説明

イソプロパノールを生産するように操作された微生物

本発明は、生物燃料の生産に有用な代謝的に改変された微生物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2007年10月12日提出の米国仮出願第60/979,731号に対する優先権を主張する。該文献の開示内容は参照によりここに組み入れられる。
【0002】
技術分野
代謝的に改変された微生物およびそのような生物の製造方法を提供する。さらに、好適な基質と代謝的に改変された微生物およびそれからの酵素調製物との接触による生物燃料の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
石油の代用品としての生物燃料の需要は経済および環境問題のせいで増加すると見込まれる。一般的な生物燃料であるエタノールは理想的ではない。その理由は、ガソリンより低いエネルギー密度しか有さず、輸送燃料として機能を果たすために限定された濃度範囲でガソリンと混合する必要があるからである。また、エタノールは吸湿性および腐食性であり、保存および流通システムの問題を引き起こす。イソプロパノールはエタノールより優れた1-ブタノールと同じ利点を有し; イソプロパノールはその分岐炭素鎖のおかげで1-ブタノールより高いオクタン数を有する追加の利点がある。1-ブタノールは発酵産物として生産され、モーター燃料として使用されているが、イソプロパノールは再生可能な供給源から高収率で生産されたことがなく、エンジン添加剤としては使用されているが、ガソリン代用品としてみなされていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本発明は、生物燃料、例えばイソプロパノールを生産するために有用な組換え生化学的経路を含む代謝的に改変された微生物を提供する。さらに、本明細書中に記載の微生物を使用する生物燃料の製造方法を提供する。
【0005】
本開示は、好適な炭素基質の発酵からイソプロパノールを生産する生化学的経路を含む組換え微生物を提供し、ここで該生化学的経路はアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼを含み、該微生物は、対応する親微生物と比較して少なくとも1つの異種ポリペプチドを含む。一実施形態では、該微生物は、親微生物と比較してアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの上昇した発現を含み、該組換え微生物は、アセチルCoAを含む基質からアセトアセチルCoAを含む代謝産物を生産する。一実施形態では、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、atoB遺伝子もしくはそのホモログ、またはfadA遺伝子もしくはそのホモログによってコードされる。別の実施形態では、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1に記載の配列に対して少なくとも約50%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる。atoB遺伝子またはfadA遺伝子はエシェリキア属由来であってよい。一実施形態では、微生物は組換え大腸菌(E. coli)である。さらに別の実施形態では、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドはthl遺伝子またはそのホモログによってコードされる。一実施形態では、thl遺伝子はクロストリジウム属由来である。さらに別の実施形態では、該微生物は、親微生物と比較してアセトアセチルCoAトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの上昇した発現を含み、該組換え微生物は、アセトアセチルCoAを含む基質からアセトアセテートを含む代謝産物を生産する。別の実施形態では、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼはatoAD遺伝子またはそのホモログ(例えば、atoDは配列番号3に記載の配列を含む)によってコードされる。一実施形態では、atoDは、配列番号3と少なくとも50%、60%または70%またはそれ以上同一の配列を含む。別の実施形態では、atoADは大腸菌由来である。さらに別の実施形態では、該微生物は、親微生物と比較してアセトアセテートデカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドの上昇した発現を含み、該組換え微生物は、アセトアセテートを含む基質からアセトンを含む代謝産物を生産する。別の実施形態では、微生物は、adc遺伝子またはそのホモログによってコードされるアセトアセテートデカルボキシラーゼを含む。一実施形態では、adc遺伝子は、Clostridium acetobutylicum、Butyrivibrio fibrisolvens、Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum、およびClostridium difficile由来である。特定の実施形態では、微生物はClostridium acetobutylicumである。さらに別の実施形態では、アセトアセテートデカルボキシラーゼは、配列番号5と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、995同一の配列を含む。別の実施形態では、該微生物は、親微生物と比較して第2級アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドの上昇した発現を含み、該組換え微生物は、アセトンを含む基質からイソプロパノールを含む代謝産物を生産する。一実施形態では、第2級アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドはadhもしくはsadh遺伝子またはそのホモログによってコードされる。さらに別の実施形態では、adh遺伝子はT. brockiiまたはC.beijerinckii由来である。さらに別の実施形態では、adhまたはsadhは配列番号7または9と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、995同一の配列を含み、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する。一実施形態では、微生物は、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、アセトアセテートデカルボキシラーゼおよびadh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)の発現または増加した発現を含む。
【0006】
また本開示は、好適な炭素基質の発酵からイソプロパノールを生産する組換え生化学的経路を含む組換え微生物を提供し、該組換え生化学的経路は、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、アセトアセテートデカルボキシラーゼおよびadh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)の上昇した発現を含む。
【0007】
本開示はさらに、好適な炭素基質をイソプロパノールに変換する組換え微生物の製造方法であって、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、アセトアセテートデカルボキシラーゼおよびadh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)活性を有するポリペプチド群をコードする1つ以上のポリヌクレオチドで微生物を形質転換するステップを含む方法を提供する。
【0008】
本開示は、イソプロパノールの製造方法であって、生物中での、thlまたはatoB遺伝子、ctfABもしくはatoAD遺伝子またはオペロン、adc遺伝子、adh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせの過剰発現を誘導するステップを含む方法を提供し、該生物は好適な炭素基質の存在下で培養された場合にイソプロパノールを生産する。
【0009】
本開示は、イソプロパノールの製造方法であって、イソプロパノールが生産される条件下で上記微生物を培養するステップを含む方法を提供する。
【0010】
また本開示は、イソプロパノールの製造方法であって、以下のステップ: (i) 生物中でのthlまたはatoB遺伝子の過剰発現を誘導するステップ; (ii) 生物中でのctfABまたはatoAD遺伝子の過剰発現を誘導するステップ; (iii) 生物中でのadc遺伝子の過剰発現を誘導するステップ; (iv) 生物中でのadh遺伝子の過剰発現を誘導するステップ; または(v) (i)、(ii)、(iii)、および(iv)の過剰発現を誘導するステップを含む方法を提供する。
【0011】
本開示は、組換えベクターであって、(i) アセトアセチルCoAを含む基質からのアセトアセテートの変換を触媒する第1のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチド; (ii) アセトアセテートを含む基質からのアセトンの変換を触媒する第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチド; および(iii) アセトンを含む基質からのイソプロパノールの変換を触媒する第3のポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド、を含む組換えベクターを提供する。一実施形態では、該ベクターはプラスミドであってよい。別の実施形態では、該ベクターは発現ベクターであってよい。さらにまた、該ベクターを使用して宿主細胞(例えば微生物)を形質転換またはトランスフェクトすることができる。トランスフェクトまたは形質転換された微生物を使用してイソプロパノールを製造することができる。
【0012】
本開示は、グルコースからイソプロパノールへの変換を促進する少なくとも1つの異種核酸配列を含む組換え微生物を提供する。
【0013】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細を添付の図面および以下の説明で記載する。他の特徴、対象、および利点は、その説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1はイソプロパノール生産の代謝経路を示す。
【図2】図2は経路遺伝子の各組み合わせによる最大イソプロパノール生産の比較を示す。
【図3−1】図3はTA11 (pTA39/pTA36: thl-atoAD-adc-adh (cb))によるイソプロパノール生産の時間経過を示す。
【図3−2】図3はTA11 (pTA39/pTA36: thl-atoAD-adc-adh (cb))によるイソプロパノール生産の時間経過を示す。
【図4−1】図4は本開示の方法および組成物において有用なadhポリヌクレオチドの配列(配列番号7および9)を示す。
【図4−2】図4は本開示の方法および組成物において有用なadhポリヌクレオチドの配列(配列番号7および9)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本明細書中で特に記載されない限り、使用される用語の定義は薬学分野で使用される標準的定義である。明細書および特許請求の範囲で使用されるように、文脈上明らかに他の意味に決定される場合を除き、単数形「a」、「an」および「the」は複数の指示対象を含む。ゆえに、例えば、「基質(a substrate)」への言及には、2以上のそのような基質の混合物、等が含まれる。
【0016】
また、特に指定されない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「comprises」、「comprising」 「include」、「includes」、および「including」は交換可能であり、限定的ではないものとする。
【0017】
種々の実施形態の説明で用語「含む(comprising)」が使用される箇所で、いくつかの特定の場合には、その代わりに用語「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」を使用して実施形態を記載できることを当業者は理解することがさらに理解される。
【0018】
特に指定されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解される意義と同一の意義を有する。本明細書中に記載の方法および試薬と類似または等価の任意の方法および試薬を、開示されている方法および組成物の実施において使用することができるが、以下、典型的な方法および材料を記載する。
【0019】
本明細書中に記載のすべての刊行物は、方法論の説明および開示のために全体が参照によりここに組み入れられる。該方法論は該刊行物中に記載され、本明細書中の説明と組み合わせて使用されるかもしれない。上および本文を通して考察される刊行物は本開示の提出日前のその開示に関してのみ提供される。本明細書中のいかなる記載も、発明者らが、以前の開示に基づいてそのような開示を予測できる権利がないことを認めると解釈されるべきではない。
【0020】
また、1-ブタノールの天然生産者、例えばClostridium acetobutylicumは、副産物、例えばアセトン、エタノール、およびブチラートを発酵産物として生産する。収率および生産性を最適化するように1-ブタノール高生産者が開発されている。しかし、これらの微生物のほとんどは操作が比較的困難である。これらの生物の遺伝的ツールは、使いやすい宿主、例えば大腸菌の遺伝的ツールほど効率的ではなく、生理学およびその代謝調節は非常に低い程度にしか理解されておらず、それにより高効率生産への迅速な進歩が妨げられている。さらにまた、グルコースから他の高級アルコール、例えばイソプロパノール、2-メチル1-ブタノール、3-メチル1-ブタノール、および2-フェニルエタノールを、微生物の副産物として特定されているような少量ではなく、工業的に妥当な量で生産する天然の微生物は同定されていない。
【0021】
種々の実施形態では、本明細書中で提供される代謝的に操作された微生物は、イソプロパノールを含むアルコールの生産のための生化学的経路を含む。種々の態様では、本明細書中で提供される組換え微生物は、親微生物と比較して少なくとも1つの標的酵素の上昇した発現を含む。標的酵素は好適な生物学的供給源由来の核酸配列によってコードされ、該核酸配列から発現される。いくつかの態様では、核酸配列は細菌または酵母供給源由来の遺伝子である。
【0022】
本明細書中で使用される用語「代謝的に操作された」または「代謝操作」は、微生物中での所望の代謝産物、例えばアルコールの生産のための、論理的経路設計、および生合成遺伝子、オペロンに関連する遺伝子、およびそのような核酸配列の調節エレメントの組立てを含む。「代謝的に操作された」は、遺伝子工学および適切な培養条件を使用する転写、翻訳、タンパク質安定性およびタンパク質機能性の調節および最適化による代謝流量の最適化をさらに含みうる。生合成遺伝子は、宿主に対して外来性であるか、または内因性宿主細胞中での突然変異誘発、組換え、および/または異種発現制御配列との結合によって改変されていることに基づいて、宿主(例えば微生物)に対して異種であってよい。適切な培養条件は、宿主微生物による、すなわち微生物の代謝作用による化合物の生産を可能にする、培養培地pH、イオン強度、栄養含量、等; 温度; 酸素/CO2/窒素含量; 湿度; および他の培養条件の条件である。適切な培養条件は宿主細胞として機能することができる微生物に関して周知である。
【0023】
したがって、代謝的に「操作された」または「改変された」微生物は、選択された宿主または親微生物への遺伝物質の導入によって製造され、それによって該微生物の細胞生理学および生化学が改変または変更される。遺伝物質の導入により、親微生物は新規特性、例えば新規の、またはより多量の、細胞内代謝産物を生産する能力を獲得する。例示的な実施形態では、親微生物に遺伝物質を導入することにより、アルコール、例えばイソプロパノールを生産するための新規のまたは改変された能力が得られる。親微生物に導入される遺伝物質は、アルコールの生産のための生合成経路に関与する1つ以上の酵素をコードする遺伝子(群)、または遺伝子の部分を含有し、これらの遺伝子の発現および/または発現調節のための追加要素、例えばプロモーター配列を含んでもよい。
【0024】
本明細書中で提供される微生物は、親微生物中では入手不可能な量で代謝産物を生産するように改変される。「代謝産物」とは、代謝によって生産される任意の物質または特定の代謝プロセスに必要なもしくは関与する物質を表す。代謝産物は、代謝の出発材料(例えばグルコースまたはピルビン酸化合物)、中間体(例えばアセチルCoA)、または最終産物(例えばイソプロパノール)である有機化合物であってよい。代謝産物を使用して、より複雑な分子を構築することができ、または代謝産物をより単純な分子に分解することができる。中間代謝物は他の代謝産物から合成され、おそらくは、より複雑な物質を作製するために使用されるか、またはより単純な化合物に分解されうるが、それはしばしば化学エネルギーの放出を伴う。代謝の最終産物は他の代謝産物の分解の最終結果である。
【0025】
「代謝経路」とも称される用語「生合成経路」は、1化学種を別の化学種に変換する(変化させる)ための一連のタンパク同化または異化の生化学的反応を表す。遺伝子産物は、並行してまたは連続して、同じ基質に作用するか、同じ生成物を生産するか、または同じ基質と代謝産物の最終産物との間の代謝中間体(すなわち代謝産物)に作用するかもしくは代謝中間体を生産するならば、同じ「代謝経路」に属する。
【0026】
用語「基質」または「好適な基質」とは、酵素の作用によって別の化合物に変換されるかまたは変換されることになっている任意の物質または化合物を表す。該用語には、単一の化合物だけでなく、化合物の組み合わせ、例えば少なくとも1つの基質を含有する溶液、混合物および他の材料、またはその誘導体も含まれる。さらに、用語「基質」は、任意のバイオマス由来の糖などの出発材料としての使用に好適な炭素源を提供する化合物だけでなく、本明細書中に記載の代謝的に操作された微生物と関連する経路中で使用される中間体および最終産物である代謝産物も包含する。「バイオマス由来の糖」には、非限定的に、グルコース、マンノース、キシロース、およびアラビノースなどの分子が含まれる。バイオマス由来の糖という用語は、微生物によって通常使用される好適な炭素基質、例えば、非限定的に、すべてDまたはL型の、グルコース、ラクトース、ソルボース、フルクトース、イドース、ガラクトースおよびマンノースを含む6炭糖、または6炭糖の組み合わせ、例えばグルコースおよびフルクトース、ならびに/または、非限定的に2-ケト-L-グロン酸、イドン酸(IA)、グルコン酸(GA)、6-ホスホグルコナート、2-ケト-D-グルコン酸(2 KDG)、5-ケト-D-グルコン酸、2-ケトグルコナートホスファート、2,5-ジケト-L-グロン酸、2,3-L-ジケトグロン酸、デヒドロアスコルビン酸、エリソルビン酸(EA)およびD-マンノン酸を含む6炭糖酸を包含する。
【0027】
本明細書中で提供される組換え微生物は、好適な炭素基質の使用からイソプロパノールを生産するための経路に関与する複数の標的酵素を発現することができる。
【0028】
一連の微生物を改変して、イソプロパノールの生産に好適な組換え代謝経路を含ませることができる。種々の微生物が、本明細書中で提供される組換え微生物での使用に好適な標的酵素をコードする遺伝物質の「供給源」として働くことができる。用語「微生物(microorganism)」は、アーケア、バクテリアおよびユーカリアドメイン由来の原核および真核微生物種を含み、後者は、酵母および糸状菌、原生動物、藻類、または高等原生生物を含む。用語「微生物細胞(microbial cells)」および「微生物(microbes)」は微生物(microorganism)という用語と交換可能に使用される。
【0029】
用語「原核生物」は当技術分野で認められている用語であり、核または他の細胞小器官を含有しない細胞を表す。原核生物は、概して、バクテリアおよびアーケアの2ドメインの一方に分類される。アーケアおよびバクテリアドメインの生物間の決定的な差異は16SリボソームRNA中のヌクレオチド塩基配列の基本的な差異に基づく。
【0030】
用語「アーケア」とは、特異な環境に典型的に見出され、リボソームタンパク質の数および細胞壁中のムラミン酸の欠如を含む複数の基準によって残りの原核生物と区別されるMendosicutes門の生物の分類を表す。ssrRNA解析に基づくと、アーケアは2つの系統的に異なる群: CrenarchaeotaおよびEuryarchaeotaからなる。その生理学に基づくと、アーケアは3つのタイプ: メタン生成菌(メタンを生産する原核生物); 高度好塩菌(非常に高い塩([NaCl])濃度で生存する原核生物); および高度(超)好熱菌(thermophilus) (非常に高温で生存する原核生物)に分けることができる。バクテリアからそれらを区別する一元的なアーケアの特徴(すなわち、細胞壁中にムレインが存在しないこと、エステル結合膜脂質、等)に加えて、これらの原核生物はその特定の生息地に自身を適合させる特有の構造的または生化学的属性を示す。Crenarchaeotaは超好熱性硫黄依存性原核生物から主に構成され、Euryarchaeotaはメタン生成菌および高度好塩菌を含有する。
【0031】
「バクテリア」、または「真正細菌」とは、原核生物のドメインを表す。バクテリアは、以下の少なくとも11の異なる群を含む: (1)グラム陽性(グラム+)菌、グラム陽性菌には2つの主要な亜門: (1)高G+C群(Actinomycetes, Mycobacteria, Micrococcus, その他) (2)低G+C群(Bacillus, Clostridia, Lactobacillus, Staphylococci, Streptococci, Mycoplasmas)が存在する; (2)プロテオバクテリア、例えば紫色光合成+非光合成グラム陰性菌(ほとんどの「一般的な」グラム陰性菌を含む); (3)シアノバクテリア、例えば酸素性(oxygenic)光合成生物; (4)スピロヘータおよび近縁種; (5)プラクトマイセス(Planctomyces); (6)バクテロイデス、フラボバクテリア(Flavobacteria); (7)クラミジア; (8)緑色硫黄細菌; (9)緑色非硫黄細菌(嫌気性光合成生物); (10)放射線抵抗性小球菌(Radioresistant micrococci)および近縁種; (11)サーモトガ(Thermotoga)およびサーモシフォ(Thermosipho)好熱菌。
【0032】
「グラム陰性菌」には、球菌、非腸内(nonenteric)桿状菌、および腸内桿状菌が含まれる。グラム陰性菌の属には、例えば、ナイセリア、スピリルム、パスツレラ、ブルセラ、エルシニア、フランシセラ、ヘモフィルス、ボルデテラ、エシェリキア、サルモネラ、赤痢菌、クレブシエラ、プロテウス、ビブリオ、シュードモナス、バクテロイデス、アセトバクター、アエロバクター、アグロバクテリウム、アゾトバクター、スピリラ(Spirilla)、セラチア、ビブリオ、根粒菌、クラミジア、リケッチア、トレポネーマ、およびフソバクテリウムが含まれる。
【0033】
「グラム陽性菌」には、球菌、非胞子形成(nonsporulating)桿状菌、および胞子形成(sporulating)桿状菌が含まれる。グラム陽性菌の属には、例えば、アクチノマイセス、バシラス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エリジペロトリックス、乳酸桿菌、リステリア、マイコバクテリウム、粘液球菌、ノカルジア、ブドウ球菌、連鎖球菌、およびストレプトマイセスが含まれる。
【0034】
用語「組換え微生物」および「組換え宿主細胞」は本明細書中で交換可能に使用され、内因性核酸配列を発現もしくは過剰発現するか、またはベクターに含まれる配列などの非内因性配列を発現するように遺伝子改変されている微生物を表す。該核酸配列は、概して、上記のように所望の代謝産物を生産するための代謝経路に関与する標的酵素をコードする。したがって、本明細書中に記載の組換え微生物は、親微生物によって以前に発現または過剰発現されていない標的酵素を発現または過剰発現するように遺伝子改変されている。用語「組換え微生物」および「組換え宿主細胞」は、特定の組換え微生物だけでなく、そのような微生物の子孫または潜在的子孫も表すことが理解される。
【0035】
「親微生物」は、組換え微生物を作製するために使用される細胞を表す。用語「親微生物」は、天然に存在する細胞、すなわち遺伝子改変されていない「野生型」細胞を説明する。また、用語「親微生物」は、遺伝子改変されているが標的酵素、例えば所望の代謝産物、例えばイソプロパノールを生産するための生合成経路に関与する酵素を発現または過剰発現しない細胞を説明する。例えば、第1の標的酵素、例えばチオラーゼを発現または過剰発現するように野生型微生物を遺伝子改変することができる。この微生物は、第2の標的酵素を発現または過剰発現するように改変された微生物の作製において親微生物として機能する。次に、例えばチオラーゼおよび第2の酵素を発現または過剰発現するように改変された微生物を、第3の標的酵素を発現または過剰発現するように改変することができる、等である。したがって、親微生物は、連続する遺伝子改変イベントの基準細胞として機能する。各改変イベントは、基準細胞に核酸分子を導入することによって達成することができる。この導入は標的酵素の発現または過剰発現を促進する。用語「促進する」は、例えば親微生物のプロモーター配列の遺伝子改変によって標的酵素をコードする内因性核酸配列を活性化することを包含することが理解される。用語「促進する」は、親微生物への、標的酵素をコードする外因性核酸配列の導入を包含することがさらに理解される。
【0036】
別の実施形態では、好適な炭素基質をイソプロパノールに変換する組換え微生物の製造方法を提供する。該方法は、炭素源から最終産物への変換において所望の酵素機能を有するポリペプチド(群)をコードする1つ以上の組換え核酸配列で微生物を形質転換するステップを含む。そのホモログ、変異体、断片、関連融合タンパク質、または機能的等価物を含む代謝産物の作製に有用な酵素をコードする核酸配列を、適切な宿主細胞、例えば細菌または酵母細胞中でのそのようなポリペプチドの発現を導く組換え核酸分子中で使用する。核酸分子のコード対象の活性を変化させない配列の追加、例えば非機能的または非コード配列の追加は基本的核酸の保存された変異体であることが理解される。酵素の「活性」は、代謝産物を生じさせる反応を触媒する、すなわち「機能する」その能力の基準であり、該反応の代謝産物が生産される速度として表記される。例えば、酵素活性は、単位時間あたりまたは単位酵素(例えば濃度または重量)あたりに生産される代謝産物の量としてまたは親和性もしくは解離定数の観点から表すことができる。
【0037】
「タンパク質」または「ポリペプチド」(該用語は本明細書中で交換可能に使用される)は、アミノ酸と称される化学的構築ブロックの1つ以上の鎖を含み、アミノ酸はペプチド結合と称される化学結合によってともに連結される。「酵素」は、1つ以上の化学的または生化学的反応を、ほぼ特異的に、触媒または促進する、完全にまたは大部分がタンパク質からなる任意の物質を意味する。用語「酵素」は触媒作用のポリヌクレオチド(例えばRNAまたはDNA)を表すこともできる。「ネイティブ(天然)の」または「野生型」タンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子、または細胞とは、天然に存在するタンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子、または細胞を意味する。
【0038】
タンパク質は、該タンパク質をコードする核酸配列が第2のタンパク質をコードする核酸配列と類似の配列を有すれば、第2のタンパク質と「ホモロジー」を有するかまたは「相同」である。あるいは、2つのタンパク質が「類似の」アミノ酸配列を有すれば、タンパク質は第2のタンパク質とホモロジーを有する。(ゆえに、用語「相同タンパク質」は2つのタンパク質が類似のアミノ酸配列を有することを意味すると定義される)。
【0039】
本明細書中で使用される2つのタンパク質(またはタンパク質の領域)は、アミノ酸配列が少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する場合に実質的に相同である。2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、最適な比較目的で配列をアライメントする(例えば、最適なアライメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、非相同配列を比較目的から無視することができる)。一実施形態では、比較目的でアライメントされる参照配列の長さは、該参照配列の長さの少なくとも30%、典型的に少なくとも40%、より典型的に少なくとも50%、さらにより典型的に少なくとも60%、およびさらにより典型的に少なくとも70%、80%、90%、100%である。そして、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中のある位置が、第2の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合、該分子は該位置で同一である(本明細書中で使用されるアミノ酸または核酸「同一性」はアミノ酸または核酸「ホモロジー」と等価である)。2配列間の同一性パーセントは、2配列の最適なアライメントのために導入する必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮しての、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0040】
タンパク質またはペプチドに関して「相同的」が使用される場合、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換によって異なることがよくあることが認識される。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的性質(例えば電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されている置換である。一般に、保存的アミノ酸置換はタンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、配列同一性パーセントまたはホモロジーの程度を、置換の保存的性質を補正するよう上方に調節することができる。この調節を施す手段は当業者に周知である(例えばPearson et al., 1994, (参照によりここに組み入れられる)を参照のこと)。
【0041】
以下の6群は、それぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する: (1)セリン(S)、スレオニン(T); (2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E); (3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q); (4)アルギニン(R)、リシン(K); (5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、および(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0042】
配列同一性パーセントとも称されるポリペプチドの配列ホモロジーは、典型的に、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。例えばSequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group (GCG), University of Wisconsin Biotechnology Center, 910 University Avenue, Madison, Wis. 53705を参照のこと。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の改変に割り当てられたホモロジーの基準を使用して類似の配列を適合させる。例えば、GCGは「Gap」および「Bestfit」などのプログラムを含有し、それらをデフォルトパラメータで使用して、密接に関連するポリペプチド、例えば異なる生物種由来の相同ポリペプチド間または野生型タンパク質とその突然変異タンパク質との間の配列ホモロジーまたは配列同一性を決定することができる。例えばGCGバージョン6.1を参照のこと。
【0043】
阻害性分子配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の典型的アルゴリズムはコンピュータプログラムBLAST (Altschul, 1990; Gish, 1993; Madden, 1996; Altschul, 1997; Zhang, 1997)、特にblastpまたはtblastn (Altschul, 1997)である。BLASTpの典型的パラメータは: 期待値: 10 (デフォルト); フィルター: seg (デフォルト); ギャップオープンコスト: 11 (デフォルト); ギャップ延長コスト: 1 (デフォルト); 最大アライメント: 100 (デフォルト); ワードサイズ: 11 (デフォルト); 表示件数: 100 (デフォルト); ペナルティマトリックス: BLOWSUM62である。
【0044】
多数の異なる生物由来の配列を含有するデータベースを検索する場合、アミノ酸配列を比較することが典型的である。アミノ酸配列を使用するデータベース検索は当技術分野において公知のblastp以外のアルゴリズムによって測定することができる。例えば、GCGバージョン6.1のプログラムFASTAを使用してポリペプチド配列を比較することができる。FASTAは、クエリ配列と検索配列間の最も重複する領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する(Pearson, 1990 (参照によりここに組み入れられる))。例えば、参照によりここに組み入れられるGCGバージョン6.1中で提供されるFASTAをそのデフォルトパラメータ(ワードサイズ2およびPAM250スコアリングマトリックス)で使用してアミノ酸配列間の配列同一性パーセントを決定することができる。
【0045】
上記核酸配列は「遺伝子」を含むこと、および上記核酸分子は「ベクター」または「プラスミド」を含むことが理解される。例えば、ケトチオラーゼをコードする核酸配列はatoB遺伝子またはそのホモログ、またはfadA遺伝子またはそのホモログによってコードされうる。したがって、「構造遺伝子」とも称される用語「遺伝子」は、アミノ酸の特定の配列をコードする核酸配列を表し、それは1つ以上のタンパク質または酵素の全体または部分を含み、かつ調節(非転写)DNA配列、例えばプロモーター配列を含んでよく、それは例えば該遺伝子が発現される条件を決定する。遺伝子の転写領域は非翻訳領域ならびにコード配列を含んでよく、非翻訳領域には、イントロン、5'-非翻訳領域(UTR)、および3'-UTRが含まれる。用語「核酸」または「組換え核酸」とは、ポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)、および適切であればリボ核酸(RNA)を表す。遺伝子配列に関する用語「発現」とは、遺伝子の転写、および必要に応じて、得られたmRNA転写物からタンパク質への翻訳を表す。ゆえに、前後関係から明らかであるように、タンパク質の発現はオープンリーディングフレーム配列の転写および翻訳から生じる。
【0046】
用語「オペロン」とは、共通プロモーターから単一の転写単位として転写される2つ以上の遺伝子を表す。いくつかの実施形態では、オペロンを含む遺伝子は隣接遺伝子である。共通プロモーターを改変することによってオペロン全体の転写を改変(すなわち、増加、減少、または排除)できることが理解される。あるいは、オペロン中の任意の遺伝子または遺伝子の組み合わせを改変して、コード対象のポリペプチドの機能または活性を変化させることができる。改変の結果、コード対象のポリペプチドの活性を増加させることができる。さらに、改変により、コード対象のポリペプチドに新規活性を付与することができる。典型的な新規活性には、代替基質の使用および/または代替の環境条件で機能する能力が含まれる。
【0047】
「ベクター」は、生物、細胞、または細胞成分間で核酸を伝播および/または移動させることができる任意の手段である。ベクターには、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、プラスミド、ファージミド、トランスポゾン、および人工染色体、例えばYAC (酵母人工染色体)、BAC (細菌人工染色体)、およびPLAC (植物人工染色体)、等が含まれ、それは「エピソーム」であり、すなわち、自律的に複製するかまたは宿主細胞の染色体に融合することができる。ベクターは、性質上エピソーム性ではない、裸のRNAポリヌクレオチド、裸のDNAポリヌクレオチド、同一ストランド内のDNAおよびRNAの両者からなるポリヌクレオチド、ポリリシンコンジュゲートDNAまたはRNA、ペプチドコンジュゲートDNAまたはRNA、リポソームコンジュゲートDNA、等であってもよく、またはそれは1つ以上の上記ポリヌクレオチド構築物を含む生物、例えばアグロバクテリウムまたは細菌であってよい。
【0048】
「形質転換」とは、ベクターが宿主細胞に導入されるプロセスを表す。形質転換(または形質導入、またはトランスフェクション)は、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、遺伝子銃(または微粒子銃媒介性送達)、またはアグロバクテリウム媒介性形質転換を含む多数の手段のいずれか1つによって達成することができる。
【0049】
遺伝暗号の縮重性のせいで、本開示の所定のアミノ酸配列をコードするために、ヌクレオチド配列が異なる種々のDNA化合物を使用できることを当業者は認識する。上記生合成酵素をコードするネイティブDNA配列は、単に本開示の実施形態を説明するためだけに本明細書中で参照され、本開示は、本開示の方法において利用される酵素のポリペプチドおよびタンパク質のアミノ酸配列をコードする任意の配列のDNA化合物を含む。同様に、ポリペプチドは、典型的に、所望の活性の損失または重大な損失なく、そのアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸置換、欠失、および挿入を許容する。本開示は代替アミノ酸配列を有するそのようなポリペプチドを含み、本明細書中で示されるDNA配列によってコードされるアミノ酸配列は単に本開示の実施形態を説明するにすぎない。
【0050】
本開示は、以下でさらに詳細に説明されるように、1つ以上の標的酵素をコードする組換えDNA発現ベクターまたはプラスミドの形式の核酸分子を提供する。一般に、そのようなベクターは宿主微生物の細胞質で複製するかまたは宿主微生物の染色体DNAに融合することができる。いずれの場合でも、ベクターは安定なベクターである(すなわちベクターは、たとえ選択圧がある場合だけだとしても、多数の細胞分裂期間にわたって存在したままである)か、または一過性ベクターである(すなわちベクターは細胞分裂の回数が増えると次第に宿主微生物によって失われる)。本開示は、単離された(すなわち、純粋ではないが、天然に見出されない存在量および/または濃度で調製物中に存在する)および精製された(すなわち、混入物質を実質的に含まないか、または天然であれば、対応するDNAとともに見出される物質を実質的に含まない)形式のDNA分子を提供する。
【0051】
そのような核酸を含む組換え発現ベクターは本開示の範囲内に含まれる。発現ベクターという用語は、宿主微生物または無細胞の転写および翻訳系に導入されうる核酸を表す。発現ベクターは、微生物中の染色体または他のDNAの部分としてであれ、任意の細胞内区画中であれ、例えば細胞質中の複製ベクターとしてであれ、微生物中で恒久的または一時的に維持されうる。また、発現ベクターはRNAの発現を誘導するプロモーターを含み、該RNAは典型的には微生物または細胞抽出物中でポリペプチドに翻訳される。RNAからタンパク質への効率的翻訳のために、発現ベクターはまた、典型的には、発現対象の遺伝子のコード配列の開始コドンの上流に位置するリボソーム結合部位配列を含有する。他のエレメント、例えばエンハンサー、分泌シグナル配列、転写終結配列、およびベクターを含有する宿主微生物を同定および/または選択することができる1つ以上のマーカー遺伝子を発現ベクター中に存在させてもよい。選択マーカー、すなわち、抗生物質耐性または感受性を付与する遺伝子が使用され、それにより、細胞が適切な選択培地で培養された場合に選択可能な表現型が形質転換細胞に付与される。
【0052】
ベクターの使用目的および、該ベクターが複製するかまたは発現を誘導することが意図される場となる宿主細胞(群)に応じて、発現ベクターの種々の成分は広く変動しうる。大腸菌、酵母、ストレプトマイセスおよび他の一般的に使用される細胞での遺伝子の発現およびベクターの維持に好適な発現ベクターの成分は広く知られ、市販されている。例えば、本開示の発現ベクター中に含ませるために好適なプロモーターには、真核生物または原核生物の宿主微生物中で機能するプロモーターが含まれる。プロモーターは、宿主微生物の成長に関連して発現の調節を可能にするか、または化学的または物理的刺激に応答して遺伝子の発現をオンまたはオフにする調節配列を含んでよい。大腸菌およびある種の他の細菌宿主細胞では、生合成酵素、抗生物質耐性付与酵素、およびファージタンパク質の遺伝子由来のプロモーターを使用することができ、それには、例えば、ガラクトース、ラクトース(lac)、マルトース、トリプトファン(trp)、ベータ-ラクタマーゼ(bla)、バクテリオファージラムダPL、およびT5プロモーターが含まれる。さらに、合成プロモーター、例えばtacプロモーター(U.S. Pat. No. 4,551,433)を使用することもできる。大腸菌発現ベクターでは、pUC、p1P、p1、およびpBR由来の複製開始点などの大腸菌の複製開始点を含ませることが有用である。
【0053】
ゆえに、組換え発現ベクターは少なくとも1つの発現系を含有し、そして該発現系は、適合性宿主細胞中でコード配列の発現を生じさせるように作動するプロモーターおよび場合により終結配列に作動可能に連結されているPKSおよび/または他の生合成遺伝子コード配列の少なくとも一部分から構成される。宿主細胞は、本開示の組換えDNA発現ベクターでの形質転換によって、染色体外エレメントとしての、または染色体に組み込まれた、発現系配列を含有するように改変される。
【0054】
以前に記載されるように、用語「宿主細胞」は用語「組換え微生物」と交換可能に使用され、イソプロパノールの生産に好適で、核酸構築物、例えばベクターまたはプラスミドでの形質転換に感受性の任意の細胞タイプを含む。
【0055】
当業者に理解されるように、コード配列を改変して、特定の宿主でのその発現を増強させることが有益でありうる。遺伝暗号は64個の可能なコドンで重複するが、ほとんどの生物は、通常、これらのコドンのサブセットを使用する。ある種で最もよく利用されるコドンは最適コドンと称され、あまりよく利用されないコドンは稀なまたは使用頻度の低いコドンとして分類される。宿主の優先的なコドン使用を反映するようにコドンを置換することができ、該プロセスは、「コドン最適化」または「種コドンバイアスの調節」と称されることもある。
【0056】
特定の原核生物または真核生物の宿主によって好まれるコドンを含有する最適化されたコード配列(Murray et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17:477-508も参照のこと)を調製して、例えば翻訳の割合を増加させるかまたは所望の特性、例えば非最適化配列から生産された転写物と比較して長い半減期を有する組換えRNA転写物を生産することができる。翻訳終止コドンを改変して宿主優先度を反映させることもできる。例えば、S. cerevisiaeおよび哺乳類の典型的な終止コドンはそれぞれUAAおよびUGAである。単子葉植物の典型的な終止コドンはUGAであり、昆虫および大腸菌は終止コドンとして通常UAAを使用する(Dalphin et al. (1996) Nucl. Acids Res. 24: 216-218)。植物での発現に関してヌクレオチド配列を最適化するための方法論は、例えば、U.S. Pat. No. 6,015,891、およびその引用文献に記載される。
【0057】
本開示の核酸は、標準PCR増幅技術および以下の実施例セクションに記載の手順にしたがって、cDNA、mRNAまたはあるいは、ゲノムDNAを鋳型として使用し、かつ適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅することができる。そのように増幅された核酸を適切なベクターにクローニングし、DNA配列解析によって特徴付けることができる。さらに、標準合成技術によって、例えば自動DNAシンセサイザーを使用して、ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドを製造することができる。
【0058】
また、特定のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に1つ以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を導入して、コード対象のタンパク質中に1つ以上のアミノ酸置換、付加または欠失が導入されるようにすることによって、本明細書中に記載の酵素と相同なポリペプチドをコードする単離された核酸分子を作製できることが理解される。突然変異は、標準的技術、例えば部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発によって核酸配列に導入することができる。非保存的アミノ酸置換を施すことが望ましい位置(上記参照のこと)と対照的に、いくつかの位置では、保存的アミノ酸置換を施すことが好ましい。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0059】
別の実施形態では、イソプロパノールの製造方法を提供する。該方法は、本明細書中で提供される組換え微生物を、好適な基質の存在下でかつその基質からイソプロパノールへの変換に好適な条件下で、培養するステップを含む。本明細書中で提供される微生物によって生産されたアルコールは、当業者に公知の任意の方法によって検出することができる。そのような方法には、質量分析が含まれる。本明細書中で提供される組換え微生物の成長および維持に好適な培養条件は以下の実施例に記載される。そのような条件を各微生物の必要条件に適合するように改変できることを当業者は認識するであろう。
【0060】
以前に考察されるように、ベクターの使用、プロモーターの使用および多数の他の関連トピックスを含む本発明において有用な分子生物学的技術を説明する一般的な教科書には、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology Volume 152, (Academic Press, Inc., San Diego, Calif.) (「Berger」); Sambrook et al., Molecular Cloning--A Laboratory Manual, 2d ed., Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989 (「Sambrook」) およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, Greene Publishing Associates, Inc. およびJohn Wiley & Sons, Inc.の合弁事業, (1999まで増補) (「Ausubel」)が含まれる。例えば本開示の相同核酸の生産のためのin vitro増幅法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅および他のRNAポリメラーゼ媒介技術(例えばNASBA)を通して、当業者を指導するために十分なプロトコルの例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびにMullis et al. (1987) U.S. Pat. No. 4,683,202; Innis et al., eds. (1990) PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Academic Press Inc. San Diego, Calif.) (「Innis」); Arnheim & Levinson (Oct. 1, 1990) C&EN 36-47; The Journal Of NIH Research (1991) 3: 81-94; Kwoh et al.(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173; Guatelli et al. (1990) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 87: 1874; Lomell et al. (1989) J. Clin. Chem 35: 1826; Landegren et al. (1988) Science 241: 1077-1080; Van Brunt (1990) Biotechnology 8: 291-294; Wu and Wallace (1989) Gene 4:560; Barringer et al. (1990) Gene 89:117; およびSooknanan and Malek (1995) Biotechnology 13: 563-564に見出せる。in vitro増幅核酸のクローニングのための改良された方法は、Wallace et al., U.S. Pat. No. 5,426,039に記載されている。大きい核酸をPCRによって増幅するための改良された方法は、Cheng et al. (1994) Nature 369: 684-685およびその引用文献にまとめられている。該方法では、40 kbまでのPCRアンプリコンが作製される。本質的にすべてのRNAを、逆転写酵素およびポリメラーゼを使用して、制限消化、PCR増幅(PCR expansion)およびシークエンシングに好適な二本鎖DNAに変換できることを当業者は認識する。例えば、Ausubel、SambrookおよびBerger(すべて上記)を参照のこと。
【0061】
したがって、本開示は、イソプロパノールを生産し、かつ、親微生物と比較して、標的酵素、例えばアセチルcoAアセチルトランスフェラーゼ(例えばatoB)、アセトアセチルcoAチオラーゼ(例えばthl)、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ(例えばatoAD)、補酵素Aトランスフェラーゼ(例えばctfAB)、アセトアセテートデカルボキシラーゼ(例えばadc)および第2級アルコールデヒドロゲナーゼ(例えばsadh)、またはそれらの任意の組み合わせの発現または上昇した発現を含む組換え微生物を提供する。さらに、該微生物は、親微生物と比較して、基質としてアセチルcoAを優先的に使用するアルコール/アセトアルデヒド(acetoaldehyde)デヒドロゲナーゼ(例えばadhE遺伝子)の発現の破壊、欠失またはノックアウトを含んでよい。他の破壊、欠失またはノックアウトには、(i)ピルベートからD-ラクテートへのNADH依存的変換を触媒する酵素; (ii)フマレートとスクシネートの相互変換の触媒作用を促進する酵素; (iii)酸素転写調節因子; (iv)アセチルcoAからアセチルリン酸への変換を触媒する酵素; および(v)ピルベートからアセチルcoAおよびホルメートへの変換を触媒する酵素、からなる群から選択されるポリペプチドまたはタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子が含まれる。一態様では、該微生物は、アルコール/アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび上記(i)〜(iv)のうち1つ以上((v)ではない)の組み合わせの破壊、欠失またはノックアウトを含む。
【0062】
図1に示されるように、チオラーゼまたはアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼを発現または過剰発現するように代謝的に操作された組換え微生物によってアセトアセチルCoAを生産させることができる。
【0063】
したがって、本明細書中で提供される組換え微生物は少なくとも1つの標的酵素、例えばケトチオラーゼの上昇した発現を含む。他の態様では、組換え微生物は、好適な炭素基質の発酵からイソプロパノールを生産する経路に関与する複数の標的酵素を発現することができる。複数の酵素には、ケトチオラーゼ、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、補酵素Aトランスフェラーゼ、アセトアセテートデカルボキシラーゼおよび第2級アルコールデヒドロゲナーゼ、またはそれらの任意の組み合わせが含まれうる。
【0064】
以前に記載されるように、本開示を通して記載される標的酵素は概して代謝産物を生産する。例えば、ケトチオラーゼは、アセチルCoAを含む基質からアセトアセチルCoAを生産する。さらに、本開示を通して記載される標的酵素はポリヌクレオチドによってコードされる。例えば、ケトチオラーゼは、atoB遺伝子、ポリヌクレオチドもしくはそのホモログ、またはfadA遺伝子、ポリヌクレオチドもしくはそのホモログによってコードされうる。atoB遺伝子またはfadA遺伝子は、好適な酵素をコードする好適な核酸配列を提供する任意の生物学的供給源由来であってよい。例えば、atoB遺伝子またはfadA遺伝子は大腸菌またはC.acetobutylicum由来であってよい。
【0065】
別の態様では、本明細書中で提供される組換え微生物は、親微生物と比較してアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼの上昇した発現を含む。該微生物は、アセチルCoAを含む基質からアセトアセチルCoAを含む代謝産物を生産する。アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼは、thlA遺伝子、ポリヌクレオチドまたはそのホモログによってコードされうる。thlA遺伝子またはポリヌクレオチドはクロストリジウム属由来であってよい。
【0066】
別の態様では、本明細書中で提供される組換え微生物は、親微生物と比較してアセトアセチルCoAトランスフェラーゼの上昇した発現を含む。該微生物は、アセトアセチルCoAを含む基質からアセトアセテートを含む代謝産物を生産する。アセトアセチルCoAトランスフェラーゼは、atoAD遺伝子、ポリヌクレオチドまたはそのホモログによってコードされうる。atoADは大腸菌由来であってよい。
【0067】
別の実施形態では、本明細書中で提供される組換え微生物は、親微生物と比較して補酵素Aトランスフェラーゼの上昇した発現を含む。該微生物は、アセトアセチルCoAを含む基質からアセトアセテートを含む代謝産物を生産する。そのco-Aトランスフェラーゼは、ctfAB遺伝子、ポリヌクレオチドまたはそのホモログによってコードされうる。ctfABはクロストリジウム由来であってよい。
【0068】
別の実施形態では、本明細書中で提供される組換え微生物は、親微生物と比較してアセトアセテートデカルボキシラーゼの上昇した発現を含む。該微生物は、アセトアセテートを含む基質からアセトンを含む代謝産物を生産する。アセトアセテートデカルボキシラーゼは、adc遺伝子、ポリヌクレオチドまたはそのホモログによってコードされうる。アセトアセテートデカルボキシラーゼはクロストリジウム由来であってよい。
【0069】
別の実施形態では、本明細書中で提供される組換え微生物は、親微生物と比較して第2級アルコールデヒドロゲナーゼの上昇した発現を含む。該微生物は、アセトンを含む基質からイソプロパノールを含む代謝産物を生産する。第2級アルコールデヒドロゲナーゼは、sadh遺伝子、ポリヌクレオチドまたはそのホモログによってコードされうる。第2級アルコールデヒドロゲナーゼはクロストリジウムまたはサーモアナエロビウム(Thermoanaerobium)由来であってよい。
【0070】
本開示は、本開示の方法、組成物および生物において有用な具体的遺伝子を特定している。しかし、そのような遺伝子に対する絶対的同一性は必要ではないことが認識されよう。例えば、ポリペプチドまたは酵素をコードする配列を含む特定の遺伝子またはポリヌクレオチド中に変更を施し、活性に関してスクリーニングすることができる。典型的に、そのような変更は保存的突然変異およびサイレント突然変異を含む。そのような改変または突然変異ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを、当技術分野において公知の方法を使用して機能的酵素活性の発現に関してスクリーニングすることができる。
【0071】
以下の表および本開示は、当業者に利用可能なポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を有する遺伝子および各遺伝子のホモログの非限定的な例を提供する。
【表1】

【0072】
C. acetobutylicum thl (アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ)、大腸菌atoAD (アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ)、C. acetobutylicum adc (アセトアセテートデカルボキシラーゼ)およびC. beijerinckii adh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)の組み合わせの過剰発現を含む大腸菌の典型的な収率データは、振とうフラスコ中で81.6 mMのイソプロパノールを生産し、生産段階の収率は43.5% (mol/ mol)であった。
【0073】
本開示は、野生型微生物より高い収率を提供する生合成経路を含む組換え微生物を提供する。一実施形態では、親微生物はイソプロパノールを生産しない。例えば、野生型大腸菌は追跡可能な量のイソプロパノールを生産しない。さらに別の実施形態では、親微生物は微量のイソプロパノールしか生産しなかった。特定の実施形態では、微生物は大腸菌である。別の態様では、培養物は実質的に同種の(例えば約70〜100%同種の)微生物集団を含む。別の態様では、培養物は、培養物中の少なくとも1つの他の微生物によってイソプロパノールの生産に使用されうる代謝産物を生産した別の生合成経路をそれぞれ有する微生物の組み合わせを含むことができる。
【0074】
本開示は、本明細書中に記載の組換え微生物の作製に有用な種々の遺伝子、ホモログおよび変異体のアクセッション番号を提供する。本明細書中に記載のホモログおよび変異体は例示的でかつ非限定的であることが理解されるべきである。追加のホモログ、変異体および配列は種々のデータベースを使用して当業者に利用可能である。該データベースには、例えば、National Center for Biotechnology Information (NCBI)が含まれ、NCBIへはWorld-Wide-Web上でアクセス可能である。
【0075】
エタノールデヒドロゲナーゼ(アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼとも称される)は大腸菌においてadhEによってコードされる。adhEは3つの活性: アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH); アセトアルデヒド/アセチルCoAデヒドロゲナーゼ(ACDH); ピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼ(deactivase) (PFLデアクチバーゼ)を含み; PFLデアクチバーゼ活性は、鉄、NAD、およびCoA依存的反応でのピルビン酸ギ酸リアーゼ触媒のクエンチングを触媒する。ホモログは当技術分野において公知であり(例えば、アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Polytomella sp. Pringsheim 198.80) gi|40644910|emb|CAD42653.2|(40644910); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium botulinum A str. ATCC 3502) gi|148378348|ref|YP_001252889.1|(148378348); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis CO92) gi|16122410|ref|NP_405723.1|(16122410); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pseudotuberculosis IP 32953) gi|51596429|ref|YP_070620.1|(51596429); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis CO92) gi|115347889|emb|CAL20810.1|(115347889); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pseudotuberculosis IP 32953) gi|51589711|emb|CAH21341.1|(51589711); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Escherichia coli CFT073) gi|26107972|gb|AAN80172.1|AE016760_31(26107972); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis 次亜種Microtus str. 91001) gi|45441777|ref|NP_993316.1|(45441777); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis 次亜種Microtus str. 91001) gi|45436639|gb|AAS62193.1|(45436639); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium perfringens ATCC 13124) gi|110798574|ref|YP_697219.1|(110798574); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Shewanella oneidensis MR-1)gi|24373696|ref|NP_717739.1|(24373696); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium botulinum A str. ATCC 19397) gi|153932445|ref|YP_001382747.1|(153932445); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis 次亜種Antiqua str. E1979001) gi|165991833|gb|EDR44134.1|(165991833); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium botulinum A str. Hall) gi|153937530|ref|YP_001386298.1|(153937530); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium perfringens ATCC 13124) gi|110673221|gb|ABG82208.1|(110673221); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium botulinum A str. Hall) gi|152933444|gb|ABS38943.1|(152933444); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis 次亜種Orientalis str. F1991016) gi|165920640|gb|EDR37888.1|(165920640); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis 次亜種Orientalis str. IP275)gi|165913933|gb|EDR32551.1|(165913933);
アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis Angola) gi|162419116|ref|YP_001606617.1|(162419116); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium botulinum F str. Langeland) gi|153940830|ref|YP_001389712.1|(153940830); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Escherichia coli HS) gi|157160746|ref|YP_001458064.1|(157160746); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Escherichia coli E24377A) gi|157155679|ref|YP_001462491.1|(157155679); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia enterocolitica subsp. enterocolitica 8081) gi|123442494|ref|YP_001006472.1|(123442494); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Synechococcus sp. JA-3-3Ab) gi|86605191|ref|YP_473954.1|(86605191); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Listeria monocytogenes str. 4b F2365) gi|46907864|ref|YP_014253.1|(46907864); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Enterococcus faecalis V583) gi|29375484|ref|NP_814638.1|(29375484); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Streptococcus agalactiae 2603V/R) gi|22536238|ref|NP_687089.1|(22536238); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium botulinum A str. ATCC 19397) gi|152928489|gb|ABS33989.1|(152928489); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Escherichia coli E24377
A) gi|157077709|gb|ABV17417.1|(157077709); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Escherichia coli HS) gi|157066426|gb|ABV05681.1|(157066426); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Clostridium botulinum F str. Langeland) gi|152936726|gb|ABS42224.1|(152936726); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis CA88-4125) gi|149292312|gb|EDM42386.1|(149292312); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia enterocolitica subsp. enterocolitica 8081) gi|122089455|emb|CAL12303.1|(122089455); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Chlamydomonas reinhardtii) gi|92084840|emb|CAF04128.1|(92084840); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Synechococcus sp. JA-3-3Ab) gi|86553733|gb|ABC98691.1|(86553733); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Shewanella oneidensis MR-1) gi|24348056|gb|AAN55183.1|AE015655_9(24348056); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Enterococcus faecalis V583) gi|29342944|gb|AAO80708.1|(29342944); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Listeria monocytogenes str. 4b F2365) gi|46881133|gb|AAT04430.1|(46881133); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Listeria monocytogenes str. 1/2a F6854) gi|47097587|ref|ZP_00235115.1|(47097587); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Listeria monocytogenes str. 4b H7858) gi|47094265|ref|ZP_00231973.1|(47094265); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Listeria monocytogenes str. 4b H7858) gi|47017355|gb|EAL08180.1|(47017355); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Listeria monocytogenes str. 1/2a F6854) gi|47014034|gb|EAL05039.1|(47014034); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Streptococcus agalactiae 2603V/R) gi|22533058|gb|AAM98961.1|AE014194_6(22533058)p; アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis 次亜種Antiqua str. E1979001) gi|166009278|ref|ZP_02230176.1|(166009278); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis 次亜種Orientalis str. IP275) gi|165938272|ref|ZP_02226831.1|(165938272); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis 次亜種Orientalis str. F1991016) gi|165927374|ref|ZP_02223206.1|(165927374); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pestis Angola) gi|162351931|gb|ABX85879.1|(162351931); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pseudotuberculosis IP 31758) gi|153949366|ref|YP_001400938.1|(153949366); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Yersinia pseudotuberculosis IP 31758) gi|152960861|gb|ABS48322.1|(152960861); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(Y
ersinia pestis CA88-4125) gi|149365899|ref|ZP_01887934.1|(149365899); アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化) (Escherichia coli CFT073) gi|26247570|ref|NP_753610.1|(26247570); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化) (EC 1.2.1.10) (acdh); ピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼ(pflデアクチバーゼ)を含む) (Clostridium botulinum A str. ATCC 3502) gi|148287832|emb|CAL81898.1|(148287832); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH); アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化) (ACDH); ピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼ(PFLデアクチバーゼ)を含む) gi|71152980|sp|P0A9Q7.2|ADHE_ECOLI(71152980); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼおよびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ, およびピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼを含む)(Erwinia carotovora subsp. atroseptica SCRI1043) gi|50121254|ref|YP_050421.1|(50121254); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼおよびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ, およびピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼを含む)(Erwinia carotovora subsp. atroseptica SCRI1043) gi|49611780|emb|CAG75229.1|(49611780); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH); アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化) (ACDH)を含む) gi|19858620|sp|P33744.3|ADHE_CLOAB(19858620); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH); アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化) (ACDH); ピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼ(PFLデアクチバーゼ)を含む) gi|71152683|sp|P0A9Q8.2|ADHE_ECO57(71152683); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化); ピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼを含む)(Clostridium difficile 630) gi|126697906|ref|YP_001086803.1|(126697906); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化); ピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼを含む)(Clostridium difficile 630) gi|115249343|emb|CAJ67156.1|(115249343); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)およびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化) (ACDH); ピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼ(PFLデアクチバーゼ)を含む) (Photorhabdus luminescens subsp. laumondii TTO1) gi|37526388|ref|NP_929732.1|(37526388); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ2 (アルコールデヒドロゲナーゼ; アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む) (Streptococcus pyogenes str. Manfredo) gi|134271169|emb|CAM29381.1|(134271169); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)およびアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化) (ACDH); ピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼ(PFLデアクチバーゼ)を含む) (Photorhabdus luminescens subsp. laumondii TTO1) gi|36785819|emb|CAE14870.1|(36785819); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼおよびピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼを含む)(Clostridium difficile 630) gi|126700586|ref|YP_001089483.1|(126700586); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ(アルコールデヒドロゲナーゼおよびピルビン酸ギ酸リアーゼデアクチバーゼを含む)(Clostridium difficile 630) gi|115252023|emb|CAJ69859.1|(115252023); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ2 (Streptococcus pyogenes str. Manfredo) gi|139472923|ref|YP_001127638.1|(139472923); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼE (Clostridium perfringens str. 13) gi|18311513|ref|NP_563447.1|(18311513); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼE (Clostridium perfringens str. 13) gi|18146197|dbj|BAB82237.1|(18146197); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ, ADHE1 (Clostridium acetobutylicum ATCC 824) gi|15004739|ref|NP_149199.1|(15004739); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ, ADHE1 (Clostridium acetobutylicum ATCC 824) gi|14994351|gb|AAK76781.1|AE001438_34(14994351); アルデヒド-アルコールデヒドロゲナーゼ2 (アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH); アセトアルデヒド/アセチルCoAデヒドロゲナーゼ(ACDH)を含む) gi|2492737|sp|Q24803.1|ADH2_ENTHI(2492737); アルコールデヒドロゲナーゼ(Salmonella enterica subsp. enterica 血清型Typhi str. CT18) gi|16760134|ref|NP_455751.1|(16760134); およびアルコールデヒドロゲナーゼ(Salmonella enterica subsp. enterica 血清型Typhi) gi|16502428|emb|CAD08384.1|(16502428)を参照のこと)、アクセッション番号と関連付けられている各配列は参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0076】
アセトアセチルcoAチオラーゼ(アセチルcoAアセチルトランスフェラーゼと称されることもある)は、2分子のアセチルcoAからのアセトアセチルcoAの生産を触媒する。使用される生物に応じて、異種アセトアセチルcoAチオラーゼ(アセチルcoAアセチルトランスフェラーゼ)を、該生物での発現のために操作することができる。あるいは、ネイティブのアセトアセチルcoAチオラーゼ(アセチルcoAアセチルトランスフェラーゼ)を過剰発現させることができる。アセトアセチルcoAチオラーゼは大腸菌においてthlによってコードされる。アセチルcoAアセチルトランスフェラーゼはC. acetobutylicumにおいてatoBによってコードされる。THLおよびAtoBホモログおよび変異体が知られている。例えば、そのようなホモログおよび変異体には、例えば、アセチルcoaアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Streptomyces coelicolor A3(2)) gi|21224359|ref|NP_630138.1|(21224359); アセチルcoaアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Streptomyces coelicolor A3(2)) gi|3169041|emb|CAA19239.1|(3169041); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Alcanivorax borkumensis SK2) gi|110834428|ref|YP_693287.1|(110834428); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Alcanivorax borkumensis SK2) gi|110647539|emb|CAL17015.1|(110647539); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Saccharopolyspora erythraea NRRL 2338) gi|133915420|emb|CAM05533.1|(133915420); アセチルcoaアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Saccharopolyspora erythraea NRRL 2338) gi|134098403|ref|YP_001104064.1|(134098403); アセチルcoaアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Saccharopolyspora erythraea NRRL 2338) gi|133911026|emb|CAM01139.1|(133911026); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Clostridium botulinum A str. ATCC 3502) gi|148290632|emb|CAL84761.1|(148290632); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Pseudomonas aeruginosa UCBPP-PA14) gi|115586808|gb|ABJ12823.1|(115586808); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Ralstonia metallidurans CH34) gi|93358270|gb|ABF12358.1|(93358270); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Ralstonia metallidurans CH34) gi|93357190|gb|ABF11278.1|(93357190); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Ralstonia metallidurans CH34) gi|93356587|gb|ABF10675.1|(93356587); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Ralstonia eutropha JMP134) gi|72121949|gb|AAZ64135.1|(72121949); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Ralstonia eutropha JMP134)gi|72121729|gb|AAZ63915.1|(72121729); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Ralstonia eutropha JMP134) gi|72121320|gb|AAZ63506.1|(72121320); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Ralstonia eutropha JMP134) gi|72121001|gb|AAZ63187.1|(72121001); アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ) (Escherichia coli) gi|2764832|emb|CAA66099.1|(2764832)が含まれ、アクセッション番号に関連付けられている各配列は参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0077】
補酵素AトランスフェラーゼはアセトアセチルcoAからのアセトアセテートの生産を触媒する。使用される生物に応じて、異種補酵素Aトランスフェラーゼを、該生物での発現のために操作することができる。あるいは、ネイティブの補酵素Aトランスフェラーゼを過剰発現させることができる。補酵素AトランスフェラーゼはC. acetobutylicumにおいてctfABによってコードされ、ctfABホモログおよび変異体が知られている。例えば、そのようなホモログおよび変異体には、例えば、補酵素Aトランスフェラーゼ(C.acetobutylicum adhE, ctfAおよびctfB遺伝子) gi|298080|emb|X72831.1|(298080); Clostridium acetobutylicum ATCC 824メガプラスミドpSOL1 gi|14994317|gb|AE001438.3| (14994317)が含まれ、アクセッション番号に関連付けられている各配列は参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0078】
アセトアセチルcoAトランスフェラーゼはアセトアセチルcoAからのアセトアセテートの生産を触媒する。使用される生物に応じて、異種アセトアセチルcoAトランスフェラーゼを、該生物での発現のために操作することができる。あるいは、ネイティブのアセトアセチルcoAトランスフェラーゼを過剰発現させることができる。アセトアセチルcoAトランスフェラーゼは大腸菌においてatoABによってコードされる。AtoABホモログおよび変異体が知られている。例えば、そのようなホモログおよび変異体には、例えば、NC_010468 Escherichia coli ATCC 8739, gi|170018061|ref|NC_010468.1| (170018061); NC_009654 Marinomonas sp. MWYL1 gi|152994043|ref|NC_009654.1| (152994043); NC_009454; Pelotomaculum thermopropionicum SI, 全ゲノムgi|147676335|ref|NC_009454.1|(147676335); Escherichia coli APEC O1, 全ゲノムgi|117622295|ref|NC_008563.1| (117622295); Escherichia coli 536, 全ゲノムgi|110640213|ref|NC_008253.1|(110640213); Escherichia coli UTI89, 全ゲノムgi|91209055|ref|NC_007946.1| (91209055); Escherichia coli HS, 全ゲノムgi|157159467|ref|NC_009800.1|(157159467); Clostridium beijerinckii NCIMB 8052, 全ゲノムgi|150014892|ref|NC_009617.1|(150014892); Shigella sonnei Ss046, 全ゲノムgi|74310614|ref|NC_007384.1|(74310614) Citrobacter koseri ATCC BAA-895, 全ゲノムgi|157144296|ref|NC_009792.1|(157144296); Rhodospirillum rubrum ATCC 11170, 全ゲノムgi|83591340|ref|NC_007643.1| (83591340); Escherichia coli CFT073, 全ゲノムgi|26245917|ref|NC_004431.1| (26245917); Salmonella typhimurium LT2, 全ゲノムgi|16763390|ref|NC_003197.1|(16763390); Escherichia coli ATCC 8739, 全ゲノムgi|169752989|gb|CP000946.1|(169752989); Escherichia coli str. K-12 substr. MG1655, 全ゲノムgi|49175990|ref|NC_000913.2|(49175990); Escherichia coli str. K-12 substr. MG1655, 全ゲノムgi|48994873|gb|U00096.2| (48994873); Marinomonas sp. MWYL1, 全ゲノムgi|150834967|gb|CP000749.1| (150834967); Clostridium beijerinckii NCIMB 8052, 全ゲノムgi|149901357|gb|CP000721.1| (149901357)が含まれ(、またはそのゲノム配列中に該ホモログおよび変異体を見出すことができ)、アクセッション番号に関連付けられている各配列は参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0079】
アセトアセテートデカルボキシラーゼはアセトアセテートの脱炭酸を触媒し、アセトンおよび二酸化炭素を形成させる。使用される生物に応じて、異種アセトアセテートデカルボキシラーゼを、該生物での発現のために操作することができる。あるいは、ネイティブのアセトアセテートデカルボキシラーゼを過剰発現させることができる。アセトアセテートデカルボキシラーゼはClostridium acetobutylicumにおいてacdによってコードされる。ACDホモログおよび変異体が知られている。acdの配列は、gi|15004705|ref|NC_001988.2|(15004705) Clostridium acetobutylicum ATCC 824プラスミドpSOL1に記載され、アクセッション番号に関連付けられている各配列は参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0080】
第2級アルコールデヒドロゲナーゼは、NADHの存在下で、メチルケトンからその対応する2-アルコールへの還元を触媒する。使用される生物に応じて、異種第2級アルコールデヒドロゲナーゼを、該生物での発現のために操作することができる。あるいは、ネイティブの第2級アルコールデヒドロゲナーゼを過剰発現させることができる。本開示の方法および組成物において有用な第2級アルコールデヒドロゲナーゼは、Clostridium acetobutylicumまたは大腸菌においてadh (sadh)によってコードされる。SADHホモログおよび変異体が知られている。例えば、Rhodococcus ruber, sadh遺伝子およびsudh遺伝子, アクセッション番号gi|21615551|emb|AJ491307.1|(21615551); Candida metapsilosis 第2級アルコールデヒドロゲナーゼに関する部分sadh遺伝子, 菌株型96144 gi|47826366|emb|AJ698115.1| (47826366); およびCandida parapsilosis SADH遺伝子, 全cds gi|2815408|dbj|AB010636.1|(2815408)が記載され、アクセッション番号に関連付けられている各配列は参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0081】
本明細書中で提供される組換え微生物の成長および維持に好適な培養条件は以下の実施例に記載される。そのような条件を各微生物の必要条件に適合するように改変できることを当業者は認識する。イソプロパノール産物の生産に有用な適切な培養条件は、宿主微生物による、すなわち微生物の代謝作用による化合物の生産を可能にする、培養培地pH、イオン強度、栄養含量、等; 温度; 酸素/CO2/窒素含量; 湿度; および他の培養条件の条件を含む。適切な培養条件は宿主細胞として機能する微生物に関して周知である。
【0082】
一実施形態では、本開示の微生物は、rrnBT14DlacZWJ16 hsdR514 DaraBADAH33 DrhaBADLD78 (lacIqを供給するためにXL-1 blueからF'が形質導入されている)、(atoB-ctfAB-adc)、pTA30 (atoB-atoAD-adc)、pTA39 (thl-atoAD-adc)、およびpTA41 (thl-ctfAB-adc)を含む大腸菌として特徴付けられうる。
【実施例】
【0083】
実施例
イソプロパノール生産に関して、C. beijerinckiiの52株を含むクロストリジウム属のいくつかの種が評価されている。これらの菌株からのイソプロパノールの最大生産は30 mMであった。これらの菌株の代謝調節についての知識が限られていることおよび遺伝子操作が困難であることにより、イソプロパノール生産のさらなる改善が妨げられてきた。一方、大腸菌は最も研究されていて、代謝的操作に関して容易に操作できる生物の1つである。この細菌は高い力価のエタノールおよび多数の他の生化学物質を生産することがすでに示されている。
【0084】
Bermejo et al. (Appl. Environ. Microbiol. 64:1079-1085, 1998)は、大腸菌において、C. acetobutylicum ATCC824由来の4つの遺伝子(それぞれアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、およびアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードするthl、ctfAB、およびadc)をC. acetobutylicum由来のthlプロモーターの制御下で導入することによってアセトンを生産した。この操作された大腸菌株はC. acetobutylicum ATCC 824とほとんど同レベルのアセトンを生産した。しかし、大腸菌でのイソプロパノール生産は報告されていない。本開示は、大腸菌を含む微生物でのイソプロパノールの生産のための操作された合成経路を提供する。
【0085】
イソプロパノールの生合成のためのストラテジーは、アセチル補酵素A (アセチルCoA)からアセトン経由でイソプロパノールを生産する(図1)、C. beijerinckiiをモデルにした経路を利用する。まず、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼが2分子のアセチルCoAを縮合させて、1分子のアセトアセチルCoAにする。次に、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼがアセトアセチルCoAからアセテートまたはブチラートにCoAを移してアセトアセテートを形成させ、次いでアセトアセテートがアセトアセテートデカルボキシラーゼによってアセトンおよびCO2に変換される。第1級-第2級アルコールデヒドロゲナーゼ(以後、第2級アルコールデヒドロゲナーゼ、SADHと称される)はNADPH依存的反応においてアセトンをイソプロパノールに変換する。経路を最適化するために、ネイティブの大腸菌アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(atoBによってコードされる)およびアセトアセチルCoAトランスフェラーゼ(atoADによってコードされる)を、アセトン生産の初期段階の実施において調査した。さらに、C. beijerinckii NRRL B593およびT. brockii HTD4由来のSADH (adhによってコードされる)の活性を、イソプロパノール生産の最終段階の実施において比較した。これらの2つのSADHは大腸菌で以前に発現され、特徴付けられている。
【0086】
表1はこの研究で使用された菌株およびプラスミドを示す。大腸菌DH5αZ1からP1形質導入によって導入されたlacIqを有する大腸菌B株(ATCC 11303)を宿主株として使用し、TA11と称した。アセトン経路遺伝子thl、ctfAB、atoB、atoAD、およびadcの複数の組み合わせをColE1由来のプラスミド(pSA40)にPLlacO1プロモーターの制御下にクローニングした。得られたプラスミドをpTA29 (atoB-ctfAB-adc)、pTA30 (atoB-atoAD-adc)、pTA39 (thl-atoAD-adc)、およびpTA41 (thl-ctfAB-adc)と命名した(詳細に関しては表1を参照のこと)。C. beijerinckiiまたはT. brockii由来のadh遺伝子をp15A由来のベクター(pZA31-luc)にPLlacO1の制御下でクローニングし、それぞれプラスミドpTA36およびpTA18を得た。評価のために、アセトン経路遺伝子とイソプロパノール産生遺伝子の各組み合わせをTA11に導入した。
【0087】
atoBおよびthl遺伝子を除くイソプロパノール生産経路のすべての遺伝子について同じリボソーム結合部位(RBS) (GAAGGAGATATACAT (配列番号11)を使用した。atoBおよびthl遺伝子は、発現構築物のRBSを使用してPLlacO1プロモーターの下流にクローニングした。使用されたRBSの供給源はpET-31b(+)プラスミド(Invitrogen, Carlsbad, CA)である。2つのadh遺伝子を除くすべての遺伝子を染色体DNAからPCR増幅し、配列を確認した。2つのadh遺伝子は、大腸菌に関するコドン最適化後にEpoch Biolabs (Houston, TX)により合成された。以下の条件を最適化に使用した。コドン効率の15%カットオフを使用し: 強力な二次構造を有する位置(この場合、問題を軽減するために低頻度のコドンを使用した)を除き15%未満のすべてのコドンを除去した。ビルドインMフォールドモジュール(buildin M-fold module)を使用して二次構造を調べた。ステムループおよび擬似シャイン・ダルガルノ配列を回避した。この最適化によって変化する塩基対の数はC. beijerinckiiで約290であり、T. brockiiで240である。制限酵素、ホスファターゼ(New England Biolabs, Ipswich, MA)、リガーゼ(rapid DNA ligation kit; Roche, Manheim, Germany)、およびDNAポリメラーゼ(KOD DNA polymerase, EMD Chemicals, San Diego, CA)をクローニングに使用した。オリゴヌクレオチドはInvitrogen (Carlsbad, CA)によって合成された。
【0088】
pTA29 (PLlacO1:: atoB-ctfAB-adc)- pZE21-MCS1のPLtetO1をPLlacO1で置換するために、pZE12-lucをAatIIおよびAcc65Iで消化した。短い方の断片を精製し、同酵素で切断されたプラスミドpZE21-MCS1にクローニングして、pSA40を作製した。atoB、ctfABおよびadcをクローニングするために、pSA40中のAcc65I-SalI (atoB)、SalI-XmaI (ctfAB)およびXmaI-BamHI (adc)認識部位を使用した。AatIIおよびAvrII認識部位を使用して、カナマイシン耐性遺伝子をアンピシリン耐性遺伝子で置換した。atoBをクローニングするために、大腸菌K-12 MG1655のゲノムDNAを鋳型として使用し、TA15F (5' CGCGGTACCATGAAAAATTGTGTCATCGTCAGTG 3' (配列番号12))およびTA16R (5' CCGCGTCGACTTAATTCAACCGTTCAATCACCATC 3' (配列番号13))のプライマーペアを用い、PCR産物をAcc65IおよびSalIで消化した。ctfABをクローニングするために、C. acetobutylicum ATCC824 (ATCC)のゲノムDNAを鋳型として使用し、TA19F (5' CCGCGTCGACGAAGGAGATATACATATGAACTCTAAAATAATTAGATTTG 3' (配列番号14))およびTA4R (5' CGCCCCGGGCTAAACAGCCATGGGTCTAAGTTCA 3' (配列番号15))のプライマーペアを用い、PCR産物をSalIおよびXmaIで消化した。adcをクローニングするために、C. acetobutylicum ATCC824のゲノムDNAを鋳型として使用し、TA20F (5' CGCCCCGGGGAAGGAGATATACATATGTTAAAGGATGAAGTAATTAAAC 3' (配列番号16))およびTA6R (5' CGCGGATCCTTACTTAAGATAATCATATATAACT 3' (配列番号17))のプライマーペアを用い、PCR産物をXmaIおよびBamHIで消化した。
【0089】
pTA30 (PLlacO1:: atoB-atoAD-adc)- atoADをクローニングするために、大腸菌K-12 MG1655のゲノムDNAを鋳型として使用し、TA21F (5' CCGCGTCGACGAAGGAGATATACATATGAAAACAAA ATTGATGACATTAC 3' (配列番号18))およびTA18R (5' CGCCCCGGGTC ATAAATCACCCCGTTGCGTATTC 3' (配列番号19))のプライマーペアを用いた。PCR産物をSalIおよびXmaIで消化し、同酵素で切断されたプラスミドpTA29にクローニングした。
【0090】
pTA39 (PLlacO1:: thl-atoAD-adc) - thlをクローニングするために、C. acetobutylicum ATCC824のゲノムDNAを鋳型として使用し、TA13F (5' CGCGGTACCATGAAAGAAGTTGTA ATAGCTAGTG 3' (配列番号20))およびTA14R (5' CCGCGTCGACCTAG CACTTTTCTAGCAATATTGC 3' (配列番号21))のプライマーペアを用いた。PCR産物をAcc65IおよびSalIで消化し、同酵素で切断されたプラスミドpTA30にクローニングした。
【0091】
pTA41 (PLlacO1:: thl-ctfAB-adc) - thlをクローニングするために、C. acetobutylicum ATCC824のゲノムDNAを鋳型として使用し、TA13FおよびTA14Rのプライマーペアを用いた。PCR産物をAcc65IおよびSalIで消化し、同酵素で切断されたプラスミドpTA29にクローニングした。
【0092】
pTA18 (PLlacO1:: adh (T. brockii)) - adh (T. brockii)をクローニングするために、T. brockii HTD4の合成DNA (Epoch Biolabs)を鋳型として使用し、TA7F (5' CGCGGTACCATGAAAGGTTTTGCAATGCTGTCCA 3' (配列番号22))およびTA8R (5' CGCTCTAGACTATGCTAAAATCACCACTGGTTTAATT 3' (配列番号23))のプライマーペアを用いた。PCR産物をAcc65IおよびXbaIで消化し、同酵素で切断されたプラスミドpZE12-lucにクローニングし、pTA8を作製した。複製開始点およびアンピシリン耐性遺伝子をp15Aおよびカナマイシン耐性遺伝子と置換するために、pZA31-lucをAatIIおよびAvrIIで消化した。短い方の断片を精製し、同酵素で切断されたpTA8にクローニングして、pTA18を作製した。合成DNAのコドン使用を大腸菌での発現に最適化し、二次構造予測プログラムで調べることによってステムループ構造を回避した。この配列を補足資料に示す。
【0093】
pTA36 (PLlacO1:: adh (C. beijerinckii)) - adh (C. beijerinckii)をクローニングするために、C. beijerinckii NRRL B593の合成DNAを有するプラスミド(Epoch Biolabs)をAcc65IおよびSalIで消化し、同酵素で切断されたプラスミドpZE12-lucにクローニングして、pTA34を作製した。複製開始点およびアンピシリン耐性遺伝子をp15Aおよびカナマイシン耐性遺伝子と置換するために、pZA31-lucをAatIIおよびAvrIIで消化した。短い方の断片を精製し、同酵素で切断されたプラスミドにクローニングして、pTA36を作製した。合成DNAのコドン使用をT. brockii由来のadh遺伝子と同様に最適化した(例えば図4を参照のこと)。
【0094】
前培養培地として、2%グルコースを含有するSD-7を(13)に記載のように調製した(NH4Cl, 7.0 g/l; KH2PO4, 1.5 g/l; Na2HPO4, 1.5 g/l; K2SO4, 0.35 g/l; MgSO4・7H2O, 0.17 g/l, 微量元素, 0.8 ml/l; 酵母抽出物; 5 g/l)。2%グルコースを含有するSD-8 (NH4Cl, 7.0 g/l; KH2PO4, 7.5 g/l; Na2HPO4, 7.5 g/l; K2SO4, 0.85, MgSO4・7H2O, 0.17 g/l, 微量元素, 0.8 ml/l; 酵母抽出物; 10 g/l) (13)培地を発酵に使用した。微量元素溶液は以下のものを含有した(5 M HCl 1リットル当たりのグラム数で示す): FeSO4・7H2O, 40.0; MnSO4・H2O, 10.0; Al2(SO4)3, 28.3; CoCl2・6H2O, 4.0; ZnSO4・7H2O, 2.0; Na2MoO4・2H2O; CuCl2・2H2O, 1.0; およびH3BO4, 0.5。必要に応じて抗生物質(アンピシリン100μg/mlおよびクロラムフェニコール40μg/ml)を加えた。
【0095】
試験管中で5 mlのSD-7培地を含有する前培養をロータリーシェーカー(250 rpm)で37℃で一晩(17時間)実施した。250μlの一晩培養物をバッフル付き250 mlフラスコ中で25mlのSD-8培地に接種した。OD600がおよそ1.0になったとき(3時間)、0.1 mM IPTGを加えて誘導した。ロータリーシェーカー(250 rpm)で37℃で30.5時間、細胞を培養し、0、3、6.5、9.5、12、24、28.5および30.5時間の時点で回収した。
【0096】
グルコース分析試薬(Sigma Aldrich)を用いてグルコースを測定した。水素炎イオン化検出器を有するガスクロマトグラフィーによって種々のアルコールを定量した。このシステムは、モデル5890Aガスクロマトグラフ(Hewlett Packard, Avondale, PA)およびモデル7673A自動インジェクター、サンプラーおよびコントローラ(Hewlett Packard)から構成された。アルコール化合物の分離はA DB-WAXキャピラリーカラム(30 m, 0.32 mm-i.d., 0.50μm-フィルムの厚さ; Agilent Technologies)によって行った。GCオーブン温度を初めに40℃で5分間維持し、15℃/分の勾配で120℃まで上げ、次いで50℃/分の勾配で230℃まで上げ、4分間維持した。担体ガスとしてヘリウムを9.3 psiの入り口圧力で使用した。インジェクターおよび検出器を225℃で維持した。培養ブロスの0.5μl上清を分割インジェクションモード(1:15分割比)で注入した。1-プロパノールを内部標準として使用した。
【0097】
他の分泌代謝産物に関して、自動サンプラーおよびBioRad (Biorad Laboratories, Hercules, CA) Aminex HPX87カラム(5mM H2SO4, 0.6ml/分, カラム温度65℃)を備えたAgilent 1100 HPLC (Agilent Technologies)に、ろ過された上清をアプライ(20μl)した。有機酸(フマル酸、乳酸、クエン酸、ピルビン酸、ギ酸、リンゴ酸、酢酸、およびコハク酸)をフォトダイオードアレイ検出器を使用して210 nmで検出した。
【0098】
誘導後4時間の時点で細胞を回収し、遠心分離後に酵素アッセイに使用した。50 mM Trisクロライド(pH8)中の粗製抽出物を、0.1 mmガラスビーズおよびMini Bead Beater 8 (Biospec Product, OK)を用いる嫌気条件下で調製した。Ar下で25℃でNADPHでのアセトン(6.7 mM)の還元を追跡することによってSADH活性を測定した。アッセイ混合物は50 mM Tris-Clバッファー(pH 7.5)、1 mMジチオスレイトール、および0.2 mM NADPHを含有した。1単位の活性は毎分1μmolのNADPHの酸化である。
【0099】
イソプロパノール生産に関して5つの異なる遺伝子の組み合わせ(図2)を使用した。すべての合成経路は、好気条件下で111 mM (20 g/l)の初期グルコース濃度からイソプロパノールを生産した。すべての組み合わせに関して、グルコースは接種後12時間(IPTGでの誘導後9時間)以内に使い尽くされた。図2に示されるように、pTA39/pTA36を有するTA11が最も多量のイソプロパノールを生産した。すべての菌株によって生産されたエタノール量は、イソプロパノール生産と比較して非常に低かった(10mM未満)。
【0100】
図3はTA11 (pTA39/pTA36)を使用する発酵の時間経過を示す。グルコースを使い果たした(12時間)後にイソプロパノール濃度は減少した。24時間の時点で培養物にグルコース(111 mM)を加えると、イソプロパノール生産が最初の生産段階と同じ割合に回復した。これは、14時間の欠乏後でさえ経路活性が安定であったことを示す。グルコースが使い果たされた時点(30.5時間)で、達成されたイソプロパノールの終濃度は81.6 mMであった。アセトン濃度は、初期グルコースが使い果たされた後に増加し続け、グルコースを加えると突然減少した(図3)。フマル酸(最大濃度386μM)を除く有機酸はIPTGによる誘導後に顕著には蓄積しなかった。グルコース欠乏期間にアセトン濃度は増加したが、イソプロパノール濃度は減少した。
【0101】
pTA36またはpTA18を有する菌株由来のイソプロパノール生産を比較した。C. beijerinckii由来のSADHのアミノ酸配列はT. brockii由来のものと76%同一性および86%類似性を有する。しかし、TA11 (pTA39/pTA18)は、C. beijerinckii由来のadhを含有する菌株(pTA39/pTA36)より低い濃度のイソプロパノールおよびずっと高い濃度のアセトンを生産した。さらに研究するために、これらの2つのアルコールデヒドロゲナーゼ(pTA18またはpTA36)を含有する培養物由来の粗製抽出物中の酵素活性を測定した。C. beijerinckii (pTA39/pTA36)由来のアルコールデヒドロゲナーゼの活性(3.08±0.36単位/タンパク質1 mg)は、実際、T. brockii (pTA39/pTA18)由来のもの(0.24±0.08単位/タンパク質1 mg)よりずっと高かった。これはより高いイソプロパノール生産と一致する。
【0102】
菌株からadh含有プラスミドを取り除くと、pTA39のみを含有するTA11によって宿主はアセトンを生産した。24時間の時点でグルコースを111 mMになるまで加えて、菌株はほとんど同じ生産速度でアセトンを生産し続けた。細胞増殖およびエタノール濃度は、イソプロパノール生産実験中に観察された傾向と同様の傾向を示した。グルコースが使い果たされた時点(30.5時間)で、アセトンの終濃度は148.3 mMであると測定された。イソプロパノール生産の場合と同様に、フマル酸(最大濃度: 292μM)を除く有機酸はIPTGの誘導後に顕著には蓄積しなかった。
【0103】
本開示は大腸菌でのイソプロパノール生産を実証する。振とうフラスコ培養物中で、pTA39/pTA36を含有するTA11株は30.5時間の時点で81.6 mMイソプロパノールを生産し、3〜9.5時間の範囲で最大生産性は6.9 mM/時間(0.41 g/l/時間)であった。操作された大腸菌は、報告されている最良の菌株であるC. beijerinckii NRRL B593をしのいだ。C. beijerinckii NRRL B593はおよそ30 mMのイソプロパノールを生産し、最大生産性はおよそ3 mM/時間(およそ0.18 g/l/時間)である(4)。接種の9.5時間後のイソプロパノール収率は43.5 % (イソプロパノールmol /グルコースmol)であった。収率は3〜9.5時間の範囲で生産されたイソプロパノール(44.8 mM)および消費されたグルコース(103.0 mM)から算出される: モル収率= 44.8/103.0 = 0.435。この収率は非常に有望である。その理由は、該生産経路を使用するグルコースからの最大理論的収率は1 (イソプロパノールmol /グルコースmol)であるからである。イソプロパノール生産の理論的収率は図1に示される経路に基づいて算出される。1モルのグルコースは2モルのアセチルCoAおよび2モルのCO2に変換される。そして2つのアセチルCoAは縮合して1モルのイソプロパノールを形成し、追加の1モルのCO2が失われる。
【0104】
結果は、atoADを含有する大腸菌が、C. beijerinckii ctfABを含有する菌株と比較してより高い濃度までのイソプロパノールを生産することを示した。CtfABのアセテートに関するKm (1200 mM)はAtoAD (53.1mM)よりずっと高い。アセテート親和性のこの差異は、AtoADがイソプロパノール生産においてより良好な酵素である理由を説明するであろう。イソプロパノール生産は、C. beijerinckii由来のSADHの、アセトンからイソプロパノールへの変換率がT. brockii由来の場合よりずっと高いことを示した。実際、粗製抽出物を使用するアルコールデヒドロゲナーゼアッセイは、C. beijerinckii由来のSADHが、T. brockii由来のSADHより、アセトンからのイソプロパノール形成に関して高い活性を有することを示した。発現レベルの差異は否定できないが、C. beijerinckii由来のSADHはこれらの条件下でのイソプロパノール生産に関する良好な選択肢である。コドン最適化によって発現を改変することができる。一般に、遺伝子のGC含量が発現効率に影響することが知られている。C. beijerinckiiおよびT. brockiiにおけるSADHのGC含量はそれぞれ38および44%である。これらの値は大腸菌K-12 MG1655の平均GC含量と異なる。
【0105】
Bermejo et al.(上掲)では、C. acetobutylicum由来の組換えアセトン経路(thl, ctfAB, adc)を利用する大腸菌でのアセトン生産のための、振とうフラスコを使用するバッチ培養およびグルコース流加培養が実施された。この菌株はバッチ培養において接種後24時間の時点で約40 mMアセトンを生産し、グルコース流加培養において93 mMアセトンを生産した。同じ培地を使用し、同じグルコース濃度、および改変型の大腸菌B株を使用した。それにもかかわらず、同じ遺伝子構築物(pTA41)を使用するバッチ生産では12時間の時点で60.3 mMのアセトンが得られた。振とうフラスコ中で、pTA39を含有するTA11株は、約30時間の時点で148.3 mMの最大濃度、および12.1 mM/時間(0.70 g/l/時間)の最大生産性(3〜9.5時間)を達成した。またアセトン力価は、野生型C. acetobutylicumによって生産されるアセトン力価(90 mM)を超えた。菌株および発酵条件の追加の最適化を行うことなく、接種後の12時間の時点でのアセトン収率はすでに理論的最大値の73.5 % (mol/mol)であった。この高収率は、イソプロパノールの工業的生産において代謝的に操作された大腸菌を使用することに関する高い潜在能力を示す。
【0106】
本発明の多数の実施形態を記載してきた。それでもやはり、本発明の思想および範囲から逸脱することなく種々の改変を施すことができることが理解される。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好適な炭素基質の発酵からイソプロパノールを生産する生化学的経路を含む組換え微生物であって、該生化学的経路がアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼを含み、対応する親微生物と比較して少なくとも1つの異種ポリペプチドを含む、組換え微生物。
【請求項2】
親微生物と比較して、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの上昇した発現を含み、かつアセチルCoAを含む基質からアセトアセチルCoAを含む代謝産物を生産する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項3】
アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号30、66、68、または66および68に記載の配列と少なくとも約50%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる、請求項2記載の組換え微生物。
【請求項4】
アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、atoB遺伝子もしくはそのホモログ、またはfadA遺伝子もしくはそのホモログによってコードされる、請求項2記載の組換え微生物。
【請求項5】
atoB遺伝子またはfadA遺伝子がエシェリキア属由来である、請求項4記載の組換え微生物。
【請求項6】
エシェリキアが大腸菌である、請求項5記載の組換え微生物。
【請求項7】
微生物が組換え大腸菌である、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項8】
アセチルcoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号32に記載の配列と少なくとも約50%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる、請求項7記載の組換え微生物。
【請求項9】
アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドがthl遺伝子またはそのホモログによってコードされる、請求項7記載の組換え微生物。
【請求項10】
thl遺伝子がクロストリジウム属由来である、請求項9記載の組換え微生物。
【請求項11】
クロストリジウムがC. acetobutylicumである、請求項10記載の組換え微生物。
【請求項12】
親微生物と比較して、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドの上昇した発現を含み、かつアセトアセチルCoAを含む基質からアセトアセテートを含む代謝産物を生産する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項13】
アセトアセチルCoAトランスフェラーゼがatoAD遺伝子またはそのホモログによってコードされる、請求項12記載の組換え微生物。
【請求項14】
atoAD遺伝子が大腸菌由来である、請求項13記載の組換え微生物。
【請求項15】
親微生物と比較して、アセトアセテートデカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドの上昇した発現を含み、かつアセトアセテートを含む基質からアセトンを含む代謝産物を生産する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項16】
アセトアセテートデカルボキシラーゼがadc遺伝子またはそのホモログによってコードされる、請求項15記載の組換え微生物。
【請求項17】
adc遺伝子が、Clostridium acetobutylicum、Butyrivibrio fibrisolvens、Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum、およびClostridium difficile由来である、請求項16記載の組換え微生物。
【請求項18】
微生物がClostridium acetobutylicumである、請求項17記載の組換え微生物。
【請求項19】
親微生物と比較して、第2級アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドの上昇した発現を含み、かつアセトンを含む基質からイソプロパノールを含む代謝産物を生産する、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項20】
第2級アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号7または9のいずれか1つに記載の配列と少なくとも約50%の同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる、請求項19記載の組換え微生物。
【請求項21】
第2級アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドがadhもしくはsadh遺伝子またはそのホモログによってコードされる、請求項19記載の組換え微生物。
【請求項22】
ccr遺伝子がT. brockiiまたはC.beijerinckii由来である、請求項21記載の組換え微生物。
【請求項23】
好適な炭素基質がグルコースを含む、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項24】
アセチルCoAからエタノールへの変換を触媒し、ピルビン酸から乳酸への変換を触媒し、アセチルCoAおよびリン酸からCoAおよびアセチルリン酸への変換を触媒し、アセチルCoAおよびギ酸からcoAおよびピルビン酸への変換、またはアセチルCoAのアセチル基と3-メチル-2-オキソブタノアート(2-オキソイソバレラート)との縮合を触媒する酵素をコードする遺伝子中に1つ以上の欠失またはノックアウトを含む、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項25】
低下したエタノールデヒドロゲナーゼ活性、乳酸デヒドロゲナーゼ活性、リン酸アセチルトランスフェラーゼ活性、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項26】
ノックアウトまたは破壊が、adhE、ldhA、その任意の組み合わせ、その任意のホモログまたは天然に存在する変異体からなる群から選択される欠失または破壊を含む、請求項25記載の組換え微生物。
【請求項27】
アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、アセトアセテートデカルボキシラーゼおよびadh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)の発現または増加した発現を含む、請求項1記載の組換え微生物。
【請求項28】
好適な炭素基質の発酵からイソプロパノールを生産するための組換え生化学的経路を含む組換え微生物であって、該組換え生化学的経路が、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、アセトアセテートデカルボキシラーゼおよびadh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)の上昇した発現を含む、組換え微生物。
【請求項29】
好適な炭素基質がグルコースを含む、請求項28記載の組換え微生物。
【請求項30】
好適な炭素基質をイソプロパノールに変換する組換え微生物の製造方法であって、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、アセトアセテートデカルボキシラーゼおよびadh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)活性を有するポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチドで微生物を形質転換するステップを含む方法。
【請求項31】
好適な炭素基質がグルコースを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
イソプロパノールの製造方法であって、生物中で、thlもしくはatoB遺伝子、ctfABもしくはatoAD遺伝子もしくはオペロン、adc遺伝子、adh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせの過剰発現を誘導するステップを含み、該生物が、好適な炭素基質の存在下で培養された場合にイソプロパノールを生産する、方法。
【請求項33】
イソプロパノールの製造方法であって、以下のステップ:
(i) 生物中でthlまたはatoB遺伝子の過剰発現を誘導するステップ;
(ii) 生物中でctfABまたはatoAD遺伝子の過剰発現を誘導するステップ;
(iii) 生物中でadc遺伝子の過剰発現を誘導するステップ;
(iv) 生物中でadh遺伝子の過剰発現を誘導するステップ; または
(v) (i)、(ii)、(iii)、および(iv)の過剰発現を誘導するステップ
を含む方法。
【請求項34】
好適な炭素基質がグルコースを含む、請求項32または請求項33記載の方法。
【請求項35】
以下のものを含む組換えベクター:
(i) アセトアセチルCoAを含む基質からのアセトアセテートの変換を触媒する第1のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチド;
(ii) アセトアセテートを含む基質からのアセトンの変換を触媒する第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチド; および
(iii) アセトンを含む基質からのイソプロパノールの変換を触媒する第3のポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチド。
【請求項36】
第1のポリヌクレオチドがアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼまたはアセトアセチルCoAトランスフェラーゼをコードする、請求項35記載の組換えベクター。
【請求項37】
第2のポリヌクレオチドがアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする、請求項35記載の組換えベクター。
【請求項38】
第3のポリヌクレオチドが第2級アルコールデヒドロゲナーゼをコードする、請求項35記載の組換えベクター。
【請求項39】
C. acetobutylicum thl (アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ)、大腸菌atoAD (アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ)、C. acetobutylicum adc (アセトアセテートデカルボキシラーゼ)およびC. beijerinckii adh (第2級アルコールデヒドロゲナーゼ)遺伝子またはポリヌクレオチドを含む、請求項35記載の組換えベクター。
【請求項40】
大腸菌にトランスフェクトされた、請求項35、36、37、38または39記載の組換えベクター。
【請求項41】
プラスミドである、請求項35記載の組換えベクター。
【請求項42】
発現ベクターである、請求項35記載の組換えベクター。
【請求項43】
請求項42記載の発現ベクターを含む組換え宿主細胞。
【請求項44】
宿主細胞がイソプロパノールを生産した、請求項43記載の組換え宿主細胞。
【請求項45】
グルコースからイソプロパノールへの変換を促進する少なくとも1つの異種核酸配列を含む組換え微生物。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公表番号】特表2011−500031(P2011−500031A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529132(P2010−529132)
【出願日】平成20年10月11日(2008.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/079667
【国際公開番号】WO2009/049274
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(500445295)ザ レジェンツ オブ ザ ユニヴァースティ オブ カリフォルニア (28)
【Fターム(参考)】