説明

イソソルビド共重合ポリエステル樹脂及びその製造方法

【課題】 耐熱性と成形性に優れたイソソルビドブロック共重合体ポリエステルを提供する。
【解決手段】 芳香族ジカルボン酸とイソソルビドから構成されたポリエステルからなるセグメントA、及び、主として芳香族ジカルボン酸とイソソルビド以外のジオール成分から構成されたポリエステルからなるセグメントBが、結合されてなるイソソルビド共重合ポリエステル樹脂であり、該イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の核磁気共鳴法(13C−NMR法)を用いて算出したセグメントAの平均連鎖長(x)及びセグメントBの平均連鎖長(y)より、下記(1)式で算出されるブロック性(BL)が、0<BL<0.7であることを特徴としたイソソルビド共重合ポリエステル樹脂。
BL=(1/x)+(1/y) (1)
イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の全ジオール成分中、イソソルビドを15モル%以上含有し、ガラス転移温度が90℃以上、融点が150℃以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と結晶性に優れたイソソルビド共重合ポリエステル樹脂、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イソソルビド共重合ポリエステルについては、イソソルビドとテレフタル酸クロライドとから得られるポリエステルや、イソソルビドと芳香族又は脂環式ジカルボン酸とから得られるポリエステルが開示され、耐熱性を向上させるという技術が知られていた(特許文献1,2,3参照)。
【0003】
しかし、芳香族ポリエステルに関する従来技術では、イソソルビドの仕込み量に対するポリマー内へ取り込まれる共重合量(残存率)が低く、また、イソソルビド共重合量が増すに伴って、融点を有さず結晶性が低下して成形性が低下するという問題点があった。また、ガラス転移温度が上昇するため溶融粘度が高く、溶融重合では重合度が上がりにくくなるため、耐熱性が低下するという問題点もあった。
【0004】
一方、溶融重合においてイソソルビドの残存率が低いという問題を解消すべく、酸成分に対するジオール成分の比率を下げるという発明がなされた(特許文献4)。この技術は残存率という点では改善されたが、一方で重合度が上がりにくく、エステル交換時間又はエステル化時間が長くなり、生産性に劣るという問題が残った。
【0005】
重合度が上がりにくいという問題点を解消すべく、低分子量ポリエステルプレポリマーを固体状態で、重合速度を上げるという発明がなされた(特許文献5)。しかし、この発明は重合度という点では改良されたものの、結晶性の面で共重合量が10wt%以下と制限され、この含有量では十分な耐熱性が得られない。
【0006】
イソソルビドの残存率を下げず、高い重合度で多くのイソソルビドを重合するために、ポリオキサレートやポリカーボネートに共重合する発明がなされている(特許文献6)。しかし、この技術でも、できた樹脂は融点をもたず、非晶性となり、結晶性が低下し、成形性が低下する。
【0007】
本特許文献(特許文献7)には、イソソルビドを用いたポリ乳酸ブロック共重合体について記載されている。この文献は、高分子量かつ好ましい様態においては色相に優れたポリ乳酸ブロック共重合体の効率的な製造方法を開示しているが、出発原料を乳酸に限定している為、耐熱性に劣る。
【0008】
本文献(非特許文献1)には、イソソルビドのポリブチレンサクシレートブロック共重合体を製造する方法が記載されている。この文献は、コハク酸とイソソルビドをオリゴマー化し、L-ラクチドと反応させ、ブロック共重合体を得る手法を述べている。このように合成されたブロック共重合体は、脂肪族ジカルボン酸を用いる為、耐熱性に劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−96845号公報
【特許文献2】特開2005−530000号公報
【特許文献3】特開2007−112820号公報
【特許文献4】特開2008−543425号公報
【特許文献5】特開2005−514471号公報
【特許文献6】特開2006−161017号公報
【特許文献7】特開2009−242444号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Polymer,50,6218〜6227(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、高いイソソルビドの残存率を確保できる製造方法、並びに、耐熱性と結晶性に優れたイソソルビド共重合ポリエステル樹脂を提供することにある。なお、本発明において、残存率とは、イソソルビドの仕込み量に対するポリマー内へ取り込まれた共重合量の割合を言う。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0013】
[1] 芳香族ジカルボン酸とイソソルビドから構成されたポリエステルからなるセグメントA、及び、ジカルボン酸とイソソルビド以外のジオール成分から構成されたポリエステルからなるセグメントBが、結合されてなるイソソルビド共重合ポリエステル樹脂であり、該イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の核磁気共鳴法(13C−NMR法)を用いて算出したセグメントAの平均連鎖長(x)及びセグメントBの平均連鎖長(y)より、下記(1)式で算出されるブロック性(BL)が、0<BL<0.7であることを特徴とするイソソルビド共重合ポリエステル樹脂。
BL=(1/x)+(1/y) (1)
【0014】
[2] イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の全ジオール成分中、イソソルビドを15モル%以上含有し、ガラス転移温度が90℃以上の[1]に記載のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂。
【0015】
[3] 融点が150℃以上であることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂。
【0016】
[4] イソソルビド含有オリゴマーを合成する工程を経て、原料として添加したイソソルビドの残存率を70%以上とする[1]〜[3]のいずれかに記載のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、仕込みに対する高いイソソルビドの残存率を確保でき、耐熱性と結晶性に優れた高重合度のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳述する。イソソルビドブロック共重合体の製造方法は、特に限定されないが、高いイソソルビドの残存率を達成する為に以下の製造方法が好ましい。また、これら製造方法を採用することにより、ブロック性の高い、耐熱性と結晶性に優れた高重合度のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。
【0019】
好ましい製造方法の一つの形態としては、酸クロライド(e)とイソソルビド(f)、一級ヒドロキシ基を含有するジオール成分(g)を出発物質として、セグメントAとなる化式1のオリゴマー(OLG)を合成し、該OLGとセグメントBとなるポリエステル樹脂を混合し、固相重合する方法が挙げられる。イソソルビドの残存率が低いのは、イソソルビドが二級ヒドロキシ基を有し、反応性が低いためであるが、該OLGは反応起点である末端が一級ヒドロキシ基である為、高いイソソルビドの残存率を達成できる。該OLGの合成においては、温度、時間、圧力などの条件は、目的物であるOLGが得られる条件であれば特に制限はされないが、酸クロライドとイソソルビドの反応ではイソソルビドの分解を考慮すると、180℃以下が好ましい。OLGの反応時間は1〜15時間、さらに好ましくは1〜10時間である。固相重合時の温度は180℃以上220℃以下で反応は5時間以下が好ましい。該OLGとポリエステル樹脂の混合物の溶融によるブロッキングを考慮すると、イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の全ジオールに対して、イソソルビド共重合の上限は30モル%である。
なお、化式1においては、上記成分e、f、gをそのまま記載しているが、各成分間で反応している部位は、エステル結合となっていることは言うまでもない。以下の化式においても同様である。
【0020】
【化1】

【0021】
化式1において、nは、1以上の整数を表す。また、nは、5以下が好ましい。
【0022】
さらに好ましい製造方法の一つの形態としては、イソソルビド(f)に対してジカルボン酸成分(h)が過剰な条件下でエステル化反応させ、セグメントAとなる化式2のOLGを合成し、該OLGとセグメントBとなるポリエステル樹脂を混合し、固相重合する方法が挙げられる。該OLGは、末端が反応性に劣る二級ヒドロキシ基ではなく、カルボン酸である為、高いイソソルビドの残存率を達成できる。該OLGの製造方法は、特に制限されないが、固相重合時の温度は180℃〜220℃が好ましく、反応時間は24〜48時間が好ましい。先の手法より、OLG時のイソソルビド量を多く仕込むことができるため、イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の全ジオールに対して、イソソルビド共重合量は50モル%まで可能である。
【0023】
【化2】

【0024】
化式2において、nは、1以上の整数を表す。また、nは、10以下が好ましい。
【0025】
もう一つの好ましい製造方法の一つの形態としては、ジカルボン酸ジメチル成分(i)を過剰の条件下でイソソルビド(f)とエステル化反応させ、セグメントAとなる化式3のOLGを合成し、該OLGとセグメントBとなるポリエステル樹脂を混合し、固相重合する方法が挙げられる。該OLGは、末端が反応性に劣る二級ヒドロキシ基ではなく、メトキシ基である為、高いイソソルビドの残存率を達成できる。該OLGの製造方法は、特に制限されないが、固相重合時の温度は、180℃〜220℃が好ましく、反応時間は24〜48時間が好ましい。先の手法より、OLG時のイソソルビド量を多く仕込むことができるため、イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の全ジオールに対して、イソソルビド共重合量は50モル%まで可能である。
【0026】
【化3】

【0027】
化式3において、nは、1以上の整数を表す。また、nは、10以下が好ましい。
【0028】
上記製造方法における固相重合は、カラム反応管を用い固体状態での重合が好ましい。カラム反応器は、不活性ガスが向流カラム反応器を通して上方に流れつつポリエステル共重合体を提供する。
【0029】
上記製造方法で使用するポリエステル樹脂の製造においては、温度、時間、圧力などの条件は、目的物であるポリエステルが得られる条件であれば特に制限はされないが、温度は160〜270℃、好ましくは180℃〜240℃である。反応時間は1〜15時間、このましくは2〜10時間である。
【0030】
本発明において、セグメントAは芳香族ジカルボン酸とイソソルビドから構成されたポリエステルからなる。セグメントBはジカルボン酸とイソソルビド以外のジオール成分から構成されたポリエステルからなる。セグメントAに用いられる芳香族ジカルボン酸は、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フランジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも、2個以上混合して使用することもできる。耐熱性の観点から、特にテレフタル酸が好ましい。
セグメントBに用いられるジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、上記セグメントAに用いられるものと同様である。脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられる。セグメントAとセグメントBが結合されてなるイソソルビド共重合ポリエステル全体としては、耐熱性の観点から芳香族ジカルボン酸成分を20モル%以上含有することが好ましい。更に好ましくは芳香族ジカルボン酸成分を30モル%以上含有することである。セグメントBのジカルボン酸として、芳香族ジカルボン酸が100モル%でもよい。
セグメントBのジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられるが、これらに限定されず、1種でも2種以上混合して使用することもできる。
樹脂の耐熱性の観点から、イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の全ジオール成分中、イソソルビドを15モル%以上含有することが好ましい。より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは25モル%以上である。
【0031】
本発明のイソソルビドブロック共重合ポリエステル樹脂は、後記する測定法で得られる核磁気共鳴法(13C−NMR法)におけるセグメントAの平均連鎖長(x)及びセグメントBの平均連鎖長(y)より、下記(1)式で算出されるブロック性(BL)が、0<BL<0.7である必要がある。
BL=(1/x)+(1/y) (1)
ケミカルシフトに関しては、重クロロホルムの三本のピークの中央のピークを77.35ppmとしたものである。テレフタル酸のカルボニル基の付いた四級炭素のピークは、132.0〜135.0ppmの間に六本、観測される。最も低磁場のピークの積分値(単位は任意)をa、二番目に低磁場のピークの積分値をb、三番目と四番目に低磁場のピークの積分値の合計をc、五番目と六番目に低磁場のピークの積分値の合計をdとする。
セグメントAの連鎖長xを、x = (c/d) + 1、セグメントBの連鎖長yを、y = (b/a) + 1、で算出する。
セグメントAのみ、若しくはセグメントBのみのホモポリマー、又はセグメントAおよびセグメントBの混合物である場合、セグメントAとセグメントBの結合を表すピークであるaおよびdのピークは観測されないため、BLは0と定義した。セグメントを構築せず、各モノマーを一括添加して合成したランダム共重合体である場合、理論的には連鎖長x、yのいずれかは2以下となるため、BLは1程度となる。実際にランダム共重合体の13C-NMRを測定した結果、BL=0.8〜1.1程度であった。両セグメントの連鎖長2.5以上を有したポリエステル共重合体は、0<BL<0.7となり、ブロック性であると定義した。BLの範囲は、より好ましくは0.1<BL<0.65であり、さらに好ましくは0.2<BL<0.6である。尚、BLが0に近いほど、セグメント長が長いことを意味し、BL値が大きいほど、セグメント長が短いことを意味する。
【0032】
本発明にかかるガラス転移温度(Tg)及び、融点(Tm)は試料10mgをアルミサンプルパンに詰め、180℃で10分間加熱した後、液体窒素で急冷し、TAインスツルメンツ社製DSC2920を用いて測定したものである。測定条件は、窒素雰囲気下中、20℃/分で昇温して行い、その途中において観察される溶融ピ−クの頂点温度を融点(Tm)、ガラス転移領域の中間点をガラス転移温度(Tg)とした。
本発明のイソソルビドブロック共重合ポリエステル樹脂のTgは、90℃以上が好ましい。より好ましくは、95℃以上である。Tgを90℃以上にするためには、イソソルビド共重合量を上記の通りにすることで達成できる。なお、本発明のイソソルビドブロック共重合ポリエステル樹脂のTgの上限は、達成可能な範囲として、130℃である。
また、Tmは、150℃以上が好ましい。より好ましくは、200℃以上であり、上記製造方法で達成可能である。なお、本発明のイソソルビドブロック共重合ポリエステル樹脂のTmの上限は、達成可能な範囲として、270℃である。
【0033】
本発明に用いるイソソルビドとは、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトールのことであり、化式4に構造式を示す。このイソソルビドは糖類や澱粉などから容易につくられる。光学異性体D体、L体、ラセミ体いずれでもよく、形状も固体、液体いずれであってもよい。イソソルビドブロック共重合ポリエステルに対するイソソルビド共重合量としては、耐熱性の観点から15モル%以上含有することが好ましい。更に好ましくは、20モル%以上含有することである。イソソルビド共重合量の上限は、共重合工程におけるブロッキングを考慮し、50モル%以下が好ましい。
【0034】
【化4】

【0035】
本発明においては、イソソルビドブロック共重合ポリエステルに他の樹脂を混合することを排除しない。その場合、該ポリマーで全体の80重量%以上を占めていればよい。他の樹脂としてはポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0036】
本発明におけるポリマーは、好ましくは公知の重合触媒の存在下で重合する。例えば、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、スズ化合物などが挙げられる。
具体的には、ゲルマニウム化合物としては、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物等が挙げられる。チタン化合物としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタンアルコキシド化合物、エチレンジアミン4酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸、クエン酸、マレイン酸またはこれらの混合物などのキレート剤を含有するチタン化合物等が挙げられる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。スズ化合物としては、ジブチルスズオキシド、塩化第一スズ、オクチル酸スズ、ラウリル酸スズ、モノブチルヒドロキシスズオキシド等が挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、重合活性が高く、ポリマー品質が良好となる酸化ゲルマニウムやテトラエトキシゲルマニウム等のゲルマニウム化合物やテトラブチルチタネート等のチタン化合物が挙げられる。これら触媒化合物は、原子換算で、製造されるポリエステルの合計量に対し0.001〜0.05wt%含有することが好ましい。0.001wt%以下では反応時間が長くなることで、過剰な熱履歴がかかるためイソソルビドが分解する可能性があり、0.05wt%以上では高分子量化する前にポリマーの分解が進行し高重合体を得られない。
【0037】
触媒の反応系への添加は、重縮合以前であれば特に限定されるものではないが、好ましくは原料仕込み時に原料に分散させた状態で添加する方法や減圧開始時に添加する方法である。例えば、あらかじめ触媒をジオールに溶解させた状態で添加する方法が挙げられる。
【0038】
本発明の方法により製造されたブロック共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、抗酸化剤、結晶核剤、滑剤、着色剤、耐光剤など必要に応じて添加することが出来る。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中における各値は下記の方法で求めた。
【0040】
(1)還元粘度(ηsp/c)
パラクロロフェノール/テトラクロロエタン混合溶媒中、25℃での溶液粘度から求めた。
【0041】
(2)融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)
試料10mgをアルミサンプルパンに入れ、180℃で10分間加熱した後、液体窒素で急冷し、TAインスツルメンツ社製DSC2920を用いて測定した。測定条件は窒素雰囲気下中、20℃/分で昇温して行い、その途中において観察される溶融ピ−クの頂点温度を融点(Tm)、ガラス転移領域の中間点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0042】
(3)ポリマー中のイソソルビド含有量
ポリマーのイソソルビド含有量は、トリフルオロ酢酸を添加した重クロロホルム溶媒に該ポリマーを溶解し、400MHz 1H−NMRを測定してピークの積分値からイソソルビド量を定量し、全ジオール成分に対する割合(mol%)で表した。
この測定方法により算出したポリマーのイソソルビド量と仕込みイソソルビドの割合からイソソルビド残存率を算出した。
【0043】
(4)平均ブロック長評価
A.13C−NMR
装置:フーリエ変換型核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶液:試料70mgを15vol%トリフルオロ酢酸含有重クロロホルム溶媒に溶解して用いた。
共鳴周波数 :125.76MHz
検出パルスのフリップ角:45°
データ取り込み時間:2.0秒
遅延時間 :0.5秒
プロトンデカップリング: 完全デカップリング
積算回数 : 500〜2000
測定温度 :室温
フーリエ変換 :線幅増大0.8〜1.0Hzの指数関数型ウィンドウ関数をかけて行う。
BL:平均ブロック長の計算方法
セグメントA及びBの芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸、セグメントBのジオール成分がエチレングリコールの場合の、平均連鎖長の計算方法を以下に説明する。
重クロロホルムの三本のピークの中央のピークを77.35ppmとして、テレフタル酸のカルボニル基の付いた四級炭素のピークは、132.0―135.0ppmの間に六本、観測される。最も低磁場のピークの積分値(単位は任意)をa、二番目に低磁場のピークの積分値をb、三番目と四番目に低磁場のピークの積分値の合計をc、五番目と六番目に低磁場のピークの積分値の合計をdとする。
セグメントAの連鎖長xを、x = (c/d) + 1、セグメントBの連鎖長yを、y= (b/a) + 1、で算出する。
ブロック性(BL)を、BL=(1/x)+(1/y)で、算出する。
【0044】
(5)ポリエチレンテレフタレートの調製
攪拌機付き2リッターステンレス製オートクレーブに高純度テレフタル酸とエチレングリコールを仕込み、常法に従ってエステル化反応を行いオリゴマー混合物を得た。このオリゴマー混合物に重縮合触媒として、Sb2O3のエチレングリコール溶液を用い、ポリエステル中の酸成分に対してアンチモン原子が200ppmになるように添加し、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3PaでIVが約0.60dl/gになるまで重縮合反応を実施した。
【0045】
実施例1
窒素流入口、攪拌翼、ジムロートコンデンサ、塩化カルシウム管を取り付けた四つ口フラスコにテレフタル酸クロライド82.0gを仕込み、120℃に加熱した。そこにイソソルビド23.6gを10分かけて添加し、180℃で20分攪拌した。その後、真空下で系内から過剰なテレフタル酸クロライドを留去した。
上記粗生成物にピリジン39mL入りのジクロロメタン400mLを添加し、溶解させた。その後、氷冷しながらエチレングリコール45mLを入れ、窒素気流下で4時間、攪拌した。
先の生成物に水100mLを添加し、ジクロロメタン相を取り出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水した。さらに、ジクロロメタンを溜去した後、ジエチルエーテルを加えて固体Aを得た。次いで、固体A2.0g、上記で調製したポリエチレンテレフタレート6.0g、HFIP40mLをナスフラスコに入れ、ジムロートコンデンサならびに塩化カルシウム管を取り付けて、50−60℃で加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、真空下でHFIPを溜去した。これに液体窒素を入れて固化したポリマー混合物を砕き、フリーザーミルを用いて凍結粉砕し、真空下、60℃で15時間乾燥した。これを固相重合装置に入れ、0.8L/分の窒素気流下、213℃で1〜24時間重合した。評価結果を表1に記す。
【0046】
実施例2
テレフタル酸326.70g、イソソルビド229.91gを攪拌翼ならびにヴリュー管を取り付けた四つ口フラスコに入れ、チタン酸テトラ−n−ブチルモノマーのn−ブタノール溶液(68g/L)を0.03mol%加えて、250−280℃でエステル化を3〜5時間行った。得られたオリゴマー4.0gと上記で調製したポリエチレンテレフタレート6.0g、HFIP40mLをナスフラスコに入れ、ジムロートコンデンサならびに塩化カルシウム管を取り付けて、50−60℃で加熱し、溶解させた。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、真空下でHFIPを溜去した。この混合物に液体窒素を入れて砕き、フリーザーミル(米国スペックス社製6750型)を用いて冷凍粉砕を行った。真空下、60℃で15時間乾燥した。これを固相重合装置に入れ、0.8L/分の213℃窒素気流下、12〜60時間固相重合した。評価結果を表1に記す。
【0047】
実施例3
ジメチルテレフタレート135.95g、イソソルビド81.84gを攪拌翼ならびにヴリュー管を取り付けた四つ口フラスコに入れ、チタン酸テトラ−n−ブチルモノマーのn−ブタノール溶液(68g/L)を0.03mol%加えて、180−260℃エステル交換を10時間行った。得られたオリゴマー4.0gとポリエチレンテレフタレート6.0g、HFIP40mLをナスフラスコに入れ、ジムロートコンデンサならびに塩化カルシウム管を取り付けて、50〜60℃で加熱し、溶解させた。その後、ロータリーエバポレーターを用いて、真空下でHFIPを溜去した。この混合物に液体窒素を入れて砕き、フリーザーミル(米国スペックス社製6750型)を用いて冷凍粉砕を行った。真空下、60℃で15時間乾燥した。これを固相重合装置に入れ、0.8L/分の213℃窒素気流下、24〜72固相重合した。評価結果を表1に記す。
【0048】
比較例1
ジメチルテレフタレート97g、エチレングリコール51g、イソソルビド40gを攪拌翼ならびにヴリュー管を取り付けた四つ口フラスコに入れ、チタン酸テトラ−n−ブチルモノマーのn−ブタノール溶液(68g/L)を0.03mol%加えて、常圧で180−240℃、4時間攪拌してエステル交換を行った。その後、250℃、常圧から20分かけて270℃、50Paまで昇温および減圧を行い、この状態で60分攪拌し、過剰なジオール成分を減圧留去して1時間重合した。得られたポリマーにTmは観測されなかった。評価結果を表1に記す。
【0049】
比較例2
攪拌機、温度計、窒素流入口を備えたSUS304製反応釜にテレフタル酸355g、エチレングリコール179g、イソソルビド156g、チタン酸テトラ−n−ブチルモノマーのn−ブタノール溶液(68g/L)を0.03mol%加えて、加圧で窒素雰囲気下、180〜240℃で1.5時間攪拌した。270℃まで昇温し、真空下で1時間攪拌した。常圧に戻し、重縮合を停止した後、冷水へストランド状に吐出、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。得られたポリマーにTmは観測されなかった。評価結果を表1に記す。
【0050】
比較例3
窒素流入口、攪拌翼、ジムロートコンデンサ、塩化カルシウム管を取り付けた四つ口フラスコにテレフタル酸クロライド82.0gを仕込み、120℃に加熱した。そこにイソソルビド23.6gを10分かけて添加し、180℃で20分攪拌した。その後、真空下で系内から過剰なテレフタル酸クロライドを留去した。
上記粗生成物にピリジン39mL入りのジクロロメタン400mLを添加し、溶解させた。その後、氷冷しながらエチレングリコール45mLを入れ、窒素気流下で4時間、攪拌した。
先の生成物に水100mLを添加し、ジクロロメタン相を取り出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水した。さらに、ジクロロメタンを溜去した後、ジエチルエーテルを加えて固体Aを得た。次いで、固体A2.0g、上記で調製したポリエチレンテレフタレート6.0gを攪拌機、温度計、窒素流入口を備えた四つ口フラスコに添加し、270℃で常圧から20分かけて50Paまで昇温および減圧を行い、過剰なジオール成分を減圧留去して1時間重合した。得られたポリマーにTmは観測されなかった。評価結果を表1に記す。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の製造方法により得られるイソソルビド系ポリエステルのブロック共重合体は、成形品として広く用いることができる。例えば、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、および他の材料との複合体などが挙げられ、これらの成形品は、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品またはその他の用途として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸とイソソルビドから構成されたポリエステルからなるセグメントA、及び、ジカルボン酸とイソソルビド以外のジオール成分から構成されたポリエステルからなるセグメントBが、結合されてなるイソソルビド共重合ポリエステル樹脂であり、該イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の核磁気共鳴法(13C−NMR法)を用いて算出したセグメントAの平均連鎖長(x)及びセグメントBの平均連鎖長(y)より、下記(1)式で算出されるブロック性(BL)が、0<BL<0.7であることを特徴とするイソソルビド共重合ポリエステル樹脂。
BL=(1/x)+(1/y) (1)
【請求項2】
イソソルビド共重合ポリエステル樹脂の全ジオール成分中、イソソルビドを15モル%以上含有し、ガラス転移温度が90℃以上の請求項1に記載のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂。
【請求項3】
融点が150℃以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂。
【請求項4】
イソソルビド含有オリゴマーを合成する工程を経て、原料として添加したイソソルビドの残存率を70%以上とする請求項1〜3のいずれかに記載のイソソルビド共重合ポリエステル樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2012−46686(P2012−46686A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192030(P2010−192030)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】