説明

アンモニウム塩及びそれを含有してなる帯電防止性樹脂組成物

【課題】樹脂の透明性を損なうことなく、樹脂に優れた帯電防止能を付与できる、チオシアナートイオンをアニオンとするアンモニウム塩を有効成分として含有する樹脂用帯電防止剤及び該樹脂用帯電防止剤を含む帯電防止性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 式(1):
SCN (1)
(式中、R及びRは炭素数4〜18のアルキル基、Rは炭素数1〜18のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、R〜Rは互いに同じであっても、異なっていてもよい。)で表されるアンモニウム塩を有効成分として含有することを特徴とする樹脂用帯電防止剤、式(1)中、RとRがデシル基、RとRがメチル基であるアンモニウム塩(すなわち、ジデシルジメチルアンモニウム=チオシアナート)並びに該樹脂用帯電防止剤を含有することを特徴とする帯電防止性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂用帯電防止剤、帯電防止性樹脂組成物及び新規なアンモニウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯電防止剤として用いることのできるチオシアナートをアニオンとする化合物には、チオシアン酸金属塩、例えばチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウムなどが知られている(例えば、特許文献1)。しかし、チオシアナートをアニオンとするアンモニウム塩を樹脂用帯電防止剤として用いることは知られていない。
【特許文献1】特開平10−60322公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、樹脂の透明性を損なうことなく、樹脂に優れた帯電防止能を付与できる、チオシアナートイオンをアニオンとするアンモニウム塩を有効成分として含有する樹脂用帯電防止剤及び該樹脂用帯電防止剤を含む帯電防止性樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、チオシアナートイオンをアニオンとする新規なアンモニウム塩を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式(1):
SCN (1)
(式中、R及びRは炭素数4〜18のアルキル基、Rは炭素数1〜18のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、R〜Rは互いに同じであっても、異なっていてもよい。)で表されるアンモニウム塩(以下、アンモニウム塩(1)という。)を有効成分として含有することを特徴とする樹脂用帯電防止剤、並びに該樹脂用帯電防止剤を含有することを特徴とする帯電防止性樹脂組成物に関する。さらに、式(1)中、RとRがデシル基、RとRがメチル基であるアンモニウム塩(すなわち、ジデシルジメチルアンモニウム=チオシアナート)に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の樹脂用帯電防止剤は、樹脂の透明性を損なうことなく、樹脂に優れた帯電防止能を付与することができ、また、この樹脂用帯電防止剤を含有する樹脂組成物は、透明性を有し、低い表面抵抗値を示す帯電防止性のものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を具体的に説明する。
式(1)中、R及びRで示される炭素数4〜18のアルキル基としては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数4〜18のアルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分枝鎖状の炭素数4〜10のアルキル基であり、特に好ましくは、直鎖状の炭素数4〜10のアルキル基である。具体的には、例えば、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0007】
で示される炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜18のアルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜16のアルキル基であり、特に好ましくは、直鎖状の炭素数1〜10のアルキル基である。具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0008】
で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0009】
本発明のアンモニウム塩(1)の具体例としては、テトラブチルアンモニウム=チオシアナート、トリブチルメチルアンモニウム=チオシアナート、メチルトリペンチルアンモニウム=チオシアナート、トリヘキシルメチルアンモニウム=チオシアナート、トリヘプチルメチルアンモニウム=チオシアナート、トリオクチルメチルアンモニウム=チオシアナート、メチルトリノニルアンモニウム=チオシアナート、トリデシルメチルアンモニウム=チオシアナート、メチルトリウンデシルアンモニウム=チオシアナート、トリドデシルメチルアンモニウム=チオシアナート、メチルトリトリデシルアンモニウム=チオシアナート、メチルトリテトラデシルアンモニウム=チオシアナート、メチルトリペンタデシルアンモニウム=チオシアナート、トリヘキサデシルメチルアンモニウム=チオシアナート、トリヘプタデシルメチルアンモニウム=チオシアナート、トリオクタデシルメチルアンモニウム=チオシアナート、
【0010】
トリブチルエチルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリペンチルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリヘキシルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリヘプチルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリオクチルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリノニルアンモニウム=チオシアナート、トリデシルエチルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリウンデシルアンモニウム=チオシアナート、トリドデシルエチルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリトリデシルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリテトラデシルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリペンタデシルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリヘキサデシルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリヘプタデシルアンモニウム=チオシアナート、エチルトリオクタデシルアンモニウム=チオシアナート、
【0011】
トリブチルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリペンチルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリヘキシルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリヘプチルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリオクチルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリノニルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリデシルプロピルアンモニウム=チオシアナート、プロピルトリウンデシルアンモニウム=チオシアナート、トリドデシルプロピルアンモニウム=チオシアナート、プロピルトリトリデシルアンモニウム=チオシアナート、プロピルトリテトラデシルアンモニウム=チオシアナート、トリペンタデシルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリヘキサデシルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリヘプタデシルプロピルアンモニウム=チオシアナート、トリオクタデシルプロピルアンモニウム=チオシアナート、
【0012】
ブチルトリペンチルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリヘキシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリヘプチルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリオクチルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリノニルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリデシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリウンデシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリドデシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリトリデシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリテトラデシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリペンタデシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリヘキサデシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリヘプタデシルアンモニウム=チオシアナート、ブチルトリオクタデシルアンモニウム=チオシアナート、
【0013】
ジブチルジメチルアンモニウム=チオシアナート、ジメチルジペンチルアンモニウム=チオシアナート、ジヘキシルジメチルアンモニウム=チオシアナート、ジヘプチルジメチルアンモニウム=チオシアナート、ジメチルジオクチルアンモニウム=チオシアナート、ジメチルジノニルアンモニウム=チオシアナート、ジデシルジメチルアンモニウム=チオシアナート、ジメチルジウンデシルアンモニウム=チオシアナート、ジドデシルジメチルアンモニウム=チオシアナート、ジメチルジトリデシルアンモニウム=チオシアナート、ジメチルジテトラデシルアンモニウム=チオシアナート、ジメチルジペンタデシルアンモニウム=チオシアナート、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム=チオシアナート、ジヘプタデシルジメチルアンモニウム=チオシアナート、ジメチルジオクタデシルアンモニウム=チオシアナート、
【0014】
ジブチルジエチルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジペンチルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジヘキシルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジヘプチルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジオクチルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジノニルアンモニウム=チオシアナート、ジデシルジエチルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジウンデシルアンモニウム=チオシアナート、ジドデシルジエチルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジトリデシルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジテトラデシルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジペンタデシルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジヘプタデシルアンモニウム=チオシアナート、ジエチルジオクタデシルアンモニウム=チオシアナート等が挙げられる。
【0015】
本発明のアンモニウム塩(1)は、例えば式(2):
(2)
(式中、R〜Rは前記に同じ。Xはハロゲン原子を示す。)で表されるアンモニウム=ハライド(以下、アンモニウム=ハライド(2)という。)をチオシアン酸又はそのアルカリ金属塩(以下、チオシアン酸類という。)を用いて、アニオン交換することにより製造することができる。
【0016】
アンモニウム=ハライド(2)は、市販品を用いても良いし、例えば、式(3):
N (3)
(式中、R〜Rは前記に同じ。)で表されるアミン(以下、アミン(3)という。)を
式(4):
4X (4)
(式中、R及びXは前記に同じ。)で表されるアルキルハライド(以下、アルキルハライド(4)という。)と反応させることで製造できる。
【0017】
アミン(3)としては、例えば、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、
【0018】
ジブチルメチルアミン、メチルジペンチルアミン、ジヘキシルメチルアミン、ジヘプチルメチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、ジデシルメチルアミン、メチルジウンデシルアミン、ジドデシルメチルアミン、メチルジトリデシルアミン、メチルジテトラデシルアミン、メチルジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルメチルアミン、ジヘプタデシルメチルアミン、メチルジオクタデシルアミン、
【0019】
ジブチルエチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、ジデシルエチルアミン、エチルジウンデシルアミン、ジドデシルエチルアミン、エチルジトリデシルアミン、エチルジテトラデシルアミン、エチルジペンタデシルアミン、エチルジヘキサデシルアミン、エチルジヘプタデシルアミン、エチルジオクタデシルアミン等が挙げられる。
【0020】
アルキルハライド(4)としては、例えば、メチルクロリド、メチルブロミド、メチルヨージド、エチルクロリド、エチルブロミド、エチルヨージド、プロピルクロリド、プロピルブロミド、プロピルヨージド、ブチルクロリド、ブチルブロミド、ブチルヨージド等が挙げられる。
【0021】
アルキルハライド(4)の使用量は、アミン(3)1モルに対して0.5モル〜5モル、好ましくは0.6モル〜3モルであり、より好ましくは0.8モル〜2モルである。
【0022】
アミン(3)とアルキルハライド(4)との反応は、溶媒を使用してもしなくても良く、溶媒を使用する場合の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等の二トリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量は、特に制限はないが、アミン(3)1重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。
【0023】
アミン(3)とアルキルハライド(4)との反応を実施するには、例えば、アミン(3)、アルキルハライド(4)及び溶媒の混合物を通常20℃以上、好ましくは60℃〜140℃で加熱攪拌するだけで良い。
【0024】
上記のようにして、アンモニウム=ハライド(2)を含む反応混合物を得た後、得られた反応混合物を本発明のアンモニウム塩(1)を製造するための反応にそのまま用いてもかまわない。また必要であれば、濃縮してアンモニウム=ハライド(2)を主成分とする残渣を得、この残渣を本発明のアンモニウム塩(1)を製造するための反応にそのまま用いてもかまわない。また、さらに必要であれば、残渣を有機溶媒と混合し、残渣に含まれる未反応原料等を有機溶媒に溶解した後ろ過して得られる、精製されたアンモニウム=ハライド(2)を用いることもできる。
【0025】
チオシアン酸類としては、例えば、チオシアン酸、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム等が挙げられ、好ましくはチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウムである。かかるチオシアン酸類の使用量は、アンモニウム=ハライド(2)1モルに対し、通常0.5モル以上であり、好ましくは1〜2モルである。
【0026】
アニオン交換反応は、通常水溶媒中で行われる。水の使用量は特に制限はないが、通常アンモニウム=ハライド(2)1重量部に対して通常20重量部以下、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
【0027】
アンモニウム=ハライド(2)、チオシアン酸類及び水の混合順序は特に限定されず、アンモニウム=ハライド(2)と水を混合した後にチオシアン酸類を添加しても良いし、チオシアン酸類と水を混合した後に、活性炭等の脱色剤を用いて処理し、濾過して得られた濾液をアニオン交換反応に用いることもできる。
【0028】
反応温度は、生成するアンモニウム塩(1)の融点より高い温度で反応させることが好ましく、通常0℃以上、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは20〜60℃である。
【0029】
反応終了後の反応液からアンモニウム塩(1)を取り出す方法としては、反応液を有機層と水層に分離し、所望により有機層を水洗した後、有機層を濃縮することによってアンモニウム塩(1)を得る方法、水に不溶の有機溶媒(例えば、トルエン、酢酸エチル、ジクロロメタン等)を反応中又は反応後に添加し、アンモニウム塩(1)を水に不溶の有機溶媒に抽出、得られた抽出層を所望により水洗し、次いで有機溶媒を留去することによりアンモニウム塩(1)を得る方法等が挙げられる。
【0030】
本発明の樹脂用帯電防止剤は、アンモニウム塩(1)を有効成分として含有してなるものであり、単独であっても樹脂用帯電防止剤として用いることができるが、必要に応じて安定化剤等の添加剤又は溶媒等を混合して用いることもできる。かかる樹脂用帯電防止剤を樹脂組成物製造時に樹脂に添加する等の方法で、樹脂組成物に含有させることで、樹脂の透明性を損なうことなく、樹脂の表面抵抗値を低下させた樹脂組成物を製造することができる。
【0031】
本発明の帯電防止性樹脂組成物に用いる樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂(例えば、アクリル系光硬化性樹脂)が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン又はプロピレンと他のビニルモノマー、例えば酢酸ビニル、α−オレフィン、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体、ノルボルネン類の付加重合体、ノルボルネン類とα−オレインとの付加共重合体、ノルボルネン類の開環重合体水添ポリマー、シクロペンタジエンの開環重合体水添ポリマー、シクロヘキサジエンの開環重合体水添ポリマー等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素含有樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MS樹脂、MBS樹脂等のスチレン樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;芳香族ジヒドロキシ化合物(例えばビスフェノールA)と塩化カルボニル又はジフェニルカーボネートから製造される芳香族ポリカーボネート等のポリカーボネート;ナイロン4、ナイロン6、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66等のポリアミド;ポリエーテルイミド等の熱可塑性ポリイミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;これらの混合物等が挙げられる。これらの樹脂の中で (メタ)アクリル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等)、熱硬化性ポリイミド(例えば、ピロメリット酸無水物とビス(4−アミノフェニル)エーテルとの重縮合物等)、ポリウレタン、フェノール樹脂、アミノ樹脂(例えばメラミン樹脂、ウレア樹脂等)、が例示でき、中でもエポキシ樹脂が好ましい。
【0032】
本発明における樹脂組成物への本発明の樹脂用帯電防止剤の含有量は、樹脂に対して0.05〜50重量%であり、好ましくは0.5〜25重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例中、表面抵抗値は三菱化学株式会社製HirestaHT−210を用い、印加電圧500Vにて測定した。
【0034】
実施例1
テトラブチルアンモニウム=クロリド111.2g(0.4モル)、チオシアン酸ナトリウム48.6g(0.6モル)、イオン交換水100g及び塩化メチレン100gを混合して25℃で1時間攪拌した。反応終了後、有機層を分液操作により分離し、イオン交換水100gで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮して塩化メチレンを除去し、固体のテトラブチルアンモニウム=チオシアナート(以下、TBA−SCNと略記する。)117.7gを得た(収率97.9%)。以下にTBA−SCNのNMRデータを示す。
【0035】
H−NMR(CDCl) σ:1.03(t,12H)、1.45−1.51(m,8H)、1.69−1.73(m,8H)、3.34−3.38(m,8H)
【0036】
実施例2
アーカード210−80E(ジデシルジメチルアンモニウム=クロリドのエタノール含有水溶液(濃度80.2%)、登録商標、ライオンアグゾ株式会社製)180.6g(0.4モル)、チオシアン酸ナトリウム48.6g(0.6モル)及びイオン交換水115.4gを混合し、25℃で1時間攪拌した。反応終了後、有機層を分液操作により分離し、イオン交換水115.4gで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、液体のジデシルジメチルアンモニウム=チオシアナート(以下、DMDDA−SCNと略記する。)146.2gを得た(収率95.0%)。以下にDMDDA−SCNのNMRデータを示す。
【0037】
H−NMR(CDCl) σ:0.89(t,6H)、1.26−1.39(m,28H)、1.75−1.78(m,4H)、3.30(s,6H)、3.42−3.46(m,4H)
【0038】
実施例3
81.1%メチルトリオクチルアンモニウム=クロリド水溶液199.3g(0.4モル)、チオシアン酸ナトリウム48.6g(0.6モル)及びイオン交換水133gを混合し、25℃で1時間攪拌した。反応終了後、有機層を分液操作により分離し、イオン交換水133gで2回洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、液体のメチルトリオクチルアンモニウム=チオシアナート(以下、TOMA−SCNと略記する。)164.2gを得た(収率96.2%)。以下にTOMA−SCNのNMRデータを示す。
【0039】
H−NMR(CDCl) σ:0.88(t,9H)、1.28−1.40(m,30H)、1.69−1.78(m,6H)、3.22(s,3H)、3.33−3.39(m,6H)
【0040】
実施例4
2液架橋型アクリル粘着剤SKダイン909A(登録商標、綜研化学株式会社製)100重量部に、TBA−SCN5重量部、アクリル樹脂用硬化剤L−45(綜研化学株式会社製)を0.2重量部、希釈溶剤として酢酸エチル/メチルエチルケトン(50/50)150重量部を添加して粘着剤コート液を調製した。本コート液をポリエステルフィルム上にバーコーターを用いて乾燥厚み約10μmでコートした後、80℃で2分間加熱硬化させて評価用試験フィルムを作成した。作成した試験フィルムを15〜20℃、50%RHの雰囲気中に24時間保持した後、20℃、50%RHでコート面の表面抵抗値を測定した。透明性については、目視で観察し、透明な場合を「○」、不透明な場合を「×」とした。その結果を表1に示す。
【0041】
実施例5及び6
実施例4に記載のTBA−SCNに代えて、表1に示す帯電防止剤を使用した以外は実施例4と同様にして試験フィルムを作製し、かかる試験フィルムの表面抵抗値の測定を実施例4と同様にして行った。透明性についても、実施例4と同様の方法により測定した。それらの結果を表1に示す。
【0042】
比較例1〜5
実施例4に記載のTBA−SCNに代えて、表1に示す帯電防止剤を使用した以外は実施例4と同様にして試験フィルムを作製し、かかる試験フィルムの表面抵抗値の測定を実施例4と同様にして行った。透明性についても、実施例4と同様の方法により測定した。それらの結果を表1に示す。なお表1中、TBA−PTSはテトラブチルアンモニウム=p−トルエンスルホナートを、DMDDA−NOはジデシルジメチルアンモニウム=ナイトレートを、DMDDA−PTSはジデシルジメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナートを、TOMA−NOはメチルトリオクチルアンモニウム=ナイトレートを、TOMA−PTSはメチルトリオクチルアンモニウム=p−トルエンスルホナートを、それぞれ表す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果から、本発明の樹脂用帯電防止剤を添加したアクリル樹脂組成物は、チオシアナートイオン以外のものをアニオンとするアンモニウム塩を用いた場合に比べて、表面抵抗値については同程度の値を示すものの、樹脂の透明性については良好であることがわかった。
【0045】
実施例7
ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート828(エポキシ当量186g/eq、登録商標、ジャパンエポキシレジン株式会社製)100重量部、硬化剤としてイミノビスプロピルアミン14.1重量部及び、DMDDA−SCN5.7重量部(樹脂に対して5重量%)を混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。かかるエポキシ樹脂組成物を直径50mm×深さ5mmの円形金型に流し込み、50℃で1時間、さらに100℃で6時間熱硬化させて評価用試験片を作成した。作成した試験片を23℃、50%RHの雰囲気中に6時間放置した後、23℃、50%RHで試験片の表面抵抗を測定した。透明性については、目視で観察し、透明な場合を「○」、不透明な場合を「×」とした。その結果を表2に示す。
【0046】
実施例8
実施例7に記載のDMDDA−SCNに代えて、表2に示す帯電防止剤を使用した以外は実施例7と同様にして試験片を作製し、かかる試験片の表面抵抗値の測定を実施例7と同様にして行った。透明性についても、実施例7と同様の方法により測定した。その結果を表2に示す。
【0047】
比較例6〜10
実施例7に記載のDMDDA−SCNに代えて、表2に示す帯電防止剤を使用した以外は実施例7と同様にして試験片を作製し、かかる試験片の表面抵抗値の測定を実施例7と同様にして行った。透明性についても、実施例7と同様の方法により測定した。それらの結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2の結果から、本発明の樹脂用帯電防止剤を添加したエポキシ樹脂組成物は、チオシアナートイオン以外のものをアニオンとするアンモニウム塩を用いた場合と比べて、同等の透明性および低い表面抵抗値を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
SCN (1)
(式中、R及びRは炭素数4〜18のアルキル基、Rは炭素数1〜18のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、R〜Rは互いに同じであっても、異なっていてもよい。)で表されるアンモニウム塩を有効成分として含有することを特徴とする樹脂用帯電防止剤。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂用帯電防止剤を含有することを特徴とする帯電防止性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂が熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂である請求項2に記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂である請求項2又は3に記載の帯電防止性樹脂組成物。
【請求項5】
ジデシルジメチルアンモニウム=チオシアナート。

【公開番号】特開2009−13295(P2009−13295A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176845(P2007−176845)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】