説明

イソシアネート官能基を有する化合物、その製造方法及び塗料の製造方法におけるその使用

2を超える平均官能価を示すイソシアネート官能基を有する本発明の化合物は、2を超える平均官能価を有する(ポリ)イソシアネートと、少なくとも1種の化合物Xであって少なくとも1個の官能基B(H)n又はB'(H)n(式中、nは1又は2に等しい数であり、n'は1、2又は3に等しい数であり、Hは不安定水素であり、Bは、O、S、N(Nは第一窒素又は第二窒素である)、−C(=O)−O、−C(=O)−N又は次の基:O=P(O)2;O=P(O)OR1;O=P(O)3;O=P(O)2OR1;O=P(O)−OR1(式中、R1は、アルキル又はアラルキル基を表す)を表し、B'は−SiR234を表し、ここで、R2、R3及びR4は、酸素、(ポリ)イソシアネートと反応する官能基を有するアルキル基又はアラルキル、アリール、−O−アルキル若しくは−O−アラルキル基を表す。)を有するものとの反応によって得られ、Xは、さらに、脂環式化合物、芳香族化合物若しくは複素環式化合物又は架橋重合体粒子であるが、ただし、Bが第二窒素を表しかつXが脂環式化合物である場合には、Xは少なくとも2個の環を有する化合物であり;しかも、上記反応が多くとも50%の化合物X/[化合物X+(ポリ)イソシアネート] 重量比で実施されることを条件とする。また、本発明は、少なくとも1種の上記タイプの化合物を含む硬化剤型組成物に関するものである。本発明の化合物又は組成物は、ペイント又はワニス型塗料の製造の際に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート官能基を有する化合物、その製造方法及び特にペイント又はワニス型の、特に金属基材用の塗料の製造方法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業及び航空産業の分野では、高品質の完成品をもたらす、使用条件の改善された技術的に非常に進歩した塗料組成物がますます必要となっている。
【0003】
このタイプの組成物としては、2種成分であって、その一方がポリイソシアネート型の硬化剤であり、他方が塗料に必要な添加剤をさらに含むポリオール型の樹脂であるものを有するポリウレタン処方物が挙げられる。これらの成分は、保存のために分離された2個の容器内で処方され、そして、これらのものは、ポリイソシアネートとポリオールとの架橋反応を実施するために塗料の製造時に混合される。
【0004】
生産量を増加させるため、特に、ペイント吹付室でペイントされる車両の回転率を上げるために、一層迅速に乾燥するペイント処方物に対する要求がある。実際には、乾燥は2つの事象を伴う。まず第一に、化学的事象がある。これは、ポリウレタンネットワークの形成であり、かつ、本質的には硬化剤とポリオールとの化学反応によるウレタン共有結合の形成の結果である。次に、物理的事象がある。これは、塗料の硬化速度によって反映される。この乾燥は、物理的な意味で、使用する成分の具体的性質、特にこれらのガラス転移温度(Tg)に関連がある。
【0005】
乾燥速度を増加させるための望ましい既知の解決手段は、一般的にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を主成分とする脂肪族ポリイソシアネート硬化剤に、特にイソホロンジイソシアネート(IPDI)、例えばイソホロンジイソシアネート三量体(IPDT)を主成分とする所定量の脂環式ポリイソシアネートを添加することである。しかしながら、これらのIPDI系ポリイソシアネート硬化剤は、HDIを主体とする脂肪族構造を有するポリイソシアネートのイソシアネート官能基よりも著しく反応性の低いイソシアネート官能基を有する。一方、「物理的」乾燥が促進される場合には、この化学的架橋プロセスは、著しく減速する。
【0006】
このようにして得られた塗料中に未反応のイソシアネート官能基が存在すると、研磨及び仕上げ操作中に塗料が可塑化する。塗料は劣化し、実際にはペイントの薄膜がさらに分離し、それによって修復が必要な欠陥が生じる。
【0007】
さらに、これらの塗料を湿った条件に極めて素早くさらすと、未反応のイソシアネート官能基と水との反応により灰色がかった白色の染みが出現するが、これはまた修復が必要になる。
【0008】
こうしてもたらされる課題は、塗料の特性を保持しつつ乾燥を加速させるというものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、イソシアネート官能基の良好な反応性を維持しつつ乾燥速度を増加させることが可能な化合物、すなわち、上記の課題を解決することが可能な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的で、本発明は、2を超える平均官能価を有する(ポリ)イソシアネートと少なくとも1種の化合物Xとの反応によって得られる、2を超える平均官能価を示すイソシアネート官能基を有する化合物であって、該化合物Xが
・少なくとも1個の官能基B(H)n
(式中:
nは1又は2に等しい数であり、
Hは不安定水素であり、
Bは、O、S、N(Nは第一窒素又は第二窒素である)、−C(=O)−O、−C(=O)−N又は次の基
【化1】

(式中、R1は、分岐していてもよいアルキル若しくはアラルキル基又はヘテロ原子で中断されたアルキル鎖を表す。)
を表す。)か、又は
・少なくとも1個の官能基B'(H)n'
(式中:
n'は1、2又は3に等しい数であり、
Hは不安定水素であり、
B'は−SiR234を表し、ここで、R2、R3及びR4は、酸素、(ポリ)イソシアネートと反応する官能基を有するアルキル基又はアラルキル、アリール、−O−アルキル若しくは−O−アラルキル基を表し、R2、R3及びR4基の数は、n'が実際に上記条件を満たすことができるものである。)
のいずれかを有し、
Xは、さらに、脂環式化合物、芳香族化合物若しくは複素環式化合物又は架橋重合体粒子であるが、ただし、
・Bが第二窒素を表しかつXが脂環式化合物である場合には、Xは少なくとも2個の環を有する化合物であり;
・しかも、上記反応が多くとも50%の化合物X/[化合物X+(ポリ)イソシアネート]重量比で実施されること
を条件とする、前記化合物に関するものである。
【0011】
また、本発明は、硬化剤型の組成物であって、上記タイプの少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とするものに関するものでもある。
【0012】
本発明の特徴、詳細及び利点は、次の詳細な説明及び例示を目的とした様々な具体的かつ非限定的な実施例を読めば、さらに完全に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下の説明において、特に示さない限り、与える値の範囲には限界値が含まれるものとする。
【0014】
本発明の化合物はイソシアネート官能基を有する。すなわち、当該化合物は、その構造内にイソシアネート官能基を有し、また、このものは、さらに、ウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、エステル又はカーボネート型の官能基を有することができる。
【0015】
さらに、この化合物は、2を超える平均官能価、より具体的には少なくとも2.5、さらに具体的には少なくとも2.8の平均官能価を有する。好ましい実施形態によれば、この平均官能価は、少なくとも3、より具体的には少なくとも3.2、さらに好ましくは少なくとも3.5であることができる。この平均官能価は、一般に、多くとも20、より具体的には多くとも15、さらに具体的には多くとも10である。
【0016】
この化合物について、ここで及びこの詳細な説明の終わりまで、イソシアネート官能基についての「平均官能価」という用語は、数r:
r=Mn×[I]
(式中、Mnはイソシアネート官能基を有する化合物の数平均モル質量であり、[I]はmol/gで表されるイソシアネート官能基の濃度である。)
を意味するものとする。
【0017】
この質量Mnは、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される。
【0018】
本発明の化合物は、上記の少なくとも1種の化合物Xと(ポリ)イソシアネートとの反応生成物である。しかして、本発明は、(ポリ)イソシアネートを数種の化合物Xの混合物と反応させる場合にも適用されることを理解すべきである。
【0019】
上記のように、化合物Xは、いくつかの特徴を示さなければならない。
このものは、まず第一に、少なくとも1個の官能基B(H)n又はB’(H)n'(式中、Hは不安定水素であり、Bは様々な原子又は原子の基を表す。)を有しなければならない。
【0020】
例えば、BはOを表すことができるが、この場合には、官能基BHはOHである;Sを表す場合には、官能基SHに相当する;第一窒素又は第二窒素(すなわち窒素原子がそれぞれ2個の水素原子又は1個の水素原子を保有するもの)であるNを表す場合には、それぞれ官能基NH2又はNHに相当するが、ここで、BはC(=O)−N基であることも可能であり、これは、BHについて官能基C(=O)−NH又はC(=O)−NH2又はC(=O)−NHR’(R’は、一般に1〜10個の炭素原子の、分岐していてよいアルキル鎖又はアリール鎖である。)に相当する。ここで言及するBの値は、本発明の好ましい実施形態に相当する。
【0021】
さらに、上記のように、Bは燐を含む基を表すことができるが、この場合には、化合物Xは、例えば、次式の化合物である:
【化2】

(式中、X’は化合物Xの残基であり、R1は上で定義したとおりであり、ここで、アルキル又はアラルキル基は、より具体的には多くとも20個の炭素原子、特に1〜10個の炭素原子を有するものであると特定される。)。R1がヘテロ原子で中断されたアルキル鎖を表す場合には、この鎖は、一般に多くとも60、より具体的には多くとも40、さらに具体的には多くとも35である炭素数を有する。これと同じ場合において、ヘテロ原子は、より具体的には酸素であることができ、ヘテロ原子数は、好ましくは1〜20の間である。この段落で定義したB基は、水性相組成物に本発明の化合物を使用する場合に有利である。
【0022】
最後に、本発明は、勿論、Xが数個の官能基B(H)n又はB’(H)n'(ここで、これらの官能基は同一でも異なっていてもよい。)を有する場合に適用されることに留意すべきである。
【0023】
この化合物Xは、より具体的には1以上の平均官能価、例えば、1〜10、より具体的には1〜5、有利には1〜3であることができる平均官能価を有する。
【0024】
化合物Xのこの平均官能価は、数r’によって与えられる:
r’=M/n×[B(H)n]又はr’=M’n×[B'(H)n'
(式中、M'nは化合物Xの数平均モル質量であり、[B(H)n]及び[B'(H)n']は、mol/gで表される、官能基B(H)n及びB’(H)n'のそれぞれの濃度を表す。質量M’nは、ゲル透過クロマトグラフィーによって決定される。官能基B(H)n又はB'(H)n'の濃度は、BがN、−C(=O)−O、−C(=O)−N及び上記燐含有基である官能基の場合には直接電位差測定法によって、又は他の官能基については、官能基B(H)n又はB’(H)n'と無水酢酸とを反応させ、次いで解離した酢酸を逆滴定することからなる間接的な方法によって算出される。また、NMRのような分析方法を使用してこの濃度を決定することもできる。
【0025】
化合物Xは、さらに、脂環式、芳香族又は複素環式構造を有する有機化合物である。化合物Xの構造を構成する環は、互いに縮合したり脂肪族鎖や単純な結合を介して互いに結合したりすることができる。これは、上記のように、Bが第二窒素を表す場合である。脂肪族鎖の場合には、当該脂肪族鎖は、好ましくは、短くかつ分岐していてよい、例えば多くとも15個の炭素原子、特に多くとも10個の炭素原子、より具体的には多くとも6個の炭素原子、さらに具体的には多くとも4個の炭素原子の鎖である。これらの環は、分岐していてよい、例えば多くとも10個の炭素原子、特に多くとも6個の炭素原子、より具体的には多くとも4個の炭素原子、さらに具体的には多くとも2個の炭素原子の鎖であるアルキル短鎖を含むことができる。また、この環は二環式であることもできる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物Xは、少なくとも2個の環、より具体的には少なくとも3個の環を有する。化合物Xの混合物を使用する場合には、これらの化合物の少なくとも1種が少なくとも2個の環を有する化合物であることが好ましい。
【0027】
最後に、このものは、架橋重合体をベースとする粒子の形態の化合物であることができる。
【0028】
化合物Xの選択については、好ましくは強固な構造を有する化合物が選択されるであろう。この用語は、障害構造又は立体配座の移動度の減少した構造又は高い結晶化度をさらにもたらし得る強力な分子間若しくは分子内結合を生じさせることができる構造を意味し、また架橋構造をも意味し、或いは、最後に、高い融点又は高いTg値、例えば少なくとも0℃、より具体的には少なくとも20℃、さらに具体的には少なくとも40℃のTgを有する化合物を意味するものとする。
【0029】
上に与えた意味の範囲内での強固な構造を有するために、官能基B(H)n又はB'(H)n'の少なくとも一方、好ましくは全てが化合物Xの環の炭素に直接結合した化合物Xを特に使用することができる。これらの生成物は、(ポリ)イソシアネートとの反応後に、立体配座の移動度の減少した構造を与える。特定の実施形態によれば、Xが単一の環のみを有する場合に、官能基B(H)n又はB’(H)n'[E8/37参照]は、この環の炭素に直接結合する。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、官能基B(H)nはOH官能基である。この場合には、第二OH官能基を有する化合物又は第一(ただし障害)OH官能基を有する化合物が好ましい。用語「障害」とは、所定の官能基であって、その炭素が、OH官能基に対してβ位で分岐し、かつ、少なくとも1個の炭素原子を有する少なくとも1個のアルキル基を保持するものを意味するものとする。このような場合の例としては、ネオペンチル又はイソブチル構造が挙げられる。
【0031】
例えば、化合物Xはジオールから選択できる。本発明を実施するのに特に好適なジオール型の化合物の例を以下に述べる。
【0032】
例えば、化合物Xは、置換されていてよいビスフェノール、特にA及びF並びにそれらの水素化誘導体から選択できる。特に、水素化ビスフェノールAが挙げられる。
【0033】
ビスフェノールのエーテル架橋を有するポリフェノール誘導体も挙げられる。この用語は、式(1)又は(1')の物質:
【化3】

(式中、BPはビスフェノール基の残基を表し、Φはベンゼン核であり、R5は直鎖又は分岐アルキル基であり、R'5はC1〜C5アルキル基、例えばメチルであり、n及びmは整数であるが、ただし、nは、好ましくは、当該生成物において強固な構造を保持するためには低い値、例えば、多くとも5、好ましくは多くとも3の値を有することが必要であり、また、mは、例えば1〜10であることが可能である。)
【0034】
また、これらのフェノール系物質の水素化誘導体も使用できる。
【0035】
また、OH官能基を有する化合物Xとしては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエンの誘導体であって、前者のもの、例えばジシクロペンタジエンをヒドロホルミル化反応させ、次いで水素化させて対応する多環式アルコールを得ることによって得られ得るもの又はテルペン類の誘導体、例えばテルペニルシクロヘキサノール、並びにテルペン系列の誘導体、例えば、イソボルニル、イソカンフィル及びイソフェンチルも挙げられる。これらのノルボルナジエン誘導体の例としては、5−エチリデン−2−ノルボルネン又はリモネンが挙げられる。
【0036】
OH官能基を有するシクロアルカン、より具体的にはシクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロヘキシルメタノール又はテルペニルシクロヘキサノール若しくはイソボルニルシクロヘキサノールの誘導体が使用でき、縮合三環式化合物についてはアダマンタンの誘導体が使用でき、或いは縮合二環式化合物のなかではデカリンジオールが使用できる。
【0037】
さらに、カルボン酸とブロック化ヒドロキシル官能基を有する化合物との反応生成物も化合物Xとして本発明に好適である。用語「ブロック化ヒドロキシル官能基を有する化合物」とは、エポキシ若しくはカーボネート官能基を有する化合物(後者の場合には、好ましくは環状カーボネート官能基、例えばグリセリンカーボネート)又はジオキソラン官能基を有する化合物を意味するものとする。後者の官能基について、化合物としては、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールが挙げられる。ここで関係のある反応は、ブロック化ヒドロキシル官能基とカルボキシル官能基とのエステル化又はヒドロキシル官能基の脱離に伴うブロック化ヒドロキシル官能基の開環による反応のいずれかであることができる。後者の場合については、より具体的には、カルボン酸とエポキシ官能基を有する化合物との反応が挙げられる。
【0038】
カルボン酸は、特に、式:R4COOH(式中、R4は脂肪族、環状、多環式、芳香族又は複素環式基であって、分岐していてよい又は置換されていてよいものである。)の酸であることができる。
【0039】
エポキシ官能基を有する化合物は、脂肪族、脂環式又は複素環式であることができ、かつ、カルボキシル官能基(エステル又はアミド官能基)から誘導される少なくとも1個の官能基を有することができる。これらの化合物は、分岐していてよいアルキル鎖である置換基を随意に保持することができる。少なくとも1個の環を有するエポキシ化合物が好ましい。
【0040】
例として、カルボン酸については、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、2,2,2−トリメチル酢(ピバリン)酸、安息香酸、シクロヘキサン酸、テレフタル酸、フタル酸又はシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0041】
さらに例として、エポキシ化合物については、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン及びその誘導体、シクロヘキセンオキシド、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン(二環式構造)、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸メチル又は1,3−ジメチルプロパン−1,3−ジオールビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)が挙げられる。
【0042】
また、OH官能基を有する化合物Xとしては、エポキシ官能基を有する化合物と、式(2):(O)P(OR6)(OR7)(OR8)(式中、R6、R7及びR8は同一のもの又は異なるものであり、水素、直鎖又は分岐アルキル基であって特に1〜25個の炭素原子を有するもの、脂環式基、芳香族基、アラルキル基又はポリオキシアルキレン鎖であって、その直鎖又は分岐オキシアルキレン単位数が1〜25であり、かつ、そのアルキレン鎖の炭素数が2〜6であるものを示し、ここで、このポリオキシアルキレン鎖は、好ましくはその末端官能基が線状若しくは分岐の好ましくはC1〜C20アルキル鎖又は分岐していてよいアラルキル鎖で置換されていてよく、その炭素数は7〜20であることができるが、ただし、式(2)において、R6、R7及びR8の少なくとも一つは水素原子であるものとする。)のホスフェートとの反応の生成物を使用することもできる。式(2)の化合物については、環を有するものが好ましい。
【0043】
また、化合物Xとしては、エポキシ官能基を有する化合物と、式(3)
9−[−O−CH2−CH2−O−]p−NH2又は式(3’)
【化4】

又は式(4)
9−[−O−CH2−CH2−O−]q−CH(CH3)−CH2−NH2
(式中、R9は、水素、アルキル基、特にC1〜C4アルキル基、又はCH2CH2NH2若しくはCH2CH(CH3)NH2基であり、R'9は、アルキル基、特にC1〜C4アルキル基であり、p及びqは2〜10の整数、好ましくは2〜5の整数である。)のポリアミノエーテルとの反応生成物;又はエポキシ官能基を有する化合物とモルホリン若しくは後者の誘導体との反応生成物も使用することができる。
【0044】
上記のように、本発明の化合物は、上記のような化合物Xと2を超える平均官能価を有する(ポリ)イソシアネートとの反応によって得られる。
【0045】
用語「2を超える平均官能価を有する(ポリ)イソシアネート」とは、少なくとも1個のイソシアヌレート環、1個のビウレット単位、1個のアロファネート官能基又は1個のアシル尿素官能基を有する化合物を意味するものとする。また、これは、少なくとも1個のウレチジンジオン環を有する化合物及びイソシアヌレートの異性体、例えばイミノオキサジアジンジオンをも意味するものとする。これらの化合物は、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、芳香族及び複素環式イソシアネート単量体から選択される単量体、特に、これらのうち、ジイソシアネート及びトリイソシアネートから選択される単量体のホモ縮合又はヘテロ縮合によって得ることができる。
【0046】
脂肪族及び脂環式イソシアネートの例としては次のものが挙げられるが、それらに限定されない:
・1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、
・1,12−ドデカンジイソシアネート、
・1,3−シクロブタンジイソシアネート、
・1,3−及び/又は1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、
・1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル-5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、
・イソシアナトメチルジイソシアネート、特に4−イソシアナトメチル−1,8−ジイソシアネート(TTI)、
・2,4−及び/又は2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート(H6TDI)、
・ヘキサヒドロ−1,3−及び/又は−1,4−フェニレンジイソシアネート、
・ペルヒドロ−2,4'−及び/又は−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、
並びに、一般に、芳香族先駆物質、アミン類又はカルバメートの水素化生成物、
・ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(特に1,3−及び1,4−)(BIC)、
・ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、
・2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(MPDI)、
・テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、
・リシンジ又はトリイソシアネート(LDI又はLTI)のエステル、
・トリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル-1,8−オクタメチレンジイソシアネート。
【0047】
芳香族イソシアネートの例としては次のものが挙げられるが、それらに限定されない:
・2,4−及び/又は2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、
・2,4'−及び/又は4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、
・1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、
・4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、及び
・MDI又はTDIのオリゴマー。
【0048】
ただし、芳香族誘導体を限られた量でのみ使用することが好ましい。というのは、これらのものは、老化中に、特に紫外線、例えば太陽紫外線に曝された場合には変色を受け得る被膜を生じさせ得るからである。この理由のため、脂肪族誘導体及び脂環式誘導体であってそのNCO官能基の少なくとも一方、好ましくはそのNCO官能基の両方がその脂肪族環には直接グラフトしていないものが、一般に好ましい。
【0049】
後で示すが、好適な親水性化添加剤をグラフトさせることによってさらに親水性にされる、上で定義したような(ポリ)イソシアネートを使用することも可能である。
【0050】
特に、本発明では、少なくとも2.5の平均官能価、より好ましくはさらに少なくとも3の平均官能価を有する(ポリ)イソシアネートを使用する。一般に、平均官能価は、多くとも30、より具体的には多くとも15、さらに具体的には多くとも10であり;例えば、これは3〜6であることができる。
【0051】
(ポリ)イソシアネートは上記単量体との混合物として使用できるが、ただし、この場合には、単量体の含有量は多くとも50%、特に多くとも30%、より具体的には多くとも20%、さらに具体的には多くとも10%である。
【0052】
低粘度の(ポリ)イソシアネート、すなわち、多くとも40000mPa.s、より具体的には多くとも20000mPa.s、さらに具体的には多くとも10000mPa.s、好ましくは多くとも5000mPa.s、さらに好ましくは多くとも2500mPa.sの粘度を有するものを使用するのも好ましい。この粘度は、25℃において100%固形分で実行された測定に対応するものである。
【0053】
本発明のイソシアネート官能基を有する化合物は、化合物Xと上記のタイプの(ポリ)イソシアネートとを反応させることによって得られる。
【0054】
この反応は、多くとも50%の化合物X/[化合物X+(ポリ)イソシアネート]重量比で実施される。この比は、特に、多くとも40%、より具体的には多くとも25%、さらに具体的には多くとも20%であることができる。一般に、これは、少なくとも1%、より具体的には少なくとも2%、さらに具体的には少なくとも5%である。
【0055】
化合物Xの官能価及び(ポリ)イソシアネートの官能価のそれぞれの値は、反応の終了時に、処方できるものでなければならない、すなわち所望の適用条件下で使用できるものでなければならない化合物が得られるような方法で選択される。用語「処方できるもの」とは、一般に、70%固形分及び25℃で、多くとも20000mPa.s、より具体的には多くとも10000mPa.s、好ましくは多くとも6000mPa.sの粘度を示す物質を意味するものとする。この値は単なる例示としてここに与えており、またこれは限定するものとみなすことができないことが、明らかに理解されるであろう。
【0056】
ここで、化合物Xと(ポリ)イソシアネートとの反応を実施することができる条件を詳細に説明する。
【0057】
一般に、この方法は、B(H)n/NCOモル比が1〜50%、好ましくは2〜30%、有利には3〜25%であるような方法で実施される。これらの比は、当業者により、その分子量、関連する物質それぞれの官能価及び得ることが望まれる化合物に応じて選択される。
【0058】
また、一般に、本発明の化合物の合成は、20〜200℃の温度、好ましくは25〜150℃の温度の温度でイソシアネート官能基と官能基B(H)nとを従来通り反応させることに従って実施される。場合によっては、触媒を添加することができる;一般に、これらの触媒は、ルイス酸活性を有する有機金属化合物である。つまり、錫誘導体、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジルコニウム若しくはアルミニウムアセチルアセトン又はビスマスアシレート(アセテート、オクトエートなど)が挙げられるが、この触媒の例挙は限定ではない。
【0059】
本発明の化合物を得るのに使用される触媒の量は、(ポリ)イソシアネートの量に対して、0〜1000ppm、有利には0〜500ppm、さらに好ましくは0〜250ppmであることができる。
【0060】
この合成は、得られる最終化合物の粘度に応じて、そのままで又は溶媒中で実施される。この合成のための溶媒は、一般に、エステル類、例えば、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、芳香族溶媒、例えば、Solvesso 100又はケトン類、例えばメチルイソブチルケトンから選択される。
【0061】
反応媒体から微量の残留水を除去するために、化合物X及び上記合成用溶媒を蒸留することが可能であることに留意すべきである。
【0062】
ここで、一般的な事項を上に与えたので、当該化合物の合成について、製造するのが望まれるイソシアネート官能基を有する化合物のタイプに従って詳細に説明する。以後の説明において、消費されるイソシアネート官能基のレベルは、%として表し、かつ、次式に相当するものとする:
(L NCO出発−L NCO終了/L NCO出発)×100
ここで、L NCO出発は、出発反応混合物におけるイソシアネート官能基の検定値を表し、L NCO終了は、反応混合物におけるイソシアネート官能基の測定時点での検定値を表す。
【0063】
消費されるイソシアネート官能基のレベルは、N,N−ジブチルアミン(DBA)による定量法である基準法NF T 52−132に従って測定される。
【0064】
この定量から、出発イソシアネート化合物の転化率を推定することも可能である。このイソシアネート化合物のイソシアネート官能基が反応中に転化すると、このイソシアネートの分子も消費される。例えば、ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート単量体については、イソシアネートの転化率は、イソシアネート官能基の検定で得られた値のほぼ2倍に相当する。
【0065】
イソシアネート官能基だけでなくウレタン官能基も有する本発明に従う化合物の場合には、その製造方法は、次の工程を含む:
(a)(ポリ)イソシアネート又はその混合物を撹拌装置及び監視装置を備えた反応器に導入し;
(b)随意に溶媒を添加し;
(c)該(ポリ)イソシアネート又は(ポリ)イソシアネートの混合物に、化合物X又はB(H)n官能基を有する化合物Xの混合物を添加し、ここで、B(H)nは、この場合(イソシアネート/ウレタン官能基を有する化合物の製造)には、OH官能基であり;
(d)該反応混合物を不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンの流れ下に置き;
(e)随意に、当該混合物に反応添加剤、例えば亜燐酸トリアルキル若しくは亜燐酸トリアリール型の酸化防止剤若しくは安定化剤又はヒンダードフェノール系芳香族化合物、例えば2,6−ジ(t−ブチル)フェノール或いはこれらの化合物のオリゴマー誘導体を添加し;
(f)イソシアネート官能基の転化度が反応により官能基B(H)nのモル量に等しくなるまで80〜130℃の温度で反応させ;すなわち、この場合(ウレタン結合の形成)には、消費されるイソシアネート官能基の量は、官能基B(H)nのモル量の少なくとも90%に等しく、好ましくはこの量の95%を超え、さらに好ましくは導入された官能基B(H)nの全量に等しいであろう;
(g)所定の転化度が達成されたら、生成物を回収する。
【0066】
イソシアネート官能基だけでなくアロファネート官能基も有する本発明に従う化合物の場合には、この製造方法は、ここでもOH官能基を有する化合物X(又は化合物Xの混合物)を使用する。
【0067】
この方法は、上記工程(a)〜(e)を含み、また、工程(d)の後に、ルイス酸触媒(ジブチル錫ジラウレート又はジルコニウムアセチルアセトネート)を上で示した量で添加する工程も含む。
【0068】
この方法は、イソシアネート官能基の転化度が反応により官能基B(H)nのモル量の約2倍に等しくなるまで100〜150℃の温度で実施する反応工程(f)をさらに含む。これは、アロファネート官能基を有する化合物がイソシアネート官能基を有する化合物とウレタン官能基を有する化合物との反応生成物であるためであり、ここで、ウレタン官能基を有する化合物は、それ自体、イソシアネート官能基を有する化合物とヒドロキシル官能基を有する化合物との反応生成物である。アロファネートへの転化を得るためには、例えば、理論的には1モルのOH官能基当たり2モルのイソシアネート官能基が消費されるが、実際には、当該反応は、少なくとも1モルに等しい、及び1〜2モルのイソシアネート官能基の量を消費するように実施されるが、ただし、この事案は、化合物Xについて得ることが望まれる特性による。
【0069】
尿素官能基をさらに含むイソシアネート官能基を有する化合物の合成は、B(H)nが 第一アミン又は第二アミンのいずれかである化合物Xを伴う。この製造方法は、イソシアネート官能基及びウレタン官能基を有する化合物の合成と同じ方法で行うが、ただし、その反応温度は周囲温度〜80℃であるものとする。この反応は、特定の触媒を必要としない。当該反応を、イソシアネート官能基の転化度が反応により官能基B(H)n(この場合には、第一又は第二アミン)のモル量と等しくなったときに停止させる。すなわち、尿素結合を形成させるこの場合には、消費されるイソシアネート官能基の量は、官能基B(H)n又はB'(H)n'のモル量の少なくとも90%に等しく、好ましくはこの量の少なくとも95%に等しく、さらに好ましくは導入された官能基B(H)nの全量に等しいであろう。
【0070】
ビウレット官能基をさらに含むイソシアネート官能基を有するポリイソシアネート化合物の合成は、B(H)nが第一アミン又は第二アミンのいずれかである化合物Xを伴う。この合成は、イソシアネート官能基及びウレタン官能基を有する化合物の合成と同じ方法で実施されるが、ただし、その反応温度は100〜150℃の間であるものとする。この反応は、酸化合物、例えばプロピオン酸又は燐酸ジアルキルの添加により触媒できる。ビウレット化合物は、イソシアネート化合物と尿素官能基を有する化合物との反応生成物であり、尿素官能基を有する化合物は、それ自体、イソシアネート官能基を有する化合物とアミンとの反応生成物である。ビウレットへの転化を得るためには、例えば、理論上1モルのアミン官能基当たり2モルのイソシアネート官能基が消費され、実際に、この反応は、少なくとも1モルに等しく、また1〜2モルの間のイソシアネート官能基の量を消費するように実施されるが、ただし、この事案は、化合物Xについて得ることが望まれる特性による。
【0071】
官能基B(H)nがSH官能基である化合物Xの場合には、イソシアネート官能基及びウレタン官能基を有する化合物を得るために説明したのと同一のタイプの方法が使用されるであろう。イソシアネート官能基の消費は、当該反応をチオウレタン化合物の段階で停止する場合には、ウレタン官能基の消費と同一であろう。これは、チオアロファネート化合物を得ることが望まれる場合には、アロファネートプロセスのNCO官能基の転化度に対応するであろう。
【0072】
官能基B(H)nがアミド官能基である化合物Xに関して、その方法は、操作条件が100〜150℃の反応温度及びルイス酸触媒の随意の存在を除き、同一であろう。この反応は、イソシアネート官能基の転化度が、反応を生じさせることが望まれる官能基B(H)n(この場合には、第一又は第二アミド)のモル量に等しいときに停止させる。このアミド官能基は、イソシアネート官能基と酸官能基との反応によって生じ得る。
【0073】
異なる官能基B(H)n又はB'(H)n'を有する化合物Xの場合には、操作条件は、得るのが望まれる化合物に対して調節されるであろう。一般に、イソシアネート官能基を有する化合物と、化合物X型の不安定水素を有する化合物との反応についての条件は、当業者に周知であることに留意すべきであり、この主題については、一般的研究「Methoden der Organischen Chemie」,Houben Weyl,Georg Thieme Verlag 1983を参照されたい。
【0074】
説明してきた全ての場合において、当該化合物の構造は、既知の分析技術、例えば、赤外分光光度法又はプロトン若しくは炭素核磁気共鳴(NMR)分光法によって確認される。
【0075】
また、本発明は、硬化剤型の組成物又は処方物であって、上記のタイプのイソシアネート官能基を有する化合物又はこれらの化合物の混合物を含むことを特徴とするものに関するものでもある。この化合物は、硬化剤型組成物の唯一の成分であることができる;とはいえ、この組成物は、上に与えた意義の範囲内において(ポリ)イソシアネート又は(ポリ)イソシアネート混合物をさらに含むことができるが、この意義の範囲内とは、(ポリ)イソシアネートの主題に基づき、特にそれらの性質及びそれらの粘度について上記した全てのことがここでも当てはまることを意味するものである。この追加の(ポリ)イソシアネート又は(ポリ)イソシアネート混合物は、本発明のイソシアネート官能基を有する化合物の製造のために使用されるものとは異なってよい。この追加の(ポリ)イソシアネート又は(ポリ)イソシアネート混合物を添加すると、特に、その組成物の粘度及び/又はそのイソシアネート官能基の検定値を変化させることが可能になる。好ましくは、硬化剤型組成物中におけるイソシアネート官能基を有する化合物の含有量は、100%〜5%、より具体的には100%〜10%、さらに具体的には100%〜25%であり、この含有量は、硬化剤型組成物の総重量に対するイソシアネート官能基を有する化合物の重量として表される。
【0076】
本発明の硬化剤型組成物は、ペイント又はワニス型の塗料配合物に対し、その溶媒相又は水性相において使用できる。
【0077】
溶媒相において使用する場合であって、特に数日から数ヶ月の貯蔵中に安定であることが望ましいときには、非反応性溶媒を使用することが好ましい。例えば、このものは、次のタイプの溶媒であることができる:エステル(酢酸ブチル)、ケトン、アシル化若しくはジアルキル化グリコールエーテル又は置換芳香族溶媒、例えばキシレン。これらのものは、好ましくは少量の水を有するイソシアネート処方物に一般的な溶媒である。
【0078】
水性相において使用する場合には、その組成物は、これを乳化させることが可能な又はこれを分散性若しくは水溶性にすることが可能な添加剤を含むことができる。この場合、いくつかの実施形態及び選択形態が想起できる。
【0079】
第1の実施形態の場合には、硬化剤型組成物は非反応型の親水性添加剤を含む。すなわち、この添加剤は、この添加剤と当該組成物のイソシアネート官能基を有する化合物との間に反応を生じさせることなく、当該組成物との混合物として存在する。このタイプの添加剤としては、国際公開第WO97/31960号及び仏国特許第2855768−A1号(その教示については、これらを参照されたい)に記載されたものが挙げられる。これらの添加剤は、陰イオン性官能基、有利には、少なくとも1個、好ましくは少なくとも5個のエチレンオキシド単位のポリエチレングリコール鎖断片を有する。
【0080】
より具体的には、これらの添加剤のうち、以下のものが挙げられる:
【化5】

(ここで、qは0に等しい。)
【化6】

(ここで、
pはゼロ又は1〜2の整数(閉区間、すなわち限界値を含む)を示し;
mはゼロ又は1〜2の整数(閉区間、すなわち限界値を含む)を示し;
p+m+qの合計は多くとも3に等しく;
1+p+2m+qの合計は3又は5に等しく;
X及びX'は、同一のもの又は異なるものであり、多くとも2個の炭素結合を有するアームを表し;
n及びsは、同一のもの又は異なるものであり、 5〜30の間、有利には5〜25の間、好ましくは9〜20の間(閉区間、すなわち限界値を含む)で選択される整数を表し;
1及びR2は同一のもの又は異なるものであり、炭化水素基、有利には、特にハロゲン原子、特に弗素で置換されていてよいアリール及びアルキルから選択される炭化水素基を表す。)。
【0081】
第2の実施形態の場合には、硬化剤型組成物は、反応型の親水性添加剤を含む。すなわち、この添加剤は当該組成物中に存在するが、ただし、同時に当該組成物のイソシアネート官能基を有する化合物にグラフトする。そのため、この第2の実施形態の場合には、いくつかの選択形態が想起できる。
【0082】
第1の選択形態によれば、その選択は、上記の態様で(ポリ)イソシアネートと反応する特定の化合物X、すなわち親水性化合物Xに対してなされる。このタイプの化合物Xとしては、エポキシ官能基を有する化合物と式(2)のホスフェートとの反応によって生じるOH官能基を有するもの及びエポキシ官能基を有する化合物と上記式(3)又は(4)のポリアミノエーテルとの反応によって生じるものを使用することができる。後者の場合には、自己乳化可能な組成物又は、これが十分な程度にまで自己乳化可能でない場合には、当該組成物に上で記載したタイプの非反応性親水性添加剤をさらに添加することによって自己乳化を可能にすることができる組成物のいずれかが得られる。
【0083】
この第2の実施形態の別の選択形態によれば、グラフトした添加剤は、(ポリ)イソシアネート単独により導入できる。(ポリ)イソシアネートにグラフトできる添加剤としては、米国特許第4663377号(その教示を参照されたい)に言及されている親水性添加剤が挙げられる。このように処理された(ポリ)イソシアネートは、疎水性化合物Xと反応することができ、この場合には、自己乳化可能な組成物又は、これが十分な程度にまで自己乳化可能でない場合には、上記のような非反応型の親水性添加剤を添加することによって自己乳化を可能にすることができる組成物のいずれかが得られる。
【0084】
最後に、親水性添加剤とグラフトした(ポリ)イソシアネートと、それ自体親水性の化合物Xとを反応させて、同様に自己乳化可能な組成物を得ることや、当該自己乳化特性を上記のような態様で改善させることもできる組成物を得ることも可能である。
【0085】
また、本発明は、基材上の被膜の製造方法であって、上記のような硬化剤型の組成物と、ヒドロキシル、第一アミン及び第二アミン官能基並びにSH官能基から選択される可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保有する少なくとも1種の化合物又はヒドロキシル官能基を脱離させることができる先駆体官能基を有する化合物と混合させ、そして得られた混合物を該基材に塗布することを特徴とするものもカバーする。その後に架橋が起こる。
【0086】
これは、実際には、硬化剤と樹脂との反応によるポリウレタン系塗料の製造方法であり、当業者には周知の方法である。
【0087】
本発明の硬化性化合物の架橋は、大気湿度の作用により単独でも生じ得ることに留意すべきである。
【0088】
硬化剤型組成物と可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保有する化合物との上記混合は、溶媒の存在下で、また一般に及び当業者に周知の方法で、所望の特性に応じて有機又は無機添加剤、例えばレオロジー添加剤、溶媒、増粘剤、界面活性剤又は触媒の存在下で実施する。
【0089】
また、該混合物の形成中に、他の化合物、例えばアミノプラスト又はエポキシ樹脂を添加することも可能である。
【0090】
好ましくは、当該化合物は、ポリオール類から選択され、このものは単独で又は混合物として使用できる。これらのものは、有利には、アクリル、ポリエステル若しくはポリウレタン重合体又はこれらの重合体のブレンドであることができる。また、ポリエーテル類も挙げられるが、ただし、これらのものは好ましくはない。
【0091】
ヒドロキシル官能基を脱離させることができる先駆体官能基としては、エポキシ、カーボネート又はジオキソラン官能基が挙げられる。これらの先駆体官能基は、適切な求核分子、例えばアミン又は水と、随意に酸化合物又はルイス酸であることができる触媒の存在下に、例えば50〜5000ppm、より具体的には100〜500ppmであることができる量で(硬化剤組成物及び可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保有する化合物の固形分に対する触媒の重量として表される量)で反応させることによってヒドロキシル官能基を脱離させる。
【0092】
上記混合物を付着させたら、硬化剤型組成物と可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保有する化合物との反応を周囲温度で又は、より一般的には、30℃〜300℃の間、好ましくは40℃〜250℃の間、さらに好ましくは50℃〜150℃の間であることができる温度の加温条件下で実施することができる。この温度及び架橋時間は、基材に応じて調節される。感温性基材の場合には、架橋性触媒を使用する。
【0093】
基材は、アルミニウム又はスチール、特にステンレススチールから作られた金属基材であることができる。また、これは、プラスチック重合体から作られた基材であることもできる。この基材は、例えば、自動車の車体部材であることができる。また、この基材は、木材又は紙から作られた基材であることもできる。さらに、この基材は、ペイント又はワニス型の保護層を既に有することもできる。
【0094】
本発明の化合物は、乾燥促進特性を有する。この理由のため、本発明は、この化合物を乾燥促進剤として基材上の被膜の製造方法において使用することもカバーするが、ここで、この方法においては、該化合物を含む硬化剤型組成物と、ヒドロキシル、第一アミン及び第二アミン官能基並びにSH官能基から選択される、可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保有する化合物とを混合させ、そして、このようにして得られた混合物を基材に付着させる。
【0095】
勿論、可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保有する化合物、被膜の製造方法及び基材について上記したものがここでも適用される。
【0096】
さらに、本発明の化合物は、乾燥促進特性の他に、硬度及び耐化学性のような他の特性をさらに速やかに得ることを可能にすることに留意すべきである。つまり、このものは、特性に良好な折り合いをつけることができる;特に、このものは、可使時間の改善を示すこともできる。
【実施例】
【0097】
ここで、実施例を与える。
これらの実施例において使用した物質は次の通りである:
・Tolonate HDT LV2:ロディア社が販売する、イソシアヌレート系HDI系低粘度ポリイソシアネートであって、およそ22.5%のイソシアネート官能基含有量及び25℃でおよそ600+/−150mPa.sの粘度、およそ3.3のイソシアネート官能基の官能価を有するもの。
・Tolonate HDT:ロディア社が販売するイソシアヌレート系HDI系ポリイソシアネートであって、およそ22%のイソシアネート官能基含有量、25℃で2400+/−400mPa.sの粘度及びおよそ3.6のイソシアネート官能基の官能価を有するもの。
・Tolonate XFD90B:ロディア社が販売する、イソシアヌレートをベースとするHDI系ポリイソシアネートであって、およそ17.4%のイソシアネート官能基含有量及び25℃で2000+/−1000mPa.sの粘度を有するもの。
・Tolonate HDB:ロディア社が販売するビウレット系HDI系ポリイソシアネートであって、22重量%のイソシアネート官能基含有量、25℃で9000+/−2000mPa.sの粘度及び3.7の官能価を有するもの。
・Tolonate HDB LV:ロディア社が販売する低粘度のビウレット系HDI系ポリイソシアネートであって、およそ23.5%のイソシアネート官能基含有量、25℃で2000+/−500mPa.sの粘度及びおよそ3.5のイソシアネート官能基の官能価を有するもの。
・水素化ビスフェノールA:4,4'−イソプロピリデンジシクロヘキサノール(CAS RN:80−04−6)としても知られている分子量240gの2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(HBPA)であり、3個の炭素を含みかつ2個の第二ヒドロキシル官能基を有する分岐脂肪族鎖を介して2個の環が互いに結合したものから構成される、Maruzen社が販売する固形製品。OH官能価は2である。
・トリシクロデカンジメタノール(TCDM):セラニーズ社が販売する、異性体の粘稠な液体混合物であって、その化合物が、並んで配置した3個の環及び2個の第一ヒドロキシル官能基から構成されるもの。OH官能価は2である。
・Rhodiantal:イソボルニルシクロヘキサノール(IBCH):ロディア社が販売する異性体の粘稠な液体混合物であって、その化合物が、1個の炭素を有する脂肪族鎖を保有する並んで位置した2個の環と、単一の結合を介して他の2個の環に結合した、単一の第二ヒドロキシル官能基を有する1個環とを含む3個の環から構成されているもの。平均分子量は236.4gである。ヒドロキシル数は215〜235mgKOH/gである。
・酢酸n−ブチル:n−BuOAc。
・Joncryl SCX922:80%の固形分及び4.2%のOH含有量を有するアクリルポリオール
・Synocure 852BA80:80%の固形分及び4.1%のOH含有量を有するアクリルポリオール
・DBDL:ジブチル錫ジラウレート。
【0098】
例1
この例は、イソシアネート官能基を有しかつウレタン官能基をさらに有する本発明に従う化合物の製造に関するものである。
450.5gのTolonate HDT LV2、48.5gのHBPA(0.203mol)及び111.8gの酢酸n−ブチルを窒素流れ下で連続的に反応器に装入した。出発Tolonate HDT LV2のNCO検定値は、100g当たり0.537molである。HBPA/(HBPA+出発イソシアネート)比は9.72%である。
この混合物を120℃で3時間加熱する。NCO検定値は、出発Tolonate HDT LV2について100g当たり0.537molから、該反応の終了時に該反応混合物について0.331まで変化する。
酢酸n−ブチル中82%の固形分を有する本発明に従う化合物の処方物610.8gを回収する。
本発明に従う化合物の処方物のNCO検定値は、100g当たり0.33molである。その粘度は酢酸n−ブチル中82%の固形分について25℃で1305mPa.sである。
この生成物をゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により重合体ゲルカラムで溶離溶媒としてジクロロメタンを使用して分離し、赤外線で分析した。
GPCによって与えられる残留HDI単量体レベルは0.48%である。
NCO官能基の官能価は4である。
【0099】
例2及び3
これらの例は、イソシアネート官能基を有しかつウレタン官能基をさらに有する本発明に従う化合物の製造に関するものである。
この製造は、例1と同様に実施するが、ただし、操作条件及びHBPA/(出発ポリイソシアネート+HBPA)比を変更する。その結果を以下の表1に与えている。
【表1−1】

【0100】
例4
この例は、イソシアネート官能基を有しかつアロファネート官能基を含む本発明に従う化合物の製造に関するものである。
372.4gのTolonate HDT LV2及び27.4gのHBPA(0.114mol)を窒素流れ下で連続的に反応器に装入した。Tolonate HDT LV2に対して200ppmのジブチル錫ジラウレートを添加する。出発Tolonate HDT LV2のNCO検定値は、100g当たり0.55molである。HBPA/(HBPA+出発イソシアネート)重量比は6.85%である。
この混合物を110℃で48時間加熱する。該反応の終了時における該反応混合物のNCO検定値は、100g当たり0.377molである。
400gを回収する。
アロファネート官能基を有する本発明に従う化合物の処方物のNCO検定値は、100g当たり0.377molである。その粘度は25℃及び酢酸n−ブチル中90%の固形分で14000mPa.sであり、酢酸n−ブチル中70%固形分については25℃で800mPa.sである。
この生成物をGPCによるクロマトグラフィーによって重合体ゲルカラムで溶離溶媒としてジクロロメタンを使用して分離し、そして赤外線で分析する。
GPCによって与えられる残留HDI単量体レベルは0.5%である。
NCO官能基の官能価は8である。
【0101】
例5
この例は、イソシアネート官能基を有しかつウレタン官能基を含む本発明に従う化合物の製造に関するものである。
この製造は、例1と同様に実施するが、ただしHBPAの代わりにIBCHを使用する。
459gのTolonate HDT LV2及び46.3gのIBCH(0.196mol)を窒素流れ下で連続的に反応器に装入した。出発Tolonate HDT LV2のNCO検定値は、100g当たり0.55molである。IBCH/(IBCH+出発イソシアネート)重量比は、9.2%である。
この混合物を110℃で7時間30分間加熱する。NCO検定値は、出発反応媒体について100g当たり0.496molから、該反応の終了時には100g当たり0.466molに変化する。
482gの生成物を回収する。
ウレタン官能基を有する本発明に従う化合物の処方物のNCO検定値は、100g当たり0.466molである。その粘度は、25℃で2057mPa.sである。
この生成物をGPCによるクロマトグラフィーによって重合体ゲルカラムで溶離溶媒としてジクロロメタンを使用して分離し、そして赤外線で分析した。
GPCによって与えられる残留HDI単量体レベルは、0.2%である。
NCO官能基の官能価は3である。
【0102】
例6
この例は、イソシアネート官能基を有しかつウレタン官能基を含む本発明に従う化合物の製造に関するものである。
この製造を例5と同様に実施するが、ただしTolonate HDT LV2の代わりにTolonate HDTを使用する。
374.4gのTolonate HDT(1.95molのNCO)及び38.1gのIBCH(0.16mol)を窒素流れ下で連続的に反応器に装入した。出発Tolonate HDTのNCO検定値は、100g当たり0.52molである。IBCH/(IBCH+出発イソシアネート)重量比は、9.2%である。
この混合物を110℃で6時間15分加熱する。NCO検定値は、出発反応媒体について100g当たり0.471molから、該反応の終了時に100g当たり0.435molに変化する。
389.7gの生成物を回収する。
ウレタン官能基を有する本発明に従う化合物の処方物のNCO検定値は、100g当たり0.435molである。その粘度は、100%固形分について25℃で8498mPa.sである。
この生成物をGPCによるクロマトグラフィーによって重合体ゲルカラムで溶離溶媒としてジクロロメタンを使用して分離し、そして赤外線で分析した。
GPCによって与えられる残留HDI単量体レベルは、0.2%である。
NCO官能基の官能価は3.5である。
【0103】
例7
この例は、イソシアネート官能基を有しかつウレタン官能基を含む本発明に従う化合物の製造に関するものである。
この製造は、例1と同様に実施するが、ただし、HBPAの代わりにトリシクロデカンジメタノール(TCDM)を使用する。
300gのTolonate HDT LV2及び21.6gのTCDM(0.11mol)を窒素流れ下で連続的に反応器に装入した。出発Tolonate HDT LV2のNCO検定値は、100g当たり0.55molである。TCDM/(TCDM+出発イソシアネート)比は6.7%である。
この混合物を80℃で2時間加熱する。消費されたイソシアネート官能基のパーセンテージは13.3%である。
320gの生成物を回収する。
ウレタン官能基を有する本発明に従う化合物の処方物のNCO検定値は、100g当たり0.444molである。その粘度は、25℃で1220mPa.sである。
【0104】
例8
この例は、イソシアネート官能基を有しかつウレタン及びビウレット官能基を含む本発明に従う化合物の製造に関するものである。
271.2gの酢酸n−ブチル、101gのHBPA、0.1gのトリメチロールプロパン、0.1gの1,6−ヘキサンジオール、0.1gのフタル酸無水物及び0.1gのマレイン酸無水物を三口反応器に連続的に装入する。この撹拌反応媒体をおよそ130℃の温度に加熱する。125℃で、一緒にした反応体を溶解させる。共沸蒸留を実施して該反応体中に存在する水及びエステル化反応の凝縮水を除去する。1時間30分間反応させた後に、該反応媒体の温度を110℃にまで低下させ、次いで、983.4gのTolonate HDB(測定されたNCO検定値は100g当たり0.527molのNCO官能基である)を添加する。従って、イソシアネート官能基のモル総数は5.182molであり、ヒドロキシル官能基のモル総数は0.76molである。イソシアネート官能基に対するヒドロキシル官能基のモル比率は14.66%である。HBPA/HDB重量比は10.27%である。
反応媒体のNCO検定値を定期的に監視する。これは、2時間20分間反応させた後に100g当たり0.331molのNCOであり、2時間20分間反応させた後に0.327であり、4時間30分間反応させた後に0.326である。
この反応を停止させ、そしてその固形分を酢酸n−ブチルの添加により80重量%に調整する。
【0105】
最終生成物は次の特性を示す:
・NCO検定=13.69重量%
・粘度=25℃で9140mPa.s(「落下球」方法で測定)
・該処方物のフラッシュオフ点は48℃である。
【0106】
該処方物は、次の主イソシアネート化合物を含む:
・20重量%の酢酸n−ブチル
・HDIビウレットを主体とするポリイソシアネートオリゴマー
17重量%の真HDIビウレット(3個のイソシアネート官能基、3個のヘキサメチレン鎖及び1個のビウレット官能基)
8重量%のHDIビスビウレット(4個のイソシアネート官能基、5個のヘキサメチレン鎖及び2個のビウレット官能基)
1.5%の真HDI二量体(2個のイソシアネート官能基、2個のヘキサメチレン鎖及び1個のウレチジンジオン官能基)
0.24重量%のHDI単量体
・ビスビウレットよりも濃厚なHDIビウレットを主体とするポリイソシアネートオリゴマー
・及び、HBPAウレタン官能基を有する、HDIビウレットを主体とするポリイソシアネートオリゴマー。
最後の2つの点は、100重量%に対する残部、すなわち53.26重量%を示す。
イソシアネート官能基の官能価は、少なくとも4.5に等しい。
【0107】
例9
この製造を例8と同様に実施したが、ただし、出発材料の量は次の通りである:
【表1−2】

【0108】
最終生成物は次の特性を示す:
・NCO検定=12.39重量%
・粘度=25℃で18664mPa.s(「落下球」方法で測定)
・ハーゼン単位で表される色調は60である
・固形分79.6%。
処方物は、次の主イソシアネート化合物を含む:
・20.4重量%の酢酸n−ブチル
・HDIビウレットを主体とするポリイソシアネートオリゴマー
14.1重量%の真HDIビウレット(3個のイソシアネート官能基、3個のヘキサメチレン鎖及び1個のビウレット官能基)
6.7重量%のHDIビスビウレット(4個のイソシアネート官能基、5個のヘキサメチレン鎖及び2個のビウレット官能基)
1.2%の真HDI二量体(2個のイソシアネート官能基、2個のヘキサメチレン鎖及び1個のウレチジンジオン官能基)
0.27重量%のHDI単量体
・ビスビウレットよりも濃厚なHDIビウレットを主体とするポリイソシアネートオリゴマー
・及び、HBPAウレタン官能基を有する、HDIビウレットを主体とするポリイソシアネートオリゴマー。
最後の2つの点は、100重量%に対する残部量、すなわち57.33%を表す。
イソシアネート官能基の官能価は、少なくとも5に等しい。
【0109】
例10
この製造を例8と同様に実施したが、ただし、出発材料の量は次の通りである:
【表1−3】

【0110】
最終生成物は次の特性を示す:
・NCO検定=10.5重量%
・粘度=25℃で12273mPa.s(「落下球」方法で測定)
・ハーゼン単位で表される色調は60である
・固形分73.6%。
イソシアネート官能基の官能価は、少なくとも5に等しい。
【0111】
例11
この製造を例8と同様に実施したが、ただし、出発材料の量は次の通りである:
【表1−4】

【0112】
最終生成物は次の特性を示す:
・NCO検定=8.19重量%
・粘度=25℃で46953mPa.s(「落下球」方法で測定)
・ハーゼン単位で表される色調は60である
・固形分68.6%。
イソシアネート官能基の官能価は、少なくとも5に等しい。
【0113】
例12〜17:
本発明のイソシアネート官能基を有する化合物を含む組成物
当該組成物を本発明のイソシアネート官能基を有する化合物及び別のポリイソシアネートから製造する。当該処方物の固形分は80%である。溶媒は酢酸n−ブチルである。
当該組成物の性質及びその成分の量を以下の表に示す:
【表1−5】

【0114】
この組成物の特性を以下の表に示す:
【表1−6】

【0115】
以下の例は、比較硬化性組成物及び本発明の硬化性組成物をワニス型の用途に使用することを例示するものである。これらの例は、以下に記載する試験に関するものである。
【0116】
可使時間
可使時間の値は、DIN 4cupによる粘度の測定に基づき得る。可使時間の値は、この粘度が二倍になるのに要する時間に相当する。
【0117】
乾燥時間
乾燥時間は、ドイツ基準法DIN 53150に従って決定する。当該基準法に従って測定された時間T2及びT3を以下に示す。T2は、その時間の終了時に、20g重量の圧力におよそ1分間にわたりさらした後に紙がもはやワニス被膜の表面に付着しない時間に相当する。T3は、200gの重量によりT2と同じ方法で決定される。
【0118】
光沢
この測定は、被膜の均質性及び外観の特性である。これは、エリクセン型式S40光沢計を使用して、20℃の空調室内で7日間にわたり乾燥させた後に実施する。
【0119】
ペルソ硬度
ペルソ硬度の測定は、23±3℃及び50±10%の相対湿度の空調室内で実施する。使用した装置は、発射停止及び自動計数付きエリクセン社製300型試験振子である。硬度振子の原理は、被膜上に位置した振子の振動に基づく。振動数は、ワニスの硬度及び乾燥度が増大するにつれて増加する。硬度増加の測定は、振子が勢いを失い、その後停止するまでの振動数である。1回の振動の所要時間は1秒である。この試験は、振動の減衰が4°の振幅に達したときに終える。これらの測定は、乾燥中の1日、3日及び7日目に定期的に実施する。
【0120】
メチルエチルケトン試験
この試験は、溶媒、この場合にはメチルエチルケトンに対する抵抗性を特徴付ける。この試験は、7日後に実施する。
【0121】
衝撃強度
この試験によって、被膜の脆性を実証することが可能である。この試験は、7日間の乾燥後に、被膜に特定の寸法及び比重量を有する打撃部品の衝撃であってその落高が調節できるものを与えることからなる。ペイント又はワニスの被膜がもはや亀裂又は剥離を示さない最小の高さを決定する。この値をAFNOR基準法については100cmに、ASTM基準法については80cmに設定する。
【0122】
例18〜20
これらの例は、比較硬化性組成物及び本発明の硬化性組成物を、2Kワニス型の適用に際して、自動車の修理用の溶媒相に使用することに関するものである。
ポリオールを主成分とするA部とイソシアネート官能基を有する比較化合物又は本発明に従うイソシアネート官能基を有する化合物を主成分とするB部とから構成される硬化性組成物の特性を以下の表2に与える。
例18の場合には、イソシアネート官能基を有する比較化合物は、良好な乾燥特性を有する高い官能価の脂肪族イソシアネートであるTolonate XFDである。例19及び20は、イソシアネート官能基を有する化合物として、それぞれ、上記例2及び1の化合物を含む。
【0123】
【表2】

【0124】
架橋を23℃で55%相対湿度で実施する。DIN 4cupによる粘度を23sに調節する。各種試験に従って測定された、得られたワニスの特性を以下に与える。
【0125】
可使時間
この試験の結果を次の表3に与える。
【0126】
【表3】

【0127】
このように、3つの例について同様の可使時間が記録された。
【0128】
表4
乾燥時間
この試験の結果を次の表4に与える。
【表4】

【0129】
本発明に従う組成物について、乾燥時間T2及びT3の有意な短縮が記録された。
【0130】
光沢
この試験の結果を次の表5に与える。
【表5】

【0131】
当該組成物の全てが申し分のない外観を示す。
【0132】
ペルソ硬度
この試験の結果を次の表6に与える。
【0133】
【表6】

【0134】
メチルエチルケトン試験
この試験の結果を次の表7に与える。
【表7】

【0135】
本発明の組成物について、溶媒に対する抵抗性の改善が記録された。
【0136】
衝撃強度
上記例の組成物から得られたワニスの全てがこの試験に合格した。
【0137】
結論として、上に与えた試験から、本発明の組成物は乾燥時間を顕著に改善させることが分かり、また、当該被膜の他の特性は悪影響を受けないばかりでなく、さらに改善され得ることが分かる。
【0138】
例21〜23
これらの例は、比較硬化性組成物及び本発明の硬化性組成物を、2Kワニス型を適用する際に、一般的な産業用途の溶媒相に使用することに関するものである。
ポリオールを主成分とするA部とイソシアネート官能基を有する比較化合物又は本発明に従うイソシアネート官能基を有する化合物を主成分とするB部とから構成される硬化性組成物の特性を以下の表8に与える。
例21の場合には、イソシアネート官能基を有する比較化合物は、上記のTolonate XFDである。例22及び23は、イソシアネート官能基を有する化合物として、それぞれ、上記例2及び3の化合物を含む。
【表8】

【0139】
架橋を23℃で55%相対湿度で実施する。DIN 4cupによる粘度を23sに調節する。
【0140】
様々な試験に従って測定された得られたワニスの特性を以下に与える。
【0141】
可使時間
この試験の結果を次の表9に与える。
【表9】

【0142】
本発明に従う組成物の場合には顕著な改善が記録された。
【0143】
乾燥時間
この試験の結果を次の表10に与える。
【表10】

【0144】
本発明に従う組成物について、乾燥時間T2及びT3の有意な短縮が記録された。
【0145】
光沢
この試験の結果(ここでは、3日間の乾燥後に実施した)を次の表に与える。
【表11】

【0146】
当該組成物の全てが申し分のない外観を示す。
【0147】
ペルソ硬度
この試験の結果を次の表12に与える。
【表12】

【0148】
本発明の組成物について得られた値は、特に例23の場合に、被膜形成の間中大きかった。
【0149】
結論として、本発明の組成物は、乾燥時間を改善させるが、他の特性に悪影響を及ぼさないことが分かる。
【0150】
例24及び25
これらの例は、比較硬化性組成物及び本発明の硬化性組成物を、2Kワニス型の適用の際に、一般的な産業用途の溶媒相に使用することに関する。
ポリオールを主成分とするA部とイソシアネート官能基を有する比較化合物又は本発明に従うイソシアネート官能基を有する化合物を主成分とするB部とから構成される硬化性組成物の特性を以下の表13に与える。
例24の場合には、使用したイソシアネート官能基を有する化合物は、例3のものである。比較例25で使用したイソシアネート官能基を有する化合物は上で言及したTolonate XFDである。
架橋及び乾燥の条件を変更する。架橋を周囲温度で10' の脱溶媒和(フラッシュオフ)及び60℃で30' で実施する。触媒は使用しない。
【表13】

【0151】
得られたワニスについて実施した様々な試験の結果を、以下の概略的な表14に与える。
【表14】

【0152】
例26及び27
これらの例は、比較硬化性組成物及び本発明の硬化性組成物を、2Kワニス型の適用の際に、一般的な産業用途の溶媒相に使用することに関する。
比較例26で使用したイソシアネート官能基を有する化合物は、三量体形態のHDI及びIPDIを主成分とする(それぞれ60/40の重量比)混合物である。例27の場合には、使用したイソシアネート官能基を有する化合物は、例3のものである。
架橋を23℃で55%相対湿度で実施する。
これらの様々な硬化性組成物の特性を次の表15にまとめる。
【表15】

【0153】
得られたワニスについて実施した各種試験の結果を以下に与える。
【0154】
光沢
評価した組成物の間には差がなく、また、全てが申し分のない外観を示す(20°光沢>97)。
【0155】
ペルソ硬度
【表16】

【0156】
衝撃強度
【表17】

【0157】
この差は、比較例の混合物について非常に顕著であり、本発明の例に従う混合物と比較すると非常に脆弱である。
【0158】
例28〜30
これらの例は、比較硬化性組成物及び本発明の硬化性組成物を、2Kワニス型の適用の際に、一般的な産業用途の溶媒相に使用することに関するものである。ポリオールを主成分とするA部とイソシアネート官能基を有する比較化合物又は本発明に従うイソシアネート官能基を有する化合物を主成分とするB部とから構成される硬化性組成物の特性を以下の表18に与える。
これらの例は、ポリイソシアネートと不安定水素を有する化合物との予備反応の重要性を、A部における後者の化合物の単純な物理的添加と比較して示すものである。
例28の場合には、使用したイソシアネート官能基を有する化合物は、例3のものである。例29の場合には、イソシアネート官能基を有する比較化合物は、良好な乾燥特性を有する高い官能価の脂肪族イソシアネートであるTolonate XFD 90Bである。例30の場合には、比較化合物はTolonate HDT LV2であるが、この場合には、そのA部には、例3の化合物を合成するために使用した量に等しい量のHBPAが添加されている。
架橋を23℃で55%相対湿度で実施する。
これらの様々な硬化性組成物の特性を次の表18にまとめる。
【表18】

【0159】
得られたワニスについて実施した各種試験の結果を以下に与える。
【0160】
可使時間
【表19】

【0161】
例28の混合物について得られた可使時間は、比較例29及び30の場合よりも良好である。
【0162】
乾燥時間
【表20】

【0163】
A部と共にHBPAを添加すると、本発明の化合物と比較してダスト乾燥の乾燥時間が非常に長くなる。乾燥特性を改善させるためには、ポリイソシアネートとHBPAとの予備反応が必須である。
【0164】
以下の例は、本発明に従う化合物及び硬化剤型の組成物においてその水性相に当該化合物を使用することを例示するものである。
【0165】
これらの例では、出発材料として、ロディア社が販売する界面活性剤の混合物である、ポリエチレングリコール脂肪アルコールモノエーテルの燐酸モノ及びジエステルと燐酸との混合物から構成される製品Rhodafac DV 6175及びRhodafac DV 6176を使用する。この脂肪アルコールは、平均13個の炭素原子から構成される分岐鎖であり、また、エチレンオキシド単位の数は、およそ6近辺に集中している。これら2種の界面活性剤は、 モノエステルと、ジエステルと、燐酸化合物との比率が異なる。
水性相中の組成物について、水中に分散させた後の親水性ポリイソシアネート粒子の寸法を次の方法で測定する:5gの親水性ポリイソシアネート処方物を45gの蒸留水に周囲温度で添加する。この反応媒体を400回転/分で5分間4枚刃のスクリュー型撹拌モジュールを使用して撹拌する。
粒度曲線をMalvern Mastersizer2000型のレーザー回折粒度計を使用して測定する。
【0166】
例31
この例は、化合物Xの製造(工程1);上で形成された化合物Xからの本発明に従う化合物の製造(工程2);本発明に従う硬化剤型の組成物又は処方物の水性相中での製造(工程3)に関するものである。
【0167】
工程1
ここで製造する化合物Xは、エポキシ官能基を有する化合物とホスフェートとの反応の生成物であるジオールエステルである。
50.76gの燐酸ジブチル(すなわち0.242mol/CAS RN107−66−4)を機械撹拌器と滴下漏斗とを備えるジャケット付き三口反応器に導入する。29.94gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(すなわち0.119mol/CAS RN2386−87−0)を20分間にわたり周囲温度で撹拌しつつかつ窒素雰囲気下で添加する。この反応は発熱的である。該反応媒体の温度を100℃にする。反応速度を、当該反応媒体の回収試料について実施する赤外線(IR)分析によって監視する。
エポキシ官能基の消失を788.76cm-1で監視する。ヒドロキシル官能基の出現を3392.96cm-1で観察し、また燐酸エステル官能基の出現を1253.59cm-1で観察する。出発材料のカルボン酸エステル官能基は1732.88cm-1で示される。2955cm-1に位置するアルキルバンドを基準として使用する。反応速度の監視を788.76cm-1/2955cm-1の度数の比で測定する。
この反応を、IR分析によりエポキシ官能基が95%よりも多く開環し、しかも所期のジオールエステルが実際に得られたことが示されたらすぐに終了する。
エポキシ官能基が3個の炭素又は4個の炭素への攻撃によって開環され得るときに、ジオールエステル最終生成物は、所定の構造の混合物である。その構造の一つを以下に示す。
【化7】

【0168】
工程2
工程1の終了時に得られたジオールエステル13.82g(0.082molのヒドロキシル官能基)及び302gのイソシアヌレートポリイソシアネートTolonate HDT LV2であって、そのNCO検定値が100g当たり0.543molのNCOであり、その粘度が25℃で600mPa.sであるものを機械撹拌器と滴下漏斗とを備えるジャケット付き三口反応器に導入する。
ジオールエステル/ポリイソシアネート重量比は4.6%である。
次いで、該反応媒体の温度を100℃に上昇させ、当該反応媒体を5時間30分間この温度で撹拌したままにする。冷却後、その生成物を受容フラスコに集める。回収した重量は315gである。その粘度は、25℃で1850mPa.sである。
Tolonate HDT LV2は、いくつかの構造を有するポリイソシアネートの処方物であり、また、工程1から得られた生成物は、それ自体が複数の構造の混合物でもあるため、得られた最終生成物はポリイソシアネートウレタンエステルの処方物である。その構造の一つを以下に示す。
【化8】

【0169】
工程3
工程2から得られた生成物90g、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン1.92g、Rhodafac DV6175界面活性剤4.04g及びRhodafac DV6176界面活性剤4.04gを反応器に連続的に導入する。この混合物を40℃で2時間撹拌し、次いで周囲温度まで冷却する。
このようにして得られた親水性ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤型の最終処方物のNCO検定値は、100g当たり0.466molのNCO、すなわち19.57重量%である。
水に分散させた後に測定された粒度は、0.1ミクロンに集中する。
【0170】
例32
この例も、化合物Xの製造(工程1);上で形成された化合物Xからの本発明に従う化合物の製造(工程2);及び本発明に従う硬化剤型組成物の水性相中での製造(工程3)に関するものである。
工程1
ここで製造する化合物Xは、エポキシ官能基を有する化合物とカルボン酸との反応の生成物であるジオールエステルである。
20gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(すなわち、0.079mol/CAS RN2386−87−0)を機械撹拌器と滴下漏斗とを備えるジャケット付き三口反応器に導入する。12.09gのプロピオン酸(0.165mol)を20分間にわたり周囲温度で撹拌しつつかつ窒素雰囲気下で添加する。この反応は発熱的である。該反応媒体の温度を100℃にする。
100℃で3時間後に、赤外線分析によって、エポキシ化合物が92%よりも多く開環し、しかも所期のジオールが実際に得られたことが観察される。反応媒体を100℃でさらに4時間撹拌したまま放置し、次いで周囲温度にまで冷却させ、その後フラスコに移す。
この生成物を赤外線で監視する:
・エポキシ官能基の消失(788.76cm-1
・ヒドロキシル官能基の出現(3392.96cm-1
・カルボン酸エステル官能基の確認(1732.88cm-1)。
【0171】
エポキシ官能基は3個の炭素又は4個の炭素への攻撃によって開環できるので、最終ジオールエステル生成物は、複数の構造の混合物である。その一つを以下に示す。
【化9】

【0172】
工程2
工程1の終了時に得られた、400.47の分子量を有するジオールエステル10.9g(0.027mol)及びイソシアヌレートポリイソシアネートTolonate HDT LV2であって、600mPa.sの25℃での粘度と100g当たり0.543molのNCOであるNCO検定値とを有するもの303.8gを機械撹拌器と滴下漏斗とを備えるジャケット付き三口反応器に導入する。
ジオールエステル/ポリイソシアネート重量比は4%である。15μLのジブチル錫ジラウレートを添加する。次いで、該反応媒体の温度を110℃にし、そして、当該反応媒体をこの温度で8時間撹拌したまま放置する。NCO検定値は、8時間の反応後に、100g当たり0.525molから100g当たり0.492molのNCOに変化する。 NCO官能基の消費は、該反応の終了時に6.3%に相当する。
冷却後、当該生成物をフラスコに集める。回収した重量は314gである。
ポリイソシアネートの最終処方物のNCO検定値は、100g当たり0.492molのNCOである。その粘度は、25℃で5187mPa.sである。
Tolonate HDT LV2は、いくつかの構造を有するポリイソシアネートの処方物であり、また、工程1から得られた生成物は、それ自体が複数の構造の混合物でもあるので、得られた最終生成物はポリイソシアネートウレタンエステルの処方物である。その構造の一つを以下に示す。
【化10】

【0173】
工程3
90gの工程2から得られた生成物、1.92gのN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、4.04gのRhodafac DV 6175界面活性剤及び4.04gのRhodafac DV 6176界面活性剤を反応器に連続的に導入する。この混合物を40℃で2時間撹拌し、次いで周囲温度まで冷却する。
親水性ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤型最終処方物のNCO検定値は、100g当たり0.418molのNCO、すなわち17.56重量%である。水に分散させた後に測定された粒度は、0.1ミクロンに集中する。
【0174】
比較例33
この例は、非変性Tolonate HDT LV2からの処方物の製造を、例31及び32の工程3の終了時に得られた処方物との比較の目的で説明するものである。
90gのTolonate HDT LV2、1.92gのN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、4.04gのRhodafac DV 6175界面活性剤、4.04gのRhodafac DV 6176界面活性剤及び30gの酢酸メトキシプロピルを反応器に導入する。この混合物を40℃で2時間撹拌し、次いで周囲温度まで冷却する。
得られた最終処方物のNCO検定値は、100g当たり0.36molである。
【0175】
例34
この例は、比較硬化剤組成物及び本発明に従う硬化剤組成物をワニス型の用途に使用することを例示するものである。
ワニス処方物を、アクリルポリオールであってそのヒドロキシル官能基のレベルが4.8%であるものの分散体と、例31及び32並びに比較例33の工程3の終了時に得られた処方物とを出発物質として使用して製造する。使用したNCO/OHモル比は1.2である。
ポリオール50g、工程3の終了時に得られた例31の処方物14.54g、水3.91g及びジブチル錫ジラウレート(DBTL)0.012gを反応器に連続的に添加する。この混合物を穏やかな撹拌で2分間撹拌する。得られた処方物は均質であり、かつ、いかなる凝集も見られない。発泡体の形成は生じない。このエマルジョンを15分間放置してから、基材に任意に塗布する。
手順は、工程3の終了時に得られた例32の親水性ポリイソシアネート硬化剤の処方物についての手順と同一である。ポリオール50g、該処方物16.21g、水4.01g及びジブチル錫ジラウレート(DBTL)0.011gを反応器に連続的に添加する。この混合物を穏やかな撹拌で2分間撹拌する。得られた処方物は均質であり、かつ、いかなる凝集も見られない。発泡体の形成は生じない。このエマルジョンを15分間放置してから、基材に任意に塗布する。
比較処方物を、反応器に、ポリオール50g、比較例33の処方物18.77g、水4.17g及びDBTL0.014gを添加することによって同じ方法で調製する。このエマルジョンを15分間放置してから、基材に任意に塗布する。
その後、これらの処方物をガラス板に塗布する。150μmの厚みを有するスクレーパと被膜引き出し器を使用して被膜を塗り広げる。このスクレーパを当該板上に設置し、エマルジョンで満たし、そして24mm/sの速度で被膜引き出し器により押す。
周囲温度で15分間にわたり蒸発させた後に、これらの板を60℃のオーブン内に30分間置く。硬化が完了し次第、周囲温度で1、3及び24時間にわたり乾燥させた後、被膜の特性を測定する。
結果を以下の表21に与える。
【表21】

【0176】
脂環式基との反応によって変性されたTolonate HDT LV2から得られた本発明の親水性ポリイソシアネート硬化剤の処方物は、同一の非変性ポリイソシアネートよりも被膜の特性が良好である。特に、初期硬度(1及び3時間目の硬度)が非常に高いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2を超える平均官能価を有する(ポリ)イソシアネートと少なくとも1種の化合物Xとの反応によって得られる、2を超える平均官能価を示すイソシアネート官能基を有する化合物であって、該化合物Xが
・少なくとも1個の官能基B(H)n
(式中、
nは、1又は2に等しい数であり、
Hは不安定水素であり、
Bは、O、S、N(Nは第一窒素又は第二窒素である)、−C(=O)−O、−C(=O)−N又は次の基:
【化1】

(式中、R1は、分岐していてもよいアルキル若しくはアラルキル基又はヘテロ原子で中断されたアルキル鎖を表す。)を表す。)か、又は
・少なくとも1個の官能基B’(H)n'
(式中、
n'は1、2又は3に等しい数であり、
Hは不安定水素であり、
B'は−SiR234を表し、R2、R3及びR4は、酸素、(ポリ)イソシアネートと反応する官能基を有するアルキル基又はアラルキル、アリール、−O−アルキル若しくは−O−アラルキル基を表し、R2、R3及びR4基の数は、n'が実際に上記条件を満たすことができるものである。)
のいずれかを有し、
Xは、さらに、脂環式化合物、芳香族化合物若しくは複素環式化合物又は架橋重合体粒子であるが、ただし
・Bが第二窒素を表しかつXが脂環式化合物である場合には、Xは少なくとも2個の環を有する化合物であり;
・しかも、前記反応が多くとも50%の化合物X/[化合物X+(ポリ)イソシアネート] 重量比で実施されること
を条件とする、前記化合物。
【請求項2】
少なくとも2.5の官能価、より具体的には少なくとも3.5の官能価を示すことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
強固な構造を有する化合物Xとの反応により得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
化合物Xであって少なくとも1個の官能基B(H)n又はB’(H)n'、好ましくは全てが該化合物Xの環の炭素に直接結合したものとの反応により得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
化合物Xであって、Xが単一の環のみを有し、前記官能基B(H)n又はB’(H)n'がこの環の炭素に直接結合したものとの反応により得られることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
化合物Xであって官能基B(H)nがOH官能基であるものとの反応により得られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
化合物Xであって、次のもの:
・ビスフェノール、特にA及びF、それらの水素化誘導体、エーテル架橋を有するそれらのポリフェノール誘導体及び当該ポリフェノール誘導体の水素化誘導体;
・シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン及びトリシクロペンタジエン誘導体;
・テルペン系列の誘導体;
・OH官能基を有するシクロアルカン
から選択されるものとの反応により得られることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
カルボン酸とブロック化ヒドロキシル官能基を有する化合物との反応生成物である化合物Xとの反応により得られることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
カルボン酸とエポキシ官能基を有する化合物との反応生成物である化合物Xにより得られることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物Xが、少なくとも1個のエポキシ官能基を有する化合物と式(O)P(OR6)(OR7)(OR8)(式中、R6、R7及びR8は同一のもの又は異なるものであり、水素、直鎖又は分岐アルキル基、脂環式基、芳香族基、アラルキル基又はポリオキシアルキレン鎖であってその直鎖又は分岐オキシアルキレン単位数が1〜25であり、かつ、そのアルキレン鎖の炭素数が2〜6であるものを示し、ここで、このポリオキシアルキレン鎖は、好ましくは、その末端官能基が線状又は分岐アルキル鎖又は分岐していてよいアラルキル鎖で置換されていてよいが、ただし、R6、R7及びR8の少なくとも一つは水素原子であるものとする。)のホスフェートとの反応生成物であることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物Xが、エポキシ官能基を有する化合物と式(3)R9−[−O−CH2−CH2−O−]p−NH2又は式(3'):
【化2】

又は式(4):R9−[−O−CH2−CH2−O−]q−CH(CH3)−CH2−NH2(式中、R9は水素、アルキル基又はCH2CH2NH2若しくはCH2CH(CH3)NH2基であり、R’9はアルキル基であり、p及びqは2〜10の整数である。)のポリアミノエーテルとの反応生成物であることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
化合物Xと、少なくとも1個のイソシアヌレート環又は1個のビウレット単位又は1個のアロファネート官能基又は1個のアシル尿素官能基を有し、かつ、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、芳香族及び複素環式イソシアネート単量体から選択される単量体のホモ縮合又はヘテロ縮合によって得られ得る(ポリ)イソシアネートとの反応により得られることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、前記(ポリ)イソシアネートと前記化合物Xとを多くとも40%、より具体的には多くとも25%の化合物X/[化合物X+(ポリ)イソシアネート]重量比で反応させることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項14】
前記(ポリ)イソシアネートと前記化合物XとをB(H)n/NCOモル比が1〜50%である量で反応させることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする硬化剤型組成物。
【請求項16】
非反応型の親水性添加剤を含むことを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
イソシアネート官能基を有する化合物にグラフトする親水性添加剤を含むことを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
ポリイソシアネートをさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
基材上に被膜を形成させるための方法であって、請求項15〜18のいずれかに記載の組成物と、ヒドロキシル、第一アミン及び第二アミン官能基並びにSH官能基から選択される、可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保持する化合物又はヒドロキシル官能基を脱離させることができる先駆体官能基を有する化合物とを反応させ、次いで、得られた混合物を該基材に塗布することを特徴とする、基材上に被膜を形成させるための方法。
【請求項20】
可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保有する化合物がアクリル、ポリエステル若しくはポリウレタン重合体又はこれらの重合体のブレンドから選択されるポリオールであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれかに記載の化合物の、基材上に被膜を製造するための方法における乾燥促進剤としての使用であって、前記化合物を含む組成物と、ヒドロキシル、第一アミン及び第二アミン官能基並びにSH官能基から選択される、可動水素を有する少なくとも1個の官能基を保有する化合物とを混合させ、そして、このようにして得られた混合物を該基材上に付着させる、前記使用。

【公表番号】特表2009−519355(P2009−519355A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541761(P2008−541761)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068987
【国際公開番号】WO2007/060251
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】