説明

イジェクト装置

【課題】装置内に取り込まれた媒体の温度についても管理できるようなイジェクト装置を提供する。
【解決手段】ターンテーブル3がシャーシ2の中央部に設けられ、スピンドルモータ4によってターンテーブル3が回転駆動される。ピックアップ6がモータ8によってターンテーブル3の半径方向に移動される。シャーシ2の前部に搬送ローラ10が取り付けられ、ローディング・イジェクトモータ16によって搬送ローラ10が回転駆動されると、ディスクが搬送される。ピックアップ6に温度センサ20が取り付けられている。ユーザがイジェクトスイッチ22を操作した際に、温度センサ20の測定温度が温度設定ツマミ23の閾値温度よりも高い場合には、制御回路基板21がローディング・イジェクトモータ16の作動を禁止し、報知器24を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イジェクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスクプレイヤーに代表されるように、媒体に読み書きを行う媒体読取装置が広く普及している。媒体読取装置の耐熱性が向上し、媒体読取装置の動作可能な温度範囲が広くなり、媒体読取装置や媒体の温度管理が重要となる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された自動預金支払機においては、媒体である通帳を挿入するための挿入口の近傍に温度センサが設けられ、温度センサによって検出された通帳の温度が高温である場合、通帳の引き込みが行われないようになっている。
【特許文献1】特開平3−220691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、高温な媒体が装置内に取り込まれないので、装置の故障を防止することには有利であるが、装置内に取り込まれた媒体の温度管理がなされていない。
【0005】
そこで、本発明は、装置内に取り込まれた媒体の温度についても管理できるようなイジェクト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、媒体読取装置内から媒体を排出するイジェクト装置において、イジェクトスイッチと、前記媒体読取装置内から外に媒体を搬送する搬送機構と、前記搬送機構を駆動する駆動部と、前記媒体読取装置の内部に設けられた温度センサと、前記イジェクトスイッチが操作された際に、前記温度センサにより測定された測定温度に基づき前記駆動部の作動を禁止する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のイジェクト装置において、前記制御部は、前記イジェクトスイッチが操作された際に、前記温度センサにより測定された測定温度が閾値温度よりも高い場合に前記駆動部の作動を禁止することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のイジェクト装置において、光若しくは音を発するか又は表示を行うことで報知を行う報知器を更に備え、前記制御部は、前記イジェクトスイッチが操作された際に、前記温度センサにより測定された測定温度が閾値温度よりも高い場合に前記報知器を作動させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載のイジェクト装置において、前記制御部は、前記イジェクトスイッチが操作された際に、前記温度センサにより測定された測定温度が下閾値温度から上閾値温度までの温度範囲外である場合に前記駆動部の作動を禁止することを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1から3の何れか一項に記載のイジェクト装置において、前記制御部は、前記イジェクトスイッチが再び操作された際に、前記駆動部を作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、媒体読取装置内にある媒体が適温より高温になったり低温になったりすることがあるが、媒体読取装置内に温度センサが設けられているので、媒体読取装置内のディスクの温度管理がなされている。
また、温度センサによる測定温度が閾値温度よりも高くなった場合や、温度センサによる測定温度が温度範囲外である場合に、制御部によって駆動部の作動が禁止されるので、ユーザ等がイジェクトスイッチを操作した場合でもそのような高温な媒体が排出されない。そのとき、制御部が報知器を作動させるので、媒体の温度が適温でないことをユーザに知らしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1はローディング・イジェクト装置1を備えたディスクプレイヤー30の平面図である。
まず、ディスクプレイヤー30について説明する。このディスクプレイヤー30は、媒体としてのディスクから情報を光学的に読み取る媒体読取装置である。このディスクプレイヤー30においては、シャーシ2の中央部にターンテーブル3が設けられている。ターンテーブル3にはスピンドルモータ4が直結され、スピンドルモータ4によってターンテーブル3が上下方向の軸回りに回転駆動される。
【0014】
ターンテーブル3の左後ろ側において、ターンテーブル3の半径方向に延在した2本のガイドレール5がシャーシ2に取り付けられている。これらガイドレール5にはピックアップ6が取り付けられ、ガイドレール5に沿ってピックアップ6が移動可能となっている。このピックアップ6には噛合部材9が取り付けられている。
【0015】
一方のガイドレール5の左側において、ガイドレール5に対して平行に設けられたリードスクリュー7がその軸回りに回転可能となってシャーシ2に取り付けられている。リードスクリュー7の外面にはネジ溝が形成されており、そのネジ溝に噛合部材9が噛み合っている。このリードスクリュー7はモータ8に直結している。
【0016】
シャーシ2の上にはアウターシャーシが設けられ、そのアウターシャーシに筐体が取り付けられ、その筐体の内側にシャーシ2、ピックアップ6、モータ8、ターンテーブル3及びスピンドルモータ4等が収容される。
【0017】
ローディング・イジェクト装置1について説明する。
シャーシ2の前部には、搬送機構としての搬送ローラ10が取り付けられている。搬送ローラ10は、左右方向を軸方向とし、搬送ローラ10がその軸回りに回転可能となっている。搬送ローラ10の左端部には歯車11が固定されている。また、シャーシ2の左前角部には、二段ギア12が自転軸回りに回転可能となって取り付けられ、この二段ギア12の歯車13が歯車11に噛み合っている。二段ギア12のウォームホイール14がウォーム15に噛み合い、このウォーム15は駆動部としてのローディング・イジェクトモータ16に直結している。このローディング・イジェクトモータ16はシャーシ2に取り付けられている。搬送ローラ10の上にはディスクガイドが設けられ、ローディング・イジェクトモータ16によって搬送ローラ10が回転駆動されると、搬送ローラ10とディスクガイドに挟まれたディスクがターンテーブル3上に搬送され、搬送ローラ10が逆に回転駆動されると、ディスクがターンテーブル3の上から外に排出される。
【0018】
なお、ローディング・イジェクトモータ16から搬送ローラ10までの各部品は筐体の内側に収容されている。その筐体には、搬送ローラ10の近傍において挿入口が形成され、その挿入口からディスクを挿入することになる。
【0019】
シャーシ2には、制御部としての制御回路基板21が取り付けられているが、この制御回路基板21はディスクプレイヤーの制御回路も兼ねている。図2に示すように、この制御回路基板21は、スピンドルモータ4、モータ8及びローディング・イジェクトモータ16を制御するものである。
【0020】
また、ピックアップ6には温度センサ20が取り付けられている。この温度センサ20はサーミスタ又は熱電対であり、測定温度に応じたレベルの信号を制御回路基板21に出力するものである。なお、温度センサ20は、ディスクプレイヤー30の内部に取り付けられているのであれば、制御回路基板21に取り付けられていても良いし、シャーシ2に取り付けられていても良いが、ターンテーブル3に載置されたディスクを温度センサ20によって測定できるように、そのディスクの近傍に設けられているのが望ましい。
【0021】
このディスクプレイヤー30の筐体には、ディスクを排出するために操作するイジェクトスイッチ22と、閾値温度を設定するための温度設定ツマミ23とが設けられている。イジェクトスイッチ22は操作されるとハイレベルの信号を制御回路基板21に出力するものである。温度設定ツマミ23は、設定された閾値温度に応じたレベルの信号を制御回路基板21に出力するものである。
【0022】
また、このディスクプレイヤー30には、報知器24が設けられている。この報知器24は、発光ダイオード、エレクトロルミネッセンス素子、蛍光管等のように光を発する発光素子であっても良いし、スピーカ等のように音を発する電気音響変換器であっても良いし、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電光掲示装置等のように表示を行う表示デバイスであっても良い。この報知器24は、制御回路基板21によって作動されることによって、光若しくは音を発するか又は表示を行う。
【0023】
このディスクプレイヤー30においては、ユーザがディスクを挿入すると、制御回路基板21によってローディング・イジェクトモータ16が作動され、回転する搬送ローラ10によってディスクがターンテーブル3にまで搬送される。
【0024】
ディスクがローディングされた状態では、制御回路基板21がスピンドルモータ4及びモータ8を駆動することによって、ターンテーブル3が回転しつつ、ピックアップ6がディスクの半径方向に移動する。これにより、ディスクの情報が読み取られて再生される。
【0025】
ディスクがローディングされた状態において、ユーザがイジェクトスイッチ22を操作すると、イジェクトスイッチ22からハイレベルの信号が制御回路基板21に出力される。ここで、制御回路基板21には、測定温度に従ったレベルの信号が温度センサ20から入力されているとともに、閾値温度に従ったレベルの信号が温度設定ツマミ23から入力されており、温度センサ20によって測定された測定温度が温度設定ツマミ23によって設定された閾値温度をよりも高いか否かが制御回路基板21によって判定される。
【0026】
温度センサ20の測定温度が温度設定ツマミ23の閾値温度以下である場合には、制御回路基板21がローディング・イジェクトモータ16を作動させ、回転する搬送ローラ10によってディスクが排出される。
【0027】
一方、温度センサ20の測定温度が温度設定ツマミ23の閾値温度よりも高い場合には、制御回路基板21がローディング・イジェクトモータ16の作動を禁止し、報知器24を作動させる。これにより、報知器24が光若しくは音を発するか、表示を行う。これにより、内部の温度、特にディスクの温度が高温である旨がユーザに報知される。なお、報知器24による表示内容としては、「ディスクが高温です。」といったものが挙げられる。
【0028】
報知器24によって報知が行われてから所定時間が経過するまでの間に、ユーザが再びイジェクトスイッチ22を操作すると、制御回路基板21がローディング・イジェクトモータ16を作動させ、回転する搬送ローラ10によってディスクが排出される。一方、報知器24によって報知が行われてから所定時間が経過するまでの間に、ユーザがイジェクトスイッチ22を操作しなかったら、制御回路基板21がスピンドルモータ4及びモータ8を駆動することによって、ディスクが再生される。
【0029】
以上のように、本実施の形態では、ディスクプレイヤー30内にあるディスクがピックアップ6、制御回路基板21、スピンドルモータ4、モータ8等によって加熱されて高温になることがあるが、ディスクプレイヤー30内に温度センサ20が設けられているので、ディスクプレイヤー30内のディスクの温度管理がなされ、そのような高温なディスクが排出されない。
【0030】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【0031】
温度設定ツマミ23を操作することによって閾値温度を増減することができるが、温度設定ツマミ23を設けずに、閾値温度が或る一定の値(例えば、80℃)に固定されていても良い。この場合、制御回路基板21は、温度センサ20の測定温度を固定された閾値温度と比較することになる。
【0032】
また、上記実施形態では、温度センサ20の測定温度と比較する閾値温度が1つであるが、2つの異なる閾値温度を用いても良い。高い方の閾値温度を上閾値温度とし、低い方の閾値温度を下閾値温度とした場合、制御回路基板21は、温度センサ20の測定温度を上閾値温度及び下閾値温度と比較することになる。この場合、ユーザがイジェクトスイッチ22を操作した際に、温度センサ20の測定温度が上閾値温度よりも高い場合に制御回路基板21がローディング・イジェクトモータ16の作動を禁止し、報知器24を作動させることは、上記実施形態と同じであるが、更に温度センサ20の測定温度が下閾値温度よりも低い場合にも制御回路基板21がローディング・イジェクトモータ16の作動を禁止し、報知器24を作動させる。これにより、温度センサ20の測定温度が下閾値温度から上閾値温度までの範囲外である場合には、ディスクが排出されない。一方、ユーザがイジェクトスイッチ22を操作した際に、温度センサ20の測定温度が下閾値温度から上閾値温度の間である場合には、制御回路基板21がローディング・イジェクトモータ16を作動させる。イジェクトが行われずに報知器24の報知から所定時間が経過するまでの間に、ユーザが再びイジェクトスイッチ22を操作した場合には、制御回路基板21がローディング・イジェクトモータ16を作動させ、ユーザがイジェクトスイッチ22を操作しなかった場合には、制御回路基板21がスピンドルモータ4及びモータ8を駆動する。
なお、上閾値温度及び下閾値温度を温度設定ツマミによって増減可能としても良いし、或る一定の値(例えば、上閾値温度が80℃であり、下閾値温度が−30℃である。)に固定しても良い。
【0033】
また、ピックアップ6はディスクの種類に合わせて変更すれば良いが、例えば、ディスクの種類としては、光学的ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等がある。また、媒体の形状としてディスクを例に挙げたが、媒体の形状もディスクに限定されない。また、媒体がカートリッジに収容されてカートリッジごとローディング・イジェクトされるものとしても良い。
【0034】
また、媒体読取装置として光の照射によって読取を行うディスクプレイヤー30を例に挙げたが、電圧・電流を印加することで読取を行うリーダであっても良い。リーダである場合、媒体として小型ハードディスクドライブ(例えば、マイクロドライブ)、半導体記憶媒体(例えば、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード、SDカード、メモリスティック)が挙げられる。電気的に読取を行うリーダの場合、内部にコネクタが設けられ、媒体がユーザ等によってリーダの内部に挿入されると、媒体のコネクタがリーダのコネクタに嵌められ、リーダによって媒体に電圧・電流が印加されることで読取が行われる。このようなリーダにおいては、搬送機構は、コネクタに嵌められた媒体を押し出すことでコネクタから媒体を外して、リーダの外に媒体を搬送するものがある。その搬送機構を駆動する駆動部としてはモータ、直動モータ、電磁シリンダ等が挙げられる。温度センサはリーダの内部に設けられていれば良いが、その一例としてコネクタに設けられていることが好ましい。制御部は、制御回路基板21と同様に、イジェクトスイッチが操作された際に温度センサの測定温度が上閾値温度よりも高い場合に又は温度センサの測定温度が下閾値温度よりも低い場合に、駆動部の作動を禁止して、報知器を作動させる。一方、ユーザがイジェクトスイッチを操作した際に、温度センサの測定温度が下閾値温度から上閾値温度の間である場合には、制御部が駆動部を作動させる。媒体のイジェクトが行われずに報知器の報知から所定時間が経過するまでの間に、ユーザが再びイジェクトスイッチを操作した場合には、制御部が駆動部を作動させ、ユーザがイジェクトスイッチを操作しなかった場合には、リーダによって媒体の読取が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ローディング・イジェクト装置1を備えたディスクプレイヤー30の平面図である。
【図2】ローディング・イジェクト装置1のブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ローディング・イジェクト装置
10 搬送ローラ(搬送機構)
16 ローディング・イジェクトモータ16(駆動部)
21 制御回路基板(制御部)
22 イジェクトスイッチ
24 報知器
30 ディスクプレイヤー(媒体読取装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体読取装置内から媒体を排出するイジェクト装置において、
イジェクトスイッチと、
前記媒体読取装置内から外に媒体を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構を駆動する駆動部と、
前記媒体読取装置の内部に設けられた温度センサと、
前記イジェクトスイッチが操作された際に、前記温度センサにより測定された測定温度に基づき前記駆動部の作動を禁止する制御部と、を備えることを特徴とするイジェクト装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記イジェクトスイッチが操作された際に、前記温度センサにより測定された測定温度が閾値温度よりも高い場合に前記駆動部の作動を禁止することを特徴とする請求項1に記載のイジェクト装置。
【請求項3】
光若しくは音を発するか又は表示を行うことで報知を行う報知器を更に備え、
前記制御部は、前記イジェクトスイッチが操作された際に、前記温度センサにより測定された測定温度が閾値温度よりも高い場合に前記報知器を作動させることを特徴とする請求項2に記載のイジェクト装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記イジェクトスイッチが操作された際に、前記温度センサにより測定された測定温度が下閾値温度から上閾値温度までの温度範囲外である場合に前記駆動部の作動を禁止することを特徴とする請求項1に記載のイジェクト装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記イジェクトスイッチが再び操作された際に、前記駆動部を作動させることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のイジェクト装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−338772(P2006−338772A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161452(P2005−161452)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】