説明

イノシン生産能を有するコリネバクテリウム属微生物及びこれを利用したイノシンの生産方法

イノシン分解経路が遮断され、漏出型のアデニン要求性、及び望ましくは、漏出型のグアニン要求性をさらに有することを特徴とするイノシン生産能を有するコリネバクテリウム属微生物、及び該微生物を培養する段階を含む、イノシンを生産する方法が開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イノシン生産能を有するコリネバクテリウム属微生物及び該微生物を培養する段階を含むイノシン生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イノシンは、うま味調味料として脚光を浴びているイノシン酸(5’−inosinic acid)の化学的合成及び酵素転移反応による合成において、重要な基質である。また、イノシンは、核酸生合成代謝系の中間物質として、動植物の体内で生理的に重要な意味を有するだけではなく、食品及び医薬品などのさまざまな分野で広く利用されている。
【0003】
イノシンは、従来には主に、バシラス(非特許文献1、特許文献1)、またはコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)(非特許文献2)のような微生物を利用した直接発酵法や、5’−イノシン酸の熱分解法(特許文献2)などを利用して製造した。しかし、熱分解法の場合は、5’−イノシン酸を分解するために、大量の熱消費が要求されて実用性が低く、また直接発酵法の場合は、大腸菌を利用した多様な遺伝子型の菌株が開発されて研究されたが(非特許文献3)、イノシン生産菌株の力価が低く、生産コストが高いという短所がある。また、既存のイノシン研究は、大腸菌とバシラスとに集中していた。
【0004】
従って、イノシンをさらに高収率で生産して高濃度に蓄積させることができる菌株、及び前記菌株を利用したイノシン生産方法の開発が依然として要求されている。
【0005】
このために、本発明者らは、微生物を利用した直接発酵法によって、イノシンを高濃度/高収率に生産するために、持続的な研究を行い、その結果、直接発酵法によって、さらに高濃度及び高収率にイノシンを生産する微生物を開発し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国登録特許第27280号公報
【特許文献2】特開昭43−3320号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Agric.Biol.Chem.,46,2347(1982)
【非特許文献2】Agric.Biol.Chem.,42,399(1978)
【非特許文献3】Biosci Biotechnol Biochem.2001 Mar;65(3):570-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、イノシン分解経路が遮断され、漏出型のアデニン要求性(a leaky adenine auxotroph)を有し、望ましくは、漏出型のグアニン要求性(a leaky guanine auxotroph)をさらに有することを特徴とする、イノシンを高濃度及び高収率に生産するコリネバクテリウム属微生物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記微生物を培養し、高濃度及び高収率にイノシンを生産する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1(rih1)及びリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2(rih2)をコードする遺伝子が不活性化されてイノシン分解が遮断され、漏出型のアデニン要求性であることを特徴とするイノシン生産能を有するコリネバクテリウム属微生物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるコリネバクテリウム・アンモニアゲネスCN04−0027(KCCM 10905)菌株を利用してイノシンを生産する場合、直接発酵法によってイノシンを、さらに高濃度及び高収率に生産でき、糖消費量の減少によって、生産コストが節減されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1をコードする遺伝子の構造を破壊するためのpDZmrih1ベクターの製造図を図示する図面である。
【図2】リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2をコードする遺伝子の構造を破壊するためのpDZmrih2ベクターの製造図を図示する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、イノシン分解経路が遮断され、漏出型のアデニン要求性であることを特徴とするイノシンを、高濃度及び高収率に生産するコリネバクテリウム(Corynebacterium)属微生物を提供する。本発明の微生物は、望ましくは、漏出型のグアニン要求性をさらに有することができる。
【0014】
本発明の一具体例によれば、イノシンを生産するコリネバクテリウム属微生物は、遺伝子組換えによってイノシン分解経路が遮断され、すなわちそれぞれリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ(ribonucleoside hydrolase:rih)1と、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2とをコードする遺伝子が、塩基の挿入、欠失または置換による配列変異によって不活性化され、同時に人工変異によって選別された漏出型のアデニン要求性及び/または漏出型のグアニン要求性を有することができる。
【0015】
本発明のコリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・ジフテリア、及びコリネバクテリウム・アンモニアゲネスを含み、望ましくは、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスであり、最も望ましくは、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872から変異したコリネバクテリウム・アンモニアゲネスCN04−0027である。親菌株であるコリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872は、American Type Culture Collectionで提供するコリネバクテリウム・アンモニアゲネスの野生型菌株であって、イノシンを全く生産しない菌株である。
【0016】
本発明の一具体例によるコリネバクテリウム・アンモニアゲネスCN04−0027(KCCM 10905)は、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1をコードする遺伝子rih1と、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2をコードする遺伝子rih2との構造を破壊してイノシン分解経路が遮断されると同時に、漏出型のアデニン要求性及び漏出型のグアニン要求性を有し、イノシンをさらに高濃度及び高収率に培養液中に直接蓄積させることができる。
【0017】
本発明の詳細な説明及び実施例で言及されるように、本発明で、微生物の培養のために使われる栄養培地、最小培地、種培地、及びフラスコ発酵培地の一例は、それぞれ下記の表1に表示された組成からなる培地でありうる。しかし、培地組成は、表1に提示されたものに制限されず、コリネバクテリウム属微生物の培養に適したあらゆる培養培地を使用できる。
【0018】
(表1)培地組成

【0019】
本発明の一具体例によれば、本発明の微生物は、イノシン分解を遮断するために、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1及びリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2をコードするrih1及びrih2の遺伝子の構造を破壊してその活性を不活性化させ、イノシンが培養液内に蓄積されることを確認した後、人工変異を介して漏出型のアデニン要求性を選別し、さらに漏出型のグアニン要求性であることを選別して完成されたイノシン生産性が向上した変異株でありうる。
【0020】
本発明の一具体例によれば、本発明の微生物は、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872で、本発明が属する技術分野の当業者によって既発表のリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1とリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2とをコードする遺伝子(以下、rih1、rih2)に塩基の挿入、欠失または置換によって終止コドンが生成されて配列が変形された遺伝子を運搬する組換えベクターによって形質転換され、これによって蛋白質翻訳が阻害されて前記酵素が不活性化され、イノシン分解経路が遮断された組換え菌株でありうる。
【0021】
本発明の一具体例によれば、イノシン分解経路が遮断された組換え菌株で配列が変形されて不活性化されたリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1遺伝子及びリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2遺伝子は、それぞれ配列番号9及び配列番号10で表示される配列を有することができる。
【0022】
本発明の一具体例によれば、イノシン分解経路が遮断された菌株にさらに漏出型のアデニン要求性形質を付与するために、X線、紫外線またはN−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニン(N−methyl−N−nitro−N−nitrosoguanine)、硫化ジエチル(diethylsulfide)、エチルアミンなどの化学的変異誘発剤が処理されうる。前記変異誘発剤の処理後、菌株を前記表1の組成を有する最小培地に塗抹後、アデニンが添加されていない培地で成長するが、アデニンが添加された培地で成長がさらに促進される、漏出型のアデニン要求性を示す個別的なコロニー(colony)を収得し、それらをそれぞれ栄養培地で培養し、種培地で24時間培養した後、発酵培地で5日間ないし6日間培養し、発酵培養液に蓄積されるイノシン生産量が最も優秀な菌株に対してイノシン分解経路が遮断され、漏出型のアデニン要求性を有する菌株として選別されうる。
【0023】
また、本発明の一具体例によれば、選別された漏出型のアデニン要求性菌株を、前記のような方法で、すなわち、化学的変異誘発剤で処理し、漏出型のグアニン要求性菌株を選別し、栄養培地培養、種培地培養、発酵培地培養を経て、発酵培養液で蓄積されるイノシン生産量が最も優秀な菌株に対してイノシン分解経路が遮断され、漏出型のアデニン要求性及び漏出型のグアニン要求性を有するイノシン生産微生物に選別できる。
【0024】
本発明はまた、イノシン分解経路が遮断され、漏出型のアデニン要求性及び漏出型のグアニン要求性を有し、イノシンを高収率及び高濃度で生産するコリネバクテリウム属微生物を培養し、前記微生物または培養液中にイノシンを生産する段階、及び前記微生物または培養液からイノシンを回収する段階を含む、イノシンを生産する方法を提供する。
【0025】
本発明の一具体例によるイノシンを生産する方法で、前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスCN04−0027(KCCM 10905)でありうる。
【0026】
本発明によるイノシンを生産する方法は、コリネバクテリウム属微生物を培養し、微生物または培養液中にイノシンを生産する段階を含む。
【0027】
本発明の一具体例によれば、コリネバクテリウム属微生物を培養する段階は、菌株を適当な炭素源、窒素源、アミノ酸、ビタミンなどを含有した通常の培地内で、好気性条件下で、温度、pHなどを調節しつつ培養する。
【0028】
このとき、炭素源としては、グルコース、殺菌された前処理糖蜜(すなわち、還元糖に転換された糖蜜)のような炭水化物が使われ、窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムのような各種無機窒素源、及びペプトン、NZ−アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、とうもろこし浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などの有機窒素源が使われうる。無機化合物としては、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが使われ、それ以外に栄養要求株必要によって、ビタミン及び塩基などが添加されうる。
【0029】
培養は、好気的条件下、例えば、振盪(shaking)培養または通気撹拌培養によって、望ましくは、28ないし36℃の温度で行われる。培地のpHは、培養する間、pH6ないし8の範囲で維持することが望ましい。培養は、5日間ないし6日間行われ、直接発酵によって蓄積されたイノシンは、HPLC(high performance liquid chromatography)を利用して通常の方法で分析されうる。
【0030】
以下、本発明について、実施例によって具体的に説明する。しかし、本発明の範囲が、いかなる形態でも実施例によって制限されることを意味しない。
【実施例】
【0031】
実施例1:染色体挿入用ベクター(pDZ)を利用したリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ遺伝子の構造が破壊された菌株の製造
本実施例では、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1及びリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2をコードする遺伝子で、塩基の挿入、置換または欠失による配列変異を介して前記遺伝子を不活性化させ、イノシン分解経路を遮断させることを目的に、大腸菌クローニング用ベクターpACYC177(New England Biolab、GenBank accession#X06402)由来のpDZベクターを組換えベクターとして利用した(韓国特許07−94433)。
【0032】
図1及び図2は、それぞれリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1(rih1)及びリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2(rih2)をコードする遺伝子の構造を破壊するためのpDZmrih1及びpDZmrih2ベクターの製造図を図示する。
【0033】
リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1及びリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2をコードする遺伝子を増幅するために、まず、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872の染色体DNAをテンプレートとして、それぞれ配列番号1ないし4のプライマー及び配列番号5ないし8のプライマーを利用し、下記と共にPCR(polymerase chain reaction)を行った。
【0034】
コリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872の染色体DNAをテンプレートとして、それぞれ配列番号1並びに2、配列番号3並びに4のプライマーを利用したPCRを行い、rih1−A断片及びrih1−Bの断片を収得した。その後、収得されたrih1−A断片及びrih1−B断片をテンプレートとして、配列番号1及び4のプライマーを利用したPCRを行い、変異した配列構造を有する変異遺伝子断片であるmrih1を収得した。また、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2の配列構造が変形された変異遺伝子断片であるmrih2を収得するために、前記コリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872の染色体DNAをテンプレートとして、それぞれ配列番号5並びに6、配列番号7並びに8のプライマーを利用したPCRを行い、rih2−A及びrih2−B断片を収得し、前記収得されたrih2−A及びrih2−Bをテンプレートとして、配列番号5並びに8のプライマーを利用したPCRを行った。前記で、rih1−A、rih1−B、rih2−A及びrih2−Bを収得するために行ったPCRの条件は、94℃で5分の予備変性、及びそれに続いた94℃で30秒、52℃で30秒及び72℃で1分によって構成されたサイクルの20回反復、及び72℃で7分の最終伸張であり、各A断片とB断片とを統合して変異された遺伝子断片を得るためのPCR条件は、94℃で5分の予備変性及びそれに続いた94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で1分によって構成されたサイクルの25回反復、及び72℃で7分の最終伸張であった。前記増幅されたmrih1及びmrih2とpDZとをそれぞれ制限酵素XbaIで処理した後、T4リガーゼによる反応を介して、遺伝子構造破壊用組換えベクターであるpDZmrih1とpDZmrih2とを収得した。
【0035】
コリネバクテリウムの染色体上のrih2遺伝子の配列を、塩基欠失によって変異させるために製作されたpDZmrih2ベクターを、野生型であるコリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872に電気穿孔法(electroporation)で形質転換した後(Appl.Microbiol.Biotechnol.(1999)52:541-545による形質転換法利用)、カナマイシン(kanamycin)25mg/Lを含有した選別培地で、染色体上の同遺伝子との相同性組換えによって、前記ベクターが挿入された菌株を選別した。ベクターの成功裏の染色体挿入は、X−gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含んだ固体培地で、青色を示すか否かを調べて確認した。一次組換えによって、ベクターが染色体に挿入された菌株を、栄養培地で30℃で8時間振盪培養した後、それぞれ10−4から10−10まで希釈し、X−galを含んでいる固体培地に塗抹した。ほとんどのコロニーが青色を帯びるに反して、低率で示される白色のコロニーを選別することによって、二次交差(crossover)によって、ベクター配列が染色体から除去された菌株を選別した。これによって、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872菌株の染色体上のrih2遺伝子の262番目のGが欠失された菌株を収得した。その後、rih1遺伝子で塩基置換によって配列を変異させるために、前記で収得されたrih2遺伝子の配列に欠失を含む菌株に、pDZmrih1を形質転換によって導入し、前記rih2遺伝子の変異菌株の選別と同じ方法を行い、rih1遺伝子の148番目GがTで置換されてイノシン分解経路が遮断されたコリネバクテリウム・アンモニアゲネスCN04−0092を収得した。前記選別された菌株は、最終的に抗生物質カナマイシンに対する感受性の有無、及びPCRを介した遺伝子配列分析を介して確認した。前記菌株の変異したrih1及びrih2は、それぞれ配列番号9及び10で表示される配列を有した。
【0036】
実施例2:漏出型のアデニン要求性変異株CN04−0093の選別
実施例1で収得されたコリネバクテリウム・アンモニアゲネスCN04−0092を、リン酸塩緩衝液(pH7.0)あるいはクエン酸塩緩衝液(pH5.5)に、10ないし10細胞/mlで懸濁した後、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニンを、最終濃度が10ないし50μg/mlになるように添加し、室温あるいは30ないし32℃で40ないし90分間処理し、突然変異を誘発した。遠心分離後、収得された菌株を三回にわたって0.85%食塩水で洗浄した後、これを寒天2%が含まれた前記表1に表示された組成を有する最小培地に適切に希釈して塗抹した後、温度30ないし34℃で4ないし5日間培養してコロニーを得た。収得されたコロニーを、それぞれアデニンが0mg/l及び100mg/lになるように添加された培地に移し、3〜4日の培養後、アデニンが含まれていない培地で成長させるが、100mg/lが含まれた培地では、成長がさらに促進されるコロニーを選別した。このように選別された菌株を、漏出型のアデニン要求性を有する菌株と確認した後、収得されたそれぞれのコロニーを、前記表1に表示された組成を有する栄養培地で培養し、次に、種培地での24時間培養及び発酵培地での5日間ないし6日間の培養を介して、イノシン生産量が最も優秀な菌株を選別し、CN04−0093菌株と命名した。
【0037】
実施例3:漏出型のグアニン要求性変異株CN04−0027(KCCM 10905)の選別
実施例2で収得されたコリネバクテリウム・アンモニアゲネスCN04−0093をリン酸塩緩衝液(pH7.0)あるいはクエン酸塩緩衝液(pH5.5)に、10ないし10細胞/mlに懸濁した後、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニンを、最終濃度が10ないし50μg/mlになるように添加し、室温あるいは30ないし32℃で40ないし90分間処理し、突然変異を誘発した。遠心分離後、収得された菌株を三回にわたって0.85%食塩水で洗浄した後、これを寒天2%が含まれた前記表1に表示された組成を有する最小培地に適切に希釈して塗抹した後、温度30ないし32℃で4ないし5日間培養し、コロニーを得た。収得されたコロニーを、それぞれグアニンが0mg/l及び100mg/lになるように添加された培地に移し、3〜4日の培養後、グアニンが含まれていない培地で成長させるが、100mg/lが含まれた培地では、成長がさらに促進されるコロニーを選別した。選別されたそれぞれのコロニーを、前記表1に表示された組成を有する栄養培地で培養し、次に、種培地での24時間培養及び発酵培地での5日間ないし6日間の培養を介して、イノシン生産量が最も優秀な菌株を選別した。前記の通りに選別された、イノシン分解経路が遮断され、漏出型のアデニン要求性及び漏出型のグアニン要求性を有し、イノシンを高収率及び高濃度で生産するコリネバクテリウム・アンモニアゲネスをコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)CN04−0027と命名し、これをブダペスト条約下で、ソウル西大門区弘済1洞所在の韓国微生物保存センター(KCCM:Korean Culture Center of Microorganisms)に、2007年12月20日付で受託番号KCCM 10905で寄託した。
【0038】
実施例4:三角フラスコ発酵力価
前記表1に表示された組成を有する種培地3mlを、直径18mmの試験管に分注し、120℃温度で10分間加圧殺菌した後、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872菌株;リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1及び2の遺伝子が破壊された菌株CN04−0092;リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1及び2遺伝子の破壊及び漏出型のアデニン要求性を有する菌株CN04−0093;リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1及び2遺伝子の破壊、漏出型のアデニン要求性及び漏出型のグアニン要求性を有する菌株CN04−0027をそれぞれ接種し、37℃温度で24時間振盪培養し、種培養液として使用した。前記表1に表示された組成を有する発酵培地27mlを、250ml振盪用三角フラスコに分注し、120℃温度で10分間の加圧殺菌後、種培養液3mlを接種した後、5日間ないし6日間振盪培養した。振盪培養器の回転数は、1分当たり220回(rpm)、温度32℃、pH7.2に調節した。培養結果、培地内のイノシン蓄積量は、親菌株であるコリネバクテリウム・アンモニアゲネスATCC 6872の場合、0g/Lであり、CN04−0092菌株は、約1g/lであった。さらに、漏出型のアデニン要求性が付与された変異株であるCN04−0093は、CN04−0092よりイノシン蓄積量が約2g/l増加し、さらに漏出型のグアニン要求性が付与された変異株であるCN04−0027は、CN04−0093より約2g/lが増加された約5g/lのイノシンを生産した。各菌株のイノシン生産性は、下記の表2に表示される。
【0039】
(表2)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1(rih1)及びリボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2(rih2)をコードする遺伝子が不活性化されてイノシン分解が遮断され、漏出型のアデニン要求性であることを特徴とするイノシン生産能を有するコリネバクテリウム属微生物。
【請求項2】
漏出型のグアニン要求性をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項3】
不活性化された、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ1をコードする遺伝子(rih1)及び、不活性化された、リボヌクレオシド・ヒドロラーゼ2をコードする遺伝子(rih2)が、それぞれ配列番号9及び配列番号10で表示される配列を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項4】
コリネバクテリウム属微生物が、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項5】
コリネバクテリウム属微生物が、コリネバクテリウム・アンモニアゲネスCN04−0027(KCCM 10905)であることを特徴とする、請求項4に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の微生物を培養し、前記微生物または培養液中にイノシンを生産する段階と、前記微生物または培養液からイノシンを回収する段階とを含む、イノシンを生産する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−508599(P2011−508599A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541403(P2010−541403)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000017
【国際公開番号】WO2009/088184
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(508139664)シージェイ チェイルジェダン コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】