説明

アンモニアとイオン液体との混合物

吸収サイクル中の吸収冷却流体、およびアンモニアの貯蔵として使用するのに適したアンモニアとイオン液体との混合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収冷却流体およびアンモニアの貯蔵として使用するためのアンモニアとイオン液体との混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収冷凍サイクルは100年以上前からの技術である。空調および冷却の用途の大半で蒸気圧縮サイクルが起こるが、ある用途、特に工業用途または大規模な水冷却系の分野においては、周知の冷媒−吸収剤系(HO/LiBrおよびNH/HO)が未だに用いられている。最近では、NH/HO系を用いた廃熱の回収に向けた関心が高まっている(非特許文献1)。LiBrおよびNHを冷媒として用いることに固有の欠点としては、LiBrの腐食性ならびにNHの毒性および可燃性が挙げられる。1950年代後半に、一部の先駆的な研究により、有機吸収剤とともにフルオロアルカン冷媒を用いた、吸収サイクル用の冷媒−吸収剤の新しい組合せが提案された(非特許文献2;非特許文献3)。かかる研究は、特に学術機関の間で現在でも活発に続けられている。フッ素化炭化水素を冷媒として用いることに対する1つの欠点は、それらの使用により環境上の潜在的な悪影響が生じ得ることである。新しい冷媒−吸収剤系が求められている。
【0003】
室温イオン液体(RTIL)は、新しい種類の溶媒であり、約100℃未満の融点を有する溶融塩である。それらは、蒸気圧がごくわずかであるため、通常の揮発性有機化合物(VOC)と比較して、(環境に優しい)「グリーン溶媒」と呼ばれることが多い。過去数年にわたって、純粋なRTILおよびそれらと様々な化学物質との混合物の熱力学特性および輸送特性についての世界的な研究が行われてきた。測定不可能な蒸気圧を有する新しいタイプの溶媒として、室温イオン液体は、様々な冷媒とともに用いる吸収剤とみなされている。例えば、Shiflettらの特許文献1には、吸収サイクルにおいて、冷媒としてのフッ素化炭化水素とともに用いる吸収剤としてのイオン液体の使用が開示されている。アンモニアの可能性を含め、いくつかの他の冷媒が言及されているが、その可能性を実現する例またはデータは開示されなかった。溶媒相挙動の知識は、これらの用途ならびに吸収冷却または加熱などの新しい用途におけるイオン液体の使用の魅力を決定付けるのに非常に重要である。
【0004】
別のニーズは、揮発性材料を貯蔵し輸送するための媒体である。例えば、アンモニアは、通常、高圧シリンダー中に;または水酸化アンモニウムとして水に溶解されて貯蔵される。しかしながら、室温でかなりの蒸気圧を有する媒体である水が許容されない用途においては、水酸化アンモニウムは、アンモニアを貯蔵するのに適した媒体ではない。表面修飾活性炭およびイオン交換ゼオライトなどの従来の吸着剤が、アンモニアの貯蔵に用いられてきた。しかしながら、アンモニア貯蔵容量はそれほど高くなく、例えば、Y−ゼオライトのCu形態については、貯蔵容量は、アンモニア1グラム当たり約5ミリモルである(非特許文献4)。
【0005】
アルカリ土類金属ハロゲン化物およびその水和物形態MgClOH、CaCl、CaBr、およびSrBrが、1グラム当たり約25〜40ミリモルのより高い容量を有することが分かっている(すなわち、MgClOHは、1グラム当たり26ミリモルである)。アルカリ土類金属ハロゲン化物の1つの問題は、吸着の際に、固体を再生するために表面からアンモニアを完全に除去するのに熱を必要とすることである。例えば、298KにおけるMgCl−CaClは、80kPaにおいて固体1グラム当たり約46ミリモルのアンモニアを吸着し;圧力がさらに上昇すると、吸着されるアンモニアはこれ以上増加しない。吸着剤の圧力解放および排気(evacuation)の後の第2の吸着の測定は、はるかに少ないアンモニアが吸着され得ることを示す。例えば、第2の吸着の測定は、同じ温度(298K)および圧力(80kPa)において固体1グラム当たり14ミリモルのアンモニアという結果になった。これは、全てのアンモニアを除去するための排気を第1の吸着実験から1時間行った後でさえ、吸収プロセスが不可逆であることを示している。かなりの量のアンモニアを可逆的に貯蔵することができ、またそれ自体が非常に低い蒸気圧を有するかまたは蒸気圧を有さない媒体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0197053 A1号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Erickson DCら、「Heat−activated dual−function absorption cycle」、ASHRAE Trans.2004年、110
【非特許文献2】Eiseman BJ、「A comparison fluoroalkane absorption refrigerants」、ASHRAE J.1959年、1、45
【非特許文献3】Mastrangelo SVR.「Solubility of some chlorofluorohydrocarbons in tetraethylene glycol ether」、ASHRAE J.1959年、1、64
【特許文献4】Ind.Eng.Chem.Res.2004年、43、7484〜7491
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、アンモニアと少なくとも1種のイオン液体とを含む組成物であって、約1〜約110バールの圧力において約−40〜約130℃の温度範囲にわたって約1〜約99モル%のアンモニアを含む組成物である。
【0009】
本発明の別の態様は、加熱または冷却に有用な、本発明の組成物を含む吸収サイクルである。
【0010】
本発明の別の態様は、アンモニアをイオン液体中に吸収して、約1〜約110バールの圧力において約−40〜約130℃の温度範囲にわたって約1〜約99モル%のアンモニアを含む組成物を得る工程を含む、アンモニアの貯蔵方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】単純な吸収冷凍サイクルの概略図を示す。
【図2】本発明の組成物を調製するのに用いられる試料保持器の概略図を示す。
【図3】NH/[emim][TfN]混合物のPTx相平衡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に引用される全ての特許および特許出願は参照により本明細書に援用される。本明細書における全ての商標は大文字で示される。
【0013】
本開示において、以下の定義が与えられるいくつかの用語が使用される。
【0014】
「アルカン」は、直鎖、分枝または環式であってもよい一般式C2n+2で表される飽和炭化水素である。
【0015】
「アルケン」は、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を含むとともに直鎖、分枝または環式であってもよい不飽和炭化水素である。アルケンは最小で2個の炭素を必要とする。環式化合物は最小で3個の炭素を必要とする。
【0016】
「芳香族」は、ベンゼンおよび化学挙動がベンゼンに類似した化合物である。
【0017】
「フッ素化イオン液体」は、カチオンまたはアニオンのいずれかの上に少なくとも1個のフッ素を有するイオン液体である。「フッ素化カチオン」または「フッ素化アニオン」はそれぞれ、少なくとも1個のフッ素を含むカチオンまたはアニオンである。
【0018】
「ハロゲン」は、臭素、ヨウ素、塩素またはフッ素である。
【0019】
「ヘテロアリール」基は、ヘテロ原子を有するアルキル基である。
【0020】
「ヘテロ原子」は、アルカニル、アルケニル、環式または芳香族化合物の構造中の、炭素または水素以外の原子である。
【0021】
「イオン液体」は、Science(2003年)302:792〜793により詳細に記載されているように、約100℃以下で流体である有機塩である。
【0022】
「からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意選択的に置換される」は、アルカン、アルケン、アルコキシ、フルオロアルコキシ、パーフルオロアルコキシ、フルオロアルキル、パーフルオロアルキル、アリールまたはヘテロアリールに言及するとき、炭素鎖上の1個または複数の水素が独立して、この群の1つまたは複数のメンバーのうちの1つまたは複数で置換され得ることを意味する。例えば、置換されたCは、限定はされないが、CFCF、CHCHOHまたはCFCFIであり得る。
【0023】
イオン液体は合成することができ、またはMerck KGaA(Darmstadt,Germany)またはBASF(Mount Olive,NJ)などのいくつかの企業から市販品として得られる。本発明の組成物に有用ないくつかのイオン液体の合成は、Shiflettらの米国特許出願公開第2006/0197053 A1号明細書に開示される。
【0024】
本発明の一実施形態において、イオン液体は、
【化1】

【化2】

(式中、R、R、R、R、R、およびR10が独立して、
(i)水素、
(ii)Cl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意選択的に置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン;
(iii)O、NおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、かつCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意選択的に置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン;
(iv)O、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C20非置換アリール、またはC〜C25非置換ヘテロアリール;および
(v)O、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換アリール、またはC〜C25置換ヘテロアリールであって;
(1)Cl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意選択的に置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン、
(2)OH、
(3)NH、および
(4)SH
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基を有する置換アリールまたは置換ヘテロアリール
からなる群から選択され;
、R、R、R、およびRが独立してRおよびハロゲンから選択され;
11、R12、R13、およびR14が独立してRから選択され、ただし、R11、R12、R13、およびR14が水素ではなく;そして
ここで、任意選択的に、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14のうちの少なくとも2つが一緒になって環式または二環式アルカニルまたはアルケニル基を形成することができる)
からなる群から選択される、本明細書においてグループAカチオンとして定義されるカチオン;
ならびに、[CHCO、[HSO、[CHOSO、[COSO、[AlCl、[CO2−、[HCO、[NO、[NO、[SO2−、[PO3−、[HPO2−、[HPO、[HSO、[CuCl、Cl、Br、I、SCN、およびフッ素化アニオンからなる群から選択される、本明細書においてグループAアニオンとして定義されるアニオン
を有する。
【0025】
別の実施形態において、本発明に有用なイオン液体は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14から選択される少なくとも1つのメンバーが1個または複数のフッ素を含むフッ素化カチオンを含む。これらの材料に含まれるのは、1つまたは複数のR、R、R、R、およびRがフッ素であってもよく;および1つまたは複数のR、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14がアルキル、アルケニルまたは1個または複数のフッ素化炭素原子を含有する芳香族基であってもよいフッ素化カチオン(過フッ素化されたアルキル、アルケニルおよび芳香族基を含む)である。
【0026】
本明細書においてグループBアニオンとして定義される、本発明の組成物に好ましいフッ素化アニオンは、[BF、[BFCF、[BF、[PF、[PF(C、[SbF、[CFSO、[HCFCFSO、[CFHFCCFSO、[HCClFCFSO、[(CFSON]、[(CFCFSON]、[(CFSOC]、[CFCO、[CFOCFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFHOCFCFSO、[CFHCFOCFCFSO、[CFICFOCFCFSO、[CFCFOCFCFSO、[(CFHCFSON]、[(CFCFHCFSON];およびFからなる群から選択される。
【0027】
別の実施形態において、本発明に有用なイオン液体は、上記のようなグループAカチオン;および上記のようなグループBアニオンを含む。
【0028】
別の実施形態において、本発明に有用なイオン液体は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14から選択される少なくとも1つのメンバーが1個または複数のフッ素を含む上記のようなグループAカチオン;ならびに上記のようなグループAアニオンから選択されるアニオンを含む。好ましい実施形態において、本発明に有用なイオン液体は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14から選
択される少なくとも1つのメンバーが1個または複数のフッ素を含む上記のようなグループAカチオン;ならびに上記のようなグループAアニオンから選択されるアニオンから本質的になる。
【0029】
別の実施形態において、本発明に有用なイオン液体は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14から選択される少なくとも1つのメンバーが1個または複数のフッ素を含む上記のようなグループAカチオンを含み;アニオンは上記のようなグループBアニオンを含む。
【0030】
別の実施形態において、本発明に有用な好ましいイオン液体は、カチオンとしてのイミダゾリウム、ならびに上記のようなグループBアニオン、および[CHOSOからなる群から選択されるアニオンを含む。好ましい実施形態において、本発明に有用なイオン液体は、カチオンとしてのイミダゾリウム、ならびに上記のようなグループBアニオン、および[CHOSOからなる群から選択されるアニオンから本質的になる。
【0031】
別の実施形態において、本発明に有用な好ましいイオン液体は、カチオンとしての1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、ならびに上記のようなグループBアニオン、および[CHOSOからなる群から選択されるアニオンを含む。
【0032】
別の実施形態において、本発明に有用な好ましいイオン液体は、カチオンとしての1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、ならびに上記のようなグループBアニオン、および[CHOSOからなる群から選択されるアニオンを含む。
【0033】
別の実施形態において、本発明に有用な好ましいイオン液体は、カチオンとしての1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、ならびにアニオンとしての[(CFCFSON]、[PF、または[HCFCFSOを含む。
【0034】
別の実施形態において、本発明に有用な好ましいイオン液体は、カチオンとしての1,3−ジメチルイミダゾリウム、ならびに上記のようなグループBアニオン、および[CHOSOからなる群から選択されるアニオンを含む。
【0035】
別の実施形態において、本発明に有用な好ましいイオン液体は、上記のようなグループAカチオンを含み;アニオンは[CHCOである。このグループの中でより好ましいイオン液体は、カチオンがアンモニウムカチオンであるものである。好ましい実施形態において、本発明に有用なイオン液体は、アンモニウムカチオンから本質的になり;アニオンは[CHCOである。特に好ましいイオン液体は、カチオンがN,N−ジメチルアンモニウムエタノールであるものである。
【0036】
イオン液体の混合物はまた、吸収冷却サイクルにおいて使用するために、アンモニアの貯蔵のために、アンモニアと混合するのに有用であり得る。
【0037】
本発明に有用なイオン液体を特徴付けるのに有用な方法は、「Standard Test Method for Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids and the Calculation of Dynamic Viscosity」、ASTM方法D445−88に開示されるように、温度範囲(283.15〜373.15K)にわたって毛細管粘度計(Cannon−Manningセミミクロ粘度計)を用いて粘度を測定することである。本発明に有用なイオン液体は、ASTM方法D445−88方法によって測定したときに、25℃において100センチポアズ(cp)未満の粘度を有するのが好ましい。イオン液体の粘度が低くなるほど、吸収サイクルを通して組成物を送るのに必要なポンプ能力が低くて済む。ポンプ能力がより低いと、吸収サイクルの全体効率が向上する。実施例に記載されるように計算される性能係数(COP)は、ポンプ能力要件を考慮に入れない。表Aは、本発明に有用ないくつかのイオン流体の粘度を記載している。
【0038】
【表1】

【0039】
アンモニアとイオン液体とを含む組成物は、秤量した量のイオン流体を密閉式容器に加えた後、必要に応じて加熱しながら減圧をかけて、残留水を除去して調製することができる。容器を秤量してからアンモニアガスを加えることができる。容器を密閉し、混合物をときどき撹拌することにより平衡化して、イオン液体中のアンモニアの溶液を得る。
【0040】
このアンモニア溶液を、無水アンモニアのための貯蔵媒体として用いることができる。アンモニア−イオン液体混合物の加熱は、アンモニアを気相中に送って、実質的に測定できない蒸気圧を有するイオン液体を残すのに十分なものである。アンモニア−イオン液体組成物を、約200℃、または約150℃、または好ましくは約100℃以下に加熱して、溶液からアンモニアを遊離させることができる。
【0041】
この組成物はまた、加熱または冷却のための吸収サイクルに有用である。本発明の一実施形態は、アンモニアと少なくとも1種のイオン液体とを含む組成物を含む吸収サイクルであり、この組成物は、約1〜約110バールの圧力において約−40〜約130℃の温度範囲にわたって約1〜約99モル%のアンモニアを含む。単純な吸収サイクルの概略図が図1に示される。この系は、圧縮器を吸収器−発生器溶液回路と取り換えた以外は通常の蒸気圧縮サイクルと同様の、膨張弁を有する凝縮器と蒸発器のユニットから構成される。この回路は、吸収器、発生器、熱交換器、圧力制御装置および溶液を循環させるためのポンプから構成され得る。
【0042】
一実施形態は、イオン液体が上記のようなグループAカチオン;および上記のようなグループAアニオンを含む吸収サイクルである。
【0043】
別の実施形態において、吸収サイクルは、出口を有する吸収器側と、出口を有する発生器側とを含み、吸収器側の出口におけるイオン液体の濃度が前記組成物の約70質量%を超え;発生器側の出口におけるイオン液体の濃度が前記組成物の約80質量%を超える。この実施形態において、好ましいイオン液体は、N,N−ジメチルアンモニウムエタノールカチオンを含む。
【0044】
別の実施形態において、吸収サイクルでは、吸収器側の出口におけるイオン液体の濃度が前記組成物の約80質量%を超え;発生器側の出口におけるイオン液体の濃度が前記組成物の約90質量%を超える。この実施形態において、好ましいイオン液体は、イミダゾリウムカチオンを含む。
【0045】
イオン液体およびアンモニアの出発体積は、吸収サイクルに用いられる特定の系の成分に左右されることとなる。
【0046】
吸収サイクルを理解し、サイクル性能を評価するために、温度−圧力−濃度(TPX)およびエンタルピー−温度(HT)線図などの熱力学特性チャートが必要とされる。これらのチャートは、蒸気圧縮サイクル分析において周知のPH(圧力−エンタルピー)またはTS(温度−エントロピー)線図に対応する。しかしながら、これらのチャートの使用は、圧縮プロセスが理論的に単一の等エントロピー経路である圧縮器での蒸気圧縮ほど単純でないことがあり、一方、吸収サイクルは、いわゆる発生器−吸収器溶液回路を用いるとともに、いくつかの熱力学的プロセスが関与する。
【0047】
蒸気圧縮サイクルにおけるPHまたはTS線図は、状態式(EOS)を用いて構成され、サイクル性能および全ての熱力学特性は、Shiflettらの米国特許出願公開第2006/0197053 A1号明細書に記載される説明および式にしたがって算出することができる。本発明のいくつかの組成物についてのこれらの算出の結果が表9に記載されている(実施例9)。周知の冷媒−吸収剤の組合せである、NH/HOについても比較のために算出した。NH/HOの場合、吸収剤HOは、発生器出口においてわずかでない蒸気圧を有し、実際の用途においては、吸収剤である水から冷媒を分離するための精留器(蒸留)ユニットが必要とされる。蒸気圧および精留器による追加の出力要件の影響は無視されているため;算出されたCOPは、この性能比較例について過大評価される。COP値が示すとおり、いくつかの組成物は、慣例のアンモニア−水吸収サイクルと同様の特性を有する。
【0048】
吸収サイクルおよび貯蔵プロセスに好ましい組成物は、約5モル%〜約95モル%のアンモニア;約10モル%〜約95モル%のアンモニア;および約25モル%〜約85モル%のアンモニアを有する。
【実施例】
【0049】
一般的な方法および材料
高純度の無水アンモニア(99.999%以上の純度、半導体グレード、CAS番号2664−41−7)を、MG Industries(Philadelphia,PA)から入手した。以下のイオン液体を実施例に用いた:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート([bmim][PF]、96%以上のアッセイ、CAS番号174501−64−5)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド([hmim][Cl]、97%以上のアッセイ、CAS番号171058−17−6)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([emim][TfN]、97%以上のアッセイ、CAS番号174899−82−2)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([bmim][BF]、97%以上のアッセイ、CAS番号174501−65−6)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート([emim][CHCOO]、90%以上のアッセイ、CAS番号143314−17−4)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルスルフェート([emim][EtOSO]、95%以上のアッセイ、CAS番号343573−75−5)、および1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート([emim][SCN]、95%以上のアッセイ、CAS番号331717−63−6)。それらをFluka(Buchs,Switzerland)から入手した(Sigma−Aldrich(United States)によっても流通されている)。N,N−ジメチルエタノールアンモニウムエタノエート(アセテートとも呼ばれる、99%以上のアッセイ)をBioniqs(York,England)から入手した。
【0050】
N,N−ジメチルエタノールアンモニウムエタノエートを除いた全てのイオン液体試料を、ホウケイ酸ガラス管に入れ、隔膜ポンプ(Pfeiffer、モデルMVP055−3)を用いて約3時間低真空をかけることによって、乾燥させ脱気した。次に、試料を約4×10−7kPaの圧力で乾燥させ、一方約348Kの温度で48時間にわたりイオン液体を同時に加熱し撹拌した。
【0051】
市販されていないアニオン(カリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、カリウム−1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート、カリウム−1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、およびナトリウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート)およびイオン液体(1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ブチル−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−プロピル−3−(1,1,2,2−TFES)イミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ブチル)ホスホニウム1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート、テトラデシル(トリ−n−ヘキシル)ホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)エタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ペンタフルオロエトキシ)スルホネート、およびテトラブチルホスホニウム1,1,2−トリフルオロ−2−(パーフルオロエトキシ)エタンスルホネート)の合成は、Shiflettらの米国特許出願公開第2006/0197053 A1号明細書に記載されている。
【0052】
以下の方法を用いて、アンモニアとイオン液体との混合物が可溶性であるかどうかを判定した。6つの静的相平衡セルを、図2に示されるように構成した。SWAGELOK取り付け具、2つのSWAGELOKボール弁(SS−426S4)、ステンレス鋼製の管、および圧力トランスデューサ(Dwyer Instruments、モデル682−5)を用いて各セルを作製した。セルを完全に満たすのに必要なメタノールの質量を測定することによって各セルの内部体積を算出した。充填温度におけるメタノールの密度が分かったら、体積を算出した。各セルの内部体積(V)は、約13.4〜15.3±0.1cmの範囲内であった。図2に示されるセルの下半分(パートA)を用いて、NH/イオン液体混合物を調製した。イオン液体を質量(0.5〜2g)だけ充填し、窒素パージされたドライボックス内で、0.1mgの分解能を有する分析用天秤で秤量した。開いたボール弁(弁1)に通したステンレス鋼製の針(Popper & Son,Inc.モデル7937、18×152.4mmのピペット針)を取り付けたシリンジを用いて、セルをイオン液体で満たした。ボール弁を閉じ、セルをドライボックスから取り外した。セルを隔膜ポンプに接続して、残留する窒素を除去し、再度秤量して、初期のイオン液体質量を得た。
【0053】
高圧ガスシリンダからNHガスを質量(0.02〜0.8g)だけ充填した。2段ガス調節器(Matheson Gas Products)を用いて、NHガス圧力を約500kPaに調節した。ガス調節器とセルとの間の試料管を、NHガスを充填する前に空にした。セルを分析用天秤上に配置し、所望の質量のNHが得られるまでガスをゆっくりと加えた。0.1gを超えるNHを必要とした試料については、セルをドライアイス中で冷却して、セル内のNHガスを凝結させた。セルに加えられる最終的な質量のNHを得るために、試料弁(弁1)を閉じ、セルをガスシリンダから脱離し、分析用天秤で秤量した。圧力トランスデューサを含むセルの上半分(パートB)を、Swagelok取り付け具を用いて下半分(パートA)に接続した。パートBの内部体積を、隔膜ポンプを用いて弁2を通して空にした。弁2を閉じて蓋をし、弁1を開いた。6つの試料セルをタンク内に入れ、タンク内に浸された銅コイルによって循環する、水浴(VWR International、モデル1160S)、または油浴(Tamson Instruments TV4000LT高温油浴)のいずれかといった外部温度浴によって温度を制御した。温度を最初に約283Kに設定した。試料セルを、激しく振とうして、タンク内に浸される前の混合を補助した。圧力トランスデューサの底2cmを含むセル全体が流体の下になるようにタンクにおける水または油のレベルを調整した。セルをタンク内で前後に揺すって、混合を促進した。圧力の変化が測定されなくなるまで圧力を毎時記録した。確実に、試料を平衡状態で適切に混合するために、セルをタンクから直ちに取り外し、再度激しく振とうした。セルをタンクの中に戻し、圧力の変化が測定されなくなるまでこのプロセスを繰り返した。全ての場合において、セルは4〜8時間で平衡状態に達した。このプロセスを、約298K、323Kおよび348Kのより高い温度で繰り返した。[bmim][PF]および[bmim][BF]の実施例について355Kでさらに測定を行い、そして、([emim][EtOSO]、[emim][SCN]、およびN,N−ジメチルエタノールアンモニウムエタノエートについて373Kで測定を行った。
【0054】
Dwyer製の圧力トランスデューサを、Paroscientific製のモデル760−6K圧力トランスデューサ(0〜41.5MPaの範囲、製造番号62724)に対して較正した。この装置は、フルスケール(FS)の0.008%の追跡可能な精度(traceable accuracy)を有する、NIST(米国標準技術局)が認可した二次圧力標準である。また、圧力トランスデューサが水浴または油浴中に沈められるため、圧力較正を温度の影響についても補正した。Fluke製の温度計を、標準的な白金抵抗温度計(SPRTモデル5699、Hart Scientific、73〜933Kの範囲)を用いて較正し、それを読み取った(SPRTモジュール2560を有するBlackstack製のモデル1560)。Blackstack製の装置およびSPRTはまた、NISTの追跡可能な精度が±0.005Kまでの認可された二次温度標準である。温度および圧力の不確実性は、フルスケールの±0.1Kおよび±0.13%(0〜7MPa)であった。調製される原料組成物および試料容器の体積に基づいて液相NHモル分率を算出し、詳細な方法を以下のサブセクションに記載する。
【0055】
1モルのNH(M)および1モルのRTIL(M)を含むNH+RTILの混合物を容器(体積V)で調製した場合、以下の原理を用いて、所与の系の温度および圧力(すなわち、平衡TおよびP)での液相中のNHのモル分率(x)を求めた。
【0056】
本発明の方法は、以下のN−成分系についての液体モル体積式に基づいている。
【数1】

【0057】
これは、二成分相互作用パラメータ(binary interaction parameter)を有する一般的な3次EOS中の体積パラメータ(b)のための混合則と同じ形式である。二成分系(N=2)の場合、
【数2】

であり、式中、
【数3】

(ML1が、液相中のNHのモルである)
である。
【0058】
12=0である(またはmij=0である)場合;すなわち過剰体積がゼロである場合式1および2が正しいことがここで言及されるべきである。
【0059】
物理的な液体体積Vが下式によって求められる。
【数4】

【0060】
次に、物質収支式(mass balance equation)は、気相が純粋なNHである場合、以下のようになる。
=D(V−V)+ML1 (5)
【0061】
式2および3を用いて式4を式5に挿入し、そして式を整理すると、以下のML1についての二次方程式を得ることができ、
【数5】

その解は、
【数6】

であり、式中、A、B、およびCが下式によって求められる。
【数7】

【数8】

【数9】

以下の表記を用いる。
=系TおよびPにおけるNHガスのモル密度(モル/cc)であり、
【数10】

=系TにおけるNH飽和液体モル体積(cc/モル)であり、
【数11】

=系TにおけるRTIL飽和液体モル体積(cc/モル)であり、
12=混合物の体積についての二成分相互作用パラメータである。
【0062】
【数12】

は、REFPROP(NIST基準)における状態式などの正確な状態式を用いて計算され、一方
【数13】

は、RTILの液体密度および分子量から得られる。液体密度(ρ)を、線形T関数を有する実験データに当てはめた。
ρ=a+aT (11)
【0063】
次に、m12の固有値を設定することによって、式7の解により式3のxを求める。約xについてのこの情報で、本目的には十分であるが、以下の関係式を示すことは有益である。液体体積、式4および液体(モル)品質係数αも計算され得る。
【数14】

【0064】
また、過剰モル体積
【数15】

が、式2に基づいた下式によって求められる。
【数16】

過剰モル体積が、50/50モル%混合物において、全モル体積の10%である場合、m12は±0.2となり得る。次に、m12は±0.2の代わりにm12=0を用いる場合、xの最大誤差は、最高Tおよび最高xにおいて約0.3モル%であり、典型的な誤差は、0.1モル%以下である。本研究において、本発明者らは、298KにおけるNH(約47〜50モル%)と[emim][TfN]と混合物の過剰モル体積測定;
【数17】

に基づいて、m12が0.2であると推定した。
【0065】
実施例1
[bmim][PF]中のアンモニアの実験溶解度(TPx)データを表1にまとめる。
【0066】
【表2】

【0067】
実施例2
[bmim][BF]中のアンモニアの実験溶解度(TPx)データを表2にまとめる。
【0068】
【表3】

【0069】
実施例3
[emim][TfN]中のアンモニアの実験溶解度(TPx)データを表3にまとめる。
【0070】
【表4】

【0071】
実施例4
[hmim][Cl]中のアンモニアの実験溶解度(TPx)データを表4にまとめる。
【0072】
【表5】

【0073】
実施例5
[emim][CHCOO]中のアンモニアの実験溶解度(TPx)データを表5にまとめる。
【0074】
【表6】

【0075】
実施例6
[emim][EtOSO]中のアンモニアの実験溶解度(TPx)データを表6にまとめる。
【0076】
【表7】

【0077】
実施例7
[emim][SCN]中のアンモニアの実験溶解度(TPx)データを表7にまとめる。
【0078】
【表8】

【0079】
実施例8
N,N−ジメチルエタノールアンモニウムエタノエート[(CHNHCHCHOH][CHCOO]中のアンモニアの実験溶解度(TPx)データを表8にまとめる。
【0080】
【表9】

【0081】
実施例9
「Theoretical performances of various refrigerant−absorbent pairs in a vapor−absorption refrigeration cycle by the use of equations of state」、2005年、Applied Energy、80、383〜399においてヨコゼキ(Yokozeki)によって開発されたコンピュータコードを用いて、吸収サイクルの計算を、本発明の組成物向けに開発した。サイクルの計算においてなされる詳細な条件(assumption)は、当該引用文献、および米国特許出願公開第2006/0197053 A1号明細書(Shiflettら)の、具体的には段落0063〜0094に記載されている。状態式のための適切な二成分相互作用パラメータを、本PTxデータを用いて決定した。サイクル性能についての本発明の結果が、周知のアンモニア−水系と、表9において比較されている。性能係数(COP)とも呼ばれるエネルギー効率性能が、上記の引用文献において詳細に説明されている。アンモニア−RTILのCOPは、アンモニア−水系のCOPよりやや低い。しかしながら、この計算では、かなりの蒸気圧を有する水を凝縮させるのに必要な精留器ユニットに必要な余分なエネルギーコストが、アンモニア−水の場合に考慮されなかった。イオン液体は測定可能な蒸気圧を有さないため、サイクルにおいて精留器が不要である。
実際の用途においては、アンモニア+イオン液体の組合せは、アンモニアおよび水を用いる従来の吸収サイクルのサイクル性能に匹敵し得る。さらなる利点は、吸収剤のための精留器が不要であるため、サイクル装置のコストが削減されることである。
【0082】
【表10】

【0083】
実施例10
この実施例は、イオン液体が、圧力に応じて大量のアンモニアを可逆的に吸収できることを示す。図3は、イオン液体[emim][TfN]中に吸収されるアンモニアのモル%のプロットである。298Kにおいて、イオン液体は、80kPa(0.08MPa)で約10モル%を吸収する。これは、イオン液体1グラム当たり約0.3ミリモルの貯蔵容量に換算され、上述した固体1グラム当たり25〜40ミリモルよりはるかに少ない。しかしながら、温度を283Kまで下げた場合、貯蔵容量は、80kPa(0.08バール)で約20モル%まで増加する。これはイオン液体1グラム当たり0.6ミリモルである。最も重要なことに、圧力を上げた場合、大量のアンモニアをイオン液体中に貯蔵することができる。例えば、約1MPaの圧力において、90モル%を超えるアンモニアをイオン液体中に貯蔵することができる。これはイオン液体1グラム当たり約25ミリモルのアンモニアである。これは最良の固体吸着剤に十分に匹敵し、最も重要なことに、さらなるアンモニアを貯蔵するために、イオン液体の能力を損なわずに吸収/脱着プロセスが完全に可逆性である。また、[emim][アセテート]などの、より低い分子量を有する他のイオン液体が、イオン液体1グラム当たり50ミリモル近くのさらに高い濃度のアンモニアを達成することができる。また、温度を283Kまで下げた場合、0.5MPa(または5気圧)近くの圧力により、イオン液体1グラム当たり25〜50ミリモルのアンモニアという同じアンモニア貯蔵容量を達成することができる。最後に、この実施例は、あくまでも例示である。80kPaなどのさらに低い圧力においてイオン液体1グラム当たり25〜50ミリモルのアンモニアを達成するために温度および圧力の他の組合せ(すなわち、283Kより低い温度)が可能であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアと少なくとも1つのイオン液体とを含む組成物であって、約1〜約110バールの圧力で約−40〜約130℃の温度範囲にわたって約1〜約99モル%のアンモニアを含む組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのイオン液体が、
【化1】

【化2】

[式中、R、R、R、R、R、およびR10が独立して、
(i)水素、
(ii)場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン;
(iii)O、NおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、かつ場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン;
(iv)C〜C20非置換アリール、またはO、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール;および
(v)C〜C25置換アリール、またはO、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリールであって;
(1)場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン、
(2)OH、
(3)NH、および
(4)SH
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基を有する置換アリールまたは置換ヘテロアリール
からなる群から選択され;
、R、R、R、およびRが独立してRおよびハロゲンから選択され;
11、R12、R13、およびR14が独立してRから選択され、ただし、R11、R12、R13、およびR14が水素ではなく;そして
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14のうちの少なくとも2つが、場合により、一緒になって環式または二環式アルカニルまたはアルケニル基を形成してもよい]
からなる群から選択されるカチオン;
ならびに、
[CHCO、[HSO、[CHOSO、[COSO、[AlCl、[CO2−、[HCO、[NO、[NO、[SO2−、[PO3−、[HPO2−、[HPO、[HSO、[CuCl、Cl、Br、I、SCN、およびフッ素化アニオンからなる群から選択されるアニオン
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14のうちの少なくとも1つが、1個またはそれ以上のフッ素を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つのイオン液体がフッ素化アニオンを含み、フッ素化アニオンが、[BF、[BFCF、[BF、[PF、[PF(C、[SbF、[CFSO、[HCFCFSO、[CFHFCCFSO、[HCClFCFSO、[(CFSON]、[(CFCFSON]、[(CFSOC]、[CFCO、[CFOCFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFHOCFCFSO、[CFHCFOCFCFSO、[CFICFOCFCFSO、[CFCFOCFCFSO、[(CFHCFSON]、[(CFCFHCFSON]、およびFからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
カチオンがイミダゾリウムを含み、アニオンが、[BF、[BFCF、[BF、[PF、[PF(C、[SbF、[CFSO、[HCFCFSO、[CFHFCCFSO、[HCClFCFSO、[(CFSON]、[(CFCFSON]、[(CFSOC]、[CFCO、[CFOCFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFHOCFCFSO、[CFHCFOCFCFSO、[CFICFOCFCFSO、[CFCFOCFCFSO、[(CFHCFSON]、[(CFCFHCFSON]、および[CHOSOからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
カチオンが1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
カチオンが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
アニオンが、[(CFCFSON]、[PF、および[HCFCFSOからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
カチオンが1,3−ジメチルイミダゾリウムを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
アニオンが[CHCOである、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
カチオンがN,N−ジメチルアンモニウムエタノールである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
約5〜95モル%のアンモニアを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
イオン液体が25℃で100cp未満の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
アンモニアと少なくとも1つのイオン液体とを含む組成物を含む吸収サイクルであって、組成物が、約1〜約110バールの圧力で約−40〜約130℃の温度範囲にわたって約1〜約99モル%のアンモニアを含む、吸収サイクル。
【請求項15】
少なくとも1つのイオン液体が、
【化3】

【化4】

[式中、R、R、R、R、R、およびR10が独立して、
(i)水素、
(ii)場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン;
(iii)O、NおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、かつ場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン;
(iv)C〜C20非置換アリール、またはO、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール;および
(v)C〜C25置換アリール、またはO、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリールであって;
(1)場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン、
(2)OH、
(3)NH、および
(4)SH
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基を有する置換アリールまたは置換ヘテロアリール
からなる群から選択され;
、R、R、R、およびRが独立してRおよびハロゲンから選択され;
11、R12、R13、およびR14が独立してRから選択され、ただし、R11、R12、R13、およびR14が水素ではなく;そして
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14のうちの少なくとも2つが、場合により、一緒になって環式または二環式アルカニルまたはアルケニル基を形成してもよい]
からなる群から選択されるカチオン;
ならびに、
[CHCO、[HSO、[CHOSO、[COSO、[AlCl、[CO2−、[HCO、[NO、[NO、[SO2−、[PO3−、[HPO2−、[HPO、[HSO、[CuCl、Cl、Br、I、SCN、およびフッ素化アニオンからなる群から選択されるアニオン
を有する、請求項14に記載の吸収サイクル。
【請求項16】
出口を有する吸収器側と、出口を有する発生器側とを含み、吸収器側は組成物の約70質量%より大きい出口でのイオン液体の濃度を有し、発生器側は組成物の約80質量%より大きい出口でのイオン液体の濃度を有する、請求項15に記載の吸収サイクル。
【請求項17】
吸収器側は組成物の約80質量%より大きい出口でのイオン液体の濃度を有し、発生器側は組成物の約90質量%より大きい出口でのイオン液体の濃度を有する、請求項16に記載の吸収サイクル。
【請求項18】
イオン液体がイミダゾリウムカチオンを含む、請求項17に記載の吸収サイクル。
【請求項19】
イオン液体がN,N−ジメチルアンモニウムエタノールカチオンを含む、請求項16に記載の吸収サイクル。
【請求項20】
アンモニアをイオン液体に吸収させて、約1〜約110バールの圧力で約−40〜約130℃の温度範囲にわたって約1〜約99モル%のアンモニアを含む組成物を得る工程を含む、アンモニアの貯蔵方法。
【請求項21】
組成物が、約10〜95モル%のアンモニアを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
イオン液体が、
【化5】

【化6】

[式中、R、R、R、R、R、およびR10が独立して、
(i)水素、
(ii)場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン;
(iii)O、NおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、かつ場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン;
(iv)C〜C20非置換アリール、またはO、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25非置換ヘテロアリール;および
(v)C〜C25置換アリール、またはO、NおよびSからなる群から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するC〜C25置換ヘテロアリールであって;
(1)場合によりCl、Br、F、I、OH、NHおよびSHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで置換される、−CH、−C、またはC〜C25直鎖、分岐または環状アルカンまたはアルケン、
(2)OH、
(3)NH、および
(4)SH
からなる群から独立して選択される1〜3個の置換基を有する置換アリールまたは置換ヘテロアリール
からなる群から選択され;
、R、R、R、およびRが独立してRおよびハロゲンから選択され;
11、R12、R13、およびR14が独立してRから選択され、ただし、R11、R12、R13、およびR14が水素ではなく;そして
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14のうちの少なくとも2つが、場合により、一緒になって環式または二環式アルカニルまたはアルケニル基を形成してもよい]
からなる群から選択されるカチオン;ならびに、
[CHCO、[HSO、[CHOSO、[COSO、[AlCl、[CO2−、[HCO、[NO、[NO、[SO2−、[PO3−、[HPO2−、[HPO、[HSO、[CuCl、Cl、Br、I、SCN、およびフッ素化アニオンからなる群から選択されるアニオン
を有する、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513673(P2010−513673A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542893(P2009−542893)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/025952
【国際公開番号】WO2008/082561
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】