説明

アーク溶接装置およびアーク起動方法

【課題】宇宙環境下などの真空雰囲気中で行われるアーク溶接技術に係り、特にGTA(ガスタングステンアーク)溶接でタッチスタート方式により好適にアーク起動を行うアーク溶接装置およびアーク起動方法を提供する。
【解決手段】アーク起動時において中空電極先端部5の少なくとも一部と接触する接触部15と、被溶接物6と電気的に接触し同電位を維持する電気的接触部17と、中空電極先端部5と接触時に中空電極先端部5から流出した溶接ガスgを真空雰囲気に案内する開放部11とを構成するアーク起動部7を備えたアーク溶接装置1によりタッチスタート方式を用いたアーク起動方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙環境下などの真空雰囲気中で行われるアーク溶接技術に係り、特にGTA(ガスタングステンアーク)溶接でタッチスタートにより好適にアーク起動を行うアーク溶接装置およびアーク起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、アーク溶接に用いられるGTA(ガスタングステンアーク)が宇宙環境下などの真空雰囲気中における溶接熱源として注目されている(非特許文献1参照)。宇宙環境下などの真空雰囲気中で行われるGTA溶接は、大気圧下で行われるGTA溶接と比較して被溶接物の溶込みが大きくなるという利点がある。
【0003】
真空雰囲気中で行われるGTA溶接は中空電極を備えた溶接トーチを用いて行われる。アーク溶接は、この中空電極先端からアーク放電(アーク)の形成に必要な溶接ガスを流出させ、真空雰囲気中におけるアークの形成と維持を行うことで可能となる。
【0004】
アークの一の起動方法として、中空電極と被溶接物との間隔を設けた状態で起動させる高電圧・高周波方式による方法がある。この方法では、アークを発生させる溶接ガスを中空電極の内部を通して先端から流出させ、中空電極と被溶接物との間に数千Vの高電圧または高周波を印加して絶縁破壊を生じさせ、流れてきた溶接ガス中にアークを発生させる。アーク発生後は、溶接電源から供給され電圧を低電圧の溶接電圧に切り替え、アーク自体のエネルギで溶接ガスをプラズマ化してアーク溶接に移行させる。この高電圧・高周波方式を用いた起動方法では数千Vの高電圧を使用するため、外部との絶縁設備を設ける必要がある。また、高周波を用いた場合にはノイズの影響を受けやすく、安定したアークの起動を確保することが困難となる。
【0005】
これに対し、アークの他の起動方法として、中空電極先端を被溶接物に接触させた状態で溶接電源を起動させるタッチスタート方式による方法がある。この方法では、中空電極先端を被溶接物に接触させた状態で電圧を印加し、その後中空電極を引き離してスパークを発生させた後にこのスパークおよび電流から得られたエネルギによって溶接ガスをプラズマ化し、アークを発生させる(非特許文献2参照)。このタッチスタート方式を用いたアークの起動方法は、大気圧下で行われる場合と比較して真空雰囲気中では溶接ガス密度が低下しスパークから得られるエネルギの伝達効率が悪くなるため、溶接ガスをプラズマ化してアーク溶接に移行することが困難となる。
【0006】
また、溶接ガスにアルゴンガスを用いた場合、電離に必要な最低電圧である電離電圧は15.8eVである。これに対しヘリウムガスの電離電圧は24.6eVであり、アルゴンガスに比べて大きな値となっている。このため、ヘリウムガスを溶接ガスとして用いた場合にはよりエネルギ密度の高いプラズマを発生させアーク溶接を行うことができるという利点があるが、一方でアーク起動時においてはアルゴンガスに比べてより大きなエネルギが必要であるという欠点がある。このため、ヘリウムガスを溶接ガスとして用いる場合には、スパークから高いエネルギを得るため、起動電流を高く設定したりガス密度を高くしたりする必要があった。
【0007】
タッチスタート方式を利用した起動方法の問題点を解決するため、溶接ガス流量を増加させて溶接ガス密度を高くすることが考えられる。しかし、溶接ガス流量の増加に伴いアークは分散した放電となり、エネルギ密度が低くなるという性質があるため溶接ガス流量は少ないことが好ましい。
【0008】
これらの問題点に対処するため、微量の溶接ガス流量で比較的低電圧を利用して円滑なアーク起動を行うことができるアーク溶接装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
また、中空電極の構造に工夫を行いアーク起動前には溶接ガス密度を高め、かつアーク起動後には中空電極の内圧を好適に制御し、電離電圧の高いヘリウムガスを用いた場合であっても効率よくアーク起動および起動後のアークの維持を行うことも考えられる。
【特許文献1】特開2007−229783号公報
【非特許文献1】「月刊 溶接技術」産報出版株式会社、 2007年12月号(11月20日発行)、P83−86
【非特許文献2】「溶接学会論文集」第24巻第1号、平成18年2月、P26−31
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
タッチスタート方式によるアーク起動方法を用いた場合に、アーク起動前の中空電極と被溶接物が接触した状態においては、溶接ガスが流出する中空電極先端部の溶接ガス出口が塞がれた状態である。このため、溶接ガス密度を高めることができアークの起動が容易な反面、起動後においては急激な溶接ガス膨張に伴い中空電極と被溶接物との間の圧力が過度に上昇し、被溶接物の溶融部から溶融物が強く飛散する現象が発生する。中空電極は被溶接物に接触した状態から溶接処理位置に移動するが、アーク起動直後は極めて被溶接物と近接した状態であるため、飛散した溶融物が中空電極に付着し中空電極先端の溶接ガス出口の一部または全部を塞いでしまう。これに伴い、溶接ガスが十分に噴出されずにアークの維持を妨げる可能性がある。
【0011】
また、効率よくアークを起動するためには発生したスパークから高いエネルギを得ることが望ましいため、起動時の起動電流を高く設定することが考えられる。しかし、起動電流を高く設定すると、アーク起動前においてはスパークから高いエネルギを得ることができる反面、アーク起動直後には溶接ガスの膨張をさらに増大させ、上述した問題点をより深刻化させてしまう。
【0012】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、微量の溶接ガス流量で高い溶接ガス密度を維持し、かつ高い起動電流を用いた場合であっても効率よくアークを起動して溶接処理へ移行するアーク溶接装置およびアーク起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るアーク溶接装置は、上述した課題を解決するために、アーク起動時において電極の先端部の少なくとも一部と接触する接触部と、被溶接物と電気的に接触し同電位を維持する電気的接触部とを有するアーク起動部を備え、前記アーク起動部は、前記電極の先端部と接触時に前記電極の先端部から流出した溶接ガスを真空雰囲気に案内する開放部を構成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るアーク起動方法は、上述した課題を解決するために、電極の先端部から溶接ガスを流出するステップと、前記電極の先端部の少なくとも一部とアーク起動部とを接触するステップと、前記電極の先端部とアーク起動部との接触時に前記電極の先端部から流出した溶接ガスを真空雰囲気に放出するステップと、前記電極と被溶接物との間に電圧を印加するステップと、前記被溶接物とアーク起動部とを同電位に維持するステップと、前記電極の先端部とアーク起動部を引き離しスパークを発生させるステップと、前記スパークの発生時に膨張した前記溶接ガスを前記真空雰囲気に放出するステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアーク溶接装置およびアーク起動方法は、安定した溶接ガス流量で効率的にアークを起動させて、アーク溶接処理に移行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るアーク溶接装置およびアーク起動方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
以下の実施形態で説明するアーク溶接装置およびアーク起動方法は、アーク溶接技術のうち特にGTA(ガスタングステンアーク)溶接を中真空から高真空の真空雰囲気中で行われる場合に適用して説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
本発明に係るアーク溶接装置およびアーク起動方法の第1実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本実施形態におけるアーク溶接装置1の全体を概略的に示す構成図である。アーク溶接装置1は、中空電極4を備える溶接トーチ2、溶接電源13および配線14を介して中空電極4と接続された被溶接物6、被溶接物6上に固定されたアーク起動部7、溶接トーチ2を移動させる移動機構12を備える。
【0020】
内部が中空状に構成された溶接トーチ2は、図示しない溶接ガス供給源から溶接ガスgの供給を受ける溶接ガス導入部を備えており、溶接トーチ2の内部に溶接ガスgが供給される。
【0021】
溶接トーチ2には、シール部材3を介して中空電極4が気密性を保持して連結されている。中空電極4は、例えば軸方向(図1における上下方向)の両端が開口する円管状に構成される。中空電極4の軸方向に沿って形成されている内部孔は、溶接トーチ2に供給された溶接ガスgを通流させるためのガス流路8となっている。中空電極4の下端側に位置する中空電極先端部5からは、溶接トーチ2により供給される溶接ガスgが下向きに噴出する構成となっている。中空電極4の内径は、例えば数mm程度で構成されることで高いガス密度で溶接ガスgを流出することができる。中空電極4は、例えばタングステンから構成される。
【0022】
中空電極先端部5と対向する位置には、被溶接物6が配置される。
【0023】
被溶接物6は、例えばステンレス鋼、アルミ合金などあらゆる金属材料からなり、肉厚を有する平板などが適用される。
【0024】
中空電極4と被溶接物6との間には、これらに電圧を印加して溶接ガスgをプラズマ化してアークを起動させる溶接電源13が配線14を介して接続されている。
【0025】
中空電極先端部5と対向する被溶接物6上には、アーク起動部7が固定されて設置される。アーク起動部7は、中空電極先端部5と接触する接触部15と、この接触部15を支持する支持部16と、被溶接物6との接触面である電気的接触部17とで構成される。
【0026】
接触部15は、水平方向に伸びた平板状に構成される。接触部15には、中空電極4のガス流路8から流出された溶接ガスgの流路としてのガス通流部10が設けられる。このガス通流部10は、接触部15における中空電極4の軸方向に延びた例えば円孔部で構成される。ガス通流部10は、中空電極先端部5から流出された溶接ガスgを拘束し、真空中への拡散に伴うプラズマ化の効率低下を防止する。
【0027】
支持部16は、例えば平板状の接触部15の一端を支持して被溶接物6上に接触部15を固定する。支持部16における被溶接物6との接触面は、電気的接触部17を構成する。電気的接触部17は、被溶接物6と電気的に接触し同電位を維持する。
【0028】
被溶接物6と、これに対向する接触部15と、被溶接物6上に垂直方向に設けられた支持部16とで構成された空間部は、ガス通流部10の下流側において開放部11を構成する。この開放部11は、中空電極4、ガス通流部10を順次通流した溶接ガスgが真空雰囲気へと案内されるようになっている。
【0029】
アーク起動部7は、例えば被溶接物6と同材質またはタングステンやタングステン合金などの溶融点が高く耐熱性を有する材質によって形成される。アーク起動部7は、溶接処理中に水冷するなどして消耗を低減することで長期間使用することができる。
【0030】
溶接トーチ2には移動機構12が連結されており、溶接トーチ2とこれに連結された中空電極4は、移動機構12の駆動により中空電極先端部5がアーク起動部7の接触部15と接触および引き離される方向である上下方向に移動可能なようになっている。溶接トーチ2は移動機構12によって、例えば中空電極先端部5とアーク起動部7の接触部15とが接触する高さからアーク起動後に行われる溶接処理で用いられる所定のアーク長が得られる高さの範囲を上下方向に移動する。
【0031】
アーク起動部7の接触部15と中空電極先端部5とは、接触した後に引き離されることでスパークを発生させ、このスパークから得られるエネルギにより中空電極4のガス流路8から流出された溶接ガスgをプラズマ化するタッチスタート方式を適用してアークを起動させる。
【0032】
従来のタッチスタート方式を利用したアーク起動時においては、中空電極と被溶接物との接触に伴い溶接ガスの流出路が塞がれることにより、溶接ガスが流出されず溶接トーチ内のガス圧が急激に上昇していた。これに対し本実施形態におけるアーク溶接装置1はアーク起動部7の開放部11から真空雰囲気へと溶接ガスgが案内されるようになっているので、溶接ガスgの流量を調整することなく安定した定常的な流量で供給することができる。
【0033】
また、アーク起動後においては、溶接ガスのプラズマ化に伴い溶接ガスが急激に膨張して高い圧力が発生し、被溶接物の溶融物の飛散がしばしば生じる。この飛散した溶融物は、中空電極のガス流路出口を塞ぎ、溶接ガスがガス流路から流出されないという問題点があった。また、ガス流路出口の一部が塞がれるように溶融物が付着した場合であっても、溶接ガスが理想的に流出されない可能性がある。さらに、溶融物の飛散に伴い、中空電極が損傷する可能性もある。
【0034】
これに対し、本実施形態におけるアーク溶接装置1は、溶接ガスgの膨張に伴う圧力が開放部11を介して真空雰囲気へと案内されるため、被溶接物6の溶融物の飛散を低減させることができ、その後の溶接処理へとスムーズに移行することができる。
【0035】
プラズマ化されアークを形成する溶接ガスgには、例えばヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスや、二酸化炭素、水素、酸素、またはこれらを混合したガスが用いられる。例えば電離に必要な最低電圧である電離電圧が24.6eVと比較的高いヘリウムガスは、よりエネルギ密度の高いアークを発生させ効率的にアーク溶接を行うことができるが、アーク起動時においてはプラズマ化を行うために大きなエネルギが必要であり、アーク溶接装置1の起動電流を高く設定する必要がある。
【0036】
また、真空雰囲気中においては、溶接ガス流量の増加に伴いアークは分散した放電となりエネルギ密度が低くなるという性質があるため、溶接ガス流量は少ないことが好ましい。このため溶接ガスgは、例えばアルゴンガスを適用した場合、10〜20cc/分程度の微量の溶接ガス流量で供給されるのが好適である。
【0037】
次に、本実施形態におけるアーク溶接装置1を用いたアーク起動方法について説明する。
【0038】
図2は、アーク溶接装置1を用いたアーク起動方法の手順を説明するフローチャートである。
【0039】
ステップS1において、溶接トーチ2は、図示しない溶接ガス供給源から溶接ガスgの供給を受ける。供給された溶接ガスgは、溶接トーチ2に連結された中空電極4のガス流路8を流通し、中空電極先端部5から真空雰囲気へと流出する。溶接ガスgは、例えばアルゴンガスが用いられ、10〜20cc/分程度の微量の溶接ガス流量で供給される。
【0040】
ステップS2において、中空電極4は、移動機構12の駆動に伴いアーク起動部7と接触する位置まで下降移動される。図3は、溶接トーチ2に連結された移動機構12によって、中空電極先端部5がアーク起動部7の接触部15と接触した場合の説明図である。
【0041】
中空電極4から流出した溶接ガスgは、アーク起動部7のガス通流部10を通流するため、中空電極4とアーク起動部7との接触点近傍では溶接ガスgが拘束され、真空中への拡散に伴うプラズマ化の効率低下を防止することができる。また、ガス通流部10の下流側には、アーク起動部7で構成された開放部11が設けられるため、溶接ガスgが定常的に真空雰囲気へ放出され、アーク起動後におけるガス圧の急激な上昇が回避される。
【0042】
なお、溶接ガス供給ステップS1において供給された溶接ガスgは、中空電極先端部5がアーク起動部7と接触した後に供給を開始してもよい。
【0043】
ステップS3において、溶接電源13を起動し電圧が印加される。溶接電源13は、例えば数V〜数十Vの電圧を印加する。アークの起動に高電圧方式を用いた場合、数千Vの高電圧が必要であるのに対し、タッチスタート方式を用いた場合には、例えば数V〜数十V程度の低い電圧でアークの起動が行えるため、安全面や設備面においてより効率的に実施できる。
【0044】
ステップS4において、中空電極4は、移動機構12によりアーク起動部7から引き離される。これに伴い、通電状態である中空電極4とアーク起動部7との間でスパークが発生する。
【0045】
ステップS5において、溶接ガスgは、中空電極4とアーク起動部7との間で発生したスパークから得られるエネルギが与えられてプラズマ化され、アークが起動する。このとき、溶接ガスgは急激に膨張して大きな圧力を発生させるが、ガス通流部10の下流側には真空雰囲気に開放された開放部11が設けられるため溶接ガスgは真空雰囲気へと案内され圧力上昇が低減される。アークの起動後は、アーク自体の発熱に伴い溶接ガスgをプラズマ化し、このアークによって被溶接物6を溶融させてアーク溶接を行う。
【0046】
アーク溶接装置1は、アーク起動後に移動機構12を駆動させて溶接トーチ2を所定のアーク長が得られる位置まで引き上げ、被溶接物6と溶接トーチ2とを相対的に移動させながらアーク溶接を行う。図4は、アーク起動後、溶接処理を行う場合の説明図である。溶接トーチ2の移動に伴い、アーク起動時には中空電極4とアーク起動部7との間で発生していたアーク19は、アーク起動部7と同電位である被溶接物6との間で維持される。
【0047】
このアーク溶接装置1およびアーク起動方法によれば、アーク起動部7にガス通流部10を設けることで、真空雰囲気で行われるアーク溶接処理に適したガス流量である微量なガス流量で溶接ガスgを流出した場合であっても溶接ガスgが拘束され、真空中への拡散に伴うプラズマ化の効率低下を防止することができる。
【0048】
また、アーク起動部7のガス通流部10下流側に、通流する溶接ガスgを案内する真空雰囲気に開放された開放部11を設けたため、中空電極先端部5とアーク起動部7との接触時においても溶接トーチ2内の圧力を一定に維持することができ、安定した定常的なガス流量で溶接ガスgを流出することができる。
【0049】
さらに、開放部11を設けたことにより、溶接ガスgにヘリウムガスなどのアーク発生に大きなエネルギを必要とするガスを用いたアーク起動時において高い起動電流を用いても、アーク起動後の急激な溶接ガスgの膨張に伴う過度の圧力上昇が発生せず、被溶接物6における溶融部から溶融物が強く飛散する現象を低減することができる。よって、被溶接物6の溶融物が中空電極4に付着することにより中空電極4からの溶接ガスgの流出を妨げることなく溶接処理に移行することができる。さらには、溶融物の付着による中空電極4の損傷をも低減することができる。
【0050】
つまり、本実施形態におけるアーク溶接装置およびアーク起動方法は、アーク起動後の溶接ガスgの膨張に伴う過度な圧力上昇を防止することができるため、安定した溶接ガス流量で効率的にアークを起動させ、アーク溶接処理へ移行することができる。
【0051】
なお、アークを発生させる電極は、軸方向(上下方向)の両端が開口する円管状に構成した中空電極4を適用して説明したが、円管状のみならず薄板状に構成してもよい。図5は、アーク溶接装置1の変形例であるアーク溶接装置1aの外観を示す概略的な構成図である。なお、図5では薄板電極4a、アーク起動部7aおよび被溶接物6のみを示したが、図1に示されたアーク溶接装置1と同様に実際には溶接トーチ、溶接電源、移動機構などを有するが、説明の便宜上図中では省略した。
【0052】
薄板電極4aのガス流路8aから流出される溶接ガスgを効率よくプラズマ化させるため、アーク起動部7aと薄板電極4aとの間で発生するスパークは、ガス流路8a出口付近で発生することが望ましい。図5に示すアーク起動部7aは、薄板電極4aとガス流路8a近傍で接触し、ガス流路8a近傍でスパークを発生させることにより効率よく溶接ガスgにエネルギを与えてプラズマ化を行うことができる。
【0053】
薄板電極4aは、水平方向に伸びた肉薄な板状で構成される。薄板電極4aは、図示しない溶接ガス供給源から供給を受けた溶接ガスgを真空雰囲気に流出するガス流路8aを備える。また、薄板電極4aは、図示しない支持機構により支持されて、被溶接物6に対向する位置で保持される。
【0054】
アーク起動部7aは、薄板電極4aの対向面と接触する接触部15aと、この接触部15aを支持する支持部16aと、被溶接物6との接触面である電気的接触部17aとで構成される。
【0055】
接触部15aは、薄板電極4a方向に伸びた突起部18aを有する平板状に構成される。接触部15aには、薄板電極4aのガス流路8aから流出された溶接ガスgの流路としてのガス通流部10aが設けられる。このガス通流部10aは、接触部15aにおける薄板電極4aの軸方向に延びた例えば円孔部で構成される。ガス通流部10aは、ガス流路8aから流出された溶接ガスgを拘束し、真空中への拡散に伴うプラズマ化の効率低下を防止する。
【0056】
また、接触部15aの薄板電極4aとの接触面には、対向する薄板電極4a方向に伸びた突起部18aが設けられる。突起部18aは、他の接触部15aよりも所定量突出しており、接触部15aのうち、突起部18aのみが薄板電極4aと接するように構成される。また、ガス通流部10の開口部は、この突起部18a上に設けられる。
【0057】
支持部16aは、例えば平板状の接触部15aの一端を支持して被溶接物6上にアーク起動部7aを固定する。支持部16aにおける被溶接物6との接触面は、電気的接触部17aを構成する。電気的接触部17aは、被溶接物6と電気的に接触し同電位を維持する。
【0058】
被溶接物6と、これに対向する接触部15aと、被溶接物6上に垂直方向に設けられた支持部16aとで構成された空間部は、ガス通流部10aの下流側に開放部11aを構成する。この開放部11aは、薄板電極4aのガス流路8a、ガス通流部10aを順次通流した溶接ガスgが真空雰囲気へと案内されるようになっている。
【0059】
ここで、アークを効率よく起動させるためには、スパークから得られるエネルギを損失することなく溶接ガスgに与えることが望ましい。しかし、薄板電極4aと接触する接触部15aを平坦に構成した場合、接触部15aと薄板電極4aとの接触面が広域に渡り、スパークがガス流路8aと離れた位置で発生する可能性がある。この場合、ガス流路8aから流出される溶接ガスgには十分なエネルギが与えられず、アーク起動が効率的に行われない。
【0060】
そこで、接触部15aに突起部18aを設け、薄板電極4aとの接触点をガス流路8出口近傍に限定することで、接触点で発生したスパークから得られるエネルギを溶接ガスgに対し効率よく与えることができる。
【0061】
なお、アーク起動部7aは、アーク溶接装置に設けられた電極の形状が薄板状である場合のみならず、図1に示す円管状の中空電極4である場合であって、特に中空電極4の外径に比してガス流路の径が小さい場合にも溶接ガスgに対して効率よくエネルギを与えてプラズマ化することができる。
【0062】
[第2の実施形態]
本発明に係るアーク溶接装置およびアーク起動方法の第2実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0063】
図6は本実施形態におけるアーク溶接装置1bの全体を概略的に示す構成図である。本実施形態におけるアーク溶接装置1bが第1実施形態におけるアーク溶接装置1と異なる点は、移動機構12bがアーク起動部7bに設けられた点である。なお、第1実施形態と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
アーク溶接装置1bの溶接トーチ2は、溶接処理時に必要な所定のアーク長が得られる被溶接物6との距離を保持して固定されている。
【0065】
中空電極先端部5と対向する被溶接物6との間には、移動機構12bが連結されたアーク起動部7bが移動可能に設けられる。
【0066】
アーク起動部7bは、中空電極先端部5と接触する接触部15bと、この接触部15bを支持する図示しない支持機構と、被溶接物6との電気的接触部である電気スイッチ機構21とで構成される。
【0067】
接触部15bは、水平方向に伸びた平板状に構成される。接触部15bには、中空電極4のガス流路8から流出された溶接ガスgの流路としてのガス通流部10bが設けられる。このガス通流部10bは、接触部15bにおける中空電極4の軸方向に延びた例えば円孔部で構成される。ガス通流部10bは、中空電極先端部5から流出された溶接ガスgを拘束し、真空中への拡散に伴うプラズマ化の効率低下を防止する。
【0068】
アーク起動部7bは、電気スイッチ機構21を介して被溶接物6に接続される。電気スイッチ機構21はアーク起動部7bと被溶接物6の電気的接触の有無を切り替える。電気スイッチ機構21が閉状態である場合、被溶接物6とアーク起動部7は電気的に接触しており同電位となる。開状態である場合、溶接電源13とは通電しておらず電圧は被溶接物6のみに印加される。
【0069】
被溶接物6と、これに対向する接触部15bとで形成される空間部は、ガス通流部10bを通流する溶接ガスgの下流側において開放部11を構成する。この開放部11は、中空電極4のガス流路8、ガス通流部10bを順次通流した溶接ガスgが真空雰囲気へと案内されるようになっている。
【0070】
アーク起動部7bには移動機構12bが連結されており、アーク起動部7bは移動機構12bの駆動によりアーク起動部の接触部15bと中空電極先端部5とが接触および引き離される方向である上下方向に移動可能なようになっている。アーク起動部7bは移動機構12bによって、例えば中空電極先端部5とアーク起動部7bの接触部15bとが接触する高さからアーク起動後に行われる溶接処理で用いられる所定のアーク長が得られる高さの範囲を上下方向に移動する。
【0071】
また、アーク起動部7bは、アーク起動後においては、溶接トーチ2および被溶接物6間で行われる溶接処理に支障を与えない位置まで上下方向や水平方向に移動を行う。
【0072】
次に、本実施形態におけるアーク溶接装置1bを用いたアーク起動方法について説明する。
【0073】
図7は、アーク溶接装置1bを用いたアーク起動方法の手順を説明するフローチャートである。
【0074】
ステップS11において、溶接トーチ2は、図示しない溶接ガス供給源から溶接ガスgの供給を受ける。供給された溶接ガスgは、溶接トーチ2に連結された中空電極4のガス流路8を流通し、真空雰囲気へと流出する。溶接ガスgは、例えばアルゴンガスが用いられ、10〜20cc/分程度の微量の溶接ガス流量で供給される。このとき、電気スイッチ機構21は、開状態である。
【0075】
ステップS12において、アーク起動部7bは、移動機構12bの駆動に伴い中空電極先端部5と、これに対向する面が接触する方向に移動される。図8は、アーク起動部7bに連結された移動機構12bによって、アーク起動部7bの接触部15bが中空電極先端部5と接触した場合の説明図である。
【0076】
中空電極4から流出した溶接ガスgは、アーク起動部7bのガス通流部10bを通流するため、中空電極4とアーク起動部7bとの接触点では溶接ガスgが拘束され、真空中への拡散に伴うプラズマ化の効率低下が防止される。また、ガス通流部10bの下流側には、アーク起動部7bで形成された開放部11bが設けられるため、溶接ガスgが定常的に真空雰囲気へ放出されて圧力の上昇が低減される。
【0077】
なお溶接ガス供給ステップS11において供給された溶接ガスは、アーク起動部7bが中空電極先端部5と接触した後に供給を開始してもよい。
【0078】
ステップS13において、溶接電源13が起動される。このとき、電気スイッチ機構21は、開状態から閉状態に移行される。
【0079】
ステップS14において、アーク起動部7bは、移動機構12bにより中空電極先端部5から引き離される。これに伴い、通電状態である中空電極4とアーク起動部7bとの間でスパークが発生する。
【0080】
ステップS15において、溶接ガスgは、中空電極4とアーク起動部7bとの間で発生したスパークから得られるエネルギが与えられてプラズマ化され、アークが起動する。このとき、溶接ガスgは急激に膨張して大きな圧力を発生させるが、ガス通流部10bの下流側には真空雰囲気に開放された開放部11bが設けられるため溶接ガスgは真空雰囲気へと案内され圧力上昇が低減される。アークの起動後は、アーク自体の発熱に伴い溶接ガスgがプラズマ化される。
【0081】
アーク溶接装置1bは、アーク起動後に移動機構12bを駆動させてアーク起動部7bを被溶接物6と接触する位置または被溶接物6の近傍まで下方向に移動する。図9は、アーク19bの起動後、アーク起動部7bを被溶接物6近傍まで引き離した場合の説明図である。このとき、電気スイッチ機構21を開状態に移行させて被溶接物6との電気的接触を断ち、起動時には中空電極4とアーク起動部7bとの間で発生していたアーク19bは、被溶接物6との間で維持される。
【0082】
また、アーク起動部7bは、移動機構12bの駆動により溶接処理に支障を与えない位置まで上下移動や水平移動を行い、被溶接物6と溶接トーチ2とを相対的に移動させながら溶接処理を行う。図10は、アーク起動部7bが溶接処理に支障を与えない位置まで移動を行い溶接処理を行う場合を説明する図である。
【0083】
このアーク溶接装置1bおよびアーク起動方法によれば、第1実施形態におけるアーク溶接装置1およびアーク起動方法により生じる効果に加え、アーク起動時において溶接トーチ2の位置を固定的に設定できるため、所望のアーク長を得るための溶接トーチ2および被溶接物6間の精密な距離制御が不要となり、アーク起動後は所望のアーク長を用いて効率的にアーク溶接を行うことができる。
【0084】
また、アーク19bの起動時にのみ必要なアーク起動部7bを昇降および水平移動が可能なように構成したため、溶接処理に支障を与えない位置まで退避させることで作業効率を向上させることができる。なお、昇降方向および水平方向のみならす他の軸方向に移動可能に構成してもよい。
【0085】
[第3の実施形態]
本発明に係るアーク溶接装置の第3実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0086】
第1および第2実施形態においては、アーク起動時および起動後において溶接トーチから流出される溶接ガスが真空雰囲気へ案内されるため、アーク溶接装置にアーク起動部を設けることで開放部としての空間を構成し、溶接ガスの増加や膨張に伴う圧力の上昇を低減した。これに対し本実施形態においては、アークスタート板を用いずに開放部を構成するアーク溶接装置について説明する。
【0087】
図11は本実施形態におけるアーク溶接装置1cを概略的に示す構成図である。図11では中空電極4、アーク起動部7cおよび被溶接物6のみを示したが、第1実施形態と同様に実際には溶接トーチ、溶接電源、移動機構などを有するが、説明の便宜上図中では省略した。なお、第1実施形態と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0088】
アーク起動部7cは、中空電極先端部5と対向する被溶接物6上に固定されて設置される。アーク起動部7cは、中空電極先端部5と接触する接触部としての接触面22と、被溶接物6との電気的接触部としての電気的接触面23とで構成される。アーク起動部7cは、例えば立方体で構成される。
【0089】
接触面22は、例えば立方体で構成されたアーク起動部7cのうち、中空電極先端部5と対向する面または点で構成される。
【0090】
アーク起動部7cの被溶接物6との接触面は、電気的接触面23を構成する。電気的接触面23は、被溶接物6と電気的に接触し同電位を維持する。
【0091】
中空電極4とアーク起動部7cの接触面22との接触時、被溶接物6および被溶接物6上に垂直方向に設けられたアーク起動部7cで構成された空間部は、中空電極4のガス流路8を通流する溶接ガスgの下流側において開放部11cを構成する。この開放部11cは、中空電極4から流出された溶接ガスgが真空雰囲気へと案内されるようになっている。
【0092】
このアーク起動部7cは、例えばタングステンやタングステン合金などの溶融点が高く耐熱性を有する材質によって形成される。また、あらかじめ被溶接物6の形状を中空電極先端部5の少なくとも一部と接触可能な突起を設けるように形成することでアーク起動部7cを構成してもよい。
【0093】
なお、このアーク起動部7cは、少なくとも一箇所が中空電極先端部5に接触し、アーク起動時にはこの接触点でスパークを発生させて溶接ガスgをプラズマ化できる構成であればよい。
【0094】
本実施形態におけるアーク溶接装置1cを用いたアーク起動方法については、上述した他の実施形態とほぼ同様であるため説明は省略する。
【0095】
このアーク溶接装置1cおよびアーク起動方法によれば、図1などに示すアーク起動部7と比較し、簡易な装置構成で効率的なアーク起動を行うことができる点で有効である。
【0096】
本発明に係るアーク溶接装置およびアーク起動方法は、上述した実施形態の他に、種々の態様で実施することができる。例えば、溶接のほか、表面熱処理または材料分析を実施する真空中のアーク発生などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施形態におけるアーク溶接装置の全体を概略的に示す構成図。
【図2】第1実施形態におけるアーク溶接装置を用いたアーク起動方法の手順を説明するフローチャート。
【図3】中空電極先端部がアーク起動部と接触した場合の説明図。
【図4】アーク起動後、アーク溶接処理を行う場合の説明図。
【図5】アーク溶接装置の変形例の外観を示す概略的な構成図。
【図6】第2実施形態におけるアーク溶接装置の全体を概略的に示す構成図。
【図7】第2実施形態におけるアーク溶接装置を用いたアーク起動方法の手順を説明するフローチャート。
【図8】中空電極先端部がアーク起動部と接触した場合の説明図。
【図9】アーク起動後、アーク起動部を被溶接物近傍まで引き下げた場合の説明図。
【図10】アーク起動部をアーク溶接作業の障害とならない位置まで移動し、アーク溶接処理を行う場合を説明する図。
【図11】第3実施形態におけるアーク溶接装置を概略的に示す構成図。
【符号の説明】
【0098】
1、1a、1b、1c アーク溶接装置
2 溶接トーチ
3 シール部材
4 中空電極
4a 薄板電極
5 中空電極先端部
6 被溶接物
7、7a、7b、7c アーク起動部
8、8a ガス流路
10、10a、10b ガス通流部
11、11a、11b、11c 開放部
12、12b 移動機構
13 溶接電源
14 配線
15、15a、15b 接触部
16、16a 支持部
17、17a 電気的接触部
18a 突起部
19、19b アーク
21 電気スイッチ機構
22 接触面
23 電気的接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガス流路を有するとともに先端部から溶接ガスを流出させる電極を少なくとも備えた溶接トーチと、前記電極と被溶接物との間に電圧を印加して放電を起こさせる電源とを備え、真空雰囲気中で前記電極の先端部から流出する溶接ガス中にアークを発生させて前記被溶接物の溶接処理を行うアーク溶接装置において、
アーク起動時において前記電極の先端部の少なくとも一部と接触する接触部と、前記被溶接物と電気的に接触し同電位を維持する電気的接触部とを有するアーク起動部を備え、
前記アーク起動部は、前記電極の先端部と接触時に前記電極の先端部から流出した溶接ガスを真空雰囲気に案内する開放部を構成することを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項2】
前記アーク起動部は、前記被溶接物に固定して設けられ、前記被溶接物と同電位を維持することを特徴とする請求項1記載のアーク溶接装置。
【請求項3】
前記アーク起動部は、前記接触部が前記電極の先端部と接触した場合に前記電極の先端部から流出された溶接ガスを通流させ、前記開放部へと案内するガス通流部をさらに備え、
前記溶接トーチは、前記溶接トーチを前記アーク起動部の接触部と接触および引き離す方向に少なくとも移動させる移動機構をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載のアーク溶接装置。
【請求項4】
前記溶接トーチは、溶接処理時に用いられる所定のアーク長が得られる前記被溶接物との距離を保持して固定される一方、
前記アーク起動部は、前記接触部を前記電極の先端部と接触および引き離す方向に少なくとも移動させる移動機構と、
前記接触部が前記電極の先端部と接触時に前記電極の先端部から流出された溶接ガスを通流させ、前記開放部へと案内するガス通流部とをさらに備え、
前記電気的接触部は、前記被溶接物との電気的な接触の有無を切替可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載のアーク溶接装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記アーク起動部をアーク起動後に溶接処理に支障を与えない位置まで移動させることを特徴とする請求項4記載のアーク溶接装置。
【請求項6】
前記アーク起動部は、前記被溶接物の形状を前記電極の先端部の少なくとも一部と接触可能な突起を設けて構成されたことを特徴とする請求項1記載のアーク溶接装置。
【請求項7】
前記アーク起動部に構成される前記接触部が、前記電極の先端部のガス流路出口近傍に設けられたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のアーク溶接装置。
【請求項8】
内部にガス流路を有するとともに先端部から溶接ガスを流出させる電極を少なくとも備えた溶接トーチと、前記電極と被溶接物との間に電圧を印加して放電を起こさせる電源とを備え、真空雰囲気中で前記電極の先端部から流出する溶接ガス中にアークを発生させて前記溶接物の溶接処理を行うアーク溶接装置を用いて、前記電極をアーク起動部に接触させてスパークを発生させるタッチスタート方式によりアークを発生させるアーク起動方法において、
前記電極の先端部から前記溶接ガスを流出するステップと、
前記電極の先端部の少なくとも一部と前記アーク起動部とを接触するステップと、
前記電極の先端部とアーク起動部との接触時に前記電極の先端部から流出した溶接ガスを真空雰囲気に放出するステップと、
前記電極と被溶接物との間に電圧を印加するステップと、
前記被溶接物とアーク起動部とを同電位に維持するステップと、
前記電極の先端部とアーク起動部を引き離しスパークを発生させるステップと、
前記スパークの発生時に膨張した前記溶接ガスを前記真空雰囲気に放出するステップとを備えたことを特徴とするアーク起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−202208(P2009−202208A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48550(P2008−48550)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】