説明

イオン液体におけるN’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンのアルキル化及びこれにより製造されるN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミン

イオン液体における特定の式のN’−フェニル−N−アルキル−p−フェニレンジアミンをアルキル化するための方法は、意外にも第二の特定式のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンを生成する。無機液体を使用すると、反応混合物からのアルキル化反応生成物の都合の良い分離が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
N’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンは、潤滑油、ゴム組成物及びオゾン劣化防止剤に対する耐酸化剤としての有用性を有する。米国特許第5232614号は、潤滑油における耐酸化剤として、N,N’−ジアルキル置換p−フェニレンジアミンの使用を開示している。
【0002】
α−オレフィン及びルイス酸触媒、例えば、塩化アルミニウム等を使用する、N’−フェニル−N−フェニレンジアミン化合物のフリーデル−クラフツアルキル化は、アルキル化生成物を僅かに生成するか全く生成しない。その代わりに、アルミニウムアルキル触媒及び高圧が、N’−フェニル−N−フェニレンジアミンをアルキル化するために使用することができる。
【0003】
N’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンをアルキル化するためのアルミニウムアルキルの使用は、少なくとも2つの欠点を有する。すなわち、この化合物は再循環ができず、これらは空気中で自然発火する可能性がある。更に、反応は、一般的に、非置換フェニル環をアルキル化する。従って、例えば、1−デセンでN’−フェニル−N−イソヘキシルフェニレンジアミンをアルキル化するためのトリエチルアルミニウムクロライド、熱及び圧力の使用は、主としてN’−2−メチルノニルフェニル−N−イソヘキシルフェニレンジアミンを製造する。
【0004】
イオン液体は、無機及び/又は有機カチオン及びアニオンからなり、一般的に、極めて低い蒸気圧、広い液体温度範囲を有し、不燃性である。イオン液体は、触媒及び/又は溶剤として作用することができ、分離及び液体用途、例えば潤滑油等での溶剤、電解質としての有用性が研究されている。Holbrey、「イオン液体の工業的用途(Industrial Applications of Ionic Liquids)」、Chemistry Today 35(2004年6月);Parkinson、「イオン液体は環境スプラシュを起こす(Ionic Liquids Make an Environmental Splash)」、100 Chemical Engineering Progress 7 (2004年9月);及びDrake et al.、「イオン液体の物性における構造的効果(Structural Effects on the Physical Properties of Ionic Liquids)」、Air Force Research Laboratory Report No.AFRL−PR−ED−VG−2003−12(2003年5月)を参照されたい。
【0005】
フリーデル−クラフツアルキル化でのイオン液体の使用は、Wilkes、「クロロアルミネート溶融塩におけるフリーデル−クラフツ反応(Friedel−Crafts Reactions in Chloroaluminate Molten Salts)」、Molten Salt Chemistry:An Introduction and Selected Applications 405(Mamantov and Marassi Eds.1987年)及びEarle et al、「有機合成(Organic Synthesis)」、Ionic Liquids in Synthesis 174(Wasserschied & Welton Eds.2003年)で検討されている。然しながら、N’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミン化合物のフェニレン環の更なる置換を可能とするアルキル化反応に関する研究はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、N’−フェニル−N−フェニレンジアミン化合物のフェニレン環のアルキル化を可能とする合成を提供することである。
【0007】
本発明の特徴は、アルキル化反応のための溶剤及び触媒としてのイオン液体の使用である。
【0008】
本発明の利点は、イオン液体の使用が、反応混合物からN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンの都合の良い分離を一般的に可能とする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
1つの態様では、本発明は、式I
【化1】


(式中、Rは、アルキル基又はアリールアルキル基である)のN’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンを、ルイス酸及び第4級カチオンを含むイオン液体の存在下でアルキル化剤と反応させて、式II
【化2】


(式中、Rは、上で定義されている通りであり、Rは、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状アルキル基又はアルキルアリール基である)のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンを製造する工程を含む、N’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンをアルキル化するための方法に関する。
【0010】
その他の態様では、本発明は、式I
【化3】


(式中、Rは、アルキル基又はアリールアルキル基である)のN’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンを、ルイス酸及び第4級カチオンを含むイオン液体の存在下でアルキル化剤と反応させる工程を含む方法により調製される、式II
【化4】


(式中、Rは、アルキル基又はアリールアルキル基であり、Rは、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状アルキル基又はアルキルアリール基である)のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンに関する。
【0011】
なおその他の態様では、本発明は、潤滑油及び式II
【化5】


(式中、Rは、アルキル基又はアリールアルキル基であり、Rは、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状アルキル基又はアルキルアリール基である)のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンを含む潤滑油組成物に関する。
【0012】
(好ましい態様の詳細な説明)
上で要約した通り、本発明は、無機液体の存在下でN’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンのフリーデル−クラフツアルキル化に関する。
【0013】
アルキル化剤は、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状オレフィン又はアリールアルケンとすることができる。好適な直鎖オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−ノネン、1−デセン及び1−ドデセンが挙げられる。好適な環状オレフィンとしては、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロオクテンが挙げられる。好適な分枝オレフィンとしては、プロピレン三量体(ノネン)、プロピレン四量体(ドデセン)、プロピレン五量体及びジイソブチレンが挙げられる。好適なアリールアルキレンとしては、スチレン、メチルスチレン、3−フェニルプロペン及び2−フェニル−2−ブテンが挙げられる。
【0014】
イオン液体は、全体に、アニオン及びカチオンを含んでもよく、ルイス酸及びアルキル第4級金属塩を、好ましくは加熱下で一緒に混合することにより都合良く調製することができる。
【0015】
ルイス酸は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化アルキル、アルキルアリール、又はアルキルスルホネートエステルとすることができる。好適なルイス酸金属ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、三塩化インジウム、三塩化ガリウム、五塩化ニオブ、五塩化タンタル、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテレート、三塩化ホウ素、塩化第二鉄、及び塩化ジルコニウムが挙げられる。例示的ハロゲン化アルキルとしては、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化n−プロピル、臭化n−プロピル、ヨウ化n−プロピル、塩化イソプロピル、臭化イソプロピル、ヨウ化イソプロピル、塩化n−ブチル、臭化n−ブチル、ヨウ化n−ブチル、塩化イソブチル、臭化イソブチル、ヨウ化イソブチル、塩化t−ブチル、臭化t−ブチル、ヨウ化t−ブチル、塩化n−ペンチル、臭化n−ペンチル、ヨウ化n−ペンチル、臭化ネオペンチル、塩化ネオペンチル、ヨウ化ネオペンチル、塩化オクチル、臭化オクチル及びヨウ化オクチルが挙げられる。例示的ハロゲン化アルキルアリールとしては、臭化ベンジル、塩化ベンジル、ヨウ化ベンジル、塩化α−フェニルエチル、臭化α−フェニルエチル、ヨウ化α−フェニルエチル、塩化β−フェニルエチル、臭化β−フェニルエチル及びヨウ化β−フェニルエチルが挙げられる。好適なアルキルスルホネートエステルとしては、アルキルトシレート、アルキルメシレート及びアルキルトリフレートが挙げられる。
【0016】
アルキル第4級金属塩は、第4級アンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルトリアゾリウム塩及びアルキルピリジニウム塩とすることができる。好適な第4級アンモニウム塩は、ベンジルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、n−ヘキシル−トリメチルアンモニウム、n−ヘプチル−トリメチルアンモニウム、n−オクチル−トリメチルアンモニウム、n−ヘキシル−トリエチルアンモニウム、n−ヘプチル−トリエチルアンモニウム、n−オクチル−トリエチルアンモニウム、n−ヘキシル−トリ−n−ブチルアンモニウム、n−ヘプチル−トリ−n−ブチルアンモニウム、n−オクチル−トリ−n−ブチルアンモニウム、トリス−(n−プロピル)−ウンデシルアンモニウム、テトラ−n−ペンチルアンモニウム、n−デシル−n−オクチル−ジメチルアンモニウム及びn−テトラデシル−トリエチルアンモニウムからなる群から選択されるカチオンをベースとすることができる。
【0017】
好適なアルキルホスホニウム塩は、ベンジルトリメチルホスホニウム、ブチルトリメチルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、エチルトリメチルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム、n−ヘキシル−トリメチルホスホニウム、n−ヘプチル−トリメチルホスホニウム、n−オクチル−トリメチルホスホニウム、n−ヘキシル−トリエチルホスホニウム、n−ヘプチル−トリエチルホスホニウム、n−オクチル−トリエチルホスホニウム、n−ヘキシル−トリ−n−ブチルホスホニウム、n−ヘプチル−トリ−n−ブチルホスホニウム、n−オクチル−トリ−n−ブチルホスホニウム、トリス−(n−プロピル)−ウンデシルホスホニウム、テトラ−n−ペンチルホスホニウム、N−デシル−n−オクチル−ジメチルホスホニウム及びN−テトラデシル−トリエチルホスホニウムの群から選択されるカチオンをベースとすることができる。
【0018】
好適なイミダゾリウム塩は、1−メチル−3−メチル−イミダゾリウム、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−5−メチルイミダゾリウム、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(エトキシメチル)−3−メチルイミダゾリウム、3−エチル−1−エチルイミダゾリウム、3−エチル−1−ブチル−イミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3,5−ジメチル−イミダゾリウム及び1,3−ジエチル−5−メチルイミダゾリウムからなる群から選択されるカチオンをベースとすることができる。
【0019】
好適なアルキルトリアゾニウム塩は、1−(3’,3’,3’−トリフルオロ−n−プロピル)−3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾリウム、1−(2’−フルオロエチル)−3−n−ヘプチル−1,2,4−トリアゾリウム、1−(2’−フルオロエチル)−3−n−デシル−1,2,4−トリアゾリウム、1−(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−n−ヘキシル)−3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾリウム、1−n−プロピル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾリウム、1−n−ブチル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾリウム及び1−n−ヘキシル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾリウムからなる群から選択されるカチオンをベースとすることができる。
【0020】
好ましい実施形態では、イオン液体は、アルキル化剤の添加前にその場で形成される。ルイス酸、アルキル第4級金属塩及びN’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンは、適当な反応容器へ、好ましくは乾燥下で、不活性雰囲気下で、200℃までの温度に加熱しながら添加され、イオン液体相及び有機相が形成されるまで、例えば、200〜300回転毎分で撹拌される。不活性雰囲気は、酸化からイオン液体を保護するのに役立ち、好ましくは、アルゴン、ヘリウム及び窒素からなる群から選択される。不活性雰囲気は、イオン液体の分解を回避するために乾燥状態であるべきである。
【0021】
アルキル化剤は、2相が形成されたら、一度に全部又は複数の部分的添加で反応容器へ添加することができる。
【0022】
アルキル化反応は、好ましくは、80〜200℃の温度で、1〜24時間の期間にわたって行うことができる。
【0023】
アルキル化反応は、モノ、ジ及びトリ−アルキル化N’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンの混合物を製造する。反応生成物は、通常の分離方法及び装置、例えば、当業者に良く知られている分離漏斗等で反応体から分離することができる。同様に、単離された反応混合物は、当業者に良く知られている通常の分離方法及び装置、例えば、高圧液体クロマトグラフィー等を使用してその構成化合物に分離することができる。
【0024】
上述のイオン液体中でのN’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンのフリーデル−クラフツアルキル化は、意外にも、式II:
【化6】


(式中、Rは、好ましくは、1〜30個の炭素原子を有するアルキル基又はアリールアルキル基であり、Rは、好ましくは、1〜30個の炭素原子を有する、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状アルキル基又はアルキルアリール基である)のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンを生成する。
【0025】
好ましいN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミン化合物としては、R及びRが、共にn−2−デシルであるもの、Rが2−イソヘキシルであるもの、Rがn−2−デシルであるもの、並びにR及びRの少なくとも1つがアリールアルキル基であるものが挙げられる。
【0026】
本発明の方法により調製されるN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミン化合物は、その開示全体を参照により本明細書の記載の一部とする米国特許第5232614号に開示されているもの等の潤滑油組成物中における耐酸化剤としての使用に適するものと考えられる。一般的に、潤滑油組成物は、少なくとも1つの潤滑油及び耐酸化剤として少なくとも1つのN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンを含む。然しながら、組成物は、又、分散剤、洗浄剤、耐摩耗添加剤、流動点降下剤、腐食阻害剤及び摩擦改良剤からなる群の一種又は複数種を含むこともできる。
【0027】
潤滑油は、石油由来の炭化水素油又はα−若しくはβ−不飽和カルボン酸で置換された長鎖炭化水素とすることができる。洗浄剤は、存在する場合は、アルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート又は硫黄含有アルキルフェノール化合物の金属塩とすることができる。
【0028】
耐摩耗添加剤は、存在する場合は、有機スルフィド、ポリスルフィド、β−チオジプロピオン酸のエステル、燐エステル又はジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩とすることができる。
【0029】
腐食阻害剤は、存在する場合は、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール化合物、アミン塩の形態のメルカプトベンゾチオアゾール化合物、スルホンアミド、チオスルホンアミド、メルカプトベンゾチアゾールとアミン及びホルムアルデヒドとの縮合物、ジアルキルホスファイト、トリアルキルホスファイト又はトリアリールホスファイトとすることができる。
【0030】
摩擦改良剤は、存在する場合は、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル又はオキサゾリン化合物とすることができる。
【0031】
本発明者らは、イオン液体は、炭化水素可溶反応生成物がデカントされて、濃厚なイオン液体相から分離される単純な相分離によりその後のアルキル化で使用するために再循環することができると現時点では考えている。イオン液体は、次いで、それ自体で、又は新たな触媒との組合せでその他のアルキル化反応を触媒するために使用することができる。
【実施例】
【0032】
以下の例は、個々のこれらの種に関して更に詳細に本発明の実施及び利点を例示するものである。例の細部は例示に過ぎず、特許請求の範囲を縮小するために使用されてはならない。
【0033】
(例1)
マントル、温度調節器、熱電対、及び恒圧滴下漏斗を備えた1Lの4つ口丸底フラスコへ、窒素加圧下で、Chemtura Corp.からFlexzone 7pとして市販されている固体N’−フェニル−N−2−イソヘキシル−p−フェニレンジアミン(53.38g、0.1989モル)、塩化アルミニウム(13.37g、0.100モル、N’−フェニル−N−2−イソヘキシル−p−フェニレンジアミンに関して50.4モル%)及び臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム(21.34g、0.0661モル、N’−フェニル−N−2−イソヘキシル−p−フェニレンジアミンに関して33.3モル%)を入れた。撹拌を、約200〜300回転毎分で開始し、混合物を160℃に加温した。
【0034】
暗褐色−黒色反応混合物が160℃に達したら、94%の1−デセン(97.64g、0.696モル、N’−フェニル−N−2−イソヘキシル−p−フェニレンジアミンに関して3.5当量)を2時間掛けて添加した。反応混合物を、添加の完了によって170℃まで持って行き、この温度で25時間維持した。
【0035】
次いで、反応生成物を周囲温度まで冷却し、300mLのn−ヘプタンで希釈した。暗褐色−黒色反応混合物を下部固体相及び上部液体相に分離し、上部液体相を、2−L分離漏斗にデカントし、2x500mLの水で、次いで、400mLの水−100mLの濃アンモニア水で洗浄し、次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。フラスコの底の固体相の重量は50.74gであった。
【0036】
乾燥剤を、934 AHガラス繊維ペーパーの9.0cmの直径円盤を通して吸引濾過により生成物から除去した。次いで、黒っぽい濾液を真空で濃縮し(回転蒸発器、95℃の水浴、<5mm最終真空)、49.49gの暗褐色−黒色油を得た。
【0037】
油のGC分析は、それが、(面積%)17.1%の未反応N’−フェニル−N−2−イソヘキシル−p−フェニレンジアミン、71.8%のモノ−デシル化N’−フェニル−N−2−イソヘキシル−p−フェニレンジアミン及び7.5%の複数デシル化N’−フェニル−N−2−イソヘキシル−p−フェニレンジアミンの混合物であることを示した。モノデシル化生成物は、2つの異性体:8.2%及び63.6%の混合物であった。主要な異性体をカラムクロマトグラフィーで単離した。
【0038】
主要な異性体は、そのGC保持時間、IRスペクトル及びNMRスペクトルにより、N’−フェニル−N−2−イソヘキシル−[2−(2−イソデシル)−p−フェニレン)]ジアミン(GRFE)と確認され、これは、別の合成ルート、即ち、触媒としてジエチルアルミニウムクロライド、熱及び高圧を使用して1−デセンから調製した真正のGRFEサンプルのGC保持時間、IRスペクトル及びNMRスペクトルと一致した。
【0039】
本発明者らは、イオン液体は、炭化水素可溶反応生成物がデカントされて、濃厚なイオン液体相から分離される単純な相分離によりその後のアルキル化で使用するために再循環することができると現時点では考えている。イオン液体は、次いで、それ自体で、又は新たな触媒との組合せでその他のアルキル化反応を触媒するために使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】


(式中、Rは、アルキル基又はアリールアルキル基である)のN’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンを、ルイス酸及び第4級カチオンを含むイオン液体の存在下でアルキル化剤と反応させて、式II
【化2】


(式中、Rは、上で定義されている通りであり、Rは、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状アルキル基又はアルキルアリール基である)のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンを製造する工程を含む、N’−フェニル−N−アルキルフェニレンジアミンをアルキル化するための方法。
【請求項2】
前記アルキル化剤が、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状オレフィン又はアリールアルケンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オレフィンが、1−ヘキセン、1−ノネン、1−デセン及び1−ドデセンからなる群から選択される直鎖オレフィンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オレフィンが、シクロヘキセン、シクロペンテン及びシクロオクテンからなる群から選択される環状オレフィンである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記オレフィンが、プロピレン三量体、プロピレン四量体、プロピレン五量体及びジイソブチレンからなる群から選択される分枝オレフィンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記オレフィンが、スチレン、メチルスチレン、3−フェニルプロペン及び2−フェニル−2−ブテンからなる群から選択されるアリールアルケンである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ルイス酸が、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、三塩化インジウム、三塩化ガリウム、五塩化ニオブ、五塩化タンタル、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテレート、三塩化ホウ素、塩化第二鉄、及び塩化ジルコニウムからなる群から選択される金属ハロゲン化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ルイス酸が、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化n−プロピル、臭化n−プロピル、ヨウ化n−プロピル、塩化イソプロピル、臭化イソプロピル、ヨウ化イソプロピル、塩化n−ブチル、臭化n−ブチル、ヨウ化n−ブチル、塩化イソブチル、臭化イソブチル、ヨウ化イソブチル、塩化t−ブチル、臭化t−ブチル、ヨウ化t−ブチル、塩化n−ペンチル、臭化n−ペンチル、ヨウ化n−ペンチル、臭化ネオペンチル、塩化ネオペンチル、ヨウ化ネオペンチル、塩化オクチル、臭化オクチル及びヨウ化オクチルからなる群から選択されるハロゲン化アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ルイス酸が、臭化ベンジル、塩化ベンジル、ヨウ化ベンジル、塩化α−フェニルエチル、臭化α−フェニルエチル、ヨウ化α−フェニルエチル、塩化β−フェニルエチル、臭化β−フェニルエチル及びヨウ化β−フェニルエチルからなる群から選択されるハロゲン化アルキルアリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ルイス酸がアルキルスルホネートエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第4級カチオンが、第4級アンモニウムカチオン、アルキルホスホニウムカチオン、アルキルイミダゾリウムカチオン、アルキルトリアゾリウムカチオン及びアルキルピリジニウムカチオンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第4級アンモニウムカチオンが、ベンジルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、n−ヘキシル−トリメチルアンモニウム、n−ヘプチル−トリメチルアンモニウム、n−オクチル−トリメチルアンモニウム、n−ヘキシル−トリエチルアンモニウム、n−ヘプチル−トリエチルアンモニウム、n−オクチル−トリエチルアンモニウム、n−ヘキシル−トリ−n−ブチルアンモニウム、n−ヘプチル−トリ−n−ブチルアンモニウム、n−オクチル−トリ−n−ブチルアンモニウム、トリス−(n−プロピル)−ウンデシルアンモニウム、テトラ−n−ペンチルアンモニウム、n−デシル−n−オクチル−ジメチルアンモニウム及びn−テトラデシル−トリエチルアンモニウムからなる群から選択される一種である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルキルホスホニウムカチオンが、ベンジルトリメチルホスホニウム、ブチルトリメチルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、エチルトリメチルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム、n−ヘキシル−トリメチルホスホニウム、n−ヘプチル−トリメチルホスホニウム、n−オクチル−トリメチルホスホニウム、n−ヘキシル−トリエチルホスホニウム、n−ヘプチル−トリエチルホスホニウム、n−オクチル−トリエチルホスホニウム、n−ヘキシル−トリ−n−ブチルホスホニウム、n−ヘプチル−トリ−n−ブチルホスホニウム、n−オクチル−トリ−n−ブチルホスホニウム、トリス−(n−プロピル)−ウンデシルホスホニウム、テトラ−n−ペンチルホスホニウム、N−デシル−n−オクチル−ジメチルホスホニウム及びN−テトラデシル−トリエチルホスホニウムの群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキルイミダゾリウムカチオンが、1−メチル−3−メチル−イミダゾリウム、1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−5−メチルイミダゾリウム、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(エトキシメチル)−3−メチルイミダゾリウム、3−エチル−1−エチルイミダゾリウム、3−エチル−1−ブチル−イミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3,5−ジメチル−イミダゾリウム及び1,3−ジエチル−5−メチルイミダゾリウムからなる群から選択される一種である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アルキルトリアゾリウムカチオンが、1−(3’,3’,3’−トリフルオロ−n−プロピル)−3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾリウム、1−(2’−フルオロエチル)−3−n−ヘプチル−1,2,4−トリアゾリウム、1−(2’−フルオロエチル)−3−n−デシル−1,2,4−トリアゾリウム、1−(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロ−n−ヘキシル)−3−n−ブチル−1,2,4−トリアゾリウム、1−n−プロピル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾリウム、1−n−ブチル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾリウム及び1−n−ヘキシル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾリウムからなる群から選択される一種である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記イオン液体が、前記アルキル化剤の添加前にその場で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
80〜200℃の温度で、1〜24時間の期間にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
アルゴン、ヘリウム及び窒素からなる群から選択される不活性雰囲気下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
200〜300回転毎分の撹拌速度で撹拌しながら行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法により調製される、式II
【化3】


(式中、Rは、アルキル基又はアリールアルキル基であり、Rは、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状アルキル基又はアルキルアリール基である)のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミン。
【請求項21】
及びRが、共にn−2−デシルである、請求項20に記載のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミン。
【請求項22】
が2−イソヘキシルであり、Rが2−イソデシルである、請求項20に記載のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミン。
【請求項23】
及びRの少なくとも1つがアリールアルキル基である、請求項20に記載のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミン。
【請求項24】
潤滑油及び式II
【化4】


(式中、Rは、アルキル基又はアリールアルキル基であり、Rは、置換又は非置換の直鎖、分枝又は環状アルキル基又はアルキルアリール基である)のN’−フェニル−N−アルキル(アルキルフェニレン)ジアミンを含む潤滑油組成物。
【請求項25】
分散剤、洗浄剤、耐摩耗添加剤、流動点降下剤、腐食阻害剤及び摩擦改良剤からなる群の少なくとも一種を更に含む、請求項24に記載の潤滑油組成物。
【請求項26】
前記潤滑油が、石油由来の炭化水素油である、請求項24に記載の潤滑油組成物。
【請求項27】
前記分散剤が、α−又はβ−不飽和カルボン酸で置換された長鎖炭化水素である、請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項28】
前記洗浄剤が、アルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート及び硫黄含有アルキルフェノール化合物の金属塩からなる群の一種である、請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項29】
前記耐摩耗添加剤が、有機スルフィド、ポリスルフィド、β−チオジプロピオン酸のエステル、燐エステル、及びジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩からなる群の一種である、請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項30】
前記腐食阻害剤が、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール化合物、アミン塩の形態のメルカプトベンゾチオアゾール化合物、スルホンアミド、チオスルホンアミド、メルカプトベンゾチアゾールとアミン及びホルムアルデヒドとの縮合物、ジアルキルホスファイト、トリアルキルホスファイト及びトリアリールホスファイトからなる群の一種である、請求項25に記載の潤滑油組成物。
【請求項31】
前記摩擦改良剤が、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル又はオキサゾリン化合物である、請求項25に記載の潤滑油組成物。


【公表番号】特表2009−519930(P2009−519930A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545642(P2008−545642)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/046353
【国際公開番号】WO2007/070282
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】