物)およびpFR(Gal4応答性ルシフェラーゼリポーター、Promega)をコトランスフェクトする。簡単に説明すると、0.05μgのpCBB1、0.05μgのpCBB2および0.1μgのpFRのDNA混合物を、“PLUS Reagent”(1.6μL、GIBCO−BRL)に混合した3.4μLのOPTI−MEM(GIBCO−BRL)に混合し、室温(RT)で15分間インキュベートしてプレ複合体化DNAを形成する。
【0188】
各ウェル用に、0.4μLのLIPOFECTAMINE試薬(GIBCO−BRL)を第二管で4.6μLのOPTI−MEMに希釈して混ぜ合せ、希釈LIPOFECTAMINE試薬を調製する。プレ複合体化DNA(上記)と希釈LIPOFECTAMINE試薬(上記)とを一緒にして混ぜ合せ、室温で15分間インキュベートする。細胞上の培地を、40μL/ウェルのOPTI−MEMで交換し、10μLのDNA−脂質複合体を各ウェルに加える。複合体を静かに培地に混ぜ、37℃、5%CO2で5時間インキュベートする。インキュベーション後、200μL/ウェルのDMEMおよび13%の活性炭脱着FCSを添加し、次いで37℃、5%CO2でインキュベートする。24時間後、被験化合物を所望濃度(1nM−10μM)で添加する。48時間後、LUC−スクリーンシステム(TROPIX)を製造業者のプロトコル通りに使用してルシフェラーゼ活性を測定する。アッセイは、各50μLのアッセイ溶液1次いでアッセイ溶液2を順次にウェルに添加することによって直接的に行う。室温で40分間のインキュベーション後、2−5秒の積分で蛍光を直接測定する。
【0189】
被験化合物の活性は、3nMのR1881によって得られた活性に対するEmaxとして計算する。本発明の典型的な組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーターはこのアッセイで弱いアゴニスト活性を示すかまたはアゴニスト活性を全く示さず、10マイクロモルでアゴニスト活性50%未満である。
【0190】
参照:He B,Kemppainen JA,Voegel JJ,Gronemeyer H,Wilson EM,“Activation function in the human androgen receptor ligand binding domain mediates inter−domain communication with the NH(2)−terminal domain,”J.Biol.Chem.274:37219−37225(1999)。
【0191】
アンドロゲン受容体のトランス活性化変調(TAMAR)
このアッセイは、ヒトARを天然に発現するヒト乳癌細胞系MDA−MB−453細胞中のMMTV−LUCリポーター遺伝子からの転写をコントロールする被験化合物の能力を評価する。このアッセイはLUCリポーター遺伝子に結合した修飾MMTV LTR/プロモーターの誘導を測定する。
【0192】
10%FBS、4mMのL−グルタミン、20mMのHEPES、10ug/mLのヒトインスリンおよび20ug/mLのゲンタマイシンを含有しているフェノールレッド非含有RPMI 1640から成る“対数増殖培地”中で、透明底部をもつ白色の96ウェルプレートに20,000から30,000細胞/ウェルを平板培養する。インキュベーター条件は、37℃および5%CO2である。トランスフェクションはバッチモードで行う。細胞をトリプシン処理し、適正量の新しい培地中で好都合な細胞数までカウントし、Fugene/DNAカクテルミックスとゆるやかに混ぜ合わせて、96ウェルプレートに平板培養する。全部のウェルに200Tlの培地+脂質/DNA複合体を入れ、次いで37℃で一夜インキュベートする。トランスフェクションカクテルは、無血清Optimem、Fugene6試薬およびDNAから成る。製造業者(Roche Biochemical)のカクテル調製プロトコルに従う。脂質(Tl)対DNA(Tg)比は約3:2であり、インキュベーション時間は室温で20分間である。トランスフェクションの16から24時間後、DMSO(ビヒクル)中の最終濃度<3%とした被験化合物で細胞を処理する。細胞を被験化合物に48時間接触させる。48時間後、細胞をPromega細胞培養物溶解バッファで30から60分間溶解し、次いで96ウェルフォーマット光量計で抽出物中のルシフェラーゼ活性を測定する。
【0193】
被験化合物の活性は、100nMのR1881で得られた活性に対するEmaxとして計算する。
参照:R.E.Hallら,“MDA−MB−453,an androgen−responsive human breast carcinoma cell line with high androgen receptor expression,”Eur.J.Cancer,30A:484−490(1994)およびR.E.Hallら,“Regulation of androgen receptor gene expression by steroids and retinoic acid in human breast−cancer cells,”Int.J.Cancer,52:778−784(1992)。
被験化合物の活性は、R1881で得られた活性に対するEmaxとして計算する。例示した本発明の組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーターはこのアッセイで10%を上回る部分アゴニスト活性を示す。
【0194】
インビボ前立腺アッセイ
最初期の性的成熟年齢に達した9−10週齢の雄のスプレーグ−ドーリーラットを予防モードで使用する。目標は、精巣除去(精巣摘出術[ORX])後の7日間に生じる腹側前立腺および精嚢の急激な性能低下(〜85%)をアンドロゲン様化合物がどの程度遅延させるかを測定することである。
【0195】
ラットに精巣摘出術(ORX)を施す。各ラットを計量し、次いでイソフルランガスで麻酔し、目的を果たすまで維持する。陰嚢を1.5cm長さで腹背切開する。右精巣を体外に出す。精巣動脈および輸精管を精巣から0.5cm近位で4.0シルクによって結紮する。結紮部位の遠位を小型手術鋏で切断して精巣を切り離す。組織断端は陰嚢に戻す。左精巣についても同じ操作を繰返す。両方の断端を陰嚢に戻した後、陰嚢とその上の皮膚を4.0シルクで縫合する。擬ORX(Sham−ORX)の場合、結紮および鋏切断を除く全部の手順が完了している。ラットは10から15分以内に意識および十分な運動能力を完全に回復する。
【0196】
切開創の縫合後、直ちに所定用量の被験化合物をラットに皮下または経口投与する。さらに6日間連続して治療を継続する。
【0197】
剖検およびエンドポイント
ラットを先ず計量し、次いでCO2室で仮死状態まで麻酔する。心臓穿刺によって約5mLの全血を採取する。次いでラットの死亡徴候およびORXの完了を調べる。次に、前立腺の腹側部分を探し出し、型通りのやり方で鈍的剥離する。腹側前立腺を3から5秒間ドライブロットし、次いで計量する(VPW)。最後に、精嚢を探し出し、切り離す。腹側精嚢を3から5秒間ドライブロットし、次いで計量する(SVWT)。
【0198】
このアッセイの一次データは、腹側前立腺および精嚢の重量である。二次データは、血清LH(黄体形成ホルモン)およびFSH(卵胞刺激ホルモン)、また、できれば骨形成および男性化の血清マーカーを含む。群間差を確認するためにフィッシャーPLSDポストホック検定を加えたANOVAによってデータを解析する。被験化合物がORX誘導VPWおよびSVWTの減少を阻害する程度を評価する。
【0199】
インビボ骨形成アッセイ:
成人女性をシミュレートするために7から10ヶ月齢の雌のスプレーグ−ドーリーラットを治療モードで使用する。骨減量を生じさせエストロゲン不足の骨減少症の成人女性をシミュレートするために75から180日前にラットに卵巣摘出術(OVX)を施しておく。低用量の強力な抗吸収剤アレンドロネート(0.0028mpk SC,2×/週)による前処置をDay0に開始する。被験化合物による治療をDay15に開始する。Days15−31まで被験化合物で治療し、Day32に剖検を行う。目標は、骨膜表面の蛍光色素ラベリングの増加によって示される骨形成量がアンドロゲン様化合物によってどの程度増加するかを測定することである。
【0200】
典型的アッセイでは、各7匹のラットから成る9グループを試験する。Days19および29(治療5および15日目)に、各ラットにカルセイン(8mg/kg)の皮下注射を一回行う。
【0201】
剖検およびエンドポイント
ラットを先ず計量し、次いでCO2室で仮死状態まで麻酔する。心臓穿刺によって約5mLの全血を採取する。次いでラットの死亡徴候およびORVの完了を調べる。最初に、子宮を探し出し、型通りのやり方で鈍的剥離し、3から5秒間ドライブロットし、次いで計量する(UW)。子宮を10%中性緩衝ホルマリンに入れる。次に、右肢を股関節から外す。大腿骨と頚骨とを膝で分離し、筋肉を実質的に除去し、次いで70%エタノールに入れる。
【0202】
大腿骨の近位−遠位中点を中心にした右大腿骨中央の1cmセグメントをシンチレーションバイアルに入れ、工業用アルコールおよびアセトンで脱水および脱脂し、次いで漸増濃度のメチルメタクリレート溶液に導入する。これを90%メチルメタクリレート:10%ジブチルフタレートの混合物に埋封し、48から72時間重合させる。ボトルを割り、プラスチックブロックをLeica 1600 Saw Microtomeの万力型標本ホルダーに適合する形状に裁断し、骨の長軸の横断切片作製を準備する。85μm厚みの3つの横断切片を作製し、ガラススライドに封入する。骨の中点にほぼ対応する1つの切片を各ラットから選択し、ブラインドコードする。各切片の骨膜表面の全骨膜表面積、シングル蛍光色素ラベル、ダブル蛍光色素ラベルおよびラベル間距離を評価する。
【0203】
このアッセイの一次データは、骨形成の半独立マーカーであるダブルラベル含有骨膜表面のパーセンテージおよびミネラル付着率(ラベル間距離(μm)/10d)である。二次データは、子宮重量および組織学的特徴を含む。三次エンドポイントは、骨形成および男性化の血清マーカーを含み得る。群間差を確認するためにフィッシャーPLSDポストホック検定を加えたANOVAによってデータを解析する。被験化合物が骨形成エンドポイントを増加させた程度を評価する。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】化合物Iの無水結晶質形Aの特性X線回折パターンである。
【図2】化合物Iの無水結晶質形Aの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図3】化合物Iの無水結晶質形Aのフッ素−19交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図4】化合物Iの無水結晶質形Aの典型的DSC曲線である。
【図5】化合物Iの結晶質形BのX線回折パターンである。
【図6】化合物Iの結晶質形Bの典型的DSC曲線である。
【図7】化合物Iの結晶質水和物形CのX線回折パターンである。
【図8】化合物Iの結晶質水和物形CのDSC曲線である。
【図9】化合物Iの無水結晶質形DのX線回折パターンである。
【図10】化合物Iの無水結晶質形Dの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである
【図11】化合物Iの無水結晶質形Dのフッ素−19交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトル
【図12】化合物Iの無水結晶質形Dの典型的DSC曲線である。
【図13】化合物Iの結晶質四水和物形EのXRPDである。
【図14】化合物Iの結晶質四水和物形Eの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図15】化合物Iの結晶質四水和物形Eのフッ素−19交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図16】化合物Iの結晶質四水和物形EのDSC曲線である。
【図17】化合物Iのセスキ水和物形FのX線回折パターンである。
【図18】化合物Iのセスキ水和物形FのTGA曲線である。
【図19】化合物Iの結晶質エタノラート形GのX線回折パターンである。
【図20】化合物Iの結晶質エタノラート形Gの典型的DSC曲線である。
【図21】化合物Iの非晶質形のXRPDである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)であるN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質形、非晶質形および溶媒和物に関する。このようなSARMは、骨粗鬆症、歯周病、骨折、脆化および筋減少症のようなアンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン投与によって軽減できる状態の治療に有用である。さらに、本発明のSARMは、抑鬱、性的機能不全および認識減退のような低テストステロンに付随する精神障害を治療するために使用できる。SARMはまた特定組織中でアンタゴニストになるので、高アンドロゲン状態または高アンドロゲン活性が症状を引き起こす良性前立腺過形成および睡眠時無呼吸のような状態に有用である。
【背景技術】
【0002】
アンドロゲン受容体(AR)は、ステロイド/上皮小体ホルモン核受容体のスーパーファミリーに所属し、該ファミリーのその他の構成員はエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、グルココルチコイド受容体およびミネラロコルチコイド受容体を含む。ARは体内の多くの組織で発現され、テストステロン(T)およびジヒドロテストステロン(DHT)のようなアンドロゲンの生理的および病理生理的作用を媒介する受容体である。構造的にはARは、3つの機能ドメイン、すなわち、リガンド結合性ドメイン(LBD)、DNA結合性ドメインおよびアミノ末端ドメインから構成されている。ARに結合し、内因性ARリガンドの作用を模倣する化合物をARアゴニストと呼び、内因性ARリガンドの作用を阻害する化合物をARアンタゴニストと呼ぶ。
【0003】
ARにアンドロゲンリガンドが結合すると、リガンド/受容体複合体が誘導され、該複合体は細胞の核に転移した後、核に存在するターゲット遺伝子のプロモーター領域またはエンハンサー領域内部の調節DNA配列(アンドロゲン応答要素と呼ぶ)に結合する。次に補因子と呼ばれる他のタンパク質が召集され、これらのタンパク質は受容体に結合して遺伝子転写に導く。
【0004】
アンドロゲン療法は、生殖障害、および、男性の一次性または二次性の性腺機能低下症のような様々な障害を治療してきた。さらに、天然または合成のいくつかのARアゴニストが、骨疾患のような筋骨格障害、造血障害、神経筋疾患、リウマチ病的疾患、衰弱性疾患を治療するため、および、女性のアンドロゲン不足のようなホルモン置換療法(HRT)のために開発されてきた。さらに、フルタミドおよびビカルタミドのようなARアンタゴニストは前立腺癌の治療に使用されている。従って、ARの機能を組織選択的に活性化(“作動”)し、男性化および高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)抑制のような好ましくない男性性徴的特性を伴うことなくアンドロゲンの望ましい骨−および筋同化作用を生じるような化合物を得ることは有用であろう。
【0005】
閉経後骨粗鬆症の骨に対してアンドロゲンが有益な効果を有することはテストステロンおよびエストロゲンを併用投与した最近の試験で報告された[Hofbauerら,Eur.J.Edocrinol.140:271−286(1999)]。2年をかけた大規模なダブルブラインド比較試験では、複合エストロゲンによる単独療法が骨減量を防止するのに比べて複合エストロゲン(CEE)とメチルテストステロンとの併用経口投与は脊椎および腰椎の骨質量の増加促進に効果があることが証明された[J.Reprod.Med.,44:1012−1020(1999)]。
【0006】
さらに、CEEとメチルテストステロンとによって治療した女性ではホットフラッシュが減少することも証明されている。しかしながら、治療した女性の30%がかなりのニキビ増加および顔面の増毛に悩んでおり、これらは現用のすべてのアンドロゲン薬理療法に生じる合併症である[Wattsら,Obstet.Gynecol.,85:529−537(1995)]。また別の試験で観察されたように、CEEにメチルテストステロンを加えるとHDLレベルが低下することも知見された。このような現用のアンドロゲン療法に伴う男性化の可能性および脂質プロフィルに対する影響が組織選択的アンドロゲン受容体アゴニストの開発を促す理論的根拠を与える。
【0007】
アンドロゲンはヒトの骨代謝に重要な役割を果たす[Andersonら,“Androgen supplementation in eugonadal men with osteoporosis−effects of six months of treatment on bone mineral density and cardiovascular risk factors,”Bone,18:171−177(1996)]。性機能正常(eugonadal)であっても骨粗鬆症のある男性のテストステロン治療に対する治療応答は、アンドロゲンが多大な骨代謝効果を発揮することを示す。250mgのテストステロンエステルの筋肉内投与に応答して腰椎の平均BMDは5または6カ月で0.799gm/cm2から0.839g/cm2に増加した。従ってSARMは男性の骨粗鬆症の治療に使用できる。
【0008】
アンドロゲン不足は、アンドロゲン遮断療法(ADT)を受けているステージDの前立腺癌(転移性)の男性に生じる。内分泌性の精巣摘出術は長期作用性GnRHアゴニストによって行われ、アンドロゲン受容体遮断はARアンタゴニストによって行われる。ホルモン遮断に応答してこれらの男性はホットフラッシュ、有意な骨減量、衰弱および疲労に悩まされる。ステージDの前立腺癌男性のパイロット試験では、1年以上ADTを受けた男性患者はADTを受けなかった患者を上回る骨減少症(50%対38%)および骨粗鬆症(38%対25%)を示した[Weiら,Urology,54:607−611(1999)]。ADTを受けた男性では腰椎BMDが有意に減少していた。従って、骨および筋肉中でアンタゴニスト作用を生じない前立腺組織選択的ARアンタゴニストは、単独でまたは伝統的ADTの補助薬として、有用な前立腺癌治療薬になり得る[参照:A.Stochら,J.Clin.Endocrin.Metab.,86:2787−2791(2001)]。
【0009】
組織選択的ARアンタゴニストはまた、閉経女性の多房性卵巣症候群も治療できる。参照:C.A.Eaglesonら,“Polycystic ovarian syndrome:evidence that flutamide restores sensitivity of the gonadotropin−releasing hormone pulse generator to inhibition by estradiol and progesterone,”J.Clin.Endocrinol.Metab.,85:4047−4052(2000)。
【0010】
また、アンドロゲンが腎肥大およびエリスロポエチン(EPO)産生を刺激するので、SARMはある種の造血障害も治療できる。組換えヒトEPOが導入される以前には、慢性腎不全に起因する貧血を治療するためにアンドロゲンが使用されていた。さらに、アンドロゲンは、重篤でない再生不能性貧血および骨髄形成異常症候群のような貧血患者の血清EPOレベルを上昇させる。貧血治療にはSARMが与えるような選択的作用が必要であろう。
【0011】
SARMはまた、肥満症治療の補助薬として臨床的価値を有し得る。この体脂肪減少方法は、アンドロゲン投与が肥満患者の皮下脂肪および内臓脂肪を減少させたという所見の報告によって支持されている[J.C.Lovejoyら,“Oral anabolic steroid treatment,but not parenteral androgen treatment,decreases abdominal fat in obese,older men,”Int.J.Obesity,19:614−624(1995)],[J.C.Lovejoyら,“Exogenous Androgens Influence Body Composition and Regional Body Fat Distribution in Obese Postmenopausal Women−A Clinical Research Center Study,”J.Clin.Endocrinol.Metab.,81:2198−2203(1996)]。従って、不要なアンドロゲン作用のないSARMは肥満症の治療に有益であり得る。
【0012】
アンドロゲン受容体アゴニストはまた、特に男性の代謝症候群(インスリン抵抗性症候群、X症候群)に対して治療有効性を有し得る。男性の2型糖尿病、内臓肥満症、インスリン抵抗性(高インスリン血症、異常脂血症)および代謝症候群には総テストステロンおよび遊離テストステロンならびに性ホルモン結合性グロブリン(SHBG)のレベル低下が付随していた。参照:D.Laaksonenら,Diabetes Care,27(5):1036−1041(2004);D.Laaksonenら,Euro.J Endocrin,149:601−608(2003);P.Marinら,Int.J.Obesity.16:991−997(1992)およびP.Marinら,Obesity Res.,1(4):245−251(1993)。
【0013】
アンドロゲン受容体アゴニストはまた、アルツハイマー病(AD)のような神経変性疾患に治療有効性を有し得る。アンドロゲン受容体を介して神経保護を誘導するアンドロゲンの能力は、J.Hammondら,“Testosterone−mediated neuroprotection through the androgen receptor in human primary neurons,”J.Neurochem.,77:1319−1326(2001)によって報告された。Gourasらは、テストステロンがアルツハイマー病のβ−アミロイドペプチドの分泌を減少させること、従ってADの治療に使用できることを報告した。[(Proc.Nat.Acad.Sci.,97:1202−1205(2000)]。ADの進行に関与するタンパク質の超リン酸化の阻害メカニズムも記載されている[S.Papasozomenos,“Testosterone prevents the heat shock−induced over activation of glycogen synthase kinase−3β but not of cyclin−dependent kinase 5 and c−Jun NH2−terminal kinase and concomitantly abolishes hyperphosphorylation of τ:Implications for Alzheimer’s disease,”Proc.Nat.Acad.Sci.,99:140−1145(2002)]。
【0014】
アンドロゲン受容体アゴニストはまた、筋の緊張および強度に有益な効果を有し得る。最近の研究は、“健康な性機能低下男性の生理的アンドロゲン置換が無脂肪体重、筋肉の大きさおよび最高随意強度の有意な向上に関連している”ことを証明した[S.Bhasinら,J.Endocrin.,170:27−38(2001)]。
【0015】
アンドロゲン受容体モジュレーターは、男性および女性のリビドー低下を治療するために有用である。男性のアンドロゲン不足はリビドーの低下につながる。S.Howellら,Br.J.Cancer,82:158−161。生殖可能年齢後期の多くの女性の低いアンドロゲンレベルは性的関心の減退の一因である。S.Davis,J.Clin.Endocrinol.Metab.,84:1886−1891(1999)。1つの研究によれば、循環する遊離テストステロンが性的欲望にプラスの相関関係を有していた。同上。別の研究では、一次性または二次性のアドレナリン不足の女性に生理的DHEA置換(50mg/日)を行った。DHEAを投与した女性ではプラセーボを接種した女性に比べて、性的な期待、関心および満足の頻度が増加していた。W.Arltら,N Engl.J.Med.341:1013−1020(1999)。他の参考文献:K.Miller,J.Clin.Endocrinol.Metab.,86:2395−2401(2001)。
【0016】
さらに、アンドロゲン受容体モジュレーターはまた、認識損傷の治療に有用であろう。最近の研究では、高用量の経口エストロゲンを単独でまたは高用量の経口メチルテストステロンと併用で閉経女性に4カ月間投与した。4ヶ月間のホルモン治療の前後に認識試験を行った。この調査では、エストロゲン(1.25mg)とメチルテストステロン(2.50mg)とを併用で服用した女性は記憶蓄積作業で一定レベルの成果を維持したが、エストロゲン(1.25mg)だけを服用した女性は低い成果を示したことが知見された。A.Wisniewski,Horm.Res.58:150−155(2002)。
【発明の開示】
【0017】
N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドは以下の構造式を有している:
【0018】
【化1】
【0019】
この化合物は、2003年9月25日公開の国際出願WO03/077919にすでに開示されている。
【0020】
(発明の概要)
本発明は、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質多形、擬似多形および非晶質固体形、それらの使用および医薬組成物に関する。本発明はさらに、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの非晶質および結晶質固体形の製造方法を提供する。
【0021】
有効材料の様々な物理化学的特性を知ることは、例えばその製造および医薬加工、および/または、その保存、運送および治療用途を含む化合物のライフサイクルのすべての面で最適に該材料を使用するために重要である。薬理学的に有効な化合物が、例えば不十分な粉砕特性または不十分な溶解特性のような好ましくない物理的特性を有するが故に適切な医薬組成物に作製できないこともある。
【0022】
本発明の1つの目的は、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質多形性および擬似多形性および非晶質の固体形を提供することである。本発明の非晶質および結晶質の固体形は、優れた物理化学的特性、すなわち、望ましい安定性、望ましい医薬特性および優れた加工特性を有している。本発明の結晶質および非晶質の固体形は特に医薬用途に適応するように様々な配合ビヒクルに組込むことができる。
【0023】
固体形の式Iの化合物はアンドロゲン受容体アゴニストとして有効であり、特にSARMとして有効である。従って、本発明の多形性、擬似多形性および非晶質の固体形は、アンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン投与によって軽減できる状態の治療に有用である。
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、構造式:
【0025】
【化2】
を有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質溶媒和物、水和物および無水物を含む多形および擬似多形ならびに非晶質固体形を提供する。本発明はまた固体形の本発明の化合物と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0026】
多形は、結晶格子中に異なる配列および/または立体配座の分子を有している同じ化合物の2つ以上の結晶相である。1つの有効医薬化合物の異なる多形は異なる物理的および化学的特性を示し得る。所与の有効医薬化合物の異なる物理的および化学的特性はまた水分/溶媒含量に左右される。擬似多形は、1つの化合物の水和物および溶媒和物を含む。擬似多形は1種類以上の溶媒または水を化合物の結晶格子に取込んでいる。
【0027】
1つの化合物の固態物性は、固体形の化合物を得るときの条件をコントロールすることによって操作できる。1つの化合物の異なる結晶構造は、色、安定性、加工性、溶解性および生体内利用率のような物理的および化学的特性の違いを示す。例えば、粒子が互いにどのように行き交うかを左右する流動性はこのような固態物性の1つであり、これは化合物がどのように粉砕されるかを左右する。不十分な流動性を補償して粉砕し易い医薬錠剤を得るために、医薬の配合業者はしばしば潤滑剤または滑沢剤として作用するタルクまたはデンプンのような他の補助成分を医薬組成物に添加しなければならない。好適な流動性および粉砕性を示す固体形の有効成分を選択することによってこのような補助成分の使用量を最小にするのが有利であろう。
【0028】
化合物の別の固態物性は流体中例えば水中の溶解速度である。有効成分の溶解性は医薬製品の貯蔵安定性を左右する。さらに、有効成分の溶解速度は、経口投与された有効成分が患者の血流に到達できる速度を左右する。適当な固体形の選択によって有効成分の貯蔵安定性および/または溶解速度を最大にできる。
【0029】
さらに、製薬産業では特定の固体形態の同定、製造および管理が臨床試験においてもまたは他の研究試験においても重要である。1つの薬物の所与の多形が臨床試験中に定常的に維持されないとき、コントロールできないエラー源が試験に導入されるので、試験中の正確な剤形を各ロット間で比較できない。
【0030】
一般に、所与の化合物が様々な結晶質固体形を形成するか否かを予測することは困難である。これらの異なる結晶質固体形の構造的立体配置および物理的特性を予測することはいっそう困難である。
【0031】
医薬的に有効な化合物の様々な多形、擬似多形および非晶質形を同定し利用して異なる物理的特性をもつ固体形の一覧表を作成するのが有利であろう。そうすることによって、例えば特定の溶解速度、粉砕特性、熱安定性または保存寿命のような特定の望ましい特性をもつ医薬剤形を設計できる。
【0032】
本発明の1つの実施態様は、5.6+/−0.1、7.6+/−0.1および9.6+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつX線粉末回折(XRPD)パターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質固体形Aの遊離塩基である。無水結晶質形Aはさらに、11.2+/−0.1、13.4+/−0.1および15.2+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。無水結晶質形Aはさらにまた、16.3+/−0.1および17.3+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする
【0033】
式Iの化合物の無水結晶質固体形Aの遊離塩基は、39.7、118.3、169.2および12.6+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを有している固体炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトル(炭素−13 CPMAS NMR)を示す。結晶質固体形Aはさらに、44.0、121.4、158.2および13.7+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを特徴とする。化合物Iの無水結晶質形Aはさらにまた、49.5、145.4、126.5および25.0+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを特徴とする。図2は式Iの化合物の無水結晶質形Aの固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0034】
また別の実施態様では、化合物Iの無水結晶質形Aの固体フッ素−19交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルを図3に示す。無水結晶質固体形は−128.9+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを示す。
【0035】
本発明の1つの実施態様では、化合物Iの無水結晶質形Aが図4に示すDSC曲線を有している。融解吸熱線は約281.2℃にピークを示す。
【0036】
本発明の1つの実施態様は、a)少なくとも1種類の溶媒に化合物を溶解して混合物を形成する段階と、b)結晶化が完了して固体が形成されるまで混合物を還流させる段階と、c)固体を単離する段階と、d)固体を乾燥する段階とを含む式Iの化合物の無水結晶質形Aの製造方法に関する。
【0037】
本発明の1つの実施態様では、少なくとも1種類の溶媒が、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテートおよびアセトンから選択される。
【0038】
本発明の1つの実施態様では、固体を単離する段階がさらに、固体を真空フィルターで濾過し、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテートおよびアセトンから選択された少なくとも1種類の洗浄用溶媒で固体を洗浄する段階を含む。
【0039】
本発明の別の実施態様では、溶媒が1,2−ジメトキシエタンである。
【0040】
本発明の1つの実施態様は、7.8+/−0.1、8.5+/−0.1および10.2+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの吸湿性結晶質形Bである。吸湿性結晶質形Bはさらに、12.2+/−0.1、12.6+/−0.1および13.5+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。吸湿性結晶質形Bはさらにまた、13.9+/−0.1および16.8+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。吸湿性結晶質形BのXRPDを図5に示す。
【0041】
本発明の1つの実施態様では、化合物Iの吸湿性結晶質形Bが図6に示すDSC曲線を有している。DSC温度記録図は、TGAの初期重量減に対応する約66.0℃中心の広範囲の吸熱線と、これに続く約164.0℃の融解吸熱点を有している。
【0042】
本発明の別の実施態様は、非晶質N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドを溶媒に溶解し、非晶質形を確実に溶解するために混合物を加温し、混合物を冷却し、混合物に針(結晶)を形成させ、形成された固体を洗浄用溶媒で洗浄し、固体を乾燥することによって行う化合物Iの吸湿性結晶質形Bの形成を含む。1つの実施態様で、溶媒はエタノールであり、洗浄用溶媒はエタノールである。本発明の別の実施態様で、非晶質形対溶媒の比は質量基準で3:4、例えば3グラムの非晶質形化合物に対して4(約5ml)のエタノールである。また別の実施態様では溶液を約60℃に加熱する。
【0043】
動的吸湿性試験では、吸湿性結晶質形Bが25℃、相対湿度約25%から約95%までの範囲で約7%の水分を次第に吸収する。重量増加は25%RHの初期サンプル全重量を基準とする。さらに、吸湿性結晶質形Bは25℃で相対湿度が95%から5%RHに減少したときにその全重量の約8%を失う。結晶質形Bの結晶化度は水分の吸収−脱着後にゆっくりと低下する。
【0044】
本発明の別の実施態様は、10.1+/−0.1、11.0+/−0.1および12.4+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつXRPDパターンを有している式Iの化合物の結晶質水和物固体形Cである。結晶質水和物形Cはさらに、13.2+/−0.1、14.1+/−0.1および18.9+/−0.1に2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。結晶質水和物形Cはさらにまた、20.3+/−0.1および22.7+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。結晶質水和物形CのXRPDを図7に示す。
【0045】
本発明の別の実施態様は、図8に示す化合物Iの結晶質水和物形CのDSC曲線である。約127.7℃中心の広範囲の脱水吸熱線、約200.9℃の結晶化発熱活性、約268.0℃の融解/分解吸熱点が順次に存在する。約25℃から約150℃までの約4.5%の形Cの初期重量減の原因は脱水(一水和物の理論値3.6%)であり、次いで250℃以上で熱分解する。
【0046】
結晶質水和物形Cは、撹拌容器で結晶質エタノラート形Gを水に懸濁させ、混合物を暫時熟成することによって製造できる。本発明の1つの実施態様で、結晶質エタノラート形G対水の比は質量基準で約1:100である。
【0047】
本発明の1つの実施態様は、8.8+/−0.1、9.9+/−0.1および12.5+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつXRPDパターンを有している式Iの化合物の無水結晶質形Dである。無水結晶質形Dはさらに、14.8+/−0.1、16.3+/−0.1および17.9+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。無水結晶質形Dはさらにまた、14.3+/−0.1、15.2+/−0.1および16.8+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。無水結晶質形DのXRPDを図9に示す。
【0048】
式Iの化合物の無水結晶質固体形Dの遊離塩基は、23.8、37.9および174.1+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを有している固体炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトル(炭素−13 CPMAS NMR)を有している。結晶質固体形Dはさらに、13.8、48.8および156.9+/−0.1の化学シフト値をもつシグナルを特徴とする。化合物Iの無水結晶質形Dはさらにまた、20.9、33.6および121.2+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを示すことを特徴とする。図10は式Iの化合物の無水結晶質形Dの固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0049】
また別の実施態様では、化合物Iの無水結晶質形Dの固体フッ素−19 CPMAS NMRスペクトルを図11に示す。無水結晶質固体形は−127.7および−128.9+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを示す。
【0050】
本発明の別の実施態様は、図12に示す化合物Iの形DのDSC曲線である。このDSC曲線は約273℃にピークをもつ融解吸熱線を示す。
【0051】
無水結晶質形Dは、四水和物形Eを少なくとも1種類の溶媒に溶解して溶液を形成し、少なくとも1種類のアンチ溶媒を溶液が過飽和になるまで溶液に充填し、バッチを熟成し、場合によっては固体が形成されるまで追加量のアンチ溶媒を添加するかまたはバッチを冷却することによって製造される。溶液に形Dのシードを播種することによって過飽和溶液からの固体形成を促進し得る。
【0052】
少なくとも1種類の溶媒の非限定例は、ジメチルアセトアミド(DMAc)、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)およびN――メチル−2−ピロリドン(NMP)から選択される。少なくとも1種類のアンチ溶媒の非限定例は、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン、水、アセトニトリル、イソプロピルアセテート、イソブチルアセテートおよびメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)から選択される。溶媒/アンチ溶媒系の非限定例は、メタノール/水、DMSO/水、および、NMP/水を含む。
【0053】
図13は、本発明の別の実施態様、結晶質四水和物形EのX線回折パターンを示す。四水和物形Eは6.1+/−0.1、12.8+/−0.1および13.1+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークを有している。四水和物形Eはさらに、13.9+/−0.1、17.6+/−0.1および19.0+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。四水和物形Eはさらにまた、19.8+/−0.1および22.6+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。
【0054】
式Iの化合物の四水和物形Eの遊離塩基は、13.1、28.9、39.3.および154.2+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを有している固体炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトル(炭素−13 CPMAS NMR)を示す。四水和物形Eはさらに、14.6、49.9、173.2および120.6+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを特徴とする。化合物Iの四水和物形Fはさらにまた、23.4、35.1、63.6および161.1+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつシグナルを示すことを特徴とする。図14は、式Iの化合物の四水和物形Fの固体炭素−13 CPMAS NMRスペクトルを示す。
【0055】
また別の実施態様では、化合物Iの四水和物形Eの固体フッ素−19 CPMAS NMRスペクトルを図15に示す。四水和物形Eは−126.5、−128.0および−129.3+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ特性シグナルを示す。
【0056】
図16は、化合物Iの結晶質四水和物形EのDSC曲線である。約90℃を中心とする広い吸熱線はサンプルから水が失われ、次いで新しい形に再結晶化し、その後約177℃にこの形の融解吸熱線が存在することを示す。
【0057】
四水和物形Eは、無水結晶質遊離塩基形AをpH約2以下の溶液に入れ、室温および周囲条件下に維持することによって製造できる。
【0058】
本発明の別の実施態様は、6.3+/−0.1、7.6+/−0.1および12.5+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつXRPDパターンを有している化合物Iのセスキ水和物形Fである。セスキ水和物形Fはさらに、13.5+/−0.1、15.5+/−0.1および18.3+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。セスキ水和物形Fはさらにまた、19.7+/−0.1および21.0+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。セスキ水和物形FのXRPDを図17に示す。
【0059】
図18は、化合物Iのセスキ水和物形FのDSC曲線である。DSCトレースは、脱水によって吸熱線のかなりの低下が観察された四水和物形EのDSCトレースと同様の性質を示す。DSCトレースは閉鎖蒸発皿で25℃から350℃まで10℃/分の加熱速度を用いて作成した。サンプルの初期重量を基準として約5.1%の全重量減が観察された。セスキ水和物の理論的重量減は5.3%と算出された。
【0060】
セスキ水和物形Fは、四水和物形Eを40℃で少なくとも10時間真空乾燥することによって製造できる。
【0061】
本発明の1つの実施態様は、8.2+/−0.1、10.0+0.1および13.4+/−0.1の2−シータ値に対応する特性回折ピークをもつX線粉末回折(XRPD)パターンを有している化合物Iの結晶質エタノラート形Gである。結晶質エタノラート形Gはさらに、14.6+/−0.1、15.3+/−0.1および16.4+/−0.1の2−シータ値に存在する追加の回折ピークを特徴とする。無水結晶質エタノラート形Gはさらにまた、18.1+/−0.1および19.8+/−0.1の2−シータ値に存在する回折ピークを特徴とする。図19は結晶質エタノラート形GのX線回折パターンを示す。
【0062】
図20は、化合物Iの結晶質エタノラート形Gの代表的DSC曲線を示す。結晶質エタノラート形GのDSCトレースは、約97.1℃および121.6℃を中心とする2つの広い脱溶媒和吸熱線および約165.9℃の融解吸熱点を順次に示す。
【0063】
25℃から100℃の間の約5.0%の全重量減は結晶質エタノラート形Gに典型的である。熱分解は約250℃以上で生じる。初期重量減から発生するガスは、TGA炉排気に接続した質量分析計を使用してエタノールであることが確認された。
【0064】
結晶質エタノラート形Gは、非晶質N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドをエタノールに溶解し、溶液を約60℃に加熱し、次いで固体が得られるまで混合物を室温に冷却することによって形成できる。
【0065】
1つの実施態様すなわち本発明の1つの多形/擬似多形は、“実質的に純粋”であり、少なくとも約85%の多形性/擬似多形性純度を有している。すなわち、特定の結晶質形に関して考察すると、該結晶質形は、他の多形性、非晶質性および/または擬似多形性の形を含む不純物を約15重量%未満含有する。この実施態様の1つの変形では、多形性/擬似多形性純度が少なくとも95%である。
【0066】
別の実施態様で、式Iの化合物の非晶質形は“実質的に純粋”であり、少なくとも約85%の純度を有している。すなわち、式Iの化合物の固体形に関して考察すると、該非晶質形は、他の多形性および/または擬似多形性の形を含む不純物を約15重量%未満含有する。この実施態様の1つの変形では、非晶質純度が少なくとも95%である。典型的な非晶質材料のXRPDパターンを図21に示す。
【0067】
X線粉末回折試験は、分子構造、結晶化度および多形性を特性決定するために広く使用されている。式Iの化合物の結晶質形のX線粉末回折(XRPD)パターンは、PW3040/60コンソールを備えたPhilips Analytical X’Pert PROX線回折システムで作成した。PW3373/00セラミックCu LEF X線管のKα線をソースとして使用した。
【0068】
上述のX線粉末回折パターンに加えて、化合物Iの結晶質形をさらに、固体炭素−13およびフッ素−19核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって特性決定した。固体炭素−13NMRスペクトルは、Bruker DSX 400WB NMRシステムにBruker 4mm二重共鳴CPMASプローブを使用して得られた。炭素−13 NMRスペクトルは、プロトン/炭素−13交差分極マジックアングルスピニングを可変振幅交差分極および全サイドバンド削除で使用した。サンプルを10.0kHzでスピンさせ、合計1024のスキャンをリサイクル遅延10秒で集めた。FTを行う前にスペクトルに10Hzのラインブロードニングを加えた。化学シフトは、グリシンのカルボニル炭素(176.03p.p.m.)を第二基準として使用しTMSスケールで報告する。
【0069】
固体フッ素−19NMRスペクトルは、Bruker DSX 500WB NMRシステムにBruker 4mm H/F/Xプローブを使用して得られた。該NMRスペクトルは、プロトン/フッ素−19交差分極マジックアングルスピニングを可変振幅交差分極および62.5HzのTPPMデカップリングで使用した。サンプルを15.0kHzでスピンさせ、合計150のスキャンをリサイクル遅延5秒で集めた。FTを行う前にスペクトルに10Hzのラインブロードニングを加えた。化学シフトは、外部第二基準として化学シフト−122ppmのポリ(テトラフルオロエチレン)(テフロン(登録商標))を使用して報告する。
【0070】
示差走査熱量計(DSC)データは、TA Instruments DSC 2910または同等の計器を使用して取得した。1から6mgのサンプルを蓋のない蒸発皿で計量する。次にこの蒸発皿を縁曲げし、熱量計セルのサンプル位置に配置する。空の蒸発皿を参照位置に配置する。熱量計セルを閉じ、窒素流をセルに通す。加熱プログラムはサンプルを10℃/分の加熱速度で約300℃の温度まで加熱するように設定する。加熱プログラムを開始させる。ランが完了すると、システムソフトウェアに内蔵されたDSC解析プログラムを使用してデータを解析する。吸熱線が観察される温度範囲より上または下にあるベースライン温度点間の融解吸熱線を積分する。報告したデータは開始温度、ピーク温度およびエンタルピーである。
【0071】
本発明の1つの実施態様はN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの非晶質固体形である。図21は化合物Iの非晶質形の典型的なXRPDパターンを示す。
【0072】
本発明の固体形は、2つ以上の形の混合物を含み得る。本発明の固体形の混合物は、混合物中に存在する種々の多形のおのおのの特性X線回折ピークを有するであろう。
【0073】
SARMとして同定された本発明化合物の固体形は、アンドロゲン不足によって発症しアンドロゲン投与によって軽減できる疾患または状態を治療するために有用である。このような非晶質形、溶媒和物形および結晶質形は、単独療法で、または、ビスホスホネート、エストロゲン、SERM類、カテプシンKインヒビター、αvβ3インテグリン受容体アンタゴニスト、カルシトニンおよびプロトンポンプインヒビターのような骨吸収インヒビターと併用して女性および男性の骨粗鬆症の治療に理想的である。それらはまた、上皮小体ホルモンまたはその類似体のような骨形成を刺激する薬剤と共に使用できる。本発明のSARM化合物の様々な固体形はまた、前立腺癌および良性前立腺過形成(BPH)のような前立腺疾患治療のために単独でまたは他の薬剤と組合せて使用できる。さらに、固体形の本発明の化合物は、皮膚に対する作用(ニキビおよび顔面の体毛増殖)が極めて少なく、多毛症の治療にも有用である。さらに、構造式Iの化合物は筋成長を刺激でき、筋減少症および脆化の治療に有用である。それらは肥満症の治療で内臓脂肪を減少させるために使用できる。さらに本発明の化合物は、中枢神経系でアンドロゲンアゴニズムを示し、血管運動症状(ホットフラッシュ)を治療するため、ならびに、エネルギーおよびリビドーを増加するために有用である。それらは、アルツハイマー病の治療に使用できる。
【0074】
固体形の式Iの化合物はまた、骨修復能力を有するので前立腺癌の治療に単独でまたはGnRHアゴニスト/アンタゴニスト療法の補助薬として使用でき、または、前立腺のアンドロゲンに拮抗し骨減量を極めて少なくする能力を有するので抗アンドロゲン療法に代替使用できる。さらに、本発明の化合物は、骨修復能力を有するので膵臓癌の治療に抗アンドロゲン治療の補助薬として使用でき、または抗アンドロゲン特性を利用して単独療法に使用でき、伝統的な抗アンドロゲンに比べて骨節約性であるという利点を提供する。さらに本発明の化合物は、赤血球および血小板のような血液細胞の数を増加させ、再生不能性貧血のような造血障害の治療に有用である。上述したような組織選択的アンドロゲン受容体アゴニズムを考察すると、結晶質および非晶質形の式Iの化合物は性機能低下(アンドロゲン不足)男性のホルモン置換療法に理想的である。
【0075】
本発明はまた、腹部脂肪過多、代謝症候群(“インスリン抵抗性症候群”および“X症候群”としても知られる)およびII型糖尿病の男性患者を安全にかつ特異的に治療する方法に関する。
【0076】
式Iの化合物はアンドロゲン受容体の組織選択的モジュレーター(SARM)であることが知見された。1つの特徴によれば、固体形の本発明の化合物は、哺乳動物のアンドロゲン受容体の機能を活性化するため、特に骨および/または筋組織のアンドロゲン受容体の機能を活性化し男性個体の前立腺または女性個体の子宮のアンドロゲン受容体の機能を阻止または阻害(“拮抗”)するために有用である。
【0077】
本発明の別の目的は、皮膚の増毛や声帯に影響を与えることなく男性個体の前立腺または女性個体の子宮でARアゴニストによって誘導されるアンドロゲン受容体の機能を弱化または遮断するため、ならびに、血液脂質レベルをコントロールする器官(例えば肝)の機能を活性化しないが骨および/または筋組織のアンドロゲン受容体の機能を活性化するための非晶質形または結晶質形の式Iの化合物の使用である。
【0078】
構造式Iの化合物は典型的にはサブマイクロモルでアンドロゲン受容体に結合親和性を示す。従って本発明の化合物は、アンドロゲン受容体機能に関連した障害に悩む哺乳動物の治療に有用である。(1つ以上の)多形、(1つ以上の)擬似多形および非晶質形ならびにそれらの混合物を含む化合物を治療有効量で哺乳動物に投与して、アンドロゲン不足のようなアンドロゲン受容体機能に関連する障害、アンドロゲン置換によって軽減できるかまたはアンドロゲン置換によって改善できる障害を治療する。これらの例は、低下した筋緊張の強化、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、骨折(例えば脊椎骨および非脊椎骨の骨折)、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、脆化、加齢肌、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、再生不能性貧血、他の造血障害、膵臓癌、炎症性関節炎および関節修復、HIV衰弱、前立腺癌、良性前立腺過形成(BPH)、癌カテキシー、アルツハイマー病、筋ジストロフィー、認識減退、性的機能不全、睡眠時無呼吸、抑鬱、未熟卵巣不全および自己免疫疾患を含む。治療は、このような治療を要する哺乳動物に治療有効量の構造式Iの化合物を投与することによって行う。さらに、固体形の式Iの化合物は単独でまたは他の有効薬剤と組合せて医薬組成物の成分として有用である。
【0079】
1つの実施態様では、非晶質および結晶質固体形の本発明の化合物が骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、HIV衰弱、前立腺癌、癌カテキシー、肥満症、関節炎状態、再生不能性貧血のような貧血、筋ジストロフィー、アルツハイマー病、認識減退、性的機能不全、睡眠時無呼吸、抑鬱、良性前立腺過形成(BPH)、腹部脂肪過多、代謝症候群、II型糖尿病およびアテローム性動脈硬化症を非限定例とするアンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン置換によって軽減できる男性個体の状態を治療するために単独でまたは他の有効薬剤と組合せて使用できる。治療は、このような治療を要する男性個体に治療有効量の構造式Iの化合物を投与することによって行う。
【0080】
“関節炎状態”または“関節炎状態群”という用語は、炎症性病巣が関節に限定されている疾患または関節の何らかの炎症状態を表し、もっとも顕著な例は骨関節炎およびリウマトイド関節炎である(Academic Press Dictionary of Science Technology;Academic Press;1st edition,January 15,1992)。本発明の式Iの化合物はまた単独でまたは組合せて、ベーチェット病;滑液嚢炎および腱炎;CPPD沈着疾患;手根管症候群;エーラース・ダンロス症候群;線維筋痛症;痛風;感染性関節炎;炎症性腸疾患;若年性関節炎;ループス・エリテマトーデス;ライム病;マルファン症候群;筋炎;骨関節炎;骨形成不全症;骨壊死;多発性関節炎;多発性リウマチ性筋痛症;乾癬性関節炎;レイノー現象;反射性交感神経異栄養症候群;ライター症候群;リウマトイド関節炎;強皮症;シェーグレン症候群のような関節炎状態の治療または予防に使用できる。本発明の1つの実施態様は、非晶質および結晶質形の式Iの化合物を単独でまたは混合物として治療有効量で投与する段階を含む関節炎状態の治療または予防を包含する。より下位概念的な実施態様は、治療有効量の式Iの化合物を投与する段階を含む骨関節炎の治療または予防である。参照:Cutolo M,Seriolo B,Villaggio B,Pizzorni C,Craviotto C,Sulli A,Ann.N.Y.Acad.Sci.2002 Jun;966:131−42;Cutolo,M.Rheum Pis Clin North Am 2000 Nov;26(4):881−95;Bijlsma JW、Van den Brink HR.Am J Reprod Immunol 1992 Oct−Dec;28(3−4):231−4;Jansson L.Holmdahl R.;Arthritis Rheum 2001 Sep;44(9):2168−75;Purdie DW.Br Med Bull 2000;56(3):809−23。同じく参照:Merck Manual,17th edition,pp.449−451。
【0081】
関節炎状態を治療するために組合せ使用されるとき、式Iの化合物は、併用療法に有用な本文中に記載の薬物のいずれかと共に使用できるか、または、コルチコステロイド、細胞障害薬(または他の疾患調節薬または寛解誘導薬)、金治療、メトトレキセート、NSAIDおよびCOX−2インヒビターのような関節炎状態を治療または予防する公知の薬物と共に使用できる。
【0082】
別の実施態様では本発明の化合物は、骨粗鬆症、骨減少症、加齢肌、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、閉経後症状、歯周病、HIV衰弱、癌カテキシー、肥満症、再生不能性貧血のような貧血、筋ジストロフィー、アルツハイマー病、未熟卵巣不全、認識減退、性的機能不全、抑鬱、炎症性関節炎および関節修復、アテローム性動脈硬化症および自己免疫疾患を非限定例とする、アンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン置換によって軽減できる女性個体の状態を治療するために単独でまたは他の有効薬剤と組合せて使用できる。治療は、このような治療を要する女性個体に治療有効量の構造式Iの化合物を投与することによって行う。
【0083】
式Iの化合物はまた、例えばヒトのような哺乳動物の筋緊張の強化に有用である。非晶質および結晶質形の構造式Iの化合物はまた、前立腺癌の治療において伝統的アンドロゲン遮断療法の補助薬として、骨を修復し、骨減量を最小にし、骨ミネラル密度を維持するために使用できる。すなわち、これらは、P.Limontaら,Exp.Opin.Invest.Drugs,10:709−720(2001);HJ.Strieker,Urology,58(Suppl.2A):24−27(2001);R.P.Millarら,British Medical Bulletin.56:761−772(2000);A.V.Schallyら,Advanced Drug Delivery Reviews,28:157−169(1997)に開示されているようなGnRHアゴニスト/アンタゴニストを含む伝統的なアンドロゲン遮断療法と共に使用できる。固体形の式Iの化合物は、フルタミド、2−ヒドロキシフルタミド(フルタミドの活性代謝産物)、ニルタミドおよびビカルタミド(CasodexTM)のような抗アンドロゲン剤と組合せて前立腺癌の治療に使用できる。
【0084】
さらに、本発明はまた、それらのアンドロゲンアンタゴニスト特性を利用してまたはフルタミド、2−ヒドロキシフルタミド(フルタミドの活性代謝産物)、ニルタミドおよびビカルタミド(CasodexTM)のような抗アンドロゲン剤の補助薬として膵臓癌の治療に使用できる。
【0085】
“癌を治療する”または“癌の治療”という用語は、癌状態に罹った哺乳動物への投与を表し、また、癌細胞を殺すことによって癌状態を軽減する効果ならびに癌の増殖および/または転移を阻害する効果を表す。
【0086】
構造式Iの化合物は、脂質代謝に対する副作用を最小にできる。従って、それらの組織選択的アンドロゲンアゴニスト特性を考察すると、本発明の化合物は、性機能低下(アンドロゲン不足)の男性個体のホルモン置換療法として既存の方法を凌駕する利点を示す。
【0087】
さらに、構造式Iの化合物は、赤血球および血小板のような血液細胞の数を増加し、再生不能性貧血のような造血障害の治療に使用できる。
【0088】
本発明の1つの実施態様では、低下した筋緊張の強化、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、骨折、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、脆化、加齢肌、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、再生不能性貧血およびその他の造血障害、膵臓癌、炎症性関節炎および関節修復、HIV衰弱、前立腺癌、良性前立腺過形成(BPH)、癌カテキシー、アルツハイマー病、筋ジストロフィー、認識減退、性的機能不全、睡眠時無呼吸、抑鬱、未熟卵巣不全および自己免疫疾患から選択された障害を治療または改善するために治療有効量の非晶質、多形性および擬似多形性の形の式Iの化合物を哺乳動物に投与する。
【0089】
別の実施態様では、低下した筋緊張、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症、歯周病、骨折、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、アルツハイマー病および脆化から選択された障害を治療または改善するために治療有効量の非晶質または結晶質形の式Iの化合物を単独でまたは組合せて使用できる。
【0090】
別の実施態様では、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、肥満症、再生不能性貧血およびその他の造血障害、膵臓癌、炎症性関節炎および関節修復、HIV衰弱、前立腺癌、良性前立腺過形成(BPH)、癌カテキシー、筋ジストロフィー、認識減退、性的機能不全、睡眠時無呼吸、抑鬱、未熟卵巣不全および自己免疫疾患のような障害を治療または改善するために非晶質および結晶質形の本発明の化合物を使用できる。
【0091】
本発明の化合物の固体形は、鏡像異性体的に純粋な形態で投与できる。ラセミ混合物は多数の慣用方法のいずれかによって個別の鏡像異性体に分割できる。これらの方法としては、キラルクロマトグラフィー、キラル副剤で誘導体化し次いでクロマトグラフィーもしくは結晶化によって分離する方法、ジアステレオマー塩の分別結晶化、などがある。
【0092】
本発明でアンドロゲン受容体の“アゴニスト”として機能するために使用された本発明の式Iの化合物は、アンドロゲン受容体に結合し該受容体に特有の生理的または薬理的応答を開始させる。“組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーター”という用語は、いくつかの組織では天然リガンドの作用を模倣するが他の組織ではそうでないアンドロゲン受容体リガンドを表す。“部分アゴニスト”は、化合物の使用量にかかわりなく受容体集団の最大活性化を誘導できないアゴニストである。“完全アゴニスト”は、所与の濃度でアンドロゲン受容体集団の完全活性化を誘導する。アンドロゲン受容体の“アンタゴニスト”として機能する式Iの化合物は、アンドロゲン受容体に結合し、天然のアンドロゲン受容体リガンドによって正常に誘導されるアンドロゲン関連応答を遮断または阻害できる。
【0093】
“治療有効量”という用語は、組織、系、動物またはヒトの体内で研究者、獣医、内科医または他の臨床医が求めるような生物学的または医学的応答を誘発する構造式Iの化合物の量を意味する。
【0094】
本文中に使用した“組成物”という用語は、特定した成分を特定した量で含む生成物、および、特定した量の特定した成分の組合せから直接または間接に得られた生成物を含意する。
【0095】
“医薬的に許容される”という用語は、担体、希釈剤または賦形剤が配合物の他の成分と適合性でなければならないこと、および、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0096】
“化合物の投与”および“化合物を投与する”という用語は、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを要治療個体に与えることを意味すると理解されたい。
【0097】
“アンドロゲン受容体によって媒介される機能を組織選択的に変調する”という用語は、アンドロゲン受容体によって媒介される機能が、同化(骨および/または筋肉)組織で選択的に(または差別的に)変調され、前立腺、精巣、精嚢、卵巣、子宮のような男性性徴(生殖)組織およびその他の性別副存組織ではこのような変調が存在しないことを意味する。1つの実施態様では、同化組織中でアンドロゲン受容体の機能が活性化され、男性性徴組織中でアンドロゲン受容体の機能が遮断または抑制される。別の実施態様では、同化組織のアンドロゲン受容体の機能が遮断または抑制され、アンドロゲン性組織のアンドロゲン受容体の機能が活性化される。
【0098】
本発明の治療方法を実施するための非晶質または結晶質形の構造式Iの化合物の投与は、有効量の構造式Iの化合物をこのような治療または予防を必要とする患者に投与することによって行う。本発明方法による予防的投与の必要性は公知の危険要因に基づいて判断する。該当症例の担当医が最終分析で個々の化合物の有効量を決定するが、有効量は、治療すべき正確な疾患、疾患の重篤度、患者が罹患している他の疾患または状態、選択された投与経路、患者に同時に必要な他の薬物および治療とその他の医師の判断要因に従属する。
【0099】
固定用量薬として配合されるとき、このような合一型製品には、下記の薬用量範囲内の非晶質および結晶質形の式Iの化合物と、それぞれの認可薬用量範囲内の(1種以上の)他の医薬有効物質とが使用される。あるいは、合一型配合物が適当でないときは、非晶質および結晶質形の化合物を医薬的に許容される(1種以上の)既知の薬剤と順次に使用できる。
【0100】
一般に、非晶質または結晶質形の構造式Iの化合物の1日投薬量は、1日に成人で約0.01から約1000mgの広い範囲で変更できる。例えば、投薬量の範囲は約0.1から約200mg/日である。経口投与するための組成物は、治療される哺乳動物への投薬量を症状に応じて調節できるように、約0.01から約1000mg、例えば、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、3.0、5.0、6.0、10.0、15.0、25.0、50.0、75、100、125、150、175、180、200、225および500ミリグラムの有効成分を含有する錠剤の形態で提供される。
【0101】
投与は1日に一回の投与でもよく、または、1日の合計投薬量を2、3または4回に分割した用量で投与してもよい。さらに、投与に選択された個々の化合物の特性に基づいて、投与頻度をもっと少なく、例えば、週一回、週2回、月一回、などにしてもよい。もちろん、投与頻度が少なくなれば、これに対応して一回の投薬量は増加するであろう。
【0102】
鼻腔内経路、経皮経路、直腸もしくは膣内座薬または静注溶液として投与されるときはもちろん、投薬計画全体を通じて投薬が間欠的でなく連続的であろう。
【0103】
本発明の範例は、単独または組合せた非晶質および結晶質形の上述の化合物のいずれかと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物である。本発明の用例は1種以上の非晶質または結晶質形の式Iの化合物と医薬的に許容される担体とを組合せる段階を含む医薬組成物の製造方法である。
【0104】
医薬用途で本発明方法に使用される組織選択的アンドロゲン受容体の配合物は、非晶質または結晶質形の式Iの化合物を医薬的に許容されるその担体および場合により他の治療有効成分と共に含む。担体は医薬的に許容される担体でなければならないが、これは、配合物の他の成分と適合性であり配合物のレシピエント対象に有害でないという意味である。
【0105】
従って本発明はさらに、非晶質または結晶質形の構造式Iの化合物を医薬的に許容されるその担体と共に含む医薬配合物を提供する。配合物は、経口、直腸、膣内、鼻腔内、外用および非経口(皮下、筋肉内、静脈内投与を含む)に適した配合物を含む。1つの実施態様で配合物は経口投与に適した配合物である。
【0106】
式Iの化合物の適当な外用配合物は、経皮デバイス、エアロゾル、クリーム、溶液、軟膏、ジェル、ローション、散布粉末などを含む。本発明の化合物を含有する外用医薬組成物は通常は、約0.005重量%から約5重量%の有効化合物を医薬的に許容されるビヒクルと混合して含む。本発明の化合物の投与に有用な経皮的皮膚貼付薬は平均的な技量の当業者に公知のものを含む。
【0107】
配合物は、単位剤形で提供され、製薬業界で公知の方法のいずれかによって調製できる。すべての方法が、有効化合物と1種以上の成分を構成する担体とを会合させる段階を含む。一般には、有効化合物を液体担体、ワックス状固体担体または微細分割固体担体と共に均一および均質に会合させ、次いで必要ならば生成物を所望の剤形に造形する段階を含む。
【0108】
経口投与に適した本発明の配合物は、カプセル、カシェ剤、錠剤もしくは甘味入り錠剤のようなおのおのが所定量の有効化合物を含有する個別単位、粉末もしくは顆粒、または、水性液体もしく非水性液体中の懸濁液もしくは溶液、例えば、シロップ、エリキシル剤、または、エマルションとして提供できる。
【0109】
錠剤は、場合により1種以上の副成分と共に圧縮または成形することによって製造できる。圧縮錠剤は、自由流動形態例えば粉末または顆粒形態の有効化合物を場合により副成分、例えば、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、崩壊剤または着色剤と混合して適当な機械で圧縮することによって製造できる。成形錠剤は、好ましくは粉末形態の有効化合物と適当な担体との混合物を適当な機械で成形することによって製造できる。適当な結合剤の非限定例は、デンプン、ゼラチン、ブドウ糖またはベータ−ラクトースのような天然の糖、トウモロコシ甘味料、アラビアガム、トラガカントガムまたはアルギン酸ナトリウムのような天然または合成のガム、カルボキシメチル−セルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを含む。これらの剤形に使用される滑沢剤の非限定代表例は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は非限定的に、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。
【0110】
合成および天然のガム、例えば、トラガカントガム、アラビアガム、メチルセルロースなどのような適宜着香した懸濁化剤または分散剤中のシロップまたは懸濁液のような経口液体形態は、溶液または懸濁液に有効化合物を添加することによって製造できる。使用できるその他の分散剤はグリセリンなどを含む。
【0111】
膣内または直腸内投与する配合物は、慣用の担体、すなわち、構造式Iの化合物に適合性であり、貯蔵安定性であり、非晶質または結晶質形の式Iの化合物に結合したりその放出を妨害したりしない粘膜非刺激性の無毒性基剤を用いて坐剤として提供できる。適当な基剤は、カカオ脂(テオブロマ油)、ポリエチレングリコール(例えば、カーボワックスおよびポリグリコール)、グリコール−界面活性剤の組合せ、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween、MyrjおよびArlacel)、グリセリン化ゼラチン、水添植物油を含む。グリセリン化ゼラチン坐剤を使用するときは、メチルパラベンまたはプロピルパラベンのような保存剤を使用できる。
【0112】
有効薬物成分を含有している外用製剤は、例えばアルコール、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびE油、鉱油、PPG2ミリスチルプロピオネートなどのような当業界で公知の様々な担体材料と混合して、例えば、アルコール溶液、外用クレンザー、クレンジングクリーム、スキンジェル、スキンローションおよびクリームもしくはゲル配合物の形態のシャンプーを形成できる。
【0113】
非晶質および結晶質形の本発明のN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドはまた、小さい単層小胞、大きい単層小胞および多層小胞のようなリポソームデリバーリシステムの形態で投与できる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンのような様々なリン脂質から形成できる。
【0114】
本発明のSARMはまた、化合物分子を結合させる独立担体としてモノクローナル抗体を使用することによって送達できる。本発明の化合物はまた、標的指向性薬物担体のような可溶性ポリマーに結合できる。このようなポリマーは、ポリビニル−ピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルタミドフェノール、または、パルミトイル残基で置換されたポリエチレン−オキシドポリリシンなどである。さらに、本発明の化合物は、薬物の調節放出を行うために有用な生分解性ポリマーのクラス、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよび架橋したもしくは両親媒性のヒドロゲルブロックコポリマーに結合できる。
【0115】
非経口投与に適した配合物は、レシピエントの血液と等張性の有効化合物の無菌水性製剤を含む。このような配合物は好適には、レシピエント対象の血液と等張性の化合物の溶液または懸濁液を含む。このような配合物は、蒸留水と、蒸留水または生理食塩水中の5%デキストロースと有効化合物とを含有できる。使用溶媒に適した溶解度を有している医薬的および薬理学的に許容される有効化合物の酸付加塩がしばしば有用である。有用な配合物はまた、適当な溶媒で希釈したときに非経口投与に適した溶液を与える固体形の式Iの化合物の濃縮溶液または固体を含む。
【0116】
本発明の医薬組成物および方法はさらに、上述の骨粗鬆症、歯周病、骨折、骨再建術後の骨損傷、筋減少症、脆化、加齢肌、男性性腺機能低下症、女性の閉経後症状、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症、再生不能性貧血のような造血障害、膵臓癌、アルツハイマー病、炎症性関節炎および関節修復のような状態の治療に常用の他の治療有効化合物を含み得る。
【0117】
骨粗鬆症の治療および予防には、固体形の本発明のN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドを、抗吸収剤、骨同化促進剤、ならびに、カルシウムサプリメント、フラボノイド、ビタミンD類似体のような明確には解明されていないメカニズムによって骨格に有益に作用する他の薬剤などから選択された少なくとも1種類の骨強化剤と組合せて投与できる。これらの併用治療は歯周病、骨折および骨再建術後の骨損傷状態にも有効である。例えば、非晶質および結晶質形の本発明の化合物は、エストロゲン、ビスホスホネート、SERM類、カテプシンKインヒビター、αvβ3インテグリン受容体アンタゴニスト、空胞性ATPアーゼインヒビター、ポリペプチドオステオプロテゲリン、VEGFアンタゴニスト、チアゾリジンジオン、カルシトニン、プロテインキナーゼインヒビター、上皮小体ホルモン(PTH)および類似体、カルシウム受容体アンタゴニスト、成長ホルモン分泌促進物質、成長ホルモン放出ホルモン、インスリン様増殖因子、骨形態形成タンパク質(BMP)、BMPアンタゴニズムインヒビター、プロスタグランジン誘導体、線維芽細胞増殖因子、ビタミンDおよびその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体、大豆イソフラボン、カルシウム塩およびフッ化物塩のような有効量の他の薬剤と効果的に併用投与できる。これらの併用治療は歯周病、骨折および骨再建術後の骨損傷状態にも有効である。
【0118】
本発明の1つの実施態様では、非晶質および結晶質形の本発明の化合物が、単独のまたはプロゲスチンもしくはプロゲスチン誘導体と組合せたエストロゲンおよびエストロゲン誘導体;ビスホスホネート;抗エストロゲンまたは選択的エストロゲン受容体モジュレーター;αvβ3インテグリン受容体アンタゴニスト;カテプシンKインヒビター;破骨細胞空胞性ATPアーゼインヒビター;カルシトニン;オステオプロテゲリンから選択された少なくとも1種類の治療有効量の骨強化剤と効果的に併用投与できる。
【0119】
骨粗鬆症の治療における本発明の化合物の様々な固体形の活性は、抗吸収剤;エストロゲン、ビスホスホネート、SERM類、カルシトニン、カテプシンKインヒビター、空胞性ATPアーゼインヒビター、RNAK/RANKL/オステオプロテゲリン経路の妨害剤、p38インヒビターまたはその他の破骨細胞生成もしくは破骨細胞活性化のインヒビターの活性とは明らかに違っている。本発明のSARMは、骨吸収を阻害するのではなく、例えば骨強度のかなりの部分を担う骨皮質に作用して骨形成の刺激を支援する。骨皮質の増粘は骨折の危険性、特に腰椎骨折の危険性の低下に実質的に貢献する。構造式Iの組織−SARMと、例えば、エストロゲンまたはエストロゲン誘導体、ビスホスホネート、抗エストロゲン、SERM類、カルシトニン、αvβ3インテグリン受容体アンタゴニスト、HMG−CoAレダクターゼインヒビター、空胞性ATPアーゼインヒビターおよびカテプシンKインヒビターのような抗吸収剤との組合せは、骨同化作用および抗吸収作用の相補効果があるので特に有効である。
【0120】
エストロゲンおよびエストロゲン誘導体の非限定的代表例は、例えば、17β−エストラジオール、エストロン、複合エストロゲン(PREMARIN(R))、ウマエストロゲン、17β−エチニルエストラジオールなどのようなエストロゲン活性を有するステロイド系化合物を含む。エストロゲンまたはエストロゲン誘導体は単独使用でもよくまたはプロゲスチンもしくはプロゲスチン誘導体との併用でもよい。プロゲスチン誘導体の非限定例はノルエチンドロンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンである。
【0121】
同じく本発明の化合物と併用できるビスホスホネート化合物の非限定例を以下に挙げる:
(a)アレンドロネート(アレンドロン酸としても知られる)、4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ビスホスホン酸、アレンドロネートナトリウム、アレンドロネートモノナトリウム三水和物、または、4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ビスホスホン酸モノナトリウム三水和物。アレンドロネートは、米国特許:1990年5月1日付けの4,922,007、Kieczykowskiら;1991年5月28日付けの5,019,651、Kieczykowski;1996年4月23日付けの5,510,517、Dauerら;1997年7月15日付けの5,648,491、Dauerら、に記載されている;
(b)[(シクロヘプチルアミノ)−メチレン]−ビス−ホスホネート(インカドロネート)。これは、1990年11月13日付けの米国特許4,970,335、Isomuraら、に記載されている;
(c)(ジクロロメチレン)−ビス−ホスホン酸(クロドロン酸)および二ナトリウム塩(クロドロネート)。これらはベルギー特許672,205(1966)およびJ.Org.Chem 32、4111(1967)に記載されている;
(d)[1−ヒドロキシ−3−(1−ピロリジニル)−プロピリデン]−ビス−ホスホネート(EB−1053);
(e)(1−ヒドロキシエチリデン)−ビス−ホスホネート(エチドロネート);
(f)[1−ヒドロキシ−3−(メチルペンチルアミノ)プロピリデン]−ビス−ホスホネート(イバンドロネート)。これは1990年5月22日付けの米国特許No.4,927,814、に記載されている;
(g)(6−アミノ−1−ヒドロキシヘキシリデン)−ビス−ホスホネート(ネリドロネート);
(h)[3−(ジメチルアミノ)−1−ヒドロキシプロピリデン]−ビス−ホスホネート(オルパドロネート);
(i)(3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデン)−ビス−ホスホネート(パミドロネート);
(j)[2−(2−ピリジニル)エチリデン]−ビス−ホスホネート(ピリドロネート)。これは米国特許No.4,761,406に記載されている;
(k)[1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジニル)−エチリデン]−ビス−ホスホネート(リセドロネート);
(l){[(4−クロロフェニル)チオ]メチレン}−ビス−ホスホネート(チルドロネート)。これは1989年10月24日付けの米国特許4,876,248、Breliereら、に記載されている;
(m)[1−ヒドロキシ−2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチリデン]−ビス−ホスホネート(ゾレドロネート);および、
(n)[1−ヒドロキシ−2−イミダゾピリジン−(1,2−a)−3−イルエチリデン]−ビス−ホスホネート(ミノドロネート)。
【0122】
本発明の方法および組成物の1つの実施態様では、ビスホスホネートが、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、ピリドロネート、リセドロネート、チルドロネート、ゾレドロネート、これらのビスホスホネート類の医薬的に許容される塩およびそれらの混合物から選択される。1つの変形例では、ビスホスホネートが、アレンドロネート、リセドロネート、ゾレドロネート、イバンドロネート、チルドロネートおよびクロドロネートから選択される。このクラスの1つのサブクラスでは、ビスホスホネートが、アレンドロネート、医薬的に許容されるその塩およびその水和物、それらの混合物である。医薬的に許容されるアレンドロネートの塩の具体例は、アレンドロネートモノナトリウムである。アレンドロネートモノナトリウムの医薬的に許容される水和物は、一水和物および三水和物を含む。医薬的に許容されるリセドロネート塩の具体例は、リセドロネートモノナトリウムである。リセドロネートモノナトリウムの医薬的に許容される水和物はヘミ−五水和物を含む。
【0123】
さらにまた、ラロキシフェン(参照:例えば米国特許No.5,393,763)、クロミフェン、ズクロミフェン、エンクロミフェン、ナフォキシデン、CI−680、CI−628、CN−55,945−27、Mer−25、U−11,555A、U−100Aおよびそれらの塩など(参照:例えば米国特許Nos.4,729,999および4,894,373)のような抗エストロゲン化合物を本発明の方法および組成物において構造式Iの化合物と併用できる。これらの薬剤はまた、SERMまたは選択的エストロゲン受容体モジュレーターとして知られており、エストロゲン経路と同様であると考えられている経路による骨吸収の阻害によって骨減量を予防する当業界で公知の薬剤である。
【0124】
SERMの非限定的代表例は例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、トレミフェン、アゾルキシフェン、EM−800、EM−652、TSE424、クロミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェンおよびレボルメロキシフェンを含む[Goldsteinら,“A pharmacological review of selective estrogen receptor modulators,”Human Reproduction Update,6:212−224(2000);Lufkinら,Rheumatic Disease Clinics of North America,27:163−185(2001)、および、“Targeting the Estrogen Receptor with SERMs,”Ann.Rep.Med.Chem.36:149−158(2001)]。
【0125】
αvβ3インテグリン受容体アンタゴニストは骨吸収を抑制し、骨粗鬆症のような骨疾患を治療するために構造式IのSARMと併用できる。例えば、W.J.Hoekstra and B.L.Poulter,Curr.Med.Chem.5:195−204(1998)およびそこに引用された参考文献を参照するとよい。別のαvβ3アンタゴニストは、R.M.Keenanら,J.Med.Chem.40:2289−2292(1997);R.M.Keenanら,Bioorg.Med.Chem.Lett.8:3165−3170(1998);R.M.Keenanら,Bioorg.Med.Chem.Lett.8:3171−3176(1998)に記載されている。
【0126】
以前はカテプシンO2として知られていたカテプシンKはシステインプロテアーゼであり、PCT国際出願公開No.WO 96/13523;米国特許Nos.5,501,969および5,736,357に記載されている。システインプロテアーゼ、具体的にはカテプシン類は、腫瘍転移、炎症、関節炎および骨再建のような多くの疾患状態に関係がある。酸性pHでカテプシンはI型コラーゲンを分解できる。カテプシンプロテアーゼインヒビターは、コラーゲン線維の分解を阻害することによって骨破壊性骨吸収を阻害でき、従って、骨粗鬆症のような骨吸収疾患の治療に有用である。カテプシンKインヒビターの非限定例は、PCT国際公開WO 01/49288およびWO 01/77073に見出される。
【0127】
“スタチン”として知られたHMG−CoAレダクターゼインヒビターのクラスの構成員は、新しい骨の成長を開始させ、骨粗鬆症によって失われた骨を回復させることが知見された(参照:The Wall Street Journal,Friday,December 3,1999,page Bl)。従って、スタチンは骨吸収の治療に有望である。HMG−CoAレダクターゼインヒビターの例は、ラクトン化形態またはジヒドロキシ開酸形態のスタチンならびに医薬的に許容されるそれらの塩およびエステルを含む。非限定例は、ロバスタチン(参照:米国特許No.4,342,767);シンバスタチン(参照:米国特許No.4,444,784);ジヒドロキシ開酸シンバスタチン、特にそのアンモニウムまたはカルシウム塩;プラバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.4,346,227);フルバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.5,354,772);アトロバスタチン、特にそのカルシウム塩(参照:米国特許No.5,273,995);セリバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.5,177,080)、ZD−4522としても知られたロスバスタチン(参照:米国特許No.5,260,440)、および、NK−104、イタバスタチンまたはニスバスタチンとしても知られたピタバスタチン(参照:PCT国際出願公開WO 97/23200)である。
【0128】
プロトンポンプインヒビターとも呼ばれる破骨細胞空胞性ATPアーゼインヒビターは固体形の本発明の構造式IのSARMと共に使用できる。破骨細胞の先端膜に見出されるプロトンATPアーゼは、骨吸収プロセスで重要な役割を果たすと報告されている。従って、このプロトンポンプは、骨粗鬆症および類縁の代謝疾患の治療および予防に有効であり得る骨吸収インヒビターを設計する際に絶好の標的となる[参照:C.Farinaら,DDT,4:163−172(1999)]。
【0129】
血管形成誘導因子VEGFは、その受容体が破骨細胞に結合することによって骨吸収活性を刺激することが成熟ウサギの単離破骨細胞で証明された[参照:M.Nakagawaら,FEBS Letters,473:161−164(2000)]。従って、KDR/Flk−1およびFlt−1のような破骨細胞受容体に結合するVEGFのアンタゴニストの開発は骨吸収の治療または予防につながるまた別の方法を提供できる。
【0130】
チアゾリジンジオン(TZD)のようなペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−γ(PPARγ)のアクチベーターは、破骨細胞様細胞形成および骨吸収をインビトロで阻害する。R.OkazakiらによってEndocrinology,140:5060−5065(1999)に報告された結果は、骨髄細胞に対する局部的メカニズムおよびグルコース代謝に対する全身的メカニズムを示している。PPARγアクチベーターの非限定例は、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンのようなグリタゾンおよびBRL 49653を含む。
【0131】
カルシトニンもまた、構造式IのSARMと共に使用できる。カルシトニンは好ましくはサーモン鼻腔スプレー(salmon nasal spray)として使用される(Azraら,Calcitonin.1996.In:J.P.Bilezikianら,Ed.,Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press;およびSilverman,“Calcitonin.”Rheumatic Disease Clinics of North America,27:187−196、2001)。
【0132】
プロテインキナーゼインヒビターもまた構造式IのSARMと共に使用できる。キナーゼインヒビターは、WO 01/17562に開示されたものを含み、また、1つの実施態様では、p38のインヒビターから選択される。本発明に有用なp38インヒビターの非限定例は、SB 203580を含む[Badgerら,J.Pharmacol.Exp.Ther.,279:1453−1461(1996)]。
【0133】
骨同化剤は、骨タンパク質マトリックスの産生量を増加することによって骨を造成することが判っている薬剤である。このような骨同化剤は例えば、上皮小体ホルモン(PTH)およびそのフラグメント、例えば、天然産生PTH(1−84)、PTH(1−34)、それらの天然型および置換型類似体、特に上皮小体ホルモン皮下注射剤である。PTHは、骨を形成する細胞である骨芽細胞の活性を増加しこれによって新しい骨の合成を促進することが知見されている(Modern Drug Discovery,Vol.3,No.8,2000)。ヒトPTHの注射可能な組換え体Forteo(テリパラチド)は米国で骨粗鬆症治療薬として正規に認可されている。
【0134】
また、Gowenら,J.Clin.Invest.105:1595−604(2000)に記載されているように、PTHの分泌を誘導するカルシウム受容体アンタゴニストも本発明のSARMと組合せて使用できる。
【0135】
骨粗鬆症の治療に構造式Iの化合物と併用できるその他の骨同化剤には、成長ホルモン分泌促進物質、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモンなどがある。代表的な成長ホルモン分泌促進物質の非限定例は、米国特許Nos.3,239,345、4,036,979、4,411,890、5,206,235、5,283,241、5,284,841、5,310,737、5,317,017、5,374,721、5,430,144、5,434,261、5,438,136、5,494,919、5,494,920、5,492,916および5,536,716;欧州特許公開Nos.0,144,230および0,513,974;論文;Science,260,1640−1643(June 11、1993);Am.Rep.Med.Chem.,28:177−186(1993);Bioorg.Med.Chem.Lett.,4:2709−2714(1994);およびProc.Natl.Acad.Sci.USA,92:7001−7005(1995)に開示されている。
【0136】
インスリン様成長因子(IGF)も構造式IのSARMと共に使用できる。インスリン様成長因子は、単独のまたはIGF結合性タンパク質3と組合せたインスリン様成長因子IおよびIGF IIから選択される[参照:Johannson and Rosen,“The IGFs as potential therapy for metabolic bone diseases,”1996,In:Bilezikianら,Ed.,Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press;およびGhironら,J.Bone Miner.Res.10:1844−1852(1995)]。
【0137】
骨形態形成タンパク質(BMP)も構造式IのSARMと共に使用できる。骨形態形成タンパク質は、BMP2、3、5、6、7、ならびに、近縁分子TGFベータおよびGDF5を含む[Rosenら,“Bone morphogenetic proteins,”1996.In:J.P.Bilezikianら,Ed.,Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press;およびWang EA,Trends Biotechnol.,11:379−383(1993)]。
【0138】
BMPアンタゴニズムのインヒビターも構造式IのSARMと共に使用できる。1つの実施態様で、BMPアンタゴニストインヒビターは、BMPアンタゴニストSOST、ノギン、コルジン、グレムリンおよびダンのインヒビターから選択される[参照:Massague and Chen,“Controlling TGF−beta signaling,”Genes Dev.,14:627−644、2000;Aspenbergら,J.Bone Miner.Res.16:497−500、2001;およびBrunkowら,Am.J.Hum.Genet.68:577−89(2001)]。
【0139】
本発明の組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーターはまた、骨粗鬆症のような骨減量に付随する状態を治療するためにポリペプチドオステオプロテゲリンと併用できる。オステオプロテゲリンは哺乳動物オステオプロテゲリンおよびヒトオステオプロテゲリンから選択できる。ポリペプチドオステオプロテゲリンは腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの構成員であり、骨粗鬆症のような骨減量の亢進を特徴とする骨疾患の治療に有用である。米国特許No.6,288,032を参照するとよい。
【0140】
プロスタグランジン誘導体もまた構造式IのSARMと共に使用できる。プロスタグランジン誘導体の非限定代表例は、プロスタグランジン受容体EP1、EP2、EP4、FP、IPおよびそれらの誘導体のアゴニストから選択される[Pilbeamら,“Prostaglandins and bone metabolism,”1996,In:Bilezikianら,Ed.Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press;Weinrebら,Bone,28:275−281(2001)]。
【0141】
線維芽細胞増殖因子もまた構造式IのSARMと共に使用できる。線維芽細胞増殖因子は、aFGF、bFGFおよびFGF活性を有している近縁ペプチドを含む[Hurley Florkiewicz,“Fibroblast growth factor and vascular endothelial growth factor families,”1996,In:J.P.Bilezikianら,Ed.Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press]。
【0142】
骨吸収インヒビターおよび骨同化剤以外にも、明確には解明されていないメカニズムによって骨格に有益に作用することが判っている他の薬剤が存在する。これらの薬剤も構造式IのSARMと共に有利に使用できる。
【0143】
ビタミンD、ビタミンDの誘導体および類似体も構造式IのSARMと共に使用できる。ビタミンDおよびビタミンD誘導体は、例えば、D3(コレカルシフェロール)、D2(エルゴカルシフェロール)、25−OH−ビタミンD3、1α,25(OH)2ビタミンD3、1α−OH−ビタミンD3、1α−OH−ビタミンD2、ジヒドロタキステロール、26,27−F6−1α,25(OH)2ビタミンD3、19−ノル−1α,25(OH)2ビタミンD3、22−オキサカルシトリオール、カルシポトリオール、1α,25(OH)2−16−エン−23−イン−ビタミンD3(Ro 23−7553)、EB1089、20−エピ−1α,25(OH)2ビタミンD3、KH1060、ED71、1α,24(S)−(OH)2ビタミンD3、1α,24(R)−(OH)2ビタミンD3を含む[参照:Jones G.,“Pharmacological mechanisms of therapeutics:vitamin D and analogs,”1996,In:J.P.Bilezikianら,Ed.Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press]。
【0144】
ビタミンKおよびビタミンK誘導体も本発明のSARMの様々な固体形と共に使用できる。ビタミンKおよびビタミンK誘導体は、メナテトレノン(ビタミンK2)を含む[参照:Shirakiら,J.Bone Miner.Res.,15:515−521(2000)]。
【0145】
イプリフラボンのような大豆イソフラボンは本発明のSARMと共に使用できる。
【0146】
フッ化ナトリウム(NaF)およびフルオロリン酸モノナトリウム(MFP)のようなフッ化物塩は構造式IのSARMと共に使用できる。経口カルシウムサプリメントも構造式IのSARMと共に使用できる。経口カルシウムサプリメントは、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウムおよび天然カルシウム塩を含む(Heaney.Calcium.1996.In:J.P.Bilezikianら,Ed.,Principles of Bone Biology,San Diego:Academic Press)。
【0147】
骨吸収インヒビター、骨同化剤、および、構造式Iの化合物と併用されたときに骨格に有益に作用する別の薬剤の1日の用量範囲は当業界で公知の範囲である。このような組合せの場合、一般に、構造式IのSARMの1日の用量範囲は、成人では1日に約0.01から約1000mg、例えば約0.1から約200mg/日の範囲である。しかしながら、併用薬剤の場合には薬効が向上するので個々の薬剤の用量を減らすという調節が可能である。
【0148】
特にビスホスホネートを使用する場合、投薬量は、治療用には約2.5から約100mg/日(遊離ビスホスホン酸として測定)、例えば5から20mg/日または約10mg/日の範囲が適当であろう。予防用には、約2.5から約10mg/日、特に約5mg/日を使用すべきである。副作用を少なくするために、構造式Iの化合物とビスホスホネートとの組合せは週一回の投与が望ましい。週一回の投与の場合、毎週約15mgから約700mgのビスホスホネートおよび約0.07から約7000mgの構造式Iの化合物という投薬量を個別にまたは合一剤形で使用できる。特に週一回の投与の場合、構造式Iの化合物は調節放出デリバリーデバイスで有利に投与できる。
【0149】
アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症および高脂血症の治療には構造式Iの化合物と1種以上の追加の有効薬剤との併用投与が効果的である。1種以上の追加の有効薬剤は、HMG−CoAレダクターゼインヒビターのような脂質変性化合物、他の医薬活性を有している薬剤、および、脂質変性効果と他の医薬活性との双方を有している薬剤から選択される。HMG−CoAレダクターゼインヒビターの非限定例は、ラクトン化形態またはジヒドロキシ開酸形態のスタチン類および医薬的に許容されるそれらの塩およびエステルを含む。非限定例は、ロバスタチン(参照:米国特許No.4,342,767);シンバスタチン(参照:米国特許No.4,444,784);ジヒドロキシ開酸シンバスタチン、特にそのアンモニウムまたはカルシウム塩;プラバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.4,346,227);フルバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.5,354,772);アトルバスタチン、特にそのカルシウム塩(参照:米国特許No.5,273,995);セリバスタチン、特にそのナトリウム塩(参照:米国特許No.5,177,080)、および、NK−104とも呼ばれるニスバスタチン(参照:PCT国際出願公開WO 97/23200)などである。
【0150】
構造式Iの化合物と併用できる追加の有効薬剤の非限定例は、HMG−CoAシンターゼインヒビター;スクアレンエポキシダーゼインヒビター;スクアレンシンテターゼインヒビター(スクアレンシンターゼインヒビターとしても知られる)、アシル−コエンザイムA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター、これはACAT−1またはACAT−2の選択インヒビターとACAT−1および−2のデュアルインヒビターを含む;ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)インヒビター;プロブコール;ナイアシン;コレステロール吸収インヒビター、例えばエゼチミベとしても知られたSCH−58235、および、米国特許Nos.5,767,115および5,846,966に記載の1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(S)−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル)]−4(S)−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノン;胆汁酸封鎖剤;LDL(低密度リポタンパク質)受容体誘導物質;血小板凝集インヒビター、例えば、糖タンパク質IIb/IIIaフィブリノーゲン受容体アンタゴニストおよびアスピリン;ヒトペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニスト、例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンのようなグリタゾンという通称の化合物およびチアゾリジンジオンとして知られた構造クラスに含まれる化合物、ならびに、チアゾリジンジオン構造クラス以外のPPARγアゴニスト;クロフィブラート、微粒子化フェノフィブラートを含むフェノフィブラートおよびジェンフィブロジルのようなPPARαアゴニスト;PPARα/γデュアルアゴニスト;ビタミンB6(ピリドキシンとしても知られる)および塩酸塩のような医薬的に許容されるそれらの塩;ビタミンB12(シアノコバラミンとしても知られる);葉酸または医薬的に許容されるその塩もしくはエステル、例えば、ナトリウム塩およびメチルグルカミン塩;抗酸化性ビタミン、例えばビタミンCおよびEならびにベータカロテン;ベータ−ブロッカー;アンギオテンシンIIアンタゴニスト例えばロサルタン;アンギオテンシン変換酵素インヒビター例えばエナラプリルおよびカプトプリル;カルシウムチャンネルブロッカー例えばニフェジピンおよびジルチアゼム;エンドテリンアンタゴニスト;LXRリガンドのようなABC1遺伝子発現を増進する薬剤;アレンドロネートナトリウムのようなビスホスホネート化合物;シクロオキシゲナーゼ−2インヒビター例えばロフェコキシブおよびセレコキシブ、ならびに、これらの状態の治療に有用な既知の他の薬剤。
【0151】
構造式Iの化合物に併用するときのHMG−CoAレダクターゼインヒビターの1日の投薬量範囲は当業者に公知の量に一致する。同様に、HMG−CoAインターゼインヒビター;スクアレンエポキシダーゼインヒビター;スクアレンシンテターゼインヒビター(スクアレンシンターゼインヒビターとしても知られる)、アシルコエンザイムA:ACAT−1またはACAT−2選択インヒビターならびにACAT−1および−2のデュアルインヒビターを含むコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター;ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)インヒビター;プロブコール;ナイアシン;エゼチミベのようなコレステロール吸収インヒビター;胆汁酸封鎖剤;LDL(低密度リポタンパク質)受容体誘導物質;血小板凝集インヒビター、例えば、糖タンパク質IIb/II1aフィブリノーゲン受容体アンタゴニストおよびアスピリン;ヒトペルオキシソーム増殖物質活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニスト;PPARαアゴニスト;PPARα/γデュアルアゴニスト;ビタミンB6;ビタミンB12;葉酸;抗酸化性ビタミン;ベータ−ブロッカー;アンギオテンシンIIアンタゴニスト;アンギオテンシン変換酵素インヒビター;カルシウムチャンネルブロッカー;エンドテリンアンタゴニスト;ABC1遺伝子発現を増進するLXRリガンドのような薬剤;ビスホスホネート化合物;および、シクロオキシゲナーゼ−2インヒビターの1日の投薬量範囲も当業界で公知の量に一致するが、併用投与の場合には構造式Iの化合物との協力作用があるので投薬量をある程度減らすことができる。
【0152】
本発明の1つの実施態様は、治療有効量の式Iの化合物を投与する段階を含む骨交替マーカー操作方法である。骨交替マーカーの非限定例は、尿中のI型コラーゲンのC−テロペプチド分解産物(CTX)、尿中のI型コラーゲンのN−テロペプチド架橋(NTX)、オステオカルシン(骨G1aタンパク質)、デュアルエネルギーx線吸収測定法(DXA)、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、定量的超音波(QUS)、および、デオキシピリジノリン(DPD)架橋を含む。
【0153】
本発明の方法によれば、併用する個々の成分を治療クール中の異なる時点で個別に投与してもよく、または、個別形態もしくは合一形態で同時に投与してもよい。従って本発明がこのような同時または交互の治療計画をすべて包含すると理解されるべきであり、“投与する”という用語はこれに応じて解釈されるべきである。本発明の化合物と他の薬剤との組合せの範囲は、アンドロゲン不足によって発症するかまたはアンドロゲン補給によって改善できる疾患の治療に有効な範囲であることが理解されよう。
【0154】
本発明の化合物の製造に関する記載に使用した略号:
AcOH 酢酸
CBZ−グリシン 保護形グリシン(C10H11NO4)
DHT ジヒドロテストステロン
DMEM ダルベッコ改質イーグル培地
DMSO ジメチルスルホキシド
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EDC 1−(3−ジメチルアミノプロピル)3−エチルカルボジイミドHCl
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FBS ウシ胎仔血清
FCS 若ウシ胎仔血清
HAP ヒドロキシアパタイト
HEPES (2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HOAt 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBt N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー/質量スペクトロスコピー
LDA リチエムジイソプロピルアミド
MeOH メタノール
NMM N−メチルモルホリン
n−Bu4NI テトラ−n−ブチルアンモニウムヨージド
Pd/C パラジウム/炭素
Rtまたはrt 室温
TEGM 結合用バッファ
THF テトラヒドロフラン。
【0155】
本発明の化合物は、文献に公知であるかまたは実験手順に例示した他の標準操作に加えて以下のスキームに示すような反応を使用することによって製造できる。
【実施例1】
【0156】
【化3】
【0157】
I.2−(アンモニオメチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−4−イウム二塩酸塩(2−5)の形成
【0158】
【化4】
【0159】
段階I.A:N−(2−アミノピリジン−3−イル)−N’−カルボキシベンジルグリシンアミド(2−3)
DMF(300mL)中の2,3−ジアミノピリジン(2−1,20.866g,191.2mmol)、Cbz−グリシン(2−2,40g,191.2mmol)、EDC(43.93g,229.44mmol)、HOAT(26.02g,191.2mmol)およびNMM(82.12mL,764.81mmol)の混合物を20時間撹拌した。混合物をH2O(500mL)で希釈し、EtOAcで抽出した(3×500mL)。集めた有機部分を、飽和NaHCO3、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、次いで濃縮すると、生成物2−3が褐色固体として得られた。1H NMR(500MHz,CD3OD)7.82(d,1H,J=5Hz),7.49(d,1H,J=8Hz),7.31(m,5H),6.65(m,1H),5.12(s,2H)。HRMS(ES,M+1)計算値301.1295、測定値301.1296。
【0160】
段階I.B:ベンジル3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチルカーバメート(2−4)
アミノピリジン2−3(46g,153mmol)を300mLのAcOHに溶解し、120℃で20時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、濃縮すると、所望生成物2−4が酢酸塩として得られた。1H NMR(500MHz,CD3OD)8.32(m,1H),7.95(m,1H),7.34(m,6H),7.08(m,1H),5.14(s,2H),4.87(s,2H)。HRMS(ES,M+1)計算値283.1190、測定値283.1192。
【0161】
段階I.C:2−(アンモニオメチル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−4−イウム二塩酸塩(2−5)
1000mLの1:1 AcOH/MeOH中の2−4(52g,151.88mmol)の混合物に20gの10%Pd/Cを添加した。反応混合物を1気圧のH2下で20時間撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過し、濃縮し、次いでジオキサンと共沸させると、淡褐色の油が得られた。半固体または粘性の油を200mLのジオキサンに懸濁させ、200mLの4.0MのHCl/ジオキサンを添加して淡褐色の懸濁液を調製した。固体を収集し、ジオキサン(200mL)で洗浄し、真空下で乾燥すると、2−5が淡褐色固体として得られた。1H NMR(500MHz,CD3OD)8.75(d,1H,J=8Hz),8367(d,1H,J=6Hz),7.85(m,1H),4.88(s,2H)。HRMS(ES,M+1)計算値149.0822、測定値149.0812。
【0162】
II.N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミド(1−7)の非晶質形
【0163】
段階II.A:4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボン酸メチルエステル(1−2)
1−1(J.Med.Chem.29 2298−2315(1986))(120g,362.04mmol)、60%NaH(18.7g,mmol)、ジメチルスルフェート(68.50g,543.05mmol)およびTHF(1200mL)の混合物を周囲温度で14時間撹拌した。60℃で2時間加温し、次いで、ヘッドスペースを窒素で掃気しながら40mLの濃HClをゆっくりと添加して反応停止させた。1/5容量まで蒸発させ、次いで1500mLの水で希釈した。固体を収集し、水およびヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥すると、1−2が淡黄色固体として得られた。
【0164】
段階II.B:4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスタン−17β−カルボン酸メチルエステル(1−3)
1−2(20g,57.9mmol)のEtOH(100mL)溶液に10%Pd/C(5.0g)を添加し、混合物を1気圧のH2下で14時間撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過し、濃縮し、次いで真空下で乾燥すると、1−3が白色固体として得られた。
【0165】
段階II.C:2α−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスタン−17β−カルボン酸メチルエステル(1−4)
THF(100mL)中の1−3(12g,34.53mmol)の−78℃溶液に、1.5MのLDAを含有するTHF溶液(27.6mL,41.44mmol)を20分間で滴下し、次いで1時間撹拌した。次にTHF(40mL)中のFN(SO2Ph)2(13.07g,41.44mmol)の溶液を20分間で添加した。30分後、冷却浴を除去し、反応混合物を14時間撹拌した。Et2Oを添加し、混合物を水、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、次いで濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤としてヘキサン対EtOAc)にかけると、1−4が無色固体として得られた。MS M+H計算値:366,測定値366.1。
【0166】
段階II.D:2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボン酸メチルエステル(1−5)
THF(400mL)中の1−4(30g,82.1mmol)の−78℃溶液に、1.5MのLDAを含有するTHF溶液(71.1mL,107mmol)を30分間で滴下し、次いで1時間撹拌した。つぎにメチルベンゼンスルフィネート(19.23g,123mmol)を15分間で添加した。30分後、冷却浴を除去し、反応混合物を1時間撹拌した。Et2Oを添加し、混合物を水、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、次いで濃縮した。残渣をトルエン(200mL)に溶解し、還流温度で2時間加熱した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤としてヘキサン対50%EtOAc/ヘキサン)にかけると、1−5が淡黄色固体として得られた。MS M+H計算値:364,測定値364.1。
【0167】
段階II.E:2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボン酸(1−6)
1,4−ジオキサン(50mL)中の1−5(6.2g,17.1mmol)の溶液に水酸化リチウム(1.07g,25.6mmol)の水(30mL)溶液を添加し、混合物を100℃で3時間加熱した。冷却後、混合物を酢酸エチルで希釈し、分離し、有機相を1NのHCl、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、次いで濃縮すると、1−6が淡黄色固体として得られた。MS M+H計算値:350,測定値350。
【0168】
段階II.F:N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド(1−7)
DMF(200mL)中の1−6(15g,42.9mmol)、EDC(9.88g,51.5mmol)、HOBt(6.96g,51.510mmol)、NMM(18.9mL,171.70mmol)および2−5(10.43g,47.217mmol)の混合物を40℃で4.0時間加熱し、次いで周囲温度で14時間撹拌した。混合物を水で希釈し、濾過し、固体を水洗し、次いで真空下で乾燥した。シリカゲルクロマトグラフィー(溶出剤としてヘキサン対70:25:5のCHCl3/EtOAc/MeOH)にかけると、1−7が無色非晶質固体として得られた。1H NMR(500MHz,CD3OD)8.45(m,1H),7.95(m,1H),7.23(m,1H),6.14(d,1H,J=8Hz),4.72(m,2H),3.40(dd,1H,J=4Hz,13Hz),2.94(s,3H),2.23(m,2H),1.96(m,2H),1.53−1.86(m,7H),1.25−1.39(m,3H),1.12(m,1H),1.04(m,2H),0.95(s,3H),0.68(s,3H)。MS M+H計算値:480.2770 測定値480.2740。
【実施例2】
【0169】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの無水結晶質形A
非晶質のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド(1−7)を1,2−ジメトキシエタンに溶解した。溶液を還流温度に加熱した。約2分後、結晶化が生じた。スラリーを2時間還流させ、室温に冷却し、濾過した。固体を1,2−ジメトキシエタンで洗浄し、乾燥すると、N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの無水結晶質形Aが得られた。
【実施例3】
【0170】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの吸湿性結晶質形B
非晶質のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド(3.0gms)(1−7)を加温しながら5mLのエタノールに溶解した。混合物を室温に放冷した。6時間後、針が形成され始めた。混合物を一夜静置した。沈殿した固体を収集し、エタノールで洗浄した。洗浄した固体を24時間乾燥させた。
【実施例4】
【0171】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの結晶質水和物形C
結晶質エタノラート形G(約10mg)を撹拌容器中で1mLの水に懸濁させた。懸濁液を3時間撹拌した。固体を沈降させた。乾燥した固体のXRPD分析は、結晶質水和物形Cを示した。
【実施例5】
【0172】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの結晶質無水形D
結晶質四水和物形E(1.5gm)およびメタノール(15gm,19mL)を舟形撹拌羽根を備えた125mL容のジャケット付きフラスコに充填した。ジャケット温度は20℃に設定した。混合物に形A(30mg)を播種し、1時間熟成した。ジャケット付きフラスコに脱イオン水(DIW)(19mL)を8時間以上の期間で充填した。約1mLのDIWの充填後、形Aシードが溶解した。約9mLのDIWの充填後、バッチに約5mgの形Aシードを再度播種した。最初の水充填後、バッチを一夜熟成した。ジャケット付きフラスコ内の混合物の約1/3量(13mL)を取り出して、カバー付きメスシリンダーに導入した。固体が沈降した。メスシリンダー内のサンプルの液体部分をピペットで取り出し、WhatmanTMフィルターで濾過した。メスシリンダー内の残留サンプル部分は真空を備えたフィルターポットで濾過した。次にサンプルをDIWで3回洗浄した。濾過した湿性ケーキを35℃の真空オーブンで乾燥した。乾燥した固体のXRPD分析は結晶質形Aを示した。
【0173】
4.81mLのDIWをジャケット付きフラスコ内の残留混合物に4時間を要して添加した。次いで、バッチを一夜熟成させた。その後、ジャケット付きフラスコ内の残留混合物のほぼ半量(15.4mL)をカバー付きメスシリンダーに導入した。固体を沈降させた。メスシリンダー内のサンプルの液体部分をピペットで取り出し、WhatmanTMフィルターで濾過した。サンプルの湿性固体部分を、真空を備えたフィルターポットで濾過した。次にサンプルをDIWで3回洗浄した。濾過した湿性ケーキを35℃の真空オーブンで乾燥した。乾燥した固体のXRPD分析は結晶質形Aを示した。
【0174】
その後、3.95mLのDIWをジャケット付きフラスコ内の残留混合物に4時間を要して添加した。バッチを4時間熟成した。撹拌を中止して固体を沈降させた。メスシリンダー内のサンプルの液体部分をピペットで取り出し、WhatmanTMフィルターで濾過した。湿性固体を、真空を備えたフィルターポットで濾過した。次にサンプルをDIWで3回洗浄した。濾過した湿性ケーキを35℃の真空オーブンで乾燥した。乾燥した固体のXRPD分析は結晶質無水形Dを示した。
【実施例6】
【0175】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの結晶質四水和物形E
無水結晶質形AのN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド 52.46mg)を計量し、50mLの0.1Nの塩酸に撹拌しながら添加して透明溶液を形成した。24時間後、沈殿を促進するために数滴の50%NaOHでサンプルをpH1.5に調整した。溶液はまだ沈殿しなかった。そこで追加量の100.25mgの無水結晶質形Aを溶液に添加して沈殿を促進した。溶液はほぼ透明になり、次いで固体が沈殿し始めた。サンプルをさらに4日間平衡させた後、固体を遠心し、濾過し、冷水ですすいだ。乾燥したサンプルのXRPD分析は結晶質四水和物形Eを示した。
【実施例7】
【0176】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの結晶質セスキ水和物形F
実施例2に記載した無水結晶質形AのN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドの一部分を40℃のオーブンで2時間真空乾燥し、分析用に1つのアリコートを取り出し、サンプルの残りは乾燥を一夜継続した。次にサンプルを取り出して同様に分析した。2時間サンプルおよび一夜真空乾燥サンプルの双方をXRPDによって特性決定し、同じ結晶質セスキ水和物形Fであることを確認した。
【実施例8】
【0177】
N−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドのエタノラート形G
非晶質のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミド(9.5gms)(1−7)を75mLのエタノールに60℃で溶解した。混合物を室温に放冷した。2時間後、固体を収集し、25mLのエタノールで洗浄した。洗浄した固体を24時間風乾すると無色固体が得られた。乾燥した固体をXRPDによって分析し、非晶質形であることを確認した。
【実施例9】
【0178】
医薬組成物
本発明の特定実施態様として、100mgの無水結晶質形DのN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5α−アンドロスト−1−エン−17β−カルボキサミドを、微細分割した十分な量のラクトースと配合し、全量をサイズ0の硬質ゼラチンカプセルに充填するための580から590mgとする。
【0179】
上記明細書は本発明の原理を教示しており、実施例は例示目的で与えられており、本発明の実施が慣用的な変更、応用または修正のすべてを特許請求の範囲およびそれらの等価の概念の範囲内に包含することは理解されよう。
【0180】
アッセイ
化合物のSARM活性を同定するためのインビトロおよびインビボアッセイ
本出願に例示した化合物は以下のアッセイの1つ以上で活性を示した。
【0181】
内在的に発現されたARに対する化合物親和性を検定するヒドロキシアパタイト基剤のラジオリガンド置換アッセイ
材料:
結合用バッファ:TEGM(10mMのトリス−HCl、1mMのEDTA、10%グリセロール、1mMのベータ−メルカプトエタノール、10mMのモリブデン酸ナトリウム,pH7.2)
50%HAPスラリー:Calbiochem Hydroxyapatite,Fast Flow、10mMのトリス,pH8.0および1mMのEDTA
洗浄用バッファ:40mMのトリス,pH7.5、100mMのKCl、1mMのEDTAおよび1mMのEGTA
95%EtOH
メチルトリエノロン,[17α−メチル−3H],(R1881*);NEN NET590
メチルトリエノロン(R1881),NEN NLP005(95%EtOHに溶解)
ジヒドロテストステロン(DHT)[1,2,4,5,6,7−3H(N)] NEN NET453
Hydroxyapatite Fast Flow;Calbiochem Cat#391947
モリブデート=モリブデン酸(Sigma、M1651)
MPA−MB−453細胞培養培地:
RPMI 1640(Gibco 11835−055)w/23.8mMのNaHCH3、2mMのL−グルタミン
500mLの完全培地中 最終濃度
10mL(1M Hepes) 20mM
5mL(200mMのL−gIu) 4mM
0.5mL(10mg/mLのヒトインスリン) 10μg/mL
0.01NのHCl中
Calbiochem#407694−S)
50mLのFBS(Sigma F2442) 10%
1mL(10mg/mLのゲンタマイシン 20μg/mL
Gibco#15710−072)
細胞継代
細胞(Hall R.E.ら,European Journal of Cancer,30A:484−490(1994))をPBSで2回すすぎ、フェノールレッド非含有トリプシン−EDTAを同じPBSで1:10に希釈する。細胞層を1×トリプシンですすぎ、余剰のトリプシンを除去し、細胞層を37℃で〜2分間インキュベートする。フラスコを叩いて、細胞剥離の徴候を点検する。細胞がフラスコから剥れて滑り始めると、完全培地を添加してトリプシンの作用を止める。この時点で細胞をカウントし、次いで適正濃度に希釈し、フラスコまたは培養皿に分け入れてさらに培養する(通常は1:3から1:6に希釈)。
【0182】
MDA−MB−453細胞溶解液の調製
MDA細胞が70から85%の単層集密状態になると、これらの細胞を上述のように剥離し、4℃、1000gで10分間遠心することによって収集する。次に細胞ペレットをTEGM(10mMのトリス−HCl、1mMのEDTA、10%グリセロール、1mMのベータ−メルカプトエタノール、10mMのモリブデン酸ナトリウム,pH7.2)で2回洗浄する。最終洗浄の後、細胞を107細胞/mLの濃度でTEGMに再浮遊させる。細胞浮遊液を液体窒素またはエタノール/ドライアイス浴で瞬間冷凍し、ドライアイスに載せた−80℃のフリーザーに移す。結合アッセイを開始する前に、凍結サンプルを氷水にのせて適宜解凍する(〜1時間)。次にサンプルを4℃、12,500gから20,000gで30分間遠心する。上清を使用して直ちにアッセイを開始する。50μLの上清を使用する場合、被験化合物は50μLのTEGMバッファ中で調製できる。
【0183】
多化合物スクリーニング手順
1×TEGMバッファを調製し、同位体含有アッセイ混合物を以下の処方で調製する:EtOH(反応中の最終濃度2%)、3H−R1881または3H−DHT(反応中の最終濃度0.5nM)および1×TEGM。[例えば、100サンプルの場合、200μL(100×2)のEtOH+4.25μLの1:10の3H−R1881予製液+2300μL(100×23)の1×TEGM]。化合物を系列希釈する、例えば、出発最終濃度が1μM、化合物が25μL溶液で、重複サンプル用に75μLの4×1μM溶液を調製する場合、3μLの100μM溶液を72μLのバッファに添加し、1:5に系列希釈する。
【0184】
25μLの3H−R1881トレースおよび25μLの化合物溶液を最初に混ぜ合わせる。次いで、50μLの受容体溶液を添加する。反応混合物をゆるやかに混ぜ合わせ、約200rpmで短時間回転させ、4℃で一夜インキュベートする。100μLの50%HAPスラリーを調製し、インキュベートした反応混合物に加えて渦流させ、氷上で5から10分間インキュベートする。反応混合物のインキュベート中に反応混合物をさらに2回渦流させ、HAPを再懸濁させる。次にFilterMateTM Universal Harvesterプレート洗浄機(Packard)を使用し、96−ウェルフォーマットのサンプルを洗浄用バッファで洗浄する。洗浄プロセスで、発現したリガント結合受容体を含有しているHAPはUnifilter−96 GF/Bフィルタープレート(Packard)に移る。フィルタープレート上のHAPペレットを50μLのMICROSCINT(Packard)シンチラントと共に30分間インキュベートした後、TopCountマイクロシンチレーションカウンター(Packard)でカウントする。R1881を標準としてIC50を計算する。
【0185】
式Iの化合物を上記アッセイで試験すると、1マイクロモル以下のIC50値を有することが知見された。
【0186】
アンドロゲン受容体のN末端ドメインおよびC末端ドメインのリガンド誘導相互作用を検定する哺乳類ツーハイブリッドアッセイ(アゴニストモード:VIRCON)
このアッセイは、rhARのN末端ドメイン(NTD)とC末端ドメイン(CTD)との間の相互作用を誘導するARアゴニストの能力を評価する。この相互作用は活性化アンドロゲン受容体によって媒介されるインビボの男性化傾向に影響を及ぼす。rhARのNTDとCTDとの相互作用は、哺乳類ツーハイブリッドアッセイでCV−1サル腎細胞中のGal4DBD−rhARCTD融合タンパク質とVP16−rhARNTD融合タンパク質との間のリガンド誘導会合として定量される。
【0187】
トランスフェクション前日、CV−1細胞をトリプシン処理してカウントし、次いでDMEM+10%FCS中で96ウェルまたはもっと大きいプレートに20,000細胞/ウェル(プレートの大きさに応じて増量)で平板培養する。翌朝、LIPOFECTAMINE PLUS試薬(GIBCO−BRL)を販売者の推奨する手順に従って使用し、CV−1細胞にpCBB1(SV40初期プロモーター下で発現したGal4DBD−rhARLBD融合構築物)、pCBB2(SV40初期プロモーター下で発現したVP16−rhAR NTD融合構築物)およびpFR(Gal4応答性ルシフェラーゼリポーター、Promega)をコトランスフェクトする。簡単に説明すると、0.05μgのpCBB1、0.05μgのpCBB2および0.1μgのpFRのDNA混合物を、“PLUS Reagent”(1.6μL、GIBCO−BRL)に混合した3.4μLのOPTI−MEM(GIBCO−BRL)に混合し、室温(RT)で15分間インキュベートしてプレ複合体化DNAを形成する。
【0188】
各ウェル用に、0.4μLのLIPOFECTAMINE試薬(GIBCO−BRL)を第二管で4.6μLのOPTI−MEMに希釈して混ぜ合せ、希釈LIPOFECTAMINE試薬を調製する。プレ複合体化DNA(上記)と希釈LIPOFECTAMINE試薬(上記)とを一緒にして混ぜ合せ、室温で15分間インキュベートする。細胞上の培地を、40μL/ウェルのOPTI−MEMで交換し、10μLのDNA−脂質複合体を各ウェルに加える。複合体を静かに培地に混ぜ、37℃、5%CO2で5時間インキュベートする。インキュベーション後、200μL/ウェルのDMEMおよび13%の活性炭脱着FCSを添加し、次いで37℃、5%CO2でインキュベートする。24時間後、被験化合物を所望濃度(1nM−10μM)で添加する。48時間後、LUC−スクリーンシステム(TROPIX)を製造業者のプロトコル通りに使用してルシフェラーゼ活性を測定する。アッセイは、各50μLのアッセイ溶液1次いでアッセイ溶液2を順次にウェルに添加することによって直接的に行う。室温で40分間のインキュベーション後、2−5秒の積分で蛍光を直接測定する。
【0189】
被験化合物の活性は、3nMのR1881によって得られた活性に対するEmaxとして計算する。本発明の典型的な組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーターはこのアッセイで弱いアゴニスト活性を示すかまたはアゴニスト活性を全く示さず、10マイクロモルでアゴニスト活性50%未満である。
【0190】
参照:He B,Kemppainen JA,Voegel JJ,Gronemeyer H,Wilson EM,“Activation function in the human androgen receptor ligand binding domain mediates inter−domain communication with the NH(2)−terminal domain,”J.Biol.Chem.274:37219−37225(1999)。
【0191】
アンドロゲン受容体のトランス活性化変調(TAMAR)
このアッセイは、ヒトARを天然に発現するヒト乳癌細胞系MDA−MB−453細胞中のMMTV−LUCリポーター遺伝子からの転写をコントロールする被験化合物の能力を評価する。このアッセイはLUCリポーター遺伝子に結合した修飾MMTV LTR/プロモーターの誘導を測定する。
【0192】
10%FBS、4mMのL−グルタミン、20mMのHEPES、10ug/mLのヒトインスリンおよび20ug/mLのゲンタマイシンを含有しているフェノールレッド非含有RPMI 1640から成る“対数増殖培地”中で、透明底部をもつ白色の96ウェルプレートに20,000から30,000細胞/ウェルを平板培養する。インキュベーター条件は、37℃および5%CO2である。トランスフェクションはバッチモードで行う。細胞をトリプシン処理し、適正量の新しい培地中で好都合な細胞数までカウントし、Fugene/DNAカクテルミックスとゆるやかに混ぜ合わせて、96ウェルプレートに平板培養する。全部のウェルに200Tlの培地+脂質/DNA複合体を入れ、次いで37℃で一夜インキュベートする。トランスフェクションカクテルは、無血清Optimem、Fugene6試薬およびDNAから成る。製造業者(Roche Biochemical)のカクテル調製プロトコルに従う。脂質(Tl)対DNA(Tg)比は約3:2であり、インキュベーション時間は室温で20分間である。トランスフェクションの16から24時間後、DMSO(ビヒクル)中の最終濃度<3%とした被験化合物で細胞を処理する。細胞を被験化合物に48時間接触させる。48時間後、細胞をPromega細胞培養物溶解バッファで30から60分間溶解し、次いで96ウェルフォーマット光量計で抽出物中のルシフェラーゼ活性を測定する。
【0193】
被験化合物の活性は、100nMのR1881で得られた活性に対するEmaxとして計算する。
参照:R.E.Hallら,“MDA−MB−453,an androgen−responsive human breast carcinoma cell line with high androgen receptor expression,”Eur.J.Cancer,30A:484−490(1994)およびR.E.Hallら,“Regulation of androgen receptor gene expression by steroids and retinoic acid in human breast−cancer cells,”Int.J.Cancer,52:778−784(1992)。
被験化合物の活性は、R1881で得られた活性に対するEmaxとして計算する。例示した本発明の組織選択的アンドロゲン受容体モジュレーターはこのアッセイで10%を上回る部分アゴニスト活性を示す。
【0194】
インビボ前立腺アッセイ
最初期の性的成熟年齢に達した9−10週齢の雄のスプレーグ−ドーリーラットを予防モードで使用する。目標は、精巣除去(精巣摘出術[ORX])後の7日間に生じる腹側前立腺および精嚢の急激な性能低下(〜85%)をアンドロゲン様化合物がどの程度遅延させるかを測定することである。
【0195】
ラットに精巣摘出術(ORX)を施す。各ラットを計量し、次いでイソフルランガスで麻酔し、目的を果たすまで維持する。陰嚢を1.5cm長さで腹背切開する。右精巣を体外に出す。精巣動脈および輸精管を精巣から0.5cm近位で4.0シルクによって結紮する。結紮部位の遠位を小型手術鋏で切断して精巣を切り離す。組織断端は陰嚢に戻す。左精巣についても同じ操作を繰返す。両方の断端を陰嚢に戻した後、陰嚢とその上の皮膚を4.0シルクで縫合する。擬ORX(Sham−ORX)の場合、結紮および鋏切断を除く全部の手順が完了している。ラットは10から15分以内に意識および十分な運動能力を完全に回復する。
【0196】
切開創の縫合後、直ちに所定用量の被験化合物をラットに皮下または経口投与する。さらに6日間連続して治療を継続する。
【0197】
剖検およびエンドポイント
ラットを先ず計量し、次いでCO2室で仮死状態まで麻酔する。心臓穿刺によって約5mLの全血を採取する。次いでラットの死亡徴候およびORXの完了を調べる。次に、前立腺の腹側部分を探し出し、型通りのやり方で鈍的剥離する。腹側前立腺を3から5秒間ドライブロットし、次いで計量する(VPW)。最後に、精嚢を探し出し、切り離す。腹側精嚢を3から5秒間ドライブロットし、次いで計量する(SVWT)。
【0198】
このアッセイの一次データは、腹側前立腺および精嚢の重量である。二次データは、血清LH(黄体形成ホルモン)およびFSH(卵胞刺激ホルモン)、また、できれば骨形成および男性化の血清マーカーを含む。群間差を確認するためにフィッシャーPLSDポストホック検定を加えたANOVAによってデータを解析する。被験化合物がORX誘導VPWおよびSVWTの減少を阻害する程度を評価する。
【0199】
インビボ骨形成アッセイ:
成人女性をシミュレートするために7から10ヶ月齢の雌のスプレーグ−ドーリーラットを治療モードで使用する。骨減量を生じさせエストロゲン不足の骨減少症の成人女性をシミュレートするために75から180日前にラットに卵巣摘出術(OVX)を施しておく。低用量の強力な抗吸収剤アレンドロネート(0.0028mpk SC,2×/週)による前処置をDay0に開始する。被験化合物による治療をDay15に開始する。Days15−31まで被験化合物で治療し、Day32に剖検を行う。目標は、骨膜表面の蛍光色素ラベリングの増加によって示される骨形成量がアンドロゲン様化合物によってどの程度増加するかを測定することである。
【0200】
典型的アッセイでは、各7匹のラットから成る9グループを試験する。Days19および29(治療5および15日目)に、各ラットにカルセイン(8mg/kg)の皮下注射を一回行う。
【0201】
剖検およびエンドポイント
ラットを先ず計量し、次いでCO2室で仮死状態まで麻酔する。心臓穿刺によって約5mLの全血を採取する。次いでラットの死亡徴候およびORVの完了を調べる。最初に、子宮を探し出し、型通りのやり方で鈍的剥離し、3から5秒間ドライブロットし、次いで計量する(UW)。子宮を10%中性緩衝ホルマリンに入れる。次に、右肢を股関節から外す。大腿骨と頚骨とを膝で分離し、筋肉を実質的に除去し、次いで70%エタノールに入れる。
【0202】
大腿骨の近位−遠位中点を中心にした右大腿骨中央の1cmセグメントをシンチレーションバイアルに入れ、工業用アルコールおよびアセトンで脱水および脱脂し、次いで漸増濃度のメチルメタクリレート溶液に導入する。これを90%メチルメタクリレート:10%ジブチルフタレートの混合物に埋封し、48から72時間重合させる。ボトルを割り、プラスチックブロックをLeica 1600 Saw Microtomeの万力型標本ホルダーに適合する形状に裁断し、骨の長軸の横断切片作製を準備する。85μm厚みの3つの横断切片を作製し、ガラススライドに封入する。骨の中点にほぼ対応する1つの切片を各ラットから選択し、ブラインドコードする。各切片の骨膜表面の全骨膜表面積、シングル蛍光色素ラベル、ダブル蛍光色素ラベルおよびラベル間距離を評価する。
【0203】
このアッセイの一次データは、骨形成の半独立マーカーであるダブルラベル含有骨膜表面のパーセンテージおよびミネラル付着率(ラベル間距離(μm)/10d)である。二次データは、子宮重量および組織学的特徴を含む。三次エンドポイントは、骨形成および男性化の血清マーカーを含み得る。群間差を確認するためにフィッシャーPLSDポストホック検定を加えたANOVAによってデータを解析する。被験化合物が骨形成エンドポイントを増加させた程度を評価する。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】化合物Iの無水結晶質形Aの特性X線回折パターンである。
【図2】化合物Iの無水結晶質形Aの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図3】化合物Iの無水結晶質形Aのフッ素−19交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図4】化合物Iの無水結晶質形Aの典型的DSC曲線である。
【図5】化合物Iの結晶質形BのX線回折パターンである。
【図6】化合物Iの結晶質形Bの典型的DSC曲線である。
【図7】化合物Iの結晶質水和物形CのX線回折パターンである。
【図8】化合物Iの結晶質水和物形CのDSC曲線である。
【図9】化合物Iの無水結晶質形DのX線回折パターンである。
【図10】化合物Iの無水結晶質形Dの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである
【図11】化合物Iの無水結晶質形Dのフッ素−19交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトル
【図12】化合物Iの無水結晶質形Dの典型的DSC曲線である。
【図13】化合物Iの結晶質四水和物形EのXRPDである。
【図14】化合物Iの結晶質四水和物形Eの炭素−13交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図15】化合物Iの結晶質四水和物形Eのフッ素−19交差分極マジックアングルスピニング(CPMAS)核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
【図16】化合物Iの結晶質四水和物形EのDSC曲線である。
【図17】化合物Iのセスキ水和物形FのX線回折パターンである。
【図18】化合物Iのセスキ水和物形FのTGA曲線である。
【図19】化合物Iの結晶質エタノラート形GのX線回折パターンである。
【図20】化合物Iの結晶質エタノラート形Gの典型的DSC曲線である。
【図21】化合物Iの非晶質形のXRPDである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミド。
【請求項2】
5.6+/−0.1、7.6+/−0.1および9.6+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつX線粉末回折パターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形A。
【請求項3】
約39.7+/−0.1、118.3+/−0.1、169.2+/−0.1および12.6+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ炭素−13 CPMAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形A。
【請求項4】
約−128.9+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつフッ素−19 MAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形A。
【請求項5】
約281.2℃に融点を有している請求項2に記載の無水結晶質形A。
【請求項6】
約7.8+/−0.1、8.5+/−0.1および10.2+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの吸湿性結晶質形B。
【請求項7】
約164.0℃に融点を有している請求項6に記載の吸湿性結集質形B。
【請求項8】
約10.1+/−0.1、11.0+/−0.1および12.4+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質水和物形C。
【請求項9】
さらに約268.0℃に融解/分解吸熱点を有している請求項8に記載の結晶質水和物形C。
【請求項10】
約8.9+/−0.1、9.9+/−0.1および12.5+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形D。
【請求項11】
約174.2+/−0.1、12.2+/−0.1、56.0+/−0.1および23.9+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ炭素−13 CPMAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形D。
【請求項12】
約263.6℃に融解吸熱点を有している請求項10に記載の結晶質水和物形D。
【請求項13】
約6.1+/−0.1、12.8+/−0.1および13.1+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質四水和物形E。
【請求項14】
約13.1+/−0.1、28.9+/−0.1、39.3.0+/−0.1および154.2+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ炭素−13 CPMAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質四水和物形E。
【請求項15】
約−126.5+/−0.1、−128.0+/−0.1および−129.3+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつフッ素−19 MAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質四水和物形E。
【請求項16】
約6.3+/−0.1、7.6+/−0.1および12.5+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質セスキ水和物形F。
【請求項17】
約8.2+/−0.1、10.0+0.1および13.4+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質エタノラート形G。
【請求項18】
さらに約165.9℃に融解吸熱点を有している請求項17に記載の結晶質エタノラート形G。
【請求項19】
a)少なくとも1種類の溶媒に化合物を溶解して混合物を形成する段階と、
b)結晶化が完了し固体が形成されるまで混合物を還流させる段階と、
c)固体を単離する段階と、
d)固体を乾燥する段階と
を含む、化合物N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形Aの製造方法。
【請求項20】
少なくとも1種類の溶媒が、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテートおよびアセトンから選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
固体を単離する段階がさらに、固体を真空フィルターで濾過し、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテートおよびアセトンから選択された少なくとも1種類の洗浄用溶媒で固体を洗浄する段階を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
無水結晶質遊離塩基形AをpH約2以下の水溶液に添加して溶液を形成する段階と、溶液を熟成して固体を沈殿させる段階と、固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの四水和物形Eの製造方法。
【請求項23】
無水結晶質遊離塩基形Aの添加を室温で行う請求項22に記載の方法。
【請求項24】
四水和物形Eを少なくとも1種類の溶媒に溶解して溶液を形成する段階と、少なくとも1種類のアンチ溶媒を溶液が過飽和になるまで溶液に充填する段階と、過飽和溶液を熟成して固体を形成させる段階と、固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質無水形Dの形成方法。
【請求項25】
少なくとも1種類の溶媒が、ジメチルアセトアミド、メタノール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、および、N−メチル−2−ピロリドンから選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1種類のアンチ溶媒が、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン、水、アセトニトリル、イソプロピルアセテート、イソブチルアセテートおよびメチルtert−ブチルエーテルから選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種類の溶媒がメタノール、ジメチルスルホキシドおよびN−メチル−2−ピロリドンから選択され、少なくとも1種類のアンチ溶媒が水およびアセトニトリルから選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
熟成段階が場合によっては、固体が形成されるまで追加量のアンチ溶媒を添加するかまたはバッチを冷却する段階を含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
四水和物形Eを40℃で少なくとも10時間真空乾燥する段階を含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質セスキ水和物形Fの形成方法。
【請求項30】
非晶質のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−α−アンドロスト−1−エン−17−β−カルボキサミドをエタノールに溶解して溶液を形成する段階と、溶液を約60℃に加熱する段階と、溶液を室温に冷却することによって溶液を熟成して固体を沈殿させる段階と、溶液から固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質エタノラート形Gの形成方法。
【請求項31】
非晶質形のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−α−アンドロスト−1−エン−17−β−カルボキサミドをエタノールに溶解して非晶質形対エタノールの比が質量基準で約3:4の溶液を形成する段階と、溶液を約60℃に加熱する段階と、溶液を室温に冷却することによって溶液を熟成して固体を沈殿させる段階と、溶液から固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの吸湿性結晶質形Bの形成方法。
【請求項32】
結晶質エタノラート形GのN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−α−アンドロスト−1−エン−17−β−カルボキサミドを撹拌容器中で水に溶解して結晶質エタノラート形G対水の比が質量基準で約1:100の溶液を形成する段階と、溶液を熟成して固体を沈殿させる段階と、溶液から固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質水和物形Cの形成方法。
【請求項33】
治療有効量の少なくとも1つの結晶質形のN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドと少なくとも1種類の医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項34】
少なくとも1つの結晶質形が、無水結晶質形A、吸湿性結晶質形B、水和結晶質形C、無水結晶質形D、四水和結晶質形E、セスキ水和結晶質形Fおよびエタノラート形Gから選択される請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項1】
結晶質N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミド。
【請求項2】
5.6+/−0.1、7.6+/−0.1および9.6+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつX線粉末回折パターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形A。
【請求項3】
約39.7+/−0.1、118.3+/−0.1、169.2+/−0.1および12.6+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ炭素−13 CPMAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形A。
【請求項4】
約−128.9+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつフッ素−19 MAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形A。
【請求項5】
約281.2℃に融点を有している請求項2に記載の無水結晶質形A。
【請求項6】
約7.8+/−0.1、8.5+/−0.1および10.2+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの吸湿性結晶質形B。
【請求項7】
約164.0℃に融点を有している請求項6に記載の吸湿性結集質形B。
【請求項8】
約10.1+/−0.1、11.0+/−0.1および12.4+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質水和物形C。
【請求項9】
さらに約268.0℃に融解/分解吸熱点を有している請求項8に記載の結晶質水和物形C。
【請求項10】
約8.9+/−0.1、9.9+/−0.1および12.5+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形D。
【請求項11】
約174.2+/−0.1、12.2+/−0.1、56.0+/−0.1および23.9+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ炭素−13 CPMAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形D。
【請求項12】
約263.6℃に融解吸熱点を有している請求項10に記載の結晶質水和物形D。
【請求項13】
約6.1+/−0.1、12.8+/−0.1および13.1+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質四水和物形E。
【請求項14】
約13.1+/−0.1、28.9+/−0.1、39.3.0+/−0.1および154.2+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつ炭素−13 CPMAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質四水和物形E。
【請求項15】
約−126.5+/−0.1、−128.0+/−0.1および−129.3+/−0.1p.p.m.の化学シフト値をもつフッ素−19 MAS NMRスペクトルシグナルを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質四水和物形E。
【請求項16】
約6.3+/−0.1、7.6+/−0.1および12.5+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質セスキ水和物形F。
【請求項17】
約8.2+/−0.1、10.0+0.1および13.4+/−0.1の2−シータ値に回折ピークをもつXRPDパターンを有しているN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質エタノラート形G。
【請求項18】
さらに約165.9℃に融解吸熱点を有している請求項17に記載の結晶質エタノラート形G。
【請求項19】
a)少なくとも1種類の溶媒に化合物を溶解して混合物を形成する段階と、
b)結晶化が完了し固体が形成されるまで混合物を還流させる段階と、
c)固体を単離する段階と、
d)固体を乾燥する段階と
を含む、化合物N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの無水結晶質形Aの製造方法。
【請求項20】
少なくとも1種類の溶媒が、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテートおよびアセトンから選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
固体を単離する段階がさらに、固体を真空フィルターで濾過し、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルアルコール、イソプロピルアセテートおよびアセトンから選択された少なくとも1種類の洗浄用溶媒で固体を洗浄する段階を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
無水結晶質遊離塩基形AをpH約2以下の水溶液に添加して溶液を形成する段階と、溶液を熟成して固体を沈殿させる段階と、固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの四水和物形Eの製造方法。
【請求項23】
無水結晶質遊離塩基形Aの添加を室温で行う請求項22に記載の方法。
【請求項24】
四水和物形Eを少なくとも1種類の溶媒に溶解して溶液を形成する段階と、少なくとも1種類のアンチ溶媒を溶液が過飽和になるまで溶液に充填する段階と、過飽和溶液を熟成して固体を形成させる段階と、固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質無水形Dの形成方法。
【請求項25】
少なくとも1種類の溶媒が、ジメチルアセトアミド、メタノール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、および、N−メチル−2−ピロリドンから選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1種類のアンチ溶媒が、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン、水、アセトニトリル、イソプロピルアセテート、イソブチルアセテートおよびメチルtert−ブチルエーテルから選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種類の溶媒がメタノール、ジメチルスルホキシドおよびN−メチル−2−ピロリドンから選択され、少なくとも1種類のアンチ溶媒が水およびアセトニトリルから選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
熟成段階が場合によっては、固体が形成されるまで追加量のアンチ溶媒を添加するかまたはバッチを冷却する段階を含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
四水和物形Eを40℃で少なくとも10時間真空乾燥する段階を含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質セスキ水和物形Fの形成方法。
【請求項30】
非晶質のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−α−アンドロスト−1−エン−17−β−カルボキサミドをエタノールに溶解して溶液を形成する段階と、溶液を約60℃に加熱する段階と、溶液を室温に冷却することによって溶液を熟成して固体を沈殿させる段階と、溶液から固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質エタノラート形Gの形成方法。
【請求項31】
非晶質形のN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−α−アンドロスト−1−エン−17−β−カルボキサミドをエタノールに溶解して非晶質形対エタノールの比が質量基準で約3:4の溶液を形成する段階と、溶液を約60℃に加熱する段階と、溶液を室温に冷却することによって溶液を熟成して固体を沈殿させる段階と、溶液から固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの吸湿性結晶質形Bの形成方法。
【請求項32】
結晶質エタノラート形GのN−(3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−α−アンドロスト−1−エン−17−β−カルボキサミドを撹拌容器中で水に溶解して結晶質エタノラート形G対水の比が質量基準で約1:100の溶液を形成する段階と、溶液を熟成して固体を沈殿させる段階と、溶液から固体を単離する段階と、固体を乾燥する段階とを含む、N−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドの結晶質水和物形Cの形成方法。
【請求項33】
治療有効量の少なくとも1つの結晶質形のN−(3H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−2−イルメチル)−2−フルオロ−4−メチル−3−オキソ−4−アザ−5−アルファ−アンドロスト−1−エン−17−ベータ−カルボキサミドと少なくとも1種類の医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項34】
少なくとも1つの結晶質形が、無水結晶質形A、吸湿性結晶質形B、水和結晶質形C、無水結晶質形D、四水和結晶質形E、セスキ水和結晶質形Fおよびエタノラート形Gから選択される請求項33に記載の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2009−518404(P2009−518404A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544419(P2008−544419)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/046263
【国際公開番号】WO2007/067490
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/046263
【国際公開番号】WO2007/067490
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】
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