イオンビーム注入装置用のプラズマ電子フラッドシステム
プラズマ電子フラッドシステムであって、気体を含むように構成されるハウジングを備え、細長抽出スリットと、カソードと、その中に存在する複数のアノードとを備え、上記細長抽出スリットは、イオン注入装置と直接連絡し、上記カソードは、複数のアノードの間の電位差を通じて上記複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、上記電子は、上記細長抽出スリットを介して、上記イオン注入装置内を移動するリボンイオンビームを中和する際に用いられる電子バンドとして放出される、プラズマ電子フラッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、イオン注入システムに関し、より詳しくは、イオン注入システムにおいて用いられるイオンビームの均一な電荷の中和に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入システムは、集積回路の製造において半導体に不純物をドープするために用いられる。このようなシステムにおいて、イオンソースは、所望のエネルギーのイオンビームの形態でイオンソースから抽出される所望のドーパント要素を、イオン化する。そして、半導体ワークピースにドーパント要素を注入するために、イオンビームは該ワークピースの表面に方向付けられる。ビームのイオンは、ワークピースまたはウェハにおけるトランジスタ素子の組立てと同様に、所望の伝導率の領域を形成するために、ワークピースの表面を貫通する。注入処理は典型的に、残余の気体分子との衝突によるイオンビームの分散を防ぎ、空中の粒子によるワークピースの汚染のリスクを最小化する高真空処理チェンバーにおいて行われる。典型的なイオン注入装置は、イオンビームを生成するためのイオンソースと、磁界を用いるイオンビームを分解する、質量についての質量分析装置を含むビームラインシステムと、イオンビームによって注入が行われる半導体ワークピースを含むターゲットチェンバーとを有する。高エネルギー注入システムのために、加速装置が質量分析装置とターゲットチェンバーとの間に備えられ、イオンを高エネルギーに加速させる。
【0003】
任意のアプリケーションについて所望のイオン注入を達成するために、注入されるイオンのドーズ量およびエネルギーは変化し得る。イオンドーズ量は、任意の半導体物質について注入されるイオンの濃度を制御することにより与えられる。典型的には、高電流注入装置が、高ドーズ量注入に用いられ、一方では、中電流注入装置がより低いドーズ量アプリケーションに用いられる。イオンエネルギーは、半導体装置における接合深さを制御するために用いられ、ビームイオンのエネルギーレベルは、注入されるイオンの深さの程度を判定する。より小さな半導体装置へという絶えることのない傾向において、より低いエネルギーで高いビーム電流を得る際に役立つビームライン構造を必要とする。高ビーム電流は、必要なドーズ量レベルを与え、一方では、より低いエネルギーによって浅い注入が可能となる。さらに、半導体ワークピースにおけるより高い装置密度を求める、絶えることのない傾向において、ワークピースを横切ってスキャンされる注入ビームの均一性を用心して制御することが求められる。
【0004】
ゲート酸化膜によってバルク半導体から絶縁される電極を有する半導体ウェハのイオン注入の期間における効果は、ビームイオンの電荷により絶縁された構成が帯電することである。この効果は、共通して電荷と称するが、絶縁された構成(例えばゲート電極)に印加される電圧が、絶縁体(例えばゲート酸化膜)の絶縁破壊電圧を上回り、そのためゲート酸化膜に結果として損傷が発生する場合、半導体回路にとって不利である。帯電率および電圧が、ビーム電流とともに増加するということは、理解されるであろう。また、絶えず増加するビーム電流を用いるイオン注入は、処理上の困難が増加することを示すことも、理解されるであろう。
【0005】
帯電における問題に歯止めをかけるために、イオンビームの電荷は、注入されるワークピースに逆特性の電荷を与えることによって補償される。正極イオンビームについて、単位時間あたりのイオンの量と等しい量の電子をワークピースに与えることは一般的な技術である。すなわち、イオンビーム電流と、ワークピースへ流れる電流に等しい電子電流と釣り合わせることは、一般的な技術である。これは典型的に、熱イオン放射、二次放射、放電、およびワークピースに直接電子を向けることなど、電子生成処理を通じて電子を生成する装置によってもたらされる。これらの装置は典型的に、設計された電子銃、二次電子フラッドシステム、プラズマ電子フラッドシステム等である。
【0006】
他の絶えることのない傾向としては、直径が300mmであるウェハ等において、半導体ワークピースサイズがより大きくなることである。装置密度がより高いことに伴い、ワークピースのサイズがより大きくなると、個々のワークピースのコストが増加する。この結果、イオンビームに対する注入の均一性および他のパラメータを制御することは、ワークピース解体に関わるコストの削減または低減よりも重要である。イオンビームは、イオンソース抽出開口およびそれに続く成形装置に基づいて成形され、上記装置は例えば、質量分析器と、分解開口部と、4極磁石と、ワークピースまたはウェハを目標としてイオンビームを与えるイオン加速器とを備える。ビームおよび/または目標ワークピースは、ワークピースのイオンビームスキャニングに影響を及ぼすために、互いに対して平行移動される。
【0007】
イオンビームにおけるビーム引き伸ばしを制限するために用いられる他の技術は、イオンビームの中に放出される電子を用いる均一電荷中和である。電荷減少について、放電装置は典型的に、イオン化処理を用いて電子を生成することと、それらの電子を活性化することと、それらをガスと衝突させることとを含む。上記活性化は、DC電界(例えば、DCアーク放電により生じる)を用いて、または、時間的に変化する電界(例えば、ACアーク放電、RF放電、マイクロ波放電等により生じる)を用いて行われ得る。用いられる放電の種類は、所望される電気的特性(例えば、密度分布、達成される密度等)に基づくことが多い。さらに、マイクロ波放電およびRF放電(例えば、RFプラズマ電子フラッド)は、大容量に規模が増加され得るが、維持をしようとするとより複雑かつ高価になり、回路とコスト的に高周波数の発電とを釣り合わせることが要求される。
【0008】
図1〜図3、図4A、図4B,および図5〜図7は、米国特許公報2006/0113492に記載されている従来技術のウェハ電荷補償装置を示す。この例では、この従来技術の装置は、帯電される粒子ビームを用いるビーム処理システムにおける単一ウェハイオン注入システムに特に適用される。図1および図2はそれぞれ平面図と側面図であり、単一ウェハイオン注入システムの模式的構造を示す。
【0009】
図示する従来技術のイオン注入システムは、イオンソースユニット11(イオンソースおよび抽出電極を含む)と、質量分析磁石装置12と、ビーム形成器13と、スキャンニング用のデフレクター14と、P(すなわち、平行化)レンズ15と、加速/減速電極16と、偏向エネルギーフィルター17と、処理チェンバー18とを備える。
【0010】
この先行技術のイオン注入システムでは、イオンソースユニット11において生成されるイオンは、イオンビームとして(以下、“ビーム”と称する)抽出電極(図示せず)を介して抽出される。抽出されたビームは、必要なイオン種のみが注入に際して選択されるように、質量分析磁石装置12において質量分析にかけられる。必要なイオン種のみからなるビームは、ビーム形成器13によって断面において形成される。ビーム形成器13は、Q(四分円または四極)レンズ等によって形成される。形成された断面を有するビームは、スキャニング用のデフレクター14によって、図1の上側/下側方向に偏向される。デフレクター14は、デフレクター14の付近の上流および下流にそれぞれ配置される、少なくとも1つの遮蔽上流電極14−1と、少なくとも1つの下流遮蔽電極14−2とを有する。偏向スキャン電極は、この実施形態においてスキャンニング用のデフレクター14として用いられるが、偏向スキャン磁石はそれらの代わりに用いられてもよい。
【0011】
スキャンニング用のデフレクター14によって偏向されるビームは、電極または磁石で形成されるP−レンズ15によって平行化され、0度の偏向角度の軸に対して平行となる。図1では、デフレクター14による相互に揺れるビームによるスキャンレンジは、太い黒線および二重破線で示される。P−レンズ15からのビームは、1つ以上の加速/減速電極16によって加速または減速され、偏向エネルギーフィルター17に送られる。偏向エネルギーフィルター17は、ビームのエネルギー分析を行い、必要なエネルギーを有するイオン種のみを選択する。図2に示すように、選択されたイオン種のみを、偏向エネルギーフィルター17において、わずかに下方に偏向する。選択されたイオン種のみからなるビームは、処理チェンバー18に導入される放射予定物体であるウェハ19に注入される。ワークピース19から逸脱するビームは、エネルギーが消費されるようにチェンバー18に設けられるビームストッパー18−1に入射する。ビームの輸送通路は全て、高真空状態で維持される。
【0012】
図1では、ウェハ19の隣に示される矢印は、ビームがこれらの矢印の方向にスキャニングされるよう偏向されることを示し、一方、図2では、ウェハ19の隣に示される矢印は、ウェハ19がこれらの矢印の方向に移動させられることを示す。特に、ビームがスキャンニングのために往復して、例えばx軸方向に偏向されると仮定すると、ウェハ19は、駆動機構(図示せず)によって駆動され、x軸方向に垂直なy軸方向に往復する。これによって、ウェハ19の全表面にわたってビームを用いて放射することが可能になる。
【0013】
上記のような方法で、図1および図2に示す従来技術のイオン注入システムにおいて、1つの方向に長い楕円形の断面、または長円形の連続する断面を有するビームは、円形の断面、楕円形の断面、または長円形の断面を有するビームを偏向することによって得られ、そして、後段エネルギー分析器として機能する偏向エネルギーフィルターを用いることによって、スキャン領域の任意の位置における均一な角度で曲げられ、最終的にウェハ19の中に注入され得る。
【0014】
従来技術に係る電荷補償装置30は、デフレクター14の下流側に設けられ、より詳しくは、偏向エネルギーフィルター17の下流側に設けられる。電荷補償装置はまた、プラズマシャワーと称される。電荷補償装置30は、図1および図2の処理チェンバー18の外側に配置されるが、処理チェンバー18の内側に配置されてもよい。
【0015】
従来技術の図3、図4A,および図4Bを参照すると、従来技術のイオンソースまたは電荷補償装置30は、フィラメント31を有する第1アークチェンバー34と、ガス導入ポート32と、1つ以上の第1抽出ホール33と、第2アークチエンバー35とを備える。第2アークチェンバー35は、第2抽出穴36を有し、チューブ状の、または中空円筒状の、または長方形の部材(フラッドボックス)40であって、そのため、第2抽出穴36は中空円筒状の、または長方形の部材40の内側空間50に晒され、スキャン領域における相互の揺れるビームが面する。中空円筒状の、または長方形の部材40は、その入口側における処理チェンバー(図示せず)の一部であってもよく、または、処理チェンバーの中に配置されてもよい。いずれにしても、第2アークチェンバー35は、中空円筒状の、または長方形の部材40のだいたい全幅にわたって伸びる長さを有する。
【0016】
図5では、記号SAは、中空円筒状の、または長方形の部材40におけるビームによるスキャンレンジまたは領域50(偏向レンジまたは領域)を示す。この実施形態では、第2抽出穴36は、スキャン領域SAにおける第2アークチェンバー35の長さの方向に一定の間隔で配置される複数の穴36によって実現される。
【0017】
または、第2抽出穴36は、スキャン領域SAにわたって伸びる単一のスリットによって実現し得る。複数の穴の場合、または単一のスリットの場合、開口部の分布または第2抽出穴36の形状は、第2アークチェンバー35における第2プラズマ密度分布に対応するように構成される。すなわち、開口部の密度は、プラズマ密度が低い部分においては高く、プラズマ密度が高い部分では開口部の密度は低いのが望ましい。具体的には、第2抽出穴36が複数の穴で実現されるとき、穴の間隔は、プラズマ密度が低い部分では短くされ、プラズマ密度が高い箇所では広げられる。他方では、第2抽出穴36が単一のスリットによって実現されるとき、プラズマ密度が低い部分ではスリットの幅が広げられ、プラズマ密度が高い部分ではスリットの幅は狭められる。
【0018】
第1アークチェンバー34は、第2アークチェンバー35の壁に取り付けられ、そのため、第1抽出穴33は、第2アークチェンバー35の長さ方向における中間部分付近の位置において第2アークチェンバー35に晒されるか、開放される。第1および第2アークチェンバー34および35の間の境界において、第1抽出穴33に対応する位置において穴を有する第1抽出電極37が設けられる。しかし、第1抽出電極37は、省略されてもよい。この場合、後述する第2アーク電圧は、第2アークチェンバー35において第2プラズマを生成するために、第1および第2アークチェンバー34および35の間に供給される。
【0019】
複数の永久磁石38は、第1アークチエンバー34および第2抽出穴36がそれぞれ設けられる領域を除いて、第2アークチェンバー35の壁面に配置される。すなわち、永久磁石38は、第2アークチェンバー35の上方および下方壁面のそれぞれ、左右壁面、および両面端壁面において一定の間隔で配置される。永久磁石38は、第2アークチェンバー35において、限定磁界(限定のための尖点磁界)を形成する役割を果たす。このため、全ての永久磁石38は、それらの磁極が第2アークチェンバー35の内側に向けられ、隣接する永久磁石38の磁極が互いに逆の状態で配置される。図5では、限定磁界を形成する磁気流束を矢印によって部分的に示す。
【0020】
図6および図7は、第2アークチェンバー35の両面端壁面の1つにおける永久磁石38の配置を示す。本明細書では、端壁面の形状が正方形なので、異なるサイズを有し複数の、正方形フレーム形状永久磁石38が、同心円状に配置され、正方形永久磁石38は、最も内側のフレーム形状永久磁石38に配置される。これらの永久磁石38はまた、それらの磁極が第2アークチェンバー35の内側に向けられ、隣接する永久磁石38の磁極が互いに逆になる状態で配置される。永久磁石38は、三角形状を含め、他の多角形状を有してもよい。端壁面の形状が円形である場合、永久磁石38は環状であってもよい。
【0021】
なお、第1および第2アークチェンバー34および35は、アークチェンバー支持部39(図3)によって支持される。電力は、アークチェンバー支持部39に取り付けられるフィラメントフィード41を介してフィラメント31に供給される。図1および図2では、電荷補償装置30は、ビームがわずかに下方に偏向される位置に配置される。一方、図5では、中空円筒状の、または長方形の部材40が水平状態で示されている。電荷補償装置30を図1および図2に示すように配置するために、装置全体が、ビームの偏向角度を適合させるために傾けられる。
【0022】
アルゴン等の気体は、気体導入ポート32を介して第1アークチェンバー34に導入される。フィラメント31を高温に熱し、熱イオン放射を介して電子を生成するために、電力は、フィラメント電力供給部42から、第1アークチェンバー34に配置されたフィラメント31へ供給される。熱イオン的に放出される電子は、第1アーク電力供給部43から、フィラメント31と第1アークチェンバー34との間に供給される第1アーク電圧によって加速される。加速される電子は、導入された気体と衝突し、第1プラズマが第1アークチェンバー34において生成される。第1アークチェンバー34は、1つ以上の第1抽出穴33を備え、第1抽出電極37はその外側に配置される。第1抽出電力供給部44から、第1抽出電極37および第1アークチェンバー34の間に第1抽出電圧を供給することによって、第1電子が第1アークチェンバー34から抽出される。
【0023】
第2アークチェンバー35は、スキャン領域SAと対応する長さを有している。スキャン領域SAには、第1アークチェンバー34においてイオン化することなく第1抽出穴33から放出された中性気体と、第1アークチェンバー34から抽出された第1電子とが導入される。フィラメント31の材料が蒸発等により散乱させなければならない場合においても、第1抽出穴33のサイズが小さいので、散乱させられた物質は、第1アークチェンバー34の中に留まり、そのため第2アークチェンバー35に導入されない。
【0024】
第2アークチェンバー35に導入された第1電子は、第2アーク電力供給部45から、第2アークチェンバー35および第1抽出電極37の間に供給される第2アーク電圧によって加速される。加速された電子は、第1アークチェンバー34から導入された気体と衝突し、密度の高い第2プラズマが第2アークチェンバー35において生成される。
【0025】
複数の永久磁石38は、限定磁界を形成するように第2アークチェンバー35の壁面に配置されるので、それらの壁面において電子損失を抑制することができ、第2アークチェンバー35におけるスキャン方向におけるプラズマ均一性を向上することができる。
【0026】
永久磁石38の温度をキュリー温度よりも下に維持するために、すなわち、永久磁石の熱消磁を防ぐために、第2アークチェンバー35は水冷却等によって冷却される。第2アークチェンバー35は、ビーム通過領域に面する位置において第2抽出穴36を備える。この実施形態では、上記のように、第2抽出穴36は、ビームのスキャン領域SAに対応するように配置される複数の穴の形態を有する。または、第2抽出穴36は、上記のスキャン領域SAにわたって伸びる単一のスリットの形態を有する開口部によって実現され得る。第2アークチェンバー35は、第2抽出穴36以外からの気体の漏れを防ぐように構成され、これによって、プラズマ生成効率を向上させるよう第2アークチェンバー35内の気体圧力の減少を防ぐ。
【0027】
ビームが第2抽出穴36の近くを通過するとき、第2電子はビームの正極電位によって第2アークチェンバー35から抽出される。抽出された第2電子は、第1および第2アークチェンバー34および35においてイオン化を行うことなく第2抽出穴36から放出された中性気体と衝突する。その結果、プラズマ(プラズマブリッジ)が、ビーム(相互に揺れるビーム)と第2アークチェンバー35(正確には第2抽出穴36)との間に形成される。第2アークチェンバー35における第2電子は、プラズマブリッジを介してビームに独立して供給される。第2抽出穴36が、スキャン領域SAに対応する領域に存在するので、ビームの位置がスキャンニングのための偏向によって移動しても、プラズマブリッジは、ビームと第2アークチェンバー35との間に絶えず形成されており、これによって独立した電子供給を達成する。第2アークチェンバー35は、第2抽出電力供給部46からの接地電位との間の第2抽出電圧が供給されるように構成される。この構成によると、ビームに供給される電子の、量及びエネルギーを調節することができる。
【0028】
第2アーク電力供給部45と第2抽出電力供給部46との間の電流値(アーク電流)を測定してもよく、一定のアーク電流を達成するための電力供給を制御するようにフィードバックされる。
【0029】
第2抽出穴36および、周辺のビームによるスキャン領域は、中空円筒状の、または長方形の部材40で覆われる。第2アークチェンバー35から抽出され、ウェハに供給される第2電子の量の調節を可能にするように、中空円筒状の、または長方形の部材40の電位は、第2アークチェンバー35の電位とは異なって設定されてもよい、または、単純な構造を達成するために第2アークチェンバー35の電位と等しく設定されてもよい。
【0030】
中空円筒状の、または長方形の部材40の内側壁50(ビームと接触する面)はのこぎり状に形成され、これによって内側壁の表面全体における絶縁汚れの付着を防ぐ。また、中空円筒状の、または長方形の部材40のビーム上流側において、バイアス電力供給部47から負極電圧が印加され得るバイアス電極48が配置される。これによって、ビーム上流方向の電子の散乱を防ぐことが可能になり、電子を下流側に(ウェハに)効率的に搬送することが可能となる。中空円筒状の、または長方形の部材40は、磁気遮蔽部をさらに備え、これによって外部磁界、例えば、偏向エネルギーフィルター17からの磁界を遮蔽する。これは、外部磁界が強いときにその磁界の線の周りに電子が密集し、ウェハに届く前に電子が消失してしまうからである。
【0031】
上記構造によって、第2抽出穴36は、スキャン領域SAに対応する領域に存在する。したがって、プラズマが第2アークチェンバー35において生成されるとき、ビームの位置がスキャンニングのための偏向によって移動する場合でも、プラズマブリッジがビームと第2アークチェンバー35との間に絶えず形成され、安定した電子供給を行う。さらに、限定磁界が第2アークチェンバー35内で生成されるので、第2アークチェンバー35の内側壁表面における電子の損失が低減される。このため、プラズマ生成効率を向上させることができ、第2アークチェンバー35内のプラズマ均一性を向上させることができる。これによって、幾分かビームのスキャン位置に関係なく、ビームに十分電子を供給することが可能となる。
【0032】
しかしながら、このプラズマソース構成は、分散に依存し、第2アークチェンバーにおけるプラズマの等しいプラズマ特性を保証するものではない。すなわち、磁石の使用および構成、並びに詳細な設計によって、比較的コストが高い。したがって、帯電防止および向上した均一電荷中和装置と、コストは低いが組み立てるのが困難な半導体ワークピースの注入に均一なイオンビームが用いられ得る方法とを提供するのが望ましい。
【発明の概要】
【0033】
以下では、本発明の1つ以上の態様の基本的理解を促すために、単純化した概要を説明する。この概要は、本発明の広範な概要を説明するものではなく、本発明の鍵となる要素または重要な要素を特定する意図もなく、それらの範囲を線引きする意図もない。むしろ、本概要の主要目的は、後述するより詳細な説明の前置きとして単純な形式で本発明のいくつかの概念を説明することである。本発明は、イオンビームを用いてワークピースに注入を施すための、方法および装置に関し、それらによって上記方法と、従来技術に関連付けられる他の欠点が克服または緩和され得る。特に、本発明は注入システムを提供し、該注入システムにおいて、時間平均リボンビームにスキャンされるリボンビームまたはペンシルビーム等の相対的に広いイオンビームは、イオンソースによって生成され、中和されて帯電される。
【0034】
本発明の一態様によると、プラズマ電子フラッドシステムであって、気体を含むように構成される放電チェンバーを有するハウジングであって、放電チェンバーの中に存在する、細長抽出スリット、カソード、および複数のアノードを有するハウジングを備え、上記細長抽出スリットは、イオン注入システムと直接連絡し、上記カソードフィラメントは、複数のアノードの間の電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子を放出する。放射された電子の一部は、イオン注入システム内を移動するイオンビームを中和する際に用いられる電子のバンドとして、細長抽出スリットを介して放出される。
【0035】
本発明の他の構成では、縦方向の通路に沿って相対的に広いイオンビームを生成するイオンソースと、質量に応じて変化する軌道においてビームのイオンを偏向するために上記通路にわたって磁界を形成する質量分析器とを備えるイオン注入システムを含む。端部ステーションは、ビームラインシステムから質量分析されたイオンビームを受け取り、質量分析されたイオンビームを用いて注入のための上記通路に沿って少なくとも1つのワークピースを支持する。上記ハウジング内の放電チェンバーは、複数のアノードと、カソードと、細長抽出スリットとを有し、上記カソードは、複数のアノードの間の電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子を放出する。上記細長抽出スリットは、細長バンドとして上記電子の一部をイオンビームの中に放出する。
【0036】
本発明のさらに他の態様は、電子をリボンイオンビームに導入する方法であって、放電チェンバー内でカソードフィラメントに電圧を加える工程と、上記カソードと、放電チェンバーハウジングと、アノードとをバイアスする工程と、細長抽出スリットを介して電子をリボンイオンビームに放出する工程とを含む。
【0037】
本発明の他の態様は、イオン注入システムにおいて、静的リボンイオンビームまたは時間平均リボンイオンビームを用いてワークピースに注入を施す方法であって、リボンイオンビームを生成する工程と、上記リボンイオンビームを質量分析する工程とを含む。上記方法はさらに、電子の細長バンドをリボンイオンビームに供給する工程と、少なくとも1つのワークピースに、上記リボンイオンビームからのイオンを注入するために、上記質量分析されたリボンイオンビームを上記少なくとも1つのワークピースに供給する工程とを含む。
【0038】
本発明の他の構成では、イオンビームを用いてワークピースに注入を施すイオン注入システムであって、リボンイオンビームを生成するための手段と、上記リボンイオンビームを質量分析するための手段と、電子の細長バンドを上記質量分析されたリボンイオンビームに供給するための手段と、ワークピースに上記リボンイオンビームからのイオンを注入するために、上記質量分析されたリボンイオンビームを上記ワークピースに供給するための手段とを備えるイオン注入システムを含む。
【0039】
上記および関連する目的を達成するために、以下の説明および添付の図面は、本発明におけるある解説的態様および構成を詳細に記載する。これらは、本発明の原理が用いられ得る様々な方法にうちのいくつかを示している。本発明の他の態様、利点、および新規な特徴は、図面とともに考察するとき、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】イオン注入システムの模式的構造を示す、従来技術の平面図および従来技術の側面図である。
【図2】イオン注入システムの模式的構造を示す、従来技術の平面図および従来技術の側面図である。
【図3】電荷補償装置の構造を説明するための従来技術の垂直断面図である。
【図4A】図3に示される装置における、従来技術の断面透視図である。
【図4B】図3に示される装置における、従来技術の部分透視図である。
【図5】図3に示される第2アークチェンバーの両端部表面のうちの1つにおいて永久磁石を形成する限定磁界の構成を示す従来技術の図である。
【図6】図5に示される第2アークチェンバーの両端部表面のうちの1つにおいて永久磁石を形成する限定磁界の構成を示す従来技術の図である。
【図7】図3に示される第2アークチェンバーの上方、下方、左、および右壁表面において永久磁石を形成する限定磁界の他の構成を示す従来技術の図である。
【図8】本発明の一態様に係る、プラズマ電子フラッドシステム(PEF)を示す部分透視分解図である。
【図9A】本発明のさらに他の実施形態に係る、図8に示されるハウジングにおける断面を示す図である。
【図9B】本発明の他の態様に係るリボンイオンビームへ、図8の細長抽出スリットを介して電子が流れ込む状態をさらに示す部分透視図である。
【図10】本発明の他の使用を含む方法をさらに示す模式図である。
【図11】本発明の他の方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面を参照して本発明をここで説明するが、同様の参照番号は、本明細書を通して同様の要素を説明するために用いられる。本発明は、半導体ワークピース等のワークピースにイオン注入のためのプラズマ電子フラッドイオンビームを供給するための方法およびシステムを提供する。本発明における1つの構成を、図面を参照して以下に解説し説明する。解説および以下の説明はそもそも例示的なものであり、限定的なものではない。したがって、解説するシステムおよび方法の変形、また、本明細書において解説されるそれらの事項から離れた他の構成も、本発明および添付の請求項の範囲内と見なされることは分かるであろう。
【0042】
まず図8を参照すると、本発明の分解部分図を示すが、この発明は、例えば放電チェンバー816内のバルブ(図示せず)によって導入される気体を含むように構成されるハウジング802を備えるプラズマ電子フラッドシステム(PEF)800を提供する。PEFシステム800のハウジング802は、任意の所望の押し出し長さ824、例えば、300または450ミリメートルまで押し出し可能な所望のカットアウト(例えば、内径822)を有する、818と820とからなる寸法の断面を有する。ハウジング802はまた、機械加工が可能である、レーザーで切断が可能であるなどということを理解しなければならない。
【0043】
プラズマ電子フラッドシステム800は、放電チェンバーの中に存在する、細長抽出スリット806、カソードアセンブリ808、複数のアノード810、および細長カソードフィラメント814とをさらに備える。この実施形態では、細長抽出スリット806はスリットプレート812の中に形成され、細長抽出スリット806は、イオン注入装置(図示せず)と直接連絡し得る。カソードアセンブリ808は、複数のアノードの間の電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子をカソードフィラメント814から放出するように電圧を加えられる。上記電子は、およそ、イオン注入装置内を移動するリボンイオンビームを中和する際に用いられる電子バンドとして、細長抽出スリット806を介して放出される。本発明者は、このように電子を導入することによって、電子がペンシルイオンビーム、ワイドイオンビーム、またはリボンイオンビームに到達するための等しい通路長さが存在し、独特の通路長さに対して、ポイント−ソースタイプ技術があり、電荷中和は、例えばイオンビームの幅にわたってより均一であることを見出した。
【0044】
放電チェンバー816とリボンイオンビームとの内側における汚染を最小化するために、カソードフィラメント814および複数のアノード810はグラファイトを含み得る。この技術において共通に用いられるタングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、および他の耐熱材料も用いられ得ることは理解できるであろう。
【0045】
一実施形態では、図8および図9Aを参照すると、反射性形状、すなわち、相対的に小さいアノード領域を、アノード810に向けて加速される電子がアノード810を遮る傾向が低くなるように用いて、複数のアノード810(図8および図9A)を構成している。カソードフィラメント814からアノード810への主要電子の搬送時間は増加され、これによって電子中性衝突の数が増え、そのため、電子生成と、プラズマの放電密度とが増加する。これらはプラズマ電子フラッドシステム800を、放電チェンバー816内において低圧力にて作動させる。放電チェンバー816は、大きな直径822(例えば、100mm以上)を有し得、カソードフィラメント814は、例えば0.9mmの直径を有する。カソードフィラメント814の電流は、40Aに設定でき、その結果、カソードフィラメント814の温度は約2500℃であり、相対的に低い自己磁化(例えば、100ガウスよりも低い)を有する。3つのアノード810が存在し得、例えばそれぞれは、3mmの直径を有し、そのため、アノード810は反射性形状を生成するには十分小さい直径を有し、さらに、プラズマ放電の安定性を確実にするには十分大きい。上記気体は例えばキセノンを含み、プラズマ電子フラッドシステム100の放電チェンバー116内における分圧が、約5×10−5から1×10−4Torrである状態にて作動する。キセノンの代りに、上記気体はまた、アルゴンを含み得る。例えばハウジング102と同じ静電位のカソード810を用いて、主要電位は静電的に限定され、これによって次に、プラズマ閉じ込めおよびプラズマ密度の両方を増加する。
【0046】
プラズマ電子フラッドシステム800は、タウンゼント放電モードにおいて低い圧力にてDC放電を行うものとして作動し得、進行中の放電を維持するために、電子はカソードフィラメント814から注入される。これにより、キセノンガスの圧力は低く(例えば、5e−5Torrより低く)維持され得、例えば、これによってシステムにおけるキセノンの分圧を低下させることが可能であり、イオンビームがより高い圧力において(例えば、5e−6Torrより高い圧力において)受ける電荷交換の不利な効果のいくつかを最小化することができる。アノード810を電気的に正極にバイアスし、カソードフィラメント814およびハウジング802を電気的に接地することによって、電子エネルギーフィルタリングを実現し、これにより、衝突する、または熱中性子化される電子は、例えば細長抽出スリット開口部806を介して放電チェンバー816から出ることができる。
【0047】
ここで図9B(特に倍率を基に描いているわけではない)を参照すると、例えば図示するように電子細長抽出スリット806がイオンビーム802の伝搬方向を横切るようにハウジング802(図1)は構成することができ、抽出された電子の細長いバンドは、図9Bに示されるように、リボンイオンビームの長さを横断するリボンイオンビームの中に配される。これによって、電荷中和の均一性が確実にされ、電子902が、スリットプレート812における細長抽出スリット806にずっと沿ってプラズマ電子フラッドシステム(PEF)950から出ることができる。スリットプレート812における細長抽出スリット806が、例えば図示されるよりも、PEF900(図9)における不可欠な部分であり得ることが分かるであろう。スリット916の長さは、例えばイオンビームの均一性を助長するために、リボンイオンビーム904の幅910と適合するようにすることができる。さらに、スリット916の長さは、例えば当業者に周知のマスキングまたは他の技術を用いて、ウェハサイズに基づいて、自動的に調節可能にすることができる。
【0048】
図10を参照すると、本発明は、細長(例えば、ペンシルイオンビーム、リボン状等の)イオンビーム1004を縦方向のビーム路に沿って生成するためのイオンソース1002を含むイオン注入システム1000を提供する。イオンビームソース1002は、関連する電源1008および抽出装置1010を有するプラズマソース1006を有し、それらは、例えば縦横比を有する細長リボンイオンビーム1004を抽出する任意の設計であってもよい。以下の例は、より十分に本発明を説明するために提供されるが、その範囲を限定するように構成されているものではない。例えば、プラズマソース1006は、抽出装置1010において高い縦横比の抽出スリットを用いてリボンビーム1004を抽出し得る、比較的長いプラズマ閉じ込めチェンバーを備えてもよい。リボンビーム1004は、第1縦横比を規定する横断幅および横断高さを有し、横断幅は、横断高さよりもはるかに大きい。例えば、プラズマソース1006から抽出される細長イオンビーム1004の幅は、例えば約400mmであり得、高さは例えば10mmであり得る。リボンイオンビームおよび他の種類のイオンビームを形成することは、当業者にとっては周知である。
【0049】
そこからビーム1004を受け取るためのイオンソース1002の下流に、ビームラインシステム1012が設けられ、ビームラインシステム1012は、ビーム1004を受け取るための通路に沿って位置する質量分析器1014を含む。質量分析器1014は、第2縦横比と、第1縦横比に略同様のプロフィールとを有し、質量分析された細長のイオンビーム1004を提供するために、質量(例えば、質量比に対する電荷)に基づいて変化する軌道におけるイオンビーム1004からのイオンを偏向するように、通路にわたる磁界を与えるように作動する。端部ステーション1022は、システム1000の中に設けられ、ビームラインシステム1012から質量分析されたイオンビーム1004を受け取り、質量分析されたイオンビーム1004を用いて注入用の通路に沿う半導体ワークピース等の1つ以上のワークピースを支持する。端部ステーション1022は、互いに相対する、1つ以上の目標ワークピースおよびイオンビーム1004を、平行移動するまたはスキャニングするために目標スキャニングシステム1020を含む。目標スキャニングシステム1020は、一括注入または連続注入を行い得る。
【0050】
本発明の他の態様によると、図11は、プラズマチェンバー内で生成される複数の電子を、プラズマフラッド電子システム100(図1)と関連されるリボンイオンビームに伝達するための例示的方法1100を示す。例えば図1に示されるシステム100は、図11の方法1100に基づいて操作され得る。プラズマフラッド電子システム100(図1)内で行われる動作は、同時に(平行して)または連続して行われ得るということを注意しなければならない。また、例示的方法が一連の動作または事象として本明細書に示され説明される一方、本発明に基づいて、いくつかの工程が異なる順序で行われるとき、および/または、本明細書に示され説明されるものとは別個の他の工程が同時に行われるとき、本発明はそのような動作または事象における説明される順序によって限定されないことは理解できるであろう。さらに、必ずしも説明される全ての工程が、本発明に基づいて方法を実行するために必要なわけではない。さらに、図示されない他のシステムとの関連し、かつ、本明細書に示され説明されるシステム100と関連して上記方法が実行され得ることは、理解されるであろう。
【0051】
図11に示されるように、方法1100は1102において開始し、当業者によって周知の技術を用いてリボンイオンビームを生成する。本発明は、縦方向のビーム路に沿って、細長(例えば、リボン状等の)イオンビーム1004を(図10)生成するためのイオンソース1002(図10)を提供する。イオンビームソース1002(図10)は、例えば大きな縦横比の細長リボンイオンビーム1004を抽出する任意の設計がなされており、関連する電源1008(図10)および抽出装置1010(図10)を有するプラズマソース1006を備える。上記のように、より完全に本発明を示すために以下の例を提示するが、それらの範囲に限定するものと解釈してはならない。例えば、プラズマソース1006は、抽出装置1010における縦横比が高い抽出スリットを用いて、リボンイオンビーム1004が抽出され得る、相対的に長いプラズマ閉じ込めチェンバーを有する。リボンビーム1004は、第1縦横比を規定する横断幅および横断高さを備え、上記横断幅は、横断高さよりもはるかに大きい。例えば、プラズマソース1006から抽出される細長イオンビーム1004の幅が約400mmである場合、上記高さは、例えば10mmであり得る。
【0052】
1104において、リボンビームは質量分析され、所望の電荷−質量比のイオンを選択する。イオンビームを質量分解するための質量分析装置は、磁界を用いる。そこの電荷(例えば、電荷−質量比)に相対するイオンの質量は、静電界または磁界によって軸方向におよび横方向にイオンが加速される程度に影響をおよぼす。よって、半導体ウェハまたは他の目標における所望の領域に到達するビームは、高純度にすることができる。それは、好ましくない分子量のイオンが、ビームから離れるように偏向され、所望の物質以外の注入を避けることができるからである。質量分析器は、電荷−質量比が異なるイオンを効果的に分離するアーチ形の通路における磁気偏向を介するイオンビームの様々なイオンを偏向するために、双極性磁界を生成する質量分析磁石を用い得る。質量分析技術は、当業者には周知である。
【0053】
1106では続いて、プラズマフラッド電子システム800(図8)の放電チェンバー内のカソードと、複数のアノードとに電圧が加えられる。カソード810の電流は40Aに設定され、その結果、カソード810の温度は約2500℃であり、相対的に低い自己磁化(例えば、100ガウスよりも低い)を有する。複数のアノード810(例えば3つ)のそれぞれは、例えば3mmの直径を有する。プラズマチェンバー816内の気体は、例えばキセノンを含み得、プラズマ電子フラッドシステム800(図8)のプラズマチェンバー116(図1)内で、5×10−5Torrから1×10−4Torrにて作動し得る。
【0054】
コンポーネント810、802、および814は、放電プラズマの静電制限と、抽出スリット806を介して出る電子のエネルギーフィルタリングを行うために、静電的にバイアスされ得る。例えば、カソード810(図1)および放電チェンバーハウジング802は接地電位にバイアスされ得、アノード810(図1)は100ボルトにバイアスされ得る。カソード810(図8)を出る電子は、ゼロ(0)電子−ボルト初期運動エネルギーに近くなり、それがアノード110(図1)に到達するとき、運動エネルギー(100eV)における100電子−ボルトを得ているであろう。電子がアノードへの通路における原子と衝突する場合、それはせいぜい100eVの運動エネルギー、プラス、例えば1eVの原子のエネルギーを獲得し得る。これによって、トータルの最大エネルギー101eVを有することになる。このような電子、または、100eVよりも大きい総エネルギーを獲得する任意の電子は、100eVのエネルギーを失い、例えば典型的に1eVの運動エネルギーを残して、抽出スリットを介して放電チェンバーを出ることができる。1106では、典型的に衝突する、熱中性子化される、または二次電子と称されるこのような多くの電子が、この状態で、リボンイオンビーム202(図2)に届けられる。衝突する電子は特に、ワークピースにおける注入の前にイオンビーム202を中和させるためには有効である。放電チェンバー内で生成される電子は、細長スリットを通過する電子の細長バンドとして、リボンイオンビームに導入され得る。
【0055】
アノードとカソードとの両方は、スパッタリングおよび蒸着されることが可能なので、カソードフィラメント814はグラファイトを含み得、タングステン(W)とモリブデン(MO)の両方、およびタンタル(Ta)は例えば任意の材料である。これによって、カソード物質からのウェハ汚染のリスクは最小化することができる。アノード810は、シリコンウェハへの汚染リスクがほとんどないグラファイトまたはアルミニウム(Al)、またはモリブデン(Mo)およびタングステン(W)等を含み得る。
【0056】
1108では、質量分析されたリボンイオンビームは、少なくとも1つのワークピースw/イオンを注入するために、少なくとも1つのワークピースに与えられ、上記方法は終了する。
【0057】
本発明を特定の態様と構成について示し、説明してきたが、本明細書および添付の図面を読んで理解すれば、当業者は等価の代替物や変更が思いつくであろう。特に、上記構成要素(アセンブリー、装置、回路、システム等)によって行われる様々な機能について、このような構成要素を説明するために用いられる用語(“手段”で表されるものも含む)は、特に記載しない限り、本発明において示される例示的構成における機能を果たす開示の構造に構造的に等しくなくても、開示の構成要素(すなわち、機能的に等価なもの)における特定の機能を果たすいかなる構成要素にも対応するものとして意図される。この点では、本発明の様々な方法における工程を行うためのコンピュータ実施可能な指示を有するコンピュータ読み取り可能な媒体を、本発明が含むということも認識されるであろう。さらに、いくつかの構成のうちのただ1つに対して本発明の特定の特徴が開示される一方、このような特徴は、いかなる任意の、または特定の応用について所望され、有利であるように、他の構成における1つ以上の他の特徴と組み合わされ得る。さらに、“含む”、“有する”、“用いる”およびその変形である用語が詳細な説明または請求項において用いられる程度について、これらの用語は“備える”という用語と同じように包括的であることを意図している。
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、イオン注入システムに関し、より詳しくは、イオン注入システムにおいて用いられるイオンビームの均一な電荷の中和に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入システムは、集積回路の製造において半導体に不純物をドープするために用いられる。このようなシステムにおいて、イオンソースは、所望のエネルギーのイオンビームの形態でイオンソースから抽出される所望のドーパント要素を、イオン化する。そして、半導体ワークピースにドーパント要素を注入するために、イオンビームは該ワークピースの表面に方向付けられる。ビームのイオンは、ワークピースまたはウェハにおけるトランジスタ素子の組立てと同様に、所望の伝導率の領域を形成するために、ワークピースの表面を貫通する。注入処理は典型的に、残余の気体分子との衝突によるイオンビームの分散を防ぎ、空中の粒子によるワークピースの汚染のリスクを最小化する高真空処理チェンバーにおいて行われる。典型的なイオン注入装置は、イオンビームを生成するためのイオンソースと、磁界を用いるイオンビームを分解する、質量についての質量分析装置を含むビームラインシステムと、イオンビームによって注入が行われる半導体ワークピースを含むターゲットチェンバーとを有する。高エネルギー注入システムのために、加速装置が質量分析装置とターゲットチェンバーとの間に備えられ、イオンを高エネルギーに加速させる。
【0003】
任意のアプリケーションについて所望のイオン注入を達成するために、注入されるイオンのドーズ量およびエネルギーは変化し得る。イオンドーズ量は、任意の半導体物質について注入されるイオンの濃度を制御することにより与えられる。典型的には、高電流注入装置が、高ドーズ量注入に用いられ、一方では、中電流注入装置がより低いドーズ量アプリケーションに用いられる。イオンエネルギーは、半導体装置における接合深さを制御するために用いられ、ビームイオンのエネルギーレベルは、注入されるイオンの深さの程度を判定する。より小さな半導体装置へという絶えることのない傾向において、より低いエネルギーで高いビーム電流を得る際に役立つビームライン構造を必要とする。高ビーム電流は、必要なドーズ量レベルを与え、一方では、より低いエネルギーによって浅い注入が可能となる。さらに、半導体ワークピースにおけるより高い装置密度を求める、絶えることのない傾向において、ワークピースを横切ってスキャンされる注入ビームの均一性を用心して制御することが求められる。
【0004】
ゲート酸化膜によってバルク半導体から絶縁される電極を有する半導体ウェハのイオン注入の期間における効果は、ビームイオンの電荷により絶縁された構成が帯電することである。この効果は、共通して電荷と称するが、絶縁された構成(例えばゲート電極)に印加される電圧が、絶縁体(例えばゲート酸化膜)の絶縁破壊電圧を上回り、そのためゲート酸化膜に結果として損傷が発生する場合、半導体回路にとって不利である。帯電率および電圧が、ビーム電流とともに増加するということは、理解されるであろう。また、絶えず増加するビーム電流を用いるイオン注入は、処理上の困難が増加することを示すことも、理解されるであろう。
【0005】
帯電における問題に歯止めをかけるために、イオンビームの電荷は、注入されるワークピースに逆特性の電荷を与えることによって補償される。正極イオンビームについて、単位時間あたりのイオンの量と等しい量の電子をワークピースに与えることは一般的な技術である。すなわち、イオンビーム電流と、ワークピースへ流れる電流に等しい電子電流と釣り合わせることは、一般的な技術である。これは典型的に、熱イオン放射、二次放射、放電、およびワークピースに直接電子を向けることなど、電子生成処理を通じて電子を生成する装置によってもたらされる。これらの装置は典型的に、設計された電子銃、二次電子フラッドシステム、プラズマ電子フラッドシステム等である。
【0006】
他の絶えることのない傾向としては、直径が300mmであるウェハ等において、半導体ワークピースサイズがより大きくなることである。装置密度がより高いことに伴い、ワークピースのサイズがより大きくなると、個々のワークピースのコストが増加する。この結果、イオンビームに対する注入の均一性および他のパラメータを制御することは、ワークピース解体に関わるコストの削減または低減よりも重要である。イオンビームは、イオンソース抽出開口およびそれに続く成形装置に基づいて成形され、上記装置は例えば、質量分析器と、分解開口部と、4極磁石と、ワークピースまたはウェハを目標としてイオンビームを与えるイオン加速器とを備える。ビームおよび/または目標ワークピースは、ワークピースのイオンビームスキャニングに影響を及ぼすために、互いに対して平行移動される。
【0007】
イオンビームにおけるビーム引き伸ばしを制限するために用いられる他の技術は、イオンビームの中に放出される電子を用いる均一電荷中和である。電荷減少について、放電装置は典型的に、イオン化処理を用いて電子を生成することと、それらの電子を活性化することと、それらをガスと衝突させることとを含む。上記活性化は、DC電界(例えば、DCアーク放電により生じる)を用いて、または、時間的に変化する電界(例えば、ACアーク放電、RF放電、マイクロ波放電等により生じる)を用いて行われ得る。用いられる放電の種類は、所望される電気的特性(例えば、密度分布、達成される密度等)に基づくことが多い。さらに、マイクロ波放電およびRF放電(例えば、RFプラズマ電子フラッド)は、大容量に規模が増加され得るが、維持をしようとするとより複雑かつ高価になり、回路とコスト的に高周波数の発電とを釣り合わせることが要求される。
【0008】
図1〜図3、図4A、図4B,および図5〜図7は、米国特許公報2006/0113492に記載されている従来技術のウェハ電荷補償装置を示す。この例では、この従来技術の装置は、帯電される粒子ビームを用いるビーム処理システムにおける単一ウェハイオン注入システムに特に適用される。図1および図2はそれぞれ平面図と側面図であり、単一ウェハイオン注入システムの模式的構造を示す。
【0009】
図示する従来技術のイオン注入システムは、イオンソースユニット11(イオンソースおよび抽出電極を含む)と、質量分析磁石装置12と、ビーム形成器13と、スキャンニング用のデフレクター14と、P(すなわち、平行化)レンズ15と、加速/減速電極16と、偏向エネルギーフィルター17と、処理チェンバー18とを備える。
【0010】
この先行技術のイオン注入システムでは、イオンソースユニット11において生成されるイオンは、イオンビームとして(以下、“ビーム”と称する)抽出電極(図示せず)を介して抽出される。抽出されたビームは、必要なイオン種のみが注入に際して選択されるように、質量分析磁石装置12において質量分析にかけられる。必要なイオン種のみからなるビームは、ビーム形成器13によって断面において形成される。ビーム形成器13は、Q(四分円または四極)レンズ等によって形成される。形成された断面を有するビームは、スキャニング用のデフレクター14によって、図1の上側/下側方向に偏向される。デフレクター14は、デフレクター14の付近の上流および下流にそれぞれ配置される、少なくとも1つの遮蔽上流電極14−1と、少なくとも1つの下流遮蔽電極14−2とを有する。偏向スキャン電極は、この実施形態においてスキャンニング用のデフレクター14として用いられるが、偏向スキャン磁石はそれらの代わりに用いられてもよい。
【0011】
スキャンニング用のデフレクター14によって偏向されるビームは、電極または磁石で形成されるP−レンズ15によって平行化され、0度の偏向角度の軸に対して平行となる。図1では、デフレクター14による相互に揺れるビームによるスキャンレンジは、太い黒線および二重破線で示される。P−レンズ15からのビームは、1つ以上の加速/減速電極16によって加速または減速され、偏向エネルギーフィルター17に送られる。偏向エネルギーフィルター17は、ビームのエネルギー分析を行い、必要なエネルギーを有するイオン種のみを選択する。図2に示すように、選択されたイオン種のみを、偏向エネルギーフィルター17において、わずかに下方に偏向する。選択されたイオン種のみからなるビームは、処理チェンバー18に導入される放射予定物体であるウェハ19に注入される。ワークピース19から逸脱するビームは、エネルギーが消費されるようにチェンバー18に設けられるビームストッパー18−1に入射する。ビームの輸送通路は全て、高真空状態で維持される。
【0012】
図1では、ウェハ19の隣に示される矢印は、ビームがこれらの矢印の方向にスキャニングされるよう偏向されることを示し、一方、図2では、ウェハ19の隣に示される矢印は、ウェハ19がこれらの矢印の方向に移動させられることを示す。特に、ビームがスキャンニングのために往復して、例えばx軸方向に偏向されると仮定すると、ウェハ19は、駆動機構(図示せず)によって駆動され、x軸方向に垂直なy軸方向に往復する。これによって、ウェハ19の全表面にわたってビームを用いて放射することが可能になる。
【0013】
上記のような方法で、図1および図2に示す従来技術のイオン注入システムにおいて、1つの方向に長い楕円形の断面、または長円形の連続する断面を有するビームは、円形の断面、楕円形の断面、または長円形の断面を有するビームを偏向することによって得られ、そして、後段エネルギー分析器として機能する偏向エネルギーフィルターを用いることによって、スキャン領域の任意の位置における均一な角度で曲げられ、最終的にウェハ19の中に注入され得る。
【0014】
従来技術に係る電荷補償装置30は、デフレクター14の下流側に設けられ、より詳しくは、偏向エネルギーフィルター17の下流側に設けられる。電荷補償装置はまた、プラズマシャワーと称される。電荷補償装置30は、図1および図2の処理チェンバー18の外側に配置されるが、処理チェンバー18の内側に配置されてもよい。
【0015】
従来技術の図3、図4A,および図4Bを参照すると、従来技術のイオンソースまたは電荷補償装置30は、フィラメント31を有する第1アークチェンバー34と、ガス導入ポート32と、1つ以上の第1抽出ホール33と、第2アークチエンバー35とを備える。第2アークチェンバー35は、第2抽出穴36を有し、チューブ状の、または中空円筒状の、または長方形の部材(フラッドボックス)40であって、そのため、第2抽出穴36は中空円筒状の、または長方形の部材40の内側空間50に晒され、スキャン領域における相互の揺れるビームが面する。中空円筒状の、または長方形の部材40は、その入口側における処理チェンバー(図示せず)の一部であってもよく、または、処理チェンバーの中に配置されてもよい。いずれにしても、第2アークチェンバー35は、中空円筒状の、または長方形の部材40のだいたい全幅にわたって伸びる長さを有する。
【0016】
図5では、記号SAは、中空円筒状の、または長方形の部材40におけるビームによるスキャンレンジまたは領域50(偏向レンジまたは領域)を示す。この実施形態では、第2抽出穴36は、スキャン領域SAにおける第2アークチェンバー35の長さの方向に一定の間隔で配置される複数の穴36によって実現される。
【0017】
または、第2抽出穴36は、スキャン領域SAにわたって伸びる単一のスリットによって実現し得る。複数の穴の場合、または単一のスリットの場合、開口部の分布または第2抽出穴36の形状は、第2アークチェンバー35における第2プラズマ密度分布に対応するように構成される。すなわち、開口部の密度は、プラズマ密度が低い部分においては高く、プラズマ密度が高い部分では開口部の密度は低いのが望ましい。具体的には、第2抽出穴36が複数の穴で実現されるとき、穴の間隔は、プラズマ密度が低い部分では短くされ、プラズマ密度が高い箇所では広げられる。他方では、第2抽出穴36が単一のスリットによって実現されるとき、プラズマ密度が低い部分ではスリットの幅が広げられ、プラズマ密度が高い部分ではスリットの幅は狭められる。
【0018】
第1アークチェンバー34は、第2アークチェンバー35の壁に取り付けられ、そのため、第1抽出穴33は、第2アークチェンバー35の長さ方向における中間部分付近の位置において第2アークチェンバー35に晒されるか、開放される。第1および第2アークチェンバー34および35の間の境界において、第1抽出穴33に対応する位置において穴を有する第1抽出電極37が設けられる。しかし、第1抽出電極37は、省略されてもよい。この場合、後述する第2アーク電圧は、第2アークチェンバー35において第2プラズマを生成するために、第1および第2アークチェンバー34および35の間に供給される。
【0019】
複数の永久磁石38は、第1アークチエンバー34および第2抽出穴36がそれぞれ設けられる領域を除いて、第2アークチェンバー35の壁面に配置される。すなわち、永久磁石38は、第2アークチェンバー35の上方および下方壁面のそれぞれ、左右壁面、および両面端壁面において一定の間隔で配置される。永久磁石38は、第2アークチェンバー35において、限定磁界(限定のための尖点磁界)を形成する役割を果たす。このため、全ての永久磁石38は、それらの磁極が第2アークチェンバー35の内側に向けられ、隣接する永久磁石38の磁極が互いに逆の状態で配置される。図5では、限定磁界を形成する磁気流束を矢印によって部分的に示す。
【0020】
図6および図7は、第2アークチェンバー35の両面端壁面の1つにおける永久磁石38の配置を示す。本明細書では、端壁面の形状が正方形なので、異なるサイズを有し複数の、正方形フレーム形状永久磁石38が、同心円状に配置され、正方形永久磁石38は、最も内側のフレーム形状永久磁石38に配置される。これらの永久磁石38はまた、それらの磁極が第2アークチェンバー35の内側に向けられ、隣接する永久磁石38の磁極が互いに逆になる状態で配置される。永久磁石38は、三角形状を含め、他の多角形状を有してもよい。端壁面の形状が円形である場合、永久磁石38は環状であってもよい。
【0021】
なお、第1および第2アークチェンバー34および35は、アークチェンバー支持部39(図3)によって支持される。電力は、アークチェンバー支持部39に取り付けられるフィラメントフィード41を介してフィラメント31に供給される。図1および図2では、電荷補償装置30は、ビームがわずかに下方に偏向される位置に配置される。一方、図5では、中空円筒状の、または長方形の部材40が水平状態で示されている。電荷補償装置30を図1および図2に示すように配置するために、装置全体が、ビームの偏向角度を適合させるために傾けられる。
【0022】
アルゴン等の気体は、気体導入ポート32を介して第1アークチェンバー34に導入される。フィラメント31を高温に熱し、熱イオン放射を介して電子を生成するために、電力は、フィラメント電力供給部42から、第1アークチェンバー34に配置されたフィラメント31へ供給される。熱イオン的に放出される電子は、第1アーク電力供給部43から、フィラメント31と第1アークチェンバー34との間に供給される第1アーク電圧によって加速される。加速される電子は、導入された気体と衝突し、第1プラズマが第1アークチェンバー34において生成される。第1アークチェンバー34は、1つ以上の第1抽出穴33を備え、第1抽出電極37はその外側に配置される。第1抽出電力供給部44から、第1抽出電極37および第1アークチェンバー34の間に第1抽出電圧を供給することによって、第1電子が第1アークチェンバー34から抽出される。
【0023】
第2アークチェンバー35は、スキャン領域SAと対応する長さを有している。スキャン領域SAには、第1アークチェンバー34においてイオン化することなく第1抽出穴33から放出された中性気体と、第1アークチェンバー34から抽出された第1電子とが導入される。フィラメント31の材料が蒸発等により散乱させなければならない場合においても、第1抽出穴33のサイズが小さいので、散乱させられた物質は、第1アークチェンバー34の中に留まり、そのため第2アークチェンバー35に導入されない。
【0024】
第2アークチェンバー35に導入された第1電子は、第2アーク電力供給部45から、第2アークチェンバー35および第1抽出電極37の間に供給される第2アーク電圧によって加速される。加速された電子は、第1アークチェンバー34から導入された気体と衝突し、密度の高い第2プラズマが第2アークチェンバー35において生成される。
【0025】
複数の永久磁石38は、限定磁界を形成するように第2アークチェンバー35の壁面に配置されるので、それらの壁面において電子損失を抑制することができ、第2アークチェンバー35におけるスキャン方向におけるプラズマ均一性を向上することができる。
【0026】
永久磁石38の温度をキュリー温度よりも下に維持するために、すなわち、永久磁石の熱消磁を防ぐために、第2アークチェンバー35は水冷却等によって冷却される。第2アークチェンバー35は、ビーム通過領域に面する位置において第2抽出穴36を備える。この実施形態では、上記のように、第2抽出穴36は、ビームのスキャン領域SAに対応するように配置される複数の穴の形態を有する。または、第2抽出穴36は、上記のスキャン領域SAにわたって伸びる単一のスリットの形態を有する開口部によって実現され得る。第2アークチェンバー35は、第2抽出穴36以外からの気体の漏れを防ぐように構成され、これによって、プラズマ生成効率を向上させるよう第2アークチェンバー35内の気体圧力の減少を防ぐ。
【0027】
ビームが第2抽出穴36の近くを通過するとき、第2電子はビームの正極電位によって第2アークチェンバー35から抽出される。抽出された第2電子は、第1および第2アークチェンバー34および35においてイオン化を行うことなく第2抽出穴36から放出された中性気体と衝突する。その結果、プラズマ(プラズマブリッジ)が、ビーム(相互に揺れるビーム)と第2アークチェンバー35(正確には第2抽出穴36)との間に形成される。第2アークチェンバー35における第2電子は、プラズマブリッジを介してビームに独立して供給される。第2抽出穴36が、スキャン領域SAに対応する領域に存在するので、ビームの位置がスキャンニングのための偏向によって移動しても、プラズマブリッジは、ビームと第2アークチェンバー35との間に絶えず形成されており、これによって独立した電子供給を達成する。第2アークチェンバー35は、第2抽出電力供給部46からの接地電位との間の第2抽出電圧が供給されるように構成される。この構成によると、ビームに供給される電子の、量及びエネルギーを調節することができる。
【0028】
第2アーク電力供給部45と第2抽出電力供給部46との間の電流値(アーク電流)を測定してもよく、一定のアーク電流を達成するための電力供給を制御するようにフィードバックされる。
【0029】
第2抽出穴36および、周辺のビームによるスキャン領域は、中空円筒状の、または長方形の部材40で覆われる。第2アークチェンバー35から抽出され、ウェハに供給される第2電子の量の調節を可能にするように、中空円筒状の、または長方形の部材40の電位は、第2アークチェンバー35の電位とは異なって設定されてもよい、または、単純な構造を達成するために第2アークチェンバー35の電位と等しく設定されてもよい。
【0030】
中空円筒状の、または長方形の部材40の内側壁50(ビームと接触する面)はのこぎり状に形成され、これによって内側壁の表面全体における絶縁汚れの付着を防ぐ。また、中空円筒状の、または長方形の部材40のビーム上流側において、バイアス電力供給部47から負極電圧が印加され得るバイアス電極48が配置される。これによって、ビーム上流方向の電子の散乱を防ぐことが可能になり、電子を下流側に(ウェハに)効率的に搬送することが可能となる。中空円筒状の、または長方形の部材40は、磁気遮蔽部をさらに備え、これによって外部磁界、例えば、偏向エネルギーフィルター17からの磁界を遮蔽する。これは、外部磁界が強いときにその磁界の線の周りに電子が密集し、ウェハに届く前に電子が消失してしまうからである。
【0031】
上記構造によって、第2抽出穴36は、スキャン領域SAに対応する領域に存在する。したがって、プラズマが第2アークチェンバー35において生成されるとき、ビームの位置がスキャンニングのための偏向によって移動する場合でも、プラズマブリッジがビームと第2アークチェンバー35との間に絶えず形成され、安定した電子供給を行う。さらに、限定磁界が第2アークチェンバー35内で生成されるので、第2アークチェンバー35の内側壁表面における電子の損失が低減される。このため、プラズマ生成効率を向上させることができ、第2アークチェンバー35内のプラズマ均一性を向上させることができる。これによって、幾分かビームのスキャン位置に関係なく、ビームに十分電子を供給することが可能となる。
【0032】
しかしながら、このプラズマソース構成は、分散に依存し、第2アークチェンバーにおけるプラズマの等しいプラズマ特性を保証するものではない。すなわち、磁石の使用および構成、並びに詳細な設計によって、比較的コストが高い。したがって、帯電防止および向上した均一電荷中和装置と、コストは低いが組み立てるのが困難な半導体ワークピースの注入に均一なイオンビームが用いられ得る方法とを提供するのが望ましい。
【発明の概要】
【0033】
以下では、本発明の1つ以上の態様の基本的理解を促すために、単純化した概要を説明する。この概要は、本発明の広範な概要を説明するものではなく、本発明の鍵となる要素または重要な要素を特定する意図もなく、それらの範囲を線引きする意図もない。むしろ、本概要の主要目的は、後述するより詳細な説明の前置きとして単純な形式で本発明のいくつかの概念を説明することである。本発明は、イオンビームを用いてワークピースに注入を施すための、方法および装置に関し、それらによって上記方法と、従来技術に関連付けられる他の欠点が克服または緩和され得る。特に、本発明は注入システムを提供し、該注入システムにおいて、時間平均リボンビームにスキャンされるリボンビームまたはペンシルビーム等の相対的に広いイオンビームは、イオンソースによって生成され、中和されて帯電される。
【0034】
本発明の一態様によると、プラズマ電子フラッドシステムであって、気体を含むように構成される放電チェンバーを有するハウジングであって、放電チェンバーの中に存在する、細長抽出スリット、カソード、および複数のアノードを有するハウジングを備え、上記細長抽出スリットは、イオン注入システムと直接連絡し、上記カソードフィラメントは、複数のアノードの間の電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子を放出する。放射された電子の一部は、イオン注入システム内を移動するイオンビームを中和する際に用いられる電子のバンドとして、細長抽出スリットを介して放出される。
【0035】
本発明の他の構成では、縦方向の通路に沿って相対的に広いイオンビームを生成するイオンソースと、質量に応じて変化する軌道においてビームのイオンを偏向するために上記通路にわたって磁界を形成する質量分析器とを備えるイオン注入システムを含む。端部ステーションは、ビームラインシステムから質量分析されたイオンビームを受け取り、質量分析されたイオンビームを用いて注入のための上記通路に沿って少なくとも1つのワークピースを支持する。上記ハウジング内の放電チェンバーは、複数のアノードと、カソードと、細長抽出スリットとを有し、上記カソードは、複数のアノードの間の電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子を放出する。上記細長抽出スリットは、細長バンドとして上記電子の一部をイオンビームの中に放出する。
【0036】
本発明のさらに他の態様は、電子をリボンイオンビームに導入する方法であって、放電チェンバー内でカソードフィラメントに電圧を加える工程と、上記カソードと、放電チェンバーハウジングと、アノードとをバイアスする工程と、細長抽出スリットを介して電子をリボンイオンビームに放出する工程とを含む。
【0037】
本発明の他の態様は、イオン注入システムにおいて、静的リボンイオンビームまたは時間平均リボンイオンビームを用いてワークピースに注入を施す方法であって、リボンイオンビームを生成する工程と、上記リボンイオンビームを質量分析する工程とを含む。上記方法はさらに、電子の細長バンドをリボンイオンビームに供給する工程と、少なくとも1つのワークピースに、上記リボンイオンビームからのイオンを注入するために、上記質量分析されたリボンイオンビームを上記少なくとも1つのワークピースに供給する工程とを含む。
【0038】
本発明の他の構成では、イオンビームを用いてワークピースに注入を施すイオン注入システムであって、リボンイオンビームを生成するための手段と、上記リボンイオンビームを質量分析するための手段と、電子の細長バンドを上記質量分析されたリボンイオンビームに供給するための手段と、ワークピースに上記リボンイオンビームからのイオンを注入するために、上記質量分析されたリボンイオンビームを上記ワークピースに供給するための手段とを備えるイオン注入システムを含む。
【0039】
上記および関連する目的を達成するために、以下の説明および添付の図面は、本発明におけるある解説的態様および構成を詳細に記載する。これらは、本発明の原理が用いられ得る様々な方法にうちのいくつかを示している。本発明の他の態様、利点、および新規な特徴は、図面とともに考察するとき、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】イオン注入システムの模式的構造を示す、従来技術の平面図および従来技術の側面図である。
【図2】イオン注入システムの模式的構造を示す、従来技術の平面図および従来技術の側面図である。
【図3】電荷補償装置の構造を説明するための従来技術の垂直断面図である。
【図4A】図3に示される装置における、従来技術の断面透視図である。
【図4B】図3に示される装置における、従来技術の部分透視図である。
【図5】図3に示される第2アークチェンバーの両端部表面のうちの1つにおいて永久磁石を形成する限定磁界の構成を示す従来技術の図である。
【図6】図5に示される第2アークチェンバーの両端部表面のうちの1つにおいて永久磁石を形成する限定磁界の構成を示す従来技術の図である。
【図7】図3に示される第2アークチェンバーの上方、下方、左、および右壁表面において永久磁石を形成する限定磁界の他の構成を示す従来技術の図である。
【図8】本発明の一態様に係る、プラズマ電子フラッドシステム(PEF)を示す部分透視分解図である。
【図9A】本発明のさらに他の実施形態に係る、図8に示されるハウジングにおける断面を示す図である。
【図9B】本発明の他の態様に係るリボンイオンビームへ、図8の細長抽出スリットを介して電子が流れ込む状態をさらに示す部分透視図である。
【図10】本発明の他の使用を含む方法をさらに示す模式図である。
【図11】本発明の他の方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面を参照して本発明をここで説明するが、同様の参照番号は、本明細書を通して同様の要素を説明するために用いられる。本発明は、半導体ワークピース等のワークピースにイオン注入のためのプラズマ電子フラッドイオンビームを供給するための方法およびシステムを提供する。本発明における1つの構成を、図面を参照して以下に解説し説明する。解説および以下の説明はそもそも例示的なものであり、限定的なものではない。したがって、解説するシステムおよび方法の変形、また、本明細書において解説されるそれらの事項から離れた他の構成も、本発明および添付の請求項の範囲内と見なされることは分かるであろう。
【0042】
まず図8を参照すると、本発明の分解部分図を示すが、この発明は、例えば放電チェンバー816内のバルブ(図示せず)によって導入される気体を含むように構成されるハウジング802を備えるプラズマ電子フラッドシステム(PEF)800を提供する。PEFシステム800のハウジング802は、任意の所望の押し出し長さ824、例えば、300または450ミリメートルまで押し出し可能な所望のカットアウト(例えば、内径822)を有する、818と820とからなる寸法の断面を有する。ハウジング802はまた、機械加工が可能である、レーザーで切断が可能であるなどということを理解しなければならない。
【0043】
プラズマ電子フラッドシステム800は、放電チェンバーの中に存在する、細長抽出スリット806、カソードアセンブリ808、複数のアノード810、および細長カソードフィラメント814とをさらに備える。この実施形態では、細長抽出スリット806はスリットプレート812の中に形成され、細長抽出スリット806は、イオン注入装置(図示せず)と直接連絡し得る。カソードアセンブリ808は、複数のアノードの間の電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子をカソードフィラメント814から放出するように電圧を加えられる。上記電子は、およそ、イオン注入装置内を移動するリボンイオンビームを中和する際に用いられる電子バンドとして、細長抽出スリット806を介して放出される。本発明者は、このように電子を導入することによって、電子がペンシルイオンビーム、ワイドイオンビーム、またはリボンイオンビームに到達するための等しい通路長さが存在し、独特の通路長さに対して、ポイント−ソースタイプ技術があり、電荷中和は、例えばイオンビームの幅にわたってより均一であることを見出した。
【0044】
放電チェンバー816とリボンイオンビームとの内側における汚染を最小化するために、カソードフィラメント814および複数のアノード810はグラファイトを含み得る。この技術において共通に用いられるタングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、および他の耐熱材料も用いられ得ることは理解できるであろう。
【0045】
一実施形態では、図8および図9Aを参照すると、反射性形状、すなわち、相対的に小さいアノード領域を、アノード810に向けて加速される電子がアノード810を遮る傾向が低くなるように用いて、複数のアノード810(図8および図9A)を構成している。カソードフィラメント814からアノード810への主要電子の搬送時間は増加され、これによって電子中性衝突の数が増え、そのため、電子生成と、プラズマの放電密度とが増加する。これらはプラズマ電子フラッドシステム800を、放電チェンバー816内において低圧力にて作動させる。放電チェンバー816は、大きな直径822(例えば、100mm以上)を有し得、カソードフィラメント814は、例えば0.9mmの直径を有する。カソードフィラメント814の電流は、40Aに設定でき、その結果、カソードフィラメント814の温度は約2500℃であり、相対的に低い自己磁化(例えば、100ガウスよりも低い)を有する。3つのアノード810が存在し得、例えばそれぞれは、3mmの直径を有し、そのため、アノード810は反射性形状を生成するには十分小さい直径を有し、さらに、プラズマ放電の安定性を確実にするには十分大きい。上記気体は例えばキセノンを含み、プラズマ電子フラッドシステム100の放電チェンバー116内における分圧が、約5×10−5から1×10−4Torrである状態にて作動する。キセノンの代りに、上記気体はまた、アルゴンを含み得る。例えばハウジング102と同じ静電位のカソード810を用いて、主要電位は静電的に限定され、これによって次に、プラズマ閉じ込めおよびプラズマ密度の両方を増加する。
【0046】
プラズマ電子フラッドシステム800は、タウンゼント放電モードにおいて低い圧力にてDC放電を行うものとして作動し得、進行中の放電を維持するために、電子はカソードフィラメント814から注入される。これにより、キセノンガスの圧力は低く(例えば、5e−5Torrより低く)維持され得、例えば、これによってシステムにおけるキセノンの分圧を低下させることが可能であり、イオンビームがより高い圧力において(例えば、5e−6Torrより高い圧力において)受ける電荷交換の不利な効果のいくつかを最小化することができる。アノード810を電気的に正極にバイアスし、カソードフィラメント814およびハウジング802を電気的に接地することによって、電子エネルギーフィルタリングを実現し、これにより、衝突する、または熱中性子化される電子は、例えば細長抽出スリット開口部806を介して放電チェンバー816から出ることができる。
【0047】
ここで図9B(特に倍率を基に描いているわけではない)を参照すると、例えば図示するように電子細長抽出スリット806がイオンビーム802の伝搬方向を横切るようにハウジング802(図1)は構成することができ、抽出された電子の細長いバンドは、図9Bに示されるように、リボンイオンビームの長さを横断するリボンイオンビームの中に配される。これによって、電荷中和の均一性が確実にされ、電子902が、スリットプレート812における細長抽出スリット806にずっと沿ってプラズマ電子フラッドシステム(PEF)950から出ることができる。スリットプレート812における細長抽出スリット806が、例えば図示されるよりも、PEF900(図9)における不可欠な部分であり得ることが分かるであろう。スリット916の長さは、例えばイオンビームの均一性を助長するために、リボンイオンビーム904の幅910と適合するようにすることができる。さらに、スリット916の長さは、例えば当業者に周知のマスキングまたは他の技術を用いて、ウェハサイズに基づいて、自動的に調節可能にすることができる。
【0048】
図10を参照すると、本発明は、細長(例えば、ペンシルイオンビーム、リボン状等の)イオンビーム1004を縦方向のビーム路に沿って生成するためのイオンソース1002を含むイオン注入システム1000を提供する。イオンビームソース1002は、関連する電源1008および抽出装置1010を有するプラズマソース1006を有し、それらは、例えば縦横比を有する細長リボンイオンビーム1004を抽出する任意の設計であってもよい。以下の例は、より十分に本発明を説明するために提供されるが、その範囲を限定するように構成されているものではない。例えば、プラズマソース1006は、抽出装置1010において高い縦横比の抽出スリットを用いてリボンビーム1004を抽出し得る、比較的長いプラズマ閉じ込めチェンバーを備えてもよい。リボンビーム1004は、第1縦横比を規定する横断幅および横断高さを有し、横断幅は、横断高さよりもはるかに大きい。例えば、プラズマソース1006から抽出される細長イオンビーム1004の幅は、例えば約400mmであり得、高さは例えば10mmであり得る。リボンイオンビームおよび他の種類のイオンビームを形成することは、当業者にとっては周知である。
【0049】
そこからビーム1004を受け取るためのイオンソース1002の下流に、ビームラインシステム1012が設けられ、ビームラインシステム1012は、ビーム1004を受け取るための通路に沿って位置する質量分析器1014を含む。質量分析器1014は、第2縦横比と、第1縦横比に略同様のプロフィールとを有し、質量分析された細長のイオンビーム1004を提供するために、質量(例えば、質量比に対する電荷)に基づいて変化する軌道におけるイオンビーム1004からのイオンを偏向するように、通路にわたる磁界を与えるように作動する。端部ステーション1022は、システム1000の中に設けられ、ビームラインシステム1012から質量分析されたイオンビーム1004を受け取り、質量分析されたイオンビーム1004を用いて注入用の通路に沿う半導体ワークピース等の1つ以上のワークピースを支持する。端部ステーション1022は、互いに相対する、1つ以上の目標ワークピースおよびイオンビーム1004を、平行移動するまたはスキャニングするために目標スキャニングシステム1020を含む。目標スキャニングシステム1020は、一括注入または連続注入を行い得る。
【0050】
本発明の他の態様によると、図11は、プラズマチェンバー内で生成される複数の電子を、プラズマフラッド電子システム100(図1)と関連されるリボンイオンビームに伝達するための例示的方法1100を示す。例えば図1に示されるシステム100は、図11の方法1100に基づいて操作され得る。プラズマフラッド電子システム100(図1)内で行われる動作は、同時に(平行して)または連続して行われ得るということを注意しなければならない。また、例示的方法が一連の動作または事象として本明細書に示され説明される一方、本発明に基づいて、いくつかの工程が異なる順序で行われるとき、および/または、本明細書に示され説明されるものとは別個の他の工程が同時に行われるとき、本発明はそのような動作または事象における説明される順序によって限定されないことは理解できるであろう。さらに、必ずしも説明される全ての工程が、本発明に基づいて方法を実行するために必要なわけではない。さらに、図示されない他のシステムとの関連し、かつ、本明細書に示され説明されるシステム100と関連して上記方法が実行され得ることは、理解されるであろう。
【0051】
図11に示されるように、方法1100は1102において開始し、当業者によって周知の技術を用いてリボンイオンビームを生成する。本発明は、縦方向のビーム路に沿って、細長(例えば、リボン状等の)イオンビーム1004を(図10)生成するためのイオンソース1002(図10)を提供する。イオンビームソース1002(図10)は、例えば大きな縦横比の細長リボンイオンビーム1004を抽出する任意の設計がなされており、関連する電源1008(図10)および抽出装置1010(図10)を有するプラズマソース1006を備える。上記のように、より完全に本発明を示すために以下の例を提示するが、それらの範囲に限定するものと解釈してはならない。例えば、プラズマソース1006は、抽出装置1010における縦横比が高い抽出スリットを用いて、リボンイオンビーム1004が抽出され得る、相対的に長いプラズマ閉じ込めチェンバーを有する。リボンビーム1004は、第1縦横比を規定する横断幅および横断高さを備え、上記横断幅は、横断高さよりもはるかに大きい。例えば、プラズマソース1006から抽出される細長イオンビーム1004の幅が約400mmである場合、上記高さは、例えば10mmであり得る。
【0052】
1104において、リボンビームは質量分析され、所望の電荷−質量比のイオンを選択する。イオンビームを質量分解するための質量分析装置は、磁界を用いる。そこの電荷(例えば、電荷−質量比)に相対するイオンの質量は、静電界または磁界によって軸方向におよび横方向にイオンが加速される程度に影響をおよぼす。よって、半導体ウェハまたは他の目標における所望の領域に到達するビームは、高純度にすることができる。それは、好ましくない分子量のイオンが、ビームから離れるように偏向され、所望の物質以外の注入を避けることができるからである。質量分析器は、電荷−質量比が異なるイオンを効果的に分離するアーチ形の通路における磁気偏向を介するイオンビームの様々なイオンを偏向するために、双極性磁界を生成する質量分析磁石を用い得る。質量分析技術は、当業者には周知である。
【0053】
1106では続いて、プラズマフラッド電子システム800(図8)の放電チェンバー内のカソードと、複数のアノードとに電圧が加えられる。カソード810の電流は40Aに設定され、その結果、カソード810の温度は約2500℃であり、相対的に低い自己磁化(例えば、100ガウスよりも低い)を有する。複数のアノード810(例えば3つ)のそれぞれは、例えば3mmの直径を有する。プラズマチェンバー816内の気体は、例えばキセノンを含み得、プラズマ電子フラッドシステム800(図8)のプラズマチェンバー116(図1)内で、5×10−5Torrから1×10−4Torrにて作動し得る。
【0054】
コンポーネント810、802、および814は、放電プラズマの静電制限と、抽出スリット806を介して出る電子のエネルギーフィルタリングを行うために、静電的にバイアスされ得る。例えば、カソード810(図1)および放電チェンバーハウジング802は接地電位にバイアスされ得、アノード810(図1)は100ボルトにバイアスされ得る。カソード810(図8)を出る電子は、ゼロ(0)電子−ボルト初期運動エネルギーに近くなり、それがアノード110(図1)に到達するとき、運動エネルギー(100eV)における100電子−ボルトを得ているであろう。電子がアノードへの通路における原子と衝突する場合、それはせいぜい100eVの運動エネルギー、プラス、例えば1eVの原子のエネルギーを獲得し得る。これによって、トータルの最大エネルギー101eVを有することになる。このような電子、または、100eVよりも大きい総エネルギーを獲得する任意の電子は、100eVのエネルギーを失い、例えば典型的に1eVの運動エネルギーを残して、抽出スリットを介して放電チェンバーを出ることができる。1106では、典型的に衝突する、熱中性子化される、または二次電子と称されるこのような多くの電子が、この状態で、リボンイオンビーム202(図2)に届けられる。衝突する電子は特に、ワークピースにおける注入の前にイオンビーム202を中和させるためには有効である。放電チェンバー内で生成される電子は、細長スリットを通過する電子の細長バンドとして、リボンイオンビームに導入され得る。
【0055】
アノードとカソードとの両方は、スパッタリングおよび蒸着されることが可能なので、カソードフィラメント814はグラファイトを含み得、タングステン(W)とモリブデン(MO)の両方、およびタンタル(Ta)は例えば任意の材料である。これによって、カソード物質からのウェハ汚染のリスクは最小化することができる。アノード810は、シリコンウェハへの汚染リスクがほとんどないグラファイトまたはアルミニウム(Al)、またはモリブデン(Mo)およびタングステン(W)等を含み得る。
【0056】
1108では、質量分析されたリボンイオンビームは、少なくとも1つのワークピースw/イオンを注入するために、少なくとも1つのワークピースに与えられ、上記方法は終了する。
【0057】
本発明を特定の態様と構成について示し、説明してきたが、本明細書および添付の図面を読んで理解すれば、当業者は等価の代替物や変更が思いつくであろう。特に、上記構成要素(アセンブリー、装置、回路、システム等)によって行われる様々な機能について、このような構成要素を説明するために用いられる用語(“手段”で表されるものも含む)は、特に記載しない限り、本発明において示される例示的構成における機能を果たす開示の構造に構造的に等しくなくても、開示の構成要素(すなわち、機能的に等価なもの)における特定の機能を果たすいかなる構成要素にも対応するものとして意図される。この点では、本発明の様々な方法における工程を行うためのコンピュータ実施可能な指示を有するコンピュータ読み取り可能な媒体を、本発明が含むということも認識されるであろう。さらに、いくつかの構成のうちのただ1つに対して本発明の特定の特徴が開示される一方、このような特徴は、いかなる任意の、または特定の応用について所望され、有利であるように、他の構成における1つ以上の他の特徴と組み合わされ得る。さらに、“含む”、“有する”、“用いる”およびその変形である用語が詳細な説明または請求項において用いられる程度について、これらの用語は“備える”という用語と同じように包括的であることを意図している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ電子フラッドシステムであって、
気体を含むように構成される放電チェンバーを有するハウジングであって、放電チェンバーの中に存在する、細長抽出スリット、カソードフィラメント、カソードアセンブリ、および複数のアノードとを有するハウジングを備え、
上記細長抽出スリットは、イオン注入システムと直接連絡し、
上記カソードフィラメントは、複数のアノードの間の電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、
上記電子の一部は、上記イオン注入システム内で移動するイオンビームを中和する際に用いられる電子バンドとして、上記細長抽出スリットを介して抽出される、プラズマ電子フラッドシステム。
【請求項2】
上記カソードフィラメントの直径は、約0.5ミリメートルから3ミリメートルまでであり、
上記カソードフィラメントは、240ミリメートルから500ミリメートルまでの長さを有し、
上記アノードの直径のそれぞれは、約1ミリメートルから10ミリメートルまでであり、
上記アノードのそれぞれは、240ミリメートルから500ミリメートルまでの長さを有する、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項3】
上記放電チェンバーは円筒状であり、約30ミリメートルから200ミリメートルまでの内径を有する、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項4】
上記放電チェンバーは円筒状であり、約30ミリメートルから200ミリメートルまでの内径を有し、
上記放電チェンバーは、240ミリメートルから500ミリメートルまでの長さを有し、
上記抽出スリットは、約1ミリメートルから50ミリメートルまでの幅と、約200ミリメートルから450ミリメートルまでの長さを有する、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項5】
上記カソードフィラメントは、グラファイト、タングステン、モリブデン、またはタンタルからなる材料で製造されており、
複数のアノードは、グラファイト、アルミニウム、タングステン、またはモリブデンからなる材料で製造されている、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項6】
上記放電チェンバー内のキセノンガスの分圧は、約5×10−5から1×10−4Torrであり、
上記放電チェンバー内の気体は、キセノン、アルゴン、またはキセノンとアルゴンの混合物を含む、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項7】
上記カソードと上記ハウジングとはおよそ同じ電位にあり、上記アノードは、上記カソードおよび上記ハウジングに対して陽極電圧にてバイアスされる、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項8】
イオン注入システムであって、
縦方向の通路に沿ってイオンビームを生成するイオンソースと、
質量に応じて変化する軌道においてイオンビームのイオンを偏向するために上記通路にわたって磁界を形成するビームラインシステムと、
電子をイオンビームに与えるためのプラズマ電子フラッドシステムとを備え、
上記プラズマ電子フラッドシステムは、複数のアノードと、カソードフィラメントと、カソードアセンブリと、細長抽出スリットとを有するハウジング内に放電チェンバーを備え、
上記カソードフィラメントは、電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、
上記細長抽出スリットは、上記電子の一部を細長バンドとしてイオンビームの中へ放出し、
質量分析され中和されたイオンビームを上記ビームラインシステムから受け取り、質量分析され中和されたイオンビームを用いて、注入のための通路に沿って少なくとも1つのワークピースを支持する端部ステーションを備える、イオン注入システム。
【請求項9】
上記カソードフィラメントの直径は約0.9ミリメートルであり、
上記アノードの直径は約3ミリメートルである、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
上記イオンビームは、幅と高さとを有するリボンイオンビームを構成し、
上記幅は上記高さよりも大きい、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
電子の細長バンドは、上記イオンビームの長さを横断するイオンビームに成形される、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
上記放電チェンバー内のキセノンの分圧は約5×10−5Torrから1×10−4Torrであり、
上記放電チェンバー内の気体はキセノンとアルゴンとを含み、
上記カソードフィラメントは、グラファイト、タングステン、モリブデン、またはタンタルからなる材料で製造されており、
上記複数のアノードは、グラファイト、アルミニウム、タングステン、またはモリブデンで製造されている、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
カソードフィラメント電流は約15から80ampsである、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
電子をリボンイオンビームに導入する方法であって、
放電チェンバー内でカソードフィラメントに電圧を加える工程と、
上記カソードと、放電チェンバーハウジングと、アノードとをバイアスする工程と、
細長抽出スリットを介して電子をリボンイオンビームに放出する工程とを含む、方法。
【請求項15】
アノード電圧よりも低い電圧に、上記カソードの電圧と上記放電チェンバーの電圧とをバイアスする、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
上記放電チェンバーは気体を含み、
上記放電チェンバー内の圧力は約5×10−5Torrから1×10−4Torrであり、
上記気体はキセノンとアルゴンとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記方法は、タウンゼント放電モードで実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
カソード電流は約40ampsであり、
上記カソードおよび放電チェンバーハウジングは、周囲と比べて−20ボルトから20ボルトまでの間にあり、
上記アノード電圧は30ボルトから100ボルトまでの間である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
イオン注入システムにおいてリボンイオンビームを用いてワークピースに注入を施す方法であって、
リボンイオンビームを生成する工程と、
上記リボンイオンビームを質量分析する工程と、
電子の細長バンドを上記リボンイオンビームに供給する工程と、
少なくとも1つのワークピースに、上記リボンイオンビームからのイオンを注入するために、上記質量分析されたリボンイオンビームを上記少なくとも1つのワークピースに供給する工程とを含む、方法。
【請求項20】
電子の細長バンドを供給する工程は、
プラズマ電子フラッドシステムを供給する工程を含み、上記プラズマ電子フラッドシステムは、気体を含むように構成される放電チェンバーを有するハウジングを備え、また、細長抽出スリット、カソードアセンブリ、カソードフィラメント、およびその中に存在する複数のアノードとを備え、
上記細長抽出スリットは、上記イオン注入システムと直接連絡しており、
上記カソードフィラメントは、上記複数のアノードの間の電位差を通じて上記複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、
電子の細長バンドは、上記イオン注入システム内を移動する上記リボンイオンビームを中和する際に用いられる上記細長抽出スリットを介して放電される、請求項20に記載の方法。
【請求項21】
上記カソードの電圧と上記放電チェンバーハウジングの電圧とが、上記アノードの電圧よりも低い電圧にバイアスされ、
上記放電チェンバー内の圧力は、約5×10−5Torrから1×10−4Torrであり、
上記気体はキセノンを含み、
上記システムはタウンゼント放電モードで作動する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
カソード電流は約40ampsであり、
上記カソードおよび上記放電チェンバーハウジングは、ゼロボルトに設定され、
上記アノードの電圧は100ボルトに設定される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
イオンビームを用いてワークピースに注入を施すためのイオン注入システムであって、
リボンイオンビームを生成するための手段と、
リボンイオンビームを質量分析するための手段と、
電子の細長バンドを、上記質量分析されたリボンイオンビームに供給するための手段と、
ワークピースに上記リボンイオンビームからのイオンを注入するために、上記質量分析されたリボンイオンビームを上記ワークピースに供給するための手段とを備える、イオン注入システム。
【請求項24】
電子の細長バンドを供給するための手段は、
少なくとも1つの気体と、カソードアセンブリと、カソードフィラメントと、その中に存在する複数のアノードとを含むように構成される細長電子スリットを放電チェンバーに設けることを含み、
上記細長抽出スリットは、上記イオン注入システムと直接連絡し、
上記カソードフィラメントは、複数のアノードの間の電位差を通じて上記複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、
上記カソードの電圧と上記放電チェンバーハウジングの電圧とを、上記アノードの電圧よりも低い電圧にバイアスし、
上記放電チェンバー内の圧力は約5×10−5Torrから1×10−4Torrであり、
上記システムはタウンゼント放電モードで作動する、請求項24に記載のイオン注入システム。
【請求項1】
プラズマ電子フラッドシステムであって、
気体を含むように構成される放電チェンバーを有するハウジングであって、放電チェンバーの中に存在する、細長抽出スリット、カソードフィラメント、カソードアセンブリ、および複数のアノードとを有するハウジングを備え、
上記細長抽出スリットは、イオン注入システムと直接連絡し、
上記カソードフィラメントは、複数のアノードの間の電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、
上記電子の一部は、上記イオン注入システム内で移動するイオンビームを中和する際に用いられる電子バンドとして、上記細長抽出スリットを介して抽出される、プラズマ電子フラッドシステム。
【請求項2】
上記カソードフィラメントの直径は、約0.5ミリメートルから3ミリメートルまでであり、
上記カソードフィラメントは、240ミリメートルから500ミリメートルまでの長さを有し、
上記アノードの直径のそれぞれは、約1ミリメートルから10ミリメートルまでであり、
上記アノードのそれぞれは、240ミリメートルから500ミリメートルまでの長さを有する、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項3】
上記放電チェンバーは円筒状であり、約30ミリメートルから200ミリメートルまでの内径を有する、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項4】
上記放電チェンバーは円筒状であり、約30ミリメートルから200ミリメートルまでの内径を有し、
上記放電チェンバーは、240ミリメートルから500ミリメートルまでの長さを有し、
上記抽出スリットは、約1ミリメートルから50ミリメートルまでの幅と、約200ミリメートルから450ミリメートルまでの長さを有する、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項5】
上記カソードフィラメントは、グラファイト、タングステン、モリブデン、またはタンタルからなる材料で製造されており、
複数のアノードは、グラファイト、アルミニウム、タングステン、またはモリブデンからなる材料で製造されている、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項6】
上記放電チェンバー内のキセノンガスの分圧は、約5×10−5から1×10−4Torrであり、
上記放電チェンバー内の気体は、キセノン、アルゴン、またはキセノンとアルゴンの混合物を含む、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項7】
上記カソードと上記ハウジングとはおよそ同じ電位にあり、上記アノードは、上記カソードおよび上記ハウジングに対して陽極電圧にてバイアスされる、請求項1に記載のプラズマ電子フラッドシステム。
【請求項8】
イオン注入システムであって、
縦方向の通路に沿ってイオンビームを生成するイオンソースと、
質量に応じて変化する軌道においてイオンビームのイオンを偏向するために上記通路にわたって磁界を形成するビームラインシステムと、
電子をイオンビームに与えるためのプラズマ電子フラッドシステムとを備え、
上記プラズマ電子フラッドシステムは、複数のアノードと、カソードフィラメントと、カソードアセンブリと、細長抽出スリットとを有するハウジング内に放電チェンバーを備え、
上記カソードフィラメントは、電位差を通じて複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、
上記細長抽出スリットは、上記電子の一部を細長バンドとしてイオンビームの中へ放出し、
質量分析され中和されたイオンビームを上記ビームラインシステムから受け取り、質量分析され中和されたイオンビームを用いて、注入のための通路に沿って少なくとも1つのワークピースを支持する端部ステーションを備える、イオン注入システム。
【請求項9】
上記カソードフィラメントの直径は約0.9ミリメートルであり、
上記アノードの直径は約3ミリメートルである、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
上記イオンビームは、幅と高さとを有するリボンイオンビームを構成し、
上記幅は上記高さよりも大きい、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
電子の細長バンドは、上記イオンビームの長さを横断するイオンビームに成形される、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
上記放電チェンバー内のキセノンの分圧は約5×10−5Torrから1×10−4Torrであり、
上記放電チェンバー内の気体はキセノンとアルゴンとを含み、
上記カソードフィラメントは、グラファイト、タングステン、モリブデン、またはタンタルからなる材料で製造されており、
上記複数のアノードは、グラファイト、アルミニウム、タングステン、またはモリブデンで製造されている、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
カソードフィラメント電流は約15から80ampsである、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
電子をリボンイオンビームに導入する方法であって、
放電チェンバー内でカソードフィラメントに電圧を加える工程と、
上記カソードと、放電チェンバーハウジングと、アノードとをバイアスする工程と、
細長抽出スリットを介して電子をリボンイオンビームに放出する工程とを含む、方法。
【請求項15】
アノード電圧よりも低い電圧に、上記カソードの電圧と上記放電チェンバーの電圧とをバイアスする、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
上記放電チェンバーは気体を含み、
上記放電チェンバー内の圧力は約5×10−5Torrから1×10−4Torrであり、
上記気体はキセノンとアルゴンとを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記方法は、タウンゼント放電モードで実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
カソード電流は約40ampsであり、
上記カソードおよび放電チェンバーハウジングは、周囲と比べて−20ボルトから20ボルトまでの間にあり、
上記アノード電圧は30ボルトから100ボルトまでの間である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
イオン注入システムにおいてリボンイオンビームを用いてワークピースに注入を施す方法であって、
リボンイオンビームを生成する工程と、
上記リボンイオンビームを質量分析する工程と、
電子の細長バンドを上記リボンイオンビームに供給する工程と、
少なくとも1つのワークピースに、上記リボンイオンビームからのイオンを注入するために、上記質量分析されたリボンイオンビームを上記少なくとも1つのワークピースに供給する工程とを含む、方法。
【請求項20】
電子の細長バンドを供給する工程は、
プラズマ電子フラッドシステムを供給する工程を含み、上記プラズマ電子フラッドシステムは、気体を含むように構成される放電チェンバーを有するハウジングを備え、また、細長抽出スリット、カソードアセンブリ、カソードフィラメント、およびその中に存在する複数のアノードとを備え、
上記細長抽出スリットは、上記イオン注入システムと直接連絡しており、
上記カソードフィラメントは、上記複数のアノードの間の電位差を通じて上記複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、
電子の細長バンドは、上記イオン注入システム内を移動する上記リボンイオンビームを中和する際に用いられる上記細長抽出スリットを介して放電される、請求項20に記載の方法。
【請求項21】
上記カソードの電圧と上記放電チェンバーハウジングの電圧とが、上記アノードの電圧よりも低い電圧にバイアスされ、
上記放電チェンバー内の圧力は、約5×10−5Torrから1×10−4Torrであり、
上記気体はキセノンを含み、
上記システムはタウンゼント放電モードで作動する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
カソード電流は約40ampsであり、
上記カソードおよび上記放電チェンバーハウジングは、ゼロボルトに設定され、
上記アノードの電圧は100ボルトに設定される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
イオンビームを用いてワークピースに注入を施すためのイオン注入システムであって、
リボンイオンビームを生成するための手段と、
リボンイオンビームを質量分析するための手段と、
電子の細長バンドを、上記質量分析されたリボンイオンビームに供給するための手段と、
ワークピースに上記リボンイオンビームからのイオンを注入するために、上記質量分析されたリボンイオンビームを上記ワークピースに供給するための手段とを備える、イオン注入システム。
【請求項24】
電子の細長バンドを供給するための手段は、
少なくとも1つの気体と、カソードアセンブリと、カソードフィラメントと、その中に存在する複数のアノードとを含むように構成される細長電子スリットを放電チェンバーに設けることを含み、
上記細長抽出スリットは、上記イオン注入システムと直接連絡し、
上記カソードフィラメントは、複数のアノードの間の電位差を通じて上記複数のアノードに引き込まれる電子を放出し、
上記カソードの電圧と上記放電チェンバーハウジングの電圧とを、上記アノードの電圧よりも低い電圧にバイアスし、
上記放電チェンバー内の圧力は約5×10−5Torrから1×10−4Torrであり、
上記システムはタウンゼント放電モードで作動する、請求項24に記載のイオン注入システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−503801(P2011−503801A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533112(P2010−533112)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/012599
【国際公開番号】WO2009/061485
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(505413587)アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド (53)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/012599
【国際公開番号】WO2009/061485
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(505413587)アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド (53)
【Fターム(参考)】
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