説明

アンモニア貯蔵タンクの全量消費方法及びその系統

【課題】脱硝アンモニア貯蔵タンクと煙道アンモニア貯蔵タンクとを使い分けることで、脱硝アンモニア貯蔵タンクを空になるまで消費し、従来のように無駄にアンモニアを残して廃棄することなくアンモニアを有効に利用し、かつその廃棄のために貯蔵タンクの清掃の労力を軽減し、また希釈水の利用量を低減する。
【解決手段】A−煙道アンモニア注入系統10において、煙道アンモニア貯蔵タンク5から送液した液化アンモニア、アンモニアガスを脱硝装置1へ供給し、脱硝アンモニア注入系統8において、脱硝アンモニア貯蔵タンク2から液化アンモニア、アンモニアガスを煙道3,4に供給し、脱硝アンモニア貯蔵タンク2内の液化アンモニアの全量を消費する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所等の発電プラントにおける排ガス処理技術に係り、特にアンモニア貯蔵タンク内のアンモニアを有効に消費するアンモニア貯蔵タンクの全量消費方法及びその系統に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、特に火力発電所では、図4の系統図に示すような排ガス処理設備において、アンモニア含有排水が発生することがある。図示するように、ボイラー21の出口から煙突22に至る煙道23には、煙道ダクトを介して順次直列に接続された脱硝装置1、電気集塵機9及び脱硫装置24から成る排ガス処理設備が設置されている。なお、脱硫装置24を設置していない系統もある。これらの排ガス処理設備に付随して熱交換器としてエアヒーター25及びガスガスヒーター26が設置されている。
【0003】
このような排ガス処理設備においては、アンモニアを利用して排ガスを処理している。例えば排ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置1にアンモニアを利用している。また、排ガス中の煤煙を取り除く電気集塵機9の集塵効率を上げるためにもアンモニアを利用している。
【0004】
ここで、脱硝装置1は排ガス中から窒素酸化物(NOx)を、電気集塵機9は煤塵を、また脱硫装置24は硫黄酸化物(SOx)をそれぞれ除去する。この脱硝装置1としては、例えばアンモニア選択接触還元方式のものがある。この方式は、還元剤としてアンモニアを用い、所定の触媒の存在下、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を選択的にアンモニアと接触させ、窒素と水に還元するものである。この装置で還元剤として用いられるアンモニアは、通常、液化アンモニアとして供給されており、図示するように、液体の状態でアンモニア貯蔵タンク2に貯蔵している。
【0005】
ボイラー21の運転時には、液化アンモニアはアンモニア貯蔵タンク2から開閉弁13を開けて送液された後、気化器6で気化され、ガスヘッダー7を経て脱硝装置1まで送られる。
【0006】
また、燃料中の硫黄分が燃焼過程において、大半は二酸化硫黄(SO)になり、脱硫装置24によって除去されているが、一部が三酸化硫黄(SO)となり露点が高く、排ガス中の水分と結合し硫酸となり、煙道23や電気集塵機9の腐食損傷を引き起こすため、エアヒーター25の出口煙道23へアンモニアを注入し中和処理している。
【0007】
図5はアンモニアによる脱硝処理と煤煙処理の系統を示す概略系統図である。この概略系統図では、脱硝アンモニア貯蔵タンク2から1号脱硝装置1へ至る脱硝アンモニア注入系統8と、煙道アンモニア貯蔵タンク5から1・2号煙道3、3号煙道4へ至る煙道アンモニア注入系統10,11を示す。脱硝アンモニア注入系統8では、脱硝アンモニア貯蔵タンク2から送液された液化アンモニアが気化器6でアンモニアガスに気化され、このアンモニアガスはガスヘッダー7を経て1号脱硝装置1に供給される。
【0008】
また、A−煙道アンモニア注入系統10又はB−煙道アンモニア注入系統11では、煙道アンモニア貯蔵タンク5から送液された液化アンモニアがそれぞれの気化器6でアンモニアガスに気化され、このアンモニアガスはガスヘッダー7を経て各煙道3,4にそれぞれ供給される。
【0009】
それぞれのアンモニア貯蔵タンク2,5について、定期点検における開放点検時には、アンモニア貯蔵タンク2,5のアンモニアレベル下げを実施する。「貯蔵タンクレベル低」の警報が発生する前に消費を停止し、アンモニア残液を大量の希釈水とともに、ブロー即ち廃棄処理していた。
【0010】
このようにアンモニア貯蔵タンク2,5が空になるまで、液化アンモニアを消費すると、系統へアンモニアが一時的に無注入状態になる。特に脱硝装置1へのアンモニアが無注入になると、窒素酸化物排出量が公害協定値を超えるため、貯蔵タンクレベル低以下で運転を継続することは危険と考えられている。そこで「貯蔵タンクレベル低」の警報が発生する前に消費を停止する。例えば容量が20tの貯蔵タンク2,5では液化アンモニアを約3t程度残す状態にしている。
【0011】
このようにアンモニア貯蔵タンク2,5に液化アンモニアが残っていると、その内部を洗浄する必要がある。このようなアンモニアが含有する排水を浄化する技術について、例えば特許文献1の特開2000−317272号公報「アンモニア含有排水の浄化方法」に、NH3 含有排水からNH3を放出して気相中に移行させる工程と、この工程で発生したNH3 を含むガスを加熱する工程と、加熱されたNH3 含有ガスを、脱硝機能を備えたNH3 分解触媒に接触させてNH3 をN2 とH2 Oに分解する工程とを含む浄化方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−317272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、「貯蔵タンクレベル低」の警報が発生する前に消費を停止することは、例えば容量が20tの貯蔵タンク2,5には液化アンモニアが約3t残った状態になり、資源を有効に利用できないという問題を有していた。
【0014】
このように残った液化アンモニアは大量の水、例えば貯蔵タンク2,5の容量が20tのときは約300tの水で希釈し、アンモニア水を排水処理装置で処理していた。この排水処理装置および排水経路において、アンモニア臭が発生するという問題を有していた。
また、アンモニアを含む高窒素処理にはコストがかかるという問題を有していた。
【0015】
本発明の発明者は、アンモニアによる煤煙処理においては、アンモニアが無注入であっても、集塵効率が大きく変動しないことに着目した。脱硝アンモニア貯蔵タンク2と煙道アンモニア貯蔵タンク5が備えられた設備では、これらのアンモニア貯蔵タンク2,5の供給先を使い分けることに着目した。
【0016】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、脱硝アンモニア貯蔵タンクと煙道アンモニア貯蔵タンクとを使い分けることで、脱硝アンモニア貯蔵タンクを空になるまで消費し、従来のように無駄にアンモニアを残して廃棄することなくアンモニアを有効に利用し、かつその廃棄のために貯蔵タンクの清掃の労力を軽減し、また希釈水の利用量を低減することができるアンモニア貯蔵タンクの全量消費方法及びその系統を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のアンモニア貯蔵タンクの全量消費方法は、排ガス中の煤煙を取り除く電気集塵機(9)の集塵効率を上げるために、煤煙に接触させるアンモニアを、煙道アンモニア貯蔵タンク(5)から各煙道(3,4)に至るA−煙道アンモニア注入系統(10)とB−煙道アンモニア注入系統(11)にそれぞれ供給して煤煙処理を施し、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)からアンモニアガス、液化アンモニアを脱硝装置(1)に至る脱硝アンモニア注入系統(8)に供給して脱硝処理をそれぞれ施すアンモニア貯蔵タンク内のアンモニアを全量消費する方法であって、前記A−煙道アンモニア注入系統(10)において、煙道(3)への開閉弁(13b)を閉じ、該A−煙道アンモニア注入系統(10)から前記脱硝装置(1)に接続したアンモニアガス供給系統(14)の開閉弁(13b)を開け、前記煙道アンモニア貯蔵タンク(5)から送液した液化アンモニアを気化し、この気化したアンモニアガスを脱硝装置(1)へ供給し、前記脱硝アンモニア注入系統(8)において、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)から液化アンモニアを脱硝装置(1)へ送液する開閉弁(13a)を閉じ、B−煙道アンモニア注入系統(11)に接続した液化アンモニア供給系統(12)から液化アンモニアを該B−煙道アンモニア注入系統(11)へ送液し、この液化アンモニアを気化し、この気化したアンモニアガスを煙道(3,4)に供給し、該脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアの全量を消費することを特徴とする。
【0018】
前記脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)に貯蔵されている液化アンモニアの残量が警報発生時期に近づいたときに、前記煙道アンモニア貯蔵タンク(5)の液化アンモニアを、前記A−煙道アンモニア注入系統(10)から前記脱硝装置(1)に供給し、前記脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)の液化アンモニアを、前記B−煙道アンモニア注入系統(11)から前記煙道(3,4)に供給し、該脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアを全量消費する、ことが好ましい。
【0019】
本発明の系統は、排ガス中の煤煙と窒素酸化物を除去する際に用いる液化アンモニアを貯蔵しているアンモニア貯蔵タンク(2,5)から、液化アンモニアの全量を消費するアンモニア貯蔵タンクの全量消費系統であって、煙道(3,4)に供給する液化アンモニアを貯蔵する煙道アンモニア貯蔵タンク(5)と、煤煙を取り除く電気集塵機(9)の集塵効率を上げるために、前記煙道アンモニア貯蔵タンク(5)に貯蔵した液化アンモニアを、アンモニアガスに気化する気化器(6)と煙道(3)から成るA−煙道アンモニア注入系統(10)と、前記煙道アンモニア貯蔵タンク(5)に貯蔵した液化アンモニアを、アンモニアガスに気化する気化器(6)と煙道(4)から成るB−煙道アンモニア注入系統(11)と、前記脱硝装置(1)に供給する液化アンモニアを貯蔵する脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)と、排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置(1)に供給するアンモニアガスを、前記液化アンモニアから気化する気化器(6)から成る脱硝アンモニア注入系統(8)と、前記A,B−煙道アンモニア注入系統(10,11)の煙道アンモニア貯蔵タンク(5)と気化器(6)の間と、前記脱硝アンモニア注入系統(8)の脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)と気化器(6)の間に接続した、該脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアを、A,B−煙道アンモニア注入系統(10,11)に送液する液化アンモニア供給系統(12)と、前記A,B−煙道アンモニア注入系統(10,11)の気化器(6)から煙道(3,4)までの間と、前記脱硝アンモニア注入系統(8)の気化器(6)と脱硝装置(1)の間に接続した、A,B−煙道アンモニア注入系統(11)からアンモニアガスを該脱硝装置(1)に供給するアンモニアガス供給系統(14)と、を備えたことを特徴とする。
前記脱硝装置(1)に連続して脱硫装置を、更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上記方法の発明では、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)から煙道アンモニア貯蔵タンク(5)へ切り換え、この煙道アンモニア貯蔵タンク(5)から送液した液化アンモニアを気化し、この気化したアンモニアガスを脱硝装置(1)に供給しているので無注入状態にならない。一方、煙道(3,4)へのアンモニアガスの無注入が生じても電気集塵機(9)の集塵効率は大きく変動しないので、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアの全量を使用することができる。即ち、液化アンモニアを残すことなく有効に利用することができる。
その後、この脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)について開放点検を実施することができる。この開放点検に際して、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内にはアンモニアの残量がないので、清掃に際して廃棄する必要がない。また希釈水の利用量を低減することができる。
【0021】
上記系統の発明では、従来の排ガス処理設備に、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアを、A,B−煙道アンモニア注入系統(10,11)に送液する液化アンモニア供給系統(12)と、A,B−煙道アンモニア注入系統(10,11)からアンモニアガスを脱硝装置(1)に供給するアンモニアガス供給系統(14)とを設けただけで、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアの有効利用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のアンモニア貯蔵タンクの系統を示す概略系統図である。
【図2】本発明の脱硝処理と煤煙処理を通常に実施している状態を示す概略系統図である。
【図3】本発明の脱硝アンモニア貯蔵タンクレベル下げ時の状態を示す概略系統図である。
【図4】火力発電所の排ガス処理設備を示す系統図である。
【図5】従来のアンモニアによる脱硝処理と煤煙処理の系統を示す概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、煙道アンモニア注入系統において、煙道アンモニア貯蔵タンクから送液したアンモニアを脱硝装置へ供給し、脱硝アンモニア注入系統において、脱硝アンモニア貯蔵タンクからアンモニアを煙道に供給し、脱硝アンモニア貯蔵タンク内の液化アンモニアの全量を消費する方法とその系統である。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明のアンモニア貯蔵タンクの系統を示す概略系統図である。図2は本発明の脱硝処理と煤煙処理を通常に実施している状態を示す概略系統図である。図示例で「太い実線」が送液、送気されている状態を示し、黒の実線は煤煙処理系統を示し、グレーの実線は脱硝処理系統を示す。
本発明のアンモニア貯蔵タンクは、図4の系統図に示したような排ガス処理設備に備えられる設備であり、1号脱硝装置(脱硝装置)1へ供給するアンモニアを貯蔵する脱硝アンモニア貯蔵タンク2と、1・2号煙道(煙道)3と、3号煙道(煙道)4へ供給するアンモニアを貯蔵する煙道アンモニア貯蔵タンク5と少なくとも2基備える。これら2基のアンモニア貯蔵タンク2,5を使い分けるためである。
【0025】
脱硝アンモニア貯蔵タンク2に貯蔵されている液化アンモニアは、気化器6でアンモニアガスに気化される。例えば気化器6では、液化アンモニアを130kg/h程度の量をアンモニアガスにしている。このアンモニアガスは圧力調整のガスヘッダー7を経て1号脱硝装置1へ供給され、排ガス中の窒素酸化物(NOx)と接触させ、窒素と水に還元して、排液処理される。この脱硝アンモニア貯蔵タンク2から脱硝装置(1号脱硝装置)1に至る系統が脱硝アンモニア注入系統8である。
【0026】
煙道アンモニア貯蔵タンク5に貯蔵されている液化アンモニアは、気化器6でアンモニアガスに気化される。例えば気化器6では、液化アンモニアを130kg/h程度の量をアンモニアガスにしている。このアンモニアガスは、ガスヘッダー7を経て1・2号煙道3へ送られ、排ガス中の煤煙を取り除く電気集塵機9の集塵効率を上げるため利用される。この煙道アンモニア貯蔵タンク5から1・2号煙道3に至る系統がA−煙道アンモニア注入系統10である。例えば、1・2号煙道3では、アンモニアガスを51kg/h程度の量を消費している。煙道アンモニア貯蔵タンク5に接続した配管は、気化器6の上流で分岐して接続する。分岐された他方は、次に説明するB−煙道アンモニア注入系統11の気化器6に接続する。
【0027】
煙道アンモニア貯蔵タンク5から3号煙道4に至る系統がB−煙道アンモニア注入系統11である。この煙道アンモニア貯蔵タンク5に貯蔵されている液化アンモニアは、気化器6でアンモニアガスに気化される。このアンモニアガスはガスヘッダー7を経て3号煙道4へ送られ、排ガス中の煤煙を取り除く電気集塵機9の集塵効率を上げるため利用される。例えば、3号煙道4では、アンモニアガスを69kg/h程度の量を消費している。
【0028】
上述において1号脱硝装置1や、1・2号煙道3や、3号煙道4と称しているが、これは便宜的な表現であり、この名称に拘泥されない。A−煙道アンモニア注入系統10とB−煙道アンモニア注入系統11の名称も一例にすぎない。2基以上のアンモニア貯蔵タンク2,5を、2系統の煙道アンモニア注入系統10,11で使い分けることができれば、これらの名称、数には拘泥されない。
【0029】
更に、本発明では、A,B−煙道アンモニア注入系統10,11における煙道アンモニア貯蔵タンク5と各気化器6の間と、脱硝アンモニア注入系統8における脱硝アンモニア貯蔵タンク2と気化器6の間に液化アンモニア供給系統12を接続した。図示するように、A,B−煙道アンモニア注入系統10,11は2系統あり、脱硝アンモニア注入系統8に接続した配管は、分岐してそれぞれ2系統に接続した。
【0030】
液化アンモニア供給系統12と分岐して接続した各気化器6の間にはそれぞれ開閉弁13aを設けた。煙道アンモニア貯蔵タンク5から分岐して各気化器6に接続した配管にもそれぞれ開閉弁13aを設けた。
【0031】
A,B−煙道アンモニア注入系統10,11の気化器6から煙道3,4までの間と、脱硝アンモニア注入系統8の気化器6と脱硝装置1の間にはアンモニアガス供給系統14を接続した。このアンモニアガス供給系統14は、A,B−煙道アンモニア注入系統10,11からアンモニアガスを脱硝装置1に供給する系統である。
【0032】
アンモニアガス供給系統14には、脱硝アンモニア注入系統8からA−煙道アンモニア注入系統10へのアンモニアガスの供給と停止を制御する開閉弁13bを設けている。また、A−煙道アンモニア注入系統10からアンモニアガスを1・2号煙道3への供給と停止を制御する開閉弁13bを設けている。同じくB−煙道アンモニア注入系統11からアンモニアガスを3号煙道4への供給と停止を制御する開閉弁13bをそれぞれ設けている。
【0033】
図3は本発明の脱硝アンモニア貯蔵タンクレベル下げ時の状態を示す概略系統図である。予熱器を洗浄する状態を示す概略系統図である。図示例で「太い実線」が送液、送気されている状態を示し、黒の実線は煤煙処理系統を示し、グレーの実線は脱硝処理系統を示す。
アンモニア貯蔵タンク2,5について定期点検における開放点検時が近づいてきたら、一方のA−煙道アンモニア注入系統10において、アンモニアガスを1・2号煙道3へ送る開閉弁13bを閉じる。煙道アンモニア貯蔵タンク5から送液した液化アンモニアを気化器6で気化する。このアンモニアガスは、アンモニアガス供給系統14の開閉弁13bを開け、脱硝装置1へ供給する。
【0034】
他方のB−煙道アンモニア注入系統11において、脱硝アンモニア貯蔵タンク2の液化アンモニアを液化アンモニア供給系統12から供給する。このときは、B−煙道アンモニア注入系統11における開閉弁13aを閉じ、脱硝アンモニア注入系統8は停止する。
【0035】
次に、液化アンモニア供給系統12から供給された液化アンモニアは、B−煙道アンモニア注入系統11の気化器6で気化し、この気化したアンモニアガスを1・2号煙道3と3号煙道4へ供給する。1・2号煙道3と3号煙道4へのアンモニアガスの無注入が生じても電気集塵機9の集塵効率は大きく変動しないので、脱硝アンモニア貯蔵タンク2内の液化アンモニアを全量使用することができる。その後、この脱硝アンモニア貯蔵タンク2について定期点検における開放点検を実施することができる。
【0036】
定期点検における開放点検に際して、脱硝アンモニア貯蔵タンク2内にはアンモニアの残量がないので、清掃に際してアンモニアを廃棄する必要がない。また希釈水の利用量を低減することができる。例えば、従来のように20tの脱硝アンモニア貯蔵タンク2で3tの残量があるときは、アンモニア残液ブロー作業に2日程度費やしていたが、本発明の系統を用いて消費した脱硝アンモニア貯蔵タンク2では半日程度で清掃作業が完了し、開放点検を迅速に実施することができる。それに伴う、アンモニア希釈水も300t程度使用していたが、10t程度で済むようになった。しかも、排水処理量も300tから10t程度に削減することができ、異臭の軽減もできた。
【0037】
なお、本発明は、脱硝アンモニア貯蔵タンク2と煙道アンモニア貯蔵タンク5とを使い分けることで、脱硝アンモニア貯蔵タンク2を空になるまで消費し、従来のように無駄にアンモニアを残して廃棄することなくアンモニアを有効に利用し、かつその廃棄のために貯蔵タンクの清掃の労力を軽減し、また希釈水の利用量を低減することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のアンモニア貯蔵タンクの全量消費方法及びその系統は、火力発電所や原子力発電所等の燃料を燃焼した排ガスが発生するプラントの排ガス処理設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 1号脱硝装置(脱硝装置)
2 脱硝アンモニア貯蔵タンク
3 1・2号煙道(煙道)
4 3号煙道(煙道)
5 煙道アンモニア貯蔵タンク
6 気化器
8 脱硝アンモニア注入系統
9 電気集塵機
10 A−煙道アンモニア注入系統
11 B−煙道アンモニア注入系統
12 液化アンモニア供給系統
13a 開閉弁(アンモニアガス開閉弁)
13b 開閉弁(液化アンモニア開閉弁)
14 アンモニアガス供給系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の煤煙を取り除く電気集塵機(9)の集塵効率を上げるために、煤煙に接触させるアンモニアを、煙道アンモニア貯蔵タンク(5)から各煙道(3,4)に至るA−煙道アンモニア注入系統(10)とB−煙道アンモニア注入系統(11)にそれぞれ供給して煤煙処理を施し、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)からアンモニアガス、液化アンモニアを脱硝装置(1)に至る脱硝アンモニア注入系統(8)に供給して脱硝処理をそれぞれ施すアンモニア貯蔵タンク内のアンモニアを全量消費する方法であって、
前記A−煙道アンモニア注入系統(10)において、煙道(3)への開閉弁(13b)を閉じ、該A−煙道アンモニア注入系統(10)から前記脱硝装置(1)に接続したアンモニアガス供給系統(14)の開閉弁(13b)を開け、前記煙道アンモニア貯蔵タンク(5)から送液した液化アンモニアを気化し、この気化したアンモニアガスを脱硝装置(1)へ供給し、
前記脱硝アンモニア注入系統(8)において、脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)から液化アンモニアを脱硝装置(1)へ送液する開閉弁(13a)を閉じ、B−煙道アンモニア注入系統(11)に接続した液化アンモニア供給系統(12)から液化アンモニアを該B−煙道アンモニア注入系統(11)へ送液し、この液化アンモニアを気化し、この気化したアンモニアガスを煙道(3,4)に供給し、該脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアの全量を消費する、ことを特徴とするアンモニア貯蔵タンクの全量消費系統方法。
【請求項2】
前記脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)に貯蔵されている液化アンモニアの残量が警報発生時期に近づいたときに、
前記煙道アンモニア貯蔵タンク(5)の液化アンモニアを、前記A−煙道アンモニア注入系統(10)から前記脱硝装置(1)に供給し、
前記脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)の液化アンモニアを、前記B−煙道アンモニア注入系統(11)から前記煙道(3,4)に供給し、該脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアを全量消費する、ことを特徴とする請求項1のアンモニア貯蔵タンクの全量消費系統方法。
【請求項3】
排ガス中の煤煙と窒素酸化物を除去する際に用いる液化アンモニアを貯蔵しているアンモニア貯蔵タンク(2,5)から、液化アンモニアの全量を消費するアンモニア貯蔵タンクの全量消費系統であって、
煙道(3,4)に供給する液化アンモニアを貯蔵する煙道アンモニア貯蔵タンク(5)と、
煤煙を取り除く電気集塵機(9)の集塵効率を上げるために、前記煙道アンモニア貯蔵タンク(5)に貯蔵した液化アンモニアを、アンモニアガスに気化する気化器(6)と煙道(3)から成るA−煙道アンモニア注入系統(10)と、
前記煙道アンモニア貯蔵タンク(5)に貯蔵した液化アンモニアを、アンモニアガスに気化する気化器(6)と煙道(4)から成るB−煙道アンモニア注入系統(11)と、
前記脱硝装置(1)に供給する液化アンモニアを貯蔵する脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)と、
排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置(1)に供給するアンモニアガスを、前記液化アンモニアから気化する気化器(6)から成る脱硝アンモニア注入系統(8)と、
前記A,B−煙道アンモニア注入系統(10,11)の煙道アンモニア貯蔵タンク(5)と気化器(6)の間と、前記脱硝アンモニア注入系統(8)の脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)と気化器(6)の間に接続した、該脱硝アンモニア貯蔵タンク(2)内の液化アンモニアを、A,B−煙道アンモニア注入系統(10,11)に送液する液化アンモニア供給系統(12)と、
前記A,B−煙道アンモニア注入系統(10,11)の気化器(6)から煙道(3,4)までの間と、前記脱硝アンモニア注入系統(8)の気化器(6)と脱硝装置(1)の間に接続した、A,B−煙道アンモニア注入系統(11)からアンモニアガスを該脱硝装置(1)に供給するアンモニアガス供給系統(14)と、を備えた、ことを特徴とするアンモニア貯蔵タンクの全量消費系統。
【請求項4】
前記脱硝装置(1)に連続して脱硫装置を、更に備えた、ことを特徴とする請求項3のアンモニア貯蔵タンクの全量消費系統。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206055(P2012−206055A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75127(P2011−75127)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】