イオントラップ装置
【課題】 装置構成を複雑化することなく、イオンの捕獲時に矩形パルス電圧を印加するようにして、イオンの捕獲効率を向上させる。また、トラップ可能なイオンの運動エネルギーとこのイオンがある地点に到達したとき(または発生したとき)のトラップ用交流電圧位相との間に相関関係があることを考慮し、イオンの捕獲効率を向上させる。
【解決手段】 多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、多重極イオントラップを構成する電極に、イオンの捕獲効率を向上させるための矩形パルス電圧を印加する。また、多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、トラップ用交流電圧位相と捕獲するイオンの運動エネルギーとを同期させる。
【解決手段】 多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、多重極イオントラップを構成する電極に、イオンの捕獲効率を向上させるための矩形パルス電圧を印加する。また、多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、トラップ用交流電圧位相と捕獲するイオンの運動エネルギーとを同期させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置等の分析技術、すなわち、有機物、無機物の同定及び定量において使用されるイオントラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、質量分析装置として、四重極イオントラップ装置を応用したものが提案されている。
【0003】
四重極イオントラップ装置は、特許文献1乃至特許文献6に示すように、リング電極を2枚の対をなすエンドキャップ電極で挟み込んだ構成を有している。
【0004】
図8は、双曲面型四重極イオントラップ装置の構成を示す断面図である。
【0005】
図9は、円筒型四重極イオントラップ装置の構成を示す断面図である。
【0006】
双曲面型四重極イオントラップ装置及び円筒型四重極イオントラップ装置のいずれも、リング電極101を2枚のエンドキャップ電極102,103で挟み込んだ構成を有しており、リング電極101の中心軸であるz軸に対する回転対称である構成を有している。双曲面型四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103の内方側に向かう面が、回転双曲面の形状となっている。また、円筒型四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103の内方側に向かう面が、円筒面及び平面となっている。
【0007】
これら各四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103によって囲まれた空間が、トラップ空間となる。これらイオントラップ装置は、外部及び内部で生成されたイオンをトラップ空間内に捕獲することを目的とした装置である。
【0008】
そして、これら四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103には、それぞれトラップ用高周波(交流)電源が供給される。
【0009】
これら各四重極イオントラップ装置は、イオントラップとしての有効な空間の大きさが違うものの、略々同様の機能を有している。以下に示すシミュレーションは、すべて円筒型四重極イオントラップ装置において行ったものである。
【0010】
ところで、このような四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103にトラップ用高周波電圧を印加し続けたままでは、トラップ効率が上がらないという問題がある。
【0011】
そこで、従来、このような四重極イオントラップ装置においては、イオンを捕獲するときに、一時的にトラップ用高周波電圧の電圧振幅を下げて、イオントラップの有効ポテンシャルを下げて、イオントラップ内に進入できるようにすることが行われている。
【0012】
また、従来、イオントラップ内に緩衝ガスを導入し、イオントラップ内に進入したイオンをこの緩衝ガスに衝突させ、イオンの運動エネルギーを減少させることにより、イオンをトラップすることが行われている。
【0013】
さらに、イオンを捕獲するときに一時的にトラップ用高周波電圧の電圧振幅を下げることと、イオントラップ内に緩衝ガスを導入することを併用した四重極イオントラップ装置も提案されている。
【特許文献1】特開昭64−97350号公報
【特許文献2】特開平2−103856号公報
【特許文献3】特開平8−329882号公報
【特許文献4】特開平9−274885号公報
【特許文献5】特開平10−208692号公報
【特許文献6】特表平11−513187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のようなイオントラップ装置において、円筒型イオントラップ内に緩衝ガスを導入し、イオントラップの中心方向に進入したイオンと緩衝ガスとを衝突させ、イオンの運動エネルギーを減少させることにより、イオンをトラップするようにした場合のシミュレーション結果を示す。このときのシミュレーション条件を〔表1〕に示す。
【表1】
【0015】
イオンは、円筒型四重極トラップのリング電極101の内周面(図9中A点)から、イオン初期エネルギーとイオン発生時交流電圧位相の2次元的な範囲(表1参照)の中で、ランダムに所定の発生個数(200万個)だけ発生させた。
【0016】
このイオンは、生成後、トラップ空間の中心に向かってイオン初期運動エネルギーで飛行する。このシミュレーションでは、トラップ空間内で1回衝突が起こるようにし、衝突後のイオンの運動エネルギー変化は、モンテカルロ法を用いて計算した。
【0017】
図10は、捕獲することができたイオンの初期運動エネルギーとトラップ用交流電圧位相との関係を示すグラフである。
【0018】
この図10に示す結果から、トラップ用交流電圧がある位相のときに発生されたイオンは、ある特定の運動エネルギーを持つイオンのみしかトラップされていないことが分かる。
【0019】
すなわち、このような従来のイオントラップ装置においては、イオントラップ交流電圧の位相とトラップ空間内へ進入するイオンの運動エネルギーとの関係を考慮していないため、捕獲効率が悪いのである。
【0020】
さらに、従来のイオントラップ装置において、イオン捕獲時にパルス的な交流電圧をかける方法を採用した場合には、電気回路が複雑となり、装置が高価なのもとなってしまう。
【0021】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、本発明の目的は、装置構成を複雑化することなく、イオンの捕獲時に矩形パルス電圧を印加するようにして、イオンの捕獲効率を向上させたイオントラップ装置を提供することにある。
【0022】
また、本発明の目的は、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと、このイオンがある地点に到達したとき(または発生したとき)のトラップ用交流電圧位相との間に相関関係があることを考慮して、イオンの捕獲効率を向上させたイオントラップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の課題を解決するため、本発明に係るイオントラップ装置は、外部からのイオンビーム、または、多重極イオントラップ内部でパルス的に発生するイオンビームを該多重極イオントラップ内に閉じ込めることを目的としたイオントラップ装置であって、多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、多重極イオントラップを構成する電極に、イオンの捕獲効率を向上させるための矩形パルス電圧を印加することを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明は、前述のイオントラップ装置において、多重極イオントラップは、リング電極及び一対のエンドキャップ電極からなる四重極イオントラップであることを特徴とするものである。
【0025】
さらに、本発明は、前述のイオントラップ装置において、多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、トラップ用交流電圧位相と捕獲するイオンの運動エネルギーとを同期させることを特徴とするものである。
【0026】
そして、本発明は、前述のイオントラップ装置において、イオンビームの極性が正であり、かつ、四重極イオントラップをなすリング電極側から入射する場合において、リング電極に印加する矩形パルス電圧を、エンドキャップ電極の電圧よりも低電圧にすることを特徴とするものである。
【0027】
そして、本発明は、前述のイオントラップ装置において、イオンビームの極性が負であり、かつ、四重極イオントラップをなすリング電極側から入射する場合において、リング電極に印加する矩形パルス電圧を、エンドキャップ電極の電圧よりも高電圧にすることを特徴とするものである。
【0028】
そして、本発明は、前述のイオントラップ装置において、イオンビームの極性が正であり、かつ、四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極側から入射する場合において、エンドキャップ電極に印加する矩形パルス電圧を、リング電極の電圧よりも低電圧にすることを特徴とするものである。
【0029】
そして、本発明は、前述のイオントラップ装置において、イオンビームの極性が負であり、かつ、四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極側から入射する場合において、エンドキャップ電極に印加する矩形パルス電圧を、リング電極の電圧よりも高電圧にすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るイオントラップ装置においては、トラップ用交流電圧の切り替えをすることなく、矩形パルス電圧を印加することにより、イオン捕獲効率の向上を実現している。
【0031】
また、交流電圧の位相と、イオンの運動エネルギーを同期させることにより、イオン捕獲効率を飛躍的に向上させることができる。
【0032】
すなわち、本発明は、装置構成を複雑化することなく、イオンの捕獲時に矩形パルス電圧を印加するようにして、イオンの捕獲効率を向上させたイオントラップ装置を提供することができるものである。
【0033】
また、本発明は、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと、このイオンがある地点に到達したとき(または発生したとき)のトラップ用交流電圧位相との間に相関関係があることを考慮して、イオンの捕獲効率を向上させたイオントラップ装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の最良の実施の形態について説明する。
【0035】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態における構成を示す断面図である。
【0036】
このイオントラップ装置は、図1に示すように、円筒型四重極イオントラップ装置であり、リング電極1を2枚の対をなすエンドキャップ電極2,3で挟み込んだ構成を有している。このイオントラップ装置は、リング電極1の中心軸であるz軸に対する回転対称な構成を有している。リング電極1及び各エンドキャップ電極2,3の内方側に向かう面は、円筒面及び平面となっている。
【0037】
なお、本発明に係るイオントラップ装置は、後述する各実施の形態において、双曲面型四重極イオントラップ装置として構成してもよい。
【0038】
このイオントラップ装置においては、リング電極1及び各エンドキャップ電極2,3によって囲まれた空間が、トラップ空間となる。このイオントラップ装置は、外部及び内部で生成されたイオンをトラップ空間内に捕獲する装置である。
【0039】
そして、このイオントラップ装置においては、リング電極1には、トラップ用高周波(交流)電源4からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。
【0040】
この実施の形態におけるイオントラップ装置においては、エンドキャップ電極2,3及びリング電極1には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0041】
このイオントラップ装置において、イオンは、イオントラップ内部(図1中のA点:トラップ空間の中心から10mm)において、パルス的に生成する。このイオンは、初期エネルギーをもち、トラップ空間の中心に向かって飛行する。
【0042】
図2は、本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態において、リング電極及びエンドキャップ電極に印加される電圧を示す波形図である。
【0043】
そして、このイオントラップ装置においては、図2に示すように、イオンビーム生成時には、リング電極1に、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を同時に印加する。
【0044】
そして、このイオントラップ装置の第1の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算によりシミュレーションした。
【0045】
シミュレーションの条件は、〔表2〕のとおりである。
【表2】
【0046】
図3は、本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0047】
このイオントラップ装置においては、図3に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっていることが分かる。
【0048】
さらに、イオンの初期エネルギーとイオン生成時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0049】
なお、イオンビームの極性が正であり、かつ、四重極イオントラップをなすリング電極1側から入射する場合においては、リング電極1に印加する矩形パルス電圧は、エンドキャップ電極2,3の電圧よりも低電圧にすることが望ましい。
【0050】
また、イオンビームの極性が負であり、かつ、四重極イオントラップをなすリング電極1側から入射する場合においては、リング電極1に印加する矩形パルス電圧は、エンドキャップ電極2,3の電圧よりも高電圧にすることが望ましい。
【0051】
これらは、後述する第2及び第3の実施の形態においても同様である。
【0052】
〔第2の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第1の実施の形態におけると同様の構成のイオントラップ装置を用いて、図1に示すように、イオンが、リング電極1にある進入孔8を介して、外部からの連続イオンビームとしてイオントラップ内に入射する場合について考えるものである。
【0053】
このイオントラップ装置においても、リング電極1には、トラップ用高周波(交流)電源4からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。エンドキャップ電極2,3及びリング電極1には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0054】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンを捕獲するため、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を、交流電圧位相に同期させて同時に印加する。
【0055】
そして、矩形パルス電圧印加開始時に、図1中のB点(トラップ空間の中心から30mm)に存在するイオンのうち、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加開始時の交流電圧位相の関係をシミュレーションで調べた。
【0056】
シミュレーションの条件は、〔表3〕に示す。
【表3】
【0057】
図4は、本発明に係るイオントラップ装置の第2の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0058】
このイオントラップ装置においても、図4に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっていることが分かる。
【0059】
さらに、このイオントラップ装置においては、図1中のB点でのイオンビームの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0060】
〔第3の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第2の実施の形態におけると同様の構成のイオントラップ装置を用いて、図1に示すように、イオンが、リング電極1にある進入孔8を介して、外部からの連続イオンビームとしてイオントラップ内に入射する場合について考えたものである。
【0061】
このイオントラップ装置においても、リング電極1には、トラップ用高周波(交流)電源4からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。エンドキャップ電極2,3及びリング電極1には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0062】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンが図1中のB点に到達したときに、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を、交流電圧位相に同期させて同時に印加する。
【0063】
そして、矩形パルス電圧印加開始時に、図1中のB点(トラップ空間の中心から30mm)に存在するイオンのうち、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加開始時の交流電圧位相の関係をシミュレーションで調べた。
【0064】
このイオントラップ装置において、捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係は、前述した第2の実施の形態におけると同様に、図4に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっている。
【0065】
さらに、このイオントラップ装置においては、図1中のB点でのイオンビームの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0066】
〔第4の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第1乃至第3の実施の形態においてはリング電極1側でイオンを生成したのに対し、エンドキャップ電極2,3側で生成したパルスイオンビームの捕獲について考える。
【0067】
図5は、本発明に係るイオントラップ装置の第4の実施の形態における構成を示す断面図である。
【0068】
この実施の形態におけるイオントラップ装置は、図5に示すように、円筒型四重極イオントラップ装置であり、リング電極1を2枚の対をなすエンドキャップ電極2,3で挟み込んだ構成を有している。このイオントラップ装置は、リング電極1の中心軸であるz軸に対する回転対称な構成を有している。リング電極1及び各エンドキャップ電極2,3の内方側に向かう面は、円筒面及び平面となっている。このイオントラップ装置においては、リング電極1及び各エンドキャップ電極2,3によって囲まれた空間が、トラップ空間となる。
【0069】
そして、このイオントラップ装置においては、リング電極1には、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧が供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。この実施の形態におけるイオントラップ装置においては、エンドキャップ電極2,3には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0070】
シミュレーションでは、リング電極1を接地し、エンドキャップ電極2,3にのみトラップ用交流電圧を印加するものとした。イオンは、イオントラップ内部においてパルス的に生成するものとした。このイオンは、初期エネルギーをもち、トラップ空間の中心に向かって飛行する。
【0071】
このイオントラップ装置において、イオンは、イオントラップ内部(図5中のC点:トラップ空間の中心から10mm)において、パルス的に生成する。このイオンは、初期エネルギーをもち、トラップ空間の中心に向かって飛行する。
【0072】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンビーム生成時には、エンドキャップ電極2,3にイオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を同時に印加する。
【0073】
そして、このイオントラップ装置の第1の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算によりシミュレーションした。
【0074】
シミュレーションの条件は、〔表4〕に示す。
【表4】
【0075】
図6は、本発明に係るイオントラップ装置の第4の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0076】
このイオントラップ装置においては、図6に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっていることが分かる。
【0077】
さらに、この実施の形態においても、イオンの初期エネルギーとイオン生成時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0078】
なお、イオンビームの極性が正であり、かつ、四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極2,3側から入射する場合においては、エンドキャップ電極2,3に印加する矩形パルス電圧は、リング電極1の電圧よりも低電圧にすることが望ましい。
【0079】
また、イオンビームの極性が負であり、かつ、四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極2,3側から入射する場合においては、エンドキャップ電極2,3に印加する矩形パルス電圧は、リング電極1の電圧よりも高電圧にすることが望ましい。
【0080】
これらは、後述する第5及び第6の実施の形態においても同様である。
【0081】
〔第5の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第4の実施の形態におけると同様の構成のイオントラップ装置を用いて、図5に示すように、イオンが、エンドキャップ電極2にある進入孔9を介して、外部からの連続イオンビームとしてイオントラップ内に入射する場合について考えたものである。
【0082】
このイオントラップ装置においても、リング電極1には、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧が供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。エンドキャップ電極2,3には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0083】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンを捕獲するため、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を、交流電圧位相に同期させて同時に印加する。
【0084】
そして、矩形パルス電圧印加開始時に、図5中のD点(トラップ空間の中心から30mm)に存在するイオンのうち、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加開始時の交流電圧位相の関係をシミュレーションで調べた。
【0085】
シミュレーションでは、リング電極1を接地し、エンドキャップ電極2,3にのみトラップ用交流電圧を印加するものとした。
【0086】
シミュレーションの条件は、〔表5〕に示す。
【表5】
【0087】
図7は、本発明に係るイオントラップ装置の第5の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0088】
このイオントラップ装置においても、図7に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっていることが分かる。
【0089】
さらに、このイオントラップ装置においては、図5中のD点でのイオンビームの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0090】
〔第6の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第5の実施の形態におけると同様の構成のイオントラップ装置を用いて、図1に示すように、イオンが、エンドキャップ電極2にある進入孔9を介して、外部からの連続イオンビームとしてイオントラップ内に入射する場合について考えたものである。
【0091】
このイオントラップ装置においても、リング電極1には、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧が供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。エンドキャップ電極2,3には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0092】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンが図5中のD点(トラップ空間の中心から30mm)に到達したときに、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を、交流電圧位相に同期させて同時に印加する。
【0093】
そして、矩形パルス電圧印加開始時に、図5中のD点に存在するイオンのうち、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加開始時の交流電圧位相の関係をシミュレーションで調べた。
【0094】
シミュレーションでは、リング電極1を接地し、エンドキャップ電極2,3にのみトラップ用交流電圧を印加するものとした。
【0095】
このイオントラップ装置において、捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係は、前述した第5の実施の形態におけると同様に、図7に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっている。
【0096】
さらに、このイオントラップ装置においては、図5中のD点でのイオンビームの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態における構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態においてリング電極及びエンドキャップ電極に印加される電圧を示す波形図である。
【図3】本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係るイオントラップ装置の第2の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図5】本発明に係るイオントラップ装置の第4の実施の形態における構成を示す断面図である。
【図6】本発明に係るイオントラップ装置の第4の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図7】本発明に係るイオントラップ装置の第5の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図8】従来の双曲面型四重極イオントラップ装置の構成を示す断面図である。
【図9】従来の円筒型四重極イオントラップ装置の構成を示す断面図である。
【図10】従来のイオントラップ装置において捕獲することができたイオンの初期運動エネルギーとトラップ用交流電圧位相との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0098】
1 リング電極
2,3 エンドキャップ電極
4,6 トラップ用高周波(交流)電源
5,7 直流パルス電源
8,9 進入孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置等の分析技術、すなわち、有機物、無機物の同定及び定量において使用されるイオントラップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、質量分析装置として、四重極イオントラップ装置を応用したものが提案されている。
【0003】
四重極イオントラップ装置は、特許文献1乃至特許文献6に示すように、リング電極を2枚の対をなすエンドキャップ電極で挟み込んだ構成を有している。
【0004】
図8は、双曲面型四重極イオントラップ装置の構成を示す断面図である。
【0005】
図9は、円筒型四重極イオントラップ装置の構成を示す断面図である。
【0006】
双曲面型四重極イオントラップ装置及び円筒型四重極イオントラップ装置のいずれも、リング電極101を2枚のエンドキャップ電極102,103で挟み込んだ構成を有しており、リング電極101の中心軸であるz軸に対する回転対称である構成を有している。双曲面型四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103の内方側に向かう面が、回転双曲面の形状となっている。また、円筒型四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103の内方側に向かう面が、円筒面及び平面となっている。
【0007】
これら各四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103によって囲まれた空間が、トラップ空間となる。これらイオントラップ装置は、外部及び内部で生成されたイオンをトラップ空間内に捕獲することを目的とした装置である。
【0008】
そして、これら四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103には、それぞれトラップ用高周波(交流)電源が供給される。
【0009】
これら各四重極イオントラップ装置は、イオントラップとしての有効な空間の大きさが違うものの、略々同様の機能を有している。以下に示すシミュレーションは、すべて円筒型四重極イオントラップ装置において行ったものである。
【0010】
ところで、このような四重極イオントラップ装置においては、リング電極101及び各エンドキャップ電極102,103にトラップ用高周波電圧を印加し続けたままでは、トラップ効率が上がらないという問題がある。
【0011】
そこで、従来、このような四重極イオントラップ装置においては、イオンを捕獲するときに、一時的にトラップ用高周波電圧の電圧振幅を下げて、イオントラップの有効ポテンシャルを下げて、イオントラップ内に進入できるようにすることが行われている。
【0012】
また、従来、イオントラップ内に緩衝ガスを導入し、イオントラップ内に進入したイオンをこの緩衝ガスに衝突させ、イオンの運動エネルギーを減少させることにより、イオンをトラップすることが行われている。
【0013】
さらに、イオンを捕獲するときに一時的にトラップ用高周波電圧の電圧振幅を下げることと、イオントラップ内に緩衝ガスを導入することを併用した四重極イオントラップ装置も提案されている。
【特許文献1】特開昭64−97350号公報
【特許文献2】特開平2−103856号公報
【特許文献3】特開平8−329882号公報
【特許文献4】特開平9−274885号公報
【特許文献5】特開平10−208692号公報
【特許文献6】特表平11−513187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のようなイオントラップ装置において、円筒型イオントラップ内に緩衝ガスを導入し、イオントラップの中心方向に進入したイオンと緩衝ガスとを衝突させ、イオンの運動エネルギーを減少させることにより、イオンをトラップするようにした場合のシミュレーション結果を示す。このときのシミュレーション条件を〔表1〕に示す。
【表1】
【0015】
イオンは、円筒型四重極トラップのリング電極101の内周面(図9中A点)から、イオン初期エネルギーとイオン発生時交流電圧位相の2次元的な範囲(表1参照)の中で、ランダムに所定の発生個数(200万個)だけ発生させた。
【0016】
このイオンは、生成後、トラップ空間の中心に向かってイオン初期運動エネルギーで飛行する。このシミュレーションでは、トラップ空間内で1回衝突が起こるようにし、衝突後のイオンの運動エネルギー変化は、モンテカルロ法を用いて計算した。
【0017】
図10は、捕獲することができたイオンの初期運動エネルギーとトラップ用交流電圧位相との関係を示すグラフである。
【0018】
この図10に示す結果から、トラップ用交流電圧がある位相のときに発生されたイオンは、ある特定の運動エネルギーを持つイオンのみしかトラップされていないことが分かる。
【0019】
すなわち、このような従来のイオントラップ装置においては、イオントラップ交流電圧の位相とトラップ空間内へ進入するイオンの運動エネルギーとの関係を考慮していないため、捕獲効率が悪いのである。
【0020】
さらに、従来のイオントラップ装置において、イオン捕獲時にパルス的な交流電圧をかける方法を採用した場合には、電気回路が複雑となり、装置が高価なのもとなってしまう。
【0021】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、本発明の目的は、装置構成を複雑化することなく、イオンの捕獲時に矩形パルス電圧を印加するようにして、イオンの捕獲効率を向上させたイオントラップ装置を提供することにある。
【0022】
また、本発明の目的は、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと、このイオンがある地点に到達したとき(または発生したとき)のトラップ用交流電圧位相との間に相関関係があることを考慮して、イオンの捕獲効率を向上させたイオントラップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の課題を解決するため、本発明に係るイオントラップ装置は、外部からのイオンビーム、または、多重極イオントラップ内部でパルス的に発生するイオンビームを該多重極イオントラップ内に閉じ込めることを目的としたイオントラップ装置であって、多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、多重極イオントラップを構成する電極に、イオンの捕獲効率を向上させるための矩形パルス電圧を印加することを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明は、前述のイオントラップ装置において、多重極イオントラップは、リング電極及び一対のエンドキャップ電極からなる四重極イオントラップであることを特徴とするものである。
【0025】
さらに、本発明は、前述のイオントラップ装置において、多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、トラップ用交流電圧位相と捕獲するイオンの運動エネルギーとを同期させることを特徴とするものである。
【0026】
そして、本発明は、前述のイオントラップ装置において、イオンビームの極性が正であり、かつ、四重極イオントラップをなすリング電極側から入射する場合において、リング電極に印加する矩形パルス電圧を、エンドキャップ電極の電圧よりも低電圧にすることを特徴とするものである。
【0027】
そして、本発明は、前述のイオントラップ装置において、イオンビームの極性が負であり、かつ、四重極イオントラップをなすリング電極側から入射する場合において、リング電極に印加する矩形パルス電圧を、エンドキャップ電極の電圧よりも高電圧にすることを特徴とするものである。
【0028】
そして、本発明は、前述のイオントラップ装置において、イオンビームの極性が正であり、かつ、四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極側から入射する場合において、エンドキャップ電極に印加する矩形パルス電圧を、リング電極の電圧よりも低電圧にすることを特徴とするものである。
【0029】
そして、本発明は、前述のイオントラップ装置において、イオンビームの極性が負であり、かつ、四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極側から入射する場合において、エンドキャップ電極に印加する矩形パルス電圧を、リング電極の電圧よりも高電圧にすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るイオントラップ装置においては、トラップ用交流電圧の切り替えをすることなく、矩形パルス電圧を印加することにより、イオン捕獲効率の向上を実現している。
【0031】
また、交流電圧の位相と、イオンの運動エネルギーを同期させることにより、イオン捕獲効率を飛躍的に向上させることができる。
【0032】
すなわち、本発明は、装置構成を複雑化することなく、イオンの捕獲時に矩形パルス電圧を印加するようにして、イオンの捕獲効率を向上させたイオントラップ装置を提供することができるものである。
【0033】
また、本発明は、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと、このイオンがある地点に到達したとき(または発生したとき)のトラップ用交流電圧位相との間に相関関係があることを考慮して、イオンの捕獲効率を向上させたイオントラップ装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の最良の実施の形態について説明する。
【0035】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態における構成を示す断面図である。
【0036】
このイオントラップ装置は、図1に示すように、円筒型四重極イオントラップ装置であり、リング電極1を2枚の対をなすエンドキャップ電極2,3で挟み込んだ構成を有している。このイオントラップ装置は、リング電極1の中心軸であるz軸に対する回転対称な構成を有している。リング電極1及び各エンドキャップ電極2,3の内方側に向かう面は、円筒面及び平面となっている。
【0037】
なお、本発明に係るイオントラップ装置は、後述する各実施の形態において、双曲面型四重極イオントラップ装置として構成してもよい。
【0038】
このイオントラップ装置においては、リング電極1及び各エンドキャップ電極2,3によって囲まれた空間が、トラップ空間となる。このイオントラップ装置は、外部及び内部で生成されたイオンをトラップ空間内に捕獲する装置である。
【0039】
そして、このイオントラップ装置においては、リング電極1には、トラップ用高周波(交流)電源4からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。
【0040】
この実施の形態におけるイオントラップ装置においては、エンドキャップ電極2,3及びリング電極1には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0041】
このイオントラップ装置において、イオンは、イオントラップ内部(図1中のA点:トラップ空間の中心から10mm)において、パルス的に生成する。このイオンは、初期エネルギーをもち、トラップ空間の中心に向かって飛行する。
【0042】
図2は、本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態において、リング電極及びエンドキャップ電極に印加される電圧を示す波形図である。
【0043】
そして、このイオントラップ装置においては、図2に示すように、イオンビーム生成時には、リング電極1に、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を同時に印加する。
【0044】
そして、このイオントラップ装置の第1の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算によりシミュレーションした。
【0045】
シミュレーションの条件は、〔表2〕のとおりである。
【表2】
【0046】
図3は、本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0047】
このイオントラップ装置においては、図3に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっていることが分かる。
【0048】
さらに、イオンの初期エネルギーとイオン生成時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0049】
なお、イオンビームの極性が正であり、かつ、四重極イオントラップをなすリング電極1側から入射する場合においては、リング電極1に印加する矩形パルス電圧は、エンドキャップ電極2,3の電圧よりも低電圧にすることが望ましい。
【0050】
また、イオンビームの極性が負であり、かつ、四重極イオントラップをなすリング電極1側から入射する場合においては、リング電極1に印加する矩形パルス電圧は、エンドキャップ電極2,3の電圧よりも高電圧にすることが望ましい。
【0051】
これらは、後述する第2及び第3の実施の形態においても同様である。
【0052】
〔第2の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第1の実施の形態におけると同様の構成のイオントラップ装置を用いて、図1に示すように、イオンが、リング電極1にある進入孔8を介して、外部からの連続イオンビームとしてイオントラップ内に入射する場合について考えるものである。
【0053】
このイオントラップ装置においても、リング電極1には、トラップ用高周波(交流)電源4からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。エンドキャップ電極2,3及びリング電極1には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0054】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンを捕獲するため、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を、交流電圧位相に同期させて同時に印加する。
【0055】
そして、矩形パルス電圧印加開始時に、図1中のB点(トラップ空間の中心から30mm)に存在するイオンのうち、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加開始時の交流電圧位相の関係をシミュレーションで調べた。
【0056】
シミュレーションの条件は、〔表3〕に示す。
【表3】
【0057】
図4は、本発明に係るイオントラップ装置の第2の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0058】
このイオントラップ装置においても、図4に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっていることが分かる。
【0059】
さらに、このイオントラップ装置においては、図1中のB点でのイオンビームの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0060】
〔第3の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第2の実施の形態におけると同様の構成のイオントラップ装置を用いて、図1に示すように、イオンが、リング電極1にある進入孔8を介して、外部からの連続イオンビームとしてイオントラップ内に入射する場合について考えたものである。
【0061】
このイオントラップ装置においても、リング電極1には、トラップ用高周波(交流)電源4からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。エンドキャップ電極2,3及びリング電極1には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0062】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンが図1中のB点に到達したときに、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を、交流電圧位相に同期させて同時に印加する。
【0063】
そして、矩形パルス電圧印加開始時に、図1中のB点(トラップ空間の中心から30mm)に存在するイオンのうち、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加開始時の交流電圧位相の関係をシミュレーションで調べた。
【0064】
このイオントラップ装置において、捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係は、前述した第2の実施の形態におけると同様に、図4に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっている。
【0065】
さらに、このイオントラップ装置においては、図1中のB点でのイオンビームの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0066】
〔第4の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第1乃至第3の実施の形態においてはリング電極1側でイオンを生成したのに対し、エンドキャップ電極2,3側で生成したパルスイオンビームの捕獲について考える。
【0067】
図5は、本発明に係るイオントラップ装置の第4の実施の形態における構成を示す断面図である。
【0068】
この実施の形態におけるイオントラップ装置は、図5に示すように、円筒型四重極イオントラップ装置であり、リング電極1を2枚の対をなすエンドキャップ電極2,3で挟み込んだ構成を有している。このイオントラップ装置は、リング電極1の中心軸であるz軸に対する回転対称な構成を有している。リング電極1及び各エンドキャップ電極2,3の内方側に向かう面は、円筒面及び平面となっている。このイオントラップ装置においては、リング電極1及び各エンドキャップ電極2,3によって囲まれた空間が、トラップ空間となる。
【0069】
そして、このイオントラップ装置においては、リング電極1には、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧が供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。この実施の形態におけるイオントラップ装置においては、エンドキャップ電極2,3には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0070】
シミュレーションでは、リング電極1を接地し、エンドキャップ電極2,3にのみトラップ用交流電圧を印加するものとした。イオンは、イオントラップ内部においてパルス的に生成するものとした。このイオンは、初期エネルギーをもち、トラップ空間の中心に向かって飛行する。
【0071】
このイオントラップ装置において、イオンは、イオントラップ内部(図5中のC点:トラップ空間の中心から10mm)において、パルス的に生成する。このイオンは、初期エネルギーをもち、トラップ空間の中心に向かって飛行する。
【0072】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンビーム生成時には、エンドキャップ電極2,3にイオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を同時に印加する。
【0073】
そして、このイオントラップ装置の第1の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算によりシミュレーションした。
【0074】
シミュレーションの条件は、〔表4〕に示す。
【表4】
【0075】
図6は、本発明に係るイオントラップ装置の第4の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0076】
このイオントラップ装置においては、図6に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっていることが分かる。
【0077】
さらに、この実施の形態においても、イオンの初期エネルギーとイオン生成時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0078】
なお、イオンビームの極性が正であり、かつ、四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極2,3側から入射する場合においては、エンドキャップ電極2,3に印加する矩形パルス電圧は、リング電極1の電圧よりも低電圧にすることが望ましい。
【0079】
また、イオンビームの極性が負であり、かつ、四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極2,3側から入射する場合においては、エンドキャップ電極2,3に印加する矩形パルス電圧は、リング電極1の電圧よりも高電圧にすることが望ましい。
【0080】
これらは、後述する第5及び第6の実施の形態においても同様である。
【0081】
〔第5の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第4の実施の形態におけると同様の構成のイオントラップ装置を用いて、図5に示すように、イオンが、エンドキャップ電極2にある進入孔9を介して、外部からの連続イオンビームとしてイオントラップ内に入射する場合について考えたものである。
【0082】
このイオントラップ装置においても、リング電極1には、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧が供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。エンドキャップ電極2,3には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0083】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンを捕獲するため、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を、交流電圧位相に同期させて同時に印加する。
【0084】
そして、矩形パルス電圧印加開始時に、図5中のD点(トラップ空間の中心から30mm)に存在するイオンのうち、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加開始時の交流電圧位相の関係をシミュレーションで調べた。
【0085】
シミュレーションでは、リング電極1を接地し、エンドキャップ電極2,3にのみトラップ用交流電圧を印加するものとした。
【0086】
シミュレーションの条件は、〔表5〕に示す。
【表5】
【0087】
図7は、本発明に係るイオントラップ装置の第5の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【0088】
このイオントラップ装置においても、図7に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっていることが分かる。
【0089】
さらに、このイオントラップ装置においては、図5中のD点でのイオンビームの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【0090】
〔第6の実施の形態〕
この実施の形態においては、前述の第5の実施の形態におけると同様の構成のイオントラップ装置を用いて、図1に示すように、イオンが、エンドキャップ電極2にある進入孔9を介して、外部からの連続イオンビームとしてイオントラップ内に入射する場合について考えたものである。
【0091】
このイオントラップ装置においても、リング電極1には、直流パルス電源5から、矩形パルス電圧が供給される。また、このイオントラップ装置においては、各エンドキャップ電極2,3には、トラップ用高周波(交流)電源6からトラップ用高周波が供給されるとともに、直流パルス電源7から、矩形パルス電圧がトラップ用高周波に重畳して供給される。エンドキャップ電極2,3には、トラップ用交流電圧が常に印加される。
【0092】
そして、このイオントラップ装置においては、イオンが図5中のD点(トラップ空間の中心から30mm)に到達したときに、エンドキャップ電極2,3には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性とは逆極性の矩形パルス電圧を印加し、リング電極1には、イオントラップの中心電圧に対してイオンの極性と同極性の矩形パルス電圧を、交流電圧位相に同期させて同時に印加する。
【0093】
そして、矩形パルス電圧印加開始時に、図5中のD点に存在するイオンのうち、トラップ可能なイオンの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加開始時の交流電圧位相の関係をシミュレーションで調べた。
【0094】
シミュレーションでは、リング電極1を接地し、エンドキャップ電極2,3にのみトラップ用交流電圧を印加するものとした。
【0095】
このイオントラップ装置において、捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係は、前述した第5の実施の形態におけると同様に、図7に示すように、緩衝ガスの導入を想定していないにもかかわらず、図10により示した従来のイオントラップ装置と比較して、トラップできるイオンの数がかなり多くなっている。
【0096】
さらに、このイオントラップ装置においては、図5中のD点でのイオンビームの運動エネルギーと矩形パルス電圧印加時の交流電圧位相を最適化すれば、イオン捕獲効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態における構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態においてリング電極及びエンドキャップ電極に印加される電圧を示す波形図である。
【図3】本発明に係るイオントラップ装置の第1の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係るイオントラップ装置の第2の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図5】本発明に係るイオントラップ装置の第4の実施の形態における構成を示す断面図である。
【図6】本発明に係るイオントラップ装置の第4の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図7】本発明に係るイオントラップ装置の第5の実施の形態において捕獲可能なイオンの運動エネルギーと発生時交流電圧位相との関係を計算したシミュレーションの結果を示すグラフである。
【図8】従来の双曲面型四重極イオントラップ装置の構成を示す断面図である。
【図9】従来の円筒型四重極イオントラップ装置の構成を示す断面図である。
【図10】従来のイオントラップ装置において捕獲することができたイオンの初期運動エネルギーとトラップ用交流電圧位相との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0098】
1 リング電極
2,3 エンドキャップ電極
4,6 トラップ用高周波(交流)電源
5,7 直流パルス電源
8,9 進入孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からのイオンビーム、または、多重極イオントラップ内部でパルス的に発生するイオンビームを該多重極イオントラップ内に閉じ込めることを目的としたイオントラップ装置であって、
前記多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、前記多重極イオントラップを構成する電極に、イオンの捕獲効率を向上させるための矩形パルス電圧を印加する
ことを特徴とするイオントラップ装置。
【請求項2】
前記多重極イオントラップは、リング電極及び一対のエンドキャップ電極からなる四重極イオントラップである
ことを特徴とする請求項1記載のイオントラップ装置。
【請求項3】
前記多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、トラップ用交流電圧位相と捕獲するイオンの運動エネルギーとを同期させる
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載のイオントラップ装置。
【請求項4】
イオンビームの極性が正であり、かつ、前記四重極イオントラップをなすリング電極側から入射する場合において、リング電極に印加する矩形パルス電圧を、エンドキャップ電極の電圧よりも低電圧にする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のイオントラップ装置。
【請求項5】
イオンビームの極性が負であり、かつ、前記四重極イオントラップをなすリング電極側から入射する場合において、リング電極に印加する矩形パルス電圧を、エンドキャップ電極の電圧よりも高電圧にする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のイオントラップ装置。
【請求項6】
イオンビームの極性が正であり、かつ、前記四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極側から入射する場合において、エンドキャップ電極に印加する矩形パルス電圧を、リング電極の電圧よりも低電圧にする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のイオントラップ装置。
【請求項7】
イオンビームの極性が負であり、かつ、前記四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極側から入射する場合において、エンドキャップ電極に印加する矩形パルス電圧を、リング電極の電圧よりも高電圧にする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のイオントラップ装置。
【請求項1】
外部からのイオンビーム、または、多重極イオントラップ内部でパルス的に発生するイオンビームを該多重極イオントラップ内に閉じ込めることを目的としたイオントラップ装置であって、
前記多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、前記多重極イオントラップを構成する電極に、イオンの捕獲効率を向上させるための矩形パルス電圧を印加する
ことを特徴とするイオントラップ装置。
【請求項2】
前記多重極イオントラップは、リング電極及び一対のエンドキャップ電極からなる四重極イオントラップである
ことを特徴とする請求項1記載のイオントラップ装置。
【請求項3】
前記多重極イオントラップでのイオン捕獲時に、トラップ用交流電圧位相と捕獲するイオンの運動エネルギーとを同期させる
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載のイオントラップ装置。
【請求項4】
イオンビームの極性が正であり、かつ、前記四重極イオントラップをなすリング電極側から入射する場合において、リング電極に印加する矩形パルス電圧を、エンドキャップ電極の電圧よりも低電圧にする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のイオントラップ装置。
【請求項5】
イオンビームの極性が負であり、かつ、前記四重極イオントラップをなすリング電極側から入射する場合において、リング電極に印加する矩形パルス電圧を、エンドキャップ電極の電圧よりも高電圧にする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のイオントラップ装置。
【請求項6】
イオンビームの極性が正であり、かつ、前記四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極側から入射する場合において、エンドキャップ電極に印加する矩形パルス電圧を、リング電極の電圧よりも低電圧にする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のイオントラップ装置。
【請求項7】
イオンビームの極性が負であり、かつ、前記四重極イオントラップをなすエンドキャップ電極側から入射する場合において、エンドキャップ電極に印加する矩形パルス電圧を、リング電極の電圧よりも高電圧にする
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載のイオントラップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−66177(P2006−66177A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246419(P2004−246419)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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