説明

イオンビームシステム及びイオンビームシステムを操作する方法

【課題】走査用偏向器を有するイオンビームシステムにおいて、イオンビームの高エネルギー動作モード及び低エネルギー動作モードの両方において、高偏向周波数(高速)で、かつ偏向電圧のダイナミックレンジを広くすることなく高精度に偏向できるようにする。
【解決手段】偏向器39をイオンビーム19の光軸5の方向に隙間を設けて配設された第1偏向電極51a、51b、51c及びこれに対向する第2偏向電極52a、52b、52cからなる3つの偏向電極対によって構成し、コントローラ7からスイッチ61を介して各偏向電極に異なる電位を印加できるようにする。第1動作モード(例えば、30keVのイオンビームエネルギー)においては、矢印55で示すように全部の偏向電極対に偏向電場を発生させる。第2動作モード(例えば、1keVのイオンビームエネルギー)においては、偏向電極対51a、52aのみに偏向電場を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームシステム及びイオンビームシステムを操作する方法に関する。特に、本発明は、イオンビームのイオンを対象物の種々の選択箇所に指向させることができるようイオンビームを発生させ、対象物に入射するイオンの運動エネルギーを調整できる、イオンビームシステム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、ドイツにて2010年10月1日付けで出願された「IONENSTRAHLGERAT UND VERFAHREN ZUM BETRIEBEN DESSELBEN」と題する特許出願第10 2010 047 331.6号、及び米国にて2010年10月1日付けで出願された「ION BEAM APPARATUS AND METHOD FOR OPERATING THE SAME」と題する仮特許出願第61/404,433号の優先権を主張し、上記出願の内容の全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
イオンビームシステムは、例えば、イオンビームを用いた対象物からの材料の除去又は対象物への材料の堆積により、対象物の構造を製造又は変更するために用いる。対象物からの材料の除去及び対象物への材料の堆積は、対象物へのプロセスガスの供給を伴う場合があり、プロセスガスは、イオンビームを用いて活性化する。
【0004】
イオンビームシステムは、さらに、対象物にわたるイオンビームの走査、及びイオンビームの入射に起因して対象物から出る荷電粒子又は他の放射線の検出により、対象物の像を生成するために用いることができる。検出した粒子又は放射線の強度は、走査型電子顕微鏡を用いて対象物の像を取得するのに用いる方法と同様に像情報を提供する。
【0005】
従来のイオンビームシステムは、イオンビームを発生するイオンビーム源と、イオンビームのイオンを調整可能な運動エネルギーに加速させる加速電極と、イオンビームを対象物上の所望の箇所に指向させるビーム偏向器とを備える。ビーム偏向器は、イオンビームの周りに円周方向に分配した複数の偏向電極対を備え、偏向電極対間に調整可能な偏向電場を発生させることでイオンビームの所望の偏向を得るために、調整可能な電圧を偏向電極対に印加することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、イオンビームのイオンの運動エネルギーが小さい場合及び/又は所望の偏向量が急変する場合、ビームの所望の偏向を達成する精度が不十分であり得ることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記事項を考慮に入れて、イオンビームシステム及びイオンビームシステムを操作する方法を提案する。
【0008】
本発明の実施形態は、第1偏向電極と、第1偏向電極に対向してイオンビームに沿って種々の領域に位置決めした複数の第2偏向電極とを備えるビーム偏向器を有する、イオンビームシステムを提供する。複数の第2偏向電極は、電圧供給システムに電気的に接続し、電圧供給システムの構成は、種々の調整可能な電圧を第2偏向電極対に供給して、第1偏向電極と第2偏向電極対の各第2偏向電極との間に発生した偏向電場が同じ向きを有し、特に同じ方向に向くようにするものとする。
【0009】
このような構成では、所与の偏向電圧を第2偏向電極の全部、第2偏向電極のサブセット、及び特に第2偏向電極の1つのみに供給すること、又は第2偏向電極ごとに異なる電圧を供給することが可能である。これにより、ビーム偏向器が発生した偏向電場のイオンビームに沿った分布を多くの異なる形で調整することが可能となる。例えば、第2偏向電極の全部に同じ電圧を供給した場合、全部の第2偏向電極が、イオンビームに沿って第2偏向電極がカバーする実質的に全長にわたって延びる有効偏向電場を発生する。例えば、第2偏向電極の1つのみに電圧を供給した場合、有効偏向場は、実質的にその1つの偏向電極がカバーする長さに沿ってしか発生しないため、偏向場が延びる長さは実質的に短くなる。
【0010】
有効偏向電場がイオンビームに沿って延びる長さは、例えば、ビーム経路に沿った電場強度の分布幅を求めることにより求めることができる。ビーム経路に沿った偏向電場の分布幅は、例えば、以下の式に従って求めることができる。
【0011】
【数1】

【0012】
式中、σは求めた幅、zはイオンビーム経路に沿った位置、E(z)は位置zにおける偏向場の強度、1/Nは正規化係数、μは偏向電場の分布の平均値である。μ及びNは、以下の式に従って求めることができる。
【0013】
【数2】

【数3】

【0014】
いくつかの実施形態によれば、イオンビームシステムは、第1動作モード及び第2動作モードを有する。イオンビームシステムの電圧供給システムは、イオンビームシステムの加速電極に電圧を供給して、イオンビームシステムで用いるイオンビームのイオンの運動エネルギーが第2動作モードよりも第1動作モードで大きくなるようにする。さらに、電圧供給システムは、ビーム偏向器が生成したイオンビーム経路に沿った偏向電場の分布が、第2動作モードよりも第1動作モードで大きな幅を有するよう構成する。第2動作モードにおいて小さな運動エネルギーで、したがって低速でビーム偏向器を通過するイオンは、第1動作モードで大きな運動エネルギー及び高速でビーム偏向器を通過するイオンよりも短いビーム経路部分に沿って偏向力を受ける。イオンビーム経路に沿った偏向電場の分布が低運動エネルギーでも大きな幅を有する動作モードと比較して、第2動作モードの偏向電場の小さい幅には、低運動エネルギーを有するイオンが偏向力を受ける期間が短いという利点があり得る。所与の最大偏向電圧がイオンの所与の最大運動エネルギーで所望の偏向をもたらすように所与の長さを有する従来の偏向器には、低運動エネルギーのイオンが偏向器を通過するのに要する期間が長すぎるため、偏向電圧を急変させてもそれに対応してイオンビームの所望の急偏向が得られないという欠点があることが分かった。ビーム偏向器が発生させるイオンビームの達成可能な偏向は、偏向器を通過中にイオンが受ける偏向電場の時間平均に実質的に比例する。したがって、イオンが偏向器を通過するのに要する時間は、急激な偏向変化で達成される偏向の精度を制限する。
【0015】
上述の実施形態は、複数の分割した第2偏向電極及びそれに対応する偏向供給システムを設けることにより、偏向電場のイオンビーム経路に沿った分布幅を調整することを可能にする。偏向電場のイオンビーム経路に沿った調整可能な分布幅は、イオンがビーム偏向器を通過中に偏向電場を受ける期間を調整することを可能にする。このような構成では、特に、低運動エネルギーのイオンが偏向場を受ける期間が、実質的により高い運動エネルギーのイオンが偏向場を受ける期間よりも有意に長くない可能性がある。
【0016】
実施形態によれば、電圧供給システムは、第1切換状態及び第2切換状態を有する少なくとも1つのスイッチを備え、第1切換状態では、少なくとも2つの第2偏向電極をスイッチを介して互いに電気的に接続してそれらが同じ共通電位にあるようにし、第2切換状態では、2つの第2電極を互いに電気的に接続せずそれらが異なる電位を有し得るようにする。
【0017】
例示的な実施形態によれば、イオンビーム経路に沿って分配した第2偏向電極は、異なる長さを有し、第2偏向電極の長さは、ビーム経路に沿って連続的に減らすことができる。
【0018】
さらに他の例示的な実施形態によれば、第1偏向電極の少なくとも1つを、複数の第2偏向電極に対向して位置決めすることができる。さらに他の例示的な実施形態によれば、1つの第1偏向電極を、全部の第2偏向電極に対向して配置し、第1偏向電極の長さは、対向する全部の偏向電極を合わせた長さと実質的に等しい。
【0019】
他の例示的な実施形態によれば、ビーム偏向器は、同じ数の第1偏向電極及び第2偏向電極を備え、第1偏向電極を、第2偏向電極のそれぞれに1つずつ対向して配置する。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、ビーム偏向器は、イオンビーム経路の周りに円周方向に分配した複数の第2偏向電極群を備える。このような配置では、イオンビームを2つの独立した方向に偏向させることが可能である。例えば、2つ又は4つの第2偏向電極群を設けることができ、その場合、1つ又は複数の第1偏向電極を各群の第2偏向電極に対向して位置決めする。
【0021】
本発明の実施形態は、イオンビームシステムを操作する方法であって、イオンビームのイオンを第1運動エネルギーに加速させ、イオンビームに沿って第1場分布を有する偏向電場を用いてイオンビームを第1方向に偏向させるステップと、続いて、イオンビームのイオンを第2運動エネルギーに加速させ、イオンビームに沿って第2場分布を有する偏向電場を用いてイオンビームを第1方向に偏向させるステップとを含み、第1運動エネルギーは第2運動エネルギーよりも大きく、第1場分布の幅は第2場分布の幅よりも大きい、方法を提供する。
【0022】
このような方法では、低運動エネルギーを有する低速イオンが偏向場を通過するのに要する時間を減らすために、これらのイオンにビーム経路に沿って狭い場分布を有する偏向場を提供する一方で、広い分布を有する偏向場を高運動エネルギーを有する高速イオンに提供することを可能にして、低エネルギーイオン及び高エネルギーイオンの両方を比較的高精度で偏向させることができるようにする。
【0023】
例示的な実施形態によれば、イオンビームのイオンを第1運動エネルギーに加速させ、イオンビームを第1方向に偏向させるステップは、イオンビームに沿って第3場分布を有する偏向電場を用いて、第1方向とは逆の第2方向にイオンビームを偏向させるステップをさらに含み、イオンビームのイオンを第2運動エネルギーに加速させ、イオンビームを第1方向に偏向させるステップは、イオンビームに沿って第4場分布を有する偏向電場を用いて、第2方向にイオンビームを偏向させるステップをさらに含み、第1場分布のイオンビーム経路に沿った平均位置と第3場分布のイオンビーム経路に沿った平均位置との間の距離は、第2場分布のイオンビーム経路に沿った平均位置と第4場分布のイオンビーム経路に沿った平均位置との間の距離よりも長い。
【0024】
このような配置では、イオンを逆方向に順次偏向させる二重偏向を提供することが可能である。逆偏向場のビーム経路に沿った分布の平均位置は、低運動エネルギーを有するイオンと比較して高運動エネルギーを有するイオンほどビーム経路に沿って大きな距離を有する。これは、逆偏向場の平均値を提供する相互間の距離がイオンの運動エネルギーとは無関係である、従来の二重偏向系とは異なる。このような従来の二重偏向器は、低エネルギーイオンが逆偏向場を通過するのに要する移動時間に起因して、所望の偏向からずれた偏向を発生させる。このようなずれを、上述の実施形態では回避することができるが、これは、低エネルギーイオン用の逆偏向場がビーム経路に沿って延びる長さが、高エネルギーイオン用の逆偏向場よりも短いからである。
【0025】
本発明の前述の有利な特徴及び他の有利な特徴は、添付図面を参照して以下の本発明の例示的な実施形態の詳細な説明からより明確となるであろう。本発明の可能な実施形態全てが、本明細書で特定した利点のひとつひとつ又はいずれかを必ずしも示すとは限らないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態によるイオンビームシステムの概略図である。
【図2】従来のビーム偏向器の概略図である。
【図3a】第1動作モードでの図1に示すイオンビームシステムのビーム偏向器の概略図である。
【図3b】第2動作モードでの図1に示すイオンビームシステムのビーム偏向器の概略図である。
【図4a】図3aに示す第1動作モードでのイオンビーム経路に沿った偏向電場の分布を示すグラフである。
【図4b】図3aに示す第2動作モードでのイオンビーム経路に沿った偏向電場の分布を示すグラフである。
【図4c】第3動作モードでのイオンビーム経路に沿った偏向電場の分布を示すグラフである。
【図5】第2実施形態によるイオンビームシステムの概略図である。
【図6】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【図7】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【図8】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【図9】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【図10】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【図11】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【図12a】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【図12b】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【図12c】図1及び図5に示すイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
後述する例示的な実施形態では、機能及び構造が同様のコンポーネントは可能な限り同様の参照符号で示す。したがって、具体的な実施形態の個々のコンポーネントの特徴を理解するには、他の実施形態の記載及び発明の概要の記載を参照すべきである。
【0028】
図1に概略的に示すイオンビームシステム1は、光軸5に沿って分配した複数のイオン光学コンポーネントを含むイオンビームコラム3と、イオンビームコラム3のイオン光学コンポーネントを制御するコントローラ7とを備える。
【0029】
イオンビームコラム3は、イオン源11と、イオン源11が発生させたイオンを引き出して加速させる引出及び加速電極13と、引き出して加速したイオンからコリメートイオンビーム19を整形するイオンレンズ17とを含む、イオンビーム源9を備える。制御電圧及び制御電流を、ライン21、22、23、及び24を介してコンポーネント11、13、及び17にそれぞれ供給する。加速電極27は、イオンビーム19のビーム経路内でレンズ17の下流に位置決めする。加速電極13は、イオンビーム19が通過する開口を備え、イオンビーム19のイオンを所望の運動エネルギーに加速させるために、調整可能な加速電圧を、コントローラ7からライン29を介して加速電極13に供給する。一対の対向する偏向電極31を、イオンビームのビーム経路内で加速電極13の下流に位置決めする。コントローラ7は、ライン33を介して偏向電極31に調整可能な電位を印加する。開口36を有する開口板35を、偏向電極31の対の下流に位置決めし、コントローラ7は、ライン37を介して開口板35に調整可能な電位を印加することができる。偏向電極31の対及び開口板35は、イオンビームをオンオフに切り換える機能を提供する。ライン33を介して偏向電極31に異なる電位を印加した場合、イオンビーム19は、偏向電極33により偏向されて開口板35の開口36を通過できないが、偏向電極31に同じ電位を印加した場合、ビームは開口36を通過できる。
【0030】
ビーム偏向器39は、イオンビーム19のビーム経路内で開口板35の下流に位置決めする。ビーム偏向器39は、ビームの周りに円周方向に分配した複数の偏向電極群41を備える。コントローラ7は、さらに詳細に後述するようにライン43を介して群ごとの偏向電極に調整可能な偏向電圧を供給する。
【0031】
集束レンズ45を、レンズ45の物体平面47においてイオンビーム19を集束させるために、イオンビーム19のビーム経路内でビーム偏向器39の下流に位置決めする。ライン43を介して偏向電極に供給した偏向電圧は、ビーム19を光軸5から離れるように偏向させて光軸5から調整可能な距離dで物体平面47に入射させるために、ビーム偏向器39内で偏向電場を発生させる。対物レンズ45の集束力は、コントローラ7によりライン46を介して制御する。
【0032】
イオン源11は、例えば、イオンビーム19がGaイオンのビームであるようにガリウムGaイオン源とすることができる。物体平面47に入射するイオンの運動エネルギーは、例えば、1keV〜30keVの範囲内で調整することができる。物体平面内の集束イオンビーム19の直径は、例えば、1nm〜2μmの範囲内とすることができる。光軸5から離れるイオンビーム19の最大偏向dは、例えば、1μm〜1000μmの範囲内とすることができる。他の例示的なイオン源として、ガスイオン源、プラズマイオン源、及びガス電界イオン源が挙げられ、これらは、イオンタイプ、ビームエネルギー、及びビーム電流に関して異なる複数の異なるイオンビームを生成することを可能にする。
【0033】
図2は、イオンビーム119を偏向させるために従来のイオンビームシステムで用いる偏向器139の概略図である。偏向器139は、第1偏向電極151と、光軸105に関して第1偏向電極151に対向して位置付けた第2偏向電極152とを備える。コントローラ107は、ライン143を介して偏向電極151及び152に異なる電位を供給して、図2に矢印155で表す偏向電場を偏向電極151、152間に発生させるようにすることができ、電場155は、イオンビーム119を光軸105から離れるように偏向させる。光軸105に沿った偏向電極151、152の長さLは、イオンビーム119のイオンの所与の最大運動エネルギーを例えば30keVとし、偏向電極151及び152間の所与の最大電圧差を例えば300Vとして、ビーム119の所望の偏向を達成するよう選択する。長さLは、例えば20mmとすることができる。1keVというイオンの比較的小さな運動エネルギーでは、イオンが偏向電極151、152とそれに対応した20mmの長さLの偏向電場155とを通過するのに約385nsを要する。
【0034】
例示的な用途では、イオンビームを偏向器139の下流の物体平面にわたって走査させて、走査線の各ピクセルにおける滞留時間が40MHzのピクセル周波数で25nsとなるようにする。1keVという低運動エネルギーの低速イオンが偏向場155内に留まる時間は、15ピクセル位置の期間に相当する時間である。しかしながら、偏向電極151、152の下流のイオンの偏向は、偏向場が引き起こす偏向の時間平均に対応し、偏向場は、ピクセル位置ごとに異なる強度を有する。低運動エネルギーを有するイオンの偏向の正確な制御は、偏向系139では不可能であることが明らかである。
【0035】
図3aは、図1に示すイオンビームシステム1のビーム偏向器39の偏向電極の一部を概略的に示す。ビーム偏向器39の偏向電極が図2のビーム偏向器139の偏向電極と異なる点は、電極をビームの長手方向に連続させるのではなく分割したことである。複数の第1偏向電極51a、51b、51cを、光軸5の一方の側に位置決めし、複数の第2偏向電極52a、52b、及び52cを、光軸5の反対側で第1偏向電極51a、51b、51cに対向して位置決めする。偏向電極51a、51b、51cの隣接電極間に隙間を設けて、異なる電位を偏向電極51a、51b、及び51cに印加できるようにする。同様に、隣接する第2偏向電極52a、52b、及び52c間に隙間を設けて、異なる電位を第2偏向電極52a、52b、及び52cにも印加できるようにする。
【0036】
偏向電極51及び52用の電圧供給システムは、コントローラ7がライン43を介して供給した電位を電極に選択的に印加するか、又はコントローラ7がライン43を介して供給した電位を第1偏向電極に印加するために、コントローラ7により制御する複数のシャッタ61を備える。同様に、コントローラ7がライン43を介して供給した電位又はコントローラ7がライン43を介して供給した電位を、第2偏向電極52a、52b、及び52cに選択的に供給することができる。
【0037】
図3aは、イオンビームシステム1の第1動作モードを示し、この場合、コントローラ7がイオンエミッタの電位に対して30kVの電位を加速電極13に印加して、ビーム偏向器39を通過するイオンが30keVの運動エネルギーを有し、20mmの全長Lを有する3つの偏向電極対を通過するのに71.4nsを要するようにする。この動作モードでは、スイッチ61は、全部の第1偏向電極51a、51b、及び51cをライン43に接続し、全部の第2偏向電極52a、52b、及び52cをライン43に接続して、図3aに矢印55で示すように偏向電場を全部の偏向電極対51及び52間に発生させるようにする。
【0038】
イオンビームシステム1の第2動作モードを図3bに示す。第2動作モードで加速電極13に印加した電位は、イオンエミッタの電位に対して1keVであるため、ビーム偏向器39を通過するイオンの運動エネルギーは1kevとなる。これらのイオンは、20mmの全長Lを有する偏向電極51、52を通過するのに385nsを要する。しかしながら、スイッチ61の切換位置は、第2動作モードでは、偏向電極51aのみをライン43に電気的に接続し、偏向電極52aのみをライン43に電気的に接続する一方で、残りの偏向電極51b、51c、52b、及び52cをライン43に接続するように設定する。コントローラ7は、ビーム19のイオンの電位又は運動エネルギーに対応する電位をライン43に印加する。この電位は、例えば、ビームを包囲する真空管に印加する電位に相当し得るため、ビーム19のイオンは、実質的な偏向を受けずに偏向電極対51c、52c及び51b、52bを通過する。イオンは、電極51a及び52a間に発生した偏向電場55が発生させる偏向のみを受ける。ビーム偏向器39の全偏向電極の20mmの長さLよりも大幅に小さい、例えば1mm又は2mmという偏向電極51a、52aの短い長さに起因して、イオンは、20nsしか偏向場55内に留まらず、これは、走査線の各個別ピクセルにおけるビームの滞留時間25nsよりも大幅に短い。
【0039】
ビーム偏向器39は、高偏向周波数で低運動エネルギー及び高運動エネルギーの両方を有するイオンの正確な偏向を達成することができる。
【0040】
図2に示す従来のビーム偏向器では、所望の偏向精度に対応する精度を有する高偏向電圧を、高運動エネルギーを有するイオンを偏向させるために印加しなければならず、同じ精度の低偏向電圧を、低運動エネルギーを有するイオンを偏向させるために印加しなければならない。それに従って、発生させる偏向電圧のダイナミックレンジが高くなければならない。
【0041】
図3a及び図3bを参照して説明したビーム偏向器39では、低運動エネルギーイオンの動作モードで電極51a及び52aのみに印加する偏向電圧を比較的高くすることができるため、発生させる偏向電場のダイナミックレンジを従来のビーム偏向器に対して大幅に減らすことができる。したがって、比較的低いダイナミックレンジを提供する比較的単純な電圧供給を用いることができる。
【0042】
図4aは、図3aに示す高運動エネルギーイオン用の第1動作モードでの、ビーム偏向器39内の光軸5に沿った位置zに応じた偏向場の電場強度Eを表すグラフを示す。図4aは、上記式(2)に従って求めることができる場分布の平均位置μ、及び上記式(1)を用いて求めることができる偏向器39内の偏向電場の分布幅σも示す。
【0043】
同様に、図4bは、図3bに示す低運動エネルギーイオン用の第2動作モードでの、ビーム偏向器39の偏向電場の分布を示す。図4bも、同じく上記式(1)及び(2)に従って計算することができる場分布の平均位置μ及び幅σを示す。図4a及び図4bを比較することにより、イオンビーム経路に沿った偏向電場の分布幅σが、高運動エネルギーイオン用の第1動作モードよりも低運動エネルギーイオン用の第2動作モードで小さいことが明らかである。
【0044】
図3a及び図3bを参照して説明した例では、ライン43を介して供給した非偏向電位又はライン43及び43を介して供給した偏向電圧は、偏向電極51及び52にそれぞれ選択的に印加することができる。しかしながら、偏向電極51a、51b、及び51c、並びに52a、52b、及び52cのそれぞれを、別個のラインを介してコントローラ7に接続して、個々の調整可能な電圧を電極に印加できるようにすることも可能である。これにより、イオンビーム経路に沿った偏向電場の分布を調整する可能性及び組み合わせがさらにより広がる。このような構成の一例を図4cに示す。この例で中央偏向電極51b、52bが発生させた偏向場は、下部の偏向電極対51a、52aに発生させた偏向場よりも強度が低い。偏向電極に印加した偏向電圧のこのような個別調整を用いて、ビーム偏向器内の偏向電場の分布幅を実質的に連続的に調整することが可能である。
【0045】
図5は、図1に示すイオンビームシステムと同様の構成を有するイオンビームシステムのさらに別の実施形態を示し、このイオンビームシステムは、第2イオンビームシステム39’をイオンビーム19のビーム経路内でビーム偏向器39の下流に位置決めする点が、図1に示すシステムと主に異なる。ビーム偏向器39及び39’は、イオンビームを第1ビーム偏向器39により光軸5から離れるように偏向させ、第2ビーム偏向器39’により光軸に向けて偏向させることで、ビーム19が光軸5の付近で対物レンズ45を通過し、物体平面47において光軸5から距離dでさらに集束するようにする。この実施形態では、全偏向dについて光軸付近で対物レンズ45を通過させるため、対物レンズ45の収差が物体平面47でのイオンビーム19の集束を著しく損なわせることはない。ビームを逆方向に偏向させる2つの連続した(subsequent)ビーム偏向器を有する偏向系は、本開示では二重偏向器とも称する。
【0046】
図1及び図5を参照して上述したイオンビームシステムで用いることができるビーム偏向器のさらに他の実施形態を、図6〜図10を参照して後述する。これらの実施形態は、数、配置、光軸からの距離、及びビーム偏向器の偏向電極の光軸に対する向きに関して、図3a及び図3bを参照して説明したビーム偏向器の変形形態である。
【0047】
図6に示すビーム偏向器39は、光軸5の一方の側に位置決めした複数の偏向電極51a、51b、51cと、主軸5に関して偏向電極51a、51b、51cに対向して位置決めした偏向電極52a、52b、52cとを備える。偏向電極52、53は、主軸5に沿って異なる長さl、l、lを有し、主軸5から異なる距離a、a、及びaにそれぞれ位置決めする。特に、長さlを有する短い偏向電極51a及び52aは、長さlを有する比較的長い偏向電極51b及び52b内に位置決めし、偏向電極51b及び52bは、長さlを有するさらに長い偏向電極51c及び52c内に再度位置決めする。偏向電極は、イオンビーム19に直交する方向で見た場合に重なり合っているが、ビームに沿って異なる領域をカバーする。イオンビーム19が図6に矢印19で表す向きをとる場合、全偏向電極が最長の偏向電極51c、52cの出口端で重なり合う。しかしながら、ビームの方向を逆にした場合、全電極が最長の電極51c、52cの入口端で重なり合うことも可能である。ビーム方向に沿った偏向電極の配置の多くの他の変形形態が可能である。図7及び図8は、さらに他の例を示し、図7は、ビーム方向で見た場合に対称な構成を示すが、図8は、偏向電極が重なり合わず、主軸からの距離をビーム方向19に増大させて位置決めした構成を示す。主軸5からの電極の距離がビーム方向に増大する構成を、図9にも示すが、この例では、偏向電極は、図3、図6、図7、及び図8を参照して上述した例の場合のように主軸と平行な向きではない。図9に示す例では、偏向電極は、円錐形であり、主軸5に対して斜めの向きである。図8及び図9に示す実施形態でビーム方向を逆にして、主軸からの電極の距離をビーム方向に減少させて位置決めするようにすることも可能である。
【0048】
図10は、4つ以上の第1偏向電極51及び4つ以上の第2偏向電極52を有するビーム偏向器39の実施形態を示す。第1偏向電極51a〜51f及び第2偏向電極52a〜52fは、ビーム方向に3つの異なる長さl、l、及びl、を有し、偏向電極の構成は、ビーム方向に対称であり、長さlを有する短い偏向電極51c、51d、52c、52dをビーム偏向器39の中心に位置決めし、中心から距離が離れるにつれて長さの長い偏向電極を位置決めする。
【0049】
第1偏向電極51a〜51fは、直線に沿って位置決めし、各隣接電極対間に隙間を設ける。しかしながら、複数の第1電極51a〜51fの2つ以上の間に隙間を設けずに、それら2つ以上の電極が共通の一続きの第1偏向電極を提供するようにすることも可能である。複数の第1偏向電極51a〜51fの全部を、複数の第2偏向電極52a〜52fに対向して位置決めした単一の一続きの電極として具現することが、特に可能である。このような一続きの単一の第1偏向電極では、第2偏向電極2a〜2fをビーム方向に分割して異なる偏向電極を供給することができるため、異なる幅の偏向電場を発生させることがなおも可能である。
【0050】
図10に示すビーム偏向器39を用いて、図5を参照して説明したような2つのビーム偏向器又は二重偏向器を提供することも可能である。例えば、偏向電極51d、51e、51f、及び52d、52e、52fは、第1上流偏向器を提供することができ、偏向電極51a、51b、51c、及び52a、52b、52cは、第2下流偏向器を提供することができる。上述の原理を用いて、高エネルギーイオン及び低エネルギーイオンをそれぞれ伴う第1動作モード及び第2動作モード用に、偏向電圧を偏向電極に供給することもできる。例えば、偏向電圧を、例えば30keVの高運動エネルギーイオン用の第1動作モードで全部の偏向電極に印加することができ、偏向電圧を、例えば1keVの運動エネルギーを有するイオン用の第2動作モードで中心の短い偏向電極51c、52c、及び51d、52dのみに印加することができる。
【0051】
二重偏向系のさらなる実施形態を図11に示すが、この場合、偏向電極の構成は図6の実施形態と同様である。2つの偏向器を、図5を参照して説明したようにビーム経路に沿って設ける。ビームを最初に主軸5から離れるように偏向させてから、主軸に向けて偏向させ戻して、ビームが光軸の近くで対物レンズ(図11には図示せず)を通過するように、電圧を偏向電極に供給する。
【0052】
高運動エネルギーイオン用の第1動作モードでは、長さlを有する長い偏向電極51f、52f、51e、52eに逆方向の偏向電圧を供給し、低運動エネルギーイオン用の第2動作モードでは、長さlを有する短い偏向電極51b、52b、及び51a、52aのみに逆方向の偏向電圧を供給する。例えば10keVの中間運動エネルギーを有するイオン用の第3動作モードでは、長さlを有する中間偏向電極51d、52d、及び51c、52cに逆方向の偏向電圧を供給する。
【0053】
図11に示すビーム偏向器の電極は、主軸5から短い距離に位置決めした内側電極が主軸5から長い距離に位置決めした外側電極を遮ることができ、外側電極は依然として有効偏向場を発生させることができるような、重なり合った構成を有する。
【0054】
図12a、図12b、及び図12cは、二重偏向器として動作させることができる偏向電極の配置のさらに別の実施形態の3つの異なる動作モードを示す。この配置は、主軸5と平行な直線に沿って配置した5つの第1偏向電極51a、51b、51c、51d、及び51eと、同じく主軸5と平行な直線に沿って配置した5つの第2偏向電極52a、52b、52c、52d、及び52eとを備える。図12aは、例えば1keVの低運動エネルギーを有するイオンに用いる第1動作モードを示す。短い長さlを有する下方の偏向電極51b、52b、及び51a、52aは、図12aに符号「+」及び「−」で示すように、隣接する電極対及び対向する電極対に逆方向の電圧を印加することにより、二重偏向器として動作させる。上方の偏向電極51c、51d、51e、及び52c、52d、52eは、互いに電気的に接続し、イオンビームに影響を及ぼさないような電位を供給する。
【0055】
図12bは、例えば10keVの中間運動エネルギーを有するイオンに用いる第2動作モードを示す。下方の隣接する第1電極51a及び51bを互いに電気的に接続し、下方の第2偏向電極52a及び52bを互いに電気的に接続して、下流偏向器を形成する一方で、第1偏向電極51c及び51dを互いに接続し、第2偏向電極52c及び52dを互いに接続して、二重偏向器の上流偏向器を形成する。この場合も、印加する偏向電圧は、符号「+」及び「−」で表し、イオンビームに影響を及ぼさない電圧を偏向電極51e及び52eに供給する。
【0056】
図12cは、例えば30keVの高運動エネルギーを有するイオンに用いる第3動作モードを示す。この動作モードでは、下流偏向器を形成するために、第1偏向電極51a、51b、及び51cを互いに接続して符号「−」で示す同じ電圧を供給し、第2偏向電極52a、52b、及び52cを互いに接続して符号「+」で示す電圧を供給する。上流偏向器を形成するために、第1偏向電極51d及び51eを互いに接続して電圧「+」を供給し、第2偏向電極52d及び52eを互いに接続して偏向電圧「−」を供給する。
【0057】
発生させた逆偏向場の中心位置又は平均位置μを、図12a、図12b、及び図12cに示す。平均位置μは、低運動エネルギーを有するイオン用の第1動作モードでは短い距離d1、中間運動エネルギーを有するイオン用の第2動作モードでは中間距離d2、高運動エネルギーを有するイオン用の第3動作モードではそれよりも長い距離d3を有する。これには、偏向場を通過するイオンの移動時間が全運動エネルギーで十分に短いため、偏向電圧の急変時にも逆方向の順次偏向が所望の偏向をもたらすという利点がある。これにより、例えば上流偏向器に印加した信号に対する下流偏向器に印加した信号の遅延を含み得る、所望の偏向からのずれを減らす他の措置の適用が回避される。
【0058】
図12a、図12b、及び図12cで用いる符号「+」及び「−」は、一方又は他方の方向にイオンビームを偏向させるために対向電極に印加する電圧の関係を示す意図がある。しかしながら、これは、符号「+」で表す全電圧が互いに等しいこと、又は符号「−」で表す全電圧が互いに等しいことを要求するものではない。例えば、図12aにおいて電極52aに印加した電圧は、図12aにおいて電極51bに印加した電圧と異なっていてもよい。
【0059】
本発明をその特定の例示的な実施形態を参照して説明したが、多くの代替形態、変更形態、及び変形形態が当業者には明らかとなるであろうことが分かる。したがって、本明細書に記載の本発明の例示的な実施形態は、説明を意図するものであり、決して限定的なものではない。添付の特許請求の範囲に定義するような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビーム経路を有するイオンビームシステムであって、
電圧供給システムと、
イオンビームを発生させるよう構成したイオンビーム源と、
前記イオンビーム経路が通過し、前記電圧供給システムに電気的に接続した、加速電極であって、前記電圧供給システムは、調整可能な加速電圧を該加速電極に供給するよう構成した、加速電極と、
前記イオンビーム経路で前記加速電極の下流に位置決めした少なくとも1つのビーム偏向器と、
を備え、前記少なくとも1つのビーム偏向器は、
少なくとも1つの第1偏向電極と、
前記電圧供給システムに電気的に接続し、前記第1偏向電極に対向して位置決めし、前記イオンビーム経路に沿って分配した、複数の第2偏向電極と、
を備え、前記電圧供給システムは、前記複数の第2偏向電極と対向する前記少なくとも1つの第1偏向電極との間の偏向電場が共通の向きを有するように、異なる調整可能な偏向電圧を前記複数の第2偏向電極に供給するよう構成した、イオンビームシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のイオンビームシステムにおいて、前記電圧供給システムは、第1動作モード及び第2動作モードを有し、前記第1動作モードで前記加速電極に供給する前記加速電圧は、前記第2動作モードで前記加速電極に供給する前記加速電圧よりも大きく、前記電圧供給システムは、前記イオンビーム経路に沿った前記少なくとも1つのビーム偏向器の前記偏向電場の分布が、前記第2の動作モードよりも前記第1の動作モードで大きな幅を有するように、前記偏向電圧を供給するよう構成した、イオンビームシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のイオンビームシステムにおいて、前記電圧供給システムは、第1切換状態及び第2切換状態を有する少なくとも1つのスイッチを備え、前記第1切換状態では、少なくとも2つの第2偏向電極を前記スイッチを介して互いに接続してそれらが同じ共通電位にあるようにし、前記第2切換状態では、前記2つの第2電極を互いに電気的に接続せずそれらが異なる電位を有し得るようにした、イオンビームシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオンビームシステムにおいて、前記イオンビーム経路に沿って分配した前記第2偏向電極は、異なる長さを有する、イオンビームシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のイオンビームシステムにおいて、他の前記第2偏向電極の下流に位置決めした前記第2偏向電極のそれぞれは、前記他の前記第2偏向電極の長さよりも短い長さを有する、イオンビームシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のイオンビームシステムにおいて、前記少なくとも1つのビーム偏向器は、前記イオンビーム経路に沿って分配した複数の第2偏向電極を備える、イオンビームシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のイオンビームシステムにおいて、前記少なくとも1つのビーム偏向器は、同じ数の第1偏向電極及び第2偏向電極を備える、イオンビームシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオンビームシステムにおいて、前記少なくとも1つのビーム偏向器は、複数の第2偏向電極群を備え、各群の前記第2偏向電極は、前記イオンビーム経路に沿って分配し、前記偏向電極群は、前記イオンビーム経路の周りに円周方向に分配した、イオンビームシステム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のイオンビームシステムにおいて、前記加速電極の下流に位置決めし、前記イオンビームを対象物領域に集束させるよう構成した、集束レンズをさらに備える、イオンビームシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のイオンビームシステムにおいて、前記少なくとも1つのイオンビーム偏向器及び前記電圧供給システムは、前記イオンビームを前記対象物領域で0.1μmよりも大きく偏向させることができるよう構成した、イオンビームシステム。
【請求項11】
イオンビームシステムを操作する方法であって、
イオンビームのイオンを第1運動エネルギーに加速させ、前記イオンビームに沿って第1場分布を有する偏向電場を用いて前記イオンビームを第1方向に偏向させるステップと、
続いて、前記イオンビームのイオンを第2運動エネルギーに加速させ、前記イオンビームに沿って第2場分布を有する偏向電場を用いて前記イオンビームを前記第1方向に偏向させるステップと、
を含み、前記第1運動エネルギーは前記第2運動エネルギーよりも大きく、
前記第1場分布の幅は前記第2場分布の幅よりも大きい、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記イオンビームの前記イオンを前記第1運動エネルギーに加速させ、前記イオンビームを前記第1方向に偏向させるステップは、前記イオンビームに沿って第3場分布を有する偏向電場を用いて、前記第1方向とは逆の第2方向に前記イオンを偏向させるステップをさらに含み、
前記イオンビームの前記イオンを前記第2運動エネルギーに加速させ、前記イオンビームを前記第1方向に偏向させるステップは、前記イオンビームに沿って第4場分布を有する偏向電場を用いて、前記第2方向に前記イオンビームを偏向させるステップをさらに含み、
前記第1場分布の前記イオンビーム経路に沿った平均位置と前記第3場分布の前記イオンビーム経路に沿った平均位置との間の距離は、前記第2場分布の前記イオンビーム経路に沿った平均位置と前記第4場分布の前記イオンビーム経路に沿った平均位置との間の距離よりも長い、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【公開番号】特開2012−79700(P2012−79700A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−219560(P2011−219560)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】