説明

イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤

【課題】 本発明は、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含み、高温保存条件下における膨張が抑制された固形製剤を提供すること。
【解決手段】 イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤であって、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有する固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温保存条件下における膨張が抑制された、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェン(ibuprofen)は、慢性関節リウマチ、関節痛及び関節炎、神経痛及び神経炎、脊腰痛等の疾患、症状の消炎、鎮痛に有効なほか、風邪症侯群、急性気管支炎、慢性気管支炎の急性増悪期の消炎、解熱などにも有効な非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)として広く使用されている薬物である。しかしながら、イブプロフェンには胃腸障害などの副作用があることや、鎮痛効果が比較的弱いことから、種々の薬物との配合製剤が検討されてきている。
【0003】
例えば、イブプロフェンとブセチンなどのアニリン誘導体系解熱鎮痛剤とを配合した解熱鎮痛剤(特許文献1参照)、イブプロフェンとカフェインとを配合した製剤(特許文献2参照)、イブプロフェンとコデインとを配合した鎮痛組成物(特許文献3及び4参照)、イブプロフェンとアセトアミノフェンとを配合した解熱鎮痛剤(特許文献5及び6参照)、イブプロフェンとアセトアミノフェンとアリルイソプロピルアセチル尿素またはブロムワレニル尿素を配合する解熱鎮痛剤(特許文献7参照)、イブプロフェンと塩化リゾチームとを配合した感冒薬(特許文献8参照)、イブプロフェンとトラネキサム酸とを含む解熱鎮痛剤(特許文献9参照)などが報告されている。とりわけトラネキサム酸は、抗プラスミン作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用などを有する薬物として広く使用されているものであり、イブプロフェンとトラネキサム酸とを組み合わせた配合が多数開発されてきている。例えば、イブプロフェンとトラネキサム酸にさらにカフェインを配合した解熱鎮痛剤(特許文献10参照)、アスコルビン酸を配合した解熱鎮痛組成物(特許文献11参照)、アセトアミノフェンなどの非ピリン系解熱鎮痛薬と組み合わせた医薬製剤(特許文献12参照)、プソイドエフェドリン及び/又はフェニレフリンを配合した鼻炎用医薬組成物(特許文献13参照)、フェニルプロパノールアミンやプソドエフェドリンなどのα受容体刺激剤及びフラボノイドとをさらに配合してなる感冒用医薬組成物(特許文献14参照)、クレマスチン及び/又はブロムヘキシンを配合した医薬組成物(特許文献15参照)などが報告されてきている。
【0004】
一方、モルヒネやコデインなどの麻薬性鎮痛剤と、ジクロフェナック、ナプロキセン、ケトプロフェン、イブプロフェンなどの非ステロイド系消炎性カルボン酸とを、ステアリン酸及びステアリン酸塩を含まずに多層錠として製剤化する方法が提案されている(特許文献16参照)。これは、これらの成分の相溶性が非常に悪く、圧縮性が低く、崩壊時間が長く、更に着色性であるために、これらの成分を単層の錠剤として製剤化できないためであるとされている。このために、滑沢剤としてステアリン酸に代えて硬化植物油を使用する方法も提案されている(特許文献17参照)。
【0005】
しかしながら、コデインなどの麻薬性鎮痛剤以外との組み合わせにおいては、このような事例は報告されておらず、例えば、特許文献9ではイブプロフェン及びトラネキサム酸などを含有する成分をステアリン酸マグネシウムを用いて1錠370mgの錠剤化したことが記載され(特許文献9、段落番号[0032])、特許文献11では、イブプロフェン及びトラネキサム酸などを含有する成分をステアリン酸マグネシウムと共に局方製剤総則記載の公知の方法によりカプセル剤としたことが記載されている(特許文献11,段落番号[0047]及び[0048])、また、特許文献15においても、トラネキサム酸及びイブプロフェンなどを含有する成分をステアリン酸マグネシウムを用いて常法により錠剤化したことが記載されている(特許文献15、段落番号[0039])、さらに、特開2006−104186号公報(特許文献18)においても、同様に日本薬局方製剤総則の錠剤の項に記載の方法により錠剤化したことが記載されている(特許文献18、段落番号[0012])。このように、イブプロフェンを含有する製剤におけるステアリン酸やステアリン酸塩の好ましくない作用はコデインなどの麻薬性鎮痛剤との組み合わせに限られるものであると考えられていた。
【特許文献1】特公昭64−8602号公報
【特許文献2】特公平1−24131号公報
【特許文献3】特開平3−7218号公報
【特許文献4】特開平5−194227号公報
【特許文献5】特開平5−148139号公報
【特許文献6】特開平11−158066号公報
【特許文献7】特開平5−246845号公報
【特許文献8】特開平7−188004号公報
【特許文献9】特開平9−48728号公報
【特許文献10】特許第3667381号公報
【特許文献11】特開2006−1920号公報
【特許文献12】特開2005−187328号公報
【特許文献13】特開2005−232128号公報
【特許文献14】特開2005−194269号公報
【特許文献15】特開2006−124380号公報
【特許文献16】特開昭62−51625号公報
【特許文献17】特表平10−504557号公報
【特許文献18】特開2006−104186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、イブプロフェンとトラネキサム酸を含む固形製剤について検討してきたところ、これらの固形製剤は1〜25℃で保存すれば長期間に亘り安定に保存することができるが、高温保存条件下では膨張が生起して、製剤にひび割れなどが発生することを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、高温保存条件下で保存した場合であっても、膨張が抑制された、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、イブプロフェンとトラネキサム酸を含む固形製剤における高温保存条件下での膨張の問題を解決するために、この原因を探求してきた。イブプロフェンとトラネキサム酸を含む固形製剤は、高温保存条件下で膨張するが、錠剤化は可能であり、また着色が起きることもなく、特許文献16や特許文献17に記載されているコデインなどの配合による錠剤化の問題とは全く異なるものであった。さらに、このような膨張は、成分の分解などによる気体の発生を伴うものではなく、吸湿によるものでもなく、その原因を充分に解明することは非常に困難であった。
【0009】
高温保存条件下での膨張は、イブプロフェンとトラネキサム酸を同時に配合したときだけに起こり、それぞれを単一成分としたときには起こらないので、例えば、両方の成分を別々にした多層錠や有核錠にしてイブプロフェンとトラネキサム酸の接触を少なくすることも考えられる。しかし、多層錠や有核錠は製造が煩雑になり、それによるコスト増加、生産効率の低下が生じるだけでなく、各層の界面における膨張の問題が残るために必ずしも好ましい解決手段ということはできなかった。更に、糖衣やフィルムコーティング等の被覆により製剤の膨張を押え込むことも考えられるが、固形製剤の膨張の程度が大きく、糖衣やフィルムコーティングだけで防止することは困難であった。また、従来のように、イブプロフェンとトラネキサム酸を含む固形製剤を1〜25℃で保存することにより膨張を抑制するということもできるが、流通上や保管上や、さらに使用上の不便があった。
【0010】
本発明者らは、これらの問題を解決すべく固形製剤に配合されている全成分について詳細な検討を行ってきたところ、この問題がイブプロフェンとトラネキサム酸の2成分だけによるものではなく、イブプロフェン、トラネキサム酸、及びステアリン酸マグネシウムの3成分の組み合わせに起因するものであることを見出した。そして、さらに検討したところ、ステアリン酸マグネシウムに代えてステアリン酸カルシウムやステアリン酸アルミニウムを使用した場合も同様な膨張の問題が生じることがわかったが、意外なことにステアリン酸やケイ酸マグネシウムではこのような問題が生じないこともわかった。このことは、ステアリン酸自体にも問題は無く、またマグネシウムやカルシウムという金属イオン自体の問題でもなく、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸アルミニウムという化合物によるものであることが判明した。
【0011】
本発明者等は、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含む固形製剤を製造するに当たり、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸アルミニウムを組みあわせず、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を組みあわせて使用すれば、高温保存条件下の膨張の問題が生じない安定な固形製剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤であって、当該固形製剤がフマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有する固形製剤に関する。
【0013】
また、本発明は、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含む固形製剤であって、滑沢剤としてステアリン酸金属塩以外、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸アルミニウム以外の滑沢剤を使用したことを特徴とする固形製剤に関する。
【0014】
より詳細には、本発明は次の事項に関する。
(1) イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤であって、
フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有する固形製剤。
(2) フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有してなる、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤のための膨張抑制剤。
【0015】
さらに、本発明は次の事項にも関する。
(3) 固形製剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸アルミニウムを含有していない、(1)の固形製剤。
(4) 固形製剤が、錠剤である、(1)又は(3)の固形製剤。
(5)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸アルミニウムを含有していない固形製剤に使用するための、(2)の膨張抑制剤。
(6) 固形製剤が、錠剤である、(2)又は(5)の膨張抑制剤。
(7) フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有させる工程を含む、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤の膨張抑制方法。
(8) 固形製剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸アルミニウムを含有していない、(7)の方法。
(9) 固形製剤が、錠剤である、(7)又は(8)の方法。
(10) フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有させる工程を含む、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤の製造方法。
(11) 固形製剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸アルミニウムを含有していない、(10)の方法。
(12) 固形製剤が、錠剤である、(10)又は(11)の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高温保存条件下においてもイブプロフェン及びトラネキサム酸を含む固形製剤の膨張が抑制された安定な固形製剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の固形製剤は、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有するものであって、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有するものである。
【0018】
本発明の固形製剤に含まれるイブプロフェンは、イブプロフェンそのもののほか、その製薬上許容される塩(ナトリウム塩、カルシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;アルギニン塩、リジン塩等の有機酸塩等)も使用することができ、これらは市販のものを使用することができる。本発明の固形製剤中に含まれるイブプロフェンの割合は、特に限定されるものではないが、薬理効果の観点から、固形製剤全体に対して、イブプロフェンのフリー体換算で1〜70質量%が好ましく、5〜60質量%が更に好ましく、7〜50質量%が特に好ましい。
【0019】
本発明の固形製剤に含まれるトラネキサム酸は、トラネキサム酸そのもののほか、その製薬上許容される塩(カリウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;硫酸塩等の鉱酸塩等)も使用することができ、これらは市販のものを使用することができる。本発明の固形製剤中に含まれるトラネキサム酸の割合は、特に限定されるものではないが、薬理効果の観点から、固形製剤全体に対して、トラネキサム酸のフリー体換算で1〜70質量%が好ましく、5〜60質量%が更に好ましく、7〜50質量%が特に好ましい。
【0020】
本発明の固形製剤に含まれるフマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩において、フマル酸とエステルを形成するアルコールとしては、アルキル基又はアルケニル基を有するアルコールが挙げられ、具体的には炭素数1〜22(炭素数1〜22の直鎖状、又は炭素数3〜22の分岐状若しくは環状)のアルキル基、又は炭素数2〜22(炭素数2〜22の直鎖状、又は炭素数3〜22の分岐状若しくは環状)のアルケニル基を有するアルコールを意味し、アルキル基及びアルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、アリル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基、パルミチル基)、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、イソステアリル基、オレイル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基等が挙げられる。これらのアルコールとフマル酸のエステルである、フマル酸アルキル及びフマル酸アルケニルとして、例えば、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸イソプロピル、フマル酸シクロプロピル、フマル酸アリル、フマル酸ブチル、フマル酸ペンチル、フマル酸ヘキシル、フマル酸ヘプチル、フマル酸オクチル、フマル酸ノニル、フマル酸デシル、フマル酸イソデシル、フマル酸ウンデシル、フマル酸ドデシル(フマル酸ラウリル)、フマル酸トリデシル、フマル酸テトラデシル(フマル酸ミリスチル)、フマル酸ペンタデシル、フマル酸ヘキサデシル(フマル酸セチル、フマル酸パルミチル)、フマル酸ヘプタデシル、フマル酸オクタデシル(フマル酸ステアリル)、フマル酸イソステアリル、フマル酸オレイル、フマル酸ノナデシル、フマル酸エイコシル、フマル酸ベヘニル等が挙げられる。好ましいエステルとして、フマル酸オクタデシル(フマル酸ステアリル)を挙げることができる。
【0021】
フマル酸又はそのエステルの塩としては、具体的には製薬上許容される塩が挙げられ、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩やマンガン、鉄等の遷移金属塩等が挙げられる。好ましい塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩を挙げることができる。
【0022】
本発明の実施の態様において、好適に使用可能なフマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩として、具体的には、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フマル酸第一鉄、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられ、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウムをより好ましいものとして挙げることができ、特にフマル酸、フマル酸ステアリルナトリウムが好ましい。
【0023】
本発明の固形製剤中に含まれるフマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩の割合は、固形製剤全体に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
【0024】
本発明の固形製剤におけるイブプロフェンとトラネキサム酸の配合比は、イブプロフェン1質量部に対してトラネキサム酸0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜2.5質量部が更に好ましい。なお、本発明の固形製剤の投与量は、経口投与の場合、1日投与量として、イブプロフェンとして300〜600mgが好ましく、トラネキサム酸として1日あたり400〜750mgが好ましい。
【0025】
好適な実施の態様において、本発明の固形製剤は、高温での保存時における固形製剤の膨張の原因となるステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸アルミニウムを含有せず、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有するものである。さらに、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有し、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸アルミニウムを実質的に含有しないことによって、高温での保存時の膨張が抑制された固形製剤もまた、本発明に含まれる。
【0026】
本発明の固形製剤は、イブプロフェンとトラネキサム酸以外の薬物、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含んでいても良い。
【0027】
解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、ラクチルフェネチジン、サリチル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、アゼラスチン塩酸塩、イソチペンジル塩酸塩、クレマスチンフマル酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェテロール塩酸塩、トリプロリジン塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、トンジルアミン塩酸塩、フェネタジン塩酸塩、メトジラジン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩、カルビノキサミンジフェニルジスルホン酸塩、アリメマジン酒石酸塩、ジフェンヒドラミンタンニン酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、メブヒドロリンナパジシル酸塩、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、 dl−クロルフェニラミンマレイン酸塩、d−クロルフェニラミンマレイン酸、メキタジン、ジフェテロールリン酸塩等が挙げられる。
【0029】
鎮咳剤としては、例えば、アロクラミド塩酸塩、クロペラスチン塩酸塩、カルベタペンタンクエン酸塩、チペピジンクエン酸塩、ジブナートナトリウム、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、チペピジンヒベンズ酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩、コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩等が挙げられる。
【0030】
ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン塩酸塩、ノスカピン等が挙げられる。
【0031】
気管支拡張剤としては、例えば、dl−メチルエフェドリン塩酸塩、 dl−メチルエフェドリンサッカリン塩等が挙げられる。
【0032】
去痰剤としては、例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、ブロムヘキシン塩酸塩、アンブロキソール塩酸塩、カルボシステイン等が挙げられる。
【0033】
催眠鎮静剤としては、例えば、ブロムワレリル尿素やアリルイソプロピルアセチル尿素等が挙げられる。
【0034】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等が挙げられる。
【0035】
抗炎症剤としては、例えば、塩化リゾチーム、セラプターゼ、グリチルリチン酸及びその類縁物質等が挙げられる。
【0036】
胃粘膜保護剤としては、例えば、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩(アルミニウムグリシネート)、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0037】
生薬類としては、例えば、オキソアミヂン(ニンニク加工物)、マオウ(麻黄)、ナンテンジツ(南天実)、オウヒ(桜皮)、オンジ(遠志)、カンゾウ(甘草)、キキョウ(桔梗根)、シャゼンシ(車前子)、シャゼンソウ(車前草)、セキサン(石蒜)、セネガ、バイモ(貝母)、ウイキョウ(茴香)、オウバク(黄柏)、オウレン(黄連)、ガジュツ、カミツレ、ケイヒ(桂皮)、ゲンチアナ、ゴオウ(牛黄)、獣胆(ユウタン(熊胆)を含む)、シャジン(沙参)、ショウキョウ(生姜)、ソウジュツ(蒼朮)、チョウジ(丁子)、チンピ(陳皮)、ビャクジュツ(白朮)、ジリュウ(地竜)、チクセツニンジン(竹節人参)、ニンジン(人参)等が挙げられる。
【0038】
漢方処方としては、例えば、葛根湯、桂枝湯、香蘇散、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯等が挙げられる。
【0039】
カフェイン類としては、例えば、無水カフェインや、カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等が挙げられる。
【0040】
本発明の固形製剤は、本発明の効果を妨げない範囲内で、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸アルミニウム以外の添加物(賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等)をさらに含んでいても良い。
【0041】
賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、蔗糖、マンニトール等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸、シリカ、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、ワックス(カルナウバロウ、木蝋(ハゼ蝋、ウルシ蝋)、カスターワックスなどの植物由来ワックス、ミツロウ、サラシミツロウ、鯨ロウ、精製ラノリンなどの動物由来ワックス、パラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどの石油由来ワックス、モンタンワックス、精製モンタンワックスなどの鉱物由来ワックス等の天然ワックスや合成ワックス等)、水素化植物油類、マクロゴール類、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0042】
本発明の効果が得られる固形製剤の剤形としては、例えば、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、散剤等が挙げられ、特に錠剤が好ましい。固形製剤は糖衣やフィルムコーティング等により被覆されていても良い。
【0043】
本発明の固形製剤は常法に従って製造することができる。例えば剤形が錠剤である場合、イブプロフェン、トラネキサム酸、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩、錠剤の製造に通常用いられる各種添加物、及び所望により各種薬物を用いて、常法に従って、混合又は造粒し、打錠することで、本発明の固形製剤を製造することができる。また、イブプロフェン、トラネキサム酸、フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩錠剤の製造に通常用いられる各種添加物、及び所望により各種薬物を用いて、常法に従って、イブプロフェンとトラネキサム酸を分けて造粒し、混合して打錠することで、本発明の固形製剤を製造することができる。フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩は、錠剤の製造に際して、適当な工程で含有させることができる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
[参考例1]
イブプロフェン900g(米沢浜理製:商品名 日本薬局方イブプロフェン)、トラネキサム酸840g(第一ファルマテック製:商品名 日本薬局方トラネキサム酸)、ヒドロキシプロピルセルロース96g、結晶セルロース1104g、クロスカルメロースナトリウム200gを高速攪拌造粒機(深江工業製:FS−10型)に投入して混合後、精製水1000gを添加して練合した。この造粒物を流動層乾燥機(フロイント産業製:FLO−5型)に投入して乾燥後、整粒機(岡田精工製:ND−10型)を用いて整粒した。この整粒物3140g及びステアリン酸マグネシウム40gを混合機(コトブキ製:PM50型)に投入して混合した後、直径8.5mmの杵を取り付けた打錠機(畑鉄工所製:HT−AP18SS型)を用いて打錠し、1錠の質量が265mgの錠剤12000錠を得た。
[参考例2]
参考例1のステアリン酸マグネシウムを配合しない代わりにステアリン酸カルシウム40gを配合し、その他は参考例1と同様にして錠剤を得た。
[参考例3]
参考例1のステアリン酸マグネシウムを配合しない代わりにステアリン酸アルミニウム40gを配合し、その他は参考例1と同様にして錠剤を得た。
[参考例4]
参考例1のステアリン酸マグネシウムを配合しない代わりにステアリン酸60gを配合し、結晶セルロースを1084gとし、その他は参考例1と同様にして錠剤を得た。
【0046】
[試験例1]
膨張の評価
参考例1〜4で製造した錠剤を6錠ずつガラス瓶(5K規格)に入れ、密栓をした後、60℃の恒温容器に3日間保存した。デジタルマイクロメーターで測定した製造直後の錠剤の厚みと保存後の錠剤の厚みから、以下の式(1)で定義される膨張率(%)を算出した。
膨張率(%) = (D−D)/D × 100 (1)
式中、Dは保存後の錠剤の厚みであり、Dは製造直後の錠剤の厚みである。
参考例1〜4で得られた錠剤6錠あたりの処方(単位:mg/6錠)と、試験結果を次の表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有し、ステアリン酸マグネシウム(参考例1)、ステアリン酸カルシウム(参考例2)またはステアリン酸アルミニウム(参考例3))を含有する錠剤の60℃3日間保存後の膨張率は、参考例1が32%、参考例2が26%、参考例3が30%と大きい膨張率を認めた。また、これらの錠剤は、膨張率が大きいため、脆くなり、錠剤の割れや欠けが生じやすかった。一方、ステアリン酸を含有する錠剤の膨張率は6%と極めて小さかった。
【0049】
[実施例1]
イブプロフェン1350g(米沢浜理製:商品名 日本薬局方イブプロフェン)、トラネキサム酸1260g(第一三共プロファーマ製:商品名 日本薬局方トラネキサム酸)、ヒドロキシプロピルセルロース145.8g、クロスカルメロースナトリウム486g、D−マンニトール1521gを高速攪拌造粒機(深江工業製:FS−10型)に投入して混合後、精製水466gを添加して練合した。この造粒物を流動層乾燥機(フロイント産業製:FLO−5型)に投入して乾燥後、整粒機(岡田精工製:ND−10型)を用いて整粒した。この整粒物4762.8g及びフマル酸ステアリルナトリウム97.2g(JRS PHARMA社製:商品名 プルーブ)を混合機(コトブキ製:PM50型)に投入して混合した後、直径8.5mmの杵を取り付けた打錠機(畑鉄工所製:HT−AP18SS型)を用いて打錠し、1錠の質量が270mgの錠剤18000錠を得た。
【0050】
[比較例1]
実施例1のフマル酸ステアリルナトリウムを配合しない代わりにステアリン酸マグネシウム(太平化学製:商品名 ステアリン酸マグネシウム植物性)97.2gを追加で配合し、その他は実施例1と同様にして錠剤を得た。
【0051】
[比較例2]
実施例1のフマル酸ステアリルナトリウムを配合しない代わりにステアリン酸カルシウム(太平化学製:商品名 ステアリン酸カルシウム植物性)97.2gを追加で配合し、その他は実施例1と同様にして錠剤を得た。
【0052】
[試験例2]
膨張の評価
実施例1、比較例1及び2で製造した錠剤を1錠ずつガラス瓶(2K規格)に入れ、密栓をした後、50℃の恒温容器に2週間、60℃の恒温容器に1日間保存した。試験例1と同様に膨張率(%)を算出した。
実施例1、比較例1及び2で得られた錠剤1錠あたりの処方(単位:mg/錠)と、試験結果を次の表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
ステアリン酸マグネシウムを配合した製剤(比較例1)では、60℃1日間、50℃2週間保存後の膨張率はそれぞれ22.8%、29.6%と高い膨張率を認めた。また、ステアリン酸カルシウムを配合した製剤(比較例2)では、60℃1日間、50℃2週間保存後の膨張率はそれぞれ20.9%、19.8%と高い膨張率を認めた。その一方で、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有し、フマル酸ステアリルナトリウムを含有する本発明の固形製剤(実施例1)は、60℃1日間保存後の膨張率は2.6%、50℃2週間保存後の膨張率は2.1%と極めて小さく、顕著な膨張抑制効果を認めた。
また、比較例1及び2は膨張率が大きいため、脆くなり、錠剤の割れや欠けが生じやすかったが、本発明の固形製剤(実施例1)は、上記のような苛酷な高温条件での保存後でも錠剤の割れや欠けが認められず、安定な錠剤であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、高温で保存しても膨張が生じない安定なイブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤を提供するものである。イブプロフェンとトラネキサム酸を含有する製剤は、これらの成分が有する薬効のみではなく、薬効増強や副作用低減といった付加的な効果を得られることが知られている。従って、本発明は有用な医薬製剤を安定な剤形で提供することを可能とし、さらに長期間の保存や通常の気候条件での安全な流通を可能とするものであり、産業上も極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤であって、
フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有する固形製剤。
【請求項2】
フマル酸若しくはそのエステル又はそれらの塩を含有してなる、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤のための膨張抑制剤。

【公開番号】特開2009−179613(P2009−179613A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21189(P2008−21189)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】