説明

イオン交換樹脂層の検出装置および方法

【課題】 簡単な装置により短時間で透明イオン交換樹脂を高精度で検出でき、また透明イオン交換樹脂層が透明液体中にある場合でも透明イオン交換樹脂層と透明液体とを識別することができるイオン交換樹脂層の検出装置および方法を提案する。
【解決手段】 被検出部に存在するイオン交換樹脂層3を、透光面を通して検出する方法であって、光源から被検出部に狭半値角の照射光を照射し、被検出部におけるイオン交換樹脂層3からの反射光を撮像部材で受光して撮像し、撮像画面23の画像信号から、データ処理部において、高輝度領域21aに含まれる上下方向の画素列を走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層3の有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂の検出方法および装置に関し、特にカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂などの透明液体中に存在するイオン交換樹脂層の界面を検出するのに適したイオン交換樹脂の検出装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂を用いる混床式のイオン交換装置では、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の混合樹脂が充填される分離塔と、この分離塔の下部に逆洗水を導入する給水管と、この給水管に設けられた流量調節弁と、分離塔の上部から逆洗排水を排出する排水管と、分離されたアニオン交換樹脂を排出するように分離塔内に開口する樹脂移送管とが設けられている。このイオン交換装置の再生に際しては、給水管から逆洗水を導入して、樹脂層内を上向流で通水して樹脂の逆洗分離を行い、樹脂層の分離界面を樹脂移送管の開口面に一致させて、アニオン交換樹脂を樹脂移動管から移送することによりイオン交換樹脂を分離している。このような装置では、樹脂層の分離界面付近に光学的な検出器を設け、検出器からの界面検出信号により樹脂移送管の開口面を基準面として、樹脂層の分離界面が基準面より高いときは前記流量調節弁を絞り、低いときには開いて分離界面を樹脂移送管の開口面に一致させるように流量調節弁を自動制御することにより、樹脂分離が自動化されている。
【0003】
特許文献1(特許第2621575号)には、このようなイオン交換装置において、樹脂層の分離界面を検出するために、樹脂層に投光する投光部および反射光を受光する受光部を有する複数の色判別センサーを分離界面付近の上下方向に配置した界面検出器が示されている。この特許文献1では、受光素子の受光位置における検出対象樹脂の色調差(階調差)により界面を検出して、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離を行っており、分離塔の特定領域に特定波長域の光源を照射し、前記特定領域に存在する樹脂の色素に依存する反射光の波長信号の強弱を基とした検出方法である。
【0004】
特許文献2(特開2004−98011号)には、分離塔に充填されたイオン交換樹脂層を、その側方から撮像して分離塔の所定の高さ位置における所定領域の前記イオン交換樹脂層の画像を求める撮像工程と、この撮像工程で得られた画像を構成する画素信号を判定してイオン交換樹脂に相当する画素信号を判定する画素判定工程と、このイオン交換樹脂に相当する画素信号の画素数または画像の所定領域中における画素信号が占める面積割合から前記画像におけるイオン交換樹脂層の種別を求める樹脂判定工程と、判定された樹脂層に応じて前記画像の撮像範囲内にイオン交換樹脂層の境界面を判定する境界面判定工程とを備える界面検出方法が示されている。この方法は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂のそれぞれの色素成分を基に撮像面内に存在する画素数を求め、その存在割合(面積比率)によって界面を検出するという方法である。
【0005】
これらの方法はいずれも、光の照射による評価領域における樹脂層の色(または特定波長のレベル)の検出を基本とした考え方であるため、照射する照明手段は評価領域の全体に対して、できるだけ均一な光を照射し、反射光の階調を評価して、界面の検出を行うことを基本とした考え方である。特許文献1においても、計測位置の反射レベルを検出するという観点から、検出位置に光度の高い光を投射しており、期待しているのは照射領域からの全体としての反射光レベルである。そしてこれらの方法では、全体としての反射光から得られる樹脂層の表面(観察面)の状態を受光部に結像させ、その表面の状態を色(階調)として検出している。
【0006】
このような従来の方法では、ポーラス型イオン交換樹脂のように、樹脂がそれぞれ特有の色調を有し、反射光の階調差によりそれぞれの樹脂の色調を識別できる場合には問題がない。しかし、ゲル型カチオン交換樹脂のような透明樹脂の検出は、階調差による識別では、検出が困難である。ゲル型樹脂は無色透明、または微弱な色を持った着色透明であるため、従来のように照射光は透過し、反射光は微弱であるため、樹脂層の表面(観察面)の状態を受光部に結像させることができず、受光器または撮像機で反射光による樹脂層の検出を行うことができない。この場合、照射光の強度を高めても、反射光の強度はそれほど増加せず、透明樹脂の検出精度は向上しない。のぞき窓のような透光面を通して樹脂を検出する場合、透光面からの反射光と樹脂層からの反射光とが重なるため、ノイズが大きくなり、検出精度は向上しない。特に光の照射領域が広いと、透光面(のぞき窓)からの反射光が受光素子ないし撮像機に入りやすく、樹脂層からの反射光との重なりを避けることができない。
【0007】
このように従来法のような樹脂色を基本とした階調差による検出方法では、色調を有するアニオン交換樹脂の検出は可能であったが、透明樹脂の検出はできなかった。特に透明樹脂が水中にある場合、水と透明樹脂(特にゲル型カチオン交換樹脂)の区別ができず、アニオン交換樹脂を除去した後のゲル型カチオン交換樹脂と水との区別が困難となっていた。このためアニオン交換樹脂を除去した後のカチオン交換樹脂層の界面位置が検出できず、逆洗水の上昇流の制御に支障を生じていた。
【0008】
このような点を解決するため、未公開の特許文献3(特願2004−219689号)に、被検出部に存在するイオン交換樹脂を、透光面を通して検出する方法であって、光源から被検出部に光を照射し、イオン交換樹脂からの反射光を結像部材で受けて光源の実像を撮像部材に結像させ、透光面からの反射光とイオン交換樹脂からの反射光が重ならない位置において、撮像部材から撮像信号を取出して検出装置でイオン交換樹脂を検出する装置および方法が提案されている。これにより透明粒状のイオン交換樹脂を高精度で検出でき、透光面を通して検出する場合でも高精度で検出でき、また透明液体中にある場合でも透明粒状のイオン交換樹脂と透明液体とを識別することができる。
【0009】
このような特許文献3の検出装置および方法において、イオン交換樹脂からの反射光を結像部材で受けて光源の実像を結像させる撮像部材は、特許文献2の場合と同様にCCDカメラ等の撮像部材が用いられ、この撮像部材で撮像した撮像画面の全画像信号を取出して検出装置で画像処理し、イオン交換樹脂を検出している。この場合、全画面の画像信号を取出してメモリーにデータとして記憶させ、このデータを演算装置で例えば水平方向に走査して輝度の平均値および振幅を求め、イオン交換樹脂層の有無および界面を検出する例が示されている。
【0010】
しかしながらこのようなデータ処理方法では、全画面の画像信号を取出して記憶させ、このデータをさらに演算装置で処理するため、データ処理が複雑で長時間を要するほか、アルゴリズムが複雑となり、システム全体が複雑で、大容量化、大型化するなどの問題点がある。
【0011】
また輝度補正を自動的に行うために、AGC(Auto Gain Control)機構と呼ばれる受光量を自動的に調整する機構を備えた撮像部材が使用されるが、のぞき窓を通して樹脂に対して光を照射した場合、照明光の指向角が広いと、のぞき窓を通して樹脂層に対して、広い範囲にわたって光が照射され、撮像画面の広い領域の輝度が高くなり、高い平均輝度を基準として輝度制御が行われる。そのため撮像される面全体が明るくなってしまい、高輝度の領域の輝度の差が強調され、低輝度の領域の受光感度が低く調整される。イオン交換樹脂の場合、アニオン交換樹脂の輝度が高いため、アニオン交換樹脂層の微かな輝度の差が強調されてアニオン交換樹脂層の存在が不明確になり、またカチオン交換樹脂層の輝度が低くなり、カチオン交換樹脂層と水相の区別ができにくくなる。この現象は、側光領域の輝度を基準とすることにより生じるものであるため、透光面からの反射光と粒状樹脂からの反射光が重ならない位置において像信号を取出す場合においても生じる。
【特許文献1】特許第2621575号
【特許文献2】特開2004−98011号
【特許文献3】特願2004−219689号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、簡単な装置により短時間で透明イオン交換樹脂を高精度で検出でき、また透明イオン交換樹脂層が透明液体中にある場合でも透明イオン交換樹脂層と透明液体とを識別することができるイオン交換樹脂層の検出装置および方法を提案することである。
【0013】
本発明は、次のイオン交換樹脂層の検出装置および方法である。
(1) 被検出部に存在するイオン交換樹脂層を検出するための装置であって、
被検出部に狭半値角の照射光を照射する光源と、
被検出部におけるイオン交換樹脂層からの反射光を受光して撮像する撮像部材と、
撮像した画面の画像信号から、高輝度領域に含まれる上下方向の画素列を走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層の有無を検出するデータ処理部と
を備えたイオン交換樹脂層の検出装置。
(2) データ処理部が、複数の画素列を走査して輝度信号を比較し、データを補正するように構成された上記(1)記載の装置。
(3) 透光面を通して被検出部に存在するイオン交換樹脂層を検出するための装置であって、
透光面からの反射光とイオン交換樹脂層からの反射光が重ならない位置において輝度を測光し、または輝度信号を取出すように構成された上記(1)または(2)記載の装置。
(4) 撮像部材が、半値角外の低輝度領域の輝度を測光し、または半値角外の低輝度領域を含む領域の平均輝度を測光して輝度制御するAGC機構を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の装置。
(5) 被検出部に存在するイオン交換樹脂層を検出する方法であって、
光源から被検出部に狭半値角の照射光を照射し、
被検出部におけるイオン交換樹脂層からの反射光を撮像部材で受光して撮像し、
撮像した画面の画像信号から、データ処理部において、高輝度領域に含まれる上下方向の画素列を走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層の有無を検出するイオン交換樹脂層の検出方法。
(6) データ処理部で、複数の画素列を走査して輝度信号を比較し、データを補正する上記(5)記載の方法。
【0014】
本発明において検出の対象となるイオン交換樹脂層は、光源からの光を反射(鏡面反射)する反射面(鏡面)を有する粒状のイオン交換樹脂からなるが、粒状樹脂の反射面は光源の実像を結像させることができるように、実質的に鏡面反射するものが好ましい。粒状樹脂が透明液体中に存在することによって反射面が形成される粒状物も検出の対象となる。イオン交換樹脂層は透明でなくてもよく、また経時変化により鏡面反射度が低下したものでもよい。透明樹脂という場合、着色透明、半透明を含む。粒状樹脂の形状は、球状、だ円球状のものが好ましい。このような粒状イオン交換樹脂としては、透明なゲル型カチオン交換樹脂が対象として適している。イオン交換樹脂の場合、透明なゲル型カチオン交換樹脂とともに不透明なゲル型アニオン交換樹脂等が共存していてもよい。
【0015】
被検出部はこのようなイオン交換樹脂層が存在する部分、特にカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂などのイオン交換樹脂層の界面が存在する部分であり、このような部分に本発明の検出装置を配置して、イオン交換樹脂層の検出を行う部分である。被検出部は、のぞき窓のような透光面を通してイオン交換樹脂層を検出するように構成されたものでもよい。イオン交換樹脂層が水等の透明液体中に存在する場合は、容器自体が透明で透光面となるもののほか、容器自体は不透明でも、のぞき窓のような透光面を通して内部の粒状物を検出するように構成されたものでもよい。
【0016】
検出装置の構成要素としての光源は、被検出部に光を照射するものであり、LED、ハロゲン光源、蛍光灯、タングステン球、キセノン球等の発光素子を使用できるが、狭半値角の照射光を照射する光源を使用する。光源の半値角は、相対発光光度がピーク値に対して50%になるところの光軸からのずれ角度の2倍の角度であり、半値角30度(0±15°)以下、好ましくは20度(0±10°)以下のものが好ましい。このような光源としては、LEDのように半値角の狭いものはそのまま使用できるが、レンズ等により半値角を調整することもできる。光源は、半値角内の高輝度領域が被検出部の1/2以下、好ましくは1/3以下となるように被検出部に照射する位置に配置するのが好ましい。イオン交換樹脂層の場合、アニオン交換樹脂層およびカチオン交換樹脂層の界面を横切るように、被検出部であるのぞき窓の片側に寄せて、上下方向に間隔を置いて複数個を列状、好ましくは直線状に配置するのが好ましい。
【0017】
撮像部材は、被検出部に存在するイオン交換樹脂層からの反射光を受光して撮像するものであり、CCDカメラ、CMOSセンサーなどの2次元的に信号を取出せるイメージセンサが使用される。この撮像部材は、輝度制御を行うAGC機構を有し、半値角外の低輝度領域を含む領域の輝度を測光して輝度制御するものが好ましい。AGC機構の測光方式は、半値角内の高輝度領域の高輝度部分のみを測光するピーク測光方式以外の方式であればよいが、半値角外の低輝度領域の輝度を測光し、または半値角外の低輝度領域を含む領域の平均輝度を測光して輝度制御するものが好ましい。この撮像部材は、照射光の半値角内の高輝度領域および半値角外の低輝度領域を含む被検出部の全領域を撮像するように配置される。輝度制御の方法は、絞り、露出等を光学的に制御するもののほか、電子的に輝度を制御するものでもよい。
【0018】
撮像部材は、被検出部に存在する粒状イオン交換樹脂からの反射光を受けて光源の実像を撮像面に結像させるように、レンズ等の結像部材を含むものが使用される。結像部材は、被検出部の表面(透光面がある場合は透光面と内部の粒状物層の界面)または粒状物の表面状態、形状等の実像を結像させるものではなく、粒状物の表面に映り込む光源の実像を結像させるものであるから、結像部材の焦点は、被検出部または粒状物の表面ではなく、粒状物の表面に映り込む光源の虚像の位置である。虚像の位置は、平面鏡の場合は光源からの距離分だけ隔たった反射面の反対側の位置であるが、粒状物の場合はその位置から粒状物表面の曲率半径に対応した分だけ反射面側に近よった位置になる。
【0019】
撮像部材を配置する位置は、イオン交換樹脂層からの反射光を受けて光源の実像を撮像面上に結像させる位置である。透光面を通して粒状物を検出する場合は、透光面からの反射光とイオン交換樹脂層からの反射光が重ならないように撮像部材を配置するのが好ましい。のぞき窓のような透光面は通常透明な平板ガラスが用いられるが、照射光の一部はこの透光面で反射する。この透光面からの反射光とイオン交換樹脂層からの反射光が重なると、イオン交換樹脂層からの反射光は微弱であるため検出されなくなる。透光面からの反射光と粒状物からの反射光が重ならない位置において輝度信号を取出すことが可能であれば、結像する実像の一部に透光面からの反射光が重なっていてもよいが、結像する実像に透光面からの反射光が重なっていない方が、透光面からの反射光によるハレーション等の影響を防止できるとともに、撮像部材による輝度信号取出領域を広くでき好ましい。
【0020】
データ処理部は、撮像部材により撮像した画面の画像信号から、高輝度領域に含まれる上下方向の画素列を、1または複数の走査線に沿って走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層の有無を検出するように構成される。特に複数の走査線に沿って画素列を走査する場合、それぞれの輝度信号を平均して輝度データとすることができ、またそれぞれの輝度信号の差が所定値を超える場合は、界面上に残留樹脂が存在すると判定してデータを補正するように構成されるのが好ましい。データ処理部は、記録部、演算部、判定部、制御部等を含むものを用いることができる。透光面を通して被検出部に存在するイオン交換樹脂層を検出する場合は、透光面からの反射光とイオン交換樹脂層からの反射光が重ならない位置において画像信号を走査し、輝度信号を取出すように構成される。イオン交換樹脂層として、アニオン交換樹脂層およびカチオン交換樹脂層の界面を検出する場合、データ処理部は、樹脂層の界面を横切るように、配置された複数個の光源の列に沿って、上下方向に画像の高輝度領域を走査し、樹脂層の界面を横切る画素列の輝度信号を得、各位置の輝度の値を比較して樹脂層の界面を検出することができる。
【0021】
データ処理部におけるイオン交換樹脂層の検出は、走査により得られる画素列の輝度レベルにより判定するように構成される。水相は反射光がないため輝度レベルはゼロになる。アニオン交換樹脂層は着色不透明樹脂であるため反射光が多く、輝度レベルは飽和レベルに達する。これに対してカチオン交換樹脂層は光源が映り込んだ画像が得られるため、ダイヤモンドダスト状に光輝部が分散した状態であり、輝度レベルは中間値で変動する。このような標準値を設定値として記憶させておき、走査により得られる画素列の輝度レベルを上記の標準値と比較することにより、それぞれの樹脂層および界面を検出するように構成することができる。
【0022】
上記の輝度レベルの標準値は、AGC機構により撮像部材の感度が適正に制御された状態のものであり、前述のように高い輝度を基準として輝度制御が行われ、撮像画面全体が明るくなってしまうと、高輝度のアニオン交換樹脂の輝度の差が強調されて輝度レベルの値が変動し、アニオン交換樹脂層の存在が不明確になる。低輝度の領域の受光感度が低く調整され、カチオン交換樹脂層の輝度レベルが低くなって、カチオン交換樹脂層と水相の区別ができにくくなるとともに、カチオン交換樹脂層の輝度レベルの値は変動するため、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層の界面が不明確になる。このような状態はAGC機構により撮像部材の感度を適正に制御することにより前記標準状態に調整することができる。
【0023】
光源、撮像部材、データ処理部等は、それぞれ別の部材を組み合わせて配置することもできるが、これらの一部または全部が組み合わされて一体化された部材がある場合は、そのような組み合わされた部材を用いることができる。光源は上下方向に沿って列状に配置することができ、その複数個の光源の群に対応して撮像部材を複数個配置して、被検出部の異なる部分を撮像することができる。この場合、データ処理部は、複数の撮像部材の撮像画像を組み合わせた単一の画像として、あるいはそれぞれを別の画像としてデータ処理するように構成することができる。
【0024】
上記の検出装置により被検出部におけるイオン交換樹脂層を検出する方法は、光源から被検出部の限定された領域に照射光を照射し、被検出部に存在するイオン交換樹脂層からの反射光を撮像部材で受けて撮像する。このとき撮像部材のAGC機構により、半値角外の低輝度領域の輝度を測光し、または半値角外の低輝度領域を含む領域の平均輝度を測光して輝度制御するのが好ましい。この場合、撮像画面の高輝度領域からデータ処理部により輝度信号を取出して解析し、イオン交換樹脂層の存在、特にイオン交換樹脂層の界面の存在を検出する。透光面を通して被検出部に存在する粒状物を検出する場合は、光源から透光面を通して被検出部に光を照射し、透光面からの反射光とイオン交換樹脂層からの反射光が重ならない位置において、輝度信号をデータ処理部に取出すことにより、透光面からの反射光によるノイズを除去して、イオン交換樹脂層の存在を検出することができる。
【0025】
イオン交換樹脂の場合、ゲル型カチオン交換樹脂のような透明な粒状物のみの存在を検出することができ、これによりゲル型カチオン交換樹脂層と水相の界面を検出することができる。ゲル型カチオン交換樹脂のような透明な粒状物とともに不透明なゲル型アニオン交換樹脂等の不透明な粒状物が共存している場合でも、反射光の強度の違いや変化の違い等がある場合にはそれぞれ存在を検出することができる。イオン交換樹脂の場合、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の混合樹脂が分離される分離塔の樹脂層の分離界面付近に検出装置を設け、検出装置の輝度信号により樹脂層の界面を検出することができる。
【0026】
照明光の指向角が広い場合には、樹脂層の広い範囲にわたって光が照射され、撮像画面の広い領域の輝度が高くなり、高い輝度を基準として輝度制御が行われるため、撮像される面全体が明るくなって高輝度の領域の輝度の差が強調され、低輝度の領域の受光感度が低く調整されているが、被検出部に狭半値角の照射光を、半値角内の高輝度領域が1/2以下となるように照射し、半値角外の低輝度領域を含む領域の輝度を測光して輝度制御することにより、適正な輝度の画像を得、イオン交換樹脂層の検出精度を高めることができる。
【0027】
このようにして被検出部におけるイオン交換樹脂層からの反射光を撮像部材で受光して撮像し、撮像画面の画像信号から、データ処理部において、高輝度領域に含まれる上下方向の画素列を走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層の有無を画素列の輝度レベルにより判定して検出する。この場合、アニオン交換樹脂層は着色不透明樹脂であるため反射光が多く、輝度レベルは飽和レベルに達する。これに対してカチオン交換樹脂層は光源が映り込んだ画像が得られるため、ダイヤモンドダスト状に光輝部が分散した状態であり、輝度レベルは中間値で変動する。このため走査により得られる画素列の輝度レベルを設定された標準値と比較することにより、それぞれの樹脂層および界面を検出することができる。
【0028】
カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層の界面付近からアニオン交換樹脂を排出する場合、アニオン交換樹脂層の大部分が排出されたにもかかわらず、残留する一部のアニオン交換樹脂がのぞき窓の透光面に付着したり、あるいはカチオン交換樹脂層の上部で舞い上がったりすると、カチオン交換樹脂層の上部に輝度レベルの高い飽和しない部分が検出され、カチオン交換樹脂層があると判定され、樹脂層の界面を誤って検出することがある。このような場合、データ処理部で、複数の画素列を走査して輝度信号を比較し、データを補正することにより、誤検出を防止することができる。またカチオン交換樹脂層の上部に輝度レベルゼロの水相を検出した場合には、さらに上の領域に輝度レベルの高い部分が検出されても、これを無視するロジックを組み込むことによっても、誤検出を防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、光源から被検出部に狭半値角の照射光を照射し、被検出部におけるイオン交換樹脂層からの反射光を撮像部材で受光して撮像し、データ処理部において、撮像画面の画像信号から、高輝度領域に含まれる上下方向の画素列を走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層の有無を検出するようにしたので、簡単な装置により短時間で透明イオン交換樹脂を高精度で検出でき、また透明イオン交換樹脂層が透明液体中にある場合でも透明イオン交換樹脂層と透明液体とを識別することができる。
またデータ処理部で、複数の画素列を走査して輝度信号を比較し、データを補正することにより、高輝度の樹脂が一部残留する場合でも、樹脂界面を高精度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は実施形態のイオン交換樹脂層の検出装置の基本的な構成を示す構成図、図2(a)は検出装置の一部の正面図、(b)はそのA−A断面図、図3は実施例1の撮像画面を示す正面図、図4(a)は実施例1の輝度レベルチャート、(b)は比較例1の輝度レベルチャート、図5はデータ処理のフローチャートであり、イオン交換樹脂の分離塔に適用した例を示す。図1は基本的な構成を説明するために、単層の樹脂を充填した例を示している。図4(a)、(b)は走査線の下端(0)から上方向へ至る輝度の変化を、グレースケールの256階調の輝度レベルで表示している。
【0031】
図1において、1は分離塔で、透明なイオン交換樹脂からなる球状の透明樹脂2が充填されて樹脂層3が形成され、上部の水相4との間に界面5が形成されている。分離塔1にはのぞき窓6が設けられ、透明ガラスがはめ込まれて透光面7が形成され、その界面5付近が被検出部8となっている。10は検出装置で、光源11、結像部材12を有する撮像部材13およびデータ処理部14から構成されている。
【0032】
光源11は狭半値角±θのLEDを使用し、半値角±θ内の高輝度領域21が被検出部8の1/3以下となるように被検出部8に照射する位置に、のぞき窓6の片側に寄せて、樹脂層3の界面5を横切るように、上下方向に間隔を置いて複数個配置されている。実施例ではLED照明は中心波長870nm、半値角0±10°(−6dB:放射強度半値角)、最大出力10mW(駆動電流IF=20mA)のものを使用した。この光源11はのぞき窓6の透光面7から樹脂層3の側面に対して直接照射されるように配置されている。
【0033】
撮像部材13は、結像部材12としてレンズにより被検出部8の撮像画面23を形成するCCDカメラ(1/3” 25万画素、SN比48dB)が用いられている。結像部材12は光源11の照射光の中心軸から25mm離れた位置を中心とするように配置され、被検出部8の半値角±θ内の高輝度領域21、および片側の半値角±θ外の低輝度領域22の全域を撮像するように配置されている。また撮像部材13は複数個の光源11の群に対応して、上下に3個配置されている。撮像部材13は輝度制御を行うAGC機構を有し、半値角±θ外の低輝度領域を含む領域の輝度を測光して輝度制御するように構成されている。AGC機構の測光方式は、半値角外の低輝度領域を含む全領域の平均輝度を測光して輝度制御するものが使用されているが、中心測光方式その他、半値角±θ外の低輝度領域を含む領域の輝度を測光して輝度制御するものでもよい。
【0034】
光源11のLED照射光が直接照射されている位置では、のぞき窓6の透光面7の表面および裏面において、透光面7と空気または樹脂層3を満たす水との屈折率の差から反射光aが発生するが、領域を限定して狭半値角の照射光を照射することにより、透光面7からの反射光aと透明樹脂2からの反射光bが重なることはなく、このため撮像部材13には透光面7からの反射光aは結像せず、透明樹脂2からの反射光bを撮像部材12で受けて光源11の実像のみが撮像画面23に結像するように、光源11と撮像部材12が配置される。
【0035】
データ処理部14は演算部15、判定部16、発光部17およびメモリ18から構成され、撮像部材13によって得られる被検出部8の撮像画面23の高輝度領域21aから輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層3、特にその界面5を検出するように構成されている。この場合、データ処理部14は、樹脂層3の界面を5横切るように配置された複数個の光源11の列に平行な走査線24に沿って、撮像画面23の高輝度領域21aを上下方向に走査し、樹脂層3の界面5を横切る画素列の輝度信号を得、各位置の輝度の値を比較して樹脂層3の界面5を検出するように構成されている。
【0036】
演算部15はメモリ18に記録された撮像画面23の画素毎の受光レベルデータを入力し、演算処理するように構成されている。判定部は、演算結果をあらかじめ入力されている判定条件と比較して、水相、樹脂層(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)を判断するように構成されている。発光部17は、半値角内の高輝度領域が1/2以下となる位置に照射するよう光源11を発光駆動するように構成されている。メモリ18は、撮像部材13の撮像画面23の輝度信号を記録するように構成されている。
【0037】
データ処理部14におけるイオン交換樹脂層3の検出は、走査により得られる画素列の輝度レベルにより判定するように構成されている。水相4は反射光がないため輝度レベルはゼロになる。イオン交換樹脂層3がアニオン交換樹脂層の場合は着色不透明樹脂であるため反射光が多く、輝度レベルは飽和レベルに達する。これに対してカチオン交換樹脂層の場合は光源が映り込んだ画像が得られるため、ダイヤモンドダスト状に光輝部が分散した状態であり、輝度レベルは中間値で変動する。このような標準値を設定値としてメモリ18に記憶させておき、走査により得られる画素列の輝度レベルを上記の標準値と比較することにより、それぞれの樹脂層3および界面5を検出するように構成されている。
【0038】
上記の輝度レベルの標準値は、AGC機構により撮像部材13の感度が適正に制御された状態のものであり、前述のように高い輝度を基準として輝度制御が行われ、撮像画面23全体が明るくなってしまうと、高輝度のアニオン交換樹脂の輝度の差が強調されて輝度レベルの値が変動し、アニオン交換樹脂層の存在が不明確になる。低輝度の領域の受光感度が低く調整され、カチオン交換樹脂層の輝度レベルが低くなって、カチオン交換樹脂層と水相の区別ができにくくなるとともに、カチオン交換樹脂層の輝度レベルの値は変動するため、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層の界面が不明確になる。このようなことがなく、前記標準状態に調整するようにAGC機構により撮像部材13の感度が適正に制御されている。
【0039】
以下、上記の検出装置10による樹脂の検出方法について説明する。まず演算部15からの命令により発光部17から光源11に電源が供給され、光源11(LED)は発光する。このとき光源11は樹脂層3に対して光軸が垂直になる方向に設定され、半値角±θ内の高輝度領域21が被検出部8の1/3以下となるように、界面5の被検出部8を照射する。撮像部材13は、被検出部8の半値角±θ内の高輝度領域21、および片側の半値角±θ外の低輝度領域22の全域を撮像するが、AGC機構により、半値角±θ外の低輝度領域22を含む全領域の平均輝度を測光し自動的に輝度制御して、被検出部8を撮像し、撮像画面23を形成する。
【0040】
このとき撮像部材13は、界面5に隣接する樹脂層3の一粒一粒の樹脂2の表面に写りこむ光源11の虚像にカメラの焦点を調整すると、撮像部材(カメラのCCD)13に光源11の実像が結像する。撮像部材13の撮像画面23の輝度信号は演算部15からメモリ18に送られ、ここでいったん記録される。メモリ18に記録されたCCDカメラの画素毎の輝度レベルデータは演算部15に入力して演算処理され、判定部16であらかじめ入力されている判定条件と演算結果を比較して、水相4か樹脂層3(アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂)かを判定する。
【0041】
イオン交換樹脂の界面検出過程を、図5のフローチャートにより説明する。
(1)S1〜S2(画像取り込み):
のぞき窓6に設置した撮像部材13が樹脂分離塔の被検出部を撮像した画像データを取り込むとともに、一本ないし複数本の走査線24における画素毎の輝度レベルのデータを取り込む。以下、データの演算は、物理的な位置が下から上の方向へ実施すると仮定する。
【0042】
(2)S3 (フィルタ処理):
予め指定した連続する画素数以下で飽和レベルがあった場合は、該当画素全ての輝度レベルを無効値(例えば、0)にし、それ以外の場合は、元の値をそのまま出力する。この処理は、個別に舞ったアニオン樹脂による誤検知やのぞき窓に付着したアニオン樹脂が演算に与える影響を除去するためである。
【0043】
(3)S4(平均化処理):
樹脂界面判定に、複数の走査線を利用する場合に実施する。複数の走査線において同じ高さにおける画素毎の平均を算出し、一本の走査線に合成された輝度レベル信号を作成する。
【0044】
(4)S5(水相レベル検出):
予め指定した連続する画素数分、予め設定した低輝度レベルが続いた場合、該当領域以上を水相とみなす。この処理は、個別に舞ったアニオン樹脂による誤検知やのぞき窓に付着したアニオン樹脂の影響を除去するためである。
【0045】
(5)S6(判定データ作成)
S4までで算出した輝度レベル信号をもとに、水/アニオン樹脂/カチオン樹脂、各々の界面判定を行うためのデータを作成する。
(a)絶対値データ:水/アニオン樹脂境界面高さ(以下、アニオントップと記す)判定に使用する。輝度レベル信号の絶対値をそのまま使用する。
(b)振幅データ:カチオン/アニオンないしカチオン/水の境界面高さ(以下、カチオントップと記す)判定に使用する。界面高さ判定処理全範囲内において、移動処理幅W1で「(最大値)―(最小値)」を取った値が一定の閾値W2を満たす場合を『カチオン有』とし、それ以外を無効とする。
【0046】
(6)S7 アニオントップ検出:
飽和レベルが、指定した画素数連続した際、最後に連続した画素の最後の位置をアニオントップ(上面)とする。
(7)S8(カチオントップ)検出:
S6の(b)において、最後に『カチオン有』とした画素番号をカチオントップ(上面)とする。このとき、S5で認識した水相が存在する際には、水相の上にカチオン樹脂が存在しないため、演算は水相が存在するその領域手前までとする。
(8)S9(物理量演算):
算出された画素番号をもとに、実際の界面高さへと変更する。
【0047】
(9)S10(変動量チェック):
バッファに取り込んでいた前回の界面高さと今回の演算結果によって得られた界面高さとを比較する。あらかじめ設定した変動幅(±V1)で所定時間(T1)継続した場合、変動幅(±V2)以上の変動に対して、前回出力を保持し、判定フローのS1に戻る。ただし、V2以上の変動が所定時間(T2)継続した場合は、これに追随する。
(10)S11(出力):
アニオントップ、カチオントップを、界面高さ制御装置へ出力する。
【0048】
図1では単層の樹脂を充填した例を示しており、これにより透明樹脂層を撮像する場合の基本的な構成を説明すると、撮像部材13の撮像範囲に樹脂層3が上昇し、樹脂層3内の樹脂2の表面に照射光が反射するとき、撮像画面に画像が形成される。このとき、水相4には樹脂2は存在しないため、その輝度レベルはゼロである。これに対して、樹脂層3の存在する下部においては、樹脂2に映り込んだ光源11の照射光が反射してくるため、照明手段の映り込んだ部分と、映り込んでいない部分の存在により、輝度レベルは上下で大きく変動をする。上下方向に並んだ走査画素列の輝度レベルは、そのまま演算部15に入力されて数値化され、メモリ18に格納される。そして、格納されたデータは判定部16により、計測すべき縦方向の位置と、あらかじめ設定された領域に相当する画素データと共に入力され、演算される。
【0049】
いま演算部15が樹脂界面5以外の水相4または樹脂層3を対象に演算を実施する時、水相4においては求められる輝度が小さくなることから、また樹脂層3においては輝度が大きくなることから、評価を実施している部分が水相4か樹脂層3かを判定する。以上のようにして、演算部15は評価を実施している部分が樹脂層3か水相4か、または樹脂層3と水相4の界面5かを判別することが可能となり、判定部16は外部に樹脂層3・水相4・界面5の各判定結果を出力することができる。
【0050】
図1は基本的な構成を説明するために単層の樹脂を充填した例を示しているが、本発明で対象とするイオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を組み合わせて使用する場合がある。混床式のイオン交換樹脂層を分離する場合、カチオン交換樹脂層の上にアニオン交換樹脂層が積層された状態で分離される構成となり、分離界面を脂移送管の開口面に一致させて、アニオン交換樹脂を排出し、カチオン交換樹脂層が残留することになる。図3はこのような例における撮像画面23を示しているが、撮像される被検出部8も同様の構成となっている。図3では、カチオン交換樹脂層3aの上に積層されたアニオン交換樹脂層3bが排出される過程を示しており、残留するアニオン交換樹脂層3bの上に水相4aが形成されている。図3では撮像画面23に撮像された画像を示しており、光源11aも反射光が画像として示されている。21aは撮像画面23の高輝度領域、22aは撮像画面23の低輝度領域、24は走査線を示す。
【0051】
上記のようにカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の混合樹脂が分離される分離塔の樹脂層の分離界面付近に検出装置を設けて樹脂層の界面5を検出する場合、アニオン交換樹脂層3bは着色されているため輝度が高い。カチオン交換樹脂がゲル型である場合は透明樹脂であるため、カチオン交換樹脂層3aの輝度は低い。このため撮像部材13のAGC機構で測光する輝度は、アニオン交換樹脂層3bの輝度が主たる輝度になり、他の部分の輝度は低い。
【0052】
この場合、照明光の半値角±θが広いと、広い範囲にわたって光が照射され、撮像画面23の広い領域の輝度が高くなり、高い平均輝度を基準として輝度制御が行われる。そのため撮像画面23のアニオン交換樹脂層3bの全体が明るくなり、高輝度領域の輝度の差が強調され、低輝度領域の受光感度が低く調整される。このときアニオン交換樹脂の輝度が高いため、アニオン交換樹脂層3bの微かな輝度の差が強調されてアニオン交換樹脂層3bの存在が不明確になり、またカチオン交換樹脂層3aの輝度が低くなり、カチオン交換樹脂層3aと水相4aの区別ができにくくなる。
【0053】
図2(b)における破線26は、比較例1として広半値角(0±30°)のLEDを光源11として用いた場合の半値角±θ1を構成する線を示している。図3における破線26aは広半値角(0±30°)の場合における半値角±θ1に対応する線、すなわちアニオン交換樹脂層3bの高輝度領域と低輝度領域の境界を示しており、広範囲にわたり高輝度領域の照射が行われる。この場合、AGC機構は広範囲にわたる高輝度領域の輝度を測光して輝度制御が行われるため、撮像画面は全体を高輝度側へ輝度制御する。図4(b)はこのような場合に、図3の走査線24にそって撮像画面23の画素列を走査した比較例1の輝度レベルチャートであり、グレースケールで256階調の輝度レベルを表示している。ここではアニオン交換樹脂層3b(AR層)の微かな輝度の差が強調されて、輝度の強弱が表示されており、アニオン交換樹脂層3bが存在するのかどうかが不明確になっている。またカチオン交換樹脂層3aの輝度が低くなり、カチオン交換樹脂層3a(CR層)と水相4aの区別ができにくくなる。
【0054】
これに対して図2(b)において実線25は、実施例1として狭半値角±θ(0±10°)のLEDを光源11として用いた場合の半値角±θを構成する線を示している。ここでは照射光を被検出部8に、半値角±θ内の高輝度領域21が被検出部8の1/2以下となるように照射し、半値角±θ外の低輝度領域22を含む領域の輝度を測光して輝度制御することにより、高輝度領域21の輝度より低い適正な輝度の画像を得、イオン交換樹脂層3の検出精度を高めることができる。図3における実線25cはこの場合におけるアニオン交換樹脂層3bの高輝度領域25aと低高輝度領域25bの境界を示しており、限られた狭い範囲に高輝度領域25aの照射が行われ、広い低高輝度領域が形成される。
【0055】
図4(a)はこのような場合に、図3の走査線24にそって走査した実施例1の輝度レベルチャートであり、アニオン交換樹脂層3b(AR層)の輝度は飽和していて、アニオン交換樹脂層3bが存在することが明確になっている。またカチオン交換樹脂層3aの輝度の差が強調されて、カチオン交換樹脂層3a(CR層)とアニオン交換樹脂層3bの区別が容易になっている。このため高輝度領域21が狭くなるような照明を行ってAGC機構で輝度制御してイオン交換樹脂の検出を行うことにより、アニオン交換樹脂層3b、カチオン交換樹脂層3aの存否、ならびにこれらと水相4との界面5を正確に検出することができる。
【0056】
アニオン交換樹脂が排出されてアニオン交換樹脂層3bが撮像画面23から消えると、撮像画面23にはカチオン交換樹脂層3aの上に水相4が形成されるが、これらはいずれも輝度が低いので、撮像部材13のAGC機構は低輝度領域を測光して低輝度側に輝度制御する。この状態ではカチオン交換樹脂層3aに写り込む光源11の反射光が撮像画面23に撮像されるので、この高輝度領域を走査すると、カチオン交換樹脂層3aの輝度レベルの差が強調されて得られる。このためカチオン交換樹脂層3aと水相4の界面5の位置も容易に検出できる。
【0057】
図6は実施例2の撮像画面を示す正面図、図7は実施例2の輝度レベルチャートを示し、(a)は残留する一部のアニオン交換樹脂が走査線と重なった例、(b)は重ならない例を示す。図6はこの実施例2において、アニオン交換樹脂層3bの大部分が排出されたにもかかわらず、残留する一部のアニオン交換樹脂3cがのぞき窓6の透光面7に付着したり、あるいはカチオン交換樹脂層3aの上部で舞い上がって、1本の走査線24と重なっているが、他の走査線24aと重なっていない状態を示している。
【0058】
図7(a)では、残留する一部のアニオン交換樹脂層3aが走査線24と重なっているため、輝度レベルはカチオン交換樹脂層3aと、残留する一部のアニオン交換樹脂3cを示している。これに対して図7(b)では、残留する一部のアニオン交換樹脂3cが走査線24と重なっていないため、輝度レベルはカチオン交換樹脂層3aのみを示している。このような場合、データ処理部14で、複数の画素列を走査した輝度信号を比較し、データを補正することにより、誤検出を防止することができる。付着樹脂はほとんどの場合、樹脂一粒か、またはごく少量が小さな領域に存在しているため、この付着樹脂が存在する領域以上の幅で複数の走査線を設定した場合には、複数の走査線のうち少なくとも1本の走査線には付着樹脂が存在しないことになる。このためそれぞれの輝度の差が特定値を超える場合に、界面上に残留樹脂が存在すると判定してデータを補正することができる。
【0059】
またカチオン交換樹脂層3aの上部に輝度レベルゼロの水相4を検出しているため、さらに上の領域に輝度レベルの高い部分が検出されても、これを無視してカチオン交換樹脂層3aと水相4の境界を界面と判定するロジックを組み込むことによっても、誤検出を防止することができる。
【0060】
上記のように、データ処理部において、撮像画面の画像信号から、高輝度領域に含まれる上下方向の画素列を走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層の有無を検出する方法を採用すると、従来のように、撮像画面の全画面の画像信号をデータ処理方法に比べて、簡単な装置により短時間でデータ処理することができる。通常容易に入手可能な32万画素のCCDカメラの場合、有効画素画面としては640×480画素を持っているため、走査線が1本の場合、画面全体から界面判定処理するのに比べて、画素データの入力処理時間は1/480になり、3本の場合は1/160になる(実際には全画素についてVRAM上に受光レベルを格納する時間がある)。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、イオン交換樹脂の検出方法および装置、特にカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂などの透明液体中に存在するイオン交換樹脂層の界面を検出するのに適したイオン交換樹脂の検出装置および方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態のイオン交換樹脂の検出装置を示す構成図である。
【図2】(a)は実施形態の検出装置の一部の正面図、(b)はそのA−A断面図である。
【図3】実施例1の撮像画面を示す正面図である。
【図4】(a)は実施例1の輝度レベルチャート、(b)は比較例1の輝度レベルチャートである。
【図5】データ処理のフローチャートである。
【図6】実施例2の撮像画面を示す正面図である。
【図7】実施例2の輝度レベルチャートを示し、(a)は残留する一部のアニオン交換樹脂が走査線と重なった例、(b)は重ならない例を示す。
【符号の説明】
【0063】
1 分離塔
2 透明樹脂
3 樹脂層
4 水相
5 界面
6 のぞき窓
7 透光面
8 被検出部
10 検出装置
11 光源
12 結像部材
13 撮像部材
14 データ処理部
15 演算部
16 判定部
17 発光部
18 メモリ
21 高輝度領域
22 低輝度領域
23 撮像画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出部に存在するイオン交換樹脂層を検出するための装置であって、
被検出部に狭半値角の照射光を照射する光源と、
被検出部におけるイオン交換樹脂層からの反射光を受光して撮像する撮像部材と、
撮像した画面の画像信号から、高輝度領域に含まれる上下方向の画素列を走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層の有無を検出するデータ処理部と
を備えたイオン交換樹脂層の検出装置。
【請求項2】
データ処理部が、複数の画素列を走査して輝度信号を比較し、データを補正するように構成された請求項1記載の装置。
【請求項3】
透光面を通して被検出部に存在するイオン交換樹脂層を検出するための装置であって、
透光面からの反射光とイオン交換樹脂層からの反射光が重ならない位置において輝度を測光し、または輝度信号を取出すように構成された請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
撮像部材が、半値角外の低輝度領域の輝度を測光し、または半値角外の低輝度領域を含む領域の平均輝度を測光して輝度制御するAGC機構を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
被検出部に存在するイオン交換樹脂層を検出する方法であって、
光源から被検出部に狭半値角の照射光を照射し、
被検出部におけるイオン交換樹脂層からの反射光を撮像部材で受光して撮像し、
撮像した画面の画像信号から、データ処理部において、高輝度領域に含まれる上下方向の画素列を走査して輝度信号を取出し、イオン交換樹脂層の有無を検出するイオン交換樹脂層の検出方法。
【請求項6】
データ処理部で、複数の画素列を走査して輝度信号を比較し、データを補正する請求項5記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−209881(P2007−209881A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31715(P2006−31715)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】