説明

イミダゾ[1,2−f]フェナントリジンイリジウム錯体に基づく高い効率を有する青色発光体

イミダゾ[1,2−f]フェナントリジン化合物を提供する。この化合物は、ねじれたアリール部分であって、4個以上の原子を有するアルキルによってさらに置換されている部分を有する。この化合物は、有機発光素子において、特に発光ドーパントとして利用することができ、改良された効率、安定性、および生産性を有する素子をもたらす。特に、本明細書に記載の化合物は、高い効率を有する青色素子に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年12月12日に出願した米国仮出願番号No.61/122,259号に対する優先権を主張し、その出願の開示はその全体を参照により本明細書に明示して援用する。
【0002】
この特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサルディスプレイコーポレーションの1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
本発明は、有機発光デバイス(OLED)に関し、より詳細には、このようなデバイスに用いる有機燐光材料に関する。より詳細には、本発明は、イミダゾ[1,2−f]フェナントリジン化合物、およびこれらの化合物を含有するデバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対してコスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0006】
燐光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)で表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは下記の構造を有する。
【化1】

【0008】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0009】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0011】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0012】
配位子が発光物質の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変えうる。
【0013】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップの近くに現れる。
【0014】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0015】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
下記式を有する化合物を提供する。
【化2】

およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択され、RおよびRの少なくとも1つは、4個以上の原子を有するアルキルである。R、R、およびRは、モノ-、ジ-、トリ-、またはテトラ置換基を表す。R、R、およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択される。1つの側面では、RおよびRは同じである。別の側面では、RおよびRは異なる。さらに別の側面では、RおよびRはアリールである。
【0019】
前記4個以上の原子を有するアルキルは、分岐状アルキル、環式アルキル、二環式アルキル、または多環式アルキルであってよい。
【0020】
1つの側面では、前記4個以上の原子を有するアルキルは、全て炭素原子を有するアルキルであってよい。別の態様では、前記4個以上の原子を有するアルキルは、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子の少なくとも1個をさらに有する置換アルキルであってよい。
【0021】
この化合物は、下記式:
【化3】

を有することができる。
【0022】
この化合物の具体的な例を、化合物1〜36を含むものとして示す。この化合物は、化合物1または化合物2であることが好ましい。
【0023】
加えて、配位子を含む化合物を提供する。この配位子は、下記式を有する。
【化4】

およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択され、RおよびRの少なくとも1つは、4個以上の原子を有するアルキルである。R、R、およびRは、モノ-、ジ-、トリ-、またはテトラ置換基を表す。R、R、およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択される。
【0024】
有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、およびそのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含む。さらに、この有機層は式Iを有する化合物を含む。好ましくは、この有機層は発光層であり、ホストおよび発光ドーパントを含み、式Iを有する化合物は、発光ドーパントである。
【0025】
さらに、消費者製品も提供する。この製品は、アノード、カソード、およびそのアノードとカソードとの間に配置された有機層を含み、さらに、この有機層は式Iを有する化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、有機発光デバイスを示す。
【図2】図2は、別個の電子輸送層を持たない倒置型有機発光デバイスを示す。
【図3】図3は、イミダゾ[1,2−f]フェナントリジン化合物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらに電気的に結合された少なくとも1つの有機層を含む。電流を流した場合、その有機層(1又は複数)に、アノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔及び電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。同じ分子上に電子と正孔とが局在した場合、「励起子」(これは励起エネルギー状態を有する局在化した電子-正孔対である)が形成される。励起子が発光機構によって緩和する時に、光が発せられる。いくらかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非発光機構、例えば熱緩和も起こりうるが、一般的には望ましくないと考えられる。
【0028】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0029】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)(“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279, 704号明細書の第5〜6欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0030】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0031】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材とアノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F4-TCNQでドープしたm-MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報により詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0032】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0033】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省かれうる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、またはより一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0034】
具体的に記載されていない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように、積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0035】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての堆積、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0036】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0037】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0038】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0039】
イミダゾ[1,2−f]フェナントリジン(以下、「イミダゾフェナントリジン」と称する)化合物であって、ねじれたアリール部分を有し、このアリール部分が4個以上の原子を有するアルキルによってさらに置換されている化合物を提供する。図3に、このような置換イミダゾフェナントリジン化合物の構造を示す。これらの化合物を、燐光性有機発光デバイスに使用して、高い効率、高い安定性、長い寿命、改良された生産性、および改良された色を得ることができる。具体的には、イミダゾ[1,2−f]フェナントリジンイリジウム錯体であって、ねじれたアリール部分を有し、このアリール部分が嵩高いアルキル基(すなわち、4個以上の原子を有するアルキル基)によってさらに置換されている錯体を発光材料として含む燐光性有機発光素子は、嵩高いアルキルで置換されたねじれたアリール基を有さない発光材料を含むデバイスより、顕著に高い効率を有し得る。これらの化合物は、カラーOLCDおよび白色OLCDにおいて、燐光発光ドーパントとして使用することができる。特に、これらの化合物を、高効率青色燐光OLCDにおける発光ドーパントとして使用することができる。青色発光デバイスにおける使用に適したドーパント材料、例えば、本明細書において提供する置換イミダゾフェナントリジン化合物の開発が、特に望ましい。
【0040】
本イミダゾ[1,2−f]フェナントリジンイリジウム錯体は、ねじれたアリール部分を有し、このアリール部分はその2位および/またはn位が4個以上の原子を有するアルキルによってさらに置換されている。ここで、nは、アリール部分内の原子の数であり、イミダゾールに連結したアリール部分内の原子は、1位の原子である。嵩高いアルキル基を有するこれらの化合物は、高い光発光(PL)効率および高い電解発光(EL)効率を有し得る。理論に拘束されないが、ねじれたアリール上の嵩高いアルキル置換基によって、とりわけ自己消光相互作用に敏感なイミダゾールの立体的な保護がもたらされると考えられる。イミダゾールは、その極性が高い性質に起因して層状に積み重なる傾向があり、このイミダゾール環の積層により、錯体の活性化状態が自己消光経由で容易に失活され得る。化合物のねじれたアリール部分上に存在する嵩高いアルキル置換基は、イミダゾール環が積み重なることを防止し、それによって自己消光を阻害すると考えられる。特に、4個以上の原子を有する、2位、n位のアルキル基の三次元的配置が、特に良好にイミダゾールへテロ環を保護する。加えて、2位、n位の嵩高いアルキル置換基によってもたらされる立体的な保護によって、高められた量子収率がその後もたらされ得る。したがって、アリールに嵩高いアルキル基を付加することによって、デバイスの効率およびデバイスの寿命が向上し得る。
【0041】
置換イミダゾフェナントリジン化合物およびそのOLEDにおける使用は知られているが、これらの化合物を含むデバイスにはいくつかの問題が伴う場合がある。例えば、表2に示すとおり、イミダゾフェナントリジンの2位をアルキル基で置換すると(例えば比較例1)、高いPLおよびEL効率が得られるが、寿命が短い。別の例は、イミダゾフェナントリジンの3位のねじれたアリールであって、嵩高さがより少ないRおよびR(例えば、1個、2個、または3個の原子を含むアルキル)を有するもの(例えば比較例2)は、デバイスの寿命が増加し得るが、PL効率が低く、結果として低いデバイス効率が得られる。したがって、高いデバイス効率および高いデバイス寿命をもたらすことができるドーパントを開発することが望ましい。
【0042】
効率を高め、かつ、寿命を維持するために、嵩高いアルキル基が、イミダゾフェナントリジン化合物のねじれたアリール部分の2位および/またはn位に付加した化合物を合成した。アルキル基の大きさ(すなわち、4個以上の原子を有する嵩高いアルキル)と、置換位置(すなわち、ねじれたアリール部分の2位および/またはn位)との両方が、本明細書により提供する化合物の有利な特性に重要であると考えられる。上述により議論したとおり、嵩高いアルキル基によって、量子収率が高まり、高い効率がもたらされ得、これはおそらくイミダゾールの立体的な保護に起因する。この嵩高いアルキル置換基は、イミダゾールを、酸素と反応すること(すなわち、量子収率を低下させる経路)から保護することによって、改善された発光量子収率ももたらし得る。再び、嵩高いアルキルの位置が、高められた量子収率を得るために重要であると考えられる。例えば、イミダゾフェナントリジン化合物上の別の位置に嵩高いアルキル置換基を有する化合物は、同じELおよびELを示し得ない(表2の比較例3を参照)。さらに、本明細書により提供する化合物は、長い寿命を有するデバイスをもたらし得る。例えば、本発明の化合物(例えば、化合物1および2)のデバイス寿命は、嵩高いアルキルで置換されたねじれたアリールを有さない他のイミダゾフェナントリジン化合物のデバイス寿命より顕著に長くなり得る(表2を参照)。加えて、2位およびn位の特定の嵩高いアルキル基によって、より高純度の昇華を行うことができ、したがって、デバイスの性能および加工性が向上する。
【0043】
およびRが同じではないが、RおよびRの少なくとも1つが4個以上の原子を有するアルキルである不斉化合物も提供する。これらの不斉化合物により、改善された寿命および効率と共にいくつかの追加的な利益がもたらされる。例えば、不斉化合物により、昇華および加工のための利点がもたらされ得る。不斉化合物は、上述により議論した対称な化合物の利点を維持し、かつ、より嵩高さが少ない置換基(例えば、水素、3個以下の原子を有するアルキル)をもう一方のRおよびRに有することの利益をさらに有し得る。嵩高さが少ない置換基1個と、嵩高い置換基もう1個とを有することによって、これらの化合物は、高い発光量子収率の利益を保持しながら、より小さい分子量を有することができ、したがってより低い昇華温度を有することとなることが期待され得る。このため、不斉化合物は、デバイスの寿命およびデバイスの安定性において有利な特性を有する発光ドーパントの特性を、さらに調整する手段を提供する可能性がある。
【0044】
加えて、本明細書において提供する、4個以上の原子を有するアルキルでさらに置換されたねじれたアリールを有するイミダゾフェナントリジン化合物の合成方法では、たった1つの中間体だけが関与する。したがって、これらの化合物の合成は、生成物を得るためにより多くの工程およびより多くの中間体が必要となる他の化合物の合成と比較して、有利であり得る。
【0045】
イミダゾ[1,2−f]フェナントリジン化合物を提供する。この化合物は、OLCDにおいて有利に使用することができ、以下の式を有する。
【化5】

式中、RおよびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択され、RおよびRの少なくとも1つは、4個以上の原子を有するアルキルである。R、R、およびRは、モノ-、ジ-、トリ-、またはテトラ置換基を表す。R、R、およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択される。1つの側面では、RおよびRは同じである。別の側面では、RおよびRは異なる。さらに別の側面では、RおよびRはアリールである。
【0046】
一つの側面では、4個以上の原子を有するアルキルは、分岐状アルキルである。前記4個以上の原子を有する分岐状アルキル置換基は、追加的な嵩高さ(すなわち、より多い原子)を備え、これによって嵩高いアルキル置換基によってもたらされる立体的な保護を高め、量子収率を高めることによって、イミダゾール環の積み重なりをさらに防止することができる。別の側面では、4個以上の原子を有するアルキルは、環式アルキルである。特に、環式アルキルは、二環式アルキルであっても、多環式アルキルであってもよい。同様に、環式、二環式、および/または多環式アルキルがRおよびRに存在すると、高められた嵩高さおよびより大きな立体的保護がもたらされ、これによって量子収率が高められ得る。
【0047】
1つの側面では、4個以上の原子を有するアルキルは、炭素原子のみを有する。別の側面では、4個以上の原子を有するアルキルは、ヘテロアルキルである。本明細書において用語「ヘテロアルキル」は、4個以上の原子を有するアルキルであって、これらの原子の少なくとも1個が一般的に用いられるヘテロ原子であるアルキルを指す。本明細書において用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の原子を指し、これらだけに限定されないが、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、砒素、塩素、臭素、ケイ素、およびフッ素を含む。ヘテロアルキルは酸素原子を含むことが好ましい。ヘテロアルキル置換基は、電子吸引基として機能し、これによってLUMO準位が低下し(すなわち、電子安定性が高まり)、デバイスの安定性が向上する。さらに、標準的な計算に基づくと、ヘテロアリールにより、化合物の赤方偏移の最小化がもたらされ得る。こうして、これらの化合物により、良好な青色発光と共に、向上した安定性、寿命、および加工性がもたらされる。
【0048】
1つの側面では、化合物は以下の式を有する。
【化6】

【0049】
本化合物の具体例には、以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【化7A】

【化7B】

【化7C】

【化7D】

【0050】
より好ましくは、本化合物は、化合物1および化合物2からなる群から選択される。
【0051】
配位子を有する化合物も提供する。この配位子は、下記式を有する。
【化8】

およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択され、RおよびRの少なくとも1つは、4個以上の原子を有するアルキルである。R、R、およびRは、モノ-、ジ-、トリ-、またはテトラ置換基を表す。R、R、およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択される。点線は、廃止と金属との結合を表す。40より高い原子番号を有する非放射性金属からなる金属が、錯体に用いるために好適であり得る。例えば、錯体は、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、およびAuからなる群から選択される金属を含んでいて良い。好ましくは、金属はIrである。さらに、この配位子を含む錯体は、ホモレプティック錯体であってもヘテロレプティック錯体であってもよい。好ましくは、配位子を有する錯体は、トリスIr錯体である。
【0052】
加えて、有機発光デバイスも提供する。このデバイスは、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に配置された有機発光層を含んでいてよい。さらに、この有機発光層は、式Iを有する化合物を含む。好ましくは、有機層は、以下のものからなる群から選択される化合物を含む。
【化9A】

【化9B】

【化9C】

【0053】
より好ましくは、有機層は、化合物1および化合物2からなる群から選択される化合物を含む。これらの化合物を含むデバイスは、特に良好な特性、例えば、高い効率および長い寿命などを有することが判明した。
【0054】
有機層は、式Iを有する化合物が発光化合物である発光層であってよい。この有機発光層は、ホストをさらに含んでいてよい。好ましくは、ホストは以下の構造を有する。
【化10】

式中、R〜Rは、任意のアルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリールキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリール、および水素からなる群から独立に選択される。ここで、R〜Rのそれぞれは、多数の置換基を表すことができる。
【0055】
デバイスを含む消費者製品も提供する。このデバイスは、アノード、カソード、および有機層を含んでいてよい。さらに、この有機発光層は、式Iを有する化合物を含む。
【0056】
有機発光デバイスの特定の層に有用であるとして本明細書に記載した材料は、そのデバイスに存在する広範囲のその他の材料と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書で開示する発光ドーパントは、存在してもよい幅広い種類のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いてもよい。記載した又は以下で参照する物質は、本明細書に開示した化合物と組み合わせて有用でありうる材料の非限定的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の材料を特定するために文献を容易に閲覧することができる。
【0057】
本明細書に開示した物質に加えて及び/又はそれらと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質をOLEDに用いることができる。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLEDに用いることができる物質の非限定的な例を下の表1に列挙する。表1は、物質の非限定的な群、各群に対する化合物の非限定的な例、及びその物質を開示している参考文献を挙げている。
【0058】
【表1A】

【0059】
【表1B】

【0060】
【表1C】

【0061】
【表1D】

【0062】
【表1E】

【0063】
【表1F】

【0064】
【表1G】

【0065】
【表1H】

【0066】
【表1I】

【0067】
【表1J】

【0068】
【表1K】

【0069】
【表1L】

【0070】
【表1M】

【実施例】
【0071】
<化合物の実施例>
[比較例2の合成]
(工程1)
【化11】

【0072】
機械的撹拌機、凝縮器、および熱伝対を備えた1000 mLの3つ口フラスコに、THF中2.0 Mのリチウムジイソプピルアミド(LDA)を入れた。
【0073】
この溶液を-75℃に冷却した。ついで、200 mLの無水THF中に溶解させた1,3-ジブロモベンゼン(39.3 g、0.167 mol)を、LDAの冷却した溶液に、0.5時間かけて滴下により添加した。内温を、-75℃(±5℃)にて2時間保持した。ついで、50 mLの無水THFに溶解させたジメチルホルムアミド(30.8 g、0.4 mol)を、冷却した反応混合物に、0.5時間かけて滴下により添加した。内温を-75℃(±5℃)にて2時間保持した。この反応混合物の反応を、5%硫酸100 mLを滴下により添加することによって停止させた。冷却浴を取り外し、反応混合物を室温に戻るようにさせた。有機相を分離し、水性相をジエチルエーテル1 x 100 mLおよび酢酸エチル1 x 50 mLで抽出した。有機相をあわせ、塩水1 x 100 mLで洗浄した。有機抽出物を、ついで、硫酸ナトリウムで無水にし、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をヘキサンから再結晶させて、21.6 gの生成物を得た(収率49%)。
(工程2)
【化12】

【0074】
(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロライド(34.3 g、0.10 mol)を500 mLの3つ口フラスコに、75 mLのTHFと共に入れた。この溶液を-78℃に冷却し、次いで、THF中1.0 Mのリチウムビス(トリメチルシリル)アミド100 mL(0.1 mol)を、滴下により添加した。添加時間は約20分間であり、内温は-78℃〜-70℃に保持した。次いで、この冷却浴を取り外し、反応混合物を0〜3℃に戻るようにさせた。次いで、この反応混合物を再び-78℃に冷却した。次いで、75 mLのTHFに溶解させた2,6-ジブロモベンズアルデヒド(22.8 g、0.086 mol)を、冷却した反応混合物に、20分間かけて滴下により添加した。内温は、-78℃〜-70℃に保持した。次いで、反応混合物を室温に徐々に戻るようにさせた。この反応混合物の反応を、塩化アンモニウム水溶液を滴下することによって停止させ、酢酸エチル3 x 300 mLで抽出した。有機抽出物を合わせ、200 mLの10% LiCl溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで無水にした。次いで、抽出物を、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を真空下で除去した。この粗生成物を真空蒸留によって精製して、薄い橙色オイルとして生成物22.5 gを得た(収率90%)。
【0075】
(工程3)
【化13】

【0076】
70 mLの濃HClを、110 mLの水を入れた500 mLの丸底フラスコに徐々に添加した。0-メチル2,6-ジブロモフェニルアセトアルデヒド(22.5 g、0.077 mol)を、70 mLの1,4-ジオキサンに溶解させ、この溶液を、先の500 mLの丸底フラスコに、一度に入れた。この反応混合物を撹拌し、穏やかに還流する温度にて18時間加熱した。この反応混合物を、室温に冷却し、酢酸エチル2 x 400mLで抽出した。抽出液をあわせ、10% LiCl水溶液1 x 100 mLで洗浄した。次いで、抽出液を、硫酸ナトリウムで無水にし、ろ過し、真空下で溶媒を除去した。この2,6-ジブロモフェニルアセトアルデヒドを、シリカゲルクロマトグラフィーを用い、溶出液として15%/75%塩化メチレン/へキサンを使用して精製した。17.1 gの白色固体が、生成物として得られた(収率80%)。
【0077】
(工程4)
【化14】

【0078】
200 mLの丸底フラスコに、3.75 g(0.0013mol)の2,6-ジブルモフェニルアセトアルデヒド、30 mLの塩化メチレン、および60 mLの1,4-ジオキサンを添加した。次いで、2.32 g(0.014 mol)の臭素を、30 mLの塩化メチレンに溶解させ、反応混合物に、室温で10分間かけて滴下により添加した。撹拌を、室温で2時間継続させた。追加の臭素(0.23 g、0.001 mol)を、反応混合物に添加した。この混合物を、室温で1時間撹拌した。混合物を、真空下で濃縮した。次いで、粗生成物を、50 mLのジエチルエーテルに溶解させ、重硫酸ナトリウム水溶液1 x 50 mLおよび10%塩化リチウム水溶液1 x 50 mLで洗浄した。エーテル抽出液を硫酸ナトリウムで無水にした後、ろ過し、真空下で溶媒を除去して、4.2 gの黄色の粘性のあるオイルを生成物として得た(収率90%)。これを直ちに次の工程に用いた。
【0079】
(工程5)
【化15】

【0080】
1 Lの3つ口フラスコに、19 g(0.11 mol)の2-ブロモアニリン、27.7 g(0.12 mol)の2-シアノフェニルボロン酸ピナコールエステル、74.5 g(0.32 mol)の三塩基性リン酸カリウム一水和物、および1.8 g(0.002 mol)の1,1-ビス[(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロ-パラジウム(II)の塩化メチレンとの錯体(1:1)を添加した。この混合物を、脱気し、窒素で再び満たした。次いで、水(13 mL)および350 mLの1,4-ジオキサンを、この反応混合物に添加し、脱気操作を繰り返した。反応混合物を撹拌し、窒素下で18時間加熱還流させた。冷却後、反応混合物を350 mLの水で希釈いた。この反応混合物を、3 x 250 mLの酢酸エチルで抽出した。抽出液を合わせ、硫酸マグネシウムで無水にした。抽出液をろ過し、溶媒を真空下で除去した。粗生成物をヘキサン/酢酸エチル混合物で結晶化して取り出した。灰白色固体がろ過によって単離された。
【0081】
(工程6)
【化16】

【0082】
200 mLの丸底フラスコに、0.77 g(0.004 mol)の6-アミノフェナントリジンおよび50 mLの無水2-プロパノールを装填した。この混合物に、1.42 g(0.004 mol)のα-ブロモ-2,6-ジブロモフェニルアセトアルデヒドを一度に添加した。次いで、この混合物を、24時間加熱還流させた。次いで、反応混合物を、60℃に冷却し、0.67 (0.008 mol)gの重炭酸ナトリウムを一度に添加した。次いで、この混合物を24時間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、300 mLの水で希釈した後、酢酸エチル3 x 200 mLで抽出した。有機抽出液を合わせ、10% LiCl水溶液1 x 100 mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで無水にした後、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1〜7%の酢酸エチル/塩化メチレン)によって精製して、1 gの灰白色固体を得た(収率55%)。
【0083】
(工程7)
【化17】

【0084】
200 mLの丸底フラスコに、工程6からのジブロマイド(2.34 g、5.175 mmol)、イソプロピルボロン酸ピナコールエステル(10.44 g、62.1 mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.17 g、0.76 mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(0.62 g、1.52 mmol)、三塩基性リン酸カリウム一水和物(5.96 g、25.88 mmol)、122 mLのトルエン、および122 mLの水を添加した。反応混合物を、凍結融解ポンプ技術によって十分に脱気した。この反応混合物を、加熱還流させ、窒素雰囲気下で16時間撹拌した。反応混合物を、セライト層を通してろ過した。トルエン相を分離し、水性相を75 mLのトルエンで1回抽出した。トルエン抽出液を合わせ、硫酸ナトリウムで無水にした後、ろ過し、真空下で濃縮した。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用い、1〜8%の酢酸エチル/塩化メチレンを溶出液として使用して精製して、生成物1.7 gを得た(収率87%)。
【0085】
(工程8)
【化18】

【0086】
2,6-ジイソプロペニルイミダゾフェナントリジン(1.7 g、4.6 mmol)を、75 mLのトルエンに溶解させた。この溶液を、N2でパージされ、1.5 gのクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)が入ったパーの水素添加容器に添加した。この容器を、パーの水素添加装置に設置し、容器に水素を充填し、脱気した(合計3回繰り返した)。次いで、この容器を45 psiの水素で満たした。この混合物を、振とうしながら21時間反応させた。溶媒を、真空下、反応混合物から除去した。粗生成物を、シリカゲルカラムを用い、1〜8%の酢酸エチル/塩化メチレンを溶出液として使用してクロマトグラフを行って精製して、生成物1.65 gを得た。
【0087】
(工程9)
【化19】

【0088】
50 mLのシュレンク管に、工程8からの配位子(1.47 g、3.88 mmol)、Ir(acac)3(0.38 g、0.78 mmol)、およびトリデカン(50滴)を添加した。この混合物を脱気し、窒素下で撹拌しながら、砂浴中、240℃〜250℃で66時間加熱した。冷却後、反応混合物を溶媒混合物(CH2Cl2:ヘキサン= 1 : 1)に溶解させ、1 : 1のCH2Cl2:ヘキサンを溶出液として用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけた。カラムクロマトグラフィー後の固体を、CH2Cl2とメタノールとの混合液から再結晶させて生成物0.65 gを得た(65%)。
【0089】
[化合物1の合成]
【化20】

【0090】
工程1:200 mLのフラスコに、ジブロマイド(1.0 g, 2.2 mmol)、イソブチルボロン酸(2.7 g、26.5 mmol)、Pd2(dba)3 (0.15 g, 0.16 mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニル (0.27 g, 0.65 mmol)、三塩基性リン酸カリウム一水和物 (8.7 g, 37.58 mmol)、および100 mLのトルエンを添加した。この反応混合物を、凍結融解ポンプ技術によって十分に脱気した。この反応混合物を、加熱還流させ、窒素雰囲気下で16時間撹拌した。反応混合物を、セライト層を通してろ過した。トルエン相を分離し、水性相を75 mLのトルエンで1回抽出した。トルエン抽出液を合わせ、硫酸ナトリウムで無水にした後、ろ過し、真空下で濃縮した。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用い、1〜8%の酢酸エチル/塩化メチレンを溶出液として使用して精製して、生成物0.76 gを得た(収率84%)。
【0091】
【化21】

【0092】
工程2:50 mLのシュレンク管に、上記配位子(2.8 g、6.89 mmol)、Ir(acac)3(0.68 g、1.38 mmol)、およびトリデカン(50滴)を添加した。この混合物を脱気し、窒素下で撹拌しながら、砂浴中、240℃〜250℃で73時間加熱した。冷却後、反応混合物を溶媒混合物(CH2Cl2:ヘキサン= 1 : 1)に溶解させ、1 : 1のCH2Cl2:ヘキサンを溶出液として用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけた。カラムクロマトグラフィー後の固体を、CH2Cl2とメタノールとの混合液から再結晶させて生成物1.69 gを得た(87%)。
【0093】
[化合物2の合成]
【化22】

【0094】
工程1:200 mLのフラスコに、ジブロマイド(4 g, 8.84 mmol)、1-シクロヘキセンボロン酸ピナコールエステル(18.37 g, 88.27 mmol)、Pd(OAc)2(1.98 g, 2.9 mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニル(2.4 g , 5.83 mmol)、三塩基性リン酸カリウム一水和物(10.18 g, 44.23 mmol)、100 mLのトルエン、および100 mLの水を添加した。この反応混合物を、凍結融解ポンプ技術によって十分に脱気した。この反応混合物を、加熱還流させて窒素雰囲気下で16時間撹拌した。反応混合物を、セライト層を通してろ過した。トルエン相を濾液から分離した。水性相を75 mLのトルエンで抽出した。トルエン抽出液を合わせ、硫酸ナトリウムで無水にした後、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用い、1〜4%の酢酸エチル/塩化メチレンを溶出液として使用して精製して、生成物3.2 gを得た。
【0095】
【化23】

【0096】
工程2:3.2 g(0.007 mol)のシクロヘキセニル化合物を150 mLのトルエンに溶解させた。この溶液を、窒素でパージされ、活性炭素上の10%パラジウム2.8 gおよび1.4 gの白金(湿潤活性炭素上、(乾燥ベースで)5質量%、DegussaタイプF101)が入ったパーの水素添加容器に添加した。この不均一な混合物を、パーの水素添加装置で72時間振とうした。反応混合物を、セライト層を通してろ過した。このトルエンの濾液を真空下で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーを用い、1〜5%の酢酸エチル/塩化メチレンを溶出液として使用して精製して、生成物3.1 gを得た。
【0097】
【化24】

【0098】
工程3:50 mLのシュレンク管に、上記配位子(2.3 g、5.08 mmol)、Ir(acac)3(0.5 g、1.01 mmol)、およびトリデカン(50滴)を添加した。この混合物を脱気し、窒素下で撹拌しながら、砂浴中で73時間加熱した。冷却後、反応混合物を溶媒混合物(CH2Cl2:ヘキサン= 1 : 1)に溶解させ、1 : 1のCH2Cl2:ヘキサンを溶出液として用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけた。カラムクロマトグラフィー後の固体を、CH2Cl2とメタノールとの混合液から再結晶させて、生成物0.93 gを得た(58%)。
【0099】
[化合物3の合成]
【化25】

【0100】
工程1:500 mLの三つ口フラスコに、ジイソプロピルアミン(9.9 g, 0.098 mol)および100 mLのTHFを装填した。この溶液を-78℃に冷却し、この冷却した混合物中に、ヘキサン中1.6 Mのn-BuLi 45.6 mL(0.073 mol)をシリンジから添加した。この混合物を-78℃にて0.5時間撹拌した後、この冷却した混合物に、シクロヘプタノン(6.0 g, 0.054 mol)の30 mL THF溶液を滴下により添加した。この溶液を-78℃にて2時間撹拌した。この冷却した混合物に、N-フェニル-ビス-トリフルオロメタンスルホイミド(21.2 g, 0.059 mol)のTHF溶液を、滴下により添加した。次いで、混合物を、徐々に室温に戻すようにさせ、一晩撹拌した。この混合物の反応を、塩化アンモニウム水溶液で停止させた後、酢酸エチル2 x 300 nmLで抽出した。次いで、抽出液を硫酸マグネシウムで無水にし、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物を、30〜40%の塩化メチレン/へキサンを溶出液とするクロマトグラフにかけて、生成物9.0 gを得た(収率69%)。
【0101】
【化26】

【0102】
工程2:PdCl2(PPh3)2 (1.722 g、2.45 mmol)、PPh3 (1.28 g、4.9 mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(90.76 g、357 mmol)、およびKOPh (16.2 g、122.7 mmol)を、フラスコに添加した。このフラスコに、窒素をフラッシュした後、トルエン(300 mL)およびトリフレート(20 g、1.8 mmol)を装填した。次いで、この混合物を、50℃にて16時間撹拌した。反応混合物を、200 mLの水で希釈した。トルエン相を分離した。水性相を200 mLのトルエンで抽出した。トルエン抽出液を合わせ、100 mLの10%塩化リチウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで無水にし、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物を、Kugelrohr蒸留装置を使用して蒸留した。容器温度を、85℃から開始し、115℃まで上げた。蒸留された混合物を、20〜25%の塩化メチレン/へキサンを用いるクロマトグラフにかけて、生成物9.85 gを得た(収率55%)。
【0103】
【化27】

【0104】
工程3:500 mLの丸底フラスコに、上記ジブロマイド(4.7 g, 0.01 mol)、上記ボロン酸ピナコールエステル(9.81 g, 0.0442 mol)、Pd(OAc)2(0.75 g, 0.0033 mol)、ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニル(2.73 g , 0.007 mol)、三塩基性リン酸カリウム一水和物(12.0 g, 0.052 mmol)、200 mLのトルエン、および75 mLの水を添加した。この反応混合物を、凍結融解ポンプ技術によって十分に脱気した。この反応混合物を、加熱還流させ、窒素雰囲気下で16時間撹拌した。反応混合物を、セライト層を通してろ過した。トルエン相を分離し、水性相を100 mLのトルエンで抽出した。トルエン部分を合わせ、硫酸マグネシウムで無水にした。次いで、無水にした有機混合物を、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。第一の精製は、1〜4%の酢酸エチル/塩化メチレンを使用してカラムを溶出させた。第二の精製は、2〜12%の酢酸エチル/塩化メチレンを使用してカラムを溶出させた。収量は4.1 gであった(82%)。
【0105】
【化28】

【0106】
工程4:工程3からのアルケニル生成物を、200 mLのトルエンに溶解させ、この溶液を、2.8 gの10% Pd/Cおよび1.4 gの5% Pt/C Degussa Type F101 RA/Wが入ったパーの水素添加ボトルに添加した。この混合物を、パーの水素添加装置に18時間置いた。反応混合物を、セライト層を通してろ過し、この層を200 mLのトルエンで洗浄した。このトルエンの濾液を真空下で濃縮した。組成生物を、5〜15%の酢酸エチル/へキサンを溶出液とするシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。得られた生成物(3.6 g、0.0074 mol)をTHFに溶解させ、-78℃に冷却した。この冷却した溶液に、ヘキサン中1.6 Mのn-BuLi 6.3 mLを、シリンジを通して5分間かけて添加した。この反応混合物をさらに5分間撹拌した後、水50 mLを滴下により添加することによって反応を停止させた。この混合物を室温に戻した後、酢酸エチル2 x 150 mLで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウムで無水にした後、ろ過し、真空下で濃縮した。次いで、抽出液を中性アルミナ(6質量%の水の添加によって不活性化させたもの)カラムに、20〜70%の塩化メチレン/へキサンを用いて溶出させて通した。物質を、50 mLの塩化メチレンに溶解させ、0.8 gのSi-TAAcoHおよび0.8 gのSi-チオウレアと共に室温で18時間撹拌した。次いで、この混合物をろ過し、真空下で濃縮し、得られた物質をヘキサンから再結晶して、生成物2.93 gを得た(収率71%)。
【0107】
【化29】

【0108】
工程5:50 mLのシュレンク管に、上記配位子(2.93 g、6.03 mmol)、Ir(acac)3(0.59 g、1.205 mmol)、およびトリデカン(50滴)を添加した。この混合物を脱気し、窒素下で撹拌しながら、砂浴中、73時間加熱した。冷却後、反応混合物を溶媒混合物(CH2Cl2:ヘキサン= 1 : 1)に溶解させ、1 : 1のCH2Cl2:ヘキサンを溶出液として用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーにかけた。カラムクロマトグラフィー後の固体を、CH2Cl2とメタノールとの混合液から再結晶させて、生成物1.18 gを得た。
【0109】
[化合物4の合成]
【化30】

【0110】
工程1:10.0 g (0.08 mol)の4,4-ジメチルシクロヘキサ-2-エノンを、150 mLのエタノールに溶解させた。この溶液を、窒素でパージし、活性炭素上の10%パラジウム0.5 gを装填したパーの水素添加容器に入れた。この不均一な混合物を、パーの水素添加装置で8時間振とうした。反応混合物を、セライトを通してろ過し、乾燥するまで蒸発させて、生成物7.9 gを得た。
【0111】
【化31】

【0112】
工程2:p-トルイルスルホニルヒドラジン(6.8 g, 36.7 mmol)、60 mLの無水エタノール、および上記ケトン(4.64 g, 36.76 mmol)の混合物を、100℃にて加熱還流させた。2時間加熱した後、反応混合物を、氷水浴を使用して冷却して、大部分のヒドラゾンを沈殿させた。得られた個体を、ろ過によって集め、氷冷エタノールで十分に洗浄した。1時間風乾させた後、7.67 gの所望のヒドラゾンを得た。
【0113】
【化32】

【0114】
工程3:磁気撹拌子とラバーセプタムとを備えた、乾燥した500 mL丸底フラスコに、ヒドラゾン(5 g, 17 mmol)、次いで100 mLの無水ヘキサンを添加した。この混合物に、100 mLの無水TMEDAを添加し、反応混合物を-78℃に冷却し、この温度に15分間保った。この後、60.6 mL (84.9 mmol)の2.5M sec-BuLiを、15分かけて添加した。次いで、この反応混合物を、-78℃にて1時間撹拌した後、室温に戻して1.5時間撹拌した。混合物を、-78℃に再び冷却して下げた後、15.8 g (84.9 mmol)のピナコールイソプロピルボレートを添加した。反応物をさらに3時間撹拌した。反応を、飽和NH4Clを添加して停止させた後、エーテルで3回抽出した。合わせた有機抽出液を、無水MgSO4で無水にし、濾過し、真空下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにかけ(ヘキサン中40%のCH2Cl2)、所望の生成物1.53 gを得た(38%)。
【0115】
【化33】

【0116】
工程4:200 mLのフラスコに、ジブロマイド(5 g, 11.06 mmol)、工程3からのボロン酸ピナコールエステル(11.26 g, 47.67 mmol)、Pd(OAc)2(819 mg, 3.64 mmol)、ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニル(2.9 g , 7.3 mmol)、三塩基性リン酸カリウム一水和物(12.73 g, 55.29 mmol)、150 mLのトルエン、および150 mLの水を添加した。この反応混合物を、凍結融解ポンプ技術によって十分に脱気した。この反応混合物を、加熱還流させ、窒素雰囲気下で16時間撹拌した。反応混合物を、セライト層を通してろ過した。トルエン相を濾液から分離した。水性相を75 mLのトルエンで抽出した。トルエン抽出液を合わせ、硫酸ナトリウムで無水にした後、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムに通した。カラムは、ヘキサン中10%の酢酸エチルで溶出させて、生成物4.5 gを得た。
【0117】
【化34】

【0118】
工程5:工程4からのシクロヘキセニル生成物4.5 (8.81mol)を、150 mLのトルエンに溶解させた。この溶液を、窒素でパージされ、活性炭素上の10%Pd 3.2 gおよび2.8 gの白金(湿潤活性炭素上の5質量%(乾燥ベース)の白金;Degussa Type F101)が入ったパーの水素添加容器に添加した。この不均一な混合物を、パーの水素添加装置上で16時間振とうした。反応混合物を、セライト層を通してろ過した。このトルエンの濾液を真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムに通した。カラムは、ヘキサン中10%の酢酸エチルで溶出させて、生成物4.24 gを得た。
【0119】
【化35】

【0120】
工程6:50 mLのシュレンク管に、配位子(2.57 g、5.03 mmol)、Ir(acac)3(0.495 g、1.006 mmol)、およびトリデカン(50滴)を添加した。この混合物を脱気し、窒素下で撹拌しながら、砂浴中、73時間加熱した。冷却後、反応混合物を溶媒混合物(CH2Cl2:ヘキサン= 1 : 1)に溶解させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーにかけた(CH2Cl2:ヘキサン= 1 : 1)。カラムクロマトグラフィー後の固体を、CH2Cl2とメタノールとの混合液から再結晶させて、生成物0.8 gを得た。
【0121】
[化合物5の合成]
【化36】

【0122】
工程1:4-tert-ブチルシクロヘキサノン(26.5 g, 0.172 mol)、p-トルエンスルホニルヒドラジド(31.74 g, 0.171 mol)、および450 mLの無水エタノールを、4時間加熱還流させた後、室温に冷却した。反応混合物を濾過し、真空下で乾燥させて35 gの生成物を得た。
【0123】
【化37】

【0124】
工程2:磁気撹拌子およびラバーセプタムを備えた、乾燥した500 mL丸底フラスコに、ヒドラゾン(7.5 g, 0.023 mol)を添加した後、70 mLの無水ヘキサンを添加した。この混合物に、70 mLの無水TMEDAを添加し、反応混合物を-78℃に冷却し、この温度で15分間保持した後、ヘキサン中2.5Mのn-BuLi 37 mL (0.092 mol)を15分間かけて添加した。次いで、この反応混合物を、-78℃にて1時間撹拌した後、室温に戻し、3.5時間撹拌した。この混合物を、再び-78℃に冷却し、17 g (0.092 mol)のピナコールイソプロピルボレートを添加した。反応物をさらに1時間-78℃にて撹拌した後、室温に戻し、一晩撹拌した。反応を、飽和NH4Clを添加して停止させた後、200 mLのエーテルを加えて分離させた。この不均一な混合物を、セライト層に通した。エーテル相を分離し、水性相をエーテル300 mLで抽出した。合わせた有機抽出液を、無水MgSO4で無水にし、濾過し、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムに通し(20〜40%の塩化メチレン/ヘキサン)、生成物4.4 gを得た(72%)。
【0125】
【化38】

【0126】
工程3:1 Lの丸底フラスコに、ジブロマイド(5 g, 0.011 mol)、工程2からのボロン酸ピナコールエステル(7.3 g, 0.0276 mol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) (0.2 g, 0.22 mmol)、ジシクロヘキシルホスフィノ-2',6'-ジメトキシビフェニル(0.36 g , 0.88 mmol)、三塩基性リン酸カリウム一水和物(14.0 g, 0.066 mmol)、300 mLのトルエン、および80 mLの水を添加した。この反応混合物を、脱気し、窒素で置換した。この反応混合物を、加熱還流させ、窒素雰囲気下で16時間撹拌した。この不均一な反応混合物を、セライト層を通してろ過した。トルエン相を分離し、水性相を100 mLのトルエンで抽出した。トルエン部分を合わせ、硫酸マグネシウムで無水にした。次いで、無水にした有機混合物を、ろ過し、真空下で濃縮した。生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。カラムは、1〜4%の酢酸エチル/塩化メチレンを使用して溶出させた。5 gの生成物が得られた(80%)。
【0127】
【化39】

【0128】
工程4:工程3からのアルケニル生成物(5.0 g、0.0088 mol)を、200 mLのトルエンに溶解させ、この溶液を、3.8 gの10% Pd/Cおよび3.0 gの5% Pt/C Degussa Type F101 RA/Wが入ったパーの水素添加ボトルに添加した。この混合物を、パーの水素添加装置に58時間置いた。反応混合物を、セライト層を通してろ過し、この層を200 mLのトルエンで洗浄した。このトルエンの濾液を真空下で濃縮して、3.6 gの粗生成物を得た、この粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。カラムは、1〜5%の酢酸エチル/塩化メチレンを使用して溶出させた。次いで、カラムから得られた生成物を、50 mLの塩化メチレンに溶解させ、1.1 gのSi-TAAcoHおよび1.1 gのSi-チオウレアと共に室温で18時間撹拌した。これは、残存パラジウムを除去するためである。得られた生成物(3.9 g, 0.0068 mol)を、THFに溶解させ、-78℃に冷却した。この冷却した溶液に、ヘキサン中1.6 Mのn-BuLi 5.8 mLを、シリンジを使用して5分間かけて添加した。この反応混合物を、さらに5分間撹拌した後、50 mLの水を滴下により添加することによって反応を停止させた。この混合物を室温に戻した後、酢酸エチル2 X 150 mLで抽出した。抽出液を硫酸マグネシウムで無水にした後、ろ過し、真空下で濃縮した。次いで、この抽出物を中性アルミナ(6質量%の水を添加することによって不活性化したもの)のカラムに通し、30〜60%の塩化メチレン/ヘキサンで溶出させて、生成物3.6 gを得た。中性アルミナのカラムから得られた生成物を、ヘキサン/酢酸エチルから再結晶させて、2.90 gの生成物を得た。
【0129】
【化40】

【0130】
工程5:50 mLのシュレンク管に、配位子(2.78 g、4.86 mmol)、Ir(acac)3(0.478 g、0.97 mmol)、およびトリデカン(50滴)を添加した。この混合物を脱気し、窒素下で撹拌しながら、砂浴中、70時間加熱した。冷却後、反応混合物を溶媒混合物(CH2Cl2:ヘキサン= 1 : 1)に溶解させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーにかけた(CH2Cl2:ヘキサン= 1 : 1)。カラムクロマトグラフィー後の固体を、CH2Cl2とメタノールとの混合液から再結晶させて、生成物1.0 gを得た。
【0131】
<デバイス例>
全てのデバイス例は、高真空(<10-7 Torr)の熱蒸着によって作製した。アノード電極は1200Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは10ÅのLiFとそれに続く1000ÅのAl(アルミニウム)からなる。全てのデバイスは作製後直ちに窒素グローブボックス(< 1 ppmのH2O及びO2)内でエポキシ樹脂を用いて封止したガラス蓋に密封し、吸湿剤をそのパッケージ内に組み込んだ。
【0132】
表2のデバイス例1および2の有機積層体は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として10 nmのH3またはH4、正孔輸送層(HTL)として30 nmの4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPD)、発光層(EML)として9%の発光ドーパント(本発明の化合物1〜2)でドープした30 nmのH2、ETL2として5 nmのH2、及びETL1として40 nmのAlq3(トリス-8-ヒドロキシキノリンアルミニウム)からなる。
【0133】
発光ドーパントとしてE1、E2、またはE3を用い、EML中のホストおよびETL2材料としてH1を用いたことを除いて、上記デバイス例と同様に、比較例1〜3を作製した。
【0134】
本明細書において、以下の化合物は下記の構造を有する。
【化41】

【0135】
OLEDの発光層のための具体的な発光ドーパントを提供する。これは特に良好な特性を有するデバイスをもたらしうる。デバイスの構造およびデバイス試験の結果を、表2に示す。化合物1および2を発光ドーパントとして用いる発光層を有するデバイスは、改良されたデバイス効率および安定性と共に、改良された色を示し、これらの置換イミダソフェナントリジン化合物が有用であることを示している。
【0136】
固体状態の光発光量子収率(PL %)を、光学的に不活性なポリマーマトリックスであるポリメチルメタクリレート(PMMA)中の1質量%のドーパントから測定した。試料は、ドーパントおよびPMMAを、100 mgの固体(90 mgのPMMAおよび10 mgのドーパント)に対して1 mLのトルエンに溶解させることによって調製した。試料をろ過し、予め洗浄した石英基材に滴下によりキャストした。溶媒を蒸発させた後、PL量子収率を、Hamamatsu Absolute PL Quantum Yield Measurement Systemを使用して測定した。この装置は、積分球、キセノン光源、モノクロメータ、およびマルチチャンネルCCDスペクトロメータからなり、酸素による消光を避けるために、不活性雰囲気のグローブボックス内に収容されている。励起波長は、342 nmである。
【0137】
【表2】

【0138】
デバイス例1および2から、デバイス効率が、固体状態のPL量子効率との相関を示すことが分かる。比較例1は、比較例2と比較してより高いPL効率を示す。比較例1で用いたE1に存在するアルキル置換基が、自己消光を阻害して、より高いPLおよびEL効率をもたらすと考えられる。比較例2は、ねじれた2,6-ジメチルアリール基および比較的低いPL量子効率を有するE2を用いている。これらの例では、2,6-アルキル置換基は、自己消光を阻止するために十分に嵩高くはない。さらに、比較例3は、配位子の他の環上に置換した嵩高いネオペンチル基を有するE3を用いているが、このことによっては大幅にはPL量子効率が改良されない。ねじれたアリール基に嵩高いアルキル基が置換した化合物1および2は、より高いPL量子効率を有し、したがって高められたデバイス効率を有することが明らかとなった。アルキル基は、最小化された赤方偏移をもたらすため、特に有用である。嵩高いアルキル基(すなわち、4個以上の原子を有するアルキル基)を使用することは、化合物を修飾して自己消光を阻害するための新たな方法であると考えられる。これらの嵩高い置換化合物は、比較例1において用いたE1について観察されるような、4-イミダゾール位に置換したアルキル基を有する化合物の寿命に関する制限を受けない。
【0139】
イミダゾフェナントリジンの2位にメチル基を結合させると、比較例1のE1について明らかなとおり、ドーパントの個体状態の量子効率が高まり、高いデバイス効率がもたらされた。しかし、いくつかの例により、この位置にアルキル置換基を加えると、短い寿命を有するデバイスがもたらされる場合があることが実証された(例えば、2000 nitsで100時間未満)。一方、嵩高いアルキル基(すなわち、4個以上の原子を有するアルキル基)を結合させることによって、光発光効率およびデバイス効率が高まることが明らかになった。例えば、化合物1および2は、比較例1と同様の高い効率、ならびに比較例2および3より高い効率を有する。嵩高いアルキル置換基と、その置換位置(すなわち、ねじれたアリール基の2位および/またはn位)との両方を選択することが、高められた効率を得るために重要であり得る。例えば、比較例3で用いたE3は、イミダゾールから離れて置換した嵩高いネオペンチル基を有するが、この化合物は、40%という比較的低いPL効率を有する。注目すべきことに、本明細書において提供する化合物は、顕著に長いデバイス寿命を有することが実証されている。例えば、本発明の化合物1および2のデバイス寿命は、比較例1と比較して3〜4倍長い。ねじれたアリール上の嵩高いアルキル置換基によって、デバイスの加工性も高められる。例えば、化合物1は、イソブチル置換基を有し、265℃の昇華温度を有するが、この昇華温度は、イミダゾ[1,2-F]フェナントリジンイリジウム錯体のファミリーにおいて今日までに観測された最も低い温度である。
【0140】
本明細書に記載した様々な態様は例示のみを目的としており、本発明の範囲を制限することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した物質及び構造の多くは、別の物質及び構造と、本発明の精神から離れることなく置き換えることができる。特許請求の範囲に係る本発明は、したがって、本明細書に記載した具体例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、このことは当業者には明らかであろう。本発明が何故機能するかについての様々な理論は限定されることを意図していないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

(式中、RおよびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択され;
およびRの少なくとも1つは、4個以上の原子を有するアルキルであり;
、R、およびRは、モノ-、ジ-、トリ-、またはテトラ置換基を表し;かつ、
、R、およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択される)
を有する化合物。
【請求項2】
前記4個以上の原子を有するアルキルが、分岐状アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記4個以上の原子を有するアルキルが、環式アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記4個以上の原子を有するアルキルが、二環式アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記4個以上の原子を有するアルキルが、多環式アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記4個以上の原子を有するアルキルが、炭素原子のみを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記4個以上の原子を有するアルキルが、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも1個の窒素原子、または少なくとも1個の硫黄原子を有するヘテロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
およびRが同じである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
およびRが異なる、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
およびRがアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、下記式:
【化2】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化3A】

【化3B】

【化3C】

【請求項13】
前記化合物が、以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化4】

【請求項14】
下記式:
【化5】

(式中、RおよびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択され;
およびRの少なくとも1つは、4個以上の原子を有するアルキルであり;
、R、およびRは、モノ-、ジ-、トリ-、またはテトラ置換基を表し;かつ、
、R、およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択される)
を有する配位子を含む化合物。
【請求項15】
有機発光デバイスを含む第一のデバイスであって、前記有機発光デバイスが、
アノード;
カソード;
前記アノードとカソードとの間に配置された有機層
を含み、さらに前記有機層が下記式:
【化6】

(式中、RおよびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択され;
およびRの少なくとも1つは、4個以上の原子を有するアルキルであり;
、R、およびRは、モノ-、ジ-、トリ-、またはテトラ置換基を表し;かつ、
、R、およびRは、水素、アルキル、およびアリールからなる群から独立に選択される)
を有する化合物を含む、第一のデバイス。
【請求項16】
第一のデバイスが、消費者製品である請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記化合物が、以下のものからなる群から選択される、請求項15に記載のデバイス。
【化7A】

【化7B】

【化7C】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−512166(P2012−512166A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540925(P2011−540925)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/067687
【国際公開番号】WO2010/068876
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】