アンモニアに基づく水素発生装置及びその使用方法
【課題】アンモニアに基づいた水素発生装置およびその使用に関連する方法に関する教唆を提供すること。
【解決手段】典型的な方法および装置は、触媒によって覆した担体を含んでいる反応室、および触媒によって被覆した担体を含んでいる燃焼室を備える熱触媒水素発生器からなる。典型的な触媒によって被覆した担体としては、特に限定されるものではないが、金属フォーム、モノリス、セラミックフォームまたはセラミックモノリスが挙げられる。
【解決手段】典型的な方法および装置は、触媒によって覆した担体を含んでいる反応室、および触媒によって被覆した担体を含んでいる燃焼室を備える熱触媒水素発生器からなる。典型的な触媒によって被覆した担体としては、特に限定されるものではないが、金属フォーム、モノリス、セラミックフォームまたはセラミックモノリスが挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、米国陸軍研究所との契約(契約番号:DAAD19−01−C−0002)の下になされたものであり、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(発明の属する技術分野)
本発明は概して化学技術に関する。より詳細には、本発明はアンモニア源からのアンモニアの分解により水素ガスを発生させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水素/空気燃料電池(H/AFC)は、電池の代わりとして非常に大きな可能性を有している。これらは非常にエネルギー密度の濃い燃料として機能しうるので、燃料電池に基づく電源装置は、同等の最新電池に較べて高いエネルギー対重量比率を提供する。燃料電池は、戦場で携帯するハイテク装備をサポートするために兵士が運ぶ必要がある電源装置の重量を減らすための多くの取り組みがなされている軍隊では特に関心が高い。また、商業的な用途、特に小型で低重量が望まれる商業的な用途において、燃料電池に基づく電源装置の利用に関して少なからぬ将来性がある。
【0004】
機能上、燃料電池は水素と酸素が反応して水を生成することによって発電する。酸素は、通常、周囲の大気から得ることができるので、燃料電池を作動させるためには水素源のみを供給する必要がある。高圧縮したガスでさえ相当な体積を占めるため、単に圧縮水素を供給することが常に実行可能な選択肢であるわけではない。占める体積がより少ない液体水素は低温の液体であり、液体状態を維持するために必要な極低温を保つために大量のエネルギーを必要とする。
【0005】
いくつかの代替アプローチが利用できる。これら代替法としては、炭化水素及びメタノール燃料の改質、金属水素化物類への水素吸蔵、水素を発生させる化学反応、並びにアンモニア分解が挙げられる。アンモニア分解反応は下式で表わされる:
2NH3+エネルギー → N2+3H2
【0006】
アンモニアから水素を発生させることは特に魅力がある。というのも、アンモニア1kg当たりの使用可能な水素収率が比較的高く、アンモニアを分解して水素を発生させることは汎用されており、比較的単純な反応であるからである。アンモニアはすぐに入手でき、比較的安価であり、また相当量の水素を提供するため、アンモニアを処理して燃料電池やその他の用途のために水素を発生させる効率的な装置を開発することが望まれている。
【0007】
H/AFC等の装置が、電池に基づく電源装置と競合するためには、小型化と信頼性を必要とする。更に望ましいのは、1リットル未満の体積で重量が1kg未満、総エネルギー生産量が1kWhで最大50ワットの電力を産生しうる携帯用水素供給装置である。市販の金属水素化物貯蔵シリンダーとしては、100W−hに相当する水素を含む920gのシリンダーが入手できる;従って、1kgの系に対する1kWhの全エネルギー生産量とは、市販の装置を超えてエネルギー密度が著しく増加することを意味している。
【0008】
燃料電池用にアンモニアを利用して水素を製造するための課題の一つは、H/AFCが水素供給ガス中のアンモニアに耐えられないことであり、それ故、アンモニア分解により生成するH2/N2ガス混合物中の微量のアンモニアを、該混合物が燃料電池に供給される前に除去しなければならない。市販のアンモニア吸着剤(例えば、酸含浸カーボン)をこの目的に使用できるが、もしアンモニア分解反応器が高転換効率でなければ、かかる材料の必要な吸着剤量は非常に多量になる可能性がある。
【0009】
比較的高い反応温度(850℃超)を用いると、H2/N2生成物中のアンモニア量、また必要な吸着剤の量を減ずる。しかしながら、この高い反応温度を用いると、大きな設計課題を課す。必要な吸着剤の量を減らす一方で、高温で使用する反応器は、インコネルやモリブデンのような高温耐火性金属を使用して構築しなければならない。これら材料は、ステンレス鋼又はチタン等のより標準的な材料に使用可能である、より標準的であるろう付け技術やレーザー溶接技術とは対照的に、しばしば拡散接合のような複雑な製造技術を必要とする。
【0010】
更に、既知の設計では、反応器の周囲環境への熱損失が、反応器の温度が高くなるにつれて増加する。反応器の温度が高くなると、全エネルギー効率が減少するか、又は追加断熱材の必要性により装置のサイズと重量が増加することになる。
【0011】
更に、水素発生反応器は触媒を用いる。触媒は、該触媒がアンモニア分解反応を容易にするライトオフ温度と称する最低温度、及び、もしあれば通常触媒及び支持マトリクスの関数である最高使用温度を有する。触媒材料は、しばしば支持マトリクス中に分散される。例えば、触媒材料をアルミナ支持体上に分配することは非常に一般的である。かかる支持体は、最高の許容運転温度を有する。例えば、850℃を超えると、アルミナ支持体は焼結しうる(即ち、アルミナ支持体の構成材が溶融し始める)。この温度において、触媒の効率は劇的に落ちる。結果として、850℃超の温度は、多くのタイプの潜在触媒、特に担持触媒には適さない。
【0012】
反応器の温度を低下させ且つH2/N2生成物中の残留アンモニアの水準を増加させることによって、装置のデザイン上の制約をより少なくできる。従来の材料及び製造技術が使用可能であり、且つより多くの種類の触媒類及び触媒担体類を使用できる。しかしながら、先行技術の設計では、残留アンモニアを除去するために比較的大容量の吸着剤を必要とし、このことは低温水素発生装置の質量を著しく増大させる。
【0013】
小型の水素発生装置を作ることは燃料電池技術の利用性を増加させるために不可欠であるので、比較的低い反応器温度装置を使用することを可能にするのに必要な吸着剤の質量を減少させることは、かかる小型装置の大きさを最小化するために不可欠である。例えば、50ワットの電力及び1kWhのエネルギーを生成することが可能で、1kgの質量を有する目的装置において、もしアンモニア反応器を99.0%の転換効率で運転するには、反応器から排出されるH2/N2ガス混合物から、全量で3.33gのアンモニアを除去しなければならない。市販のアンモニア吸着剤は、市販グレードのアンモニア中に通常存在する微量の(ppmレベル)水の存在下においてアンモニア(ガス流中に比較的低濃度のアンモニアが生じた場合)の質量の約1%未満のみ収集できるため、99.0%の転換率でアンモニア分解反応器を運転するためには、約333gの吸着剤を必要とする。従って、吸着剤の質量のみで目的質量の3分の1に相当し、水素発生器の他の要素に使用可能な質量を非常に少なくする。結果として、大量の吸着剤を使用する必要なしに850℃未満の温度で運転するアンモニアに基づく水素発生装置の開発が更に望まれる。
【0014】
燃料電池及びその他の用途に使用するための小型のアンモニアに基づく水素発生装置を提供する更なる取り組みは、所望の小型化を達成する反応器の選択にある。反応器を評価する際に考慮すべき要素の一つは、所望の転換効率を達成するのに必要な滞留時間である。かかる滞留時間が長いほど、より大きな反応器容積を必要とする。小型のアンモニアに基づく水素発生装置を実現するため、非常に小容量の反応器の使用を可能にするには、非常に短い滞留時間が必要となる。反応器の大きさが増加するほど、重量も増加する。
【0015】
従来の大型水素発生反応器は、充填床をしばしば使用し、この場合アンモニアをミリメートルサイズの触媒材料のペレットを含む加熱した容器に通す。多くの場合、これらの反応器における実際の反応速度は、熱及び質量移動抵抗のために、理論的に可能な反応速度(即ち、本来の反応速度に基づいて予期される速度)よりも著しく低い。それ故、速やかな熱及び質量移動、並びに短い滞留時間に有利な寸法の反応器を提供することが更に必要となる。
【0016】
本開示は、比較的低温(例えば約550℃から約650℃)で運転する燃料電池及びその他の用途での使用のための小型のアンモニアに基づく水素発生装置を提供するもので、更にH2/N2生成物から残留アンモニアを除去するの用いる大量の吸着剤を必要とせず、また充填床反応器の使用を回避する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
現在、本発明によれば、燃料電池及びその他の用途での使用のための小型のアンモニアに基づく水素発生装置が見出されている。かかる水素発生装置は比較的低温、好ましくは約550℃から約650℃、更に好ましくは約550℃から約580℃で作動し、更に残留アンモニアを除去するのに用いる大容量の吸着剤を必要としない。その上、好ましい実施態様においては、前記水素発生装置が充填床反応器を使用しない。
【0018】
いくつかの実施態様において、前記水素発生装置は、燃焼室と熱交換関係にある反応室を有する熱触媒反応器を使用する。好ましい実施態様において、かかる反応器は、頂板、底板、及び頂板と底板の間に配置した反応器コアにより形成する。前記反応器コアは反応表面及び燃焼表面を有し、各表面は対向端及び対向面を画成する隆起した周縁を有する。反応表面及び頂板は一緒に反応室を画成し、燃焼表面及び底板は一緒に燃焼室を画成する。
【0019】
特定の実施態様において、前記反応器コアは、反応表面から延在する相隔たる複数個の放熱フィンの第一のセットと、燃焼表面から延在する相隔たる複数個の放熱フィンの第二のセットとを有する。いくつかの実施態様において、フィンの少なくとも一つのセットは、約0.5mmの厚さ、約2mmの高さ及び約50mmの長さを有し、また隣接フィン間の離間隔が約1mmである。
【0020】
第一のセットのフィンは複数個の燃焼チャネルを画成し、また第二のセットのフィンは対向側に平行しかつ対向端から相隔たる複数個の反応チャネルを画成する。いくつかの実施態様において、これらチャネルのセットの少なくとも一つによって形成した流路は直線である。代替の実施態様において、チャネルのセットの少なくとも一つによって形成した流路はジグザグである。また、いくつかの実施態様において、白金燃焼触媒のような燃焼触媒を、フィンの第一のセットの第二の端の間で燃焼室内に配置する。
【0021】
本発明の利点は、反応器をチタン又はステンレス鋼のような難溶性金属から製造できることである。本発明の他の利点は、反応室に600℃以下のライトオフ温度を有するアンモニア分解触媒を充填できることである。好ましい触媒としては、ルテニウム又はニッケルを含有する触媒が挙げられる。いくつかの実施態様においては、前記触媒を反応チャネル中に充填するか、代替の実施態様においては、前記触媒を反応室内のチャネルの内部表面上に被覆する。
【0022】
一実施態様において、メソチャネルが頂板と底板の間に組み込み、また従属し、またこの間に延在し、これを封止させた際に反応器コアで分離された二室をもたらし、最初に記載したような反応器コアを含ものと機能的に類似の熱触媒反応器になる。また、分離板及び端板(頂板及び底板)を変更すると製造コストの減少をもたらす。
【0023】
一典型的実施態様において、熱移動及び反応速度を高めるメソチャネルの流体流路容積は、かかるチャネルを頂板、底板及び反応器コアなどのような部品に機械加工することによってではなく、中規模程度の流体流路容積を持つ多孔性基板を組み込むことによって組み入れる。前記多孔性基板は金属又はセラミックからなり、反応室及び燃焼室を画成する金属表面と緊密に接触する。多孔性金属基板を用いて燃焼室から反応室への熱移動速度を高めることが好ましい。多孔性金属基板の好ましい典型的な候補としては、メッシュ、フェルト及びポーバイル社(Porvair, lnc)(ヘンダーソンビル、サウスカロライナ)から入手可能な十分に焼結させた開放気孔の網状/泡状基板が挙げられる。例えば、ポアサイズが1インチ当たり10から40孔(PPI)の孔の大きさを有する金属基板は、約0.5mmから約2.0mmの中規模程度の孔径、従って流れ大きさを与える。かかる多孔性金属フォームは高温で扱うことが可能な材料中で利用可能であり、こういった材料としては、特に限定されないが、FeCrAlY、インコーネル625及びステンレス鋼31が挙げられる。高温での良好な機械的強度に加えて、更に材料が耐腐食性や耐酸化性を示すことが好ましい。また、アンモニアは腐食性の物質であるので、化学的に不活性であるセラミック基板(ポーバイル社から提供されているような)も望ましい。
【0024】
一実施例において、これらの多孔性金属フォームは、網状の前駆物質上に金属塗膜を塗布し、次に熱処理して前駆物質を壊し、更に全属基板を焼結して硬い構造を得ることによって形成する。ベース部から延在するチャネル様の突出部を含む網状の前駆物質を供給することにより、生成した金属フォームも、更にチャネル様の造作を含む。かかるフォームを例えば触媒塗膜を支持するのに利用する場合、かかる付加的な造作を有するフォームを使用して、更に熱移動速度を高め、利用可能な表面積を増大することができる。
【0025】
反応室内のメソチャネルの構造は、中程度の流れ大きさを有する多孔性金属フォームを組み込むことによって実現し、この多孔性金属フォームは、燃料を改質して水素を生成するのに適切な触媒で被覆する。
【0026】
熱触媒反応器に加えて、本発明の水素発生装置は、アンモニア供給源、アンモニアをアンモニア供給源から前記反応器に輸送するためのアンモニア供給ライン、水素を前記反応室から輸送するための反応生成物供給ライン、及び前記反応器に操作上接続した熱源を備える。いくつかの実施態様においては、アンモニア供給ライン及び反応生成物供給ラインの一つが、前記反応器コアの第一の対向端部から入り、前記フィンの第二のセットと平行で前記反応器コアの方に延在し、前記反応器の対向端に隣接した点で終端する一方、他のものが前記第一の対向端で終端する。また、いくつかの実施態様において、前記反応室の外部に位置する前記反応生成物供給ラインの少なくとも一部を、アンモニア供給ラインの外側で同軸上に配置する。
【0027】
いくつかの実施態様において、前記熱源はアンモニア供給源と流体接続したアンモニア燃焼室である。他の実施態様において、前記熱源は電池又は燃料電池のような電熱器である。
【0028】
またその他の実施態様において、前記熱源は炭化水素燃焼器である。これらの実施態様において、燃焼流体供給ラインは、可燃性の炭化水素、好ましくはブタンを炭化水素供給源から燃焼室に流体供給し、排気ラインは燃焼副生成物を燃焼室から除去する。また、これら実施態様のいくつかにおいて、燃焼流体ライン又は排気ラインの一つが前記反応器コアの第一の対向端から入り、前記フィンの第一のセットに平行で前記反応器コアの方に延在し、前記反応器の対向端に隣接した点で終端する一方、他のものは前記第一の対向端で終端する。いくつかの実施態様において、水素発生装置は、残留アンモニアを水素反応生成物から除去するための反応生成物供給ラインに接続した吸着剤供給源を更に備える。好ましい実施態様において、前記吸着剤が酸含浸炭素吸着剤、より好ましくは炭素1グラム当たり2ミリモルの強酸吸着部位から5ミリモルの強酸吸着部位を有する酸含浸炭素吸着剤である。特定の実施態様において、第一、第二及び第三の吸着剤供給源と、反応生成物供給ラインの水素反応生成物からの流れを前記第一、第二又は第三の吸着剤供給源の少なくとも一つ若しくはそれらの組み合わせに選択的に指向させるための第一、第二及び第三のバルブとを少なくとも有する複数個の吸着剤供給源を与える。
【0029】
また、いくつかの実施態様において、アンモニア供給ラインが熱伝導材料からなり、吸着剤供給源を通過する。いくつかの実施態様は、水素から残留アンモニアを除去するための反応生成物供給ラインに接続した第二の吸着剤供給源を、アンモニア供給源からのアンモニアを第一又は第二の吸着剤供給源の何れかに選択的に指向させるための第一バルブ並びに反応性生物を第一又は第二の吸着剤供給源の何れかに選択的に指向させるための第二バルブと共に備える。特定の実施態様において、使用する吸着剤材料の種類及び再生手順に従い回転ベッド及び回転弁を用いて、吸着剤供給源を直ちに再循環させることができる。
【0030】
いくつかの実施態様において、水素発生装置は、前記反応器と前記吸着剤供給源の間で水素流体ライン中に配置した熱交換器、好ましくは向流式熱交換器を備える。これらの実施態様において、アンモニア供給ラインが熱伝導性材料からなり、熱交換器の中を通っている。好ましい実施態様において、前記熱交換器を前記反応器と前記吸着剤供給源の間で燃焼副生成物排気ライン中に配置する。いくつかの実施態様において、アンモニア除去粗選ユニットを前記熱交換器と吸着剤供給源の間に配置する。前記粗選ユニットは、微量のアンモニアの大部分を改質流中から除去するように設計されている。微量のアンモニアが前記粗選ユニットを通過した後に残っている場合、下流の吸着剤カラムによって除去する。典型的な粗選ユニットは、燃焼室に向かって流れるアンモニアを含まない空気によって改質流からアンモニアを抽出するアンモニア透過膜からなる。改質流から燃焼室行きの空気によって取り出し抽出したアンモニアを、燃焼機内部で燃焼し、周囲に放出しない。
【0031】
本発明により、水素を発生させる方法が更に見出された。該方法は、アンモニアを熱触媒水素発生反応器に導入し、熱を該熱触媒水素発生反応器に供給し、その後反応器内のアンモニアを850℃未満、好ましくは550℃から650℃の間の温度にアンモニアを水素と窒素に分解するに十分な時間加熱し、次いで水素を含む反応生成物を前記反応器から除去することを備える。
【0032】
水素発生装置の特定の実施態様は、更に、触媒被覆基板を含む反応室と、これと熱交換関係にある燃焼室とを有する熱触媒水素発生反応器を備える。また、前記燃焼室も、触媒被覆基板を含む。典型的な触媒被覆基板としては、特に限定しないが、金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォームまたはセラミックモノリスが挙げられる。前記触媒被覆基板は、近似孔径が約0.2mmから約3.0mm、更に好ましくは約0.5mmから約2.0mmである。
【0033】
実施態様は、更に、前記反応チャネルのフィンの第一セットの第二端と燃焼流体ラインの端との間で燃焼室に配置した燃焼触媒を含む。該燃焼触媒は貴金属を含むことが好ましい。また、生成した水素含有ガスから残留アンモニアを除去するために反応生成物供給ラインに接続した第一の吸着剤供給源を特定の実施態様においても使用することができる。
【0034】
更なる実施態様は複数の吸着剤を含む。一実施例において、生成した水素から残留アンモニアを除去するために、第三の吸着剤供給源を前記反応生成物供給ラインに接続する。第一バルブを設けて、アンモニアをアンモニア供給源から第一、第二又は第三の吸着剤供給源の何れかへ選択的に指向させる。第二バルブを設けて、反応生成物を第一、第二又は第三の吸着剤供給源の何れかに選択的に指向させる。またその他の実施態様において、複数の吸着剤供給源の一又はそれ以上がアンモニアを吸着している間に、複数の吸着剤供給源の一又はそれ以上を再生する。一実施態様において、再生中、吸着剤から離れて脱着したアンモニアを含む流れを燃焼室に戻す。一実施例としては、アンモニアを駆遂するのに熱を利用する再生が利用できる。別の実施例において、適切な吸着剤を利用することにより、圧力スイング吸着ユニットを使用することができる。
【0035】
有用な吸着剤としてモレキュラーシーブ型吸着剤が挙げられる。特定の配置においては、前記反応生成物をアンモニアを選択的に除去する膜ユニットに通して前記反応生成物中の残留アンモニアを減少させることにより、前記吸着剤供給源の負荷を減ずることができる。更なる実施態様において、燃焼室への供給空気を膜ユニットの下流側又は透過部に通して、膜を通したアンモニア輸送速度を改善し、回収したアンモニアの燃焼室への輸送を容易にする掃引ガスとして利用する。水素発生装置の特定の実施態様は、反応生成物ラインと流体接続する水素精製ユニットを備える。該水素精製ユニットは、特に限定されないが、水素分離膜ユニット及び/又は水素化物圧縮機及び/又は圧力スイング吸着ユニットとすることができる。
【0036】
ここに開示したアンモニアに基づく水素発生装置の特定の実施態様は、頂板、底板、頂板と底板の間に配置した反応室及び燃焼室を備える熱触媒水素発生反応器を備える。該燃焼室は触媒被覆基板を含み、該触媒被覆基板は金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォーム又はセラミックモノリスである。ここで、前記反応室も触媒被覆基板を含み、該基板は金属フォーム、モノリス、メッシュ又はセラミックフォーム又はセラミックモノリスであり、ここで前記触媒被覆基板が約600℃以下のライトオフ温度を有するアンモニア分解触媒を含む。また、前記燃焼室中の触媒被覆基板も約600℃以下のライトオフ温度を有する燃焼触媒を含む。
【0037】
典型的なアンモニアに基づく水素発生装置の特定の実施態様は、アンモニアをアンモニア供給源から前記反応室へ輸送するためのアンモニア供給ラインと、水素を前記反応室から輸送するための反応生成物供給ラインと、可燃性流体を燃焼室に輸送するための燃焼流体供給ラインと、燃焼副生成物を燃焼室から輸送するための燃焼副生成物排気ラインと、前記反応室と熱交換関係にある炭化水素燃焼器とを更に備える。モレキュラーシーブ吸着剤供給源を用意し、残留アンモニアを水素から除去するための反応生成物供給ラインに接続する。更に、熱交換器を用意し、操作上燃焼副生成物排気ライン及び空気供給ラインに接続する。熱交換器を、操作上前記反応生成物供給ライン及びアンモニア供給ラインに接続する。また、特定の配置には、前記反応生成物供給ラインと流体接続した燃料電池を含む。
【0038】
かかる実施態様は、前記反応生成物ラインと流体接続した複数の吸着剤供給源を備えることができる。また、水素精製ユニットを用意し、アンモニア吸着剤ユニットと燃料電池との間に配置することができる。他の配置において、燃料電池の陽極側からの排気を前記燃焼室へ送る。
【0039】
水素を発生させるための典型的な方法は、アンモニアを熱触媒水素発生反応器の反応室に導入するもので、該反応器は頂板、底板、及び前記頂板と前記底板の間に配置した反応室及び燃焼室を備える。前記反応室及び燃焼室は互いに熱交換関係にあり、前記反応室は触媒被覆基板を含む。有用な基板としては、特に限定されないが、金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォームまたはモノリスが挙げられる。これらの基板は、約0.2mmから約3.0mmの範囲、好ましくは0.5から2.0mmの中程度の近似孔径又は流径を有する。熱を前記反応器に供給し、その結果前記反応器中のアンモニアを約550℃から約650℃の温度に加熱し、アンモニアを水素と窒素を含む反応生成物に分解し、次いで該反応生成物を前記反応器から取り除く。また、アンモニアを前記反応器に導入する前に予熱することができる。
【0040】
アンモニアの燃焼を利用して前記反応器の燃焼室に熱を供給することができる。他の実施態様において、炭化水素燃料を燃焼して熱を前記反応器に供給する。硫黄含有炭化水素を燃焼すると、硫黄が放出される。生成した硫黄は硫黄吸着剤を用いて除去することができる。また、硫黄不純物は、前記燃焼室に供給する前に前記炭化水素燃料を硫黄吸着剤に流すことによって、該燃料から除去してもよい。
【0041】
ここで教示した前記方法及び装置によって得られる反応生成物は残留アンモニアを含むかもしれない。この残留アンモニアは、吸着剤供給源に前記反応生成物を通すことによって除去できる。
【0042】
市販のアンモニア貯蔵タンクは、本発明の教示に従うアンモニアに基づく水素発生装置の種々の実施態様を提供するのに有用に使用することができる。更に、安全で制御された方法でアンモニアを取り込み、次いで放出できる適当な固体材料を含むアンモニア貯蔵タンクが特に有用である。
【0043】
いくつかの実施態様において、アンモニアを前記反応器に導入する前に、該アンモニアを予熱する。また、いくつかの実施態様において、反応生成物が残留アンモニアを含み、該残留アンモニアは前記反応生成物を吸着剤供給源に通すことによって除去される。
(項目1)
アンモニア供給源;
燃焼室と、これと熱交換関係にある反応室とを含む熱触媒水素発生反応器;
アンモニアをアンモニア供給源から反応室に輸送するためのアンモニア供給ライン;
水素を反応室から輸送するための反応生成物供給ライン;
可燃性流体を燃焼室に輸送するための燃焼流体供給ライン;
燃焼副生成物を燃焼室から輸送するための燃焼室副生成物排気ライン;
上記反応器に操作上接続した熱源を備え、
上記水素発生反応器が頂板、底板並びに頂板と底板の間に配置した第一及び第二の対向面を有する分離板とを備え、
上記頂板及び上記分離板の第一表面が一緒に上記反応器を画成し、
上記底板及び上記分離板の第二表面が一緒に上記燃焼室を画成し、
上記反応室又は燃焼室の少なくとも一つに複数のチャネルを設けることを特徴とするアンモニアに基づく水素発生装置。
(項目2)
上記分離板の第一表面に面する上記頂板の表面が、そこから上記反応室中の分離板の方に延在する相互に離隔したフィンの第一のセットを含み、該第一のセットのフィンが第一の複数の反応チャネルを画成し;並びに
上記分離板の第二表面に面する上記底板の表面が、そこから上記燃焼室中の分離板の第二表面の方に延在する相互に離隔したフィンの第二のセットを含み、該第二のセットのフィンが第二の複数の燃焼チャネルを画成する項目1に記載の水素発生装置。
(項目3)
上記チャネルの各セットが、上記熱触媒水素発生器の一端から該熱触媒水素発生器の対向端へのガス流路を作る項目2に記載の水素発生装置。
(項目4)
上記燃焼室及び上記反応室の少なくとも一つが触媒被覆基板を含む項目1に記載の水素発生器。
(項目5)
上記触媒被覆基板が、金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォーム又はセラミックモノリス又はそれらの組み合わせの少なくとも一つである項目4に記載の水素発生装置。
(項目6)
上記触媒被覆基板が、約0.2mmから約3.0mmの近似孔径を有する流路を含む項目5に記載の水素発生器。
(項目7)
上記触媒被覆基板が約0.5mmから約2.0mmの近似孔径を有する項目5に記載の水素発生装置。
(項目8)
上記燃焼室の流路内に配置した燃焼触媒を更に備える項目2に記載の水素発生装置。
(項目9)
上記反応室の流路内に配置したアンモニア分解触媒を更に備える項目2に記載の水素発生装置。
(項目10)
複数の吸着剤供給源を、水素から残留アンモニアを除去するための反応生成物供給ラインと流体接続する項目1に記載の水素発生装置。
(項目11)
上記複数の吸着剤供給源が、少なくとも第一、第二及び第三の吸着剤供給源と、上記反応生成物供給ラインから上記第一、第二又は第三の吸着剤供給源又はそれらの組み合わせの少なくとも一つに選択的に流れを指向させるための第一、第二及び第三のバルブとを備える項目10に記載の水素発生装置。
(項目12)
上記第一、第二又は第三の吸着剤供給源の少なくとも一つがアンモニアを吸着している間に、該第一、第二又は第三の吸着剤供給源の少なくとも一つが再生されるように構成する項目11に記載の水素発生装置。
(項目13)
上記燃焼触媒が、少なくとも一つの貴金属を含む項目8に記載の水素発生装置。
(項目14)
上記アンモニア分解触媒が、少なくとも一つの貴金属を含む項目8に記載の水素発生装置。
(項目15)
上記吸着剤供給源の少なくとも一つが、モレキュラーシーブ吸着剤を含む項目10又は11に記載の水素発生装置。
(項目16)
上記反応生成物供給ラインと流体接続した膜ユニットを更に備え、該膜ユニットが反応生成物流からアンモニアを選択的に除去する項目1に記載の水素発生装置。
(項目17)
上記燃焼室への空気供給を上記膜ユニット下流側又は浸透側を通して行う項目16に記載の水素発生装置。
(項目18)
水素精製ユニットを上記反応生成物供給ラインと流体接続する項目1に記載の水素発生装置。
(項目19)
上記水素精製ユニットが、水素分離膜ユニットである項目18に記載の水素発生装置。
(項目20)
上記水素精製ユニットが、水素化物圧縮機である項目18に記載の水素発生装置。
(項目21)
上記水素精製ユニットが、圧力スイング吸着ユニットである項目18に記載の水素発生装置。
(項目22)
上記燃焼室中に配置した燃焼触媒を更に備え、該燃焼触媒が含貴金属燃焼触媒である項目10に記載の水素発生装置。
(項目23)
上記反応室内に配置したアンモニア分解触媒を更に備え、該アンモニア分解触媒が含貴金属分解触媒である項目10に記載の水素発生装置。
(項目24)
上記触媒被覆基板が透過性で、約0.2mmから約3.0mmの範囲の孔径を有する流路を備える項目4に記載の水素発生装置。
(項目25)
アンモニア供給源;
頂板、底板、頂板と底板との間に配置した反応室及び燃焼室を備え、上記燃焼室が触媒被覆基板を含み、また上記反応室が触媒被覆基板を含み、該基板が金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォーム又はモノリスの少なくとも一つであり、かつ上記基板が約0.2から約3.0mmの近似孔径又は流径を有し、上記反応室内の基板が約600℃以下のライトオフ温度を有するアンモニア分解触媒を含み、上記燃焼室内の基板が約600℃以下のライトオフ温度を有する燃焼触媒を含むことからなる熱触媒水素発生器;
アンモニアをアンモニア供給源から反応室に輸送するためのアンモニア供給ライン;
水素を上記反応室から輸送するための反応生成物供給ライン;
可燃性流体を上記燃焼室に輸送するための燃焼流体供給ライン;
燃焼副生成物を上記燃焼室から輸送するための燃焼副生成物排気ライン;
上記熱触媒水素発生反応器と熱交換関係にある炭化水素燃焼器;
反応生成物供給ラインに接続した吸着剤供給源、
上記燃焼副生成物排気ライン及び空気供給ラインに操作上接続した熱交換器;
上記反応生成物供給ライン及び上記アンモニア供給ラインに操作上接続した熱交換器;並びに
陽極及び陰極を有し、上記反応生成物供給ラインと流体接続した燃料電池を備えることを特徴とするアンモニアに基づく水素発生装置。
(項目26)
複数の吸着剤供給源が上記反応生成物供給ラインと流体接続する項目25に記載の水素発生装置。
(項目27)
上記反応生成物供給ラインと流体接続した水素精製ユニットからの排気ガスを上記燃焼室に送る項目25に記載の水素発生装置。
(項目28)
上記吸着剤供給源がモレキュラーシーブ吸着剤供給源である項目25に記載の水素発生装置。
(項目29)
上記モレキュラーシーブ吸着剤供給ユニットの再生中に生成した排出ガスを上記燃焼室に送る項目25に記載の水素発生装置。
(項目30)
水素精製ユニットを吸着剤供給源と上記燃料電池の間に配置し、かつ操作上接続する項目25に記載の水素発生装置。
(項目31)
上記燃料電池の陽極側からの排気を上記燃焼室に送る項目25に記載の水素発生装置。
(項目32)
上記アンモニア供給源が、アンモニアを取り込み、その後放出することが可能な固形物を含む少なくとも一つのアンモニア貯蔵タンクである項目25に記載の水素発生装置。
(項目33)
上記水素精製ユニットが圧力スイング吸着ユニットである項目30に記載の水素発生装置。
(項目34)
アンモニアを熱触媒水素発生装置の反応室に導入し、ここで該反応器が頂板、底板、頂板と底板の間に反応室及び燃焼室を備え、該反応室及び燃焼室が互いに熱交換関係にあり、上記反応室が触媒被覆基板を含み、該触媒被覆基板が金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォーム又はモノリス若しくはそれらの組み合わせの少なくとも一つで、かつ該基板が約0.2から約3.0mmの孔径及び流径を有し;
上記反応器に熱を供給し;
上記反応器中のアンモニアを約550℃から約650℃の間の温度に加熱して該アンモニアを水素及び窒素を含む反応生成物に分解し;並びに
上記反応生成物を上記反応器から除去することを備えることを特徴とする水素の発生方法。
(項目35)
上記反応生成物を精製して高純度の水素を得る工程を更に備える項目34に記載の方法。
(項目36)
上記反応器へのアンモニア導入前に該アンモニアを予熱すること更に備える項目34に記載の方法。
(項目37)
上記供給工程が、アンモニアを燃焼して上記反応器に熱を供給することを更に備える項目34に記載の方法。
(項目38)
上記供給工程が、炭化水素燃料を燃焼して上記反応器に熱を供給することを更に備える項目34に記載の方法。
(項目39)
上記炭化水素燃料を上記燃焼室に導入する前に、該炭化水素燃料を硫黄吸着体に流すことにより上記炭化水素燃料中の硫黄不純物を除去する項目38に記載の方法。
(項目40)
上記反応生成物を吸着剤供給源に通す工程を更に備え、ここで上記反応生成物が残留アンモニアを含み、該残留アンモニアを吸着剤供給源に上記反応生成物を通すことによって除去する項目34に記載の方法。
(項目41)
上記熱供給工程が、上記燃焼触媒の温度が200℃から300℃に達するまで水素を用いて該燃焼触媒を介して室温ライトオフを達成し、その後炭化水素燃料又はアンモニア燃料を燃焼することによって熱を供給することを備える項目34に記載の方法。
(項目42)
上記水素を少なくとも一つの水素化物貯蔵ユニットから供給する項目41に記載の方法。
(項目43)
上記少なくとも一つの水素化物貯蔵ユニットを上記水素精製ユニットを出る水素で再補給する工程を更に備える項目42に記載の方法。
(項目44)
上記高純度水素が99.99%超の水素である項目35に記載の方法。
(項目45)
上記高純度水素を燃料電池に利用する工程を更に備える項目44に記載の方法。
(項目46)
上記高純度水素を貯蔵する工程を更に備える項目35に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明のアンモニアに基づく水素発生装置に使用した典型的な要素を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明のアンモニアに基づく水素発生装置の実施態様の等角図である。
【図3】図3は、本発明に関する水素発生装置の分解図である。
【図4】図4は、内側の細部は透かしで示した図3の反応器の正面分解立面図である。
【図5】図5は図3の反応器の反応器コア部分の平面図である。
【図6】図6は図3の反応器の反応器コア部分の底面図である。
【図7】図7は図3の反応器の平面図である。
【図8A】図8Aは、図7の切断線A−Aに沿った図3の反応器の断面図である。
【図8B】図8Bは、図7の切断線B−Bに沿った図3の反応器の断面図である。
【図9】図9は第一の触媒の実施態様を示す反応器の部分断面図である。
【図10】図10は第二の触媒の実施態様を示す反応器の部分断面図である。
【図11】図11は、図9の切断線C−Cに沿った図9の反応器の断面図である。
【図12】図12は、アンモニアに基づく水素発生装置の主要構成材を示す組立分解図である。
【図13】図13は、アンモニアに基づく水素発生装置の他の実施態様の主要構成部品を示す組立分解図である。
【図14】図14は、本発明を教示による複数の吸着剤供給源の典型的な配置を示す。
【図15】図15は、水素発生装置の典型的な実施態様の立体図である。
【図16】図16は、内側の細部は透かしで示した、図15の典型的な水素発生装置の分解正面図である。
【図17】図17は、典型的な水素発生装置の分解図である。
【図18】図18は、内側の細部は透かしで示した、図17の典型的な水素発生装置の分解正面図である。
【図19】図19は典型的なフォーム基板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の態様及び付随する利点は、添付図面と併せて理解される場合、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるのと同様、更に容易に評価されるであろう。
【0046】
本発明の特定の実施態様について、その原理と働きを説明するため、以下に詳細に記載する。しかしながら、種々の変更を成すことが可能であり、本発明の範囲はここに記載した典型的な実施態様に限定されない。
【0047】
図1に示す典型的なアンモニアに基づく水素発生装置10は、アンモニア供給源12、吸着剤供給源14、熱交換器16、触媒86を含むアンモニア分解反応器18(図9及び10)、並びに熱源20を備える。また、図1に示す実施態様は、燃料電池22を備える。しかしながら、燃料電池22はアンモニアに基づく水素発生装置の必要構成材でない。
【0048】
アンモニア供給源12は、液化アンモニアを含む圧力容器である。当業者は、かかる圧力容器が通常使用され、容易に入手可能なことを理解するであろう。アンモニアは、圧縮(1平方インチ当たり114ポンド)及び/又は約−33℃に冷却することにより液化できる。前記アンモニア供給源は、アンモニア供給源の補充間に性能目標を所望の運転期間で達成するのを確実にするに十分な量の液体アンモニアを供給する。
【0049】
また、アンモニア供給源12は、安全な方法でアンモニアの放出を制御できる独立気泡発泡モノリスのような多孔質材料を含む容器とすることができる。典型的な容器は、2004年2月19日出願の米国特許第60/546,304号、題名“揮発性物質の安全な貯蔵”に記載されており、この全体をここに引用し援用する。例えば、独立気泡フォームのような低浸透性で、高空隙率のモノリス構造を利用できる。利用可能な典型的フォームは、DIAB H200フォーム(DIABテクノロジー、デソト(DeSoto)、テキサス)である。アルミニウム独立気泡フォーム(グリーチ(Gleich)、ドイツ国、登録商標名アルポラス(ALPORAS))のような更なる典型的フォームも利用できる。かかる典型的なアルミニウム独立気泡フォームは〜約97%のアルミニウム、〜1.5%のカルシウム、〜1.5%のチタンからなる。
【0050】
熱源20は、反応器18を反応の保持に必要な温度にするに十分な熱エネルギーを供給する。必要な熱量は、アンモニアの流速、反応器の大きさ及び質量、並びに使用する特定の触媒の関数である。あらゆる適切な熱源を使用できる。例えば、反応器外部での燃料の燃焼により、反応器内でのわずかなアンモニアの燃焼(即ち自熱式加熱)により、又は燃料電池22の陽極側からの廃ガスの燃焼ことにより、若しくはこれら方法の組み合わせにより、熱を電気的に供給できる。更に、燃焼触媒を使用する場合、該燃焼触媒が約200℃から約300℃の温度に達するまで、水素供給源155からの水素を燃焼に利用することにより、室温ライトオフを達成することができる。一度この点に達すると、熱源20からの熱はアンモニア及び/又は炭化水素燃料の燃焼により達成することができる。一実施態様の他の態様において、水素精製機150のような水素精製ユニットを、図1に例示したように装置構成に組み込んでもよい。水素精製機150は、特に限定されないが、水素分離膜ユニット、水素化物圧縮機又は圧力スイング吸着ユニットとすることができる。
【0051】
一好適実施態様において、熱源20は、炭化水素燃焼供給源26から得た炭化水素ガスの燃焼によって熱エネルギーを発生する炭化水素ベース燃焼機である。好ましい水素発生装置において、炭化水素燃料はブタンである。炭化水素燃料が市販の燃料に見られるように硫黄を含む場合、かかる硫黄は適当な硫黄トラップを用いて燃料から除去される。硫黄の除去に通常用いる吸着剤としては、活性炭、モレキュラーシーブ及び酸化亜鉛が挙げられる。前記吸着剤としては、銅及び鉄の様な遷移金属を含む活性炭が更に好ましい。かかる吸着剤は、酸化亜鉛と異なり、安価で、効率が良く且つ再生できる。典型的な吸着剤は90−100質量%の活性炭、1−10質量%の酸化鉄及び1−10質量%の酸化銅からなる。典型的な吸着剤は、ヌコンインターナショナル(Nucon International)(コロンバス、オハイオ)から入手可能で、15質量%の硫黄吸着能力でH2S,CS2、軽質メルカプタン、t−ブチルメルカプタン、硫化物、二硫化物及びセレン化水素を除去できる。一般に、吸着剤粒子は直径約0.056インチで長さ約0.1インチの押出品の形状である。
【0052】
或いは、前記反応器18を電気的に加熱することでき、この場合、熱源20は任意の電池24によってまず附勢される電熱器をからなる。反応器が一旦水素を発生すれば、燃料電池22を用いて、熱源20を更に附勢するに必要な電気エネルギーを供給することができる。しかしながら、このやり方では燃料電池に相当な電力負荷を負わせる。50ワットのH/AFCに対して、燃料電池出力のおよそ40%を前記反応器に戻して一定の反応温度を維持しなければならない。従って、燃料電池22から供給された電気エネルギーのいくらかを燃料電池内の水素燃料を発生させるために使用するため、使用者は、50Wの燃料電池から30Wの正味出力を得られるのみである。所要の電池が過剰の追加質量及び重量を水素発生装置に加えるため、小型のアンモニアに基づく水素発生装置に対して電熱は好ましくない。
【0053】
利用可能なアンモニア供給源によって限定されない本発明の実施態様として、自熱式加熱を使用して水素発生を作動させるに必要な熱を供給できる。かかる実施態様において、熱源20はアンモニア供給源12からのアンモニアを燃焼して前記反応器18へ熱エネルギーを供給するアンモニア燃焼機を備える。
【0054】
自熱式加熱は、前記反応器及び触媒を予熱して自熱反応を持続するのに必要な温度(使用する触媒のライトオフ温度)を達成しなければならない必要がある。かかる予熱は、比較的小型の炭化水素燃料供給源、比較的小型の電池、又は空気/アンモニア比が可変であること、即ち、開始段階においてはより多くの空気を供給して通常のアンモニア燃焼を保持すること、により実現できる。一旦前記触媒及び反応器が触媒のライトオフ温度以上に加熱されると、供給する空気の量を減じ、自熱式加熱が可能になる。
【0055】
かかる実施態様は、追加の炭化水素燃料供給又は電池の必要性を減少させる一方、水素に分解可能なアンモニアを代わりに燃焼プロセスに用いて所望の反応を御すエネルギーを供給する。従って、かかる実施態様においては、追加量のアンモニアを供給して所要の熱エネルギーを供給しなければならない。更に、燃焼機を離れる微量のアンモニアを清浄する方法(吸着剤ベッドの使用のような)も更に組み込む必要がある。
【0056】
全装置質量の観点から、燃料燃焼は電熱器10より優れる。炭化水素燃料は従来のアルカリ電池のほぼ100倍のエネルギー密度を有する。アンモニアのエネルギー密度は炭化水素燃料の約半分にすぎない。もし熱を燃料の燃焼によって供給するとすれば、アンモニアを燃焼させた場合は、ブタンのような炭化水素に較べて著しく多い燃料質量が必要となる。
【0057】
炭化水素燃料を用いる際の重量節約は、別の炭化水素燃料タンクの必要性ゆえ一部相殺される。しかしながら、ブタン燃料の蒸気圧は比較的低いため、極めて軽量なタンクを安全に使用できる。アンモニアよりもブタンを使用することによる軽量化に加えて、ブタン/空気の炎は点火及び制御が容易であるため、ブタンが好ましい。従って、小型化が重要な実施態様において、ブタンの燃焼が加熱器18の好ましい方法を意味する。
【0058】
燃料電池22が75容積%のH2及び25容積%のN2を含むアンモニアのない改質流を用いて電力を産出することができるが、更なる実施態様は燃料電池に純粋な水素を供給できる。純粋な水素は、吸着剤供給源14と燃料電池22との間に水素精製機150に設けることにより改質流から産出させることができる(図1参照)。典型的な水素精製機としては、特に限定されないが、水素分離膜ユニット、HERA(キュービック(Quebec)、カルフォルニア)として提供される水素化物圧縮ユニット又はクエストエアー(QuestAir)(バーナビー、カルフォルニア)として提供される圧力スイング吸収ユニットが挙げられる。これらの精製機は約50−150psigの圧力で改質流の供給を必要とするため、アンモニアの解離を約50から150pisgで行うことを必要とする。一実施態様において、水素精製機150からの排気流が低レベルの水素を含む場合、かかる流れを燃焼室に送ることができる。
【0059】
図3−6は、小型化した水素発生装置における特定用途の反応器の一実施態様を説明する。該反応器は幅2cm、長さ7cm、高さ1cmで、約3cm2の反応容量(反応室の容量)を有する。しかしながら、該反応器は、より大きなアンモニアに基づく水素発生装置用に水素を発生させることができる、より大きなサイズに拡大することができる。同様に、該反応器を、より多くのアンモニア及び燃料の供給を利用する装置中で使用することにより、長期間適度な容量の水素を燃料電池に供給できるアンモニアに基づく水素発生装置が得られる。かかる装置は、海のブイのような遠隔利用に有用である。前記反応器は、850℃未満の温度、好ましくは550℃から650℃の間、更に好ましくは550℃から580℃の間の温度で運転することが有利である。結果的に、前記反応器は、十分な高熱伝導性を有する金属合金等の種々の非高融点金属類で製造できる。典型的な金属類としてはチタン及びステンレス鋼が挙げられる。
【0060】
前記反応器60は、頂板62、底板66、及び前記頂板と前記底板の間に配置した反応器コア64を含む。前記反応器コアは、反応表面64a及び燃焼表面64bを含み、両表面とも対向端61a及び61b、並びに対向端63a及び63bを規定する隆起した周縁を有する。前記反応表面及び前記頂板は、共に反応室を規定し、また、前記燃焼表面と前記底板は共に燃焼室を規定する。前記頂板、前記底板及び前記反応器コアは、蝋付け又は溶接のような適切な方法、例えばレーザー溶接によってそれぞれ結合する。好ましい実施態様において、前記反応器18は絶縁部材に囲まれており、周囲環境への熱損失を最小化する。図15−18に典型例を示すように、適切に間隔を開けて備えるボルト300を利用して、また(示さないが)必要に応じて適切なガスケットを利用して、頂板62,底板66及び反応器コア64を取り付けることができる。
【0061】
相隔たり、実質的に直線である複数の放熱フィン76aは、反応器コア64の中央部の反応表面64aから上方に伸びており、また、相隔たり、実質的に直線である複数の放熱フィン76bは、燃焼表面64bの下方に従属する。前記フィンは、厚さ約0.5mm、高さ約2mm及び長さ約50mm有している。隣接したフィンの間隔は約1mmが好ましい。前記フィンは、対向側である63a及び63bに平行に走り、対向端61a及び61bから離れている複数の燃焼チャネル69及び複数の反応チャネル71を規定する。
【0062】
相隔たり、実質的に直線的に従属する複数のフィンは、反応表面64a及び燃焼表面64bから従属していてもよいが、従属するフィン、ここで310/308は、その代わりに頂板62、底板66から従属し、図17及び18に描画したように、それぞれ反応室304及び燃焼室302に伸びていてもよい。これらの特定の実施態様において、燃焼表面64bから下に従属する、また、反応表面64aから上に伸びる放熱フィンの配置/組み合わせ(例えば、ジグザグ、波形など)を、図17及び18に更に具体的に例示する。フィン310/308は、燃焼室304及び反応室302のそれぞれに届く大きさが好ましい。
【0063】
更に別の典型的な実施態様において、熱移動及び反応速度を高めるためのメソチャネルの流体流量には、チャネルと形成するフィンを頂板62、底板66及び反応器コアなどに加工することのみならず、中程度の幅の流体チャネルを有する多孔性基板を添合することによっても組み込む。金属又はセラミックから製造できる浸透性の多孔性基板は、図15及び16に例示するように反応室及び燃焼室を規定する金属表面と緊密に接触する。
【0064】
かかる実施態様において、多孔性金属基板を使用して、前記燃焼室から前記反応室への熱移動率を高めることが好ましい。多孔性金属基板の望ましい典型的な候補としては、メッシュ、フェルト、及びポーバイル社(Porvair, lnc)(ヘンダーソンビル、サウスカロライナ)から入手可能な十分に焼結した開放気泡の網状/泡状基板が挙げられ、160及び162として図15及び16に示しており、また、それぞれ反応室及び燃焼室に適切に収まるように形成/提供され、もちろん、望ましいチャネルの特徴(例えば、以下で、また例えば図6に関して議論しているように、熱輸送、触媒燃焼及び分解)を提供するために、ブタン流体ライン68、排気流体ライン70、及び生成物供給ライン74を内部空間に取り入れるように配慮されている。一実施態様の例として、また、図15及び16に見本として例示するように、多孔性金属基板160は、生成物供給ライン74を配慮した配置を提供し、また適当な大きさの“切除”部分165を提供する。同様に、図17及び18において、フィンがそれぞれ頂板の表面62及び底板66依拠している場合、反応器60に入っていく種々の導管により同様の“切除”部分を提供できる。もちろん、取り付けは、管の周りの望ましい流速と、多孔性基板及び/又はチャネルにより提供される流量特性とを調和させる。
【0065】
図19は他の典型的なフォーム基板306を示し、これは隆起部分312によって一側面が提供されるチャネル314を有する。発泡性基板306の組成物の内在構造(チャネル及び孔径)により望ましいチャネル特性を提供することに加えて、提供されるチャネル314は、更に内在構造とチャネル314のフォーム基板306の組み合わせの特定の流速を提供するために適切な大きさを持って提供できる。こうした構造は、発泡待機室306が排気される特定の室(例えば、反応及び/又は燃焼室)で生じる反応のタイプ、反応物の圧力/流量、使用した触媒などに依存する。チャネル314は、上述したフィン76bの容量と同様の容量を有しうる。
【0066】
例えば、一インチ当たり約10から40孔の孔の大きさ(PPI)を有する多孔性金属基板が孔径を提供し、従って、流径は約0.5から約2.0mmの中規模程度にある。高温で取り扱うことが可能な材料として利用可能な典型的な多孔性金属フォームとしては、特に限定されないが、FeCrAIY、インコーネル(lnconel)625及びステンレス鋼316が挙げられる。高温での優れた機械的強度に加えて、前記材料は更に腐食及び酸化に対する抵抗性を示すことが好ましい。アンモニアは腐食性の薬剤であるので、その化学的不活性ゆえ(ポービール社又はコーニング社から供給されるような)セラミック基板類もまた好ましい。例えば、コーニング社はコージライトセラミックからモノリスセラミック構造のものを製造している。こういったモノリスの正方形チャネルの典型的な大きさは、一定範囲のチャネルサイズが利用できるが、通常1mm×1mm×15cmである。
【0067】
ブタンは燃焼室と流体接続をする燃焼流体ライン68を通って燃焼室に入り、前記燃焼チャネル69の中の至る所に分配される。燃焼生成物は排気流体ライン70を通って出て行く。空気はブタン燃料と共に供給してブタンの燃焼を支持しなければならない。空気は、ブタンが燃焼室に入る前にブタンと共に前混合することが好ましい。好ましい実施態様において、バルブ52を備えるベンチューリ(別々に示さない)全体は、外気とブタン供給源50からのブタンを混合する(図2を見られたい)。或いは、別個の空気ポンプを備えることにより、ブタン供給ラインが燃焼室に入る前にブタン供給ラインに繋がる空気ライン(示さない)を通して空気を供給できる。
【0068】
いくつかの実施態様において、空気/ブタン混合物は、空気/ブタン混合物を燃焼室に導入する前に、燃焼生成物の高温ガスの排熱を用いて前加熱する。例えば、排気流体ライン中にブタン/空気供給ラインを配置したチューブ・イン・チューブ構造の熱交換器(示さない)を使用して、ブタン空気混合物の温度をその燃焼前に上げることができる。しかしながら、自己着火温度(即ち、空気/ブタン混合物が着火用火花の必要無しに燃焼する温度)が430℃であるので、過度に前加熱されるのを防ぐ注意をしなければならない。
【0069】
図6で最もよく分かるように、燃焼流体ライン68は第一の対向端61aから反応器コア64に入り、反応器コア61bの対向端の近傍にまで、フィン76bと平行に伸びる。フィンを燃焼流体ラインのすぐ近傍の場所に配置しないことにより、ブタンが燃焼生成物がチャンバーから出て行く場所と異なる場所から燃焼室に入るので、燃焼流体ラインが反応器コアに行き来できるようにすることによりブタンが燃焼室の全長を自由に行き来できるようになる。こうした配置により、未燃焼のブタンが反応器から出て行くことを最小化し、高温の燃焼ガスがフィンと熱交換する時間の長さを最大化する。
【0070】
図3−6に示す実施態様において、燃焼流体ライン68が出て行く時に、ブタンは燃焼室内の第2の端部61b、フィン76bと燃焼流体ラインの間に配置した白金ガーゼ触媒78と接触する。一般に、前記ガーゼは約20から約80メッシュであり、約52メッシュであることが好ましい。
【0071】
次に、前記ブタンを燃焼させる。白金ガーゼ78において生じる前記白金触媒燃焼は、燃焼室の反対側から燃焼チャネル69に沿って排気流体ライン70に指向させる高温の燃焼ガスを発生する。高温ガスが排気流体ラインに達するまでに高温ガスが必要とする時間中、フィン76bは大量の熱エネルギーを吸収し、この熱はそれから反応器コア64の反応側部分にあるフィン76aに移動する。燃焼側64bからの熱は、対応するフィン76aと熱交換関係にあるフィン76bで吸収する。これらのフィンにより移動する熱は、アンモニアを十分に加熱して所望の分解反応が起きるようにする。また、フィンによって導かれたチャネルは、燃焼器の圧力を減少させ、計量の送風機を使用して燃焼器に空気を供給することを可能にする。
【0072】
燃焼副生成物は、排気流体ライン70を通って燃焼室を出る。触媒並びにフィン76a及び76bを利用することにより、利用可能な燃焼エネルギーの90%超をブタンの燃焼から抽出して反応室に移動させることができる。
【0073】
アンモニアはアンモニア供給ライン72を通って前記反応室に流れ、ブタンの燃焼によって供給される熱エネルギーはアンモニアを水素と窒素に分解する。従って、生成水素及び窒素は反応生成物供給ライン74を通って出て行く。
【0074】
反応室に入っていくアンモニアの流路及び反応室から出て行く水素/窒素生成物を図5に示す。前記アンモニア供給ライン72は第一の対向端61aから反応器コア64に入り、反応器コアに入り反応器コア61bの反対端の近傍の場所までフィン76aに平行に伸びる。図4に最もよく見られるように、フィンをアンモニア供給ライン又は反応生成物供給ライン74のすぐ近くに配置しないことによって、アンモニアが水素/窒素生成物が出て行くのと異なる場所から前記反応室に入っていくため、アンモニア供給ラインが前記反応器コアと行き来することを可能にする。アンモニア供給ラインを前記反応生成物供給ラインから前記反応器コアの反対側に位置させることにより、アンモニアを前記反応器コアから出て行く可能性のある前に、前記反応室の全長を行き来させなければならない。この配置は、微量のアンモニア以外が分解して所望の水素/窒素生成物に分解する十分な滞留時間を保証する。
【0075】
図3−6に示す実施態様において、前記反応室ライン74の外側に位置する反応生成物の流体の少なくとも一部をアンモニア供給ライン72の外側の同軸上に配置し、前記反応生成物供給ラインとアンモニア供給ラインとの間に、向流熱交換関係を作り出す。反応生成物供給ラインを通って反応器から出て行く高温の水素及び窒素生成物は、前記アンモニア供給ラインを通って流れる比較的冷たいアンモニアを加熱する。アンモニアが前記反応室に入っていく前にアンモニアに熱エネルギーを加えることにより、反応器コア64の燃焼側のブタン燃焼に必要な熱エネルギーがより少なくなる。
【0076】
図7、8A、及び8Bは、組み立てた反応器60を示す。ブタン流体ライン68、排気流体ライン70、アンモニア供給ライン72、水素流体ライン74、フィン76a及び76b、並びに白金ガーゼ78触媒を示す。
【0077】
前記反応器には好ましいアンモニア分解触媒を取り付ける。使用した特定の触媒は前記反応器の運転温度に基づいて選択する。好ましい実施態様において、前記装置は約550℃から約650℃で、最も好ましくは約550℃から約580℃の温度で運転する。これらの温度は、標準的な構成材料を使用して前記反応器を製造することを可能にする。反応温度をより高くするとアンモニアを水素及び窒素への転換がわずかに効率的になるが、850℃を超える温度で運転する反応器は高融点金属のような新規材料で製造しなければならない。
【0078】
本発明には種々の触媒が利用可能であり、特定の触媒の性質(及びアルミナのような必要とされる担体)は反応器の設計に影響を及ぼす。前記触媒は600℃未満のライトオフ温度を有し、最適運転温度が650℃未満であることが好ましい。かかる温度条件は、結果として、より高温で働く触媒によって得られる転換効率より低い転換効率を招くが、上記のより低い好ましい温度条件は、チタン及びステンレス鋼のような一般的な金属を使用して前記反応器18を製造することを可能にする。
【0079】
また、特定の触媒類は、前記反応器の大きさに影響を及ぼす特有の活性を有する。例えば、特定の容積に対して、異なる触媒は同じ転換効率を達成するために異なる流速を必要とする。同様に、特定の流量に対して、異なる触媒は同じ転換効率を達成するために異なる容積を必要とするであろう。従って、選択した触媒は最適温度条件、流量及び反応器容積に影響を及ぼす。好ましい触媒類としては、しばしばジョンソンマテーイ(Johnson Matthey)から市販されている146型等のアルミニウム酸化物担体マトリクス中に分散させたルテニウムとして提供される、ルテニウムに基づく触媒類が挙げられる。しかしながら、前記反応器は650℃未満の温度で働くため、ガンマアルミニウム及びナノ相チタニアのような他の超高表面積担体マトリクスが使用できる。従って、ガンマアルミニウム又はナノ相チタニアの何れかに分散させたルテニウム触媒を使用できることは本発明の利点である。
【0080】
自熱式加熱を使用する場合、アンモニアに含まれていて燃焼を支持するいくらかの酸素が必要である。酸素はある種の触媒、例えばルテニウムに基づく触媒に対して悪影響を及ぼす。従って、自熱式加熱に使用する装置のために、参加に対してより抵抗性の触媒を使用してもよい。更に、燃焼により生成するアンモニア及び水は腐食性の混合物を生成するため、ステンレス鋼の代わりに腐食抵抗性の材料を使用すべきである。
【0081】
更に、酸素に傷つきやすい触媒を含む反応器を組み立てる(即ち、頂板を反応器コアにろう付けすることにより組み立てる)場合、触媒が酸化するのを防ぐために還元的雰囲気を準備することが有益であるかもしれない。
【0082】
また、カタルコ(Katalco)27−7(登録商標)(ICI/カタルコ、英国から市販されている)のようなニッケルに基づく触媒は、好ましい触媒である。しかしながら、前記ニッケルに基づく触媒は、ルテニウムに基づく触媒と同様の転換効率を達成するためにより長い滞留時間を必要とする。前記ルテニウムに基づく触媒は、前記ニッケルに基づく触媒の十分の一の滞留時間を有する。
【0083】
他の望ましいアンモニア分解触媒としては、鉄酸化物、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金及びレニウム触媒又はこれらの元素を含む配合物が挙げられる。
【0084】
水素/窒素混合物から残留アンモニアを除去する炭素に基づく吸着剤の効率により、反応器18は少なくとも99.9%のアンモニアを水素及び窒素に転換し、従って反応生成物が残留アンモニアを約500ppm未満含むことが好ましい。
【0085】
図1に示す好ましい実施態様において、反応器18を出て行った後、高温の窒素及び水素の混合物は熱交換器16中を流れ、(アンモニア供給源12からアンモニア供給ラインを通って反応器18に流れる)ずっと冷たいアンモニアは、前記反応器を出てきたより高温の窒素及び水素から熱エネルギーを吸収する。向流式熱交換器を使用し、一実施態様においては前記熱交換器がチューブ・イン・チューブ型を含むことが好ましい。好ましい実施態様においては、前記熱交換器は絶縁要素に取り囲まれており周囲環境への熱損失を最小化している。
【0086】
アンモニア供給源12から反応器18にアンモニアを流し、吸着剤供給源14に含まれる吸着剤の間の熱交換関係を提供する目的は二つある。第一に、反応器に入る前にアンモニアを予熱することは、水素発生装置の熱効率をよくするために重要である。熱交換器がないと、反応器から排出される高温の水素/窒素混合物からのエネルギーが回収されることなく大量のエネルギーが失われる。かかる熱損失により更に多くの燃料を消費して反応器を加熱することが必要になり、その結果、装置の大きさ、重量及び運転コストが増加する。第二に、水素/窒素混合物を吸着剤供給源に入る前に冷却することにより、水素/窒素混合物からの熱エネルギーによって吸着剤が凝集しないようにして、吸着剤の有効性を高める。熱交換器16が水素/窒素生成物の温度を約80℃未満に低下させることが好ましく、室温近くまで低下させることが更に好ましい。
【0087】
冷却した水素/窒素生成物は熱交換器16を出て、吸着剤供給源14に流れ込み、そこで前記吸着剤が反応器18を出てくる水素及び窒素に含まれる残留アンモニアを吸着する。吸着剤の補充の間の所望の運転期間の間、達成目標が実現するのを助けるため、十分量の吸着剤を供給する。吸着剤供給源中の吸着剤は、(1ppm未満残っている)実質的に全ての残留アンモニアを水素/窒素生成物から除去する。
【0088】
好ましい吸着剤としては炭素及び改質炭素吸着剤挙げられる。最も好ましい吸着剤としては、表面に結合酸分子を含ませるために浸透させた炭素が挙げられる。従って、このように結合した酸は残留アンモニアを中和する。最低限において、最も好ましい吸着剤は炭素1グラム当たり2ミリモルの強酸吸着部を有し、最も好ましい吸着剤は炭素一グラム当たり5ミリモル以下有しうる。
【0089】
上記炭素及び改質炭素吸着剤と二者択一的に及び/又はさらに加えて、モレキュラーシーブ、例えば514 4A等級の大きさの吸着剤(グレース ダビソン、コロンビア MD)もまた、反応器から排出される改質流(即ち水素/窒素生成物)からアンモニアを除去するために使用できる。複数個の吸着剤が供給された場合、有用な組み合わせの吸着剤を直列的に又は並列的に利用して、不要なアンモニアを吸着してもよい。
【0090】
また、改質流注のアンモニアは二段階の処理を利用して除去できる。第一段階においては、改質流をアンモニアに対する浸透性を有する高分子膜を含む膜ユニットに通すことによってアンモニアを除去する。燃焼器への空気は高分子膜の加硫に導き、浸透させたアンモニアを前記燃焼室に移動させることができる。第二の段階においては、前記改質流を指向させて吸着剤供給源に流す。この方法により、特定の供給に必要な吸着剤の量を劇的に減少させ、及び/又は複数の吸着剤を使用して再生を促進する場合のサイクル時間を間隔を増加させる。
【0091】
液体アンモニアを、アンモニア供給ライン15を通じて吸着剤供給源14に通過させる。前記アンモニア供給ラインは前記吸着剤を通過し、それによって、アンモニア供給ライン中を流れるアンモニアと前記吸着剤の間で熱エネルギーの交換が起きる。前記アンモニアが流体ラインに残っていて前記吸着剤と接触しない場合は、前記アンモニアは吸着剤によって濾過しない。
【0092】
吸着剤供給源14において、液体アンモニアの少なくとも一部分が15に戻りガス状態となり、周りの吸着剤から相当量の熱(即ちアンモニア吸着剤1グラム当たり327カロリーの熱)を吸収する。この方法において、アンモニア供給源からのアンモニアは吸着剤供給源中に含まれる吸着剤を冷却し、それ故、温度感受性の吸着剤の効率を維持する。吸着剤供給源の出口では、高温の水素及び窒素ガスが出て行くことで反応器18がより低温のアンモニアと熱エネルギーを交換して水素/窒素混合物を冷却しアンモニアの温度を上昇させるため、アンモニア供給ライン15が繋がり熱交換器16と流体接続する。
【0093】
一態様において、図1で議論した水素発生装置の機能的部分を、図2に示す好適な小型の実施態様に組み上げた。小型の水素発生装置30は容積が1リットル未満、質量が1kg未満で、50ワット以下の電力で総エネルギー出力1kWhを発生するために十分な水素燃料を供給することが好ましい。
【0094】
圧力調整器32を液体アンモニア供給源36に取り付ける。アンモニア供給源の質量を最小化するために、チタン合金等の軽量で更に強力な材料を使用する。333gのアンモニアを貯蔵するために、アンモニア供給源の容積は約600mlである。容積600mlの容器に基づくチタンの質量は約84gである。従って、アンモニア及び供給タンクは目的質量1000gのうち417gを占める。
【0095】
アンモニア供給ライン40は、圧力調整器32上の流体接続部品38aに接続し、流体接続部品38bは吸着剤キャニスター42に接続する。液化アンモニアは、約30gの吸着剤を含む吸着剤キャニスター42に流れ、そこに含まれている吸着剤を冷却する。反応器46を出て行く高温水素/窒素混合物は吸着剤キャニスター中で吸着剤と流体接続する。比較的低温のアンモニアは吸着剤の熱エネルギーをいくらか吸収し、アンモニアを加熱して吸着剤を冷却して吸着剤が最適に働くことを保証する。(吸着剤無しの)吸着剤キャニスターは約15gである。前記アンモニア貯蔵タンク、前記アンモニアそれ自身、前記吸着剤カラム、及び小型水素発生装置30の吸着剤部分の最小質量は、(接続金具及び管を除いて)462gである。
【0096】
前記アンモニアは流体接続具38cを通って吸着キャニスター42を出て行き、アンモニア供給ライン40bを通って熱交換器44に流れる。前記アンモニアは流体接続具38dを通って熱交換器に入る。前記熱交換器の詳細は熱交換器及び反応器46の両方を含む覆いによってよく見えないが、前記熱交換器は、アンモニアが熱交換器に入っていき高温の水素及び窒素と熱エネルギーの交換をして前記反応器30を出て行くことができるようにする向流式熱交換器である。前記熱交換器は質量が約30gのチューブ・イン・チューブ熱交換器であることが好ましい。一実施態様において前記熱交換器は15cmである。いくつかの実施態様においては、コイル状のチューブ・イン・チューブ熱交換器構造を使用して熱交換器の長さを減少させる。
【0097】
前記熱交換器44は、アンモニアが反応器46に入っていく前にアンモニアの温度をさらに増加させる。次に、前加熱したアンモニアが反応器に入り、反応器内に配置した炭化水素燃焼器(又は他の熱源)により更なるエネルギーが供給される。前記反応器にもたらすための十分なエネルギーが供給され、前記反応器の運転温度を維持する。ブタンは比較的軽量の加圧型容器50中に供給する。圧力調整器52は前記反応器へのブタンの流れを制御する。
【0098】
空気は燃焼を支持するためにブタン燃料と混合しなければならない。別々の空気ポンプと空気ライン(示さない)を小型水素発生装置30に組み込むことができるが、圧力調整器52はブタン燃料の流量を測定するだけでなく、周囲空気とブタンを混合して燃焼を生じさせるために必要である適正な燃料/空気混合物も提供することが好ましい。ブタンは圧力調整器及び流体接続具38iを通ってブタン容器50を出て行き、ブタン流体ライン48に流入する。前記ブタン流体ラインは流体接続具38eと流体接続をし、そこから前記ブタンは反応器46に入り、そこで燃焼し必要な熱エネルギーを供給する。
【0099】
いくつかの実施態様において、ブタン又はその他の水素ガスはクリティカルフローオリフィス(示さない)を通って流れ、前記ガスが前記反応器に入る前に臨界流を作り出す。臨界流は、オリフィス中のガスの速度が特定のガス中の音速と等しい場合に得られる。臨界流れを得ることは、上流圧力が一定であり且つ上流圧力に対する下流圧力が“臨界比”未満であるとき、加硫圧力中の変動にも関わらず極めて一定に近いガス流を維持できるため有用である。多くの一般的ガスに対する臨界比は約0.5であり、熱力学原理に基づいて測定できる。例として空気を用いると、もし蒸留圧が20PSIG(34.7PSIA)であれば、下流圧力が約2.7PSIG(17.4PSIA、これは34.7PSIAに臨界比0.5をかけたものに相当する)未満である限り、前記ガス流は一定である。
【0100】
333gのアンモニアを分解するのに十分な熱を供給するために約40gのブタンが必要である。調整器/空気混合物は20g未満の質量を有するが、前記ブタン容器50は約30gの質量を有する。必要とする接合具及び管類の質量は約80gである。それらの実施態様において、熱源がブタンのような炭化水素燃料である場合、前記燃料が入っていく反応器46は燃焼を開始するために、例えば圧電性の点火装置を用いて点火しなければならない(示さない)。かかる点火装置の質量は約20gである。
【0101】
燃焼反応を開始するための別法は、開始中に燃料として水素を使用することを含む。少量の水素を金属水素化物中に貯蔵することが可能であり、燃焼反応の開始に使用できる。水素は、白金を含む触媒処方物を用いて室温で点火できる特異な燃料である。従って、この実施にはグロープラグ、点火装置などの必要性がなく、点火の信頼性を高める。一旦点火触媒が200℃から300℃に達すると、水素は炭化水素燃料と置換できる。燃焼器への炭化水素燃料は、反応室に供給する燃料と同じもの又は異なるものにできる。
【0102】
反応器46は軽量な材料から製造することが好ましい。チタンは軽量で所用の温度に耐えることができる。質量を最小化するために、実質的に反応器を囲むために使用する絶縁材料は真空形成エアロゲルパネルが好ましい。触媒を含むチタン反応器は約50gの質量を有し、熱交換器及び反応器のための覆い及び絶縁材は約110gの質量を有する。
【0103】
高温水素及び窒素混合物は熱交換器44を通って反応器46を出て、流体接続具38fを通り、流体接続具38gを介して吸着キャニスター42につながっている反応生成物供給ライン54に流入する。水素及び窒素のガス混合物が前記吸着キャニスターに入るので残留アンモニアが除去される。このようにして、アンモニアを含まない水素は流体接続具38をを通して吸収キャニスターから排出される。
【0104】
接続具及び管類の質量は約80gであり、結果として、装置の全質量は842gである。図2に関連して記載されている質量は単なる例であり、1L以外の容積と、50ワット/1kWhを超える又はそれ未満の能力を有する小型水素発生装置は、小型水素発生装置30の部品の大きさ及び質量を増加又は減少させることによって実現できる。
【0105】
【表1】
【0106】
図9及び10に示す実施例において、触媒86は反応チャネルに充填する。図11中に示す二つの二者択一的な実施態様において、反応室中の前記フィンは触媒で被覆されている。被覆表面積を最大化するために、二者択一的な実施態様の内の一つにおいて、前記フィン76cは直線ではなく、ジグザグ型又は非直線的な形状を有する。また他の二者択一的な実施態様において、前記フィン76dは、同じ反応器容積においてより薄いフィンをより多く配置することを可能にし、それによって触媒をめっきできる表面積を増加できるようにするため、図3−6に示すフィンよりも薄い。反応器側の内部表面積を増加させる、代替として使用できる他のフィンの配置を意図している。また、単一形態のフィン及びフィンの形態の組み合わせが使用可能であることについても意図している。一般に、反応器の各部分が同じ形状を有し、従って反応器の異なる部分を通るチャネルは実質的に同じである。
【0107】
本発明に関する装置の他の実施態様は、長期間メンテナンス(例えば、アンモニア又は吸着剤の補給)の必要無しに適度な水準の電力、例えば35ワット、を供給するために設計されている。一つの特定の実施態様は、遠隔の海のブイ(これは、一般に天候データを収集するか、又は航海を容易にする)で電力を供給するために設計されている。連続的に35ワットの電力を供給できる装置は約5kgの重さであり、更にアンモニア、アンモニアタンク及び吸着剤の重さが加わる。アンモニア及び吸着剤を6月供給するためには約52kgの質量を有する。より長期間の運転は、アンモニアタンク容量を増加させることによって実現できる。
【0108】
海洋環境における使用に好適なアンモニアに基づく水素発生装置10aの機能的要素を図12に示す。これらの機能的な要素は、送風機92及び空気清浄機90を含むことを除いて図1に示した機能的要素と一致している。海洋環境に起因して、燃料電池に入ってくる空気から海水を除去しなければならない。燃料電池22から供給された電力によって電圧を加えられた送風機を使用して、空気を空気清浄機に強制的に送る。空気清浄機は、燃料電池22中で水素と結合して電力を発生させる空気から塩分と水を除去する。かかる実施態様において、燃料電池が電力を発生し始めるまで、始動電池94を使用してまず送風機に電力を与える。そのとき、燃料電池は前記送風機に電力を与え、更に始動電池94を再充電するために使用できる。
【0109】
説明のように、アンモニアに基づく水素発生装置10用の熱源20は、まず始動電池94、次に燃料電池22からエネルギーを供給される電熱器が好ましい。或いは、熱源20は炭化水素燃焼器又はアンモニア燃焼器にできる。炭化水素燃料はアンモニアよりもエネルギー密度が高いけれども、アンモニアに基づく水素発生装置10aは、小型化の設計よりもむしろ長時間運転するために適している。炭化水素燃料供給源の除去はメンテナンスの必要性の減少を意味するため、アンモニア及び吸着剤のみ供給することが必要となる。従って、長時間運転するために最適化したアンモニアに基づく水素発生装置のためには、熱源として電熱器又はアンモニア燃焼器が好ましい。吸着剤供給源14には、アンモニアに基づく水素発生装置10aが6ヶ月間、連続して35ワットの電力を発生することを可能にするため、吸着剤2kgを充填する。
【0110】
メンテナンス無しに運転する期間を更に延長するために最適化したアンモニアに基づく水素発生装置10bを図13に示す。実質的に更に大きなアンモニア供給源12aを含む。例えば、150kgのアンモニア供給源は、35ワットの電力を連続して発生させるために十分な水素を提供するために使用する場合、18月分に足りるアンモニアを供給する。
【0111】
アンモニアに基づく水素発生装置10bは、単一の吸着剤供給源を使用のではなく、一対の吸着剤供給源14a及び14bを使用する。吸着剤供給源14aが反応生成物のガスから残余の水素を除去するためにオンラインにある間に、吸着剤供給源14bが再生し、また逆の場合も同じである。この方法により、必要な吸着剤の質量が著しく減少する。つまり、必要とされる吸着剤の質量はもはや濾過する水素精製物の全量の関数ではなく、むしろオフラインの吸着剤供給源を再生するために必要な時間中に処理する水素精製物の容量の関数である。もし吸着剤供給源を再生するために約10時間が必要であれば、各吸着剤供給源が必要とする大きさは10時間での水素精製物の流速に基づく。かかる装置は、吸着剤を再生することなく24時間運転できるであろう。しかし、吸着剤を連続的に再生し、また吸着剤供給源14a及び14b間で、それぞれの再生に引き続いて循環することにより、前記装置は24時間よりも大幅に長い時間働きうる。一定数の再生サイクルの後には、吸着剤の有効性は低下するであろう;かかる装置は、吸着剤を取り替えなければならなくなる前に数千時間運転できる。再生中に発生するアンモニアは、燃焼させて熱を供給すること、又は分解して水素を発生することができる。或いは、更に酸溶液に吸収させることもできる。
【0112】
運転中、アンモニア供給源12a由来のアンモニアは、そのときにオンラインで再生されていない吸着剤供給源14a又は14bにアンモニアを指向するバルブ98aに入る。アンモニア供給ライン15はオンライン上の吸着剤供給源を通り、吸着剤を冷却する。次に、アンモニアは熱交換器16を通って反応器18に入る。水素/窒素生成物が一旦前記熱交換器を出ると、バルブ98がセットされ、前記反応生成物がオンライン上の吸着剤供給源に入るのを保証する。前記吸着剤が水素生成物からアンモニアを除去するため、水素生成物は1ppm未満のアンモニアを含み、その結果、実質的にアンモニアを含まない水素は電力を発生させるために燃料電池22に供給される。
【0113】
図4に示すように、特定の実施態様は、適切なバルブ120、122及び124を有する、複数の第一吸着剤供給源126、第二吸着剤供給源128、及び第三吸着剤供給源130を含み、これらは反応器18の反応生成物供給ライン74から、第一吸着剤供給源126、第二吸着剤供給源128、及び第三吸着剤供給源130の少なくとも一つに流体を選択的に導く。追加のバルブ200は、見本で示したように、種々のラインの必須部分に配置できる。図14は、図1の典型的な構成図に関して意図しており、また利用しうる吸着剤の典型的配置に関する“詳細”図である。吸着剤供給源の少なくとも一つが再生されている間に、その他の二つのうち少なくとも一つがオンラインにありアンモニアを吸着する。三つの吸着剤供給源の詳細をここに提供するが、この数は単なる例であり、有用な如何なる複数個の吸着剤も意図している。更に、当業者に周知であるように、また以下に例示するように、前記吸着剤を再生するための如何なる方法も利用できる。
【0114】
熱源20aが電熱器であり、まず受電式開始電池94によって、それから水素が一旦発生し始めたら燃料電池よってエネルギーを与えられることが好ましい。前記熱源は熱エネルギーを反応器18に供給してアンモニア分解反応を促進するだけでなく、オフラインの吸着剤供給源も再生する。
【0115】
好ましい実施態様において、吸着剤は加熱により再生する。前記吸着剤は、十分な一定時間、ある温度で加熱して吸着したアンモニアを追い払い、これを燃焼させて熱を発生させることや分解して水素を発生させることができる。熱源20aは吸着剤供給源と反応器の両方に対する単一の抵抗素子にすることができ、別々の電熱器をそれぞれの吸着剤供給源及び反応器に対して供給できる。装置の熱効率を高める一つの方法は、各吸着剤供給源に熱交換器を組み込み、反応器からの高温の燃焼ガスをオフラインの吸着剤供給源の熱交換器に指向させて吸着剤を再生するために必要な熱を供給することである。炭素吸着剤を使用した場合、窒素及び他の不活性ガス又は不活性ガスのガス混合物を利用して吸着剤供給源をパージできる。
【0116】
送風機92及び空気清浄機90aを追加部品として示す。前記炭素20再生プロセスは、もし清浄な空気の流れが左前記載性プロセスの間に吸着剤を通過すれば、更に速やかに又はより低温で達成できる。バルブ98cは、再生される吸着剤供給源に空気の流れを指向させる。空気清浄機90aのデザインは、アンモニアに基づく水素発生装置10bを配備した環境によって決まる。海洋環境においては、フィルター90aは水及び塩を除去するためにデザインすべきである。砂漠環境のためには、フィルター90aは微粒子(砂及びちり)を除去すべきである。
【0117】
他の実施態様は更に吸着剤供給源を含む。更なる吸着剤供給源は、装置の中断なしに、より長期間の再生サイクルを提供する。
【0118】
或いは、反応室及び燃焼室中の多孔性金属基板の利用と同様にして、多孔性金属フォーム又はセラミック基板に中規模程度の流径を組み込むことによって、熱交換器中のメソチャネル構造をさらに利用できる。セラミック基板の例としては、ポービール(ヘンダーソンビル、ノースカロライナ)から提供されるようなAI2O3、ZrO2、 SiO2、CaO、MgO、Y2O3、SiC、又はそれらの混合物からなる網状のセラミックフォーム、並びにコーニング社(コーニング、ニューヨーク)から提供されるコージライトモノリスが挙げられる。例えば、1インチ当たり400孔(ppi)のコージライト四角セルモノリスは、中規模の範囲に含まれる1mm×1mmの断面のチャネルを含む。
【0119】
本発明は実施した好ましい形態に関して記載されているが、当業者は、本発明の精神を逸脱しない多くの修正を成し得ることを理解するであろう。従って、如何なる方法においても本発明の範囲が上記載によって限定されることを意図していない。
【技術分野】
【0001】
(政府の権利)
本発明は、米国陸軍研究所との契約(契約番号:DAAD19−01−C−0002)の下になされたものであり、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(発明の属する技術分野)
本発明は概して化学技術に関する。より詳細には、本発明はアンモニア源からのアンモニアの分解により水素ガスを発生させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
水素/空気燃料電池(H/AFC)は、電池の代わりとして非常に大きな可能性を有している。これらは非常にエネルギー密度の濃い燃料として機能しうるので、燃料電池に基づく電源装置は、同等の最新電池に較べて高いエネルギー対重量比率を提供する。燃料電池は、戦場で携帯するハイテク装備をサポートするために兵士が運ぶ必要がある電源装置の重量を減らすための多くの取り組みがなされている軍隊では特に関心が高い。また、商業的な用途、特に小型で低重量が望まれる商業的な用途において、燃料電池に基づく電源装置の利用に関して少なからぬ将来性がある。
【0004】
機能上、燃料電池は水素と酸素が反応して水を生成することによって発電する。酸素は、通常、周囲の大気から得ることができるので、燃料電池を作動させるためには水素源のみを供給する必要がある。高圧縮したガスでさえ相当な体積を占めるため、単に圧縮水素を供給することが常に実行可能な選択肢であるわけではない。占める体積がより少ない液体水素は低温の液体であり、液体状態を維持するために必要な極低温を保つために大量のエネルギーを必要とする。
【0005】
いくつかの代替アプローチが利用できる。これら代替法としては、炭化水素及びメタノール燃料の改質、金属水素化物類への水素吸蔵、水素を発生させる化学反応、並びにアンモニア分解が挙げられる。アンモニア分解反応は下式で表わされる:
2NH3+エネルギー → N2+3H2
【0006】
アンモニアから水素を発生させることは特に魅力がある。というのも、アンモニア1kg当たりの使用可能な水素収率が比較的高く、アンモニアを分解して水素を発生させることは汎用されており、比較的単純な反応であるからである。アンモニアはすぐに入手でき、比較的安価であり、また相当量の水素を提供するため、アンモニアを処理して燃料電池やその他の用途のために水素を発生させる効率的な装置を開発することが望まれている。
【0007】
H/AFC等の装置が、電池に基づく電源装置と競合するためには、小型化と信頼性を必要とする。更に望ましいのは、1リットル未満の体積で重量が1kg未満、総エネルギー生産量が1kWhで最大50ワットの電力を産生しうる携帯用水素供給装置である。市販の金属水素化物貯蔵シリンダーとしては、100W−hに相当する水素を含む920gのシリンダーが入手できる;従って、1kgの系に対する1kWhの全エネルギー生産量とは、市販の装置を超えてエネルギー密度が著しく増加することを意味している。
【0008】
燃料電池用にアンモニアを利用して水素を製造するための課題の一つは、H/AFCが水素供給ガス中のアンモニアに耐えられないことであり、それ故、アンモニア分解により生成するH2/N2ガス混合物中の微量のアンモニアを、該混合物が燃料電池に供給される前に除去しなければならない。市販のアンモニア吸着剤(例えば、酸含浸カーボン)をこの目的に使用できるが、もしアンモニア分解反応器が高転換効率でなければ、かかる材料の必要な吸着剤量は非常に多量になる可能性がある。
【0009】
比較的高い反応温度(850℃超)を用いると、H2/N2生成物中のアンモニア量、また必要な吸着剤の量を減ずる。しかしながら、この高い反応温度を用いると、大きな設計課題を課す。必要な吸着剤の量を減らす一方で、高温で使用する反応器は、インコネルやモリブデンのような高温耐火性金属を使用して構築しなければならない。これら材料は、ステンレス鋼又はチタン等のより標準的な材料に使用可能である、より標準的であるろう付け技術やレーザー溶接技術とは対照的に、しばしば拡散接合のような複雑な製造技術を必要とする。
【0010】
更に、既知の設計では、反応器の周囲環境への熱損失が、反応器の温度が高くなるにつれて増加する。反応器の温度が高くなると、全エネルギー効率が減少するか、又は追加断熱材の必要性により装置のサイズと重量が増加することになる。
【0011】
更に、水素発生反応器は触媒を用いる。触媒は、該触媒がアンモニア分解反応を容易にするライトオフ温度と称する最低温度、及び、もしあれば通常触媒及び支持マトリクスの関数である最高使用温度を有する。触媒材料は、しばしば支持マトリクス中に分散される。例えば、触媒材料をアルミナ支持体上に分配することは非常に一般的である。かかる支持体は、最高の許容運転温度を有する。例えば、850℃を超えると、アルミナ支持体は焼結しうる(即ち、アルミナ支持体の構成材が溶融し始める)。この温度において、触媒の効率は劇的に落ちる。結果として、850℃超の温度は、多くのタイプの潜在触媒、特に担持触媒には適さない。
【0012】
反応器の温度を低下させ且つH2/N2生成物中の残留アンモニアの水準を増加させることによって、装置のデザイン上の制約をより少なくできる。従来の材料及び製造技術が使用可能であり、且つより多くの種類の触媒類及び触媒担体類を使用できる。しかしながら、先行技術の設計では、残留アンモニアを除去するために比較的大容量の吸着剤を必要とし、このことは低温水素発生装置の質量を著しく増大させる。
【0013】
小型の水素発生装置を作ることは燃料電池技術の利用性を増加させるために不可欠であるので、比較的低い反応器温度装置を使用することを可能にするのに必要な吸着剤の質量を減少させることは、かかる小型装置の大きさを最小化するために不可欠である。例えば、50ワットの電力及び1kWhのエネルギーを生成することが可能で、1kgの質量を有する目的装置において、もしアンモニア反応器を99.0%の転換効率で運転するには、反応器から排出されるH2/N2ガス混合物から、全量で3.33gのアンモニアを除去しなければならない。市販のアンモニア吸着剤は、市販グレードのアンモニア中に通常存在する微量の(ppmレベル)水の存在下においてアンモニア(ガス流中に比較的低濃度のアンモニアが生じた場合)の質量の約1%未満のみ収集できるため、99.0%の転換率でアンモニア分解反応器を運転するためには、約333gの吸着剤を必要とする。従って、吸着剤の質量のみで目的質量の3分の1に相当し、水素発生器の他の要素に使用可能な質量を非常に少なくする。結果として、大量の吸着剤を使用する必要なしに850℃未満の温度で運転するアンモニアに基づく水素発生装置の開発が更に望まれる。
【0014】
燃料電池及びその他の用途に使用するための小型のアンモニアに基づく水素発生装置を提供する更なる取り組みは、所望の小型化を達成する反応器の選択にある。反応器を評価する際に考慮すべき要素の一つは、所望の転換効率を達成するのに必要な滞留時間である。かかる滞留時間が長いほど、より大きな反応器容積を必要とする。小型のアンモニアに基づく水素発生装置を実現するため、非常に小容量の反応器の使用を可能にするには、非常に短い滞留時間が必要となる。反応器の大きさが増加するほど、重量も増加する。
【0015】
従来の大型水素発生反応器は、充填床をしばしば使用し、この場合アンモニアをミリメートルサイズの触媒材料のペレットを含む加熱した容器に通す。多くの場合、これらの反応器における実際の反応速度は、熱及び質量移動抵抗のために、理論的に可能な反応速度(即ち、本来の反応速度に基づいて予期される速度)よりも著しく低い。それ故、速やかな熱及び質量移動、並びに短い滞留時間に有利な寸法の反応器を提供することが更に必要となる。
【0016】
本開示は、比較的低温(例えば約550℃から約650℃)で運転する燃料電池及びその他の用途での使用のための小型のアンモニアに基づく水素発生装置を提供するもので、更にH2/N2生成物から残留アンモニアを除去するの用いる大量の吸着剤を必要とせず、また充填床反応器の使用を回避する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
現在、本発明によれば、燃料電池及びその他の用途での使用のための小型のアンモニアに基づく水素発生装置が見出されている。かかる水素発生装置は比較的低温、好ましくは約550℃から約650℃、更に好ましくは約550℃から約580℃で作動し、更に残留アンモニアを除去するのに用いる大容量の吸着剤を必要としない。その上、好ましい実施態様においては、前記水素発生装置が充填床反応器を使用しない。
【0018】
いくつかの実施態様において、前記水素発生装置は、燃焼室と熱交換関係にある反応室を有する熱触媒反応器を使用する。好ましい実施態様において、かかる反応器は、頂板、底板、及び頂板と底板の間に配置した反応器コアにより形成する。前記反応器コアは反応表面及び燃焼表面を有し、各表面は対向端及び対向面を画成する隆起した周縁を有する。反応表面及び頂板は一緒に反応室を画成し、燃焼表面及び底板は一緒に燃焼室を画成する。
【0019】
特定の実施態様において、前記反応器コアは、反応表面から延在する相隔たる複数個の放熱フィンの第一のセットと、燃焼表面から延在する相隔たる複数個の放熱フィンの第二のセットとを有する。いくつかの実施態様において、フィンの少なくとも一つのセットは、約0.5mmの厚さ、約2mmの高さ及び約50mmの長さを有し、また隣接フィン間の離間隔が約1mmである。
【0020】
第一のセットのフィンは複数個の燃焼チャネルを画成し、また第二のセットのフィンは対向側に平行しかつ対向端から相隔たる複数個の反応チャネルを画成する。いくつかの実施態様において、これらチャネルのセットの少なくとも一つによって形成した流路は直線である。代替の実施態様において、チャネルのセットの少なくとも一つによって形成した流路はジグザグである。また、いくつかの実施態様において、白金燃焼触媒のような燃焼触媒を、フィンの第一のセットの第二の端の間で燃焼室内に配置する。
【0021】
本発明の利点は、反応器をチタン又はステンレス鋼のような難溶性金属から製造できることである。本発明の他の利点は、反応室に600℃以下のライトオフ温度を有するアンモニア分解触媒を充填できることである。好ましい触媒としては、ルテニウム又はニッケルを含有する触媒が挙げられる。いくつかの実施態様においては、前記触媒を反応チャネル中に充填するか、代替の実施態様においては、前記触媒を反応室内のチャネルの内部表面上に被覆する。
【0022】
一実施態様において、メソチャネルが頂板と底板の間に組み込み、また従属し、またこの間に延在し、これを封止させた際に反応器コアで分離された二室をもたらし、最初に記載したような反応器コアを含ものと機能的に類似の熱触媒反応器になる。また、分離板及び端板(頂板及び底板)を変更すると製造コストの減少をもたらす。
【0023】
一典型的実施態様において、熱移動及び反応速度を高めるメソチャネルの流体流路容積は、かかるチャネルを頂板、底板及び反応器コアなどのような部品に機械加工することによってではなく、中規模程度の流体流路容積を持つ多孔性基板を組み込むことによって組み入れる。前記多孔性基板は金属又はセラミックからなり、反応室及び燃焼室を画成する金属表面と緊密に接触する。多孔性金属基板を用いて燃焼室から反応室への熱移動速度を高めることが好ましい。多孔性金属基板の好ましい典型的な候補としては、メッシュ、フェルト及びポーバイル社(Porvair, lnc)(ヘンダーソンビル、サウスカロライナ)から入手可能な十分に焼結させた開放気孔の網状/泡状基板が挙げられる。例えば、ポアサイズが1インチ当たり10から40孔(PPI)の孔の大きさを有する金属基板は、約0.5mmから約2.0mmの中規模程度の孔径、従って流れ大きさを与える。かかる多孔性金属フォームは高温で扱うことが可能な材料中で利用可能であり、こういった材料としては、特に限定されないが、FeCrAlY、インコーネル625及びステンレス鋼31が挙げられる。高温での良好な機械的強度に加えて、更に材料が耐腐食性や耐酸化性を示すことが好ましい。また、アンモニアは腐食性の物質であるので、化学的に不活性であるセラミック基板(ポーバイル社から提供されているような)も望ましい。
【0024】
一実施例において、これらの多孔性金属フォームは、網状の前駆物質上に金属塗膜を塗布し、次に熱処理して前駆物質を壊し、更に全属基板を焼結して硬い構造を得ることによって形成する。ベース部から延在するチャネル様の突出部を含む網状の前駆物質を供給することにより、生成した金属フォームも、更にチャネル様の造作を含む。かかるフォームを例えば触媒塗膜を支持するのに利用する場合、かかる付加的な造作を有するフォームを使用して、更に熱移動速度を高め、利用可能な表面積を増大することができる。
【0025】
反応室内のメソチャネルの構造は、中程度の流れ大きさを有する多孔性金属フォームを組み込むことによって実現し、この多孔性金属フォームは、燃料を改質して水素を生成するのに適切な触媒で被覆する。
【0026】
熱触媒反応器に加えて、本発明の水素発生装置は、アンモニア供給源、アンモニアをアンモニア供給源から前記反応器に輸送するためのアンモニア供給ライン、水素を前記反応室から輸送するための反応生成物供給ライン、及び前記反応器に操作上接続した熱源を備える。いくつかの実施態様においては、アンモニア供給ライン及び反応生成物供給ラインの一つが、前記反応器コアの第一の対向端部から入り、前記フィンの第二のセットと平行で前記反応器コアの方に延在し、前記反応器の対向端に隣接した点で終端する一方、他のものが前記第一の対向端で終端する。また、いくつかの実施態様において、前記反応室の外部に位置する前記反応生成物供給ラインの少なくとも一部を、アンモニア供給ラインの外側で同軸上に配置する。
【0027】
いくつかの実施態様において、前記熱源はアンモニア供給源と流体接続したアンモニア燃焼室である。他の実施態様において、前記熱源は電池又は燃料電池のような電熱器である。
【0028】
またその他の実施態様において、前記熱源は炭化水素燃焼器である。これらの実施態様において、燃焼流体供給ラインは、可燃性の炭化水素、好ましくはブタンを炭化水素供給源から燃焼室に流体供給し、排気ラインは燃焼副生成物を燃焼室から除去する。また、これら実施態様のいくつかにおいて、燃焼流体ライン又は排気ラインの一つが前記反応器コアの第一の対向端から入り、前記フィンの第一のセットに平行で前記反応器コアの方に延在し、前記反応器の対向端に隣接した点で終端する一方、他のものは前記第一の対向端で終端する。いくつかの実施態様において、水素発生装置は、残留アンモニアを水素反応生成物から除去するための反応生成物供給ラインに接続した吸着剤供給源を更に備える。好ましい実施態様において、前記吸着剤が酸含浸炭素吸着剤、より好ましくは炭素1グラム当たり2ミリモルの強酸吸着部位から5ミリモルの強酸吸着部位を有する酸含浸炭素吸着剤である。特定の実施態様において、第一、第二及び第三の吸着剤供給源と、反応生成物供給ラインの水素反応生成物からの流れを前記第一、第二又は第三の吸着剤供給源の少なくとも一つ若しくはそれらの組み合わせに選択的に指向させるための第一、第二及び第三のバルブとを少なくとも有する複数個の吸着剤供給源を与える。
【0029】
また、いくつかの実施態様において、アンモニア供給ラインが熱伝導材料からなり、吸着剤供給源を通過する。いくつかの実施態様は、水素から残留アンモニアを除去するための反応生成物供給ラインに接続した第二の吸着剤供給源を、アンモニア供給源からのアンモニアを第一又は第二の吸着剤供給源の何れかに選択的に指向させるための第一バルブ並びに反応性生物を第一又は第二の吸着剤供給源の何れかに選択的に指向させるための第二バルブと共に備える。特定の実施態様において、使用する吸着剤材料の種類及び再生手順に従い回転ベッド及び回転弁を用いて、吸着剤供給源を直ちに再循環させることができる。
【0030】
いくつかの実施態様において、水素発生装置は、前記反応器と前記吸着剤供給源の間で水素流体ライン中に配置した熱交換器、好ましくは向流式熱交換器を備える。これらの実施態様において、アンモニア供給ラインが熱伝導性材料からなり、熱交換器の中を通っている。好ましい実施態様において、前記熱交換器を前記反応器と前記吸着剤供給源の間で燃焼副生成物排気ライン中に配置する。いくつかの実施態様において、アンモニア除去粗選ユニットを前記熱交換器と吸着剤供給源の間に配置する。前記粗選ユニットは、微量のアンモニアの大部分を改質流中から除去するように設計されている。微量のアンモニアが前記粗選ユニットを通過した後に残っている場合、下流の吸着剤カラムによって除去する。典型的な粗選ユニットは、燃焼室に向かって流れるアンモニアを含まない空気によって改質流からアンモニアを抽出するアンモニア透過膜からなる。改質流から燃焼室行きの空気によって取り出し抽出したアンモニアを、燃焼機内部で燃焼し、周囲に放出しない。
【0031】
本発明により、水素を発生させる方法が更に見出された。該方法は、アンモニアを熱触媒水素発生反応器に導入し、熱を該熱触媒水素発生反応器に供給し、その後反応器内のアンモニアを850℃未満、好ましくは550℃から650℃の間の温度にアンモニアを水素と窒素に分解するに十分な時間加熱し、次いで水素を含む反応生成物を前記反応器から除去することを備える。
【0032】
水素発生装置の特定の実施態様は、更に、触媒被覆基板を含む反応室と、これと熱交換関係にある燃焼室とを有する熱触媒水素発生反応器を備える。また、前記燃焼室も、触媒被覆基板を含む。典型的な触媒被覆基板としては、特に限定しないが、金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォームまたはセラミックモノリスが挙げられる。前記触媒被覆基板は、近似孔径が約0.2mmから約3.0mm、更に好ましくは約0.5mmから約2.0mmである。
【0033】
実施態様は、更に、前記反応チャネルのフィンの第一セットの第二端と燃焼流体ラインの端との間で燃焼室に配置した燃焼触媒を含む。該燃焼触媒は貴金属を含むことが好ましい。また、生成した水素含有ガスから残留アンモニアを除去するために反応生成物供給ラインに接続した第一の吸着剤供給源を特定の実施態様においても使用することができる。
【0034】
更なる実施態様は複数の吸着剤を含む。一実施例において、生成した水素から残留アンモニアを除去するために、第三の吸着剤供給源を前記反応生成物供給ラインに接続する。第一バルブを設けて、アンモニアをアンモニア供給源から第一、第二又は第三の吸着剤供給源の何れかへ選択的に指向させる。第二バルブを設けて、反応生成物を第一、第二又は第三の吸着剤供給源の何れかに選択的に指向させる。またその他の実施態様において、複数の吸着剤供給源の一又はそれ以上がアンモニアを吸着している間に、複数の吸着剤供給源の一又はそれ以上を再生する。一実施態様において、再生中、吸着剤から離れて脱着したアンモニアを含む流れを燃焼室に戻す。一実施例としては、アンモニアを駆遂するのに熱を利用する再生が利用できる。別の実施例において、適切な吸着剤を利用することにより、圧力スイング吸着ユニットを使用することができる。
【0035】
有用な吸着剤としてモレキュラーシーブ型吸着剤が挙げられる。特定の配置においては、前記反応生成物をアンモニアを選択的に除去する膜ユニットに通して前記反応生成物中の残留アンモニアを減少させることにより、前記吸着剤供給源の負荷を減ずることができる。更なる実施態様において、燃焼室への供給空気を膜ユニットの下流側又は透過部に通して、膜を通したアンモニア輸送速度を改善し、回収したアンモニアの燃焼室への輸送を容易にする掃引ガスとして利用する。水素発生装置の特定の実施態様は、反応生成物ラインと流体接続する水素精製ユニットを備える。該水素精製ユニットは、特に限定されないが、水素分離膜ユニット及び/又は水素化物圧縮機及び/又は圧力スイング吸着ユニットとすることができる。
【0036】
ここに開示したアンモニアに基づく水素発生装置の特定の実施態様は、頂板、底板、頂板と底板の間に配置した反応室及び燃焼室を備える熱触媒水素発生反応器を備える。該燃焼室は触媒被覆基板を含み、該触媒被覆基板は金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォーム又はセラミックモノリスである。ここで、前記反応室も触媒被覆基板を含み、該基板は金属フォーム、モノリス、メッシュ又はセラミックフォーム又はセラミックモノリスであり、ここで前記触媒被覆基板が約600℃以下のライトオフ温度を有するアンモニア分解触媒を含む。また、前記燃焼室中の触媒被覆基板も約600℃以下のライトオフ温度を有する燃焼触媒を含む。
【0037】
典型的なアンモニアに基づく水素発生装置の特定の実施態様は、アンモニアをアンモニア供給源から前記反応室へ輸送するためのアンモニア供給ラインと、水素を前記反応室から輸送するための反応生成物供給ラインと、可燃性流体を燃焼室に輸送するための燃焼流体供給ラインと、燃焼副生成物を燃焼室から輸送するための燃焼副生成物排気ラインと、前記反応室と熱交換関係にある炭化水素燃焼器とを更に備える。モレキュラーシーブ吸着剤供給源を用意し、残留アンモニアを水素から除去するための反応生成物供給ラインに接続する。更に、熱交換器を用意し、操作上燃焼副生成物排気ライン及び空気供給ラインに接続する。熱交換器を、操作上前記反応生成物供給ライン及びアンモニア供給ラインに接続する。また、特定の配置には、前記反応生成物供給ラインと流体接続した燃料電池を含む。
【0038】
かかる実施態様は、前記反応生成物ラインと流体接続した複数の吸着剤供給源を備えることができる。また、水素精製ユニットを用意し、アンモニア吸着剤ユニットと燃料電池との間に配置することができる。他の配置において、燃料電池の陽極側からの排気を前記燃焼室へ送る。
【0039】
水素を発生させるための典型的な方法は、アンモニアを熱触媒水素発生反応器の反応室に導入するもので、該反応器は頂板、底板、及び前記頂板と前記底板の間に配置した反応室及び燃焼室を備える。前記反応室及び燃焼室は互いに熱交換関係にあり、前記反応室は触媒被覆基板を含む。有用な基板としては、特に限定されないが、金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォームまたはモノリスが挙げられる。これらの基板は、約0.2mmから約3.0mmの範囲、好ましくは0.5から2.0mmの中程度の近似孔径又は流径を有する。熱を前記反応器に供給し、その結果前記反応器中のアンモニアを約550℃から約650℃の温度に加熱し、アンモニアを水素と窒素を含む反応生成物に分解し、次いで該反応生成物を前記反応器から取り除く。また、アンモニアを前記反応器に導入する前に予熱することができる。
【0040】
アンモニアの燃焼を利用して前記反応器の燃焼室に熱を供給することができる。他の実施態様において、炭化水素燃料を燃焼して熱を前記反応器に供給する。硫黄含有炭化水素を燃焼すると、硫黄が放出される。生成した硫黄は硫黄吸着剤を用いて除去することができる。また、硫黄不純物は、前記燃焼室に供給する前に前記炭化水素燃料を硫黄吸着剤に流すことによって、該燃料から除去してもよい。
【0041】
ここで教示した前記方法及び装置によって得られる反応生成物は残留アンモニアを含むかもしれない。この残留アンモニアは、吸着剤供給源に前記反応生成物を通すことによって除去できる。
【0042】
市販のアンモニア貯蔵タンクは、本発明の教示に従うアンモニアに基づく水素発生装置の種々の実施態様を提供するのに有用に使用することができる。更に、安全で制御された方法でアンモニアを取り込み、次いで放出できる適当な固体材料を含むアンモニア貯蔵タンクが特に有用である。
【0043】
いくつかの実施態様において、アンモニアを前記反応器に導入する前に、該アンモニアを予熱する。また、いくつかの実施態様において、反応生成物が残留アンモニアを含み、該残留アンモニアは前記反応生成物を吸着剤供給源に通すことによって除去される。
(項目1)
アンモニア供給源;
燃焼室と、これと熱交換関係にある反応室とを含む熱触媒水素発生反応器;
アンモニアをアンモニア供給源から反応室に輸送するためのアンモニア供給ライン;
水素を反応室から輸送するための反応生成物供給ライン;
可燃性流体を燃焼室に輸送するための燃焼流体供給ライン;
燃焼副生成物を燃焼室から輸送するための燃焼室副生成物排気ライン;
上記反応器に操作上接続した熱源を備え、
上記水素発生反応器が頂板、底板並びに頂板と底板の間に配置した第一及び第二の対向面を有する分離板とを備え、
上記頂板及び上記分離板の第一表面が一緒に上記反応器を画成し、
上記底板及び上記分離板の第二表面が一緒に上記燃焼室を画成し、
上記反応室又は燃焼室の少なくとも一つに複数のチャネルを設けることを特徴とするアンモニアに基づく水素発生装置。
(項目2)
上記分離板の第一表面に面する上記頂板の表面が、そこから上記反応室中の分離板の方に延在する相互に離隔したフィンの第一のセットを含み、該第一のセットのフィンが第一の複数の反応チャネルを画成し;並びに
上記分離板の第二表面に面する上記底板の表面が、そこから上記燃焼室中の分離板の第二表面の方に延在する相互に離隔したフィンの第二のセットを含み、該第二のセットのフィンが第二の複数の燃焼チャネルを画成する項目1に記載の水素発生装置。
(項目3)
上記チャネルの各セットが、上記熱触媒水素発生器の一端から該熱触媒水素発生器の対向端へのガス流路を作る項目2に記載の水素発生装置。
(項目4)
上記燃焼室及び上記反応室の少なくとも一つが触媒被覆基板を含む項目1に記載の水素発生器。
(項目5)
上記触媒被覆基板が、金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォーム又はセラミックモノリス又はそれらの組み合わせの少なくとも一つである項目4に記載の水素発生装置。
(項目6)
上記触媒被覆基板が、約0.2mmから約3.0mmの近似孔径を有する流路を含む項目5に記載の水素発生器。
(項目7)
上記触媒被覆基板が約0.5mmから約2.0mmの近似孔径を有する項目5に記載の水素発生装置。
(項目8)
上記燃焼室の流路内に配置した燃焼触媒を更に備える項目2に記載の水素発生装置。
(項目9)
上記反応室の流路内に配置したアンモニア分解触媒を更に備える項目2に記載の水素発生装置。
(項目10)
複数の吸着剤供給源を、水素から残留アンモニアを除去するための反応生成物供給ラインと流体接続する項目1に記載の水素発生装置。
(項目11)
上記複数の吸着剤供給源が、少なくとも第一、第二及び第三の吸着剤供給源と、上記反応生成物供給ラインから上記第一、第二又は第三の吸着剤供給源又はそれらの組み合わせの少なくとも一つに選択的に流れを指向させるための第一、第二及び第三のバルブとを備える項目10に記載の水素発生装置。
(項目12)
上記第一、第二又は第三の吸着剤供給源の少なくとも一つがアンモニアを吸着している間に、該第一、第二又は第三の吸着剤供給源の少なくとも一つが再生されるように構成する項目11に記載の水素発生装置。
(項目13)
上記燃焼触媒が、少なくとも一つの貴金属を含む項目8に記載の水素発生装置。
(項目14)
上記アンモニア分解触媒が、少なくとも一つの貴金属を含む項目8に記載の水素発生装置。
(項目15)
上記吸着剤供給源の少なくとも一つが、モレキュラーシーブ吸着剤を含む項目10又は11に記載の水素発生装置。
(項目16)
上記反応生成物供給ラインと流体接続した膜ユニットを更に備え、該膜ユニットが反応生成物流からアンモニアを選択的に除去する項目1に記載の水素発生装置。
(項目17)
上記燃焼室への空気供給を上記膜ユニット下流側又は浸透側を通して行う項目16に記載の水素発生装置。
(項目18)
水素精製ユニットを上記反応生成物供給ラインと流体接続する項目1に記載の水素発生装置。
(項目19)
上記水素精製ユニットが、水素分離膜ユニットである項目18に記載の水素発生装置。
(項目20)
上記水素精製ユニットが、水素化物圧縮機である項目18に記載の水素発生装置。
(項目21)
上記水素精製ユニットが、圧力スイング吸着ユニットである項目18に記載の水素発生装置。
(項目22)
上記燃焼室中に配置した燃焼触媒を更に備え、該燃焼触媒が含貴金属燃焼触媒である項目10に記載の水素発生装置。
(項目23)
上記反応室内に配置したアンモニア分解触媒を更に備え、該アンモニア分解触媒が含貴金属分解触媒である項目10に記載の水素発生装置。
(項目24)
上記触媒被覆基板が透過性で、約0.2mmから約3.0mmの範囲の孔径を有する流路を備える項目4に記載の水素発生装置。
(項目25)
アンモニア供給源;
頂板、底板、頂板と底板との間に配置した反応室及び燃焼室を備え、上記燃焼室が触媒被覆基板を含み、また上記反応室が触媒被覆基板を含み、該基板が金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォーム又はモノリスの少なくとも一つであり、かつ上記基板が約0.2から約3.0mmの近似孔径又は流径を有し、上記反応室内の基板が約600℃以下のライトオフ温度を有するアンモニア分解触媒を含み、上記燃焼室内の基板が約600℃以下のライトオフ温度を有する燃焼触媒を含むことからなる熱触媒水素発生器;
アンモニアをアンモニア供給源から反応室に輸送するためのアンモニア供給ライン;
水素を上記反応室から輸送するための反応生成物供給ライン;
可燃性流体を上記燃焼室に輸送するための燃焼流体供給ライン;
燃焼副生成物を上記燃焼室から輸送するための燃焼副生成物排気ライン;
上記熱触媒水素発生反応器と熱交換関係にある炭化水素燃焼器;
反応生成物供給ラインに接続した吸着剤供給源、
上記燃焼副生成物排気ライン及び空気供給ラインに操作上接続した熱交換器;
上記反応生成物供給ライン及び上記アンモニア供給ラインに操作上接続した熱交換器;並びに
陽極及び陰極を有し、上記反応生成物供給ラインと流体接続した燃料電池を備えることを特徴とするアンモニアに基づく水素発生装置。
(項目26)
複数の吸着剤供給源が上記反応生成物供給ラインと流体接続する項目25に記載の水素発生装置。
(項目27)
上記反応生成物供給ラインと流体接続した水素精製ユニットからの排気ガスを上記燃焼室に送る項目25に記載の水素発生装置。
(項目28)
上記吸着剤供給源がモレキュラーシーブ吸着剤供給源である項目25に記載の水素発生装置。
(項目29)
上記モレキュラーシーブ吸着剤供給ユニットの再生中に生成した排出ガスを上記燃焼室に送る項目25に記載の水素発生装置。
(項目30)
水素精製ユニットを吸着剤供給源と上記燃料電池の間に配置し、かつ操作上接続する項目25に記載の水素発生装置。
(項目31)
上記燃料電池の陽極側からの排気を上記燃焼室に送る項目25に記載の水素発生装置。
(項目32)
上記アンモニア供給源が、アンモニアを取り込み、その後放出することが可能な固形物を含む少なくとも一つのアンモニア貯蔵タンクである項目25に記載の水素発生装置。
(項目33)
上記水素精製ユニットが圧力スイング吸着ユニットである項目30に記載の水素発生装置。
(項目34)
アンモニアを熱触媒水素発生装置の反応室に導入し、ここで該反応器が頂板、底板、頂板と底板の間に反応室及び燃焼室を備え、該反応室及び燃焼室が互いに熱交換関係にあり、上記反応室が触媒被覆基板を含み、該触媒被覆基板が金属フォーム、モノリス、メッシュ、セラミックフォーム又はモノリス若しくはそれらの組み合わせの少なくとも一つで、かつ該基板が約0.2から約3.0mmの孔径及び流径を有し;
上記反応器に熱を供給し;
上記反応器中のアンモニアを約550℃から約650℃の間の温度に加熱して該アンモニアを水素及び窒素を含む反応生成物に分解し;並びに
上記反応生成物を上記反応器から除去することを備えることを特徴とする水素の発生方法。
(項目35)
上記反応生成物を精製して高純度の水素を得る工程を更に備える項目34に記載の方法。
(項目36)
上記反応器へのアンモニア導入前に該アンモニアを予熱すること更に備える項目34に記載の方法。
(項目37)
上記供給工程が、アンモニアを燃焼して上記反応器に熱を供給することを更に備える項目34に記載の方法。
(項目38)
上記供給工程が、炭化水素燃料を燃焼して上記反応器に熱を供給することを更に備える項目34に記載の方法。
(項目39)
上記炭化水素燃料を上記燃焼室に導入する前に、該炭化水素燃料を硫黄吸着体に流すことにより上記炭化水素燃料中の硫黄不純物を除去する項目38に記載の方法。
(項目40)
上記反応生成物を吸着剤供給源に通す工程を更に備え、ここで上記反応生成物が残留アンモニアを含み、該残留アンモニアを吸着剤供給源に上記反応生成物を通すことによって除去する項目34に記載の方法。
(項目41)
上記熱供給工程が、上記燃焼触媒の温度が200℃から300℃に達するまで水素を用いて該燃焼触媒を介して室温ライトオフを達成し、その後炭化水素燃料又はアンモニア燃料を燃焼することによって熱を供給することを備える項目34に記載の方法。
(項目42)
上記水素を少なくとも一つの水素化物貯蔵ユニットから供給する項目41に記載の方法。
(項目43)
上記少なくとも一つの水素化物貯蔵ユニットを上記水素精製ユニットを出る水素で再補給する工程を更に備える項目42に記載の方法。
(項目44)
上記高純度水素が99.99%超の水素である項目35に記載の方法。
(項目45)
上記高純度水素を燃料電池に利用する工程を更に備える項目44に記載の方法。
(項目46)
上記高純度水素を貯蔵する工程を更に備える項目35に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明のアンモニアに基づく水素発生装置に使用した典型的な要素を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明のアンモニアに基づく水素発生装置の実施態様の等角図である。
【図3】図3は、本発明に関する水素発生装置の分解図である。
【図4】図4は、内側の細部は透かしで示した図3の反応器の正面分解立面図である。
【図5】図5は図3の反応器の反応器コア部分の平面図である。
【図6】図6は図3の反応器の反応器コア部分の底面図である。
【図7】図7は図3の反応器の平面図である。
【図8A】図8Aは、図7の切断線A−Aに沿った図3の反応器の断面図である。
【図8B】図8Bは、図7の切断線B−Bに沿った図3の反応器の断面図である。
【図9】図9は第一の触媒の実施態様を示す反応器の部分断面図である。
【図10】図10は第二の触媒の実施態様を示す反応器の部分断面図である。
【図11】図11は、図9の切断線C−Cに沿った図9の反応器の断面図である。
【図12】図12は、アンモニアに基づく水素発生装置の主要構成材を示す組立分解図である。
【図13】図13は、アンモニアに基づく水素発生装置の他の実施態様の主要構成部品を示す組立分解図である。
【図14】図14は、本発明を教示による複数の吸着剤供給源の典型的な配置を示す。
【図15】図15は、水素発生装置の典型的な実施態様の立体図である。
【図16】図16は、内側の細部は透かしで示した、図15の典型的な水素発生装置の分解正面図である。
【図17】図17は、典型的な水素発生装置の分解図である。
【図18】図18は、内側の細部は透かしで示した、図17の典型的な水素発生装置の分解正面図である。
【図19】図19は典型的なフォーム基板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の態様及び付随する利点は、添付図面と併せて理解される場合、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるのと同様、更に容易に評価されるであろう。
【0046】
本発明の特定の実施態様について、その原理と働きを説明するため、以下に詳細に記載する。しかしながら、種々の変更を成すことが可能であり、本発明の範囲はここに記載した典型的な実施態様に限定されない。
【0047】
図1に示す典型的なアンモニアに基づく水素発生装置10は、アンモニア供給源12、吸着剤供給源14、熱交換器16、触媒86を含むアンモニア分解反応器18(図9及び10)、並びに熱源20を備える。また、図1に示す実施態様は、燃料電池22を備える。しかしながら、燃料電池22はアンモニアに基づく水素発生装置の必要構成材でない。
【0048】
アンモニア供給源12は、液化アンモニアを含む圧力容器である。当業者は、かかる圧力容器が通常使用され、容易に入手可能なことを理解するであろう。アンモニアは、圧縮(1平方インチ当たり114ポンド)及び/又は約−33℃に冷却することにより液化できる。前記アンモニア供給源は、アンモニア供給源の補充間に性能目標を所望の運転期間で達成するのを確実にするに十分な量の液体アンモニアを供給する。
【0049】
また、アンモニア供給源12は、安全な方法でアンモニアの放出を制御できる独立気泡発泡モノリスのような多孔質材料を含む容器とすることができる。典型的な容器は、2004年2月19日出願の米国特許第60/546,304号、題名“揮発性物質の安全な貯蔵”に記載されており、この全体をここに引用し援用する。例えば、独立気泡フォームのような低浸透性で、高空隙率のモノリス構造を利用できる。利用可能な典型的フォームは、DIAB H200フォーム(DIABテクノロジー、デソト(DeSoto)、テキサス)である。アルミニウム独立気泡フォーム(グリーチ(Gleich)、ドイツ国、登録商標名アルポラス(ALPORAS))のような更なる典型的フォームも利用できる。かかる典型的なアルミニウム独立気泡フォームは〜約97%のアルミニウム、〜1.5%のカルシウム、〜1.5%のチタンからなる。
【0050】
熱源20は、反応器18を反応の保持に必要な温度にするに十分な熱エネルギーを供給する。必要な熱量は、アンモニアの流速、反応器の大きさ及び質量、並びに使用する特定の触媒の関数である。あらゆる適切な熱源を使用できる。例えば、反応器外部での燃料の燃焼により、反応器内でのわずかなアンモニアの燃焼(即ち自熱式加熱)により、又は燃料電池22の陽極側からの廃ガスの燃焼ことにより、若しくはこれら方法の組み合わせにより、熱を電気的に供給できる。更に、燃焼触媒を使用する場合、該燃焼触媒が約200℃から約300℃の温度に達するまで、水素供給源155からの水素を燃焼に利用することにより、室温ライトオフを達成することができる。一度この点に達すると、熱源20からの熱はアンモニア及び/又は炭化水素燃料の燃焼により達成することができる。一実施態様の他の態様において、水素精製機150のような水素精製ユニットを、図1に例示したように装置構成に組み込んでもよい。水素精製機150は、特に限定されないが、水素分離膜ユニット、水素化物圧縮機又は圧力スイング吸着ユニットとすることができる。
【0051】
一好適実施態様において、熱源20は、炭化水素燃焼供給源26から得た炭化水素ガスの燃焼によって熱エネルギーを発生する炭化水素ベース燃焼機である。好ましい水素発生装置において、炭化水素燃料はブタンである。炭化水素燃料が市販の燃料に見られるように硫黄を含む場合、かかる硫黄は適当な硫黄トラップを用いて燃料から除去される。硫黄の除去に通常用いる吸着剤としては、活性炭、モレキュラーシーブ及び酸化亜鉛が挙げられる。前記吸着剤としては、銅及び鉄の様な遷移金属を含む活性炭が更に好ましい。かかる吸着剤は、酸化亜鉛と異なり、安価で、効率が良く且つ再生できる。典型的な吸着剤は90−100質量%の活性炭、1−10質量%の酸化鉄及び1−10質量%の酸化銅からなる。典型的な吸着剤は、ヌコンインターナショナル(Nucon International)(コロンバス、オハイオ)から入手可能で、15質量%の硫黄吸着能力でH2S,CS2、軽質メルカプタン、t−ブチルメルカプタン、硫化物、二硫化物及びセレン化水素を除去できる。一般に、吸着剤粒子は直径約0.056インチで長さ約0.1インチの押出品の形状である。
【0052】
或いは、前記反応器18を電気的に加熱することでき、この場合、熱源20は任意の電池24によってまず附勢される電熱器をからなる。反応器が一旦水素を発生すれば、燃料電池22を用いて、熱源20を更に附勢するに必要な電気エネルギーを供給することができる。しかしながら、このやり方では燃料電池に相当な電力負荷を負わせる。50ワットのH/AFCに対して、燃料電池出力のおよそ40%を前記反応器に戻して一定の反応温度を維持しなければならない。従って、燃料電池22から供給された電気エネルギーのいくらかを燃料電池内の水素燃料を発生させるために使用するため、使用者は、50Wの燃料電池から30Wの正味出力を得られるのみである。所要の電池が過剰の追加質量及び重量を水素発生装置に加えるため、小型のアンモニアに基づく水素発生装置に対して電熱は好ましくない。
【0053】
利用可能なアンモニア供給源によって限定されない本発明の実施態様として、自熱式加熱を使用して水素発生を作動させるに必要な熱を供給できる。かかる実施態様において、熱源20はアンモニア供給源12からのアンモニアを燃焼して前記反応器18へ熱エネルギーを供給するアンモニア燃焼機を備える。
【0054】
自熱式加熱は、前記反応器及び触媒を予熱して自熱反応を持続するのに必要な温度(使用する触媒のライトオフ温度)を達成しなければならない必要がある。かかる予熱は、比較的小型の炭化水素燃料供給源、比較的小型の電池、又は空気/アンモニア比が可変であること、即ち、開始段階においてはより多くの空気を供給して通常のアンモニア燃焼を保持すること、により実現できる。一旦前記触媒及び反応器が触媒のライトオフ温度以上に加熱されると、供給する空気の量を減じ、自熱式加熱が可能になる。
【0055】
かかる実施態様は、追加の炭化水素燃料供給又は電池の必要性を減少させる一方、水素に分解可能なアンモニアを代わりに燃焼プロセスに用いて所望の反応を御すエネルギーを供給する。従って、かかる実施態様においては、追加量のアンモニアを供給して所要の熱エネルギーを供給しなければならない。更に、燃焼機を離れる微量のアンモニアを清浄する方法(吸着剤ベッドの使用のような)も更に組み込む必要がある。
【0056】
全装置質量の観点から、燃料燃焼は電熱器10より優れる。炭化水素燃料は従来のアルカリ電池のほぼ100倍のエネルギー密度を有する。アンモニアのエネルギー密度は炭化水素燃料の約半分にすぎない。もし熱を燃料の燃焼によって供給するとすれば、アンモニアを燃焼させた場合は、ブタンのような炭化水素に較べて著しく多い燃料質量が必要となる。
【0057】
炭化水素燃料を用いる際の重量節約は、別の炭化水素燃料タンクの必要性ゆえ一部相殺される。しかしながら、ブタン燃料の蒸気圧は比較的低いため、極めて軽量なタンクを安全に使用できる。アンモニアよりもブタンを使用することによる軽量化に加えて、ブタン/空気の炎は点火及び制御が容易であるため、ブタンが好ましい。従って、小型化が重要な実施態様において、ブタンの燃焼が加熱器18の好ましい方法を意味する。
【0058】
燃料電池22が75容積%のH2及び25容積%のN2を含むアンモニアのない改質流を用いて電力を産出することができるが、更なる実施態様は燃料電池に純粋な水素を供給できる。純粋な水素は、吸着剤供給源14と燃料電池22との間に水素精製機150に設けることにより改質流から産出させることができる(図1参照)。典型的な水素精製機としては、特に限定されないが、水素分離膜ユニット、HERA(キュービック(Quebec)、カルフォルニア)として提供される水素化物圧縮ユニット又はクエストエアー(QuestAir)(バーナビー、カルフォルニア)として提供される圧力スイング吸収ユニットが挙げられる。これらの精製機は約50−150psigの圧力で改質流の供給を必要とするため、アンモニアの解離を約50から150pisgで行うことを必要とする。一実施態様において、水素精製機150からの排気流が低レベルの水素を含む場合、かかる流れを燃焼室に送ることができる。
【0059】
図3−6は、小型化した水素発生装置における特定用途の反応器の一実施態様を説明する。該反応器は幅2cm、長さ7cm、高さ1cmで、約3cm2の反応容量(反応室の容量)を有する。しかしながら、該反応器は、より大きなアンモニアに基づく水素発生装置用に水素を発生させることができる、より大きなサイズに拡大することができる。同様に、該反応器を、より多くのアンモニア及び燃料の供給を利用する装置中で使用することにより、長期間適度な容量の水素を燃料電池に供給できるアンモニアに基づく水素発生装置が得られる。かかる装置は、海のブイのような遠隔利用に有用である。前記反応器は、850℃未満の温度、好ましくは550℃から650℃の間、更に好ましくは550℃から580℃の間の温度で運転することが有利である。結果的に、前記反応器は、十分な高熱伝導性を有する金属合金等の種々の非高融点金属類で製造できる。典型的な金属類としてはチタン及びステンレス鋼が挙げられる。
【0060】
前記反応器60は、頂板62、底板66、及び前記頂板と前記底板の間に配置した反応器コア64を含む。前記反応器コアは、反応表面64a及び燃焼表面64bを含み、両表面とも対向端61a及び61b、並びに対向端63a及び63bを規定する隆起した周縁を有する。前記反応表面及び前記頂板は、共に反応室を規定し、また、前記燃焼表面と前記底板は共に燃焼室を規定する。前記頂板、前記底板及び前記反応器コアは、蝋付け又は溶接のような適切な方法、例えばレーザー溶接によってそれぞれ結合する。好ましい実施態様において、前記反応器18は絶縁部材に囲まれており、周囲環境への熱損失を最小化する。図15−18に典型例を示すように、適切に間隔を開けて備えるボルト300を利用して、また(示さないが)必要に応じて適切なガスケットを利用して、頂板62,底板66及び反応器コア64を取り付けることができる。
【0061】
相隔たり、実質的に直線である複数の放熱フィン76aは、反応器コア64の中央部の反応表面64aから上方に伸びており、また、相隔たり、実質的に直線である複数の放熱フィン76bは、燃焼表面64bの下方に従属する。前記フィンは、厚さ約0.5mm、高さ約2mm及び長さ約50mm有している。隣接したフィンの間隔は約1mmが好ましい。前記フィンは、対向側である63a及び63bに平行に走り、対向端61a及び61bから離れている複数の燃焼チャネル69及び複数の反応チャネル71を規定する。
【0062】
相隔たり、実質的に直線的に従属する複数のフィンは、反応表面64a及び燃焼表面64bから従属していてもよいが、従属するフィン、ここで310/308は、その代わりに頂板62、底板66から従属し、図17及び18に描画したように、それぞれ反応室304及び燃焼室302に伸びていてもよい。これらの特定の実施態様において、燃焼表面64bから下に従属する、また、反応表面64aから上に伸びる放熱フィンの配置/組み合わせ(例えば、ジグザグ、波形など)を、図17及び18に更に具体的に例示する。フィン310/308は、燃焼室304及び反応室302のそれぞれに届く大きさが好ましい。
【0063】
更に別の典型的な実施態様において、熱移動及び反応速度を高めるためのメソチャネルの流体流量には、チャネルと形成するフィンを頂板62、底板66及び反応器コアなどに加工することのみならず、中程度の幅の流体チャネルを有する多孔性基板を添合することによっても組み込む。金属又はセラミックから製造できる浸透性の多孔性基板は、図15及び16に例示するように反応室及び燃焼室を規定する金属表面と緊密に接触する。
【0064】
かかる実施態様において、多孔性金属基板を使用して、前記燃焼室から前記反応室への熱移動率を高めることが好ましい。多孔性金属基板の望ましい典型的な候補としては、メッシュ、フェルト、及びポーバイル社(Porvair, lnc)(ヘンダーソンビル、サウスカロライナ)から入手可能な十分に焼結した開放気泡の網状/泡状基板が挙げられ、160及び162として図15及び16に示しており、また、それぞれ反応室及び燃焼室に適切に収まるように形成/提供され、もちろん、望ましいチャネルの特徴(例えば、以下で、また例えば図6に関して議論しているように、熱輸送、触媒燃焼及び分解)を提供するために、ブタン流体ライン68、排気流体ライン70、及び生成物供給ライン74を内部空間に取り入れるように配慮されている。一実施態様の例として、また、図15及び16に見本として例示するように、多孔性金属基板160は、生成物供給ライン74を配慮した配置を提供し、また適当な大きさの“切除”部分165を提供する。同様に、図17及び18において、フィンがそれぞれ頂板の表面62及び底板66依拠している場合、反応器60に入っていく種々の導管により同様の“切除”部分を提供できる。もちろん、取り付けは、管の周りの望ましい流速と、多孔性基板及び/又はチャネルにより提供される流量特性とを調和させる。
【0065】
図19は他の典型的なフォーム基板306を示し、これは隆起部分312によって一側面が提供されるチャネル314を有する。発泡性基板306の組成物の内在構造(チャネル及び孔径)により望ましいチャネル特性を提供することに加えて、提供されるチャネル314は、更に内在構造とチャネル314のフォーム基板306の組み合わせの特定の流速を提供するために適切な大きさを持って提供できる。こうした構造は、発泡待機室306が排気される特定の室(例えば、反応及び/又は燃焼室)で生じる反応のタイプ、反応物の圧力/流量、使用した触媒などに依存する。チャネル314は、上述したフィン76bの容量と同様の容量を有しうる。
【0066】
例えば、一インチ当たり約10から40孔の孔の大きさ(PPI)を有する多孔性金属基板が孔径を提供し、従って、流径は約0.5から約2.0mmの中規模程度にある。高温で取り扱うことが可能な材料として利用可能な典型的な多孔性金属フォームとしては、特に限定されないが、FeCrAIY、インコーネル(lnconel)625及びステンレス鋼316が挙げられる。高温での優れた機械的強度に加えて、前記材料は更に腐食及び酸化に対する抵抗性を示すことが好ましい。アンモニアは腐食性の薬剤であるので、その化学的不活性ゆえ(ポービール社又はコーニング社から供給されるような)セラミック基板類もまた好ましい。例えば、コーニング社はコージライトセラミックからモノリスセラミック構造のものを製造している。こういったモノリスの正方形チャネルの典型的な大きさは、一定範囲のチャネルサイズが利用できるが、通常1mm×1mm×15cmである。
【0067】
ブタンは燃焼室と流体接続をする燃焼流体ライン68を通って燃焼室に入り、前記燃焼チャネル69の中の至る所に分配される。燃焼生成物は排気流体ライン70を通って出て行く。空気はブタン燃料と共に供給してブタンの燃焼を支持しなければならない。空気は、ブタンが燃焼室に入る前にブタンと共に前混合することが好ましい。好ましい実施態様において、バルブ52を備えるベンチューリ(別々に示さない)全体は、外気とブタン供給源50からのブタンを混合する(図2を見られたい)。或いは、別個の空気ポンプを備えることにより、ブタン供給ラインが燃焼室に入る前にブタン供給ラインに繋がる空気ライン(示さない)を通して空気を供給できる。
【0068】
いくつかの実施態様において、空気/ブタン混合物は、空気/ブタン混合物を燃焼室に導入する前に、燃焼生成物の高温ガスの排熱を用いて前加熱する。例えば、排気流体ライン中にブタン/空気供給ラインを配置したチューブ・イン・チューブ構造の熱交換器(示さない)を使用して、ブタン空気混合物の温度をその燃焼前に上げることができる。しかしながら、自己着火温度(即ち、空気/ブタン混合物が着火用火花の必要無しに燃焼する温度)が430℃であるので、過度に前加熱されるのを防ぐ注意をしなければならない。
【0069】
図6で最もよく分かるように、燃焼流体ライン68は第一の対向端61aから反応器コア64に入り、反応器コア61bの対向端の近傍にまで、フィン76bと平行に伸びる。フィンを燃焼流体ラインのすぐ近傍の場所に配置しないことにより、ブタンが燃焼生成物がチャンバーから出て行く場所と異なる場所から燃焼室に入るので、燃焼流体ラインが反応器コアに行き来できるようにすることによりブタンが燃焼室の全長を自由に行き来できるようになる。こうした配置により、未燃焼のブタンが反応器から出て行くことを最小化し、高温の燃焼ガスがフィンと熱交換する時間の長さを最大化する。
【0070】
図3−6に示す実施態様において、燃焼流体ライン68が出て行く時に、ブタンは燃焼室内の第2の端部61b、フィン76bと燃焼流体ラインの間に配置した白金ガーゼ触媒78と接触する。一般に、前記ガーゼは約20から約80メッシュであり、約52メッシュであることが好ましい。
【0071】
次に、前記ブタンを燃焼させる。白金ガーゼ78において生じる前記白金触媒燃焼は、燃焼室の反対側から燃焼チャネル69に沿って排気流体ライン70に指向させる高温の燃焼ガスを発生する。高温ガスが排気流体ラインに達するまでに高温ガスが必要とする時間中、フィン76bは大量の熱エネルギーを吸収し、この熱はそれから反応器コア64の反応側部分にあるフィン76aに移動する。燃焼側64bからの熱は、対応するフィン76aと熱交換関係にあるフィン76bで吸収する。これらのフィンにより移動する熱は、アンモニアを十分に加熱して所望の分解反応が起きるようにする。また、フィンによって導かれたチャネルは、燃焼器の圧力を減少させ、計量の送風機を使用して燃焼器に空気を供給することを可能にする。
【0072】
燃焼副生成物は、排気流体ライン70を通って燃焼室を出る。触媒並びにフィン76a及び76bを利用することにより、利用可能な燃焼エネルギーの90%超をブタンの燃焼から抽出して反応室に移動させることができる。
【0073】
アンモニアはアンモニア供給ライン72を通って前記反応室に流れ、ブタンの燃焼によって供給される熱エネルギーはアンモニアを水素と窒素に分解する。従って、生成水素及び窒素は反応生成物供給ライン74を通って出て行く。
【0074】
反応室に入っていくアンモニアの流路及び反応室から出て行く水素/窒素生成物を図5に示す。前記アンモニア供給ライン72は第一の対向端61aから反応器コア64に入り、反応器コアに入り反応器コア61bの反対端の近傍の場所までフィン76aに平行に伸びる。図4に最もよく見られるように、フィンをアンモニア供給ライン又は反応生成物供給ライン74のすぐ近くに配置しないことによって、アンモニアが水素/窒素生成物が出て行くのと異なる場所から前記反応室に入っていくため、アンモニア供給ラインが前記反応器コアと行き来することを可能にする。アンモニア供給ラインを前記反応生成物供給ラインから前記反応器コアの反対側に位置させることにより、アンモニアを前記反応器コアから出て行く可能性のある前に、前記反応室の全長を行き来させなければならない。この配置は、微量のアンモニア以外が分解して所望の水素/窒素生成物に分解する十分な滞留時間を保証する。
【0075】
図3−6に示す実施態様において、前記反応室ライン74の外側に位置する反応生成物の流体の少なくとも一部をアンモニア供給ライン72の外側の同軸上に配置し、前記反応生成物供給ラインとアンモニア供給ラインとの間に、向流熱交換関係を作り出す。反応生成物供給ラインを通って反応器から出て行く高温の水素及び窒素生成物は、前記アンモニア供給ラインを通って流れる比較的冷たいアンモニアを加熱する。アンモニアが前記反応室に入っていく前にアンモニアに熱エネルギーを加えることにより、反応器コア64の燃焼側のブタン燃焼に必要な熱エネルギーがより少なくなる。
【0076】
図7、8A、及び8Bは、組み立てた反応器60を示す。ブタン流体ライン68、排気流体ライン70、アンモニア供給ライン72、水素流体ライン74、フィン76a及び76b、並びに白金ガーゼ78触媒を示す。
【0077】
前記反応器には好ましいアンモニア分解触媒を取り付ける。使用した特定の触媒は前記反応器の運転温度に基づいて選択する。好ましい実施態様において、前記装置は約550℃から約650℃で、最も好ましくは約550℃から約580℃の温度で運転する。これらの温度は、標準的な構成材料を使用して前記反応器を製造することを可能にする。反応温度をより高くするとアンモニアを水素及び窒素への転換がわずかに効率的になるが、850℃を超える温度で運転する反応器は高融点金属のような新規材料で製造しなければならない。
【0078】
本発明には種々の触媒が利用可能であり、特定の触媒の性質(及びアルミナのような必要とされる担体)は反応器の設計に影響を及ぼす。前記触媒は600℃未満のライトオフ温度を有し、最適運転温度が650℃未満であることが好ましい。かかる温度条件は、結果として、より高温で働く触媒によって得られる転換効率より低い転換効率を招くが、上記のより低い好ましい温度条件は、チタン及びステンレス鋼のような一般的な金属を使用して前記反応器18を製造することを可能にする。
【0079】
また、特定の触媒類は、前記反応器の大きさに影響を及ぼす特有の活性を有する。例えば、特定の容積に対して、異なる触媒は同じ転換効率を達成するために異なる流速を必要とする。同様に、特定の流量に対して、異なる触媒は同じ転換効率を達成するために異なる容積を必要とするであろう。従って、選択した触媒は最適温度条件、流量及び反応器容積に影響を及ぼす。好ましい触媒類としては、しばしばジョンソンマテーイ(Johnson Matthey)から市販されている146型等のアルミニウム酸化物担体マトリクス中に分散させたルテニウムとして提供される、ルテニウムに基づく触媒類が挙げられる。しかしながら、前記反応器は650℃未満の温度で働くため、ガンマアルミニウム及びナノ相チタニアのような他の超高表面積担体マトリクスが使用できる。従って、ガンマアルミニウム又はナノ相チタニアの何れかに分散させたルテニウム触媒を使用できることは本発明の利点である。
【0080】
自熱式加熱を使用する場合、アンモニアに含まれていて燃焼を支持するいくらかの酸素が必要である。酸素はある種の触媒、例えばルテニウムに基づく触媒に対して悪影響を及ぼす。従って、自熱式加熱に使用する装置のために、参加に対してより抵抗性の触媒を使用してもよい。更に、燃焼により生成するアンモニア及び水は腐食性の混合物を生成するため、ステンレス鋼の代わりに腐食抵抗性の材料を使用すべきである。
【0081】
更に、酸素に傷つきやすい触媒を含む反応器を組み立てる(即ち、頂板を反応器コアにろう付けすることにより組み立てる)場合、触媒が酸化するのを防ぐために還元的雰囲気を準備することが有益であるかもしれない。
【0082】
また、カタルコ(Katalco)27−7(登録商標)(ICI/カタルコ、英国から市販されている)のようなニッケルに基づく触媒は、好ましい触媒である。しかしながら、前記ニッケルに基づく触媒は、ルテニウムに基づく触媒と同様の転換効率を達成するためにより長い滞留時間を必要とする。前記ルテニウムに基づく触媒は、前記ニッケルに基づく触媒の十分の一の滞留時間を有する。
【0083】
他の望ましいアンモニア分解触媒としては、鉄酸化物、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金及びレニウム触媒又はこれらの元素を含む配合物が挙げられる。
【0084】
水素/窒素混合物から残留アンモニアを除去する炭素に基づく吸着剤の効率により、反応器18は少なくとも99.9%のアンモニアを水素及び窒素に転換し、従って反応生成物が残留アンモニアを約500ppm未満含むことが好ましい。
【0085】
図1に示す好ましい実施態様において、反応器18を出て行った後、高温の窒素及び水素の混合物は熱交換器16中を流れ、(アンモニア供給源12からアンモニア供給ラインを通って反応器18に流れる)ずっと冷たいアンモニアは、前記反応器を出てきたより高温の窒素及び水素から熱エネルギーを吸収する。向流式熱交換器を使用し、一実施態様においては前記熱交換器がチューブ・イン・チューブ型を含むことが好ましい。好ましい実施態様においては、前記熱交換器は絶縁要素に取り囲まれており周囲環境への熱損失を最小化している。
【0086】
アンモニア供給源12から反応器18にアンモニアを流し、吸着剤供給源14に含まれる吸着剤の間の熱交換関係を提供する目的は二つある。第一に、反応器に入る前にアンモニアを予熱することは、水素発生装置の熱効率をよくするために重要である。熱交換器がないと、反応器から排出される高温の水素/窒素混合物からのエネルギーが回収されることなく大量のエネルギーが失われる。かかる熱損失により更に多くの燃料を消費して反応器を加熱することが必要になり、その結果、装置の大きさ、重量及び運転コストが増加する。第二に、水素/窒素混合物を吸着剤供給源に入る前に冷却することにより、水素/窒素混合物からの熱エネルギーによって吸着剤が凝集しないようにして、吸着剤の有効性を高める。熱交換器16が水素/窒素生成物の温度を約80℃未満に低下させることが好ましく、室温近くまで低下させることが更に好ましい。
【0087】
冷却した水素/窒素生成物は熱交換器16を出て、吸着剤供給源14に流れ込み、そこで前記吸着剤が反応器18を出てくる水素及び窒素に含まれる残留アンモニアを吸着する。吸着剤の補充の間の所望の運転期間の間、達成目標が実現するのを助けるため、十分量の吸着剤を供給する。吸着剤供給源中の吸着剤は、(1ppm未満残っている)実質的に全ての残留アンモニアを水素/窒素生成物から除去する。
【0088】
好ましい吸着剤としては炭素及び改質炭素吸着剤挙げられる。最も好ましい吸着剤としては、表面に結合酸分子を含ませるために浸透させた炭素が挙げられる。従って、このように結合した酸は残留アンモニアを中和する。最低限において、最も好ましい吸着剤は炭素1グラム当たり2ミリモルの強酸吸着部を有し、最も好ましい吸着剤は炭素一グラム当たり5ミリモル以下有しうる。
【0089】
上記炭素及び改質炭素吸着剤と二者択一的に及び/又はさらに加えて、モレキュラーシーブ、例えば514 4A等級の大きさの吸着剤(グレース ダビソン、コロンビア MD)もまた、反応器から排出される改質流(即ち水素/窒素生成物)からアンモニアを除去するために使用できる。複数個の吸着剤が供給された場合、有用な組み合わせの吸着剤を直列的に又は並列的に利用して、不要なアンモニアを吸着してもよい。
【0090】
また、改質流注のアンモニアは二段階の処理を利用して除去できる。第一段階においては、改質流をアンモニアに対する浸透性を有する高分子膜を含む膜ユニットに通すことによってアンモニアを除去する。燃焼器への空気は高分子膜の加硫に導き、浸透させたアンモニアを前記燃焼室に移動させることができる。第二の段階においては、前記改質流を指向させて吸着剤供給源に流す。この方法により、特定の供給に必要な吸着剤の量を劇的に減少させ、及び/又は複数の吸着剤を使用して再生を促進する場合のサイクル時間を間隔を増加させる。
【0091】
液体アンモニアを、アンモニア供給ライン15を通じて吸着剤供給源14に通過させる。前記アンモニア供給ラインは前記吸着剤を通過し、それによって、アンモニア供給ライン中を流れるアンモニアと前記吸着剤の間で熱エネルギーの交換が起きる。前記アンモニアが流体ラインに残っていて前記吸着剤と接触しない場合は、前記アンモニアは吸着剤によって濾過しない。
【0092】
吸着剤供給源14において、液体アンモニアの少なくとも一部分が15に戻りガス状態となり、周りの吸着剤から相当量の熱(即ちアンモニア吸着剤1グラム当たり327カロリーの熱)を吸収する。この方法において、アンモニア供給源からのアンモニアは吸着剤供給源中に含まれる吸着剤を冷却し、それ故、温度感受性の吸着剤の効率を維持する。吸着剤供給源の出口では、高温の水素及び窒素ガスが出て行くことで反応器18がより低温のアンモニアと熱エネルギーを交換して水素/窒素混合物を冷却しアンモニアの温度を上昇させるため、アンモニア供給ライン15が繋がり熱交換器16と流体接続する。
【0093】
一態様において、図1で議論した水素発生装置の機能的部分を、図2に示す好適な小型の実施態様に組み上げた。小型の水素発生装置30は容積が1リットル未満、質量が1kg未満で、50ワット以下の電力で総エネルギー出力1kWhを発生するために十分な水素燃料を供給することが好ましい。
【0094】
圧力調整器32を液体アンモニア供給源36に取り付ける。アンモニア供給源の質量を最小化するために、チタン合金等の軽量で更に強力な材料を使用する。333gのアンモニアを貯蔵するために、アンモニア供給源の容積は約600mlである。容積600mlの容器に基づくチタンの質量は約84gである。従って、アンモニア及び供給タンクは目的質量1000gのうち417gを占める。
【0095】
アンモニア供給ライン40は、圧力調整器32上の流体接続部品38aに接続し、流体接続部品38bは吸着剤キャニスター42に接続する。液化アンモニアは、約30gの吸着剤を含む吸着剤キャニスター42に流れ、そこに含まれている吸着剤を冷却する。反応器46を出て行く高温水素/窒素混合物は吸着剤キャニスター中で吸着剤と流体接続する。比較的低温のアンモニアは吸着剤の熱エネルギーをいくらか吸収し、アンモニアを加熱して吸着剤を冷却して吸着剤が最適に働くことを保証する。(吸着剤無しの)吸着剤キャニスターは約15gである。前記アンモニア貯蔵タンク、前記アンモニアそれ自身、前記吸着剤カラム、及び小型水素発生装置30の吸着剤部分の最小質量は、(接続金具及び管を除いて)462gである。
【0096】
前記アンモニアは流体接続具38cを通って吸着キャニスター42を出て行き、アンモニア供給ライン40bを通って熱交換器44に流れる。前記アンモニアは流体接続具38dを通って熱交換器に入る。前記熱交換器の詳細は熱交換器及び反応器46の両方を含む覆いによってよく見えないが、前記熱交換器は、アンモニアが熱交換器に入っていき高温の水素及び窒素と熱エネルギーの交換をして前記反応器30を出て行くことができるようにする向流式熱交換器である。前記熱交換器は質量が約30gのチューブ・イン・チューブ熱交換器であることが好ましい。一実施態様において前記熱交換器は15cmである。いくつかの実施態様においては、コイル状のチューブ・イン・チューブ熱交換器構造を使用して熱交換器の長さを減少させる。
【0097】
前記熱交換器44は、アンモニアが反応器46に入っていく前にアンモニアの温度をさらに増加させる。次に、前加熱したアンモニアが反応器に入り、反応器内に配置した炭化水素燃焼器(又は他の熱源)により更なるエネルギーが供給される。前記反応器にもたらすための十分なエネルギーが供給され、前記反応器の運転温度を維持する。ブタンは比較的軽量の加圧型容器50中に供給する。圧力調整器52は前記反応器へのブタンの流れを制御する。
【0098】
空気は燃焼を支持するためにブタン燃料と混合しなければならない。別々の空気ポンプと空気ライン(示さない)を小型水素発生装置30に組み込むことができるが、圧力調整器52はブタン燃料の流量を測定するだけでなく、周囲空気とブタンを混合して燃焼を生じさせるために必要である適正な燃料/空気混合物も提供することが好ましい。ブタンは圧力調整器及び流体接続具38iを通ってブタン容器50を出て行き、ブタン流体ライン48に流入する。前記ブタン流体ラインは流体接続具38eと流体接続をし、そこから前記ブタンは反応器46に入り、そこで燃焼し必要な熱エネルギーを供給する。
【0099】
いくつかの実施態様において、ブタン又はその他の水素ガスはクリティカルフローオリフィス(示さない)を通って流れ、前記ガスが前記反応器に入る前に臨界流を作り出す。臨界流は、オリフィス中のガスの速度が特定のガス中の音速と等しい場合に得られる。臨界流れを得ることは、上流圧力が一定であり且つ上流圧力に対する下流圧力が“臨界比”未満であるとき、加硫圧力中の変動にも関わらず極めて一定に近いガス流を維持できるため有用である。多くの一般的ガスに対する臨界比は約0.5であり、熱力学原理に基づいて測定できる。例として空気を用いると、もし蒸留圧が20PSIG(34.7PSIA)であれば、下流圧力が約2.7PSIG(17.4PSIA、これは34.7PSIAに臨界比0.5をかけたものに相当する)未満である限り、前記ガス流は一定である。
【0100】
333gのアンモニアを分解するのに十分な熱を供給するために約40gのブタンが必要である。調整器/空気混合物は20g未満の質量を有するが、前記ブタン容器50は約30gの質量を有する。必要とする接合具及び管類の質量は約80gである。それらの実施態様において、熱源がブタンのような炭化水素燃料である場合、前記燃料が入っていく反応器46は燃焼を開始するために、例えば圧電性の点火装置を用いて点火しなければならない(示さない)。かかる点火装置の質量は約20gである。
【0101】
燃焼反応を開始するための別法は、開始中に燃料として水素を使用することを含む。少量の水素を金属水素化物中に貯蔵することが可能であり、燃焼反応の開始に使用できる。水素は、白金を含む触媒処方物を用いて室温で点火できる特異な燃料である。従って、この実施にはグロープラグ、点火装置などの必要性がなく、点火の信頼性を高める。一旦点火触媒が200℃から300℃に達すると、水素は炭化水素燃料と置換できる。燃焼器への炭化水素燃料は、反応室に供給する燃料と同じもの又は異なるものにできる。
【0102】
反応器46は軽量な材料から製造することが好ましい。チタンは軽量で所用の温度に耐えることができる。質量を最小化するために、実質的に反応器を囲むために使用する絶縁材料は真空形成エアロゲルパネルが好ましい。触媒を含むチタン反応器は約50gの質量を有し、熱交換器及び反応器のための覆い及び絶縁材は約110gの質量を有する。
【0103】
高温水素及び窒素混合物は熱交換器44を通って反応器46を出て、流体接続具38fを通り、流体接続具38gを介して吸着キャニスター42につながっている反応生成物供給ライン54に流入する。水素及び窒素のガス混合物が前記吸着キャニスターに入るので残留アンモニアが除去される。このようにして、アンモニアを含まない水素は流体接続具38をを通して吸収キャニスターから排出される。
【0104】
接続具及び管類の質量は約80gであり、結果として、装置の全質量は842gである。図2に関連して記載されている質量は単なる例であり、1L以外の容積と、50ワット/1kWhを超える又はそれ未満の能力を有する小型水素発生装置は、小型水素発生装置30の部品の大きさ及び質量を増加又は減少させることによって実現できる。
【0105】
【表1】
【0106】
図9及び10に示す実施例において、触媒86は反応チャネルに充填する。図11中に示す二つの二者択一的な実施態様において、反応室中の前記フィンは触媒で被覆されている。被覆表面積を最大化するために、二者択一的な実施態様の内の一つにおいて、前記フィン76cは直線ではなく、ジグザグ型又は非直線的な形状を有する。また他の二者択一的な実施態様において、前記フィン76dは、同じ反応器容積においてより薄いフィンをより多く配置することを可能にし、それによって触媒をめっきできる表面積を増加できるようにするため、図3−6に示すフィンよりも薄い。反応器側の内部表面積を増加させる、代替として使用できる他のフィンの配置を意図している。また、単一形態のフィン及びフィンの形態の組み合わせが使用可能であることについても意図している。一般に、反応器の各部分が同じ形状を有し、従って反応器の異なる部分を通るチャネルは実質的に同じである。
【0107】
本発明に関する装置の他の実施態様は、長期間メンテナンス(例えば、アンモニア又は吸着剤の補給)の必要無しに適度な水準の電力、例えば35ワット、を供給するために設計されている。一つの特定の実施態様は、遠隔の海のブイ(これは、一般に天候データを収集するか、又は航海を容易にする)で電力を供給するために設計されている。連続的に35ワットの電力を供給できる装置は約5kgの重さであり、更にアンモニア、アンモニアタンク及び吸着剤の重さが加わる。アンモニア及び吸着剤を6月供給するためには約52kgの質量を有する。より長期間の運転は、アンモニアタンク容量を増加させることによって実現できる。
【0108】
海洋環境における使用に好適なアンモニアに基づく水素発生装置10aの機能的要素を図12に示す。これらの機能的な要素は、送風機92及び空気清浄機90を含むことを除いて図1に示した機能的要素と一致している。海洋環境に起因して、燃料電池に入ってくる空気から海水を除去しなければならない。燃料電池22から供給された電力によって電圧を加えられた送風機を使用して、空気を空気清浄機に強制的に送る。空気清浄機は、燃料電池22中で水素と結合して電力を発生させる空気から塩分と水を除去する。かかる実施態様において、燃料電池が電力を発生し始めるまで、始動電池94を使用してまず送風機に電力を与える。そのとき、燃料電池は前記送風機に電力を与え、更に始動電池94を再充電するために使用できる。
【0109】
説明のように、アンモニアに基づく水素発生装置10用の熱源20は、まず始動電池94、次に燃料電池22からエネルギーを供給される電熱器が好ましい。或いは、熱源20は炭化水素燃焼器又はアンモニア燃焼器にできる。炭化水素燃料はアンモニアよりもエネルギー密度が高いけれども、アンモニアに基づく水素発生装置10aは、小型化の設計よりもむしろ長時間運転するために適している。炭化水素燃料供給源の除去はメンテナンスの必要性の減少を意味するため、アンモニア及び吸着剤のみ供給することが必要となる。従って、長時間運転するために最適化したアンモニアに基づく水素発生装置のためには、熱源として電熱器又はアンモニア燃焼器が好ましい。吸着剤供給源14には、アンモニアに基づく水素発生装置10aが6ヶ月間、連続して35ワットの電力を発生することを可能にするため、吸着剤2kgを充填する。
【0110】
メンテナンス無しに運転する期間を更に延長するために最適化したアンモニアに基づく水素発生装置10bを図13に示す。実質的に更に大きなアンモニア供給源12aを含む。例えば、150kgのアンモニア供給源は、35ワットの電力を連続して発生させるために十分な水素を提供するために使用する場合、18月分に足りるアンモニアを供給する。
【0111】
アンモニアに基づく水素発生装置10bは、単一の吸着剤供給源を使用のではなく、一対の吸着剤供給源14a及び14bを使用する。吸着剤供給源14aが反応生成物のガスから残余の水素を除去するためにオンラインにある間に、吸着剤供給源14bが再生し、また逆の場合も同じである。この方法により、必要な吸着剤の質量が著しく減少する。つまり、必要とされる吸着剤の質量はもはや濾過する水素精製物の全量の関数ではなく、むしろオフラインの吸着剤供給源を再生するために必要な時間中に処理する水素精製物の容量の関数である。もし吸着剤供給源を再生するために約10時間が必要であれば、各吸着剤供給源が必要とする大きさは10時間での水素精製物の流速に基づく。かかる装置は、吸着剤を再生することなく24時間運転できるであろう。しかし、吸着剤を連続的に再生し、また吸着剤供給源14a及び14b間で、それぞれの再生に引き続いて循環することにより、前記装置は24時間よりも大幅に長い時間働きうる。一定数の再生サイクルの後には、吸着剤の有効性は低下するであろう;かかる装置は、吸着剤を取り替えなければならなくなる前に数千時間運転できる。再生中に発生するアンモニアは、燃焼させて熱を供給すること、又は分解して水素を発生することができる。或いは、更に酸溶液に吸収させることもできる。
【0112】
運転中、アンモニア供給源12a由来のアンモニアは、そのときにオンラインで再生されていない吸着剤供給源14a又は14bにアンモニアを指向するバルブ98aに入る。アンモニア供給ライン15はオンライン上の吸着剤供給源を通り、吸着剤を冷却する。次に、アンモニアは熱交換器16を通って反応器18に入る。水素/窒素生成物が一旦前記熱交換器を出ると、バルブ98がセットされ、前記反応生成物がオンライン上の吸着剤供給源に入るのを保証する。前記吸着剤が水素生成物からアンモニアを除去するため、水素生成物は1ppm未満のアンモニアを含み、その結果、実質的にアンモニアを含まない水素は電力を発生させるために燃料電池22に供給される。
【0113】
図4に示すように、特定の実施態様は、適切なバルブ120、122及び124を有する、複数の第一吸着剤供給源126、第二吸着剤供給源128、及び第三吸着剤供給源130を含み、これらは反応器18の反応生成物供給ライン74から、第一吸着剤供給源126、第二吸着剤供給源128、及び第三吸着剤供給源130の少なくとも一つに流体を選択的に導く。追加のバルブ200は、見本で示したように、種々のラインの必須部分に配置できる。図14は、図1の典型的な構成図に関して意図しており、また利用しうる吸着剤の典型的配置に関する“詳細”図である。吸着剤供給源の少なくとも一つが再生されている間に、その他の二つのうち少なくとも一つがオンラインにありアンモニアを吸着する。三つの吸着剤供給源の詳細をここに提供するが、この数は単なる例であり、有用な如何なる複数個の吸着剤も意図している。更に、当業者に周知であるように、また以下に例示するように、前記吸着剤を再生するための如何なる方法も利用できる。
【0114】
熱源20aが電熱器であり、まず受電式開始電池94によって、それから水素が一旦発生し始めたら燃料電池よってエネルギーを与えられることが好ましい。前記熱源は熱エネルギーを反応器18に供給してアンモニア分解反応を促進するだけでなく、オフラインの吸着剤供給源も再生する。
【0115】
好ましい実施態様において、吸着剤は加熱により再生する。前記吸着剤は、十分な一定時間、ある温度で加熱して吸着したアンモニアを追い払い、これを燃焼させて熱を発生させることや分解して水素を発生させることができる。熱源20aは吸着剤供給源と反応器の両方に対する単一の抵抗素子にすることができ、別々の電熱器をそれぞれの吸着剤供給源及び反応器に対して供給できる。装置の熱効率を高める一つの方法は、各吸着剤供給源に熱交換器を組み込み、反応器からの高温の燃焼ガスをオフラインの吸着剤供給源の熱交換器に指向させて吸着剤を再生するために必要な熱を供給することである。炭素吸着剤を使用した場合、窒素及び他の不活性ガス又は不活性ガスのガス混合物を利用して吸着剤供給源をパージできる。
【0116】
送風機92及び空気清浄機90aを追加部品として示す。前記炭素20再生プロセスは、もし清浄な空気の流れが左前記載性プロセスの間に吸着剤を通過すれば、更に速やかに又はより低温で達成できる。バルブ98cは、再生される吸着剤供給源に空気の流れを指向させる。空気清浄機90aのデザインは、アンモニアに基づく水素発生装置10bを配備した環境によって決まる。海洋環境においては、フィルター90aは水及び塩を除去するためにデザインすべきである。砂漠環境のためには、フィルター90aは微粒子(砂及びちり)を除去すべきである。
【0117】
他の実施態様は更に吸着剤供給源を含む。更なる吸着剤供給源は、装置の中断なしに、より長期間の再生サイクルを提供する。
【0118】
或いは、反応室及び燃焼室中の多孔性金属基板の利用と同様にして、多孔性金属フォーム又はセラミック基板に中規模程度の流径を組み込むことによって、熱交換器中のメソチャネル構造をさらに利用できる。セラミック基板の例としては、ポービール(ヘンダーソンビル、ノースカロライナ)から提供されるようなAI2O3、ZrO2、 SiO2、CaO、MgO、Y2O3、SiC、又はそれらの混合物からなる網状のセラミックフォーム、並びにコーニング社(コーニング、ニューヨーク)から提供されるコージライトモノリスが挙げられる。例えば、1インチ当たり400孔(ppi)のコージライト四角セルモノリスは、中規模の範囲に含まれる1mm×1mmの断面のチャネルを含む。
【0119】
本発明は実施した好ましい形態に関して記載されているが、当業者は、本発明の精神を逸脱しない多くの修正を成し得ることを理解するであろう。従って、如何なる方法においても本発明の範囲が上記載によって限定されることを意図していない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−168486(P2011−168486A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−84935(P2011−84935)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【分割の表示】特願2008−507746(P2008−507746)の分割
【原出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(508233412)インテリジェント エナジー インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84935(P2011−84935)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【分割の表示】特願2008−507746(P2008−507746)の分割
【原出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(508233412)インテリジェント エナジー インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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