説明

イメージセンサユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置

【課題】導光体を大きくすることなく発光素子を配置することができると共に、導光体から出光させる光の照度の均一化を図ることができるイメージセンサユニットを提供する。
【解決手段】イメージセンサユニット7は、両端に設けられた第1の入光面31aおよび第2の入光面31eより入光される光を反射面31bで反射させ、出光面31cから出光させて原稿2を照明する導光体31と、第1の入光面31a近傍に設けられた第1の光源30aと、第2の入光面31e近傍に設けられ、かつ、第1の光源30aと発光波長の異なる第2の光源30bと、反射面31bに設けられ、かつ、それぞれ分光反射率が異なる2種類のドット37a、37bからなるドットパターンから構成される第1の反射部35aおよび第2の反射部35bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置に関するものである。特に、複数の光源の光を導光体から出光させることができるイメージセンサユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像読取装置、画像形成装置などに用いられるイメージセンサユニットによって読み取られた結果において、例えば赤Rと緑Gとの中間色であるアンバーU系の色再現性を高めたいなどの要望がある。このような場合、色再現性を高めたい中間色に対応した発光波長の光を発する発光素子を加えることで、中間色の色再現性を高めることができる。
【0003】
また、イメージセンサユニットによって読み取られる原稿にはセキュリティなどを目的として不可視インクによって印刷されたものがあり、そのような可視以外の波長域である紫外の波長域や近赤外の波長域なども読み取りたいという要望がある。このような場合、上述した中間色の色再現性を向上させる方法と同様、紫外の波長域や近赤外の波長域における発光波長の光を発する発光素子を加えることで、不可視インクによって印刷されたものを読み取ることができる。
【0004】
しかしながら、所望する発光波長の光を発する発光素子を増やすと、全ての発光素子の光を導光体の入光面から入光させるために、導光体の入光面の面積を大きくしなければならない。入光面の面積を大きくすると、必然的に導光体の断面形状が大きくなってしまい、導光体の成形が困難になるばかりでなく、導光体およびイメージセンサユニット自体が大型化してしまうという問題がある。
【0005】
そのため、特許文献1には、全体の光量を大きくするためにLEDを導光体の両端に設ける方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−214675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、光源100と導光体110との配置の一例について図12Aを参照して説明する。図12Aは、光源100と導光体110との配置を示す斜視図である。光源100は、原稿を照明するためのものである。光源100は、例えば赤R、緑G、青Bの発光波長の光を発する発光素子100r、100g、100bにより構成されている。導光体110は、照明する対象となる原稿の幅に対応した長さを有する透明部材によって形成されている。導光体110は、一方の端面が発光素子100r、100g、100bの光を入光させる入光面110aとなる。すなわち、発光素子100r、100g、100bは、入光面110aと向かい合う位置に配置されている。また、導光体110の長手方向の一面(導光体110の下面)が、入光面110aから入光した光を導光体110の内部で反射させる主な反射面110bとなる。また、反射面110bと対向する面が、反射面110bから反射された光を導光体110から出光させる出光面110cとなる。
【0008】
出光面110cから出光された光は、原稿を照明する。このとき、出光面110cから出光される光が導光体110の長手方向で均一に出光されるように、反射面110bには反射部120が形成されている。具体的には、図12Aに示すように、入光面110a側から対向する対向面110d側に向かうにしたがって、分布密度が大きくなるようなドット120aが塗布されたドットパターン(光拡散パターン)が反射部120として形成されている。このドットパターンは、ドット状に白色の塗料を塗布することで形成される。
【0009】
図12Bは、横軸を反射面110bの長手方向の位置とし、縦軸を反射面110bに形成されたドット120aの分布密度を示すグラフである。図12Bに示すように、入光面110aに対向する対向面110d側に向かうにしたがって、ドット120aの分布密度が大きくなっている。反射面110bにこのようなドットパターンからなる反射部120を形成することで、反射面110bでは発光素子100r、100g、100bからの距離に関わらず、導光体110の長手方向で均一の光を出光させることができる。
ここで、所望する波長の光を発光する発光素子を増やすと、全ての発光素子の光を入光面110aから入光させるために、入光面110aの面積を大きくしなければならない。
【0010】
そこで、図12Aから図13Aに示す導光体110のように、発光素子100r、100g、100bが配置されている入光面110aに対向する面を入光面110eとして、上述した所望する発光波長の発光素子を配置することが考えられる。図13Aでは、入光面110eに向かい合うようにアンバーUの発光素子100u、近赤外IRの発光素子100irおよび紫外UVの発光素子100uvが配置されている。
【0011】
しかしながら、図13Aに示すような構成では、導光体110の反射面110bには、入光面110a側から入光面110e側に向かうにしたがってドット120aの分布密度が大きくなるドットパターンからなる反射部120が形成されている。このため、図13Bに示すように、入光面110aから入光される発光素子100r、100g、100bの光は、反射部120によって出光面110cから均一に出光される。
一方、入光面110eから入光される、追加した発光素子100u、100ir、100uvからの光は、ドット120aの分布密度が大きい入光面110e側から出光される光量が大きくなると共に、ドット120aの分布密度が小さい入光面110a側から出光される光量が少なくなる。
このため、導光体110から出光する光の照度が不均一となる問題が生じるものであった。
【0012】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、導光体を大きくすることなく所望する発光波長の光を発する発光素子を増やすことを可能にすると共に、導光体から被照明体に向けて出光させる光の照度の均一化を図ることができるイメージセンサユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のイメージセンサユニットは、両端の入光面近傍にそれぞれ配置された第1の光源および第2の光源からの光を反射面で反射させ、出光面から出光させて被照明体を照明する導光体と、前記被照明体からの反射光を結像する結像素子と、前記結像素子によって結像された反射光を受光する光電変換素子が実装されるセンサ基板と、を備えるイメージセンサユニットであって、前記第1の光源は、1つまたは複数の発光素子より構成されると共に、前記第2の光源は、前記第1の光源と発光波長の異なる光源であって、1つまたは複数の発光素子より構成され、前記出光面と対向する面に設けられた反射面には、第1の反射部および第2の反射部を備え、前記第1の反射部は、前記第1の光源に設けられた発光素子からの発光波長に対して高い分光反射率を有すると共に、前記第1の光源の配置された入光面側の反射率よりも前記第1の光源に対向して配置された入光面側の反射率が大きく、前記第2の反射部は、前記第2の光源に設けられた発光素子からの発光波長に対して高い分光反射率を有すると共に、前記第2の光源の配置された入光面側の反射率よりも前記第2の光源に対向して配置された入光面側の反射率が大きいことを特徴とする。
本発明の画像読取装置は、イメージセンサユニットと、前記イメージセンサユニットと被照明体とを相対的に移動させながら、前記被照明体からの反射光を読み取る画像読取手段と、を備えた画像読取装置であって、前記イメージセンサユニットは、上述したイメージセンサユニットであることを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、イメージセンサユニットと、前記イメージセンサユニットと被照明体とを相対的に移動させながら、前記被照明体からの反射光を読み取る画像読取手段と、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、を備えた画像形成装置であって、前記イメージセンサユニットは、上述したイメージセンサユニットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導光体を大きくすることなく所望する発光波長の光を発する発光素子を増やすことを可能にすると共に、導光体から被照明体に向けて出光させる光の照度の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態の導光体31の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、発光素子34bと発光素子34rとの波長の相対的な関係を示す図である。
【図3】図3は、本実施形態のドット37a、37bの分光反射率の特性を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態の反射部35を示す模式図である。
【図5】図5は、本実施形態のドット37a、37bの分布密度を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態の第1の入光面31aおよび第2の入光面31eにそれぞれ複数の発光素子を配置した状態を示す図である。
【図7】図7は、発光素子30uv、30b、30g、30u、30r、30irの波長の相対的な関係を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態の他の反射部40を示す模式図である。
【図9】図9は、本実施形態のMFP1の外観を示す斜視図である。
【図10】図10は、画像形成部Pの構造を示す概略図である。
【図11】図11は、本実施形態のイメージセンサユニット7内の構成を示す模式図である。
【図12A】図12Aは、光源100と導光体110との一例を示す斜視図である。
【図12B】図12Bは、ドット120aの分布密度を示す図である。
【図13A】図13Aは、導光体110の両端を入光面110a、110eとした図である。
【図13B】図13Bは、図13Aに示す導光体110によって原稿を照明したときの原稿面照度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図9は本発明を適用できる、いわゆる、多機能プリンタ(MFP;Multifunction Printer)の外観を示す斜視図である。
【0017】
図9に示すように、1はMFPであり、被照明体としての原稿2からの反射光を読み取る画像読取手段としての画像読取部Sと、記録媒体としてのシート3(記録紙)に原稿2の画像を形成(印刷)する画像形成手段としての画像形成部Pとを備えている。
画像読取部Sはいわゆるイメージスキャナーの機能を有するものであり、例えば以下のように構成される。
【0018】
画像読取部Sは、筐体4と、原稿載置部としてのガラス製の透明板からなるプラテンガラス5と、原稿2を覆うことができるように筐体4に対して開閉自在に設けられるプラテンカバー6とを備えている。
また、筐体4の内部には、イメージセンサユニット7が収納されている。イメージセンサユニット7は、例えば密着型イメージセンサ(CIS;Contact Image Sensor)ユニットである。
8は保持部材であり、イメージセンサユニット7を囲むように保持するものである。9は保持部材8をプラテンガラス5に沿って移動可能に設けられたイメージセンサユニットスライドシャフトである。10はイメージセンサユニット駆動モータである。11は保持部材8に取り付けられたワイヤである。12は信号処理部である。13は印刷されたシート3を回収する、開閉自在に設けられた回収ユニットである。14は所定のサイズのシート3を収容する給紙トレイである。
【0019】
この構成により、イメージセンサユニット駆動モータ10によりワイヤ11を機械的に動かすことで、イメージセンサユニット7をイメージセンサユニットスライドシャフト9に沿って読み取り方向(副走査方向)に移動するものである。読み取り方向に移動したイメージセンサユニット7は、プラテンガラス5上に載置された原稿2を光学的に読み取って、画像信号(電気信号)に変換するものである。
【0020】
図10は画像形成部Pの構造を示す概略図である。
画像形成部Pはいわゆるプリンタの機能を有するものであり、例えば以下のように構成される。
画像形成部Pは筐体4内部に収容されており、図10に示すように、搬送ロール20と、記録ヘッド21とを備えている。
21は記録ヘッドであり、例えばシアンC、マゼンタM、イエローY、黒Kのインクを備えたインクタンク22r、22g、22b、22kと、これらのインクタンク22にそれぞれ設けられた吐出ヘッド23r、23g、23b、23kから構成される。
24は記録ヘッドスライドシャフトである。25は記録ヘッド駆動モータである。26は記録ヘッド21に取り付けられたベルトである。
【0021】
この構成により、給紙トレイ14から供給されたシート3は、搬送ロール20によって記録位置まで搬送される。
記録ヘッド21は、記録ヘッド駆動モータ25によりベルト26を機械的に動かすことで、記録ヘッドスライドシャフト24に沿って印刷方向(主走査方向)に移動しつつ画像信号を基にシート3に対して印刷を行うものである。
印刷終了まで前述の動作を繰り返した後、印刷されたシート3は搬送ロール20によって回収ユニットに13に排出される。
なお、画像形成部Pとしてインクジェット方式による画像形成装置を説明したが、電子写真方式、熱転写方式、ドットインパクト方式等どのような方式であっても構わない。
【0022】
次に、イメージセンサユニット7内の構成部品と光源30からの光路との関係について図11を参照して説明する。図11は、イメージセンサユニット7内の構成を示す模式図である。イメージセンサユニット7の内部には、光源30、導光体31、ロッドレンズアレイ32、センサ基板33が配設されている。
光源30は、原稿2を照明するためのものであり、例えば赤R、緑G、青Bの3色の発光波長の光を発する発光素子34r、34g、34bと、例えばアンバーUの発光波長の光を発する発光素子34uとを有している。すなわち、本実施形態のイメージセンサユニット7では、アンバー系の色再現性を高めるために、アンバーUの発光波長の光を発する発光素子34uを追加している。ここで、各発光素子34r、34g、34b、34uは、導光体31の両端に分かれて配置されている。具体的には、発光素子34r、34uが導光体31の一方側の端部の近傍に第1の光源30aとして配置され、発光素子34b、34gが導光体31の他方側の端部の近傍に第2の光源30bとして配置されている。光源30は、発光素子34r、34g、34b、34uを順次点灯駆動することによって光を照射する。
【0023】
導光体31は、第1の光源30aおよび第2の光源30bから照射された光を上述したプラテンガラス5上に載置された原稿2へと導くものであり、原稿2の幅に対応した長さの細長状に形成されている。この導光体31は、例えばアクリル樹脂やポリカーボネートなどの透明な合成樹脂素材により形成される。
【0024】
本実施形態では、導光体31の長手方向(主走査方向)の両端における一方の端面を第1の光源30aからの光が入光される第1の入光面31aとし、対向する他方の端面を第2の光源30bからの光が入光される第2の入光面31eとして形成されている。上述した発光素子34r、34uは、第1の入光面31aと向かい合い、かつ第1の入光面31aから所定距離離間して配置されている。また、上述した発光素子34g、34bは、第2の入光面31eと向かい合い、かつ第2の入光面31eから所定距離離間して配置されている。このように、導光体31の端面を第1の入光面31aおよび第2の入光面31eとすることで、発光素子34uを追加したとしても導光体31の端面の面積を大きくする必要がない。
【0025】
また、導光体31の長手方向に沿い、かつプラテンガラス5上の原稿2と対向する面は、導光体31に入光した光が出光される出光面31cである。また、出光面31cと対向する面は、第1の入光面31aおよび第2の入光面31eからの光を導光体31の内部で反射させる反射面31bである。
反射面31bには反射部35として第1の反射部35aおよび第2の反射部35bが設けられている。
これにより、第1の入光面31aから入光した発光素子34r、34uの光を第1の反射部35aで、第2の入光面31eから入光した発光素子34g、34bの光を第2の反射部35bでそれぞれ均一に反射・拡散できるように形成されている。反射面31bによって各発光素子34r、34g、34b、34uからの光を均一に反射・拡散させる構成は後述する。
また、その他の面はそれぞれ反射面として作用するものである。
【0026】
導光体31は、第1の入光面31aおよび第2の入光面31eから入光された光を導光体31内にて反射面31bおよびその他の面により全反射させながら導光体31内を伝搬させる。同時に反射面31bに設けられた第1の反射部35aおよび第2の反射部35bにて拡散・反射させ、出光面31cから出光させることで、原稿2を照明する。このように、光源30と導光体31とは、原稿2を照明する照明装置として機能する。
ロッドレンズアレイ32は、正立等倍結像型の結像素子を導光体31の長手方向と同方向に複数配列したものである。ロッドレンズアレイ32は、原稿2からの反射光を光電変換素子36に結像する。
センサ基板33は、ロッドレンズアレイ32により結像された反射光を画像信号に変換する光電変換素子36を導光体31の長手方向と同方向に複数実装したものである。
ロッドレンズアレイ32および光電変換素子36は、原稿2の幅に対応する長さに形成されている。
【0027】
上述したように構成されるイメージセンサユニット7を備えたMFP1が原稿2の読み取りを行う場合、画像読取部Sにおいて原稿2の読み取り開始位置までイメージセンサユニット7を移動する。読み取り開始位置に移動したイメージセンサユニット7は、第1の光源30aおよび第2の光源30bの発光素子34r、34g、34b、34uを順次点灯する。第1の光源30aおよび第2の光源30bからの光は、それぞれ導光体31の第1の入光面31aおよび第2の入光面31eから入光した後、出光面31cから均一に出光する。導光体31を出光した光は、原稿2の表面を主走査方向に亘ってライン状に照射する。照射された光は、原稿2によって反射された後、ロッドレンズアレイ32によってセンサ基板33上に実装された光電変換素子36に結像される。光電変換素子36は、結像された反射光を受光し画像信号に変換する。イメージセンサユニット7は、赤R、緑G、青B、アンバーU全ての反射光を変換することで、主走査方向に沿った1走査ラインの読み取り動作が終了する。
【0028】
続いて、イメージセンサユニット7を1走査ライン分だけ副走査方向に移動する。イメージセンサユニット7は、上述と同様に1走査ラインの読み取り動作を行う。
このように、イメージセンサユニット7が1走査ラインの移動と読み取り動作とを繰り返すことで、原稿2全面の読み取りを行うことができる。
イメージセンサユニット7によって変換された画像信号は、信号処理部12において必要に応じて画像処理を行った後、画像データとして記憶することで、プラテンガラス5上に載置された原稿2全面の読み取りが完了する。
【0029】
次に、各発光素子34r、34g、34b、34uからの光を均一に反射させる構成について図1を参照して説明する。図1は、導光体31の構成を示す斜視図である。ここでは、説明を容易にするために、光源30である発光素子34r、34g、34b、34uのうち発光素子34b、34rを取り上げて説明する。すなわち、図1に示すように、第1の入光面31aには発光素子34rを第1の光源30aとして配置させ、第2の入光面31eには発光素子34bを第2の光源30bとして配置させている。ここで、発光素子34bの波長は、約435.8nmであり、発光素子34rの波長は、約700nmである。図2は、発光素子34bと発光素子34rとの波長の相対的な関係を示す図である。図2に示すように、発光素子34bは発光素子34rに比べて相対的に短波長であり、発光素子34rは発光素子34bに比べて相対的に長波長である。
【0030】
また、図1に示すように、導光体31の反射面31bには第1の反射部35aおよび第2の反射部35bが設けられており、それぞれ分光反射率が異なる2種類のドット37a、37bからなるドットパターン(光拡散パターン)から構成される。具体的には、ドット37a、37bは、波長によって反射率が異なる塗料を導光体31の下面(反射面31b)に、例えばシルク印刷などにより塗布することによって形成される。なお、ドット37a、37bが形成されていない領域は、導光体31の材質のまま(透明)である。
【0031】
図3は、ドット37a、37bの分光反射率の特性を示すグラフである。図3に示すようにドット37aは、ドット37bに比べて長波長の光の反射率が大きい特性を有している。一方、ドット37bは、ドット37aに比べて短波長の光の反射率が大きい特性を有している。すなわち、ドット37aは、発光素子34rから発光される光の反射率が大きく、発光素子34bから発光される光の反射率が小さい。一方、ドット37bは、発光素子34bから発光される光の反射率が大きくなり、発光素子34rから発光される光の反射率が小さい。具体的には、ドット37aとして赤R系の色の塗料で印刷され、ドット37bとして青B系の色の塗料で印刷されることで、ドットパターンが形成されている。
【0032】
図4は、導光体31の反射面31bにおける反射部35を図1に示す矢印方向から見た模式図である。図4に示すように、第1の反射部35aおよび第2の反射部35bを構成するドット37a、37bは、導光体31の長手方向に対して分布密度が異なっている。具体的には、ドット37aは、第1の入光面31a側の分布密度が小さく、第2の入光面31eに向かうにしたがって分布密度が徐々に増大するように形成されている。一方、ドット37bは、第2の入光面31e側の分布密度が小さく、第1の入光面31aに向かうにしたがって分布密度が徐々に増大するように形成されている。
すなわち、それぞれ入光面31(第1の入光面31a、第2の入光面31e)からの距離に応じて、入光面31に近い部分は低密度に、遠方では高密度に配置された構成である。
【0033】
図5は、横軸を反射面31bの長手方向の位置とし、縦軸を反射面31bに形成されたドット37a、37bの分布密度として示したグラフである。図5に示すように、ドット37aは第2の入光面31eに向かうにしたがって分布密度が増大し、ドット37bは第1の入光面31aに向かうにしたがって分布密度が増大するよう分布密度が変化するものである。なお、ドット37a、37bの分布密度は、反射面31bの長手方向の中央付近で対称となるとは限らず、それぞれの発光波長に対する反射率により異なる場合も生ずる。
【0034】
上述したように構成される導光体31によれば、第1の入光面31aに配置されている発光素子34rからの光はドット37aによって反射・拡散され、第2の入光面31eに配置されている発光素子34bからの光はドット37bによって反射・拡散される。また、ドット37a、37bは、発光素子34r、34bのうち反射率が大きい光を発する発光素子から離間するほど分布密度が増大するように形成されている。具体的には、発光素子34rからの光の反射率が大きいドット37aは、発光素子34rから離間するほど分布密度が増大する。したがって、反射面31bは、発光素子34rからの光が届きにくい発光素子34rから離間した位置であっても、発光素子34rと近接する位置と同程度の光量を反射・拡散させることができるため、発光素子34rからの光を導光体31の長手方向に亘って均一に出光させることができる。
一方、発光素子34bからの光の反射率が大きいドット37bは、発光素子34bから離間するほど分布密度が増大する。したがって、反射面31bは、発光素子34bからの光が届きにくい発光素子34bから離間した位置であっても、発光素子34bと近接する位置と同程度の光量を反射・拡散させることができるため、発光素子34bからの光を導光体31の長手方向に亘って均一に出光させることができる。
【0035】
本実施形態における構成は、発光素子を一方の第1の入光面31aに配置し、発光波長の異なる発光素子を他方の第2の入光面31eに配置すると共に、それぞれの発光波長に対応する反射率のドット37a、37bを反射面31bにそれぞれ形成するものである。
このため、導光体31の第1の入光面31aおよび第2の入光面31eにそれぞれ発光素子34r、34bを配置した場合であっても、第1の反射部35aおよび第2の反射部35bを構成する分光反射率の異なるドット37a、37bの分布密度をそれぞれ変化させることで、発光素子34r、34bに近い部分の反射・拡散率を低く、遠方に向かって徐々に反射・拡散率を高くすることができる。したがって、発光素子を増やした場合であっても、導光体31を大きくすることなく発光素子を配置することができると共に、導光体から出光させる光の照度の均一化を図ることができる。
【0036】
次に、第1の入光面31aおよび第2の入光面31eにそれぞれ複数の発光素子を配置する場合について図6を参照して説明する。図6は、図1に示す構成に加え、第1の入光面31aに発光素子34u、34irを第1の光源30aとして配置し、第2の入光面31eに発光素子34g、34uvを第2の光源30bとして配置したものである。他の構成は、図1と同様であり説明を省略する。
図6に示す発光素子34uvは紫外UVの発光波長の光を発し、発光素子34irは近赤外IRの発光波長の光を発する。発光素子34uv、34irを配置したのは、原稿2が例えば紙幣・有価証券の場合、セキュリティなどを目的として原稿2に印刷された不可視インクを読み取るために、原稿2に紫外UVの発光波長の光と近赤外IRの発光波長の光とを照明するためである。なお、不可視インクに応じて発光素子34uv、34irのうち何れかを配置することができる。
【0037】
図7は、各発光素子34uv、34b、34g、34u、34r、34irの発光波長の相対的な関係を示す図である。図7に示すように、発光素子34uv、34b、34g、34u、34r、34irの順に発光波長が長くなる。すなわち、第1の入光面31aに配置されている発光素子34u、34r、34irは、第2の入光面31eに配置されている発光素子34uv、34b、34gに比べて相対的に長波長側の光を発光する。一方、第2の入光面31eに配置されている発光素子34uv、34b、34gは、第1の入光面31aに配置されている発光素子34u、34r、34irに比べて相対的に短波長側の光を発光する。
【0038】
また、図7には、導光体31の反射面31bに形成されたドット37a、37bの分光反射率の特性も示している。ドット37aは、長波長側に分類される発光素子34u、34r、34irから発光される光の反射率が大きい。一方、ドット37bは、短波長側に分類される発光素子34uv、34b、34gから発光される光の反射率が大きい。したがって、図5に示すように、ドット37aを発光素子34u、34r、34irから離間するほど分布密度が増大するように形成することで、発光素子34u、34r、34irからの光を導光体31の長手方向に亘って均一に出光させることができる。同様に、ドット37bを発光素子34uv、34b、34gから離間するほど分布密度が増大するように形成することで、発光素子34uv、34b、34gからの光を導光体31の長手方向に亘って均一に出光させることができる。
【0039】
本実施形態における構成は、長波長側の発光素子を一方の第1の入光面31aに配置し、短波長側の発光素子を他方の第2の入光面31eに配置すると共に、それぞれの発光波長の領域に対応する反射率のドット37a、37bを反射面31bにそれぞれ形成するものである。
このため、導光体31の第1の入光面31aおよび第2の入光面31eにそれぞれ複数の発光素子を配置する場合であっても、第1の反射部35aおよび第2の反射部35bを構成する分光反射率の異なるドット37a、37bの分布密度をそれぞれ変化させることで、発光素子34u、34r、34irおよび発光素子34uv、34b、34gのそれぞれに近い部分の反射・拡散率を低く、遠方に向かって徐々に反射・拡散率を高くすることができる。したがって、発光素子を増やした場合であっても、導光体31を大きくすることなくそれぞれ複数の発光素子を配置することができると共に、導光体から出光させる光の照度の均一化を図ることができる。
【0040】
以上、本発明を上述した実施形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更が可能である。
例えば、上述した実施形態の導光体31では、分光反射率がそれぞれ異なる2種類のドット37a、37bを形成する場合について説明したが、この場合に限られず、2種類以上のドットを形成してもよい。
また、上述した実施形態では反射部としてドットパターンを形成する場合について説明したが、この場合に限られない。図8は、導光体31の反射面31bにおける他の反射部40を図4と同方向から見た模式図であり、他の反射部40としてドットに代えてストロボ状の矩形部41a、41bを形成したものである。図8に示す矩形部41aは、第1の反射部40aを構成するものであり、第1の入光面31aに配置された発光素子の発光波長に対して反射率が大きく、第2の入光面31e側に向かうにしたがって面積が増大する。一方、図8に示す矩形部41bは、第2の反射部40bを構成するものであり、第2の入光面31eに配置された発光素子の発光波長に対して反射率が大きく、第1の入光面31a側に向かうにしたがって面積が増大する。
このように、各反射部の形状は特定されず、各反射部の面積を変更することで、上述した実施形態と同様の効果がある。なお、矩形部41a、41bの面積は、反射面31bの長手方向の中央付近で対称となるとは限らず、それぞれの発光波長に対する反射率により異なる場合も生ずる。
【0041】
また、上述した実施形態では発光素子34uv、34b、34g、34u、34r、34irを用いる場合について説明したが、この場合に限られず、必要ない発光素子を省略してもよく、他に色再現性を高めたい色に応じた発光素子を追加してもかまわない。
また、光源30(第1の光源30aおよび第2の光源30b)は同一の発光波長を有する発光素子を追加しても構わないし、同一の発光波長を有する複数の発光素子のみからなる構成であっても構わない。
なお、例えば光量増加のために追加した同一(または略同一)の発光波長を有する発光素子は、第1の光源30aまたは第2の光源30bのどちらかの一方に配置する必要がある。これは、第1の光源30aまたは第2の光源30bの双方に同一(または略同一)の発光波長を有する発光素子を配置した場合、第1の反射部35aおよび第2の反射部35bのそれぞれに分光反射率が同一のドット37a、37bによるドットパターンが設けられることになる。
このため、第1の光源30aまたは第2の光源30bの双方から同一の発光波長(同色)の光が照射されると、それぞれの発光素子からの光が第1の反射部35aおよび第2の反射部35bの双方により反射・拡散される。これにより、導光体から出光させる光の照度が不均一となるためである。
また、上述した実施形態では、ドット37a、37bをシルク印刷により形成する場合について説明したが、直接ドット37a、37bを塗布するなど他の方法で形成してもよい。
【0042】
また、図6および図7では、発光素子34uの発光波長以上の光を発する発光素子34u、34r、34irを第1の入光面31aに配置し、発光素子34gの発光波長以下の光を発光する発光素子34g、34b、34uvを第2の入光面31eに配置した。すなわち、発光素子34uと発光素子34gとを境界にして長波長側と短波長側とに分類したが、この場合に限らない。例えば、発光素子34rと発光素子34uとを境界とする、あるいは、発光素子34gと発光素子34bとを境界とするなど、どこで分類してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、イメージセンサユニットと、このイメージセンサユニットが適用される画像読取装置や画像形成装置(たとえば、イメージスキャナー、ファクシミリ、複写機、複合機など)に有効に利用できるものである。
【符号の説明】
【0044】
1:MFP(多機能プリンタ) 2:原稿(被照明体) 7:イメージセンサユニット 30:光源 30a:第1の光源 30b:第2の光源 31:導光体 31a:第1の入光面 31b:反射面 31c:出光面 31e:第2の入光面 32:ロッドレンズアレイ(結像素子) 33:センサ基板 34r、34g、34b、34u、34ir、34uv:発光素子 35:反射部 35a:第1の反射部 35b:第2の反射部 36:光電変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端の入光面近傍にそれぞれ配置された第1の光源および第2の光源からの光を反射面で反射させ、出光面から出光させて被照明体を照明する導光体と、
前記被照明体からの反射光を結像する結像素子と、
前記結像素子によって結像された反射光を受光する光電変換素子が実装されるセンサ基板と、
を備えるイメージセンサユニットであって、
前記第1の光源は、1つまたは複数の発光素子より構成されると共に、
前記第2の光源は、前記第1の光源と発光波長の異なる光源であって、1つまたは複数の発光素子より構成され、
前記出光面と対向する面に設けられた反射面には、第1の反射部および第2の反射部を備え、
前記第1の反射部は、前記第1の光源に設けられた発光素子からの発光波長に対して高い分光反射率を有すると共に、
前記第1の光源の配置された入光面側の反射率よりも前記第1の光源に対向して配置された入光面側の反射率が大きく、
前記第2の反射部は、前記第2の光源に設けられた発光素子からの発光波長に対して高い分光反射率を有すると共に、
前記第2の光源の配置された入光面側の反射率よりも前記第2の光源に対向して配置された入光面側の反射率が大きい
ことを特徴とするイメージセンサユニット。
【請求項2】
前記発光素子のうち、相対的に長波長側の発光素子と短波長側の発光素子に分類し、前記第1の光源および前記第2の光源に配設する
ことを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサユニット。
【請求項3】
前記第1の光源に相対的に長波長側の発光素子を配設し、前記第2の光源に相対的に短波長側の発光素子を配設した場合、
前記第1の反射部は、短波長側の発光波長に対する反射率よりも長波長側の発光波長に対する反射率が大きく、
前記第2の反射部は、長波長側の発光波長に対する反射率よりも短波長側の発光波長に対する反射率が大きい
ことを特徴とする請求項2に記載のイメージセンサユニット。
【請求項4】
前記第1の反射部および前記第2の反射部は、それぞれ光拡散パターンから構成されると共に、
前記第1の反射部および前記第2の反射部からの距離に応じて、前記光拡散パターンの分布密度が変化する
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のイメージセンサユニット。
【請求項5】
前記光拡散パターンは、前記反射面に塗料を塗布することによって形成される
ことを特徴とする請求項4に記載のイメージセンサユニット。
【請求項6】
イメージセンサユニットと、
前記イメージセンサユニットと被照明体とを相対的に移動させながら、前記被照明体からの反射光を読み取る画像読取手段と、
を備えた画像読取装置であって、
前記イメージセンサユニットは、請求項1乃至5の何れか1項に記載のイメージセンサユニットである
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
イメージセンサユニットと、
前記イメージセンサユニットと被照明体とを相対的に移動させながら、前記被照明体からの反射光を読み取る画像読取手段と、
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
を備えた画像形成装置であって、
前記イメージセンサユニットは、請求項1乃至5の何れか1項に記載のイメージセンサユニットである
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【公開番号】特開2012−253747(P2012−253747A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87401(P2012−87401)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(000104629)キヤノン・コンポーネンツ株式会社 (49)
【Fターム(参考)】