アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーを含む組成物ならびに皮膚疾患および脱毛の予防的または治療的処理方法
本発明は、皮膚疾患、脱毛、およびその他の皮膚疾患を治療および予防するために有用な方法および組成物を含む。組成物は、第二の化合物または組成物と組み合せた形でARDエンハンサーを含む。一部の実施形態においては、第二の化合物は、殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、ビタミンA、ビタミンA誘導体、レチノイド、抗炎症性化合物、および抗アンドロゲン化合物のうちの少なくとも一つである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2007年7月31日に出願された米国特許出願第60/962880号明細書に対する優先権の利益を請求するものであり、その内容は参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、全体として、皮膚疾患および脱毛の治療および予防に有用な方法および組成物、そしてさらに具体的には、第二の化合物または組成物と組み合わせた形で提供されるアンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーを含み、この組合せが皮膚疾患または脱毛に対する有益な活性または効果を有している方法および組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
皮膚疾患および脱毛を患う人の間では、自尊心の低下やうつ病が見られることが多い。一部の場合では、精神的な影響は劇的であり得る。したがって、それぞれの病状を治療するための治療法が開発されつつある。本発明は、現在の治療法に取り組むと共に、成果が期待される新規な組成物を提供する。
【0004】
座瘡(尋常性座瘡)は、性ホルモンに応答しての毛嚢脂腺単位(毛包およびそれに付随する皮脂線を含む皮膚構造)の変化により引き起こされる、皮膚の一般的な炎症性疾患である。座瘡は、顔、胸、および背中に見られることが最も多い。この症状は、思春期において最もよく発生し、一般的に個体が20代前半に達した時点で消失するかまたは減少する傾向にある。しかしながら、座瘡は、人生で30代から40代に入っても、そして一部の場合ではさらに長い間、問題であり続ける可能性がある。
【0005】
にきびまたは面皰とも呼ばれる、座瘡の基本的な病斑は、アンドロゲンに応答して皮脂線から分泌される過剰な油脂によってふさがれた、拡大した毛包である。さらに、死んだ皮膚細胞および細菌Propionibacterium acnesの集積も同様に、毛包を拡大させる一因となる。P.acnesは、トリグリセリドを遊離脂肪酸に分割することのできるリパーゼを産生し、この遊離脂肪酸が濾胞細胞を刺激し得る。座瘡の重症度は、軽度から重度までの範囲にわたる可能性がある。面皰に加えて、丘疹、膿庖、結節、および炎症性嚢胞も同様に、座瘡に関連する病斑である。類表皮嚢胞とも呼ばれる、炎症を起こしていない皮脂嚢胞は、炎症性座瘡を伴って生じるかまたは単独で生じ得るが、これは通常は恒常的な特徴ではない。座瘡が消散した後、醜い瘢痕が残る可能性がある。
【0006】
座瘡の治療には数多くの製品が利用可能であるが、最もよく知られているものとしては、剥離用製品、抗生物質、局所用殺菌剤、レチノイド、および経口ホルモン治療がある。しかしながら、それぞれに潜在的欠点がある。より最近になって、アンドロゲン受容体の分解を誘発できる化合物が、アンドロゲン受容体関連疾患のための潜在的な治療として開発中である。
【0007】
剥離は、手作業で、または化学的に、皮膚から死んだ皮膚細胞を除去しようと試みるものであり、したがって、毛穴が詰まる確率を低下させる。剥離は、スクラブ製品を用いて手作業で行なわれてもよいし、または化学的に行われてもよい。化学的剥離用製品であるサリチル酸およびグリコール酸は、ケミカルピールとして利用可能である。剥離の結果、皮膚の薄片化または刺激が生じる可能性がある。
【0008】
経口的または局所的な抗生物質が、細菌P.acnesを攻撃するために通常用いられる。エリスロマイシン、クリンダマイシン、コトリモキサゾール、および数多くのテトラサイクリン誘導体(ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリン、塩化テトラサイクリン、リメサイクリン、およびミノサイクリンなど)が、座瘡の治療として一般に処方される。抗生物質は、細菌コロニーを低減させる上で有効であるが、細菌の存在を低減させても皮脂腺からの油脂分泌に影響が及ぶことはなく、抗生物質に耐性を有する細菌株が発達する可能性もまた懸念される。
【0009】
抗生物質と同様、過酸化ベンゾイルなどの局所用殺菌剤は、細菌Propionibacterium acnesを攻撃する。局所用殺菌剤は、細菌の耐性が見られないという点で抗生物質に比べさらなる利点があるが、強力な酸化剤である過酸化ベンゾイルは、皮膚の乾燥、発赤をひき起こす可能性があり、衣服を漂白し得る。したがって、使用頻度を減少させる方法または強力な酸化剤の濃度の低減が、現行の治療法に比べ顕著な利点であると思われる。
【0010】
局所的レチノイドであるトレチノイン(商標名Retin−A)、アダパレン(商標名Differin)、およびタザロテン(商標名Tazorac)などのレチノイドは、ビタミンAに関係し、濾胞内層内の細胞周期を調節し得る。局所的レチノイドは、皮膚に重大な刺激をひき起こす可能性がある。ビタミンA誘導体であるイソトレノインといったような経口用レチノイド(商標名AccutaneおよびSotret)は、皮脂腺からの油脂分泌を低減させると考えられているが、不利な副作用があるとも考えられている。
【0011】
アンドロゲン性脱毛症は、男性における脱毛の最も一般的な形態である。この症状は、同様に男性型脱毛症としても一般的に知られている。毛髪は、両側のこめかみの上から始まって、明確なパターンで失われる。経時的に、生え際は後退して特徴的な「M字形」形状を形成する。毛髪は頭頂部でも同様に薄くなり、部分的なまたは完全な禿頭症まで進行することが多い。女性における脱毛パターンは、男性型脱毛症と異なっている。女性では、毛髪は頭全体にわたり薄くなり、生え際は後退しない。女性におけるアンドロゲン性脱毛症が完全な禿頭症を導くことは稀である。ミノキシジルが、アンドロゲン性脱毛症の唯一のFDA認可治療であるが、これは、アンドロゲンの機能を標的としておらず有効性は良く知られていない。
【0012】
血清アンドロゲンレベルが高いことが、一部の女性における座瘡、アンドロゲン性脱毛症、および脱毛症の存在と相互に関連付けられている。アンドロゲンは、皮脂の排出に対するその効果について知られており、最終的な皮脂腺細胞の分化は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体リガンドにより補助される。ホルモン治療が、座瘡およびアンドロゲン性脱毛症に対する潜在的効果を有するものとして識別されている。抗アンドロゲン特性を有する化合物には、プロゲスチンと組み合わされたエストロゲン、例えば酢酸シプロテロン、酢酸クロルマジノン、デノゲストレル、ドロスピレノン、レボノゲストレル、酢酸ノルエチンドロン、ノルゲスチエートを伴う、エチニルエストラジオールが含まれる。抗アンドロゲン物質として用いられるその他の化合物としては、アンドロゲン受容体を直接遮断する(例えばフルタミド)か、またはさまざまなレベルでアンドロゲン活性を阻害するもの、例えばコルチコステロイド、スピロノラクトン、シメチジン、およびケトコナゾールが含まれる。しかしながら、アンドロゲンは数多くの生物学的プロセスに関与している。したがって、対応する受容体に対するアンドロゲンの結合を遮断または阻害すると、結果として、周囲の環境内で利用可能なアンドロゲンのレベルが増大して、それがその他のアンドロゲン関連性の生物学的プロセスに影響を及ぼし、望ましくない副作用を導く可能性がある。
【0013】
アンドロゲン受容体の分解を誘発する新たな抗アンドロゲン化合物群が提案されている。これらの化合物は、アンドロゲン受容体およびリガンド(アンドロゲン)の結合を遮断する従来の抗アンドロゲン物質とは異なる。広く用いられている抗アンドロゲン療法とは異なり、これらの新たな化合物は、過剰なリガンド(アンドロゲン)の蓄積がアンドロゲン受容体に作用するのを妨げるものであり、したがって不利な効果が少ないものと予測されている。さまざまな化合物が提案されているが、この技術はまだ臨床的に利用可能ではなく、長期的な効果はなおも未知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
皮膚疾患の治療の大部分は単一の活性化合物または医薬品を利用しているものの、経口抗生物質と組み合わされた局所的レチノイドを含む治療法の組合せが、軽度から中度の炎症性座瘡において調査されている。これらの組み合わせは、経口用抗生物質の急速な用量減少およびより迅速な中止を導き、有効性を増大させ、抗生物質に対する細菌の耐性の発生を低減させると考えられている。治療法のいくつかの組み合わせが提案されているが、現行の治療法は、皮膚疾患に関連する症候を低減させようとするものであり、疾患の原因を選択的に標的化していない。したがって、皮膚疾患を導く経路を選択的に標的化し、一方で関連する症候も治療する方法および組成物を開発する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、皮膚疾患および脱毛症の現行の治療における欠点に対処し、関係する利点を提供するものである。現在、アンドロゲン活性を遮断しようとするアンドロゲン関連の局所的治療法は全く存在せず、アンドロゲン性脱毛症の経口治療であるフィナステリドのみが、テストステロンからDHTへの転換を遮断するために用いられている。根本的なアンドロゲン受容体の存在または利用可能性を調節する方法は存在せず、かくして疾患の原因は標的化されない。本発明は、アンドロゲン受容体自体の存在を少なくとも部分的に調節する組成物および方法を提供することによりこの欠点に対処し、かくしてより効果的な治療を提供する。一部の実施形態においては、少なくとも一つの化合物が本明細書中で記載されているようなARDエンハンサーである、組み合わされた調節アプローチが提供される。
【0016】
本発明の方法および組成物は、開示された化合物またはその誘導体のうちの一つ以上を投与することによって、さまざまな皮膚疾患および毛髪疾患を治療または予防する。本明細書中に含まれるARDエンハンサーには、図1および2に示されているものが含まれるがこれらに限定されるわけではない。ARDエンハンサーの中には、ASC−J9、ASC−J15、ASC−Q9、ASC−Q44、ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−Q98、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、ASC−Q103、ASC−Q110、またはASC−Q111、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、ASC−JM4、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19が含まれる。
【0017】
本発明の一態様においては、皮膚疾患の予防または治療のための組成物が提供される。この態様においては、第一の化合物はアンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーである。ARDエンハンサーは、受容体−リガンド(アンドロゲン)結合に干渉する従来の抗アンドロゲン物質とは異なるアンドロゲン受容体の分解を調節する化合物である。一実施形態において、ARDエンハンサーは、アンドロゲン受容体の分解を誘発する。別の実施形態において、ARDエンハンサーは、ARDエンハンサーの不存在下と比較してアンドロゲン受容体の分解速度を増大させる。さらに別の実施形態では、ARDエンハンサーは、突然変異アンドロゲン受容体の凝集を防止する。さらに別の実施形態では、ARDエンハンサーは、アンドロゲンおよびアンドロゲン受容体(転写因子)介在性の遺伝子活性化を防止する。第二の化合物は、殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、ビタミンA、ビタミンA誘導体またはレチノイド、および炎症性化合物を含むさまざまな化合物のうちの少なくとも一つから選択される。かかる化合物の組み合わせは、現行の治療に比べて有害な効果を削減しながら、皮膚疾患のより効果的な治療を提供する。限定的はしないが、発明者らは、ARDエンハンサーが皮脂腺からの油脂の分泌を低減させ、皮脂腺細胞の増殖を低減させるか、または皮脂腺細胞の分化を阻害するかもしくは低減させると考えている。発明者らは、第二の化合物が細菌コロニーを標的化し得るか、またはさまざまな皮膚疾患を治療する場合に必要に応じて追加の抗炎症性補助を提供すると考えている。したがって本発明は、皮膚疾患の症候の治療および経路の調節を可能にし、それにより皮膚疾患の発生を防止または制限する。
【0018】
本発明の別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、殺菌剤、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。この医薬品は、所望の投与経路に応じて局所的に塗布、注射などされ得る。好ましい実施形態においては、殺菌剤は過酸化ベンゾイルである。
【0019】
本発明のさらなる態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、抗生物質、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0020】
本発明のさらに別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、抗微生物ペプチド、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0021】
本発明のさらに別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、ビタミンA、ビタミンA誘導体またはレチノイド、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0022】
本発明のさらに別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、抗炎症性化合物、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0023】
本発明のさらに別の態様においては、治療上有効な量の本発明の医薬組成物を、それを必要とする個体に対し投与する過程を含む、皮膚疾患を治療または予防する方法が提供される。一実施形態において、医薬組成物はARDエンハンサーおよび殺菌剤を含む。別の実施形態において、医薬組成物はARDエンハンサーおよび抗生物質を含む。さらに別の実施形態において、医薬組成物はARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態において、医薬組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態において、医薬組成物は、ARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。さまざまな実施形態において、皮膚疾患の限定的意味のない例としては、座瘡、脱毛症、アトピー性皮膚炎、酒さ、狼瘡、腋窩臭症、創傷などがある。
【0024】
本発明のさらにその他の態様においては、化合物の組み合わせが、化粧品として、化粧品処方物中に提供される。本発明は、化粧品に許容される担体中に、ARDエンハンサーと、限定はしないが殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、ビタミンA、ビタミンA誘導体またはレチノイド、および抗炎症性化合物などの化合物とを含む化粧品組成物を含む。
【0025】
本発明のさらにその他の態様においては、ARDエンハンサーは、脱毛の治療または予防のための少なくとも一つの組成物または化合物と組み合わされる。ARDエンハンサーは、オリゴペプチド、ペプチド、抽出物、ヌクレオチドなどと組み合わされ得る。一部の実施形態において、本発明の組成物は、アンドロゲン性脱毛症を治療する。一部の実施形態においては、脱毛を予防する可能性を指摘されている化合物が、発毛を刺激すると考えられる化合物と組み合わされて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】例示的なARDエンハンサーであるASC−J15およびASC−J9の構造式を示す図である。
【図2】さまざまなARDエンハンサーの構造式の表を(媒体対照と比較したARの低減の百分率に対応する)相対的な効力についての対応する値と共に示す図である。ヒト前立腺癌細胞系LNCaPを、対応するARDエンハンサーの存在下で48時間インキュベートした後に、ウェスタンブロット分析により抗AR活性をアッセイした。活性についての値表示は、実施例2で提供される表1中で見ることができる。
【図3A】化合物ASC−Q49、ASC−Q103、ASC−JM12、ASC−JM14に曝露した後の、ヒト前立腺癌細胞(LNCaP)におけるアンドロゲン受容体(AR)タンパク質の発現の低減を実証するウェスタンブロット分析を示す図である。
【図3B】化合物ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−JM4、およびASC−JM5に曝露した後の、ヒト前立腺癌細胞(LNCaP)におけるアンドロゲン受容体(AR)タンパク質の発現の低減を実証するウェスタンブロット分析を示す図である。
【図4】ASC−J9で処理されたLNCaP細胞における細胞成長(増殖)およびアンドロゲン受容体の発現レベルのグラフ表示を示す図である。LNCaP細胞を播種し、2日間インキュベートした。ASC−J9を、DHTを伴っておよび伴わずに、5μMの最終濃度で培地に添加した。図4Aを参照すると、結果は、DHTが培養中のLNCaP細胞の成長を促進する一方で、ASC−J9が、DHTが存在するかしないかに関わらず細胞の成長を有意に阻害するということを実証している。図4Bは、基底(0日目)値に対する百分率として、ASC−J9試料について標準化されたアンドロゲン受容体シグナルを示している。細胞溶解物をASC−J9と共に培養した細胞から収集し(図4A)、ウェスタンブロット法によりARの発現を検出した。データは、ASC−J−9によって誘発されるLNCaP細胞におけるARの発現の阻害が、細胞成長の阻害と相関するということを示した。
【図5】DHTの存在下または不存在下でASC−J9と共に48時間培養したLNCaP細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す図である。データは、ASC−J9が、DHTが存在するかしないかに関わらずAR、PRタンパク質の発現を低減させるが、ER、PPAR、RXR、HSP、およびアクチンなどのその他のタンパク質の発現には影響を及ぼさないということを実証した。
【図6】アンドロゲン受容体を分解するASC−J9の能力の特異性を実証する、T47D(ヒト乳癌)細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す図である。データは、ASC−J9がアンドロゲン受容体(AR)の発現を選択的に低減させることを実証した。ペルオキソーム増殖因子活性化受容体ガンマおよびベータ(PPARγ、PPARβ)、レチノイドX受容体アルファ(RXRα)、エストロゲン受容体アルファおよびベータ(ERαおよびErβ)、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、ならびにアクチンなどの、その他の受容体タンパク質の発現は影響を受けなかった。
【図7A】タンパク質合成阻害物質であるシクロヘキサミドおよび化合物ASC−J9に曝露した際のLNCaP細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す図である。タンパク質合成阻害物質の存在下での経時的なアンドロゲン受容体の低減は、ASC−J9がARタンパク質の分解を増強するということを示す。
【図7B】ASC−J9が、ARタンパク質の発現を低減させることのできる唯一の抗アンドロゲン物質であり、CPA(酢酸シプロテロン)、HF(ヒドロキシフルタミド)、またはフィナステリドなどの従来の抗アンドロゲン物質ではないことを実証するウェスタンブロットを示す図である。
【図8A】プラスミドGFPAR(これは緑色蛍光タンパク質遺伝子および野生型アンドロゲン受容体遺伝子を含有していた)でトランスフェクトしたサル腎臓COS−1細胞の蛍光顕微鏡写真を示す図である。トランスフェクトした細胞を、媒体のみ(対照)または試験化合物ASC−J9で処理した。蛍光イメージング条件下で、緑色蛍光タンパク質(GFPAR)について顕微鏡写真を撮影した。対照細胞は、核内に高密度量の蛍光(すなわち野生型AR)を含み、細胞質内に比較的弱い蛍光を含んでいた。ASC−J9で処理した細胞は、核および細胞質の両方において弱い蛍光が検出され、このことは、ASC−J9がARの発現を低減させる(または低下させる)ことを示した。
【図8B】実施例5中で詳述されているように(緑色蛍光タンパク質および突然変異アンドロゲン受容体のポリQ49遺伝子を含んでいた)プラスミドGFPARQ49でトランスフェクトしたサル腎臓COS−1細胞の蛍光顕微鏡写真を示す図である。トランスフェクトした細胞を、媒体のみ(対照)または試験化合物ASC−J9で処理した。蛍光イメージング条件で、緑色蛍光タンパク質(GFPARQ49)について顕微鏡写真を撮影した。対照細胞は、細胞質内に大量の蛍光封入体または凝集体(すなわち凝集した突然変異polyQ49)を含んでいた。ASC−JPで処理した細胞の蛍光封入体の含有量は実質的にはさらに少なく、このことは、突然変異polyQ49アンドロゲン受容体の発現がASC−J9での処理により阻害されたかまたは低下したということを示唆していた。
【図9】実施例6で記載されるように処理したファッジーラットの代表的な写真を示す図である。ファジーラットを、媒体のみ(左側の動物)またはASC−J9(25マイクロモル濃度、右側の動物)を含有する局所用クリームで、示した時間処理した。写真は、皮脂腺のバンドおよび皮脂分泌(肌色)が、ASC−J9で処理したファッジーラット(右側の動物)において4〜5週間以内で低減したことを示す。
【図10A−E】ファッジーラットの皮膚内の皮脂腺の代表的な写真(図10A〜C)、ならびに腺管および腺葉のサイズのグラフ表示(図10D、10E)を示す図である。皮膚組織の試料(分割した皮膚)を調製し、顕微鏡検査によって検査した。図10A〜Cは、媒体対照(8A)または化合物ASC−J9(8B)を用いて処理した際の、および去勢ラット(8C)の、(分割した皮膚試料の)皮脂腺の腺管および腺葉を示す写真である。図10Dでは、良好に保存された腺小葉の縁部をトレースすることで腺葉のサイズを測定し、その後、Image Jソフトウェアで定量化し、トレースした領域の内部に含まれた画素数として表した。得られたデータは、媒体のみでの局所的治療(対照クリーム)では、腺葉サイズの顕著な変化が発生しないことを示した。さまざまな濃度の試験化合物ASC−J9を用いた雄ラットの局所的処理は、脂腺葉のサイズの顕著な低減をもたらしたが、去勢により引き起こされるほどではなく、それでも従来の抗アンドロゲン物質であるフルタミドよりは優れている。図10Eは、皮膚に塗布したASC−J9が、去勢効果に匹敵し、かつフルタミドよりも優れた形で、雄のファッジーラットにおける皮脂腺の腺管サイズを顕著に低減させたことを示す代表的なデータを示している。
【図11A】実施例7に記載されるように、脱毛症(脱毛または禿頭症)の動物モデルの研究から得られた結果を示す図である。6週齢の雄C57BL/6Jマウスの毛を電気バリカンで剃り、その後、脱毛クリームで処理した。最も左の2頭の動物(「媒体#1」および「媒体#2」の印あり)で代表される一群のマウスの毛を剃り、エタノールのみで処理した。最も右側の2頭の動物(「テストステロン#1」および「テストステロン#2」)で代表される第二群のマウスの毛を剃り、午前中はテストステロン/エタノール溶液で、そして午後は対照溶液で処理した。20日の処理期間の終了時点で動物の写真を撮影した。エタノール媒体単独(テストステロンを有さない)で処理したマウスは、20日間の局所的処理の後、剃毛した領域において急速な再発毛を示した。テストステロンで処理したマウスは、20日間の局所的処理の後、剃毛した領域においてほとんどまたは全く再発毛を示さなかった。
【図11B】実施例7において記載されるように、脱毛症(脱毛または禿頭症)の動物モデルの研究から得られたさらなる結果を示す図である。6週齢の雄C57BL/6Jマウスの毛を電気バリカンで剃り、その後脱毛クリームで処理した。一群のマウス(「テストステロン#1」および「テストステロン#2」と印づけされた動物により代表される)の毛を剃り、午前中はテストステロンで、午後は対照溶液で、20日間局所的に処理した。第二群のマウス(「ASC−J9/テストステロン#1」および「ASC−J9/テストステロン#2」と印づけされた動物により代表される)の毛を剃り、午前中はテストステロンで、そして午後はASC−J9で、20日間局所的に処理した。午前中にテストステロンを局所的に塗布し午後は対照溶液のみを塗布したマウスは、20日間の処理の後、剃毛した領域においてほとんどまたは全く再発毛を示さなかった。午前中にテストステロンを局所的に塗布し午後はASC−J9を塗布したマウスは、8日目に発毛を示し、20日の局所的なASC−J9処理の後、剃毛した領域において完全な再発毛を示した。これらの結果は、ASC−J9の局所的塗布が、動物モデルにおけるテストステロン誘発型の発毛抑制を克服することができるということを実証している。
【図12】200万個のLNCaP細胞を接種したヌードマウスの写真を示す図である。マウスには、ASC−J9(体重1kgあたり50mg)または媒体対照のいずれかを、一週に3回、7週間にわたり腹腔内注射した。7週間後に、腫瘍を切除し、秤量した。ASC−J9で処理したヌードマウスは、媒体対照で処理したマウスから切除した腫瘍と比較して腫瘍サイズにおいて75%の低減を示し、このことは、ASC−J9化合物がインビボで腫瘍細胞の成長を阻害できるということを示した。図12は、ヌードマウスにおけるLNCaP成長の低減を実証する写真を示す図である。ASC−J9マウスに、体重1kgあたり100mgをIP(腹腔内)注射を介して一週に3回、7週間にわたり投与した。媒体対照動物と比較して、腫瘍の重量は75%減少し、血清PSAレベルは90%低下した。
【図13】Balb/cマウスを用いた、動物モデルにおける創傷の治癒を早めるASC−J9の能力を実証する図である。データは、動物の皮膚上の人工的創傷を治療した結果を示している。引退した種畜の雄Balb/cマウスの頸部に皮膚パンチを用いて皮膚の人工的創傷を作った。その後、媒体クリームまたはASC−J9(25μM)を含むクリームで動物の創傷領域を一日に2回処理した。図13中のデータは、ASC−J9で処理した動物は媒体で処理した動物と比較して、5日目により小さい創傷開口を有すること、そして10日目にはASC−J9で処理したマウスにおいて創傷が完全に治癒していたこと、一方、媒体で処理した動物においては、創傷の瘢痕化が目に見えて残っていたことを示している。このデータは、ARDエンハンサーであるASC−J9が創傷の治癒を早める能力を有することを示している。
【図14A】実施例10で記載されるように、座瘡を患う男性のボランティアの額に試験化合物ASC−J9(担体基剤中2.5マイクロモル濃度)を局所的塗布した結果生じる、皮膚の症状に対する代表的な可視的改善を実証する写真を示す図である。
【図14B】実施例10で記載されるように、ASC−J9(625μM)を用いた、座瘡を患う別の男性(図14Bに背中を示す)における、皮膚の症状に対する代表的な可視的改善を実証する写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、「(置換フェニル)プロペナール部分を有する化合物、その誘導体、生物活性、およびその使用」という発明の名称の米国特許出願第12/008124号明細書を参照により援用する。本明細書において記載されているARDエンハンサーの合成方法ひいては調製方法は、引用された出願において見ることができる。援用される出願においては、さらなる定義も見ることができる。
【0028】
A. 定義
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。全ての特許、出願、公開された出願、およびその他の刊行物は、その全体が参照により援用される。本明細書における用語について複数の定義が存在する場合、別段の記載のない限り、本節における定義が他に優先するものとする。
【0029】
本明細書で使用する「アンドロゲン受容体」という用語または「AR」は、アンドロゲン、テストステロン、およびDHTを特異的に結合する、細胞内タンパク質受容体を意味する。ARは、アンドロゲン受容体の全ての哺乳動物アイソフォーム、スプライシング変異体、突然変異体、および多型を含む。
【0030】
本明細書で用いられる「化粧品に許容される」という用語は、動物、より詳細にはヒトにおいて使用するための化粧品として連邦政府または州政府の規制当局によって認可されているかまたは認可可能であるということを意味する。本明細書において使用される「化粧品に許容される担体」という用語は、化合物と共に組み込まれるかまたは投与される、限定はしないがリポソームなどの、認可された、または認可可能な希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を意味する。
【0031】
本明細書で使用される「アンドロゲン受容体の分解を増強する」という用語は、プラセボまたは未処理の場合と比較してアンドロゲン受容体の数量を低減させること、またはアンドロゲン受容体の分解(低減)速度を増大させることを意味する。
【0032】
本明細書で使用される「長時間放出」という用語は、化合物または組成物の遅延放出、一定期間にわたり減速された放出、連続放出、不連続放出、または持続放出をもたらす投与形態を意味する。
【0033】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、共に連結された一連のアミノ酸を意味する。「オリゴペプチド」は、長さが短いペプチドを意味する。
【0034】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、動物、より詳細にはヒトにおいて使用するために連邦政府または州政府の規制当局によって認可されているかまたは認可可能であるということを意味する。「薬学的に許容される担体」という用語は、化合物と共に組み込まれるかまたは投与される、限定はしないがリポソームなどの、認可された、または認可可能な希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を意味する。
【0035】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、インビボで投与された際に、一つ以上の過程もしくはプロセスによって代謝されるか、またはその他の形で化合物の生物学的、薬学的、もしくは治療的に活性な形態へと転換される化合物を意味する。プロドラッグを生産するためには、薬学的に活性な化合物を、活性化合物が代謝プロセスによって再生されるような形で修飾する。プロドラッグは、薬物の代謝安定性および輸送特性を改変するように、または副作用もしくは毒性をマスキングするように、または薬物の風味を改善するように、または薬物のその他の特徴もしくは特性を改変するように設計されてよい。
【0036】
本明細書において使用される「治療上有効な量」という用語は、疾病または疾患を治療するために患者に投与した場合にその疾病または疾患に対するかかる治療を作用させるのに充分である化合物または組成物の量を意味する。「治療上有効な量」は、化合物または組成物、疾病または疾患およびその重症度、ならびに治療対象の患者の年齢および体重に応じて変動するものである。
【0037】
B. 皮膚疾患の治療のための組成物
発明者は、本明細書において提供される化合物の組み合わせが、皮膚疾患を治療するための現行の治療法と比較した場合に増大した治療上の有用性を有するものであると考えている。したがって、本発明の一態様においては、皮膚疾患の予防または治療のための組成物が提供される。本発明の組成物は、医療業界または製薬業界の当業者に対する指針として以下で提供される多数の実施形態で提供されてよい。したがって、本発明の実施形態は、皮膚疾患、所望の投与計画または治療計画に応じて望ましいものであり得るさまざまな非限定的な製剤または有用な組み合わせを実証するものである。本発明の組成物は、少なくとも二つの化合物を含む。一つの化合物は、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーを含む。第二の化合物は、皮膚疾患の治療または予防に対する有用性を有することが知られているかまたはその有用性を有する可能性を指摘されているさまざまな化合物から選択可能である。さまざまな実施形態において、第二の化合物は、殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、抗炎症性化合物、皮膚疾患に関連する一つ以上の症候を低減させることのできる化合物、またはそれらの組合せを含み得る。したがって本発明は、本明細書において提供されるかまたは示唆される一つ、二つ、三つ、またはそれ以上の化合物と組み合わせた形で提供されるARDエンハンサーを含み得る。
【0038】
アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー
アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーは、アンドロゲン受容体の分解を調節するかまたは増大させる化合物である。数多くの皮膚疾患がアンドロゲン関連遺伝子の活性化経路により引き起こされるかまたは影響されると考えられている。現行の抗アンドロゲン療法は、受容体−リガンド(アンドロゲン)結合を標的とするかまたはこれに干渉するが、これは、内因性アンドロゲンレベルが低い場合にのみ有効に作用し、時として過剰なアンドロゲンの蓄積を生じさせるか、またはアンドロゲン調節性の機能を完全に遮断して、その結果、さらにその他のアンドロゲン関連機能に影響を及ぼす可能性がある。したがって、過剰なリガンドの蓄積を生じさせるこれまでの治療は、治療上の望ましくない副作用をもたらす可能性がある。これとは対照的に、本発明のARDエンハンサーは、従来の治療法と比較して内因性リガンド(アンドロゲン)の蓄積を誘発しない、有効な代替案を提供する。さらに、その機能が内因性アンドロゲンによる影響を受けないARDエンハンサーは、アンドロゲン受容体の発現を低減させ得、これにより、リガンド(アンドロゲン)の活性が下方調節され得る。本明細書に参照により援用されている「(置換フェニル)プロペナール部分を有する化合物、その誘導体、生物活性、およびその使用」という発明の名称の米国特許出願第12/008124号明細書は、ARD増強活性を有すると考えられている化合物の一覧を開示しているが、この活性はさまざまである、好ましい実施形態において、ARDエンハンサーは、ASC−J9、ASC−J15、ASC−Q9、ASC−Q44、ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−Q98、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、ASC−Q103、ASC−Q110またはASC−Q111、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、ASC−JM4、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19からなる群から選択される。図2は、好ましいARDエンハンサーの構造式を各々の相対的な効力を実証するデータと共に提供するものである。この効力は、対応する化合物の存在下でLNCaP(ヒト前立腺癌細胞系)を48時間インキュベートした後、ウェスタンブロットによって決定された。低減の百分率は、媒体対照との比較により決定された。
【0039】
皮膚疾患に関しては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーは、毛包と関連する皮脂腺による油脂(皮脂)の分泌を低減させると考えられており、これは、細菌(P.Acne)の増殖を制限するかまたは減少させる。油性物質である皮脂は、アンドロゲン受容体の刺激に応答して皮脂腺によって分泌される。皮脂腺の刺激が皮脂腺細胞の増殖または皮脂の生産の増加を引き起こすか否かに関わらず、リガンド結合型アンドロゲン受容体は、皮脂生産の増加の原因であると考えられている。したがって、アンドロゲン受容体の分解の増強、すなわちリガンド(アンドロゲン)による活性化の回避により、皮脂腺からの皮脂の分泌が減少するか、皮脂腺細胞の増殖が低減するか、または皮脂腺細胞の分化が阻害されるかもしくは低減し、それにより皮脂の存在が低減し、細菌または細菌感染の存在が低減する。
【0040】
ARDエンハンサーは、受容体−リガンドの相互作用において作用する従来の抗アンドロゲン物質とは異なる形で作用することから、ARDエンハンサーは、AR機能に関連する別のアンドロゲンまたはリガンドに実質的に干渉すること無く、皮脂腺の調節を可能にし得る。化合物(ARDエンハンサー)の一つのサブセットが、プロテオソーム依存性(またはユビキチン介在性)のタンパク質分解経路を介して作用して、細胞内アンドロゲン受容体の分解を誘発すると考えられている。ASC−J9などの化合物は、アンドロゲン受容体の分解を誘発し、座瘡の存在に影響を及ぼすことが示されている。図2で示されている化合物も同様に、アンドロゲン受容体の発現を減少させることが示されている。
【0041】
本発明のARDエンハンサーは、皮脂腺に影響を及ぼすものに限定されない。本発明のARDエンハンサーはさまざまな細胞型に作用するかまたは影響を及ぼし、その結果、皮膚疾患に関連する一つ以上の症候が低減する。したがって、経路は単なる例として提供されており、本発明に関して非限定的である。
【0042】
殺菌剤
本発明の別の実施形態において、ARDエンハンサーは皮膚疾患の予防または治療のための殺菌剤と組み合わせて提供される。組み合わせて使用される場合、ARDエンハンサーは皮脂腺細胞または皮脂腺に影響を及ぼすことができ、一方、殺菌剤は、P.acnesまたはその他の細菌株の集団に影響を及ぼす。限定はしないが、局所的な細菌コロニーが存在する確率が高いために、座瘡、酒さなどの皮膚疾患、および創傷治癒にとって、この実施形態は特に有用である。しかしながら、この実施形態は、細菌集団の低減が望まれるあらゆる皮膚疾患など、広い有用性を有するものである。
【0043】
殺菌特性を有する数多くの化合物が当該技術分野において公知であり、本発明で使用されてよい。化合物は、クラスに従って、または所望の特性もしくは作用様式に従って同定可能である。例としては、ソルビン酸、安息香酸、およびパラヒドロキシ安息香酸が含まれる。本発明の特に望ましい一つの殺菌剤は、過酸化ベンゾイルである。過酸化ベンゾイルは、過酸化基により結合した二つのベニル基(CHOのHが除去されたベンズアルデヒド)を含む。過酸化ベンゾイルは、過酸化ナトリウムと塩化ベンゾイルとの組み合わせによって形成され得る(過酸化ベンゾイルおよび塩化ナトリウムを形成する)。過酸化ベンゾイルは、ゲルまたはクリームの形態で、典型的には約0.1%〜約20%、または約1%〜約10%の濃度で投与されてよいが、これらの範囲外の濃度も同様に、本発明によって包含される。アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーと組み合わせた形で使用する場合、過酸化ベンゾイルの用量を低減させてもよく、これにより、過酸化ベンゾイルに基づいた現行の治療法に付随することが多い皮膚の乾燥または刺激の頻度が低減する。
【0044】
抗生物質
抗生物質は、殺菌性(細菌を殺す化合物)または静菌性(細菌が分裂するのを防ぐ化合物)のいずれかであるものとして分類される。抗生物質は、ウィルス、真菌、または寄生虫に対しては限定的な効果しか有さないか、または全く効果を有さない。抗生物質は宿主に対しては比較的無害であり、したがって、細菌感染を治療するために使用可能である。しかしながら、抗生物質を頻繁に使用すると、単独で使用した場合のその他の望ましくない特徴の中でも特に、細菌の耐性株が生じた。本発明において使用し得る抗生物質のクラスとしては、アミノグリコシド類(アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、およびトブラマイシンを含む)、カバセフェム類(ロラカルベフを含む)、カバペネム類(エルテペネム、イミペネム/シラスタチン、およびメロペネムを含む)、第一世代セファロスポリン類(セファドロキシル、セファゾリン、およびセファレキシンを含む)、第二世代セファロスポリン類(セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、およびセフロキシムを含む)、第三世代セファロスポリン類(セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、およびセフトリアキソンを含む)、第四世代セファロスポリン類(セフェピムを含む)、糖ペプチド類(テイコプラニンおよびバンコマイシンを含む)、マクロライド類(アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキスロマイシン、およびトロレアンドマイシンを含む)、モノバクタム(アズトレオナムを含む)、ペニシリン類(アモキシシリン、アンピシリン、アズロシラン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、およびチカルシリンを含む)、ポリペプチド類(バシトラシン、コリスチン、およびポリミキシンBを含む)、キノロン類(シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、およびトロバフロキサシンを含む)、スルホンアミド類(マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド、スルファサリジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、およびトリメトプリム−スルファメトキサゾールを含む)、テトラサイクリン類(デモクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミンサイクリン、およびオキシテトラサイクリンを含む)、およびクロラムフェニコール、クリンダマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン、リファンピン、ならびにスペクチノマイシンを含むその他のものが含まれる。現在、座瘡を治療するために用いられる最も一般的な抗生物質としては、エリスロマイシン、クリンダマイシン、コトリモキサゾール、テトラサイクリン、またはテトラサイクリン誘導体、例えばドキシサイクリンおよびミノサイクリンが含まれ、これらの各々を本発明において使用することができる。
【0045】
抗微生物剤およびペプチド
本発明の別の実施形態においては、ARDエンハンサーは、抗微生物ペプチド、または抗微生物ペプチドの産生または利用可能性を誘発するかまたは媒介することのできる化合物と組み合わせて使用される。抗微生物ペプチドは、典型的には、一般に12〜50個のアミノ酸長を有する短いタンパク質である(ただし、類似の特性を有するより大きなタンパク質が抗微生物ペプチドとして分類されることも多く、これらのタンパク質は、本発明の範囲内に含まれる)。これらのペプチドは多くの場合、アルギニン、リジン、または酸性環境内ではヒスチジンにより提供される二つ以上の正に荷電した残基、および大きな割合(一般的には50%超)の疎水性残基を含む。直接細菌を殺すことに加えて、これらは、宿主遺伝子の発現を改変する能力を含む、感染の排除に関与し得る数多くの免疫調節機能を有し、ケモカインとして作用しかつ/またはケモカイン産生を誘発し、リポ多糖類により誘発される炎症性サイトカインの産生を阻害し、創傷の治癒を促進し、かつ樹状細胞および適応的免疫反応の細胞の応答を調節する可能性があると指摘されている。抗微生物ペプチドは、細菌の膜に影響を及ぼすことから細胞内標的を有することに至るさまざまな機能を有すると考えられている。本発明において用いることができる抗微生物ペプチドの非限定的な例としては、高度に保存された領域(カテリンドメイン)および高度に可変的なカテリシジンペプチドドメインによって特徴づけされる、デフェンシン類およびカテリシジンファミリーのポリペプチドが含まれるが、これらに限定されるわけではない。皮膚におけるカテリシジンの抗微生物効果は、タンパク質分解によって媒介されると考えられ、これにはマスト細胞、角膜実質細胞、および好中球が関与し得る。カリクレイン介在性のタンパク質分解が提案されている(全体が本明細書に参照により援用されるFASEB.J、2006年10月、20(12):2068〜80頁)。ARDエンハンサーと組み合わせて使用される場合、カテリシジンファミリーはさまざまな皮膚疾患の治療として有用であり、特にアトピー性皮膚炎および酒さの治療において有用である。効力の増大のためにはビタミンDなどの補因子を提供することが望ましい場合がある。
【0046】
ビタミンA、ビタミンA誘導体、およびレチノイド
本発明の別の態様においては、ARDエンハンサーはビタミンAまたはビタミンA誘導体と組み合わせた形で提供される。ビタミンAは、目、気道、尿道、および腸管の健康な表面内膜を促進し、細菌およびウィルスに対する障壁としての皮膚および粘膜の機能を助ける。さらに、ビタミンAは、免疫系の調節を助け、こうして有害な細菌およびウィルスを破壊する白血球を作ることにより感染の予防または撃退を促進する。ビタミンAは同様に、リンパ球が感染とより効果的に闘うのを助け得る。
【0047】
本発明に包含されるビタミンA誘導体は、限定はしないが、アルキル化、エステル化などの修飾を含み、アルコール、エノール、ケト、カルボキシルなどのさまざまな官能基のうちの一つ以上の付加を含み得る。ビタミンA誘導体は、ビタミンAの抗細菌特性を改変し得る。
【0048】
レチノールは、ビタミンAの動物形態である。レチノールは、レチノイドと呼ばれる、より大きい化合物ファミリーに属する。したがって本発明の別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーは、皮膚疾患の治療に有用な組成物としてレチノイドとの組み合わせの形で使用されてよい。本発明の組成物は、ARDエンハンサーとの組み合わせの活性が増大するために少なくとも部分的にレチノイドの用量が低減され得るという点において、以前のレチノイド療法に対する改善を提供する。かくして、用量の低減は、レチノイド関連化合物に一般的に関連する皮膚の刺激を低減させるものである。
【0049】
抗炎症性化合物
本発明の別の態様においては、ARDエンハンサーは抗炎症性化合物と組み合わせた形で使用される。炎症性化合物は、ステロイド系の抗炎症性化合物と非ステロイド系の抗炎症性化合物に分けられ、その各々が本発明の範囲内に包含される。グルココルチコイドなどの数多くのステロイドが、コルチゾール受容体に結合することによって炎症を低減させる。これらは多くの場合、コルチコステロイド化合物と呼ばれる。
【0050】
非ステロイド系の抗炎症性化合物には、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素の作用に拮抗するかまたはそれを阻害するものが含まれる。COX酵素は、プロスタグランジンを合成し、これが炎症を導く。本発明の組成物は、プロスタグランジンの合成を低減させるかまたは防止し、かくして炎症に関連する苦痛を低減させるかまたは除去する、非ステロイド系の抗炎症性化合物を含んでいてよい。
【0051】
数多くの薬草または薬草から単離された化合物が抗炎症特性を有し、ARDと組み合わせて使用可能である。抗炎症特性を有すると考えられている薬草の例としては、ヒソップ、ショウガ、ヘレナリンを含有するアルニカ・モンタナ、セスキテルペン・ラクトン、およびサリチル酸を含有する柳の樹皮がある。同様に、一部の食物は、抗炎症特性を含有するものと考えられている。したがって抗炎症特性を有する可能性を指摘されている食物から単離された化合物も同様に、本発明の範囲内に包含されている。例えば、カプサイシンおよびオメガ−3−脂肪酸は、食物中に見られる抗炎症性化合物であり、本発明により包含される。
【0052】
C. 脱毛の治療または予防のための組成物
発明者らは、本明細書において提供される化合物の組み合わせが、脱毛の治療のための現行の治療法と比較した場合に増大した治療上の有用性を有するものであると考えている。したがって本発明の一態様においては、脱毛の予防または治療のための組成物が提供される。これらの組成物および治療方法は、アンドロゲン性脱毛症の治療または予防において特に有用であると考えられる。しかしながら、アンドロゲンの蓄積または集積に関連するかまたはアンドロゲン受容体に関連するあらゆる脱毛症状が、少なくとも部分的に本発明によって治療または予防され得る。本発明の組成物は、医療業界または製薬業界の当業者に対する指針として以下で提供されている多数の実施形態で提供されてよい。したがって本発明の実施形態は、病状、所望の投与計画または治療計画に応じて望ましいものであり得るさまざまな非限定的な製剤または有用な組み合わせを実証するものである。本発明の組成物は、少なくとも二つの化合物を含む。一つの化合物は、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーを含む。第二の化合物は、脱毛、禿頭症、またはアンドロゲン性脱毛症の治療または予防に対する有用性を有することが知られているかまたはそれを有する可能性を指摘されているさまざまな化合物から選択可能である。一部の実施形態においては、第二の化合物は、発毛を増大させるかまたは促進する可能性を指摘されている。かくして、本発明は、本明細書において提供されているかまたは示唆されている一つ、二つ、またはそれ以上の化合物または組成物と組み合わせて提供されるARDエンハンサーを含み得る。本発明において使用され得るARDエンハンサーの例としては、本明細書に参照により援用されている「(置換フェニル)プロペナール部分を有する化合物、その誘導体、生物活性、およびその使用」という発明の名称の米国特許出願第12/008124号明細書において提供されているものが含まれる。好ましい実施形態においては、ARDエンハンサーは、ASC−J9、ASC−J15、ASC−Q9、ASC−Q44、ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−Q98、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、ASC−Q103、ASC−Q110またはASC−Q111、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、ASC−JM4、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19からなる群から選択される。
【0053】
本発明の範囲内において提供される化合物または組成物の組み合わせは、医薬品/化粧品の技術分野で知られているような、または本発明で記載されるような局所投与、経口投与などが可能である。一部の実施形態においては、少なくとも一つの化合物が経口投与され第二の化合物が局所投与される化合物の組み合わせが提供される。
【0054】
本発明の好ましい態様においては、発毛を刺激する可能性を指摘されている化合物または組成物と組み合わされた形でARDエンハンサーが提供される。したがって、組み合わせの形で提供される場合、本発明は脱毛を予防すると同時に発毛を刺激し得る。
【0055】
非限定的ではあるが、本発明のARDエンハンサーは、アンドロゲン受容体またはアンドロゲンと相互作用する化合物と組み合わされてよい。一部の実施形態においては、ARDエンハンサーは、アンドロゲン受容体に対するアンドロゲンの結合を遮断する化合物または組成物と組み合わされる。
【0056】
一部の実施形態においては、ARDエンハンサーはフィナステリドと組み合せた形で提供される。別の実施形態においては、ARDエンハンサーはフルタミドまたはビカルタミドと組み合せた形で提供される。別の実施形態においては、ARDエンハンサーはミノキシジルと組み合せた形で提供される。したがって、ARDエンハンサーは、現在利用可能なまたは提案されている脱毛の治療と組み合わされてよい。
【0057】
発毛を促進するペプチドおよびオリゴペプチド
本明細書で開示されているARDエンハンサーは、発毛または脱毛予防の潜在的な活性を実証するかまたは実証すると考えられているペプチドまたはオリゴペプチドと組み合わされてよい。ペプチドは、アンドロゲン受容体などの受容体、STATなどの補因子と相互作用するドメインをコードし得る。
【0058】
非限定的な例として、ARDエンハンサーは、限定はしないが例えば以下のようなペプチドと組み合わされてよい。本明細書に参照により援用されている「発毛を促進するためのオリゴペプチド」という発明の名称の米国特許第7241731号明細書は、有益な活性を有する可能性を指摘されているさまざまなオリゴペプチドを提供している。グルタミン含有ペプチドなどのペプチドも同様に、発毛の治療または予防において有望である。例えば、本明細書に参照により援用されている「脱毛症の治療方法」という発明の名称の米国特許第6376557号明細書は、酪酸オクチルと組み合わせて用いられたグルタミン含有ペプチドの使用を開示している。
【0059】
上述のペプチドおよびオリゴペプチドは、限定的なものとして意図されておらず、むしろ、ARDエンハンサーとの組み合わせの形で使用された場合に脱毛の治療または予防に有用であると考えられる本発明の組成物を例示するものとして意図されている。
【0060】
ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド
本発明のARDエンハンサーは、発毛を増大させるかもしくは促進するかまたは脱毛を減少させると考えられているヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと組み合わせた形で使用され得る。かかるヌクレオチドは、アンドロゲン受容体、アンドロゲン受容体の補因子などを調節するものであってよい。ヌクレオチドは、意図された遺伝子の上流または下流で作用し、プロモーター活性などを増強または阻害し得る。一部の実施形態においては、かかるオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0061】
抗微生物剤およびペプチド
脱毛を治療または予防するための組成物はまた、抗微生物剤または抗微生物ペプチドと組み合わせた形でARDエンハンサーを含んでいてよい。皮膚疾患に関して上述した化合物およびペプチドも本明細書に包含される。
【0062】
植物抽出物
本発明の一部の実施形態においては、ARDエンハンサーは、抗アンドロゲン化合物、抗アンドロゲン活性を含む可能性を指摘されているか、または脱毛の予防もしくは治療を助ける一つ以上の植物抽出物(またはそれから得られる組成物)と組み合わされる。かかる抽出物には、植物の葉、花、果実または液果、幹、種子などから得られるものが含まれる。抽出物は、粗抽出物であっても、または純度50%超、60%超、75%超、80%超、90%超、もしくは95%超といったように精製されていてもよい。したがって本明細書において提供される抽出物、その活性化合物、およびそれと共に活性であると考えられているあらゆる化合物を、本発明のARDエンハンサーと組み合わせた形で使用してもよい。
【0063】
一部の実施形態においては、抽出物は、ジョージア州およびフロリダ州を含む米国南東部に見られることの多いアメリカ産の木であるソー・パルメット植物から得られる。ソー・パルメット植物の抽出物、ならびにアセチルカルニチンおよび補酵素Qとのその組合せは、本明細書に参照により援用される「アンドロゲン性脱毛症の局所的治療のための組成物および方法」という発明の名称の米国特許第6333057号明細書において開示されており、ARDエンハンサーと組み合わせた形で使用し得る。ソー・パルメット植物の抽出物は、同様に、本明細書に参照により援用される「男性型脱毛の治療のための天然調製物」という発明の名称の米国特許第5972345号明細書において、アフリカピジウム抽出物およびイラクサ抽出物と組み合わせた形で提供されている。
【0064】
本発明は同様に、以下の抽出物またはそれから単離もしくは精製された化合物と組み合わせた形のARDエンハンサーも含んでいる。本明細書に参照により援用される「頭皮疾患の治療のための経口組成物」という発明の名称の米国特許第7201931号明細書において提供される抽出物は、Seranoa repensおよびVitis viniferaの使用について開示している。Seranoa repensからの抽出物が、前立腺癌細胞に対して「インビトロ」で試験され、放射性標識した3H−メチルトリエノレンでの置換により、アンドロゲン受容体に対する強い親和力が明らかにされた。全体が本明細書に参照により援用されている「脱毛の治療のための局所用調製物」という発明の名称の米国特許第6358541号明細書は、刺激の低い溶液中で有用であるものとして、植物ステロールを含むソー・パルメットの液果のアルコール抽出物の使用について開示している。
【0065】
上述の抽出物は、限定的なものとしては意図されておらず、むしろARDエンハンサーと組み合わされた場合に脱毛の治療または予防にとって有用であると考えられる植物抽出物の異なる供給源を例示するものとして意図されている。
【0066】
D. 医薬組成物および化粧品組成物
本発明の化合物は、薬学的に許容される担体と組み合わされて、化粧品を形成するための薬学的におよび化粧品に許容される担体を形成し得る。医薬品および化粧品の生産技術は、当該技術分野において周知であり、典型的には、化合物またはその塩を適切な担体の存在下で混合することが含まれる。本発明の化合物は、単一の担体もしくは一種類の担体と共に混合されてよく、または、別々の担体と独立して混合されてもよい。本発明の化合物と共に使用するための適切な担体には、意図された投与形態に応じて選択され、従来の薬学的なまたは化粧品の慣習と一貫性を有する、希釈剤、賦形剤、またはその他の担体材料が含まれる。適切な担体のさらなる非限定的な例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、生理学的に適合性のある緩衝液、生理学的に適合性のある塩で緩衝された生理食塩水、油中水型エマルジョンおよび水中油型エマルジョン、アルコール、ジメチルスルフォキシド、デキストロース、マンニトール、ラクトース、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなど、およびその混合物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。全体が本明細書に参照により援用されている従来の薬学的な慣習(「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、第20版、Gennaro(編)ならびにGennaro、Lippincott、WilliamsおよびWilkins、2000年)と一貫性を有する通り、適切な担体には同様に、適切な薬学的に許容される酸化防止剤または還元剤、防腐剤、懸濁剤、可溶化剤、安定化剤、キレート剤、錯化剤、粘度調節剤、崩壊剤、結合剤、着香剤、着色剤、着臭剤、乳白剤、湿潤剤、pH緩衝剤、およびそれらの混合物も含まれる。本発明の組成物は、シャンプーに入れて提供してもよい。
【0067】
化合物は、治療上有効な用量で提供される。治療上有効な用量は、化合物の特定の組み合わせによって決定され得る。この用量は、化合物間、患者間で幾分か変動し、患者の症状および送達経路により左右されるものである。一般的な指針としては、約0.1〜約50mg/kgの投薬量の組み合わせ型の化合物または組成物が治療上の効力を有し得るが、さらに高いまたは低い投薬量を利用することも可能である。ARDエンハンサーを有する化合物について用量を決定する場合、当初処方された化合物用量から始め、その後、好ましくはこの用量を低下させる。
【0068】
本発明の化合物または組成物は、プロドラッグの形態、長時間放出製剤などの形で提供され得る。あるいは、組成物は、実質的な修飾をすることなく、作用に適した活性形態で提供されてもよい。同様に、本発明の化合物または組成物は、リポソーム送達媒体と組み合わせた形で提供されてよい。リポソームは、主として両親媒性の二重層で構成されたリオトロピック液晶であり、人体内で天然に生じる材料であるレシチンおよびコレステロールを主として含むという利点を有する。レシチンおよびコレステロールはまた、人体内に大量に存在し、したがって優れた生物許容性を提供する。したがって、リポソームは、毒性の低減を促進し、かつ目的の部位への薬物の送達を促進することができる。活発な標的化には通常、リポソームの表面へのリガンドの付着またはリポソームの改変が関与する。リガンドには、抗体または抗体断片、酵素、レクチン、糖などが含まれ得る。リガンドは、共有結合的または非共有結合的に付着し得るが、共有結合による付着の方が有用である。リポソームは、多重層リポソーム(MLV)、小型単層リポソーム(SUV、直径100nm未満)、および大型単層リポソーム(LUV、直径100nm超)という三種類に分類される。MLVは容易に調製され、最小限の実験装置しか必要としない。MLVおよびSUVは両方とも、LUVと比較して被包能力が低い。LUVは、水溶性薬物の高い被包性、脂質の損失、および再現可能な高速の薬物放出を含む、数多くの利点を有する。
【0069】
薬物送達の当業者によって知られているか、可能性を指摘されているか、または公開されている、薬物送達において使用されるその他の送達媒体も同様に考慮され、本発明の範囲内に包含されている。例えば、ナノ粒子は、約10ナノメートル(nm)から約1000nmまでサイズが変動する高分子物質を有する固体コロイド粒子である。化合物または組成物は、高分子材料内に、溶解、封入、吸着、付着、または被包される。ナノ粒子は、マトリクスを保持するシェル様の壁を有するミクロスフェア、流体溶液を被包するポリマー格子、ならびに化合物または組成物および標的化分子の表面付着のための固体粒子(生物分解性または非生物分解性)という非限定的な組成物を有するものとして記載されている。ナノ粒子は、標準的には注射される。
【0070】
化合物の同時投与
化合物の組み合わせは、単一の医薬品または化粧品内において提供されてよいが、その他の実施形態においては、本発明の化合物は二つの異なる組成物として提供され、一緒にまたは別々に投与される。投与経路は、二つ以上の化合物の局所的塗布といったように同じであってもよいし、または異なっていてもよい。例えば、一つの化合物を経口医薬品として提供し、第二の化合物を局所的医薬品または化粧品として提供してもよい。この実施例においては、治療には、同時に適用されるかまたは周期的間隔もしくは時間を置いて適用されてもよいしそうでなくてもよい、一方は局所的でもう一方は経口による、二つの医薬品の適用が含まれる。したがって、組成物は、所望の治療計画に応じて変動し得る。
【0071】
E. 皮膚疾患の治療方法
本発明の組成物は、さまざまな皮膚疾患に由来する望ましくない症候を治療するか、予防するか、または低減させるために使用されてよい。皮膚は体の最大の器官であり、外部から最も良く見えることは明白である。数多くの皮膚病は、特定の領域または範囲に局在化しているが、その一部は内科疾病の徴候である。さまざまな皮膚疾患が同定されてきており、限定はしないが、全体が本明細書に参照により援用されるTaber’s encyclopedic dictionary(第20版、2001年、FA Davis Company)などのさまざまな医学事典の中に見出すことができる。さらなる潜在的な治療的使用について、または化合物もしくは組成物の潜在的用量を評価する場合には、皮膚および付属器官の疾病および腫瘍の診断および治療を専門とする医師である皮膚科医に助言を求めることができる。
【0072】
皮膚の治療においては局所塗布が頻繁に用いられる。しかしながら、経口投薬治療も一般的である。本発明の組成物は、所望の通りに、または薬学的にもしくは化粧品として適合可能なものとして、局所塗布、経口適用、注射、または任意のその他の適切な投与経路に適合させることができる。
【0073】
本発明の治療方法には、皮膚疾患を患う個体を提供する過程、およびこの患者に対して治療上有効な用量の本発明の一つ以上の組成物を投与する過程が含まれる。記載されているように、本発明の組成物には、開示される化合物のうちの少なくとも二つが含まれており、その化合物の一方はARDエンハンサーである。さらに、組成物は医薬品または化粧品の形をしていてよい。同様に、それを必要としている患者に対して、薬学的にまたは化粧品として許容される量の本発明の一つ以上の組成物を投与する過程によって、皮膚疾患を予防することもでき、ここでその組成物の一つはARDエンハンサーを含む。以下は、本発明の化合物および組成物を用いて治療または予防できる皮膚疾患の、簡潔でかつ非限定的な記載である。
【0074】
座瘡
本発明の化合物または組成物は、座瘡を治療または予防するために使用され得、座瘡により生じる病斑の治癒を加速することができる。座瘡は一部には、皮脂腺のアンドロゲン誘発性のAR活性化によって引き起こされる。本発明は、アンドロゲン受容体関連の活性化を防止するかまたは減少させることのできるARDエンハンサーを提供することによって、皮脂腺の活性化に影響を及ぼす。炎症および創傷治癒も同様に、リガンドに応答したアンドロゲン受容体と関連づけられるものと考えられており、したがって治療可能である。かくして、本発明の方法には、かかる治療または予防を必要としている個体に対して、化合物、医薬品製剤、または化粧品製剤を投与する過程が含まれていてよい。このような製剤の局所塗布、経口形態、および注射用形態は、特に興味深いものであり得るが、その他の投与経路も同様に本発明の範囲内に包含される。
【0075】
本発明のさまざまな態様において、それを必要としている個体または対象に対して治療上有効な量の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、座瘡の治療方法または予防方法が提供される。好ましくは、組成物は、分泌される油脂の量を低減させ、P.acnesの集団を低減させる。治療上有効な用量は、化合物間、患者間で幾分か変動し、患者の身体症状および送達経路に左右されるものである。一般的な指針としては、組成物の約0.1〜約50mg/kgの用量が治療上の効力を有し得るが、さらに高いまたは低い用量を利用することも可能である。座瘡の治療または予防において特に有用である確率の高い組成物、または化合物の組み合わせとしては、過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤と組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、少なくとも一つの抗生物質と組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、カテジシンなどの抗微生物ペプチドと組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、ビタミンA、ビタミンA誘導体、もしくはレチノイドと組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、抗炎症性化合物と組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、またはそれらの組合せが含まれる。
【0076】
一つの実施形態においては、医薬品は、ARDエンハンサー、および限定はしないが過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤を含む。この実施形態においては、医薬組成物は好ましくはクリームまたはジェルとして提供され、皮膚の一つまたは複数の患部に局所的に塗布される。塗布は単回または複数回であってよい。その他の実施形態においては、過酸化ベンゾイルは局所的に塗布され、ARDエンハンサーは経口で投与される。別の実施形態においては、医薬品はARDエンハンサーと抗生物質とを含む。この実施形態においては、医薬品は好ましくは、経口投与のために提供される。しかしながら、局所投与、注射、またはそれらの組み合わせが望ましい場合がある。患者の症状に応じて、単回用量または複数回用量であり得る。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体、またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。
【0077】
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、アレルギー病歴を有する患者に見られる病因不明の皮膚炎の慢性形態である。この疾病は通常、生後2ヵ月以降に発症し、これを患う個体は、小児期および成人期を通して悪化と寛解を経験し得る。多くの場合、家族にアレルギー病歴がある。皮膚の病斑は、皮膚の発赤、亀裂、および肥厚からなり、これはひっかくことで皮殻質となり得る。瘢痕化または二次感染が生じ得る。
【0078】
本発明は、それを必要としている患者に対し、治療上有効な量の本発明の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、アトピー性皮膚炎の治療方法または予防方法を提供する。一つの実施形態においては、医薬品はARDエンハンサー、および限定はしないが過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤を含む。別の実施形態においては、医薬品はARDエンハンサーと抗生物質とを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体、またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。
【0079】
酒さ
酒さは、通常、顔面中央、例えば患者の鼻、頬、額、目のまわり、またはあごに局在化する、慢性の発疹である。症状が進行するにつれて、皮膚の小脈管の奇形が出現し得、場合によっては鼻の皮脂腺が膨潤し、変形(鼻瘤)を生成し得る。現在の治療プロトコルとしては、メトロニゾール、クリンダマイシン、またはエリスロマイシンの局所的塗布、経口のテトラサイクリンおよびレチノイドがある。この疾病は慢性的であり、現在使用されている治療法では、症状の管理を試みることはできるものの、治療はできない。
【0080】
本発明は、それを必要としている患者に対し、治療上有効な量の本発明の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、酒さの治療方法または予防方法を提供する。一つの実施形態においては、医薬品は、ARDエンハンサー、および限定はしないが過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤を含む。別の実施形態においては、医薬品はARDエンハンサーと抗生物質とを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体、またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。
【0081】
狼瘡
狼瘡は、自己免疫疾患によって引き起こされる慢性的炎症の症状である。自己免疫疾患は、体の組織が自身の免疫系による攻撃を受けた場合に発生する病気である。免疫系は、例えば細菌およびその他の外来性侵入物などの感染性因子と闘うように設計された体内の複雑な系である。感染と闘うために免疫系が用いる機序の一つは、抗体の産生である。狼瘡患者は、外来性の感染性因子ではなくむしろ自身の体内の組織を標的化する異常な抗体を自ら血液中に産生する。抗体およびそれに随伴する炎症細胞には、体内の至る所の組織が関与し得ることから、狼瘡は、体のさまざまな領域に影響を及ぼす潜在性を有する。時として狼瘡は、皮膚、心臓、肺、腎臓、関節、および/または神経系の疾患を引き起こす可能性がある。皮膚のみが関与する場合、症状は円板状狼瘡と呼ばれる。内臓が関与する場合、症状は全身性エリトマトーデス(SLE)と呼ばれる。
【0082】
本発明は、それを必要としている患者に対し、治療上有効な量の本発明の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、円板状狼瘡およびSLEを含む狼瘡の治療方法または予防方法を提供する。一つの実施形態においては、医薬品は、ARDエンハンサー、および限定はしないが過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤を含む。別の実施形態においては、医薬品はARDエンハンサーと抗生物質とを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体、またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。
【0083】
F. 発毛を刺激しかつ/または脱毛を予防する方法
本発明の治療方法には、脱毛を患う対象を提供する過程、および治療上有効な用量の本発明の一つ以上の組成物を対象に投与する過程が含まれる。本発明の一態様においては、脱毛は、アンドロゲン脱毛症に起因する。その他の態様においては、脱毛はアンドロゲン脱毛症と関連しないものと考えられる。一部の態様においては、脱毛はアンドロゲンまたはARの蓄積と関連づけられる。その他の態様では、本発明の組成物は、脱毛をひき起こすか、またはかかる効果を低減させるかもしくは排除する医療と共に提供されてよい。一部の実施形態においては、脱毛を予防する可能性を指摘されている化合物を、発毛を刺激するかまたは促進する可能性を指摘されている化合物と組み合わせた形で提供する。複数回用量が必要とされる場合があり、用量は経時的に変化し、例えば増大または減少してよい。かくして、ARDエンハンサーと第二の化合物との比率も治療中に変動し得、例えば経時的に増加または減少し得る。
【0084】
記載されているように、本発明の組成物は、開示された化合物の少なくとも二つを含み、その化合物の少なくとも一つはARDエンハンサーである。さらに、組成物は、医薬品、シャンプー、コンディショナー、クリーム、化粧品などの形をしていてよい。同様に、薬学的に許容される量の本発明の一つ以上の組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、脱毛を予防するかまたは低減させることができ、ここで組成物の一つはARDエンハンサーを含んでいる。
【0085】
同様に、本発明の方法は、発毛を刺激するかまたは発毛の増加をもたらすための方法または治療を含む。これらの方法には、それを必要としている対象に対して、治療上有効な量のARDエンハンサーを、発毛を刺激する可能性を指摘されている化合物などの第二の化合物と組み合わせて投与する過程が含まれる。
【0086】
アンドロゲン性脱毛症
アンドロゲン性脱毛症は、ホルモンに対する毛包または周囲組織の感受性に起因すると考えられている。この感受性は、遺伝的要素に起因するものであり、遺伝性であることが多い。男性のアンドロゲン性脱毛症は、冠状動脈性心臓病および前立腺肥大、前立腺癌、インスリン耐性疾患(例えば糖尿病および肥満症)、ならびに高血圧(高血圧症)を含む複数のその他の症状と関連づけられている。女性においては、脱毛は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のリスクの増加と関連づけられ得る。PCOSは、月経不順、座瘡、過剰体毛(多毛症)、および体重増加をもたらし得るホルモンの不均衡によって特徴づけされる。女性の脱毛はアンドロゲンの集積または増量と相関関係を有することが多い。
【0087】
本発明は、それを必要としている患者に対し、治療上有効な量の本発明の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、アンドロゲン性脱毛症またはアンドロゲンの蓄積と関連づけられるものなどの毛髪疾患を治療または予防する方法を提供する。組成物は、少なくとも一つの第二の化合物と組み合わされた形の、少なくとも一つのARDエンハンサーを含む。一つの実施形態においては、ARDエンハンサーはミノキシジルと組み合わされる。別の実施形態においては、ARDエンハンサーはフィナステリドまたはプロペシアと組み合わされる。別の実施形態においては、ARDエンハンサーは抗アンドロゲン化合物と組み合わされる。別の実施形態においては、ARDエンハンサーは、ペプチドまたはオリゴペプチドと組み合わされる。
【0088】
一部の実施形態においては、本発明の方法には、脱毛を遅らさせるかまたは予防する可能性を指摘されている化合物と、発毛を刺激または促進する可能性を指摘されている第二の化合物とを含む、化合物の組み合わせを、それを必要とする対象に対して投与する過程を含む、アンドロゲン性脱毛症の治療方法が含まれる。少なくとも一つの化合物は、ARDエンハンサーである。発毛を刺激する可能性を指摘されている化合物は、発毛刺激活性を有する可能性を指摘されている。非限定的な例としては、有機化合物、ペプチド、小ペプチド、核酸配列、植物抽出物などが含まれる。かかる活性は、発毛が発生するか否かを判定する適切なあらゆる方法を用いて測定または決定できる。
【実施例1】
【0089】
実施例1:転写因子の分解の増強の概説
以下の実施例は、アンドロゲン受容体などの核内受容体(転写因子)の分解を増強する方法の非限定的な実施形態について記載するものである。限定はしないが、核内への核内受容体の移動に干渉することもしくは核内受容体を細胞の細胞質内に保持すること、プロテアーゼ活性を誘発できる核内受容体内部のモチーフを露出させること、核内受容体を特異的に分解することのできるプロテアーゼの活性を増大させること、核内受容体の安定化を阻害すること、核内受容体の溶解度を低減させること、核内受容体を分解できる経路を活性化すること、核内受容体のユビキチン化を増大させること、適切なキナーゼによる核内受容体のリン酸化を増大/減少させること、アポトーシスを誘発すること、または核内受容体と核内受容体を安定化させることのできる補因子との間の相互作用を低減させることを含む、目的の核内受容体の分解を増強するあらゆる機序を使用することができる。この特定の実施例においては、目的の核内受容体は、ステロイドホルモン受容体であるアンドロゲン受容体である。
【0090】
核内受容体の転写活性の下方調節、ひいては目的の核内受容体の分解を検出するため、またはかかる分解の下流の効果を検出するために、さまざまな方法およびアッセイを使用することができる。例えば、アンドロゲン受容体の下方調節を検出するために用いられるアッセイを、少なくとも部分的に、アンドロゲン受容体の分解を検出するために使用することができる。アンドロゲン受容体に適用可能なこのような方法およびアッセイの非限定的な実施例を、以下で全般的に記載する。
【0091】
ウェスタンブロット分析を用いたAR分解の検出
アンドロゲン受容体(AR)の分解を検出するのに適したウェスタンブロット法は、これまでに記載されている(Suら、1999年)。簡潔に言うと、細胞(例えばLNCap細胞)を、10マイクログラム/ミリリットルのベンズアミジン、10マイクログラム/ミリリットルのトリプジン阻害物質、および1ミリモル濃度のフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含有する、2×ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ローディングバッファーまたは放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液(「Antibodies:A Laboratory Manual」、E.Harlow and D.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年を参照)のいずれかの中に回収する。細胞溶解物由来の総タンパク質(1試料あたり40マイクログラム、または所望通り)をSDS−PAGEゲル上で分離する。分離の後、タンパク質を、標準的なウェスタンブロット手順にしたがってゲルからニトロセルロース膜へと移す。適切な遮断薬(例えば、0.1%のTween−20を補充したリン酸緩衝生理食塩水(PBST)中の10%の脱脂乳)で膜を遮断して、非特異的な結合を一晩還元させる。膜を、ヒトAR(例えばBD−PharMingen社製の抗ヒトAR)に特異的な適切な一次抗体と共に、摂氏4度で一晩、または室温で2時間インキュベートする。膜をPBSTで3回、各回につき10分間すすぎ、その後、適切な二次抗体(例えば酵素標識二次抗体、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体)と共に室温で1時間これをインキュベートする。膜をPBSTですすぎ、適切な視覚化手順を用いて二次抗体を検出する(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼは、発色基質を用いて、またはAmersham製の増強型化学発光(ECL Plus)キットによって提供されるような化学発光基質によって、検出可能である)。メーカーの推奨事項に従って膜を剥がし、適切な抗体(例えばベータ−アクチンに対する抗体、Sigma)と共に膜を再度インキュベートすることにより、ブロット上のアンドロゲン受容体タンパク質の量の尺度としての二次抗体シグナルを、各試料についてのロードされたタンパク質の総量に対して標準化することができる。タンパク質シグナルの定量化は、適切なソフトウェア(National Institutes of Health製のImageJソフトウェア)を用いて、濃度測定によって実施可能である。
【0092】
AR活性および腫瘍細胞の成長を阻害する化合物
非限定的な実施例において、細胞におけるアンドロゲン受容体(AR)を分解するために化合物を使用した。ARを分解する能力について試験した化合物の非限定的な例としては、全体が本明細書に参照により援用されている、Ohtsuら(2002年)、J.Med.Chem.、第45巻、5037〜5042頁、およびOhtsuら(2003年) Bioorg.Med.Chem.、第11巻、5083〜5090頁にその構造および調製が記載されている化合物が含まれる。例としては、化合物ASC−J9を、培養細胞に対して試験した。ASC−J9は、合成化合物(慣用名ジメチルクルクミン)であり、5−ヒドロキシ−1,7−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)−1,4,6−ヘプタトリエン−3−オンという構造を有し、例えば、ジアゾメタンを用いた天然クルクミンのパーメチル化によって得ることができる。
【実施例2】
【0093】
実施例2:核内受容体の分解の増強
ここでは、核内受容体の分解の効果を研究する上で有用な方法およびアッセイの非限定的な例について記載する。この特定の実施例においては、核内受容体であるアンドロゲン受容体(AR)の分解を増強するものとして公知の化合物を、AR活性および細胞増殖に対するその効果について試験した。癌の管理における主要な課題の一つは、腫瘍の増強を制御するかまたは遅らせることにある。アンドロゲンおよびARは、前立腺癌細胞の増殖を刺激する上で有意な役割を有しており、かくして、AR分解によるAR活性の調節は、前立腺癌の進行を遅らせるかまたは制御するための有用な手段として役立ち得る。
【0094】
LNCaP細胞における細胞の成長およびアンドロゲン受容体の発現の検出
成長のアッセイ
LNCaP細胞は、前立腺癌患者において見られる内因性の突然変異ARを発現する。この臨床的に関連する細胞モデルを用いて、前立腺癌細胞の成長の抑制におけるASC−J9の効果を研究した。細胞をおよそ6.5×104個細胞/ウェルという密度で、6ウェルの組織培養皿に播種した。二日後に、完全培地を吸引し、10%活性炭/デキストランで処理した(ホルモン除去した)血清含有培地を加えた。次に、試験化合物であるASC−J9を、1nMのDHTを伴ってまたは伴わずに、5μMの最終濃度で培地に添加した。媒体対照については、培地中に同量のDMSOを添加した。その後の5日間、培地を一日に一回吸引し、試験化合物および/またはDHTを含有する新鮮な培地と交換した。指定された時点で細胞の一部をトリプシン処理によって回収し、血球計を用いて細胞計数を実施した。
【0095】
5日間の実験期間中、媒体対照で処理したウェル内の細胞数は着実に増加した(図4A)。1日目、ASC−J9で処理したウェルの細胞数は、媒体対照のものに匹敵していたが、2日目から、これらのウェルの細胞数は著しく減少した。5日間のインキュベーションの終わりには、ASC−J9で処理したウェル内には、最少数の生存細胞しか見られなかった。
【0096】
前立腺癌細胞の成長に対するASC−J9の効果を、アンドロゲンであるDHTの存在下でさらに評価した。予想通り、DHTはLNCaP細胞の成長を上方調節した。ウェルあたりの細胞数の上昇は、細胞を4〜5日間この男性ホルモンと共にインキュベートした後に明白になった。ASC−J9は、DHTの存在下でもなお、LNCaP細胞の成長を減少させる優れた効力を示した。DHTの存在下または不在下での細胞成長の低下の程度は、実際に匹敵するものであった。上述の所見に基づくと、ASC−J9は男性ホルモンの存在下または不在下で前立腺癌細胞の成長を事実上無効化できるという結論が導かれる。ASC−J9は、前立腺癌の疾病管理のための薬物候補として有用であり得る。
【0097】
AR発現のウェスタンブロット分析
ARは、アンドロゲンに対する前立腺癌細胞の応答を調節するための主要な因子である。発明者らは、ASC−J9がARの定常状態のレベルに影響を及ぼすか否か、およびARの低減がLNCaP細胞の成長と相関関係を有するか否かを試験した。上述の実験に由来するLNCaP細胞を、指定の時点で回収し、細胞溶解物を前述の通りにウェスタンブロット分析のために調製した。その後、色検出方法を用いて、膜におけるARおよびアクチンタンパク質のシグナルを試験し、得られたタンパク質シグナルを濃度測定により定量化した。図4Bでは、(アクチンタンパク質との関係において)標準化したARシグナルが報告されており、これは、基底(0日目)値の百分率として表されている。
【0098】
結果は、ASC−J9で処理したLNCaP細胞中において、ARの内因性レベルが着実に下降したことを示している。ARの低減は、ASC−J9との2日間の連続的なインキュベーションの後に初めて観察され、5日間のインキュベーションの終わりでは、ARの最初のレベルのわずか約10%以下しか処理細胞において残らなかった。ASC−J9のインキュベーション後にARの低減と細胞数の減少との間に相関関係があるということは特筆に値する。この情報は、ASC−J9がAR低減の機序を介して少なくとも部分的に作用して、LNCaP細胞の成長を下方調節し得るということを強く示唆している。
【0099】
LNCaP細胞におけるAR発現を低減させる能力について、さらなる化合物を試験した。結果は図2にまとめられている。LNCaP細胞を、各々の試験化合物の存在下で48時間インキュベートし、その後ウェスタンブロット法により分析した。さまざまな濃度にわたって媒体対照と比較したARの低減の百分率を判定することによって、各化合物について相対的効力を評価した。表示は以下の通りである。
【0100】
【表1】
【0101】
図3Aおよび3Bは、化合物ASC−Q49、ASC−Q103、ASC−JM12、ASC−JM14、ASC−77、ASC−JM4、およびASC−JM5のウェスタンブロットデータの写真を示している。対応する化合物をLNCaP細胞に添加し、48時間インキュベートした後に分析した。結果は、アンドロゲン受容体(AR)タンパク質の発現が、ARDエンハンサーに曝露すると低減することを実証している。
【0102】
インビボでの異種移植腫瘍の成長のアッセイ
関連するインビボでの研究において、LNCaPヒト前立腺腫瘍細胞を、皮下注射によりヌードマウスに異種移植する(部位1ヵ所あたり2×106個)。その後、マウスを、腹腔内注射により、対照としての媒体溶液または試験化合物(体重1キロあたり100ミリグラムの用量のASC−J9)のいずれかで7週間、1週三回ずつ処理する。腫瘍体積を次の7週間にわたり一週間に二回ずつ測定する。ASC−J9などの化合物で充分な期間(例えば2週間〜数ヵ月)にわたり処理した結果、腫瘍の成長速度は有意に低減すると予想される。図12におけるデータは、一頭は媒体溶液で処理し(左)、もう一頭はASC−J9で処理した(右)、LNCaP腫瘍を異種移植した2頭のヌードマウスを示す。ASC−J9で処理した動物において、腫瘍サイズおよび血漿中のPSA含有量の有意な低減が検出された。このような結果は、ASC−J9などのAR分解化合物によって誘発されるAR活性の抑制およびその結果得られる腫瘍成長の低減が、前立腺癌およびその他の癌などのAR活性に関連する疾患および障害を治療または予防するための実用へとその形を変え得ることを強く示すものとしてとらえることができる。
【実施例3】
【0103】
実施例3:異なる細胞系におけるステロイドホルモン受容体の分解の特異性
ここでは、さまざまな細胞系における核内受容体(この場合、ステロイドホルモン受容体)の特異的分解の非限定的な例について記載する。二つの代表的な腫瘍細胞系、すなわちヒト前立腺癌細胞系であるLNCaP、およびヒト乳腺癌細胞系であるT47Dを使用して、アンドロゲン受容体ならびにその他の細胞内タンパク質および受容体に対するASC−J9の効果の特異性を試験した。
【0104】
ヒト前立腺癌LNCaP細胞およびT47D細胞を、10%FBSを含有するRichterの改良MEMインスリン(RPMI)培地中で、60ミリメートルの組織培養皿1枚あたり7×105個の細胞密度で播種した。24時間後に、10%の活性炭処理血清を含有するRPMIまたはDME培地に培地を変更して、細胞のアンドロゲンまたはエストロゲンを枯渇させた。さらに24時間後、試験化合物での処理を開始した。ASC−J9の試験用量は、1および5マイクロモル濃度であった。LNCap細胞にはまた、ジヒドロテストステロン(DHT)も加えた(3ナノモル濃度)。対照細胞には、対応する量の媒体、ジメチルスルフォキシド(DMSO)(0.04%未満)を同等の曝露時間にわたり加えた。細胞をASC−J9と共に24時間インキュベートし、250マイクロリットルの1×SDS/PAGEローディングバッファーに溶解した。およそ40マイクログラムの総細胞タンパク質を、プレキャストゲル(NuPAGE、Invitrogen)の各レーン内にロードした。メーカーの指示事項に従って、タンパク質の分離および移動を実施した。
【0105】
LNCaP細胞溶解物について、得られた膜を抗AR抗体(BD−PharMingen)と共にインキュベートし、その後化学発光検出(ECL Plus、Amersham)を行うことで、アンドロゲン受容体(AR)を視覚化した。試験化合物がその他の細胞タンパク質に対してもたらす効果を試験するため、複数の同一のゲルを調製し、得られた膜を、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体ベータ(ERベータ)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファ、ベータ、またはガンマ(PPARα、β、またはγ)、レチノイドX受容体アルファ(RXRα)、70kDaの熱ショックタンパク質(hsp70)、および細胞骨格タンパクであるアクチンに特異的な抗体と共にインキュベートした。PRおよびその他の核内受容体についての抗体は、Santa Cruz Biochemicalsから入手し、一方、hsp70およびアクチンについての抗体はそれぞれStressGenおよびSigmaから入手した。得られたタンパク質シグナルを、濃度測定およびNIH ImageJソフトウェアを用いて定量化した。
【0106】
LNCaP細胞溶解物のウェスタンブロットを図5に示す。DHTの存在下または不在下でLNCaP細胞をASC−J9と共にインキュベートすること(1または5マイクロモル濃度、24時間)により、ARの細胞内濃度は著しく減少し、程度はより低いもののプロゲステロン受容体の濃度も著しく減少したが、その他の試験対象の核内受容体またはタンパク質には実質的な影響はなかった。
【0107】
T47D細胞溶解物のウェスタンブロットを図6に示す。エストロジアル(E2)の存在下または不在下でT47D細胞をASC−J9(5または10マイクロモル濃度)と共にインキュベートすることで、ARの細胞内濃度は減少したものの、その他の受容体タンパク質は、LNCaP細胞における観察と同様に減少しなかった。
【実施例4】
【0108】
実施例4:タンパク質合成阻害物質の存在下での転写因子の分解の増強
観察されたARタンパク質レベルの低減がARタンパク質合成の阻害よりもむしろタンパク質の分解に起因していたのか否かを判定するため、第二組の3回の反復実験を実施した。これらの実験においては、細胞による新たなタンパク質の合成を防ぐために、タンパク質合成阻害物質であるシクロヘキシミド(CHX)を使用した。新たなARタンパク質合成が無い状態では、ARレベルのあらゆる改変は主にタンパク質分解に原因があると思われる。ASC−J9(20マイクロモル濃度)の存在下および不在下で、ならびにシクロヘキシミド(15マイクログラム/ミリリットル)の存在下および不在下で、LNCaP細胞を培養した。その後、細胞を0、3、6および12時間インキュベートした後に回収し、ウェスタンブロットによりARレベルを分析した。
【0109】
一つの実験に由来する代表的なウェスタンブロットを図7Aに示す。対照細胞における内因性AR濃度の低減が、シクロヘキシミドでの3時間以内の処理で検出され、これはARのデノボ合成がこの受容体の定常状態のレベルに影響することを示唆した。既存のARタンパク質の観察された低減は、試験化合物(ASC−J9)が4時間以内に既存のARタンパク質の分解を増強または増大させた(ひいてはAR活性を低下させた)ということを表している。
【0110】
ARの発現を低減させる上での活性に対してARDエンハンサーが及ぼす効果を従来の抗アンドロゲン物質と比較するために、ASC−J9および従来の抗アンドロゲン物質であるCPA(酢酸シプロテロン)、HF(ヒドロキシフルタミド)、およびフィナステリドを、LNCaP細胞で試験した。図7B、ASC−J9、CPA、HF、またはフィナステリドの存在下で48時間、LNCaP細胞を培養した。細胞を回収し、ARタンパク質をウェスタンブロットにより定量化した。ASC−J9処理のみがARタンパク質の減少という結果をもたらし、このことは、ASC−J9がアンドロゲン受容体の分解を誘発する一方で、従来の抗アンドロゲン物質であるCPA、HF、およびフィナステリドはそれを誘発しないということを示している。
【実施例5】
【0111】
実施例5:突然変異アンドロゲン受容体の分解
ここでは、突然変異核内受容体の蓄積に関連するヒトの疾病のモデルにおける、突然変異核内受容体の分解の非限定的な実施例を記載する。この具体的な実施例においては、ケネディー病のモデルが調査される。ケネディー病つまり球脊髄性筋萎縮症(SMBA)は、AR遺伝子のN末端領域における異常に長いポリグルタミン伸長からなるアンドロゲン受容体の突然変異によって引き起こされる神経変性病である。伸長したポリグルタミン(ポリQ49(49回のポリグルタミン反復))を有する突然変異ARでの細胞の実験的なトランスフェクションは、トランス活性化機能の低下、そして一部のケースでは、ミスフォールディングしたARタンパク質の核内封入と関連することが示されている(Chamberlainら、(1994年)Nucleic Acid Res.,第22巻、3181〜3186頁)。異常なARのこの核内蓄積は細胞毒性であり、神経細胞の死を引き起こし、ケネディー病のインビボでの病理と一貫性がある。
【0112】
サル腎臓COS−1細胞を、10%FBSを含むダルベッコ変法イーグル(DME)培地が入った35ミリメートルの懸濁培養皿の中に置かれたアルコール清浄および滅菌を行ったカバースリップの上に、0.5ミリリットルの体積あたり3×104個の細胞密度で播種した。細胞に、野生型AR(GFPAR)またはポリQ49(プラスミドGFPARQ49)突然変異アンドロゲン受容体およびレポーターとしての緑色蛍光タンパク質(GFP)を含むプラスミドをトランスフェクトした。各々のカバースリップについて、102.5マイクロリットルのDME培地中の3.075マイクログラムのプラスミドに12.3マイクロリットルのSuperFectを添加し(DNA対SuperFect試薬を1:4という比とする)、混合物を短時間ボルテックス処理し、15分間にわたり複合体を形成させた。その後、各混合物に、897マイクロリットルのCD/DMEを加え、穏やかに混合した。得られた1ミリリットルの体積を、カバースリップの入った皿に加えた(最終プラスミド濃度は、皿1枚あたり3.02マイクログラムであった)。細胞を5時間トランスフェクション溶液と共に5時間インキュベートし、その後培地を、媒体(DMSO)のみが添加されるかまたはASC−J9(最終濃度5マイクロモル濃度)を含む新鮮な1.5ミリリットルのCD/DME培地に変更した。トランスフェクションが終わってから24時間後に、培地を再び新鮮なCD/DME培地(1.5ナノモル濃度のDHTを含むかまたは含まない)へと変更し、媒体またはASC−J9を加えた(最終濃度5マイクロモル濃度)。培地の変更から24時間後に、培地を取り出し、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%のホルムアルデヒドで、室温で一時間固定した。ホルムアルデヒドを除去し、固定した細胞をPBSで三回洗浄し、次にカバースリップを乾燥させた。処理スキームを標示するようにカバースリップに印をつけ、細胞のまわりに色鉛筆で疎水性の円を書いた。各カバースリップを200マイクロリットルのヨウ化プロピジウム(水1ミリリットルあたり0.7マイクログラム)を用いて室温で5分間染色し、次にPBSで三回すすいだ。カバースリップを空気乾燥し、グリセロールベースの封入剤を有するスライド上に載せ、必要であれば、蛍光顕微鏡検査で観察する前に摂氏4度で保管した。GFPARおよびGFPARポリQ49プラスミドでトランスフェクトしたCOS−1細胞を示す代表的な顕微鏡写真を、図8Aおよび8Bに示す。顕微鏡写真中に示されている通り、トランスフェクトした細胞は、蛍光レポータータンパク質であるGFPによって示されるようにプラスミドを発現した。対照細胞は、大量の蛍光封入体または凝集体を含有していた(図8B)。ASC−J9で処理された細胞は、蛍光封入体を実質的により少ない量だけ含有し、これは、発現した突然変異体ポリQ49アンドロゲン受容体がASC−J9処理によって分解されたことを示唆している。
【実施例6】
【0113】
実施例6:アンドロゲン受容体の分解によるラットにおける皮脂腺の低減
この実施例では、具体的にはアンドロゲン受容体の分解を誘発することによってアンドロゲン受容体活性化経路の効果を改善することおよびヒトの対象において座瘡を治療する上で有効であることが上記の実施例において示された、試験化合物ASC−J9を、動物モデルにおける皮脂腺葉のサイズを低減させるために使用した。局所治療による皮脂腺の有効な低減は、座瘡などの皮膚の症状を治療する上で有用であり得る。この動物モデルにおいては、全体が本明細書に参照により援用されているYeら、(1997年)Skin Pharmacol.、第10号、10288−10297頁において記載されているファジーラットを使用した。
【0114】
実施例12において後で記載する通りに局所クリームを調製した。試験クリームにはASC−J9(25マイクロモル濃度)が含まれ、媒体のみが添加された対照クリームも調製した。8週間の期間にわたり、毎日一回、動物の背面皮膚に綿棒を用いて試験クリームまたは対照クリームを塗布した。その後動物を屠殺し、顕微鏡検査のため皮膚試料を収集した。安楽死させた動物の背面に市販の脱毛剤を塗布した。5分後、脱毛剤と毛をティッシュペーパーで除去した。その領域を75%のイソプロピルアルコールで完全に清浄した。4ミリメートルの皮膚用パンチを用いて皮膚組織試料を取り出し、この試料を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、17ミリモル濃度)、リン酸ナトリウム(0.1モル濃度、pH7.4)溶液中において摂氏37度で2〜3時間インキュベートした。真皮から上皮を丁寧に分離し、10%のリン酸緩衝ホルマリン中に保管した。顕微鏡検査に先立ち、試料をスライドガラス上に載せた。顕微鏡イメージングのために、良好に保存された腺小葉の領域を選択した。腺葉の縁部をトレースし、トレースした腺葉の面積をImage Jソフトウェア(National Institutes of Health)を用いて得た。
【0115】
結果を図9および図10に示す。図9で示されているように、皮膚の褐色および皮脂腺のバンドは、ASC−J9で処理したファージラットにおいて4〜5週間以内で低減した。図10A〜Cにおいて示されているように、化合物ASC−J9(200μM)での雄ラットの局所的処理の結果、皮脂腺のサイズは有意に低減したが、去勢によりひき起こされるものほどではなかった。図10Dでは、データは、媒体のみでの局所的処理(対照クリーム)が腺葉のサイズの有意な変化を生み出さないことを示した。さまざまな濃度のASC−J9を用いた局所的処理は、皮脂腺葉のサイズの有意な低減をもたらした(パネルA)が、去勢によりひき起こされるものほどではなく、それでも従来の抗アンドロゲンフルタミドよりは優れている。図10E(パネルBと記されている)は、皮膚に塗布されたASC−J9が、去勢効果に匹敵しかつフルタミドより良い、雄ファージラットにおける皮脂腺管のサイズの有意な低減をもたらすことを示す代表的なデータを示している。
【実施例7】
【0116】
実施例7:アンドロゲン受容体の分解による動物モデルにおけるアンドロゲン誘発型脱毛症の治療
この実施例は、核内受容体の分解による、対象における核内受容体関連疾患の治療について記載する。この実施例では、核内受容体は、ステロイドホルモン受容体であるアンドロゲン受容体である。核内受容体関連疾患は、アンドロゲン受容体により影響されることがわかっている脱毛症(脱毛または禿頭症)である。この実施例では、具体的にはアンドロゲン受容体の分解を誘発することによってアンドロゲン受容体活性化経路の効果を改善することがこれまでの実施例において示された試験化合物ASC−J9を使用して、動物モデルにおける脱毛を治療する。
【0117】
脱毛および再発毛についてのこの動物モデルにおいては、C57BL/6Jマウスを用いた(全体が本明細書に参照により援用されているUnoら、(1990年)J.Cutaneous Aging & Cosm.Derm.、第1巻、193頁)。6週齢の雄のマウス(1群あたり動物6〜7頭)を電気バリカンで剃毛し、その後脱毛クリームで1〜2分間処理した。剃毛後に、毛包が活発に成長する毛成長期にあることを示す暗色の皮膚の色を有していることが判明した動物は、研究から除外した。除毛から一日後に、最初の動物群には、連続20日間、毎朝一回、剃毛した部域に、100マイクロリットルの、エタノール中の1%テストステロン溶液を各々局所塗布した。第2群の動物には、連続20日間、毎朝一回、剃毛した部域に100マイクロリットルの媒体(エタノール)のみを局所塗布した。第1群のマウス(テストステロン処理されたもの)をさらに対照群と処理群に分けた。同様に、除毛の一日後から、対照群の各々のマウスには、100マイクロリットルの対照溶液(60%のエタノール、20%のプロピレングリコール、および20%の水)を塗布し、処理群の各々のマウスには、連続20日間、毎日午後1回、剃毛した領域に、100マイクロリットルの試験化合物、ASC−J9(同じ60%エタノール、20%プロピレングリコール、および20%水の溶液中に0.02%)を局所塗布した。剃毛した領域における再発毛を、局所的処理の開始後、0、4、8、11、および14日後に観察し、写真撮影した。
【0118】
剃毛し、その後テストステロンを朝に局所的塗布し対照溶液のみを午後に塗布したマウスは、20日間の処理後、剃毛部の領域にほとんどまたは全く再発毛を示さなかった(図11A)。剃毛し、その後エタノール媒体のみ(テストステロン無し)を局所的塗布したマウスは、局所的な媒体処理から20日後に剃毛部の領域において急速な再発毛を示した(図11A)。
【0119】
剃毛し、その後テストステロンを朝に局所的塗布し対照溶液のみを午後に塗布したマウスは、17日間の処理後、剃毛部の領域にほとんどまたは全く再発毛を示さなかった(図11B)。剃毛し、その後テストステロンを朝に局所的塗布しASC−J9を午後に塗布したマウスは、8日目から17日目に剃毛部の領域に急速な再発毛を示した(図11B)。これらの結果は、アンドロゲン受容体を分解するものとして知られる化合物であるASC−J9の局所的塗布が、動物モデルにおけるテストステロン誘発型の発毛抑制を克服できるということを実証している。
【実施例8】
【0120】
実施例8:核内受容体分解化合物ASC−J9を用いた癌性腫瘍のインビボでの低減
ヌードマウスの左脇腹に、200万個のLNCaP腫瘍細胞を皮下接種した。実験動物において、ヌードマウスに、一週間に3回、100mg/kg/日の割合で化合物ASC−J9の腹腔内(ip)注射するか、または媒体対照のみを投与した。7週間の処理後、腫瘍を切除し、秤量し、比較した。媒体対照対ASC−J9の腫瘍重量比は、0.694g:0.172gであり、したがって、ASC−J9で処理した動物は、腫瘍サイズが75%低減した。さらに、ASC−J9で処理した動物に由来する血漿中のPSA(前立腺特異的抗原)レベルは90%低減した(57.0ng/mlから7.6ng/mlに低減)。結果を図12に示す。
【実施例9】
【0121】
実施例9:ARDエンハンサーASC−J9化合物は動物モデルにおいて皮膚の創傷治癒を早めることができる
動物モデルにおける創傷治癒を早めるASC−J9の能力を、Balb/cマウスを用いて試験した。皮膚用パンチを用いて、引退した雄の種畜Balb/cマウスの頸部領域の背中近くに創傷を作った。マウスを毎日2回、創傷部位において局所的にASC−J9クリーム(25μM)または媒体対照クリームのいずれかで処理した。図13を参照すると、ASC−J9で処理された動物は、媒体処理された動物に比べて、5日目にはより小さい創傷サイズを有しており、10日目にはASC−J9で処理されたマウスにおいて創傷が完全に治癒し、一方、媒体で処理された動物の創傷の瘢痕化は目に見えて残っていた。
【実施例10】
【0122】
実施例10:アンドロゲン受容体の分解によるヒト対象におけるアンドロゲン関連疾患の治療
この実施例では、核内受容体(アンドロゲン受容体)の分解による、対象における核内受容体関連疾患(尋常性座瘡)の治療について記載する。一般的には単に座瘡として知られている尋常性座瘡は、両方の性別の10代および若年成人のヒトの顔面、胸部、および背中に典型的に発症する赤色皮膚発疹であるが、これはあらゆる年令において、体のその他の領域にも発生する可能性がある(例えば、2004年4月23日にアクセスした、www.emedicine.com/derm/topic2.htmで電子的に利用可能な、J.C.HarperおよびJ.Fulton,Jr.(2003年)、「Acne Vulgaris」を参照)。座瘡は、ほぼすべての人で、人生の或る時期において発症し、永久的な瘢痕化および精神的苦痛および低い自尊心の原因となり得ると同時に、皮膚感染などのより重篤な健康問題を導く可能性がある。皮脂腺の基底細胞および腺細胞において発現するアンドロゲン受容体は、男性と女性の間で類似した皮膚分布を有する(Blauerら、(1991年)J.Investig.Dermatol.、第97巻、264〜268頁)。皮膚において、アンドロゲン受容体は最終的な皮脂腺細胞の分化および皮脂の産生を刺激する。座瘡の一般的な治療は多くの場合、望ましくない副作用を有する。例えば、局所レチノイドは太陽光過敏を導く可能性があり、抗生物質は抗生物質耐性をもたらし得、過酸化ベンゾイルは接触性皮膚炎をひき起こす可能性がある。座瘡のための新規で有効な、好ましくは局所的な(非全身性の)治療が必要とされている。
【0123】
この実施例では、具体的にはアンドロゲン受容体の分解を誘発することによってアンドロゲン受容体活性化経路の効果を改善するものとして先の実施例において示した化合物ASC−J15またはASC−J9を含有するクリームの局所的投与によりヒトの対象の座瘡を治療し、成功をおさめた。基本的な担体製剤は、(1)aristoflex avc、Osmocide、Tween20、および水を含有する水性溶液、ならびに(2)ミリスチン酸イソプロピル、ココナツジエタノールアミン、エチルパラベン、イソブチルパラベン、メチルパラベン、およびプロピルパラベンを含有する油性溶液という二つの溶液を混合することによって調製した。必要に応じて、1〜2.5マイクロモル濃度の最終濃度までクリームに試験化合物(ASC−J15またはASC−J9)を添加した。
【0124】
年齢が15才から52才までの男性および女性のヒトボランティアを、座瘡に冒された皮膚に試験化合物を局所的塗布することによって治療した。対象には、一日二回(朝晩一回ずつ)、座瘡に冒された領域にクリームを塗布するように依頼した。一般に、座瘡の症候は、2〜3日以内で有意に鎮まるという所見が得られ、1〜2週間以内で完全に治癒した。結果を表2に示し、一人のボランティアからの代表的な結果(写真)を図14に示す。図14Aはボランティアの額を、図14Bはボランティアの背中を示している。
【0125】
【表2】
【0126】
見出しは全て、読者の便宜上のものであり、別段の規定のないかぎり、その見出しの後に続く本文の意味を限定するために用いられるものではない。本発明に対しては、その趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および離脱を加えることができる。したがって、本発明を明細書において具体的に記載されているものに、または図面で例示されている通りに限定することは意図されておらず、本発明は、特許請求の範囲に記載されるように限定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【特許文献1】米国特許出願第60/962880号明細書
【特許文献2】米国特許出願第12/008124号明細書
【特許文献3】米国特許第7241731号明細書
【特許文献4】米国特許第6376557号明細書
【特許文献5】米国特許第6333057号明細書
【特許文献6】米国特許第5972345号明細書
【特許文献7】米国特許第7201931号明細書
【特許文献8】米国特許第6358541号明細書
【非特許文献】
【0128】
【非特許文献1】FASEB.J、2006年10月、20(12):2068〜80頁
【非特許文献2】「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、第20版、Gennaro(編)ならびにGennaro、Lippincott、WilliamsおよびWilkins、2000年
【非特許文献3】Taber’s encyclopedic dictionary(第20版、2001年、FA Davis Company)
【非特許文献4】「Antibodies:A Laboratory Manual」、E.Harlow and D.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年
【非特許文献5】Ohtsuら(2002年)、J.Med.Chem.、第45巻、5037〜5042頁
【非特許文献6】Ohtsuら(2003年) Bioorg.Med.Chem.、第11巻、5083〜5090頁
【非特許文献7】Chamberlainら、(1994年)Nucleic Acid Res.,第22巻、3181〜3186頁
【非特許文献8】Yeら、(1997年)Skin Pharmacol.、第10号、10288−10297頁
【非特許文献9】Unoら、(1990年)J.Cutaneous Aging & Cosm.Derm.、第1巻、193頁
【非特許文献10】2004年4月23日にアクセスした、www.emedicine.com/derm/topic2.htmで電子的に利用可能な、J.C.HarperおよびJ.Fulton,Jr.(2003年)、「Acne Vulgaris」
【非特許文献11】Blauerら、(1991年)J.Investig.Dermatol.、第97巻、264〜268頁
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2007年7月31日に出願された米国特許出願第60/962880号明細書に対する優先権の利益を請求するものであり、その内容は参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、全体として、皮膚疾患および脱毛の治療および予防に有用な方法および組成物、そしてさらに具体的には、第二の化合物または組成物と組み合わせた形で提供されるアンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーを含み、この組合せが皮膚疾患または脱毛に対する有益な活性または効果を有している方法および組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
皮膚疾患および脱毛を患う人の間では、自尊心の低下やうつ病が見られることが多い。一部の場合では、精神的な影響は劇的であり得る。したがって、それぞれの病状を治療するための治療法が開発されつつある。本発明は、現在の治療法に取り組むと共に、成果が期待される新規な組成物を提供する。
【0004】
座瘡(尋常性座瘡)は、性ホルモンに応答しての毛嚢脂腺単位(毛包およびそれに付随する皮脂線を含む皮膚構造)の変化により引き起こされる、皮膚の一般的な炎症性疾患である。座瘡は、顔、胸、および背中に見られることが最も多い。この症状は、思春期において最もよく発生し、一般的に個体が20代前半に達した時点で消失するかまたは減少する傾向にある。しかしながら、座瘡は、人生で30代から40代に入っても、そして一部の場合ではさらに長い間、問題であり続ける可能性がある。
【0005】
にきびまたは面皰とも呼ばれる、座瘡の基本的な病斑は、アンドロゲンに応答して皮脂線から分泌される過剰な油脂によってふさがれた、拡大した毛包である。さらに、死んだ皮膚細胞および細菌Propionibacterium acnesの集積も同様に、毛包を拡大させる一因となる。P.acnesは、トリグリセリドを遊離脂肪酸に分割することのできるリパーゼを産生し、この遊離脂肪酸が濾胞細胞を刺激し得る。座瘡の重症度は、軽度から重度までの範囲にわたる可能性がある。面皰に加えて、丘疹、膿庖、結節、および炎症性嚢胞も同様に、座瘡に関連する病斑である。類表皮嚢胞とも呼ばれる、炎症を起こしていない皮脂嚢胞は、炎症性座瘡を伴って生じるかまたは単独で生じ得るが、これは通常は恒常的な特徴ではない。座瘡が消散した後、醜い瘢痕が残る可能性がある。
【0006】
座瘡の治療には数多くの製品が利用可能であるが、最もよく知られているものとしては、剥離用製品、抗生物質、局所用殺菌剤、レチノイド、および経口ホルモン治療がある。しかしながら、それぞれに潜在的欠点がある。より最近になって、アンドロゲン受容体の分解を誘発できる化合物が、アンドロゲン受容体関連疾患のための潜在的な治療として開発中である。
【0007】
剥離は、手作業で、または化学的に、皮膚から死んだ皮膚細胞を除去しようと試みるものであり、したがって、毛穴が詰まる確率を低下させる。剥離は、スクラブ製品を用いて手作業で行なわれてもよいし、または化学的に行われてもよい。化学的剥離用製品であるサリチル酸およびグリコール酸は、ケミカルピールとして利用可能である。剥離の結果、皮膚の薄片化または刺激が生じる可能性がある。
【0008】
経口的または局所的な抗生物質が、細菌P.acnesを攻撃するために通常用いられる。エリスロマイシン、クリンダマイシン、コトリモキサゾール、および数多くのテトラサイクリン誘導体(ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリン、塩化テトラサイクリン、リメサイクリン、およびミノサイクリンなど)が、座瘡の治療として一般に処方される。抗生物質は、細菌コロニーを低減させる上で有効であるが、細菌の存在を低減させても皮脂腺からの油脂分泌に影響が及ぶことはなく、抗生物質に耐性を有する細菌株が発達する可能性もまた懸念される。
【0009】
抗生物質と同様、過酸化ベンゾイルなどの局所用殺菌剤は、細菌Propionibacterium acnesを攻撃する。局所用殺菌剤は、細菌の耐性が見られないという点で抗生物質に比べさらなる利点があるが、強力な酸化剤である過酸化ベンゾイルは、皮膚の乾燥、発赤をひき起こす可能性があり、衣服を漂白し得る。したがって、使用頻度を減少させる方法または強力な酸化剤の濃度の低減が、現行の治療法に比べ顕著な利点であると思われる。
【0010】
局所的レチノイドであるトレチノイン(商標名Retin−A)、アダパレン(商標名Differin)、およびタザロテン(商標名Tazorac)などのレチノイドは、ビタミンAに関係し、濾胞内層内の細胞周期を調節し得る。局所的レチノイドは、皮膚に重大な刺激をひき起こす可能性がある。ビタミンA誘導体であるイソトレノインといったような経口用レチノイド(商標名AccutaneおよびSotret)は、皮脂腺からの油脂分泌を低減させると考えられているが、不利な副作用があるとも考えられている。
【0011】
アンドロゲン性脱毛症は、男性における脱毛の最も一般的な形態である。この症状は、同様に男性型脱毛症としても一般的に知られている。毛髪は、両側のこめかみの上から始まって、明確なパターンで失われる。経時的に、生え際は後退して特徴的な「M字形」形状を形成する。毛髪は頭頂部でも同様に薄くなり、部分的なまたは完全な禿頭症まで進行することが多い。女性における脱毛パターンは、男性型脱毛症と異なっている。女性では、毛髪は頭全体にわたり薄くなり、生え際は後退しない。女性におけるアンドロゲン性脱毛症が完全な禿頭症を導くことは稀である。ミノキシジルが、アンドロゲン性脱毛症の唯一のFDA認可治療であるが、これは、アンドロゲンの機能を標的としておらず有効性は良く知られていない。
【0012】
血清アンドロゲンレベルが高いことが、一部の女性における座瘡、アンドロゲン性脱毛症、および脱毛症の存在と相互に関連付けられている。アンドロゲンは、皮脂の排出に対するその効果について知られており、最終的な皮脂腺細胞の分化は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体リガンドにより補助される。ホルモン治療が、座瘡およびアンドロゲン性脱毛症に対する潜在的効果を有するものとして識別されている。抗アンドロゲン特性を有する化合物には、プロゲスチンと組み合わされたエストロゲン、例えば酢酸シプロテロン、酢酸クロルマジノン、デノゲストレル、ドロスピレノン、レボノゲストレル、酢酸ノルエチンドロン、ノルゲスチエートを伴う、エチニルエストラジオールが含まれる。抗アンドロゲン物質として用いられるその他の化合物としては、アンドロゲン受容体を直接遮断する(例えばフルタミド)か、またはさまざまなレベルでアンドロゲン活性を阻害するもの、例えばコルチコステロイド、スピロノラクトン、シメチジン、およびケトコナゾールが含まれる。しかしながら、アンドロゲンは数多くの生物学的プロセスに関与している。したがって、対応する受容体に対するアンドロゲンの結合を遮断または阻害すると、結果として、周囲の環境内で利用可能なアンドロゲンのレベルが増大して、それがその他のアンドロゲン関連性の生物学的プロセスに影響を及ぼし、望ましくない副作用を導く可能性がある。
【0013】
アンドロゲン受容体の分解を誘発する新たな抗アンドロゲン化合物群が提案されている。これらの化合物は、アンドロゲン受容体およびリガンド(アンドロゲン)の結合を遮断する従来の抗アンドロゲン物質とは異なる。広く用いられている抗アンドロゲン療法とは異なり、これらの新たな化合物は、過剰なリガンド(アンドロゲン)の蓄積がアンドロゲン受容体に作用するのを妨げるものであり、したがって不利な効果が少ないものと予測されている。さまざまな化合物が提案されているが、この技術はまだ臨床的に利用可能ではなく、長期的な効果はなおも未知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
皮膚疾患の治療の大部分は単一の活性化合物または医薬品を利用しているものの、経口抗生物質と組み合わされた局所的レチノイドを含む治療法の組合せが、軽度から中度の炎症性座瘡において調査されている。これらの組み合わせは、経口用抗生物質の急速な用量減少およびより迅速な中止を導き、有効性を増大させ、抗生物質に対する細菌の耐性の発生を低減させると考えられている。治療法のいくつかの組み合わせが提案されているが、現行の治療法は、皮膚疾患に関連する症候を低減させようとするものであり、疾患の原因を選択的に標的化していない。したがって、皮膚疾患を導く経路を選択的に標的化し、一方で関連する症候も治療する方法および組成物を開発する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、皮膚疾患および脱毛症の現行の治療における欠点に対処し、関係する利点を提供するものである。現在、アンドロゲン活性を遮断しようとするアンドロゲン関連の局所的治療法は全く存在せず、アンドロゲン性脱毛症の経口治療であるフィナステリドのみが、テストステロンからDHTへの転換を遮断するために用いられている。根本的なアンドロゲン受容体の存在または利用可能性を調節する方法は存在せず、かくして疾患の原因は標的化されない。本発明は、アンドロゲン受容体自体の存在を少なくとも部分的に調節する組成物および方法を提供することによりこの欠点に対処し、かくしてより効果的な治療を提供する。一部の実施形態においては、少なくとも一つの化合物が本明細書中で記載されているようなARDエンハンサーである、組み合わされた調節アプローチが提供される。
【0016】
本発明の方法および組成物は、開示された化合物またはその誘導体のうちの一つ以上を投与することによって、さまざまな皮膚疾患および毛髪疾患を治療または予防する。本明細書中に含まれるARDエンハンサーには、図1および2に示されているものが含まれるがこれらに限定されるわけではない。ARDエンハンサーの中には、ASC−J9、ASC−J15、ASC−Q9、ASC−Q44、ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−Q98、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、ASC−Q103、ASC−Q110、またはASC−Q111、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、ASC−JM4、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19が含まれる。
【0017】
本発明の一態様においては、皮膚疾患の予防または治療のための組成物が提供される。この態様においては、第一の化合物はアンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーである。ARDエンハンサーは、受容体−リガンド(アンドロゲン)結合に干渉する従来の抗アンドロゲン物質とは異なるアンドロゲン受容体の分解を調節する化合物である。一実施形態において、ARDエンハンサーは、アンドロゲン受容体の分解を誘発する。別の実施形態において、ARDエンハンサーは、ARDエンハンサーの不存在下と比較してアンドロゲン受容体の分解速度を増大させる。さらに別の実施形態では、ARDエンハンサーは、突然変異アンドロゲン受容体の凝集を防止する。さらに別の実施形態では、ARDエンハンサーは、アンドロゲンおよびアンドロゲン受容体(転写因子)介在性の遺伝子活性化を防止する。第二の化合物は、殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、ビタミンA、ビタミンA誘導体またはレチノイド、および炎症性化合物を含むさまざまな化合物のうちの少なくとも一つから選択される。かかる化合物の組み合わせは、現行の治療に比べて有害な効果を削減しながら、皮膚疾患のより効果的な治療を提供する。限定的はしないが、発明者らは、ARDエンハンサーが皮脂腺からの油脂の分泌を低減させ、皮脂腺細胞の増殖を低減させるか、または皮脂腺細胞の分化を阻害するかもしくは低減させると考えている。発明者らは、第二の化合物が細菌コロニーを標的化し得るか、またはさまざまな皮膚疾患を治療する場合に必要に応じて追加の抗炎症性補助を提供すると考えている。したがって本発明は、皮膚疾患の症候の治療および経路の調節を可能にし、それにより皮膚疾患の発生を防止または制限する。
【0018】
本発明の別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、殺菌剤、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。この医薬品は、所望の投与経路に応じて局所的に塗布、注射などされ得る。好ましい実施形態においては、殺菌剤は過酸化ベンゾイルである。
【0019】
本発明のさらなる態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、抗生物質、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0020】
本発明のさらに別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、抗微生物ペプチド、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0021】
本発明のさらに別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、ビタミンA、ビタミンA誘導体またはレチノイド、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0022】
本発明のさらに別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー、抗炎症性化合物、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0023】
本発明のさらに別の態様においては、治療上有効な量の本発明の医薬組成物を、それを必要とする個体に対し投与する過程を含む、皮膚疾患を治療または予防する方法が提供される。一実施形態において、医薬組成物はARDエンハンサーおよび殺菌剤を含む。別の実施形態において、医薬組成物はARDエンハンサーおよび抗生物質を含む。さらに別の実施形態において、医薬組成物はARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態において、医薬組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態において、医薬組成物は、ARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。さまざまな実施形態において、皮膚疾患の限定的意味のない例としては、座瘡、脱毛症、アトピー性皮膚炎、酒さ、狼瘡、腋窩臭症、創傷などがある。
【0024】
本発明のさらにその他の態様においては、化合物の組み合わせが、化粧品として、化粧品処方物中に提供される。本発明は、化粧品に許容される担体中に、ARDエンハンサーと、限定はしないが殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、ビタミンA、ビタミンA誘導体またはレチノイド、および抗炎症性化合物などの化合物とを含む化粧品組成物を含む。
【0025】
本発明のさらにその他の態様においては、ARDエンハンサーは、脱毛の治療または予防のための少なくとも一つの組成物または化合物と組み合わされる。ARDエンハンサーは、オリゴペプチド、ペプチド、抽出物、ヌクレオチドなどと組み合わされ得る。一部の実施形態において、本発明の組成物は、アンドロゲン性脱毛症を治療する。一部の実施形態においては、脱毛を予防する可能性を指摘されている化合物が、発毛を刺激すると考えられる化合物と組み合わされて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】例示的なARDエンハンサーであるASC−J15およびASC−J9の構造式を示す図である。
【図2】さまざまなARDエンハンサーの構造式の表を(媒体対照と比較したARの低減の百分率に対応する)相対的な効力についての対応する値と共に示す図である。ヒト前立腺癌細胞系LNCaPを、対応するARDエンハンサーの存在下で48時間インキュベートした後に、ウェスタンブロット分析により抗AR活性をアッセイした。活性についての値表示は、実施例2で提供される表1中で見ることができる。
【図3A】化合物ASC−Q49、ASC−Q103、ASC−JM12、ASC−JM14に曝露した後の、ヒト前立腺癌細胞(LNCaP)におけるアンドロゲン受容体(AR)タンパク質の発現の低減を実証するウェスタンブロット分析を示す図である。
【図3B】化合物ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−JM4、およびASC−JM5に曝露した後の、ヒト前立腺癌細胞(LNCaP)におけるアンドロゲン受容体(AR)タンパク質の発現の低減を実証するウェスタンブロット分析を示す図である。
【図4】ASC−J9で処理されたLNCaP細胞における細胞成長(増殖)およびアンドロゲン受容体の発現レベルのグラフ表示を示す図である。LNCaP細胞を播種し、2日間インキュベートした。ASC−J9を、DHTを伴っておよび伴わずに、5μMの最終濃度で培地に添加した。図4Aを参照すると、結果は、DHTが培養中のLNCaP細胞の成長を促進する一方で、ASC−J9が、DHTが存在するかしないかに関わらず細胞の成長を有意に阻害するということを実証している。図4Bは、基底(0日目)値に対する百分率として、ASC−J9試料について標準化されたアンドロゲン受容体シグナルを示している。細胞溶解物をASC−J9と共に培養した細胞から収集し(図4A)、ウェスタンブロット法によりARの発現を検出した。データは、ASC−J−9によって誘発されるLNCaP細胞におけるARの発現の阻害が、細胞成長の阻害と相関するということを示した。
【図5】DHTの存在下または不存在下でASC−J9と共に48時間培養したLNCaP細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す図である。データは、ASC−J9が、DHTが存在するかしないかに関わらずAR、PRタンパク質の発現を低減させるが、ER、PPAR、RXR、HSP、およびアクチンなどのその他のタンパク質の発現には影響を及ぼさないということを実証した。
【図6】アンドロゲン受容体を分解するASC−J9の能力の特異性を実証する、T47D(ヒト乳癌)細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す図である。データは、ASC−J9がアンドロゲン受容体(AR)の発現を選択的に低減させることを実証した。ペルオキソーム増殖因子活性化受容体ガンマおよびベータ(PPARγ、PPARβ)、レチノイドX受容体アルファ(RXRα)、エストロゲン受容体アルファおよびベータ(ERαおよびErβ)、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、ならびにアクチンなどの、その他の受容体タンパク質の発現は影響を受けなかった。
【図7A】タンパク質合成阻害物質であるシクロヘキサミドおよび化合物ASC−J9に曝露した際のLNCaP細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す図である。タンパク質合成阻害物質の存在下での経時的なアンドロゲン受容体の低減は、ASC−J9がARタンパク質の分解を増強するということを示す。
【図7B】ASC−J9が、ARタンパク質の発現を低減させることのできる唯一の抗アンドロゲン物質であり、CPA(酢酸シプロテロン)、HF(ヒドロキシフルタミド)、またはフィナステリドなどの従来の抗アンドロゲン物質ではないことを実証するウェスタンブロットを示す図である。
【図8A】プラスミドGFPAR(これは緑色蛍光タンパク質遺伝子および野生型アンドロゲン受容体遺伝子を含有していた)でトランスフェクトしたサル腎臓COS−1細胞の蛍光顕微鏡写真を示す図である。トランスフェクトした細胞を、媒体のみ(対照)または試験化合物ASC−J9で処理した。蛍光イメージング条件下で、緑色蛍光タンパク質(GFPAR)について顕微鏡写真を撮影した。対照細胞は、核内に高密度量の蛍光(すなわち野生型AR)を含み、細胞質内に比較的弱い蛍光を含んでいた。ASC−J9で処理した細胞は、核および細胞質の両方において弱い蛍光が検出され、このことは、ASC−J9がARの発現を低減させる(または低下させる)ことを示した。
【図8B】実施例5中で詳述されているように(緑色蛍光タンパク質および突然変異アンドロゲン受容体のポリQ49遺伝子を含んでいた)プラスミドGFPARQ49でトランスフェクトしたサル腎臓COS−1細胞の蛍光顕微鏡写真を示す図である。トランスフェクトした細胞を、媒体のみ(対照)または試験化合物ASC−J9で処理した。蛍光イメージング条件で、緑色蛍光タンパク質(GFPARQ49)について顕微鏡写真を撮影した。対照細胞は、細胞質内に大量の蛍光封入体または凝集体(すなわち凝集した突然変異polyQ49)を含んでいた。ASC−JPで処理した細胞の蛍光封入体の含有量は実質的にはさらに少なく、このことは、突然変異polyQ49アンドロゲン受容体の発現がASC−J9での処理により阻害されたかまたは低下したということを示唆していた。
【図9】実施例6で記載されるように処理したファッジーラットの代表的な写真を示す図である。ファジーラットを、媒体のみ(左側の動物)またはASC−J9(25マイクロモル濃度、右側の動物)を含有する局所用クリームで、示した時間処理した。写真は、皮脂腺のバンドおよび皮脂分泌(肌色)が、ASC−J9で処理したファッジーラット(右側の動物)において4〜5週間以内で低減したことを示す。
【図10A−E】ファッジーラットの皮膚内の皮脂腺の代表的な写真(図10A〜C)、ならびに腺管および腺葉のサイズのグラフ表示(図10D、10E)を示す図である。皮膚組織の試料(分割した皮膚)を調製し、顕微鏡検査によって検査した。図10A〜Cは、媒体対照(8A)または化合物ASC−J9(8B)を用いて処理した際の、および去勢ラット(8C)の、(分割した皮膚試料の)皮脂腺の腺管および腺葉を示す写真である。図10Dでは、良好に保存された腺小葉の縁部をトレースすることで腺葉のサイズを測定し、その後、Image Jソフトウェアで定量化し、トレースした領域の内部に含まれた画素数として表した。得られたデータは、媒体のみでの局所的治療(対照クリーム)では、腺葉サイズの顕著な変化が発生しないことを示した。さまざまな濃度の試験化合物ASC−J9を用いた雄ラットの局所的処理は、脂腺葉のサイズの顕著な低減をもたらしたが、去勢により引き起こされるほどではなく、それでも従来の抗アンドロゲン物質であるフルタミドよりは優れている。図10Eは、皮膚に塗布したASC−J9が、去勢効果に匹敵し、かつフルタミドよりも優れた形で、雄のファッジーラットにおける皮脂腺の腺管サイズを顕著に低減させたことを示す代表的なデータを示している。
【図11A】実施例7に記載されるように、脱毛症(脱毛または禿頭症)の動物モデルの研究から得られた結果を示す図である。6週齢の雄C57BL/6Jマウスの毛を電気バリカンで剃り、その後、脱毛クリームで処理した。最も左の2頭の動物(「媒体#1」および「媒体#2」の印あり)で代表される一群のマウスの毛を剃り、エタノールのみで処理した。最も右側の2頭の動物(「テストステロン#1」および「テストステロン#2」)で代表される第二群のマウスの毛を剃り、午前中はテストステロン/エタノール溶液で、そして午後は対照溶液で処理した。20日の処理期間の終了時点で動物の写真を撮影した。エタノール媒体単独(テストステロンを有さない)で処理したマウスは、20日間の局所的処理の後、剃毛した領域において急速な再発毛を示した。テストステロンで処理したマウスは、20日間の局所的処理の後、剃毛した領域においてほとんどまたは全く再発毛を示さなかった。
【図11B】実施例7において記載されるように、脱毛症(脱毛または禿頭症)の動物モデルの研究から得られたさらなる結果を示す図である。6週齢の雄C57BL/6Jマウスの毛を電気バリカンで剃り、その後脱毛クリームで処理した。一群のマウス(「テストステロン#1」および「テストステロン#2」と印づけされた動物により代表される)の毛を剃り、午前中はテストステロンで、午後は対照溶液で、20日間局所的に処理した。第二群のマウス(「ASC−J9/テストステロン#1」および「ASC−J9/テストステロン#2」と印づけされた動物により代表される)の毛を剃り、午前中はテストステロンで、そして午後はASC−J9で、20日間局所的に処理した。午前中にテストステロンを局所的に塗布し午後は対照溶液のみを塗布したマウスは、20日間の処理の後、剃毛した領域においてほとんどまたは全く再発毛を示さなかった。午前中にテストステロンを局所的に塗布し午後はASC−J9を塗布したマウスは、8日目に発毛を示し、20日の局所的なASC−J9処理の後、剃毛した領域において完全な再発毛を示した。これらの結果は、ASC−J9の局所的塗布が、動物モデルにおけるテストステロン誘発型の発毛抑制を克服することができるということを実証している。
【図12】200万個のLNCaP細胞を接種したヌードマウスの写真を示す図である。マウスには、ASC−J9(体重1kgあたり50mg)または媒体対照のいずれかを、一週に3回、7週間にわたり腹腔内注射した。7週間後に、腫瘍を切除し、秤量した。ASC−J9で処理したヌードマウスは、媒体対照で処理したマウスから切除した腫瘍と比較して腫瘍サイズにおいて75%の低減を示し、このことは、ASC−J9化合物がインビボで腫瘍細胞の成長を阻害できるということを示した。図12は、ヌードマウスにおけるLNCaP成長の低減を実証する写真を示す図である。ASC−J9マウスに、体重1kgあたり100mgをIP(腹腔内)注射を介して一週に3回、7週間にわたり投与した。媒体対照動物と比較して、腫瘍の重量は75%減少し、血清PSAレベルは90%低下した。
【図13】Balb/cマウスを用いた、動物モデルにおける創傷の治癒を早めるASC−J9の能力を実証する図である。データは、動物の皮膚上の人工的創傷を治療した結果を示している。引退した種畜の雄Balb/cマウスの頸部に皮膚パンチを用いて皮膚の人工的創傷を作った。その後、媒体クリームまたはASC−J9(25μM)を含むクリームで動物の創傷領域を一日に2回処理した。図13中のデータは、ASC−J9で処理した動物は媒体で処理した動物と比較して、5日目により小さい創傷開口を有すること、そして10日目にはASC−J9で処理したマウスにおいて創傷が完全に治癒していたこと、一方、媒体で処理した動物においては、創傷の瘢痕化が目に見えて残っていたことを示している。このデータは、ARDエンハンサーであるASC−J9が創傷の治癒を早める能力を有することを示している。
【図14A】実施例10で記載されるように、座瘡を患う男性のボランティアの額に試験化合物ASC−J9(担体基剤中2.5マイクロモル濃度)を局所的塗布した結果生じる、皮膚の症状に対する代表的な可視的改善を実証する写真を示す図である。
【図14B】実施例10で記載されるように、ASC−J9(625μM)を用いた、座瘡を患う別の男性(図14Bに背中を示す)における、皮膚の症状に対する代表的な可視的改善を実証する写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、「(置換フェニル)プロペナール部分を有する化合物、その誘導体、生物活性、およびその使用」という発明の名称の米国特許出願第12/008124号明細書を参照により援用する。本明細書において記載されているARDエンハンサーの合成方法ひいては調製方法は、引用された出願において見ることができる。援用される出願においては、さらなる定義も見ることができる。
【0028】
A. 定義
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。全ての特許、出願、公開された出願、およびその他の刊行物は、その全体が参照により援用される。本明細書における用語について複数の定義が存在する場合、別段の記載のない限り、本節における定義が他に優先するものとする。
【0029】
本明細書で使用する「アンドロゲン受容体」という用語または「AR」は、アンドロゲン、テストステロン、およびDHTを特異的に結合する、細胞内タンパク質受容体を意味する。ARは、アンドロゲン受容体の全ての哺乳動物アイソフォーム、スプライシング変異体、突然変異体、および多型を含む。
【0030】
本明細書で用いられる「化粧品に許容される」という用語は、動物、より詳細にはヒトにおいて使用するための化粧品として連邦政府または州政府の規制当局によって認可されているかまたは認可可能であるということを意味する。本明細書において使用される「化粧品に許容される担体」という用語は、化合物と共に組み込まれるかまたは投与される、限定はしないがリポソームなどの、認可された、または認可可能な希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を意味する。
【0031】
本明細書で使用される「アンドロゲン受容体の分解を増強する」という用語は、プラセボまたは未処理の場合と比較してアンドロゲン受容体の数量を低減させること、またはアンドロゲン受容体の分解(低減)速度を増大させることを意味する。
【0032】
本明細書で使用される「長時間放出」という用語は、化合物または組成物の遅延放出、一定期間にわたり減速された放出、連続放出、不連続放出、または持続放出をもたらす投与形態を意味する。
【0033】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、共に連結された一連のアミノ酸を意味する。「オリゴペプチド」は、長さが短いペプチドを意味する。
【0034】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、動物、より詳細にはヒトにおいて使用するために連邦政府または州政府の規制当局によって認可されているかまたは認可可能であるということを意味する。「薬学的に許容される担体」という用語は、化合物と共に組み込まれるかまたは投与される、限定はしないがリポソームなどの、認可された、または認可可能な希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を意味する。
【0035】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、インビボで投与された際に、一つ以上の過程もしくはプロセスによって代謝されるか、またはその他の形で化合物の生物学的、薬学的、もしくは治療的に活性な形態へと転換される化合物を意味する。プロドラッグを生産するためには、薬学的に活性な化合物を、活性化合物が代謝プロセスによって再生されるような形で修飾する。プロドラッグは、薬物の代謝安定性および輸送特性を改変するように、または副作用もしくは毒性をマスキングするように、または薬物の風味を改善するように、または薬物のその他の特徴もしくは特性を改変するように設計されてよい。
【0036】
本明細書において使用される「治療上有効な量」という用語は、疾病または疾患を治療するために患者に投与した場合にその疾病または疾患に対するかかる治療を作用させるのに充分である化合物または組成物の量を意味する。「治療上有効な量」は、化合物または組成物、疾病または疾患およびその重症度、ならびに治療対象の患者の年齢および体重に応じて変動するものである。
【0037】
B. 皮膚疾患の治療のための組成物
発明者は、本明細書において提供される化合物の組み合わせが、皮膚疾患を治療するための現行の治療法と比較した場合に増大した治療上の有用性を有するものであると考えている。したがって、本発明の一態様においては、皮膚疾患の予防または治療のための組成物が提供される。本発明の組成物は、医療業界または製薬業界の当業者に対する指針として以下で提供される多数の実施形態で提供されてよい。したがって、本発明の実施形態は、皮膚疾患、所望の投与計画または治療計画に応じて望ましいものであり得るさまざまな非限定的な製剤または有用な組み合わせを実証するものである。本発明の組成物は、少なくとも二つの化合物を含む。一つの化合物は、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーを含む。第二の化合物は、皮膚疾患の治療または予防に対する有用性を有することが知られているかまたはその有用性を有する可能性を指摘されているさまざまな化合物から選択可能である。さまざまな実施形態において、第二の化合物は、殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、抗炎症性化合物、皮膚疾患に関連する一つ以上の症候を低減させることのできる化合物、またはそれらの組合せを含み得る。したがって本発明は、本明細書において提供されるかまたは示唆される一つ、二つ、三つ、またはそれ以上の化合物と組み合わせた形で提供されるARDエンハンサーを含み得る。
【0038】
アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサー
アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーは、アンドロゲン受容体の分解を調節するかまたは増大させる化合物である。数多くの皮膚疾患がアンドロゲン関連遺伝子の活性化経路により引き起こされるかまたは影響されると考えられている。現行の抗アンドロゲン療法は、受容体−リガンド(アンドロゲン)結合を標的とするかまたはこれに干渉するが、これは、内因性アンドロゲンレベルが低い場合にのみ有効に作用し、時として過剰なアンドロゲンの蓄積を生じさせるか、またはアンドロゲン調節性の機能を完全に遮断して、その結果、さらにその他のアンドロゲン関連機能に影響を及ぼす可能性がある。したがって、過剰なリガンドの蓄積を生じさせるこれまでの治療は、治療上の望ましくない副作用をもたらす可能性がある。これとは対照的に、本発明のARDエンハンサーは、従来の治療法と比較して内因性リガンド(アンドロゲン)の蓄積を誘発しない、有効な代替案を提供する。さらに、その機能が内因性アンドロゲンによる影響を受けないARDエンハンサーは、アンドロゲン受容体の発現を低減させ得、これにより、リガンド(アンドロゲン)の活性が下方調節され得る。本明細書に参照により援用されている「(置換フェニル)プロペナール部分を有する化合物、その誘導体、生物活性、およびその使用」という発明の名称の米国特許出願第12/008124号明細書は、ARD増強活性を有すると考えられている化合物の一覧を開示しているが、この活性はさまざまである、好ましい実施形態において、ARDエンハンサーは、ASC−J9、ASC−J15、ASC−Q9、ASC−Q44、ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−Q98、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、ASC−Q103、ASC−Q110またはASC−Q111、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、ASC−JM4、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19からなる群から選択される。図2は、好ましいARDエンハンサーの構造式を各々の相対的な効力を実証するデータと共に提供するものである。この効力は、対応する化合物の存在下でLNCaP(ヒト前立腺癌細胞系)を48時間インキュベートした後、ウェスタンブロットによって決定された。低減の百分率は、媒体対照との比較により決定された。
【0039】
皮膚疾患に関しては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーは、毛包と関連する皮脂腺による油脂(皮脂)の分泌を低減させると考えられており、これは、細菌(P.Acne)の増殖を制限するかまたは減少させる。油性物質である皮脂は、アンドロゲン受容体の刺激に応答して皮脂腺によって分泌される。皮脂腺の刺激が皮脂腺細胞の増殖または皮脂の生産の増加を引き起こすか否かに関わらず、リガンド結合型アンドロゲン受容体は、皮脂生産の増加の原因であると考えられている。したがって、アンドロゲン受容体の分解の増強、すなわちリガンド(アンドロゲン)による活性化の回避により、皮脂腺からの皮脂の分泌が減少するか、皮脂腺細胞の増殖が低減するか、または皮脂腺細胞の分化が阻害されるかもしくは低減し、それにより皮脂の存在が低減し、細菌または細菌感染の存在が低減する。
【0040】
ARDエンハンサーは、受容体−リガンドの相互作用において作用する従来の抗アンドロゲン物質とは異なる形で作用することから、ARDエンハンサーは、AR機能に関連する別のアンドロゲンまたはリガンドに実質的に干渉すること無く、皮脂腺の調節を可能にし得る。化合物(ARDエンハンサー)の一つのサブセットが、プロテオソーム依存性(またはユビキチン介在性)のタンパク質分解経路を介して作用して、細胞内アンドロゲン受容体の分解を誘発すると考えられている。ASC−J9などの化合物は、アンドロゲン受容体の分解を誘発し、座瘡の存在に影響を及ぼすことが示されている。図2で示されている化合物も同様に、アンドロゲン受容体の発現を減少させることが示されている。
【0041】
本発明のARDエンハンサーは、皮脂腺に影響を及ぼすものに限定されない。本発明のARDエンハンサーはさまざまな細胞型に作用するかまたは影響を及ぼし、その結果、皮膚疾患に関連する一つ以上の症候が低減する。したがって、経路は単なる例として提供されており、本発明に関して非限定的である。
【0042】
殺菌剤
本発明の別の実施形態において、ARDエンハンサーは皮膚疾患の予防または治療のための殺菌剤と組み合わせて提供される。組み合わせて使用される場合、ARDエンハンサーは皮脂腺細胞または皮脂腺に影響を及ぼすことができ、一方、殺菌剤は、P.acnesまたはその他の細菌株の集団に影響を及ぼす。限定はしないが、局所的な細菌コロニーが存在する確率が高いために、座瘡、酒さなどの皮膚疾患、および創傷治癒にとって、この実施形態は特に有用である。しかしながら、この実施形態は、細菌集団の低減が望まれるあらゆる皮膚疾患など、広い有用性を有するものである。
【0043】
殺菌特性を有する数多くの化合物が当該技術分野において公知であり、本発明で使用されてよい。化合物は、クラスに従って、または所望の特性もしくは作用様式に従って同定可能である。例としては、ソルビン酸、安息香酸、およびパラヒドロキシ安息香酸が含まれる。本発明の特に望ましい一つの殺菌剤は、過酸化ベンゾイルである。過酸化ベンゾイルは、過酸化基により結合した二つのベニル基(CHOのHが除去されたベンズアルデヒド)を含む。過酸化ベンゾイルは、過酸化ナトリウムと塩化ベンゾイルとの組み合わせによって形成され得る(過酸化ベンゾイルおよび塩化ナトリウムを形成する)。過酸化ベンゾイルは、ゲルまたはクリームの形態で、典型的には約0.1%〜約20%、または約1%〜約10%の濃度で投与されてよいが、これらの範囲外の濃度も同様に、本発明によって包含される。アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーと組み合わせた形で使用する場合、過酸化ベンゾイルの用量を低減させてもよく、これにより、過酸化ベンゾイルに基づいた現行の治療法に付随することが多い皮膚の乾燥または刺激の頻度が低減する。
【0044】
抗生物質
抗生物質は、殺菌性(細菌を殺す化合物)または静菌性(細菌が分裂するのを防ぐ化合物)のいずれかであるものとして分類される。抗生物質は、ウィルス、真菌、または寄生虫に対しては限定的な効果しか有さないか、または全く効果を有さない。抗生物質は宿主に対しては比較的無害であり、したがって、細菌感染を治療するために使用可能である。しかしながら、抗生物質を頻繁に使用すると、単独で使用した場合のその他の望ましくない特徴の中でも特に、細菌の耐性株が生じた。本発明において使用し得る抗生物質のクラスとしては、アミノグリコシド類(アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、およびトブラマイシンを含む)、カバセフェム類(ロラカルベフを含む)、カバペネム類(エルテペネム、イミペネム/シラスタチン、およびメロペネムを含む)、第一世代セファロスポリン類(セファドロキシル、セファゾリン、およびセファレキシンを含む)、第二世代セファロスポリン類(セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、およびセフロキシムを含む)、第三世代セファロスポリン類(セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、およびセフトリアキソンを含む)、第四世代セファロスポリン類(セフェピムを含む)、糖ペプチド類(テイコプラニンおよびバンコマイシンを含む)、マクロライド類(アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキスロマイシン、およびトロレアンドマイシンを含む)、モノバクタム(アズトレオナムを含む)、ペニシリン類(アモキシシリン、アンピシリン、アズロシラン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、およびチカルシリンを含む)、ポリペプチド類(バシトラシン、コリスチン、およびポリミキシンBを含む)、キノロン類(シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、およびトロバフロキサシンを含む)、スルホンアミド類(マフェニド、プロントジル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド、スルファサリジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、およびトリメトプリム−スルファメトキサゾールを含む)、テトラサイクリン類(デモクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミンサイクリン、およびオキシテトラサイクリンを含む)、およびクロラムフェニコール、クリンダマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン、リファンピン、ならびにスペクチノマイシンを含むその他のものが含まれる。現在、座瘡を治療するために用いられる最も一般的な抗生物質としては、エリスロマイシン、クリンダマイシン、コトリモキサゾール、テトラサイクリン、またはテトラサイクリン誘導体、例えばドキシサイクリンおよびミノサイクリンが含まれ、これらの各々を本発明において使用することができる。
【0045】
抗微生物剤およびペプチド
本発明の別の実施形態においては、ARDエンハンサーは、抗微生物ペプチド、または抗微生物ペプチドの産生または利用可能性を誘発するかまたは媒介することのできる化合物と組み合わせて使用される。抗微生物ペプチドは、典型的には、一般に12〜50個のアミノ酸長を有する短いタンパク質である(ただし、類似の特性を有するより大きなタンパク質が抗微生物ペプチドとして分類されることも多く、これらのタンパク質は、本発明の範囲内に含まれる)。これらのペプチドは多くの場合、アルギニン、リジン、または酸性環境内ではヒスチジンにより提供される二つ以上の正に荷電した残基、および大きな割合(一般的には50%超)の疎水性残基を含む。直接細菌を殺すことに加えて、これらは、宿主遺伝子の発現を改変する能力を含む、感染の排除に関与し得る数多くの免疫調節機能を有し、ケモカインとして作用しかつ/またはケモカイン産生を誘発し、リポ多糖類により誘発される炎症性サイトカインの産生を阻害し、創傷の治癒を促進し、かつ樹状細胞および適応的免疫反応の細胞の応答を調節する可能性があると指摘されている。抗微生物ペプチドは、細菌の膜に影響を及ぼすことから細胞内標的を有することに至るさまざまな機能を有すると考えられている。本発明において用いることができる抗微生物ペプチドの非限定的な例としては、高度に保存された領域(カテリンドメイン)および高度に可変的なカテリシジンペプチドドメインによって特徴づけされる、デフェンシン類およびカテリシジンファミリーのポリペプチドが含まれるが、これらに限定されるわけではない。皮膚におけるカテリシジンの抗微生物効果は、タンパク質分解によって媒介されると考えられ、これにはマスト細胞、角膜実質細胞、および好中球が関与し得る。カリクレイン介在性のタンパク質分解が提案されている(全体が本明細書に参照により援用されるFASEB.J、2006年10月、20(12):2068〜80頁)。ARDエンハンサーと組み合わせて使用される場合、カテリシジンファミリーはさまざまな皮膚疾患の治療として有用であり、特にアトピー性皮膚炎および酒さの治療において有用である。効力の増大のためにはビタミンDなどの補因子を提供することが望ましい場合がある。
【0046】
ビタミンA、ビタミンA誘導体、およびレチノイド
本発明の別の態様においては、ARDエンハンサーはビタミンAまたはビタミンA誘導体と組み合わせた形で提供される。ビタミンAは、目、気道、尿道、および腸管の健康な表面内膜を促進し、細菌およびウィルスに対する障壁としての皮膚および粘膜の機能を助ける。さらに、ビタミンAは、免疫系の調節を助け、こうして有害な細菌およびウィルスを破壊する白血球を作ることにより感染の予防または撃退を促進する。ビタミンAは同様に、リンパ球が感染とより効果的に闘うのを助け得る。
【0047】
本発明に包含されるビタミンA誘導体は、限定はしないが、アルキル化、エステル化などの修飾を含み、アルコール、エノール、ケト、カルボキシルなどのさまざまな官能基のうちの一つ以上の付加を含み得る。ビタミンA誘導体は、ビタミンAの抗細菌特性を改変し得る。
【0048】
レチノールは、ビタミンAの動物形態である。レチノールは、レチノイドと呼ばれる、より大きい化合物ファミリーに属する。したがって本発明の別の態様においては、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーは、皮膚疾患の治療に有用な組成物としてレチノイドとの組み合わせの形で使用されてよい。本発明の組成物は、ARDエンハンサーとの組み合わせの活性が増大するために少なくとも部分的にレチノイドの用量が低減され得るという点において、以前のレチノイド療法に対する改善を提供する。かくして、用量の低減は、レチノイド関連化合物に一般的に関連する皮膚の刺激を低減させるものである。
【0049】
抗炎症性化合物
本発明の別の態様においては、ARDエンハンサーは抗炎症性化合物と組み合わせた形で使用される。炎症性化合物は、ステロイド系の抗炎症性化合物と非ステロイド系の抗炎症性化合物に分けられ、その各々が本発明の範囲内に包含される。グルココルチコイドなどの数多くのステロイドが、コルチゾール受容体に結合することによって炎症を低減させる。これらは多くの場合、コルチコステロイド化合物と呼ばれる。
【0050】
非ステロイド系の抗炎症性化合物には、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素の作用に拮抗するかまたはそれを阻害するものが含まれる。COX酵素は、プロスタグランジンを合成し、これが炎症を導く。本発明の組成物は、プロスタグランジンの合成を低減させるかまたは防止し、かくして炎症に関連する苦痛を低減させるかまたは除去する、非ステロイド系の抗炎症性化合物を含んでいてよい。
【0051】
数多くの薬草または薬草から単離された化合物が抗炎症特性を有し、ARDと組み合わせて使用可能である。抗炎症特性を有すると考えられている薬草の例としては、ヒソップ、ショウガ、ヘレナリンを含有するアルニカ・モンタナ、セスキテルペン・ラクトン、およびサリチル酸を含有する柳の樹皮がある。同様に、一部の食物は、抗炎症特性を含有するものと考えられている。したがって抗炎症特性を有する可能性を指摘されている食物から単離された化合物も同様に、本発明の範囲内に包含されている。例えば、カプサイシンおよびオメガ−3−脂肪酸は、食物中に見られる抗炎症性化合物であり、本発明により包含される。
【0052】
C. 脱毛の治療または予防のための組成物
発明者らは、本明細書において提供される化合物の組み合わせが、脱毛の治療のための現行の治療法と比較した場合に増大した治療上の有用性を有するものであると考えている。したがって本発明の一態様においては、脱毛の予防または治療のための組成物が提供される。これらの組成物および治療方法は、アンドロゲン性脱毛症の治療または予防において特に有用であると考えられる。しかしながら、アンドロゲンの蓄積または集積に関連するかまたはアンドロゲン受容体に関連するあらゆる脱毛症状が、少なくとも部分的に本発明によって治療または予防され得る。本発明の組成物は、医療業界または製薬業界の当業者に対する指針として以下で提供されている多数の実施形態で提供されてよい。したがって本発明の実施形態は、病状、所望の投与計画または治療計画に応じて望ましいものであり得るさまざまな非限定的な製剤または有用な組み合わせを実証するものである。本発明の組成物は、少なくとも二つの化合物を含む。一つの化合物は、アンドロゲン受容体分解(ARD)エンハンサーを含む。第二の化合物は、脱毛、禿頭症、またはアンドロゲン性脱毛症の治療または予防に対する有用性を有することが知られているかまたはそれを有する可能性を指摘されているさまざまな化合物から選択可能である。一部の実施形態においては、第二の化合物は、発毛を増大させるかまたは促進する可能性を指摘されている。かくして、本発明は、本明細書において提供されているかまたは示唆されている一つ、二つ、またはそれ以上の化合物または組成物と組み合わせて提供されるARDエンハンサーを含み得る。本発明において使用され得るARDエンハンサーの例としては、本明細書に参照により援用されている「(置換フェニル)プロペナール部分を有する化合物、その誘導体、生物活性、およびその使用」という発明の名称の米国特許出願第12/008124号明細書において提供されているものが含まれる。好ましい実施形態においては、ARDエンハンサーは、ASC−J9、ASC−J15、ASC−Q9、ASC−Q44、ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−Q98、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、ASC−Q103、ASC−Q110またはASC−Q111、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、ASC−JM4、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19からなる群から選択される。
【0053】
本発明の範囲内において提供される化合物または組成物の組み合わせは、医薬品/化粧品の技術分野で知られているような、または本発明で記載されるような局所投与、経口投与などが可能である。一部の実施形態においては、少なくとも一つの化合物が経口投与され第二の化合物が局所投与される化合物の組み合わせが提供される。
【0054】
本発明の好ましい態様においては、発毛を刺激する可能性を指摘されている化合物または組成物と組み合わされた形でARDエンハンサーが提供される。したがって、組み合わせの形で提供される場合、本発明は脱毛を予防すると同時に発毛を刺激し得る。
【0055】
非限定的ではあるが、本発明のARDエンハンサーは、アンドロゲン受容体またはアンドロゲンと相互作用する化合物と組み合わされてよい。一部の実施形態においては、ARDエンハンサーは、アンドロゲン受容体に対するアンドロゲンの結合を遮断する化合物または組成物と組み合わされる。
【0056】
一部の実施形態においては、ARDエンハンサーはフィナステリドと組み合せた形で提供される。別の実施形態においては、ARDエンハンサーはフルタミドまたはビカルタミドと組み合せた形で提供される。別の実施形態においては、ARDエンハンサーはミノキシジルと組み合せた形で提供される。したがって、ARDエンハンサーは、現在利用可能なまたは提案されている脱毛の治療と組み合わされてよい。
【0057】
発毛を促進するペプチドおよびオリゴペプチド
本明細書で開示されているARDエンハンサーは、発毛または脱毛予防の潜在的な活性を実証するかまたは実証すると考えられているペプチドまたはオリゴペプチドと組み合わされてよい。ペプチドは、アンドロゲン受容体などの受容体、STATなどの補因子と相互作用するドメインをコードし得る。
【0058】
非限定的な例として、ARDエンハンサーは、限定はしないが例えば以下のようなペプチドと組み合わされてよい。本明細書に参照により援用されている「発毛を促進するためのオリゴペプチド」という発明の名称の米国特許第7241731号明細書は、有益な活性を有する可能性を指摘されているさまざまなオリゴペプチドを提供している。グルタミン含有ペプチドなどのペプチドも同様に、発毛の治療または予防において有望である。例えば、本明細書に参照により援用されている「脱毛症の治療方法」という発明の名称の米国特許第6376557号明細書は、酪酸オクチルと組み合わせて用いられたグルタミン含有ペプチドの使用を開示している。
【0059】
上述のペプチドおよびオリゴペプチドは、限定的なものとして意図されておらず、むしろ、ARDエンハンサーとの組み合わせの形で使用された場合に脱毛の治療または予防に有用であると考えられる本発明の組成物を例示するものとして意図されている。
【0060】
ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド
本発明のARDエンハンサーは、発毛を増大させるかもしくは促進するかまたは脱毛を減少させると考えられているヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドと組み合わせた形で使用され得る。かかるヌクレオチドは、アンドロゲン受容体、アンドロゲン受容体の補因子などを調節するものであってよい。ヌクレオチドは、意図された遺伝子の上流または下流で作用し、プロモーター活性などを増強または阻害し得る。一部の実施形態においては、かかるオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0061】
抗微生物剤およびペプチド
脱毛を治療または予防するための組成物はまた、抗微生物剤または抗微生物ペプチドと組み合わせた形でARDエンハンサーを含んでいてよい。皮膚疾患に関して上述した化合物およびペプチドも本明細書に包含される。
【0062】
植物抽出物
本発明の一部の実施形態においては、ARDエンハンサーは、抗アンドロゲン化合物、抗アンドロゲン活性を含む可能性を指摘されているか、または脱毛の予防もしくは治療を助ける一つ以上の植物抽出物(またはそれから得られる組成物)と組み合わされる。かかる抽出物には、植物の葉、花、果実または液果、幹、種子などから得られるものが含まれる。抽出物は、粗抽出物であっても、または純度50%超、60%超、75%超、80%超、90%超、もしくは95%超といったように精製されていてもよい。したがって本明細書において提供される抽出物、その活性化合物、およびそれと共に活性であると考えられているあらゆる化合物を、本発明のARDエンハンサーと組み合わせた形で使用してもよい。
【0063】
一部の実施形態においては、抽出物は、ジョージア州およびフロリダ州を含む米国南東部に見られることの多いアメリカ産の木であるソー・パルメット植物から得られる。ソー・パルメット植物の抽出物、ならびにアセチルカルニチンおよび補酵素Qとのその組合せは、本明細書に参照により援用される「アンドロゲン性脱毛症の局所的治療のための組成物および方法」という発明の名称の米国特許第6333057号明細書において開示されており、ARDエンハンサーと組み合わせた形で使用し得る。ソー・パルメット植物の抽出物は、同様に、本明細書に参照により援用される「男性型脱毛の治療のための天然調製物」という発明の名称の米国特許第5972345号明細書において、アフリカピジウム抽出物およびイラクサ抽出物と組み合わせた形で提供されている。
【0064】
本発明は同様に、以下の抽出物またはそれから単離もしくは精製された化合物と組み合わせた形のARDエンハンサーも含んでいる。本明細書に参照により援用される「頭皮疾患の治療のための経口組成物」という発明の名称の米国特許第7201931号明細書において提供される抽出物は、Seranoa repensおよびVitis viniferaの使用について開示している。Seranoa repensからの抽出物が、前立腺癌細胞に対して「インビトロ」で試験され、放射性標識した3H−メチルトリエノレンでの置換により、アンドロゲン受容体に対する強い親和力が明らかにされた。全体が本明細書に参照により援用されている「脱毛の治療のための局所用調製物」という発明の名称の米国特許第6358541号明細書は、刺激の低い溶液中で有用であるものとして、植物ステロールを含むソー・パルメットの液果のアルコール抽出物の使用について開示している。
【0065】
上述の抽出物は、限定的なものとしては意図されておらず、むしろARDエンハンサーと組み合わされた場合に脱毛の治療または予防にとって有用であると考えられる植物抽出物の異なる供給源を例示するものとして意図されている。
【0066】
D. 医薬組成物および化粧品組成物
本発明の化合物は、薬学的に許容される担体と組み合わされて、化粧品を形成するための薬学的におよび化粧品に許容される担体を形成し得る。医薬品および化粧品の生産技術は、当該技術分野において周知であり、典型的には、化合物またはその塩を適切な担体の存在下で混合することが含まれる。本発明の化合物は、単一の担体もしくは一種類の担体と共に混合されてよく、または、別々の担体と独立して混合されてもよい。本発明の化合物と共に使用するための適切な担体には、意図された投与形態に応じて選択され、従来の薬学的なまたは化粧品の慣習と一貫性を有する、希釈剤、賦形剤、またはその他の担体材料が含まれる。適切な担体のさらなる非限定的な例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、生理学的に適合性のある緩衝液、生理学的に適合性のある塩で緩衝された生理食塩水、油中水型エマルジョンおよび水中油型エマルジョン、アルコール、ジメチルスルフォキシド、デキストロース、マンニトール、ラクトース、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなど、およびその混合物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。全体が本明細書に参照により援用されている従来の薬学的な慣習(「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、第20版、Gennaro(編)ならびにGennaro、Lippincott、WilliamsおよびWilkins、2000年)と一貫性を有する通り、適切な担体には同様に、適切な薬学的に許容される酸化防止剤または還元剤、防腐剤、懸濁剤、可溶化剤、安定化剤、キレート剤、錯化剤、粘度調節剤、崩壊剤、結合剤、着香剤、着色剤、着臭剤、乳白剤、湿潤剤、pH緩衝剤、およびそれらの混合物も含まれる。本発明の組成物は、シャンプーに入れて提供してもよい。
【0067】
化合物は、治療上有効な用量で提供される。治療上有効な用量は、化合物の特定の組み合わせによって決定され得る。この用量は、化合物間、患者間で幾分か変動し、患者の症状および送達経路により左右されるものである。一般的な指針としては、約0.1〜約50mg/kgの投薬量の組み合わせ型の化合物または組成物が治療上の効力を有し得るが、さらに高いまたは低い投薬量を利用することも可能である。ARDエンハンサーを有する化合物について用量を決定する場合、当初処方された化合物用量から始め、その後、好ましくはこの用量を低下させる。
【0068】
本発明の化合物または組成物は、プロドラッグの形態、長時間放出製剤などの形で提供され得る。あるいは、組成物は、実質的な修飾をすることなく、作用に適した活性形態で提供されてもよい。同様に、本発明の化合物または組成物は、リポソーム送達媒体と組み合わせた形で提供されてよい。リポソームは、主として両親媒性の二重層で構成されたリオトロピック液晶であり、人体内で天然に生じる材料であるレシチンおよびコレステロールを主として含むという利点を有する。レシチンおよびコレステロールはまた、人体内に大量に存在し、したがって優れた生物許容性を提供する。したがって、リポソームは、毒性の低減を促進し、かつ目的の部位への薬物の送達を促進することができる。活発な標的化には通常、リポソームの表面へのリガンドの付着またはリポソームの改変が関与する。リガンドには、抗体または抗体断片、酵素、レクチン、糖などが含まれ得る。リガンドは、共有結合的または非共有結合的に付着し得るが、共有結合による付着の方が有用である。リポソームは、多重層リポソーム(MLV)、小型単層リポソーム(SUV、直径100nm未満)、および大型単層リポソーム(LUV、直径100nm超)という三種類に分類される。MLVは容易に調製され、最小限の実験装置しか必要としない。MLVおよびSUVは両方とも、LUVと比較して被包能力が低い。LUVは、水溶性薬物の高い被包性、脂質の損失、および再現可能な高速の薬物放出を含む、数多くの利点を有する。
【0069】
薬物送達の当業者によって知られているか、可能性を指摘されているか、または公開されている、薬物送達において使用されるその他の送達媒体も同様に考慮され、本発明の範囲内に包含されている。例えば、ナノ粒子は、約10ナノメートル(nm)から約1000nmまでサイズが変動する高分子物質を有する固体コロイド粒子である。化合物または組成物は、高分子材料内に、溶解、封入、吸着、付着、または被包される。ナノ粒子は、マトリクスを保持するシェル様の壁を有するミクロスフェア、流体溶液を被包するポリマー格子、ならびに化合物または組成物および標的化分子の表面付着のための固体粒子(生物分解性または非生物分解性)という非限定的な組成物を有するものとして記載されている。ナノ粒子は、標準的には注射される。
【0070】
化合物の同時投与
化合物の組み合わせは、単一の医薬品または化粧品内において提供されてよいが、その他の実施形態においては、本発明の化合物は二つの異なる組成物として提供され、一緒にまたは別々に投与される。投与経路は、二つ以上の化合物の局所的塗布といったように同じであってもよいし、または異なっていてもよい。例えば、一つの化合物を経口医薬品として提供し、第二の化合物を局所的医薬品または化粧品として提供してもよい。この実施例においては、治療には、同時に適用されるかまたは周期的間隔もしくは時間を置いて適用されてもよいしそうでなくてもよい、一方は局所的でもう一方は経口による、二つの医薬品の適用が含まれる。したがって、組成物は、所望の治療計画に応じて変動し得る。
【0071】
E. 皮膚疾患の治療方法
本発明の組成物は、さまざまな皮膚疾患に由来する望ましくない症候を治療するか、予防するか、または低減させるために使用されてよい。皮膚は体の最大の器官であり、外部から最も良く見えることは明白である。数多くの皮膚病は、特定の領域または範囲に局在化しているが、その一部は内科疾病の徴候である。さまざまな皮膚疾患が同定されてきており、限定はしないが、全体が本明細書に参照により援用されるTaber’s encyclopedic dictionary(第20版、2001年、FA Davis Company)などのさまざまな医学事典の中に見出すことができる。さらなる潜在的な治療的使用について、または化合物もしくは組成物の潜在的用量を評価する場合には、皮膚および付属器官の疾病および腫瘍の診断および治療を専門とする医師である皮膚科医に助言を求めることができる。
【0072】
皮膚の治療においては局所塗布が頻繁に用いられる。しかしながら、経口投薬治療も一般的である。本発明の組成物は、所望の通りに、または薬学的にもしくは化粧品として適合可能なものとして、局所塗布、経口適用、注射、または任意のその他の適切な投与経路に適合させることができる。
【0073】
本発明の治療方法には、皮膚疾患を患う個体を提供する過程、およびこの患者に対して治療上有効な用量の本発明の一つ以上の組成物を投与する過程が含まれる。記載されているように、本発明の組成物には、開示される化合物のうちの少なくとも二つが含まれており、その化合物の一方はARDエンハンサーである。さらに、組成物は医薬品または化粧品の形をしていてよい。同様に、それを必要としている患者に対して、薬学的にまたは化粧品として許容される量の本発明の一つ以上の組成物を投与する過程によって、皮膚疾患を予防することもでき、ここでその組成物の一つはARDエンハンサーを含む。以下は、本発明の化合物および組成物を用いて治療または予防できる皮膚疾患の、簡潔でかつ非限定的な記載である。
【0074】
座瘡
本発明の化合物または組成物は、座瘡を治療または予防するために使用され得、座瘡により生じる病斑の治癒を加速することができる。座瘡は一部には、皮脂腺のアンドロゲン誘発性のAR活性化によって引き起こされる。本発明は、アンドロゲン受容体関連の活性化を防止するかまたは減少させることのできるARDエンハンサーを提供することによって、皮脂腺の活性化に影響を及ぼす。炎症および創傷治癒も同様に、リガンドに応答したアンドロゲン受容体と関連づけられるものと考えられており、したがって治療可能である。かくして、本発明の方法には、かかる治療または予防を必要としている個体に対して、化合物、医薬品製剤、または化粧品製剤を投与する過程が含まれていてよい。このような製剤の局所塗布、経口形態、および注射用形態は、特に興味深いものであり得るが、その他の投与経路も同様に本発明の範囲内に包含される。
【0075】
本発明のさまざまな態様において、それを必要としている個体または対象に対して治療上有効な量の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、座瘡の治療方法または予防方法が提供される。好ましくは、組成物は、分泌される油脂の量を低減させ、P.acnesの集団を低減させる。治療上有効な用量は、化合物間、患者間で幾分か変動し、患者の身体症状および送達経路に左右されるものである。一般的な指針としては、組成物の約0.1〜約50mg/kgの用量が治療上の効力を有し得るが、さらに高いまたは低い用量を利用することも可能である。座瘡の治療または予防において特に有用である確率の高い組成物、または化合物の組み合わせとしては、過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤と組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、少なくとも一つの抗生物質と組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、カテジシンなどの抗微生物ペプチドと組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、ビタミンA、ビタミンA誘導体、もしくはレチノイドと組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、抗炎症性化合物と組み合わせた形で提供されるARDエンハンサー、またはそれらの組合せが含まれる。
【0076】
一つの実施形態においては、医薬品は、ARDエンハンサー、および限定はしないが過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤を含む。この実施形態においては、医薬組成物は好ましくはクリームまたはジェルとして提供され、皮膚の一つまたは複数の患部に局所的に塗布される。塗布は単回または複数回であってよい。その他の実施形態においては、過酸化ベンゾイルは局所的に塗布され、ARDエンハンサーは経口で投与される。別の実施形態においては、医薬品はARDエンハンサーと抗生物質とを含む。この実施形態においては、医薬品は好ましくは、経口投与のために提供される。しかしながら、局所投与、注射、またはそれらの組み合わせが望ましい場合がある。患者の症状に応じて、単回用量または複数回用量であり得る。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体、またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。
【0077】
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、アレルギー病歴を有する患者に見られる病因不明の皮膚炎の慢性形態である。この疾病は通常、生後2ヵ月以降に発症し、これを患う個体は、小児期および成人期を通して悪化と寛解を経験し得る。多くの場合、家族にアレルギー病歴がある。皮膚の病斑は、皮膚の発赤、亀裂、および肥厚からなり、これはひっかくことで皮殻質となり得る。瘢痕化または二次感染が生じ得る。
【0078】
本発明は、それを必要としている患者に対し、治療上有効な量の本発明の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、アトピー性皮膚炎の治療方法または予防方法を提供する。一つの実施形態においては、医薬品はARDエンハンサー、および限定はしないが過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤を含む。別の実施形態においては、医薬品はARDエンハンサーと抗生物質とを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体、またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。
【0079】
酒さ
酒さは、通常、顔面中央、例えば患者の鼻、頬、額、目のまわり、またはあごに局在化する、慢性の発疹である。症状が進行するにつれて、皮膚の小脈管の奇形が出現し得、場合によっては鼻の皮脂腺が膨潤し、変形(鼻瘤)を生成し得る。現在の治療プロトコルとしては、メトロニゾール、クリンダマイシン、またはエリスロマイシンの局所的塗布、経口のテトラサイクリンおよびレチノイドがある。この疾病は慢性的であり、現在使用されている治療法では、症状の管理を試みることはできるものの、治療はできない。
【0080】
本発明は、それを必要としている患者に対し、治療上有効な量の本発明の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、酒さの治療方法または予防方法を提供する。一つの実施形態においては、医薬品は、ARDエンハンサー、および限定はしないが過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤を含む。別の実施形態においては、医薬品はARDエンハンサーと抗生物質とを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体、またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。
【0081】
狼瘡
狼瘡は、自己免疫疾患によって引き起こされる慢性的炎症の症状である。自己免疫疾患は、体の組織が自身の免疫系による攻撃を受けた場合に発生する病気である。免疫系は、例えば細菌およびその他の外来性侵入物などの感染性因子と闘うように設計された体内の複雑な系である。感染と闘うために免疫系が用いる機序の一つは、抗体の産生である。狼瘡患者は、外来性の感染性因子ではなくむしろ自身の体内の組織を標的化する異常な抗体を自ら血液中に産生する。抗体およびそれに随伴する炎症細胞には、体内の至る所の組織が関与し得ることから、狼瘡は、体のさまざまな領域に影響を及ぼす潜在性を有する。時として狼瘡は、皮膚、心臓、肺、腎臓、関節、および/または神経系の疾患を引き起こす可能性がある。皮膚のみが関与する場合、症状は円板状狼瘡と呼ばれる。内臓が関与する場合、症状は全身性エリトマトーデス(SLE)と呼ばれる。
【0082】
本発明は、それを必要としている患者に対し、治療上有効な量の本発明の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、円板状狼瘡およびSLEを含む狼瘡の治療方法または予防方法を提供する。一つの実施形態においては、医薬品は、ARDエンハンサー、および限定はしないが過酸化ベンゾイルなどの殺菌剤を含む。別の実施形態においては、医薬品はARDエンハンサーと抗生物質とを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサーおよび抗微生物ペプチドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物は、ARDエンハンサー、およびビタミンA、ビタミンA誘導体、またはレチノイドを含む。さらに別の実施形態においては、組成物はARDエンハンサーおよび抗炎症性化合物を含む。
【0083】
F. 発毛を刺激しかつ/または脱毛を予防する方法
本発明の治療方法には、脱毛を患う対象を提供する過程、および治療上有効な用量の本発明の一つ以上の組成物を対象に投与する過程が含まれる。本発明の一態様においては、脱毛は、アンドロゲン脱毛症に起因する。その他の態様においては、脱毛はアンドロゲン脱毛症と関連しないものと考えられる。一部の態様においては、脱毛はアンドロゲンまたはARの蓄積と関連づけられる。その他の態様では、本発明の組成物は、脱毛をひき起こすか、またはかかる効果を低減させるかもしくは排除する医療と共に提供されてよい。一部の実施形態においては、脱毛を予防する可能性を指摘されている化合物を、発毛を刺激するかまたは促進する可能性を指摘されている化合物と組み合わせた形で提供する。複数回用量が必要とされる場合があり、用量は経時的に変化し、例えば増大または減少してよい。かくして、ARDエンハンサーと第二の化合物との比率も治療中に変動し得、例えば経時的に増加または減少し得る。
【0084】
記載されているように、本発明の組成物は、開示された化合物の少なくとも二つを含み、その化合物の少なくとも一つはARDエンハンサーである。さらに、組成物は、医薬品、シャンプー、コンディショナー、クリーム、化粧品などの形をしていてよい。同様に、薬学的に許容される量の本発明の一つ以上の組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、脱毛を予防するかまたは低減させることができ、ここで組成物の一つはARDエンハンサーを含んでいる。
【0085】
同様に、本発明の方法は、発毛を刺激するかまたは発毛の増加をもたらすための方法または治療を含む。これらの方法には、それを必要としている対象に対して、治療上有効な量のARDエンハンサーを、発毛を刺激する可能性を指摘されている化合物などの第二の化合物と組み合わせて投与する過程が含まれる。
【0086】
アンドロゲン性脱毛症
アンドロゲン性脱毛症は、ホルモンに対する毛包または周囲組織の感受性に起因すると考えられている。この感受性は、遺伝的要素に起因するものであり、遺伝性であることが多い。男性のアンドロゲン性脱毛症は、冠状動脈性心臓病および前立腺肥大、前立腺癌、インスリン耐性疾患(例えば糖尿病および肥満症)、ならびに高血圧(高血圧症)を含む複数のその他の症状と関連づけられている。女性においては、脱毛は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のリスクの増加と関連づけられ得る。PCOSは、月経不順、座瘡、過剰体毛(多毛症)、および体重増加をもたらし得るホルモンの不均衡によって特徴づけされる。女性の脱毛はアンドロゲンの集積または増量と相関関係を有することが多い。
【0087】
本発明は、それを必要としている患者に対し、治療上有効な量の本発明の医薬組成物または化粧品組成物を投与する過程を含む、アンドロゲン性脱毛症またはアンドロゲンの蓄積と関連づけられるものなどの毛髪疾患を治療または予防する方法を提供する。組成物は、少なくとも一つの第二の化合物と組み合わされた形の、少なくとも一つのARDエンハンサーを含む。一つの実施形態においては、ARDエンハンサーはミノキシジルと組み合わされる。別の実施形態においては、ARDエンハンサーはフィナステリドまたはプロペシアと組み合わされる。別の実施形態においては、ARDエンハンサーは抗アンドロゲン化合物と組み合わされる。別の実施形態においては、ARDエンハンサーは、ペプチドまたはオリゴペプチドと組み合わされる。
【0088】
一部の実施形態においては、本発明の方法には、脱毛を遅らさせるかまたは予防する可能性を指摘されている化合物と、発毛を刺激または促進する可能性を指摘されている第二の化合物とを含む、化合物の組み合わせを、それを必要とする対象に対して投与する過程を含む、アンドロゲン性脱毛症の治療方法が含まれる。少なくとも一つの化合物は、ARDエンハンサーである。発毛を刺激する可能性を指摘されている化合物は、発毛刺激活性を有する可能性を指摘されている。非限定的な例としては、有機化合物、ペプチド、小ペプチド、核酸配列、植物抽出物などが含まれる。かかる活性は、発毛が発生するか否かを判定する適切なあらゆる方法を用いて測定または決定できる。
【実施例1】
【0089】
実施例1:転写因子の分解の増強の概説
以下の実施例は、アンドロゲン受容体などの核内受容体(転写因子)の分解を増強する方法の非限定的な実施形態について記載するものである。限定はしないが、核内への核内受容体の移動に干渉することもしくは核内受容体を細胞の細胞質内に保持すること、プロテアーゼ活性を誘発できる核内受容体内部のモチーフを露出させること、核内受容体を特異的に分解することのできるプロテアーゼの活性を増大させること、核内受容体の安定化を阻害すること、核内受容体の溶解度を低減させること、核内受容体を分解できる経路を活性化すること、核内受容体のユビキチン化を増大させること、適切なキナーゼによる核内受容体のリン酸化を増大/減少させること、アポトーシスを誘発すること、または核内受容体と核内受容体を安定化させることのできる補因子との間の相互作用を低減させることを含む、目的の核内受容体の分解を増強するあらゆる機序を使用することができる。この特定の実施例においては、目的の核内受容体は、ステロイドホルモン受容体であるアンドロゲン受容体である。
【0090】
核内受容体の転写活性の下方調節、ひいては目的の核内受容体の分解を検出するため、またはかかる分解の下流の効果を検出するために、さまざまな方法およびアッセイを使用することができる。例えば、アンドロゲン受容体の下方調節を検出するために用いられるアッセイを、少なくとも部分的に、アンドロゲン受容体の分解を検出するために使用することができる。アンドロゲン受容体に適用可能なこのような方法およびアッセイの非限定的な実施例を、以下で全般的に記載する。
【0091】
ウェスタンブロット分析を用いたAR分解の検出
アンドロゲン受容体(AR)の分解を検出するのに適したウェスタンブロット法は、これまでに記載されている(Suら、1999年)。簡潔に言うと、細胞(例えばLNCap細胞)を、10マイクログラム/ミリリットルのベンズアミジン、10マイクログラム/ミリリットルのトリプジン阻害物質、および1ミリモル濃度のフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含有する、2×ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ローディングバッファーまたは放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液(「Antibodies:A Laboratory Manual」、E.Harlow and D.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年を参照)のいずれかの中に回収する。細胞溶解物由来の総タンパク質(1試料あたり40マイクログラム、または所望通り)をSDS−PAGEゲル上で分離する。分離の後、タンパク質を、標準的なウェスタンブロット手順にしたがってゲルからニトロセルロース膜へと移す。適切な遮断薬(例えば、0.1%のTween−20を補充したリン酸緩衝生理食塩水(PBST)中の10%の脱脂乳)で膜を遮断して、非特異的な結合を一晩還元させる。膜を、ヒトAR(例えばBD−PharMingen社製の抗ヒトAR)に特異的な適切な一次抗体と共に、摂氏4度で一晩、または室温で2時間インキュベートする。膜をPBSTで3回、各回につき10分間すすぎ、その後、適切な二次抗体(例えば酵素標識二次抗体、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体)と共に室温で1時間これをインキュベートする。膜をPBSTですすぎ、適切な視覚化手順を用いて二次抗体を検出する(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼは、発色基質を用いて、またはAmersham製の増強型化学発光(ECL Plus)キットによって提供されるような化学発光基質によって、検出可能である)。メーカーの推奨事項に従って膜を剥がし、適切な抗体(例えばベータ−アクチンに対する抗体、Sigma)と共に膜を再度インキュベートすることにより、ブロット上のアンドロゲン受容体タンパク質の量の尺度としての二次抗体シグナルを、各試料についてのロードされたタンパク質の総量に対して標準化することができる。タンパク質シグナルの定量化は、適切なソフトウェア(National Institutes of Health製のImageJソフトウェア)を用いて、濃度測定によって実施可能である。
【0092】
AR活性および腫瘍細胞の成長を阻害する化合物
非限定的な実施例において、細胞におけるアンドロゲン受容体(AR)を分解するために化合物を使用した。ARを分解する能力について試験した化合物の非限定的な例としては、全体が本明細書に参照により援用されている、Ohtsuら(2002年)、J.Med.Chem.、第45巻、5037〜5042頁、およびOhtsuら(2003年) Bioorg.Med.Chem.、第11巻、5083〜5090頁にその構造および調製が記載されている化合物が含まれる。例としては、化合物ASC−J9を、培養細胞に対して試験した。ASC−J9は、合成化合物(慣用名ジメチルクルクミン)であり、5−ヒドロキシ−1,7−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)−1,4,6−ヘプタトリエン−3−オンという構造を有し、例えば、ジアゾメタンを用いた天然クルクミンのパーメチル化によって得ることができる。
【実施例2】
【0093】
実施例2:核内受容体の分解の増強
ここでは、核内受容体の分解の効果を研究する上で有用な方法およびアッセイの非限定的な例について記載する。この特定の実施例においては、核内受容体であるアンドロゲン受容体(AR)の分解を増強するものとして公知の化合物を、AR活性および細胞増殖に対するその効果について試験した。癌の管理における主要な課題の一つは、腫瘍の増強を制御するかまたは遅らせることにある。アンドロゲンおよびARは、前立腺癌細胞の増殖を刺激する上で有意な役割を有しており、かくして、AR分解によるAR活性の調節は、前立腺癌の進行を遅らせるかまたは制御するための有用な手段として役立ち得る。
【0094】
LNCaP細胞における細胞の成長およびアンドロゲン受容体の発現の検出
成長のアッセイ
LNCaP細胞は、前立腺癌患者において見られる内因性の突然変異ARを発現する。この臨床的に関連する細胞モデルを用いて、前立腺癌細胞の成長の抑制におけるASC−J9の効果を研究した。細胞をおよそ6.5×104個細胞/ウェルという密度で、6ウェルの組織培養皿に播種した。二日後に、完全培地を吸引し、10%活性炭/デキストランで処理した(ホルモン除去した)血清含有培地を加えた。次に、試験化合物であるASC−J9を、1nMのDHTを伴ってまたは伴わずに、5μMの最終濃度で培地に添加した。媒体対照については、培地中に同量のDMSOを添加した。その後の5日間、培地を一日に一回吸引し、試験化合物および/またはDHTを含有する新鮮な培地と交換した。指定された時点で細胞の一部をトリプシン処理によって回収し、血球計を用いて細胞計数を実施した。
【0095】
5日間の実験期間中、媒体対照で処理したウェル内の細胞数は着実に増加した(図4A)。1日目、ASC−J9で処理したウェルの細胞数は、媒体対照のものに匹敵していたが、2日目から、これらのウェルの細胞数は著しく減少した。5日間のインキュベーションの終わりには、ASC−J9で処理したウェル内には、最少数の生存細胞しか見られなかった。
【0096】
前立腺癌細胞の成長に対するASC−J9の効果を、アンドロゲンであるDHTの存在下でさらに評価した。予想通り、DHTはLNCaP細胞の成長を上方調節した。ウェルあたりの細胞数の上昇は、細胞を4〜5日間この男性ホルモンと共にインキュベートした後に明白になった。ASC−J9は、DHTの存在下でもなお、LNCaP細胞の成長を減少させる優れた効力を示した。DHTの存在下または不在下での細胞成長の低下の程度は、実際に匹敵するものであった。上述の所見に基づくと、ASC−J9は男性ホルモンの存在下または不在下で前立腺癌細胞の成長を事実上無効化できるという結論が導かれる。ASC−J9は、前立腺癌の疾病管理のための薬物候補として有用であり得る。
【0097】
AR発現のウェスタンブロット分析
ARは、アンドロゲンに対する前立腺癌細胞の応答を調節するための主要な因子である。発明者らは、ASC−J9がARの定常状態のレベルに影響を及ぼすか否か、およびARの低減がLNCaP細胞の成長と相関関係を有するか否かを試験した。上述の実験に由来するLNCaP細胞を、指定の時点で回収し、細胞溶解物を前述の通りにウェスタンブロット分析のために調製した。その後、色検出方法を用いて、膜におけるARおよびアクチンタンパク質のシグナルを試験し、得られたタンパク質シグナルを濃度測定により定量化した。図4Bでは、(アクチンタンパク質との関係において)標準化したARシグナルが報告されており、これは、基底(0日目)値の百分率として表されている。
【0098】
結果は、ASC−J9で処理したLNCaP細胞中において、ARの内因性レベルが着実に下降したことを示している。ARの低減は、ASC−J9との2日間の連続的なインキュベーションの後に初めて観察され、5日間のインキュベーションの終わりでは、ARの最初のレベルのわずか約10%以下しか処理細胞において残らなかった。ASC−J9のインキュベーション後にARの低減と細胞数の減少との間に相関関係があるということは特筆に値する。この情報は、ASC−J9がAR低減の機序を介して少なくとも部分的に作用して、LNCaP細胞の成長を下方調節し得るということを強く示唆している。
【0099】
LNCaP細胞におけるAR発現を低減させる能力について、さらなる化合物を試験した。結果は図2にまとめられている。LNCaP細胞を、各々の試験化合物の存在下で48時間インキュベートし、その後ウェスタンブロット法により分析した。さまざまな濃度にわたって媒体対照と比較したARの低減の百分率を判定することによって、各化合物について相対的効力を評価した。表示は以下の通りである。
【0100】
【表1】
【0101】
図3Aおよび3Bは、化合物ASC−Q49、ASC−Q103、ASC−JM12、ASC−JM14、ASC−77、ASC−JM4、およびASC−JM5のウェスタンブロットデータの写真を示している。対応する化合物をLNCaP細胞に添加し、48時間インキュベートした後に分析した。結果は、アンドロゲン受容体(AR)タンパク質の発現が、ARDエンハンサーに曝露すると低減することを実証している。
【0102】
インビボでの異種移植腫瘍の成長のアッセイ
関連するインビボでの研究において、LNCaPヒト前立腺腫瘍細胞を、皮下注射によりヌードマウスに異種移植する(部位1ヵ所あたり2×106個)。その後、マウスを、腹腔内注射により、対照としての媒体溶液または試験化合物(体重1キロあたり100ミリグラムの用量のASC−J9)のいずれかで7週間、1週三回ずつ処理する。腫瘍体積を次の7週間にわたり一週間に二回ずつ測定する。ASC−J9などの化合物で充分な期間(例えば2週間〜数ヵ月)にわたり処理した結果、腫瘍の成長速度は有意に低減すると予想される。図12におけるデータは、一頭は媒体溶液で処理し(左)、もう一頭はASC−J9で処理した(右)、LNCaP腫瘍を異種移植した2頭のヌードマウスを示す。ASC−J9で処理した動物において、腫瘍サイズおよび血漿中のPSA含有量の有意な低減が検出された。このような結果は、ASC−J9などのAR分解化合物によって誘発されるAR活性の抑制およびその結果得られる腫瘍成長の低減が、前立腺癌およびその他の癌などのAR活性に関連する疾患および障害を治療または予防するための実用へとその形を変え得ることを強く示すものとしてとらえることができる。
【実施例3】
【0103】
実施例3:異なる細胞系におけるステロイドホルモン受容体の分解の特異性
ここでは、さまざまな細胞系における核内受容体(この場合、ステロイドホルモン受容体)の特異的分解の非限定的な例について記載する。二つの代表的な腫瘍細胞系、すなわちヒト前立腺癌細胞系であるLNCaP、およびヒト乳腺癌細胞系であるT47Dを使用して、アンドロゲン受容体ならびにその他の細胞内タンパク質および受容体に対するASC−J9の効果の特異性を試験した。
【0104】
ヒト前立腺癌LNCaP細胞およびT47D細胞を、10%FBSを含有するRichterの改良MEMインスリン(RPMI)培地中で、60ミリメートルの組織培養皿1枚あたり7×105個の細胞密度で播種した。24時間後に、10%の活性炭処理血清を含有するRPMIまたはDME培地に培地を変更して、細胞のアンドロゲンまたはエストロゲンを枯渇させた。さらに24時間後、試験化合物での処理を開始した。ASC−J9の試験用量は、1および5マイクロモル濃度であった。LNCap細胞にはまた、ジヒドロテストステロン(DHT)も加えた(3ナノモル濃度)。対照細胞には、対応する量の媒体、ジメチルスルフォキシド(DMSO)(0.04%未満)を同等の曝露時間にわたり加えた。細胞をASC−J9と共に24時間インキュベートし、250マイクロリットルの1×SDS/PAGEローディングバッファーに溶解した。およそ40マイクログラムの総細胞タンパク質を、プレキャストゲル(NuPAGE、Invitrogen)の各レーン内にロードした。メーカーの指示事項に従って、タンパク質の分離および移動を実施した。
【0105】
LNCaP細胞溶解物について、得られた膜を抗AR抗体(BD−PharMingen)と共にインキュベートし、その後化学発光検出(ECL Plus、Amersham)を行うことで、アンドロゲン受容体(AR)を視覚化した。試験化合物がその他の細胞タンパク質に対してもたらす効果を試験するため、複数の同一のゲルを調製し、得られた膜を、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体ベータ(ERベータ)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファ、ベータ、またはガンマ(PPARα、β、またはγ)、レチノイドX受容体アルファ(RXRα)、70kDaの熱ショックタンパク質(hsp70)、および細胞骨格タンパクであるアクチンに特異的な抗体と共にインキュベートした。PRおよびその他の核内受容体についての抗体は、Santa Cruz Biochemicalsから入手し、一方、hsp70およびアクチンについての抗体はそれぞれStressGenおよびSigmaから入手した。得られたタンパク質シグナルを、濃度測定およびNIH ImageJソフトウェアを用いて定量化した。
【0106】
LNCaP細胞溶解物のウェスタンブロットを図5に示す。DHTの存在下または不在下でLNCaP細胞をASC−J9と共にインキュベートすること(1または5マイクロモル濃度、24時間)により、ARの細胞内濃度は著しく減少し、程度はより低いもののプロゲステロン受容体の濃度も著しく減少したが、その他の試験対象の核内受容体またはタンパク質には実質的な影響はなかった。
【0107】
T47D細胞溶解物のウェスタンブロットを図6に示す。エストロジアル(E2)の存在下または不在下でT47D細胞をASC−J9(5または10マイクロモル濃度)と共にインキュベートすることで、ARの細胞内濃度は減少したものの、その他の受容体タンパク質は、LNCaP細胞における観察と同様に減少しなかった。
【実施例4】
【0108】
実施例4:タンパク質合成阻害物質の存在下での転写因子の分解の増強
観察されたARタンパク質レベルの低減がARタンパク質合成の阻害よりもむしろタンパク質の分解に起因していたのか否かを判定するため、第二組の3回の反復実験を実施した。これらの実験においては、細胞による新たなタンパク質の合成を防ぐために、タンパク質合成阻害物質であるシクロヘキシミド(CHX)を使用した。新たなARタンパク質合成が無い状態では、ARレベルのあらゆる改変は主にタンパク質分解に原因があると思われる。ASC−J9(20マイクロモル濃度)の存在下および不在下で、ならびにシクロヘキシミド(15マイクログラム/ミリリットル)の存在下および不在下で、LNCaP細胞を培養した。その後、細胞を0、3、6および12時間インキュベートした後に回収し、ウェスタンブロットによりARレベルを分析した。
【0109】
一つの実験に由来する代表的なウェスタンブロットを図7Aに示す。対照細胞における内因性AR濃度の低減が、シクロヘキシミドでの3時間以内の処理で検出され、これはARのデノボ合成がこの受容体の定常状態のレベルに影響することを示唆した。既存のARタンパク質の観察された低減は、試験化合物(ASC−J9)が4時間以内に既存のARタンパク質の分解を増強または増大させた(ひいてはAR活性を低下させた)ということを表している。
【0110】
ARの発現を低減させる上での活性に対してARDエンハンサーが及ぼす効果を従来の抗アンドロゲン物質と比較するために、ASC−J9および従来の抗アンドロゲン物質であるCPA(酢酸シプロテロン)、HF(ヒドロキシフルタミド)、およびフィナステリドを、LNCaP細胞で試験した。図7B、ASC−J9、CPA、HF、またはフィナステリドの存在下で48時間、LNCaP細胞を培養した。細胞を回収し、ARタンパク質をウェスタンブロットにより定量化した。ASC−J9処理のみがARタンパク質の減少という結果をもたらし、このことは、ASC−J9がアンドロゲン受容体の分解を誘発する一方で、従来の抗アンドロゲン物質であるCPA、HF、およびフィナステリドはそれを誘発しないということを示している。
【実施例5】
【0111】
実施例5:突然変異アンドロゲン受容体の分解
ここでは、突然変異核内受容体の蓄積に関連するヒトの疾病のモデルにおける、突然変異核内受容体の分解の非限定的な実施例を記載する。この具体的な実施例においては、ケネディー病のモデルが調査される。ケネディー病つまり球脊髄性筋萎縮症(SMBA)は、AR遺伝子のN末端領域における異常に長いポリグルタミン伸長からなるアンドロゲン受容体の突然変異によって引き起こされる神経変性病である。伸長したポリグルタミン(ポリQ49(49回のポリグルタミン反復))を有する突然変異ARでの細胞の実験的なトランスフェクションは、トランス活性化機能の低下、そして一部のケースでは、ミスフォールディングしたARタンパク質の核内封入と関連することが示されている(Chamberlainら、(1994年)Nucleic Acid Res.,第22巻、3181〜3186頁)。異常なARのこの核内蓄積は細胞毒性であり、神経細胞の死を引き起こし、ケネディー病のインビボでの病理と一貫性がある。
【0112】
サル腎臓COS−1細胞を、10%FBSを含むダルベッコ変法イーグル(DME)培地が入った35ミリメートルの懸濁培養皿の中に置かれたアルコール清浄および滅菌を行ったカバースリップの上に、0.5ミリリットルの体積あたり3×104個の細胞密度で播種した。細胞に、野生型AR(GFPAR)またはポリQ49(プラスミドGFPARQ49)突然変異アンドロゲン受容体およびレポーターとしての緑色蛍光タンパク質(GFP)を含むプラスミドをトランスフェクトした。各々のカバースリップについて、102.5マイクロリットルのDME培地中の3.075マイクログラムのプラスミドに12.3マイクロリットルのSuperFectを添加し(DNA対SuperFect試薬を1:4という比とする)、混合物を短時間ボルテックス処理し、15分間にわたり複合体を形成させた。その後、各混合物に、897マイクロリットルのCD/DMEを加え、穏やかに混合した。得られた1ミリリットルの体積を、カバースリップの入った皿に加えた(最終プラスミド濃度は、皿1枚あたり3.02マイクログラムであった)。細胞を5時間トランスフェクション溶液と共に5時間インキュベートし、その後培地を、媒体(DMSO)のみが添加されるかまたはASC−J9(最終濃度5マイクロモル濃度)を含む新鮮な1.5ミリリットルのCD/DME培地に変更した。トランスフェクションが終わってから24時間後に、培地を再び新鮮なCD/DME培地(1.5ナノモル濃度のDHTを含むかまたは含まない)へと変更し、媒体またはASC−J9を加えた(最終濃度5マイクロモル濃度)。培地の変更から24時間後に、培地を取り出し、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%のホルムアルデヒドで、室温で一時間固定した。ホルムアルデヒドを除去し、固定した細胞をPBSで三回洗浄し、次にカバースリップを乾燥させた。処理スキームを標示するようにカバースリップに印をつけ、細胞のまわりに色鉛筆で疎水性の円を書いた。各カバースリップを200マイクロリットルのヨウ化プロピジウム(水1ミリリットルあたり0.7マイクログラム)を用いて室温で5分間染色し、次にPBSで三回すすいだ。カバースリップを空気乾燥し、グリセロールベースの封入剤を有するスライド上に載せ、必要であれば、蛍光顕微鏡検査で観察する前に摂氏4度で保管した。GFPARおよびGFPARポリQ49プラスミドでトランスフェクトしたCOS−1細胞を示す代表的な顕微鏡写真を、図8Aおよび8Bに示す。顕微鏡写真中に示されている通り、トランスフェクトした細胞は、蛍光レポータータンパク質であるGFPによって示されるようにプラスミドを発現した。対照細胞は、大量の蛍光封入体または凝集体を含有していた(図8B)。ASC−J9で処理された細胞は、蛍光封入体を実質的により少ない量だけ含有し、これは、発現した突然変異体ポリQ49アンドロゲン受容体がASC−J9処理によって分解されたことを示唆している。
【実施例6】
【0113】
実施例6:アンドロゲン受容体の分解によるラットにおける皮脂腺の低減
この実施例では、具体的にはアンドロゲン受容体の分解を誘発することによってアンドロゲン受容体活性化経路の効果を改善することおよびヒトの対象において座瘡を治療する上で有効であることが上記の実施例において示された、試験化合物ASC−J9を、動物モデルにおける皮脂腺葉のサイズを低減させるために使用した。局所治療による皮脂腺の有効な低減は、座瘡などの皮膚の症状を治療する上で有用であり得る。この動物モデルにおいては、全体が本明細書に参照により援用されているYeら、(1997年)Skin Pharmacol.、第10号、10288−10297頁において記載されているファジーラットを使用した。
【0114】
実施例12において後で記載する通りに局所クリームを調製した。試験クリームにはASC−J9(25マイクロモル濃度)が含まれ、媒体のみが添加された対照クリームも調製した。8週間の期間にわたり、毎日一回、動物の背面皮膚に綿棒を用いて試験クリームまたは対照クリームを塗布した。その後動物を屠殺し、顕微鏡検査のため皮膚試料を収集した。安楽死させた動物の背面に市販の脱毛剤を塗布した。5分後、脱毛剤と毛をティッシュペーパーで除去した。その領域を75%のイソプロピルアルコールで完全に清浄した。4ミリメートルの皮膚用パンチを用いて皮膚組織試料を取り出し、この試料を、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、17ミリモル濃度)、リン酸ナトリウム(0.1モル濃度、pH7.4)溶液中において摂氏37度で2〜3時間インキュベートした。真皮から上皮を丁寧に分離し、10%のリン酸緩衝ホルマリン中に保管した。顕微鏡検査に先立ち、試料をスライドガラス上に載せた。顕微鏡イメージングのために、良好に保存された腺小葉の領域を選択した。腺葉の縁部をトレースし、トレースした腺葉の面積をImage Jソフトウェア(National Institutes of Health)を用いて得た。
【0115】
結果を図9および図10に示す。図9で示されているように、皮膚の褐色および皮脂腺のバンドは、ASC−J9で処理したファージラットにおいて4〜5週間以内で低減した。図10A〜Cにおいて示されているように、化合物ASC−J9(200μM)での雄ラットの局所的処理の結果、皮脂腺のサイズは有意に低減したが、去勢によりひき起こされるものほどではなかった。図10Dでは、データは、媒体のみでの局所的処理(対照クリーム)が腺葉のサイズの有意な変化を生み出さないことを示した。さまざまな濃度のASC−J9を用いた局所的処理は、皮脂腺葉のサイズの有意な低減をもたらした(パネルA)が、去勢によりひき起こされるものほどではなく、それでも従来の抗アンドロゲンフルタミドよりは優れている。図10E(パネルBと記されている)は、皮膚に塗布されたASC−J9が、去勢効果に匹敵しかつフルタミドより良い、雄ファージラットにおける皮脂腺管のサイズの有意な低減をもたらすことを示す代表的なデータを示している。
【実施例7】
【0116】
実施例7:アンドロゲン受容体の分解による動物モデルにおけるアンドロゲン誘発型脱毛症の治療
この実施例は、核内受容体の分解による、対象における核内受容体関連疾患の治療について記載する。この実施例では、核内受容体は、ステロイドホルモン受容体であるアンドロゲン受容体である。核内受容体関連疾患は、アンドロゲン受容体により影響されることがわかっている脱毛症(脱毛または禿頭症)である。この実施例では、具体的にはアンドロゲン受容体の分解を誘発することによってアンドロゲン受容体活性化経路の効果を改善することがこれまでの実施例において示された試験化合物ASC−J9を使用して、動物モデルにおける脱毛を治療する。
【0117】
脱毛および再発毛についてのこの動物モデルにおいては、C57BL/6Jマウスを用いた(全体が本明細書に参照により援用されているUnoら、(1990年)J.Cutaneous Aging & Cosm.Derm.、第1巻、193頁)。6週齢の雄のマウス(1群あたり動物6〜7頭)を電気バリカンで剃毛し、その後脱毛クリームで1〜2分間処理した。剃毛後に、毛包が活発に成長する毛成長期にあることを示す暗色の皮膚の色を有していることが判明した動物は、研究から除外した。除毛から一日後に、最初の動物群には、連続20日間、毎朝一回、剃毛した部域に、100マイクロリットルの、エタノール中の1%テストステロン溶液を各々局所塗布した。第2群の動物には、連続20日間、毎朝一回、剃毛した部域に100マイクロリットルの媒体(エタノール)のみを局所塗布した。第1群のマウス(テストステロン処理されたもの)をさらに対照群と処理群に分けた。同様に、除毛の一日後から、対照群の各々のマウスには、100マイクロリットルの対照溶液(60%のエタノール、20%のプロピレングリコール、および20%の水)を塗布し、処理群の各々のマウスには、連続20日間、毎日午後1回、剃毛した領域に、100マイクロリットルの試験化合物、ASC−J9(同じ60%エタノール、20%プロピレングリコール、および20%水の溶液中に0.02%)を局所塗布した。剃毛した領域における再発毛を、局所的処理の開始後、0、4、8、11、および14日後に観察し、写真撮影した。
【0118】
剃毛し、その後テストステロンを朝に局所的塗布し対照溶液のみを午後に塗布したマウスは、20日間の処理後、剃毛部の領域にほとんどまたは全く再発毛を示さなかった(図11A)。剃毛し、その後エタノール媒体のみ(テストステロン無し)を局所的塗布したマウスは、局所的な媒体処理から20日後に剃毛部の領域において急速な再発毛を示した(図11A)。
【0119】
剃毛し、その後テストステロンを朝に局所的塗布し対照溶液のみを午後に塗布したマウスは、17日間の処理後、剃毛部の領域にほとんどまたは全く再発毛を示さなかった(図11B)。剃毛し、その後テストステロンを朝に局所的塗布しASC−J9を午後に塗布したマウスは、8日目から17日目に剃毛部の領域に急速な再発毛を示した(図11B)。これらの結果は、アンドロゲン受容体を分解するものとして知られる化合物であるASC−J9の局所的塗布が、動物モデルにおけるテストステロン誘発型の発毛抑制を克服できるということを実証している。
【実施例8】
【0120】
実施例8:核内受容体分解化合物ASC−J9を用いた癌性腫瘍のインビボでの低減
ヌードマウスの左脇腹に、200万個のLNCaP腫瘍細胞を皮下接種した。実験動物において、ヌードマウスに、一週間に3回、100mg/kg/日の割合で化合物ASC−J9の腹腔内(ip)注射するか、または媒体対照のみを投与した。7週間の処理後、腫瘍を切除し、秤量し、比較した。媒体対照対ASC−J9の腫瘍重量比は、0.694g:0.172gであり、したがって、ASC−J9で処理した動物は、腫瘍サイズが75%低減した。さらに、ASC−J9で処理した動物に由来する血漿中のPSA(前立腺特異的抗原)レベルは90%低減した(57.0ng/mlから7.6ng/mlに低減)。結果を図12に示す。
【実施例9】
【0121】
実施例9:ARDエンハンサーASC−J9化合物は動物モデルにおいて皮膚の創傷治癒を早めることができる
動物モデルにおける創傷治癒を早めるASC−J9の能力を、Balb/cマウスを用いて試験した。皮膚用パンチを用いて、引退した雄の種畜Balb/cマウスの頸部領域の背中近くに創傷を作った。マウスを毎日2回、創傷部位において局所的にASC−J9クリーム(25μM)または媒体対照クリームのいずれかで処理した。図13を参照すると、ASC−J9で処理された動物は、媒体処理された動物に比べて、5日目にはより小さい創傷サイズを有しており、10日目にはASC−J9で処理されたマウスにおいて創傷が完全に治癒し、一方、媒体で処理された動物の創傷の瘢痕化は目に見えて残っていた。
【実施例10】
【0122】
実施例10:アンドロゲン受容体の分解によるヒト対象におけるアンドロゲン関連疾患の治療
この実施例では、核内受容体(アンドロゲン受容体)の分解による、対象における核内受容体関連疾患(尋常性座瘡)の治療について記載する。一般的には単に座瘡として知られている尋常性座瘡は、両方の性別の10代および若年成人のヒトの顔面、胸部、および背中に典型的に発症する赤色皮膚発疹であるが、これはあらゆる年令において、体のその他の領域にも発生する可能性がある(例えば、2004年4月23日にアクセスした、www.emedicine.com/derm/topic2.htmで電子的に利用可能な、J.C.HarperおよびJ.Fulton,Jr.(2003年)、「Acne Vulgaris」を参照)。座瘡は、ほぼすべての人で、人生の或る時期において発症し、永久的な瘢痕化および精神的苦痛および低い自尊心の原因となり得ると同時に、皮膚感染などのより重篤な健康問題を導く可能性がある。皮脂腺の基底細胞および腺細胞において発現するアンドロゲン受容体は、男性と女性の間で類似した皮膚分布を有する(Blauerら、(1991年)J.Investig.Dermatol.、第97巻、264〜268頁)。皮膚において、アンドロゲン受容体は最終的な皮脂腺細胞の分化および皮脂の産生を刺激する。座瘡の一般的な治療は多くの場合、望ましくない副作用を有する。例えば、局所レチノイドは太陽光過敏を導く可能性があり、抗生物質は抗生物質耐性をもたらし得、過酸化ベンゾイルは接触性皮膚炎をひき起こす可能性がある。座瘡のための新規で有効な、好ましくは局所的な(非全身性の)治療が必要とされている。
【0123】
この実施例では、具体的にはアンドロゲン受容体の分解を誘発することによってアンドロゲン受容体活性化経路の効果を改善するものとして先の実施例において示した化合物ASC−J15またはASC−J9を含有するクリームの局所的投与によりヒトの対象の座瘡を治療し、成功をおさめた。基本的な担体製剤は、(1)aristoflex avc、Osmocide、Tween20、および水を含有する水性溶液、ならびに(2)ミリスチン酸イソプロピル、ココナツジエタノールアミン、エチルパラベン、イソブチルパラベン、メチルパラベン、およびプロピルパラベンを含有する油性溶液という二つの溶液を混合することによって調製した。必要に応じて、1〜2.5マイクロモル濃度の最終濃度までクリームに試験化合物(ASC−J15またはASC−J9)を添加した。
【0124】
年齢が15才から52才までの男性および女性のヒトボランティアを、座瘡に冒された皮膚に試験化合物を局所的塗布することによって治療した。対象には、一日二回(朝晩一回ずつ)、座瘡に冒された領域にクリームを塗布するように依頼した。一般に、座瘡の症候は、2〜3日以内で有意に鎮まるという所見が得られ、1〜2週間以内で完全に治癒した。結果を表2に示し、一人のボランティアからの代表的な結果(写真)を図14に示す。図14Aはボランティアの額を、図14Bはボランティアの背中を示している。
【0125】
【表2】
【0126】
見出しは全て、読者の便宜上のものであり、別段の規定のないかぎり、その見出しの後に続く本文の意味を限定するために用いられるものではない。本発明に対しては、その趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および離脱を加えることができる。したがって、本発明を明細書において具体的に記載されているものに、または図面で例示されている通りに限定することは意図されておらず、本発明は、特許請求の範囲に記載されるように限定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【特許文献1】米国特許出願第60/962880号明細書
【特許文献2】米国特許出願第12/008124号明細書
【特許文献3】米国特許第7241731号明細書
【特許文献4】米国特許第6376557号明細書
【特許文献5】米国特許第6333057号明細書
【特許文献6】米国特許第5972345号明細書
【特許文献7】米国特許第7201931号明細書
【特許文献8】米国特許第6358541号明細書
【非特許文献】
【0128】
【非特許文献1】FASEB.J、2006年10月、20(12):2068〜80頁
【非特許文献2】「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、第20版、Gennaro(編)ならびにGennaro、Lippincott、WilliamsおよびWilkins、2000年
【非特許文献3】Taber’s encyclopedic dictionary(第20版、2001年、FA Davis Company)
【非特許文献4】「Antibodies:A Laboratory Manual」、E.Harlow and D.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年
【非特許文献5】Ohtsuら(2002年)、J.Med.Chem.、第45巻、5037〜5042頁
【非特許文献6】Ohtsuら(2003年) Bioorg.Med.Chem.、第11巻、5083〜5090頁
【非特許文献7】Chamberlainら、(1994年)Nucleic Acid Res.,第22巻、3181〜3186頁
【非特許文献8】Yeら、(1997年)Skin Pharmacol.、第10号、10288−10297頁
【非特許文献9】Unoら、(1990年)J.Cutaneous Aging & Cosm.Derm.、第1巻、193頁
【非特許文献10】2004年4月23日にアクセスした、www.emedicine.com/derm/topic2.htmで電子的に利用可能な、J.C.HarperおよびJ.Fulton,Jr.(2003年)、「Acne Vulgaris」
【非特許文献11】Blauerら、(1991年)J.Investig.Dermatol.、第97巻、264〜268頁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ARDエンハンサーと、
b)殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、ビタミンA、ビタミンA誘導体、レチノイド、および抗炎症性化合物からなる群から選択される第二の化合物と、
c)薬学的に許容される担体と
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記ARDエンハンサーがASC−J9またはASC−J15である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ARDエンハンサーがASC−Q9またはASC−Q44である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ARDエンハンサーが、ASC−Q49、ASC−Q77、およびASC−Q98からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ARDエンハンサーが、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、およびASC−Q103からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ARDエンハンサーがASC−Q110またはASC−Q111である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ARDエンハンサーが、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、およびASC−JM4からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ARDエンハンサーが、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ARDエンハンサーが、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記殺菌剤が過酸化ベンゾイルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗微生物ペプチドがカテジシンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
a)皮膚疾患を患う患者を提供する過程と、
b)治療上有効な量の請求項1に記載の医薬組成物を前記患者に投与する過程と
を含む、皮膚疾患の治療方法。
【請求項13】
前記皮膚疾患が座瘡である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a)脱毛を患う患者を提供する過程、および
b)治療上有効な量の
i)ARDエンハンサーと、
ii)発毛刺激活性を含む第二の組成物または化合物と
を含む医薬組成物を前記患者に投与する過程
を含む、脱毛の治療方法。
【請求項15】
前記ARDエンハンサーがASC−J9またはASC−J15である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ARDエンハンサーが、ASC−Q9、ASC−Q44、ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−Q98、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、ASC−Q103、ASC−Q110またはASC−Q111、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、ASC−JM4、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項1】
a)ARDエンハンサーと、
b)殺菌剤、抗生物質、抗微生物ペプチド、ビタミンA、ビタミンA誘導体、レチノイド、および抗炎症性化合物からなる群から選択される第二の化合物と、
c)薬学的に許容される担体と
を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記ARDエンハンサーがASC−J9またはASC−J15である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ARDエンハンサーがASC−Q9またはASC−Q44である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ARDエンハンサーが、ASC−Q49、ASC−Q77、およびASC−Q98からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ARDエンハンサーが、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、およびASC−Q103からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ARDエンハンサーがASC−Q110またはASC−Q111である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ARDエンハンサーが、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、およびASC−JM4からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ARDエンハンサーが、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ARDエンハンサーが、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記殺菌剤が過酸化ベンゾイルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗微生物ペプチドがカテジシンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
a)皮膚疾患を患う患者を提供する過程と、
b)治療上有効な量の請求項1に記載の医薬組成物を前記患者に投与する過程と
を含む、皮膚疾患の治療方法。
【請求項13】
前記皮膚疾患が座瘡である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a)脱毛を患う患者を提供する過程、および
b)治療上有効な量の
i)ARDエンハンサーと、
ii)発毛刺激活性を含む第二の組成物または化合物と
を含む医薬組成物を前記患者に投与する過程
を含む、脱毛の治療方法。
【請求項15】
前記ARDエンハンサーがASC−J9またはASC−J15である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ARDエンハンサーが、ASC−Q9、ASC−Q44、ASC−Q49、ASC−Q77、ASC−Q98、ASC−Q99、ASC−Q101、ASC−Q102、ASC−Q103、ASC−Q110またはASC−Q111、ASC−Q113、ASC−Q116、ASC−JM1、ASC−JM2、ASC−JM4、ASC−JM5、ASC−JM6、ASC−JM7、ASC−JM12、ASC−JM13、ASC−JM14、ASC−JM16、ASC−JM17、ASC−JM18、およびASC−JM19からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図2−4】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A−C】
【図10D−E】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図2−4】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A−C】
【図10D−E】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【公表番号】特表2010−535213(P2010−535213A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519938(P2010−519938)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/009300
【国際公開番号】WO2009/017815
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509191193)アンドロサイエンス コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】ANDROSCIENCE CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/009300
【国際公開番号】WO2009/017815
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509191193)アンドロサイエンス コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】ANDROSCIENCE CORPORATION
【Fターム(参考)】
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