説明

イソプレノイドの生産

1つ又はそれ以上の生合成経路によるイソプレノイドの強靭な生産方法を本明細書において提供する。本方法を行うための核酸、酵素、発現ベクター、及び遺伝的に改変された宿主細胞も本明細書において提供する。遺伝的に改変された宿主細胞からのイソプレノイドの高い生産性のための発酵方法も本明細書において提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行関連出願
本出願は、2007年9月20日出願の米国特許仮出願第60/994,790号、及び2008年4月30日出願の同第61/049,350号の利益を主張するものであり、前記仮出願のすべてはそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本明細書では、特に、イソプレノイドの強靭な生産(robust production)のための組成物及び方法を提供する。前記方法を行うための核酸、酵素、発現ベクター、及び遺伝子的に改変された宿主細胞も本明細書において提供する。遺伝的に改変された宿主細胞からのイソプレノイドの高い生産性のための発酵方法も本明細書に提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
イソプレノイドは、自然界の至る所に存在する。それらは、40,000を超える個別産物の多様なファミリーを含み、それらの多くが、生命体にとって必要不可欠である。イソプレノイドは、細胞の流動性、電子輸送、及び他の代謝機能を維持するのに役立つ。数多くの天然及び合成イソプレノイドが、医薬、化粧品、香水、顔料及び着色剤、殺真菌剤、防腐剤、栄養機能食品、及び精製化学薬品中間体として有用である。
【0004】
不規則なイソプレノイド及びポリテルペンが報告されているが、典型的には、イソプレノイド産物は、五炭素イソペンテニル二リン酸(IPP)繰返し単位から構成される。本来、イソプレノイドは、それらの前駆体IPPとその異性体ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)の連続的な縮合によって合成される。これらの前駆体については2つの経路が公知である。真核生物は、植物を除いて、一般に、メバロン酸依存性(MEV)経路を用いてアセチルコエンザイムA(アセチル−CoA)をIPPに変換し、その後、それをDMAPPに異性体化する。原核生物は、一部を除いて、典型的には、メバロン酸非依存性経路又はデオキシキシルロース−5−リン酸(DXP)経路のみを利用してIPP及びDMAPPを生産する。植物は、MEV経路とDXP経路の両方を用いる。Rohmer et al. (1993) Biochem. J. 295: 517-524; Lange et al. (2000) Proc. Natl. Acae. Sci. USA 97 (24): 13172-13177; Rohdich et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA99: 1158-1163 を参照のこと。
【0005】
従来、イソプレノイドは、天然源、例えば植物、微生物及び動物からの抽出によって製造されてきた。しかし、抽出経由での収率は、多数の重要な制限のため、通常は非常に低い。第一に、大部分のイソプレノイドは、本来、ほんのわずかな量でしか蓄積しない。第二に、供給源生物は、一般に、商業的に採算がとれる量の所望のイソプレノイドを生産するために必要である大規模培養に適用できない。第三に、イソプレノイド抽出のために特定の毒性溶媒を必要とすることは、特別な取り扱い及び廃棄手順を余儀なくさせ、従って、イソプレノイドの商業生産を面倒にする。
【0006】
MEV及びDXP代謝経路の解明は、イソプレノイドの生合成生産を実現可能にした。例えば、アモルファ−4,11−ジエンという名のイソプレノイドの生産のためのメバロン酸経路の一部又は全部を過剰発現するように微生物が遺伝子操作された(米国特許第7,172,886号及び同第7,192,751号)。他の努力は、グリセルアルデヒド−3−リン酸とピルビン酸のプールのバランスをとることに、又は1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸シンターゼ(dxs)及びIPPイソメラーゼ(idi)の発現を増加させることに集中した。Farmer et al. (2001) Biotechnol. Prog. 17:57-61; Kajiwara et al. (1997) Biochem. J. 324:421-426; 及びKim et al. (2001) Biotechnol. Bioeng. 72: 408-415 参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,172,886号
【特許文献2】米国特許第7,192,751号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Rohmer et al. (1993) Biochem. J. 295: 517-524
【非特許文献2】Lange et al. (2000) Proc. Natl. Acae. Sci. USA 97 (24): 13172-13177
【非特許文献3】Rohdich et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. USA99: 1158-1163
【非特許文献4】Farmer et al. (2001) Biotechnol. Prog. 17:57-61
【非特許文献5】Kajiwara et al. (1997) Biochem. J. 324:421-426
【非特許文献6】Kim et al. (2001) Biotechnol. Bioeng. 72: 408-415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それにもかかわらず、多くの商業用途に必要とされるイソプレノイド産物の非常に多くの量を考え合わせると、現行技術で入手できるものよりさらに多くのイソプレノイドを生産する発現系及び発酵手順が依然として必要とされている。イソプレノイド生産への微生物代謝の最適な再方向づけには、導入される生合成経路を適切に遺伝子操作して、炭素をイソプレノイド生産に効率的に集中させること、及び長期間にわたっての代謝中間体の毒性レベルの蓄積を防止することの、両方が必要である。この必要性に対処する組成物及び方法を本明細書に提供し、関連した利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
イソプレノイドの強靭な生産のための組成物及び方法を本明細書において提供する。適するイソプレノイドの非限定的な例としては、(1つのイソプレン単位から誘導される)ヘミテルペン、例えばイソプレン;(2つのイソプレン単位から誘導される)モノテルペン、例えばミルセン;(3つのイソプレン単位から誘導される)セスキテルペン、例えばアモルファ−4,11−ジエン;(4つのイソプレン単位から誘導される)ジテルペン、例えばタキサジエン;(6つのイソプレン単位から誘導される)トリテルペン、例えばスクアレン;(8つのイソプレノイドから誘導される)テトラテルペン、例えばβ−カロチン;及び(8つを超えるイソプレン単位から誘導される)ポリテルペン、例えばポリイソプレンが挙げられる。
【0011】
1つの態様において、イソプレノイド化合物を生産するための方法を提供し、この方法は、
(a)MEV又はDXP経路の酵素をコードする染色体組込み異種核酸配列を含むイソプレノイド化合物を作ることができる複数の宿主細胞を得る工程;
(b)前記宿主細胞が炭素源としてエタノールを用い、イソプレノイド化合物を作る条件下で培地において前記宿主細胞を培養する工程;
(c)前記培地からイソプレノイド化合物を回収する工程
を含む。
【0012】
一部の実施形態において、前記宿主細胞によって炭素源として消費されるエタノールは、その宿主細胞によって作られる。他の実施形態において、前記宿主細胞によって炭素源として消費されるエタノールは、前記培地に外因的に供給される。
【0013】
もう1つの態様において、イソプレノイド化合物を作るための方法を提供し、この方法は、
(a)イソプレノイド化合物を作ることができる複数の宿主細胞を得る工程;
(b)少なくとも4時間、培地のリットル当たり約1グラムである又はそれより多い量のエタノールを含む培地において、前記宿主細胞を培養する工程;
(c)前記培地からイソプレノイド化合物を回収する工程
を含む。
【0014】
さらにもう1つの態様において、イソプレノイド化合物を作るための方法を提供し、この方法は、
(a)イソプレノイド化合物を作ることができる複数の酵母細胞を得る工程;
(b)炭素源のボーラスを培地に供給することによって、酵母細胞を培養してバイオマスを作る工程;
(c)前記酵母細胞が、少なくとも4時間、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり約0.01グラムである又はそれより多いエタノールというエタノール消費速度を有する条件下で細胞を維持する工程;及び
(d)前記培地からイソプレノイド化合物を回収する工程
を含む。
【0015】
一部の実施形態において、前記宿主細胞は、MEV経路を用いてイソプレノイド化合物を作る。他の実施形態において、前記宿主細胞は、DXP経路を用いてイソプレノイド化合物を作る。
【0016】
他の実施形態において、前記宿主細胞は、少なくとも多少の期間、酸素制限条件下で培養又は維持される。さらに他の実施形態において、前記宿主細胞は、少なくとも多少の期間、リン酸塩制限条件(phosphate limited condition)下で培養又は維持される。
【0017】
参照による援用
本明細書において言及するすべての刊行物及び特許出願は、あたかもそれぞれの個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれると具体的に及び個々に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】イソペンテニルピロリン酸(「IPP」)の生産のためのメバロン酸(「MEV」)経路の略図である。
【図2】イソペンテニルピロリン酸(「IPP」)及びジメチルアリルピロリン酸(「DMAPP」)の生産のための1−デオキシ−D−キシルロース5−二リン酸(「DXP」)経路の略図である。Dxsは、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸シンターゼであり;Dxrは、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(IspCとしても公知)であり;IspDは、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールシンターゼであり;IspEは、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールシンターゼであり;IspFは、2C−メチル−D−エリトリトール2,4−シクロ二リン酸シンターゼであり;IspGは、1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル4−二リン酸シンターゼ(IspG)であり;及びispHは、イソペンテニル/ジメチルアリル二リン酸シンターゼである。
【図3】イソペンテニルピロリン酸(「IPP」)及びジメチルアリルピロリン酸(「DMAPP」)のゲラニルピロリン酸(「GPP」)、ファルネシルピロリン酸(「FPP」)及びゲラニルゲラニルピロリン酸(「GGPP」)への変換、ならびに様々なイソプレノイドの合成の略図である。
【図4−1】DNAフラグメントERG20−PGAL−tHMGR(A)、ERG13−PGAL−tHMGR(B)、IDI1−PGAL−tHMGR(C)、ERG10−PGAL−ERG12(D)、ERG8−PGAL−ERG19(E)、GAL74から1021−HPH−GAL11637から2587(F);GLA80−50から−1−NatR−GAL801309から1358(G)、及びGAL11から48−NatR−GAL11500から1550(H)のマップを示す。
【図4−2】DNAフラグメントERG20−PGAL−tHMGR(A)、ERG13−PGAL−tHMGR(B)、IDI1−PGAL−tHMGR(C)、ERG10−PGAL−ERG12(D)、ERG8−PGAL−ERG19(E)、GAL74から1021−HPH−GAL11637から2587(F);GLA80−50から−1−NatR−GAL801309から1358(G)、及びGAL11から48−NatR−GAL11500から1550(H)のマップを示す。
【図5】プラスミドpAM404のマップを示す。
【図6】グルコース供給又はグルコース/エタノール混合供給のいずれかを用いる炭素制限下での株Y337による細胞増殖及びアモルファ−4,11−ジエン(AD)生産を示す。
【図7−1】CO2制御供給アルゴリズムの流れ図を示す。
【図7−2】エタノールパルス供給を用いる株Y293による、二酸化炭素発生率、基質送達、増殖及びアモルファ−4,11−ジエンの生産の図表を示す。
【図8】初期増殖のために濃縮グルコース供給、その後、生産のためにエタノール供給を用いる炭素制限下での株Y293による細胞増殖及びアモルファ−4,11−ジエン生産を示す。
【図9−1】オレイン酸メチルの存在下又は不在下、エタノールのみの供給での流加、炭素制限発酵での株Y677によるエタノール生産/消費、供給速度、増殖、炭素発生率及び酸素利用率ならびにファルネセン生産を示す。
【図9−2】オレイン酸メチルの存在下又は不在下、エタノールのみの供給での流加、炭素制限発酵での株Y677によるエタノール生産/消費、供給速度、増殖、炭素発生率及び酸素利用率ならびにファルネセン生産を示す。
【図9−3】オレイン酸メチルの存在下又は不在下、エタノールのみの供給での流加、炭素制限発酵での株Y677によるエタノール生産/消費、供給速度、増殖、炭素発生率及び酸素利用率ならびにファルネセン生産を示す。
【図9−4】オレイン酸メチルの存在下又は不在下、エタノールのみの供給での流加、炭素制限発酵での株Y677によるエタノール生産/消費、供給速度、増殖、炭素発生率及び酸素利用率ならびにファルネセン生産を示す。
【図9−5】オレイン酸メチルの存在下又は不在下、エタノールのみの供給での流加、炭素制限発酵での株Y677によるエタノール生産/消費、供給速度、増殖、炭素発生率及び酸素利用率ならびにファルネセン生産を示す。
【図10−1】溶存酸素濃度、異なる酸素制限度での株283による増殖、エタノール生産/消費及びアモルファ−4,11−ジエン生産を示す。
【図10−2】溶存酸素濃度、異なる酸素制限度での株283による増殖、エタノール生産/消費及びアモルファ−4,11−ジエン生産を示す。
【図10−3】溶存酸素濃度、異なる酸素制限度での株283による増殖、エタノール生産/消費及びアモルファ−4,11−ジエン生産を示す。
【図10−4】溶存酸素濃度、異なる酸素制限度での株283による増殖、エタノール生産/消費及びアモルファ−4,11−ジエン生産を示す。
【図10−5】異なる酸素制限度での株Y352による増殖、エタノール生産/消費及びファルネセン生産を示す。
【図10−6】異なる酸素制限度での株Y352による増殖、エタノール生産/消費及びファルネセン生産を示す。
【図10−7】異なる酸素制限度での株Y352による増殖、エタノール生産/消費及びファルネセン生産を示す。
【図11】様々なKH2PO4濃度での炭素制限下、振盪フラスコ内での株Y337による細胞当たりのアモルファ−4,11−ジエン生産性を示す。
【図12−1】流加発酵槽供給(A)、ならびにグルコース供給を用いる炭素及びリン酸塩制限下での株Y337による細胞増殖(B)及びアモルファ−4,11−ジエン生産(C)を示す。
【図12−2】流加発酵槽供給(A)、ならびにグルコース供給を用いる炭素及びリン酸塩制限下での株Y337による細胞増殖(B)及びアモルファ−4,11−ジエン生産(C)を示す。
【図12−3】流加発酵槽供給(A)、ならびにグルコース供給を用いる炭素及びリン酸塩制限下での株Y337による細胞増殖(B)及びアモルファ−4,11−ジエン生産(C)を示す。
【図13−1】グルコース/エタノール混合供給を用いる炭素及びリン酸塩制限下での株Y337による細胞増殖(A)及びアモルファ−4,11−ジエン生産(B)を示す。
【図13−2】グルコース/エタノール混合供給を用いる炭素及びリン酸塩制限下での株Y337による細胞増殖(A)及びアモルファ−4,11−ジエン生産(B)を示す。
【図14】大腸菌(Escherichia coli)のゲノムへの非相同ヌクレオチド配列の組込みに有用なプロモーター−遺伝子−FRT−Kan−FRTカセットに隣接する100ヌクレオチドの長いゲノム座特異的配列の作製を図示する。
【図15】プラスミドpAM618のマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
定義
別様に定義していない限り、本明細書において用いるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。以下の意味を有すると定義されるものとする多数の用語についてここで触れる:
【0020】
用語「任意の」又は「必要に応じて」は、後に記載されている特徴又は構造が、存在する場合もあり、しない場合もあること、あるいは後に記載されている事象又は環境が、発生する場合もあり、しない場合もあること、ならびにその記載が、特定の特徴もしくは構造が存在する事例及びその特徴もしくは構造が不在である事例、又はその事象もしくは環境が発生する事例及びその事象もしくは環境が発生しない事例を含むことを意味する。
【0021】
用語「代謝経路」は、異化経路又は同化経路を指すために本明細書では用いる。同化経路は、より小さな分子からのより大きな分子の構築、エネルギーを必要とするプロセスを伴う。異化経路は、多くの場合エネルギーを放出する、より大きな分子の分解を伴う。
【0022】
用語「メバロン酸経路(mevalonate pathway)」又は「MEV経路」は、アセチル−CoAをIPPに変換する生合成経路を指すために本明細書では用いる。そのMEV経路を図1に概略的に図示する。
【0023】
用語「デオキシキシルロース5−リン酸経路」又は「DXP経路」は、グリセルアルデヒド−3−リン酸及びピルビン酸をIPP及びDMAPPに変換させる経路を指すために本明細書では用いる。そのDXP経路を図2に概略的に図示する。
【0024】
「ピロリン酸塩(pyrophosphate)」という言葉は、本明細書では「二リン酸塩(diphosphate)」と同義的に用いている。
【0025】
用語「発現ベクター」又は「ベクター」は、宿主細胞に形質導入し、宿主細胞を形質転換し、又は宿主細胞を感染させ、それによってその細胞にとって生得的であるもの以外の核酸及び/もしくはタンパク質をその細胞に生産させる、又はその細胞にとって自然でない様式で核酸及び/もしくはタンパク質をその細胞に発現させる核酸を指す。
【0026】
用語「内因性の」は、天然に存在する、例えば非組換え宿主細胞において存在する、物質又はプロセスを指す。
【0027】
用語「イソペンテニルピロリン酸を作るための酵素的経路」は、メバロン酸経路又はDXP経路のいずれかを含む(これに限定されない)、イソペンチルピロリン酸を生産することができる任意の経路を指す。
【0028】
用語「核酸」は、任意の長さの、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドの重合形態を指す。従って、この用語は、1本鎖、2本鎖もしくは多数の鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA−RNAハイブリッド、あるいはプリン及びピリミジン塩基あるいは他の天然の、又は化学的に改変されたもしくは生化学的に改変された非天然のヌクレオチド塩基、又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0029】
用語「オペロン」は、RNA又はタンパク質などの遺伝子産物をそれぞれがコードし、それらの発現が、1つ又はそれ以上の制御要素(例えば、プロモーター)によって調和的に調節される、2つ又はそれ以上の隣接ヌクレオチド配列を指すために使用される。
【0030】
用語「遺伝子産物」は、DNAによってコードされるRNA(もしくはその逆)、又はRNAもしくはDNAによってコードされるタンパク質を指し、この場合、遺伝子は、典型的には、タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むが、遺伝子は、イントロン及び他の非コーディングヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0031】
用語「タンパク質」は、コードされた及びコードされていないアミノ酸、化学的もしくは生化学的に改変されたアミノ酸又は誘導体化されたアミノ酸、ならびに改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る、任意の長さのアミノ酸の重合形態を指す。
【0032】
用語「異種核酸」は、本明細書において用いる場合、次のうち少なくとも1つにあてはまる核酸を指す:(a)その核酸が、所与の宿主細胞にとって異質(「外因性」)である(すなわち、所与の宿主細胞において自然に見つからない);(b)その核酸が、所与の宿主細胞において自然に見つかる(すなわち、所与の宿主細胞「にとって内因性」である)ヌクレオチド配列を含むが、そのヌクレオチド配列が、その細胞において不自然な(例えば、予想されるものより多い、もしくは自然に見つけられるものより多い)量で生産される;(c)その核酸が、内因性ヌクレオチド配列とは配列の点で異なるヌクレオチド配列を含むが、そのヌクレオチド配列が、(同じもしくは実質的に同じアミノ酸配列を有する)同じタンパク質をコードし、及びその細胞において不自然な(例えば、予想されるものより多い、もしくは自然に見つけられるものより多い)量で生産される;又は(d)その核酸が、本来、互いに同じ関係で見つけられない2つもしくはそれ以上のヌクレオチド配列を含む(例えば、その核酸が組換え体である)。
【0033】
「トランスジーン」は、宿主細胞に外因的に導入される遺伝子を指す。それは、内因性又は外因性、又は異種の核酸を含む場合がある。
【0034】
用語「組換え宿主」(「遺伝的に改変された宿主細胞」又は「遺伝的に改変された宿主微生物」とも呼ばれる)は、本明細書に提供する異種核酸を含む宿主細胞を意味する。
【0035】
用語「外因性核酸」は、宿主細胞に外因的に導入され、従って、本来、所与の細胞において通常はもしくは自然には見つけられない及び/又は所与の細胞によって通常はもしくは自然には生産されない核酸を指す。
【0036】
用語「調節要素」は、宿主細胞におけるコーディング配列の発現及び/又はコードされたポリペプチドの生産を提供する、及び/又は、これらを調節する、転写及び翻訳の制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナルなど)を指す。
【0037】
用語「形質転換」は、新たな核酸の導入による細胞において誘発される永久的又は一過的な遺伝的変化を指す。遺伝的変化(「改変」)は、宿主細胞のゲノムへの新たなDNAの組込み、又はエピソーム要素としての新たなDNAの一過的もしくは安定的維持の、いずれかによって、果たすことができる。真核細胞の場合、永久的な遺伝的変化は、一般に、その細胞のゲノムへのDNAの導入によって達成される。原核細胞の場合、永久的な遺伝的変化を染色体に導入することができ、又は染色体外要素(例えばプラスミド及び発現ベクター)経由で導入することができ、染色体外要素は、組換え宿主細胞におけるそれらの維持を助長するために1つもしくはそれ以上の選択可能マーカーを含有することができる。
【0038】
用語「作動可能に連結された」は、そのように記載されている成分が、それらが意図された様式で機能することを可能にする関係で存在する並置を指す。例えば、プロモーターがヌクレオチド配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターは、そのヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0039】
用語「宿主細胞」及び「宿主微生物」は、異種核酸を挿入することができる又は異種核酸が挿入されている任意の古細菌(archae)、細菌又は真核生細胞を指すために、本明細書では同義的に用いている。この用語は、もとの細胞の子孫にも関し、この子孫は、自然、偶発的又は計画的変異のため、形態に関して又はゲノムもしくは全DNA補体に関してもとの親と必ずしも完全に同一であるとは限らないことがある。
【0040】
核酸に関して用いる場合の用語「合成の」は、化学合成されたオリゴヌクレオチド基本構成要素(building block)をアニーリングして遺伝子セグメントを形成し、その後、それらを酵素により組み立てて全遺伝子を構築することを意味する。「化学的手段」を介する核酸の合成とは、ヌクレオチド成分がインビトロで組み立てられることを意味する。
【0041】
核酸、細胞又は生物に適用される場合の用語「天然の」は、自然界において見つけられる核酸、細胞又は生物を指す。例えば、自然界の供給源から単離することができる非病的(未罹病(un-diseased))生物体内に存在し、研究室において人間により意図的に改変されていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、天然である。
【0042】
核酸、酵素、細胞又は生物に適用される場合の用語「天然に存在する」は、自然界で見つけられる核酸、酵素、細胞又は生物を指す。例えば、自然界の供給源から単離することができる生物体内に存在し、研究室において人間により意図的に改変されていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、天然に存在するものである。
【0043】
タンパク質、ポリペプチド又は酵素に適用される場合の用語「生物活性フラグメント」は、それらのタンパク質又はポリペプチド又は酵素の機能的部分を指す。機能的に等価のものが異なるアミノ酸配列を有することがあり、これは、例えば、核酸配列及びそのようにコードされたタンパク質の中に天然に存在することが公知であるコドン冗長性及び機能的等価性の結果として生じ得る。あるいは、交換されるアミノ酸の特性の考察に基づき、タンパク質構造の変化を操作することができる組換えDNA技術を適用することによって、機能的に等価のタンパク質又はペプチドを構築することができる。
【0044】
用語「イソプレノイド」、「イソプレノイド化合物」、「イソプレノイド産物」、「テルペン」、「テルペン化合物」、「テルペノイド」及び「テルペノイド化合物」は、本明細書では同義的に用いている。それらは、IPPから誘導することができる化合物を指す。
【0045】
単数形「a」、「and」及び「the」は、その文脈が別様に明確に指示していない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「発現ベクター(an expression vector)」への言及は、単数の発現ベクターばかりでなく複数の発現ベクターも含む、及び「宿主細胞(the host cell)」への言及は、1つ又はそれ以上の宿主細胞への言及を含む、等である。本特許請求の範囲が、いずれかの任意の要素を排除するように起草されることがあることにさらに留意しなければならない。従って、この記載は、特許請求の範囲の構成要素の列挙に関しての「単独で」、「ただ・・・のみ」などのような排他的用語の使用、又は「消極的」限定の使用についての先行詞(antecedent basis)としての役割を果たすことが意図される。
【0046】
別の指示がない限り、本明細書に提供する実施形態は、特定の配列、発現ベクター、酵素、宿主微生物又はプロセスに限定されず、従って、本明細書における教示を考慮して当業者の理解に従って変わることがある。本明細書において用いる専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的とするものであり、限定するためのものではない。
【0047】
IPP経路
本明細書に提供する宿主細胞は、IPP及びその異性体、DMAPPを合成するためにMEV経路、DXP経路若しくは両方を含む又は利用する。MEV又はDXP経路の酵素をコードする少なくとも1つの染色体組込み異種核酸配列を含む宿主細胞を本明細書に提供する。他の実施形態において、前記宿主細胞は、MEV又はDXP経路の複数の酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む。さらに他の実施形態において、前記宿主細胞は、MEV経路酵素のすべてをコードする複数の異種核酸配列を含む。さらに他の実施形態において、前記宿主細胞は、DXP経路酵素のすべてをコードする複数の異種核酸配列を含む。
【0048】
一般に、植物以外の真核生物は、排他的にMEVイソプレノイド経路を用いて、アセチル−CoAをIPPに変換し、その後、それをDMAPPへと異性体化する。原核生物は、一部を例外を伴うが、メバロン酸非依存性又はDXP経路を用いて、分岐点を通ってIPP及びDMAPPを別々に生産する。植物は、IPP合成のためにMEV経路とDXP経路の両方を用いる。
【0049】
MEV経路
MEV経路の略図を図1に記載する。一般に、この経路は、6つの工程を含む。
【0050】
第一工程では、アセチル−コエンザイムAの2つの分子を酵素により化合させて、アセトアセチル−CoAを形成する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、アセチル−CoAチオラーゼ(アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼとしても公知)である。ヌクレオチド配列の説明例としては、以下のGenBankアクセッション番号及びそれらの配列が由来する生物が挙げられるが、それらに限定されない:(NC_000913 REGION:2324131..2325315;大腸菌(Escherichia coli))、(D49362;パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans))、及び(L20428;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))。
【0051】
MEV経路の第二工程では、アセトアセチル−CoAを別のアセチル−CoA分子と酵素により縮合させて、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を形成する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、HMG−CoAシンターゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(NC_001145.補体19061..20536;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))、(X96617;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))、(X83882;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(AB037907;キタサトスポラ・グリセオラ(Kitasatospora griseola))、(BT007302;ヒト(Homo sapiens))、及び(NC_002758、Locus tag SAV2546、GeneID 1122571;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
第三工程では、HMG−CoAをメバロン酸に酵素により変換する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、HMG−CoAレダクターゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(NM_206548;キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、(NC_002758、Locus tag SAV2545、GeneID 1122570;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))、(NM_204485;セキショクヤケイ(Gallus gallus))、(AB015627;ストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)KO 3988)、(AF542543;ニコチアナ・アテヌアタ(Nicotiana attenuata))、(AB037907;キタサトスポラ・グリセオラ(Kitasatospora griseola))、(AX128213、トランケートされたHMGRをコードする配列を提供する;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))、及び(NC_001145:補体(115734..118898;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
第四工程では、メバロン酸を酵素によりリン酸化して、メバロン酸5−リン酸を形成する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、メバロン酸キナーゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(L77688;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、及び(X55875;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0054】
第五工程では、第二のリン酸基をメバロン酸5−リン酸に酵素により付加させて、メバロン酸5−ピロリン酸を形成する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、ホスホメバロン酸キナーゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(AF429385;ヘベア・ブラジリエンシス(Hevea brasiliensis))、(NM_006556;ヒト(Homo sapiens))、及び(NC_001145.補体712315..713670;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
第六工程では、メバロン酸5−ピロリン酸を酵素によりIPPに変換する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、メバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(X97557;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))、(AF290095;エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、及び(U49260;ヒト(Homo sapiens))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0056】
IPPをDMAPPに変換する場合には、第七工程が必要とされる。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、IPPイソメラーゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(NC_000913、3031087..3031635;大腸菌(Escherichia coli))、及び(AF082326;ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis))が挙げられるが、それらに限定されない。DMAPPへの変換が必要とされる場合には、IPPイソメラーゼの発現増加によって、IPPのDMAPPへの変換がその全経路の中での律速段階に相当しないことが保証される。
【0057】
DXP経路
DXP経路の略図を図2に記載する。一般に、DXP経路は、7つの工程を含む。第一工程において、ピルビン酸をD−グリセルアルデヒド3−リン酸と縮合させて、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸を作る。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸シンターゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(AF035440;大腸菌(Escherichia coli))、(NC_002947、locus tag PP0527;シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440)、(CP000026、locus tag SPA2301;パラチフス菌(Salmonella enterica Paratyphi)、ATCC 9150参照)、(NC_007493、locus tag RSP_0254;ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1)、(NC_005296、locus tag RPA0952;ロドシュードモナス・パラストリス(Rhodopseudomonas palustris)CGA009)、(NC_004556、locus tag PD 1293;キシレラ・ファスティディオーサ・テメキュラ1(Xylella fastidiosa Temeculal)、及び(NC_003076、locus tag AT5G11380;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0058】
第二工程では、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸を2C−メチル−D−エリトリトール−4−リン酸に変換する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(AB013300;大腸菌(Escherichia coli))、(AF148852;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(NC_002947、locus tag PP 1597;シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440)、(AL939124、locus tag SCO5694;ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)A3(2))、(NC_007493、locus tag RSP_2709;ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1)、及び(NC_007492、locus tag Pfl_1107;シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)PfO−1)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0059】
第三工程では、2C−メチル−D−エリトリトール−4−リン酸を4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールに変換する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールシンターゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(AF230736;大腸菌(Escherichia coli))、(NC_007493、locus_tag RSP_2835;ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1)、(NC_003071、locus_tag AT2G02500;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、及び(NC_002947、locus_tag PP1614;シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
第四工程では、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールを4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトール−2−リン酸に変換する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトールキナーゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(AF216300;大腸菌(Escherichia coli))及び(NC_007493、locus_tag RSP_1779;ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
第五工程では、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリトリトール−2−リン酸を2C−メチル−D−エリトリトール2,4−シクロ二リン酸に変換させる。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、2C−メチル−D−エリトリトール2,4−シクロ二リン酸シンターゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(AF230738;大腸菌(Escherichia coli))、(NC_007493、locus_tag RSP_6071;ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1)、及び(NC_002947、locus_tag PP1618;シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0062】
第六工程では、2C−メチル−D−エリトリトール2,4−シクロ二リン酸を1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル−4−二リン酸に変換する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル−4−二リン酸シンターゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(AY033515;大腸菌(Escherichia coli))、(NC_002947、locus_tag PP0853;シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440)、及び(NC_007493、locus_tag RSP_2982;ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
第七工程では、1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル−4−二リン酸を、IPP又はその異性体、DMAPP、のいずれかに変換する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、イソペンチル/ジメチルアリル二リン酸シンターゼである。ヌクレオチド配列の説明例としては、(AY062212;大腸菌(Escherichia coli))及び(NC_002947、locus_tag PP0606;シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0064】
一部の実施形態では、宿主細胞固有の代謝プロセスと本明細書に提供するようなIPPの生産に関与するプロセスとの間の「クロストーク」(又は干渉)を最少化又は完全に排除する。例えば、宿主微生物がIPPの合成に関してDXP経路に排他的に依存し、及び追加のIPPを提供するためにMEV経路が導入されるとき、クロストークは最少化又は完全に排除される。そのような宿主生物には、MEV経路酵素の発現を変更するための、又はMEV経路に随伴する中間体をプロセッシングするための装備がなされていないであろう。DXP経路に排他的に又は主として依存する生物としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)が挙げられる。
【0065】
一部の実施形態において、前記宿主細胞は、排他的に又はDXP経路と併用で、MEV経路によってIPPを生産する。他の実施形態では、宿主が排他的に異種導入MEV経路によってIPPを生産するように、宿主のDXP経路を機能不能にする。DXP経路は、遺伝子発現を不能にすること又はDXP経路酵素の1つもしくはそれ以上の機能を不活性化することによって、機能不能にすることができる。
【0066】
宿主細胞
本明細書に提供する使用に適する宿主細胞の説明例としては、任意の古細菌(archae)、原核又は真核細胞が挙げられる。古細菌細胞の例としては、アエロピュルム属(Aeropyrum)、アルカエグロブス属(Archaeglobus)、ハロバクテリウム属(Halobacterium)、メタノコッカス属(Methanococcus)、メタノバクテリウム属(Methanobacterium)、パイロコッカス属(Pyrococcus)、スルフォロブス属(Sulfolobus)、及びサーモプラスマ属(Thermoplasma)に属するものが挙げられるが、それらに限定されない。古細菌株の説明例としては、アエロピュルム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)、アルカエグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、メタノコッカス・ヤナシイ(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、パイロコッカス・アビシイ(Pyrococcus abyssi)、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、サーモプラスマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、サーモプラスマ・ボルカニウム(Thermoplasma volcanium)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0067】
原核細胞の例としては、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、アリシクロバシラス属(Alicyclobacillus)、アナベナ属(Anabaena)、アナシスティス属(Anacystis)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、アゾバクター属(Azobacter)、バシラス属(Bacillus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、クロマチウム属(Chromatium)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、エシェリキア属(Escherichia)、乳酸杆菌属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、メソリゾビウム属(Mesorhizobium)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、フォルミディウム属(Phormidium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、ロドスピリルム属(Rhodospirillum)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、サルモネラ属(Salmonella)、セネデスムス属(Scenedesmun)、セラチア属(Serratia)、赤痢菌属(Shigella)、スタフィロコッカス属 (Staphlococcus)、ストレプトマイセス属(Strepromyces)、シネコッカス(Synnecoccus)、及びジモモナス属(Zymomonas)に属するものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0068】
原核細菌株の説明例としては、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefacines)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・インマリオフィルム(Brevibacterium immariophilum)、クロストリジウム・ベエイジェリンキー(Clostridium beigerinckii)、エンテロバクター・サカザキイ(Enterobacter sakazakii)、大腸菌(Escherichia coli)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・メバロニイ(Pseudomonas mevalonii)、シュードモナス・プディカ(Pseudomonas pudica)、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドスピリルム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、チフス菌(Salmonella typhi)、腸チフス菌(Salmonella typhimurium)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0069】
一般に、細菌宿主細胞を用いる場合、非病原菌株が好ましい。非病原菌株の説明例としては、枯草菌(Bacillus subtilis)、大腸菌(Escherichia coli)、アシドフィルス菌(Lactibacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・メバロニイ(Pseudomonas mevalonii)、シュードモナス・プディタ(Pseudomonas pudita)、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ロドスピリルム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
真核細胞の例としては、真菌細胞が挙げられるが、それらに限定されない。真菌細胞の例としては、コウジカビ属(Aspergillus)、カンジダ属(Candida)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、クリプトコッカス属(Cryotococcus)、フザリウム属(Fusarium)、クリュイベロミセス属(Kluyveromyces)、ネオタイホジウム属(Neotyphodium)、アカパンカビ属(Neurospora)、アオカビ属(Penicillium)、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、トリコデルマ属(Trichoderma)及びキサントフィロマイセス属(Xanthophyllomyces)(以前はファフィア属(Phaffia))に属するものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0071】
真核菌株の説明例としては、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、黒色コウジ菌(Aspergillus niger)、米コウジ菌(Aspergillus oryzae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・コダメ(Pichia kodamae)、ピキア・メンブラニーファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・オプンティエ(Pichia opuntiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピキア・クエルキューム(Pichia quercuum)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、ストレプトマイセス・アンボファシエンス(Streptomyces ambofaciens)、ストレプトマイセス・オーレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens)、ストレプトマイセス・アウレウス(Streptomyces aureus)、サッカロミセス・バヤヌス(Saccaromyces bayanus)、サッカロミセス・ブーラルディ(Saccaromyces boulardi)、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、ストレプトマイセス・フンギシディカス(Streptomyces fungicidicus)、ストレプトマイセス・グリセオクロモジェネス(Streptomyces griseochromogenes)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・オリボグリセウス(Streptomyces olivogriseus)、ストレプトマイセス・ラメウス(Streptomyces rameus)、ストレプトマイセス・タナシエンシス(Streptomyces tanashiensis)、ストレプトマイセス・ビナセウス(Streptomyces vinaceus)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)及びキサントフィロマイセス・デンドロラス(Xanthophyllomyces dendrorhous)(以前は、ファフィア・ロドジマ(Phaffia rhodozyma))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0072】
一般に、真核細胞を用いる場合、非病原菌株が好ましい。非病原菌株の説明例としては、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・ブーラルディ(Saccaromyces boulardi)、及びサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0073】
加えて、一定の菌株は、米国食品医薬品局(the Food and Drug Administration)によってGRASすなわち安全性認定食品添加物(Generally Regarded As Safe)として指定されている。これらの菌株としては、枯草菌(Bacillus subtilis)、アシドフィルス菌(Lactibacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)及びサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。
【0074】
イソプレノイド化合物
本明細書に提供する宿主細胞を用いてイソプレノイドを作る。特定のイソプレノイド化合物は、IPP又はDMAPPから作られ、及び追加の仕上酵素(finishing enzyme)を必要とすることがある。適するイソプレノイドの非限定的な例としては、(1つのイソプレン単位から誘導される)ヘミテルペン、例えばイソプレン;(2つのイソプレン単位から誘導される)モノテルペン、例えばミルセン;(3つのイソプレン単位から誘導される)セスキテルペン、例えばアモルファ−4,11−ジエン;(4つのイソプレン単位から誘導される)ジテルペン、例えばタキサジエン;(6つのイソプレン単位から誘導される)トリテルペン、例えばスクアレン;(8つのイソプレノイドから誘導される)テトラテルペン、例えばβ−カロチン;及び(8つを超えるイソプレン単位から誘導される)ポリテルペン、例えばポリイソプレンが挙げられる。一部の実施形態において、前記イソプレノイドは、カロチノイドではない。他の実施形態において、前記イソプレノイドは、C−C20イソプレノイドである。特定のC−C20イソプレノイド化合物及びそれらのそれぞれの仕上酵素の説明例を下でさらに説明する。
【0075】
化合物
本明細書に提供するC化合物は、一般に、IPP又はDMAPPから誘導される。これらの化合物は、単一のイソプレン単位(IPP又はDMAPP)から誘導されるため、ヘミテルペンとしても公知である。
【0076】
イソプレン
構造が、
【化1】


であるイソプレンは、多くの植物において見つけることができる。イソプレンは、イソプレンシンターゼによってIPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(AB198190;ウラジロハコヤナギ(Populus alba)及び(AJ294819;ウラジロハコヤナギ(Polulus alba)xヨーロッパヤマナラシ(Polulus tremula))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0077】
10化合物
本明細書に提供するC10化合物は、一般に、IPPとDMAPPの縮合によって作られるゲラニルピロリン酸(GPP)に由来した。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、ゲラニルピロリン酸シンターゼである。これらのC10化合物は、2つのイソプレン単位から誘導されるため、モノテルペンとしても公知である。
【0078】
図3は、如何にしてIPP及びDMAPPがGPPを生産でき、それをさらにモノテルペンへとプロセッシングできるかを概略的に示すものである。
【0079】
ゲラニルピロリン酸シンターゼについてのヌクレオチド配列の説明例としては、(AF513111;グランディスモミ(Abies grandis))、(AF513112;グランディスモミ(Abies grandis))、(AF513113;グランディスモミ(Abies grandis))、(AY534686;キンギョソウ(Antirrhinum majus))、(AY534687;キンギョソウ(Antirrhinum majus))、(Y17376;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(AE016877、Locus AP11092;セレウス菌(Bacillus cereus);ATCC14579)、(AJ243739;オレンジ(Citrus sinensis))、(AY534745;クラーキア・ブレウェリ(Clarkia breweri))、(AY953508;マツキクイムシ(Ips pini))、(DQ286930;トマト(Lycopersicon esculentum))、(AF182828;コショウハッカ(Mentha x piperita))、(AF182827;コショウハッカ(Mentha x piperita))、(MPI249453;コショウハッカ(Mentha x piperita))、(PZE431697、Locus CAD24425;パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens))、(AY866498;コオウレン(Picrorhiza kurrooa))、(AY351862;ブドウ(Vitis vinifera)、及び(AF203881、Locus AAF12843;ジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0080】
次いで、その後GPPを様々なC10化合物に変換する。C10化合物の説明例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:
【0081】
カレン
構造が、
【化2】


であるカレンは、多くの木、特に松の木、の樹脂において見つけられる。カレンは、カレンシンターゼでGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(AF461460、REGION 43..1926;オウシュウトウヒ(Picea abies))及び(AF527416、REGION:78..1871;サルビア・ステノフィラ(Salvia stenophylla))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0082】
ゲラニオール
構造が
【化3】


であるゲラニオール(ロドノール(rhodnol)としても公知)は、ローズ油(oil-of-rose)及びパルマローザ油の主成分である。それは、ゼラニウム、レモン及びシトロネラソウ中にも存在する。ゲラニオールは、ゲラニオールシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(AJ457070;シナモマム・テヌイピラム(Cinnamomum tenuipilum))、(AY362553;メボウキ(Ocimum basilicum))、(DQ234300;エゴマ(Perilla frutescens株1864))、(DQ234299;レモンエゴマ(Perilla citriodora)株1861)、(DQ234298;レモンエゴマ(Perilla citriodora)株4935)、及び(DQ088667;レモンエゴマ(Perilla citriodora))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0083】
リナロオール
構造が、
【化4】


であるリナロオールは、多くの花及びスパイス植物(例えば、コリアンダー種子)において見つけられる。リナロオールは、リナロオールシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(AF497485;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(AC002294、Locus AAB71482;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(AY059757;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(NM_104793;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(AF154124;クソニンジン(Artemisia annua))、(AF067603;クラーキア・ブレウェリ(Clarkia breweri))、(AF067602;クラーキア・コンキンナ(Clarkia concinna))、(AF067601;クラーキア・ブレウェリ(Clarkia breweri))、(U58314;クラーキア・ブレウェリ(Clarkia breweri))、(AY840091;トマト(Lycopersicon esculentum))、(DQ263741;イングリッシュラベンダー(Lavandula angustifolia))、(AY083653;オレンジミント(Mentha citrate))、(AY693647;メボウキ(Ocimum basillucum))、(XM_463918;イネ(Oryza sativa))、(AP004078、Locus BAD07605;イネ(Oryza sativa))、(XM_463918、Locus XP_463918;イネ(Oryza sativa))、(AY917193;レモンエゴマ(Perilla citriodora))、(AF271259;エゴマ(Perilla frutescens))、(AY473623;オウシュウトウヒ(Picea abies))、(DQ 195274;シトカトウヒ(Picea sitchensis))、及び(AF444798;シソ(Perilla frutescens var. crispa)栽培品種No.79)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0084】
リモネン
構造が、
【化5】


であるリモネンは、柑橘類の外皮及びハッカにおいて見つけられる。リモネンは、リモネンシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(+)−リモネンシンターゼ(AF514287、REGION:47..1867;レモン(Citrus limon)及び(AY055214、REGION:48..1889;カワミドリ(Agastache rugosa)ならびに(−)−リモネンシンターゼ(DQ195275、REGION:1..1905;シトカトウヒ(Picea sitchensis))、(AF006193、REGION:73..1986;グランディスモミ(Abies grandis))、及び(MHC4SLSP、REGION:29..1828;オランダハッカ(Mentha spicata))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0085】
ミルセン
構造が、
【化6】


であるミルセンは、ゲッケイジュ、バーベナ及びミルキア(myrcia)(その名前は、これから取られている)をはじめとする多くの植物における精油において見つけられる。ミルセンは、ミルセンシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(U87908;グランディスモミ(Abies grandis))、(AY195609;キンギョソウ(Antirrhinum majus))、(AY195608;キンギョソウ(Antirrhinum majus))、(NM_127982;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)TPS10)、(NM_113485;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ATTPS−CIN)、(NM_113483;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ATTPS−CIN)、(AF271259;エゴマ(Perilla frutescens))、(AY473626;オウシュウトウヒ(Picea abies))、(AF369919;オウシュウトウヒ(Picea abies))、及び(AJ304839;セイヨウヒイラギガシ(Quercus ilex))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0086】
オシメン
構造が、それぞれ、
【化7】


である、α−オシメン及びβ−オシメンは、メボウキ(Ocimum basilicum)をはじめとする様々な植物及び果物において見つけられ、オシメンシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(AY195607;キンギョソウ(Antirrhinum majus))、(AY195609;キンギョソウ(Antirrhinum majus))、(AY195608;キンギョソウ(Antirrhinum majus))、(AK221024;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(NM_113485;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ATTPS−CIN)、(NM_113483;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ATTPS−CIN)、(NM_117775;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ATTPS03)、(NM_001036574;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ATTPS03)、(NM_127982;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)TPS10)、(AB110642;ウンシュウミカン(Citrus unshiu)CitMTSL4)、及び(AY575970;ミヤコグサ(Lotus corniculatus var. japonicus))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0087】
α−ピネン
構造が、
【化8】


であるα−ピネンは、松の木及びユーカリノキにおいて見つけられる。α−ピネンは、α−ピネンシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(+)α−ピネンシンターゼ(AF543530、REGION:1..1887;タエダマツ(Pinus taeda))、(−)α−ピネンシンターゼ(AF543527、REGION:32..1921;タエダマツ(Pinus taeda))、及び(+)/(−)α−ピネンシンターゼ(AGU87909、REGION:6111892;グランディスモミ(Abies grandis))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0088】
β−ピネン
構造が、
【化9】


であるβ−ピネンは、松の木、ローズマリー、パセリ、ディル、バジル、及びバラにおいて見つけられる。β−ピネンは、β−ピネンシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(−)β−ピネンシンターゼ(AF276072、REGION:1..1749;クソニンジン(Artemisia annua))及び(AF514288、REGION:26..1834;レモン(Citrus limon))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0089】
サビネン
構造が、
【化10】


であるサビネンは、黒コショウ、キャロットシード、セージ及びティーツリーにおいて見つけられる。サビネンは、サビネンシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、サルビア・オフィシナリス(Salvia officinalis)からのAF051901、REGION:26..1798が挙げられるが、これに限定されない。
【0090】
γ−テルピネン
構造が、
【化11】


であるγ−テルピネンは、柑橘類からの精油の構成成分である。生化学的には、γ−テルピネンは、γ−テルピネンシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(レモン(Citrus limon)からのAF514286、REGION:30..1832)及び(ウンシュウミカン(Citrus unshiu)からのAB110640、REGION 1..1803)が挙げられる。
【0091】
テルピノレン
構造が、
【化12】


であるテルピノレンは、クロフサスグリ、イトスギ、グアバ、レイシ、パパイヤ、松及び茶において見つけられる。テルピノレンは、テルピノレンシンターゼによってGPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、アメリカトガサワラ(Pseudotsuga menziesii)からのAY906866、REGION:10..1887が挙げられるが、これに限定されない。
【0092】
15化合物
本明細書に提供するC15化合物は、一般に、2つのIPP分子と1つのDMAPP分子の縮合によって作られるファルネシルピロリン酸(FPP)に由来する。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、ファルネシルピロリン酸シンターゼである。これらのC15化合物は、3つのイソプレン単位から誘導されるため、セスキテルペンとしても公知である。
【0093】
図3は、如何にしてIPP及びDMAPPを化合させてFPPを生産でき、それをさらにセスキテルペンへとプロセッシングできるかを概略的に示すものである。
【0094】
ファルネシルピロリン酸シンターゼについてのヌクレオチド配列の説明例としては、(ATU80605;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(ATHFPS2R;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(AAU36376;クソニンジン(Artemisia annua))、(AF461050;ウシ(Bos taurus))、(D00694;大腸菌(Escherichia coli)K−12)、(AE009951、Locus AAL95523;有核紡錘菌亜種ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum subsp. nucleatum)ATCC25586)、(GFFPPSGEN;ジベレラ(Gibberella fujikuroi))、(CP000009、Locus AAW60034;グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)621H)、(AF019892;ヒマワリ(Helianthus annuus))、(HUMFAPS;ヒト(Homo sapiens))、(KLPFPSQCR;クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、(LAU15777;シロバナハウチマメ(Lupinus albus))、(LAU20771;シロバナハウチマメ(Lupinus albus))、(AF309508;ハツカネズミ(Mus musculus))、(NCFPPSGEN;アカパンカビ(Neurospora crassa))、(PAFPS1;グアユールゴムノキ(Parthenium argentatum))、(PAFPS2;グアユールゴムノキ(Parthenium argentatum))、(RATFAPS;ドブネズミ(Rattus norvegicus))、(YSCFPP;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))、(D89104;分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe))、(CP000003、Locus AAT87386;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))、(CP000017、Locus AAZ51849;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))、(NC_008022、Locus YP_598856;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)MGAS10270)、(NC_008023、Locus YP_600845;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)MGAS2096)、(NC_008024、Locus YP_602832;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)MGAS10750)、及び(MZEFPS;トウモロコシ(Zea mays))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0095】
あるいは、IPPをGPPに添加することによってFPPを作ることもできる。この反応が可能な酵素をコードするヌクレオチド配列の説明例としては、(AE000657、Locus AAC06913;アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)VF5)、(NM_202836;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(D84432、Locus BAA12575;枯草菌(Bacillus subtilis)、(U12678、Locus AAC28894;ブラディリゾビウム・ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)USDA 110)、(BACFDPS;ゲオバシラス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus))、(NC_002940、Locus NP_873754;ヘモフィリス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)35000HP)、(L42023、Locus AAC23087;インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)Rd KW20)、(J05262;ヒト(Homo sapiens))、(YP_395294;ラクトバシラス・サケイ亜種サケイ(Lactobacillus sakei subsp. sakei)23K)、(NC_005823、Locus YP_000273;レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans)血清型(serovar)Copenhageni株Fiocruz L1−130)、(AB003187;ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、(NC_002946、Locus YP_208768;淋菌(Neisseria gonorrhoeae)FA1090)、(U00090、Locus AAB91752;リゾビウム属種(Rhizobium sp.)NGR234)、(J05091;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))、(CP000031、Locus AAV93568;シリシバクター・ポメロイ(Silicibacter pomeroyi)DSS−3)、(AE008481、Locus AAK99890;肺連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)R6)、及び(NC_004556、Locus NP 779706;ガハニコナカイガラムシ(Xylella fastidiosa)Temecula1)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0096】
次いで、その後FPPを様々なC15化合物に変換する。C15化合物の説明例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:
【0097】
アモルファジエン
構造が、
【化13】


であるアモルファジエンは、クソニンジン(Artemisia anna)によって作られるアルテミシニンの前駆体である。アモルファジエンは、アモルファジエンシンターゼによってFPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例は、米国特許第7,192,751号の配列番号37である。
【0098】
α−ファルネセン
構造が、
【化14】


であるα−ファルネセンは、アリのデュフール腺ならびにリンゴの皮及び西洋ナシの皮をはじめとする(しかし、これらに限定されない)様々な生物源において見つけられる。α−ファルネセンは、α−ファルネセンシンターゼによってFPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、セイヨウナシ(Pyrus communis)栽培品種d’Anjou(ナシ;遺伝子名AFS1)からのDQ309034及び栽培リンゴ(Malus domestica)(リンゴ;遺伝子AFS1)からのAY182241が挙げられるが、それらに限定されない。Pechouus et al, Planta 219 (1): 84-94 (2004)。
【0099】
β−ファルネセン
構造が、
【化15】


であるβ−ファルネセンは、アブラムシ及び精油(例えばハッカからのもの)をはじめとする(しかし、これらに限定されない)様々な生物源において見つけられる。野生ジャガイモなどの一部の植物において、β−ファルネセンは、天然の防虫剤として合成される。β−ファルネセンは、β−ファルネセンシンターゼによってFPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、コショウハッカ(Mentha x piperita)(ハッカ:遺伝子Tspa11)からのGenBankアクセッション番号AF024615、及びクソニンジン(Artemisia annua)からのAY835398が挙げられるが、それらに限定されない。Picaud et al., Phytochemistry 66(9): 961-967 (2005)。
【0100】
ファルネソール
構造が、
【化16】


であるファルネソールは、昆虫及び精油(例えばシトロネラ(cintronella)、ネロリ、シクラメン、レモングラス、ゲッカコウ及びバラからのもの)をはじめとする様々な生物源において見つけられる。ファルネソールは、ファルネソールシンターゼなどのヒドロキシラーゼによってFPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、トウモロコシ(Zea mays)からのGenBankアクセッション番号AF529266及びサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)(遺伝子Pho8)からのYDR481Cが挙げられるが、それらに限定されない。Song, L., Applied Biochemistry and Biotechnology 128: 149-158 (2006)。
【0101】
ネロリドール
構造が、
【化17】


であるネロリドールは、ペルビオールとしても公知であり、ならびに例えば精油、例えばネロリ、ショウガ、ジャスミン、ラベンダー、ティーツリー及びレモングラスからのもの、をはじめとする様々な生物源において見つけられる。ネロリドールは、ネロリドールシンターゼなどのヒドロキシラーゼによってFPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、トウモロコシ(Zea mays)(トウモロコシ;遺伝子tps1)からのAF529266が挙げられるが、これに限定されない。
【0102】
パチョロール
構造が、
【化18】


であるパチョロール(patchoulol)は、パチョリアルコールとしても公知であり、ポゴステモン・パチョリ(Pogostemon patchouli)の精油の構成成分である。パチョロールは、パチョロールシンターゼによってFPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、パチョリ(Pogostemon cablin)からのAY508730 REGION:1..1659が挙げられるが、これに限定されない。
【0103】
バレンセン
構造が、
【化19】


であるバレンセンは、オレンジの香り及び風味の主化学成分の1つであり、オレンジの皮において見つけられる。バレンセンは、ヌートカトンシンターゼ(nootkatone synthase)によってFPPから作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、オレンジ(Citrus sinensis)からのAF441124 REGION:1..1647及びエゴマ(Perilla frutescens)からのAY917195 REGION:1..1653が挙げられるが、それらに限定されない。
【0104】
20化合物
本明細書に提供するC20化合物は、一般に、3つのIPP分子と1つのDMAPP分子の縮合によって作られるゲラニルゲラニオールピロリン酸(GGPP)に由来した。この工程を触媒することが公知の酵素は、例えば、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼである。これらのC20化合物は、4つのイソプレン単位から誘導されるため、ジテルペンとしても公知である。
【0105】
図3は、如何にしてIPP及びDMAPPを併せてGGPPを生産でき、それをさらにジテルペンへとプロセッシングできるのか、又はそれをさらにプロセシングしてカルチノイドを生産できるのかを概略的に示すものである。
【0106】
ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼについてのヌクレオチド配列の説明例としては、(ATHGERPYRS;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(BT005328;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(NM_119845;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(NZ_AAJM01000380、Locus ZP_00743052;バシラス・スリンジエンシス(Bacillus thuringiensis)血清型(serovar)israelensis、ATCC 35646 sq1563)、(CRGGPPS;ニチニチソウ(Catharanthus roseus)、(NZ_AABF02000074、Locus ZP_00144509;有核紡錘菌亜種ビンセンティイ(Fusobacterium nucleatum subsp. vincentii)、ATCC 49256)、(GFGGPPSGN;ジベレラ(Gibberella fujikuroi))、(AY371321;イチョウ(Ginkgo biloba))、(AB055496;ヘベア・ブラジリエンシス(Hevea brasiliensis))、(AB017971;ヒト(Homo sapiens))、(MCI276129;ムコール・シルシネロイデス f.ルシタニクス(Mucor circinelloides f. lusitanicus))、(AB016044;ハツカネズミ(Mus musculus))、(AABX01000298、Locus NCU01427;アカパンカビ(Neurospora crassa))、(NCU20940;アカパンカビ(Neurospora crassa))、(NZ_AAKL01000008、Locus ZP_00943566;ラルストニア・ソラナケアルム(Ralstonia solanacearum)UW551)、(AB118238;ドブネズミ(Rattus norvegicus))、(SCU31632;サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae))、(AB016095;シネココッカス・エロンゲート(Synechococcus elongates))、(SAGGPS;シロガラシ(Sinapis alba))、(SSOGDS;スルフォロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius))、(NC_007759、Locus YP_461832;シントロファス・アシディトロフィクス(Syntrophus aciditrophicus)SB)、及び(NC_006840、Locus YP_204095;ビブリオ・フィッシェリ(Vibrio fischeri)ES114)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0107】
あるいは、IPPをFPPに添加することによってGGPPを作ることもできる。この反応が可能である酵素をコードするヌクレオチド配列の説明例としては、(NM_112315;シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、(ERWCRTE;パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、(D90087、Locus BAA14124;パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis))、(X52291、Locus CAA36538;ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、(AF195122、Locus AAF24294;ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides))、及び(NC_004350、Locus NP_721015;ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)UA159)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0108】
次いで、その後、GGPPを様々なC20イソプレノイドに変換する。C20化合物の説明例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:
【0109】
ゲラニルゲラニオール
構造が、
【化20】


であるゲラニルゲラニオールは、セドレラ・チューナ(Cedrela toona)からのウッドオイルの及び亜麻仁油の構成成分である。ゲラニルゲラニオールは、例えば、GGPPシンターゼに関する遺伝子の後に、発現構築物のホスファターゼ遺伝子を付加させることによって、作ることができる。
【0110】
アビエタジエン
アビエタジエンは、次の異性体:
【化21】


を含み、グランディスモミ(Abies grandis)などの木において見つけられる。アビエタジエンは、アビエタジエンシンターゼによって作られる。適するヌクレオチド配列の説明例としては、(U50768;グランディスモミ(Abies grandis))及び(AY473621;オウシュウトウヒ(Picea abies))が挙げられるが、それらに限定されない。
【0111】
20+化合物
20+化合物も本明細書に提供する範囲内である。そのような化合物の説明例としては、セステルテルペン(5つのイソプレン単位から作られたC25化合物)、トリテルペン(6つのイソプレン単位から作られたC30化合物)、及びテトラテルペン(8つのイソプレン単位から作られたC40化合物)が挙げられる。本明細書に記載する類似の方法の使用、及び適切なシンターゼに関するヌクレオチド配列の置換又は付加によって、これらの化合物を作る。
【0112】
イソプレノイド化合物の高い収率
エタノールを炭素源として使用する条件下で宿主細胞を培養又は維持することによる、イソプレノイドの強靭な生産のための組成物及び方法を本明細書に提供する。本明細書に記載する方法を用いると、宿主細胞は、発酵反応混合物のリットル当たり約5グラム(5g/L)より多くのイソプレノイドを生産する。他の実施形態では、約10g/Lより多く、約15g/Lより多く、約20g/Lより多く、約25g/Lより多くが生産され、又は約30g/Lより多くのイソプレノイドが生産される。
【0113】
あるいは、イソプレノイド生産を収率ではなく比生産性によって表現することができる。例えば、本明細書に記載する方法を用いると、宿主細胞は、乾燥宿主細胞のグラム当たり約50ミリグラムより多くのイソプレノイドを生産する。他の実施形態では、グラム乾燥細胞重量当たり約100ミリグラムより多く、グラム乾燥細胞重量当たり約150ミリグラムより多く、グラム乾燥細胞重量当たり約200ミリグラムより多く、グラム乾燥細胞重量当たり約250ミリグラムより多く、グラム乾燥細胞重量当たり約500ミリグラムより多く、グラム乾燥細胞重量当たり約750ミリグラムより多く、又はグラム乾燥細胞重量当たり約1000ミリグラムより多くのイソプレノイドが生産される。
【0114】
生産レベルを収率によって表現するにせよ、比生産性によって表現するにせよ、約120時間未満、約96時間未満、約72時間未満、好ましくは約48時間未満、又はさらに約24時間未満の間、産生させる。
【0115】
本明細書に提供する方法は、バッチ、流加(fed-batch)、又は連続プロセスで行うことができる。バッチプロセスは、概してクローズドプロセスであり、この場合、すべての原料がそのプロセスの開始時に添加される。流加プロセスは、概してクローズドプロセスであり、この場合、炭素源及び/又は他の基質は、そのプロセス全体を通して漸増で添加される。流加プロセスでは、培地及び微生物増殖のより優れた制御が可能になる。連続プロセスは、オープンシステムと見なすことができ、この場合、培地が連続的に添加され、同時に産物が除去される。
【0116】
流加プロセスと連続プロセスの間のプロセスを用いることもできる。例えば、1つの実施形態において、プロセスを流加プロセスとして始め、プロセスが継続している間、有機層を培養培地と接触する状態に置く。水溶液におけるより高い有機液への溶解度を概して有するイソプレノイドは、その培地から有機層に抽出される。その培地から産物を除去するため、この方法は、流加プロセスと連続プロセスの両方の特徴を有する。
【0117】
有機オーバーレイ(例えば、ドデカン、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸メチルなど)による産物除去は、多くの場合、イソプレノイド生産の増加をもたらすことができる。産物除去は、生産増加をもたらすことができ、及び特に産物蓄積が経路阻害をもたらす場合、望ましい。一定の実施形態では、前記有機層が、イソプレノイド産物それ自体によって形成されることがある。これは、イソプレノイドが、その飽和点より多く生産され、水性培地から分離できる層を形成する場合に発生する。
【0118】
一部の実施形態において、エタノールは、宿主細胞にとって唯一の炭素源である。他の実施形態において、前記炭素源は、エタノール炭素源と非エタノール炭素源の両方を含む。さらに他の実施形態において、前記非エタノール炭素源は、炭水化物である。
【0119】
炭水化物の説明例としては、単糖類、二糖類、及びそれらの組み合わせが挙げられる。適する単糖類の一部の非限定的な例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、リボース、及びそれらの組み合わせが挙げられる。適する二糖類の一部の非限定的な例としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、及びそれらの組み合わせが挙げられる。適する多糖類の一部の非限定的な例としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。他の炭水化物源としては、キビ汁及び糖蜜が挙げられる。
【0120】
一般に、多糖類は、宿主細胞のための炭素源として使われる前に、化学的手段又は酵素法によって先ず単糖類及びオリゴ糖類に変換される。例えば、セルロースを酵素セルラーゼによってグルコースに変換することができる。一定の実施形態において、多糖類の分解後、単糖類及び/又はオリゴ糖類は、発酵の開始時に判定すると、その炭素源の少なくとも約50重量%を構成する。他の実施形態において、単糖類及び/又はオリゴ糖類は、発酵の開始時に判定すると、その炭素源の少なくとも約80重量%を又は90重量%までもを構成するので、その発酵培地はセルロースを本質的には含まない。
【0121】
一定の実施形態では、エタノールが炭素源として宿主細胞に外因的に供給される。他の実施形態では、宿主細胞によって炭素源として消費されるエタノールは、それらの宿主細胞によって作られた。言い換えると、非エタノール炭素源(概して炭水化物)が宿主細胞に供給され、それが宿主細胞によってエタノールに変換され、その後、エタノールは宿主細胞によって消費される。
【0122】
宿主細胞のエタノール使用は、多数の方法で定量することができる。1つの方法では、エタノール濃度が用いられる。炭素源であることに加えて、培地中のエタノールの存在は、微生物汚染物質を阻止するという有益な効果も有する。
【0123】
従って、1つの実施形態において、培地中のエタノール濃度は、少なくとも4時間、培地のリットル当たり少なくとも約1グラムである。前記エタノール濃度は、当該分野において公知のいずれの方法によって決定してもよい。培地をサンプリングすることによって直接測定してもよく、又はオフガスをサンプリングすることによって間接的に測定してもよい。質量分光光度計によるオフガス分析などの間接法を用いる場合、先ず、百万分率でのオフガス測定値と培地中のエタノールの直接測定値との相関関係を確立しなければならない。他の実施形態において、培地中のエタノール濃度は、培地のリットル当たり約1グラムと約5グラムの間、約1グラムと約10グラムの間、又は約1グラムと約20グラムの間である。さらに他の実施形態において、培地中のエタノール濃度は、培地のリットル当たり約10グラムより大きく、又は、培地のリットル当たり約20グラムより大きい。さらに他の実施形態において、上のエタノール濃度は、少なくとも6時間、8時間、10時間、12時間、24時間、又は48時間維持される。
【0124】
しかし、宿主細胞は、検出できないレベルのエタノール又はゼロに近いエタノール濃度を有するにもかかわらず、エタノールを炭素源として使用し続ける場合がある。例えば、これは、エタノールが供給されるのと同じ速さで宿主細胞がエタノールを消費するときに発生し得る。結果として、宿主細胞のエタノール利用率の代替測度を本明細書において提供する。
【0125】
もう1つの実施形態において、宿主細胞は、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり少なくとも0.01グラムのエタノールという比エタノール消費速度を有する。他の実施形態において、前記比エタノール消費速度は、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり約0.01グラムと約0.20グラムの間のエタノール、又は約0.02グラムと約0.10グラムの間のエタノールである。さらに他の実施形態において、前記比エタノール消費速度は、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり約0.10グラムのエタノールより大きい。前記比エタノール消費速度は、少なくとも4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、24時間、又は48時間、維持される。
【0126】
あるいは、比エタノール消費速度は、1日につき乾燥細胞重量のグラム当たりのエタノールのグラム数によって表現される。一部の実施形態において、前記宿主細胞は、1日につき乾燥細胞重量のグラム当たり少なくとも0.2グラムのエタノールという比エタノール消費速度を有する。一部の実施形態において、前記比エタノール消費速度は、1日につき乾燥細胞重量のグラム当たり約0.2グラムと約5グラムの間、又は約0.5グラムと約3グラムの間のエタノールである。他の実施形態において、前記比エタノール消費速度は、1日につき乾燥細胞重量のグラム当たり約3グラムのエタノールより大きい。
【0127】
一定の実施形態において、前記細胞は、酸素によって制限されない条件下で培養又は維持される。言い換えると、前記細胞は、好気的条件下にある。
【0128】
しかし、完全好気的条件の維持は、特に大規模プロセス酸素(large scale processes oxygen)の場合、物質移動の限界及び水溶液への酸素の比較的低い溶解度のため難しい。例えば、タンクへのスパージ(sparge)に空気を用いた場合、水への酸素の溶解度は、20℃でリットル当たり9ミリグラムである。空気ではなく純粋な酸素を用いた場合には、その溶解度がリットル当たり43ミリグラムへと増加する。(空気をスパージする又は純粋な酸素をスパージする)いずれの場合も、この酸素量は、酸素が継続的に供給されない限り、活性な密集した微生物集団によって数秒のうちに使い尽くされる。比較では、同じ期間(数秒、例えば、1分未満)の間にそれらの細胞によって使われる他の養分の量は、体積濃度と比較すると無視できる。
【0129】
本発明者らは、本明細書に提供する宿主細胞が、多少の期間の酸素制限に耐えることができ、高レベルのイソプレノイド化合物を依然として作ることができることを発見した。この柔軟性が、タンク設計の点での節約、低減される酸素ガス領域、より低い通気エネルギー費用などをもたらすことによって、より経済的なプロセスを可能にする。さらに、一定の状況下では、酸素制限は有益であるようである。理論による拘束を受けないが、酸素制限条件下での細胞増殖は、より多くの炭素をバイオマス又は二酸化炭素による喪失にではなく産物に向かわせるようである。
【0130】
結論として、一定の他の実施形態において、宿主細胞は、酸素制限されている条件下で培養又は維持される。この酸素制限期間としては、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、又は少なくとも48時間が挙げられる。
【0131】
酸素制限は、宿主細胞の比増殖速度が、酸素が制限されない(例えば、過剰に供給される)場合の最大比増殖速度より低いとき、発生する。比増殖速度は、単位時間についてのバイオマスの単位当たりの細胞増殖の速度であり、逆数時間(1/t)の単位を有する。培養培地中の細胞についての最大比増殖速度は、この場合は酸素である、増殖速度に対する基質濃度の影響に関係づけられる。一般に、細胞は、低い基質レベルではゆっくりと増殖し、そして培地中の基質のレベルが増すにつれて、細胞増殖速度も増すこととなる。しかし、細胞増殖の速度は、無期限には上昇し続けず、高い基質レベルでは、基質量の所与の増加が、細胞増殖速度の増加をどんどん小さくさせるであろう。従って、最終的に増殖速度は限界に達し、多くの場合、それが最大比増殖速度と呼ばれる。
【0132】
培養における増殖速度間の関係の理論処理は、当業者に周知であり、Monod式と呼ばれる。例えば、Pirt, Principles of Microbe and Cell Cultivation, Wiley, NY, 1975, pages 4-10を参照のこと。この理論処理において、最大比速度は、無限基質レベルに達するまで決して達することのない漸近的限界である。しかし、実際には、最大比増殖速度は、研究下の条件(例えば、酸素などの基質レベル)が最速の初期増殖速度を支援するときに得られると考えることができる。例えば、流加反応器の場合、増殖に必要なすべての基質(例えば、養分及び酸素)が過剰に供給され、発酵が宿主細胞にとって最適な温度で行われる初期条件が、最大増殖速度のための条件とみなされる。例えば、Lee et al. (1996) Trends Biotechnol. 14: 98-105及びKorz et al. (1995) J Biotechnology 39:59-65を参照のこと。最大比増殖速度は、時として、無限増殖とも呼ばれる。
【0133】
1つの方法において、酸素制限は、培地中の酸素濃度によって定量され、溶存酸素濃度(DOC)によって表現される。培養培地中のDOCは、約20%未満、約15%未満、約10%未満、及び約5%未満であり得る。他の実施形態において、DOCは、ほぼ0%又は検出レベル未満である。
【0134】
しかし、酸素が細胞によって比較的急速に消費されるため、ゼロのDOCは、それらの細胞が嫌気的条件(無酸素)下で培養されていることを意味する場合もあり、又はそれらの細胞が、供給されるのと同じくらい速く酸素を消費していることを意味する場合もある。もう1つの方法では、細胞の酸素使用は、これらの2つの可能性を区別するために酸素摂取率(OUR;培地のリットル当たりの細胞の酸素消費の割合)によって表現される。適する酸素摂取率としては、培地のリットル当たり約50mmol未満、約40mmol未満、約30mmol未満、約20mmol未満、又は培地のリットル当たり約10mmol未満が挙げられる。
【0135】
あるいは、細胞密度に関して正規化した値が好ましいときには、比酸素摂取速度(SOUR(細胞密度で割ったOURである))を用いることができる。発酵のリットル当たりの微生物の量、すなわち微生物の密度は、所与の体積の発酵培地から単離された微生物の重量を測定することによって測定することができる。一般的な測度は、発酵培地のリットル当たりの細胞の乾燥重量である。発酵を、それが進行している間、モニターするために用いることができるもう1つの方法は、その培地の光学密度の測定によるものである。一般的な方法は、OD600と呼ばれる、600nmの波長での光学密度、すなわちOD、を測定することである。このODは、特定の培地中の特定のタイプの生物の密度と相関させることができるが、ODと体積当たりの微生物の量との特異的関係は、一般に、すべてのタイプの培地中のすべてのタイプの生物にわたっては適用できないであろう。ある細胞密度範囲にわたってOD及び乾燥細胞重量を測定することにより、較正曲線を作成することができる。場合によっては、これらの相関関係を、同じ又は類似の培地中の同じ又は類似の微生物の異なる発酵に用いることができることがある。適する比酸素摂取速度としては、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり約30mmol未満、約25mmol未満、約20mmol未満、約15mmol未満、約10mmol未満、又は約5mmol未満が挙げられる。
【0136】
本発明者らは、本明細書に提供する宿主細胞が、多少の期間のリン酸塩制限(phasphate limitation)に耐えることができ、高レベルのイソプレノイド化合物を依然として作ることができることを見出した。理論による拘束を受けないが、リン酸塩制限条件下での細胞増殖は、より多くの炭素をバイオマスではなく産物に向かわせるようである。培地中のリン酸塩の適する濃度は、培地のリットル当たり約5グラム未満、約4グラム未満、約3グラム未満、約2グラム未満、又は約1グラム未満である。一定の実施形態において、前記リン酸塩濃度は、ゼロ又は検出レベル未満である。そのようなリン酸塩制限期間としては、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、又は少なくとも48時間が挙げられる。
【0137】
(酸素制限される、リン酸塩制限される、又は両方)制限条件が課される前に宿主細胞を(最大比増殖に可能にする)非制限条件下で増殖させて、十分なバイオマスを作ることができる。これらの制限条件としては、比増殖が最大比増殖速度の約90%、80%、75%、60%、50%、40%、30%、25%、20%、10%、5%又は1%未満であるような条件が挙げられる。
【0138】
特定の実施形態を本明細書に提供するが、上述の説明は、例証のためのものであり、本実施形態の範囲を限定しない。本実施形態の範囲内の他の態様、利点、及び変形は、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0139】
別の指示が無い限り、当該分野の技能の範囲内である生合成産業などの従来の技術を用いて、本明細書に提供する実施形態を実施することができる。そのような技術が本明細書において十分に説明されていない範囲に関しては、科学文献の中でそれらへの豊富な論及を見つけることができる。
【0140】
以下の実施例は、用いる数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するように努力したが、変動及び偏差を含む場合があり、また、万が一、本明細書に報告する数に関する誤記が存在する場合には、当業者は、本明細書中の残りの開示にかんがみて正しい量を導き出すことができる。別の指示が無い限り、温度は、摂氏度で報告し、圧力は、海面での大気圧である又はその付近の気圧である。別の指示が無い限り、すべての試薬は、市場で得た。以下の実施例は、説明目的だけのためのものであり、本明細書に提供する実施形態の範囲を如何なる点においても限定しない。
【0141】
実施例1
この実施例は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の特定の染色体位置への、MEV経路の酵素をはじめとする酵素をコードする核酸の、ターゲッティングされた組込みのためのベクターを作る方法を説明するものである。
【0142】
サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)株Y002及びY003(CEN.PK2バックグラウンドMATA又はMATα ura3−52 trp1−289 leu2−3、112 his3Δ1 MAL2−8C SUC2)(van Dijken et al. (2000) Enzyme Microb. Technol. 26:706-714)、Y007(S288CバックグラウンドMATA trp1Δ63)(ATCC番号200873)、ならびにEG123(MATA ura3 trp1 leu2 his4 can1)(Michaelis & Herskowitz. (1988) Mol. Cell. Biol. 8: 1309-1318)からゲノムDNAを単離した。1% 酵母エキスと2% バクト−ペプトンと2% デキストロースとを含有する液体培地(YPD培地)中で一晩、これらの株を増殖させた。3,100rpmで遠心分離し、10mL 超純水で細胞ペレットを洗浄し、再び遠心分離することによって、10mL 液体培養物から細胞を単離した。Y−DER酵母DNA抽出キット(イリノイ州、ロックフォードのPierce Biotechnologies)を製造業者が提案したプロトコルに従って使用してゲノムDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAを100uL 10mM Tris−Cl、pH8.5に再び懸濁させ、ND−1000分光光度計(デラウェア州、ウィルミントンのNanoDrop Technologies)でOD260/280測定をして、ゲノムDNA濃度及び純度を決定した。
【0143】
Phusion High Fidelity DNA Polymeraseシステム(フィンランド、エスポーのFinnzymes OY)を製造業者が提案したプロトコルに従って使用して、Applied Biosystems 2720 Thermocycler(カリフォルニア州、フォスターシティーのApplied Biosystems Inc.)において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNA増幅を行った。TOPO TA pCR2.1クローニングベクター(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen)に挿入することとなるDNAフラグメントのPCR増幅が完了したら、1uLのQiagen Taq Polymerase(カリフォルニア州、バレンシアのQiagen)をその反応混合物に添加し、さらに10分間、72℃ PCR伸長工程を行い、その後、4℃に冷却することによって、ヌクレオチドオーバーハングを作った。PCR増幅が完了したら、8uLの50%グリセロール溶液をその反応混合物に添加した。
【0144】
0.5ug/mL 臭化エチジウムを含有する1%TBE(0.89M Tris、0.89M ホウ酸、0.02M EDTAナトリウム塩)アガロースゲルを使用して、120V、400mAで30分間、アガロースゲル電気泳動を行った。紫外線を使用してDNAバンドを可視化した。滅菌した安全かみそりの刃でそのゲルからDNAバンドを切り取り、Zymoclean Gel DNA Recovery Kit(カリフォルニア州、オレンジのZymo Research)を製造業者が提案したプロトコルに従って用いて、その切り取ったDNAをゲル精製した。その精製したDNAを10uL 超純水に溶出し、ND−1000分光光度計でOD260/280測定をしてDNA濃度及び純度を決定した。
【0145】
100−500ugの精製PCR産物及びHigh Concentration T4 DNA Ligase(マサチューセッツ州、イプスウィッチのNew England Biolabs)を製造業者が提案したプロトコルに従って用いてライゲーションを行った。プラスミド増殖のために、ライゲートした構築物を、大腸菌(Escherichia coli)DH5α化学的コンピテント細胞(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen)に、製造業者が提案したプロトコルに従って形質転換した。1.5% Bacto Agarと1% トリプトンと0.5% 酵母エキスと1% NaClと適切な抗生物質とを含有する固体培地を用いて、陽性形質転換体を選択した。単離した形質転換体を、16時間、適切な抗生物質を含有する液体Luria−Bertoni(LB)培地中、37℃で増殖させ、QIAprep Spin Miniprep kit(カリフォルニア州、バレンシアのQiagen)を製造業者が提案したプロトコルに従って使用してプラスミドを単離して精製した。診断用制限酵素消化を行い、アガロースゲルでDNAフラグメントを分割し、紫外線を使用してそれらのバンドを可視化することによって、構築物を検証した。選択構築物をDNA塩基配列決定によっても検証し、これは、Elim Biopharmaceuticals Inc.(カリフォルニア州、ヘイワード)が行った。
【0146】
プラスミドpAM489は、ベクターpAM471のERG20−PGAL−tHMGRインサートをベクターpAM466に挿入することによって生じさせた。ベクターpAM471は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のERG20遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)(ERG20ヌクレオチド位置1から1208;ATG開始コドンのAがヌクレオチド1である)(ERG20)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の互いに異なるGAL1及びGAL10プロモーターを含有するゲノム座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668)(PGAL)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のHMG1遺伝子のトランケートされたORF(HMG1ヌクレオチド位置1586から3323)(tHMGR)とを含むDNAフラグメントERG20−PGAL−tHMGRを、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクター(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen)に挿入することによって生じさせた。ベクターpAM466は、ヌクレオチド位置−856から位置548に広がるセグメントであって、塩基−226と−225の間に非天然内部XmaI制限部位を保有するサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の野生型TRP1遺伝子座のセグメントを含むDNAフラグメントTRP1−856から+548(TRP1−856〜+548)を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクター(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen)に挿入することによって生じさせた。DNAフラグメントERG20−PGAL−tHMGR及びTRP1−856から+548は、表1において概説するようなPCR増幅によって生じさせた。pAM489の構築のために、XmaI制限酵素(マサチューセッツ州、イプスウィッチのNew England Biolabs)を使用して400ngのpAM471及び100ngのpAM466を最後まで消化し、ERG20−PGAL−tHMGRインサート及び線形化されたpAM466ベクターに対応するDNAフラグメントをゲル精製し、4モル当量のその精製インサートを1モル当量のその精製線形化ベクターとライゲートしてpAM489を得た。図4Aは、ERG20−PGAL−tHMGRインサートのマップを示し、配列番号:1は、隣接TRP1配列を伴うそのインサートのヌクレオチド配列を示す。
【表1】

【0147】
プラスミドpAM491は、ベクターpAM472のERG13−PGAL−tHMGRインサートをベクターpAM467に挿入することによって生じさせた。ベクターpAM472は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のERG13遺伝子のORF(ERG13ヌクレオチド位置1から1626)(ERG13)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の互いに異なるGAL1及びGAL10プロモーターを含有するゲノム座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668)(PGAL)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のHMG1遺伝子のトランケートされたORF(HMG1ヌクレオチド位置1586から3323)(tHMGR)とを含むDNAフラグメントERG13−PGAL−tHMGRを、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクターに挿入することによって生じさせた。ベクターpAM467は、ヌクレオチド位置−723から位置−224に広がるセグメントであって、塩基−224と−223の間に非天然内部XmaI制限部位を保有するサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の野生型URA3遺伝子座のセグメントを含むDNAフラグメントURA3−723から701を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクターに挿入することによって生じさせた。DNAフラグメントERG13−PGAL−tHMGR及びURA3−723から701は、表2において概説するようなPCR増幅によって生じさせた。pAM491の構築のために、XmaI制限酵素を使用して400ngのpAM472及び100ngのpAM467を最後まで消化し、ERG13−PGAL−tHMGRインサート及び線形化されたpAM467ベクターに対応するDNAフラグメントをゲル精製し、4モル当量のその精製インサートを1モル当量のその精製線形化ベクターとライゲートしてpAM491を得た。図4Bは、ERG13−PGAL−tHMGRインサートのマップを示し、配列番号:2は、隣接URA3配列を伴うそのインサートのヌクレオチド配列を示す。
【表2】

【0148】
プラスミドpAM493は、ベクターpAM473のIDI1−PGAL−tHMGRインサートをベクターpAM468に挿入することによって生じさせた。ベクターpAM473は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のIDI1遺伝子のORF(IDI1ヌクレオチド位置1から1017)(IDI1)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の互いに異なるGAL1及びGAL10プロモーターを含有するゲノム座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668)(PGAL)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のHMG1遺伝子のトランケートされたORF(HMG1ヌクレオチド位置1586から3323)(tHMGR)とを含むDNAフラグメントIDI1−PGAL−tHMGRを、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクターに挿入することによって生じさせた。ベクターpAM468は、ヌクレオチド位置−225から位置653に広がるセグメントであって、塩基−226と−225の間に非天然内部XmaI制限部位を保有するサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の野生型ADE1遺伝子座のセグメントを含むDNAフラグメントAED1−825から653を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクターに挿入することによって生じさせた。DNAフラグメントIDI1−PGAL−tHMGR及びADE1−825から653は、表3において概説するようなPCR増幅によって生じさせた。pAM493の構築のために、XmaI制限酵素を使用して400ngのpAM473及び100ngのpAM468を最後まで消化し、IDI1−PGAL−tHMGRインサート及び線形化されたpAM468ベクターに対応するDNAフラグメントをゲル精製し、4モル当量のその精製インサートを1モル当量のその精製線形化ベクターとライゲートしてベクターpAM493を得た。図4Cは、IDI1−PGAL−tHMGRインサートのマップを示し、配列番号:3は、隣接ADE1配列を伴うそのインサートのヌクレオチド配列を示す。
【表3】

【0149】
プラスミドpAM495は、pAM474のERG10−PGAL−ERG12インサートをベクターpAM469に挿入することによって生じさせた。ベクターpAM474は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のERG10遺伝子のORF(EGR10ヌクレオチド位置1から1347)(ERG10)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の互いに異なるGAL1及びGAL10プロモーターを含有するゲノム座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668)(PGAL)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のERG12遺伝子のORF(ERG12ヌクレオチド位置1から1482)(ERG12)とを含むDNAフラグメントERG10−PGAL−ERG12を、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクターに挿入することによって生じさせた。ベクターpAM469は、ヌクレオチド位置−32から位置−1000及びヌクレオチド位置504から位置1103に広がるサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のHIS遺伝子座の2つのセグメント、HISMXマーカー、及びそのHIS3504から−1103配列とそのHISMXマーカーの間の非天然XmaI制限部位を含む、DNAフラグメントHIS3−32から−1000−HISMX−HIS3504から−1103を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクターに挿入することによって生じさせた。DNAフラグメントERG10−PGAL−ERG12及びHIS3−32から−1000−HISMX−HIS3504から−1103は、表4において概説するようなPCR増幅によって生じさせた。pAM495の構築のために、XmaI制限酵素を使用して400ngのpAM474及び100ngのpAM469を最後まで消化し、ERG10−PGAL−ERG12インサート及び線形化されたpAM469ベクターに対応するDNAフラグメントをゲル精製し、4モル当量のその精製インサートを1モル当量のその精製線形化ベクターとライゲートしてベクターpAM495を得た。図4Dは、ERG10−PGAL−ERG12インサートのマップを示し、配列番号:4は、隣接HIS3配列を伴うそのインサートのヌクレオチド配列を示す。
【表4】

【0150】
プラスミドpAM497は、pAM475のERG8−PGAL−ERG19インサートをベクターpAM470に挿入することによって生じさせた。ベクターpAM475は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のERG8遺伝子のORF(ERG8ヌクレオチド位置1から1512)(ERG8)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)の互いに異なるGAL1及びGAL10プロモーターを含有するゲノム座(GAL1ヌクレオチド位置−1から−668)(PGAL)と、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のERG19遺伝子のORF(ERG19ヌクレオチド位置1から1341)(ERG19)とを含むDNAフラグメントERG8−PGAL−ERG19を、TOPO Zero Blunt IIクローニングベクターに挿入することによって生じさせた。ベクターpAM470は、ヌクレオチド位置−100から位置450及びヌクレオチド位置1096から位置1770に広がるサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のLEU2遺伝子座の2つのセグメント、HISMXマーカー、及びそのLEU21096から1770配列とそのHISMXマーカーの間の非天然XmaI制限部位を含む、DNAフラグメントLEU2−100から450−HISMX−LEU21096から1770を、TOPO TA pCR2.1クローニングベクターに挿入することによって生じさせた。DNAフラグメントERG8−PGAL−ERG19及びLEU2−100から450−HISMX−LEU21096から1770は、表5において概説するようなPCR増幅によって生じさせた。pAM497の構築のために、XmaI制限酵素を使用して400ngのpAM475及び100ngのpAM470を最後まで消化し、ERG8−PGAL−ERG19インサート及び線形化されたpAM470ベクターに対応するDNAフラグメントを精製し、4モル当量のその精製インサートを1モル当量のその精製線形化ベクターとライゲートしてベクターpAM497を得た。図4Eは、ERG8−PGAL−ERG19インサートのマップを示し、配列番号:5は、隣接LEU2配列を伴うそのインサートのヌクレオチド配列を示す。
【表5】

【0151】
実施例2
この実施例は、本明細書に提供する実施形態において有用なプラスミド及びDNAフラグメントを作る方法を説明するものである。
【0152】
プラスミドpAM584は、DNAフラグメントGAL74から1021−HPH−GAL11637から2587をTOPO ZERO Blunt IIクローニングベクター(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen)に挿入することによって生じさせた。DNAフラグメントGAL74から1021−HPH−GAL11637から2587は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のGAL7遺伝子のORF(GAL7ヌクレオチド位置4から1021)(GAL74から1021)、ヒグロマイシン耐性カセット(HPH)、及びサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のGAL1遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)のセグメント(GAL1ヌクレオチド位置1637から2587)を含む。このDNAフラグメントは、表6において概説するようなPCR増幅によって生じさせた。図4Fは、DNAフラグメントGAL74から1021−HPH−GAL11637から2587のマップ及び配列番号:9ヌクレオチド配列を示す。
【表6】

【0153】
DNAフラグメントGAL80−50から−1−NatR−GAL801309から1358は、PCR増幅によって生じさせた。このDNAフラグメントは、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のGAL80遺伝子のコーディング領域の直ぐ上流及び直ぐ下流(それぞれ、GAL80ヌクレオチド位置−50から−1及び1309から1358;GAL80−50から−1及びGAL801309から1358)にそれぞれ位置する50ヌクレオチドの2つのセグメントが隣接している、ストレプトマイセス・ナーセイ(Streptomyces noursei)のナーセオトリシン(nourseothricin)耐性選択可能マーカー遺伝子(NatR)を含む。図4Gは、DNAフラグメントGAL80−50から−1−NatR−GAL801309から1358のマップ及び配列番号:8ヌクレオチド配列を示す。
【0154】
DNAフラグメントGAL11から48−NatR−GAL11500から1550は、PCR増幅によって生じさせた。このDNAフラグメントは、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のGAL1遺伝子のコーディング領域の5’及び3’末端にそれぞれ位置する40から50ヌクレオチドの2つのセグメントが隣接している、ストレプトマイセス・ナーセイ(Streptomyces noursei)のナーセオトリシン耐性選択可能マーカー遺伝子(NatR)を含む(それぞれ、GAL1ヌクレオチド位置1から48及び1500から1550;GAL11から48及びGAL11500から1550)。図4Hは、DNAフラグメントGAL11から48−NatR−GAL11500から1550のマップ及び配列番号:68ヌクレオチド配列を示す。
【0155】
発現プラスミドpAM353は、β−ファルネセンシンターゼをコードするヌクレオチド配列をpRS425−Gallベクター(Mumberg et al. (1994) Nucl. Acids. Res. 22(25):5767-5768)に挿入することによって生じさせた。このヌクレオチド配列インサートは、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のためにコドン最適化されたクソニンジン(Artemisia annua)のβ−ファルネセンシンターゼ遺伝子のコーディング配列(GenBankアクセッション番号AY835398)(配列番号:10)をテンプレートとして使用して合成により生じさせた。その合成により生じさせたヌクレオチド配列には5’BamHI及び3’XhoI制限部位が隣接しており、従って、標準pUC又はpACYC由来ベクターなどのクローニングベクターに適合する制限部位にそれをクローニングすることができた。BamHI及びXhoI制限酵素を使用してDNA合成構築物を最後まで消化することによって、その合成により生じさせたヌクレオチド配列を単離した。その反応混合物をゲル電気泳動によって分割し、β−ファルネセンシンターゼコーディング配列を含むおよそ1.7kbのDNAフラグメントをゲル抽出し、単離されたDNAフラグメントをpRS425−GallベクターのBamHI XhoI制限部位にライゲートして発現プラスミドpAM353を得た。
【0156】
発現プラスミドpAM404は、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のためにコドン最適化された、クソニンジン(Artemisia annua)のβ−ファルネセンシンターゼをコードするヌクレオチド配列を、ベクターpAM178(配列番号:69)に挿入することによって生じさせた。プライマー52−84 pAM326 BamHI(配列番号:71)及び52−84 pAM326NheI(配列番号:72)を使用して、β−ファルネセンシンターゼをコードするそのヌクレオチド配列をpAM353からPCR増幅させた。結果として生じたPCR産物を、BamHI及びNheI制限酵素を使用して最後まで消化し、その反応混合物をゲル電気泳動によって分割し、β−ファルネセンシンターゼコーディング配列を含むおよそ1.7kbのDNAフラグメントをゲル抽出し、単離されたDNAフラグメントをベクターpAM178のBamHI NheI制限部位にライゲートして発現プラスミドpAM404を得た(プラスミドマップについては図5を参照のこと)。
【0157】
実施例3
この実施例は、本明細書に提供する実施形態において有用なサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)株の産生を説明するものである。
【0158】
サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)株:CEN.PK2−1C Y002及びY003(MATA又はMATアルファ;ura3−52;trp1−289;leu2−3、112;his3Δ1;MAL2−8C;SUC2)(van Dijken et al. (2000) Enzyme Microb. Technol. 26(9-10):706-714)は、ERG9プロモーターをサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)MET3プロモーターで、及びADE1 ORFをカンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)LEU2遺伝子(CgLEU2)で置換することによって、誘発性MEV経路遺伝子の導入のために作製した。これは、天然ERG9プロモーターに相同の45の塩基対を含むプライマー50−56−pw100−G(配列番号:10)及び50−56−pw101−G(配列番号:11)を使用して、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)のTef1遺伝子のプロモーター及びターミネーターが隣接しているカナマイシン耐性マーカーに続くPMET3プロモーターを含む、ベクターpAM328のKanMX−PMET3領域(配列番号:6)をPCR増幅させること、10ugの結果として生じたPCR産物を、40% w/w ポリエチレングリコール3350(ミズーリ州、セントルイスのSigma−Aldrich)、100mM 酢酸リチウム(ミズーリ州、セントルイスのSigma−Aldrich)及び10ug サケ精子DNA(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitorogen Corp.)を使用して、指数増殖しているY002及びY003細胞に形質転換すること、及びそれらの細胞を30℃で30分間インキュベートし、その後、それらに42℃で30分間熱ショックを与えることによって行った(Schiestl and Gietz (1989) Curr. Genet. 16:399-346)。0.5ug/mL ゲネチシンを含有するリッチ培地(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitorogen Corp.)で増殖するそれらの能力によって陽性組換え体を同定し、選択したコロニーを診断PCRによって確認した。結果として得られたクローンにY93(MAT A)及びY94(MAT アルファ)という呼称を与えた。その後、ADE1 ORFに隣接する相同性の50の塩基対を含有するプライマー61−67−CPK066−G(配列番号:60)及び61−67−CPK067−G(配列番号:61)を使用して、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)ゲノムDNA(バージニア州、マナッサスのATCC)から3.5kb CgLEU2ゲノム座を増幅し、10ugの結果として生じたPCR産物を、指数増殖しているY93及びY94細胞に形質転換させ、ロイシン補足の不在下での増殖について陽性組換え体を選択し、選択したクローンを診断PCRによって確認した。結果として得られたクローンにY176(MAT A)及びY177(MAT アルファ)という呼称を与えた。
【0159】
株Y188は、Pmel制限酵素(マサチューセッツ州、ベヴァリーのNew England Biolabs)を使用してpAM491及びpAM495プラスミドDNAを最後まで消化すること、及び精製されたDNAインサートを指数増殖しているY176細胞に導入することによって生じさせた。ウラシル及びヒスチジンを欠く培地での増殖によって陽性組換え体を選択し、正しいゲノム座への組込みを診断PCRによって確認した。
【0160】
株Y189は、Pmel制限酵素を使用してpAM489及びpAM497プラスミドDNAを最後まで消化すること、及び精製されたDNAインサートを指数増殖しているY177細胞に導入することによって生じさせた。トリプトファン及びヒスチジンを欠く培地での増殖によって陽性組換え体を選択し、正しいゲノム座への組込みを診断PCRによって確認した。
【0161】
株Y188及びY189からのおよそ1X10の細胞をYPD培地プレート上で6時間、室温で混合してマッチングに備えた。ヒスチジン、ウラシル及びトリプトファンを欠く培地にその混合細胞培養物をプレーティングして、二倍体細胞の増殖について選択した。株Y238は、PmeI制限酵素を使用して最後まで消化したpAM493プラスミドDNAを使用してその二倍体細胞を形質転換すること、及び精製されたDNAを指数増殖している二倍体細胞に導入することによって生じさせた。アデニンを欠く培地での増殖によって陽性組換え体を選択し、正しいゲノム座への組込みを診断PCRによって確認した。
【0162】
半数体株Y211(MAT アルファ)は、2% 酢酸カリウム及び0.02% ラフィノース液体培地中で株Y238を胞子形成させること、Singer Instruments MSM300シリーズ・マイクロマニピュレーター(英国、サマセットのSinger Instrument LTD)を使用しておよそ200の遺伝子四分子を単離すること、導入された遺伝物質の適切な補体を含有する独立した遺伝子の分離株を、アデニン、ヒスチジン、ウラシル及びトリプトファンの不在下で増殖するそれらの能力によって同定すること、及び導入されたすべてのDNAの組込みを診断PCRにより確認することによって生じさせた。
【0163】
株Y227は、株Y211から、その株がFPPをアモルファ−4,11−ジエンに変換できるようにすることによって生じさせた。この目的のために、指数増殖しているY211細胞を、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のためにコドン最適化されているアモルファ−4,11−ジエンシンターゼ遺伝子のコーディング配列に作動可能に連結されたGAL1プロモーターを含む発現プラスミドpAM426(配列番号:7)で形質転換させた(Merke et al. (2000) Ach. Biochem. Biophys. 381: 173-180)。ロイシンを欠く完全合成培地で宿主細胞形質転換体を選択した。
【0164】
株Y293は、株Y227から、GAL80遺伝子のコーディング配列を欠失させること、及び従ってその株におけるGALプロモーターを構成的に活性にすることによって生じさせた。この目的のために、指数増殖しているY277細胞をDNAフラグメントGAL80−50から−1−NatR−GAL801309から1358で形質転換させた。100μg/mL ナーセオトリシンを含有するYPD寒天で宿主細胞形質転換体を選択し、単コロニーを選び取り、正しいゲノム座への組込みを診断PCRによって確認した。
【0165】
株Y337は、株Y227から、その株がガラクトースを異化できないようにすることによって生じさせた。この目的のために、PmeI制限酵素を使用してpAM584プラスミドDNAを最後まで消化し、精製されたDNAインサートGAL74から1021−HPH−GAL11637から2587を、指数増殖しているY227細胞に導入した。ヒグロマイシンBを含有するYPD寒天(ミズーリ州、セントルイスのSigma)での増殖によって陽性組換え体を選択した。診断PCRによって、及び炭素源としてガラクトースを使用できないことについてその株を検査することによって、正しいゲノム座への組込みを確認した。
【0166】
株Y351は、株Y211から、その株がガラクトースを異化できないようにすることによって生じさせた。この目的のために、PmeI制限酵素を使用してpAM584プラスミドDNAを最後まで消化し、精製されたDNAインサートGAL74から1021−HPH−GAL11637から2587を、指数増殖しているY211に導入した。ヒグロマイシンBを含有するYPD寒天で宿主細胞形質転換体を選択した。診断PCRによって、及び炭素源としてガラクトースを使用できないことについてその株を検査することによって、正しいゲノム座への組込みを確認した。
【0167】
株Y352は、株Y351から、その株がβ−ファルネセンシンターゼを生産できるようにすることによって生じさせた。この目的のために、指数増殖しているY351細胞を発現プラスミドpAM404で形質転換させた。ロイシンを欠く完全合成培地で宿主細胞形質転換体を選択した。
【0168】
株Y283は、株Y227から、GAL1遺伝子のコーディング配列を欠失させること、及び従ってその株がガラクトースを異化できないようにすることによって生じさせた。この目的のために、指数増殖しているY227細胞を、DNAフラグメントGAL11から48−NatR−GAL11500から1550で形質転換させた。100μg/mL ナーセオトリシンを含有するYPD寒天で宿主細胞形質転換体を選択し、単コロニーを選び取り、診断PCRによって、ならびにグリセロール及び2−デオキシガラクトースを含有する寒天でその株を増殖させることによって(機能性GAL1pは、後者を毒素に変換するであろう)、正しいゲノム座への組込みを確認した。
【0169】
株Y221は、指数増殖しているY211細胞をベクターpAM178(配列番号:69)で形質転換することによって、株Y211から生じさせた。ロイシンを欠く完全合成培地での増殖によって陽性形質転換体を選択した。
【0170】
株Y290は、株Y221から、GAL80遺伝子のコーディング配列を欠失させること、及び従ってその株におけるGALプロモーターを構成的に活性にすることによって生じさせた。
【0171】
株Y318は、コロニーをpAM178ベクターの喪失についてスクリーニングすることによって、株Y290から生じさせた。
【0172】
株409は、株Y318から、その株がガラクトースの存在下でβ−ファルンセンシンターゼを生産できるようにすることによって生じさせた。この目的のために、指数増殖しているY318細胞を発現プラスミドpAM404で形質転換した。ロイシンを欠く完全合成培地で宿主細胞形質転換体を選択した。
【0173】
株Y419は、株Y409から、その株におけるGALプロモーターを構成的に活性にし、グルコースの存在下でより高いレベルのGAL4pを発現できる(すなわち、グルコースの存在下でガラクトース誘導性プロモーターをより効率的に発現させることができる、ならびにその細胞におけるすべてのガラクトース誘導性プロモーターから発現させるさせるために十分なGal4p転写因子が確実に存在するようにできる)ようにすることによって生じさせた。この目的のために、その天然プロモーターの「効力のある構成的な」異形(Griggs & Johnston (1991) PNAS 88(19):8597-8601)及びGAL4ターミネーター(PGal4OC−GAL4−TGAL4)の制御下にあるサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のGAL4遺伝子のORFと、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)のTef1遺伝子のプロモーター及びターミネーターが隣接しているストレプトマイセス・ナーセイ(Streptomyces noursei)のナーセオトリシン耐性選択可能マーカー遺伝子(NatR)とを含むDNAフラグメントによって、株Y409におけるERG9遺伝子座のKanMXマーカーを置換した。
【0174】
株Y677は、GAL80遺伝子座にPGAL1の制御下でメバロン酸キナーゼのコーディング領域の別のコピーを導入することによって、株Y419から生じさせた。
【0175】
株Y293、Y283、Y352及びY677の細胞バンクは、それらの細胞を、30℃で、シード培地において、それらが2から5の間のOD600に達するまで増殖させることによって作製した。OD600に達した時点で、フラスコを氷の上に配置した。3部の培養物と2部の氷冷滅菌50%グリセロールを併せ、この混合物の1mLアリコートをクリオバイアルの中で−80℃で冷凍した。同じ手順を株Y337に用いたが、その株のOD600は、それを冷凍した時点で13.6であった。
【0176】
実施例4
この実施例は、グルコースのみの供給での流加、炭素制限発酵における宿主細胞によるアモルファ−4,11−ジエンの生産を説明するものである。
【0177】
50mL シード培地(表7)が入っている250mL フラスコに1mL 冷凍バイアルを接種することによってY337シード培養物を調製した。30℃で〜24時間の増殖後、0.5mLのその培養物を、50mL シード培地がそれぞれに入っている追加の250mL フラスコに入れて継代培養した。それらのシード培養物を30℃で一晩、およそ3から12のOD600まで増殖させた。フラスコをプールし、それらを使用して、10% v/vのバッチ培地(表8)が入っているバイオリアクターに接種した。
【表7】


【表8】


【表9】

【0178】
発酵のpHを自動制御し、10N NHOHの添加でpH5で維持した。温度を30℃で維持した。空気流を1LPMの速度で供給した。攪拌カスケード、続いての酸素富化で、溶存酸素を40%で維持した。Biospumex消泡剤200Kで泡を制御した。
【0179】
そのバイオリアクター培養物を、バッチ培地中のグルコースが使い尽くされるまで放置して増殖させ、使い尽くされた時点で、下記方程式によって定義される速度でそのバイオリアクターにグルコース供給培地(表10)をポンピングする指数的グルコース供給を開始した:
【化22】

【0180】
Fは、基質質量流量(g/時(g/hr))であり、Vは、所与の時点でのバイオリアクター内の液体体積(L)であり、Sは、バッチ培地中の基質の濃度(20g/L)であり、μsetは、比供給速度(0.087時−1)であり、tは、バッチ齢(batch age)(時)であり、tは、供給を開始したときのバッチ齢(時)であり、Vは、バイオリアクター内の初期体積であり、及び、Vfeedは、バイオリアクターに添加された供給物の所与の時点での総体積(L)である。この指数的供給期は、F/Vの比が事前設定最大供給速度(表11)に達するまで続いた。この最大値に達した後、F/Vの比を、その残りのプロセスの間、事前設定定常供給速度(表11)で一定に保った。
【表10】

【0181】
そのバイオリアクター及び供給ボトルへの10g/L ガラクトース(22.2mLの450g/L ガラクトース保存溶液/リットル 培養物体積)の添加での接種の約24時間後、50のOD600でアモルファ−4,11−ジエンの生産が誘導された。加えて、0.25g/L メチオニンをそのバイオリアクターに添加し、1g/L メチオニンを供給ボトルに添加してERG9遺伝子の転写を抑制し(10mLの25g/L メチオニン保存溶液/リットル 培養物体積及び40mLの25g/L メチオニン保存溶液/リットル 供給物体積)、ならびに10% v/vのオートクレーブ処理済オレイン酸メチルをそのバイオリアクターに添加して、アモルファ−4,11−ジエンを捕捉した。(450g/L ガラクトース保存溶液は、加熱しながら糖を水に溶解し、その溶液を放置して冷却し、濾過滅菌することによって調製した。25g/L メチオニン保存溶液は、メチオニンを水に溶解し、その溶液を濾過滅菌することによって調製した)。
【0182】
様々な時点でサンプルを取り、1:20の比でメタノールで希釈した。それぞれの希釈サンプルを30分間、ボルテックスにかけ、培養物破壊片を回転沈降させた。内部標準としてのトランス−カリオフィレンでスパイクした990から995uL 酢酸エチルが入っている清浄なガラスバイアルに5から10μLの上清を移すことによって、アモルファ−4,11−ジエン力価を判定した。それらの酢酸エチルサンプルを、水素炎イオン化検出器を装備したAglient 7890Nガスクロマトグラフ(カリフォルニア州、パロアルトのAgilent Technologies Inc.)で分析した。それぞれのサンプルの1uLアリコート中の化合物を、DB Waxカラム(カリフォルニア州、パロアルトのAgilent Technologies Inc.)、ヘリウムキャリアガス及び次の温度プログラムを用いて分離した:220℃を3分間保持し、100℃/分で260℃の温度に温度を上昇させる。このプロトコルを用いると、アモルファ−4,11−ジエンは、およそ3.4分の保持時間を有する。生じたピーク面積を、トランス−カリオフィレンでスパイクした酢酸エチル中の精製アモルファ−4,11−ジエンの定量較正曲線と比較することによって、アモルファ−4,11−ジエン力価を計算した。
【0183】
表11及び図6に示すように、株Y337は、グルコースのみを供給するプロセスにおいて発酵の開始後114時間の時点で2.4g/L アモルファ−4,11−ジエン(AD)を生産した。
【表11】

【0184】
実施例5
この実施例は、グルコース−エタノール混合供給での流加、炭素制限発酵における宿主細胞によるアモルファ−4,11−ジエンの生産を説明するものである。
【0185】
実施例4において説明したように、Y337シード培養物を調製し、バイオリアクターに接種するためにそれらを使用した。下記の変更を伴うが本質的には実施例4において説明したとおり、発酵を行ってサンプルを分析した。
【0186】
発酵の初期の間にバッチ培地中の一部のグルコースがエタノールに変換された。バッチ培地中のグルコース及びエタノールが使い尽くされるまでバイオリアクター培養物を放置して増殖させ、使い尽くされた時点で、下記方程式によって定義される速度でそのバイオリアクターに混合供給培地(表10)をポンピングする指数的供給を開始した:
【化23】

【0187】
Fは、基質質量流量(g/時)であり、Vは、所与の時点でのバイオリアクター内の液体体積(L)であり、Sは、バッチ培地中の基質の濃度(20g/L)であり、μsetは、比供給速度(0.087時−1)であり、tは、バッチ齢(時)であり、tは、供給を開始したときのバッチ齢(時)であり、Vは、バイオリアクター内の初期体積であり、及び、Vfeedは、バイオリアクターに添加された供給物の所与の時点での総体積(L)である。この指数的供給期は、F/Vの比が、g 基質/時/L バイオリアクター体積の単位での事前設定最大供給速度(表11)に達するまで続いた。この最大値に達した後、F/Vの比を、その残りのプロセスの間、事前設定定常供給速度(表11)で一定に保たった。
【0188】
接種の約40時間後に77のOD600でアモルファ−4,11−ジエンの生産が誘導された。
【0189】
表11及び図6に示すように、株Y337は、混合グルコース−エタノール供給発酵では発酵開始後118時間の時点で最大16.5g/Lアモルファ−4,11−ジエンを生産した。
【0190】
実施例6
この実施例は、エタノールのみの供給での流加、パルス供給発酵における宿主細胞によるアモルファ−4,11−ジエンの生産を説明するものである。
【0191】
実施例3において説明したように、Y293シード培養物を調製し、バイオリアクターに接種するためにそれらを使用した。下記の変更を伴うが本質的には実施例4において説明したとおり、発酵を行ってサンプルを分析した。
【0192】
発酵の初期の間にバッチ培地中の一部のグルコースがエタノールに変換された。バッチ培地中のグルコース及びエタノールが使い尽くされるまでバイオリアクター培養物を放置して増殖させ、使い尽くされた時点で、エタノールパルス供給を開始した。供給の速度は、オフガス中のCOのパーセント(CO発生率;CER)によって制御し、オフガス分析器と、オフガス中のCOパーセントの最大値を追跡する最大CERに変数(Cmax)を割り当てるコンピュータアルゴリズムとを用いて、それをモニターした。グルコースを用いて増殖している間にCERは急展開した(図7B)。バッチ培地からグルコースが使い尽くされると、CERはCmaxの50%未満に降下し、その降下後、コンピュータアルゴリズムによってCmaxがそのCO値に再設定された。バッチ培地中の過剰なグルコースから生じたエタノールが使い尽くされると、CERは再度降下した。CERがその時のCmaxの75%より下に落ちると、自動的にパルスフィードが誘発された。ポンプがバイオリアクターに5分間、75%(v/v)エタノールを注入して、培養物におよそ10g エタノールを送達した。ポンプが切られた時点のオフガス中のCOパーセント値にCmaxが再設定され、その後、CO発生の増加を追跡するように再び指定され、そのCERが新たに設定されたCmaxの75%より下に再び落ちるとポンプは再び作動された。この供給アルゴリズムが、発酵の間、繰り返され(図7A)、培地にエタノールが過剰供給されないことを保証した。塩、微量金属、ビタミン、糖又はアミノ酸溶液はいずれもエタノール供給物に可溶性でないため、濃縮供給成分(表12)を併せ、1日1回、供給成分の前の添加以来、送達されたエタノール体積の量に応じてそのバイオリアクターのヘッドプレート内のセプタムを通して注入した。
【表12】

【0193】
バッチ培地からグルコースが使い尽くされてから10時間後、0.25g/L メチオニンをバイオリアクターにそのヘッドプレートを通して添加し、その容器に10% v/vのオートクレーブ処理済オレイン酸メチルをポンピングした(株Y293は分解GAL80遺伝子を含むので、アモルファ−4,11−ジエンの生産を誘導するためにガラクトースは必要でなかった)。
【0194】
図7Bに示すように、株Y293は、36g/L アモルファ−4,11−ジエンを生産した。
【0195】
実施例7
この実施例は、エタノールのみの供給での流加、炭素制限発酵における宿主細胞によるアモルファ−4,11−ジエンの生産を説明するものである。
【0196】
実施例3において説明したように、Y293シード培養物を調製し、バッチ培地(表13)が入っているバイオリアクターに接種するためにそれらを使用した。
【表13】

【0197】
下記の変更を伴うが本質的には実施例4において説明したとおり、発酵を行ってサンプルを分析した。
【0198】
バッチ培地中のグルコースが使い尽くされるまでバイオリアクター培養物を放置して増殖させ、使い尽くされた時点で、下記方程式によって定義される速度でそのバイオリアクターにグルコース供給培地(表10)をポンピングする指数的供給を開始した:
【化24】

【0199】
Fは、基質質量流量(g/時)であり、Vは、所与の時点での発酵槽内の液体体積(L)であり、Sは、バッチ培地中の基質の濃度(20g/L)であり、μsetは、比供給速度(0.087時−1)であり、tは、バッチ齢(時)であり、tは、供給を開始したときのバッチ齢(時)であり、Vは、発酵槽内の初期体積であり、及び、Vfeedは、発酵槽に添加された供給物の所与の時点での総体積(L)である。この指数的供給は、7.1g/時/L最大供給速度(およそ50のOD600)に達するまで続いた。達した時点で、その供給をエタノール供給(190プルーフ)に切替え、残りの発酵の間、供給速度を2.5g/時/Lの一定体積値に設定した。このプログラムされた供給速度を用いて、エタノール消費速度を制御し、それは0.4から1.75g エタノール/g DCW/日にわたった。
【0200】
図8に示すように、株Y293は、発酵開始後187時間の時点で37g/L アモルファ−4,11−ジエンを生産した。
【0201】
実施例8
この実施例は、エタノールのみの供給での流加、炭素制限発酵における宿主細胞によるファルネセンの生産を説明するものである。
【0202】
実施例3において説明したように、Y677シード培養物を調製し、630mL バッチ培地(表14)がそれぞれに入っている2つのバイオリアクターに接種するためにそれらを使用した。2つのバイオリアクターの一方に、産物捕捉のために200mL オレイン酸メチルを添加した。下記の変更を伴うが本質的には実施例4において説明したとおり、発酵を行ってサンプルを分析した。
【表14】

【0203】
発酵の初期の間にバッチ培地中の一部のグルコースがエタノールに変換された。バッチ培地中のグルコース及びエタノールが使い尽くされるまでバイオリアクター培養物を放置して増殖させ、使い尽くされた時点で、下記方程式によって定義される速度でそのバイオリアクターに純粋なエタノール(190プルーフ)をポンピングする指数的供給を開始した:
【化25】

【0204】
Fは、基質質量流量(g/時)であり、Vは、所与の時点での発酵槽内の液体体積(L)であり、Sは、バッチ培地中の基質の濃度(39.03g/L)であり、μsetは、比供給速度(0.058時−1)であり、tは、バッチ齢(時)であり、tは、供給を開始したときのバッチ齢(時)であり、Vは、発酵槽内の初期体積(0.7L)であり、及び、Vfeedは、発酵槽に添加された供給物の所与の時点での総体積(L)である。この指数的供給期は、F/Vの比が5g 基質/時/L バイオリアクター体積の最大供給速度に達するまで続いた。この最大値に達した後、F/Vの比を、その残りのプロセスの間、2.5g/時/Lの定常供給速度で一定に保たった。しかし、図9Aに示すように、指数的供給期の最初の比較的遅いエタノール利用速度により、結果としてエタノールの蓄積が生じた。この蓄積により、炭素制限プロセスを維持するために事前設定供給速度(図9B)の手動調整及び12時間から14時間への供給速度倍加時間の増加を余儀なくされた。オレイン酸メチルの存在下で増殖した細胞を迅速に回収し、事前設定最大及び定常供給速度への増殖を再び開始した(図9C)。対照的に、オレイン酸メチルを含有しない培養物は、蓄積されたエタノールの消費がより遅く、従って、定常供給の第二の一時停止、その後、その定常供給速度の2.5g/時/Lから1.25g/時/Lへの減少を必要とした。全般的に言えば、株Y677は、オレイン酸メチルの不在下では0から2.1g エタノール/g DCW/日の、及びオレイン酸メチルの存在下では0.27−2.9g エタノール/g DCW/日のエタノール消費速度を有した。
【0205】
バイオリアクターのオフガスを凝縮器に通して、オフガス質量分析器を使用して酸素摂取率(OUR)及びCO発生(CER)を測定した。図9Dは、オレイン酸メチルの存在下での株Y677のCER及びOURを示す。
【0206】
1日2回のサンプリングによって、細胞密度及びエタノール消費をモニターした。それぞれの時点で、1mL ブロスサンプルを取り、水で1:1000希釈し、600nm 波長に設定した分光光度計を使用して細胞密度を測定した。
【0207】
エタノールのレベルは、HPLCによって定量した。それぞれの時点で、1mL ブロスサンプルを取り、30mM 硫酸溶液で2倍希釈した(移動相溶液の濃度に匹敵する15mM 硫酸の最終濃度のために400uL 上清に対して400uL 30mM 硫酸)。遠心分離及び濾過によって細胞を除去した後、負荷した。
【0208】
生産されたファルネセンのレベルをGC−FIDによって定量した。それぞれの時点で、100uLのオレイン酸メチルオーバーレイを取り、0.001% トランス−ベータカリオフィレンを含有する酢酸エチルで1:40希釈した。その混合物を、この方法についての較正曲線の範囲内にあてはまる最終1:4000希釈のために、もう一度、酢酸エチルで1:100希釈した。オレイン酸メチルを産物捕捉に用いない場合には、25uL 培養ブロスを975uL メタノールと併せ、その混合物を5分間、ボルテックスにかけ、遠心分離し、最後に、0.001% トランス−ベータカリオフィレンを含有する酢酸エチルで1:100希釈した後、分析した。
【0209】
図9Eに示すように、オレイン酸メチルの存在下では株Y677は30g/Lのピークファルネセン力価に達し、オレイン酸メチルの不在下では、40g/Lのピークファルネセン力価に達した。
【0210】
実施例9
この実施例は、酸素制限発酵における宿主細胞によるアモルファ−4,11−ジエン及びファルネセンの生産を説明するものである。
【0211】
実施例3において説明したように、Y283及びY352シード培養物を調製し、800mL バッチ培地(表15)及び100mL オレイン酸メチルが入っているバイオリアクターに接種するためにそれらを使用した。
【表15】

【0212】
ガス流量比制御装置を伴う2L Sartorius Biostat B plus twinsにおいて発酵を行った。15N NHOH及び5N HSOの添加でそのpHをpH5.0に自動的に制御した。温度を30℃で維持し、Biospumex 200K商標消泡剤を使用して泡を制御した。0.6−1の間のOD500でバイオリアクターに接種し、30g/L グルコースで増殖させた。
【0213】
そのバイオリアクターのオフガスを凝縮器に通して、オフガス質量分析器を使用して酸素摂取率(OUR)及びCO発生(CER)を測定した。溶存酸素(DO)濃度は、10ppbから飽和までの間の感度を有するOセンサープローブ(Hamilton、OXYFERM FDA 225、ネバダ州、リーノーのHamilton Company)を使用して測定した。
【0214】
発酵の初期の間にバイオリアクター培養物がバッチ培地中のグルコースをバイオマス及びエタノールに変換した。グルコースが消費されると(その培養における酸素の利用率に依存して発酵開始の8〜14時間後)、ガラクトース輸送及び転写機構のグルコース抑制が緩和され、バッチ培地中のガラクトースによって遺伝子発現オフGALプロモーターが誘導された。このバッチ培養は、発酵期に生産されたエタノールが使い尽くされるまで増殖し続け、使い尽くされた時点で、DOスパイクが培養期間の終わりを示した。
【0215】
好気性プロセスについては、清浄な乾燥した空気を1LPMの速度で培地にスパージした。攪拌速度を400rpmに初期設定し、DOフィードバック制御ループ及び攪拌カスケードプログラムを用いてDO濃度を40%で維持した(表16)。
【0216】
微好気性プロセスについては、オフガス分析器に到達するガスの希釈を最小にするために、及び質量分析器の感度を増すために、ガス流を0.25LPMに減少させた。空気対窒素比が異なるガスフローを用いることにより、酸素送達率を変えた(表16)。
【0217】
厳密な嫌気性プロセスについては、100%窒素ガスを接種前に0.25LPMで水性培地にスパージし、その培養の間、400rpmの一定攪拌速度を維持した(表16)。
【表16】

【0218】
1日2回のサンプリングにより、細胞密度及びエタノール消費をモニターした。それぞれの時点で、1mL ブロスサンプルを取り、水で1:100希釈し、600nm 波長に設定した分光光度計を使用して細胞密度を測定した。
【0219】
オレイン酸メチルサンプルを酢酸エチルで1:4000希釈ではなく最終1:400希釈に希釈したことを除き、実施例8において説明したとおり生産されたエタノール及びファルネセンのレベルを定量した。
【0220】
図10Aは、宿主株Y283の様々な発酵におけるDO濃度を示す。図10B及び10Cに示すように、株Y283において、培養の際の酸素利用率増加は、細胞増殖増加、エタノールへのグルコース変換速度増加、及び培地のエタノールを使い尽くす速度増加につながる。株Y283による増殖、産物形成、及びエタノール消費は、十分に空気を供給した培養物(40%のDO)において最大であったが、それらは24時間後には安定状態に達した。表17に示すように、すべての微好気性プロセスについての細胞当たりのエタノール消費速度は、0.40−0.72g エタノール/g DCW/日の間であった。図10Dに示すように、炭素投入量に対するアモルファ−4,11−ジエンの最高収率は、80%空気及び20%窒素で観察された。
【表17】

【0221】
図10E及び10Fに示すように、株Y352において、培養の際の酸素利用率増加は、細胞増殖増加、エタノールへのグルコース変換速度増加、及び培地のエタノールを使い尽くす速度増加につながる。表17に示すように、試験した2つの微好気性プロセスについての細胞当たりのエタノール消費速度は、0.42−0.88g エタノール/g DCW/日の間であった。図10Gに示すように、炭素投入量に対してファルネセンのわずかに高い収率が100%空気で観察されたが、微好気性培養でのほうが長い期間にわたって生産が続いた。
【0222】
実施例10
この実施例は、炭素及びリン酸塩制限を伴う振盪フラスコ内培養での宿主細胞によるアモルファ−4,11−ジエンの生産を説明するものである。
【0223】
0.5M コハク酸緩衝液(pH5.0)に固体アミログリコシダーゼ(Sigma A7420−100MG)を溶解して100U/mLの最終酵素濃度にし、その溶液を濾過滅菌することによって、保存アミログルコシダーゼ(グルコアミラーゼ)酵素溶液を調製した。
【0224】
50mLのリン酸塩制限シード培地(表18)が入っている250mL バッフル付フラスコに1mL 冷凍Y337細胞を接種することによって、Y337シード培養物を調製した。そのシード培養物を一晩、30℃及び200rpmで増殖させた。
【表18】

【0225】
そのY337シード培養物を用いて、幾つかの250mLバッフル付振盪フラスコに0.05の出発OD600まで接種した。生産フラスコには、40mLのリン酸塩制限生産培地(表18)が入っていた。KHPOを、100g/L 濾過滅菌保存溶液から0.1g/L、0.25g/L、0.5g/L、0.8g/L、2g/L及び8g/Lの最終濃度まで、それぞれのフラスコに添加した。接種前に、80μLの新たに解凍した100U/mL アミログリコシダーゼ濾過滅菌保存溶液をそれぞれのフラスコに添加した(0.2U/mLの最終濃度)。生産フラスコを30℃及び200rpmで最大3日間インキュベートした。この培養期間の間、グルコースが、およそ20mg/時の一定速度でグルコアミラーゼによって放出された。
【0226】
内部標準としてのベータ−又はトランス−カリオフィレンでスパイクした500μL 酢酸エチルが入っている清浄なガラスバイアルに2から10μLのオレイン酸メチルオーバーレイを移し、それらの酢酸エチルサンプルを実施例4において説明したように分析することによって、アモルファ−4,11−ジエン力価を判定した。
【0227】
図11に示すように、全体としてアモルファ−4,11−ジエン力価は、最低濃度(0.1/L)を除き、試験したすべてのリン酸塩濃度で同等であったが、より低いリン酸塩濃度では細胞増殖が制限され、これは、より低いリン酸塩濃度でのアモルファ−4,11−ジエンの細胞当たりの生産増加と言い換えられる。
【0228】
実施例11
この実施例は、リン酸塩制限及びグルコース供給での流加、炭素制限発酵における宿主細胞によるアモルファ−4,11−ジエンの生産を説明するものである。
【0229】
実施例3において説明したように、Y337シード培養物を調製し、リン酸塩制限バッチ培地(表19)が入っているバイオリアクターに接種するためにそれらを使用した。下記の変更を伴うが本質的には実施例4において説明したとおり、発酵を行ってサンプルを分析した。
【0230】
そのバイオリアクター培養物を、バッチ培地中のグルコースが使い尽くされるまで放置して増殖させ、使い尽くされた時点で、下記方程式によって定義される速度でそのバイオリアクターにリン酸塩制限グルコース供給培地(表19)をポンピングする指数的供給を開始した:
【化26】

【0231】
Fは、基質質量流量(g/時)であり、Vは、所与の時点でのバイオリアクター内の液体体積(L)であり、Sは、バッチ培地中の基質の濃度(19.5g/L)であり、μsetは、比供給速度(0.087時−1)であり、tは、バッチ齢(時)であり、tは、供給を開始したときのバッチ齢(時)であり、Vは、バイオリアクター内の初期体積であり、及び、Vfeedは、バイオリアクターに添加された供給物の所与の時点での総体積(L)である。この指数的供給は、F/Vの比が事前設定最大供給速度(表20)に達するまで続いた。この最大供給速度に達した後、F/Vの比を、その残りのプロセスの間、事前設定定常供給速度で一定に保った。しかし、より多くの供給物をバイオリアクターに添加すると体積(V)は増加し続けるので、基質質量流量(F)は、その体積がバイオリアクターの最大作業量(初期体積のおよそ3倍)に達するまで増加し続けた。残りのプロセスついては、そのリアクターから継続的に細胞ブロスを除去し、その基質質量流量(F)を一定に保つことによって、バイオリアクター体積を一定に保った。図12Aは、この発酵のグルコース供給速度プロフィールを示す。
【表19】

【0232】
アモルファ−4,11−ジエンの生産がおよそ50のOD600で誘導された。
【0233】
表20及び図12Bに示すように、バッチ培地への8g/L KHPOの供給及び供給培地へのリン酸塩の無供給が、5.52g/Lの最高アモルファ−4,11−ジエン生産を示した。これらの条件下では、バッチ培地中のリン酸塩が40時間までに消費され、その結果、細胞増殖が制限された(すなわち、炭素はあまりバイオマスに向かわず、より多くの炭素がアモルファ−4,11−ジエンの生産に向かった)(図12C)。
【表20】

【0234】
実施例12
この実施例は、リン酸塩制限及び混合グルコース/エタノール供給での流加、炭素制限発酵における宿主細胞によるアモルファ−4,11−ジエンの生産を説明するものである。
【0235】
実施例3において説明したように、Y337シード培養物を調製し、リン酸塩制限バッチ培地(表19)が入っているバイオリアクターに接種するためにそれらを使用した。下記の変更を伴うが本質的には実施例4において説明したとおり、発酵を行ってサンプルを分析した。
【0236】
発酵の初期の間にバッチ培地中の一部のグルコースがエタノールに変換された。バッチ培地中のグルコース及びエタノールが使い尽くされるまでバイオリアクター培養物を放置して増殖させ、使い尽くされた時点で、下記方程式によって定義される速度でそのバイオリアクターにリン酸塩制限混合供給培地(表19)をポンピングする指数的供給を開始した:
【化27】

【0237】
Fは、基質質量流量(g/時)であり、Vは、所与の時点でのバイオリアクター内の液体体積(L)であり、Sは、バッチ培地中の基質の濃度(20g/L)であり、μsetは、比供給速度(0.087時−1)であり、tは、バッチ齢(時)であり、tは、供給を開始したときのバッチ齢(時)であり、Vは、バイオリアクター内の初期体積であり、及び、Vfeedは、バイオリアクターに添加された供給物の所与の時点での総体積(L)である。この指数的供給期は、F/Vの比がg 基質/時/L バイオリアクター体積の単位での事前設定最大供給速度(表21)に達するまで続いた。この最大値に達した後、F/Vの比を、その残りのプロセスの間、事前設定定常供給速度(表21)で一定に保たった。
【0238】
アモルファ−4,11−ジエンの生産がおよそ50のOD600で誘導された。
【0239】
表21及び図13Aに示すように、バッチ培地への8g/L KHPO及び供給培地への0から0.5g/L KHPOの供給が、26から27g/Lを超える最高アモルファ−4,11−ジエン生産を示した。これらの条件下では、バッチ培地中のリン酸塩が40時間までに消費され、その結果、細胞増殖が制限された(すなわち、炭素はあまりバイオマスに向かわず、より多くの炭素がアモルファ−4,11−ジエンの生産に向かった)(図13B)。供給培地中、0g/L KHPOと比較して、供給培地中、0.5g/L KHPOは、細胞増殖及びアモルファ−4,11−ジエン生産をさらに24時間継続させた。
【表21】

【0240】
実施例13
この実施例は、MEV経路の酵素をはじめとする酵素をコードする非相同ヌクレオチド配列とそれらのゲノムに組み込まれたテルペンシンターゼとを保有する、大腸菌(Escherichia coli)宿主株を生じさせるための方法を説明するものである。
【0241】
Datsenko及びWannerによって概説された手順((2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645)の変形を用いてゲノム組込みを行った。この方法は、T7プロモーター−対象となる遺伝子−FRT−Kan−FRTカセットを含むプラスミドを利用する。このカセットの組込みのターゲットとなるゲノム座に隣接する領域に相同であるおよそ100のヌクレオチドが、このカセットの両側に隣接している。これらの隣接領域は、このカセットの3’又は5’末端のいずれかに相同であるおよそ30ヌクレオチドの伸長部と、そのゲノム座に隣接する領域に相同であるおよそ50ヌクレオチドのもう1つの伸長部とを含むプライマーを使用して、このカセットをPCR増幅することによって作る(図14)。結果として生じたPCR産物は、そのカセットのいずれかの末端に対して隣接配列相同性の別の50のヌクレオチドを付加する第二PCR反応において、テンプレートとして使用する(図14)。その隣接配列を有するカセットを、Redリコンビナーゼタンパク質をコードするプラスミドを保持するエレクトロコンピテント大腸菌(Escherichia coli)細胞にエレクトロポレートする。カナマイシン(「Kan」)耐性コロニーをコロニーPCRによってスクリーニングする。陽性組換え体をP1−ファージで処理し、P1−形質導入によって新たな株にその組込みを移す。結果として生じた株を、FLPリコンビナーゼをコードするプラスミドで形質転換させ、その活性に起因してKan遺伝子がそのカセットから切り取られ、その結果、ターゲットのゲノム座にT7プロモーター−対象となる遺伝子が残る。最終宿主株は、そのFLPリコンビナーゼが回復する。
【0242】
説明した方法を適用して、β−ファルネセンシンターゼ(「FS」)をコードするDNAフラグメントを大腸菌(Escherichia coli)株B1021のLacオペロン(MM294(DE3)(T1R))に組み込むことにより、宿主株B1060を生じさせた。この目的のために、DE3溶原化キット(ドイツ、ダルムシュタットのNovagen)を使用して大腸菌(Escherichia coli)株MM294(ATCC33625)をDE3にし、過剰なT1ファージの存在下でその株を増殖させることによってT1ファージ耐性にし、このようにして株B1021を得た。QuikChange方法論(Geiser et al. (2001) Biotechniques 31:88-92)の変形を用いて、FRT−Kan−FRTカセットを、T7プロモーターの制御下で、大腸菌(Escherichia coli)における発現のためにコドン最適化された、クソニンジン(Artemisia annua)のβ−ファルネセンシンターゼ(GenBankアクセッション番号AY835398)をコードする、発現プラスミドpAM454に挿入し、このようにして発現プラスミドpAM617を得た。pAM617におけるT7−FS−FRT−Kan−FRTカセットには、mhpR及びcynX遺伝子座からの配列(配列番号:70)が既に隣接しているため、Lacオペロンに隣接するmhpR又はcynX配列に相同な100ヌクレオチド配列を作るために1ラウンドのPCR増幅しか必要でなかった。(Redリコンビナーゼをコードする)発現プラスミドpAM88を保有するMM294(DE3)宿主細胞を、50ug/mL カルベニシリン及び1mM アラビノースを含有するLB培地中、30℃で、0.6のOD600に増殖させた。それらの細胞を回収し、エレクトロコンピテントにし、PCR産物で形質転換させた。50ug/mL カナマイシンを含有するLB寒天を用いて30℃で2日増殖させた後にコロニーを得、コロニーPCRによって正しい組込みを選択した。P1−形質導入によって宿主株B1021(MM294(DE3)(T1R))にその組込みを移し、結果として生じた株をコンピテントにし、(FLPリコンビナーゼをコードする)発現プラスミドpAM89で形質転換させた。50ug/mL カルベニシリンを含有するLB寒天を用いて30℃で2日増殖させた後にコロニーを得た。1つのコロニーを単離し、LB培地中、42℃で増殖させてプラスミドpAM89を喪失し、その結果、株B1060(MM294(DE3)(T1R)lac::T7−FS)を得た。
【0243】
メバロン酸キナーゼ(「MK」)をコードするDNAフラグメントを大腸菌(Escherichia coli)株B1021のackptaオペロンに組み込むことによって、宿主株B1061を生じさせた。この目的のために、大腸菌(Escherichia coli)における発現のためにコドン最適化された、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のメバロン酸キナーゼをコードするDNAフラグメント(配列番号:71)を、プラスミドpAM618のNdeI BamHI制限部位に挿入した。プラスミドpAM618は、T7プロモーター、それに続く多数のクローニング部位(MCS)そしてFRT−KanR−FRTカセットを含む(配列番号:72、図15)。結果として生じたT7−MK−FRT−Kan−FRTカセットを上で説明したようなPCR増幅ラウンドに2回付して、ack ptaオペロンに相同な100ヌクレオチド隣接配列を作った。最終PCR産物を上で説明したように大腸菌(Escherichia coli)株B1021に導入して、株B1061(MM294(DE3)(T1R)ackpta::T7−MK)を得た。この組込を宿主株B1060にも移して、株B1124(MM294(DE3)(T1R)lac::T7−FS ackpta::T7−MK)を得た。
【0244】
ホスホメバロン酸キナーゼ(「PMK」)をコードするDNAフラグメントを大腸菌(Escherichia coli)株B1021のpoxB遺伝子座に組み込むことによって、宿主株B1062を生じさせた。この目的のために、大腸菌(Escherichia coli)における発現のためにコドン最適化された、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のホスホメバロン酸キナーゼをコードするDNAフラグメント(配列番号:73)を、プラスミドpAM618のNdeI BamHI制限部位に挿入した。結果として生じたT7−PMK−FRT−Kan−FRTカセットを上で説明したようなPCR増幅ラウンドに2回付して、poxB遺伝子座に相同な100ヌクレオチド隣接配列を作った。最終PCR産物を上で説明したように大腸菌(Escherichia coli)株B1021に導入して、株B1062(MM294(DE3)(T1R)poxB::T7−PMK)を得た。
【0245】
HMG−CoAレダクターゼ(「HMGR」)をコードするDNAフラグメントを大腸菌(Escherichia coli)株B1021のldhA遺伝子座に組み込むことによって、宿主株B1273を生じさせた。この目的のために、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のHMGRをコードするDNAフラグメント(mva;GenBankアクセッション番号BA000017、REGION:2688925..2687648)を、プラスミドpAM618のEcoRI BamHI制限部位に、クレノウ(Klenow)フラグメントでそのEcoRI制限部位を処理した後、挿入した。結果として生じたT7−mvaA−FRT−Kan−FRTカセットを上で説明したPCR増幅ラウンドに2回付して、ldhA遺伝子座に相同な100ヌクレオチド隣接配列を作った。最終PCR産物を上で説明したように大腸菌(Escherichia coli)株B1021に導入して、株B1273(MM294(DE3)(T1R)ldhA::T7−mvaA)を得た。
【0246】
多くの具体的な実施例を提供したが、上の説明は、本明細書において提供する実施形態を制限するためのものではなく、例証するためのものである。本明細書の再考により当業者にはこれらの実施形態の多くの変形が明らかになるであろう。従って、これらの実施形態の範囲は、上の説明を参照して決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲を等価物の全範囲と共に参照して決定すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレノイド化合物を生産するための方法であって、
(a)MEV又はDXP経路の酵素をコードする染色体組込み異種核酸配列を含むイソプレノイド化合物を作ることができる複数の宿主細胞を得る工程;
(b)前記宿主細胞が炭素源としてエタノールを用いてイソプレノイド化合物を作る条件下で培地において前記宿主細胞を培養する工程;及び
(c)前記培地からイソプレノイド化合物を回収すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記宿主細胞によって炭素源として消費されるエタノールが、その宿主細胞によって作られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宿主細胞によって炭素源として消費されるエタノールが、前記培地に外因的に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記培地が、少なくとも4時間、リットル当たり約1グラムである又はそれより多いエタノールの濃度でエタノールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記宿主細胞が、1日につき乾燥細胞重量のグラム当たり約0.2グラムと約5グラムの間である又はそれより多いエタノール消費速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記宿主細胞が、イソプレノイド化合物を作っている間、酸素制限されない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記培養条件が、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり10mmol未満の酸素という比酸素摂取速度の期間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記培養条件が、前記宿主細胞がリン酸塩制限される期間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記宿主細胞が、原核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記宿主細胞が、大腸菌(E.coli)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記宿主細胞が、真核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記宿主細胞が、真菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記宿主細胞が、S.セレビジエ(S. cerevisiae)である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記イソプレノイド化合物が、培地のリットル当たり約10グラムより多い量で生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記イソプレノイド化合物が、乾燥細胞重量のグラム当たり約50ミリグラムより多い量で生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記イソプレノイド化合物の量が、約72時間未満の間に生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記イソプレノイド化合物の量が、約48時間未満の間に生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記イソプレノイド化合物の量が、約24時間未満の間に生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記イソプレノイドが、ヘミテルペン、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン及びポリテルペンから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記イソプレノイドが、C−C20イソプレノイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記イソプレノイドが、アビエタジエン、アモルファジエン、カレン、α−ファルネセン、β−ファルネセン、ファルネソール、ゲラニオール、ゲラニルゲラニオール、イソプレン、リナロオール、リモネン、ミルセン、ネロリドール、オシメン、パチュロール、β−ピネン、サビネン、γ−テルピネン、テルピノレン及びバレンセンから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
−C20イソプレノイド化合物を作るための方法であって、
(a)イソプレノイド化合物を作ることができる複数の宿主細胞を得る工程;
(b)少なくとも4時間、培地のリットル当たり約1グラムである又はそれより多い量でエタノールを含む培地において、前記宿主細胞を培養する工程;
(c)培地のリットル当たり少なくとも5グラムのイソプレノイド化合物を回収する工程
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記培地が、培地のリットル当たり約1グラムと約5グラムの間のエタノールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記培地が、培地のリットル当たり約1グラムと約20グラムの間のエタノールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記培地が、培地のリットル当たり約20グラムより多い量のエタノールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記宿主細胞が、酵母細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記培地中のエタノールの少なくとも一部分が、前記宿主細胞によって作られたものである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
−C20イソプレノイド化合物を作るための方法であって、
(a)イソプレノイド化合物を作ることができる複数の宿主細胞を得る工程;
(b)炭素源のボーラスを培地に供給することによって、酵母細胞を培養してバイオマスを作る工程;
(c)前記酵母細胞が、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり約0.01グラムである又はそれより多いエタノール消費速度を有する条件下で細胞を維持する工程;及び
(d)培地のリットル当たり少なくとも5グラムのイソプレノイド化合物を回収する工程
を含む、前記方法。
【請求項29】
消費されるエタノールの少なくとも一部分が、前記宿主細胞によって作られたものである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記エタノール消費速度が、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり約0.01グラムと約0.20グラムの間のエタノールである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記エタノール消費速度が、1時間につき乾燥細胞重量のグラム当たり約0.1グラムより多いエタノールである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記炭素源が、炭水化物である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記炭素源が、炭水化物とエタノールの混合物である、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記炭素源が、エタノールである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が維持される条件が、少なくとも4時間、酸素制限を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が維持される条件が、少なくとも4時間、リン酸塩制限を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記宿主細胞が、酵母細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記宿主細胞が、S.セレビジエ(S.cerevisiae)である、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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【図10−6】
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【図10−7】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−539902(P2010−539902A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525833(P2010−525833)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/010886
【国際公開番号】WO2009/042070
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510079008)アミリス バイオテクノロジーズ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】