説明

イソホロンに由来する新規のアルデヒド類及びニトリル類、並びに香料製造業におけるそれらの使用

本発明は、特定の芳香を有する一般式(I):


のイソホロンに由来する新規のアルデヒド類及びニトリル類、並びに香料製造業における該化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の芳香を示すイソホロンから生じる新規のアルデヒド類及びニトリル類、並びに香料製造業におけるこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
「香料製造業」という用語は、本明細書中では、用語の通常の意味での香料製造業だけでなく、製品の匂いが重要な他の分野を表すためにも使用される。用語の通常の意味での香料組成物は、芳香剤の基剤、香料濃縮物、オーデコロン、オードトワレ(toilet waters)、芳香剤及び類似の製品;局所組成物、特に化粧品、例えばフェイスクリーム及びボディクリーム、タルカムパウダー、ヘアオイル、シャンプー、ヘアローション、バスソルト及びバスオイル、シャワー用ジェル及び入浴用ジェル、化粧石鹸、ボディ用の制汗剤及びデオドラント、シェービングローション及びシェービングクリーム、石鹸、クリーム、歯磨き粉、洗口液、ポマード及び類似の製品;並びに洗濯用品、例えば柔軟剤、洗浄剤、粉末洗剤、脱臭剤及び類似の製品等に関連し得る。
【0003】
「芳香」、「芳香性」及び「匂いのある」という用語は、本明細書中では、嗅覚を心地よく刺激する任意の感覚刺激性の化合物に対して同義で使用される。
【0004】
「マスキングする」又は「マスキング」という用語は、1つ又は複数の分子が製品の組成に加わることによって生じる不快な臭い又は不快な味の知覚を軽減又は排除することを意味すると理解される。
【0005】
多数のシクロペンタン型の誘導体、特にカンフォレン骨格又はシクロペンタノンを含む化合物が、それらの有利な嗅覚特性について文献中に記載されている。例えば、特許出願の特許文献1、特許文献2及び特許文献3、並びにBruns et al.の非特許文献1が、2,4,4−トリメチルシクロペンタン誘導体を記載しており、その幾つかは香料製造産業にとって興味深いものである。しかしながら、2,4,4−トリメチルシクロペンタンから誘導されるニトリル型又はアルデヒド型の化合物は、ごく少数しか文献中に記載されておらず(特許文献4、特許文献3及び非特許文献2)、これらの記載のいずれも、それらの嗅覚特性については報告していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5073538号
【特許文献2】欧州特許第0146859号
【特許文献3】米国特許第4477683号
【特許文献4】米国特許第3931143号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bruns K and Weber U.; Development in Food Science, 1998, 18 (F&F), 767-776
【非特許文献2】Wheler O.H. and De Rodriguez E.G.; J. Org. Chem., 1964, 29(3), 718-721
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概して、香料製造産業では、香料製造者の創作に対して与えられるノートの範囲を広げるために、新規の匂い分子が常に必要とされている。さらに、香料製造産業は、環境意識及び高い消費者の期待に加え、厳しくなりつつある国際規制と向き合わなければならないため、この必要性はますます高まっている。本発明の目的はしたがって、新規の芳香剤及び/又は匂い化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、イソホロンから生じる新規のアルデヒド類及びニトリル類に関する。これらの化合物は、信頼性のある、費用のかからない調製によって達成可能であるという利点を有する。
【0010】
したがって、本発明の主題は、下記一般式(I):
【化1】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、
ZはCN基又はCHO基であり、
破線で表される結合のうち多くとも1つが存在するが、
ただし、ZがCHO基であり、かつ破線で表される結合のうち1つが存在する場合、Rは水素原子ではなく、
炭素Ca及び炭素Cbの間の破線で表される結合が存在する場合、Rは=CH基ではない)の化合物である。
【0011】
「C〜Cアルキル」という用語は、本発明の意味の範囲内で、炭素原子数1〜6の直鎖又は分岐飽和炭素鎖から誘導される任意の一価のラジカル、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基を意味すると理解される。好ましいアルキル基はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及びn−ペンチル基である。
【0012】
「C〜Cアルケニル」という用語は、本発明の意味の範囲内で、少なくとも1つの二重結合を含む炭素原子数2〜6の直鎖又は分岐炭素鎖から誘導される任意の一価のラジカル、特にエテニル基、n−プロペニル基、イソプロペニル基、n−ブテニル基、イソブテニル基、tert−ブテニル基、n−ペンテニル基及びn−ヘキセニル基を意味すると理解される。好ましいアルケニル基はエテニル基、n−プロペニル基、イソプロペニル基、n−ブテニル基、イソブテニル基及びn−ペンテニル基である。
【0013】
本発明の別の主題は、式(I)の立体異性体、特に式(I)のジアステレオ異性体、及びこれらの異性体のあらゆる割合での混合物である。
【0014】
特に、本発明は、一般式(Ia):
【化2】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、
ZはCN基又はCHO基である)の化合物、
一般式(Ib)及び一般式(Ic):
【化3】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、
ZはCN基又はCHO基であるが、
ただし、ZがCHO基の場合、Rは水素原子ではない)の化合物、
式(Ib)及び式(Ic)の化合物、並びに一般式(Id):
【化4】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基であり、
ZはCN基又はCHO基であるが、
ただし、ZがCHO基である場合、Rは水素原子ではない)の化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の実施形態では、本発明は、一般式(I’):
【化5】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、好ましくは、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又は=CH基であり、より好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基若しくは=CH基であり、更により好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基若しくは=CH基であり、
破線で表される結合のうち多くとも1つが存在するが、
ただし、炭素Ca及び炭素Cbの間の破線で表される結合が存在する場合、Rは=CH基ではない)の化合物に関する。
【0016】
特に有利な式(I’)の化合物は、表1に示す化合物(1)〜化合物(6)である。
【0017】
この実施形態の第1の代替形態は、式(Ia’):
【化6】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、好ましくは、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又は=CH基であり、より好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基若しくは=CH基であり、更により好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基若しくは=CH基である)の化合物に関する。
【0018】
第2の代替形態は、式(Ib’):
【化7】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、好ましくは、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又は=CH基であり、より好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基若しくは=CH基であり、更により好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基若しくは=CH基である)の化合物に関する。
【0019】
この実施形態の第3の代替形態は、式(Ic’):
【化8】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、好ましくは、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又は=CH基であり、より好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基若しくは=CH基であり、更により好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基若しくは=CH基である)の化合物にも関する。
【0020】
最後に、この実施形態の最後の代替形態は、式(Id’):
【化9】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、又はC〜Cアルケニル基であり、好ましくは、Rは水素原子、又はC〜Cアルキル基であり、より好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基若しくはイソプロピル基であり、更により好ましくは、Rは水素原子又はメチル基である)の化合物に関する。
【0021】
第2の実施形態では、本発明は、一般式(I’’):
【化10】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、好ましくは、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又は=CH基であり、より好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基若しくは=CH基であり、更により好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基若しくは=CH基であり、
破線で表される結合のうち多くとも1つが存在するが、
ただし、破線で表される結合のうち1つが存在する場合、Rは水素原子ではなく、
炭素Ca及び炭素Cbの間の破線で表される結合が存在する場合、Rは=CH基ではない)の化合物にも関する。
【0022】
特に有利な式(I’’)の化合物は、表1に示す化合物(7)〜化合物(9)である。
【0023】
この実施形態の第1の代替形態は、式(Ia’’):
【化11】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、好ましくは、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又は=CH基であり、より好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基若しくは=CH基であり、更により好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基若しくは=CH基である)の化合物に関する。
【0024】
第2の代替形態は、式(Ib’’):
【化12】

(式中、
RはC〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、好ましくは、RはC〜Cアルキル基又は=CH基であり、より好ましくは、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基又は=CH基であり、更により好ましくは、Rはメチル基又は=CH基である)の化合物に関する。
【0025】
この実施形態の第3の代替形態は、一般式(Ic’’):
【化13】

(式中、
RはC〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、好ましくは、RはC〜Cアルキル基又は=CH基であり、より好ましくは、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基又は=CH基であり、更により好ましくは、Rはメチル基又は=CH基である)の化合物にも関する。
【0026】
最後に、この実施形態の最後の代替形態は、式(Id’’):
【化14】

(式中、
RはC〜Cアルキル基、又はC〜Cアルケニル基であり、好ましくは、RはC〜Cアルキル基であり、より好ましくは、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であり、更により好ましくは、Rはメチル基である)の化合物に関する。
【0027】
より具体的には、本発明は表1に示される式(I)の化合物に関する。
【0028】
【表1】

【0029】
本発明は、式(I)の化合物の単独又は混合物としての全ての鏡像異性体及びジアステレオ異性体を含む。式(I)の化合物の構造における複数の不斉中心の存在は、それらの各々についての鏡像異性体形態の存在をもたらす。本発明は、様々な割合での鏡像異性体の混合物、特にラセミ混合物の形態の一般式(I)で表される化合物を含む。本発明は、ただ1つの鏡像異性体の形態の式(I)の化合物も含む。鏡像異性体の混合物又は純粋な形態の調製は、当業者に既知の方法、例えば光学的に濃縮された、又は光学的に純粋な出発物質を用いることによって行われる。
【0030】
式(I)の化合物は、信頼性のある、費用のかからない調製によって達成可能であるという利点を有する。したがって、式(I)の化合物はイソホロンから得ることができる。
【0031】
本発明は、式(A):
【化15】

の化合物を、式RCH(CN)PO(OC(式中、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基であり、好ましくは、Rは水素原子又はC〜Cアルキル基であり、より好ましくは、Rは水素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基若しくはイソプロピル基であり、更により好ましくは、Rは水素原子又はメチル基である)のジエチルホスホノアルキルアセトニトリル、又は
式NCCHCOOR’(式中、R’はC〜Cアルキル基であり、好ましくはR’はメチル基である)のシアノ酢酸アルキルと反応させる工程を含む、式(I)の化合物を調製する方法にも関する。
【0032】
第1の工程では、イソホロンエポキシドを、イソホロンからWeitz−Schefferエポキシ化によって得る。酸性媒体中でのイソホロンエポキシドの転位によって、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン(A)が生じる。
【化16】

【0033】
第1の実施形態では、式(Ia’)及び式(Id’)の化合物を、下記スキーム1に従って得る:
【化17】

【0034】
式(A)のシクロペンタノンに対する式RCH(CN)PO(OC(Rは上で規定した通りである)のジエチルホスホノアルキルアセトニトリルの作用によって、式(Id’)の化合物が生じる。この反応は、テトラヒドロフラン等の無極性溶媒中、有機リチウム塩基等の塩基、好ましくはブチルリチウム(BuLi)の存在下で有利に行われる。式(Id’)の化合物の水素化によって、式(Ia’)の化合物(Rは=CHとはなり得ない)を得ることが可能となる。水素化は当業者に既知の条件下で、例えば水素雰囲気下、5%パラジウム炭触媒の存在下でオートクレーブ内にて行われる。
【0035】
第2の実施形態では、式(Ib’)及び式(Ic’)の化合物、並びに化合物(5)及び化合物(6)を下記スキーム2に従って得る:
【化18】

【0036】
第1の工程では、式(A)のシクロペンタノンを、式NCCHCOOR’(式中、R’はC〜Cアルキル基、好ましくはメチル基である)のシアノ酢酸アルキルと縮合して、式(B)の化合物を得る。縮合は、例えばシクロヘキサン等の無極性非プロトン性溶媒中、酢酸(AcOH)及び酢酸アンモニウム(AcONH)の存在下、還流温度で行われる。
【0037】
第1の代替形態では、化合物(B)を続いて脱カルボキシル化に供した後、任意で水素化及び/又はアルキル化を行い、式(Ia’)、式(Ib’)又は式(Ic’)の化合物を得る。脱カルボキシル化は、N−メチルピロリドン等の極性溶媒中、塩化リチウム等のアルカリ金属ハロゲン化物の存在下で有利に行われる。水素化は、当業者に既知の条件下で、例えば水素雰囲気下、5%パラジウム炭触媒の存在下でオートクレーブ内にて行われる。アルキル化は、臭化アルキル、ヨウ化アルキル又は塩化アルキルから選択されるアルキル化剤と、例えばリチウムジイソプロピルアミド又はカリウムtert−ブトキシド等の塩基とを用いて行うことができる。この反応に適切な溶媒は、テトラヒドロフラン等の無極性溶媒、又はジメチルホルムアミド等の極性非プロトン性溶媒であり得る。
【0038】
第2の代替形態では、式(B)の化合物の還元の後、脱水及び任意で水素化を行うことによって、化合物(5)及び化合物(6)を得ることが可能となる。還元は、NaBH等の水素化物を用いて有利に行われる。水素化は、当業者に既知の条件下で、例えば水素雰囲気下、5%パラジウム炭触媒の存在下でオートクレーブ内にて行われる。
【0039】
概して、式(I’’)の化合物は、対応する式(I’)の化合物のニトリル官能基の還元を制御して、アルデヒド官能基を得ることによって得られる。この還元は、例えばトルエン等の無極性溶媒中、水素化ジイソブチルアルミニウム(Dibal)の存在下で行うことができる。
【0040】
式(I)の化合物は、その匂い特性のために、香料製造業、特に、限定を意味するものではないが、化粧品及び洗濯用品での多種多様の用途を有する。
【0041】
本発明の別の主題はしたがって、単独で、又は当業者に既知であり、当業者が所望の効果に応じて選択することのできる1つ又は複数の他の匂い化合物との混合物での、芳香物質又は芳香化合物、臭気マスキング剤又は臭気中和剤としての少なくとも1つの本発明による式(I)の化合物の使用である。更なる匂い物質(単数又は複数)は、式(I)の化合物であっても、又は当業者に既知の他の匂い物質であってもよい。
【0042】
同じ理由から、本発明は、基礎製品に着香する方法であって、本発明の化合物を該基礎製品に添加することを含む、基礎製品に着香する方法にも関する。本発明の化合物は、単独で、又は当業者に既知であり、当業者が所望の効果に応じて選択することのできる1つ又は複数の他の匂い化合物との混合物として添加することができる。更なる匂い物質(単数又は複数)は、式(I)の化合物であっても、又は当業者に既知の他の匂い物質であってもよい。上記基礎製品は、特に香料組成物、特に芳香剤の基剤若しくは香料濃縮物、オーデコロン、オードトワレ、若しくは芳香剤;化粧品組成物、特にフェイスクリーム及びボディクリーム、タルカムパウダー、ヘアオイル若しくはボディオイル、シャンプー、ヘアローション、バスソルト、バスオイル、シャワー用ジェル、入浴用ジェル、化粧石鹸、ボディ用の制汗剤、ボディ用のデオドラント、シェービングローション若しくはシェービングクリーム、シェービング石鹸、クリーム、歯磨き粉、洗口液、若しくはポマード;又は洗濯用品、例えば柔軟剤、洗浄剤、粉末洗剤若しくは脱臭剤であり得る。
【0043】
本発明の別の主題は、基礎製品と、有効量の1つ又は複数の本発明による式(I)の化合物とを含む組成物である。
【0044】
この組成物は、それ自体が匂いのある組成物であっても、又は或る特定の臭いをマスキング若しくは中和するために匂い物質が使用される組成物であってもよい。
【0045】
基礎製品は、通常の成分、例えば溶剤(複数も可)及び/又は添加剤(複数も可)が既知である、想定される組成物、したがって想定される用途に応じて当業者により容易に決定される。
【0046】
組成物中に含まれる本発明による式(I)の化合物の有効量は、組成物の性質、所望の匂い効果、及び存在し得る他の匂い化合物又は無臭化合物の性質に応じて変化するが、当業者は容易に決定することができる。有効量が0.1重量%〜99重量%、特に0.1重量%〜50重量%、とりわけ0.1重量%〜30重量%という非常に広い範囲で変化し得ることが知られている。
【0047】
本発明による式(I)の化合物は、そのまま使用しても、又は最終組成物中の他の活性成分を含み得る不活性支持体材料若しくは支持体材料中、若しくは該不活性支持体材料若しくは該支持体材料上に含まれていてもよい。例えば極性溶媒、油、脂肪、微粉固体、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ゴム、樹脂、及びかかる組成物のための任意の既知の他の支持体材料を含む多種多様の支持体材料を利用することができる。
【0048】
本発明の別の主題はしたがって、上記の用途、特に香料製造業、化粧品、例えばシャンプー又は石鹸、及び柔軟剤又は粉末洗剤等の洗濯用品における用途での匂い組成物又は匂い物品の調製における式(I)の化合物の使用である。
【0049】
本発明は特に、少なくとも1つの式(I)の化合物、又は少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物を含む、香料組成物、とりわけ芳香剤の基剤若しくは香料濃縮物、オーデコロン、オードトワレ又は芳香剤に関する。
【0050】
本発明は特に、少なくとも1つの式(I)の化合物、又は少なくとも1つの式(I)の化合物を含む少なくとも1つの組成物を含む、化粧品組成物、特にフェイスクリーム及びボディクリーム、タルカムパウダー、ヘアオイル若しくはボディオイル、シャンプー、ヘアローション、バスソルト、バスオイル、シャワー用ジェル、入浴用ジェル、化粧石鹸、ボディ用の制汗剤、ボディ用のデオドラント、シェービングローション若しくはシェービングクリーム、シェービング石鹸、クリーム、歯磨き粉、洗口液、又はポマードにも関する。本発明の別の主題は、少なくとも1つの式(I)の化合物、又は少なくとも1つの式(I)の化合物を含む少なくとも1つの組成物を利用する予防的又は非予防的な美容術又は美容ケア法である。
【0051】
本発明は、少なくとも1つの式(I)の化合物、又は少なくとも1つの式(I)の化合物を含む少なくとも1つの組成物を含む、洗濯用品、特に柔軟剤、洗浄剤、粉末洗剤又は脱臭剤にも関する。
【0052】
本発明による化合物は、そのまま単独で若しくは組み合わせて使用しても、又は最終組成物中の他の活性成分を含み得る不活性支持体材料若しくは支持体材料中、若しくは該不活性支持体材料若しくは該支持体材料上に含まれていてもよい。例えば極性溶媒、油、脂肪、微粉固体、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ゴム、樹脂、及びかかる組成物のための任意の既知の他の支持体材料を含む多種多様の支持体材料を利用することができる。
【0053】
以下の実施例は、本発明による新規の化合物の様々な製造方法、並びにそれらの使用及び利点を更に説明するものである。これらの実施例は例示目的のみで提示され、本発明を限定するものとみなしてはならない。
【実施例】
【0054】
実施例1:2−(2,4,4−トリメチルシクロペンタ−1−エニル)アセトニトリル(1)及び2−(3,3,5−トリメチルシクロペンタ−1−エニル)アセトニトリル(2)の調製
シクロペンタノンA、1.5当量のシアノ酢酸メチル、1当量の酢酸及び10mol%の酢酸アンモニウムを、丸底フラスコ内のシクロヘキサン中に入れる。生成した水をディーン・スターク装置を用いて除去するために、反応媒体を還流させる。一晩還流させた後、Aの変換率は満足のいくものであるため(90%超)、反応媒体を周囲温度に戻す。重炭酸ナトリウム溶液、次いで塩化ナトリウム水溶液での洗浄を行う。硫酸マグネシウムで乾燥させ、紙を通して濾過し、溶媒を蒸発させた後、粗生成物Bを減圧蒸留する。
B.p.=80℃/0.3トール
【0055】
2−シアノ−2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチリデン)酢酸メチルBを、NMP(N−メチルピロリドン)及び水の混合物(98:2)中、2当量の塩化リチウムが入った丸底フラスコ内に入れる。混合物を150℃で攪拌する。3時間後、反応媒体を周囲温度まで冷却した後、1%HCl溶液に注ぎ入れる。数分間攪拌を行った後、MTBE(メチルtert−ブチルエーテル)で2回抽出を行う。合わせた有機相を、重炭酸ナトリウム溶液、次いで塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、紙を通して濾過し、溶媒を蒸発させて、粗生成物を減圧蒸留する。2−(2,4,4−トリメチルシクロペンタ−1−エニル)アセトニトリル及び2−(3,3,5−トリメチルシクロペンタ−1−エニル)アセトニトリルの混合物(70:30)が得られる。
B.p.=78℃〜82℃/6トール
嗅覚的特徴:スパイシー、クミン、ウッディ、柑橘系、パワフル。
主要異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)1.08(s、6H)、1.63(s、3H)、2.15(s、2H)、2.25(s、2H)、3.08(s、2H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)17.43、19.82、30.07、30.19、50.99、53.84、121.95、136.53、136.54。
MS[e/m(%)]:149(M、45)、135(10)、134(100)、109(43)、108(15)、107(27)、94(21)、93(66)、91(26)、79(22)、77(18)、67(16)、41(14)、39(13)。
微量異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)1.02−1.04(m、3H)、1.08(s、6H)、1.10−1.20(m、2H)、1.95−2.05(m、1H)、3.01(s、2H)、5.56(s、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)14.40、18.22、28.52、36.70、40.77、48.92、118.08、134.15、139.95。
MS[e/m(%)]:149(M、53)、148(22)、135(11)、134(94)、122(10)、120(12)、109(26)、108(35)、107(48)、106(22)、94(38)、93(48)、92(15)、91(27)、83(100)、80(19)、79(27)、77(23)、69(37)、67(21)、66(30)、65(22)、56(20)、55(33)、54(10)、53(15)、51(11)、43(10)、41(41)、39(31)。
IR(薄膜法(film)、cm−1):759w、840w、931w、1070w、1159w、1241w、1315w、1364w、1415m、1446m、2249m、2837m、2866m、2954s。
【0056】
実施例2:2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチリデン)アセトニトリル(3)の調製
1.1当量のジエチルホスホノアセトニトリルを、不活性雰囲気下でTHF(テトラヒドロフラン)中に入れる。1.1当量のブチルリチウムのヘキサン溶液を、10℃前後でそれに滴下する。混合物を続いて周囲温度で1時間攪拌した後、1当量のシクロペンタノンAを10℃前後で滴下する。反応媒体を周囲温度で数時間攪拌した後、10%HCl溶液に注ぎ入れる。水相をMTBEで3回抽出する。合わせた有機相を重炭酸ナトリウム溶液、次いで塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、紙を通して濾過し、溶媒を蒸発させて、粗生成物を減圧蒸留する。2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチリデン)アセトニトリルのトランス異性体及びシス異性体の混合物(75:25)が得られる。
B.p.=85℃/6トール
嗅覚的特徴:フレッシュ、柑橘系、柑橘系フルーツ、グリーン、パワフル。
主要異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.99(s、3H)、1.12(s、6H)、1.20−1.32(m、2H)、1.72−1.95(m、1H)、2.23−2.61(m、1H)、2.76−2.82(m、1H)、5.12(s、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)18.88、28.01、29.37、37.84、39.22、48.59、49.41、91.17、117.93、178.84。
MS[e/m(%)]:149(M、47)、148(21)、135(11)、134(90)、122(11)、120(12)、109(22)、108(34)、107(42)、106(18)、95(10)、94(35)、93(49)、92(15)、91(22)、84(10)、83(100)、81(15)、80(19)、79(26)、78(10)、77(20)、69(33)、67(19)、66(29)、65(21)、56(22)、55(35)、53(15)、51(11)、43(10)、41(40)、39(30)。
微量異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.89(s、3H)、1.14(s、6H)、1.20−1.32(m、2H)、1.72−1.95(m、1H)、2.23−2.61(m、1H)、2.76−2.82(m、1H)、5.24(s、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)19.93、27.24、28.88、38.06、38.58、49.63、50.18、91.50、117.93、178.84。
MS[e/m(%)]:149(M、12)、135(10)、134(100)、109(17)、107(11)、94(20)、93(82)、91(21)、79(20)、77(14)、41(12)。
IR(薄膜法、cm−1):770w、795w、809s、880w、996w、1268w、1320w、1369m、1387m、1420m、1463s、1637s、2216s、2870m、2956s。
【0057】
実施例3:2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)アセトニトリル(4)の調製
トルエン中の実施例1で得られた化合物1及び化合物2の混合物1当量を含有する溶液と、5重量%の5%パラジウム炭とを、20バールの水素下、40℃のオートクレーブ内に入れる。反応の終了時に、オートクレーブを窒素パージして、セライトを通して溶液を濾過する。濾液を濃縮する。70:30の割合の2つのジアステレオマーの形態で得られる粗生成物を、蒸留によって精製する。
B.p.=80℃/6トール
嗅覚的特徴:グリーン、フレッシュ、柑橘類の皮(zest)、パワフル。
主要異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.92−1.08(m、3H)、1.04(s、6H)、1.15−1.42(m、2H)、1.60−1.87(m、3H)、2.23−2.44(m、3H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)18.82、21.33、31.54、37.09、39.94、43.66、47.86、50.59、119.42。
MS[e/m(%)]:151(M、0.3)、136(39)、119(20)、111(21)、108(16)、96(13)、95(100)、83(67)、82(26)、69(30)、67(18)、56(11)、55(25)、41(28)、39(14)。
微量異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.92−1.08(m、3H)、1.04(s、6H)、1.15−1.42(m、2H)、1.60−1.87(m、3H)、2.23−2.44(m、3H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)16.16、19.29、30.43、35.47、37.09、39.04、46.71、49.42、120.36。
H NMR(200MHz、CDCl):
(ppm)0.92−1.08(m、3H)、1.04(s、6H)、1.15−1.42(m、2H)、1.60−1.87(m、3H)、2.23−2.44(m、3H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):
(ppm)18.82、21.33、31.54、37.09、39.94、43.66、47.86、50.59、119.42。
MS[e/m(%)]:151(M、0.3)、136(39)、119(20)、111(21)、108(16)、96(13)、95(100)、83(67)、82(26)、69(30)、67(18)、56(11)、55(25)、41(28)、39(14)。
H NMR(200MHz、CDCl):
(ppm)0.92−1.08(m、3H)、1.04(s、6H)、1.15−1.42(m、2H)、1.60−1.87(m、3H)、2.23−2.44(m、3H)。
δ(ppm)16.16、19.29、30.43、35.47、37.09、39.04、46.71、49.42、120.36。
MS[e/m(%)]:151(M、0.2)、136(25)、119(13)、111(29)、109(10)、108(20)、96(27)、95(100)、94(11)、84(16)、83(69)、82(31)、81(11)、69(52)、68(10)、67(20)、56(24)、55(29)、53(11)、41(34)、39(17)。
IR(薄膜法、cm−1):931w、1064w、1316w、1366m、1379m、14124、1463m、2246m、2866m、2930s、2952s。
【0058】
実施例4:2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)アクリロニトリル(5)の調製
1.1当量の水素化ホウ素ナトリウムを、不活性雰囲気下、10℃でエタノール中に入れる。2−シアノ−2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチリデン)酢酸メチルBをそれに滴下する。反応媒体を周囲温度で一晩攪拌した後、アセトンで中和する。これを続いて10%冷HCl溶液に注ぎ入れる。水相をMTBEで2回抽出する。合わせた有機相を重炭酸ナトリウム溶液、次いで塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、紙を通して濾過し、溶媒を蒸発させると、3−ヒドロキシ−2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)プロパンニトリルが、11:13:23:53の割合の4つのジアステレオマーの形態で得られる。
【0059】
3−ヒドロキシ−2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)プロパンニトリルを、不活性雰囲気下、10℃でジクロロメタン中に入れる。2.2当量のDBU(ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)及び少量のDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の結晶をそれに添加した後、1.2当量のトリフルオロ酢酸無水物を滴下する。反応媒体を周囲温度で一晩攪拌した後、水に注ぎ入れる。水相をジクロロメタンで1回抽出する。合わせた有機相を水で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、紙を通して濾過し、溶媒を蒸発させて、70:30の割合の2つのジアステレオマーの形態で得られる粗生成物を減圧蒸留する。
B.p.=35℃/0.3トール
嗅覚的特徴:グリーン、フルーティ、ピーチスキン、蜂蜜。
主要異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.85(d、J=7.2Hz、3H)、0.96−1.06(m、6H)、1.10−1.17(m、2H)、1.64−1.83(m、4H)、2.17−2.48(m、1H)、2.55−2.64(m、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)18.94、31.70、40.84、42.07、46.98、48.61、49.20、50.39、203.41。
MS[e/m(%)]:163(M、1)、148(21)、121(10)、120(12)、107(10)、106(40)、84(100)、83(15)、79(21)、77(13)、55(16)、41(21)、39(13)。
微量異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.85(d、J=7.2Hz、3H)、0.96−1.06(m、6H)、1.10−1.17(m、2H)、1.64−1.83(m、4H)、2.17−2.48(m、1H)、2.55−2.64(m、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)16.94、30.64、35.64、36.46、46.12、48.51、49.67、50.65、203.41。
MS[e/m(%)]:163(M、0.4)、148(12)、106(29)、84(100)、79(17)、77(11)、69(46)、55(11)、41(18)、39(11)。
IR(薄膜法、cm−1):841w、932s、1078w、1195w、1294w、1367m、1378m、1407w、1461m、1618m、2222m、2867m、2953s。
【0060】
実施例5:2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)プロパンニトリル(6)の調製
トルエン中1当量の2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)アクリロニトリル5を含有する溶液と、5重量%の5%パラジウム炭とを、20バールの水素下、40℃のオートクレーブ内に入れる。反応の終了時に、オートクレーブを窒素パージして、セライトを通して溶液を濾過する。濾液を濃縮する。8:18:22:52の割合の4つのジアステレオマーの形態で得られる粗生成物を、蒸留によって精製する。
B.p.=46℃/0.7トール
嗅覚的特徴:グリーン、ラスティック、ヨモギ、ウッディ。
4つの重なった(superimposed)異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.91−1.03(m、6H)、1.09−1.11(m、3H)、1.31−1.92(m、2H)、1.25−1.39(m、3H)、1.72−1.74(m、1H)、2.21−2.43(m、1H)、2.59−2.84(m、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl3、主要異性体(52%)):δ(ppm)16.51、20.91、28.73、30.88、30.99、35.95、38.42、46.23、49.64、50.78、123.32。
MS[e/m(%)]、52%の異性体:165(M、1)、150(49)、133(32)、111(65)、109(10)、96(19)、95(100)、83(54)、81(14)、69(69)、67(14)、56(11)、55(43)、53(11)、41(32)、39(14)。
MS[e/m(%)]、22%の異性体:165(M、0.4)、150(57)、133(26)、111(33)、96(14)、95(100)、83(68)、81(11)、69(47)、67(12)、55(34)、41(25)、39(12)。
MS[e/m(%)]、18%の異性体:165(M、0.3)、150(31)、133(17)、122(11)、111(84)、110(17)、109(19)、96(19)、95(83)、94(11)、84(29)、83(54)、82(13)、81(15)、69(100)、67(17)、56(18)、55(49)、53(13)、41(40)、39(17)。
MS[e/m(%)]、8%の異性体:165(M、0.1)、150(29)、133(19)、111(87)、110(16)、109(18)、96(15)、95(83)、94(14)、84(32)、83(56)、82(13)、81(17)、69(100)、67(15)、56(15)、55(49)、53(11)、41(38)、39(16)。
IR(薄膜法、cm−1):979w、1103w、1197w、1319w、1366m、1381m、1461m、2238m、2867m、2952s。
【0061】
実施例6:2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)アセトアルデヒド(7)の調製
2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)アセトニトリル4を、不活性雰囲気下、10℃でトルエン中に入れる。1.2当量のDibal(水素化ジイソブチルアルミニウム)をそれに滴下する。反応媒体を周囲温度で数時間攪拌した後、酢酸、水及び氷の混合物(20:40:40)に注ぎ入れる。水相をトルエンで1回抽出する。合わせた有機相を、重炭酸ナトリウム溶液、次いで塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、紙を通して濾過し、溶媒を蒸発させて、70:30の割合の2つのジアステレオマーの形態で得られる粗生成物を減圧蒸留する。
B.p.=50℃/0.3トール
嗅覚的特徴:非常にグリーン、柑橘系、スパイシー、クミン、非常にパワフル。
主要異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)1.05(2d、J=7.0Hz及びJ=6.8Hz、6H)、1.57−1.64(m、2H)、1.94−1.98(m、1H)、2.28−2.34(m、1H)、2.52−2.71(m、2H)、7.14−7.28(m、5H)、9.65(s、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)10.26、17.71、33.71、33.91、35.43、51.88、126.27、128.71(2C)、128.81(2C)、142.49、205.95。
MS[e/m(%)]:154(M、2)、110(35)、95(100)、69(21)、55(17)、41(17)。
微量異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.89(2d、J=7.0Hz及びJ=6.8Hz、6H)、1.57−1.64(m、2H)、1.94−1.98(m、1H)、2.28−2.35(m、1H)、2.52−2.71(m、2H)、7.14−7.28(m、5H)、9.64(s、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)8.57、15.78、32.59、34.02、36.97、50.93、126.27、128.71(2C)、128.81(2C)、142.49、205.95。
MS[e/m(%)]:154(M、0.5)、110(36)、109(13)、95(100)、83(11)、69(33)、55(21)、41(22)。
IR(薄膜法、cm−1):698s、747m、1454m、1496m、1603w、1721s、2704w、2860m、2933m、2963m、3026m、3062w。
【0062】
実施例7:2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)アクリルアルデヒド(8)の調製
2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)アクリロニトリル5を、不活性雰囲気下、10℃でトルエン中に入れる。1.2当量のDibal(水素化ジイソブチルアルミニウム)をそれに滴下する。反応媒体を周囲温度で数時間攪拌した後、酢酸、水及び氷の混合物(20:40:40)に注ぎ入れる。水相をトルエンで1回抽出する。合わせた有機相を、重炭酸ナトリウム溶液、次いで塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、紙を通して濾過し、溶媒を蒸発させて、70:30の割合の2つのジアステレオマーの形態で得られる粗生成物を減圧蒸留する。
B.p.=40℃/0.3トール
嗅覚的特徴:グリーン、柑橘系、ウッディ、パワフル。
主要異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.88(d、J=6.4Hz、3H)、1.05(2s 6H)、1.22−1.34(m、2H)、1.60−1.87(m、2H)、2.04−2.17(m、1H)、2.57−2.67(m、1H)、6.01及び6.28(2s、2H)、9.56(s、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)18.61、31.78、37.28、39.56、45.53、49.06、50.60、133.39、153.26、195.50。
MS[e/m(%)]:166(M、35)、151(89)、137(30)、133(43)、124(17)、123(60)、110(26)、109(100)、108(21)、107(21)、105(20)、96(12)、95(88)、93(25)、91(24)、84(29)、83(39)、82(11)、81(58)、79(32)、77(22)、70(12)、69(57)、68(11)、67(39)、65(11)、56(10)、55(42)、53(27)、43(16)、41(58)39(31)。
微量異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.59(d、J=7.2Hz、3H)、1.05(2s、6H)、1.22−1.34(m、2H)、1.60−1.87(m、2H)、2.04−2.17(m、1H)、2.57−2.67(m、1H)、6.07及び6.20(2s、2H)、9.56(s、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):δ(ppm)18.13、31.54、34.56、37.28、40.47、43.24、49.74、134.33、151.82、195.50。
MS[e/m(%)]:166(M、25)、151(66)、137(27)、133(29)、124(14)、123(44)、110(20)、109(100)、108(18)、107(17)、105(14)、95(68)、93(20)、91(22)、84(72)、83(39)、82(10)、81(57)、79(29)、70(11)、69(86)、67(32)、65(10)、56(12)、55(39)、53(23)、43(13)、41(57)、39(29)。
IR(薄膜法、cm−1):895w、937m、1190w、1242w、1364w、1376w、1459m、1623w、1693s、2696w、2865m、2952m。
【0063】
実施例8:2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)プロパナール(9)の調製
2−(2,4,4−トリメチルシクロペンチル)プロパンニトリル6を、不活性雰囲気下、10℃でトルエン中に入れる。1.2当量のDibal(水素化ジイソブチルアルミニウム)をそれに滴下する。反応媒体を周囲温度で数時間攪拌した後、酢酸、水及び氷の混合物(20:40:40)に注ぎ入れる。水相をトルエンで1回抽出する。合わせた有機相を、重炭酸ナトリウム溶液、次いで塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、紙を通して濾過し、溶媒を蒸発させて、73:16:11の割合でGCにより観察される3つのジアステレオマーの形態で得られる粗生成物を減圧蒸留する。
B.p.=40℃/0.4トール
嗅覚的特徴:ウッディ、ドライ、グリーン、柑橘系、フレッシュ。
3つの重なった異性体:
H NMR(200MHz、CDCl):δ(ppm)0.95−1.03(重なったsシグナル、6H)、1.07−1.11(重なったdシグナル、3H)、1.17−1.32(m、2H)、1.40−1.50(m、1H)、1.62−1.71(m、1H)、1.81−2.05及び2.20−2.23(2m、2H)、2.35−2.48(m、1H)、9.64及び9.70(2s、1H)。
13C NMR(50MHz、CDCl):73%の異性体:δ(ppm)9.43、19.34、31.21、31.40、37.0、37.40、45.90、47.10、48.65、50.46、205.88。
MS[e/m(%)、73%の異性体]:168(M、1)、111(14)、110(49)、95(100)、83(26)、69(30)、58(10)、55(27)、41(17)。
MS[e/m(%)、16%の異性体]:168(M、0.1)、111(19)、110(71)、97(13)、95(100)、83(40)、69(52)、67(10)、58(11)、55(42)、43(11)、41(24)。
MS[e/m(%)、10%の異性体]:168(M、1)、111(20)、110(37)、109(12)、95(100)、83(79)、82(15)、69(45)、67(13)、58(33)、55(45)、43(12)、41(27)、39(10)。
MS[e/m(%)]:190(M、18)、132(11)、131(39)、117(33)、105(16)、104(33)、92(25)、91(100)、85(31)、65(14)。
IR(薄膜法、cm−1):840w、885w、920w、971w、1365w、1377w、1460m、1725s、2700w、2866m、2930m、2952m。
【0064】
実施例9:化合物5を含有する着香組成物
レモンドロップ系のアコードを以下の成分から調製した。
【0065】
【表2】

【0066】
評価:化合物5の添加によって、このレモンのノートに相当なパワフルさが与えられ、「レモン」及び「ニトリル」のノートが大幅に増強される。この分子は、グルマン系の(gourmand)面でも効果を有しており、エチルマルトールのノートが強調される。同じ効果がアルコール及びシャンプーの用途においても見られる。
【0067】
実施例10:化合物5を含有する着香組成物
グリーンピーチ系のアコードを以下の成分から調製した。
【0068】
【表3】

【0069】
評価:化合物5の添加によって、パワフルさが大幅に増大し、グリーンのノートが強められる。熟練パネルの数人のメンバーは同じ意見を有していた。彼らは化合物5を含む組成物を好ましいとする。この組成物はシャンプー用途で知覚される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、
ZはCN基又はCHO基であり、
破線で表される結合のうち多くとも1つが存在するが、
ただし、ZがCHO基であり、かつ破線で表される結合のうち1つが存在する場合、Rは水素原子ではなく、
炭素Ca及び炭素Cbの間の破線で表される結合が存在する場合、Rは=CH基ではない)の化合物。
【請求項2】
一般式(I’):
【化2】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、
破線で表される結合のうち多くとも1つが存在するが、
ただし、炭素Ca及び炭素Cbの間の破線で表される結合が存在する場合、Rは=CH基ではない)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが水素原子、又はメチル基若しくは=CH基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(I’’):
【化3】

(式中、
Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基又は=CH基であり、
破線で表される結合のうち多くとも1つが存在するが、
ただし、破線で表される結合のうち1つが存在する場合、Rは水素原子ではなく、
炭素Ca及び炭素Cbの間の破線で表される結合が存在する場合、Rは=CH基ではない)を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Rが水素原子、又はメチル基若しくは=CH基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式(I)の化合物を調製する方法であって、式(A):
【化4】

の化合物を、式RCH(CN)PO(OC(式中、Rは水素原子、C〜Cアルキル基又はC〜Cアルケニル基である)のジエチルホスホノアルキルアセトニトリル、又は式NCCHCOOR’(式中、R’はC〜Cアルキル基である)のシアノ酢酸アルキルと反応させる工程を含むことを特徴とする、式(I)の化合物を調製する方法。
【請求項7】
芳香物質又は芳香化合物としての請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項8】
臭気マスキング剤としての請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
前記請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を、少なくとも1つの他の香り付け成分若しくは着香成分、及び/又は少なくとも1つの溶剤、及び/又は少なくとも1つの添加剤と組み合わせる、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする、着香組成物。

【公表番号】特表2013−505229(P2013−505229A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529394(P2012−529394)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054213
【国際公開番号】WO2011/033479
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(510116347)
【Fターム(参考)】