説明

イオン交換装置

【課題】 再生作動の信頼性を高め、塩水供給装置の構成を簡素化すること。
【解決手段】 イオン交換樹脂1を充填した樹脂収容部2と、通水作動および再生作動を切り換える流路制御バルブ3と、再生液供給ライン31で前記流路制御バルブ3と接続され再生に用いる再生液を貯留する再生液タンク40と、前記再生液供給ライン31にて再生液供給方向の流量を検出する流量検出手段45とを備えるイオン交換装置であって、前記流量検出手段45からの信号を用いて前記再生液供給ライン31の空気吸引を判定する空気吸引判定手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、再生作動の信頼性を高め、また塩水供給装置の構成を簡単化したイオン交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水や地下水などの原水に含まれる硬度分(カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン)や硝酸性窒素(硝酸イオンおよび亜硝酸イオン)などをイオン交換樹脂により吸着除去するイオン交換装置が知られている。これらのイオン交換装置のうち、陽イオン交換樹脂を使用して水中の硬度分をナトリウムイオンやカリウムイオンへ置換するものは、通常、軟水装置と呼ばれる。一方、前記イオン交換装置のうち、陰イオン交換樹脂を使用して硝酸性窒素を塩化物イオンへ置換するものは、通常、硝酸性窒素除去装置と呼ばれる。
【0003】
前記イオン交換樹脂は、除去対象とする特定イオン(硬度分や硝酸性窒素など)の吸着量が所定の交換能力に達すると、この特定イオンが処理水中へ漏洩するようになる。そこで、前記イオン交換装置は、前記特定イオンの吸着量が所定の交換能力に達する前に、前記イオン交換樹脂に塩水(具体的には、塩化ナトリウム水溶液)を接触させる再生を行い、交換能力を回復させるようにしている。
【0004】
前記イオン交換装置の一般的な構成は、たとえば特許文献1に開示されている。前記イオン交換樹脂は、上部が開口するボンベ形状の樹脂収容部に充填されており、この樹脂筒の頭頂部には、通水作動および再生作動を切り換える流路制御バルブが装着されている。また、前記イオン交換装置は、前記イオン交換樹脂への塩水供給装置として、塩水を貯留した塩水タンクと、この塩水タンク内に配置された塩水バルブとを備えている。そして、この塩水バルブは、前記流路制御バルブと塩水供給ラインで接続されている。前記塩水タンクへは、使用者が定期的に再生塩を補給し、塩水を生成させる。
【0005】
前記再生作動は、通常、逆洗工程,再生工程,押出工程,洗浄工程および補水工程をこの順で行うようになっており、前記塩水バルブは、これらの各工程に応じて動作するように構成されている。前記再生工程は、前記流路制御バルブに内蔵されたエゼクタに原水を流通させ、このエゼクタで発生する負圧を利用して前記塩水タンク内の塩水を前記イオン交換樹脂へ供給する。このとき、前記塩水バルブは、前記塩水タンク内から前記流路制御バルブへ塩水を供給するように動作するとともに、所定水位まで塩水が消費されると、フロートボールの作用により空気の吸引を遮断するように動作する。そして、前記塩水バルブが閉状態となると、そのまま前記押出工程へ移行する。すなわち、前記イオン交換装置では、前記再生工程から前記押出工程への移行は、前記塩水バルブの動作に委ねられており、前記再生工程および前記押出工程の処理時間は、両者の合計時間のみが設定されている。
【0006】
また、前記補水工程では、前記流路制御バルブから前記塩水タンク内へ補給水が供給される。このとき、前記塩水バルブは、前記流路制御バルブから前記塩水タンク内への流路を開放するように動作するとともに、所定水位まで補給水水が供給されると、フロートバルブの作用により補給水の流れを遮断するように動作する。このような前記塩水バルブは、腐食のおそれのない合成樹脂材料を使用した成型部品により量産が可能であることから、前記イオン交換装置では、標準的な機構として採用されている。
【0007】
【特許文献1】特公平6−51183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、その解決しようとする第一の課題は、空気吸引を検出することで、再生作動の信頼性を高めることのできるイオン交換装置を実現することである。また、この発明が解決しようとする第二の課題は、塩水供給装置の構成を簡素化することのできるイオン交換装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部と、通水作動および再生作動を切り換える流路制御バルブと、再生液供給ラインで前記流路制御バルブと接続され再生に用いる再生液を貯留する再生液タンクと、前記再生液供給ラインにて再生液供給方向の流量を検出する流量検出手段とを備えるイオン交換装置であって、前記流量検出手段からの信号を用いて前記再生液供給ラインの空気吸引を判定する空気吸引判定手段を設けたことを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、再生工程時には、前記再生液タンク内の再生液が不足して空気吸引が行われると、前記空気吸引判定手段により空気吸引が判定されるので、再生動作の不良を検出することができ、再生動作異常を報知するなどにより前記再生作動の信頼性を高めることができる。また、空気吸引を防止するための機械的手段を省略することができ、再生液供給装置の構成を簡素化することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のイオン交換装置であって、前記空気吸引判定手段が、前記流量検出手段と、前記流路制御バルブを制御するとともに、前記流量検出手段からの信号に基づき空気吸引を判定する制御手段とを含んで構成され、前記制御手段は、空気吸引を判定すると前記流路制御バルブを制御して前記再生液供給ラインによる再生液供給を停止することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明のによる効果に加えて、前記制御手段は、空気吸引を判定すると、前記流路制御バルブを制御して再生液供給を停止するので、再生不良を確実に防止することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、再生作動の信頼性を高め、再生液供給装置の構成を簡素化できるイオン交換装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の実施の形態は、軟水装置や硝酸性窒素除去装置などのイオン交換装置に好適に実施される。
【0015】
この発明の実施の形態は、イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部と、通水作動および再生作動を切り換える流路制御バルブと、再生液供給ラインで前記流路制御バルブと接続され再生に用いる再生液を貯留する再生液タンクと、前記再生液供給ラインにて再生液供給方向の流量を検出する流量検出手段とを備えるイオン交換装置であって、前記流量検出手段からの信号を用いて前記再生液供給ラインの空気吸引を判定する空気吸引判定手段を設けたことを特徴とするイオン交換装置である。
【0016】
この実施の形態においては、前記流路制御バルブにより通水作動と再生作動とが切り換えられる。通水作動は、原水が前記樹脂収容部を流れてイオン交換が行われるものである。また、再生作動は、前記再生液タンクから再生液が前記再生液供給ラインを通して前記樹脂収容部へ流れて、前記イオン交換樹脂の再生が行われるものである。前記再生液供給
ラインを流れる再生液の流量は、前記流量検出手段によりカウントされる。そして、前記流量検出手段の検出信号に基づき前記空気吸引判定手段は、空気吸引が行われているかどうかを判定する。この再生作動時、前記再生液タンクへの補水が不足するなどの理由で、空気吸引が判定されると、再生異常の報知などの制御を行う。これにより、再生不良を知ることができる。
【0017】
ここで、この実施の形態の各構成要素について説明する。前記イオン交換装置は、好ましくは、軟水装置とするが、これに限定されるものではなく、硝酸性窒素除去装置などとすることができる。前記軟水装置は、特定の構成の軟水装置に限定されるものでない。すなわち、後述するイオン交換樹脂の交換能力を分流再生により回復させる分流再生方式に限定されるものではなく、他の再生方式、たとえば、一般的に行われている並流再生(co-flow regeneration)方式や向流再生(counter-flow regeneration)方式によって、イオン交換樹脂の交換能力を回復させるものとすることができる。
【0018】
前記軟水装置は、それぞれ原水を透過させることで原水を軟水化し、再生液としての塩水を透過させることで、再生するイオン交換樹脂を収容した樹脂収容部と、この樹脂収容部へ原水を供給するための給水入口と、軟水化された水(処理水)を取り出すための給水出口とを備えている。前記給水入口および前記給水出口は、特別の構造を備える必要はなく、単に各軟水器を外部から見た場合の入口,出口といったものも含まれる。
【0019】
前記流路制御バルブは、通水工程および再生工程などの工程を制御する機能を有している。この流路制御バルブは、各軟水器の工程を制御するためのバルブ集合体あるいはバルブユニットを指し、各バルブは、個別に制御してもよいし、各バルブに対応してカム板を設け、これら複数のカム板を工程毎にモータにより回転駆動することにより各バルブを制御するように構成することができる。
【0020】
そして、前記流路制御バルブは、好ましくは、前記給水入口と樹脂収容部とを連通する原水ライン(原水流路)に第一開閉弁を有し、前記給水出口と前記樹脂収容部とを連通する処理水ライン(処理水流路)に第二開閉弁を有し、前記給水入口と前記給水出口とを連通するバイパスライン(バイパス流路)に第三開閉弁を有したものとする。
【0021】
前記再生液タンクは、再生液を貯留する容器であって、再生液供給ラインにより前記流路制御バルブと接続されている。前記再生液供給ラインは、好ましくは、原水を駆動水とするエゼクタと接続され、このエゼクタ内に噴出される原水による吸引力を用いて前記再生液供給ラインにより前記再生液タンク内の再生液を吸引するように構成する。
【0022】
前記流量検出手段は、少なくとも前記再生液供給ラインを流れる再生液の流量を回転数により検出する機能を有し、好ましくは、この機能に加えて前記再生液供給ラインを再生液と逆方向の前記再生タンク方向へ流れる補水の流量を回転数により検出する機能を有するものとする。
【0023】
この流量検出手段は、出力信号として回転数信号または流量信号を出力するものを含み、好ましくは、接線流羽根車式流量センサとするが、これに限定されるものではなく、軸流タービン式流量センサなどとすることができる。
【0024】
前記空気吸引判定手段は、前記流量検出手段からの流量信号または回転数信号を入力して、前記再生液供給ラインによる空気吸引を判定する機能を有する。この判定方法としては、好ましくは、再生液吸い込み時の第一回転数に対する再生液および空気の混合吸い込み時の第二回転数の比率が設定値以下となったとき、空気吸引が開始されたと判定するように構成する。
【0025】
この空気吸引の判定は、前記の回転数比率による判定方法以外に、つぎの判定方法によって行うことができる。
(1)前記回転数信号が設定値以下となったときに空気吸引が開始されたと判定する方法(2)前記回転数信号が零となったときに空気吸引が開始されたと判定する方法
(3)前記回転数信号の変動が激しくなったときに空気吸引が開始されたと判定する方法
【0026】
前記空気吸引判定手段は、好ましくは、前記流量検出手段と、前記流路制御バルブを制御するとともに、前記流量検出手段からの信号に基づき空気吸引を判定する制御手段とを含んで構成する。そして、前記制御手段は、空気吸引を判定すると前記流路制御バルブを制御して前記再生液供給ラインによる再生液供給を停止するように構成する。
【0027】
こうした構成により、空気吸引が判定されると前記再生液供給ラインにおける再生液の流れが停止されるので、樹脂筒内への空気吸込みが防止され、結果として再生不良を防止することができる。また、前記空気吸引判定手段を構成する制御手段を前記流路制御バルブを制御する制御手段と別個に設けないので、部品構成を簡素化できる。
【0028】
前記空気吸引判定信号は、再生作動の異常の報知に用いることができる。また、この実施の形態においては、前空気吸引判定信号により再生工程を中断した後、補水工程を行い、その後に再生動作を再開して所定の積算流量を検出したときに再生動作を終了するように構成することができる。
【0029】
さらに、この実施の形態においては、前記再生液供給ラインの水の流れ方向を判定する流れ方向判定手段を設けることができる。この流れ方向判定手段は、好ましくは、前記流量検出手段に水の流れ方向の正逆により回転方向が正逆反転する回転体を設け、この回転体に磁性体を取り付けるとともに、前記回転体を収容する流量検出手段本体側に、前記回転体の回転数を検出するための複数の磁気センサを互いの取付位置を180度以外の角度でずらせて取り付ける。そして、複数のセンサによる検出信号が、水流の逆転にともない位相のずれを生ずることを利用して、流れ方向,すなわち前記回転体の回転方向を判定するように構成する。
【0030】
こうした流れ方向判定手段を備えることにより、前記回転体の回転方向を確認することができ、前記流量検出手段の取付方向が適正かどうかを判定することができる。たとえば、前記流量検出手段を接線流羽根車式流量計とした場合、水の流れ方向により出力信号が異なる。すると、前記流量制御手段を用いて再生液の供給量や原水の供給量を制御する場合、誤った制御を行うことになる。しかしながら、前記流れ方向判定手段を備えることにより、前記流量検出手段の取付方向の間違いを判定できるので、誤った供給量制御を未然に防止することができる。
【実施例1】
【0031】
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この実施例1に係るイオン交換装置としての軟水装置1の全体構成図を示す図であり、図2は、同実施例1の要部の概略構成図であり、図3および図4は、流量検出手段の時間−回転数特性を模式的に示す図であり、図5は、同実施例の要部制御手順を示すフローチャート図であり、図6および図7は、同実施例1の流量検出手段による異なる作動状態の信号波形を模式的に示す図であり、図8〜13は、軟水装置1の異なる工程を説明する図である。
【0032】
この実施例1に係る軟水装置1は、水道水,地下水,工業用水などの原水中に含まれる硬度分をナトリウムイオンへ置換して軟水を生成し、この軟水を各種の用水として需要箇所へ供給する目的で使用される。このため、前記軟水装置1は、家屋やマンション等の居
住建物,ホテルや大衆浴場等の集客施設,ボイラやクーリングタワー等の冷熱機器,食品加工装置や洗浄装置等の水使用機器などの給水元と接続される。
【0033】
図1において、軟水装置1は、樹脂収容部2と、流路制御バルブ3と、塩水供給装置4とを主要部として備えている。前記樹脂収容部2は、処理材である陽イオン交換樹脂5が充填された有底の樹脂筒6を備えており、この樹脂筒6の開口部は、蓋部材7で閉鎖されている。この蓋部材7には、前記流路制御バルブ3が一体的に装着されており(図示省略)、前記軟水装置1の通水作動の流路と再生作動の流路とを制御器53からの指令信号によって切り換えることができるように構成されている。
【0034】
前記蓋部材7には、流体の供給および排出を行う第一流路8,第二流路9および第三流路10がそれぞれ形成されている。これらの各流路8,9,10は、後述するように、前記流路制御バルブ3を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。
【0035】
前記樹脂収容部2内において、前記第一流路8には、前記樹脂筒6の底部付近へ延びる第一集水管11が接続されている。そして、前記第一集水管11の先端部には、前記陽イオン交換樹脂5の流出を防止する第一スクリーン部材12が装着されている。すなわち、前記第一集水管11内は、前記第一流路8と連通されるとともに、前記第一スクリーン部材12による集水位置が前記樹脂筒6の底部付近に設定されている。
【0036】
また、前記樹脂収容部2内において、前記第二流路9には、前記イオン交換樹脂5の充填層高さの中央部付近へ延びる第二集水管13が接続されている。そして、前記第二集水管13の先端部には、前記陽イオン交換樹脂5の流出を防止する第二スクリーン部材14が装着されている。すなわち、前記第二集水管13内は、前記第二流路9と連通されるとともに、前記第二スクリーン部材14による集水位置が前記陽イオン交換樹脂5の充填層高さの中央部付近に設定されている。
【0037】
ここにおいて、前記第二集水管13の内径は、前記第一集水管11の外径よりも大径に設定されており、前記両集水管11,13の軸芯は、ともに前記樹脂収容部2の軸芯と同軸上に設定されている。すなわち、前記両集水管11,13は、前記第一集水管11が内管に設定され、また前記第二集水管13が外管に設定された二重管構造の集水装置として、前記樹脂収容部2に装着されている。
【0038】
さらに、前記樹脂収容部2内において、前記蓋部材7の下面側には、前記陽イオン交換樹脂5の流出を防止する第三スクリーン部材15が装着されている。すなわち、前記第三流路10は、前記第三スクリーン部材15を介して前記樹脂収容部2内と連通されている。
【0039】
さて、前記第三流路10には、前記流路制御バルブ3を介して原水ライン16が接続されている。また、前記第一流路8には、前記流路制御バルブ3を介して処理水ライン17が接続されている。すなわち、前記原水ライン16および前記処理水ライン17の一部は、それぞれ前記流路制御バルブ3内に形成されている。
【0040】
前記原水ライン16には、上流側から順に圧力スイッチ18および第一開閉弁19が設けられている。ここにおいて、前記圧力スイッチ18は、後述する再生作動において、原水圧力の有無を検出するために設けられており、たとえば前記再生作動を正常に行うために必要な0.1MPa前後の圧力にてオンオフするタイプのものである。一方、前記処理水ライン17には、第二開閉弁20が設けられている。前記圧力スイッチ18,前記第一開閉弁19および前記第二開閉弁20は、それぞれ前記流路制御バルブ3を構成している。
【0041】
ここで、前記流路制御バルブ3の構成について、さらに詳細に説明する。前記流路制御バルブ3内において、前記第一開閉弁19の上流側の前記原水ライン16は、前記第二開閉弁20の下流側の前記処理水ライン17とバイパスライン21で接続されている。このバイパスライン21には、第三開閉弁22が設けられている。
【0042】
また、前記第一開閉弁19の上流側の前記原水ライン16は、前記第二開閉弁20の上流側の前記処理水ライン17と第一再生ライン23で接続されている。この第一再生ライン23には、前記原水ライン16側から順にストレーナ24,第一定流量弁25,エゼクタ26,第四開閉弁27および第一オリフィス28が設けられている。ここにおいて、前記ストレーナ24は、原水中に含まれる懸濁物質を除去し、前記第一定流量弁25および前記エゼクタ26の詰まりを防止するためのものである。また、前記第一定流量弁25は、前記エゼクタ26へ供給する原水を所定範囲の流量に調節するためのものである。
【0043】
前記エゼクタ26と前記第四開閉弁27の間の前記第一再生ライン23は、前記第一開閉弁19の下流側の前記原水ライン16と第二再生ライン29で接続されている。この第二再生ライン29には、第二オリフィス30が設けられている。ここにおいて、前記第一オリフィス28および前記第二オリフィス30は、後述する再生工程および押出工程において、前記第一流路8および前記第三流路10に対して再生液または原水を均等に分配するためのものである。
【0044】
前記エゼクタ26には、ノズル部(符号省略)の吐出側において、前記塩水供給装置4から延設された塩水供給ライン31が接続されており、この塩水供給ライン31には、第五開閉弁32が設けられている。すなわち、前記エゼクタ26は、原水が作動水として前記ノズル部から吐出されるときに発生する負圧を利用して、前記塩水供給装置4から塩水(たとえば、塩化ナトリウムの飽和水溶液)を吸引可能に構成されている。そして、前記エゼクタ26において、前記塩水供給装置4からの塩水は、原水で所定濃度(たとえば、8〜12重量%)にまで希釈されるようになっている。
【0045】
前記第二開閉弁20の上流側の前記処理水ライン17には、前記流路制御バルブ3の外部へ延びる第一排水ライン33が接続されている。この第一排水ライン33には、前記処理水ライン17側から順に第六開閉弁34および第二定流量弁35が設けられている。また、前記第二オリフィス30の下流側の前記第二再生ライン29は、前記第六開閉弁34の下流側の前記第一排水ライン33と第二排水ライン36で接続されている。この第二排水ライン36には、第七開閉弁37が設けられている。さらに、前記第二流路9は、前記第六開閉弁34の下流側の前記第一排水ライン33と第三排水ライン38で接続されている。この第三排水ライン38には、第八開閉弁39が設けられている。ここにおいて、前記第二定流量弁35は、前記樹脂収容部2からの排水量を所定範囲の流量に調節するためのものである。
【0046】
前記流路制御バルブ3において、前記各開閉弁19,20,22,27,32,34,37,39は、種々の作動機構および弁構造を採用することができる。具体的には、カム機構により作動されるリフト式またはダイアフラム式の流路開閉弁や、リンク機構により作動されるスライドピストン式の流路開閉弁などがとくに好適である。
【0047】
つぎに、前記塩水供給装置4の構成について、詳細に説明する。前記塩水供給装置4は、塩水タンク40を備えており、この塩水タンク40内には、塩水の貯留部および再生塩42(たとえば、粒状やペレット状の塩化ナトリウム)の貯蔵部を区画する透水性の塩水プレート43が配置されている。前記流路制御バルブ3は、前記塩水タンク40と前記塩水供給ライン31で接続されている。符号44は、前記塩水供給ライン31の先端開口からゴミが吸い込まれるのを防止する塩水ストレーナ(フィルタ)である。このストレーナ
44は、図1に示すような籠状のものに限定されるものではなく、たとえば前記先端開口を直接的に覆うような構成とすることができる。
【0048】
そして、前記塩水供給ライン31には、塩水供給方向の流量および補給水供給方向の流量を検出する流量検出手段45が設けられている。この流量検出手段45は、この実施例では、図2に示すように、接線流羽根車式センサとしている。この流量検出手段45は、センサ本体(図示省略)に回転可能に支持した羽根車46を設けて、流入口(図示省略)からの流れを羽根47,47,…噴射することで、前記羽根車46に対し流量に比例した回転を与えるように構成するとともに、前記羽根車46のロータ48をN極49およびS極50に着磁し、前記センサ本体に設けた第一磁気センサ51および第二磁気センサ52により回転数を検出するように構成している。
【0049】
この実施例1では、前記塩水ライン供給ライン31内の液体の流れ方向を検出するために、図2に示すように、前記第一磁気センサ51取付位置と、前記第二磁気センサ52の取付位置とのなす角度を180度以外の90度としている。
【0050】
前記流量検出手段45から出力される時間−回転数特性は、水のみを吸い込む工程,水と空気との混合物を吸い込む工程および空気のみ吸い込む工程のそれぞれで変化する。そして、前記エゼクタ26へ供給する原水圧が比較的低い場合は、図3に示す特性を示し、原水圧が高い場合には、図4に示す特性を示すように構成されている。
【0051】
この実施例1の塩水供給装置4は、後述するように前記流量検出手段45の信号を用いて前記塩水供給ライン31からの空気吸引を判定し、空気吸引を停止するするように構成している。このため従来の空気吸引を防止する機構(エアチェックボールと称する塩水バルブ,塩水ウエルなど)を省略し、前記塩水供給装置4の構成を簡素化している。
【0052】
前記制御器53は、前記流量検出手段45からの検出信号である回転数信号を入力し、図5に示す再生工程制御プログラムなどの前記軟水装置1の工程制御プログラムを含む予め記憶した制御手順に基づき、前記流路制御バルブ3を制御するように構成されている。前記工程制御プログラムには、再生工程における前記塩水供給ライン31から空気吸引が開始されたかどうかを判定する空気吸引判定プログラムと前記塩水供給ラインの31の水の流れ方向を判定する流れ方向判定プログラムとを含んでいる。
【0053】
前記空気吸引判定プログラムは、前記流量検出手段45の第一磁気センサ51(または、第二磁気センサ52)からの回転数信号が水吸い込み時の回転数(原水圧が低い場合は、図3に図示のN11,原水圧が高い場合は、図4に図示のN21)に対して所定の比率に低下したN12を検出すると空気吸引が開始されたと判定するものである。前記水吸い込み時の回転数N11,N21は、時間T11,T21から回転数上昇後に所定時間、所定範囲の回転数を検出した際の平均回転数をN11,N21に設定することができる。
【0054】
前記流れ方向判定プログラムは、前記流量検出手段45の第一磁気センサ51の検出信号Aおよび第二磁気センサ52の検出信号Bが水の流れが逆転することで、位相のずれが逆方向になることを利用して検出するものである。すなわち、前記流量制御バルブ3から前記塩水タンク40方向への流れの時(図2で前記ロータ48が左回転時)は、図6に示す波形の信号となり、逆方向の流れの時(図2で前記ロータ48が右回転時)は、図6の波形と逆方向に90度(または180度)ずれた図7に示す波形信号をとなる。前記第一磁気センサ51および前記第二磁気センサ52からの信号が、前記制御器53へ入力されて、前記制御器53が流れ方向を判定するように構成されている。この流れ方向の判定は、前記制御器53と別の制御器にて行うように構成することができる。
【0055】
以下、この第一実施形態に係る前記軟水装置1の通水作動および再生作動について、図2〜図13を参照して詳細に説明する。
【0056】
(通水工程)
前記通水作動では、図8に示すように、前記制御器53からの指令信号により、前記第一開閉弁19および前記第二開閉弁20は、それぞれ開状態に設定される。一方、前記第三開閉弁22,前記第四開閉弁27,前記第五開閉弁32,前記第六開閉弁34,前記第七開閉弁37および前記第八開閉弁39は、それぞれ閉状態に設定される。前記原水ライン16を流れる水道水,地下水,工業用水などの原水は、前記第三流路10を介して供給されたのち、前記樹脂収容部2の上部で前記第三スクリーン部材15から配水される。
【0057】
前記第三スクリーン部材15から配水された原水は、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を下降流で流れる過程で硬度分がナトリウムイオンへ置換され、軟水化される。前記陽イオン交換樹脂5の充填層を通過した軟水は、前記樹脂収容部2の底部で前記第一スクリーン部材12へ集水されたのち、前記第一集水管11,前記第一流路8および前記処理水ライン17を介して流通し、需要箇所へ供給される。そして、所定量の軟水を採取することにより、前記陽イオン交換樹脂5が硬度分を置換できなくなると、前記再生作動を実施する。
【0058】
前記再生作動は、前記陽イオン交換樹脂5の硬度分除去能力を回復させるために、逆洗工程,再生工程,押出工程,洗浄工程および補水工程をこの順で行う。ちなみに、前記再生作動は、通常、軟水を使用しない深夜に実施するように設定されているが、夜間も軟水を必要とする需要箇所においては、前記軟水装置1の複数台を並列または直列に設置し、前記通水作動を交互に行うように設定する。
【0059】
(逆洗工程)
前記逆洗工程では、図9に示すように、前記制御器53からの指令信号により、前記第二開閉弁20,前記第三開閉弁22および前記第七開閉弁37は、それぞれ開状態に設定される。一方、前記第一開閉弁19,前記第四開閉弁27,前記第五開閉弁32,前記第六開閉弁34および前記第八開閉弁39は、それぞれ閉状態に設定される。前記原水ライン16を流れる原水は、前記バイパスライン21,前記処理水ライン17,前記第一流路8および前記第一集水管11を介して供給されたのち、前記樹脂収容部2の底部で前記第一スクリーン部材12から配水される。
【0060】
前記第一スクリーン部材12から配水された原水は、前記樹脂収容部2内を上昇流で流れ、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を展開させながら、堆積した懸濁物質や破砕などによって生じた微細樹脂を洗い流す。そして、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を通過した原水は、前記樹脂収容部2の上部で前記第三スクリーン部材15へ集水されたのち、前記第三流路10,前記原水ライン16,前記第二再生ライン29および前記第二排水ライン36を介して前記第一排水ライン33から系外へ排出される。前記逆洗工程を開始後、前記圧力スイッチ18がオン状態,すなわち原水圧有りの状態の積算時間が所定時間に達し、所定量の逆洗量が確保されると、前記再生工程へ移行する。
【0061】
(再生工程)
前記再生工程では、図10に示すように、前記制御器53からの指令信号により、前記第三開閉弁22,前記第四開閉弁27,前記第五開閉弁32および前記第八開閉弁39は、それぞれ開状態に設定される。一方、前記第一開閉弁19,前記第二開閉弁20,前記第六開閉弁34および前記第七開閉弁37は、それぞれ閉状態に設定される。前記原水ライン16を流れる原水は、希釈水として、前記第一再生ライン23を介して前記エゼクタ26の一次側へ供給される。この際、原水中の懸濁物質は、前記ストレーナ24により除
去され、また原水の流量は、前記第一定流量弁25により所定範囲に調節される。
【0062】
前記エゼクタ26において、原水の通過によって前記ノズル部(符号省略)の吐出側で負圧が発生すると、前記塩水供給ライン31内も負圧となる。この結果、前記塩水タンク40内の塩水は、前記塩水供給ライン31を介して前記エゼクタ26へ吸引される。前記エゼクタ26内では、塩水が原水で所定濃度まで希釈され、再生液が調製される。
【0063】
前記エゼクタ26からの再生液の一部は、前記第一再生ライン23,前記処理水ライン17,前記第一流路8および前記第一集水管11を介して供給されたのち、前記樹脂収容部2の底部で前記第一スクリーン部材12から配水される。一方、前記エゼクタ26からの再生液の残部は、前記第二再生ライン29,前記原水ライン16および前記第三流路10を介して供給されたのち、前記樹脂収容部2の上部で前記第三スクリーン部材15から配水される。この際、前記エゼクタ26からの再生液は、前記第一オリフィス28および前記第二オリフィス30によって均等に分配される。
【0064】
前記第一スクリーン部材12から配水された再生液は、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を上昇流で通過し、前記陽イオン交換樹脂5の下層部を再生させる。一方、前記第三スクリーン部材15から配水された再生液は、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を下降流で通過し、前記陽イオン交換樹脂5の上層部を再生させる。すなわち、この第一実施形態では、前記陽イオン交換樹脂5の充填層に対して分流再生(split-flow regeneration)が行われる。この際、下降流の再生液は、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を下向きに押圧し、上昇流の再生液によって前記陽イオン交換樹脂5が展開および流動することを抑制する。そして、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を通過した再生液は、前記陽イオン交換樹脂5の充填層高さの中央部付近で前記第二スクリーン部材14へ集水されたのち、前記第二集水管13,前記第二流路9および前記第三排水ライン38を介して前記第一排水ライン33から系外へ排出される。
【0065】
以上の再生工程中に行われる空気吸引判定に関連する制御を図3〜図5に基づき説明する。図5において、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、上述の再生工程を開始する。再生工程の開始とともに、前記塩水供給ライン31に塩水が流れ始め、前記流量検出手段45は、回転数信号を出力し始め、前記制御器53は、積算流量のカウントと空気吸引の監視とを行う。前記塩水タンク40内では、前記再生工程の進行とともに塩水が消費され、経時的に水位が下降する。
【0066】
この水位の変化に対して、前記流量検出手段45の回転数信号は、図3および図4に示すように変化する。原水圧が低い場合、図3に示すように、再生工程開始からT11時間が経過すると、前記塩水供給ライン31が塩水の吸い込みを開始する。回転数は、図示の如く急激に上昇し、若干の変動(図示省略)はあるが、ほぼ一定の範囲に落ち着く。そして、時間T12時間が経過し、水位が前記塩水供給ライン31の下端近くなると、前記塩水供給ライン31は、水と空気とを吸い込み始める。時間T13が経過して水位が前記塩水供給ライン31の下端以下となると、前記塩水供給ライン31は、空気のみを吸い込むようになる。
【0067】
また、原水圧が比較的高い場合、再生工程開始からT21時間が経過すると、前記塩水供給ライン31が塩水の吸い込みを開始する。回転数は、図示の如く急激に上昇し、若干の変動(図示省略)はあるが、ほぼ一定の範囲に落ち着く。そして、時間T22時間が経過し、水位が前記塩水供給ライン31の下端近くなると、前記塩水供給ライン31は、水と空気とを吸い込み始める。時間T23が経過して水位が前記塩水供給ライン31の下端以下となると、前記塩水供給ライン31は、空気のみを吸い込むようになる。すると、回転数が急激に上昇して、前記回転数N21よりも高い値で安定する。
【0068】
S2において、前記積算流量が設定値以上かどうかを判定し、この判定がNOの場合は、S3において回転数比が設定値以下かどうかを判定する。再生工程前の補水工程において、何らかの理由により補水が不足すると、S2にてYESが判定される(正常に再生工程が終了しない)前に、S3にてYESが判定される。すなわち、前記流量検出手段45からの回転数信号が設定値以下の比率に低下して、S3にてYESが判定されると、空気吸引が開始されたと判定し、S4で再生工程を中断して後で詳述する図13の補水工程を開始する。この補水工程中またはその前後で再生工程不良の報知を行うことができる。
【0069】
この補水工程により、前記塩水タンク40内に原水が供給される。この補水工程が終了するとS1に戻り、再生工程が再開される。再開された再生工程においては、前記制御器53は、S3再生工程を中断したときの積算流量を記憶しており、S2においてこの記憶した積算流量から流量積算を開始し、積算流量が設定値以上となると、再生工程を終了して、S7にて次工程の押出工程などを順次行う。こうして、空気吸引による再生不良を防止することができる。
【0070】
また、この再生工程においては、前記制御器53は、前記第一磁気センサ51および前記第二磁気センサ52の回転数信号が、図6の信号か、図7の信号かを識別して、前記ロータ48の回転方向が図2で右回り(時計回り)か、左回り(反時計回り)かを判定し、前記流量検出手段45の取付方向が正しいかどうかを判定する。取付方向が間違っている場合は、前記流量検出手段45の取付方向を変えて正常な取付に修正することができる。
【0071】
(押出工程)
前記押出工程では、図11に示すように、前記制御器53からの指令信号により、前記第三開閉弁22,前記第四開閉弁27および前記第八開閉弁39は、それぞれ開状態に設定される。一方、前記第一開閉弁19,前記第二開閉弁20,前記第五開閉弁32,前記第六開閉弁34および前記第七開閉弁37は、それぞれ閉状態に設定される。前記原水ライン16を流れる原水は、押出水として、前記第一再生ライン23を介して前記エゼクタ26の一次側へ供給される。この際、原水中の懸濁物質は、前記ストレーナ24により除去され、また原水の流量は、前記第一定流量弁25により所定範囲に調節される。また、前記エゼクタ26への塩水の供給は、停止されている。
【0072】
前記エゼクタ26からの原水の一部は、前記第一再生ライン23,前記処理水ライン17,前記第一流路8および前記第一集水管11を介して供給されたのち、前記樹脂収容部2の底部で前記第一スクリーン部材12から配水される。一方、前記エゼクタ26からの原水の残部は、前記第二再生ライン29,前記原水ライン16および前記第三流路10を介して供給されたのち、前記樹脂収容部2の上部で前記第三スクリーン部材15から配水される。この際、前記エゼクタ26からの原水は、前記第一オリフィス28および前記第二オリフィス30によって均等に分配される。
【0073】
前記第一スクリーン部材12から配水された原水は、再生液を押し出しながら前記陽イオン交換樹脂5の充填層を上昇流で通過し、前記陽イオン交換樹脂5の下層部を引き続き再生させる。一方、前記第三スクリーン部材15から配水された原水は、再生液を押し出しながら前記陽イオン交換樹脂5の充填層を下降流で通過し、前記陽イオン交換樹脂5の上層部を引き続き再生させる。この際、下降流の原水は、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を下向きに押圧し、上昇流の原水によって前記陽イオン交換樹脂5が展開および流動することを抑制する。そして、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を通過した再生液および原水は、前記陽イオン交換樹脂5の充填層高さの中央部付近で前記第二スクリーン部材14へ集水されたのち、前記第二集水管13,前記第二流路9および前記第三排水ライン38を介して前記第一排水ライン33から系外へ排出される。前記押出工程を開始後、前記圧
力スイッチ18がオン状態,すなわち原水圧有りの状態の積算時間が所定時間に達し、所定量の押出量が確保されると、前記洗浄工程へ移行する。
【0074】
(洗浄工程)
前記洗浄工程では、図12に示すように、前記制御器53からの指令信号により、前記第一開閉弁19,前記第三開閉弁22および前記第六開閉弁34は、それぞれ開状態に設定される。一方、前記第二開閉弁20,前記第四開閉弁27,前記第五開閉弁32,前記第七開閉弁37および前記第八開閉弁39は、それぞれ閉状態に設定される。前記原水ライン16を流れる原水は、洗浄水として、前記第三流路10を介して供給されたのち、前記樹脂収容部2の上部で前記第三スクリーン部材15から配水される。
【0075】
前記第三スクリーン部材15から配水された原水は、前記樹脂収容部2内に残留している再生液を洗い流しながら、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を下降流で通過する。そして、前記陽イオン交換樹脂5の充填層を通過した原水は、前記樹脂収容部2の底部で前記第一スクリーン部材12へ集水されたのち、前記第一集水管11,前記第一流路8,前記処理水ライン17および前記第一排水ライン33を介して系外へ排出される。前記洗浄工程を開始後、前記圧力スイッチ18がオン状態,すなわち原水圧有りの状態の積算時間が所定時間に達し、所定量の洗浄量が確保されると、前記補水工程へ移行する。
【0076】
(補水工程)
前記補水工程では、図13に示すように、前記制御器53からの指令信号により、前記第三開閉弁22および前記第五開閉弁32は、それぞれ開状態に設定される。一方、前記第一開閉弁19,前記第二開閉弁20,前記第四開閉弁27,前記第六開閉弁34,前記第七開閉弁37および前記第八開閉弁39は、それぞれ閉状態に設定される。前記原水ライン16を流れる原水は、補給水として、前記第一再生ライン23を介して前記エゼクタ26の一次側へ供給される。この際、原水中の懸濁物質は、前記ストレーナ24により除去され、また原水の流量は、前記第一定流量弁25により所定範囲に調節される。
【0077】
前記エゼクタ26からの補給水は、前記再生剤供給ライン31を介して前記塩水タンク40内へ供給される。そして、前記塩水タンク40内では、前記補水工程の進行とともに補給水が供給され、経時的に水位が上昇する。
【0078】
前記補水工程時には、前記流量検出手段48により補給水供給方向の積算流量,すなわち前記塩水供給ライン31を介して前記エゼクタ26から前記塩水タンク39へ流れる補給水の積算流量が検出される。そして、この検出値が所定量に達したとき、前記補水工程を終了する。前記補水工程を終了すると、再び前記通水作動を実施する。前記塩水タンク40内へ供給された補給水は、前記通水作動中に前記再生塩42を溶解させ、飽和塩水を生成する。
【0079】
ここで、補給水の供給量は、前記陽イオン交換樹脂5の交換能力を所定値まで回復させることのできる前記再生塩42の必要量に基づいて設定され、この必要量から飽和塩水を生成することのできる量に設定される。また、前記補水工程の開始時点から終了時点までの積算流量の検出値,すなわち補給水の供給量は、次回再生工程において、前記再生塩42の不足を判断するために利用される。
【0080】
ここで、従来の軟水装置は、構成の複雑な塩水バルブにより補給水の供給量を制御していた。この場合、補水停止位置を決めるフロートバルブが結晶塩により固着すると、所定量の補給水が供給されず、塩水量が不足する。そして、再生不良によって処理水の水質悪化を引き起こす。このため、第一実施形態では、補給水供給方向の積算流量に基づいて、一定量の補給水を供給することによって、前記塩水供給装置4の構成を簡単化するように
している。
【0081】
ところで、前記再生作動中は、前記樹脂収容部2を迂回した原水が需要箇所の要求に応じて供給される。前記再生作動中には、前記第三開閉弁22が常に開状態に設定されているので、前記第一開閉弁19の上流側の前記原水ライン16を流れる原水は、前記バイパスライン21を介して前記第二開閉弁20の下流側の前記処理水ライン17へ供給される。したがって、前記再生作動中においても、需要箇所では水を使用することが可能になっている。とくに、前記軟水装置1を直列に設置している場合には、上流側が前記再生作動中のときには、下流側の前記通水作動によって軟水が供給される。一方、下流側が前記再生作動中のときには、上流側の前記通水作動によって軟水が供給される。
【0082】
以上の実施例1によれば、前記塩水供給ラインからの空気吸引を検出することができるので、再生作動の信頼性を高めることのできる軟水装置を実現することができる。この結果、イオン交換樹脂の再生不良を効果的に防止し、所定の水質に調整された処理水を安定して供給することができる。また、従来の塩水バルブなどを省略することにより、塩水供給装置4の構成が簡素化することのできる。この結果、軟水装置の組立やメンテナンスにおける時間を短縮し、製造や保守に係るコストを抑制することができる。
【0083】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではない。たとえば、前記実施例1では、前記陽イオン交換樹脂5の交換能力を分流再生により回復させているが、他の再生方式を利用することもできる。たとえば、一般的に行われている並流再生(co-flow regeneration)や向流再生(counter-flow regeneration)によって、前記陽イオン交換樹脂5の交換能力を回復させてもよい。
【0084】
また、前記実施例1では、前記塩水タンク40内の塩水を前記エゼクタ26を利用して供給しているが、他の手段を利用することもできる。また、前記実施例1では、前記空気吸引判定信号により、再生工程中断−補水工程−再生工程の順に自動的に制御しているが、再生工程を中断するだけの制御とすることができる。また、前記流路制御バルブ3の構成は、前記実施例1の構成に限定されない。
【0085】
さらに、前記実施例1では、前記イオン交換装置を軟水装置1として使用する場合について説明したが、他のイオン交換装置として使用することもできる。たとえば、前記イオン交換装置1において、前記陽イオン交換樹脂5を陰イオン交換樹脂へ置換すれば、硝酸性窒素除去装置として使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】この発明の実施例1に係るイオン交換装置としての軟水装置1の全体構成図である。
【図2】同実施例1の要部の概略構成図である。
【図3】流量検出手段の時間−回転数特性を模式的に示す図である。
【図4】流量検出手段の異なる時間−回転数特性を模式的に示す図である。
【図5】同実施例1の要部制御手順を示すフローチャート図である。
【図6】同実施例1の流量検出手段による波形を示す図である。
【図7】同実施例1の異なる作動状態の流量検出手段による波形を示す図である。
【図8】軟水装置1の一工程を説明する図である。
【図9】軟水装置1の異なる工程を説明する図である。
【図10】軟水装置1の異なる工程を説明する図である。
【図11】軟水装置1の異なる工程を説明する図である。
【図12】軟水装置1の異なる工程を説明する図である。
【図13】軟水装置1の異なる工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0087】
1 イオン交換装置
2 樹脂収容部
3 流路制御バルブ
5 陽イオン交換樹脂(イオン交換樹脂)
31 塩水供給ライン
40 塩水タンク
48 流量検出手段
53 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を充填した樹脂収容部と、通水作動および再生作動を切り換える流路制御バルブと、再生液供給ラインで前記流路制御バルブと接続され再生に用いる再生液を貯留する再生液タンクと、前記再生液供給ラインにて再生液供給方向の流量を検出する流量検出手段とを備えるイオン交換装置であって、
前記流量検出手段からの信号を用いて前記再生液供給ラインの空気吸引を判定する空気吸引判定手段を設けたことを特徴とするイオン交換装置。
【請求項2】
前記空気吸引判定手段が、前記流量検出手段と、前記流路制御バルブを制御するとともに、前記流量検出手段からの信号に基づき空気吸引を判定する制御手段とを含んで構成され、
前記制御手段は、空気吸引を判定すると前記流路制御バルブを制御して前記再生液供給ラインによる再生液供給を停止することを特徴とする請求項1に記載のイオン交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−126119(P2008−126119A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312440(P2006−312440)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】