説明

アーク放電識別装置

プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のためのアーク放電識別装置(1)はアーク放電識別信号を送出する比較器(4)を有し、この比較器(4)には信号及び基準値が供給され、基準値は調整装置(6)によって極値検出装置(5)により予め設定された期間に求められた信号の極値から形成され、比較器(4)は、基準信号と信号の瞬時値との比較の結果アーク放電が生じた場合に、アーク放電識別信号の状態を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアーク放電識別装置及びプラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のための方法に関し、この方法では信号の瞬時値は予め設定された期間内に信号から求められた値と比較される。
【0002】
プラズマプロセスは例えばプラズマ加工及びコーティング装置において生じる。直流電流スパッタリング装置ではしばしばフラッシュオーバが生じ、これらのフラッシュオーバでは電流がプラズマにおいて導電チャネルを探す。とりわけいわゆる基板の反応性コーティングの場合、このようなフラッシュオーバが比較的しばしば発生する。この原因は、基板自体の他に、例えばプラズマチャンバの内壁のようなスパッタリング装置の部分又は絞りの部分が電気的に非導電性の又は難導電性の材料によって被覆され、これらの材料がこの場合降伏電圧に至るまで帯電されることである。スパッタリング装置の比較的大きな損傷を受けないようにするためには、それゆえ、電流供給がフラッシュオーバの発生後に遮断されるか又は電流が短時間中断されるか又は電圧がプラズマチャンバにおいて短絡されるか又は極性変化される。この処置を行うために、アーク放電識別(アーク識別)のための及びアーク放電(アーク)の消弧のための装置がしばしばプラズマ電流供給部の構成部材である。
【0003】
この場合重要なのはアークの確実な識別である。アークはプラズマ電流供給部の出力側における電圧降下又は電流上昇によって識別されうる。プラズマ電流供給部の出力側で測定される電圧に対して閾値を手動で予め設定し、この閾値を下回る場合にアークが識別されるのは公知である。同様にプラズマ電流供給部の出力側で測定される電流に対して閾値を手動で予め設定し、この閾値を越える場合にアークが識別されることが公知である。
【0004】
DE41275904A1ではアークを抑圧するための回路装置が記述されており、この回路装置ではプラズマ区間の電圧の瞬時値が予め設定された時間に亘ってもとめられた平均プラズマ電圧に相応する電圧値と比較される。瞬時値と求められた平均値との間の差が予め設定された値を越えると、アークが識別され、プラズマチャンバへの電流供給が中断される。
【0005】
この場合、アークが識別される予め設定される値は間違って出力電圧の残留リップルがアークと解釈されないように十分に大きい必要がある。プラズマプロセスではしばしば更に別の出力電圧領域がカバーされる必要がある。残留リップルは出力電圧に依存する。この場合、アークが識別される予め設定される値は最大残留リップルでもこの値に到達されず、間違ったアーク通報が発生されないような大きさである必要がある。
【0006】
電流供給がスイッチオンされても、プラズマは最初はまだ点弧されない。圧力及びジオメトリのようなプロセスパラメータに依存する電圧においてプラズマは点弧し、負荷抵抗が非常に大きい値から低い値に変化する。これが電圧降下を引き起こし、この電圧降下がDE4127504A1の回路装置によって間違ってアークと解釈されうる。この場合もその値に到達することがアークの出現に割り当てられる値は、間違ったアーク識別を生じないように十分に大きくなくてはならない。代替的に、間違ったアーク識別を阻止するために、平均値が形成される予め設定される時間が変化されうる。
【0007】
従って、アークが確実に識別されるように本来調整されるべき値は、他のパラメータに依存し、もはや最適には選択されえない。
【0008】
本発明の課題は、プラズマプロセスにおけるアーク放電が確実に識別される方法及び装置を提供することである。
【0009】
上記課題は、本発明によれば、予め設定された期間内の信号の極値が求められ、比較の結果として瞬時値又はこの瞬時値に比例する値の極値からの偏差が予め設定可能な偏差を越える場合又は瞬時値又はこの瞬時値に比例する値によって予め設定可能な偏差から求められる基準値が到達される場合にアーク放電が検出される、冒頭に挙げたような方法によって解決される。これは、この事象の出現がアーク放電の発生として解釈されることを意味する。求められた極値が最小値又は最大値であるかどうかは、アーク識別のためにどの信号が使用されるかに依存する。例えば、信号としてプラズマプロセスに直流電流を給電する直流電流供給部の出力電圧が使用されることが考えられる。このような場合、予め設定された期間に亘る電圧の最小値が求められるだろう。代替的に、プラズマプロセスに給電される電流が使用されることが設けられうる。このような場合には予め設定された期間に亘る電流の最大値がもとめられる。瞬時値が基準値を越えるか又は基準値より下に下がることにより基準値に到達するかどうかは使用される信号に依存する。
【0010】
最小値が求められる場合、瞬時値と最小値が例えば相互に比較され、これらの差が形成され、この差が予め設定可能な偏差を越えるかどうかが検査される。代替的に、瞬時値が基準値と比較され、この場合には信号の瞬時値が基準値より大きいか又は小さいかが監視され、とりわけ最小値が検出される場合には、瞬時値が基準値を下回る場合に、アーク放電が識別される。このために基準値が最小値及び予め設定可能な偏差から求められなければならない。極値形成によって偏差は出力電圧又は負荷電流に依存する信号の残留リップルがもはや考慮される必要がないように選択されうる。
【0011】
有利な方法実施形態では、予め設定可能な偏差が極値に依存してもとめられる。これは、予め設定可能な偏差がどのようなプロセス条件が優勢になるかに従って持続的に適応されることを意味する。とりわけ一定の偏差乃至は基準値が予め設定されてはならず、これらはプロセス毎に新たに調整されなければならない。これによってプラズマ装置の利用がはるかに快適になる。
【0012】
方法の有利な実施形態では、偏差は極値の0.1〜0.5倍、有利には0.2〜0.4倍として選定される。この処置によってセーフティマージンが作られる。このようにして、信号における障害がアーク放電として解釈されることが回避される。
【0013】
とりわけ有利には、信号として直流電圧供給部の出力電圧に比例する信号が使用される。とりわけ、出力電圧は分圧器によってより低い電圧にされ、この結果、この比例する電圧は比較的容易に回路装置によって処理されうる。さらに、出力電流に比例する信号がアーク放電識別に使用されうる。出力電流又はこれに比例する信号がアーク放電識別のために使用されると、信号の最大値が形成されなければならず、この最大値は次いで信号の瞬時値と比較される。これらの値の差が予め設定可能な偏差を越える場合には、これがアーク放電の発生として解釈される。
【0014】
信号がフィルタリングされる場合、とりわけ簡単なやり方で予め設定された期間に亘る極値がもとめられる。このような極値検出はとりわけ簡単に回路技術的に実現されうる。
【0015】
有利な方法実施形態では最小値フィルタリングが実施される。上昇する信号値及び降下する信号値に対して異なる時定数によってフィルタリングが実施される場合に、最小値フィルタリングがとりわけ簡単に実施される。とりわけ、最小値フィルタリングが実施される場合には、上昇するエッジにおいてすなわち信号の信号レベルの比較的低い値から比較的高い値への変化において、降下するエッジにおけるすなわち高い値から低い値への信号レベルの変化における時定数よりも大きな時定数が使用される。時定数によって最小値がサーチされる期間が決定される。
【0016】
最小値フィルタリングは一段で行われうる。これは利点として僅少な構成部材コストを有する。代替的に、最小値フィルタリングは多段でも行われうる。この場合比較的小さい残留リップルがフィルタの出力側において実現され、迅速な負の電圧変化における比較的迅速なビルドアップ(Einschwingen)が可能である。
【0017】
有利にはプラズマプロセスのプラズマが点弧されるかどうかが監視される。アーク放電識別は、プラズマプロセスのプラズマが点弧される場合に主に意味をなす。プラズマが点弧されない場合には、アークは生じえない。電圧降下はおそらくプラズマの点弧の際に生じるが、識別される必要はない。よって、アーク放電の識別のための方法はプラズマが点弧される場合にのみ実施されればよい。それゆえ、本発明の方法の実施形態では、アーク放電識別はプラズマが点弧されることが識別される場合にのみ実施される。
【0018】
とりわけ有利には第1の時定数による点弧されたプラズマにおける及び第2の時定数による消弧されたプラズマにおける極値フィルタリングが行われる。この処置によって電圧降伏又は電流上昇に基づくプラズマの点弧の際のアークの間違った識別が阻止される。
【0019】
とりわけ有利には、一定の閾値が予め設定され、瞬時値がこの一定の閾値に到達する場合にアーク放電が識別される。これは、出力電圧又はこの出力電圧に比例する電圧が監視される、すなわち極値として最小値がサーチされる方法実施形態において、一定の閾値を瞬時値が下回ることがアーク放電の発生として識別されることを意味する。これに対して最大値が極値として検出される場合には、瞬時値が予め設定可能な一定の閾値を越える場合にアーク放電の発生として解釈される。この処置によって例えばケーブル内の絶縁材料過負荷に基づいて非常にゆっくりとしか発生しないアーク放電又は短絡が識別される。
【0020】
本発明の方法の実施形態において、アーク放電の識別の際にはアーク放電識別信号の信号レベルが変化される。アーク放電識別信号は制御部、例えばマイクロプロセッサに供給され、予め設定されたタイムスパンの後で定められた通りにアーク放電の識別に対して反応する。アーク放電の識別の際には即座にではなく時間遅延してアーク放電の識別に対して、例えば直流電流供給部の出力側が短絡されるか又は直流電流供給部が遮断されることによって反応すると有利である。アーク放電が識別される場合に行われる処置は制御部によって決定される。アーク放電に対する時間遅延されたリアクションは、例えばターゲット又はプラズマチャンバ表面における汚れがアークを発生させ、この汚れが時間遅延によって確かに焼き払われうる場合に有利である。時間遅延は多くのプラズマ電流供給においてオペレータによって調整される。
【0021】
本発明の方法の実施形態では、アーク放電が消弧される場合には、アーク放電信号の信号レベルが時間遅延されて変化される。この処置によってある種のヒステリシスが形成される。とりわけ高いアーク燃焼電圧の際にアーク放電信号が短時間の後で再び元に戻される。これはとりわけアークの発生を示すアーク放電信号の変化に対して時間遅延して反応する場合に重要である。
【0022】
上記課題は、さらに、プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のためのアーク放電識別装置であって、このアーク放電識別装置には信号が供給され、このアーク放電識別装置はアーク放電識別信号を送出する比較器を有する、プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のためのアーク放電識別装置によって解決される。信号が予め設定された期間に亘って信号の極値を検出するための極値検出装置に供給される。極値から調整装置によって基準信号が発生され、この基準信号は比較器に信号の瞬時値又は比例する信号の瞬時値と同様に供給され、この比較器は、この比較器が瞬時値が基準信号に到達したことを識別する場合にアーク放電識別信号の信号レベルを変化させる。信号がプロセスの間に変化し、信号がある程度のリップル乃至は変動を有する場合でも、このような装置によってアーク放電が確実に識別される。
【0023】
とりわけ有利には、アーク放電識別装置は基準値を調整するための調整装置を有する。これは、基準値がプラズマプロセスに依存してアダプティブに適合されるうることを意味する。一定の基準値のプリセットは省かれ、基準値は異なるプロセスに対して常に新たに調整されなければならない。
【0024】
とりわけ有利には、極値検出装置はフィルタ装置を含む。フィルタ装置によって予め設定された期間に亘る極値が簡単なやり方でもとめられる。フィルタ装置はこの場合一次の又はそれより高い次数のフィルタとして構成される。
【0025】
有利な実施形態では、フィルタ装置はRC素子を有し、RC素子の抵抗に並列に第2の抵抗及びこの第2の抵抗に直列接続された非線形構成部材、有利にはダイオードが設けられている。このようなフィルタ装置によってとりわけ最小値フィルタが実現されうる。RC素子の抵抗に第2の抵抗が並列に接続されることによって、上昇する信号値及び降下する信号値に対して異なる時定数が使用されうる。とりわけ高い上昇時定数及び信号の減衰の際の低い時定数が実現されうる。このフィルタリングは、迅速な信号変化、例えば目標値跳躍の際の電圧変化が間違ってアークとして解釈されてしまうことを阻止する。
【0026】
とりわけ有利には、フィルタ装置は多段式に構成されている。最初の段によって高い残留リップル及び迅速な電圧変化における低い値へのゆっくりした減衰が達成される。第2の段によって、すなわち二段フィルタによって、僅少な残留リップル及び迅速な電圧変化における低い値への迅速な減衰が達成される。二段フィルタの際の構成部材コストは一段フィルタよりもほんの少しだけ高い。
【0027】
アーク放電識別装置のとりわけ有利な実施形態では、極値検出装置と比較器との間に第1の減結合構成素子、とりわけダイオードが配置されており、この第1の減結合構成素子と比較器との間には第2の減結合素子、とりわけダイオードを介して一定の閾値、とりわけ電圧が入力結合される。閾値は、低い出力電圧におけるセーフティリザーブとして使用され、この結果、発生するアークがこのような状況において識別されないことが回避される。さらに、一定の閾値に基づいて例えばケーブル内の絶縁材料過負荷により非常にゆっくりとしか発生しない短絡が識別されうる。
【0028】
ヒステリシス回路が比較器に与えられる信号の瞬時値に影響を与えるために設けられていると、高いアーク燃焼電圧においてアーク放電識別信号が短時間の後ではやくも再び元に戻されてしまうことが阻止される。この処置によって、アーク放電識別信号が再びアークを示さないその元の状態に戻る場合にアークが消弧されることが保証される。
【0029】
有利には、プラズマ識別装置が設けられており、このプラズマ識別装置はアーク放電識別装置の遮断のための遮断装置に接続されている。このような遮断切換装置によってアーク放電識別装置は、プラズマが点弧され従ってアークが発生する場合にスイッチオンされ、他方でプラズマが消弧され従って通常アークが発生しない場合にスイッチオフされる。
【0030】
本発明の有利な実施例を図面に概略的に図示し、次に図面の図を参照しながら詳しく説明する。
【0031】
図1はアーク放電識別装置の回路図を示し、
図2は図1の回路装置のシミュレーションのシミュレーション結果を示す。
【0032】
図1には、回路図としてアーク放電識別装置1が図示されている。アーク放電識別装置1では位置2に、この実施例においてプラズマプロセスに電流乃至は電圧を給電する直流電流供給部の出力電圧に比例する信号が供給される。この信号は分圧器3によってさらに低減され、この結果、出力電圧に比例する信号の瞬時値が演算増幅器として形成された比較器4の非反転入力側に与えられる。位置2において供給された信号はさらに極値検出装置5に与えられ、そこで予め設定された期間に亘って位置2に供給された信号の極値がもとめられる。この実施例では、直列に接続された3つの抵抗7〜9を有し、さらに抵抗10、11によって分圧器を形成する調整装置6を介して、基準値が調整される。この基準値はもとめられた最小値より小さいが、このもとめられた最小値によって決定される。基準値は比較器4の反転入力側に供給され、直流電流供給部の出力電圧に比例する値の瞬時値と比較される。瞬時値が基準値より下に下がる場合には、位置12に印加されるアーク放電識別信号の信号レベルが変化される。この信号は他の信号と結合され、この結果、アーク信号が発生され、このアーク信号は位置13に印加される。アーク信号がレベル「ロー(Low)」を有するならば、これは制御部によってアークの消弧が開始されたことを意味する。基準値をもとめることは、瞬時値が極値と比較され、偏差がもとめられ、この偏差が予め設定された、最小値により決定された偏差と比較されることと同義である。このもとめられた偏差が予め設定された偏差を越える場合には、アーク放電識別信号の信号レベルが変化される。
【0033】
極値検出装置5は二段フィルタを有する。フィルタの第1の段は抵抗11及びコンデンサ14から成るRC素子を有する。抵抗11及びコンデンサ14によって第1の時定数が定められ、この第1の時定数は位置2に供給される信号の上昇エッジが現れる場合に使用される。抵抗11に並列に抵抗15が設けられ、この抵抗15はダイオードとして形成された非線形構成部材16に直列に設けられている。抵抗15は抵抗11よりはるかに小さい。抵抗15及びコンデンサ14によって第2の時定数が定められ、この第2の時定数は第1の時定数よりも小さく、信号の降下エッジが現れる場合に使用される。フィルタの第2の段は抵抗10及びコンデンサ17によって形成され、コンデンサ17及び抵抗10はRC素子を形成する。抵抗10に並列にダイオードとして形成される非線形構成部材19に直列の抵抗18が設けられている。フィルタの第2の段によっても第1の段と同様のやり方で上昇信号に対して第1の時定数及び降下する信号に対して第2の時定数が使用される。この実施例では、極値検出装置5の二段フィルタによって最小値がもとめられる。第2のフィルタ段によって、第1のフィルタ段により発生される信号の残留リップルが低減される。極値をもとめることがトランジスタとして形成された遮断装置20によって中断され、この遮断装置20は位置21に接続されるプラズマ識別装置の信号によって制御される。点弧されたプラズマが識別されると、位置21に供給される信号は信号レベル「ロー」を有する。これは、トランジスタとして形成された遮断装置20によって位置2に供給される信号がアースされず、これによって極値導出が極値検出装置5によって行われることを意味する。これに対して、プラズマが点弧されていないことが識別されると、遮断装置20には信号レベル「ハイ(High)」が印加され、この結果、位置2に供給される信号はアースされ、極値形成が行われない。
【0034】
極値検出装置5と比較器4との間には第1の減結合素子22が設けられており、この第1の減結合素子22はダイオードとして形成されている。位置23では一定の閾値が、この実施例では電圧が発生乃至は印加され、この一定の閾値は同様にダイオードとして形成されている第2の減結合素子24を介して入力結合される。第1の減結合素子22の比較器側の電圧がこの一定の閾値より小さい場合、この閾値が比較器4によって基準信号として比較のために使用される。信号の瞬時値が閾値より下に下がる場合、アーク放電検出信号によってアークが指示される。これは、位置2に入力結合される信号の信号レベルがゆっくりと下がり、従って非常に低い最小値が極値検出装置5によって送出される場合でもアークが識別されうることを意味する。
【0035】
さらに接続されたヒステリシス回路25が設けられており、このヒステリシス回路25には位置13においてアーク信号が供給される。アーク信号がアーク消弧に相応する信号レベル「ロー」を有する場合、トランジスタ26が非導通となり、これによりトランジスタ27が導通となる。この処置によって抵抗28、29が並列に接続され、この結果、更なる分圧が行われる。位置2に入力結合される信号の瞬時値は従ってさらに低下され、この結果、閾値より上への位置2に供給される電圧の上昇によってようやくアーク放電識別信号の信号レベルが位置12において再び元に戻される。この処置によってヒステリシスが実現され、アークがアーク放電識別信号のリセットの際に消弧されることが保証される。
【0036】
図2には図1の回路のシミュレーション結果が図示されている。30によって比較器4の非反転入力側に印加される信号の信号経過が示されている。この信号30は強いリップルを有する。予め設定された期間に亘ってこの信号30の最小値31がもとめられる。図示された線図では最小値はほぼ0.2ms〜1.4msまでの領域においてほぼ1.8Vである。この最小値から基準値32が形成され、この基準値は最小値31のほぼ67%である。位置33に示されているように信号30の瞬時値が基準値32を下回る場合、図1では位置12に印加されるアーク放電識別信号34の信号レベルが変わる。このアーク放電識別信号34は制御部に供給され、この制御部は図1では位置13に印加されるアーク信号を時間遅延して又は即座に及び更に別の制御信号に依存して発生する。瞬時値が基準値32より下に下がる場合のアーク識別は、信号値がもとめられた最小値と比較され、最小値と瞬時値との間の差が予め設定された偏差より大きい場合にアーク信号34のレベルが変化することと同義である。この予め設定された偏差は例えば最小値の0.33倍に相応する。図2からは基準値32が変化する最小値31と共に同様に変化することが見て取れる。従って、適応が行われる。フィルタリングは、位置35及び36の場合のような迅速な電圧変化、例えば目標値跳躍が間違ってアークと解釈されないようにする。位置35における信号30の上昇エッジのフィルタリングに対しては36における降下するエッジの場合とは別の時定数が使用される。
【0037】
図2では同様にアークが識別された場合に信号30、このケースでは電圧が降下することが見て取れる。これは、基準値32が低い値に引き下げられることをも意味する。しかし、基準値32は位置33の後の時間領域において一定の値に「とどまり続ける」。この値は入力結合される閾値に相応する。この閾値を上回ると、アーク信号34のレベルも変化する。
【0038】
プラズマプロセスにおけるアーク放電を識別するためのアーク放電識別装置1は比較器4を有し、この比較器4には信号及び基準値が供給され、この基準値は調整装置6によって極値検出装置5により予め設定された期間内にもとめられた信号の極値から形成され、この比較器4は基準値と信号の瞬時値との比較の結果アーク放電が発生した場合にアーク放電識別信号の状態を変化させる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】アーク放電識別装置の回路図を示す。
【図2】図1の回路装置のシミュレーションのシミュレーション結果を示す。
【符号の説明】
【0040】
1 アーク放電識別装置
2 位置
3 分圧器
4 比較器
5 極値検出装置
6 調整装置
7〜9 抵抗
10、11 抵抗
12 位置
13 位置
14 コンデンサ
15 抵抗
16 非線形構成部材、ダイオード
17 コンデンサ
18 抵抗
19 非線形構成部材、ダイオード
20 遮断装置
21 位置
22 第1の減結合素子、ダイオード
23 位置
24 第2の減結合素子、ダイオード
25 ヒステリシス回路
26 トランジスタ
27 トランジスタ
28、29 抵抗
30 信号
31 信号の最小値
32 基準値
33 位置
34 アーク放電識別信号
35 位置
36 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のための方法であって、該方法では信号(30)の瞬時値が予め設定された期間内に前記信号(30)から求められる値と比較される、プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のための方法において、
予め設定された期間内の前記信号(30)の極値(31)が求められ、比較の結果として前記瞬時値又は前記瞬時値に比例する値の前記極値(31)からの偏差が予め設定可能な偏差を越える場合又は前記瞬時値又は前記瞬時値に比例する値によって前記予め設定可能な偏差から求められる基準値(32)が到達される場合に、アーク放電が検出されることを特徴とする、プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のための方法。
【請求項2】
予め設定可能な偏差は極値(31)に依存して求められることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
偏差は極値(31)の0.1〜0.5倍、有利には0.2〜0.4倍として選定されることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
信号(30)として直流電圧供給部の出力電圧又は出力電流に比例する信号が使用されることを特徴とする、請求項1〜3のうちの1項記載の方法。
【請求項5】
信号(30)がフィルタリングされることによって、極値(31)が求められることを特徴とする、請求項1〜4のうちの1項記載の方法。
【請求項6】
最小値フィルタリングが実施されることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
上昇する信号値及び降下する信号値に対して異なる時定数によってフィルタリングが実施されることを特徴とする、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
プラズマプロセスのプラズマが点弧されるかどうかが監視されることを特徴とする、請求項1〜7のうちの1項記載の方法。
【請求項9】
プラズマが点弧されることが識別される場合にのみアーク放電識別が実施されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
第1の時定数による点弧されたプラズマにおける及び第2の時定数による消弧されたプラズマにおける極値フィルタリングが行われることを特徴とする、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
一定の閾値(23)が予め設定され、瞬時値がこの一定の閾値(23)に到達する場合にアーク放電が識別されることを特徴とする、請求項1〜10のうちの1項記載の方法。
【請求項12】
アーク放電の識別の際にはアーク放電識別信号の信号レベルが変化されることを特徴とする、請求項1〜11のうちの1項記載の方法。
【請求項13】
アーク放電が消弧される場合には、アーク放電信号の信号レベルが時間遅延されて変化されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のためのアーク放電識別装置(1)であって、このアーク放電識別装置(1)には信号が供給され、このアーク放電識別装置(1)はアーク放電識別信号を送出する比較器(4)を有する、プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のためのアーク放電識別装置(1)において、
信号が予め設定された期間において信号の極値を検出するための極値検出装置(5)に供給され、前記極値から調整装置(6)によって基準信号が発生され、該基準信号は前記比較器(4)に信号の瞬時値又は比例する信号の瞬時値と同様に供給され、前記比較器(4)は該比較器(4)が前記瞬時値が前記基準信号に到達したことを識別する場合に前記アーク放電識別信号の信号レベルを変化させることを特徴とする、プラズマプロセスにおけるアーク放電の識別のためのアーク放電識別装置(1)。
【請求項15】
極値検出装置(5)はフィルタ装置を含むことを特徴とする、請求項14記載のアーク放電識別装置。
【請求項16】
フィルタ装置はRC素子(11、14;10、17)を有し、該RC素子(11、14;10、17)の抵抗(11;10)に並列に第2の抵抗(15、18)及び該第2の抵抗(15、18)に直列接続された非線形構成部材(16;19)、有利にはダイオードが設けられていることを特徴とする、請求項15記載のアーク放電識別装置。
【請求項17】
フィルタ装置は多段式に構成されていることを特徴とする、請求項15又は16記載のアーク放電識別装置。
【請求項18】
極値検出装置(5)と比較器(4)との間に第1の減結合構成素子(22)、とりわけダイオードが配置されており、この第1の減結合構成素子(22)と前記比較器(4)との間には第2の減結合素子(24)、とりわけダイオードを介して一定の閾値、とりわけ電圧が入力結合されることを特徴とする、請求項14〜17のうちの1項記載のアーク放電識別装置。
【請求項19】
ヒステリシス回路(25)が比較器(4)に与えられる信号(30)の瞬時値に影響を与えるために設けられていることを特徴とする、請求項14〜18のうちの1項記載のアーク放電識別装置。
【請求項20】
プラズマ識別装置が設けられており、該プラズマ識別装置はアーク放電識別装置(1)の遮断のための遮断装置(20)に接続されていることを特徴とする、請求項14〜19のうちの1項記載のアーク放電識別装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−531210(P2007−531210A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504279(P2007−504279)
【出願日】平成17年2月26日(2005.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002069
【国際公開番号】WO2005/096344
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(505169226)ヒュッティンガー エレクトローニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (29)
【氏名又は名称原語表記】HUETTINGER Elektronik GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Boetzinger Strasse 80,D−79111 Freiburg,Germany
【Fターム(参考)】