説明

イオン交換膜を含む固体アルカリ型燃料電池

本発明は、スルホンアミド結合を介して担体ポリマーに結合されているジアミン又はポリアミンを含むアニオン交換膜を含む固体アルカリ型燃料電池を提供する。ジアミン又はポリアミンの少なくとも1種の窒素原子は、アニオン交換基として作用する四級化窒素原子である。アニオン交換膜は、固体アルカリ型燃料電池に使用するために好適とする有利な特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特殊なイオン交換膜を含む固体アルカリ型燃料電池に関する。また、本発明は、特に固体アルカリ型燃料電池に適合される数種のイオン交換膜にも関する。
【0002】
燃料電池技術は、近年、かなりの関心を引き付けている。最も単純な場合では、燃料電池は、イオン導電性膜によって互いに分離されている2種の電気的に伝導性の電極を含む。反応媒体、例えば水素及び酸素は、統合されたガス又は液体供給用ダクトによって供給される。
【0003】
燃料電池に現在用いられている大部分のポリマー電解質膜はプロトン交換膜であり、電解質としてペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーに基づき、100℃以下の典型的な温度で操作される。そのようなペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマー膜の典型例は、製品Nafion(登録商標)であり、燃料電池に広く用いられている。ペルフルオロ化ポリマーの例は、米国特許第3,282,875号、米国特許第4,433,082号及び欧州特許第1179548A1号明細書に記載されている。そのような膜によっていくつかの成功が達成されているが、高いコストに加えていくつかの欠点が存在する。
【0004】
良好な伝導率を保持するために、Nafion(登録商標)タイプの膜が、燃料電池におけるガスの加湿及び洗練された水の管理に必要である。プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)の操作中に、電気浸透性薬剤(EOD)が、陽極サイドの膜の脱水を引き起こし、従って伝導率を著しく減少させる。さらに、水含有量のいかなる変化も、膜の膨潤及び収縮を生じ、膜-触媒界面の劣化、又はさらに膜の破損を導き得る。結果、燃料スチーム及び酸化体の両方の有効且つ強力な加湿が必要とされる。従って、PFSA膜の一つの主要な欠点は、それらの低い伝導率にあり、従って、水損失による低い湿気下及び高温(約90℃以上)における乏しい性能にある(Chem. Mater. 2003, 15, 4896-4915)。
【0005】
多くの改良がPFSA膜になされている(“改良PFSA膜”)。例えば、非水性及び低揮発性媒体による水の置換が試されている。さらなるアプローチは、膜の厚みを減らすこと、吸湿性酸化物のナノ粒子を膜に含浸させること、及び固体無機プロトン伝導体を含む(Chem. Mater. 2003, 15, 4896-4915)。
【0006】
PFSAの代わりとしての別のスルホン化ポリマー膜の開発が、もう一つの活発な領域である。出発材料としての塩基性ポリマーは、高い化学的及び熱的安定性を有するべきである。2種の主要なグループのポリマーが、この目的のために広く調査されている。一つのグループは、無機元素を含有するポリマー、例えばフルオロポリマーにおけるフッ素及びポリシロキサンにおけるケイ素である。他のグループは、フェニレン構造を有する芳香族ポリマーである。後者のグループは、スルホン化ポリスルホン(sPSF)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sPEEK)及びポリベンズイミダゾール(PBI)を含む。芳香族ポリ縮合物は、Journal of New Materials for Electrochemical Systems I (1998), 47-66 and in Chem. Mater. 15 (2003), 4896-4915に記載されている。
【0007】
酸塩基複合体形成は、プロトン導電性膜の開発に対するさらなるアプローチである。塩基性ポリマーには両性酸をドープすることができ、プロトン移動における供与体及び受容体の両方として作用し、従ってプロトン移動を可能にする。H3PO3ドーピングPBIは、ここ数年で多くの注目を受けている(Journal of New Materials for Electrochemical Systems 3 (2000) 345-349)。
【0008】
放射線グラフティングには、イオン交換膜を調製する別の可能性がある。放射線グラフティングは、燃料電池及び他の電気化学用途のためのポリマーイオン交換膜を調製する目的のために、長年調査されている。
【0009】
燃料電池における燃料としてのメタノールの直接使用は、自動車の推進力及び他の目的のための魅力的な選択肢である。しかし、直接メタノール燃料電池(DMFC)技術は、決して満足いくものではなく、これは主に(1)メタノール酸化触媒の低い活性及び高いコスト、及び(2)公知の燃料電池に用いられるイオン導電性膜の欠点による。大部分の膜は、達成することのできる操作電圧の実質的な減少を生じる大きなメタノールクロスオーバー率を有する。陰極電位と混合されることにより、これは、燃料の浪費だけでなく、かなり低くされたエネルギー効率及び電池性能を生じる。さらに、陽極触媒は、しばしば活性が十分でなく、高い陽極過電位損失を導く。Nafion(登録商標)タイプの膜の主要な欠点は、直接メタノールを用いたときの高いメタノールクロスオーバー率である(Chem. Mater. 2003, 15, 4896-4915)。
【0010】
電気触媒は、アルカリ媒体において陰極サイド及び陽極サイドの両方にかなり高い活性を有することが良く知られている。
特に電解質として固体ポリマーを有する固体アルカリ型燃料電池(SAFC)は、種々の用途に最も有望であると思われる。触媒のより高い活性以外に、一部の場合に高価な貴金属の使用を回避する可能性を与え、SAFCは、CO2による電極及び電解質の被毒に関連する不都合を有さない。
【0011】
しかし、SAFCのためのイオン交換膜は、多くの特性を必要とする。それらの中で必要とされるのは:良好な機械的特性、寸法安定性、化学的特性(特にアルカリ及びアルコールに対するもの)、良好な導電性(イオン交換能)及び低い浸透性であり、燃料クロスオーバーを減少させる。
例えばAgelら(2001)のJournal of Power Source 101, 267に開示されているように、先行技術のSAFCは、必要とされる特性の間に満足のいく妥協を示さない。
本発明は、その特性を注文仕立てにすることのできるSAFCを開発し、各用途に対して上記の必要な特性間の最も良い妥協を達成することである。
【0012】
従って、本発明は、担体ポリマー及び該担体ポリマーに共有結合されている式(I)の基を含むアニオン交換膜を含む固体アルカリ型燃料電池に関する。
-SO2-NR1-Q+ (I)
式中、Q+は少なくとも一つの四級化窒素原子を含む基であり、R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はQ+における基と共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に4個以下のヘテロ原子を含有する。
【0013】
驚くべきことに、部分的に基(I)及び多くの種類の担体ポリマーの間の結合の多用途性により、本発明のSAFCが、各用途に必要とされる特性を達成するのに最も適していることが見出された。
【0014】
好ましくは、固体アルカリ型燃料電池は、担体ポリマー及び該担体ポリマーに共有結合されている式(II)の基を含むアニオン交換膜を含む。
【化1】

式中、
Yは、C6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R5又はR8の1つと共に環を形成し、及びR8は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R6、又はR7の一つと共に環を形成し、R7又はR8によって形成される各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有しており、及び該ヘテロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R2はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R3、R5、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R3はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R6、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R4はC1-20アルキル基であり、
R5はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R2、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R6はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R9は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R10は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3又はR6の一つ共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
nは0〜4の整数であり、
及び式(II)の基における環構造はC1-4アルキレン基によって架橋することができる。
【0015】
本発明はまた、担体ポリマー及び該担体ポリマーに共有結合されている式(III)の基を含むアニオン交換膜にも関連する。
【化2】

式中、
Yは、C6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R5又はR8の1つと共に環を形成し、及びR8は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R6、又はR7の一つと共に環を形成し、R7又はR8によって形成される各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有しており、及び該ヘテロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R2はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R3、R5、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R3はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R6、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R4はC1-20アルキル基であり、
R5はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R2、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R6はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R9は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R10は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3又はR6の一つ共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
nは0〜4の整数であり、
及び式(III)の基における環構造はC1-4アルキレン基によって架橋することができるが、但しR7=R8の場合はR7及びR8はメチルでもエチルでもない。
【0016】
これらの膜は、それらがβ位(R7)に水素原子を有さないという事実によって特徴付けられる。これらは、アルカリ性媒体に優れた抵抗を示す。これらの膜では、いくつかの場合において非置換メチルピペラジンの分類に属するアミンに対応する基を回避するのが推奨される。
【0017】
C6-10アリール基は、非置換又は置換芳香族環系、例えばフェニル、ナフチルなどである。芳香族環系は、少なくとも6個及び10個以下の環原子を含む。好ましくは、芳香族環系は、6個の環原子を含む。C6-10アリール基は、C1-6アルキル及び/又はハロゲンなどの1〜3個の置換基によって置換されていてもよい。好ましい置換基は、メチル、エチル、F及びClである。
【0018】
“ヘテロアリール”という用語は、5〜10個の環原子を有する任意に置換された芳香族ヘテロ環を意味する。芳香族ヘテロ環は、1〜4個、好ましくは1〜3個のヘテロ原子(N、S及び/又はO)を有してもよい。ヘテロ環は、縮合することのできる1又は2個の芳香族環を含んでいてもよい。好ましいヘテロアリール基は、5〜7個の環原子、さらに好ましくは5又は6個の環原子を有する。好適な例は、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、インドリルなどを含む。芳香族ヘテロ環は、C1-6アルキル及び/又はハロゲンなどの1〜3個の置換基によって置換されていてもよい。好ましい置換基は、メチル、エチル、F及びClである。
【0019】
C1-20アルキル基は、分枝又は非分枝にすることができ、好ましくはC1-10アルキル基であり、さらに好ましくはC1-5アルキル基である。C1-20アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどを含む。アルキルという用語は、3〜7個の炭素原子のシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどを含む。アルキル基は、置換されていても非置換でもよい。可能な置換基は、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)及びアリール基を含む。
【0020】
好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、及びイソプロピルであり、さらに好ましくはメチル及びエチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0021】
“RxはRyと共に環を形成する”という用語は、2種の残基Rx及びRyが、縮合して分子に環構造を形成する状況を意味し、前記環構造は、同一の分子におけるRx、Ry及び他の原子からなる。通常、環構造は4-〜14-員環構造であり、すなわち、環構造が少なくとも4個及び14個以下の環原子を有する。好ましくは、環構造は少なくとも5個及び8個以下の環原子を有し、さらに好ましくは環構造は5又は6個の環原子を有する。二環式及び三環式構造が含まれる。Rx及びRyは、共に好ましくはアルキレン基であり、一つの炭素原子がヘテロ原子で置換されていてもよい(N、S又はOをNでするのが好ましい)。式(II)の基における環構造は、C1-4アルキレン基で架橋することができる。
【0022】
nは0〜4、好ましくは0〜3の整数である。最も好ましくは、nは0、1又は2である。各R9は、独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、各R10は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3又はR6の一つと共に環を形成し、R9又はR10によって形成された各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有する。好ましい置換基R9及びR10は、H、メチル、エチル、プロピル、又はハロゲンである。(CR9R10)nの例は、メチレン、エチレン、プロピレン又はブチレンである。
【0023】
Yは、任意に置換されているC6-10アリール基又はヘテロアリール基、例えばフェニレン、ピリジルなどでよい。好ましくは、Yは1、2、3又は4のアルキル基、例えばメチル又はエチルで置換されているフェニレン基である。あるいは、YはCR7R8にすることができ、R7はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R5、又はR8の一つ共に環を形成し、R8はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R6、又はR7の一つと共に環を形成し、R7又はR8によって形成された各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有する。
【0024】
特別な実施態様では、R1はH又はC1-20アルキル基であり、
R2、R3及びR4は、独立にC1-20アルキル基であり、
R5及びR6はHであり、
R9又はR10はHであり、
YはC6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7及びR8は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であり、及び
nは0〜2の整数である。
【0025】
予想外に、第四級アミン基及びスルホンアミド基の間の鎖が、β炭素原子に酸性水素原子を持たない場合に、生じたアニオン交換膜が、さらに向上した特性を示すことがさらに見出された。
【0026】
従って、一つの実施態様では、基Yが、C6-10アリール又はヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7及びR8が独立にハロゲン原子又はC1-20アルキル基である。一つの実施態様では、YがCR7R8であり、R7及びR8が独立にF又はClである。別の実施態様では、YがCR7R8であり、R7及びR8が独立にメチル、エチル又はプロピルである。
【0027】
本発明に基づくアニオン交換膜の前駆体は、広い種類の公知なポリマー(“担体ポリマー”)に適用することのできるクロロスルホン化、例えば1,2-ジクロロエタンにおける過剰なクロロスルホン酸溶液への担体フィルムの浸漬によって容易に得ることができる。
【0028】
あるいは、ハロスルホニル前駆体ポリマーは、好適な官能化されたモノマーの直接共重合又は重縮合によって優れた構造制御を得てもよい。前駆体ポリマーは、当業者によく知られた技術、例えば押出又は溶液流延法を用いてフィルムの中に形成することができる。
【0029】
ハロスルホニル基を、続いてポリマーをスルホンアミド構造を生じる好適なジアミン又はポリアミンと接触させることによってアミノ化されてもよい。さらなる工程では、続いて膜を過剰なアルキルハロゲン化物に曝すことによって四級化する。アニオン交換膜は、有利にはアルカリ水溶液、例えばNaOH又はKOHに膜を順化することによって得られ得るOH-形態で用いられる。
【0030】
好適なジアミン又はポリアミンは、式(II)の構造から直接生じることができる。例えば、好適なジアミン又はポリアミンは、以下の式(IV)を有する。
【化3】

式中、R1、R2、R3、R5、R6、R9、R10、Y及びnの意味は上記の通りである。
【0031】
アンモニウムカチオンサイトを導入するのに用いられるジアミン又はポリアミンは、スルホニル基と反応する少なくとも1種の第一級(又はR1に依存して第二級)アミン基、及び少なくとも1種の第三級アミン基(最終工程では四級化される)の存在によって特徴付けられる。
【0032】
好ましくは、イオン交換膜における第四級アンモニウム基は、“再生可能な”安定な第四級アンモニウム基であり、すなわち、分解はアルコールとしてのアルキル基R2、R3、R4の損失に減少される。アルキル基のこの損失は、R4-Cl又はR4-Br又はR4-Iなどのアルキル化剤による処理によって可逆的であり、R4はアルキル基、好ましくはメチル又はエチルである。構造選択の一般的な戦略は、担体ポリマーに対するアンモニウム基の耐久性付着を保証するC-N結合(第四級N及びCα間の結合)の破壊を最小化することである。メチル基は、アンモニウムに結合する最も安定なぶら下がり基として選択される。安定な第四級アンモニウム基は、以下の分類の好ましいジアミン又はポリアミンを用いることによって得ることができる。
【0033】
α-(ジメチルアミノ)-β,β-ジアルキル-ω-アミノアルキル(例えば(2))、
2-アルキル-4-ωアミノアルキル-N,N-ジメチルアミノベンジル及び2,6-ジアルキル-4-アミノ-N,N-ジメチルアミノベンジル(例えば(3))、
2及び/又は6位をアルキル基でモノ-及び/又は二置換されている1-メチルピペラジン(例えば(1)、(4))、
2及び/又は6位をアルキル基でモノ-及び/又は二置換されている1-(ω-アミノアルキル)ピペラジン、2つのアンモニウム基/付着、
“架橋アミノピペラジン”特に例(9)、2つのアンモニウム基/付着を生じる、
1-メチル-4(ω-アミノアルキル)-3,5-アルキル(モノ、ジ)ピペリジン(例えば(5))、
1-メチル(又はH)-2,6アルキル(モノ、ジ、トリ又はテトラ)-4-アミノピペリジン(例えば(7))、
“架橋アミノピペリジン”、特に例えば(8)、
2-及び/又は5-位が任意にアルキル置換されている1-メチル-3-アミノピロリジン、例えば(11)、
3及び/又は5位をアルキル置換されている4-(ω-アミノアルキル)モルホリン、例えば(12)、
“アザ-アミノアダマンタン”、特に例えば(10)。
【0034】
ジアミン又はポリアミンのこれらの分類の特定の例は、以下の化合物(2)〜(12)である。
N,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン
【化4】

2,6-ジメチル-4-アミノ-N,N-ジメチルベンジルアミン
【化5】

1,2,6-トリメチルピペラジン
【化6】

1,3,5-トリメチル-4-アミノメチルピペリジン
【化7】

1,3,5-トリメチル-4-(2-アミノエチル)ピペラジン
【化8】

4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン
【化9】

3-アミノキヌクリジン
(1-アザ-ビシクロ[2.2.2]-3-アミノノナン)
【化10】

1,4-ジアザ-ビシクロ[2.2.2]-アミノオクタン
【化11】

1,3,5-トリアザ-トリシクロ[3.3.1.1*3,7*]デシ-7-イルアミン
【化12】

3-アミノ-1-メチルピロリジン
【化13】

4-(2-アミノエチル)2,6ジメチルモルホリン
【化14】

【0035】
別の好ましい実施態様では、イオン交換膜は、機械的特性及び寸法安定性(膨潤)が向上するような架橋された膜構造を有する。架橋は、一定の割合の第一級(又は第二級)ジアミン又はポリアミンを含む安定なジアミン又はポリアミンの好適な混合物の使用によって得ることができる。非限定例は、以下の化合物(13)及び(14)である。
2,6-ジメチルピペラジン
【化15】

2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン
【化16】

【0036】
ジアミン又はポリアミンをスルホニル基と反応させた後に、生じたスルホンアミドにおける第三級アミノ基を、通常のアルキル化剤によって四級化する。好適なアルキル化剤は、アルキルハロゲン化物、例えばアルキルクロライド、アルキルヨーダイドなどである。好ましくは、C1-3アルキルハロゲン化物、最も好ましくはヨウ化メチル及び塩化メチルである。
【0037】
一般的には、ポリアミンの使用が、それらが単位体積当たりより大きい密度の交換サイトを有するイオン交換膜を生じるために好ましい。これは、より高い密度の交換サイトが、プロトン交換膜におけるプロトン移動と比べてOH-イオンの乏しい移動度を補償できるために、特にSAFCに有用である。
ポリアミンの使用は、それがポリアミンと反応するのと同時に膜に網目状に送ることも可能にする。
【0038】
先行技術で主に知られている種々の担体ポリマーを、本発明に用いることができる。“担体ポリマー”という用語は、薄いフィルム形状のポリマーを意味する。式(I)、(II)、又は(III)の基は、担体ポリマーに共有結合されている。時々、先行技術では、担体ポリマーという用語が、スルホン酸、ハロスルホニル又はスルホニル基を含む反応性前駆体に用いられる。これらのスルホン酸、ハロスルホニル又はスルホニル基は、スルホンアミド基に転化することができる。本出願では、“担体ポリマー”という用語は、前後関係から何も言及又は明白でない場合に、そのようなスルホン酸、ハロスルホニル又はスルホニル基を含まないポリマーに用いられる。スルホン酸、ハロスルホニル又はスルホニル基は、担体ポリマーをクロロスルホン化することによって容易に導入することができる。
【0039】
第一の実施態様では、担体ポリマーが、フルオロ側鎖を有するフッ素化炭素鎖を含む。好ましくは、担体ポリマーは、ペルフルオロ側鎖を有するペルフルオロ化炭素鎖を含む。この第一の実施態様の担体ポリマーの例は、限定はしないが、米国特許第3,282,875号明細書に開示されているようなフルオロカーボンビニルエーテルポリマーを含む。さらなる例は、欧州特許第1179548A1号明細書に開示されているような架橋されたスルホン基含有フルオロ化イオノマーを含む。ペルフルオロ側鎖を有するペルフルオロ化炭素鎖を含むさらなるタイプの担体ポリマーは、米国特許第4,433,082号明細書に開示されている。そのようなポリマーは、構造[-CF2-CF2-]及び/又は[-CF2-CF2-O-]を含んでよい。ペルフルオロ化担体ポリマーの公知の例は、Nafion(登録商標)タイプの市場で入手可能なポリマー、例えばNafion(登録商標)117である。好適な担体ポリマーは、Liら(2003)のChem. Mater. 15, 4896 - 4915に開示されているようなペルフルオロスルホン酸(PFSA)ポリマーをさらに含む。
【0040】
第二の実施態様では、担体ポリマーが種々のポリオレフィンを含む。限定はしないが、例えば二指向性(bioriented)フィルムを含むPP、LDPE、LLDPE及びHDPEを含む。
【0041】
第三の実施態様では、担体ポリマーが1種以上の芳香族炭化水素を含み、好ましくは芳香族重縮合物を含む。芳香族炭化水素は、低コストで市場で入手可能な大きな基のポリマーを意味する。好適な例は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)又はポリフェニレンオキシド(PPO)である。さらなる例は、ポリ(4-フェノキシベンゾイル-1,4-フェニレン)(PPBP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、芳香族ポリスルホン(PSF)、ポリベンズイミダゾール、例えばポリ(2,2'-m-フェニレン)-5,5'-ジ-ベンズイミダゾール(PBI)又はポリベンゾキサゾール及びポリベンゾチアゾールを含む。本発明では、ポリスルホン(PSU)又はポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレン(PP)、ポリ(4-フェノキシベンゾイル-1,4-フェニレン)(PPBP)、及び剛体棒ポリ(p-フェニレン)(PP)、及び他のポリマー(例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリベンザゾール(PBZ)、ポリチオフェニレン、ポリフェニルキノキサリン、及びポリホスファゼンを含む。好適な芳香族ポリマー及び重縮合物は、Liら(2003)のChem. Mater. 15, 4896 - 4915に開示されており、参照としてここに組み込む。さらなる芳香族担体ポリマーは、Savadogo(1998)のJournal of New Materials for Electrochemical Systems 1, 47 - 66に開示されている。
【0042】
第四の実施態様では、担体ポリマーが、放射グラフトされた膜基板である。放射グラフトは、本質的にハイブリッド材料を2種の完全に異なる材料から形成することを可能にする。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、高温まで多くの環境におけるその安定性で公知なフルオロポリマーであるが、疎水性でありイオン導電性ではない。スチレンスルホン酸は、疎水性の酸性モノマーである。これらの2種の成分からなるグラフトコポリマーは、機械的に強く、不溶性で疎水性なイオン交換膜を与える。放射グラフト方法では、1種以上のモノマーが、イオン化放射によってベースポリマーフィルムと反応する。以下のグラフト工程は、新規に形成されたポリマーを容易にスルホン化する。
【0043】
グラフトに最も一般的なモノマーの一つは、架橋剤として頻繁に加えられるジビニルベンゼンを有するスチレンである。膜は、相互及び前照射グラフト技術の両方を用いてフッ素化エチレンプロピレン(FEP)から調製することもできる。フルオロポリマー、例えばPTFE、FEP、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルコキシビニルエーテル(PFA)及びエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)は、照射前グラフト技術を用いてスチレン又はα,β,β-トリフルオロスチレンと反応することができる。さらなる放射グラフト膜は、例えばHorsfallら(2002)のEuropean Polymer Journal 38, 1671 - 1682;Huslageら(2002)のElectrochimica Acta 48, 247 - 254又はWO 95/07553 A2号明細書に記載されている。これらの放射グラフト膜を、参照としてここに組み込む。
【0044】
特定の実施態様では、担体ポリマーが、非フッ素化ポリマーである。好適な非フッ素化ポリマーは、上記の非フッ素化芳香族ポリマー及び放射グラフトポリマー、並びに非芳香族ポリマー、例えばポリアルキレンを含む。ポリアルキレンの例は、ポリエチレン又はポリプロピレンである。
【0045】
本発明は、さらに上記の実施態様の任意の組み合わせに関する。
【0046】
本発明の固体アルカリ型燃料電池は、上記の2つの電極及びアニオン交換膜を含む。好ましくは、アルカリ型燃料電池のための電極は、湿式組立方法とそれに続くシンタリング、又は回転による乾燥組立方法及び成分を電極構造に加圧することによって製造される。電極は、一般的に多孔性導電性拡散層の頂部にある疎水性触媒層からなり(それぞれ、燃料及び酸化剤の均一分布)、これは続いて通常は金属製の電流コレクターに接続される。最も良い結果は、電極構造が、例えば2層製造技術によって得ることのできる複数の層から構築されるときに達成されるものと思われる。
【0047】
プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)及び直接メタノール燃料電池(DMFC)ど同様に、特定の“電極結合剤”(又は“インク”)を両サイドに組み込むことが必要とされる(“Handbook of Fuel Cells - Fundamentals, Technology and Applications”, Vol. 3, chapter 43 “Principles of MEA preparation”, solubilized ionomers, and electrode ink formulation参照)。この特定の結合剤(アニオン交換イオノマー)は、膜、触媒及びこの特別なタイプの燃料電池の燃料タイプと適合性である必要がある。AEMでは、結合剤は、SAFC操作条件下で化学的に安定であり、且つ燃料電池媒体に不溶性でなければならい。
【0048】
非フッ素化担体では、部分的にスチレングラフトされたフッ素化担体と同様に、好適な結合剤は、トリメチルアミンのアミノ化によって四級化されたビニルベンジルクロライド(VBC)及びスチレンのポリマーである。
【0049】
ペルフルオロ化担体(例えばAEM由来のNafion)では、結合剤がAEM調製に用いられたのと同様の手順に従って調製され得る。溶液は、欧州特許第1,004,615号明細書の方法を適用するか、又はμ-エマルジョン又はエマルジョン重合から生じる水性前駆体(スルホニルフルオライド)エマルジョンへの直接アミノ化を適用することによって調製される。微細な架橋は、好適なジアミン混合物の使用によって導入され得る。
【0050】
SAFCのための膜電極集合(MEA)の設計は、電気の発生を可能にするように選択される。要素の最も良い選択(特に膜、触媒タイプ及び触媒層構造、拡散層構造、結合剤)は変化し得るが、DMFC又はPEMFCからかなり大きく異なっている。
【0051】
一般的に、触媒は電池の燃料電池様式に有効な触媒であり、すなわち、特定の燃料の酸化に有効な触媒である。好ましくは、陽極の触媒は有効O2-還元触媒である。好ましくは、陰極の触媒は有効H2-酸化触媒である。さらに好ましくは、陽極の触媒はメタノール、エタノール及び/又はエチレングリコールなどの効率的な酸化性アルコールにすることができる。
【0052】
触媒に関して、出発点はDMFCタイプの材料:C-粉末(陰極)に沈着されるPt/Ru(1:1)陽極としてのC-粉末に担持されるPtにすることができる。しかし、コストの理由(非貴金属)及び向上した活性の両方のために、代わりの触媒材料も考えられる。例えば、そのような変形はNi、Ag又はMnに基づく触媒でよい。他の経路は、AFCの経験から得られ得る(McLeanら, Int. J. Hydrogen Energy 27 (2002), 507-526 “An assessment of alkaline fuel cell technology”, p. 512)。
【0053】
好ましくは、イオン交換膜のイオン交換能(乾燥膜と呼ばれるIEC)は、>1.8meq/cc、さらに好ましくは>2.0meq/ccである。
SAFCにおけるイオン交換膜の厚みは、好ましくはDMFCに一般的に用いられる膜と比較して減少する。乾燥幕の厚みは、好ましくは<175μm、さらに好ましくは<125μm、最も好ましくは<100μmである。
【0054】
驚くべきことに、SAFCにおけるアルコールの存在が、いくつかの状況において、膜の高度な安定化効果(アンモニウム基の遮蔽)を示すことが見出された。従って、好ましい燃料はアルコールであり、さらに好ましくは燃料はメタノール、エタノール又はエチレングリコールである。燃料は好ましくは液体燃料である。
【0055】
固体アルカリ型燃料電池(SAFC)では、反応生成物、例えばシュウ酸又はCO2の中和による水酸化物イオンの総消費が起こる。燃料電池は、通常、好ましくは塩基/アルコール=2:1の化学両論比で塩基(例えばNaOH、KOH又はNa2CO3)が加えられたアルコール(例えばエチレングリコール又はメタノール)水溶液による制御された手法で陽極に供給される。さらに、製造されたシュウ酸(又は炭酸)ナトリウムは、通常、陽極から除去される(液体消耗流:水、シュウ酸塩又は炭酸塩、未転化燃料として)。陰極サイドは、一般的に、水が生じる酸化還元反応の反応物として消費されるために、空気供給に対して極端な湿気を必要とする;さらなる理由としては、電気浸透性薬剤(EOD:膜を介する水酸化物イオンの移動)及び、場合によって、膜の加湿の必要性である。陰極からの消耗流は、窒素、未転化酸素、水蒸気を含有し得る。
【0056】
燃料電池は、通常、少なくとも-20℃、好ましくは少なくとも0℃、さらに好ましくは少なくとも20℃、最も好ましくは少なくとも40℃の温度で操作される。操作中の最大温度は、通常は80℃、好ましくは70℃、最も好ましくは60℃である。上限及び下限の温度制限は、任意の手法で組み合わされ、好ましい範囲を与え得る。
【0057】
通常は、本発明の燃料電池は、大気温度及び空気酸化剤流(非加圧システム)で操作され、2Mのアルコール溶液を供給するとき、少なくとも25mW/cm2、さらに好ましくは少なくとも50mW/cm2、最も好ましくは少なくとも70mW/cm2の最大電力密度を生じることができる。
【0058】
アルカリ型燃料電池の一般的な認識は、陰極供給ガス流に二酸化炭素がない場合にそれらを操作することができないことである。アニオン交換膜によって伝統的なAFCに用いられている液体電解質の置換が、供給空気中に存在し且つアルコール燃料の陽極酸化反応によって製造されるCO2電解質及び電極衰弱の進歩性炭酸ガス飽和を克服することが見出された。驚くべきことに、適切に選択された担体ポリマーを用いるとき、SAFC操作様式においてアルコールクロスオーバーが実質的に低くされることがさらに発見された。
【0059】
本発明は、固体アルカリ型燃料電池における電解質としての上記のようなアニオン交換膜の使用に関する。さらに別の特徴では、本発明は、電気を生成するための固体アルカリ型燃料電池における上記アニオン交換膜の使用に関する。本発明の固体アルカリ型燃料電池に関する上記の好ましい実施態様は、必要な変更を加えて本発明の使用に適用される。
【0060】
さらに、特別な担体ポリマーに共有結合されている第四級アンモニウム基を有するイオン交換膜が、固体アルカリ型燃料電池における固体電解質として非常に有用であることが見出されている。
【0061】
従って、本発明の別の特徴は、非フッ素化担体ポリマー及び該非フッ素化担体ポリマーに共有結合されている式(I)の基を含む単官能基アニオン交換膜である。
-SO2-NR1-Q+ (I)
式中、Q+は少なくとも一つの四級化窒素原子を含む基であり、R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はQ+における基と共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有する。
【0062】
ここで用いられるように、“単官能基”という用語は、膜が有意なカチオン交換基を有さないアニオン交換膜であることを意味する。好ましくは、単官能基アニオン交換膜は、実質的にカチオン交換基を有さず、最も好ましくはカチオン交換基を有さない。従って、本発明の膜は、アニオン交換膜及びカチオン交換膜を含む二官能性イオン交換膜とは異なる。
【0063】
好ましくは、単官能基アニオン交換膜は、非フッ素化担体ポリマーに共有結合されている式(II)の基を含む。
【化17】

式中、
Yは、C6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R5又はR8の1つと共に環を形成し、及びR8は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R6、又はR7の一つと共に環を形成し、R7又はR8によって形成される各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有しており、及び該ヘテロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R2はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R3、R5、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R3はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R6、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R4はC1-20アルキル基であり、
R5はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R2、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R6はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R9は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R10は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3又はR6の一つ共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
nは0〜4の整数であり、
及び式(II)の基の環構造はC1-4アルキレン基によって架橋することができる。
【0064】
単官能基アニオン交換膜の好ましい実施態様は、本発明の固体アルカリ型燃料電池に関する上記の好ましい実施態様に対応する。
特定のジアミン又はポリアミンが、優れた安定性特性を示すイオン交換膜の製造を可能にすることも見出された。
従って、別の実施態様では、本発明は、担体ポリマー及び式(III)の基を含むアニオン交換膜に関する。
【化18】

式中、
Yは、C6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R5又はR8の1つと共に環を形成し、及びR8は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R6、又はR7の一つと共に環を形成し、R7又はR8によって形成される各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有しており、及び該ヘテロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R2はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R3、R5、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R3はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R6、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R4はC1-20アルキル基であり、
R5はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R2、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R6はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R9は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R10は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3又はR6の一つ共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
nは0〜4の整数であり、
及び式(III)の基の環構造はC1-4アルキレン基によって架橋することができるが、但しR7=R8の場合はR7及びR8はメチルでもエチルでもない。
【0065】
この実施態様では、担体ポリマーはペルフルオロ化、部分的にフッ素化又は非フッ素化されていてよい。
これらの膜は、特に有用である。固体アルカリ型燃料電池に関する上記の好ましい実施態様は、必要な変更を加えて本発明のアニオン交換膜を適用する。
ここに記載されている種々の実施態様は、互いに組み合わせてもよい。
【0066】
本発明の燃料電池は、アルカリ性媒体において高度な安定性を有する。スルホンアミド結合の高い安定性、及びスルホニルハロゲン基を種々のポリマー膜に導入するための顕著な柔軟性に基づき、選択されたジアミン又はポリアミンは、結合及びアルキル化(例えばメチル化)され、最適な担体構造(例えばスチレングラフトされた部分的なフッ素化ポリマー、PE、芳香族炭化水素ポリマー、例えばPSU、PEEK、PI、Nafion類、PBZなど)を有するAEM'sを製造することができる。ここに記載されている膜は、優れたイオン交換能(IEC)、低い燃料クロスオーバー率及びアルカリ性媒体における優れた安定性を示す。これらは、燃料としてのアルコール、例えばメタノール又はエチレングリコールを用いる燃料電池におけるアニオン交換膜として特に有用である。
【0067】
本発明は、本発明のイオン交換膜の製造方法にも関連し、該方法は、非フッ素化の担体ポリマーからなる膜から出発し、該ポリマーはSO2R2基を有し、式(I')の物質
NR1H-Q+
がポリマーのSO2R2基と反応し、式(I)の基を製造する。
-SO2-NR1-Q+
式中、R1はH又はC1-20アルキル基であり、R2はハロゲン原子であり、及びQ+は少なくとも一つの第四級化窒素原子を含む基である。
【0068】
本発明の方法で得られた膜は、SAFCに特に適する。しかし、これらは異なる用途を有する。
特に、本発明の方法では、膜は平面又は環状形状にすることができる。該方法は、特に環状膜を製造するのに適する。
【0069】
本方法の好ましい実施態様では、SO2R2基を有する式(I')の反応が、制御された条件で操作され、膜の一部の表面のみで起こり、該一部の表面は全厚みの30%以下、好ましくは20%以下を有し、最も好ましくは膜の全厚みの10%である。全厚みの表面の一部によって意味されるのは、膜の両サイドの表面層の厚みの合計であり、この場合は両方が式(I')の物質と反応する。好ましくは、一つの側面のみが反応する。制御された条件が、好適な溶媒の使用によって、反応速度の減少を伴うことが推奨される。
【0070】
好ましくは、この実施態様では、膜がさらに強塩基、例えばNaOHと接触され、膜の残りの一部の未反応のSO2R2基を、SO3Hカチオン交換基に転化する。この結果、少なくともアニオン表面層及びカチオン層を有する膜が生じ、該アニオン層は、膜の全厚みの30%以下の厚みを有する。そのような膜は、プロトンから多価カチオンを分離するのに有用である。
【0071】
図1は、SAFCの原理を説明している。液体燃料としてのメタノールの場合における基本反応が示されている。アニオン交換膜を介する水酸化物イオンの流れは、陽極サイドから陰極サイドへ生じる。そのようなEODは、拡散移動方法と反対であり、全てのクロスオーバーする流れを減少させる。
比較として、図2は、プロトン交換膜(PEM)を用いるDMFCの概略図を示しており、基本的に異なる操作様式を説明している。
図3は、本発明の膜のアルカリ媒体における安定性を説明している。
【0072】
以下の非限定例は、本発明をさらに説明する。
【0073】
実施例1:N,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン-ETFE-g-St担体
50μmのETFEフィルムを、50質量%のグラフト度以下のスチレン/ジビニルベンゼン(3体積%)の混合物で放射グラフトすることによって修飾する。
グラフト化されたコポリマーETFE-g-St(50質量%)を、続いて以下の処理に付す:
1.該フィルムを、大きく過剰な5体積%1.2-ジクロロエタン溶液のクロロスルホン酸(CSA)に浸漬することによってクロロスルホン化させる。該反応は、60℃で4時間行う。
2.未処理のCSAを室温でジエチルエーテルによって抽出する。
3.クロロスルホニル基を、60℃で16時間、フィルムを大きく過剰の5体積%アセトニトリル溶液のN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンと接触させることによってアミノ化する。
4.アミノ化フィルムを60℃で:(1)1NのNaOH溶液、(2)エタノールで連続的に洗浄する。
5.膜を、大きく過剰な1Mのアセトニトリル/水(90/10体積%)の混合物溶液の塩化メチルに60℃で16時間曝すことによって最終的に四級化する。
6.膜を:(1)エタノール、(2)脱塩水によって洗浄する。室温で1質量%のNaCl水溶液に保存する。
【0074】
実施例2:N,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン-ETFE-g-St担体
30μmのETFEフィルムを、42質量%のグラフト度以下のスチレン/ジビニルベンゼン(3体積%)の混合物で放射グラフトすることによって修飾する。
グラフト化されたコポリマーETFE-g-St(42質量%)を、続いて以下の処理に付す:
1.該フィルムを、大きく過剰な5体積%1.2-ジクロロエタン溶液のクロロスルホン酸(CSA)に浸漬することによってクロロスルホン化させる。該反応は、60℃で2時間行う。
2.未処理のCSAを室温でジエチルエーテルによって抽出する。
3.クロロスルホニル基を、60℃で6時間、フィルムを大きく過剰の5体積%アセトニトリル溶液のN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンと接触させることによってアミノ化する。
4.アミノ化フィルムを60℃で:(1)1NのNaOH溶液、(2)エタノールで連続的に洗浄する。
5.膜を、大きく過剰な1Mのアセトニトリル/水(90/10体積%)の混合物溶液の塩化メチルに60℃で16時間曝すことによって最終的に四級化する。
6.膜を:(1)エタノール、(2)脱塩水によって洗浄する。室温で1質量%のNaCl水溶液に保存する。
【0075】
実施例3:N-メチルピペラジン-ETFE-g-St担体
30μmのETFEフィルムを、42質量%のグラフト度以下のスチレン/ジビニルベンゼン(3体積%)の混合物で放射グラフトすることによって修飾する。
グラフト化されたコポリマーETFE-g-St(42質量%)を、続いて以下の処理に付す:
1.該フィルムを、大きく過剰な5体積%1.2-ジクロロエタン溶液のクロロスルホン酸(CSA)に浸漬することによってクロロスルホン化させる。該反応は、60℃で2時間行う。
2.未処理のCSAを室温でジエチルエーテルによって抽出する。
3.クロロスルホニル基を、60℃で6時間、フィルムを大きく過剰の5体積%アセトニトリル溶液のN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンと接触させることによってアミノ化する。
4.アミノ化フィルムを60℃で:(1)1NのNaOH溶液、(2)エタノールで連続的に洗浄する。
5.膜を、大きく過剰な1Mのアセトニトリル/水(90/10体積%)の混合物溶液の塩化メチルに60℃で16時間曝すことによって最終的に四級化する。
6.膜を:(1)エタノール、(2)脱塩水によって洗浄する。室温で1質量%のNaCl水溶液に保存する。
【0076】
実施例4:N.N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン-LDPE担体
80μmのLDPEフィルムを以下の条件でクロロスルホン化する:該フィルムを70℃で24時間1,2-ジクロロエタンで膨潤させる。10×10cmのフィルムサンプルを続いて2.5Lのガラス反応器に入れる。サンプルを、ガス状SO2及びCl2で飽和された1.5Lの1,2-ジクロロエタンに完全に浸漬する。飽和を、ガスを連続的に供給することによる反応中保持する。
開始剤を、過酸化水素をリン酸に分散された2-ブタノンと反応させることにより調製する。CaCO3による中和後、分離した有機相を、1,2-ジクロロエタンで1体積%まで希釈する。
攪拌下で、ラジカル開始剤溶液及び促進剤溶液(1,2-ジクロロエタンで希釈された2体積%のコバルトナフタレン53質量%揮発油溶液を、それぞれ10mL/時間で供給する)。
温度を10〜20℃に保つ。反応は8時間後に止める。
クロロスルホン化されたLDPEフィルムを、1,2-ジクロロエタン、続いてエタノールで徹底的に洗浄する。フィルムは、分解の兆候を示さない。
クロロスルホン化LDPEフィルムを、続いて以下の処理に付す:
1.クロロスルホニル基を、60℃で16時間、フィルムを大きく過剰な純粋N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンと接触させることによってアミノ化する。
2.アミノ化フィルムを60℃で:(1)1NのNaOH溶液、(2)エタノールで連続的に洗浄する。
3.膜を、大きく過剰な2Mの塩化メチルのアセトニトリル溶液に60℃で16時間曝すことによって最終的に四級化する。
4.膜を:(1)エタノール、(2)脱塩水によって洗浄する。室温で1質量%のNaCl水溶液に保存する。
【0077】
実施例5:N.N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン-Hyflon(登録商標)イオン前駆体担体
Hyflon(登録商標)イオン前駆体フィルム(フルオロスルホニル基EW900)を以下の処理に付す:
1.フルオロスルホニル基を、60℃で1時間、フィルムを大きく過剰な純粋N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンと接触させることによってアミノ化する。
2.アミノ化フィルムを60℃で:(1)1NのNaOH溶液、(2)エタノールで連続的に洗浄する。
3.膜を、大きく過剰な1Mの塩化メチルのアセトニトリル/水(90/10体積%)の混合物溶液に60℃で16時間曝すことによって最終的に四級化する。
4.膜を:(1)エタノール、(2)脱塩水、(3)NaCl 1質量%で16時間洗浄する。室温で1質量%のNaCl水溶液に保存する。
【0078】
実施例6:N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン-ETFE-g-St担体
50μmのETFEフィルムを、50質量%のグラフト度以下のスチレン/ジビニルベンゼン(3体積%)の混合物で放射グラフトすることによって修飾する。
グラフト化されたコポリマーETFE-g-St(50質量%)を、続いて以下の処理に付す:
1.該フィルムを、大きく過剰な5体積%1.2-ジクロロエタン溶液のクロロスルホン酸(CSA)に浸漬することによってクロロスルホン化させる。該反応は、60℃で4時間行う。
2.未処理のCSAを室温でジエチルエーテルによって抽出する。
3.クロロスルホニル基を、60℃で16時間、フィルムを大きく過剰の5体積%アセトニトリル溶液のN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンと接触させることによってアミノ化する。
4.アミノ化フィルムを60℃で:(1)1NのNaOH溶液、(2)エタノールで連続的に洗浄する。
5.膜を、大きく過剰な1Mのアセトニトリル/水(90/10体積%)の混合物溶液の塩化メチルに60℃で16時間曝すことによって最終的に四級化する。
6.膜を:(1)エタノール、(2)脱塩水によって洗浄する。室温で1質量%のNaCl水溶液に保存する。
【0079】
実施例7:N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン-ETFE-g-St担体
30μmのETFEフィルムを、42質量%のグラフト度以下のスチレン/ジビニルベンゼン(3体積%)の混合物で放射グラフトすることによって修飾する。
グラフト化されたコポリマーETFE-g-St(42質量%)を、続いて以下の処理に付す:
1.該フィルムを、大きく過剰な5体積%1.2-ジクロロエタン溶液のクロロスルホン酸(CSA)に浸漬することによってクロロスルホン化させる。該反応は、60℃で4時間行う。
2.未処理のCSAを室温でジエチルエーテルによって抽出する。
3.クロロスルホニル基を、60℃で16時間、フィルムを大きく過剰の5体積%アセトニトリル溶液のN,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミンと接触させることによってアミノ化する。
4.アミノ化フィルムを60℃で:(1)1NのNaOH溶液、(2)エタノールで連続的に洗浄する。
5.膜を、大きく過剰な1Mのアセトニトリル/水(90/10体積%)の混合物溶液の塩化メチルに60℃で16時間曝すことによって最終的に四級化する。
6.膜を:(1)エタノール、(2)脱塩水によって洗浄する。室温で1質量%のNaCl水溶液に保存する。
【0080】
実施例8:トリメチルアミン-ETFE-g-VBC担体
50μmのETFEフィルムを、50質量%のグラフト度以下まで、エタノールにおいてビニルベンジルクロライド(30体積%)及びジビニルベンゼン(3体積%)の混合物で放射グラフトすることによって修飾する。
続いて、フィルムを大きく過剰なトリメチルアミン水溶液と接触させることによって、クロロベンジル基(-CH2Cl)を-CH2(N(CH3)3)+官能基に修飾する。最終的に、膜を60℃で10g/LのNaCl水溶液に浸漬する。
【0081】
例1〜8で調製された膜のイオン交換能(IEC)、水分取り込み、電気抵抗及びアルカリ媒体における安定性を、以下の方法で決定した。
・イオン交換能
膜を、(1)0.5MのNaOH溶液、(2)脱塩水、(3)0.6MのNaCl脱塩水で連続的に平衡化する。膜と平衡なNaCl溶液におけるOH-イオンの定量分析は、イオン交換能の決定を可能にする:IEC=nOH-/md(meq/g)。nOH-:mmolのOH-イオンが溶液中に存在する;md:乾燥膜の質量。体積基準のEICは、乾燥膜の特性の塊によって質量EICを増加させることによって計算される。
・水分取り込み
20℃で脱塩水と平衡な膜(Cl-対イオン)に吸収される水の質量。水分取り込みは、乾燥膜1g当たりの水のg数で表される。
・アルカリ媒体における安定性
膜のイオン交換能は、2Mの水酸化ナトリウムに1、3又は6日保持する前後において比較され、純粋又は1Mのメタノール又は1Mのエチレングリコールとの混合物で用いられる。
結果を、以下の表及び図3に示す。
【0082】
図1:膜特性




【0083】
図2:アルカリ媒体における膜安定性、60℃-IEC(meq/g)

【0084】
表2及び図3は、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(例6及び7)及びN-メチルピペラジン(例3)と比較して、N,N,2,2-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(例1及び2)で調製されたアニオン交換膜の向上した安定性を説明している。先行技術タイプの膜である例8は、NaOHにおける安定性及びイオン伝導率の両方に関して、例1及び2(本発明)より劣っている。
アニオン交換膜の安定性におけるメタノール又はエチレングリコールの存在の有利な効果も、説明されている(表2)。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】SAFCの原理を示す図。
【図2】プロトン交換膜(PEM)を用いるDMFCの概略図。
【図3】本発明の膜のアルカリ媒体における安定性を説明する図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体ポリマー及び該担体ポリマーに共有結合されている式(I)の基を含むアニオン交換膜を含む固体アルカリ型燃料電池。
-SO2-NR1-Q+ (I)
式中、
Q+は少なくとも一つの四級化窒素原子を含む基であり、及び
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はQ+における基と共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個以下のヘテロ原子を含有する。
【請求項2】
式(I)の基が、以下の構造を有する、請求項1記載の固体アルカリ型燃料電池。
【化1】

式中、
Yは、C6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R5又はR8の1つと共に環を形成し、及びR8は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R6、又はR7の一つと共に環を形成し、R7又はR8によって形成される各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有しており、及び該ヘテロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R2はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R3、R5、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R3はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R6、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R4はC1-20アルキル基であり、
R5はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R2、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R6はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R9は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R10は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3又はR6の一つ共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
nは0〜4の整数であり、
及び式(II)の基における環構造はC1-4アルキレン基によって架橋することができる。
【請求項3】
R1がH又はC1-20アルキル基であり、
R2、R3及びR4が、独立にC1-20アルキル基であり、
R5及びR6がHであり、
R9又はR10がHであり、
YがC6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7及びR8は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であり、及び
nは0〜2の整数である、
請求項2記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項4】
YがC6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7及びR8が独立にハロゲン原子又はC1-20アルキル基である、請求項2又は3記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項5】
YがCR7R8であり、且つR7及びR8が独立にF又はClである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項6】
YがCR7R8であり、且つR7及びR8が独立にメチル、エチル又はプロピルである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項7】
Yがフェニレン基である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項8】
(CR9R10)nがメチレン又はエチレン基である、請求項2〜7のいずれか1項に記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項9】
担体ポリマーが、ペルフルオロ側鎖を有するペルフルオロ化炭素鎖を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項10】
担体ポリマーが少なくとも1種の芳香族炭化水素を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項11】
担体ポリマーがポリベンズイミダゾールを含む、請求項10記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項12】
燃料としてアルコールを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体アルカリ型燃料電池。
【請求項13】
固体アルカリ型燃料電池の電解質としての、請求項1〜11のいずれか1項に記載のイオン交換膜の使用。
【請求項14】
電気を生成するための固体アルカリ型燃料電池における、請求項1〜11のいずれか1項に記載のイオン交換膜の使用。
【請求項15】
アルコールが酸化される、請求項14記載の使用。
【請求項16】
非フッ素化担体ポリマー及び該非フッ素化担体ポリマーに共有結合されている式(I)の基を含む、SAFCのための単官能基アニオン交換膜。
-SO2-NR1-Q+ (I)
式中、Q+は少なくとも一つの四級化窒素原子を含む基であり、及び
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はQ+における基と共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有する。
【請求項17】
式(I)の基が、以下の構造を有する、請求項16記載のアニオン交換膜。
【化2】

式中、
Yは、C6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R5又はR8の1つと共に環を形成し、及びR8は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R6、又はR7の一つと共に環を形成し、R7又はR8によって形成される各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有しており、及び該ヘテロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R2はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R3、R5、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R3はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R6、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R4はC1-20アルキル基であり、
R5はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R2、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R6はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R9は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R10は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3又はR6の一つ共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
nは0〜4の整数であり、
及び式(II)の基における環構造はC1-4アルキレン基によって架橋することができる。
【請求項18】
R1がH又はC1-20アルキル基であり、
R2、R3及びR4が、独立にC1-20アルキル基であり、
R5及びR6がHであり、
R9又はR10がHであり、
YがC6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7及びR8は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であり、及び
nは0〜2の整数である、
請求項17記載のアニオン交換膜。
【請求項19】
YがC6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7及びR8が独立にハロゲン原子又はC1-20アルキル基である、請求項17又は18記載のアニオン交換膜。
【請求項20】
YがCR7R8であり、且つR7及びR8が独立にメチル、エチル又はプロピルである、請求項17〜19のいずれか1項に記載のアニオン交換膜。
【請求項21】
担体ポリマー及び式(III)の基を含む、SAFCのためのアニオン交換膜。
【化3】

式中、
Yは、C6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R5又はR8の1つと共に環を形成し、及びR8は、H、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R6、又はR7の一つと共に環を形成し、R7又はR8によって形成される各環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有しており、及び該ヘテロアリール基は5〜10個の環原子を含有し、
R1はH又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R2はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R3、R5、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R3はC1-20アルキル基であるか、又はR2、R6、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R4はC1-20アルキル基であり、
R5はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR1、R2、R7又はR9の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
R6はH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3、R8又はR10の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R9は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR2又はR5の一つと共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
各R10は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であるか、又はR3又はR6の一つ共に環を形成し、該環は2〜10個の炭素原子及び任意に1〜4個のヘテロ原子を含有し、
nは0〜4の整数であり、
及び式(III)の基における環構造はC1-4アルキレン基によって架橋することができるが、但しR7=R8の場合はR7及びR8はメチルでもエチルでもない。
【請求項22】
R1がH又はC1-20アルキル基であり、
R2、R3及びR4が、独立にC1-20アルキル基であり、
R5及びR6がHであり、
R9又はR10がHであり、
YがC6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7及びR8は独立にH、ハロゲン原子又はC1-20アルキル基であり、及び
nは0〜2の整数である、
請求項17〜21のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項23】
YがC6-10アリール基、ヘテロアリール基又はCR7R8であり、R7及びR8が独立にハロゲン原子である、請求項17〜22のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項24】
YがCR7R8であり、且つR7及びR8が独立にF又はClである、請求項23記載のイオン交換膜。
【請求項25】
Yが置換又は非置換フェニレンである、請求項24記載のイオン交換膜。
【請求項26】
(CR9R10)nがメチレン又はエチレン基である、請求項17〜22のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項27】
担体ポリマーが、ペルフルオロ側鎖を有するペルフルオロ化炭素鎖を含む、請求項21〜26のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項28】
担体ポリマーが非フッ素化ポリマーである、請求項21〜26のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項29】
担体ポリマーが少なくとも1種の芳香族炭化水素単位を含む、請求項16〜26のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項30】
担体ポリマーがポリベンズアゾールである、請求項29記載のイオン交換膜。
【請求項31】
SO2R2基を有する非フッ素化ポリマーからなる膜から出発するイオン交換膜の担時方法であって、式(I')の物質
NR1H-Q+
をポリマーのSO2R2基と反応させ、請求項16の式(I)の基を製造する、方法。
式中、R1はH又はC1-20アルキル基であり、R2はハロゲン原子であり、及びQ+は少なくとも一つの第四級化窒素原子を含む基である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−504660(P2008−504660A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518618(P2007−518618)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053136
【国際公開番号】WO2006/003182
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】