説明

インキ瓶

【課題】インキ瓶1の蓋5を開ける際に、蓋本体3に装着したパッキン4が容器本体2の口部2aに貼り付いたまま残ってしまうことがないインキ瓶を得る。
【解決手段】パッキン4の縁辺に容器本体2の口部2aの上面2cと当接する平地部4aを形成し、平地部4aの内側に、中心方向へ向かって下方へ傾斜する複数の傾斜壁部4bを該平地部4aに連設して放射状に形成し、複数の傾斜壁部4b間に毛細管力でインキ6をパッキン4の中心方向へ移動させるインキ誘導溝4cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用インキを収容したインキ瓶に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具用インキを収容したインキ瓶については従来より良く知られており、こうしたインキ瓶は、ガラスで成形した容器本体の口部に対し、樹脂で成形した蓋を螺合させる形態が一般的である。この蓋は、意匠登録第1108850号公報にあるように、蓋本体に天然ゴムや合成ゴムあるいは発泡樹脂などで形成したパッキンを嵌め込むことで、容器本体のインキ収容部を密閉することが多い。ところで、インキ瓶から万年筆にインキを吸入する場合には、吸入終了時に万年筆のペン先をインキの中から持ち上げた際に、容器本体の口部にインキが付着してしまうことがよくあり、口部にインキが付着したままで蓋を閉めると、口部の上端面に対して蓋本体から外れたパッキンが貼り付いて残ってしまうことから、次回使用する際には、パッキンを容器本体の口部から剥がして蓋本体へ戻す必要があり、その際の煩わしさと指がインキで汚れてしまうという問題が生じていた。この問題は、容器本体の口部に付着したインキが乾いて固化することで、インキが接着剤のようになって、パッキンが口部の上端面に貼り付くことで生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1108850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、インキ瓶の蓋を開ける際に、蓋本体に装着したパッキンが容器本体の口部に貼り付いたまま残ってしまうことがないインキ瓶を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
「蓋本体が上壁部と該上壁部から垂設した側壁部とを有し、前記側壁部の内側に容器本体の口部へ形成した雄螺子部と螺合する雌螺子部を形成し、前記蓋本体内に前記容器本体の口部と当接するパッキンを嵌め込んで蓋を成し、前記蓋を前記容器本体に螺合して装着させた際に、前記容器本体の口部と前記蓋本体の上壁部との間で前記パッキンを挟持して当該容器本体のインキ収容部を密閉する構造のインキ瓶であって、前記パッキンの縁辺に前記容器本体の口部の上面と当接する平地部を形成し、前記平地部の内側に、中心方向へ向かって下方へ傾斜する複数の傾斜壁部を該平地部に連設して放射状に形成し、前記複数の傾斜壁部間に毛細管力でインキを前記パッキンの中心方向へ移動させるインキ誘導溝を設け、前記容器本体の口部の上面に付着したインキを前記インキ誘導溝により当該容器本体の前記インキ収容部へ滴下させる構造のインキ瓶。」である。
【0006】
パッキンの縁辺に設ける平地部は、容器本体の口部が接するように設け、平地部に連設して設ける傾斜壁部の外端部は容器本体の口部の内面が接するように設け、口部に付着したインキが傾斜壁部間のインキ誘導溝間に流れるようにすることが肝要である。また傾斜壁部間に設けるインキ誘導溝は、インキがパッキンの中心方向に向かって流れやすくするために、外側から内側に向かって毛細管力が強くなるように巾が狭くなるように形成する。また傾斜壁部の傾斜角度は、水平面に対する傾斜角度をきつくすれば、重力でインキがパッキンの中心に集りやすくなり、またパッキンの中心部の高さが高くなることからインキ誘導溝の深さを深くすることができ、容器本体の口部に少量のインキが付着しただけなら、インキをパッキンのインキ誘導溝内に保持させることが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インキ瓶の蓋を閉めた状態で容器本体の口部にインキが残ることがないので、インキ瓶の蓋を開ける際に、パッキンが容器本体の口部に貼り付いたまま残ってしまうことがないインキ瓶が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例のインキ瓶の断面図である。
【図2】蓋の斜視図である。
【図3】本実施例の蓋を分解した状態を示す図である。
【図4】使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を用いて本発明の実施例について説明を行う。
【実施例】
【0010】
図1は、実施例1のインキ瓶の断面図である。図1に示すようにインキ瓶1は、容器本体2の口部2aに蓋本体3とパッキン4とからなる蓋5を装着してある。
本実施例の蓋5は、蓋本体3を、円形状の上壁部3aと、上壁部3aから垂設した円環状の側壁部3bとで構成し、側壁部3bの内側に雌螺子部3cを形成し、容器本体2の口部2aに形成した雄螺子部2bと螺合可能にしてある。また、蓋本体3の上壁部3aの内側にはゴム製で外周が円形状のパッキン4を装着し、パッキン4の縁部に形成した平地部4aを容器本体2の口部2aの上面2cと蓋本体3の上壁部3aとで挟持して、インキ6を収容したインキ収容部2dを密閉してある。
【0011】
次に、図2〜図4を用いて本実施例の蓋の構造について詳述を行う。
本実施例の蓋5は、パッキン4の縁辺に形成した円環状の平地部4aの内側に、中心方向へ向かって下方(図2、図3においては上方)へ25度で傾斜する複数の傾斜壁部4bを平地部4cに連設して放射状に形成し、複数の傾斜壁部4b間に、中心へ向かうにしたがって隙間を狭くすることで中心方向への毛細管力を強くさせたインキ誘導溝4cを設けてある。尚、図2および図3で示したパッキン4の形態は、傾斜壁部4bの厚みおよびインキ誘導溝4cの隙間を大きく表現することで図面を見やすくしてあるが、実際には、傾斜壁部4bの厚みが一番大きい外側の箇所は2.0mmで、厚みが一番小さい内側の箇所は0.3mm、インキ誘導溝4cの隙間の巾が一番広い外側の箇所は1.0mmで、隙間の巾が一番狭い内側の箇所は0.6mmで形成した。
【0012】
本実施例のインキ瓶1は、図4に示すように、容器本体2の口部2aの上面2cに付着したインキ6を、矢印Aで示したように、インキ誘導溝4cの毛細管力でパッキンの中心に設けた中心軸部4dの方向へ向かって引き寄せ、容器本体2の口部2aに付着したインキを容器本体2のインキ収容部へ再び戻すことができた。したがって、容器本体2の口部2aに付着したインキが乾いて固化しまうことはなく、蓋5を外すために蓋本体3を回転させた際に、パッキン4が口部2aの上面2cに貼り付いて残ってしまうことはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、インキ瓶の蓋を開ける際に、パッキンが蓋本体から外れてしまうことがないので、乾燥して固化しやすいインキを収容するインキ瓶にも適用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1…インキ瓶、
2…容器本体、2a…口部、2b…雄螺子部、2c…上面、
2d…インキ収容部、
3…蓋本体、3a…上壁部、3b…側壁部、3c…雌螺子部、
4…パッキン、4a…平地部、4b…傾斜壁部、4c…インキ誘導溝、
4d…中心軸部、
5…蓋、6…インキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体が上壁部と該上壁部から垂設した側壁部とを有し、前記側壁部の内側に容器本体の口部へ形成した雄螺子部と螺合する雌螺子部を形成し、前記蓋本体内に前記容器本体の口部と当接するパッキンを嵌め込んで蓋を成し、前記蓋を前記容器本体に螺合して装着させた際に、前記容器本体の口部と前記蓋本体の上壁部との間で前記パッキンを挟持して当該容器本体のインキ収容部を密閉する構造のインキ瓶であって、前記パッキンの縁辺に前記容器本体の口部の上面と当接する平地部を形成し、前記平地部の内側に、中心方向へ向かって下方へ傾斜する複数の傾斜壁部を該平地部に連設して放射状に形成し、前記複数の傾斜壁部間に毛細管力でインキを前記パッキンの中心方向へ移動させるインキ誘導溝を設け、前記容器本体の口部の上面に付着したインキを前記インキ誘導溝により当該容器本体の前記インキ収容部へ滴下させる構造のインキ瓶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−232548(P2012−232548A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104167(P2011−104167)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】