説明

イオン源装置、イオン化プローブの製造方法及びイオン源装置の駆動方法

【課題】従来手法は、溶液の溶出工程とイオン化工程とが別に用意されている。このため、溶出された溶液を一時的に貯めるための容器が必要となる。
【解決手段】試料成分に含まれる分析対象成分と共に吸着された夾雑物成分を充填剤から溶出して廃棄した後の抽出部を送液部に連結してイオン化プローブを組み立てる。この後、当該イオン化プローブにおける充填剤から分析対象成分の溶液を溶出させながら同時にイオン化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象成分を含んだ溶液を抽出してイオン化するイオン源装置に関する。また、本発明は、イオン源装置に使用して好適なイオン化プローブの製造方法及びイオン源装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物の副作用を抑え、個々の患者に最適な治療計画を立案する手法に治療薬物モニタリング(TDM)等がある。治療薬物モニタリングを血液自動分析装置による質量分析技術に応用する場合、スループットが高く、ロバスト性が高く、コストが低い手法が重要となる。一般的な液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)を利用する場合、切り替えバルブに試料溶液が直接導入される。このため、切り替えバルブの洗浄に多量の溶媒を必要とし、洗浄時間も必要とする。また、切り替えバルブや分離カラム等の詰まりの原因となる部品も多い。これに対し、固相抽出法では、分析対象成分を含んだ溶液のみを抽出し、抽出された溶液をイオン源装置に直接導入することによってイオン化と質量分析とを同時に実行することができる。このように、固相抽出法を用いると、イオン源までの流路内から切り替えバルブや分離カラムを排除することができる。
【0003】
特許文献1に記載された装置構成は、LC/MSのような流路を必要とせず、試料溶液をイオン源装置に対して直接導入することができる。なお、この装置は、溶液搬送用のピペットチップに溶液を吸引した状態で、数μmの穴が多数開いたシリコン基板にピペットチップ先端を結合し、溶液をシリコン基板の穴から噴出することでイオン化を実現する。特許文献2に記載された装置も、LC/MSのような流路を必要とせず、試料溶液をイオン源に対して直接導入することができる。この装置は、溶液搬送用のシリンジの針の部分を、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)のキャピラリー電極として使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6245227号明細書
【特許文献2】米国特許第7364913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された装置は、ピペットチップとシリコン基板を使い捨てにする。このため、洗浄の必要が無く高スループットであり、次の分析への汚染も少なく、ロバスト性も高い。しかし、この装置は、微細加工を要する比較的高価な部品であるシリコン基板を使用する必要がある。また、この装置は、イオン化工程とは別に固相抽出を行うので、固相抽出カラムや抽出液を受ける容器も使い捨てにする必要がある。このため、消耗品のコストが高い問題がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載された装置の場合、シリンジの針により試料溶液を直接イオン化できるので送液部分に使い捨て部品が無い。しかし、この装置の場合、シリンジ及び針部分を交換しないので、溶媒等による洗浄が必要となる。このため、スループット向上が困難であり、汚染を完全に排除することも難しい。また、この特許文献2の方式の場合も、特許文献1の方式と同様に、固相抽出の際に使用した固相抽出カラムや抽出液を受ける容器を使い捨てにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、不要成分の洗浄廃棄に使用した抽出部と送液部を連結してイオン化プローブを形成することにより、イオン化プローブによる溶液の溶出と溶出された溶液のイオン化とを同時に実現する手法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、試料溶液中の分析対象成分の溶出とそのイオン化とを同時に行うことができ、スループットを向上させることができる。また、抽出部と送液部を使い捨てにできるため、汚染を抑制でき、ロバスト性を向上させることができる。さらに、溶出液を送液部に移し替えるために一時的に保存する容器が不要になるため、消耗品コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1におけるイオン源装置の構造と処理動作を説明する図。
【図2】本発明の実施の形態1に係るイオン化プローブの構造例を説明する図。
【図3】本発明の実施の形態2におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図4】本発明の実施の形態3におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図5】本発明の実施の形態3における溶液流量の測定結果を示す図表。
【図6】本発明の実施の形態4に係るイオン化プローブを構成する送液部を説明する図。
【図7】本発明の実施の形態4におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図8】本発明の実施の形態5におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図9】本発明の実施の形態7に係る送液部の構造を説明する図。
【図10】本発明の実施の形態8に係る送液部の構造を説明する図。
【図11】本発明の実施の形態9に係る送液部の構造を説明する図。
【図12】本発明の実施の形態10におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図13】本発明の実施の形態11におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図14】本発明の実施の形態12におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図15】本発明の実施の形態13におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図16】本発明の実施の形態14におけるイオン源装置の処理プロセスを説明する図。
【図17】本発明の実施の形態15におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図18】本発明の実施の形態16におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【図19】本発明の実施の形態17におけるイオン源装置の構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、後述する装置構成や処理動作の内容は一例であり、実施の形態と既知の技術との組み合わせや置換により他の実施の形態を実現することもできる。
【0011】
(A)実施の形態1
(概略構成)
この実施の形態では、試料溶液に含まれる成分の吸着及び溶出に使用する抽出部と送液部とを連結することにより形成されるイオン化プローブについて説明する。また、完成されたイオン化プローブを質量分析装置等のイオン取込み部の周辺に移動させ、分析対象成分の溶出とイオン化とを同時に実行するイオン源装置について説明する。
【0012】
図1に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。なお、図1では、破線で囲んだ部分が処理プロセスS1〜S8を示し、処理プロセス間の矢印は処理プロセスの進行方向を示す。
【0013】
イオン源装置は、イオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)、減圧容器4、搬送ロボット27、排気パイプ33、減圧ポンプ34を主要部とする。一方、処理プロセスは、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8で構成される。
【0014】
(洗浄工程S1)
この洗浄工程S1は、抽出部2を使用する前に洗浄溶液16で洗浄する工程である。洗浄溶液16には、例えばメタノール等の有機溶媒を使用する。因みに、抽出部2は、円筒部5とテーパー部23で構成される。このうち、円筒部5の内側にはフリット15が充填剤14の両側から挟み込むように配置されている。円筒部5とテーパー部23は、例えばガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン等で構成される。
【0015】
なお、円筒部5の上端部には相対的に大口径の開口が形成されており、円筒部5の下端側はテーパー部23で塞がれている。なお、テーパー部23はリング状に形成された平板の開口部分に漏斗を結合したような形状を有している。因みに、テーパー部23の上面側には、円筒部5の内径よりも小さい口径の開口が形成され、下面側には前述した2つの開口よりも更に小さい口径を有する開口が形成されている。
【0016】
円筒部5の上端側の開口が液体の流入口となり、テーパー部23の下端側の開口が液体の出力口として用いられる。さらに、このテーパー部23は、後述するように、送液部3側に設けられたテーパー部24との連結に使用される。
【0017】
充填剤14には、ポリスチレン、カーボン等が用いられる。なお、充填剤14の粒径は数十μm程度であるのが一般的である。フリット15には、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられる。なお、フリット15のボア径はおおよそ20μm以下が一般的である。
【0018】
(平衡化工程S2)
この平衡化工程S2は、充填剤14に試料成分17が吸着し易くするために平衡化溶液18を注入する工程である。平衡化溶液18には、例えば水が用いられる。
【0019】
(吸着工程S3)
吸着工程S3は、分析対象成分19を含む試料溶液20を抽出部2に注入し、試料成分17を充填剤14に吸着させる工程である。因みに、試料溶液20には、水等で溶解して濃度を調整したものを使用する場合もある。
【0020】
(洗浄工程S4)
洗浄工程S4は、充填剤14に分析対象成分19だけが吸着したまま残るように、その他の夾雑物成分21を洗浄溶液22と共に廃棄する工程である。洗浄溶液22には、例えばメタノール、アセトニトリルその他の有機溶媒、水、これらの混合溶液等を使用する。
【0021】
(S1〜S4のまとめ)
以上説明した洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4の各工程で使用する溶液の種類は、充填剤14の材質等に応じて変更する必要がある。また、抽出部2に注入した各溶液は、充填剤14が緻密に充填されているために非常に流れ難い。しかし、抽出部2の上流部を加圧したり、下流部を減圧したりすることにより、充填剤14の上流側と下流側との間に圧力差を生じさせる手法を採用すれば溶液をスムーズに通すことができる。また、遠心分離法等により強制的に溶液を通す方式もある。
【0022】
(連結工程S5)
連結工程S5は、洗浄工程S4で夾雑物成分21を廃棄した後の抽出部2と、送液部3とを連結してイオン化プローブ1を組み立てる工程である。送液部3は漏斗形状を有している。因みに、送液部3は、テーパー部24とキャピラリー35で構成される。なお、キャピラリー35の先端外径は0.1〜0.5mmに設定する。この実施の形態の場合、先端外径は0.3mmとする。ただし、この先端外径の寸法は、キャピラリー35の想定流量が500nL/分〜20μL/分である場合を想定して定めた値である。
【0023】
ここで、テーパー部24の開口や内壁面の傾斜は、抽出部2のテーパー部23を押し込むように装着した場合に、テーパー部23の外壁面との間で気密状態が生じるように形成されている。図2に、抽出部2と送液部3の詳細な連結方法を示す。
【0024】
前述したように、2つの部材の連結は、抽出部2のテーパー部23と、送液部3のテーパー部24との間で行う。連結の際、テーパー部23の先端部分(円周部分)は、テーパー部24の内壁面に沿って押し込まれ、その隙間が無くなる位置で連結が完了する。ここでの隙間が無くなる位置が気密箇所25である。なお、図2に示すように、2つの部材の連結には、連結ロボット26を使用する。連結ロボット26は、2つの部材を互いに押し込むように動作する。このように、実施の形態に係る形状を有する抽出部2と送液部3を用いれば、簡単な動作により2つの部材の間で気密性を確保することができる。この実施の形態の場合には、抽出部2と送液部3の両方がテーパー形状を有している場合について説明しているが、いずれか一方についてはテーパー形状を有しない場合にも気密状態を形成することができる。
【0025】
(移動工程S6)
移動工程S6は、抽出部2と送液部3を連結したイオン化プローブ1をイオン源装置内の所定位置に移動する工程である。イオン化プローブ1の移動には、搬送ロボット27が用いられる。搬送ロボット27のアーム28には不図示のホルダが装着されており、ホルダによって把持したイオン化プローブ1を移動前位置(図中、イオン化プローブ1を点線で示す位置)から移動後位置(図中、イオン化プローブ1を実線で示す位置)へと移動する。なお、移動後位置に移動したイオン化プローブ1のキャピラリー35の先端は、イオン検出部38(例えば質量分析装置)におけるイオン取込み部31の周辺に位置決めされる。
【0026】
このとき、減圧容器4とイオン化プローブ1とは、気密状態が得られるような構造とする。減圧容器4とイオン化プローブが機密状態に連結されることで、イオン源が完成する。なお、搬送ロボット27と連結ロボット26とは同じものでも良い。
【0027】
(溶出・イオン化工程S7)
溶出・イオン化工程S7は、溶出液32を抽出部3に注入することにより、分析対象成分19を充填剤14から溶出し、同時に溶出された分析対象成分19をイオン化する工程である。
【0028】
溶出液32には、例えばメタノール、アセトニトリルその他の有機溶媒、水、又はこれらの混合溶液等が用いられる。この溶出・イオン化工程S7の場合にも、前述したように、充填剤14の上流側と下流側との間に圧力差を生じさせることにより、溶液をスムーズに流すことができる。この実施の形態の場合、減圧容器4の内部を減圧することで溶出を促進する。
【0029】
ここで、排気パイプ33の一端は減圧容器4に接続され、他端側は減圧ポンプ34に接続される。従って、減圧ポンプ34により減圧容器4内の空気を排出することにより、減圧容器4の内圧を外圧よりも小さくすることができる。すなわち、いわゆる負圧状態を作り出すことができる。
【0030】
減圧容器4が減圧されることで、溶出液32は充填剤14から分析対象成分19を溶出し、送液部3を構成するキャピラリー35の下端から流れ出る。このとき、キャピラリー35に電圧36を印加すると、分析対象成分19はイオン化する(エレクトロスプレーイオン化法:以下「ESI法」という。)。このように、この実施の形態におけるイオン源装置は、分析対象成分19の溶出とイオン化とを同時に実行することができる。すなわち、スループットの高いイオン源装置を実現することができる。
【0031】
なお、溶出に使用する溶液の種類は、充填剤14の材質等に応じて変えることが必要である。また、減圧容器4の内部圧力は充填剤14の種類による。しかし、大気圧に対して最大でも−100kPa程度に減圧することにより、溶液をスムーズに通すことができる。
【0032】
因みに、イオン化により生成されたイオン37は、質量分析装置等のイオン検出部38において検出される。
【0033】
(廃棄工程S8)
溶出・イオン化工程S7を終えたイオン化プローブ1は、洗浄等を行うことで再度利用することも可能である。しかし、治療薬物モニタリング(TDM)等のように微量な汚染等でも問題となる場合には好ましくない。
【0034】
そこで、本実施の形態の場合には、搬送ロボット39を使用してイオン化プローブ1を減圧容器4から排出する。搬送ロボット39のアーム40には不図示のホルダが装着されており、ホルダによって把持したイオン化プローブを移動前位置(図中、イオン化プローブを点線で示す位置)から移動後位置(図中、イオン化プローブを実線で示す位置)に移動する。すなわち、イオン化プローブ1を質量分析装置等のイオン取込み部31の周辺から移動する。この後、減圧容器4から排出された使用済みのイオン化プローブは廃棄される。すなわち、イオン化プローブ1を使い捨てにする。
【0035】
この結果、次回分析時における汚染等の影響を最小限に抑えることができる。なお、搬送ロボット39と搬送ロボット27は同じものでも良い。
【0036】
(実施の形態の効果)
本実施の形態のように、洗浄工程S4の実行後に連結工程S5を配置し、抽出部2と送液部3を相互に連結することにより、分析対象成分21の溶出時に夾雑物成分21が溶出してキャピラリー35を目詰まりさせる問題を抑制することができる。しかも、本実施の形態の場合には、従来手法のように、分析対象成分21の溶出液を送液部3に移し替えるための容器が不要になり、その分、低コスト化を実現することができる。
【0037】
(B)実施の形態2
(概略構成)
この実施の形態の場合にも、不要成分を廃棄した後の抽出部2と送液部3を連結してイオン化プローブ1を完成し、このイオン化プローブ1を質量分析装置等のイオン取込み部31の周辺に移動させる場合について説明する。この点において、本実施の形態と実施の形態1とは共通する。ただし、この実施の形態では、抽出部2の上流を加圧することにより、分析対象成分21の溶出を促進する方式について説明する。
【0038】
図3に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。なお、図3には図1との対応部分に同一符号を付して示す。この実施の形態におけるイオン源装置は、イオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)、搬送ロボット27、加圧器43を主要部とする。
【0039】
この実施の形態2の場合、実施の形態1で必要とされていた減圧容器4、排気パイプ33、減圧ポンプ34が不要である。なお、この実施の形態の場合も、処理プロセスは実施の形態1と同じである。すなわち、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8が順番に実行される。以下では、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8についてのみ説明する。
【0040】
(移動工程S6)
移動工程S6では、抽出部2と送液部3を連結したイオン化プローブ1が、イオン源装置内の所定位置に移動される。イオン化プローブ1の移動には、搬送ロボット27が用いられる。搬送ロボット27のアーム28には不図示のホルダが装着されており、ホルダによって把持したイオン化プローブ1を移動前位置(図中、イオン化プローブ1を点線で示す位置)から移動後位置(図中、イオン化プローブ1を実線で示す位置)に移動する。この場合も、イオン化プローブ1のキャピラリー35の先端は、イオン検出部38(例えば質量分析装置)におけるイオン取込み部31の周辺に位置決めされる。
【0041】
なお、この実施の形態の場合、減圧容器4が不要であるので、減圧容器4とイオン化プローブ1との気密化処理も不要である。
【0042】
(溶出・イオン化工程S7)
溶出・イオン化工程S7で実行される内容も基本的に実施の形態1と同様である。まず、イオン化プローブ1の上部開口側から溶出液32が注入される。この後、イオン化プローブ1の上部開口に加圧器43が配置され、抽出部2の上流側(溶出液32の導入側)を加圧する。すなわち、充填剤14の上流側と下流側に圧力差を発生させ、分析対象成分19を含む溶出液32の液滴を、送液部3を構成するキャピラリー35の下端側から排出する。
【0043】
この実施の形態の場合も、溶出液32には、例えばメタノール、アセトニトリルその他の有機溶媒、水、又はこれらの混合溶液等を使用する。なお、溶出液32が注入されると、加圧器43に気体44が導入され、抽出部2に対する加圧が開始される。因みに、加圧器43は、例えば圧力ポンプやピストンでも良い。また、加圧器43は、専ら抽出部2との気密性を高めるのに使用し、加圧自体は加圧した気体44によって実現しても良い。
【0044】
抽出部2が加圧されることで、溶出液32は充填剤14から分析対象成分19を溶出し、送液部3を構成するキャピラリー35の下端から流れ出る。このとき、キャピラリー35に電圧36を印加すると、分析対象成分19はイオン化する(ESI法)。
【0045】
言うまでもなく、加圧器43と抽出部2との接続部分又は加圧器43と送液部3との接続部分は、気密状態が得られるように構成されている必要がある。また、加圧器43に導入される気体44は、空気又は窒素等の不活性ガスを使用することが望ましい。なお、加圧圧力は、溶媒の種類に応じて制御することが望ましい。溶媒の種類に応じて加圧圧力を制御することにより、安定した溶液の送液が可能となる。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、分析対象成分19の溶出とイオン化を同時に行うことができる。すなわち、スループットの高いイオン源を実現できる。なお、溶出に使用する溶液の種類は、充填剤14の材質等に応じて変えることが必要である。
【0047】
この後、イオン化により生成されたイオン37は、質量分析装置等のイオン検出部38において検出される。
【0048】
(廃棄工程S8)
溶出・イオン化工程S7を終えたイオン化プローブ1は、洗浄等を行うことで再度利用することも可能である。しかし、治療薬物モニタリング(TDM)等のように微量な汚染等でも問題となる場合には好ましくない。
【0049】
従って、この実施の形態の場合にも、使用後のイオン化プローブ1は、搬送ロボット39を用いることにより、質量分析装置等のイオン取込み部31の周辺から排除される。イオン化プローブ1を使い捨てにできるので、次回分析時における汚染等の影響を最小限に抑えることができる。なお、搬送ロボット39と搬送ロボット27は同じものでも良い。
【0050】
(実施の形態の効果)
この実施の形態の場合にも、前述した実施の形態1の場合と同様に、洗浄工程S4の実行後に連結工程S5を配置し、抽出部2と送液部3を相互に連結することにより、充填剤14の成分等によってキャピラリー35が詰まる問題を抑制することができる。勿論、本実施の形態の場合にも、溶出液を移し替えるための容器は不要であるので、低コスト化を実現できる。
【0051】
(C)実施の形態3
(概略構成)
この実施の形態の場合には、送液部3を構成するキャピラリー35の外側に沿って気体を流すことにより、イオン化効率を向上させる方式について説明する。同時に、この実施の形態では、キャピラリー35から排出される分析対象成分を加熱してイオン化効率を向上させる方式についても説明する。
【0052】
図4に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。なお、図4には図1との対応部分に同一符号を付して示す。この実施の形態におけるイオン源装置は、イオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)、減圧容器4、搬送ロボット27、ガス噴霧管41、加熱器42を主要部とする。この実施の形態の場合、実施の形態1で説明したイオン源装置に対して、ガス噴霧管41と加熱器42が追加的に配置される。
【0053】
ここで、ガス噴霧管41は、イオン化プローブ1を装着できるように筒形状に加工されており、減圧容器4に対して気密性を保てるように取り付けられている。ここで、ガス噴霧管41には、イオン化プローブ1を上部開口から落とし込むように装着できるように、イオン化プローブ1よりも一回り大きい空洞(保持部45)が形成されている。
【0054】
保持部45の底部には、キャピラリー35の周囲を取り囲むように下端側ほど内径が狭まるよう加工された空洞(テーパー部46)が形成されている。保持部45の底部は、送液部3を構成するテーパー部24と気密性を保てるようにテーパー形状に加工されている。また、ガス噴霧管41の内部には、外部からテーパー部46の内側に気体48を導入するための導入管47が形成されている。
【0055】
これらの構造により、導入管47から導入された気体48は、キャピラリー35に沿う流れとしてテーパー部46の先端から外部に射出される。因みに、キャピラリー35の先端は、テーパー部46の先端部から少しだけ飛び出すように位置関係が定められている。なお、キャピラリー35の先端外径は0.1〜1mmに設定する。この実施の形態の場合、先端外径は0.3mmとする。ただし、先端外径の寸法は、キャピラリー35の想定流量が10μL/分〜5mL/分である場合を想定して定めている。
【0056】
加熱器42は、キャピラリー35から噴出される分析対象成分19の加熱に使用される。加熱器42による加熱方式には、加熱ガス吹出方式やランプ加熱方式がある。なお、加熱ガス吹出方式の場合、加熱器の吹き出し口は、キャピラリー35の流れを妨げないように、分析対象成分19の流れに対して熱49が斜めに入射するように配置される。
【0057】
なお、この実施の形態の場合も、処理プロセスは実施の形態1と同じである。すなわち、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8を順番に実行する。以下では、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8についてのみ説明する。
【0058】
(移動工程S6)
移動工程S6では、抽出部2と送液部3を連結したイオン化プローブ1が、イオン源装置内の所定位置に移動される。イオン化プローブ1の移動には、搬送ロボット27が用いられる。搬送ロボット27のアーム28には不図示のホルダが装着されており、ホルダによって把持されたイオン化プローブ1が移動前位置(図中、イオン化プローブ1を点線で示す位置)から移動後位置(図中、イオン化プローブ1を実線で示す位置)に移動される。この場合も、イオン化プローブ1のキャピラリー35の先端は、イオン検出部38(例えば質量分析装置)におけるイオン取込み部31の周辺に位置決めされる。なお、移動の際、イオン化プローブ1は、ガス噴霧管41の内側に形成された保持部45及びテーパー部46の内側に気密性を保つように取り付けられる。なお、搬送ロボット27と連結ロボット26とは同じものでも良い。
【0059】
(溶出・イオン化工程S7)
溶出・イオン化工程S7では、電圧36の印加と同時に、キャピラリー35とガス噴霧管41の先端開口部から窒素その他の不活性ガス又は空気等の気体48が噴出される。噴出される気体48によりキャピラリー35の下端から流れ出る溶液の気化が促進され、分析対象成分19のイオン化効率を向上することができる。気化の促進は、キャピラリー35の内部を流れる溶液の流量が大きい場合に特に有効である。この動作と並行して、加熱器42からは熱49が噴出される。熱49は、キャピラリー35から流れ出た溶液を過熱し、その気化を更に促進する。
【0060】
(廃棄工程S8)
溶出・イオン化工程S7を終えたイオン化プローブ1は、洗浄等を行うことで再度利用することも可能である。しかし、治療薬物モニタリング(TDM)等のように微量な汚染等でも問題となる場合には好ましくない。
【0061】
そこで、本実施の形態の場合には、搬送ロボット39を使用してイオン化プローブ1を減圧容器4から排出する。搬送ロボット37のアーム40には不図示のホルダが装着されており、ホルダによって把持したイオン化プローブを移動前位置(図中、イオン化プローブを点線で示す位置)から移動後位置(図中、イオン化プローブを実線で示す位置)に移動する。すなわち、イオン化プローブを質量分析装置等のイオン取込み部31の周辺から移動する。この後、減圧容器4から排出された使用済みのイオン化プローブは廃棄される。これにより、イオン化プローブを使い捨てにすることができる。
【0062】
この結果、次回分析時における汚染等の影響を最小限に抑えることができる。なお、搬送ロボット39と搬送ロボット27は同じものでも良い。
【0063】
(流量の測定結果)
ここでは、キャピラリー35の内部を流れる溶液の流量を測定した結果を説明する。図5に、減圧ポンプ34の一次側圧力を変化させた時における溶液の流量の変化を示す。横軸は減圧ポンプ34の一次側圧力であり、縦軸は試料の流速である。各プロットは、溶出液32がメタノールの場合、純水の場合、水とメタノールを1:1で混合した場合に対応する。図5の測定結果を参照し、溶媒の種類に応じて減圧ポンプ34の排気速度を調節することにより(減圧ポンプ34の一次側圧力を制御することにより)安定した溶液の送液を実現できる。
【0064】
(応用例)
この実施の形態においては、充填剤14の下流を減圧する方式(図1)に対して、キャピラリー35の外側面に沿う気体48の流れを生成する方式とキャピラリー35の下流を加熱する方式を組み合わせる場合について説明した。しかし、キャピラリー35の外側面に沿う気体48の流れを生成する方式とキャピラリー35の下流を加熱する方式は、実施の形態2(図3)に対して組み合わせることもできる。また、キャピラリー35の外側面に沿う気体48の流れを生成する方式とキャピラリー35の下流を加熱する方式のいずれか一方だけを使用することもできる。
【0065】
(実施の形態の効果)
この実施の形態の場合にも、前述した実施の形態1の場合と同様に、洗浄工程S4の実行後に連結工程S5を配置し、抽出部2と送液部3を相互に連結することにより、充填剤14の成分等によってキャピラリー35が詰まる問題を抑制することができる。勿論、本実施の形態の場合にも、溶出液を移し替えるための容器は不要であるので、低コスト化を実現できる。
【0066】
(D)実施の形態4
(概略構成)
この実施の形態では、送液部3を構成するキャピラリー35の他の構成例について説明する。図6に、送液部3の構成例を示す。送液部3はキャピラリー35とテーパー部24で構成される。この実施の形態の場合、キャピラリー35は金属製であり、テーパー部24は樹脂製である。この実施の形態では、金属製のキャピラリー35に電圧を印加し、溶液をイオン化する。以下では、図7に従って移動工程S6と溶出・イオン化工程S7の各工程について説明する。なお、図7は、実施の形態3の装置構成を前提に表している。すなわち、減圧容器4にガス噴霧管41が取り付けられている装置構成を前提とする。
【0067】
(搬送工程S6)
図7の搬送工程S6には、質量分析装置等のイオン取込み部31の周辺に送液部3が既に移動された状態を示している。この実施の形態の場合、ガス噴霧管41には、外壁からテーパー部46に達する孔が形成されており、この孔に対して自在にスライドできるようにスライド電極51が取り付けられている。なお、スライド電極51の出し入れは不図示の駆動部によって実行される。また、スライド電極51の出し入れは不図示の制御部(マイクロプロセッサ等)により制御される。搬送工程S6の終了時、図7に示すように、スライド電極51の先端部分はガス噴霧管41の内壁内に格納されている。
【0068】
(溶出・イオン化工程S7)
溶出・イオン化工程S7を開始する際、スライド電極51は、不図示の駆動部によりガス噴霧管41の内壁側からテーパー部46に突き出すように移動される。このとき、スライド電極51は、その先端がキャピラリー35の表面に接触するまでスライドされる。
【0069】
同時に、充填剤14の上流側と下流側との間に圧力差が発生され、分析対象成分19を含む溶出液32が送液部3のキャピラリー35の下端から流れ出す。同時に、キャピラリー35には、スライド電極51を通じて電圧36が印加される。この電圧の印加によって、キャピラリー35の先端から流れ出した溶出液32はイオン化する。このとき、ガス噴霧管41の電位は、キャピラリー35と同電位に制御しても良い。
【0070】
やがて、イオン化が終了すると、イオン化プローブ1を廃棄できるように、スライド電極51は、再びガス噴霧管41の内壁内に収容される。このように、スライド電極51を動作の進行に連動して出し入れするのは、キャピラリー35の破損を避けるためである。例えばイオン化プローブ1の装着前からスライド電極51がガス噴霧管41の内壁から突き出ている場合、非常に細い径を有するキャピラリー35がスライド電極51と接触又は衝突することで曲がったり、折れたりする可能性がある。
【0071】
(応用例)
この実施の形態の場合にも、減圧により溶出液32をイオン化プローブ1から流出させる方式のイオン源装置と組み合わせる場合を説明したが、加圧によって溶出液32をイオン化プローブ1から流出させる方式のイオン源装置にも応用することができる。また、前述した実施の形態の場合には、ガス噴霧管41が存在するイオン源装置を例示しているが、ガス噴霧管41を有しないイオン源装置にも応用することができる。
【0072】
また、前述した実施の形態の場合には、イオン化プローブ1がガス噴霧管41に装着された後に、スライド電極51のスライド動作が開始される場合について説明した。しかし、イオン化プローブ1のガス噴霧管41への装着に伴う位置に応じてスライド電極51を出し入れする駆動部を用いても良い。例えばバネ機構とリンク機構を組み合わせた駆動部を用いても良い。この場合、イオン化プローブ1の装着に伴う下方移動に連動してリンク機構がスライド電極51をテーパー部46から突出するように押し出し、イオン化プローブ1の取り外しが開始されるとバネ機構の復元力によってスライド電極51をテーパー部46から退避させるように動作させても良い。
【0073】
(実施の形態の効果)
この実施の形態の場合にも、前述した実施の形態1の場合と同様に、洗浄工程S4の実行後に連結工程S5を配置し、抽出部2と送液部3を相互に連結することにより、充填剤14の成分等によってキャピラリー35が詰まる問題を抑制することができる。勿論、本実施の形態の場合にも、溶出液を移し替えるための容器は不要であるので、低コスト化を実現できる。
【0074】
(E)実施の形態5
(概略構成)
この実施の形態では、スライド電極51を用いることなく、キャピラリー35に電圧を印加する方式について説明する。この実施の形態にて使用する送液部3の基本構造は、図6に示した構造とほぼ同じである。すなわち、送液部3は、キャピラリー35とテーパー部24で構成される。ただし、キャピラリー35とテーパー部24は共に金属製であるものとする。
【0075】
図8に、実施の形態に係るイオン源装置の構成例を示す。なお、図8は、イオン源装置における移動工程S6が完了した時点の状態を示している。図に示すように、このイオン源装置は、減圧方式とガス噴霧管41の組み合わせ構造により構成される。
【0076】
本実施の形態の場合、前述したようにテーパー部24は金属製である。また、ガス噴霧管41も金属製である。従って、イオン化プローブ1がガス噴霧管41に装着されてテーパー部24とガス噴霧管41が気密状態(接触状態)になると、キャピラリー35とガス噴霧管45とは同電位になる。このため、ガス噴霧管41に対して電圧36を印加すると、キャピラリー35に対しても電圧36を供給することができる。
【0077】
この構造を採用すると、図7の場合のように、スライド電極51をキャピラリー35と接触させる必要がない。すなわち、スライド電極51の駆動機構も無くすことができる。その分、この実施の形態の場合には、実施の形態4に比して構造を簡単にすることができる。また、電圧36の印加は、送液部3のテーパー部24を通じて行われるため、機械的接触に伴うキャピラリー35の破損のおそれを無くすことができる。
【0078】
(応用例)
この実施の形態の場合にも、減圧により溶出液32をイオン化プローブ1から流出させる方式のイオン源装置と組み合わせる場合を説明したが、加圧によって溶出液32をイオン化プローブ1から流出させる方式のイオン源装置にも応用することができる。また、前述した実施の形態の場合には、ガス噴霧管41が存在するイオン源装置を例示しているが、テーパー部24と接触する導電性の部材に電圧36を印加することができれば、ガス噴霧管41を有しないイオン源装置にも応用することができる。
【0079】
(実施の形態の効果)
この実施の形態の場合にも、前述した実施の形態1の場合と同様に、洗浄工程S4の実行後に連結工程S5を配置し、抽出部2と送液部3を相互に連結することにより、充填剤14の成分等によってキャピラリー35が詰まる問題を抑制することができる。勿論、本実施の形態の場合にも、溶出液を移し替えるための容器は不要であるので、低コスト化を実現できる。
【0080】
(F)実施の形態6
この実施の形態では、実施の形態5の変形例を説明する。すなわち、スライド電極51を使用しない実施の形態について説明する。実施の形態5の場合には、キャピラリー35とテーパー部24が共に金属製の場合について説明した。しかし、実施の形態5と同じ動作は、テーパー部24を導電性樹脂製とすることによっても実現できる。
【0081】
(G)実施の形態7
この実施の形態にも、スライド電極51を使用しない実施の形態について説明する。図9に、この実施の形態で使用する送液部3の構造例を示す。この実施の形態の場合、送液部3を構成するキャピラリー35とテーパー部24を共に導電性樹脂で構成する。なお、キャピラリー35とテーパー部24は一体構成でも良いし、別部材を結合しても良い。この実施の形態の場合にも、実施の形態5と同様の効果を実現できる。
【0082】
(H)実施の形態8
この実施の形態にも、スライド電極51を使用しない実施の形態について説明する。図10に、この実施の形態で使用する送液部3の構造例を示す。この実施の形態の場合、送液部3を構成するキャピラリー35を金属製、テーパー部24を樹脂製とする。ただし、テーパー部24の表面全体を導電層52で被覆する。導電層52の少なくとも一部はキャピラリー35と電気的に結合されているものとする。なお、テーパー部24を保持するガス噴霧管41等と導電層52とキャピラリー35との間に電気的な経路が形成されていれば、導電層52は必ずしもテーパー部24の表面全体を覆うように形成されていなくても良い。この実施の形態の場合にも、実施の形態5と同様の効果を実現できる。
【0083】
(I)実施の形態9
この実施の形態にも、スライド電極51を使用しない実施の形態について説明する。図11に、この実施の形態で使用する送液部3の構造例を示す。この実施の形態の場合、送液部3を構成するキャピラリー35とテーパー部24が共に樹脂製であるものとする。ただし、その表面全体を導電層52で被覆する。導電層52が基体の表面全体を覆うことにより、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0084】
(J)実施の形態10
(概略構成)
この実施の形態では、溶出液32を安定的に送液できるように、減圧容器4の圧力をモニタし、減圧ポンプ34の排気速度を制御する方式について説明する。
【0085】
図12に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。なお、図12には図1との対応部分に同一符号を付して示す。この実施の形態におけるイオン源装置は、イオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)、減圧容器4、不図示の搬送ロボット27、排気パイプ33、減圧ポンプ34、圧力計53を主要部とする。
【0086】
この実施の形態の場合、実施の形態1で説明したイオン源装置の減圧容器4に圧力計53が追加的に配置される。
【0087】
この実施の形態の場合も、実施の形態1と同様に、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8が順番に実行される。以下では、溶出・イオン化工程S7についてのみ説明する。
【0088】
(溶出・イオン化工程S7)
この実施の形態の場合、圧力計53は、減圧容器4内の圧力を測定し、測定結果を減圧ポンプ34にフィードバックする。すなわち、測定された圧力の変動に応じて減圧ポンプ34の排気速度を制御する。減圧ポンプ34の排気速度の調節は、バルブにより制御する方法、減圧ポンプ34を駆動する電圧の出力値を調節する方法等がある。この圧力調整により、安定した溶出液32の送液が可能となる。
【0089】
なお、図12の場合には、ガス噴霧管41を用いないイオン源装置を例示しているが、ガス噴霧管41を用いるイオン源装置の場合にも、圧力計53を配置することによって同様の効果を実現できる。また、この実施形態の仕組みを、実施の形態4〜9で説明した送液部3と組み合わせることも可能である。
【0090】
(K)実施の形態11
(概略構成)
この実施の形態では、溶出液32を安定的に送液できるように、加圧器43の圧力をモニタし、加圧圧力を制御する方式について説明する。
【0091】
図13に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。なお、図13には図1との対応部分に同一符号を付して示す。この実施の形態におけるイオン源装置は、イオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)、搬送ロボット27、加圧器43、圧力計54を主要部とする。
【0092】
この実施の形態の場合も、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8が順番に実行される。以下では、溶出・イオン化工程S7についてのみ説明する。
【0093】
(溶出・イオン化工程S7)
この実施の形態の場合、圧力計54は、加圧器43の圧力を測定し、測定結果を気体44の導入量又は圧力の調整にフィードバックする。すなわち、測定された圧力の変動に応じて加圧器43に導入する気体44の導入量又は圧力を制御する。なお、圧力は、例えば圧力弁の調整によって実現することができる。この圧力調整により、安定した溶出液32の送液が可能となる。
【0094】
なお、図13の場合には、ガス噴霧管41を用いないイオン源装置を例示しているが、ガス噴霧管41を用いるイオン源装置の場合にも、圧力計53を配置することによって同様の効果を実現できる。また、この実施形態の仕組みを、実施の形態4〜9で説明した送液部3と組み合わせることも可能である。
【0095】
(L)実施の形態12
この実施の形態では、溶出液32を安定的に送液できるように、抽出部2に注入した溶液32の液面を液面センサでモニタし、減圧ポンプ34の減圧圧力を制御する方式について説明する。
【0096】
図14に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。なお、図14には図1との対応部分に同一符号を付して示す。この実施の形態におけるイオン源装置は、イオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)、搬送ロボット27、排気パイプ33、減圧ポンプ34、液面センサ56を主要部とする。
【0097】
この実施の形態の場合も、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8が順番に実行される。以下では、溶出・イオン化工程S7についてのみ説明する。
【0098】
(溶出・イオン化工程S7)
この実施の形態の場合、抽出部2に注入された溶出液32の液面55の低下状態を液面センサ56でモニタし、その低下速度の変動に応じて減圧ポンプ34の排気速度を制御する。すなわち、低下速度が一定になるように、減圧ポンプ34の排気速度を制御する。なお、この実施の形態の前提として、液面センサ56によって抽出部2の液面の高さを直接又は間接的に計測できることが必要である。図14は、液面センサ56を抽出部2の側面に配置し、透過的に液面55の位置を測定する例を表している。なお、液面55の高さを抽出部2の上方位置から測定する液面センサ56を用いることもできる。
【0099】
以上の圧力調整により、安定した溶出液32の送液が可能となる。なお、図14の場合には、ガス噴霧管41を用いないイオン源装置を例示しているが、ガス噴霧管41を用いるイオン源装置の場合にも、圧力計53を配置することによって同様の効果を実現できる。また、実施の形態4〜9で説明した送液部3と組み合わせも可能である。
【0100】
(M)実施の形態13
この実施の形態では、実施の形態12の変形例を説明する。この実施の形態の場合、抽出部2に注入した溶液32の液面を液面センサでモニタし、加圧器43の加圧圧力を制御する方式について説明する。
【0101】
図15に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。なお、図15には図1との対応部分に同一符号を付して示す。この実施の形態におけるイオン源装置は、イオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)、搬送ロボット27、加圧器43、液面センサ56を主要部とする。
【0102】
この実施の形態の場合も、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8が順番に実行される。以下では、溶出・イオン化工程S7についてのみ説明する。
【0103】
(溶出・イオン化工程S7)
この実施の形態の場合、抽出部2に注入された溶出液32の液面55の低下状態を液面センサ56でモニタし、その低下速度の変動に応じて加圧器43に導入する気体44の導入量又は圧力を調節する。この調節により、安定した溶出液32の送液が可能となる。
【0104】
なお、図15の場合には、ガス噴霧管41を用いないイオン源装置を例示しているが、ガス噴霧管41を用いるイオン源装置の場合にも、圧力計53を配置することによって同様の効果を実現できる。また、実施の形態4〜9で説明した送液部3と組み合わせも可能である。
【0105】
(N)実施の形態14
(概略構成)
この実施の形態の場合には、定量分析を実現するために、抽出部2に試料溶液20を注入する際に、内部標準物質61も注入する方式について説明する。
【0106】
図16に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。なお、図16には図1との対応部分に同一符号を付して示す。ただし、説明を簡便なものにするために、図16では抽出部2と送液部3のみを記す。
【0107】
実施の形態1の場合と同様、この実施の形態の場合も、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8が順番に実行される。以下では、吸着工程S3、洗浄工程S4、溶出・イオン化工程S7についてのみ説明する。
【0108】
(吸着工程S3)
吸着工程S3では、試料溶液20と一緒に内部標準物質61も抽出部2に注入される。内部標準物質61には、分析対象成分19の一部の元素(炭素や水素)を同位体置換したもの等が用いられる。吸着工程S3により、分析対象成分19と夾雑物成分21を含む試料成分17と一緒に、内部標準物質成分62が充填剤14に吸着される。
【0109】
(洗浄工程S4)
洗浄工程S4では、洗浄溶液22を抽出部2に注入することにより、夾雑物成分21を廃棄する。内部標準物質成分62は、分析対象成分19と非常に類似した組成を持つため、分析対象成分19と一緒に充填剤14に吸着されたままで廃棄されない。
【0110】
(溶出・イオン化工程S7)
溶出・イオン化工程S7では、溶出液32を抽出部2に注入し、溶出とイオン化を同時に実行する。この際、分析対象成分19のイオン37と、内部標準物質成分62のイオン63とが同時に生成され検出される。
【0111】
予め濃度が知られている内部標準物質成分62のイオン63と、分析対象成分19のイオン37の検出される強度を比較することにより、試料溶液20に含まれる分析対象成分19を定量することが可能となる。
【0112】
(応用例)
前述の形態例の場合には、試料溶液20と内部標準物質61をそれぞれ別々に抽出部2に注入しているが、予め試料溶液20と内部標準物質61を混合した溶液を抽出部2に注入しても良い。なお、この実施の形態は、前述した実施の形態1〜13と組み合わせることもできる。
【0113】
(O)実施の形態15
(概略構成)
この実施の形態では、更なる高スループット分析の実現のため、複数個のイオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)が、質量分析装置等のイオン取込み部31の周辺に配置される方式について説明する。
【0114】
図17に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。図17では、説明を簡便なものにするために、抽出部2と送液部3の部分のみを記す。勿論、個々のイオン化プローブ1について、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8を順番に実行する。
【0115】
この実施の形態の場合、2組のイオン化プローブ1がイオン源装置に取り付け可能であるので、移動工程S6や溶出・イオン化工程S7を終えたイオン化プローブ1を廃棄している期間を利用して、他の一方のイオン化プローブ1によりイオン化を実行することができる。この場合、時間的な損失を低減することができる。このため、高スループット分析を実現できる。
【0116】
勿論、イオン源装置に対して3組以上のイオン化プローブ1を取り付け可能にすれば、更なるスループットを高めることができる。
【0117】
(応用例)
図17の場合には、加圧器43に気体44を導入することにより溶出液32の溶出を行う加圧方式について例示しているが、減圧方式を採用するイオン源装置にも同様に実現可能である。ただし、減圧方式の場合には、移動工程S6等において、1つでもイオン化プローブ1が減圧容器4に取り付けられていない場合には減圧を行うことができない。そのため、移動工程S6等の間に、イオン化プローブ1の取り付け場所の穴を塞ぐ機構などが必要となる。また、この実施の形態は、前述した実施の形態1〜14のいずれとも組み合わせることもできる。
【0118】
(P)実施の形態16
(概略構成)
この実施の形態では、抽出部の開口部に可撓性の配管を接続し、配管を接続した状態のままイオン化プロセスを進行する方式について説明する。
【0119】
図18に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。図18では、説明を簡便なものにするために、抽出部2と送液部3と配管65の部分のみを記す。なお、配管57は可撓性を有する樹脂製であるものとする。この配管57は、抽出部2と配管65を結合した状態のまま自在に移動可能であるものを使用する。なお、この実施の形態に係るイオン源装置は、前述した実施の形態1〜15のいずれとも組み合わせ可能であるが、溶出液32の溶出に加圧方式を採用する場合、配管65は耐圧性に優れるものであることが望ましい。
【0120】
勿論、この実施の形態の場合も、個々のイオン化プローブ1に対し、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、移動工程S6、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8が順番に実行される。以下では、吸着工程S3、洗浄工程S4、連結工程S5、溶出・イオン化工程S7についてのみ説明する。
【0121】
(吸着工程S3)
吸着工程S3では、配管65を介して試料溶液20が抽出部2に導入される。なお、配管65と抽出部2は結合されている。この吸着工程S3で、分析対象成分19と夾雑物成分21を含む試料成分17が充填剤14に吸着される。
【0122】
(洗浄工程S4)
洗浄工程S4では、配管65を介して溶媒66が抽出部2に導入される。充填材14に吸着されていた夾雑物成分21は、溶媒66と共に廃棄される。従って、洗浄が完了した時点で、充填剤14には分析対象成分19のみが吸着されている。
【0123】
(連結工程S5)
連結工程S5では、夾雑物成分21が廃棄された後の抽出部2と送液部3とが連結され、イオン化プローブ1が完成される。抽出部2と送液部3とは気密状態が得られるように連結される必要がある。連結方法の詳細については、実施の形態1で説明した通りである。
【0124】
(溶出・イオン化工程S7)
イオン化プローブ1が所定位置に搬送されると、溶出・イオン化工程S7が開始される。溶出・イオン化工程S7では、配管65を介してイオン化プローブ1(抽出部2、送液部3)に溶媒67が導入される。導入された溶媒67により、抽出部2に吸着されていた分析対象成分19は溶出され、送液部3を構成するキャピラリー35の下端から流れ出される。このとき、キャピラリー35に電圧36を印加すると、分析対象成分19はイオン化する(ESI法)。イオン化されたイオン37は、質量分析装置等のイオン検出部38により検出される。
【0125】
(Q)実施の形態17
前述した実施の形態1〜実施の形態16の場合には、いずれも抽出部2と送液部3を連結してイオン化プローブ1を組み立てた後に、質量分析装置等のイオンの取込み部の周辺に移動させ、分析対象成分19の溶出とイオン化を実行する駆動方法について説明した。
【0126】
この実施の形態では、最初に、送液部3のみを質量分析装置等のイオンの取込み部の周辺に移動させて位置決めし、次に、分析対象成分19のみを吸着させた抽出部2を送液部3と連結させてイオン化プローブ1を完成させる方式について説明する。
【0127】
図19に、本方式を採用したイオン源装置の構成と動作を模式的に示す。この実施の形態に係るイオン源装置は、実施の形態1と同様の装置構成を有しているものとする。なお、この実施の形態では、洗浄工程S1、平衡化工程S2、吸着工程S3、洗浄工程S4、移動工程S6、連結工程S5、溶出・イオン化工程S7、廃棄工程S8の順番にプロセスが進行するものとする。すなわち、移動工程S6と連結工程S5の順番が、他の実施の形態とは入れ替わっている。図19では、この実施の形態に特有である移動工程S6と連結工程S5のみを示している。
【0128】
(移動工程S6)
移動工程S6では、送液部3のみが、搬送ロボット68で駆動されるアーム69により、質量分析装置等のイオン検出部38の周辺に移動される。次に、アーム69は、元の位置に戻り、洗浄工程S4で夾雑物成分21が廃棄された後の抽出部2を掴み、先に移動されている送液部3の付近に移動する。なお、この搬送ロボット68及びアーム69は、前述した搬送ロボット27及びアーム28と同じでも良い。
【0129】
(連結工程S5)
連結工程S5においては、抽出部2と送液部3が連結ロボット26を用いて気密性が得られるように連結される。この実施の形態の場合、減圧容器4内で抽出部2と送液部3が連結される。なお、連結ロボット26も、搬送ロボット27又は28と同じものでも良い。
【0130】
(応用例)
この実施の形態の場合にも、溶出・イオン化工程S7を終えた後の抽出部2と送液部3をそれぞれ洗浄して再度利用することもできる。しかし、治療薬物モニタリング(TDM)等のように微量の汚染でも問題となる場合には、再利用すること無く排気することが望ましい。イオン化プローブ1を使い捨てとすることで、次回の分析に汚染の影響が及ぶのを最小限に抑えることができる。
【0131】
なお、この組み立て方法は、前述した実施の形態1〜実施の形態16で説明した方式においても、容易に対応することができる。
【0132】
(R)他の形態例
前述した実施の形態では、分析対象成分の溶出に使用する溶媒の種類に応じて圧力差の条件を制御する場合について言及したが、抽出部2の内部構造に固有の溶液の流れ度合いの情報(コンダクタンス)に基づいて圧力差の条件を制御しても良い。
【0133】
前述した実施の形態1〜実施の形態17では、いずれもエレクトロスプレーイオン化法(ESI)に対応するイオン源装置について説明した。しかし、本発明に係るイオン化プローブ1は、大気圧化学イオン化法(APCI)やDARTイオン化法(Direct Analysis in Real Time)等の様々なイオン化方式に使用する試料溶液供給部として使用しても良い。
【符号の説明】
【0134】
1…イオン化プローブ、2…抽出部、3…送液部、4…減圧容器、14…充填剤、15…フリット、16…洗浄溶液、17…試料成分、18…平衡化溶液、19…分析対象成分、20…試料溶液、21…夾雑物成分、22…洗浄溶液、23…テーパー部、24…テーパー部、25…気密箇所、26…連結ロボット、27…搬送ロボット、28…アーム、31…イオン取込み部、32…溶出液、33…排気パイプ、34…減圧ポンプ、35…キャピラリー、36…電圧、37…イオン、38…イオン検出部、39…搬送ロボット、40…アーム、41…ガス噴霧管、42…加熱器、43…加圧器、44…気体、45…保持部、46…テーパー部、47…導入管、48…気体、49…熱、51…スライド電極、52…導電層、53…圧力計、54…圧力計、55…液面、56…液面センサ、61…内部標準物質、62…内部標準物質成分、63…イオン、65…配管、66…溶媒、67…溶媒、68…搬送ロボット、69…アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリーの先端から排出される溶液をイオン化するイオン源装置において、
試料成分に含まれる分析対象成分と共に吸着された夾雑物成分を充填剤から予め溶出して廃棄した抽出部を送液部に連結して形成したイオン化プローブから前記分析対象成分の溶液を溶出させながら同時にイオン化する
ことを特徴とするイオン源装置。
【請求項2】
前記イオン化プローブの下流側の圧力と前記イオン化プローブの上流部の圧力差を利用して、前記イオン化プローブを構成するキャピラリー内の溶液をイオン化する領域に送る
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン源装置。
【請求項3】
前記分析対象成分の溶液のイオン化が終了する度、使用されたイオン化プローブを廃棄する搬送機構を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン源装置。
【請求項4】
連結部分に気密状態が得られるように前記抽出部と前記送液部を連結する組立機構を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン源装置。
【請求項5】
前記抽出部及び前記送液部のいずれか一方又は両方は、前記抽出部と前記送液部が相互に連結される部位がテーパー形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン源装置。
【請求項6】
前記キャピラリーの外側面に沿った気体の流れを形成する管を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン源装置。
【請求項7】
前記送液部は、金属、樹脂、又は金属と樹脂の複合構造により構成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン源装置。
【請求項8】
前記送液部の少なくとも一部が導電性樹脂で構成される
ことを特徴とする請求項7に記載のイオン源装置。
【請求項9】
前記送液部のうち樹脂で構成された部分の表面が導電性の層で被覆されている
ことを特徴とする請求項7に記載のイオン源装置。
【請求項10】
前記分析対象成分の溶出に使用する溶媒の種類に応じ、前記圧力差の条件を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載のイオン源装置。
【請求項11】
前記抽出部について予め取得された前記分析対象成分の溶出性能に応じ、前記圧力差の条件を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載のイオン源装置。
【請求項12】
前記キャピラリーの下流部分を加熱する加熱部
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン源装置。
【請求項13】
前記イオン化プローブの下流側の圧力又は前記イオン化プローブの上流部の圧力を測定する圧力計を有し、
測定された圧力の変動に応じて前記圧力差を制御する請求項2に記載のイオン源装置。
【請求項14】
前記抽出部に注入された溶液の液面の高さを検知する液面検知部を有し、
前記液面検知部で検知された液面の低下速度の変動に応じ、前記圧力差を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載のイオン源装置。
【請求項15】
試料溶液に含まれる成分を前記充填剤に吸着させる際に前記抽出部に内部標準物質も吸着させておき、前記充填剤から前記分析対象成分の溶液を溶出させてイオン化する際には、前記試料溶液に含まれる成分と前記内部標準物質を同時に溶出させる
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン源装置。
【請求項16】
複数個の前記イオン化プローブを配置する
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン源装置。
【請求項17】
抽出部の充填剤に、試料成分に含まれる分析対象成分と夾雑物成分を吸着させる工程と、
前記充填剤から前記夾雑物成分を溶出させて廃棄する工程と、
前記夾雑物成分を溶出して廃棄した後の抽出部を、キャピラリーを有する送液部に連結してイオン化プローブを組み立てる工程と
を有することを特徴とするイオン化プローブの製造方法。
【請求項18】
抽出部の充填剤に、試料成分に含まれる分析対象成分と夾雑物成分を吸着させる工程と、
前記充填剤から前記夾雑物成分を溶出させて廃棄する工程と、
前記夾雑物成分を溶出して廃棄した後の抽出部を、キャピラリーを有する送液部に連結してイオン化プローブを組み立てる工程と、
前記イオン化プローブにおける前記充填剤から前記分析対象成分の溶液を溶出させながら同時にイオン化する工程と
を有することを特徴とするイオン源装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−7690(P2011−7690A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152721(P2009−152721)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】