説明

イロペリドンの投与方法

本発明は、イロペリドンによる治療の後、QT延長の危険性に関連し得る遺伝子多型の同定方法、及びこのような多型を有する患者にイロペリドンを投与する関連方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2004年9月30日出願された米国特許仮出願第60/614798号の特典を請求する、2007年3月28日に出願され同時に係属している米国特許出願第11/576178号の一部継続出願である、2008年9月10日に出願され、同時に係属している米国特許出願第12/208027号の特典を請求するものであり、これらすべてによって、本明細書に援用される。
【0002】
薬剤代謝に関連するいくつかの遺伝子は多形であることが発見されてきた。その結果、特定の薬剤を代謝する患者の個々の能力は、大きく異なる可能性がある。非代謝性薬剤又はその代謝物の濃度増加が、望ましくない生理学的効果を引き起こし得る場合には、これは明らかに問題であり、危険をはらんでいる。
【0003】
22番染色体に位置するチトクロームP450 2D6遺伝子(CYP2D6)は、第I相薬剤代謝酵素デブリソキン水酸化酵素をコードする。多くの総中枢神経系薬及び心臓血管薬を含む多数の薬剤は、デブリソキン水酸化酵素によって代謝されることが知られている。このような1薬剤は、イロペリドン(1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソオキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]エタノン)である。イロペリドン及びその製造方法、並びに抗精神病薬及び鎮痛薬としての使用は、Strupczewski他の米国特許第5364866号に記載されている。イロペリドンの投与によって治療することができる疾患及び障害には、統合失調症の全形態(すなわち、妄想型、緊張性、破瓜型、未分化型及び残部)、分裂情動性障害、双極性障害/うつ病、心不整脈、トゥーレット症候群、短期精神障害、妄想障害、精神障害NOS(不特定)、一般的病状による精神障害、統合失調症様障害及び物質誘導性精神障害が含まれる。P88は、イロペリドンの活性型代謝物である。本明細書に参考として援用した国際公開第2003/020707号パンフレットを参照すること。
【0004】
とりわけ、イロペリドン又はその代謝物の濃度増加に関連した望ましくない生理学的効果は、心電図のQT間隔の延長である。CYP2D6遺伝子中の変異は、いくつかの薬剤耐性関連表現型と関連している。これらには、超高速代謝型(UM)、迅速代謝型(EM)、中等度代謝型(IM)及び代謝欠損型(PM)の表現型が含まれる。特定の薬剤が代謝型又は非代謝型で望ましくない生理学的効果を生じ得る場合、投与前に患者がその薬剤の代謝欠損型であるかどうかを決定することが望ましい。
【0005】
いくつかの参考文献では、CYP2D6変異及び対応する表現型の同定を目標としている。例えば、Milos他の米国特許出願公開第2003/0083485号は、PM表現型に関連した新規CYP2D6変種及び薬剤投与前に個体がこの変種を有するかどうかを評価する方法について記載している。Dawsonの米国特許出願公開第2004/0072235号は、CYP2D6遺伝子の変種を同定するために有用なプライマーの組合せを記載している。同様に、Huangの米国特許出願公開第2004/0091909号は、CYP2D6遺伝子及びその他のチトクロームP450遺伝子における変種について個体をスクリーニングし、個体の表現型プロファイルによって個体の薬剤治療を調節する方法を記載している。最後に、Neville他の米国特許出願第2004/0096874号は、チトクロームP450変種を同定するための方法を記載している。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、CYP2D6活性が正常人より低い患者の治療は、QT延長の原因となりやすく、CYP2D6酵素によって代謝される薬剤によって、正常CYP2D6酵素活性を有する人に投与するよりも低い用量の薬剤を投与することによって、より安全に実施することができるという発見を含む。このような薬剤には、例えば、ドラセトロン、パロキセチン、ベンラファキシン及びイロペリドンが含まれる。CPY2D6活性が正常より低い患者は、本明細書では、CYP2D6代謝欠損型と称する。
【0007】
本発明はまた、CYP2D6酵素によって代謝される化合物、特にイロペリドン又はそれらの活性代謝物又はいずれかの薬剤として許容される塩(例えば、それらの溶媒化合物、多形、水和物及び立体異性体)によって治療した後、QT延長の危険性に関連する可能性がある遺伝子多形の同定方法、並びにこのような多形を有する個体にこれらの化合物を投与する関連方法に関する。
【0008】
本発明は、イロペリドン又はその代謝物の濃度増加に対応するCYP2D6遺伝子座内の遺伝子多型と、基準値とを比較した修正QT(Qtc)間隔に対するこのような濃度増加の効果との間の関係を説明する。QTcを計算するために、例えば、特にFridericia式(QTcF)及びBazett式(QTcB)を含む様々な式を使用することができる。本発明は、このような式又はQTcを計算するための方法を含む。
【0009】
本発明の第1の態様は、患者のCYP2D6遺伝子型を決定するステップと、CYP2D6代謝欠損型である患者にはCYP2D6迅速代謝型である患者よりも低い用量を投与するように、患者のCYP2D6遺伝子型に基づいて、有効量のイロペリドン又はそれらの活性代謝物又はいずれかの薬剤として許容される塩を患者に投与するステップとを含む、イロペリドン又はそれらの活性代謝物又はいずれかの薬剤として許容される塩による患者の治療方法を提供する。
【0010】
本発明の他の態様は、患者にCYP2D6代謝欠損型ではない個体に投与するよりも低い投与量を投与する、イロペリドン又はそれらの活性代謝物又はいずれかの薬剤として許容される塩によるCYP2D6代謝欠損型である患者の治療方法を提供する。
【0011】
本発明の他の態様は、患者がCYP2D6阻害剤を投与されているかどうかを決定するステップと、患者がCYP2D6阻害剤を投与されている場合、薬剤の投与量を減少させるステップとを含む、イロペリドン又はそれらの活性代謝物又はいずれかの薬剤として許容される塩による患者の治療方法を提供する。
【0012】
本発明の他の態様は、イロペリドン又はそれらの活性代謝物又はいずれかの薬剤として許容される塩のある量を患者に投与するステップと、患者血中のイロペリドン及びイロペリドン代謝物の少なくとも1種の第1濃度を決定するステップと、少なくとも1種のCYP2D6阻害剤を患者に投与するステップと、患者血中のイロペリドン及びイロペリドン代謝物の少なくとも1種の第2濃度を決定するステップと、第1及び第2濃度を比較するステップとを含む、患者のCYP2D6表現型の決定方法を提供する。
【0013】
本発明の他の態様は、患者のCYP2D6遺伝子型又はCYP2D6表現型のいずれかを決定することによって患者のCYP2D6代謝状態を決定するステップを含む、患者がイロペリドン投与によってQTc間隔延長の危険性があるかどうかを決定する方法を提供する。患者にQTc間隔延長の危険性があることが決定された場合、この患者に投与するイロペリドンの投与量は削減することができる。
【0014】
本発明の他の態様は、野生型CYP2D6酵素の活性と比較してイロペリドン及びその代謝物の少なくとも1種に対する患者のCYP2D6酵素の活性を測定するステップと、患者のCYP2D6酵素活性が野生型CYP2D6の活性よりも低い場合、イロペリドン及びその薬剤として許容される塩の少なくとも1種の用量を減少させるステップとを含む、ヒト患者における疾患又は障害を治療するために、イロペリドン又はそれらの活性代謝物又はいずれかの薬剤として許容される塩を投与する方法を提供する。
【0015】
本発明の他の態様は、イロペリドン又はP88で治療した患者の、特にQT延長又はQT延長に関連した有害な作用を起こしやすい患者の血液試料中のP88:P95比及び/又は(P88+イロペリドン):P95比に基づいて、イロペリドン又はそれらの薬剤として許容される塩の用量及び/又は投与頻度の変更に関する。
【0016】
本発明の他の態様は、検出装置、サンプリング装置及びキットを使用するための指示書を含む、個体のCYP2D6遺伝子型の測定に使用するためのキットを提供する。
【0017】
本発明の他の態様は、検出装置、収集装置及びキットを使用するための指示書を含む、個体のCYP2D6表現型の測定に使用するためのキットを提供する。
【0018】
本発明の他の態様は、検出装置、収集装置及びキットを使用するための指示書を含む、個体におけるP95に対するP88の比並びにP95に対するP88及びイロペリドンの比の少なくとも1種の測定に使用するためのキットを提供する。
【0019】
本発明のさらに他の態様は、イロペリドン、イロペリドンの薬剤として許容される塩、イロペリドンの活性代謝物及びイロペリドンの活性代謝物の薬剤として許容される塩の少なくとも1種を含む医薬組成物を商品化するための方法であって、患者に投与する用量を決定する前に患者がCYP2D6代謝欠損型であるかどうかを決定するために指示書に従って投与したとき、この組成物がヒトを治療するのに有効であることを示すデータを、規制当局に提出することによってこの組成物の当局承認を得ること、及びこのような組成物のこのような形態での使用に関する情報を処方者又は患者又はその両者に広めることを含む方法を提供する。
【0020】
本発明の前記及びその他の特性は、本発明の実施形態の以下のより具体的な説明から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
イロペリドンは、ベンズイソオキサゾール−ピペリジニル誘導体であり、近年CNS障害の治療のために開発されている。イロペリドンのプラセボ対照第III相試験のデータは、終点のシングルECGに対して基準のシングルECGを比較したとき、4〜24mgの用量においてQT間隔(QTcF)のFriericia修正が0.1msecから8.5msecに増加することを示した。イロペリドン低用量(4mg〜16mg)では、QTcF延長は最小限であった(0.1〜5mg)。ごく最近の研究では、より高い用量(20〜24mg/日)のイロペリドンについて研究したとき、より長い延長が認められた。この研究では、20〜24mg/日の用量でのQTcFの平均変化は8.5msecであり、12〜16mg/日の用量範囲では4.6msecであった。これらのデータは、イロペリドンによる治療は、この種のその他の薬剤と同様にQT間隔の延長に関連することができ、その効果は臨床用量範囲内において用量感受性であり得ることを示唆している。
【0022】
本発明につながる研究は、注意深く制御した条件下で、ジプラシドン及びクエチアピンのQTc間隔に対する効果と比較してイロペリドンの様々な用量の効果を試験するために設計された。イロペリドンへの曝露と対照薬への曝露との間にあり得る関係をQTc間隔に対してさらに評価するために、定常状態条件下で、各薬剤の主要な代謝経路を薬理学的に阻害した後に再評価することも計画した。
【0023】
実施例1
薬理遺伝学的分析用の血液試料をスクリーニング時に収集した。代謝欠損状態に既に関連のある2種の多形性はCYP2D6遺伝子座中に同定され、251個の遺伝子型が収集された。個々の遺伝子型を、遺伝子型の種類とイロペリドン及びその代謝物P88及びP95濃度との間の関係の検出のために研究した。多形の機能的効果はまた、親薬剤及びその代謝物の濃度に対するCYP2D6阻害剤パロキセチンの添加の効果を分析することによって評価された。
【0024】
本発明につながる研究は、阻害剤を添加する前にCYP2D6遺伝子型とP88の濃度との間の有意な関係並びにQTc延長に対するこの関係の効果を同定した。
【0025】
イロペリドンは、2種のP450酵素、CYP2D6及びCYP3A4の基質である。イロペリドンの代謝クリアランスのほとんどはこれら2種の酵素に左右される。CYP2D6は、代謝物P94を形成するために付属のアセチル基の加水分解を触媒し、代謝物P94はさらにいくつかの反応の後にP95に変換される。イロペリドンと共にCYP2D6阻害剤フルオキセチンを添加すると、曲線下面積(AUC)の増加が生じ、イロペリドンでは131%で、P88では119%であった。相互作用研究においてCYP3A4阻害剤ケトコナゾールを添加すると、イロペリドン並びにその主要な代謝物P88及びP95の濃度の38〜58%の増加が生じた。P88は、イロペリドンと同様の、HERGチャンネルに対する親和性を含めた薬理学的プロファイルを有する。P95は、HEFGチャンネルに対する親和性が非常に低いことを含めて、イロペリドンと比較して親脂質性が低く、結合プロファイルが異なる。これらの理由のため、P95は薬理学的に不活性であると見なされる。
【0026】
したがって、この研究において代謝阻害剤を添加すると、イロペリドン及び/又はその代謝物の血中濃度増加のQT間隔に対する効果の評価が可能であった。より具体的には、この研究は、CYP2D6阻害剤、パロキセチン添加前後及びCYP3A4阻害剤、ケトコナゾールの添加前後のイロペリドンのQTcに対する効果の評価が可能であった。
【0027】
CYP2D6遺伝子は、多形性が高く、今までに70個を上回る対立遺伝子変種が記載されている。例えば、http://www.imm.ki.se/CYPalleles/CYP2D6.htmを参照のこと。本発明のほとんどの実施形態は、コーカサス人種のCYP2D6遺伝子内の最も一般的な2種の多形、CYP2D6G1846A及びCYP2D6P34S(CYP2D6C110Tとも称する)に関する。これらの多形は、ジーンバンク配列M33288.1(GI:181303)のヌクレオチド3465及び1719それぞれに対応する。CYP2D6P34S/CYP2D6C100T多形はまた、ジーンバンクmRNA配列M20403.1(GI:181349)のヌクレオチド100に対応する。
【0028】
CYP2D6G1846A多形(CPYP2D6*4対立遺伝子として知られる、*4A、*4B、*4C、*4D、*4E、*4F、*4G、*4H、*4J、*4K及び*4Lを包含する)は、イントロン3とエキソン4の間の接合部のGからAへの遷移を表し、1塩基対によってスプライス部位を移動させ、フレームシフト及び蛋白質の中途終止を引き起こす(Kagimoto 1990、Gough 1990、Hanioka 1990)。CYP2D6P34S/CYP2D6C100T多形(CYP2D6*10及びCYP2D6*14対立遺伝子として知られている)は、34位のプロリンのセリンによる置換を生じるCからTへの変化を表す(Yokota 1993、Johansson 1994)。これらの多形はいずれも、異なる基質に対する酵素活性の減少に関連してきた(Johansson 1994、Dahl 1995、Jaanson 2002、Bertilsson 2002の総説も参照のこと)。
【0029】
方法
A.試料
128人の個体が薬理遺伝学研究に同意した。薬理遺伝学プロトコールに従い、患者の同意を得た後、血液試料を採取した。DNAは、CovanceによってPUREGENE DNA単離キット(D−50K)を使用して全血から抽出された。
【0030】
参加した128人の個体は、165人の個体の全試料を良く表しており、イロペリドン8mg群からは、1日2回投与群全体29人のうちの22人、イロペリドン12mg群からは、1日2回投与群34人のうちの30人、イロペリドン24mg群からは、1日1回投与群31人のうちの22人、リスペリドン群5人のうちの3人、ジプラジドン群33人のうちの28人、クエチアピン群33人のうちの23人が参加した。
【0031】
B.遺伝子型同定
CYP2D6G1846A多形の遺伝子型は、同意した個体128人のうち123人で確認され、CYP2D6C100T多形の遺伝子型は、参加者128人全体について確認された。遺伝子型同定は、増幅したDNA断片で実施された。CYP2D6ゲノム領域は、triplex PCR法(Neville 2002)を使用して増幅した。簡単に説明すると、使用したプライマーは:
エキソン1&2 2D6L1F1:CTGGGCTGGGAGCAGCCTC
2D6L1R1:CACTCGCTGGCCTGTTTCATGTC
エキソン3、4、5&6 2D6L2F:CTGGAATCCGGTGTCGAAGTGG
2D6L2R2:CTCGGCCCCTGCACTGTTTC
エキソン7、8&9 2D6L3F:GAGGCAAGAAGGAGTGTCAGGG
2D6L3R5B:AGTCCTGTGGTGAGGTGACGAGG
であった。
【0032】
増幅は、GCリッチPCRキット(Roche Diagnostics、Mannheim、ドイツ)を使用して、製造元の推奨に従ってゲノムDNAの40〜100ngで実施した。熱還流条件は以下の通りである。最初の変性(95℃、3分)、変性30秒(95℃、30秒)、アニーリング(66℃、30秒)、伸長(72℃、60秒)を10回、次いで、95℃で30秒、66℃で30秒、72℃で60秒+5秒/回を22回。最後の伸長は(72℃で7分)で行った。
【0033】
Third Wave Technologies、Inc(Madison、WI)は、遺伝子型同定用プローブセットを開発した。遺伝子型同定は、Invader(登録商標)測定法(Lyamichev 1999)(Third Wave Technologies、Inc)を使用して、製造元の推奨に従ってPCR産物で実施した。
【0034】
3種のイロペリドン群に割り当てられた個体の遺伝子型には、有意な違いはなかった(表1A及び1B)。
【表1】


【表2】

【0035】
C.統計学的分析
期間1濃度に対する2種のCYP2D6多形の遺伝子型の効果は、以下のANOVAモデルを使用して評価した。親化合物又は代謝物が最大血中濃度に達したとき(Tmax)、期間1における阻害剤なしでのイロペリドン、P88及びP95の濃度を従属変数として使用し、種類及び治療のように各多形の遺伝子型は共変量として使用した。イロペリドンを1回投与した後、治療効果を調節するために、8mgの1日2回投与を8と識別し、12mgの1日2回投与を12と識別し、24mgの1日1回投与を24と識別した。
【0036】
CYP2D6酵素の阻害程度に対するこれらの多形の関数は、CYP2D6の阻害剤を添加した後、期間2におけるP88及びP95の濃度の比から計算した。イロペリドン及び/又はその代謝物(例えば、P88及びP95)の濃度は、滴定を含めた公知の、又は最近開発された方法もしくは装置によって、期間1及び/又は期間2において測定することができる。
【0037】
結果及び考察
この酵素の活性に対する2種のCYP2D6多形の機能的違いを理解するために、様々な遺伝子型と代謝物P88及びP95の相対濃度との関係を調べた。P88は、CYP2D6によって分解され、CYP2D6はP95の合成に関係することが知られている。したがって、P88及びP95の相対量は、CYP2D6酵素の活性によって調節されるだろう。期間1における阻害前、及び2種の代謝物のTmax時のP88/P95の比、並びに期間2におけるCYP2D6阻害剤パロキセチン添加後のP88/P95の比を計算した。野生型酵素を有する個体では、P88の濃度は期間2において増加するが、同期間においてP95の濃度は減少することが予測される。
【0038】
期間1では、イロペリドン治療患者91人の平均P88/P95比は1.0に等しく、範囲は0.14から8.19であった。期間2における同個体の平均比は2.4で、範囲は0.5から8.49であった。期間1/期間2比の平均比は0.37に等しく、範囲は0.11から2.75であった。
【0039】
遺伝子型を決定した患者では、この値は、期間1、期間2及び期間1/期間2それぞれの平均の1、2.45及び0.37と類似しており、試料の偏りはないことを示している。多形CYP2D6G1846Aでは、この平均は3種の遺伝子型、AA、AG及びGGの間で有意に異なっていた。AAでは、それぞれの値は6.1、3.41及び1.89で、AGでは、2.4、4.2及び0.52で、GGでは0.57、1.94及び0.28であった(表2)。
【表3】

【0040】
遺伝子型の種類の間の差は、ANOVA試験でp<0.0001のレベルで有意であった。これらのデータは、期間1におけるP88/P95の比が高く、期間2における阻害剤添加の効果が比較的小さいことによって示されるように、AA型がCYP2D6代謝欠損型を表すこと示唆している。AG型は、比の比によって示されるように、代謝欠損型と阻害剤添加後のCYP2D6活性が約2倍減少した野生型との間の中間表現型を示すようである(表2)。この分析は、イロペリドンの代謝物に関連するので、CYP2D61846A多形の表現型特性を提供する。
【0041】
この多形の機能的役割を確立して、各遺伝型の種類についてP88のTmax時の期間1におけるP88の濃度を計算した。3種のイロペリドン投与群それぞれについて、P88濃度は、GG型と比較すると、AA及びAG型で有意に高かった(p<0.005)(表3)。
【表4】

【0042】
A対立遺伝子を有する個体の数は限定されているが、この研究で得られた結果は一貫して、AA型及びAG型の個体は、GG型の個体と比較してTmax時により高いP88濃度を経験することが予測されることを示している。同様の結果が、多形CYP2D6C100Tで得られた(表4及び5)。
【表5】


【表6】

【0043】
この多形は、CYP2D6G1846A多形とほとんど完全に連鎖不均衡である事実を考えると、この結果は予測される。
【0044】
期間1のTmaxでのP88の濃度の差が阻害剤添加後のQTcの延長に関係するかどうかを理解するために、CYP2D6G1846A AG群のP88で観察された平均値を使用して、患者全体を2種類の群に分けた。最初の群は、両方の阻害剤を添加した後の期間3のP88濃度が34ng/mL以下である個体を含み、第2の群はP88の濃度が34ng/mLを上回る個体を含む。次に、期間3の基準値からのQTc変化に関して2種の群を比較した。最初の群P88>34(n=55)のANOVA統計値を使用すると、期間3の基準値からのQTc平均の変化は22.7msecであり、P88≦34(n=12)を使用すると、同期間の平均QTcは7.7msecであった。遺伝子型及びイロペリドン用量による期間1及び期間2の基準値からのQTc変化を表6及び7に挙げる。
【表7】


【表8】

【0045】
しかし、これらの結果は、観察数が少ないので、注意深く調べなければならない。イロペリドン24mgの1日1回に注目するならば、GGと比較して、CYP2D6G1846AのAA及びAG患者のQTcは高くなる傾向がある。この差は、期間2でCYP2D6阻害剤添加後では消失する。
【0046】
これらの所見は、異なる遺伝子型群間の期間1におけるP88濃度の違いは、基準値からのQTc変化に関係し得ることを示唆している。観察数が少なく、研究の遺伝子型設計が不均衡であるならば、このデータのさらなる解釈を許可する前に、前向き検証的研究が必要である可能性がある。
【0047】
これらの警告にもかかわらず、前述した結果は、イロペリドンの用量をそれぞれの患者のCYP2D6遺伝子型に基づいて調節するならば、イロペリドンによってより安全に患者を治療できることを示す。例えば、患者が野生型CYP2D6と比較して、CYP2D6蛋白質の活性減少を引き起こす遺伝子型を有する場合、このような患者に投与するイロペリドンの用量は、例えば、P88に対して野生型CYP2D6遺伝子型/蛋白質と同じ、又は実質的に同じ酵素活性を有するCYP2D6蛋白質を生じるCYP2D6遺伝子型を有する患者に一般的に投与する用量の75%以下、50%以下、25%以下に削減させる。例えば、個体に投与するイロペリドン又はその他のCYP2D6代謝化合物の通常投与量が1日当たり24mgである場合、CYP2D6活性減少に関連する遺伝子型を有する患者には、1日当たり18、12又は6mgの少ない投与量を投与することができる。
【0048】
CYP2D6活性減少は、本明細書で参考として援用したhttp://www.imm.ki.se/CYPalleles/CYP2D6.htmに記載されたものを含めたその他の変異の結果であることができる。特に、CYP2D6*2A変異は、イントロン1におけるCYP2D7遺伝子変換を含む。場合によって、CYP2D6代謝欠損型においてCYP2D6活性が低い原因は、遺伝子型以外の要素である可能性がある。例えば、患者がCYP2D6活性を減少させる薬剤などの薬剤による治療を受けている可能性がある。
【0049】
QTc延長は、P88/P95比及び(イロペリドン+P88)/P95比に相関する。CYP2D6迅速代謝型の平均比は、それぞれ0.57及び1.00である。前記の表3及び5に示したように、CYP2D6代謝欠損型は、CYP2D6迅速代謝型と比較してP88レベルが上昇した。
【0050】
CYP2D6代謝欠損型は、集団の約15%を含むので、研究した集団の約15%ではP88/P95比が2.0を上回り、残りの85%ではP88/P95比は2.0未満であった。以下の表8は、各投与量群のQTcの最小二乗平均変化を示す。いくつかの群の結果は統計学的に有意ではないが、QTc延長はP88/P95比に相関するという仮説を支持する傾向を示している。カットオフ比3.0及び4.0を分析したとき、同様の結果が得られたので、治療後に患者が経験する可能性があるQTc延長の範囲は、P88及びP95の血液レベルを測定することによって予測できるという仮説がさらに支持される。
【表9】

【0051】
(イロペリドン+P88)/P95比に対するQTcの相関を考察したとき、同様の結果が得られた。また、集団の約15%がCYP2D6代謝欠損型であるため、研究した集団の約15%では(イロペリドン+P88)/P95比は3.0を上回るが、残りの85%は3.0未満を示すことが発見された。以下の表9は、各投与量群のQTcの最小二乗平均変化を示す。いくつかの群の結果は統計学的に有意ではないが、QTc延長は(イロペリドン+P88)/P95比に相関するという仮説を支持する傾向を示している。実際に、カットオフ比3以上を分析したとき、同様の結果が得られたので、治療後に患者が経験する可能性があるQTc延長の範囲は、イロペリドン、P88及びP95の血液レベルを測定することによって予測できるという仮説がさらに支持される。
【表10】

【0052】
CYP2D6G1846A(AA又はAG)遺伝子型及びCYP2D6C100T(CT又はTT)遺伝子型を実施例1で例示するが、本発明の方法は、イロペリドン及びP88に対するCYP2D6蛋白質の活性減少をもたらすその他の遺伝子型を使用することができる。本明細書の開示に基づいて、イロペリドン及びP88に対する酵素活性減少をもたらす他のCYP2D6遺伝子型を同定することは当業者の範囲内である。
【0053】
実施例2
第2の研究は、非機能性タンパク質の産生又は酵素活性の減少を引き起こす他のCYP2D6変種の遺伝子型を同定することによって、イロペリドン応答の薬理ゲノミクス評価を拡大した。
【0054】
変種の6つは、(CYP2D65多形におけるような)遺伝子の欠失、フレームシフト(3及び6)、スプライシングエラー(4)、又は切断型もしくは異常型タンパク質(7及び8)のいずれかによって、機能的酵素の欠如を生じることが示された。デブリソキンもしくはスパルテインなどの種々の化合物に対する酵素活性の有意な減少を示すか(9、10、17、41)、又は中程度の活性減少を示す(2)機能的タンパク質の産生を生じたその他5種類の多形の遺伝子型を同定した。酵素に対するこれらの個々の多形の実際の影響は化合物毎に異なり、同じタンパク質に多形がいくつか存在することによってさらにCYP2D6活性が減少し得る。
【0055】
方法
A.試料
CYP2D64及び10変種(VP−VYV−683−3101)の遺伝子型が最初に同定されたイロペリドン治療患者300人の残存するDNA試料222個を使用して、このようなさらに詳しい薬理ゲノミクス分析を行った。1患者は、Quest Diagnostics Central Laboratory(Collegeville、PA)及びCogenics(Morrisville、NC)によって得られたCYP2D64対立遺伝子とは矛盾した結果であったので分析から除外した。これらの患者の168人について(イロペリドン+P88)/P95比の薬物動態データが利用できた。14日目及び28日目のQT測定値は、それぞれ169人及び146人の患者から入手できた。
【0056】
B.遺伝子型同定
11個の特定のCYP2D6多形を評価した(表10)。
【表11】

【0057】
CYP2D610対立遺伝子の遺伝子型はQuest Diagnostics Central Laboratory(Collegeville、PA)によって得られ、CYP2D62、3、5、6、7、8、9、17及び41対立遺伝子の遺伝子型はCogenics(Morrisville、NC)によって得られ、CYP2D64の対立遺伝子の遺伝子型はQuestで得られ、一部の患者についてはCogenicsからも得られた。
【0058】
CYP2D62対立遺伝子は、一連の変異によって特徴付けられる。このアッセイでは、アミノ酸296のアルギニンからシステインへの置換を引き起こす2850位のシトシンからチミンへのトランジションを調べた(Johansson他、1993、Wang他、1995)。CYP2D6マルチプレックスPCRによる最初の産物を増幅し、得られた産物をHhaIで消化した。HhaI消化によって、wt/wt遺伝子型では476、372、247、178及び84塩基対断片が生じ、2/wt遺伝子型では550、476、372、247、178及び84塩基対断片が生じ、2/2遺伝子型では550、476、247及び84塩基対断片が生じた。PCR産物は、ゲル電気泳動して、紫外線下で撮影した。
【0059】
CYP2D6対立遺伝子3、4、6、7及び8の存在は、マルチプレックスPCR(Stuven他、1996)を使用してアッセイした。CYP2D63対立遺伝子は、エキソン5におけるヌクレオチド2549の1塩基(アデニン)欠失によって生じる(Buchert他、1993)。CYP2D64対立遺伝子の欠損は、イントロン3における最後のヌクレオチド(1846位)のグアニンからアデニンへのトランジションによって異常な3’スプライシング認識部位が生じることによる(Hanioka他、1990)。CYP2D66対立遺伝子は、エキソン3における1707位のチミン欠失によって、未熟な終止コドンが生じることによって引き起こされる(Saxena他、1994)。CYP2D67対立遺伝子は、2935位のアデニンからシトシンへのミスセンス変異によって生じ、エキソン6におけるアミノ酸324のヒスチジンからプロリンへの置換が引き起こされ、酵素機能の全欠如がもたらされる(Evert他、1994)。CYP2D68対立遺伝子の欠損は、1758位のグアニンからチミンへのトランジションによって未熟な終止コドンの挿入が生じることによる(Stuven他、1996)。
【0060】
最初の増幅によって、5種類の対立遺伝子全てを含有する1578塩基対の産物が生じた。1578塩基対の産物は、5種類の対立遺伝子を同時に同定するマルチプレックス対立遺伝子特異的アッセイの鋳型として役だった。最初のPCR鋳型を、野生型又は変異型対立遺伝子を認識するプライマーを含有する2種類の別個のマスターミックスに添加した。これらのプライマーは、7、3、4、8及び6対立遺伝子それぞれに対する1394、1010、304、219及び167塩基対のPCR産物を生じる。内部標準として、8のプライマーを逆にした。すなわち、8の野生型対立遺伝子を認識するプライマーを変異型マスターミックスに存在させ、8の変異型対立遺伝子のプライマーを野生型マスターミックスに存在させた。野生型遺伝子型では(8を除く)、PCR産物は野生型の列に出現し、変異型の列にはPCR産物は認められなかった。ヘテロ接合体遺伝子型では、同じ大きさの断片のPCR産物は野生型及び変異型の列の両方に出現した。変異型遺伝子型では(8を除く)、PCR産物は変異型の列にのみ出現した。PCR産物は、ゲル電気泳動して、紫外線下で撮影した。
【0061】
CYP2D65対立遺伝子は、CYP2D6遺伝子の完全な欠失から生じる(Gaedigk他、1991、Steen他、1995)。ロングレンジ(long−range)PCR法を使用してCYP2D6遺伝子座の欠失を同定した。PCR産物の有無及び強度によって、野生型、ヘテロ接合体変異体又は変異型対立遺伝子を同定した。PCR産物は、ゲル電気泳動して、紫外線下で撮影した。
【0062】
CYP2D69変異は、2613〜2615位における3塩基対欠失である(Tyndale他、1991)。これによってアミノ酸281のリシンの欠失が生じる。CYP2D641変異は、2988位のグアニンからアデニンへのトランジションによる(Raimundo他、2004)。最初の増幅によって、2種類の対立遺伝子を含有する1578塩基対の産物が生じた。1578塩基対産物は、2種類の対立遺伝子を同時に同定するマルチプレックス対立遺伝子特異的アッセイの鋳型として役だった。最初のPCR鋳型を、野生型又は変異型対立遺伝子を認識するプライマーを含有する2種類の別個のマスターミックスに添加した。これらのプライマーは、9野生型、内部標準及び41野生型それぞれに対する409、593及び780塩基対のPCR産物を生成した。野生型遺伝子型では、PCR産物は野生型の列に出現し、変異型の列にはPCR産物は認められなかった。ヘテロ接合体遺伝子型では、PCR産物は、野生型及び変異型の列の両方に出現した。変異型遺伝子型では、PCR産物は変異型の列にのみ出現した。PCR産物は、ゲル電気泳動して、紫外線下で撮影した。
【0063】
CYP2D617対立遺伝子は、1023位のシトシンからチミンへの塩基変化によって、エキソン2におけるアミノ酸107のトレオニンからイソロイシンへの置換が生じることによって引き起こされる(Masimirembwa他、1996)。最初の増幅によって、CYP2D617対立遺伝子を含有する369塩基対の産物が生じた。最初のPCR鋳型を、野生型又は変異型対立遺伝子並びに内部標準を認識するプライマーを含有する2種類の別個のマスターミックスに添加した。これらのプライマーは、17対立遺伝子及び内部標準それぞれに対する235及び181塩基対のPCR産物を生成した。野生型遺伝子型では、両PCR産物は野生型の列に出現したが、変異型の列に認められたのは内部標準PCR産物のみであった。ヘテロ接合体遺伝子型では、両PCR産物が野生型及び変異型の両方の列に出現した。変異型遺伝子型では、両PCR産物は変異型の列に出現し、内部標準PCR産物のみは野生型の列に認められた。PCR産物は、ゲル電気泳動して、紫外線下で撮影した。
【0064】
C.統計学的分析
分析は、観察した症例データにおいて、QTc(Fridericia式)のベースラインからの変化については共変量として基準値を用いたANCOVAモデルを使用して、14日目及び28日目のイロペリドン血液曝露についてはANOVAモデルを使用して実施した。連鎖不均衡分析は、Haploview v4.0(Barrett他、2005)を使用して実施した。
【0065】
統計学的に有意な関連が、CYP2D64、CYP2D65、CYP2D610及びCYP2D641対立遺伝子とイロペリドン血液曝露レベルとの間に認められた。薬剤濃度の比[(イロペリドン+P88)/P95]は、非機能性CYP2D6対立遺伝子及び酵素活性減少に関連する可能性がある変種が存在すると増加した。さらに、少なくとも1種の非機能性CYP2D6対立遺伝子を有する患者は、2個の機能性コピーを有する患者よりもイロペリドン治療14日後のQTc延長が長かった。28日目までに、QTcF延長は減少したが、2種類の患者群にはまだ統計学的な差があった。
【0066】
イロペリドン治療患者において遺伝子型が同定された11種のCYP2D6変種を表10に挙げ、人種毎のそれぞれの対立遺伝子頻度を表11に挙げる。
【表12】

【0067】
6種類の非機能性CYP2D6変種、3、4、5、6、7及び8の遺伝子型を同定した。最も一般的な変種は4で、白人患者では16.2%、黒人及びアフリカ系アメリカ人患者では11.0%、アジア人患者では12.0%に検出された。4変種は白人(約20%)及びアフリカ系アメリカ人(7.5%)では最も一般的な非機能性CYP2D6変種であり、一方アジア人では稀であると予測されることが以前に報告された(Bradford 2002)。5変種は、人種群に応じて3〜6%の頻度で認められており、以前の報告(Bradford 2002)と矛盾していなかった。予測通りに、3、6、7は稀で、8はいずれの患者においても認められなかった。
【0068】
CYP2D6酵素活性減少に関与する4種類の変種の遺伝子型を同定した。10はアジア人でよく認められ(38〜70%)、17はアフリカ系アメリカ人の約22%で報告されており、41は白人では一般的と思われ(おそらく約20%)、9は少数の個体でのみ認められた(1〜2%)(Bradford 2002)。
【0069】
10変種は、全人種群のイロペリドン治療患者の15〜20%で認められた。10は、白人及びアフリカ系アメリカ人では予測よりも高い頻度で生じていたが、アジア人での頻度は低かった。その他の研究は、アジア人では10の割合が高い(38%を上回る)が、白人(4〜8%)及びアフリカ系アメリカ人(2〜7%)ではずっと低い割合であることが報告された(Bradford、2002)。17変種は、黒人及びアフリカ系アメリカ人では最も一般的な変種で(17.6%)、アジア人(5.9%)及び白人(1.1%)では非常に稀であり、この結果は、これらの集団で予測された頻度と一致している(Bradford 2002)。
【0070】
予測通り、41変種は白人では最も一般的であったが(11.2%)、アフリカ系アメリカ人では稀であった(1.4%)。この変種はその他の集団では詳細に研究されていないが、アジア人の8.8%にも認められた。
【0071】
機能性2変種は、CYP2D6タンパク質をコードする最も一般的に生じる変種であることが報告されたが、活性は少し減少していた(野生型の約80%)(Bradford 2002)。2変種は最も一般的に認められる変種で、人種群に応じて頻度は32〜44%であった。
【0072】
CYP2D6変種の頻度が高いので、何人かの個体は酵素活性の減少又は消失に関連した複数の対立遺伝子を有するようである。
【0073】
この研究では2個の非機能性対立遺伝子を有する患者は7人のみ確認されており(3.1%)、6人がホモ接合体4/4で、1人が複合ヘテロ接合体5/4であった。72人の患者(32.1%)がCYP2D6の機能性コピーを1個のみ有していた。61人の患者(27.2%)がCYP2D6の機能性コピーを2個及び酵素活性が減少した可能性のある対立遺伝子変種を1個又は2個有していた。その他の84人の患者(37.5%)は、2変種のみを有しているか、又は各変種遺伝子座におけるホモ接合体wt/wtであった。
【0074】
連鎖不均衡(LD)分析によって、いくつかのCYP2D6遺伝子座が完全な連鎖不均衡内に存在することが明らかになった。4変種は、10(D’=1、LD 42.33)及び2(D’=1、LD 5.75)のLD内に存在した。2変種はまた、17(D’=1、LD 13.44)、10(D’=1、LD 8.89)及び41(D’=1、LD 5.43)のLD内に存在した。
【0075】
イロペリドン血液曝露した個々のCYP2D6変種の分析によって、4及び10変種は(イロペリドン+P88)/P95比と有意に関連しており、wtの1.10に対して4対立遺伝子の比は2.28(p=2.8E−08)、wtの1.03に対して10対立遺伝子の比は2.20であった(p=2.4E−09)(表12)。5及び41変種にも有意な関連が認められ、wtの1.19に対して5対立遺伝子の比は2.16(p=0.0016)、wtの1.19に対して41対立遺伝子の比は2.02であった(p=0.0045)(表12)。
【表13】

【0076】
既に検討したように、複数のCYP2D6変種の存在はさらに、発現するCYP2D6の全体量及びその総酵素活性に影響を及ぼし得る。したがって、機能性及び非機能性対立遺伝子全ての存在並びに変種のいくつかに関連して予測される活性減少を考慮して、さらなる分析を実施した。活性減少に関連した対立遺伝子及び非機能性対立遺伝子の存在によって、(イロペリドン+P88)/P95比増加の明らかな勾配が認められた(表13)。2個の非機能性対立遺伝子を有する患者は、(イロペリドン+P88)/P95比が6.4であることがわかり、これは非機能性対立遺伝子を1個だけ有する患者(1.8)、活性減少に関連した対立遺伝子を1個もしくは2個有する患者(1.15)又は機能性対立遺伝子を2個有する患者(0.80)よりずっと高かった(表13)。
【表14】

【0077】
イロペリドン代謝の有意な減少が少なくとも1個の非機能性CYP2D6対立遺伝子を有する患者で認められたので、これらの患者ではまた、イロペリドン治療後にQTcF延長が増加しているかどうかについても調べた(表14)。治療14日後に、少なくとも1個の非機能性CYP2D6対立遺伝子を有する患者は、QTcF間隔の延長(16.3msec)が2個の機能性コピーを有する患者(9.7msec、p=0.01)よりも有意に高かった。28日目までに、QTcF延長は減少したが、2群間にはまだ統計学的に差があった(それぞれ11.4及び4.4msec、p=0.02)。
【表15】

【0078】
D.結果及び考察
特定のCYP2D6遺伝子型に関係ない(イロペリドン+P88)/P95比に基づく比較によって、14日目のQTcは、比が>1の患者の16.0msecと比べて比が≦1の患者では7.9msec、p=0.0002であることが明らかになった(表15)。28日目のQTcFは、比が≦の患者では4.8msec、>1の患者では10.1msecに減少した。
【表16】

【0079】
200人を上回るイロペリドン治療患者の複数のCYP2D6変種を遺伝子型同定することによって(表11)、連鎖不均衡内にあるCYP2D64及び10対立遺伝子は白人(それぞれ16.2%及び17.1%)及びアジア人(それぞれ12%及び20%)において酵素活性減少又は消失に関連した最も一般的な対立遺伝子であることがわかった。黒人及びアフリカ系アメリカ人では、17対立遺伝子が4及び10対立遺伝子よりも一般的であった(17.6%に対してそれぞれ11%及び14.7%)。5対立遺伝子の頻度は約5%で、その他の非機能性対立遺伝子は非常に稀であった。CYP2D6変種の頻度データの最も詳細な分析は、ヨーロッパの白人集団、中国人及び日本人集団、又は選択されたアフリカ地域から得られた。現在では、US集団における対立遺伝子頻度については数少ない研究しか報告されておらず、ヨーロッパの白人、アフリカ人、中国人又は日本人集団のデータとこの研究で認められた差のいくつかは、US集団の地域的及び国家的特異性を反映しているようである。
【0080】
4、10、5及び41対立遺伝子はCYP2D6イロペリドン代謝の減少、より詳細には、(イロペリドン+88)/95比の増加に有意に関連していることが認められた(表12)。試験した対立遺伝子全ての遺伝子型データを考慮すると、この比は非機能的対立遺伝子及び活性減少に関連した対立遺伝子の数に明らかに左右されることが示された(表13)。
【0081】
さらに、イロペリドン代謝の減少は、治療14日後及び28日後のQTcF延長の増加に関連していた。少なくとも1個の機能性CYP2D6対立遺伝子を有する患者と2個の機能性対立遺伝子を有する患者の間には有意差が認められた(表14)。この差は、特定のCYP2D6遺伝子型に関係なく(イロペリドン+P88)/P95比が≦1又は>1の患者の間にも認められた(表15)。これらの結果は、QTcF延長の可能性が患者に危険であると考えられるならば、イロペリドンで患者を治療するときに医師にとって期待されるリスクマネージメント戦略及び有望な試験手段となる。
【0082】
前記で説明したように、イロペリドンの最適用量を決定するための出発点は、イロペリドン及びP88に対して野生型CYP2D6タンパク質と同様の活性を有するタンパク質を生じるCYP2D6遺伝子型を有する患者において、許容される安全性及び有効性が示された用量である。このような用量は当業界で公知であり、例えば、前記の米国特許第5,364,866号に開示されている。
【0083】
一般的に、患者に投与するイロペリドンの用量は、前記のように、イロペリドン及びP88に対するCYP2D6酵素の酵素的活性が野生型CYP2D6の活性の約75%未満である場合、減少するだろう。酵素活性は、例えば、個体の血液中のイロペリドン及び/又はP88のレベルの測定を含む様々な方法によって測定することができる。このような場合、イロペリドン用量は、イロペリドン及び/又はP88の測定レベルが正常なCYP2D6酵素活性を有する個体の血液中で測定されたレベルと実質的に同じであるように減少させることができる。例えば、患者のCYP2D6酵素活性が、1種又は複数の方法(例えば、遺伝子型同定、デキストロモルファン(dextromorphan)血中レベルの測定)によって、正常なCYP2D6酵素活性を有する個体で通常観察される酵素活性の50%であると評価された場合、この患者への投与量は、正常なCYP2D6酵素活性を有する個体に投与する用量の半分に調節する必要があり得る。同様に、超高速代謝型の場合、類似の計算によって、親化合物及び活性代謝物との類似の血中レベルを実現するために、正常なCYP2D6酵素活性を有する個体に投与する量の2倍に投与量を調節する必要があり得るという結論が導かれる。
【0084】
あるいは、患者に投与するイロペリドンの投与量は、患者のCYP2D6遺伝子型のみに基づいて、又は患者のP88:P95もしくは(イロペリドン+P88):P95比に基づいて減少させることができる。例えば、患者が「代謝欠損者」の遺伝子型を有する場合、又は高いP88:P95比もしくは(イロペリドン+P88):P95比を有する場合、イロペリドンの患者投与量は、例えば、25%、50%又は75%減少させることができる。患者の遺伝子型は、体液又は組織の試料に対して標準的技術を使用して容易に測定することができる。このような技術は、例えば、PCT出願公開番号第3054226号パンフレットに開示されている。
【0085】
さらに、本明細書の開示は遺伝子型に注目したが、当業者であれば、表現型は、イロペリドン及びP88に対するCYP2D6蛋白質の活性減少の指標としても使用できることは明らかであろう。例えば、McElroyらは、デキトロメトルファン/デキストロファン比によって測定したCYP2D6表現型と遺伝子型同定の間の相関について記載している。したがって、従来技術では遺伝子型を注目することがより便利であるが、所与の患者が野生型よりもイロペリドン及びP88に対する活性が低い変異CYP2D6を発現するか、又は異常に低い量のCYP2D6を発現することが測定された場合、前述のように、その患者は野生型CYP2D6の患者よりも低い用量のイロペリドンを投与されるだろう。患者のCYP2D6遺伝子の比活性を測定する他の方法には、酵素活性を直接測定するための生化学的測定法、患者CYP2D6のアミノ酸配列を調べるための蛋白質配列決定法、転写及び翻訳レベルのモニター、及びCYP2D6遺伝子mRNA転写物の配列決定法が含まれる。例えば、Chainuvati他は、多剤表現型決定カクテル(Cooperstown5+1カクテル)を使用したCYP2D6表現型の評価について記載している。
【0086】
イロペリドンは、投与単位に処方し、当業界で公知の技術を使用して患者に投与することができる。例えば、いずれも本明細書に完全に記載されたものとして参考として援用された、PCT出願公開番号第03054226号パンフレット、米国特許出願公開番号第200391645号、PCT出願番号PCT EP03/07619、及びPCT出願公開番号第02064141号パンフレットを参照のこと。
【0087】
さらに、本発明は、患者のCYP2D6遺伝子型及び/又は表現型を決定するキットを提供する。このようなキットは、例えば、検出手段、収集装置、容器、及び指示書を含むことができ、イロペリドン処理が必要な1種又は複数の疾患又は障害を有する患者の治療方法の決定に使用することができる。
【0088】
検出手段は、CYP2D6多形を直接検出してもよく、又は多形遺伝子の特徴的なmRNA若しくはそのポリペプチド発現生成物を検出してもよい。さらに、当業者によって認識されるように、検出手段は、CYP2D6多形による連鎖不均衡における多形を検出してもよい。したがって、この出願で開示されたCYP2D6多形による連鎖不均衡の多形は、このようなCYP2D6多形を間接的に検出するために使用することができ、これは本発明の範囲内である。
【0089】
本発明の方法及び装置で使用するために適した検出手段は、増幅に使用するポリヌクレオチド、配列決定法及び一塩基多形(SNP)検出技術などの当業界で公知の手段、Invader(登録商標)測定法(Third Wave Technologies、Inc.)、Taqman(登録商標)測定法(Applied biosystems、Inc.)、遺伝子チップ測定法(Affymetrix、Inc.及びRoche Diagnosticsから市販されているものなど)、ピロシーケンス、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)をベースとした切断測定法、蛍光偏光、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)、質量分析並びに増幅及び配列決定で使用される蛍光又は放射線学的タグを有するポリヌクレオチドを含む。
【0090】
本発明のキットの好ましい実施形態は、相補的DNA配列に結合すると、特異的な上流「インベーダー」オリゴヌクレオチド及び部分的に重複した下流プローブが一緒になって特定の構造を形成するInvader(登録商標)測定法を含む。この構造は、切断酵素によって認識され、特異的部位で切断され、プローブオリゴヌクレオチドの5’フラップ(flap)を遊離する。次に、この断片は、合成2次標的及び反応混合物中に含有される2次蛍光標識シグナルプローブに対して「インベーダー」オリゴヌクレオチドとして働く。これは、切断酵素による2次シグナルプローブの特異的切断を引き起こす。蛍光共鳴エネルギー移動が可能な色素分子で標識されたこの2次プローブが切断されると、蛍光シグナルが発生する。切断は、重複したDNA配列又はフラップによって形成された構造に対して厳密な必要件を有し、したがって、下流DNA鎖の切断部位のすぐ上流の一塩基対ミスマッチを特異的に検出するために使用することができる。例えば、いずれも本明細書に参考として援用した、Ryan他、Molecular Diagnosis、4;2:135〜144(1999)、Lyamichev他、Nature Biotechnology、17:292〜296(1999)及び、いずれもBrow他の米国特許第5846717号及び第6001567号を参照のこと。
【0091】
本発明のキットの他の好ましい実施形態は、患者の代謝表現型を予測することが知られている対立遺伝子に特異的な少なくとも1種のCYP2D6遺伝子型同定オリゴヌクレオチドを含む検出手段を含む。より具体的には、この手段は、CYP2D6G1846A又はCYP2D6C110T多形に特異的なオリゴヌクレオチドを含む。この手段は、同様に各多形並びに野生型配列に特異的なオリゴヌクレオチドを含んでよい。
【0092】
本発明での使用に適した検出方法、手段及びキットは、いずれも本明細書に参考として援用した国際公開第03/0544266号パンフレット及び第03/038123号パンフレットに記載されている。本明細書で説明した本発明の方法は一般的に、本発明によるキットの使用をさらに含むことも理解されたい。
【0093】
本発明における使用に適した収集装置には、核酸及び/又はポリペプチドを単離することができる個体の生体試料の収集及び/又は保存のために当業界で公知の装置が含まれる。このような生体試料には、例えば、全血、精液、唾液、涙、尿、糞便物質、汗、頬側スメア、皮膚、毛髪並びに器官及び筋肉の生検試料が含まれる。したがって、適切な収集装置には、例えば、試料カップ、綿棒、スライドガラス、試験管、ランセット及びVacutainer(登録商標)管及びキットが含まれる。
【0094】
本発明は、イロペリドンの投与によって軽減される疾患又は病状のために患者を治療することを包含する。前述のように、このような疾患及び病状には、例えば、統合失調症を含む分裂情動性障害、双極性うつ病を含むうつ病、並びに心不整脈、トゥーレット症候群、精神障害、妄想障害などのその他の病状が含まれる。
【0095】
本発明に関連する態様は、イロペリドン又はその活性代謝物、又はいずれかの薬剤として許容される塩を含む医薬組成物の当局承認を得るための方法であって、患者に投与する用量を決定する前に患者がCYP2D6代謝欠損型であるかどうかを決定するための指示書を提出された処方情報に含めることを含む方法である。さらに他の態様は、本発明は、このような化合物を含む医薬組成物を商品化する(すなわち、販売及び販売促進する)ための方法であって、患者に投与する用量を決定する前に患者がCYP2D6代謝欠損型であるかどうかを決定するために指示書に従って投与したとき、この組成物がヒトを治療するのに有効であることを示すデータを、規制当局に提出することによって、この組成物の当局承認を得るステップと、及びその後このような組成物のこのような形態での使用に関する情報を処方者又は患者又はその両者に広めるステップとを含む方法である。
【0096】
本発明の他の態様は、患者が既にCYP2D6阻害剤、例えば、パロキセチンなどを投与されているならば、より少ない容量の投与を指示する表示に部分的に基づいてイロペリドンを投与するための当局承認を得るための方法である。
【0097】
本発明を前記に概略した特定の実施形態に関連付けて説明したが、多くの代替、変更及び変種は当業者には明らかであることは明白である。したがって、前述した本発明の実施形態は、例示のためのものであって、制限するものではない。様々な変更は、以下の特許請求の範囲で定義したような本発明の精神及び範囲を逸脱することなく行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イロペリドン、イロペリドンの薬剤として許容される塩、イロペリドンの活性代謝物及びイロペリドンの活性代謝物の薬剤として許容される塩の少なくとも1種を含む活性医薬成分で患者を治療する方法であって、
前記患者のCYP2D6遺伝子型を決定するステップと、
前記患者に有効量の前記活性医薬成分を投与するステップと、
を含み、
前記活性医薬成分の量は、前記患者のCYP2D6遺伝子型に基づいて決定される、
方法。
【請求項2】
野生型と比較してCYP2D6酵素の酵素活性が減少していることを遺伝子型が示す場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者のCYP2D6G1846A遺伝子型がAAの場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
患者のCYP2D6G1846A遺伝子型がGAの場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
患者のCYP2D6C100T遺伝子型がTTの場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
患者のCYP2D6C100T遺伝子型がCTの場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
患者のCYP2D6遺伝子型が100C>T;1661G>C;1846G>Aの場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
患者のCYP2D6遺伝子型が100C>T;1661G>C;4180G>Cの場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
患者のCYP2D6遺伝子型がCYP2D6欠失の場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
患者のCYP2D6遺伝子型が−1584C;−1235A>G;−740C>T;−678G>A;イントロン1におけるCYP2D7遺伝子変換;1661G>C;2850C>T;2988G>A;4180G>Cの場合、前記活性医薬成分の量は削減される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記患者は、統合失調症、分裂情動性障害、うつ病、双極性障害/うつ病、心不整脈、トゥーレット症候群、精神障害、妄想障害及び統合失調症様障害の少なくとも1種に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記患者は、QT間隔延長の危険性がある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
イロペリドン、イロペリドンの薬剤として許容される塩、イロペリドンの活性代謝物及びイロペリドンの活性代謝物の薬剤として許容される塩の少なくとも1種を含む、薬剤として活性のある成分、によるCYP2D6代謝欠損型である患者の治療方法であって、
前記患者は、CYP2D6代謝欠損型ではない個体に投与されるよりも低い用量を投与される、方法。
【請求項14】
前記患者は、前記患者の遺伝子型、前記患者の表現型、及び前記患者がCYP2D6活性を減少させる薬剤で治療されている事実、の少なくとも1つに基づいて、CYP2D6代謝欠損型であることが決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の遺伝子型は、2549A欠損、1846G>A、1707T欠損、2935A>C、1758G>T、2613〜2615AGA欠損、1023C>T、2850C>T、4180G>C、1659G>A、1661G>C、2850C>T、3183G>A、−1584C、−1235A>G、−740C>T、−678G>A、100C>T、2988G>A及びCYP2D6欠失からなる群から選択された少なくとも1種のCYP2D6対立遺伝子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記患者の遺伝子型は、CYP2D6遺伝子の少なくとも1個の欠損を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記患者の遺伝子型は、イントロン1のCYP2D7遺伝子変換を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記患者は、統合失調症、分裂情動性障害、うつ病、双極性障害/うつ病、心不整脈、トゥーレット症候群、精神障害、妄想障害及び統合失調症様障害の少なくとも1種に罹患している、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
イロペリドン、イロペリドンの薬剤として許容される塩、イロペリドンの活性代謝物及びイロペリドンの活性代謝物の薬剤として許容される塩の少なくとも1種を含む薬剤として活性のある成分で患者を治療する方法であって、
前記患者がCYP2D6阻害剤を投与されているかどうかを決定するステップと、
前記患者がCYP2D6阻害剤を投与されている場合、薬剤の投与量を削減するステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記CYP2D6阻害剤は、パロキセチン、ドラセトロン、ベンラファキシン及びフルオキセチンの少なくとも1種を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記患者は、統合失調症、分裂情動性障害、うつ病、双極性障害/うつ病、心不整脈、トゥーレット症候群、精神障害、妄想障害及び統合失調症様障害の少なくとも1種に罹患している、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
患者のCYP2D6表現型を決定する方法であって、
イロペリドン、イロペリドンの薬剤として許容される塩、イロペリドンの活性代謝物及びイロペリドンの活性代謝物の薬剤として許容される塩の少なくとも1種のある量を患者に投与するステップと、
前記患者血中のイロペリドン及びイロペリドン代謝物の少なくとも1種の第1濃度を測定するステップと、
を含む方法。
【請求項23】
前記イロペリドン代謝物は、P88及びP95からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1濃度は、P88及びP95のそれぞれについて測定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者は、P95に対するP88の第1濃度の比が約2.0以上である場合、代謝欠損型と命名される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記患者は、(P88+イロペリドン)/P95の第1濃度の比が約1.0以上である場合、代謝欠損型と命名される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記患者は、P95に対するイロペリドン及びP88の第1濃度の比が約3.0以上である場合、代謝欠損型と命名される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1種のCYP2D6阻害剤を前記患者に投与するステップと、
前記患者血中のイロペリドン及びイロペリドン代謝物の少なくとも1種の第2濃度を測定するステップと、
前記第1濃度と前記第2濃度とを比較するステップと、
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記CYP2D6阻害剤は、パロキセチン、ケトコナゾール及びフルオキセチンからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第2濃度は、P88及びP95のそれぞれについて測定される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記患者は、P95に対するP88の第2濃度の比が約2.0以上である場合、代謝欠損型と命名される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1濃度及び第2濃度は、イロペリドン、P88及びP95のそれぞれについて測定される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記患者は、P95に対するイロペリドン及びP88の第2濃度の比が約3.0以上である場合、代謝欠損型と命名される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
イロペリドン、イロペリドンの薬剤として許容される塩、イロペリドンの活性代謝物及びイロペリドンの活性代謝物の薬剤として許容される塩の少なくとも1種の投与によって、患者はQTc間隔延長の危険性があるかどうかを決定する方法であって、
第1QTc間隔を測定するステップと、
イロペリドン、イロペリドンの薬剤として許容される塩、イロペリドンの活性代謝物及びイロペリドンの活性代謝物の薬剤として許容される塩の少なくとも1種のある量を患者に投与するステップと、
第2QTc間隔を測定するステップと、
前記第1QTc間隔と前記第2QTc間隔とを比較するステップと、
を含む方法。
【請求項35】
患者に投与するイロペリドンの用量は、1日当たり約24ミリグラムである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記投与するステップ後に、前記患者に少なくとも1種のCYP2D6阻害剤を投与するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記CYP2D6阻害剤は、パロキセチン、ケトコナゾール及びフルオキセチンからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。

【公表番号】特表2012−502105(P2012−502105A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526972(P2011−526972)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/056517
【国際公開番号】WO2010/030783
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(507021702)ヴァンダ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】