イオン検出装置

【課題】大気圧下におけるイオン検出を基本とした、検出装置を提供する。
【解決手段】筐体内が大気圧環境下であって、当該筐体内に、外気を筐体内に導入する導入口と、当該導入口によって、筐体内に導入された外気に含まれる荷電粒子の偏向された一部を検出する検出電極と、電圧印加電極とを有し、前記検出電極と前記電圧印加電極は重力方向に向かって並置され、当該検出電極と電圧印加電極とを保持する電極保持部を備え、当該電極保持部は吸水率が0.4以下の材料より形成されていることを特徴とするイオン検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧下におけるイオン検出を基本とした、検出装置に関する。例えば、この検出技術を基盤とした、自動車などの移動体における飲酒運転防止装置などに関する。さらに、人間の計測や、外気計測に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の呼気検出、呼気中アルコール検出などの技術分野においては、目的とする物質をイオン化して真空中に存在する質量分析部により検出する方法がある。
特許文献1に開示されている方法は、エレクトロスプレー法と呼ばれるイオン化法により発生した微小液滴を、真空中のセカンドチャンバーに導入して、そのチャンバー内で上方から導入されたガスとの衝突により脱溶媒化を促進し、脱溶媒化したイオンを質量分析するという方法である。
【0003】
特許文献2に開示されている方法は、真空下のスキマーコーンおよび或いは後続のイオン収束レンズ系のレンズ電極に流入する、大気圧下で生成したイオンの電流を検出し、そのイオン電流が一定になるように電極の印加電圧を制御するものである。
【0004】
特許文献3に記載の方法は、真空中で発生したイオンを大きく偏向して電極に衝突させ、光学系のクリーニングを行うものである。
【0005】
特許文献4に記載の方法は、真空中に導入するイオンを、空気力学的に収束する方法である。
【0006】
特許文献5に記載の方法は、真空中で効率的にイオンをトラップするためのイオントラップ型質量分析計に関するものである。
【0007】
特許文献6に記載の方法は、大気圧イオン化法を用いたタンデム型質量分析計において、検出信号のSN比を改善するための方法である。
上記いずれの場合においても、イオンを真空中に導入して検出することが大きな前提となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US6278111号公報
【特許文献2】特開平07−325020号公報
【特許文献3】特開2003−257328号公報
【特許文献4】特表2006−510905号公報
【特許文献5】特表2000−510638号公報
【特許文献6】US2004031917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のいずれの方法でも、生成したイオンを分析するために高真空下で動作する質量分析計を用いている。質量分析計を用いると、イオンの質量数を測定でき高精度の分析が可能となる。しかし、質量分析計のように、磁場や電場の中で、イオンを質量数毎に正確に分離させるには、目的とするイオンが中性分子と衝突しイオン軌道が変化する、あるいは衝突により目的とするイオンが分解することをできるだけ避ける必要があり、質量分析計内部は10−2Pa以下の高真空にして存在する中性分子の数を大幅に減少させることが必要である。また、目的とするイオンを高感度に検出するには、2次電子増倍管などのように、高電圧を印加して電子の増幅作用を利用するため、高真空にしておかないと、この検出器部分で放電が発生し、イオンが検出できなくなるというのも、質量分析計を高真空にする理由のひとつである。そのため、ターボ分子ポンプ、ロータリポンプなどの真空排気系を設けるため、装置が大型化するという大きな問題があった。
【0010】
上述のように従来技術においては、磁場、電場の中で、イオンを質量数毎に分離するために、ターボ分子ポンプなどの真空排気系を設けざるを得ず、装置が大型化していた。このとき、イオンに働く力は磁場や電場による力であり、重力は関係しない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための、本願発明の一例としては以下の構成となる。
筐体内が大気圧環境下であって、当該筐体内に、外気を筐体内に導入する導入口と、当該導入口によって、筐体内に導入された外気に含まれる荷電粒子の偏向された一部を検出する検出電極と、電圧印加電極とを有し、前記検出電極と前記電圧印加電極は重力方向に向かって並置され、当該検出電極と電圧印加電極とを保持する電極保持部を備え、当該電極保持部は吸水率が0.4以下の材料より形成されていることを特徴とするイオン検出装置。
【0012】
また、他の一例としては、大気圧下におかれた筐体内に気体を導入する導入口と、当該導入された気体の流入通路を当該筺体内における重力方向に向かって形成する、イオンを補集する第一電極と電圧印加可能な第二電極と、前記第一電極に接続された電流計測手段と、当該電流計測手段における計測結果を基に、当該気体に含まれる成分を分析するデータ解析装置を有し、前記第一電極及び前記第二電極を保持する電極保持部を備え、当該電極保持部は吸水率が0.4以下の材料より形成されていることを特徴とするイオン検出装置。
【発明の効果】
【0013】
当該分析方法は、大気圧下で動作させることから、ターボ分子ポンプのような大型の真空排気系は不要となり装置を大幅に小型化でき、課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の装置のシステム構成図
【図2】本発明の装置の内部の構成図
【図3】本発明の装置における、検出原理
【図4】本発明の装置における、検出結果と計算結果との比較
【図5】本発明の装置の呼気センサー部の外観図
【図6】本発明の装置のシステム構成図
【図7】本発明の装置の回路構成図
【図8】本発明の装置の活用事例
【図9】本発明の装置における、呼気の連続検出例
【図10】本発明の装置における、呼気ピーク強度の材料の吸水率依存性
【図11】本発明の装置における、呼気の導入位置依存性
【図12】本発明の装置における、呼気アルコールの検出アルゴリズム
【図13】本発明の装置における、呼気ピーク強度の呼吸法による依存性
【図14】本発明の装置における、呼気アルコールの検出例
【図15】本発明の装置における、呼気ピーク強度と呼気アルコールピーク強度との関係
【図16】本発明の装置における、飲酒していない状態での呼気ピークと呼気アルコールピークの検出例
【図17】本発明の装置における、飲酒している状態での呼気ピークと呼気アルコールピークの検出例
【図18】本発明の装置における、ヘッドセットを用いた場合のシステム構成図
【図19】本発明の装置における、ヘッドセットを用いた場合の呼気センサー検出部
【図20】本発明の装置における、ヘッドセットを用いた場合の呼気センサー検出部
【図21】本発明の装置において、悪臭(アンモニア水)を嗅いだ場合の呼吸の変化
【図22】本発明の装置において、呼気ピーク間の距離と呼気ピーク強度とのプロット図
【図23】本発明の装置において、悪臭(アンモニア水)を嗅いだ場合の呼吸の変化を、プロットした図
【図24】本発明の装置において、興味ある映像を見た場合の呼吸の変化
【図25】本発明の装置において、興味ある映像を見た場合の呼吸の変化を、プロットした図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下の本実施例においては、イオンを検出する部分を大気圧下で動作させ、イオンに働く力を、電場による力だけでなく、大気圧下で動作させる際に特徴となる、空気抵抗、浮力、重力の作用を使用することによって、これまでの従来技術とは異なる方法でイオンの分離を行う分析方法の一例を提供する。
また、イオンに対する電場による力と重力による作用を効果的に使用する分析法を提供するために、重力とは異なる方向に電場の力を作用させイオンを分離する(例えば、重力と電場による力の方向が90度異なるなど)ことも有効である。さらに、大気圧下で動作させてイオンを検出する場合、同様の構造を持つ検出部を複数並べて、検出感度を向上させることが容易となる。なお、イオン検出には、大気圧で動作する電流計を用いる。
【0016】
従来の質量分析計ではあるレベルの真空に達してから試料を導入しなければならないが、大気圧下で動作する装置では電源を投入すればすぐに試料を導入して測定を開始することができる。
【0017】
このように、簡便な方法で外気を検出することができると、空間的制約がある場所において呼気検知することが可能となる。例えば、自動車の車内において呼気中アルコール検査に基づく飲酒運転防止を行うことができる。
また、脳における心の活動状況を内部表現(イメージ)と考えることができるが、こうした脳内における心の感性情報の内部表現(イメージ)は、言語のほか、ジェスチャー、音声などを通して外部に表出される(感性情報の外部表現)と考えられる。呼吸もそのひとつと考えられ、その変化を検出することによって、映像、音楽などに対する興味(脳の価値判断)を間接的に計測することができる。
【0018】
本実施例では、非接触で非侵襲に外気を検出する例を示す。具体的には、呼気を検出する例について詳述する。ここで、本例においては呼気を示すが、呼気に限らず、外気を導入して検出可能であることは云うまでも無い。
【0019】
呼気中には、約37℃における飽和蒸気圧レベルの水が含まれることから、呼気中の水は実質的に水クラスターとなって体外に出される。このとき、水クラスター中に、正の電荷を持つ水クラスターと負の電荷を持つ水クラスターが存在すると、電界により分離することができる。
【0020】
このとき、一方の電圧印加電極に高電圧を印加し対向する検出電極を電流計に接続した平行平板電極中に、呼気中の水クラスターを導入すると、印加した電圧と同じ極性を持つクラスターのみが電界により偏向し、検出電極に補足され電流が検出される。すなわち、電圧印加電極に正の電圧を印加すると、検出電極には正の電荷を持つ水クラスターが捕捉され正の電流が検出される。一方、電圧印加電極に負の電圧を印加すると、検出電極には負の電荷を持つ水クラスターが捕捉され負の電流が検出される。この電流の時間変化を計測することによって、呼気を間接的に計測することができる。
通常の呼気のクラスターでは、その全体の電流量を計測すると電流量はほぼ零であることから、正の電荷を持つ水クラスターと負の電荷を持つ水クラスターは呼気中ではほぼ同数存在すると考えられる。
【0021】
この計測装置は、筐体内に、外気を筐体内に導入する導入口と、当該導入口によって、筐体内に導入された外気に含まれる荷電粒子の偏向された一部を検出する検出電極と、電圧印加電極とを有し、前記検出電極と前記電圧印加電極が並置され、当該検出電極と電圧印加電極とを保持する電極保持部を有する。
【0022】
また、検出システムとしてアルコールを検出する具体的な構成例を図1に示す。センサー部1aには、呼気を導入するための試料導入口4aと、アルコールなどを検出するためのアルコールセンサーヘッド(半導体センサーなど)と、導入された呼気の一部をセンサー部外に送り出すための送気ファン部6aが設けられている。これには、小型のDCファンを使用することができる。得られた信号は、ケーブル7aを介して、計測制御部2aに送られる。この計測制御部には、動作中であることを示すインジケータランプ8と、得られたデータを保存するためのメモリーカードを挿入するためのメモリーカードスロット16aが設けられている。ここで本例では記憶装置の例としてメモリカード、メモリカードスロット16aを示したが、これに限らず、外部記録媒体もしくは組み込み型の記憶装置であっても良いことは云うまでも無い。
【0023】
センサー部1aと計測制御部2aに供給される電源電圧は、ケーブル7bを介して供給される。車などでは、パワーインバータ3aを介して電源電圧が供給されることになる。通常の家庭用電源や蓄電池を使用することも可能である。
【0024】
図2に、検出装置であるセンサー部の内部構造を示した。図2(a)は、センサー部の内部を上部から見た図、図2(b)は、センサー部の内部を側面から見た図である。図2(a)に示すように、試料導入口4bから導入された呼気は、電極保持部13aで保持された、電圧印加電極10aと、検出電極11aで挟まれた空間に導入される。電圧印加電極には電圧が印加され、検出電極では電流を検出するので、電極保持部13aは絶縁材である。試料の導入方向は、電極保持部13aで閉じられた形となっており、呼気の一部は、送気口12aから系の外に排気される。アルコールを検出するためのアルコールセンサーヘッド5bは、電圧印加電極10aの隣に配置されている。一方、図2(b)で示すように、試料導入口4cから導入された呼気は電極保持部13bの壁に衝突し、下向きに移動する。それから、送気口12bから、呼気の一部は、送気ファン14で系の外に排気される。ここでは送風ファン14を挙げたが、必ずしもファンを設ける必要は無い。外部から吸気する形態を採ることも可能である。
【0025】
図3(a)、図3(b)に、本発明の検出原理を示した。センサー電源17aによって、電圧印加電極10cと検出電極11bの間に電位差を設ける。このとき、電圧印加電極10cと検出電極11bとの間に、水クラスターを含む呼気を、矢印の方向から、電圧印加電極10cと検出電極11bで挟まれた空間に導入すると、径の小さな電荷も持つ水クラスター19bには、図3(b)に示すように、空気抵抗、浮力、重力、電界による力が働く。これらの力の関係によって、電圧印加電極10dに正の電圧を印加すると、正の電荷を持つ水クラスターのみが偏向し検出電極11cに衝突して正の電流が検出される。一方、電圧印加電極10dに負の電圧を印加すると、負の電荷を持つ水クラスターのみが偏向し検出電極11cに衝突して負の電流が検出される。従って、偏向して検出電極11cに衝突するのは、径の小さな電荷を持つ水クラスター19aであり、径の大きな電荷を持つ水クラスターは検出電極11cに衝突せず検出されない。このように、本発明では、重力方向が重要であることから、重力方向に向かって、電圧印加電極10dと検出電極11cとの間に形成される空間に、呼気などの外気が通過できる構成とすることが肝要である。
さらには、電圧印加電極10dと検出電極11cは重力方向に対して並置されていることが好ましく、さらに好適には略平行に配置されていると良い。
【0026】
以上の過程を理解するには、電荷を持つ水クラスターの重力方向の運動と、重力と直角方向の運動を解析する必要がある。まず、電荷を持つ水クラスターの重力方向の運動について解析する。
【0027】
小さな水クラスターに働く空気抵抗は、ストークスによって球の半径rと重力方向の球の速度vに比例することが求められている。その大きさは、空気の粘性率ηを用いて次式で表される。
【0028】
空気抵抗の大きさ=6πηrv
また、空気による浮力の大きさはその物体が排除した空気に働く重力と等しいので、半径rの球の場合、空気の密度ρ,重力加速度gを用いて
空気による浮力の大きさ=(4/3)πrρ
と表される。従って,質量mの水クラスターが重力方向に働く運動方程式は、
m・(dv/dt)=(4/3)πrρg−6πηrv−(4/3)πrρgと表される。ここで、ρは水の密度である。1気圧、25℃で空気中を落下する水滴を考えると、水の密度ρ=997.04kg/m、空気の密度ρ=1.1843kg/m、空気の粘性率η(25℃)=0.0000182、重力加速度g=9.807m/s、となる。vが正であれば、時間が経過するにつれて加速度は0となり、空気中の水クラスターは一定速度で等速運動をするようになる。この速度の終末速度vg0は上式をゼロと置くことにより次式となる。
【0029】
g0=2r(ρ−ρ)g/(9η)
次に、電荷を持つ水クラスターの重力方向と直角方向の運動について解析する。電荷を持つ水クラスターの電荷をqとすると、電場の大きさがEのとき、電荷を持つ水クラスターに対して重力方向と直角方向に運動するときの運動方程式は次式となる。
【0030】
m・(dv/dt)=qE−6πηrv
従って、このときの終末速度vt0は、
t0=qE/(6πηr)
となる。ここで、電荷q=1.6021×10−19C(A・s)である。電界は、例えば、距離10mmの電圧印加電極と検出用電極間に1000Vを印加したとすると、電界E=100000V/mとなる。
【0031】
ここで、1気圧、25℃で、空気中の水クラスターの場合を考える。水の密度ρ=997.04kg/m、空気の密度ρ=1.1843kg/m、空気の粘性率η=0.0000182、重力加速度g=9.807m/s、電荷q=1.6021×10−19C(A・s)、電界E=100000V/mとして、計測結果と計算結果の比較を行なった。図4(a)は、呼息時間を約3秒間とした場合の呼吸1回の本発明による計測結果、図4(b)は、上記の考え方に基づく計算結果を示した。計算に当たっては、半径が0.01μmから0.5μmの範囲にある呼気中の水クラスターが、電圧印加電極と検出電極の長さが50mmで両電極間の距離が10mmのときに、両電極で囲まれた空間に導入された際に瞬時に電荷を帯びて検出されることを想定している。また、電荷を持つ水クラスターは両電極間で囲まれた空間を通り過ぎる前に、検出電極に衝突すれば検出されると考え、計測結果は、両電極間で囲まれた空間に存在する多数の点から検出電極に到達するまでの時間の度数分布として表した。図4に示す結果は、本発明において、呼気がピークの半値幅(full width at half maximum)数秒程度で観測される理由がほぼ説明されることを示している(観測結果のピーク半値幅は2秒程度に対し、計算結果のピーク半値幅は4秒程度である)。また、これらの結果から、検出できる水クラスターの半径は1μm程度以下であると考えられる。
【0032】
検出電極11bで検出された電流は、センサーアンプ18aで、増幅後、電圧に変換され、CPUに転送される。
【0033】
また、図5に示すように、センサー部1bには、呼気を試料導入口4cとアルコールセンサーヘッド5cに導入しやすいように、つば20を設けることは有効である。さらに、図1で示したシステムに加えて、図6に示すように、移動体の位置情報を得るためのGPSアンテナ21aを設けることは有効である。
【0034】
図7には、センサーの回路構成を示した。センサー部1dには、センサー電源17bから電圧が供給され、センサー部1dで得られた呼気の信号は、センサーアンプ18bで、増幅、電圧への変換が行なわれ、CPU23aに送られる。同様に、アルコールセンサーヘッドで得られたアルコールの信号は、アルコールセンサーアンプ22で増幅され、CPU23aに送られる。さらに、GPSアンテナ21b、GPS受信機25で得られた位置情報は、CPU23bに送られる。最終的に得られる情報は、呼気の信号、アルコールの信号、位置の情報、時間の情報(内部時計の補正は、GPS信号から取得し実施する)となり、これを、記憶装置に記憶する。具体的な例としては、メモリーカードインターフェイス26を介して、メモリーカードに蓄積する。図8には、無線ネットワークで得られた情報を情報センターに送る場合を示したが、このような形で得られた情報を活用することも有効である。
【0035】
図9には、図1に示したシステムを用いて、人間の鼻呼吸を連続して計測した例を示している。ひとつのピークが1回の呼吸に対応しており、一呼吸の分解能を有していることがわかる。ところで、このようなS/N比の良いデータを取得するには、以下のような大きなポイントがある。
【0036】
図10には、図2で示した電極保持部13aの材質の違いによる呼気ピークの信号強度の違いを示した。
【0037】
電圧印加電極10a、検出電極11aはステンレススチールなどの金属で構成しなければならないが、そのまわりの設置された、水クラスターに晒される電極保持材13aの材質は非常に重要である。
径の小さい水クラスターを検出する装置において、水を吸収する材質を使用すると、水クラスターが部材に吸収され検出に関与する水クラスターが減少し、検出感度が大幅に減少する。図10で示した図は、横軸に材料の吸水率、縦軸に呼気ピークの強度をプロットしたものである。切削可能なセラミックのような吸水率が0の部材、ポリアセタールのような吸水率が0.25程度の素材、ポリ塩化ビニルのような吸水率が0.4程度の素材を、電極保持材に用いて、呼気ピークを計測した場合の結果である。すなわち、吸水率が0.4程度ではわずかに呼気ピークが検出される程度であるのに対して、吸水率が0.25程度で呼気ピークが明確に観測されはじめ、その一方で、吸水率が0になると、呼気ピークの強度が、吸水率0.4の場合に比べて6桁以上上昇する。これは、本発明において、水クラスターに晒される電極保持材の材質が非常に重要であることを示している。
したがって、電極保持材料として、吸水率0以上、0.4以下程度の材料を用いることが必要であり、好適には、0以上0.25以下程度の材料を用いると良い。また、吸水率が0.4よりも高い材料であっても、感度調節等によりピークを検出することができるが、その分、ノイズを含みやすくなる可能性はある。
【0038】
一方、図11には、図1に示す試料導入部4aにおける呼気導入位置による呼気ピーク強度の依存性を示した。縦4cm、幅0.6cmの開口部に対して、内径10mmのシリコンチューブの中心を、開口部端から、0.5cm、1.5cm、2.5cm、3.5cmに配置した場合の呼気ピーク強度の変化を示した。当然のことながら、水クラスターが移動する時間が長い、上端の方が呼気ピーク強度は強いことはわかるが、2.5cmの位置でも十分に計測できることがわかった。これは、センサー部を小型化するのに重要な情報であり、開口部としては、幅が0.6cm程度の場合(電圧印加電極と検出電極間距離が1cm程度)、縦の長さが1cm程度あれば計測できるレベルにあることがわかる。また、これは、電圧印加電極、あるいは検出電極として、重力方向の長さが1cm程度あれば良いことを示している。すなわち、電圧印加電極と検出電極を重力方向にほぼ平行に配置したとき、両電極間距離が10mm程度、重力方向の長さが10mm程度あれば呼気の検出には十分である。言い換えれば、呼気が導入される空間として、その開口部が10mm×10mm程度あれば呼気の検出には十分であると言える。
逆に、さらに縦に長い開口部を持つセンサー(すなわち、重力方向にさらに長い電圧印加電極及び検出電極)を使用すると、さらに感度が向上する。また、重力方向と垂直方向の両電極の幅を広げることも感度を向上させる上で有効であることは言うまでもない。
【実施例2】
【0039】
本発明を用いると、自動車などの移動体における呼気アルコールセンサーに利用可能である。図1に示すように、半導体センサーのようなアルコールセンサーヘッド5aであれば、センサー部1aとアルコールセンサー部を一体化することが容易であり、しかも、呼気とアルコールの同時計測が可能となる。車などに設置する場合には、ステアリングホイールの後ろにあるコラムカバー上に固定してそこに向かって呼気を吐くか、センサー部だけを取り外し可能にして呼気を吐いて計測できるようにするか、いずれかとなる。
【0040】
本発明を用いた場合の、飲酒チェックのアルゴリズムを図12に示した。例えば、エンジンスタート後、運転者には、音声ガイダンスに従って、すぐにセンサー部1aに向かって数秒間息を吐き出してもらう。呼気ピーク検出について、その強度、時間幅についてある閾値を設けておき、この値を上回らない場合は、再度呼気を吐き出してもらう。呼気ピーク強度、時間幅が十分の場合には、呼気とアルコールの同時計測を行なう。計測結果は、氏名、測定月日、時刻、場所、計測結果の情報について、メモリーカードなどに保存する。計測結果は、別途集計装置に保存することは有効で、これによって飲酒運転の履歴を管理することができる。また、アルコール(エタノール)が検出された場合には、呼気ピークの検出とアルコールピークの検出のタイミングが一致しているかを判断することも有効である。さらに、センサー部をステアリングホイールの後ろにあるコラムカバー上に固定する場合、走行中、停車中でも飲酒チェックを行うことができる。
【0041】
本発明を用いて飲酒チェックを行なう際、定量性を確保するには、呼吸法を一定にしておくことが重要である。図13に、呼吸法の相違による呼気ピークの強度変化を示した。図13(a)、図13(b)、図13(c)、図13(d)、図13(e)は、それぞれ、通常の呼吸(3回計測)、胸式呼吸(3回計測、呼息時間1秒程度)、腹式呼吸(3回計測、呼息時間1秒程度)、胸式呼吸(3回計測、呼息時間3秒程度)、腹式呼吸(3回計測、呼息時間3秒程度)を示している。このとき、鼻とセンサー部の試料導入口との距離は一定にして計測を行なっている。呼吸の違いにより呼気ピークの強度が2桁程度異なるので、逆に、呼気ピーク強度が少なくとも、胸式呼吸(3回計測、呼息時間1秒程度)、あるいは、腹式呼吸(3回計測、呼息時間1秒程度)の場合以上に設定すれば、呼気アルコールの量を大幅に少なくみせることは非常に困難となる。図14は、呼吸と連動した呼気アルコールの検出例を示しているが、同じ腹式呼吸でも呼息時間が異なると、呼気ピーク、アルコールピーク強度とも異なってくる。なお、呼気と呼気アルコールが見やすいように、呼気アルコールは反転させて表示させている。図15は、呼気ピークとアルコールピーク強度との相関を示している。この結果は、呼気ピークをきちんと計測すれば(ある強度以上で、ある時間幅以上で)、呼気アルコールを少なくみせることは難しいことを示している。また、呼気ピーク強度と呼気アルコールピーク強度との関係式を用いれば、呼気ピーク強度で、呼気アルコール強度を補正することも可能となる。これにより、呼気アルコールを少なくみせようとすることはさらに困難となる。なお、ここに示したのは、アルコール濃度10%のワインを200ml飲酒して30分経過した場合のデータである(精度の高いアルコールセンサーで計測した呼気アルコール濃度の値は、0.10mg/Lである)。
【0042】
また、図16、図17には、呼吸を連続で計測した場合の呼気と呼気アルコールの検出結果を示している。図16のように、飲酒していない場合、呼気は計測されるが、呼気アルコールは検出されない。一方、図17のように、飲酒している場合、呼気ピークに連動したアルコールが検出されている。また、呼気検出に比較して、半導体センサーを用いたアルコール検出では時間分解能が悪いので、ピークが重なって見えているが、これも飲酒している証拠となる。なお、呼気と呼気アルコールが見やすいように、呼気アルコールは反転させて表示させている。なお、ここに示したのは、アルコール濃度10%のワインを200ml飲酒して30分経過した場合のデータである(精度の高いアルコールセンサーで計測した呼気アルコール濃度の値は、0.10mg/Lである)。
【実施例3】
【0043】
図18のように、ヘッドセット27に呼気導入口28のみを設け、伝達チューブ29を介して、ヘッドセット用センサー部30aで、呼吸の計測ができるとさらに応用範囲が広がる。図19(a)には、ヘッドセット用センサー部30bの構造を示した。ヘッドセット27に設けられた呼気導入口28から導入された呼気は、伝達チューブ29を通過して、図19(b)に示すように、伝達チューブ用コネクター031aを介して、試料導入管32aに送られる。試料導入管32aの先端は、センサー部1eの試料導入口4eの上部に設置され、ここから呼気がセンサー部に導入され、検出される。図20(b)のように、外気の影響を受けないように、また内径の細い伝達チューブを用いても送気ファン(あるいはダイアフラムポンプ)で呼気がセンサー部まで到達しやすくするためには、試料導入管32bの先端部分で、センサー部1fの試料導入口を完全に覆ってしまうことも可能である。ただし、試料導入口を覆う部分は、吸水率の非常に低い、あるいは0の材料を用いる必要がある。
【0044】
図18に示すようなシステムを用いて計測した、呼吸の検出例を図21に示す。通常の呼吸をしている段階で、急にアンモニア水のような悪臭を嗅いだ場合、その悪臭を体内に取り込まないようにするため、呼吸が非常に浅くその分早くなる。悪臭源を取り除くと、まずは深いゆっくりとした呼吸を経て、通常の呼吸に戻る。本発明を用いると、この過程が明確に観測できる。これをさらに理解しやすくするために、図22に示すように、縦軸を呼気ピーク間の時間差、横軸をピーク強度の絶対値、あるいは相対値としてプロットすると(時間差−強度プロット)、図23のような結果が得られる。すなわち、通常の呼吸(領域(1))から、悪臭を嗅ぐと浅く早い呼吸になり(領域(2))、悪臭源を取り除くとゆっくりとした深い呼吸になり(領域(3))、やがては通常の呼吸に戻る(領域(4))、という一連の過程が明確に把握できる。
【0045】
これを応用すると、映像、音楽などに対する興味(脳の価値判断)を間接的に計測することができる。一般に、脳における心の活動状況を内部表現(イメージ)と考えることができるが、こうした脳内における心の感性情報の内部表現(イメージ)は、言語のほか、ジェスチャー、音声などを通して外部に表出される(感性情報の外部表現)と考えられる。呼吸もそのひとつと考えられ、その変化を検出することによって、映像、音楽などに対する興味(脳の価値判断)を間接的に計測することができる。
【0046】
図24に、その一例を示した。通常の呼吸をしている状態から、被験者にとって興味ある映像・音声を一定時間見せて聞かせ、その後、その映像・音声を停止するというものである。この結果に図22に示す解析を行なってみると、図25に示す解析結果となる。図25(a)、図25(b)、図25(c)に、それぞれ、興味ある映像・音声を見て聞いていない最初の段階の呼吸、興味ある映像・音声を見て聞いている段階の呼吸、興味ある映像・音声を見終わった段階の呼吸について、時間差−強度プロットを行なった結果を示した。明らかに、興味ある映像・音声を見て聞いて入る段階の呼吸は変化しており、呼吸が浅くなっていることがわかる。これは、脳が映像や音声に興味を示している結果、緊張状態になり、それが呼吸の変化につながっていると考えられる。
このような技術を応用すると、これまでアンケート主体であったマーケティングに関して、生体反応を利用した新しいマーケティングが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、非接触で非侵襲の呼気検出に利用可能である。自動車などの移動体における飲酒運転防止装置にも利用可能である。また、脳の価値判断を間接的に計測することができる。
【符号の説明】
【0048】
1a・・センサー部
1b・・センサー部
1c・・センサー部
1d・・センサー部
1e・・センサー部
1f・・センサー部
2a・・計測制御部
2b・・計測制御部
2c・・計測制御部
2d・・計測制御部
3a・・パワーインバータ
3b・・パワーインバータ
3c・・パワーインバータ
3d・・パワーインバータ
4a・・試料導入口
4b・・試料導入口
4c・・試料導入口
4d・・試料導入口
4e・・試料導入口
5a・・アルコールセンサーヘッド
5b・・アルコールセンサーヘッド
5c・・アルコールセンサーヘッド
5d・・アルコールセンサーヘッド
6a・・送気ファン部
6b・・送気ファン部
7a・・ケーブル
7b・・ケーブル
7c・・ケーブル
7d・・ケーブル
7e・・ケーブル
7f・・ケーブル
7g・・ケーブル
7h・・ケーブル
7i・・ケーブル
8a・・インジケータランプ
8b・・インジケータランプ
9a・・カバー
9b・・カバー
10a・・電圧印加電極
10b・・電圧印加電極
10c・・電圧印加電極
11a・・検出電極
11b・・検出電極
11c・・検出電極
12a・・送気口
12b・・送気口
13a・・電極保持部
13b・・電極保持部
14・・送気ファン
15・・接点
16a・・メモリーカードスロット
16b・・メモリーカードスロット
16c・・メモリーカードスロット
16d・・メモリーカードスロット
17a・・センサー電源
17b・・センサー電源
18a・・センサーアンプ
18b・・センサーアンプ
19a・・径の小さな電荷を持つクラスター
19b・・径の小さな電荷を持つクラスター
20・・つば
21a・・GPSアンテナ
21b・・GPSアンテナ
22・・アルコールセンサーアンプ
23a・・CPU
23b・・CPU
24a・・電源
24b・・電源
25・・GPS受信機
26・・メモリーカードインターフェイス
27・・ヘッドセット
28・・呼気導入口
29・・伝達チューブ
30a・・ヘッドセット用センサー部
30b・・ヘッドセット用センサー部
30c・・ヘッドセット用センサー部
31a・・伝達チューブ用コネクター
31b・・伝達チューブ用コネクター
32a・・試料導入管
32b・・試料導入管
33・・スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内が大気圧環境下であって、
当該筐体内に、
外気を筐体内に導入する導入口と、
当該導入口によって、筐体内に導入された外気に含まれる荷電粒子の偏向された一部を検出する検出電極と、
電圧印加電極とを有し、
前記検出電極と前記電圧印加電極は重力方向に向かって並置され、
当該検出電極と電圧印加電極とを保持する電極保持部を備え、
当該電極保持部は吸水率が0.4以下の材料より形成されていることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記電圧印加電極に電圧を印加する制御部を有することを特徴とするイオン検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記筐体内に外気が滞留することを防ぐ排気手段を備えることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記電極保持部がセラミックまたはポリアセタールにより形成されていることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項5】
大気圧下におかれた筐体内に気体を導入する導入口と、当該導入された気体の流入通路を当該筺体内における重力方向に向かって形成する、イオンを補集する第一電極と電圧印加可能な第二電極と、
前記第一電極に接続された電流計測手段と、
当該電流計測手段における計測結果を基に、当該気体に含まれる成分を分析するデータ解析装置を有し、
前記第一電極及び前記第二電極を保持する電極保持部を備え、
当該電極保持部は吸水率が0.4以下の材料より形成されていることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載のイオン検出装置において、
前記電極保持部がセラミックまたはポリアセタールにより形成されていることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載のイオン検出装置において、
前記センサーは、アルコールセンサーであることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載のイオン検出装置において、
前記センサーによって検出される検出信号を元に呼気スペクトルを算出する演算手段を備えることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載のイオン検出装置において、
前記呼気スペクトルから呼気のピークを特定し、
呼気ピークの時間変化を検出することを特徴とするイオン検出装置。
【請求項10】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記導入手段にチューブが接続可能であることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項11】
請求項5に記載のイオン検出装置において、
前記導入口にチューブが接続可能であることを特徴とするイオン検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図8】
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【図18】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−215484(P2012−215484A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81384(P2011−81384)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】