説明

アーク・フラッシュ検出

【課題】アーク・フラッシュを検出し、緩和する。
【解決手段】アーク・フラッシュ検出器(100)が、光センサ(120)と、光センサ(120)と通信状態にある光減衰フィルタ(110)と、光減衰フィルタ(110)および光センサ(120)を支持するように配置されたハウジング(140)と、光センサ(120)と通信状態にある論理回路(130)とを備える。論理回路(130)は、光センサ(120)の出力を受信するように配置され、光センサ(120)が受信した光の所定の強度に応答して出力信号を生成するように配置される。光減衰フィルタ(110)は、光センサ(120)が受信した光の強度を減らすように配置される。またハウジング(140)は、光センサ(120)および光減衰フィルタ(110)を固定方位で保持するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する主題は、アーク・フラッシュ検出および緩和技術に関し、特にそのための検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力回路および開閉装置は、絶縁材料によって分離された導体を有している。領域によっては、空隙がこの絶縁材料の一部または全部として機能することが多い。導体が互いに近すぎるかまたは電圧が絶縁特性を超えると、導体間でアークが発生する可能性がある。導体間の空気または任意の絶縁材料(気体または固体の誘電材料)はイオン化されて伝導性になる可能性があり、その結果、アーク放電が起こる可能性がある。アーク温度は、20,000°Cもの高温に達する可能性があり、導体および隣接する材料を気化して著しいエネルギーを放出する。
【0003】
アーク・フラッシュは、位相−相、位相−中性、または位相−接地間のアーク放電故障に起因する急激なエネルギー放出の結果である。アーク・フラッシュは、高熱、強い光、圧力波、および音/衝撃波を生成する可能性がある。しかしアーク故障電流は通常、短絡回路電流よりもはるかに小さいため、アーク故障状態を扱うように遮断器を選択しない限り、回路遮断器のトリッピングは遅れるかまたは無いことが予想される。政府機関および規格、たとえば国家環境政策法(NEPA)、労働安全衛生管理局(OSHA)、および電気電子技術者協会(IEEE)では、個人用防護服および防護具によってアーク・フラッシュ問題を規制しているが、アーク・フラッシュをなくすための装置が規則によって設定されているわけではない。
【0004】
標準的なヒューズおよび回路遮断器は通常、アーク・フラッシュに対する反応の速さは十分ではない。十分に速い応答を伴う安全メカニズムを実現するために、機械的および/または電気機械プロセスを用いる良く知られたアーク・フラッシュ緩和装置、たとえば電気「バール」がある。たとえば、電気バールは、電気回路を意図的に短絡させて、その結果、電気エネルギーをアーク・フラッシュからそらす保護装置である。このように形成された意図的な3相短絡回路故障を次に、ヒューズまたは回路遮断器をトリップさせてパワーを停止することによって取り除く。しかしこのような意図的な短絡回路の場合は、著しいレベルの電流が意図的な短絡回路によって生じる可能性がある場合がある。アーク緩和メカニズムにかかわらず、当該技術分野においては、アーク・フラッシュ事象を通常の動作または予想される動作と区別することができるアーク・フラッシュ検出装置が求められている。
【0005】
放射センサを用いて、種々の電磁スペクトル領域における放射の存在を検出することができる。しかしこのようなセンサは、比較的低い光レベルに敏感である傾向があるため、アーク・フラッシュ事象に付随する放射を検出するために用いると、非アーク・フラッシュ放射(いわゆる「妨害光(nuisance light)」、たとえば太陽光、閃光、室内光など)を検出する傾向がある。このような光は、強度が、約500ルクス(閃光)〜約2,000ルクス(市販の空間照明)〜約80,000ルクス(直射日光)まで変化する。
【0006】
ルクスは望ましい測定値である。なぜならば、ルクスは、距離に対するメータの測定に比例しているからである。光源がセンサから遠くなるほど、強度は著しく小さくなる。たとえば、切迫した光がある体積の立方体に衝突したと想定した場合、延ばした距離の1メートルごとに、光の強度は距離の2乗で減少するであろう。大気および障害によって、その見積りは変わる可能性がある。光源によっては(たとえば閃光は)比較的速く散逸するが、一方で、太陽光は距離が変わっても変化しない。ルクスを、センサにおいて測定した光の値として用いることによって、センサ出力の校正および検証を行なうために照度計(たとえば、ルクス計)を用いることができる。
【0007】
加えて、ほとんどのセンサは、アーク・フラッシュ事象が放射しているであろうレベルよりも下で十分に飽和する。たとえば、典型的なアーク・フラッシュ事象は、可視スペクトルにおける放射として、アーク・フラッシュ事象から3〜4フィートにおいて100,000ルクスのオーダーの光束を伴う放射を生成するが、ほとんどの点光センサは700ルクス以下で飽和する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、放射センサとして、感度を所要の範囲に保ちながら、妨害光とアーク・フラッシュ事象によって生成される放射とを見分けることができるセンサが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、アーク・フラッシュ検出器が、光センサ、光センサと通信状態にある光減衰フィルタ、光減衰フィルタおよび光センサを支持するように配置されるハウジング、ならびに光センサと通信状態にある論理回路を備える。論理回路は、光センサの出力を受信するように配置され、光センサが受信した光の所定の強度に応答して出力信号を生成するように配置される。光減衰フィルタは、光センサが受信した光の強度を小さくするように配置される。またハウジングは、光センサおよび光減衰フィルタを固定方位に保持するように配置される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、電力機器保護システムが、キャビネット、キャビネット内の回路遮断器、およびアーク・フラッシュ検出器を備える。回路遮断器はキャビネット内に配置される。回路遮断器は、線路導体に接続するために配置される線路端子と、負荷導体に接続するために配置される負荷端子とを備え、回路遮断器はさらに、線路および負荷端子の一方に接続される第1のコンタクトと、線路および負荷端子の他方に接続される第2のコンタクトと、第1および第2のコンタクトの少なくとも一方に接続される動作メカニズムであって、第1および第2のコンタクトを選択的に互いとの嵌合に入れおよび嵌合から出す動作メカニズムと、動作メカニズムに接続されるトリップ装置であって、トリップしたときに、動作メカニズムに第1および第2のコンタクトの嵌合を外させるトリップ装置と、を備える。アーク・フラッシュ検出器は、トリップ装置と通信状態にあり、アーク・フラッシュ事象に応答してトリップ装置を駆動するように配置される。アーク・フラッシュ検出器は、光センサと光減衰フィルタとを備え、光減衰フィルタは、光センサが受信した光の強度を小さくするように配置される。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、電力機器保護システムは、光センサに接続される論理回路と、周辺光を光センサに到達する前に所定の割合だけ減衰させるように光センサを覆う光減衰フィルタとを備え、論理回路は、コンピュータ読取可能な記憶媒体に接続されるプロセッサであって、コンピュータ読取可能な記憶媒体は、プロセッサに読み取られて実行されたときに論理回路に方法を実行させるコンピュータ実行可能コードを含む、プロセッサを備える。本方法は、光センサの出力信号をモニタすることと、光センサの出力信号が所定のレベルを超えたときにアーク・フラッシュ事象信号を生成することとを含む。
【0012】
これらおよび他の優位性および特徴が、図面とともに以下の説明からより明らかとなる。
【0013】
本発明とみなされる主題は特に、本明細書の結びにおける請求項において示され、明確に請求される。本発明の前述および他の特徴および優位性は、添付図面とともに以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器の概略図である。
【図2】本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器の概略図である。
【図3】本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器の概略図である。
【図4】本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器の概略図である。
【図5】本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器を用いても良い閉じた状態の機器キャビネットの概略図である。
【図6】内部の回路遮断器などの機器を概略的に例示するためにドアが開いた状態の図6の機器キャビネットの概略図である。
【図7】本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器を備える電力機器保護システムの概略図である。
【図8】遮断器がトリップされた状態の図7の電力機器保護システムの概略図である。
【図9】本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器を備える電力機器保護システムの概略図である。
【図10】遮断器がトリップされた状態の図9の電力機器保護システムの概略図である。
【0015】
詳細な説明では、本発明の実施形態を、優位性および特徴とともに、図面を参照して一例として説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に概略的に例示するように、本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器100は、光減衰フィルタ110、光センサ120、および論理回路130を備える。周辺光が光減衰フィルタ110に入る。光減衰フィルタ110は、周辺光を所定の割合だけ減衰させる。減衰された周辺光は、光減衰フィルタ110から光センサ120へ進む。減衰された周辺光が光センサ120を飽和させるのに十分な強さである場合、光センサ120から出力信号が論理回路130に送られる。論理回路130は、光センサ120の出力信号を評価して、アーク・フラッシュ事象が起きたと決めた場合には、それ自身の出力信号を生成する。論理回路130の出力信号を次に、別の装置が用いて、アーク・フラッシュを停止し、オペレータに警報を出し、および/または他の行為を取る。たとえば、光センサには、それに接続された電源を通してパワー供給しても良い。さらに、電源は、前記電源に電圧を供給する線路電圧と通信状態にあっても良い(たとえば、線路電圧を、アーク・フラッシュが起こり得る場合に、回路遮断器に供給しても良い)。論理回路も線路電圧と通信状態にあっても良く(たとえば、電源または付加的な電源を通して)、アークが存在した場合に、論理回路から信号が、アーク・フラッシュ事象が存在するか否かを判定するプロセッサ(簡単にするために例示しない)に送信される。プロセッサは、やはりアーク・フラッシュを示す場合がある他の特性も探すANDオペランドを有していても良い。他の特性は、たとえば電流、音、圧力、熱、または他の好適な任意のセンサから提供される他の好適なパラメータである。しかし論理回路は、簡単にするために例示したように回路設計において用いるだけでなく、前記プロセッサと組み合わせて用いても良いことに注意されたい。
【0017】
前述したように、光減衰フィルタ110によって、光センサ120に当たる周辺光の強さ(光束またはルクスの単位で測定される)を、所定または所望の割合だけ小さくする。このように減衰することによって、検出器100は、妨害光とアーク・フラッシュ事象とを見分けることができる。2つの既知の光源が明るすぎると、濾光が成功しない場合があることに注意されたい。たとえば太陽光、およびより最近では、ある回路遮断器(たとえば、開通気(open venting)を伴うもの)である。さらに加えて、アーク・フラッシュは、開通気の回路遮断器から放出される光と比べて、より広範囲の光を有する傾向があるため、フィルタリングが成功する場合がある。割合に関しては、所定のレベルを超える光のみが光センサに達することができるように、所定または所望の割合を選択する。所定のレベルの光は、光センサ120の飽和を引き起こすのに必要な光の量に基づく。したがって、光センサ120の飽和点が700ルクスの場合、所定の割合は、少なくとも700ルクスが、アーク・フラッシュ事象の間に光減衰フィルタ110を通過できるようにしなければならない。このように決める際、最小のアーク・フラッシュ光出力レベルを用いて、すべてのアーク・フラッシュ事象が確実に光センサ120を飽和させるようにすることができる。直射日光は80,000ルクスもの強さになる可能性があるが、典型的な使用環境では検出器に当たりそうもないため、実施形態においては、より低い最小強度(たとえば約50,000ルクス)で、妨害光の検出を避けながらすべてのアーク・フラッシュを検出するのに十分である。他の実施形態においては、最小強度として約10,000ルクスが効果的である。
【0018】
実施形態における所定の割合の減衰は、使用する光センサおよび検出すべき最小の光強度に応じて、約30%〜約99.9999%である。一実施形態においては、所定の割合の減衰は約90.0%〜約99.6%であり、約0.4%〜約10%の周辺光が光センサ120に当たることができる。したがって、100,000ルクスを発生させるアーク・フラッシュ10の場合には、約400ルクス〜約10,000ルクスのみが光センサ120に当たることになる。別の実施形態においては、所定の割合は約96.0%〜約99.0%であり、約1%〜約4%の周辺光が光センサ120に当たることができる。したがって、100,000ルクスを発生させるアーク・フラッシュ事象10の場合には、約1,000ルクス〜約4,000ルクスのみが光センサ120に当たることになる。
【0019】
光減衰フィルタ110にとって好適な材料は、実施形態においては、溶接用シェード材料である。溶接用シェードは、表1に例示するような減衰の範囲で利用可能である。表1では、減衰を透過率で表現して、シェードを通過することができる光の割合を表わしている。
【0020】
【表1】


いくつかの実施形態においては、シェード5の材料が効果的であり、一方で、他の実施形態においては、シェード4およびシェード6の材料が効果的である。
【0021】
図1に示す概略的な例では、第1の経路111が、光減衰フィルタ110および光センサ120に接続されている。第1の経路111は、光減衰フィルタ110からの減衰された周辺光が光センサ120まで進むことができる任意の好適な透光性媒体、たとえば、流体、真空、または光伝導性の固体(たとえばガラスまたはプラスチック)などである。
【0022】
さらに加えて、図1の概略的な例における第2の経路121によって、光センサ120が論理回路130に接続されている。典型的な光センサ120からは電気出力信号が生成されるため、実施形態における第2の経路121は通常、導電体である。光センサ120は、異なる形態の出力信号を発生させられるということ、および第2の経路121は、出力信号を伝えるのに適した媒体であろうということは、実施形態の範囲内である。たとえば、光センサ120は、流体または固体によって伝えられる超音波信号、周辺空間によって伝えられる無線周波数信号、またはリンク機構によって伝えられる機械的信号などでさえ発することができる。
【0023】
第3の経路131が、図1の概略的な例に、論理回路130から通じていると示されており、論理回路130の出力信号を伝える。実施形態における論理回路130の出力信号が電気信号である場合、第3の経路131は導体である。他のタイプの信号(たとえば光、無線周波数もしくは他の電磁放射、または音)を論理回路130が生成できること、および第3の経路131は、生成した信号のタイプにとって適切な媒体であることは、実施形態の範囲内である。たとえば、論理回路130の出力信号が無線周波数信号である場合、第3の経路131は、論理回路130と出力信号の対象との間に横たわる、無線周波数信号の伝搬に適したものであれば何でもである。
【0024】
実施形態において、図2に概略的に見られるように、ハウジング140が、光減衰フィルタ110を、光センサ120の前方において、所定もしくは所望の間隔/距離および/または固定方位で保持している。また論理回路130が、ハウジング140内に光センサ120に極めて接近して保持されており、第3の経路131(たとえばワイヤ)が、ハウジング140の、光減衰フィルタ110が保持される端部と反対側の端部から出ている。第1の経路111はせいぜい、排気および/または空気もしくは別のガスの充填ができる小さい間隙であるが、実施形態では、光減衰フィルタ110と光センサ120との間の直接接触を用いる。第1の経路111はまた、光減衰フィルタ110と光センサ120との間に塗布される透光性粘着剤とすることもできるし、光導波路とすることもできる。第2の経路121は電気的接続部(たとえばハンダ接合またはワイヤ)であるが、他の適切な接続部を用いることができる。
【0025】
図3に概略的に示すように、論理回路130をハウジング140内に収容する必要はない。ハウジング140は、光減衰フィルタ110および光センサ120を、図2の実施形態のように保持することができるが、第2の経路121(たとえば導電体)は、ハウジングを出て光センサ120を論理回路130に接続している。論理回路130を、その独自のハウジング内に配置することもできるし、特定の応用例に対して要求されたら機器の別の部分内に配置することもできる。第3の経路131(たとえば導電体)は、論理回路130を、論理回路の出力信号が生成されたときに出力信号に応答する装置に接続している。
【0026】
図4に、光センサ120もハウジング140から取り外せることを概略的に示す。図4に見られるように、ハウジング140は光減衰フィルタ110を保持し、第1の経路111は、ハウジング140を出て、光減衰フィルタ110と光センサ120とを接続している。この例では、第1の経路110は、光減衰フィルタ110からの減衰された周辺光を光センサ120に伝える透光性媒体(たとえば光ファイバ・ケーブル)である。光センサ120、第2の経路121、および論理回路130を、それらの独自のハウジング内に収容することもできるし、光センサ120および論理回路130がそれぞれ、それらの独自のハウジングを有することもできるし、コンポーネントの機能に実質的に影響がない限り他の配置を用いることもできる。
【0027】
図5は、本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器100を用いても良い閉じた状態の機器キャビネット50の概略図である。線路導体151がキャビネットに入り、負荷導体152がキャビネットから出ている。図6に概略的に見られるように、回路遮断器150が機器キャビネット50内に、各線路/負荷導体対151/152に対して設けられており、少なくとも1つのアーク・フラッシュ検出器100が回路遮断器150に、対応する第3の経路131(たとえばワイヤまたは他の導電体)を介して接続されている。キャビネット50内でアーク・フラッシュ10が生じた場合には、少なくとも1つのアーク・フラッシュ検出器100が出力信号を生成し、第3の経路131によって伝えられて、適切な回路遮断器150をトリップさせる。この結果、キャビネット内の電流が停止して、アークが終了する。
【0028】
図7および8に、本明細書において開示される実施形態によるアーク・フラッシュ検出器100を備える電力機器保護システム200の概略図を示す。図7に示すように、線路導体151は回路遮断器150の線路コンタクト153に接続され、負荷導体152は回路遮断器150の負荷コンタクト154に接続されている。通常動作では、可動コンタクト・アーム155によって、線路コンタクト153と負荷コンタクト154とが接続されて、線路導体151から負荷導体152への電流フローが可能になっている。動作メカニズム156を可動コンタクト・アーム155に接続し、動作中に可動コンタクト・アーム155を線路および負荷コンタクト153、154から離して、電流フローを中断する。これを図8に概略的に示す。動作メカニズム156は、動作可能な接続部158を介してトリップ装置157に応答する。実施形態では、トリップ装置157は電気機械式トリップ装置であり、動作可能な接続部158はトリップ装置157と動作メカニズム156との間の機械的接続部である。他のトリップ装置157および動作可能な接続部158が、実施形態の範囲内で考えられる。
【0029】
トリップ装置157は、第3の経路131をアーク・フラッシュ検出器100の論理回路130から受け取る。アーク・フラッシュ10が生じた場合には、十分な光が光減衰フィルタ110を貫通して、第1の経路111を進んで光センサ120に至る結果、光センサ120から出力信号が発生する。第2の経路121によって、光センサ120の出力信号が論理回路130に伝えられる。論理回路130は、アーク・フラッシュ10が生じたと決定したときには、出力信号をトリップ装置157に第3の経路131を介して送る。たとえば、実施形態における論理回路130は、トリップ信号を発生させ、トリップ装置157に動作メカニズム156を、動作可能な接続部158を介して駆動させて、可動コンタクト・アーム155を動かし、回路遮断器155を通る電流フローを停止する。これを、図8に概略的に示す。
【0030】
実施形態では、図7および8の概略的な例において見られるように、論理回路130は、線路情報および/または負荷情報を、第4および/または第5の経路132、134を介して、対応する線路/負荷情報提供装置133、135から受信する。たとえば、線路/負荷情報は、対応する導体151、152を通って流れる電流の大きさまたは振幅を示すことができ、線路/負荷情報提供装置133、135は電流センサである。あるいは、線路/負荷情報は電圧を示すことができ、線路/負荷情報提供装置133、135は電圧センサである。さらなるタイプの情報を、実施形態の特定の応用例に対して要求されたら適切な装置によって提供することができる。論理回路130では、アーク・フラッシュ事象が実際に起こったか否かを判定する際に線路/負荷情報を用いる。図7および8では、線路および負荷情報の両方を論理回路130に送っていると示しているが、実施形態の範囲内では一方のみを用いることができる。さらに加えて、線路情報は、負荷情報とは異なる特性を示すことができる。たとえば、線路情報は線路電圧を示すことができ、一方で、負荷情報は負荷電流強さを示すことができ、逆もまた同様である。
【0031】
図7および8では、電力機器保護システム200は、アーク・フラッシュ検出器100を回路遮断器150の外側に有すると示しているが、実施形態では、アーク・フラッシュ検出器を回路遮断器150の内部で用いる。これは、図9および10において概略的に見られる。場所およびおそらくは実際のサイズを除いて、図7および8に示す例と図9および10に示す例との間には、部品および機能に関する限り、違いはない。図9および10の例におけるアーク・フラッシュ検出器100は、回路遮断器150内のアーク・フラッシュ10に応答し、一方で、図7および8の例におけるアーク・フラッシュ検出器100は、回路遮断器150の外側にあるかまたはその内部から延びるアーク・フラッシュ10に応答する。
【0032】
実施形態における論理回路130は、アーク・フラッシュ10が生じたか否かを判定する方法を行なう。たとえば、論理回路は、コンピュータ読取可能な記憶媒体に接続されるコンピュータ・プロセッサを備えることができる。コンピュータ読取可能な記憶媒体は、コンピュータ・プロセッサに実行されたときに、以下のことを含む方法をプロセッサに行なわせるコンピュータ実行可能コードを含む。すなわち、光センサに対する接続をモニタすることと、光センサの出力信号を所定の値と比較することと、光センサの出力信号が所定の値を超えた場合にアーク・フラッシュ事象信号を送ることである。実施形態では、本方法はさらに、線路情報を所定の値と比較すること、および/または負荷情報を所定の値と比較することを含むことができる。線路および/または負荷情報を対応する所定の値と比較する実施形態においては、アーク・フラッシュ事象信号を送ることは、線路および/または負荷情報がまた、対応する所定の値を超えた場合にのみ行なわれる。
【0033】
本明細書において示すフロー図は単に一例である。本明細書において記載される図表またはステップ(または動作)に対して、本発明の趣旨から逸脱することなく、多くの変形が存在しても良い。たとえば、ステップを異なる順番で行なっても良いし、ステップを付加、削除、または変更しても良い。これらの変形はすべて、請求される発明の一部とみなされる。
【0034】
したがって前述したように、本発明の複数の態様および実施形態が、容易に明らかであり、従来のシステムに対して多くの優位性をもたらす。本発明の一態様によれば、アーク・フラッシュ検出器が、光センサ、光センサと通信状態にある光減衰フィルタ、光減衰フィルタおよび光センサを支持するように配置されるハウジング、および光センサと通信状態にある論理回路を備える。論理回路は、光センサの出力を受信するように配置され、光センサが受信した光の所定の強度に応答して出力信号を生成するように配置される。光減衰フィルタは、光センサが受信した光の強度を小さくするように配置される。またハウジングは、光センサおよび光減衰フィルタを固定方位に保持するように配置される。
【0035】
本発明の別の態様によれば、電力機器保護システムが、キャビネット、キャビネット内の回路遮断器、およびアーク・フラッシュ検出器を備える。回路遮断器はキャビネット内に配置される。回路遮断器は、線路導体に接続するために配置される線路端子と、負荷導体に接続するために配置される負荷端子とを備え、回路遮断器はさらに、線路および負荷端子の一方に接続される第1のコンタクトと、線路および負荷端子の他方に接続される第2のコンタクトと、第1および第2のコンタクトの少なくとも一方に接続される動作メカニズムであって、第1および第2のコンタクトを選択的に互いとの嵌合に入れおよび嵌合から出す動作メカニズムと、動作メカニズムに接続されるトリップ装置であって、トリップしたときに、動作メカニズムに第1および第2のコンタクトの嵌合を外させるトリップ装置と、を備える。アーク・フラッシュ検出器は、トリップ装置と通信状態にあり、アーク・フラッシュ事象に応答してトリップ装置を駆動するように配置される。アーク・フラッシュ検出器は、光センサと光減衰フィルタとを備え、光減衰フィルタは、光センサが受信した光の強度を小さくするように配置される。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、電力機器保護システムは、光センサに接続される論理回路と、周辺光を光センサに到達する前に所定の割合だけ減衰させるように光センサを覆う光減衰フィルタとを備え、論理回路は、コンピュータ読取可能な記憶媒体に接続されるプロセッサであって、コンピュータ読取可能な記憶媒体は、プロセッサに読み取られて実行されたときに論理回路に方法を実行させるコンピュータ実行可能コードを含む、プロセッサを備える。本方法は、光センサの出力信号をモニタすることと、光センサの出力信号が所定のレベルを超えたときにアーク・フラッシュ事象信号を生成することとを含む。
【0037】
さらに加えて、本発明の一部または全部の態様を、コンピュータ・コード(たとえば、オブジェクト・コード、ソース・コード、または実行可能コード)を記憶し、読み取り、および実行するように用意されたコンピュータ・プロセッサ・ハードウェアおよびコンピュータ・ソフトウェアおよび/またはコンピュータ・プログラム製品を用いて実施しても良い。こうして、本発明の実施形態は、コンピュータによって実施されるプロセスまたは方法、およびこのようなプロセスを実行するための装置であって、コンピュータ・プロセッサを備えることができる装置(たとえばコントローラ)を含む。コンピュータ・コード(たとえばオブジェクト・コード、ソース・コード、または実行可能コード)を含むコンピュータ・ソフトウェア応用例またはプログラム製品を含む実施形態では、コンピュータ・ソフトウェア応用例またはプログラム製品を、記憶装置上に有している。記憶装置は、たとえば、有形のコンピュータ読取可能な媒体、たとえば磁気媒体(フレキシブル・ディスケット、ハード・ディスク・ドライブ、テープなど)、光媒体(コンパクト・ディスク、デジタル多用途/ビデオ・ディスク、光磁気ディスクなど)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュROM、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、または他の任意のコンピュータ読取可能な記憶媒体として、コンピュータ・プログラム・コードを記憶するとともに、コンピュータ・プログラム・コードをコンピュータにロードしコンピュータによって実行するときに用いることができる記憶媒体である。コンピュータがコンピュータ・プログラム・コードを実行すると、コンピュータは本発明を実行するための装置になり、また汎用マイクロプロセッサ上では、特定の論理回路が、コンピュータ・コード・セグメントを伴うマイクロプロセッサの構成によって形成される。たとえば、前述したような方法を、コンピュータ・ソフトウェアとして実施してプロセッサ上で実行すると、本方法のステップを行なうための対応する手段が形成される。実行可能命令の技術的効果は、回路遮断器をトリップさせること、アラームを開始すること、および/またはアーク・フラッシュ事象が起きたという決定に応答して他の行為を取ることである。
【0038】
コンピュータ・プログラム・コードを、コンピュータ・プロセッサによって実行可能なコンピュータ命令内に、たとえば任意のプログラミング言語で符号化されるソフトウェアの形態で書き込む。好適なプログラミング言語の例としては、以下のものが挙げられる(しかしこれらに限定されない)。アセンブリ言語、VHDL(ベリログ(Verilog)ハードウェア記述言語)、超高速集積回路ハードウェア記述言語(VHSICHDL)、FORTRAN(フォーミュラー・トランスレーション)、C、C++、C#、Java(商標)、ALGOL(アルゴリズム言語)、BASIC(初心者向け汎用記号命令コード)、APL(Aプログラミング言語)、アクティブエックス、HTML(ハイバテキスト・マークアップ言語)、XML(拡張可能マークアップ言語)、およびこれらのうちの1つまたは複数の任意の組み合わせまたは派生物である。
【0039】
本発明を、ベスト・モードを含む典型的な実施形態を参照して説明してきたが、当然のことながら、種々の変形を施しても良く、また本発明の範囲から逸脱することなくその要素の代わりに均等物を用いても良い。加えて、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの変更を施しても良い。したがって本発明は、本発明を実施するために考えられるベストまたは唯一のモードとして開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、添付の請求項の範囲に含まれるすべての実施形態が含まれることが意図されている。また、図面および説明において本発明の典型的な実施形態を開示しており、具体的な用語を用いた場合もあるが、それらは、特に明記されない限り、単に一般的および記述的な意味で用いており、限定を目的としたものではなく、したがって本発明の範囲を限定してはいない。また、用語第1、第2などを用いることは、何ら順番または重要性を示すものではなく、むしろ用語第1、第2などは、ある要素を別のものと区別するために用いている。さらに、用語a、anなどを用いることは、数量の限定を示すものではなく、むしろ参照した物品の少なくとも1つの存在を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサ(120)と、
光センサ(120)と通信状態にある光減衰フィルタ(110)であって、光センサ(120)が受信した光の強度を減らすように配置される光減衰フィルタ(110)と、
光減衰フィルタ(110)および光センサ(120)を支持するように配置されるハウジング(140)であって、さらに光センサ(120)および光減衰フィルタ(110)を固定方位に保持するように配置されるハウジング(140)と、
光センサ(120)と通信状態にある論理回路(130)であって、光センサ(120)の出力を受信するように配置され、光センサ(120)が受信した光の所定の強度に応答して出力信号(131)を生成するように配置される論理回路(130)と、を備えるアーク・フラッシュ検出器(100)。
【請求項2】
光センサ(120)は、フォトダイオード、フォトランジスタ、または光−電圧装置である請求項1に記載のアーク・フラッシュ検出器(100)。
【請求項3】
光センサ(120)と光減衰フィルタ(110)との間の粘着層であって、光減衰フィルタ(110)を光センサ(120)に所定の距離で取り付けるように配置される粘着層をさらに備える請求項1に記載のアーク・フラッシュ検出器(100)。
【請求項4】
光センサ(120)と光減衰フィルタ(110)との間の光導波路であって、光減衰フィルタ(110)からの減衰光を光センサ(120)の検知面へ案内するように配置される光導波路をさらに備える請求項1に記載のアーク・フラッシュ検出器(100)。
【請求項5】
光導波路は、光ファイバ・ケーブル、半透明粘着剤、透明粘着剤、または光学レンズである請求項4に記載のアーク・フラッシュ検出器(100)。
【請求項6】
光減衰フィルタ(110)は、そこを通る光を約0.4%〜約8.5%の範囲に減衰させる請求項1に記載のアーク・フラッシュ検出器(100)。
【請求項7】
光減衰フィルタ(110)は、そこを通る光を約1.2%〜約3.2%の範囲に減衰させる請求項6に記載のアーク・フラッシュ検出器(100)。
【請求項8】
光減衰フィルタは溶接用シェード材料を3〜6の等級範囲で含む請求項1に記載のアーク・フラッシュ検出器(100)。
【請求項9】
論理回路(130)は、線路電流を示す線路電流信号を受信するように配置され、さらに線路電流信号を用いてアーク・フラッシュ事象が起こったか否かを判定するように配置される請求項1に記載のアーク・フラッシュ検出器(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−13215(P2011−13215A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142170(P2010−142170)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】