説明

イソシアネート末端マクロマー並びに内部接着剤又は封止剤としての使用のためのその製剤

イソシアナトフェニルエーテル末端部分と、イソシアナトフェニルエーテル末端イソシアネート部分のエーテル基に近接して、これによりマクロマー又はこれらの混合物中に少なくとも2つのエーテル結合を形成する、少なくとも80〜10,000の範囲の分子量を有する水溶性ポリマーの少なくとも2つの残基と、を含む新規マクロマー又はこれらの混合物が、本明細書に記載される。ポリイソシアネートマクロマーの製造方法もまた、本明細書に記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新規ポリイソシアネートマクロマー又はこれらの混合物、並びに、心臓血管、末梢血管、心胸郭、婦人科、神経及び一般腹腔手術などの外科専門領域における外科的使用のための内部接着剤又は封止剤を形成するためのこれらの使用を本明細書において説明する。より具体的には、マクロマー若しくはこれらの混合物、又は、これらの製剤は、ヒトの体内で重合され、生体適合性であり、非毒性及び生体適合性である産物へと分解する弾性ゲルを形成する。更に、分解産物は、水溶性であり、分解産物がヒトの体内から老廃物として排出されることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
一般的に、組織接着剤には以下の条件が重要である。
(1)手術用接着剤/封止剤は、組織修復部位を固着又は封止するのに十分な、接着又は粘着強度を有さなければならない。
(2)接着剤の硬化に伴ういかなる発熱プロセスも、周辺組織を損傷するべきではない。
(3)接着剤は、周辺の健康な組織によっていかなる毒性反応も惹起してはならず、可能であれば新組織の再生を促進しなければならない。
(4)接着剤は、有害な分解産物を遊離させるべきではない。
(5)接着剤は、分解すべきであり、分解しているときに、最小限の瘢痕でもって新組織によって置換されるべきである。並びに
(6)いかなる生分解産物も、体内に蓄積するべきではないが、排泄又は自然の生化学的サイクルへの取り込みのいずれかによって、自然に排出されるべきである。
【0003】
高分子接着剤及び発泡体を形成するためにジイソシアネート及びポリイソシアネート化合物を使用してもよいことは当該技術分野において周知である。しかしながら、市販されるジイソシアネート及びポリイソシアネートモノマーの多くは、毒性及び感作の危険性を示す小分子であり、重合して、毒性分解産物、例えば、芳香族アミンを有する産物を形成する。このように、市販の小分子ジイソシアネート及びポリイソシアネートを含有する組成物は、ヒトの体内での使用に不適切である。
【0004】
代謝的に許容可能なポリイソシアネートモノマーは、米国特許第4,829,099号に記載されている。より特定的には、この参考文献は、「好ましい、式Iの」グリコール酸残基とポリエチレングリコール残基とを有する芳香族ベンゾイルイソシアネート末端モノマーを記載している。この参考文献は、得られたポリマーが最終的には分解して、p−アミノ安息香酸、ポリエチレングリコール及びグリコール酸などの代謝的に許容可能な産物になることを示している。得られたポリマーは、主に、前述の化合物に分解し得るが、グリコール酸残基のみが生体内で加水分解し、水溶性及び非水溶性断片の混合物をもたらすと考えられている。水溶性断片は、体からの排泄によって、自然に排出され得る。しかしながら、非水溶性断片は、自然に排出されず、体内に望ましくない非水溶性断片の蓄積をもたらす。
【0005】
米国特許出願公開第2007/0276121(A1)号は、ベンゾイルイソシアネート末端部分と、生体内で生分解性である1つ以上の加水分解性結合を有する水溶性ポリマーの少なくとも2つの残基と、を含むベンゾイルイソシアネートマクロマー又はこれらの混合物を開示している。
【0006】
米国特許出願公開第2006/0188547(A1)号は、アミン、イソシアネート及び生体吸収性ポリウレタン、これらから重合化されるポリアミド及びポリエステルウレタンの部類を開示している。更に、グリコール酸、乳酸、p−ジオキサン及びε−カプロラクトンなどの部分をフェノールアミノ酸と結合して、新たな化学物質を形成する手段を開示している。
【0007】
市販の小分子ジイソシアネート、すなわち、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)から調製されるポリエステル−ウレタン−尿素ブロックコポリマーが、米国特許第6,210,441号に説明されている。しかしながら、コポリマーは、既に重合され、つまり、既に硬化されており、操作及び再整合の十分な機会を提供しないため、これらのコポリマーは、手術用接着剤又は封止剤としての使用に好適ではない。その上、そのようなコポリマーは、非損傷組織の機械的性能を模倣しないと考えられている。加えて、いくつかの場合では、これらは、芳香族ジアミンなどの低分子量種を製造プロセスから含有する、又は分解を通して生成する可能性を呈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、操作及び再整合の機会を提供するために、生体内で重合して、内部接着剤又は封止剤を形成するモノマーベースの内部接着剤又は封止剤製剤を有することが望ましい。具体的に、接着剤又は封止剤製剤は、硬化又は凝結前に、内部空洞及び空隙を充填し、組織の間隙及び孔に浸透し、適合することが望ましい。
【0009】
更に、モノマー、その製剤、及び得られたポリマーが生体適合性である、生体内で重合するモノマーベースの内部接着剤又は封止剤製剤を有することが望ましい。また、得られたポリマーも、生体適合性でなければならない。分解産物が老廃物としてヒトの体内から完全に排出されるように、得られたポリマーの分解産物はまた、生体適合性及び水溶性の両方であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
複数のイソシアナトフェニルエーテル末端部分と、複数のイソシアナトフェニルエーテル部分であって、ポリ(エチレングリコール)のエステルなどの吸収性化合物のヒドロキシル基と反応しており、ウレタン結合、及び、反応済みイソシアナトフェニルエーテル部分と未反応イソシアナトフェニルエーテル部分との間のポリ(オキシアルキレン)スペーサーを形成する、複数のイソシアナトフェニルエーテル部分と、を含む、新規マクロマー又はこれらの混合物が、本明細書に記載される。
【0011】
定義
特に記載がない限り、本明細書に使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解される意味と同様の意味を有する。本明細書に記載する全ての特許及び出版物は、参照することにより組み込まれる。
【0012】
本明細書に使用するとき、「生体適合性」は、創傷治癒及び/又は組織再生を有意に妨げず、いかなる有意な代謝障害ももたらさない材料を指す。
【0013】
本明細書に使用するとき、「生分解性」及び「生体吸収性」は、自然に、及び/又は哺乳類の体によって、成分に分解される材料を指し、それは、創傷治癒及び/又は組織再生を有意に妨げず、いかなる有意な代謝障害ももたらさない方法で摂取又は排出される。
【0014】
本明細書に使用するとき、「水溶性ポリマー」は、水中で溶解し、周囲条件下(例えば、体温)で透明な溶液を形成するポリマーを指す。
【0015】
本明細書に使用するとき、「ポリイソシアネート」は、2又は3以上のイソシアネート基を有する化合物を指す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載される本発明の組成物は、末端がイソシアナトフェニルエーテル基であり、構造式Iを有する生体適合性ポリイソシアネートマクロマーである。
【化1】

式中、Rは、芳香族部分へのエーテル結合と、Rに結合しているウレタン結合と、を含有する有機残基であり、一方、aはRの繰り返し単位を表し、1〜5の範囲である。NCO残基に対するRの置換は、オルト、メタ及びパラ位、又はこれらの組み合わせであり得る。fの値は、マクロマーにおけるRのヒドロキシル基に結合しているイソシアネート残基の数を表す。ここで、Rは以下のように表される。
【化2】

式中、Rは、Rへのエステル結合及びRへのウレタン結合を形成する水溶性ポリマーの直鎖又は分枝鎖残基であり、Rは、2又は3以上のカルボキシレート末端基を有する直鎖又は分枝鎖有機残基であり、xはRの数を表し、約2〜約6の範囲である。
【0017】
エーテル基、芳香族部分における電子供与性基の存在は、イソシアネート基を水とゆっくり反応させて、アミンを形成させる。このマクロマーにおいて形成されたアミンは非常に反応性が高く、別のマクロマーからのイソシアネート基と直ちに反応して、それにより、直鎖(f=2)マクロマーからさえも機能的な組織封止剤として有用な高分子量ポリマーを構築する。
【0018】
上述の通り、生体内で重合して、内部接着剤又は封止剤を形成するモノマーベースの内部接着剤又は封止剤製剤は、硬化又は凝結前に、組織の間隙及び孔に浸透し、適合して、それが適用される組織を湿らせなければならない。更に、モノマー、これらの製剤、及び得られたポリマーは、生体適合性でなければならない。
【0019】
モノマー、これらの製剤、又は得られたポリマーのいずれもが、ヒトの体内で代謝される場合に毒性産物を形成しないため、本明細書に説明するモノマー及びこれらの製剤は、内部適用に好適である。
【0020】
更に、モノマー及びこれらの製剤は、水又は体液と接触すると、重合して、生体適合性ポリマーを形成する。次いで、生体適合性ポリマーは、生体内で分解して、生体適合性及び水溶性の両方である分解産物を形成し、次いで、それらは、老廃物としてヒトの体内から排出される。
【0021】
モノマー及びこれらの製剤には、複数の医療用途があり、心臓血管、末梢血管、心胸郭、婦人科、神経及び一般腹腔手術を含むが、これらに限定されない、多くの種類の手術に使用し得る。
【0022】
例えば、モノマー及びこれらの製剤は、前十字靭帯修復、半月板披裂修復(又は、半月板交換のためのヒドロゲルとして)、後嚢復元、腱板修復などの整形外科手順における内部外科用接着剤として、及び骨接着剤として使用し得る。それは、肺容量減少、パッチ固定、皮下組織修復、及び大動脈解離のための接着剤として使用することもできる。特に、それは、胃容量減少のための胃接着剤として使用することができ、ヘルニア修復、ドレイン固定、バルブ装着、接着防止フィルム付着、組織と組織の付着(例えば、合成又は生体組織、生物工学による組織から組織への足場)、組織からデバイス(例えば、メッシュ、クリップ、フィルム)及びデバイスからデバイスのための接着剤として使用することが可能である。
【0023】
第2に、モノマー及びこれらの製剤は、皮下組織修復のために、並びに乳房切除、乳房再生及び豊胸、再建的又は美容上の腹壁形成及び脂肪吸引、美顔手術、帝王切開、肥満患者の子宮摘出、大腿領域の整形術、切開性ヘルニア修復、脂肪腫切除、外傷性損傷、ろう孔治療、グラフト固定、並びに神経修復などの処置における漿液腫防止のために使用し得る。
【0024】
第3に、モノマー及びこれらの製剤は、二重パッチ製品、胆管、肝臓ベッド内の胆汁漏れ、膀胱漏れ、骨移植、火傷移植ドレッシング及び液体閉鎖性ドレッシングを付着させ、封止するための封止剤として使用し得る。封止剤として、組織、デバイス、及び組織−デバイス界面上で被覆することができ、二重頭部封止剤、二重脊柱封止剤、心臓/末梢血管封止剤、Gl封止剤(例えば、食道、腸、大型臓器、膵臓、胃、及び胃潰瘍)、肺封止剤、軟臓器封止剤(例えば、肝臓、脾臓、膵臓)、骨ろう代用品、腫瘍封止剤、止め金/のりの組み合わせ、封止剤/止血剤の組み合わせ、尿道封止剤として使用することが可能である。それは、胃バイパス、実質性臓器切除、気管開口、潰瘍性大腸炎憩室症、根治的前立腺摘出術、洞再生、胸骨切開、総胆管十二指腸吻合、及び胆嚢(肝臓)ベッド封止剤、並びに胆嚢摘出を含むが、これらに限定されない、処置に使用することが可能である。
【0025】
第4に、モノマー及びこれらの製剤は、充填剤又は尿道周囲のバルク剤として、再建及び美容手術における死腔除去(例えば、プラスチック/美容上/再建、顔/顔面欠損、又は空洞充填)、尿失禁及び他の婦人科治療、肛門裂傷/ろう孔、うっ血性心不全を治療するための心筋へのカテ−テル挿入、核豊胸、膵臓/肝嚢胞/ろう孔除去、並びに小児食道ろう孔を含むが、これらに限定されない処置に使用し得る。
【0026】
第5に、モノマー及びこれらの製剤は、組織工学(例えば、組織の足場)用マトリックス、細胞の送達マトリックス、近接照射療法(放射線治療)剤のための送達マトリックス、成長因子の送達マトリックス、空細胞足場をその場で形成するための注入マトリックス、幹細胞送達のための足場のための注入マトリックス、細胞可溶化物、又は他の生物学的製剤、生物活性物質、薬剤、及び栄養補助食品、化学療法のための局所マトリックス、並びに造影剤のための局所マトリックスとして使用し得る。
【0027】
第6に、モノマー及びこれらの製剤は、心臓、開胸、一般手術、産科及び婦人科手術、整形外科手術、並びに脊椎(例えば、人工椎間板)などの処置において、付着防止バリアとして使用し得る。
【0028】
第7に、モノマー及びこれらの製剤は、塞栓のための閉塞材料(例えば、Gl瘻孔、頭部/血管閉塞脳動脈瘤、卵管閉塞、及び静脈瘤閉塞)として使用し得る。
【0029】
マクロマー
本明細書に記載の組成物は、末端がイソシアナトフェニルエーテル基であり、構造式Iを有する、生体適合性のポリイソシアネートマクロマーである。
【化3】

式中、Rは、Rに結合しているウレタン結合を含有する有機残基であり、Rは以下のように表される。
【化4】

式中、Rは、Rへのエステル結合及びRへのウレタン結合を形成する水溶性ポリマーの直鎖又は分枝鎖残基であり、Rは、2又は3以上のカルボキシレート末端基を有する直鎖又は分枝鎖有機残基であり、xはRの数を表し、約2〜約6の範囲である。
【0030】
NCO残基に対するRの置換は、オルト、メタ及びパラ位、又はこれらの組み合わせであり得る。fの値は、マクロマーにおけるRのヒドロキシル基に結合しているイソシアネート残基の数を表す。f=2である場合には、式Iは、2つのイソシアネート末端基を有する直鎖マクロマーを表す。fが2を超える場合、式Iは、2個を超えるイソシアネート末端基を有する分枝鎖マクロマーを表し、一方、aはRの繰り返し単位を表し、1〜5の範囲である。
【0031】
硬化した弾性高分子量ポリマーを得るのに分枝鎖マクロマー(f>2)が望ましい米国特許出願公開第2007/0276121(A1)号に記載のベンゾイル官能化ジイソシアネートマクロマーとは対照的に、式I(f=2)において電子吸引性基(例えば、C=O)が不在であることにより、水分に曝露すると、直鎖マクロマーは容易に硬化して、合成接着剤を形成することができる。したがって、本発明においてマクロマーにエーテル結合が存在することから呈される反応性の増加は、米国出願公開第2007/0276121(A1)号において想到されている分枝鎖マクロマーを有する必要を取り除く。エーテル結合を有することの利点としては、単純な加工プロセス及び得られるマクロマーの特徴及び使用しやすさが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
の例を以下に示す。a=1の場合:
【化5】

式中、dは、イソシアネートマクロマー内のジ芳香環エーテル結合基の繰り返しの平均数であり、0≦d≦5であり、Rのエチレンオキシド部分は直鎖又は分枝鎖であってもよく、繰り返しエーテル単位を表すcは1〜100、好ましくは1〜10の範囲であり得る。
【0033】
a=1、c=4、d=0及びf=2であるこのようなものの非限定例は以下に示され、式中、a、c、d及びfについての値は、LC−MSにより決定される。
【化6】

【0034】
式IにおけるRの一般構造は、以下の通りである。
【化7】

【0035】
式I中のRは、生体内で生分解性である1つ以上の加水分解性エステル結合を有する。
【0036】
は、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸ポリマー及びコポリマー、ポリオキサゾリン、ポリホスファジン、ポリアクリルアミド、ポリペプチド、又は、上述のうちのいずれかの水溶性誘導体の残基が挙げられるが、これらに限定されない、水溶性ポリマーの残基であってもよく、aが1又は2以上である場合には、Rと共にエステル結合を形成し、Rと共にウレタン結合を形成する。更に、Rは、直鎖又は分枝鎖であり得る。Rがポリエチレングリコール残基であり、
【化8】

aが1以上である場合、nは、分解産物IV(以下に示す)を水溶性にするのに十分大きくなくてはならない。例えば、nは、2〜250、好ましくは、5〜100、より好ましくは、5〜25の範囲であり得る。Rの分子量は、80〜10,000、好ましくは、200〜6000、より好ましくは、200〜4000の範囲であり得る。以下により詳細に説明する通り、水溶性ポリマーのこれらの残基は、R位置のマクロマー内に結合されなければならず、それらは、分解産物の溶解度に重要である。
【0037】
は、f個のカルボキシレート末端基を有する有機残基であってもよい。例えば、Rは、ジグリコール酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、又はカルボン酸末端の、ポリアルキレングリコールジカルボキシレートなどのポリアルキレングリコールなどの直鎖二塩基酸から誘導され得る。
【0038】
が脂肪族ジカルボキシレートである場合、
【化9】

mは、1〜10の範囲であり得る。mの選択は、分解産物の生体適合性及び溶解度の2つの要因に基づく。mが0である場合、マクロマーの二塩基酸加水分解産物は酸性になり過ぎ、したがって、組成物の生体適合性に有害である。mが大き過ぎる場合、二塩基酸分解産物はもはや水溶性ではなくなる。
【0039】
あるいは、Rは、トリカリバリル酸、クエン酸、又は酒石酸、若しくはこれらのグルタル酸無水誘導体などの分枝鎖の酸から誘導され得る。代わりに、Rは、前述の酸、カルボン酸末端ポリアルキレングリコール、又はグルタミン酸無水誘導体のいずれかから誘導され得、カルボキシレート末端基を有する化合物をもたらす。Rの更なる例を以下に示す。
【化10】

【0040】
代わりに、Rは、合成経路(エステル交換、酸ハロゲン化物−アルコール濃縮、酸−アルコール凝縮が挙げられるが、これらに限定されない)を介して、いかなるカルボニル含有部分からも形成されてもよく、Rへのエステル結合をもたらす。
【0041】
の例は、ポリエチレングリコールの重縮合から作製されるPEG−エステルの残基、及び複数のカルボキシル基を有する化合物を含むが、これらに限定されず、カルボキシル基含有化合物は、ジグリコール酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、及びカルボン酸末端ポリアルキレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0042】
PEG−エステル型残基の例は、以下を含むが、これらに限定されない:
(a)
【化11】

(この場合、分子量900のPEGのnは20であり、二塩基酸はジグリコール酸である)
(b)
【化12】

(この場合、分子量900のPEGのnは20であり、二塩基酸はコハク酸である)
(c)
【化13】

(この場合、分子量900のPEGのnは20であり、二塩基酸はグルタル酸である)
(d)
【化14】

(この場合、分子量900のPEGのnは20であり、二塩基酸はアジピン酸である)
(e)
【化15】

【0043】
他の例としては、以下に示す分枝鎖Rが挙げられる。
(f)
【化16】

(g)
【化17】

(h)
【化18】

(i)
【化19】

(j)
【化20】

(k)
【化21】

(l)
【化22】

【0044】
マクロマーのR残基部分の分子量は、約80〜20,000g/molの範囲であり得る。
【0045】
本明細書に説明するマクロマー分子量の範囲は、約500〜20,000g/mol、好ましくは、約500〜約4000g/molであり得る。
【0046】
マクロマー含有製剤
医学的に許容される製剤は、ポリイソシアネートマクロマー、溶媒、触媒、界面活性剤、安定剤若しくは酸化防止剤、及び着色添加剤を含み得る。
【0047】
典型的に、溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジメトキシPEG、グリセリン、Tween 80、ジメチルイソソルビド、プロピレンカルボネート、及び1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を含むが、これらに限定されない、親水性溶媒である。乳酸エチル、トリアセチン、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、種々のエステル溶媒(クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル、クエン酸エチルなど)などの親水性の少ない溶媒も考慮し得る。例えば、溶媒及びマクロマーの総重量に基づき、最大約50重量%の量の溶媒を使用し得る。
【0048】
溶媒は、マクロマー製剤において、以下を含む種々の役割を担う:(1)粘度制御、(2)気泡/発泡形成、及び気泡漏れの制御、(3)組織浸透強化、(4)組織湿潤改善の提供。製剤の粘度は、0.01〜100Pa・s(10〜100,000cp)、好ましくは0.5〜50Pa・s(500〜50,000cp)の範囲である。
【0049】
界面活性剤、当該技術分野において周知の中でもとりわけTween、Brij及びシロキサンなどの非イオン界面活性剤、並びにレシチン(ホスファチジルコリン)、ドデシル硫酸ナトリウムなどのイオン界面活性剤も、製剤に添加することで、発泡を制御することができる。
【0050】
トリエチレンジアミン(DABCO)、ピリジン、エチル−2−ピリジルアセタート、及びオクトエートスズなどの触媒も製剤に添加して、反応速度を増加し得る。
【0051】
マクロマー製剤に使用し得る着色添加剤としては、メチレンブルー、FD&Cブルー#1又は#2、及び縫合などの吸収性医療デバイスに使用される従来の着色添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)などの酸化防止剤は、製品の貯蔵安定性を向上するために、マクロマー製剤に存在し得る。
【0053】
接着システム
接着システムの一例は、マクロマー及び溶媒が使用準備が整うまで、個別に保管されるシステムを含むが、これに限定されない。例えば、マクロマーは、二重バレルシリンジの1つのバレル内で保管され得る一方、溶媒は、他方のバレル内で保管される。あるいは、マクロマー及び溶媒を、従来の手段によって、使用前に混合してもよい。
【0054】
生体適合性の弾性ゲル
マクロマーの生体内重合後に得られたポリマーは、生分解可能な弾性ゲルであり、これらの分解産物は、老廃物としてヒトの体内から完全に排出されるように、生体適合性でありかつ水溶性でなければならない。
【0055】
具体的に、マクロマー又はこれらの製剤は、以下の反応スキームを介して、水又は体液と接触した時点で、重合され生体適合性の弾性ゲルを形成する:
【化23】

式中、Xは、2つの末端官能基の間の構造要素を表し、Xは、利用されるマクロマー(図Iに記載)の種類に依存する。上記の反応は、ジカルバメートのジアミン及び二酸化炭素への自然分解をもたらす身体状態下で容易に生じる。イソシアネート及び続いて形成されるアミンの反応性は、臨床応用の必要に応じるように、芳香環における官能基を置換することで、反応する窒素部分の電子密度を制御することにより調整することができる。
【0056】
その後の反応では、新たに形成されたジアミンは、以下の反応スキームを介して、イソシアネート基と反応して、弾性ゲルを形成する。
【化24】

【0057】
分解産物
本明細書に説明するマクロマーから形成された弾性ゲルは、生分解可能であり、生体内加水分解によって分解して、生体適合性でありかつ水溶性である、芳香族分解産物を含む分解産物を形成する。いかなる芳香族分解産物の水溶性も保障するために、弾性ゲルは、芳香族分解産物上の末端基が水溶性ポリマーの残基である方法で開裂するように設計される。例えば、マクロマー接着剤又は封止剤製剤が体内で重合した後に得られる弾性ゲルは、式IVに示すとおり、以下の繰り返し単位を有する。
【化25】

【0058】
形成される生体適合性の弾性ゲル(IV)は、脂肪族エステル結合、ウレタン結合、及び尿素結合が挙げられるが、これらに限定されない、種々の加水分解性結合を含む。弾性ゲル内の脂肪族エステル結合は、他種の結合よりも生体内で分解する傾向がより高く、それにより、初期の芳香族分解産物Vが後に残る。
【化26】

【0059】
この組成物は、複数の医療用途を有する。例えば、内部の外科的接着として、接着剤は、組織と組織、組織と医療デバイス、及び医療デバイスと医療デバイスを固着することができる。封止剤として、この組成物は、組織上、若しくは医療デバイス上、又は医療デバイスの境界面上を組織で被覆して、漏れを防止することができる。外科的接着の防止などの用途を有し得るフィルムをその場で形成させるために、この組成物を使用することができる。この組成物を使用して、充填剤(例えば、死腔除去、再建手術及び美容手術)、バルク剤、組織工学(例えば、足場)材料、並びに発泡体及びスポンジが有用なその他のものなどの用途を有し得る、発泡体をその場で形成することが可能である。この組成物が注入可能であり、かつ組織に局部的に位置し及び接着するゲルをその場で形成するために使用され、それらが注入される部位に残留するように、この組成物を調剤することが可能である。これらは、細胞及び他の生物学的製剤用の送達マトリックス、生物活性剤及び医薬品若しくは栄養補給剤として、及び塞栓剤として、並びに対照的な薬剤を局限する手段としての用途を有し得る。この組成物はまた、医療デバイス(例えば、メッシュ、クリップ、又はフィルム)を組織に付着させるためにも使用され得る。この組成物は、心臓血管、末梢血管、心胸郭、婦人科、神経及び一般腹腔手術が挙げられるが、これらに限定されない、多種の手術において内部で使用することが可能である。
【0060】
外科的封止剤/接着剤として、それを止め金、縫合糸などの主要な創傷縫合デバイスの付属として使用して、潜在的なガス、液体又は固体の漏れを封止することが可能である。より具体的には、外科的接着剤/封止剤を、外科的手順の一部として、例えば、液体、粉末、フィルム、スポンジ若しくは発泡体、含浸布、含浸スポンジ若しくは発泡体、又はスプレーなどの種々の形態で組織に塗布し得る。
【0061】
充填剤として、マクロマー若しくはこれらの製剤を、顔用、欠損、又は間隙充填剤として使用し得る。例えば、製剤を、ポリマーが内部空洞及び空隙を充填し、組織の間隙及び孔に浸透して適合するように、内部空隙の間隙に適用し、かつ間隙中で重合させることもできる。定型的乳房切除術(つまり、癌治療のための乳房及び所属リンパ節除去)、乳房再生及び豊胸処理、再建的又は美容上の腹壁形成及び脂肪吸引、美顔手術、帝王切開及び肥満患者の子宮摘出、大腿領域の整形術、切開性ヘルニア修復、脂肪腫切除、及び外傷性損傷(つまり、閉鎖性外傷)を含むが、これらに限定されない、死腔形成の潜在的な危険性を有する多くの処理後に、製剤を使用し得る。
【0062】
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を示すが、それらは本発明の範囲を限定するものとしてではなく、発明を十分に説明するのに寄与するものとして解釈すべきである。
【実施例】
【0063】
実施例1.本明細書に開示されているウレタンの調製に使用されるジイソシアネートビルディングブロック(PEG4−エーテル−Ar−NCO)を以下のスキームで調製する。
【化27】

【0064】
最終産物PEG4−エーテル−Ar−NCOは、室温にてワックス状の褐色の固体であり、融点は120℃未満である。構造をNMRにより確認する。NMRによる純度は99.5%であり、HPLCによる純度は96%である。
【0065】
上記手順に従って、それぞれオルト及びメタフルオロニトロベンゼンで開始して、オルト及びメタの誘導体を合成することができる。
【0066】
実施例2.吸収性PEG−エステルウレタンを製造するために、以下のPEG−エステルを調製する。
【0067】
(2.1)Aldrichカタログ番号494852、製品番号13009HSからジ−PEG400−アジパート(L4Ad)を調製し、トルエンと一緒に加熱することにより精製し、シリカ−クエン酸、珪藻土及び活性炭と混合し、次に2マイクロメートルのセルロース紙で濾過する。
【0068】
(2.2)ジ−PEG900−グルタレート(L9G)−
【化28】

を以下の方法で調製する。清浄で乾燥した計量済みフラスコの中に撹拌棒と共に以下のものを計量して入れる:90.00g(0.1mol)のPEG900及び6.61g(0.05mol)のグルタル酸。窒素気流に接続したガラスピペットを液体混合物中に浸漬し、制御した窒素気泡スパージを調整する。一時的に窒素スパージを止め、第二の口から0.5gのシュウ酸スズ(II)粉末を加える。粉末を移してから、シュウ酸スズ(II)粉末を室温にて数分にわたってPEG溶液中に十分に混合させておき、窒素スパージを再開し、その間、連続的だが制御された(ほとんど散乱しない)窒素気泡が反応混合物中に入るようにする。次に、フラスコを180℃の油浴に浸す。反応を2時間にわたって観察する。180℃にて2時間後、ガラス器具を素早く再構成し、組み立てて、ドライアイス/アセトン真空トラップで高真空を適用する。反応を180℃にて高真空下で16時間にわたって継続させておく。16時間後、真空を窒素で開放する。産物の検査は次で説明する。油浴を80℃に冷却する。次に、以下の成分を加える:およそ100mLのトルエン、5gのシリカ−クエン酸、5gの珪藻土及び5gの活性炭。混合物を少なくとも2時間にわたって撹拌し、次に濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮する。産物は、室温にてワックス状の固体である。産物収率は70%である。COOH基の変換百分率は、99.5%である(滴定による)。
【0069】
(2.3)ジ−PEG600−PEG600−二塩基酸(L6P6)−
【化29】

を、以下のことを除き、上記2.2と同じ方法で調製する:反応物質は、120.0g(0.2mol)のPEG600及び60.0g(0.1mol)のPEG600二塩基酸である。
【0070】
(2.4)PEG400−ジグルタレート−ジPEG600(L6G4−−直鎖,PEG 600−グルタレート−PEG400−グルタレート−PEG600)。
【化30】

【0071】
L6G4の調製手順は、以下の通りである。機械的攪拌器、窒素導入口、温度プローブ及びディーンスタークトラップを取り付けた清浄で乾燥した1Lの四口フラスコに、149.79g(0.3744mol)のPEG 400を充填する。内容物を窒素下で撹拌しながら、120℃に加熱する。温度に到達した時点で、真空を1.5時間にわたって適用する。真空を開放し、85.56g(0.7499mol)のグルタル酸無水物を添加する。IRが無水物が存在しないことを示すまで、溶液を窒素下で120℃にて2.5時間にわたって撹拌する。溶液を冷却し、436.06g(0.7268mol)のPEG 600 NF及び0.67g(0.0032mol)のシュウ酸スズ(II)を添加する。フラスコを180℃に加熱し、窒素スパージ下で2時間にわたって保持した。酸含有量に基づき、酸のエステル基への変換が99.96%になった後に、真空を更に16時間にわたって適用する。ポリオールを80℃に冷却し、以下を添加する:6.97gのシリカ−クエン酸、7.11gの珪藻土及び3.39gの活性炭。スラリーを窒素雰囲気生成装置下で1時間にわたって80℃にて撹拌する。スラリーをトルエン中で50%(w/v)まで希釈し、更に15分にわたって撹拌し、2マイクロメートルのセルロース紙で濾過する。溶媒を蒸発させたところ、淡黄色の粘稠な液体が残留する。収率=95%、エステル変換=99.88%、スズ含量は、原子吸光分光法により5ppm未満であることが判明する。
【0072】
実施例3
いくつかのPEG−エステルポリオールをPEG4−エーテル−Ar−NCOと結合させて、2molのジ−NCO:1molのポリオールの反応化学量にてイソシアネート末端PEG−エステル−ウレタンを製造する。
【0073】
(3.1)PEG4−エーテル−Ar−NCO−ウレタン−末端保護−L4Ad。
【化31】

10.0gのL4Adを丸底フラスコに加え、このフラスコを高真空(<13.3Pa(100μHg))で120℃に2時間にわたって加熱して、水分を跡形なく除去する。次に、フラスコを70℃に冷却する。次に、9.55gのPEG4−エーテル−Ar−NCOを窒素下で加える。混合物を窒素下で70℃にて24時間にわたって撹拌する。産物は、琥珀色の粘稠な液体である。構造を赤外分光法により確認する。アセトン中で75%にて処方した場合には、Brookfield粘度は、25℃にておよそ5Pa.s(5000センチポアズ)である。
【0074】
同じ方法で残りのPEG−エステル−ウレタンを調製するが、これらの組成物及び説明は下記の表1に与える。
【表1】

【0075】
上記手順に従って、オルトのPEG−エステル−ウレタン(PEG2−エーテル−Ar−NCO)及びメタのPEG−エステル−ウレタン(PEG3−エーテル−Ar−NCO)誘導体を同様の方式で合成することができる。
【0076】
PEG4−Ar−エーテル−NCO及びこれ由来のウレタンは、最大40kGyのコバルト−60照射により殺菌することができる。照射しても、プロトンNMRスペクトルに有意な変化は存在しない。
【0077】
即時的生体外性能を、アセトン中75%で処方した場合のこれらのNCO−ウレタンについて評価したが、これらのデータを表2に提供する。これらの長期的生体外性能値を表3に示す。これらの生体外性能データは、生体組織上で硬化した際のマクロマーの強度が使用に充分であり、脳脊髄液、血液、腸管内容物及び空気などの漏れを封止することを示す。
【表2】

【表3】

【0078】
〔実施の態様〕
(1) 下式のポリイソシアネートマクロマー又はマクロマーの混合物であって、
【化32】

式中、fは2又は3以上であり、aは1〜5であり、Rは下式であり、
【化33】

式中、dは0〜5の数であり、cは1〜100の範囲であってもよく、
は下式であり、
【化34】

式中、Rは、Rへのエステル結合を形成し、かつaが1又は2以上である場合にRへのウレタン結合を形成する水溶性ポリマーの直鎖又は分枝鎖残基であり、Rは、x個のカルボキシレート末端基を有する直鎖又は分枝鎖有機残基であり、2≦x≦6である、ポリイソシアネートマクロマー又はマクロマーの混合物。
(2) fが2であり、前記マクロマーが下式により表される、実施態様1に記載のマクロマー又はマクロマーの混合物。
【化35】

(3) R’が下式により表される、実施態様2に記載のマクロマー又はマクロマーの混合物。
【化36】

(4) R
【化37】

【化38】

【化39】

からなる群から選択され、式中、nが2〜250であり、mが1〜10である、実施態様1に記載のマクロマー。
(5) Rが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリヒドロキシメチルメタクリレート、ポリアクリル酸ポリマー及びコポリマー、ポリオキサゾリン、ポリホスファジン(polyphosphazine)、ポリアクリルアミド、ポリペプチド並びにこれらの水溶性誘導体からなる群から選択される水溶性ポリマーの直鎖又は分枝鎖残基であり、Rが、カルボン酸末端ポリアルキレングリコール、ジグリコール酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、トリカルバリル酸、グリセロールトリグルタレート(glycerol triglutarate)、ペンタエリスリトールテトラグルタレート(pentaerythritol tetra glutarate)及びエリスリトールからなる群から選択される直鎖又は分枝鎖有機残基である、実施態様1に記載のマクロマー又はマクロマーの混合物。
(6) 下式IVにより表される繰り返し単位を含む生体適合性重合化マクロマーであって、式中、Rは、エステル結合を含有する水溶性ポリマーの直鎖又は分枝鎖残基であり、R及びR’は、エーテル結合、ウレタン結合及び尿素結合を有する有機残基であり、zが10〜1,00,000の整数である、生体適合性重合化マクロマー。
【化40】

(7) 実施態様1に記載のマクロマー又はこれらの混合物と、少なくとも1つの溶媒と、を含む、医学的に許容される製剤。
(8) 実施態様1に記載のマクロマー又はマクロマーの混合物あるいは前記マクロマー又は混合物を含む組成物を溶媒と混合して、接着剤組成物を得る工程と、前記接着剤組成物を創傷に適用する工程と、前記接着剤組成物に弾性ゲルを形成させる工程と、を含む、内部創傷の封止方法。
(9) 前記接着剤組成物が注射器を介して注入可能である、実施態様8に記載の内部創傷の封止方法。
(10) 前記接着剤組成物の粘度が約0.5〜50Pa・s(約500〜50,000cP)である、実施態様9に記載の内部創傷の封止方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式のポリイソシアネートマクロマー又はマクロマーの混合物であって、
【化1】

式中、fは2又は3以上であり、aは1〜5であり、Rは下式であり、
【化2】

式中、dは0〜5の数であり、cは1〜100の範囲であってもよく、
は下式であり、
【化3】

式中、Rは、Rへのエステル結合を形成し、かつaが1又は2以上である場合にRへのウレタン結合を形成する水溶性ポリマーの直鎖又は分枝鎖残基であり、Rは、x個のカルボキシレート末端基を有する直鎖又は分枝鎖有機残基であり、2≦x≦6である、ポリイソシアネートマクロマー又はマクロマーの混合物。
【請求項2】
fが2であり、前記マクロマーが下式により表される、請求項1に記載のマクロマー又はマクロマーの混合物。
【化4】

【請求項3】
’が下式により表される、請求項2に記載のマクロマー又はマクロマーの混合物。
【化5】

【請求項4】

【化6】

【化7】

【化8】

からなる群から選択され、式中、nが2〜250であり、mが1〜10である、請求項1に記載のマクロマー。
【請求項5】
が、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリヒドロキシメチルメタクリレート、ポリアクリル酸ポリマー及びコポリマー、ポリオキサゾリン、ポリホスファジン、ポリアクリルアミド、ポリペプチド並びにこれらの水溶性誘導体からなる群から選択される水溶性ポリマーの直鎖又は分枝鎖残基であり、Rが、カルボン酸末端ポリアルキレングリコール、ジグリコール酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、トリカルバリル酸、グリセロールトリグルタレート、ペンタエリスリトールテトラグルタレート及びエリスリトールからなる群から選択される直鎖又は分枝鎖有機残基である、請求項1に記載のマクロマー又はマクロマーの混合物。
【請求項6】
下式IVにより表される繰り返し単位を含む生体適合性重合化マクロマーであって、式中、Rは、エステル結合を含有する水溶性ポリマーの直鎖又は分枝鎖残基であり、R及びR’は、エーテル結合、ウレタン結合及び尿素結合を有する有機残基であり、zが10〜1,00,000の整数である、生体適合性重合化マクロマー。
【化9】

【請求項7】
請求項1に記載のマクロマー又はこれらの混合物と、少なくとも1つの溶媒と、を含む、医学的に許容される製剤。
【請求項8】
請求項1に記載のマクロマー又はマクロマーの混合物あるいは前記マクロマー又は混合物を含む組成物を溶媒と混合して、接着剤組成物を得る工程と、前記接着剤組成物を創傷に適用する工程と、前記接着剤組成物に弾性ゲルを形成させる工程と、を含む、内部創傷の封止方法。
【請求項9】
前記接着剤組成物が注射器を介して注入可能である、請求項8に記載の内部創傷の封止方法。
【請求項10】
前記接着剤組成物の粘度が約0.5〜50Pa・s(約500〜50,000cP)である、請求項9に記載の内部創傷の封止方法。

【公表番号】特表2012−512948(P2012−512948A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542364(P2011−542364)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/068187
【国際公開番号】WO2010/080422
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】