説明

アーユルヴェーダ伝統製品の飲料化

【課題】 1種または複数の植物抽出液からなり、重金属およびヒ素の除去が図られたアーユルヴェーダ伝統商品の安全かつ安定した飲料調製方法を提供する。
【解決手段】 1種または複数の植物抽出液の安定した調整法は、従来の発酵法ではなく煮沸抽出を採用した。重金属およびヒ素を除去する方法は、液体状態の植物抽出液に対して例えばエチレンジアミン四酢酸を結合(不動化)させたキレート材を接触させる処理を行った後、重金属およびヒ素を吸着捕捉したキレート材をフィルター濾過などにより固液分離することで行った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種または複数の植物抽出液からなり、重金属およびヒ素の除去が図られたアーユルヴェーダ伝統商品の安定した調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アーユルヴェーダは現在インド亜大陸の80%以上に利用され、これを教育する医科大学も100校以上あるなど、インド亜大陸では伝統的医療となっている。アーユルヴェーダ(Ayurveda)はサンスクリット語であり、生命や寿命を意味するアーユス(Ayus)と知識や真理を意味するヴェーダ(Veda)の合成語であり、生命科学と訳されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
近年の健康への関心から、中国の漢方と同様にアーユルヴェーダへの関心は高まりつつある。さらに、医食同源の視点から漢方薬で用いられる生薬と同様にアーユルヴェーダで処方される薬用植物は、一般食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品及び保健機能食品等の各種食品の素材として応用の可能性がある。
【0004】
現在、現地では1種または複数の植物を発酵して得られるジャムやクリームなどの半固形物の形状が主流であるが、より簡便に使用できる飲料化が望まれる。また発酵を用いる製造法は、品質にバラツキが生じ、安定性に欠けるため、発酵に頼らないより確実な製造法が望まれる。
【0005】
一方、植物にはカドミウムや鉛などの重金属およびヒ素などの半金属を蓄積する性質があることから、土壌中に重金属およびヒ素が含まれていた場合、植物抽出液には土壌に含まれていた重金属およびヒ素が含まれることになる。今日、東南アジアおよび米国などから輸入するほとんどの植物抽出液には重金属およびヒ素が含まれていることが報告されている(例えば、非特許文献2、3参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】医学のあゆみ、別冊(10月)、84−88、代替医療のいま 代替医療の実際、アーユルヴェーダ 古代インドから伝わる体系的な治療学(2000)
【非特許文献2】Saper RB,Phillips RS,Sehgal A,Khouri N,Davis RB,Paquin J,Thuppil V,and Kales SN. (2008).Lead,mercury,and arsenic in US− and Indian−manufactured Ayurvedic medicines sold via the Internet.JAMA 300:915−23.
【非特許文献3】Mao JJ and Desai K.(2009).Metal content in Ayurvedic medicines.JAMA 301:271.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1種または複数の植物抽出液からなり、重金属およびヒ素の除去が図られたアーユルヴェーダ伝統商品の安全かつ安定した飲料調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の点に鑑みてなされた本発明は、請求項2記載の通り、1種または複数の植物の煮沸抽出液であることを特徴とする。また、重金属およびヒ素を除去する方法は、請求項3記載の通り、植物抽出液に対してキレート単体を接触させる処理を行うことを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項3記載の方法において、重金属およびヒ素の除去を液体状態の処理対象物に対して行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1種または複数の植物抽出液からなり、重金属およびヒ素の除去が図られたアーユルヴェーダ伝統製品の安全な調製方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【00010】
1種または複数の植物を粉砕し、粉砕物の重量に対して相当量の水を加えた後、よく撹拌混合し、煮沸抽出させ静置して固形分を取り除くことで植物抽出液(処理対象溶液)を得る。また必要に応じて、固形分に対して煮沸を繰り返す。
【00011】
処理対象溶液に対する重金属およびヒ素の除去は、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸)を結合(不動化)させた担体(以下キレート材という)を処理対象溶液に接触させることで行えばよい。ここでいう担体とは繊維基材、樹脂、ラテックスビーズ等であり、これらの担体に結合させる反応基はカドミウムイオンなどの重金属イオンやヒ素などの半金属イオンに対してキレート形成能を有する化合物である。キレート剤−担体複合体(キレート材)は、対象溶液中の重金属および半金属イオンとキレートを形成してこれらを捕捉するが、同様なる能力を有するものであれば担体と官能基の種類は問わない。市販のキレート材の中では、例えば、キレスト株式会社のキレストファイバー(登録商標)を好適に用いることができる。
【0012】
処理対象溶液へのキレート材の接触は、例えば、処理対象溶液にキレート材を添加し、室温程度(15℃〜30℃)で所定の時間撹拌した後、重金属およびヒ素を吸着捕捉したキレート材を処理対象溶液からフィルター濾過などにより固液分離することで行えばよい。
処理効率や簡便性を考慮して、必要に応じて処理対象溶液を水で希釈したりしてもよい。
処理対象溶液に対するキレート単体の添加量は、処理対象溶液の量や含まれていると予想される重金属およびヒ素の量などによっても異なるが、概ね、処理対象溶液に対して0.1w/v%〜20w/v%であることが望ましい。撹拌時間は、概ね、10時間〜30時間であることが望ましい。
【0013】
処理対象溶液へのキレート材の接触は、キレート材を充填したカラムに処理対象溶液を通液し、カラム内のキレート材に重金属およびヒ素を吸着捕捉させ、重金属およびヒ素が除去された処理対象溶液を回収することで行ってもよい(カラム通液処理)。処理効率や簡便性を考慮して、必要に応じて処理対象溶液を水で希釈したりしてもよいことはフィルター濾過で行う場合と同様である。
処理対象溶液に対する重金属およびヒ素の除去は、調製される植物抽出液が濃縮加工される場合を想定すれば、可能な限り行うことが望ましく、少なくとも処理対象溶液のカドミウム濃度が1ppm以下になるまで行うことが望ましい。なお、処理対象溶液に対する重金属およびヒ素の除去は、キレート材のかわりに、自体公知のカチオンイオン交換樹脂やカチオンイオン交換繊維を用いて行ってもよい。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の1種または複数の植物抽出液からなり、重金属およびヒ素の除去が図られたアーユルヴェーダ伝統製品の安全な調製方法を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0015】
工程1:1種または複数の植物からなる抽出液の作製
1種または複数の植物を含む残渣を粉砕し、粉砕物の重量に対して10〜20倍量の水を加えた後、よく撹拌混合し、ガス等の火力にて沸騰させた。沸騰後は弱火にしてさらに継続して煮沸し、少なくとも 数時間経過させ植物抽出液を得た。表1に示したように煮沸による植物抽出液は比較品1、比較品2と比較して、製造時間、アルコール濃度、安定性、粘性、透明度、風味、飲みやすさ、効果および総合評価のすべての官能評価項目において優れていることが確認された。
工程2:重金属およびヒ素の除去工程
こうして得た処理対象溶液に、キレート繊維(キレストファイバーIRY−LおよびGRY−L:キレストファイバーはキレスト株式会社の登録商標)を5w/v%の割合で添加し、マグネチックスターラーで12時間撹拌した後、フィルター濾過などにより固液分離することで、重金属およびヒ素が除去された処理対象液を得た。表2に示したようにキレストファイバー処理により重金属が除去されたことが確認された。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、重金属およびヒ素の除去が図られた、アーユルヴェーダ伝統製品の安全かつ安定な調製方法を提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラ(学名:Emblica officinalis)、野生ヤマイモ(学名:Ipomoea paniculata)、ナガコショウ(学名:Piper longum)、ナツメヤシ(学名:Phoenix dactylifera)、ブドウ(学名:Vitis vinifera)、ベルノキ(学名:Aegle marmelos)、プロキシリムインディコ(学名:Proxylim indicom)、キダチヨウラク(学名:Gmelina arborea)、ステレオスペルマム(学名:Stereosperumum suaveolens)、ハマクサギ(学名:Premna integrifolia)、タマツナギ(学名:Dsmodium gangeticum)、オオバフジボグサ(学名:Uraria lagopoides)、モスビーン(学名:Phaseolus trilobus)、テラムナスラビアリス(学名:Teramnus labialis)、テンジクナスビ(学名:Solanum indicum)、キミノヤマホロシ(学名:Solalnum xanthocarpum)、ハゼノキ(学名:Rhus succedanea)、ケブラ・ペドラ(学名:Phyllanthus niruni)、イボツヅラフジ(学名:Tinospora cordifolia)、サンナ(学名:Hedychium spicatum)、オシロイバナ(学名:Boerhaavia diffusa)、シャタバリ(学名:Asparagus racemosus)、スイレン(学名:Nymphaea cyanea)、サンダルウッド(学名:Pterocarpus santalinus)、アダトダウァシカ(学名:Adhatoda vasica)、アシュワガンダ(学名:Withania somnifera)、マルバノホロシ(学名:Solanum dulcamara)、着生蘭(学名:Desmotrichum fimbriatum)、カルダモン(学名:Elettaria cardamomum)、シナモン(学名:Cinnamomum zeylanicum)、セイロンニッケイ(学名:Cinnamomum tamala)、セイロンテツボク(学名:Mesua ferrea)、アジュンナ(学名:Terminalia arjuna)、ファイアフレームブッシュ(学名:Woodfordia fruticosa)、ハッショウマメ(学名:Mucuna prurita)、ヨーロッパカンゾウ(学名:Glycyrrhiza glabra)、ナツメグ(学名:Myristica fragrans)、チョウジ(学名:Syzygium aromaticum)、エンベリア(学名:Embelia ribes)、コショウ(学名:Piper nigrum)、アグライア(学名:Aglaia roxburghiana)、アタランティア・ミッションニス(学名:Atalantia missionis)、ボエルハビア・ディフーサ(学名:Boerhaavia diffusa)、シジュソウ(学名:Callicarpa macrophylla Vahi)、チャ(学名:Camellia sinensis(L.)O.)、ブラックキャラウェー(学名:Carum bulbocastanum)、シナモンカシア(学名:Cinnamomum aromaticum)、ウコン(学名:Curcuma longa)、ガジュツ(学名:Curcuma zedoaria)、ハマスゲ(学名:Cyperus rotundus)、ヒカイ(学名:Dioscorea sativa)、アンブレットシード(学名:Hibiscus abelmoschus)、テリィチュリー(学名:Holarrhena antidysenterica)、ヒンギゥ(学名:Ichnocarpus frutescens)、ヤツデアサガオ(学名:Ipomoea paniculata)、リリウム・ポリフィラム(学名:Lilium polyphyllum)、マラクシス・ムシフェラ(学名:Microstylis muscifera)、カンショウコウ(学名:Nardostachys jatamansi)、フウセンアサガオ(学名:Operculina turpethum)、パボニア・オドラタ(学名:Pavonia odorata)、ディル(学名:Peucedanum graveolens)、ピスタチオ(学名:Pistacia integerrima)、セイタカミロバラン(学名:Terminalia belerica)、バンダ・テセラタ(学名:Vanda roxburghii)、セイヨウニンジンボク(学名:Vitex agnus−castus)の1種または複数の植物抽出液からなるアーユルヴェーダ伝統製品の飲料化。例えば、チャバンプラッシュ(Chyavanprash、Chyawanprash、Chyavanaprasha、Chyavanaprash、Chyavanaprasam、Chyawanaprash)、シャンジバニ・ラサーヤナ(Shanjivani Rasayana、Sanivani Rasayana、Sanjeevani Rasayana)、ダシュムラ製品(Dashamula、Dashmula、dasmula)など。
【請求項2】
請求項1記載の植物抽出液が、煮沸処理することで得られることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
調製工程のいずれかの段階で重金属およびヒ素の除去を行うことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
重金属およびヒ素の除去を溶液状態の処理対象物に対して行うことを特徴とする請求項3記載の方法。

【公開番号】特開2011−15670(P2011−15670A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178389(P2009−178389)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(509215248)ICHIBAN LIFETECH SOLUTIONS株式会社 (1)
【Fターム(参考)】